説明

三方弁および該三方弁を用いた車両用空調装置

【課題】電磁力などを用いることなく、弁筐内の流路を自動的に切り換えることが可能な三方弁を提供すること。
【解決手段】弁筐内の軸方向の一端部には第1の均圧室を、他端部には第2の均圧室を形成し、第1の均圧室の内部には、入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に弁体を付勢する付勢手段を配置し、第2の均圧室には、入口ポートから流入する流体の一部を導入する均圧導入路を連結することで、入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも低い場合は、入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるとともに、入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも高い場合は、入口ポートから流入する流体が第2の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三方弁および該三方弁を用いた車両用空調装置に関し、詳しくは、流体の圧力に応じて弁筐内の流路が自動的に切り換えられるように構成された三方弁、および該三方弁を用いた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン搭載自動車などの車両用空調装置では、冷房システムに蒸気圧縮式の冷凍サイクルが用いられ、暖房システムにはエンジン排熱が利用されていた。ところが近年、エンジン排熱が利用できない電気自動車などの開発・普及に伴い、一般の空調装置と同様に、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを用いて車両内の冷暖房を行う車両用空調装置が開発され、普及してきている。
【0003】
ヒートポンプ式のエアコンを用いて冷暖房を行う場合、一般の空調装置では、四方弁によって冷媒の流れを切り換えることで、冷房運転と暖房運転との切り換えが行なわれる。
しかしながら、自動車などの車両用空調装置の場合は、空調装置の大型化を避けるために、四方弁を用いる代わりに、膨張弁をバイパスさせるように電磁弁を配置し、この電磁弁の開閉によって冷房運転と暖房運転とを切り換えることが行なわれている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
図10は、特許文献1,2に開示されているような、膨張弁をバイパスさせるように電磁弁を配置した車両用空調装置100´を示したシステム構成図である。なお、図中の矢印Hは暖房運転時の冷媒の流れを、図中の矢印Cは冷房運転時の冷媒の流れを、それぞれ示している。
【0005】
この車両用空調装置100´は、図10に示したように、冷媒を吸入して圧縮する冷媒圧縮機110と、この冷媒圧縮機110の下流側に接続された暖房用熱交換器120と、この暖房用熱交換器120の下流側に接続された室外熱交換器140と、この室外熱交換器140の下流側に接続された冷房用熱交換器130とが、環状に接続されて構成されている。
【0006】
また、暖房用熱交換器120と室外熱交換器140との間には、第1の膨張弁150aが配置されているとともに、この第1の膨張弁150aを迂回するように形成されたバイパス流路162には、第1の電磁弁160aが配置されている。
【0007】
また、室外熱交換器140の下流には、流路が2つに分岐する分岐点Aが形成されている。そして、この分岐点Aの下流の一方側の流路164には、第2の電磁弁160bが配置されており、この第2の電磁弁160bの下流で冷媒圧縮機110へと接続している。さらに、分岐点Aの下流の他方側の流路166には、第3の電磁弁160cと第2の膨張弁150bとが配置されており、この第2の膨張弁150bの下流で冷房用熱交換器130へと接続している。そして、この他方側の流路166は、冷房用熱交換器130の下流の合流点Bにて流路166と接続している。
【0008】
冷媒圧縮機110から吐出された高圧冷媒は、先ず暖房用熱交換器120に流入する。この際、暖房運転時には、不図示のファンによって送風されて暖房用熱交換器120を通過する室内の空気と熱交換することで、流入した冷媒が放熱するとともに、通過する空気が加熱されるようになっている。そして、図10に示したように、開放されたドア122(符号122H)から、加熱された空気が室内に流入するようになっている。一方、冷房運転時には、ドア122は閉止(符号122C)されるとともに、上述した不図示のファンは停止され、冷媒と室内の空気とが熱交換しないようになっている。
【0009】
暖房用熱交換器120を通過した高圧冷媒は、次に室外熱交換器140に流入する。この際、暖房運転時には第1の電磁弁160aが閉止されており、高圧冷媒は第1の膨張弁150aを通過する。そして、第1の膨張弁150aを通過した高圧冷媒は、ここで減圧膨張され、低圧冷媒となって、室外熱交換器140へと流入する。そして、流入した低圧冷媒と室外の空気とが熱交換されることで、流入した低圧冷媒が吸熱して加熱される。
【0010】
一方、冷房運転時には第1の電磁弁160aは開放されており、この第1の電磁弁160aを通過した高圧冷媒は、減圧膨張されることなく室外熱交換器140へと流入する。そして、流入した高圧冷媒と室外の空気とが熱交換されることで、流入した高圧冷媒が放熱して冷却される。
【0011】
室外熱交換器140を通過した冷媒は、次に流路168を介して分岐点Aへと流入する。分岐点Aには、上述したように、暖房運転時には低圧冷媒が流入し、冷房運転時には高圧冷媒が流入する。この際、暖房運転時には、第2の電磁弁160bが開放されるとともに、第3の電磁弁160cが閉止されるようになっているため、分岐点Aに流入した低圧冷媒は、一方側の流路164を流れて冷媒圧縮機110へと流入する。一方、冷房運転時には、第2の電磁弁160bが閉止されるとともに、第3の電磁弁160cが開放されるようになっているため、分岐点Aに流入した高圧冷媒は、他方側の流路166を流れて第2の膨張弁150bを通過し、ここで減圧膨張されて低圧冷媒となって、冷房用熱交換器130へと流入する。そして、流入した低圧冷媒と室内の空気とが熱交換されることで、流入した低圧冷媒が吸熱するとともに、室内の空気が冷却される。そして、冷房用熱交換器130を通過した低圧冷媒は、合流点Bにおいて一方側の流路164へと流入し、冷媒圧縮機110へと流入する。
【0012】
このように、四方弁を用いる代わりに、第1の膨張弁150aをバイパスさせるように電磁弁160aが配置された車両用空調装置100´にあっては、上述した分岐点Aの様に、暖房運転時には流入する低圧冷媒を一方側の流路164へと流すとともに、冷房運転時には流入する高圧冷媒を他方側の流路166へと流すように構成される分岐点が存在する。図10に示した車両用空調装置100´では、上述したように、この分岐点Aにおける冷媒流路の切り換えを、第2の電磁弁160bと第3の電磁弁160cの2つの電磁弁を相互に開閉することによって行なっている。
【0013】
しかしながら、分岐点Aにおける冷媒流路の切り換えを2つの電磁弁によって行なうことは、システムが複雑になるばかりか、空調装置の小型化の妨げにもなるものである。このような背景のもと、上述した分岐点Aにおける冷媒流路の切り換えに好適に用いることのできる三方弁が、特許文献3に開示されている。
【0014】
この特許文献3の三方弁は、電磁力によって弁体を移動させることで、流入する冷媒が低圧冷媒の場合には、入口ポートから流入した低圧冷媒を第1の出口ポートから流出させるとともに、流入する冷媒が高圧冷媒の場合には、入口ポートから流入した高圧冷媒を第2の出口ポートから流出させるように構成されている。したがって、この特許文献3の三方弁を上述した分岐点Aに配置し、第1の出口ポートを一方側の流路164と接続し、第2の出口ポートを他方側の流路166と接続することで、上述した分岐点Aにおける冷媒流路の切り換えを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2000−16072号公報
【特許文献2】特開2004−142646号公報
【特許文献3】特開2006−97761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、この特許文献3の三方弁は、電磁力によって弁筐内の流路を切り換えるものであるが、電気自動車などにおいては出来るだけ消費電力を抑えることが要求されている。したがって、電磁力によらないで弁筐内の流路を自動的に切り換えられる三方弁の開発が望まれていた。
【0017】
また、この特許文献3の三方弁では、磁気的駆動手段である電磁部などを設ける必要があるため、コストが嵩むとともに、小型化を図るのが困難であった。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、電磁力などを用いることなく、弁筐内の流路を自動的に切り換えることが可能な三方弁、および該三方弁を用いた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上述した目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の三方弁は、
流体の流入口である入口ポート、並びに流体の流出口である第1の出口ポートおよび第2の出口ポートが形成された弁筐と、前記弁筐内においてその軸方向に移動可能に収容された弁体と、を備え、
前記弁体が弁筐内を軸方向に移動することで、前記入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートまたは第2の出口ポートのいずれか一方から流出するように、前記弁筐内の流路が自動的に切り換えられるように構成された三方弁であって、
前記弁筐内の軸方向の一端部には第1の均圧室が画成されるとともに、該第1の均圧室の内部には、前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に前記弁体を付勢する付勢手段が形成され、
前記弁筐内の軸方向の他端部には第2の均圧室が画成されるとともに、該第2の均圧室には前記入口ポートから流入する流体の一部を導入する均圧導入路が連通しており、該第2の均圧室は、この均圧導入路から導入される流体の圧力によって、前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を開放する方向に前記弁体を押圧するように構成されており、
前記入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも低い場合は、前記弁体が前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に移動し、これにより前記入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるとともに、
前記入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも高い場合は、前記弁体が前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を開放する方向に移動し、これにより前記入口ポートから流入する流体が第2の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
このように、第1の均圧室の内部に収容された付勢手段の付勢力と、入口ポートから流入する流体の圧力と連動した第2の均圧室の押圧力によって、弁体を軸方向に移動させるように構成しているため、電磁力などを用いることなく、入口ポートから流入する流体の圧力に応じて弁筐内の流路を自動的に切り換えることができる。
【0020】
また、電磁部などの磁気的駆動手段が不要であるため、三方弁の小型化を図ることができる。
また、上記発明において、
前記第1の均圧室および第2の均圧室が、前記弁筐内において感圧部材によって画成されていることが望ましい。
【0021】
このように、第1の均圧室および第2の均圧室が、弁筐内において感圧部材によって画成されていれば、弁筐内の流路を流れる流体が、第1の均圧室や第2の均圧室内に浸入してしまうことを確実に防止することができ、本発明の三方弁の作動精度を向上させることができる。
【0022】
また、上記発明において、
前記付勢手段が、少なくとも前記第1の均圧室内に配置された付勢部材によって構成されていることが望ましい。
【0023】
このように、付勢部材によって付勢手段を構成すれば、第1の均圧室の内部に付勢手段を容易に形成することができる。
また、本発明の三方弁は、
流体の流入口である入口ポート、並びに流体の流出口である第1の出口ポートおよび第2の出口ポートが形成された弁筐と、前記弁筐内においてその軸方向に移動可能に収容された弁体と、を備え、
前記弁体が弁筐内を軸方向に移動することで、前記入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートまたは第2の出口ポートのいずれか一方から流出するように、前記弁筐内の流路が自動的に切り換えられるように構成された三方弁であって、
前記弁筐内の軸方向の一端部には均圧室が画成され、該均圧室の内部には、前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に前記弁体を付勢する付勢部材が配置されるとともに、該均圧室には前記入口ポートから流入する流体の一部を均圧室に導入する均圧導入路が連通しており、該均圧室は、この均圧導入路から導入される流体の圧力によって、前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を開放する方向に前記弁体を押圧するように構成され、
前記弁筐内の流路を流れる流体の圧力によって弁体に作用する軸方向の力が、その軸方向の両方向に作用するように構成されており、
前記入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも低い場合は、前記弁体が前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に移動し、これにより前記入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるとともに、
前記入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも高い場合は、前記弁体が前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を開放する方向に移動し、これにより前記入口ポートから流入する流体が第2の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0024】
このように、均圧室の内部に収容された付勢部材の付勢力と、入口ポートから流入する流体の圧力と連動した均圧室の押圧力によって、弁体を軸方向に移動させるように構成しているため、電磁力などを用いることなく、入口ポートから流入する流体の圧力に応じて弁筐内の流路を自動的に切り換えることができる。
【0025】
また、弁筐内に画成される均圧室が一つであるため、弁筐の小型化を図ることが容易となる。
また、本発明の車両用空調装置は、上述した本発明の三方弁が用いられていることを特徴とする。
【0026】
このような本発明の三方弁が用いられた車両用空調装置では、冷媒流路の切り換えを容易に行うことができる。
また、本発明の車両用空調装置は、
冷媒圧縮機から吐出された高圧冷媒が膨張弁によって減圧され、低圧冷媒となって再び冷媒圧縮機へと流入するとの冷凍サイクルを利用した車両用空調装置であって、
上述した本発明の三方弁が用いられているとともに、
前記三方弁の第1の均圧室には、前記膨張弁によって減圧された低圧冷媒を導入する低圧導入路が連通されていることを特徴とする。
【0027】
このような低圧導入路が第1の均圧室に連通されていれば、三方弁に所定の圧力よりも低い低圧冷媒が流入している状態において、流入する低圧冷媒の圧力変動などによって、弁体が移動するのを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電磁力などを用いることなく、入口ポートから流入する流体の圧力に応じて弁筐内の流路が自動的に切り換えられるように構成された三方弁、および該三方弁を用いた車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態の三方弁を説明するための模式図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態の三方弁を説明するための模式図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施形態の三方弁を説明するための模式図である。
【図4】図4は、本発明の第4の実施形態の三方弁を説明するための模式図である。
【図4A】図4Aは、弁体が図4の(a)に示した状態から、図4の(b)に示した状態まで移動する過程を説明するための模式図である。
【図5】図5は、本発明の第5の実施形態の三方弁を説明するための模式図である。
【図6】図6は、本発明の第6の実施形態の三方弁を説明するための模式図である。
【図7】図7は、本発明の三方弁の最適な実施例を示した断面図である。
【図8】図8は、本発明の三方弁の最適な実施例を示した断面図である。
【図9】図9は、本発明の三方弁を用いた車両用空調装置のシステム構成図である。
【図10】図10は、特許文献1,2に開示されているような、膨張弁をバイパスさせるように電磁弁を配置した車両用空調装置のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいてより詳細に説明する。
なお、以下の説明において、単に「上側」、「上面」、「下側」、「下面」と言う場合は、図の「上側」、「上面」、「下側」、「下面」を指すものとする。
【0031】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の三方弁を説明するための模式図である。
本実施形態の三方弁1は、図1に示したように、弁筐10と、この弁筐10の内部に収容された弁体20とを備えている。
【0032】
弁筐10は中空の円筒形状をなしており、図1に示したように、この弁筐10には、流体の流入口である入口ポート12と、流体の流出口である第1の出口ポート14aおよび第2の出口ポート14bとが形成されている。本実施形態におけるこれらの位置関係は、軸方向の一端側に第1の出口ポート14aが形成され、軸方向の他端側に第2の出口ポート14bが形成されており、入口ポート12は、この第1の出口ポート14aと第2の出口ポート14bとの間に形成されている。
【0033】
また、弁筐10の軸方向の一端部には、第1の均圧室16aが画成されるとともに、弁筐10の軸方向の他端部には、第2の均圧室16bが画成されている。この第1の均圧室16aと第2の均圧室16bは、それぞれ感圧部材であるダイアフラム36aおよびダイアフラム36bによって画成され、弁筐10の他の部分と仕切られている。
【0034】
なお、後述するように、本実施形態の三方弁1においてこれらダイアフラム36a、ダイアフラム36bは必須の構成部材ではない。しかしながら、第1の均圧室16aおよび第2の均圧室16bが、弁筐10の内部においてダイアフラム36a、36bによって画成されていれば、弁筐10の内部を流れる流体が、第1の均圧室16aや第2の均圧室16bの内部に浸入してしまうことを確実に防止することができ、本発明の三方弁1の作動精度を向上させることができるため、好ましい。
【0035】
弁体20は、上述した弁筐10の内部において、その軸方向に移動可能に収容されている。そして、弁体20は、図1に示したように、第1の出口ポート14aまたは第2の出口ポート14bを閉止する弁本体22と、この弁本体22と棒状部材26aで連結された第1のフランジ部24aと、弁本体22と棒状部材26bで連結された第2のフランジ部24bと、から構成されている。そして、第1のフランジ部24aは、その上面において上述したダイアフラム36aと接合されており、同様に、第2のフランジ部24bは、その下面において上述したダイアフラム36bと接合されている。
【0036】
また、図1に示したように、上述した第1の均圧室16aの内部には、弁体20を軸方向の他端側に付勢する付勢手段として、バネ部材30が配置されている。このバネ部材30は、一端が弁筐10の上面に固定されるとともに、他端が第1のフランジ部24aに接合されており、図1中の矢印F1に示したように、弁体20を弁筐10の軸方向の他端側に(すなわち、第2の出口ポート14bを閉止する方向に)付勢した状態で配置されている。
【0037】
また、図1に示したように、上述した第2の均圧室16bには、均圧導入路32が連通している。この均圧導入路32は、弁筐10の入口ポート12の上流側と連絡しており、入口ポート12から弁筐10に流入する流体の一部を第2の均圧室16bの内部に導入できるようになっている。すなわち、この均圧導入路32が第2の均圧室16bに連通していることによって、第2の均圧室16bの内部の圧力が、入口ポート12から弁筐10の内部に流入する流体の圧力と等しくなるように構成されている。
【0038】
したがって、上述した弁体20の第2のフランジ部24bには、ダイアフラム36bを介して、第2の均圧室16bの内部の圧力による押圧力F2が作用する。すなわち、第2の均圧室16bは、均圧導入路32から導入される流体の圧力によって、弁体20を弁筐10の軸方向の一端側に(すなわち、第2の出口ポート14bを開放する方向に)押圧するように構成されている。
【0039】
また弁筐10の内部、図1において第1の出口ポート14aの上側には、弁体20の軸方向の移動を制御するストッパ部17が形成されている。このストッパ部17は、弁体20が軸方向に移動する際に、弁本体22が適当な位置で停止するような場所に形成されているものである。
【0040】
このように構成されている本発明の三方弁の作用について、図1の(a)および(b)に基づいて詳細に説明する。
ここで、図1の(a)は、所定の圧力よりも低い低圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図、図1の(b)は、所定の圧力よりも高い高圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図である。なお、図1の(a)および(b)における矢印F1〜F4は、弁体20に作用する軸方向の力を示しており、矢印の向きは力の作用方向を、矢印の大きさは、作用する力の相対的な大きさを示している。
【0041】
図1の(a)に示した状態において、弁体20には、バネ部材30の付勢力F1、第2の均圧室16bの押圧力F2、および第1のフランジ部24aと弁本体22との間を通過する低圧流体の圧力による流体押圧力F3とF4とが、それぞれ軸方向に作用している。同様に、図1の(b)に示した状態においても、弁体20には、バネ部材30の付勢力F1、第2の均圧室16bの押圧力F2、および第2のフランジ部24bと弁本体22との間を通過する高圧流体の圧力による流体押圧力F3とF4とが、それぞれ軸方向に作用している。
【0042】
ここで、流体押圧力F3は弁体20を一端側に、流体押圧力F4は弁体20を他端側に、それぞれ移動される方向に作用しているが、上述したように、弁筐10は円筒形状に形成されており、第1のフランジ部24aの下面と、弁本体22の上面とは、弁筐10の内部の流路を流れる流体の圧力に対して、同じ受圧面積となっている。また同様に、図1の(b)に示したように、第2のフランジ部24bの上面と、弁本体22の下面とは、弁筐10の内部の流路を流れる流体の圧力に対して、同じ受圧面積となっている。
【0043】
すなわち、図1の(a)および(b)に示した状態において、弁体20に作用する軸方向の4つの力の内、流体押圧力F3とF4とは相互に打ち消し合うため、弁体20には、バネ部材30の付勢力F1と、第2の均圧室16bの押圧力F2の2つの力が作用していると考えることができる。
【0044】
また、上述したように、均圧導入路32によって、第2の均圧室16bの内部の圧力は、入口ポート12から弁筐10の内部に流入する流体の圧力と等しくなるように構成されている。したがって、第2の均圧室の押圧力F2は、入口ポート12から弁筐10の内部に流入する流体の圧力と連動しており、流体が高圧の場合は第2の均圧室の押圧力F2も大きくなり、流体が低圧の場合は第2の均圧室の押圧力F2も小さくなるようになっている。
【0045】
したがって、図1の(a)に示したように、入口ポート12から流入する流体の圧力が所定の圧力よりも低い低圧流体である場合は、第2の均圧室16bの押圧力がバネ部材30の付勢力よりも小さくなり、弁体20が弁筐10の内部を軸方向の他端側に移動する。そして、第1のフランジ部24aがストッパ部17に当接する位置で弁体20が停止し、弁本体22によって第2の出口ポート14bが閉止され、これにより入口ポート12から流入する流体が第1の出口ポート14aから流出するような流路が弁筐10の内部に形成されるようになっている。
【0046】
また、図1の(b)に示したように、入口ポート12から流入する流体の圧力が所定の圧力よりも高い高圧流体である場合は、第2の均圧室16bの押圧力がバネ部材30の付勢力よりも大きくなり、弁体20が弁筐10の内部を軸方向の一端側に移動する。そして、弁本体22がストッパ部17に当接する位置で弁体20が停止し、弁本体22によって第1の出口ポート14aが閉止され、これにより入口ポート12から流入する流体が第2の出口ポート14bから流出するような流路が弁筐10の内部に形成されるようになっている。
【0047】
以上のとおり、本発明の三方弁1にあっては、入口ポート12から流入する流体の圧力に応じて弁筐10の内部の流路を自動的に切り換えることができるように構成されている。したがって、従来の三方弁のように、弁体を駆動させるのに電磁力を用いておらず、電磁部などの磁気的駆動手段が不要であるため、三方弁1の小型化を図ることができるようになっている。
【0048】
なお、本実施形態の三方弁1では、流体押圧力F3とF4とが相互に打ち消し合うように構成されているが、本発明の三方弁1はこれに限定されない。例えば、弁本体22の受圧面積と、第1のフランジ部24aの下側の受圧面積および第2のフランジ部24bの上側の受圧面積とが異なる受圧面積に形成されていてもよい。この場合であっても、第2の均圧室16bの押圧力F2が、流体押圧力F3およびF4の差分の絶対値よりもバネ部材30の付勢力F1より小さければ、図1の(a)に示した如く弁体20が軸方向の他端側に移動して、入口ポート12から流入した流体が第1の出口ポート14aから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。また反対に、第2の均圧室16bの押圧力F2が、流体押圧力F3およびF4の差分の絶対値よりもバネ部材30の付勢力F1より大きければ、図1の(b)に示した如く弁体20が軸方向の一端側に移動して、入口ポート12から流入した流体が第2の出口ポート14bから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。
【0049】
また、本実施形態の三方弁1では、上述したように、第1の均圧室16aおよび第2の均圧室16bが、弁筐10の内部において感圧部材であるダイアフラム36a、36bによって画成されている。しかしながら、本発明の三方弁1はこれに限定されず、例えば、弁体20の第1のフランジ部24aや第2のフランジ部24bによって、第1の均圧室16aおよび第2の均圧室16bが画成されていてもよいものである。
【0050】
<第2の実施形態>
図2は、本発明の第2の実施形態の三方弁を説明するための模式図であり、図2の(a)は、所定の圧力よりも低い低圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図、図2の(b)は、所定の圧力よりも高い高圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図である。
【0051】
この図2に示した第2の実施形態の三方弁1は、上述した第1の実施形態の三方弁1と、基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
この第2の実施形態の三方弁1では、第1の均圧室16aの内部にバネ部材30が配置されておらず、その代わりに、第1の均圧室16aに流体を導入する圧力導入路38が連通されている点が、上述した第1の実施形態とは異なっている。
【0053】
そして、この第2の実施形態の三方弁1では、第1の均圧室16aに導入された流体の流体圧が、ダイアフラム36aを介して弁体20の第1のフランジ部24aに作用し、弁体20を軸方向の他端側に付勢力F1´で付勢するように構成されている。すなわち、この第2の実施形態の三方弁1では、第1の均圧室16aに連通している圧力導入路38が、弁体20を軸方向の他端側に付勢する付勢手段を構成している。
【0054】
なお、本発明の三方弁1において、この圧力導入路38によって導入される流体の圧力は特に限定されるものではない。しかしながら、本実施形態のように、第1のフランジ部24aの上面の受圧面積と、第2のフランジ部24bの下面の受圧面積とが等しく形成されている三方弁1の場合は、圧力導入路38によって導入される流体の圧力は、図2の(a)に示した状態において、入口ポート12から弁筐10の内部に流入する低圧流体よりも高圧であるとともに、図2の(b)に示した状態において、入口ポート12から弁筐10の内部に流入する高圧流体よりも低圧である必要がある。
【0055】
このような圧力導入路38が第1の均圧室16aに連通されていれば、第2の均圧室16bの押圧力F2が、上述した付勢手段の付勢力F1´よりも小さい場合は、図2の(a)に示した如く弁体20が軸方向の他端側に移動して、入口ポート12から流入した流体が第1の出口ポート14aから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。また、第2の均圧室16bの押圧力F2が、流体圧力F1´よりも大きい場合は、図2の(b)に示した如く弁体20が軸方向の一端側に移動して、入口ポート12から流入した流体が第2の出口ポート14bから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。
【0056】
このように、本発明の三方弁1にあっては、第1の均圧室16aの内部に形成される付勢手段は、バネ部材30などの付勢部材には限定されず、この第2の実施形態のように、第1の均圧室16aに低圧の流体を導入する圧力導入路38であってもよいものである。
【0057】
<第3の実施形態>
図3は、本発明の第3の実施形態の三方弁を説明するための模式図であり、図3の(a)は、所定の圧力よりも低い低圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図、図3の(b)は、所定の圧力よりも高い高圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図である。
【0058】
この図3に示した第3の実施形態の三方弁1は、上述した第1の実施形態の三方弁1と、基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
この第3の実施形態の三方弁1は、上述した第1の実施形態の三方弁1とは異なり、図3に示したように、弁体20が、第1の弁本体22aと、この第1の弁本体22aと棒状部材26で連結された第2の弁本体22bと、から構成されている。そして、第1の弁本体22aは、その上面において、第1の均圧室16aを画成するダイアフラム36aと接合されており、同様に、第2の弁本体22bは、その下面において、第2の均圧室16bを画成するダイアフラム36bと接合されている。
【0060】
また、この第3の実施形態の三方弁1では、第1の出口ポート14aおよび第2の出口ポート14bの位置関係が、上述した第1の実施形態とは逆になっている。すなわち、図3に示したように、この第3の実施形態の三方弁1では、軸方向の一端側に第2の出口ポート14bが形成されており、軸方向の他端側に第2の出口ポート14aが形成されている。
【0061】
このような三方弁1であっても、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも小さい場合は、図3の(a)に示した如く弁体20が軸方向の他端側に移動し、第1の弁本体22aが第2の出口ポート14bを閉止して、入口ポート12から流入した流体が第1の出口ポート14aから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。また、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも大きい場合は、図3の(b)に示した如く弁体20が軸方向の一端側に移動し、第2の弁本体22bが第1の出口ポート14aを閉止して、入口ポート12から流入した流体が第2の出口ポート14bから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。
このように、本発明の三方弁1では、弁体20が2つの弁本体22a、22bを備えるように構成することも可能である。
【0062】
<第4の実施形態>
図4は、本発明の第4の実施形態の三方弁を説明するための模式図であり、図4の(a)は、所定の圧力よりも低い低圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図、図4の(b)は、所定の圧力よりも高い高圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図である。
【0063】
この図4に示した第4の実施形態の三方弁1は、上述した第1の実施形態の三方弁1と、基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0064】
この第4の実施形態の三方弁1は、上述した第1の実施形態の三方弁1とは異なり、図4に示したように、弁体20が、第1の出口ポート14aまたは第2の出口ポート14bを閉止する弁本体22と、この弁本体22と棒状部材26aで連結された第1のフランジ部24aと、から構成されている。また、弁本体22の下面はダイアフラム36bとは接合されておらず、図4の(a)に示した状態において、離接可能な状態で当接している。
【0065】
このような三方弁1であっても、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも小さい場合は、図4の(a)に示した如く弁体20が軸方向の他端側に移動し、弁本体22が第2の出口ポート14bを閉止して、入口ポート12から流入した流体が第1の出口ポート14aから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。また、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも大きい場合は、図4の(b)に示した如く弁体20が軸方向の一端側に移動し、弁本体22が第1の出口ポート14aを閉止して、入口ポート12から流入した流体が第2の出口ポート14bから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。
【0066】
ここで、弁体20が、図4の(a)に示した状態から、図4の(b)に示した状態まで移動する過程を、図4Aに基づいて詳細に説明する。
入口ポート12から弁筐10に流入する流体が低圧の流体から高圧の流体に切り換わると、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも大きくなり、図4Aの(c)に示したように、ダイアフラム36bが膨張して、弁体20を軸方向の一端側に移動させる。そして、弁体20が図4Aの(d)に示した状態まで移動すると、弁本体22とダイアフラム36bとの間に、入口ポート12から流入する高圧の流体が流入する。そして、この流入した流体の圧力による流体押圧力F3によって、弁本体22をさらに軸方向に一端側に移動させることで、図4の(b)に示した状態となるのである。
【0067】
このように、本発明の三方弁1にあっては、上述したように、第1の出口ポート14aまたは第2の出口ポート14bを閉止する弁本体22と、この弁本体22と棒状部材26aで連結された第1のフランジ部24aと、から弁体20を構成することも可能である。
【0068】
なお、この第4の実施形態の三方弁1にあっては、上述した第1の実施形態の三方弁1のように、第2の均圧室16bを画成するダイアフラム36bを省略することはできない。ダイアフラム36bを省略すると、図4の(b)に示した状態において、入口ポート12から弁筐10に流入した流体が、均圧導入路32を介して循環してしまうからである。
【0069】
<第5の実施形態>
図5は、本発明の第5の実施形態の三方弁を説明するための模式図であり、図5の(a)は、所定の圧力よりも低い低圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図、図5の(b)は、所定の圧力よりも高い高圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図である。
【0070】
この図5に示した第5の実施形態の三方弁1は、上述した第1の実施形態の三方弁1と、基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0071】
この第5の実施形態の三方弁1は、上述した第1の実施形態の三方弁1とは異なり、図5に示したように、弁体20が、第1の出口ポート14aまたは第2の出口ポート14bを閉止する弁本体22だけから構成されている。また、弁本体22の上面にはダイアフラム36aが接合されている。また、弁本体22の上面にはバネ部材30が当接しており、これにより、弁体20は軸方向の他端側に付勢されている。さらに、弁本体22の下面はダイアフラム36bとは接合されておらず、図5の(a)に示した状態において、離接可能な状態で当接している。
【0072】
このような三方弁1であっても、図5の(a)に示した状態において、弁本体22と接合されているダイアフラム36aを介して、流体押圧力F3とF4とは相互に打ち消し合うように作用する。このため、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも小さい場合は、図5の(a)に示したように弁体20が軸方向の他端側に移動し、弁本体22が第2の出口ポート14bを閉止して、入口ポート12から流入した流体が第1の出口ポート14aから流出するような流路が弁筐10の内部に形成されるようになっている。また、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも大きい場合は、図5の(b)に示したように弁体20が軸方向の一端側に移動し、弁本体22が第1の出口ポート14aを閉止して、入口ポート12から流入した流体が第2の出口ポート14bから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。
【0073】
なお、弁体20が図5の(a)に示した状態から、図5の(b)に示した状態まで移動する過程については、上述した第4の実施形態と同様である。
このように、本発明の三方弁1にあっては、上述したように、弁体20が、第1の出口ポート14aまたは第2の出口ポート14bを閉止する弁本体22だけから構成されていてもよいものである。
【0074】
なお、この第5の実施形態の三方弁1にあっては、上述した第1の実施形態の三方弁1のように、第1の均圧室16aを画成するダイアフラム36a、および第2の均圧室16bを画成するダイアフラム36bを省略することはできない。なぜなら、ダイアフラム36aを省略すると、図5の(a)に示した状態において、弁体20には、バネ部材30の付勢力F1と、第2の均圧室16bの押圧力F2と、流体押圧力F4とが作用した状態となるが、押圧力F2と流体押圧力F4とは打ち消し合うように作用するため、弁体20はバネ部材30によって軸方向の他端側に付勢された状態となる。そして、この状態で入口ポート12から弁筐10に流入する流体を低圧の流体から高圧の流体に切り換えても、第2の均圧室16bの押圧力F2が大きくなるにつれて流体押圧力F4も大きくなるため、押圧力F2と流体押圧力F4とは打ち消し合い、弁体20はバネ部材30の付勢力F1によって軸方向の他端側に付勢された状態のままとなり、移動しないからである。
【0075】
また、ダイアフラム36bを省略すると、上述した第4の実施形態と同様に、図5の(b)に示した状態において、入口ポート12から弁筐10に流入した流体が、均圧導入路32を介して循環してしまうからである。
【0076】
要するに、上述した第1〜5の実施形態の三方弁1のように、弁筐10の一端部および他端部のそれぞれに均圧室が形成されている三方弁1にあっては、弁体20は、弁筐10の内部を軸方向に移動することで、入口ポート12から流入する流体が第1の出口ポート14aまたは第2の出口ポート14bのいずれか一方から流出するように、弁筐10の内部の流路を切り換えられるように構成されていればよく、弁体20の形状は特に限定されないものである。
【0077】
<第6の実施形態>
図6は、本発明の第6の実施形態の三方弁を説明するための模式図であり、図6の(a)は、所定の圧力よりも低い低圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図、図6の(b)は、所定の圧力よりも高い高圧流体が入口ポート12から弁筐10に流入している状態を示した断面図である。
【0078】
この図6に示した第6の実施形態の三方弁1は、上述した第1の実施形態の三方弁1と、基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0079】
この第6の実施形態の三方弁1は、上述した第1〜5の実施形態の三方弁1とは異なり、図6に示したように、弁筐10の軸方向の一端部だけに均圧室16が形成されている。そして、均圧室16の内部に配置されているバネ部材30´は、上述した実施形態のバネ部材30とは異なり、弁体20を軸方向の一端側に(すなわち、第2の出口ポート14bを閉止する方向に)付勢する状態で配置されている。
【0080】
また、図6に示したように、上述した均圧室16には、均圧導入路32が連通しており、入口ポート12から弁筐10に流入する流体の一部が均圧室16の内部に導入されるようになっている。
【0081】
また、この第6の実施形態の三方弁1では、上述した第3の実施形態と同様、第1の出口ポート14aおよび第2の出口ポート14bの位置関係が逆になっている。すなわち、図6に示したように、この第6の実施形態の三方弁1では、軸方向の一端側に第2の出口ポート14bが形成されており、軸方向の他端側に第2の出口ポート14aが形成されている。
【0082】
このような三方弁1であっても、流体押圧力F3とF4とは相互に打ち消し合うように作用する。このため、均圧室16の押圧力F2が、バネ部材30´の付勢力F1よりも小さい場合は、図6の(a)に示した如く弁体20が軸方向の一端側に移動し、弁本体22が第2の出口ポート14bを閉止して、入口ポート12から流入した流体が第1の出口ポート14aから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。また、均圧室16の押圧力F2が、バネ部材30´の付勢力F1よりも大きい場合は、図6の(b)に示した如く弁体20が軸方向の他一端側に移動し、弁本体22が第1の出口ポート14aを閉止して、入口ポート12から流入した流体が第2の出口ポート14bから流出するような流路が弁筐10の内部に形成される。
【0083】
このように、本発明の三方弁1にあっては、均圧室16を弁筐10の軸方向の一端部だけに画成し、この均圧室16に弁体20を軸方向の一端側に付勢する付勢部材(バネ部材30´)を配置するとともに、この均圧室16に均圧導入路32を連通させることで構成することも可能である。
【0084】
なお、この第6の実施形態の三方弁1にあっては、上述した第4の実施形態および第5の実施形態のような形状の弁体20を採用することはできない。なぜなら、例えば、この第6の実施形態の三方弁1において、第4の実施形態のような弁体20を採用したとすると、図6の(a)に示した状態において、弁体20には、バネ部材30´の付勢力F1と、均圧室16の押圧力F2と、流体押圧力F3とが作用した状態となるが、押圧力F2と流体押圧力F3とは打ち消し合うように作用するため、弁体20はバネ部材30´によって軸方向の一端側に付勢された状態となる。そして、この状態で入口ポート12から弁筐10に流入する流体を低圧の流体から高圧の流体に切り換えても、均圧室16の押圧力F2が大きくなるにつれて流体押圧力F3も大きくなるため、押圧力F2と流体押圧力F3とは打ち消し合い、弁体20はバネ部材30´の付勢力F1によって、軸方向の一端側に付勢された状態のままとなり、移動しないからである。
【0085】
すなわち、この第6の実施形態の三方弁1のように軸方向の一端部にだけ均圧室が画成されている三方弁1にあっては、弁筐10の内部の流路を流れる流体の圧力によって弁体20に作用する軸方向の力が、その軸方向の一端向きと他端向きとの両方向に同時に作用するように構成されていなければならない。
【0086】
<車両用空調装置100>
上述した第1〜6の実施形態では、本発明の三方弁1を模式的な断面図を基に説明した。次に、本発明の三方弁1を用いた車両用空調装置100について、図7〜図9を基に説明する。
【0087】
図7および図8は、本発明の三方弁の最適な実施例を示した断面図であり、図7は、所定の圧力よりも低い低圧流体が入口ポートから弁筐に流入している状態を示した断面図、図8は、所定の圧力よりも高い高圧流体が入口ポートから弁筐に流入している状態を示した断面図である。
【0088】
図7および図8に示した三方弁1は、上述した第1の実施形態で示した三方弁1と、基本的に同様の構成となっている。よって、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0089】
ただし、この図7および図8に示した三方弁1では、弁筐10の軸方向の略中央部に弁室10Aが形成されており、この弁室10Aの内部に弁本体22が位置するように、弁体20が弁筐10の内部に収容されている。そして、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも小さい場合は、図7に示したように、弁体20が軸方向の他端側に移動し、弁本体22と弁室10Aの軸方向の他端側に形成された第2の弁座面11bとが当接し、第2の出口ポート14bへの流路を閉止することで、入口ポート12から流入した流体が第1の出口ポート14aから流出するようになっている。また、第2の均圧室16bの押圧力F2が、バネ部材30の付勢力F1よりも大きい場合は、図8に示したように、弁体20が軸方向の一端側に移動し、弁本体22と弁室10Aの一端側に形成された第1の弁座面11aとが当接し、第1の出口ポート14aへの流路を閉止することで、入口ポート12から流入した流体が第2の出口ポート14bから流出するようになっている。
【0090】
このように構成されている図7および図8に示した三方弁1では、弁本体22が、弁室10Aの軸方向に形成されている第1の弁座面11aまたは第2の弁座面11bと当接することで、第1の出口ポート14aまたは第2の出口ポート14bへの流路を閉止するように構成されているため、軸方向の力が作用している弁本体22によって、第1の出口ポート14aまたは第2の出口ポート14bへの流路が確実に閉止されるようになっている。よって、この図7および図8に示した三方弁1では、閉止されている側の流路に流体が漏出し難くなっており、流体として、最高圧力で約3Mpaとの高圧を示す冷媒を使用する空調装置などにおいても、好適に使用することができる。
【0091】
また、この図7および図8に示した三方弁1では、第1の均圧室16aに低圧導入路34が連通しており、第1の均圧室16aの内部に低圧の流体が導入されるようになっている。なお、この低圧導入路34の作用効果については、後述する。
【0092】
このような図7および図8に示した三方弁1は、特に、本発明の車両用空調装置100に好適に使用することができる。
図9は、本発明の三方弁を用いた車両用空調装置のシステム構成図である。
【0093】
この図9に示した車両用空調装置100において、図10に示した従来の車両用空調装置100´と同一の構成部材には同一の符号を付すこととし、その詳細な説明を省略する。
【0094】
この図9に示した車両用空調装置100では、図10に示した従来の車両用空調装置100´に対して、分岐点Aにおける冷媒流路の切り換えを2つの電磁弁160b、160cによって行なうのではなく、上述した三方弁1で行なっている点が異なっている。
【0095】
すなわち、この図9に示した車両用空調装置100では、入口ポート12を室外熱交換器140側の流路168と接続するとともに、第1の出口ポート14aが分岐点Aの下流の一方側の流路164に、第2の出口ポート14bが他方側の流路166に、それぞれ接続されるように三方弁1が配置されている。
【0096】
このような車両用空調装置100であれば、暖房運転時において分岐点Aに流入した低圧冷媒は、三方弁1の弁筐10の内部において自動的に流路が切り換えられて、第1の出口ポート14aから一方側の流路164へと流出する。また、冷房運転時において分岐点Aに流入する高圧冷媒は、三方弁1の弁筐10の内部において自動的に流路が切り換えられて、第2の出口ポート14bから他方側の流路166へと流出する。
【0097】
また、上述した低圧導入路34は、図9に示したように、流路164の合流点Bと冷媒圧縮機110との間に接続されている。この流路164の合流点Bの下流には、暖房運転時、冷房運転時ともに、常に減圧膨張された低圧の冷媒が流れているため、低圧導入路34から第1の均圧室16aの導入される冷媒は、常に低圧冷媒となる。
【0098】
また、図7に示した状態においては、第1の出口ポート14aから流出した低圧冷媒が、低圧導入路34を介して第1の均圧室16aに導入されることとなる。このため、図7および図8に示した三方弁1のように、第1のフランジ部24aの上面の受圧面積と、第2のフランジ部24bの下面の受圧面積とが等しく形成されていれば、第2の均圧室16bの押圧力F2と、上述した低圧導入路34を介して第1の均圧室16aに導入された低圧冷媒による流体押圧力F5とは常に打ち消し合うように作用するため、弁体20には、バネ部材30の付勢力F1だけが軸方向の他端側に作用している状態となる。
【0099】
したがって、入口ポート12から流入する低圧冷媒の圧力が変動したとしても、弁体20には常に一定のバネ部材30の付勢力F1が作用するため、流入する低圧冷媒の圧力の変動によって弁体20が移動したりすることがなく、図7に示した状態において、第2の出口ポート14bへの流路が確実に閉止されるようになっている。
【0100】
なお、図8に示した状態においては、上述した流体押圧力F5は、第1の出口ポート14aへの流路を開放する方向に作用する。しかしながら、自動車用空調装置100における低圧冷媒と高圧冷媒との圧力差は大きく、図8に示した状態にあっては、流体押圧力F5と比べて第2の均圧室16bの押圧力F2は遥かに大きいため、特に問題とはならない。
【0101】
以上のとおり、本発明の車両用空調装置100では、従来の車両用空調装置100´のように、分岐点Aにおける冷媒流路の切り換えを2つの電磁弁160b、160cによって行なう必要がなく、システムを簡素に構成できるとともに、空調装置の小型化を図ることが可能となる。
【0102】
また、電磁力ではなく流入する冷媒の圧力によって分岐点Aにおける冷媒の流路を切り換えるため、例えば電気自動車など、出来るだけ消費電力を抑えることが要求されている車両用空調装置において好適に使用できる。
【0103】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 三方弁
10 弁筐
10A 弁室
11a 第1の弁座面
11b 第2の弁座面
12 入口ポート
14a 第1の出口ポート
14b 第2の出口ポート
16 均圧室
16a 第1の均圧室
16b 第2の均圧室
17 ストッパ部
20 弁体
22 弁本体
22a 第1の弁本体
22b 第2の弁本体
24a 第1のフランジ部
24b 第2のフランジ部
26 棒状部材
26a 第1の棒状部材
26b 第2の棒状部材
30 バネ部材
32 均圧導入路
34 低圧導入路
36a 第1のダイアフラム
36b 第2のダイアフラム
38 圧力導入路
100 車両用空調装置
110 冷媒圧縮機
120 暖房用熱交換器
122 ドア
130 冷房用熱交換器
140 室外熱交換器
150a 第1の膨張弁
150b 第2の膨張弁
160a 第1の電磁弁
160b 第2の電磁弁
160c 第3の電磁弁
162 バイパス流路
164 一方側の流路
166 他方側の流路
168 流路
A 分岐点
B 合流点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口である入口ポート、並びに流体の流出口である第1の出口ポートおよび第2の出口ポートが形成された弁筐と、前記弁筐内においてその軸方向に移動可能に収容された弁体と、を備え、
前記弁体が弁筐内を軸方向に移動することで、前記入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートまたは第2の出口ポートのいずれか一方から流出するように、前記弁筐内の流路が自動的に切り換えられるように構成された三方弁であって、
前記弁筐内の軸方向の一端部には第1の均圧室が画成されるとともに、該第1の均圧室の内部には、前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に前記弁体を付勢する付勢手段が形成され、
前記弁筐内の軸方向の他端部には第2の均圧室が画成されるとともに、該第2の均圧室には前記入口ポートから流入する流体の一部を導入する均圧導入路が連通しており、該第2の均圧室は、この均圧導入路から導入される流体の圧力によって、前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を開放する方向に前記弁体を押圧するように構成されており、
前記入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも低い場合は、前記弁体が前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に移動し、これにより前記入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるとともに、
前記入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも高い場合は、前記弁体が前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を開放する方向に移動し、これにより前記入口ポートから流入する流体が第2の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるように構成されていることを特徴とする三方弁。
【請求項2】
前記第1の均圧室および第2の均圧室が、前記弁筐内において感圧部材によって画成されていることを特徴とする請求項1に記載の三方弁。
【請求項3】
前記付勢手段が、少なくとも前記第1の均圧室内に配置された付勢部材によって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の三方弁。
【請求項4】
流体の流入口である入口ポート、並びに流体の流出口である第1の出口ポートおよび第2の出口ポートが形成された弁筐と、前記弁筐内においてその軸方向に移動可能に収容された弁体と、を備え、
前記弁体が弁筐内を軸方向に移動することで、前記入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートまたは第2の出口ポートのいずれか一方から流出するように、前記弁筐内の流路が自動的に切り換えられるように構成された三方弁であって、
前記弁筐内の軸方向の一端部には均圧室が画成され、該均圧室の内部には、前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に前記弁体を付勢する付勢部材が配置されるとともに、該均圧室には前記入口ポートから流入する流体の一部を均圧室に導入する均圧導入路が連通しており、該均圧室は、この均圧導入路から導入される流体の圧力によって、前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を開放する方向に前記弁体を押圧するように構成され、
前記弁筐内の流路を流れる流体の圧力によって弁体に作用する軸方向の力が、その軸方向の両方向に同時に作用するように構成されており、
前記入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも低い場合は、前記弁体が前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を閉止する方向に移動し、これにより前記入口ポートから流入する流体が第1の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるとともに、
前記入口ポートから流入する流体の圧力が所定の圧力よりも高い場合は、前記弁体が前記入口ポートから第2の出口ポートへの流路を開放する方向に移動し、これにより前記入口ポートから流入する流体が第2の出口ポートから流出するような流路が弁筐内に形成されるように構成されていることを特徴とする三方弁。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の三方弁が用いられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
冷媒圧縮機から吐出された高圧冷媒が膨張弁によって減圧され、低圧冷媒となって再び冷媒圧縮機へと流入するとの冷凍サイクルを利用した車両用空調装置であって、
前記三方弁の第1の均圧室には、前記膨張弁によって減圧された低圧冷媒を導入する低圧導入路が連通されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
請求項4に記載の三方弁が用いられていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−86723(P2012−86723A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236371(P2010−236371)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】