説明

三元系の圧電性結晶の作成方法

垂直ブリッジマン法を用いて新規な溶融物から成長させた三元系単結晶リラクサ圧電性物質、及び三元系単結晶リラクサ圧電性物質を作成するための方法。該三元系単結晶は、少なくとも150℃のキュリー温度T、及び少なくとも約110℃の菱面体晶から六方晶への相転移温度Trtによって特徴付けられる。該三元系の結晶は、更に、少なくとも約1200〜2000pC/Nの範囲における圧電係数d33を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究に関する記述
[0001]合衆国政府は、この発明における支払済みの実施権を有し、限られた状況下で、合衆国海軍省により与えられた契約番号N00014−06−M−0226の期間によって規定される合理的な期間、特許保有者に他者への実施権許諾を要求する権利を有する。
【0002】
発明の分野
[0002]本発明は、圧電性単結晶を製造する方法に向けられており、具体的には、より高い温度で、より高出力の用途において用いるための三元系の圧電性単結晶に向けられている。
【背景技術】
【0003】
[0003]Pb(Mg1/3Nb2/31−xTi(PMN−PT)などの二元系単結晶リラクサ強誘電体は、広域バンド幅変換器のために非常に有望である。かかる二元系単結晶は、PbZrO−PbTiOの約4.5倍の弾性コンプライアンスを有し、伝統的な圧電性セラミックであるPbZrO−PbTiOのタイプ1PZTは、幅広い範囲の用途において一般的に用いられている。この材料はまた、タイプ1PZTの6.5倍の圧電係数d33を有し、約90%より大きい電気機械結合係数k33を有する。一方で、タイプ1PZTに関するk33は、約70%より小さい。改善された弾性コンプライアンスにより、予め決定された共鳴周波数に関して、劇的に減少した素子サイズでPMN−PTを提供することが可能となる。改善された圧電係数により、より小さな素子で音響インテンシティを維持することが可能となる。改善された結合係数は、より大きい動作バンド幅を提供し、これは電力伝達システムのために重要である。加えて、改善された結合係数k33は、セラミックに関する場合よりも、基本共鳴周波数の更に上で高い受信感度を提供する。
【0004】
[0004]しかしながら、PMN−PTなどの二元系単結晶リラクサの使用は、その低いキュリー温度T、及び、相転移温度Trtでの菱面体晶から六方晶への相転移というモルフォトロピック挙動のために、制限されている。単結晶リラクサ強誘電体を含む材料の部類は、一度その単結晶リラクサ強誘電体のTを超えてしまうと、結晶を再分極するための強電場の適用無しには回復しないので、Tは重要なパラメータである。材料の振動特性は、一度Trtを超えてしまうと部分的に失われ、これらの特性は、温度が低下しても回復しない。超音波用途において用いられる材料に関しては、これらの振動特性は重要な性質であり、Trtは結晶の最大使用温度を制限する。PMN−PTの誘電率及び圧電係数はまた、温度に非常に依存する。例えば、PMN−33%PTは、0〜50℃(32〜122゜F)の温度範囲において、誘電率に75%の変化を有する。この変化は、変換器のインピーダンス及びマッチング回路に不利に影響を及ぼし、これは続いて電力伝達システムに影響を及ぼす。それ故に、温度とともに有意に変化しない誘電率は、かかるシステムの信頼性ある動作のために重要である。
【0005】
[0005]ソナー用途などの、空間が問題となる用途に関しては、かかる温度依存性が性能に影響を及ぼす。電気回路の駆動に必要とされる電力は、回路の複雑化とともに増加し続け、これは更に、かかる制限された空間におけるかかる用途に関連する結晶及び全ての設備の動作温度を上昇させる。PMN−PTはまた、タイプ1PZTセラミックより6倍低い保磁力を有するので、結果として、高駆動の分極用途の間、結晶が脱分極しないようにするために電気バイアスを印加しなければならない。
【0006】
[0006]PMN−PTの欠点を克服するための努力がなされている。Pb(Sc1/2Nb1/2)−PbTiO(PSN−PT)、Pb(Sc1/2Ta1/2)O−PbTiO(PST−PT)、Pb(Yb1/2Nb1/2)O−PbTiO(PYN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O−PbTiO(PIN−PT)、Pb(Co1/3Nb2/3)O−PbTiO(PCN−PT)、及びPb(Co1/21/2)O−PbTiO(PCW)などの、より高いキュリー温度を持つ新規な二元系結晶が開発されている。各々の結晶は、そのモルフォトロピック相境界組成の近傍で比較的高いTを有する。しかしながら、その結晶成長は、これらの材料の溶融物中のペロブスカイト相の不安定性のために制限されている。それ故に、そのゆっくりとした成長速度、及び不安定性のために、これらの組成物の溶融物から単結晶を成長させることは難しい。これらの二元系材料は、260〜360℃(500〜680゜F)の範囲における有望なT、及び50〜160℃(122〜320゜F)の相転移温度を有するが、この不安定性のために、典型的には、小さいサイズの多結晶の結晶グレインが生ずる。これらの多結晶グレインは、もし生産したとしても、合理的なコストで生産可能な十分なサイズの単結晶を生じないので、実用的でない。
【0007】
[0007]PMN−PTの温度使用範囲の増加は、Pb(Sc1/2Nb1/2)O−Pb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO(PSN−PMN−PT)、Pb(Yb1/2Nb1/2)O−Pb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO(PYN−PMN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O−Pb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO(PIN−PMN−PT)及びPb(Mg1/3Nb2/3)O−PbZrO−PbTiO(PMN−PZ−PT)などのリラクサPMN−PT三元系の開発によっても試みられている。三元系のPIN−PMN−PTにおいては、より高いモルパーセンテージのPINが、二元系のPMN−PT結晶と比較して改善されたTrt及び改善された保磁力Eを生み出す一方で、その他の誘電特性及び圧電特性は、PMN−PT結晶と同様に維持される。しかしながら、かかる三元系物質の欠点の一つは、PIN濃度の制限であり、結晶成長プロセスの間に、二次相、特にパイロクロア相の形成を防ぐことが難しいために、垂直ブリッジマン法によって28モル%より高い濃度のものは成長しない。
【0008】
[0008]より高い温度で用いることの出来る変換器として使用するための、伝統的に成長させることの出来る単結晶三元系材料が必要とされている。これらの結晶は、より高い温度環境においてより高出力で駆動することが出来るために、より高いキュリー温度Tを有していなければならない。加えて、これらの材料は、動作の温度範囲にわたって可能な限り一様な誘電率を有するべきである。本発明の単結晶材料はまた、動作範囲内のTrtを有していないことが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
[0009]垂直ブリッジマン法を用いて新規な溶融物から成長させることのできる三元系の単結晶リラクサ圧電性物質を提供する。三元系単結晶は、少なくとも150℃のキュリー温度Tと、少なくとも約110℃の菱面体晶から六方晶への相転移温度Trtとによって特徴付けられる。この三元系結晶は、更に、少なくとも約1200〜2000pC/N(式中ピコ(p)は10−12、Cは短絡電荷密度、そしてNは加えられた力である)の範囲における圧電係数d33、及び約2.5〜7.5kv/cmの範囲におけるEを示す。
【0010】
[0010]三元系の単結晶リラクサ圧電性物質は、結晶成長の間のパイロクロア相の形成を避ける前駆体法を用いた垂直ブリッジマン法によって成長させる。原材料計量プロセスの間に形成される二次相の量が少ない場合でさえ、固化の間に二次相が結晶成長界面(結晶成長相)に分離され、この界面の安定性を破壊し、結果として欠陥の形成又は多結晶性を生ずる可能性がある。
【0011】
[0011]更に、リラクサ三元系単結晶圧電性材料を作製する方法であって、まず高い温度で、好ましくは約700〜950℃(1292〜1742゜F)の範囲における温度でNb及びMgOを焼成することによってコロンバイト前駆体を提供する工程、及び、次いで、該コロンバイト前駆体をPbOとともに低い温度で焼成して純粋なペロブスカイト相を形成する工程を含む方法を提供する。第2の純粋なペロブスカイト相は、第2の構成要素として選択的に提供され、三元系結晶がPIN−PMN−PTである場合には、高い温度、好ましくは約1050〜1250℃(1922〜2282゜F)の温度範囲でNb及びInを焼成することにより鉄マンガン重石前駆体を提供し、次いで、該鉄マンガン重石前駆体をPbOとともに低い温度、好ましくは約700〜950℃(1292〜1742゜F)の温度範囲において焼成して第2の純粋なペロブスカイト相を形成することによって提供される。三元系結晶がPMN−PZ−PTである場合には、PbZrOを第2の構成要素として利用する。PbTiOは、第3の構成要素として提供される。次いで、各々の前駆体を互いに混合し、粉砕し、そしてふるいにかけて実質的に均一な固溶体混合物を形成する。次いで、固溶体混合物を純粋なペロブスカイト相を含む粒子に形成し、その後焼結する。焼結は、好ましくは約1100〜1250℃(2012〜2282゜F)の範囲における温度で達成することが出来る。次いで、粒子を非反応性坩堝中に充填し、蒸発損を補償しかつ焼成の間にペロブスカイト相を安定化させるために、5モルパーセントまでのPbO、Pb、PbCO及びPb(CO(OH)、In、並びに/又はMgOで任意に充填しても良い。加えて、2モルパーセントまでのB、及び/又はPbFで坩堝を充填しても良く、これらは溶融物の融点を下げる働きをし、これにより結晶成長安定化剤として役立ち、結晶成長の間のペロブスカイト相を安定化させる。坩堝を、5モルパーセントまでのMn、Yb、及びScで任意に充填して、続いて溶融物によって生産される結晶の誘電特性及び圧電特性を高めても良い。
【0012】
[0012]充填された坩堝を、次に、第1の高温領域及び第2の低温領域を有する炉中で加熱し、炉中で、第1領域及び第2領域の間で温度勾配が形成される。第1領域を、充填物の融点を超えた温度、好ましくは充填物の融点を約10〜100℃(50〜212゜F)超えた温度で維持し、第2領域を、充填物の融点より低い温度で維持し、結果として良く定義された温度勾配が第1及び第2の温度領域の間で炉中に存在し、好ましくはこの勾配は5〜40℃/cmの範囲内である。坩堝中の充填物を、坩堝を第1の高温領域に移動させることにより溶融する。充填物を、第1領域に対して予め選択した速度で第2領域に向けて移動させる。この予め選択した速度は変化させても良いが、好ましい速度は約0.2〜2mm/時間の範囲内である。第1の温度領域を充填物の融点を超えた温度で維持する一方で、第2の温度領域を充填物の融点より低い温度で維持する。充填物の第2の温度領域への移動により、溶融物からの結晶成長が開始する。あるいは、第2の温度領域におけるシードによって結晶成長を開始しても良い。坩堝中の溶融した充填物と成長する結晶との間の固/液界面での温度勾配を制御することにより、予め選択したサイズの三元系単結晶を、固/液界面で液体中に成長させる。三元系結晶は、予め選択した速度で冷却することが出来る。現在生産されているサイズの単結晶に関しては、この冷却速度は、好ましくは約30〜100℃/時間(50〜180゜F/時間)の範囲内であるが、単結晶のサイズを基準として変化させることが出来る。
【0013】
[0013]本発明は、ソナーなどの、電力需要が増加し続けるにも関わらず、動作空間及び冷却能力が制限される用途において用いるための、超音波変換器を形成するために使用することの出来るリラクサ三元系単結晶圧電性物質を提供する。これらの結晶は、利用可能な二元系単結晶と比較して、より高いキュリー温度及び改善された保磁力を提供する。
【0014】
[0014]重要なことに、これらの三元系単結晶圧電性物質は、垂直ブリッジマン法によって生産することが出来る。これにより、少なくとも約1/2インチ(1.27cm)の直径、及び少なくとも約2インチ(5.08cm)の長さ、好ましくは4インチ(10.2cm)かそれよりも長い長さを有する大きい単結晶を経済的に生産することが可能となる。
【0015】
[0015]これらの三元系単結晶圧電性物質の追加の利点は、PMN−PT二元系結晶と比較して、その動作温度範囲にわたって誘電率の変動がより少ないことであり、これは変換器のインピーダンス、マッチング回路、ならびに電力伝達システムに有益な影響を及ぼす。
【0016】
[0016]本発明の更なる利点は、前駆体法の使用により、欠陥及び多結晶グレインを形成することによって単結晶の成長に不利に影響を及ぼす、有害なパイロクロア相の形成が避けられることである。
【0017】
[0017]本発明のその他の特徴及び利点は、本発明の原理を例示の目的で説明する添付の図面と併用して、以下の好ましい実施態様のより詳細な記載から明らかである。
[0018]図1は、単一の坩堝を有する垂直ブリッジマン炉の断面概略図である。
【0018】
[0019]図2は、PMN−PIN−PTサンプルとPMN−28%PTサンプルとの間の、誘電率対温度変化の比較図である。
[0020]図3は、PMN−PZ−PTサンプルとPMN−PTサンプルとの間の、誘電率の温度変化の比較図である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、単一の坩堝を有する垂直ブリッジマン炉の断面概略図である。
【図2】図2は、PMN−PIN−PTサンプルとPMN−28%PTサンプルとの間の、誘電率対温度変化の比較図である。
【図3】図3は、PMN−PZ−PTサンプルとPMN−PTサンプルとの間の、誘電率の温度変化の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0021]本発明は、前駆体配合物を用いることによって溶融物を作ることのできる組成物を利用する。これらの前駆体を、今度は、垂直ブリッジマンプロセスを用いて三元系単結晶を生成するために用いることが出来る。これらの三元系の単結晶は、改善されたキュリー温度T、及び改善された菱面体晶から六方晶への相転移温度Trtを有し、これにより単結晶をより高い温度で用いることが出来る。これは、高い電力伝送を必要とするが、空間が小さく、冷却能力が制限されており、結果として動作温度の制御が重要である用途にとって重要である。
【0021】
[0022]図1は、単一の坩堝を有する、垂直ブリッジマンプロセスにおいて用いるためのブリッジマン炉10の断面概略図である。複数の坩堝をこのプロセスにおいて用いることが出来ることが理解される。これらの坩堝は、好ましくは非反応性であり、白金(PT)、イリジウム(IR)、ロジウム(RH)、及びこれらの組み合わせからなるか、またはこれらを含む。炉10をアルミナスタンド6を支持する並進ステージ7上に配置し、移動を可能にする。炉の作業領域は抵抗ヒーター4によって囲われており、これは更に断熱材5によって囲われている。炉の作業領域は、アルミナチューブ1を含み、上部の熱い領域及び冷却部であるより低い領域を有する。アルミナチューブ1の内部に坩堝3がある。坩堝及びアルミナスタンド6は一緒に動作して、単結晶の鋳造品の形成を可能にする。坩堝3は溶融物8を保持し、この溶融物は炉の熱い領域に及ぶ。この概略図において、結晶シード9はアルミナスタンドによって保持され、坩堝3のより低い部分から熱い領域に及び、結果としてシードの端部が坩堝の内部で液−固界面を形成する。結晶シード9は、アルミナスタンドを下方に移動させる並進ステージの移動によって、坩堝3から予め決定された速度で引き抜かれる。溶融材料は結晶シードとともにわずかにより冷たい温度領域へと下方に移動し、溶融物からの分子又は原子の堆積によって結晶シード上に固化を生ずる。ゆっくり行った場合には、不純物が回避され、自発的な核形成がないので、単結晶の直径に近い直径を有する結晶シード上に結晶の単一層が形成され、そのサイズは結晶シードを引き抜くにつれて次第に厚くなる。垂直ブリッジマン法は炉の2つの領域の間の温度差を利用して単結晶を形成し、ここで高温領域は組成物の溶融温度を超えており、より低温の領域は溶融温度をわずかに下回る。
【0022】
[0023]本発明の単結晶はPMN−PTの三元系物質であり、ここでPMNはPbMg1/3Nb2/3であり、PTはPbTiOである。三元系の組成物は、更にPIN、すなわちPb(In1/2Nb1/2)O又はPZ、すなわちPbZrOのいずれか1つを含む。これらの三元系の単結晶は、現在の最新技術の二元系PMT−PT結晶よりも高い温度及び高い電場で動作する。これらの三元系単結晶は、垂直ブリッジマン法として上述したワンパスの単軸固化プロセスによって溶融物から成長させる。
【0023】
[0024]その幅広い実施態様において、PIN−PMN−PTは、モルパーセントで29%〜約80%のPIN、約1〜50%のPT、及び残分のPMNを含む。単結晶がこの組成物の溶融物から成長し、この単結晶は、[111]、[110]、又は[001]方向のいずれかの結晶方位を有する。結晶成長プロセスの間の二次相、主にパイロクロア相の形成を防ぐことが難しいために、ブリッジマン法によっては、28モル%より高いPIN濃度でPIN−PMN−PT結晶は成長しない。本明細書中に開示された方法は、先行技術の制限を克服し、単結晶を成長させることが出来る。本発明の組成の制限内での三元系のPMN−PIN−PT単結晶は、160℃〜260℃超のT、及び120℃〜130℃超のTrtを持つ。三元系は、PINを含まない二元系と比較して、25℃より高く上昇したTrt、及び150%改善されたEを有する。幅広い組成物の範囲内に含まれるPIN−PMN−PTは、少なくとも160℃のキュリー温度T、約120〜130℃の菱面体晶から六方晶への相転移温度Trt、約1200〜2000pC/Nの圧電係数d33、及び2.5〜7.5kv/cmの保磁力Eによって特徴付けられる単結晶である。図2は、本発明のPMN−PIN−PTサンプルとPMN−28%PT及びPMN−31%PTサンプルとの間の誘電率対温度変化の比較図であり、二元系のPMN−PTに対する本発明の三元系の改善を示す。表1は、選択された三元系のPIN−PMN−PT組成物の性質を、同様の二元系PMN−PT組成物と比較した概要を提供する。
【0024】
【表1】

[0025]最も広い実施態様において、PMN−PZ−PTは、モルパーセントで、約1%〜約20%のPZ、約1〜50%のPT、及び残分のPMNを含む。単結晶シードを使用した場合と使用しない場合と両方で、垂直ブリッジマン手法によるPMN−PZ−PTの単結晶の成長が実証された。これらの実証は、更に、PZに与えられたZrが、二元系と比較して三元系の動作範囲の増加に有意な影響を有することを示した。ジルコニウムで置換した場合の誘電率と温度との間の関係は、菱面体晶から六方晶への相転移温度が、二元系のPMN−PTに対して、110℃超に改善することを示している。この組成物の溶融物から単結晶を成長させ、この単結晶は、[111]、[110]、又は[001]方向のいずれかの結晶方位を有する。三元系を形成するためのPZのPMN−PTへの添加により、Trt及びEはそれぞれ15℃及び50%より高く上昇した。誘電特性及び圧電特性は、二元系のPMN−PT結晶の特性と同様のままである。幅広い組成物の範囲内に含まれる三元系のPMN−PZ−PTは、少なくとも150℃のキュリー温度T、少なくとも約110℃の菱面体晶から六方晶への相転移温度Trt、少なくとも約1200pC/Nの圧電係数d33、及び少なくとも約3.0kv/cmの保磁力Eによって特徴付けられる単結晶である。図3は、本発明の三元系のPMN−PZ−PTサンプルと、二元系のPMN−PTサンプルとの間の誘電率の温度変化の比較図であり、二元系のPMN−PTに対する本発明の三元系物質の改善を示している。表2は、同様の二元系のPMN−PT組成物と比較した、選択された三元系のPMN−PZ−PT組成物の性質の概要を提供する。
【0025】
【表2】

【実施例】
【0026】
実施例1
[0026]PMN−PZ−PT結晶成長:PMN−PZ−PT(3モル%PZ及び31モル%PT)結晶の典型的なブリッジマン成長を以下に記載する:コロンバイト前駆体であるMgNbを、99.99%純度のMgO粉末及びNb粉末の化学量論比の混合物を混合、粉砕、及び焼成することにより予め合成した。MgO粉末及びNb粉末を、約1:4の体積比でエタノールとともに混合し、次いでイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)媒体によってボールミルで約24時間粉砕した。その粉末をオーブン中で約50℃(122゜F)で乾燥させ、次いで80メッシュのナイロンスクリーンを通してふるいにかけた。最後に、その粉末を約1150℃(2102゜F)で約4時間焼成した。純粋なコロンバイト相が、X線回折(XRD)によって確認された。MgNbの最終的な粒子サイズは、約2ミクロンであった。この三元系コンパウンドの化学量論比に従って、PbO(69.004重量%)、MgNb(20.82重量%)、ZrO(2.52重量%)、及びTiO(7.656重量%)をYSZ媒体によってSwecoの振動ミルで約16時間粉砕し、次いでオーブン中で約50℃(122゜F)で乾燥させた。全原材料の純度は、少なくとも99.9%であった。乾燥させた粉末を80メッシュのナイロンスクリーンを通してふるいにかけ、次いで、約950℃(1742゜F)で約4時間焼成した。純粋なペロブスカイト相が、X線回折(XRD)によって確認された。合成したコンパウンドを、次いで、先細りの白金(Pt)坩堝に充填した。Pt坩堝は直径が15mmで100mm長であり、直径10mmで50mm長のシードウェルを備えていた。単結晶シードは、この実行に関しては、シードウェルに充填しなかった。
【0027】
[0027]図1に示すような垂直ブリッジマン炉を、結晶成長のために用いた。上部加熱領域及び下部加熱領域の最大温度は、それぞれ約1380℃(2516゜F)及び約1150℃(2102゜F)であった。Pt坩堝に沿った垂直温度勾配は、約10〜15℃/cmであった。充填物を溶融した後、その温度で約10時間浸した。次いで、坩堝を0.8mm/時間の速度で低下させて、結晶成長プロセスを開始させた。坩堝を約150mm(5.9インチ)下方へ移動させた後、垂直温度勾配によって駆動される結晶化プロセスを完了させた。次いで、炉を約20時間のうちに室温に冷却した。15mm(0.6インチ)の直径及び約110mm(4.3インチ)の軸長を有する単結晶(ブールの開始したばかりの部分を除いて)が、大体その<111>方位に沿って成長した。
【0028】
実施例2
[0028]PMN−PZ−PT結晶成長:PMN−PZ−PT(5モル%PZ及び33モル%PT)結晶の典型的なブリッジマン成長を以下のように実施した:コロンバイト前駆体であるMgNbを、上述の実施例1において記載したのと同じ方法で予め合成した。1モル%の追加のPbOを含んだほかは、この三元系コンパウンドの化学量論比に従い、PbO(68.595重量%)、MgNb(19.25重量%)、ZrO(4.134重量%)、及びTiO(8.021重量%)を量り取り、エタノールとともに16時間粉砕した。粉末を約850℃(1562゜F)で約4時間焼成したほかは、全てのプロセスは、実施例1におけるように行った。合成したコンパウンドを、次いで、先細りの白金(Pt)坩堝に充填した。Pt坩堝は直径が約15mm(0.6インチ)で約100mm(3.94インチ)の軸長であり、直径5mmで50mm長のシードウェルを備えていた。単結晶シードは、この実行に関しては、シードウェルに充填しなかった。
【0029】
[0029]図1に示すような垂直ブリッジマン炉を、結晶成長のために用いた。上部加熱領域及び下部加熱領域の最大温度は、それぞれ約1395℃(2543゜F)及び約1100℃(2012゜F)であった。Pt坩堝に沿った垂直温度勾配は、約15〜20℃/cmであった。充填物を溶融した後、約6時間浸し、次いで、坩堝を0.6mm/時間の速度で低下させて、結晶成長プロセスを開始させた。坩堝を約150mm(5.9インチ)下方へ移動させた後、垂直温度勾配によって駆動される結晶化プロセスを完了させた。次いで、炉を約20時間のうちに室温に冷却した。約15mm(0.6インチ)の直径及び約90mm(3.5インチ)の軸長を有する単結晶(ブールの開始したばかりの部分を除いて)が、大体その<111>方位に沿って成長した。
【0030】
実施例3
[0030]PMN−PIN−PT結晶成長:PMN−PIN−PT(29モル%PIN及び31モル%PT)結晶の典型的なブリッジマン成長を以下のように実施した:コロンバイト前駆体であるMgNbを、実施例1において記載したのと同じ方法で予め合成した。鉄マンガン重石前駆体であるInNbOを、99.99%の純度を有する化学量論比のIn粉末及びNb粉末を混合し、粉砕し、そして焼成することによって予め合成した。In粉末及びNb粉末を、15:85の体積比でエタノールとともに混合し、次いで、YSZ媒体によって、Swecoミルで約24時間粉砕した。この粉末をオーブン中で約50℃(122゜F)で乾燥させ、次いで、80メッシュのナイロンスクリーンを通してふるいにかけた。最後に、この粉末を約1100℃(2012゜F)で約4時間焼成した。純粋な鉄マンガン重石相が、XRDによって確認された。InNbOの最終的な粒子サイズは、約2ミクロンであった。0.25モル%の追加のPbOを含んだほかは、この三元系コンパウンドの化学量論比に従い、PbO(68.066重量%)、MgNb(12.416重量%)、InNbO(11.985重量%)、及びTiO(7.533重量%)を量り取り、YSZ媒体によってSweco振動ミルで約20時間粉砕し、次いでオーブン中で約50℃(122゜F)で乾燥させた。乾燥させた粉末を、80メッシュのナイロンスクリーンを通してふるいにかけ、次いで、約850℃(1562゜F)で約4時間焼成した。純粋なペロブスカイト相が、XRDによって確認された。合成したコンパウンドを、次いで、実施例1において記載したような先細りの白金(Pt)坩堝に充填した。Pt坩堝は直径が40mmで145mm長であり、直径15mmで75mm長のシードウェルを備えていた。<110>に方向付けたPMN−PT単結晶シードを、この実施例に関してシードウェルに配置した。
【0031】
[0031]図1に示すような垂直ブリッジマン炉を、結晶成長のために用いた。上部加熱領域及び下部加熱領域の最大温度は、それぞれ約1405℃(2561゜F)及び約1100℃(2012゜F)であった。Pt坩堝に沿った垂直温度勾配は、約15〜20℃/cmであった。充填物を溶融した後、約12時間浸し、次いで、坩堝を0.8mm/時間の速度で低下させて、結晶成長プロセスを開始させた。坩堝を約130mm(5.1インチ)下方へ移動させた後、結晶化プロセスを完了させた。次いで、炉を約36時間のうちに室温に冷却した。約40mm(1.6インチ)の直径及び約〜90mm(3.5インチ)の軸長を有する<110>配向した単結晶が得られた。
【0032】
実施例4
[0032]PMN−PIN−PT結晶成長:PMN−PIN−PT(36モル%PIN/32モル%PT及び49モル%PIN/32モル%PT)結晶の典型的なブリッジマン成長を以下のように実施した。コロンバイト前駆体であるMgNb、及び鉄マンガン重石前駆体であるInNbOを、1モル%の追加のMgO及びInを各々の前駆体にそれぞれ添加したほかは、実施例3において記載したのと同じ方法で予め合成した。2モル%の追加のPbOを含んだほかは、三元系コンパウンドPMN−36モル%PIN−32モル%PTの化学量論比に従い、PbO(68.003重量%)、MgNb(9.753重量%)、InNbO(14.609重量%)、及びTiO(7.635重量%)を量り取り、粉砕し、そして焼成した。2モル%の追加のPbOを含んだほかは、三元系コンパウンドPMN−49モル%PIN−32モル%PTの化学量論比に従い、PbO(67.121重量%)、MgNb(5.716重量%)、InNbO(19.627重量%)、及びTiO(7.536重量%)を量り取り、粉砕し、そして焼成した。これらの2つの三元系のコンパウンドの粉末の計量プロセスは、実施例3において記載したプロセスと同じである。合成したコンパウンドを、次いで、2つの先細りの白金(Pt)坩堝に充填した。両方のPt坩堝は直径が15mmで100mm長であり、直径10mmで75mm長のシードウェルを備えていた。単結晶シードはシードウェルには配置しなかった。
【0033】
[0033]図1に示すような垂直ブリッジマン炉を、結晶成長のために用いた。充填されたPt坩堝を、両方とも炉に配置した。上部加熱領域及び下部加熱領域の最大温度は、別個に約1385℃及び約1200℃であった。Pt坩堝に沿った垂直温度勾配は、約10〜15℃/cmであった。充填物を溶融した後、約12時間浸し、次いで、坩堝を0.2mm/時間の速度で低下させて、結晶成長プロセスを開始させた。坩堝を約150mm下方へ移動させた後、結晶化プロセスを完了させた。次いで、炉を約16時間のうちに室温に冷却した。各々の開始したばかりのところを除いて、15mmの直径及び〜100mmの長さを有する2つの単結晶ブールが成長した。各々のブールの単結晶でない部分を、切削により取り除いた。
【0034】
実施例5
[0034]PMN−PZ−PT結晶テスト:実施例1及び2において成長させたPMN−3モル%−PZ−31モル%PT及びPMN−5モル%PZ−33モル%PTの単結晶の圧電特性及び誘電特性を測定した。まず、単結晶ブールを、リアルタイムラウエX線写真システムによって方向付けた。次いで、幅対厚みの比が5:1を超える薄いプレートサンプルを、{001}族におけるプレートの全ての面でブールから切り取った。研磨したあと、Au電極を対になる大きな面にスパッタした。そのサンプルを、(Sawyer−Tower分極及びLVDT歪み測定システムを用いた)パルスポーリング法によって、<001>に沿って10kV/cmで分極し、同時に、サンプルの残留分極(P)、保磁力(E)、及び圧電係数(d33)を10kV/cmの電場及び1Hzの周波数で測定した。誘電率及び温度に対する損失は、温度チャンバーに接続され、パーソナルコンピュータによって制御されたHP4174A LCRメーターによって、20℃(68゜F)〜200℃(392゜F)の温度範囲内で測定した。キュリー温度(T)及び菱面体晶から六方晶への相転移温度(Trt)を、次いで、誘電率の最大ピークによって決定した。比較の目的で、同一の切り出し方位を有する2つの二元系PMN−PT結晶サンプルを選択し、同様にテストした。二元系PMN−PT結晶に関して、モルフォトロピック相境界(MPB)に近い組成を有する菱面体晶相は、理想的な誘電特性及び圧電特性を有すると考えられている。28〜32モル%のPTモル濃度を有する組成は、非常に高い歪レベル及び電気機械結合係数を示すので、通常は最も望ましいと考えられている。かかる結晶のTrtは、通常は約80〜95℃(176〜203゜F)の範囲であり、PT濃度が増加すると減少する。この実験においては、28モル%及び32モル%の周辺のPT濃度を有するPMN−PT単結晶を比較のために選択した。測定した誘電特性及び圧電特性を、表1に示す。約3〜5モル%のPZ濃度を有するPMN−PZ−PT結晶は、Trtを約110℃(230゜F)に上昇させることができ、これは純粋な二元系PMN−PT結晶より約15℃高い一方、圧電性定数d33は、純粋な二元系PMN−PT結晶と同様に保持されている。図3は、三元系のPMN−5%PZ−33%PT及び二元系のPMN−28%PT結晶の間の、誘電率対温度カーブの比較である。このPMN−PTサンプルは、比較的低いPT濃度及び約95℃(203゜F)の高いTrt温度を有し、これは商業的なPMN−PT結晶に関して最も高い値である。Zr置換はT及びTrtの両方を増加させる一方、誘電率の変動を減少させることが示されている。図3の三元系のPMN−PZ−PTサンプルは、25℃〜55℃(77゜F〜131゜F)の温度範囲に対して33%の誘電率の変動を示しており、これはPMN−PT結晶サンプル(52%)より有意に小さい。
【0035】
実施例6
[0035]PMN−PIN−PT結晶テスト:実施例3及び4において成長させたPMN−29モル%PIN−31モル%PT及びPMN−36モル%PIN−32モル%PTの単結晶の圧電特性及び誘電特性を測定した。まず、単結晶ブールをチェックし、リアルタイムラウエX線写真システムによって方向付けた。次いで、幅対厚みの比が5:1を超える薄いプレートサンプルを、{001}族におけるプレートの全ての面でブールから切り取った。研磨したあと、Au電極を対になる大きな面にスパッタした。このサンプルを、(Sawyer−Tower分極及びLVDT歪み測定システムを用いた)パルスポーリング法によって、<001>に沿って10kV/cmで分極し、同時に、サンプルの残留分極(P)、保磁力(E)、及び圧電係数(d33)を10kV/cmの電場及び1Hzの周波数で測定した。誘電率及び温度に対する損失は、温度チャンバー、及び温度コントローラーとして機能するパーソナルコンピュータに接続されたHP4174A LCRメーターによって、0℃〜180℃(32〜356゜F)又は37.5℃〜300℃(100〜572゜F)の温度範囲内で測定した。T及びTrtを、次いで、誘電率の最大ピークによって決定した。比較の目的で、実施例5の同一の2つの二元系PMN−PT結晶サンプルを選択した。測定した誘電特性及び圧電特性を、表1に示す。29モル%周辺のPIN濃度を有する三元系のPMN−PIN−PT結晶は、Trtの約120℃(248゜F)への上昇を示し、これは純粋な二元系PMN−PT結晶より約25℃(45゜F)高い一方、この結晶はわずかに低い圧電性定数を有する。36モル%周辺のPIN濃度を有する三元系のPMN−PIN−PT結晶は、Trtを約130℃(266゜F)に上昇させることができ、これは純粋なPMN−PT結晶よりも約35℃(63゜F)高い一方、結晶はわずかに低い誘電率を有する。測定したEcは約4〜6kV/cmであり、純粋な二元系のPMN−PT結晶に対して約150%の改善を示している。約29及び約36%のPIN濃度を有する三元系のPMN−PIN−PT結晶は、純粋な二元系PMN−PT結晶と同様の圧電性定数d33を有する。図2に示すように、三元系のPMN−PIN−PTサンプルが、Trt温度に到達するまでより非常に平坦な誘電率対温度カーブを示すことも見出された。約25℃〜55℃(77〜131゜F)の温度範囲において、三元系のPMN−PIN−PTサンプルはたった28%の変動しか有さない一方で、全ての様々な二元系PMN−PT組成物の間でほぼ最高のTrtである約95℃(203゜F)を有する二元系のPMN−28%PTサンプルは、同じ温度範囲において52%の変動を示した。
【0036】
[0036]本発明は、PMN−PIN−PT及びPMN−PZ−PTの部類における三元系の単結晶リラクサ強誘電体をどのように成長させるかを教示している。これらの三元系の単結晶は、さらにより高いキュリー温度を示し、これにより、増加する電力を原因とする追加熱の除去が関心事となっている過酷な使用に耐えるソナー変換器用途などの、熱構築に関心のある用途において用いることが出来る。加えて、本発明の三元系の単結晶は、二元系のPMN−PT単結晶よりも、温度の上昇に伴う誘電率の変動が少ない(より平坦な誘電率を示す)。この特性は、本発明の三元系の単結晶が幅広い温度範囲に対してより良い電力伝達システムを提供することを強く示唆している。過酷な使用に耐える変換器用途などの一定の使用においては、このことは、変換器のインピーダンスに正の影響を及ぼすとともに、変換器の電気回路へのより良いマッチングを示すであろう。本発明の三元系の単結晶はまた、二元系の単結晶と比較して、改善された保磁力を有する。これは、高駆動双極子用途において、脱分極を防ぐために、変換器の結晶に少ない電気バイアスを印加するか、又は印加する必要のないことを意味する。更に、本発明の方法は高出力用途のための適切なサイズの単結晶(三元系)の成長を可能にするので、これらの高出力用途で生ずると予想される広い温度範囲に対して高い性能が達成される。
【0037】
[0037]好ましい実施態様を参照して本発明を記載してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、数々の変更をなし、均等物をこれらの構成要素の代わりとしても良いことが当業者には理解されよう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多くの修正を行って特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させても良い。それ故に、本発明は、この発明を実行するために考慮されたベストモードとして開示された特定の実施態様に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施態様を含むものであると意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三元系の単結晶リラクサ圧電性物質であって、モルパーセントで
29%〜約80%のPb(In1/2Nb1/2)O
約10〜50%のPbTiO;及び
残分の(PbMg1/3Nb2/3)O;を含み、
ここで該単結晶は溶融物から成長し、[111]、[110]、及び[001]からなる群から選択される方向に結晶方位を有し;そして
ここで該単結晶は、少なくとも約160℃のキュリー温度T、少なくとも約120℃の菱面体晶から六方晶への相転移温度Trt、及び少なくとも約1200pC/Nの範囲における圧電係数d33、ならびに2.5〜7.5kv/cmの範囲における保磁力Eによって特徴付けられる、前記圧電性物質。
【請求項2】
三元系の単結晶リラクサ圧電性物質であって、モルパーセントで
約1〜20%のPbZrO
約10〜50%のPbTiO;及び
残分の(PbMg1/3Nb2/3)O;を含み、
ここで該単結晶は溶融物から成長し、[111]、[110]、及び[001]からなる群から選択される方向に結晶方位を有し;そして
ここで該単結晶は、少なくとも約150℃のキュリー温度T、少なくとも約110℃の菱面体晶から六方晶への相転移温度Trt、及び少なくとも約1200pC/Nの圧電係数d33、ならびに約3.0〜5.0kv/cmの範囲における保磁力Eによって特徴付けられる、前記圧電性物質。
【請求項3】
リラクサ三元系単結晶圧電性材料を作製するための方法であって、
Nb及びMgOの高温焼成によってコロンバイト前駆体を提供する工程;
該コロンバイト前駆体をPbOとともに低温で焼成することにより純粋なペロブスカイト相を形成する工程;
Nb及びInを高温焼成することによって鉄マンガン重石前駆体を提供する工程;
該鉄マンガン重石前駆体をPbOとともに低温で焼成することにより純粋なペロブスカイト相を形成する工程;
完全な反応を保証するために、各々の該前駆体を粉砕し、ふるいにかけ、そして再焼成する工程;
焼成の間に、蒸発損を補償し、該ペロブスカイト相を安定化させるために、モルパーセントで、約5%までのPbO、Pb、PbCO、Pb(CO(OH)、約5%までのMgO、及び約5%までのInを任意に坩堝に充填する工程;
該純粋なペロブスカイト相をPbTiOとともに粉砕し、ふるいにかけ、そして混合して固溶体混合物を形成する工程;
該固溶体を、純粋なペロブスカイト相を含む粒子に形成し、焼結させる工程;
粒子を非反応性坩堝(3)に充填する工程;
結晶成長の間に該ペロブスカイト相を安定化させるために、モルパーセントで、約2%までのB、及び約2%までのPbFを任意に該坩堝(3)に充填する工程
モルパーセントで、約5%までのMn、約5%までのYb、及び約5%までのScを任意に該坩堝(3)に充填する工程、ここで成長させた結晶の誘電特性及び圧電特性が高められる;
該充填された坩堝(3)を、第1の高温領域及び第2の低温領域を有する炉(10)内で加熱する工程、ここで該第1領域と該第2領域との間に温度勾配が形成され、ここで該第1領域は該充填物の融点を超える温度で維持され、そして該第2領域は該充填物の融点より低い温度で維持される;
該坩堝(3)を該第1領域内部に入れることにより該充填物を溶融する工程;
該充填物を該第1領域に対して予め選択した速度で該第2領域へと移動させて、該溶融物から結晶成長を開始させる工程;
該溶融した充填物と該成長する結晶との間の固/液界面での温度勾配を制御して、予め選択したサイズの三元系単結晶を形成する工程;
を含む、前記方法。
【請求項4】
高温焼成によってコロンバイト前駆体を提供する該工程は、1050〜1250℃の範囲における温度で焼成することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
高温焼成によって鉄マンガン重石前駆体を提供する該工程は、約1050〜1250℃の範囲における温度で焼成することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
該コロンバイト前駆体をPbOとともに低温で焼成することによって純粋なペロブスカイト相を形成する該工程は、約700〜950℃の温度範囲において焼成することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
該鉄マンガン重石前駆体をPbOとともに低温で焼成することによって純粋なペロブスカイト相を形成する該工程は、約700〜950℃の温度範囲において焼成することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
リラクサ三元系単結晶圧電性材料を作製するための方法であって、
Nb及びMgOの高温焼成によってコロンバイト前駆体を提供する工程;
該コロンバイト前駆体をPbOとともに低温で焼成することにより純粋なペロブスカイト相を形成する工程;
完全な反応を保証するために、該前駆体を粉砕し、ふるいにかけ、そして再焼成する工程;
焼成の間に、蒸発損を補償し、該ペロブスカイト相を安定化させるために、モルパーセントで、約5%までのPbO、Pb、PbCO、Pb(CO(OH)、約5%までのMgO、及び約5%までのInを任意に坩堝に充填する工程;
該純粋なペロブスカイトをPbTiO及びPbZrOとともに粉砕し、ふるいにかけ、そして混合して固溶体混合物を形成する工程;
該固溶体を、純粋なペロブスカイト相を含む粒子に形成し、焼結させる工程;
粒子を非反応性坩堝(3)に充填する工程;
結晶成長の間に該ペロブスカイト相を安定化させるために、モルパーセントで、約2%までのB、及び約2%までのPbFを任意に該坩堝(3)に充填する工程;
モルパーセントで、約5%までのMn、約5%までのYb、及び約5%までのScを任意に該坩堝(3)に充填する工程、ここで成長させた結晶の誘電特性及び圧電特性が高められる;
該充填された坩堝(3)を、第1の高温領域及び第2の低温領域を有する炉(10)内で加熱する工程、ここで該第1領域と該第2領域との間に温度勾配が形成され、ここで該第1領域は該充填物の融点を超える温度で維持され、そして該第2領域は該充填物の融点より低い温度で維持される;
該坩堝(3)を該第1領域内部に入れることにより該充填物を溶融する工程;
該充填物を該第1領域に対して予め選択した速度で該第2領域へと移動させて、該溶融物から結晶成長を開始させる工程;
該溶融した充填物と該成長する結晶との間の固/液界面での温度勾配を制御して、予め選択したサイズの三元系単結晶を形成する工程;
を含む、前記方法。
【請求項9】
三元系の単結晶リラクサ圧電性物質であって、モルパーセントで
29%〜約80%のPb(In1/2Nb1/2)O
約1〜50%のPbTiO;及び
残分の(PbMg1/3Nb2/3)O;を含み、
ここで該単結晶は溶融物から成長し、[111]、[110]、及び[001]からなる群から選択される方向に結晶方位を有し;そして
ここで該単結晶は、少なくとも160℃のキュリー温度T、約110〜120℃の菱面体晶から六方晶への相転移温度Trt、及び約1200〜2000pC/Nの範囲における圧電係数d33、ならびに2.5〜5.0kv/cmの保磁力Eによって特徴付けられる、前記圧電性物質。
【請求項10】
三元系の単結晶リラクサ圧電性物質であって、モルパーセントで
約1〜20%のPbZrO
約1〜50%のPbTiO;及び
残分の(PbMg1/3Nb2/3)O;を含み、
ここで該単結晶は溶融した溶液から成長し、[111]、[110]、及び[001]からなる群から選択される方向に結晶方位を有し;そして
ここで該単結晶は、少なくとも約150℃のキュリー温度T、少なくとも約110℃の菱面体晶から六方晶への相転移温度Trt、及び少なくとも約1200pC/Nの圧電係数d33、ならびに少なくとも約3.0kv/cmの保磁力Eによって特徴付けられる、前記圧電性物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−510898(P2011−510898A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545178(P2010−545178)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/032513
【国際公開番号】WO2009/134484
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510181862)ティーアールエス・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】