説明

下痢型および交替型過敏性腸症候群の処置のためのカッパ−オピエートアゴニスト

本発明は、過敏性腸症候群(IBS)の1または2以上のサブタイプの処置に有用な、または下痢の処置に有用な方法に関する。本発明は、末梢選択的カッパ−オピエートアゴニスト、特にN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬学的に許容し得る塩の、下痢型IBS(IBS−D)または便秘と下痢が交互に生じるIBS(IBS−A)を有する対象、または下痢を有する対象を処置するための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は2007年3月30日に出願された米国仮出願シリアルナンバー第60/920,841号に対する優先権を主張し、その内容の全体を本明細書に援用する。
【0002】
技術分野
本発明は、過敏性腸症候群(IBS)、特にその1または2以上のサブタイプの処置に有用な方法に関し、下痢の処置に有用である。より具体的には、本発明は、末梢選択的カッパ−オピエートアゴニスト、特にN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドまたはその薬理学的に許容し得る塩の、下痢の処置のための、またはIBS、特に下痢型IBS(IBS−D)および便秘と下痢が交互に生じるIBS(IBS−A)、およびこれに関連する痛みおよび/または不快感の処置のための医薬の製造のための使用に関する。
【0003】
発明の背景
IBSは、一般人口のおよそ10〜15%以上が罹患している。それは、胃腸科医によって診断される最も一般的な疾患であり、プライマリケア医が最も多く遭遇する疾患の1つである。IBSはまた、痙攣性結腸、粘液性大腸炎、痙攣性大腸炎、神経質な胃(nervous stomach)または過敏性結腸とも呼ばれる。
【0004】
過敏性腸症候群は、腹痛または不快感が、腸パターンの変化、例えば、ゆるいか、より頻繁な排便、下痢および/または便秘などを伴う一群の症状によって特徴づけられる。
【0005】
過敏性腸症候群は、多面的な疾患として理解される。IBSを有する者において、症状は、腸の運動性(運動機能)または感覚機能の調節を変化させる、消化管または腸、脳および自律神経系との間の相互作用の混乱と思しきものに起因する。
【0006】
IBSの病態生理学は完全には理解されていないが、内臓過敏症が重要な役割を果たしていると考えられる(Holtmann et al. (1997) Am. J. Gastroenterol., 92, 954-959、Trimble et al., (1995) Dig. Dis. Sci., 40, 1607-1613)。例えば、患者と対照被検者が、バルーンによって誘発されたS状結腸の漸進的な拡張に対するその痛覚閾値について評価されている。同じ拡張量で、患者は対照被検者と比較してより高い痛みスコアを報告した。この知見は、多くの研究において再現された。内臓過敏症、痛覚過敏およびアロディニアには2つの側面がある。痛覚過敏は、通常の内臓感覚がより低い管腔内体積で経験される状況を指す。アロディニアは、痛みまたは不快感が、普通は通常の内部感覚を生じる体積で経験される状況を指す(例えば、Mayer & Gebhart, Basic and Clinical Aspects of Chronic Abdominal Pain, Vol. 9, 1 ed. Amsterdam: Elsevier, 1993:3-28参照)。動物モデルでは、アシマドリンが、胃および結腸の拡張に対する知覚反応を低減することが示されたが(Burton & Gebhart (1998) J. Pharmacol. Exp. Ther., 285, 707-715)、アシマドリンがIBSの1または2以上のサブタイプに選択的に有益であると思わせる根拠はない。
【0007】
IBSのための処置オプションは、一般に、症状の重篤度およびIBSサブタイプに応じて各々の患者にカスタマイズされる複数のアプローチを含む。軽度のIBS症状と診断された患者は、ストレスを管理し、食事およびライフスタイルの変更について助言を受け得る。中程度のIBSと診断された患者は、同様の助言を受けるとともに、ファイバーサプリメントを推奨される。症状に応じて、中程度のIBS患者はまた、止痢薬、緩下薬または抗コリン作用薬の使用を勧められることもある。典型的な止痢剤は、ロペラミド、アタパルジャイトおよびジフェノキシレートを含む。典型的な緩下薬は、ビサコジル、センナ、ポリエチレン3350、および膨張性線維緩下薬、例えばオオバコ、カルシウムポリカルボフィル、メチルセルロースおよびフルクタンを含む。IBSの処置に用いられる抗コリン作用薬の一例はジシクロミンである。
【0008】
重度のIBSと診断された患者はまた、抗うつ薬、例えば三環系抗うつ薬および選択的セロトニン再取り込み阻害薬などによる処置を受けることもある。重度のIBSはまた、アロセトロンまたはテガセロドにより処置されることもある。
【0009】
アロセトロンは、重度のIBS−Dの管理のために女性のみに利用される5−HTアンタゴニストである。これは胃腸管の腸神経系の5−HTレセプターに作用し、結腸をリラックスさせて、下部腸管全体の排泄物の動きを遅くすると考えられている。特に本薬は、承認のちょうど9ヵ月後に、少なくとも4件の死亡および197人における重度の副作用と関連があったとされ、市場から撤収された。2002年6月に、食品医薬品局(FDA)はアロセトロンを制限付きで再び販売を許可することを決定した。同薬は、特別なプログラムに登録された医師によってのみ処方され得、他の処置に反応しなかった女性におけるIBS−Dの重症例を対象とする。同薬は、男性による使用については承認されてない。
【0010】
テガセロドは、女性における便秘型IBS(IBS−C)の管理に用いる5−HTアゴニストである。これは、運動刺激剤である。治療効果は、胃腸管における腸神経系の5−HTレセプターの活性化によって達成される。テガセロドは胃腸の運動性および蠕動反射を刺激し、おそらくまた、腹痛を低減する。同薬は、虚血性大腸炎のエピソードと関連付けられた。テガセロドは、男性への使用については承認されなかった。2007年に、テガセロドは、テガセロドを服用している患者における心臓発作、卒中および不安定狭心症のリスクが高いために市場から撤収された。
【0011】
交替型腸習慣パターンを有するIBS患者は、ユニークな臨床的課題を提起するものであり、研究されたIBS医薬の多くは下痢または便秘のいずれかに作用し、したがって、IBS−A患者には適切でない可能性がある。IBS−Aの管理のために利用できる医薬処置は現在存在しない。
【0012】
このように、現在、男性および女性患者における1または2以上のIBSサブタイプを処置する安全で有効な治療薬に対する、満たされない市場の需要がある。
【0013】
ここで、驚くべきことに、選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドまたはその薬理学的に許容し得る塩が、下痢またはIBSの1もしくは2以上のサブタイプに対して用いることができ、IBS−DおよびIBS−Aの処置に特に有用であることが見出された。
【0014】
本明細書に引用される全ての出版物、特許および特許出願は、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、IBSの1または2以上のサブタイプの処置に有用な新規な方法を提供する。一態様において、サブタイプはIBS−Dである。別な態様において、サブタイプはIBS−Aである。他の態様において、サブタイプは非サブタイプ(Unsubtyped)IBS(IBS−U)である。さらに別の態様において、本方法はIBS−DおよびIBS−Aの処置に特に有用であり、より低い程度でIBS−Uの処置に有用である。
【0016】
さらなる側面において、本方法は下痢、例えばウイルス性感染症、寄生虫、細菌毒素、医薬、人工甘味料、手術および他の消化器疾患に起因する下痢などを処置するのに有用である。
【0017】
本方法は、ヒトの処置に有用であり、特に、女性および男性の両方の処置に有用である。
【0018】
1つの側面において、本発明は、選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、および/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量をIBS−D、IBS−AまたはIBS−Uを有する対象に投与することを含む、IBS−D、IBS−AまたはIBS−Uを処置するための方法を提供する。
【0019】
別の側面において、本発明は、IBS−D、IBS−AまたはIBS−Uの少なくとも1つの症状を処置する方法であって、該対象に選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、および/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法を包含する。症状は、異常な排便回数、異常な便形状、異常な便通、粘液の排泄、切迫感、腹部膨張感、痛み、不快感およびその組合せからなる群から選択される。該投与は、疾患に起因する痛みおよび/または不快感を改善すると考えられる。別の側面において、該投与は、腸の運動性を正常化する。
【0020】
1つの側面において、医薬組成物は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、その医薬誘導体および/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む。一態様において、組成物はN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩またはアシマドリンを含む。
【0021】
したがって、一態様において、本発明は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、および/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量をIBS−D、IBS−AまたはIBS−Uを有する対象に投与することを含む、IBS−D、IBS−AまたはIBS−Uを処置するための方法を提供する。
【0022】
別な態様において、本発明は、IBS−D、IBS−AまたはIBS−Uの少なくとも1つの症状を処置する方法であって、該対象にN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、および/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与すること含む方法を包含する。症状は、異常な排便回数、異常な便形状、異常な便通、粘液の排泄、切迫感、腹部膨張感、痛み、不快感およびその組合せからなる群から選択される。該投与は、疾患に起因する痛みおよび/または不快感を改善すると考えられる。別の側面において、該投与は、腸の運動性を正常化する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、下痢を有する対象を処置する方法であって、該対象に選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、および/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与すること含む方法を包含する。一態様において、組成物はN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩またはアシマドリンを含む。
【0024】
選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、および/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量と、該化合物を下痢またはIBSのサブタイプを有する対象に投与するための指示手段とを含むキットもまた、本発明に包含される。例えば、サブタイプはIBS−A、IBS−DまたはIBS−Uであり得る。1つの側面において、医薬組成物は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、IBS−A、IBS−CおよびIBS−Dサブタイプに関する、視覚アナログ尺度(VAS)によるベースラインからの痛みの変化(A)および適切な軽減を伴う日の割合(B)を表したグラフである。本図は、アシマドリンによる頓服処置を受けているIBS−A患者における痛みの軽減を支持するものである。
【0026】
【図2】図2は、IBS−A、IBS−CおよびIBS−Dサブタイプに対するアシマドリンによる頓服処置の、週表示の時間に対する1日あたりの排便の変化を表したグラフである。プラシーボ処置群における変化を差し引く補正を加えてある。この図は、アシマドリンが腸機能の正常化をもたらすという仮説を支持するものである。
【0027】
【図3】図3は、初期痛みスコア≧2.0のIBS対象におけるIBSと関連する痛みまたは不快感の適切な軽減を伴う月の割合を表したグラフである。Aは全てのIBS対象からの結果を示し、BはIBS−Dを有する対象からの結果を示す。これらのグラフは、0.5mgおよび1.0mgのアシマドリンで処置した対象における統計学的に有意な改善を示すものである。
【0028】
【図4】図4は、初期痛みスコア≧2.0のIBS−D対象における適切な軽減を伴う月の割合に対する0.5mgのアシマドリンによる処置(b.i.d.)の効果と、LOTRONEXTM(アロセトロン)の2つの第III相試験からの結果との比較を表したグラフである。Lotronex Iは、Camilleri, et al., Lancet 2000, 355(9209):1035-1040に報告されたデータを指し、Lotronex IIは、Camilleri, et al., Arch. Intern. Med. 2001, 161(14):1733-1740に報告されたデータを指す。この図は、0.5mgのアシマドリンにより1日2回処置した初期痛みスコア≧2.0のIBS−D患者が、LOTRONEXTM(アロセトロン)で処置した同様の患者と比較して、同等またはより良好なIBS症状の改善を報告したことを証明するものである。アシマドリンの試験では、特に、アロセトロンの試験より厳しい反応の定義を用いた。アシマドリンの試験では4週のうち3週での反応を要件としたが、アロセトロンの試験では、4週のうち2週での反応を要件としたに過ぎない。
【0029】
【図5】図5は、初期痛みスコア≧2.0のIBS−D対象におけるアシマドリン処置の12週間の経時的効果を表したグラフである。データは、試験の任意の所定の週においてIBSによる痛みまたは不快感の適切な軽減を報告したレスポンダーのパーセンテージを反映する。Aは、プラシーボと比較した0.5mgのアシマドリン処置の統計学的に有意な効果が、第2週(週2)以降、試験の12週間の大部分を通じて観察されたことを示す。Bは、0.5mgのアシマドリンによる処置が、12週間の試験を通じて、IBS−D対象において、Camilleri, et al. Arch. Intern. Med. 2001, 161(14):1733-1740に報告されているLOTRONEXTM(アロセトロン)による類似の対象の処置よりも迅速かつより顕著なIBSによる痛みまたは不快感の改善をもたらしたことを示す。
【0030】
【図6A】図6Aは、痛みスコア≧2.0の全IBS−D対象におけるIBSによる痛みまたは不快感の適切な軽減を伴う月の割合と、女性IBS−D対象におけるものとの比較を表したグラフである。グラフは、0.5mgのアシマドリンによる処置が、女性および男性IBS−D対象において極めて類似した結果をもたらしたことを示す。
【図6B】図6Bは、痛みスコア≧2.0の全IBS−D対象における痛みのない日の割合を表したグラフである。グラフは、臨床的に意味のある利益が第2週(週2)という早い時期にみられ、有意性が第3週(週3)に達成され、処置の継続中持続したことを示す。
【図6C】図6Cは、臨床試験の第1〜第12週の間の、痛みスコア≧2.0の全IBS−D対象における痛みのない日のパーセンテージを表したグラフである。全体として、0.5mgのアシマドリンを与えられたIBS−D患者は、プラシーボを投与されている患者と比較して、3ヵ月の試験期間において痛みのない日が21日多かった。
【0031】
【図7】図7は、初期痛みスコア≧2.0のIBS−AおよびIBS−C対象におけるIBSと関連した痛みまたは不快感の適切な軽減を伴う月の割合を表したグラフである。Aは、IBS−A対象からの結果を示し、BはIBS−C対象からの結果を示す。これらの図は、1.0mgのアシマドリンで処置したIBS−A対象では統計学的に有意な効果があり、IBS−C対象では有意な改善がみられなかったことを示す。
【0032】
【図8A−8B】図8Aは、ベースライン痛みスコア≧2.0のIBS−D対象における痛みスコアの変化を表したグラフである。本図は、0.5mgのアシマドリンを投与されているIBS−D対象において、統計学的に有意な痛みの改善が毎月みられたことを示す。また、本図は、1.0mgのアシマドリンを投与されているIBS−D対象において、統計学的に有意な痛みの改善が毎月みられたことを示す。図8Bは、ベースライン痛みスコア≧2.0のIBS−D対象における痛みスコアの変化を表したグラフである。本図は、0.5mgのアシマドリンを投与されているIBS−D対象において、統計学的に有意な痛みの改善が毎週(第3週(週3)以降)および毎月みられたことを示す。また、本図は、1.0mgのアシマドリンを投与されているIBS−D対象において、統計学的に有意な痛みの改善が毎月みられたことを示す。
【図8C】図8Cは、ベースライン痛みスコア≧2.0のIBS−A対象における痛みスコアの変化を表したグラフである。本図は、0.5mgおよび1.0mgの投薬量において、統計学的に有意な痛みスコアの改善がIBS−A対象では観察されなかったことを示す。
【0033】
【図9】図9は、IBSと関連した痛みまたは不快感の適切な軽減を報告したレスポンダーの月次のパーセンテージを表したグラフである。Aは、ベースライン痛みスコア≧2.0を有し、0.5mgのアシマドリンによって処置したIBS−Dレスポンダーの月次のパーセンテージが、3ヵ月の処置の全月で、統計学的に有意に増加したことを示す。対照的に、Bは、ベースライン痛みスコア≧2.0を有し、1.0mgのアシマドリンによって処置したIBS−Aレスポンダーの月次のパーセンテージが、処置の最初の月に統計学的に有意に増加したことを示す。
【0034】
【図10】図10は、ベースライン痛みスコア≧2.0のIBS−DおよびIBS−A対象におけるIBS症状の適切な軽減を伴う月の割合を表したグラフである。IBS症状は、腹痛または不快感、異常な排便回数、切迫感、膨満感、異常な便硬度、および他の二次症状を含む。Aは、0.5mgまたは1.0mgのアシマドリンで処置したIBS−D対象において、全体的なIBS症状の統計学的に有意な改善がみられたことを示す。同様に、Bは、1.0mgのアシマドリンで処置したIBS−A対象において、全体的なIBS症状の統計学的に有意な改善がみられたことを示す。
【0035】
【図11】図11は、ベースライン痛みスコア≧2.0のIBS−D対象における排便回数に対するアシマドリンの効果を表したグラフである。Aは、0.5mgのアシマドリンで処置したIBS−D対象における1日あたりの排便回数が、処置の第2および第3月に統計学的に有意に減少したことを示す。Bは、0.5mgのアシマドリンで処置したIBS−D対象における、排便回数の改善の週次変化を示す。
【0036】
【図12】図12は、0.5mgまたは1.0mgのアシマドリンで処置した、ベースライン痛みスコア≧2.0のIBS−D患者における切迫感が、3ヵ月の処置の全月で統計学的に有意に低減したことを示したグラフである。
【0037】
【図13】図13は、膨満感の統計学的に有意な低減が、0.5mgのアシマドリンで処置した、ベースライン痛みスコア≧2.0のIBS−D患者では、処置の第2および第3月に、1.0mgのアシマドリンで処置したIBS−D患者では、処置の第2月にみられたことを示したグラフである。
【0038】
【図14】図14は、ベースライン痛みスコア≧2.0のIBS−DおよびIBS−C対象における、ブリストルスケールにより測定した便硬度の月次変化を表したグラフである。統計学的に有意な効果はいずれの投薬量においても観察されなかったが、アシマドリンはIBS−C対象の便を軟化させ、IBS−D対象の便を硬化させ、それによって便硬度を正常化するようであった。
【0039】
発明の詳細な説明
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当業者による慣用の用法に従って理解するものとする。
【0040】
本発明は、IBSの1または2以上のサブタイプの処置に有用な組成物および方法を提供する。
【0041】
ローマIIIは、IBSの診断基準を提示している。ローマIII基準は、インターネット上、romecriteria.orgで、また、Longstreth et al., (2006) Gastroenterology, 130(5), 1480-1491に見出すことができる。これらの基準によると、患者は、最近3ヵ月間に1ヶ月あたり3日以上反復性の腹痛または不快感を有し、この症状が6ヵ月以上前に発症している場合にIBSと診断される。痛み/不快感はまた、以下のうちの2つまたは3つ以上を伴わなければならない:(1)排便による改善、(2)排便回数の変化、または(3)便形状の変化。診断を支持するが、診断基準には含まれない症状としては、異常な排便回数、異常な便形状、排便時のいきみ、切迫感、残便感、粘液の排泄および膨満感が挙げられる。(総説として、Longstreth et al., (2006) Gastroenterology, 130(5), 1480-1491を参照)。
【0042】
IBSのサブタイプは、ローマIII基準を用いて定義する。ローマIIIは、IBSを4つのサブタイプを有するよう分類してある:IBS−D、IBS−C、IBS−AおよびIBS−Uである。IBS−Cは、硬便/兎糞状便(ブリストル大便スケール1〜2)が25%より多く、軟便/泥状便/水様便(ブリストル大便スケール6〜7)が25%未満であるものと定義される。IBS−Dは、軟便/泥状便/水様便(ブリストル大便スケール6〜7)が25%より多く、硬便/兎糞状便(ブリストル大便スケール1〜2)が25%未満であるものと定義される。IBS−A(混合型IBS(IBS−M)とも呼ばれる)は、硬便/兎糞状便(ブリストル大便スケール1〜2)が25%より多く、軟便/泥状便/水様便(ブリストル大便スケール6〜7)が25%より多いものと定義される。IBS−Uは非サブタイプIBSであり、その便硬度の異常は、IBS−C、IBS−DまたはIBS−Aの基準を満たすには不十分である。北米では、症例はIBS−C、IBS−DおよびIBS−Aにほぼ均等に分かれる(Olden (2003) Cleveland Clinic J. Med., 70(Supp 2), S3-S7)。
【0043】
本明細書に記載の化合物および方法は、IBSの1または2以上のサブタイプの処置に有用である。一態様において、サブタイプはIBS−Dである。別な態様において、サブタイプはIBS−Aである。他の態様において、サブタイプはIBS−Uである。さらに別の態様において、本方法はIBS−DおよびIBS−Aの処置に特に有用であり、IBS−Uの処置にはより低い程度で有用である。本方法はヒトの処置に有用であり、男性および女性の処置に有用である。
【0044】
本発明はしたがって、選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーターおよび末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、および/またはその薬理学的に許容し得る塩の、1または2以上のIBSサブタイプの処置のための、特にIBS−DおよびIBS−Aの処置のための医薬の製造のための使用に関する。
【0045】
本発明は、したがってまた、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩の、1または2以上のIBSサブタイプの処置のための、特にIBS−DおよびIBS−Aの処置のための医薬の製造のための使用に関する。
【0046】
有効成分N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、その薬理学的に許容し得る塩、およびその製造のための方法は、米国特許第5,532,266号、第6,344,566号および第6,060,504号、およびBarber et al.(B. J. Pharmacol. (1994), 113, 1317-1327)に記載されている。N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩は、アシマドリンと一般に呼ばれている。
【0047】
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよびその塩(その塩酸塩を含む)は、鎮痛作用、抗炎症作用、抗喘息作用、利尿作用、抗痙攣作用、神経保護作用および鎮咳作用を有し、カッパ−オピエートアゴニストとして、炎症に起因する痛覚過敏の処置、脳水腫の処置、供給不足状態(低酸素症)、疼痛状態、および虚血からの二次損傷の改善に特に適している。
【0048】
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドまたはその薬理学的に許容し得る塩の、炎症性腸疾患およびこれに伴う疾患症状の処置、重度の痛みの処置、特に背部愁訴(back complaints)、熱傷、日焼けおよびリウマチ疾患で生じる痛覚過敏の処置、および、開腹手術後にしばしば生じる術後痛およびイレウスの処置のための医薬の製造のための使用は、EP 0 752 246および米国特許第5,776,972号に開示されている。
【0049】
さらに、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩が、痛みおよび/または、増大したか、もしくは低減した蠕動に伴う機能性胃腸疾患の処置に適している可能性が以前に示唆された(米国特許出願シリアルナンバー10/514,887およびBarber & Gottschlich (1997) Expert Opin. Invest. Drugs, 6(10), 1351-1368を参照)。かかる疾患は、IBS、非潰瘍性機能性消化不良、腸閉塞、特にオピエート誘導性腸閉塞を含む。また、アシマドリンが関節炎治療、片頭痛、乾癬または他の掻痒性皮膚疾患、月経困難症および線維筋痛の処置に有用である可能性も示唆されている(米国特許公開第20040157913号を参照)。
【0050】
アシマドリンは、治療薬として複数の魅力的な薬物動態学的および薬力学的特徴を有しており、これは、高い生物学的利用能(50%)、迅速な効果発現、低い血液脳関門通過能、カッパ−オピエート受容体に対する高い親和性(IC50 1.2nM)、およびカッパ−オピエート受容体に対する高い選択性(アシマドリンの、カッパ、ミューおよびデルタオピエート受容体に対するIC50値の比率は、それぞれ約1:501:498である)、および約2〜3時間の半減期を含む。生物学的利用能は絶食対象で測定したものだが、食物相互作用研究は、摂食が生物学的利用能に実質的に影響を与えないことを示している。
【0051】
1つの側面において、本発明は対象に選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩を投与することを含む、IBSのサブタイプ、例えばIBS−D、IBS−AまたはIBS−Uなどの少なくとも1つの症状を処置する方法を包含する。症状は、異常な排便回数、異常な便形状、異常な便通、粘液の排泄、腹部膨張感、痛み、不快感およびその組合せからなる群から選択される。該投与は、当該疾患に起因する痛みおよび/または不快感を改善することを意図する。別の側面において、該投与は、腸の運動性を正常化する。
【0052】
さらなる側面において、選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩は、下痢の処置に有用である。これらは、ウイルス感染症(すなわち、HIV、ノーウォークウイルス、サイトメガロウイルス、ウイルス性肝炎、単純疱疹ウイルスおよびロタウイルス)、寄生虫(すなわちランブル鞭毛虫およびクリプトスポリジウム)、細菌(すなわちカンピロバクター、サルモネラ菌、シゲラ、大腸菌)、医薬(すなわち抗生物質)、人工甘味料(すなわちソルビトールおよびマンニトール)、手術、放射線療法、ガン、糖尿病、甲状腺機能亢進症および他の消化器疾患(すなわちクローン病、セリアック病および潰瘍性大腸炎)に起因する下痢の処置に有用である。これらは下痢の原因の非限定例であり、本明細書で論じる化合物は、原因を問わず下痢の処置に有用たり得ることが意図される。
【0053】
さらなる側面において、選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩は、下痢の処置のための医薬の製造のために使用される。
【0054】
化合物は、それが1種または2種以上のオピエート受容体、好ましくはミューおよびカッパ−オピエート受容体、より好ましくはミューおよびカッパ−オピエート受容体、特にカッパ−オピエート受容体に対して、IC50値として決定される、約0.01nmol〜約100μmolの範囲、約0.05nmol〜約10μmolの範囲、約0.1nmol〜約3μmolの範囲、約0.5nmol〜1μmol、またはナノモルの範囲の親和性を示すならば、本発明に用いる選択的オピエート受容体モジュレーターとして適しているとみなされる。特定の側面では、IC50値として決定されるカッパ−オピエート受容体への親和性は、約0.01nM、0.05nM、0.1nM、0.2nM、0.3nM、0.4nM、0.5nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、1nM、1.2nM、1.5nM、1.7nM、2nM、3、nM、4nM、5nM、10nMであるか、またはこれより高い。
【0055】
本開示を通じて、本発明の種々の側面は範囲の形で提示される。範囲の形での記載は単に利便性および簡潔性のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解すべきでないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な下位範囲(subranges)ならびにその範囲の中の個々の数値を具体的に開示するとみなすべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの下位範囲、ならびに、その範囲の中の個々の数、例えば1、2、3、4、5および6を具体的に開示するとみなすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0056】
化合物は、それが約1〜10時間の範囲、約1〜8時間の範囲、約1〜6時間の範囲、約1〜4時間の範囲、または約2〜3時間の範囲の薬学上の半減期を有するならば、本発明に用いるのに適する。
【0057】
化合物は、それが末梢選択的である、すなわち低い血液脳関門通過能を示すならば、本発明に用いるのに適するとみなされる。本発明による末梢選択的化合物は、患者の末梢神経系に対し、該患者に投与されたときに高い選択性を示す化合物を意味する。末梢選択的化合物は、好ましくは、患者の中枢神経系に対し、末梢神経系に対して治療効果を示す投薬量レベルで該患者に投与したときに、わずかな影響を示すか、検出可能な影響を示さない。
【0058】
化合物は、IC50値として決定されるカッパ−オピエート受容体に対するその親和性と、IC50値として決定される他のオピエート受容体サブタイプに対するその親和性との比が、約1:100〜1:2000の範囲、約1:200〜1:1500の範囲、約1:300〜1:1200の範囲、約1:400〜1:1000の範囲にあるか、または、約1:100、1:200、1:300、1:400、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000またはそれ未満の比を有するならば、本発明に用いるのに適するとみなされる。
【0059】
化合物は、それが約10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上または70%以上のヒト対象における生物学的利用能を示すならば、本発明に用いるのに適するとみなされる。
【0060】
1つの側面において、上述のとおり、本発明の方法に用いる化合物は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩である。その薬学的誘導体、例えば、米国特許公開第20060122255号に記載されているものなどの使用もまた意図される。
【0061】
本発明に用いる他の調節性(modulating)化合物は、アルビモパン(例えば、Am. J. Surg. 2001 Nov; 182 (5ASuppl): 27S-38S参照)、ロペラミド(例えば、J. Pharmacol. Exp. Ther. 1999 Apr; 289 (1) : 494-502参照)、スピラドリン(例えば、Pol. J. Pharmacol. 1994 Jan-Apr; 46 (1-2): 37-41参照)、フェドトジン(例えば、Expert Opin. Investig. Drugs 2001 Jan; 10(1): 97-110参照)、ペンタゾシン(例えば、Biol. Pharm. Bull. 1997 Nov; 20(11): 1193-8参照)、エナドリン(Psychopharmacology 2001 Sep;157(2):151-62)、IC1204448(例えば、Br. J. Pharmacol. 1992 Aug ; 106(4): 783-9参照)、U-50488H(例えば、Life Sci. 2002 Mar 1; 70(15): 1727-40参照)、FE 200665およびFE 200666(Riviere et al., 1999 Acta. Neurobiol. Exp. 59:186、Binder et al., 2001 Anesthesiology 94: 1034-1044)、TRK-820(例えば、Life Sci. 1999; 65(16): 1685-94参照)、ADL 10-0101(例えば、Pain 2002 Mar; 96(1-2): 13-22参照)、ADL 10-0116(例えば、Pain 2002 Mar; 96 (1-2): 13-22参照)、ADL 1-0398(Adolor Corp., USAから)、U 69,593(例えば、J. Neurosci., 2000 Aug; 20(15):5874-5879参照)、EMD 60400(Chirality 6: 685-689, 1994)、サルビノリンA(Life Sciences 75:2615-2619, 2004)、CR665およびCR666(いずれもCara Therapeutics Inc.から)からなる群から選択される。
【0062】
本発明の1つの側面では、調節性化合物は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、ICI204448、U-50488H、ADL 10-0101、ADL 10-0116、ADL 1-0398、FE 200665、FE 200666、EMD 60400、U 69,593、CR665、CR666、その誘導体、組合せ、および薬学的に許容し得る塩からなる群から選択される。
【0063】
したがって、一態様において、本発明は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、IBS−Dを処置する方法を提供する。別の側面において、本発明は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドまたはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量をIBS−Aを有する対象に投与することを含む、IBS−Aを処置するための方法を提供する。さらに別の側面において、本発明は、IBS−Uを有する患者を、治療有効量のN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドまたはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物で処置することを提供する。
【0064】
別な態様において、本発明は、対象にN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、IBS−D、IBS−AまたはIBS−Uの少なくとも1つの症状を処置する方法を包含する。症状は、異常な排便回数、異常な便形状、異常な便通、粘液の排泄、腹部膨張感、痛み、不快感およびその組合せからなる群から選択される。該投与は、当該疾患に起因する痛みおよび/または不快感を改善することを意図する。別の側面において、該投与は、腸の運動性を正常化する。
【0065】
一態様において、医薬組成物は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を含む。
【0066】
別な態様において、個体は、医薬組成物の投与の前に、IBSサブタイプについて診断される。例えば、個体は医薬組成物を投与する前に、IBS−D、IBS−AまたはIBS−Uと診断される。1つの側面において、医薬組成物物は、IBS−Cと診断された後の個体には投与しない。
【0067】
医薬組成物は、経口、非経口(例えば筋肉内、腹腔内、静脈内、大槽内注射または注入、皮下注射またはインプラント)、吸入スプレー、経鼻、経膣、直腸内、舌下、または局所投与経路で投与してもよい。医薬組成物は、各々の投与経路に適した好適な用量単位製剤に製剤してもよい。
【0068】
本発明は、特定の製剤または特定の投与様式に限定されることは意図しない。一態様において、組成物は経口、非経口、鼻腔内、局所、または注射投与のために製剤される。注射投与の非限定例は、海綿体内(intracavernous)注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射および皮内注射である。医薬組成物は、1日あたり約0.1mg〜25mgの範囲の投薬量で、経口投与のために製剤することができる。医薬組成物はまた、1日あたり約0.1mg〜25mgの範囲の投薬量で、注射投与のために製剤することができる。他の態様において、投薬量は1日あたり約0.1mg〜約10mgの範囲である。好ましい態様において、用量は1日あたり約0.3mg〜約2.0mgの範囲である。
【0069】
上記態様のさらに別の特徴によれば、投与は1日あたり約1〜約4回行う。1つの側面において、投与は1日あたり2回である。さらなる側面では、該投与は、対象におけるIBSの症状の進展に従って行う。例えば、投与は、対象の症状に応じて、p.r.n.、または、必要に応じてであってもよい。
【0070】
1つの側面において、IBS−Dを有する対象には、1日あたり約1mgまたは約2mg投与する。他の側面では、IBS−Dを有する対象は、中程度または重篤な痛みを有するとの診断を受けている。1つの側面において、中程度または重篤な痛みは、痛みの程度の自己申告に基づいて診断される。
【0071】
別の側面において、IBS−Aを有する対象には、1日あたり約1mgまたは約2mg投与する。他の側面では、IBS−Aを有する対象は、中程度または重篤な痛みを有するとの診断を受けている。
【0072】
本発明の医薬組成物は、固体または液体の投与形態に製剤することができる。例えば、医薬組成物は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、および類似の配合物の形態の固体として製剤してもよい。医薬組成物はまた、シロップ、注射混合物などの形態の液体として製剤してもよい。
【0073】
医薬組成物は、食物の有無にかかわらず服用してもよい。食物なしで服用する場合、それは食事の前または後に服用してもよい。
【0074】
また、選択的オピエート受容体モジュレーター、好ましくは末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、より好ましくは末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、そして特に末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニストまたはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の有効量と、IBSのサブタイプを有する対象に該化合物を投与するための指示手段とを含むキットもまた本発明に包含される。例えば、サブタイプはIBS−A、IBS−DまたはIBS−Uであってもよい。
【0075】
本発明にさらに包含されるのは、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドまたはその薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の有効量と、IBSのサブタイプを有する対象に該化合物を投与するための指示手段とを含むキットである。例えば、サブタイプはIBS−A、IBS−DまたはIBS−Uであってもよい。1つの側面において、医薬組成物は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を含む。
【0076】
本発明は、本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明および本明細書に含まれる例を参照することによってより容易に理解することができる。本明細書で参照するすべての特許、特許出願、公開された出願、ウェブサイトおよびその他の出版物、ならびにそれらの出版物中で引用されている参考文献は、その全体を参照により援用する。本明細書中に複数の定義が存在する場合には、このセクションにあるものが優先される。
【0077】
しかしながら、本化合物、組成物および方法を開示および説明する前に、この発明が特定の塩、特定のIBSサブタイプ、特定の症状または特定の方法などに限定されておらず、したがって、当然のことながら変動し得ることを理解すべきであり、そこにおける多数の改変および変更は当業者には明らかである。また、本明細書で用いる用語は、特定の態様のみを説明するためにあるにすぎず、限定的であること意図しないことを理解すべきである。
【0078】
A.定義
本明細書で用いる場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別記のない限り複数の参照物を含む。例えば、「活性剤」または「薬理学的に活性な剤」への言及は、単一種の活性剤、ならびに、組合された2種以上の異なる活性剤を含み、「薬理学的に許容し得る塩」への言及は、1種または2種以上の異なる塩、ならびに、単一種の塩を含み、「キャリア」への言及は、2種または3種以上のキャリアの混合物、ならびに、単一種のキャリアなどを含む。
【0079】
本明細書で用いる場合、互換可能に用いる用語「対象」、「個体」または「患者」は、哺乳動物を含む任意の動物、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類、最も好ましくはヒトを指す。別の態様において、対象はヒト対象である。他の態様において、ヒト対象は女性または男性である。
【0080】
本発明による「末梢選択的」化合物は、好ましくは、患者の中枢神経系に対し、該患者に投与したときに、わずかな影響を示すか、より好ましくは検出可能な影響を示さない化合物を意味する。
【0081】
本明細書で用いる場合、用語「活性剤」は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、その塩、溶媒和物、プロドラッグおよび/または誘導体を指す。
【0082】
化合物N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドは既知であり、例えば、EP-A-0 569 802(米国特許第5,532,226号)、EP-A-0 752 246(米国特許第5,776,972号および米国特許第5,977,161号)、DE-A-198 49 650、EP-A-0 761 650(米国特許第6,060,504号)およびEP-A-1 073 634(米国特許第6,344,566号)に記載されている。
【0083】
アシマドリンは、ジアリールアセトアミドカッパ−オピエートの活性物質である。その化学名はN−[(1S)−2−[(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−1−フェニルエチル]−N−メチル−2,2−ジフェニルアセトアミド、塩酸塩であり、その実験式は、C2730×HClである。分子量は451.01であり、構造式は
【化1】

である。
【0084】
アシマドリンは、11.6g/lの水への溶解度、および5.4g/lのエチルアルコールへの溶解度を有する白色粉末である。本物質は湿気にわずかに感受性であるが、熱、空中酸素および光に対して安定である。本物質は吸湿性ではない。
【0085】
用語「N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド」は、同化合物の塩、溶媒和物、プロドラッグおよび誘導体を含む。例えば、それは米国特許公開第20060122255号に記載された誘導体を含む。本発明はまた、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの光学活性形態(立体異性体)、好ましくは鏡像異性体、ラセミ化合物およびジアステレオマー、ならびに水和物および溶媒和物にも関する。本発明による「溶媒和物」は、不活性溶媒分子と、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドとの、これらの相互引力による付加物を意味するものとする。溶媒和物は、例えば、一水和物もしくは二水和物またはアルコラートを含む。「プロドラッグ」は、追加の基によって修飾された化合物、または、追加の基、例えば、限定されずに、生体内で迅速に切断され活性剤を与える、アルキルまたはアシル基、砂糖またはオリゴペプチドなどを含む化合物を指す。
【0086】
本明細書で用いる場合、用語「生物学的利用能」は、全身循環に到達し、作用部位で利用可能となる治療上有効な薬物の程度(extent)の測定値である。
【0087】
本明細書で用いる場合、用語、本発明の化合物の「薬学的に許容し得る塩」または「薬学的に許容し得る誘導体」は、当業者が容易に調製し得る任意の塩またはエステルを含む。この発明の化合物の薬学的に許容し得る塩は、例えば、薬学的に許容し得る無機および有機の酸および塩基に由来するものを含む。適切な塩基に由来する塩は、限定されずに、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウムおよびN(C1〜4アルキル)塩を含む。適切な酸の例は、限定されずに、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸を含む。他の酸、例えばシュウ酸は、それ自体は薬学的に許容し得るものではないが、本発明の化合物およびその薬学的に許容し得る酸性塩を得るための中間体として有用な塩の調製に利用することができる。本発明の1つの側面において、薬理学的に許容し得る塩は、EMD 61753およびアシマドリンとしても知られる、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩である。
【0088】
本明細書で用いる場合、「処置する」または「治療的」および文法的に関連する用語は、疾患のあらゆる結果のあらゆる向上または改善を指し、疾患の完治を要件とするものではない。特定の疾患の症状の改善は、本化合物の投与に帰することができるか、関連づけることができる、症状のあらゆる軽減を指し、これは永続的であるか一時的であるかを問わない。1つの側面において、本発明の化合物の投与は、機能性腸疾患、例えばIBSおよび1または2以上のIBSサブタイプ、および下痢を含む、本明細書に記載の臨床的に診断された疾患の1または2以上の症状もしくは臨床的に観察された後遺症を、改善、予防、または軽減する。
【0089】
本明細書で用いる場合、用語「投与」または化合物を「投与すること」は、対象に本発明の化合物を提供するあらゆる適切な方法を指す。
【0090】
本明細書で用いる場合、「腸の運動性を正常化する」とは、処置を受けている対象における腸の運動性を、処置の前の状態よりも、運動性が標準的または平均的な運動性に近くなるように変える、本発明の化合物の能力を指す。例えば、便秘を有する対象における腸の運動性を正常化することは、便通の回数を増加させること、および/または、便の硬さおよび兎糞性(lumpiness)を低減することを含み、一方、下痢を有する対象における腸の運動性を正常化することは、便通の回数を低減すること、および/または、便をより水様および泥状でなくすることを含む。
【0091】
1つの側面において、本発明は、腸の運動性を低減するための方法および組成物を特徴とする。腸の運動性は、消化プロセスの間、食物を胃腸管を通じて移動させるための、胃、腸、結腸および直腸の自発的で協調的な拡張および収縮を含む。
【0092】
本明細書で用いる場合、「不快感」は痛みとして記述されない不快な感覚を指す。
【0093】
「便秘」はその慣用の意味で用い、糞便の回数の少ない、または、困難な排泄を意味する。
【0094】
「下痢」はその慣用の意味で用い、ゆるい、または液状の排泄物の、頻繁で通常は大量の腸からのいきみのない排出を意味する。
【0095】
薬物または薬理学的に活性な剤の「有効」量または「治療有効量」は、無毒であるが、所望の効果、すなわち、上記で説明した1または2以上のIBSサブタイプと関連する症状の軽減、または下痢の症状の改善をもたらすのに十分な薬物または剤の量を意味する。薬物または薬理学的に活性な剤の有効量は、投与経路、選択された化合物、および薬物または薬理学的に活性な剤を投与する生物種、ならびに、薬物または薬理学的に活性な剤を投与する個体の年齢、体重および性別に応じて異なり得ることが認識されている。また、当業者が、代謝、生物学的利用能などの要因、および、本明細書でさらに開示される、種々の投与経路についての単位用量範囲内での投与後に、薬物または薬理学的に活性な剤の血漿濃度に影響する他の要因を考慮することにより適切な有効量を決定することができることも認識されている。
【0096】
「pro re nata」、「prn」投薬、および「頓服」投薬または投与としても知られる「必要に応じた」投薬は、IBSの痛みを伴う症状および痛みを伴わない症状の抑制が望まれるとき、またはそれによる下痢の抑制が望まれるときに、活性剤の用量を投与することを意味する。
【0097】
あるいは、活性剤は、継続的に、例えば、毎日、1日複数回(すなわち1日2〜4回)、またはより高いまたは低い頻度のスケジュールで投与される。投薬スケジュールの決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0098】
本明細書で用いる場合、語句「薬理学的半減期」は、生体に投与された薬物または他の物質の半量が、通常の生物学的プロセスにより血漿から代謝または排出されるのに必要な時間を表す。この語句はまた、本明細書では、互換可能に「半減期」とも呼ばれる。
【0099】
「医薬賦形剤」は、アジュバント、キャリア、pH調節および緩衝剤、浸透圧調整剤、湿潤剤、防腐剤などの材料を含む。
【0100】
「薬学的に許容し得る」は、ヒトまたは他の哺乳動物に生理的に適合する、非毒性の不活性組成物を指す。
【0101】
「薬学的に許容し得る製剤」または「医薬組成物」は、本発明の化合物の、その所望の活性のために最も適した身体的位置への効果的な分配を可能にする組成物または製剤を意味する。
【0102】
「全身投与」は、in vivoでの全身吸収、または、全身への分配が後続する化合物の血流への蓄積を意味する。
【0103】
B.疾患の処置
本発明は、IBSを有する対象を処置するための、そして特に、IBSの1または2以上のサブタイプを処置するための組成物および方法を提供する。一態様において、サブタイプはIBS−Aである。別の態様において、サブタイプはIBS−Dである。他の態様において、サブタイプはIBS−Uである。さらに別の態様において、本方法は、IBS−DおよびIBS−Aの処置に特に有用であり、より低い程度でIBS−Uの処置に有用である。
【0104】
本発明はさらに、下痢を有する対象を処置するための組成物および方法を提供する。
【0105】
本方法は、ヒトの処置に有用であり、特に、男性および女性の両方の処置に有用である。
【0106】
活性剤の単回または複数回の投与は、任意の好都合な投与様式で行うことができ、これは、限定されずに、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、および皮内投与を含む。
【0107】
典型的な製剤としては、限定することなく、非経口投与、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与に適したもの、例えば、ミセル、リポソームまたは薬物放出カプセルに封入された製剤など(活性剤は、徐放のために設計された生体適合性コーティング中に組み入れられている)、摂食可能な製剤、局所用製剤、例えばクリーム、軟膏およびゲル、ならびに他の製剤、例えば吸入剤、エアゾールおよびスプレーなどが挙げられる。本発明の化合物の投薬量は、処置の必要性の範囲および重篤度、投与される組成物の活性、対象の一般的な健康状態、および当業者によく知られた検討事項に応じて変動する。
【0108】
C.医薬組成物
本明細書に記載された本発明の化合物は、投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。かかる組成物は、一般的に薬剤と、薬学的に許容し得るキャリアとを含む。追加の活性物質を組成物に組入れることもできる。
【0109】
種々の医薬組成物およびその製造および使用のための技法は、本開示を考慮すれば、当業者が知ることになるだろう。適切な薬理学的組成物および付随する投与技法の詳細なリストに関しては、本明細書中の詳細な教示を参照することができ、これをさらに、教科書、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (Lippincott, Williams & Wilkins 2003)などで補足してもよい。
【0110】
適切な組成物および投与形態は、錠剤、カプセル、カプレット、ピル、ジェルキャップ、トローチ、散剤、懸濁剤、液剤、シロップ、経皮パッチ、ゲル、粉末、マグマ(magmas)、ドロップ、クリーム、ペースト、プラスター、ローション、ディスク、坐薬、鼻内または経口投与のための液体スプレー、吸入のための乾燥粉末またはエアロゾル化製剤、膀胱内(intravesical)投与のための組成物および製剤などを含む。さらに、当業者は、本明細書の他の部分に記載の製剤を含む、これらの組成物および投与形態を含む適切な製剤を、容易に演繹できる。
【0111】
薬学的に許容し得る材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料は、対象となる化学物質の、ある器官または身体の部分から、他の器官または身体の部分への輸送または移送に関与する。各々のキャリアは、製剤の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味において「許容し得」るものでなければならない。薬学的に許容し得るキャリアとなる材料の若干の例は、糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロースなど、デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプンなど、セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど、トラガント末、モルト、ゼラチン、タルク、賦形剤、例えばココアバターおよび坐薬用ワックスなど、油、例えば落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油など、グリコール、例えばプロピレングリコールなど、ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど、エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど、寒天、緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、リン酸緩衝液、および、医薬製剤に利用される、無毒な適合性の物質を含む。湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤もまた、本組成物中に存在してもよい。
【0112】
治療製剤は可溶化し、対象における処置部位に治療組成物を送達できる任意の経路で投与することができる。潜在的に有効な投与経路は、限定されずに、経口経路、静脈内経路、非経口経路、腹腔内経路、筋肉内経路、皮内経路、臓器内経路、同所性経路などを含む。静脈内注射のための1つの製剤は、治療組成物を、静菌的な保存水、滅菌された非保存水中の溶液の状態で、および/または注射用0.9%無菌塩化ナトリウム、USPを含むポリ塩化ビニルまたはポリエチレンバッグに希釈された状態で含む。治療調製物は、凍結乾燥し、無菌粉末として、好ましくは真空の下で保存し、その後、注射の前に、静菌水(例えば、ベンジルアルコール防腐剤を含む)、または無菌水で再構成することができる。
【0113】
本明細書に記載される臨床試験では、0.15、0.5または1.0mgのアシマドリンと、以下の不活性成分:ラクトース、微晶質セルロース、ヒプロメロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、マクロゴール400、ジメチコン100、二酸化チタンおよび弁柄とを含む錠剤を用いた。他の不活性成分の使用が考えられる。
【0114】
1つの側面において、組成物は持続放出組成物である。
【0115】
持続放出形態は、しばしば12時間を超えて治療薬物濃度を維持するよう設計される。吸収速度は、薬物粒子をワックスまたは他の水不溶性材料で被覆することにより、薬物を、胃腸管を通過する間に薬物がそこからゆっくり放出されるマトリクスに埋め込むことにより、または薬物をイオン交換樹脂で錯体化することにより制御することができる。
【0116】
したがって、例えば、錠剤の形態の持続放出製剤は、胃腸液との接触で膨化してジェルを形成し、錠剤を包むバリアを生成する親水性ポリマーの使用に基づいてもよい。このバリアは、錠剤内部と周囲媒体との間の物理的交換を制限する。その結果、錠剤マトリックスへの水の侵入および薬物の拡散が減速し、これにより薬物の制御された徐放が可能となる。
【0117】
様々な種類のポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンポリアミド、エチルセルロース、シリコーン、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、その他のアクリルコポリマー、およびポリ酢酸ビニル−ポリ塩化ビニルコポリマーなどが、薬物の持続放出のためのマトリクスとして用いることができる。
【0118】
したがって、本発明のオピオイドモジュレーターの送達のための持続放出製剤は、約2時間〜約24時間、好ましくは約4時間〜約24時間の範囲の期間にわたる放出をもたらし、それ故、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間の期間にわたる放出をもたらす。あるいは、かかる持続放出製剤は、24時間より長く48時間までの期間にわたるオピオイドモジュレーターの放出をもたらす。
【0119】
D.投薬量および投与
前記の任意の投与形態および組成物における活性剤の濃度は、極めて多種多様であり得、これは、組成物または投与形態の種類、対応する投与様式、特定の活性剤の性質および活性、ならびに意図された薬物放出プロファイルを含む種々の要因に依存する。好ましい投与形態は、活性剤の単位用量、すなわち単一の治療有効用量を含む。クリーム、軟膏などについては、「単位用量」は、適用される製剤の所定量で単位用量を提供する活性剤濃度を必要とする。任意の特定の活性剤の単位用量は、当然のことながら、活性剤および投与様式に依存する。
【0120】
本発明の活性剤に関して、経口、経粘膜、局所、経皮、および非経口投与のための単位用量は、約1ng〜約1000mg、約5ng〜約950mg、約10ng〜約900mg、約20ng〜約800mg、約30ng〜約750mg、約40ng〜約700mg、約50ng〜約650mg、約100ng〜約600mg、約200ng〜約550mg、約250ng〜約500mg、約400ng〜約450mg、約500ng〜約400mg、約1μg〜約350mg、約5μg〜約300mg、約10μg〜約250mg、約20μg〜約200mg、約40μg〜約175mg、約50μg〜約150mg、約75μg〜約125mg、約100μg〜約100mg、約200μg〜約75mg、約300μg〜約50mg、約400μg〜約25mg、約0.5mg〜約20mg、約0.5mg〜約10mg、約0.5mg〜約5mg、約0.1mg〜約10mg、約0.1mg〜約5mg、または約0.3mg〜約2mgの範囲である。
【0121】
1つの側面において、医薬組成物を1日1回または2回経口投与されるように製剤する場合は、約0.3mg〜約2mgの範囲である。
【0122】
所定の個体に投与される特定の活性剤の治療有効量は、当然のことながら、特定の活性剤、組成物または投与形態の濃度、選択された投与様式、処置する個体の年齢および一般状態、個体の性別、個体の状態の重篤度、および処方する医師に知られた他の要因を含む複数の要因に依存している。
【0123】
1つの側面において投薬は短期であり、他の側面では、投薬は長期である。「短期」とは、活性剤を所定の期間、典型的には日または週で測定される期間患者に投与することを意味する。例えば、活性剤は、下痢の処置のために、症状が継続する間与えてもよい。別の例では、活性剤は、1、2、3、4、5、6もしくは7日、または1、2、3、4、5もしくは6週、またはそれ以上の期間与えてもよい。「長期」とは、活性剤を不定期間患者に投与することを意味する。1つの例において、活性剤は、IBS−A、IBS−DまたはIBS−Uを有する患者に疾患を治療するために与えられ、1または2以上の症状が改善された後でさえ投与され続ける。
【0124】
本発明における治療有効量は、疾患に伴う少なくとも1つの症状の頻度または強度の低減を示すのに有効な量を含んでもよい。例えば、IBSを有する患者において、本発明の活性剤の有効量は、腹痛および/または不快感を低減するのに有効な量であってもよい。下痢を有する患者を処置するための本発明の活性剤の有効量のさらなる例は、下痢を有する患者、例えばIBS−A、IBS−D、IBS−Uを有する患者、またはIBSに無関係な下痢を有する患者などにおける軟便の発現または回数を低減するのに有効な量、または腸の運動性を正常化するための量である。
【0125】
上記の治療手法は、IBSまたは下痢の処置のための多種多様な治療レジメンのいずれとも組み合わせることができる。一態様において、例えば、アシマドリンは、ストレス投与カウンセリング、および/または、食事およびライフスタイルの変更と併せて投与される。他の側面では、アシマドリンは、ファイバーサプリメント、止痢剤、緩下薬、抗コリン作用剤、抗うつ薬、アロセトロン、テガセロドおよび/またはこれらの組合せの投与と併せて投与される。アシマドリンを、ファイバーサプリメント、止痢剤、緩下薬、抗コリン作用剤、抗うつ薬、アロセトロン、テガセロドおよび/またはこれらの組合せと一緒に製剤化し得ることもさらに意図される。
【0126】
E.キット
一態様において、投与される医薬製剤、すなわち、選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩の治療有効量を含む医薬製剤、保管中および使用の前に製剤を収納するための、好ましくは密封された容器、および、IBSまたは下痢を処置するために有効な手法で薬物投与を実行するための指示を含む、包装されたキットが提供される。薬物が下痢に用いられる場合、指示はIBSの1または2以上のサブタイプの処置に特化していてもよい。指示は、典型的には一般的に添付文書および/またはラベル上の書面での指示である。製剤の種類および意図される投与様式に応じて、キットはまた、製剤を投与するためのデバイスを含んでもよい。製剤は、本明細書に記載された任意の適切な製剤であってもよい。例えば、製剤は、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの選択された塩の単位投薬量を含む経口投与形態であってもよい。
【0127】
キットは、同じ剤の異なるまたは同一の投薬量の複数の製剤を含んでもよい。キットはまた、異なる活性剤の複数の製剤を含んでもよい。キットは、IBSの処置における、連続した、別々のおよび/または同時の使用に適した製剤を含んでもよい。
【0128】
キットのパーツは、1または2以上の容器、例えばボトル、シリンジ、プレート、ウェル、ブリスターパックまたは任意の他の種類の医薬包装に個別に保持されていてもよい。
【0129】
投与される構成要素の量、投与のためのガイドライン、および/または構成要素を混合するためのガイドラインを示す添付文書またはラベルとしての指示も、キットに含めることができる。指示はまた、典型的な副作用および禁忌を、特定の副作用が生じた場合に投与を中止するための指示とともに示してもよい。アシマドリンによる処置で影響を受ける系は、筋骨格、中枢および末梢神経系、精神、胃腸、泌尿生殖器、呼吸器、体全体を含み得る。副作用は、便秘、下痢、頭痛、悪心、副鼻腔炎、腹痛、およびめまいを含み得る。
【0130】
F.保険金請求
一般に、所定の医学的処置または薬物療法の補償のための保険金請求の処理は、それに対して請求が提出される保険証書を発行した保険会社または他の任意の主体への、前記医学的処置または薬物療法が行われる旨の通知を含む。その後、行われる医学的処置または薬物療法が保険証書の条件下で補償されるかについての決定がなされる。補償される場合、請求はその後処理され、これは支払、払戻、免責の適用を含み得る。
【0131】
本発明は、IBSの処置、より具体的には、IBSサブタイプの処置に用いる選択的オピエート受容体モジュレーター、好ましくは末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、より好ましくは末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、そして特に末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、またはその薬理学的に許容し得る塩の1つに関する、保険証書の下で保険金請求手続きを行う方法を含む。この方法は:1)前記選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩による処置が行われる旨の通知、または処方の通知を受領すること、2)選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩による前記処置が保険証書の下で補償されるか否かを決定すること、および3)支払、払戻、免責の適用を含む、前記選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体モジュレーター、末梢選択的カッパ−オピエート受容体アゴニスト、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩によるIBSの処置に対する請求の処理を行うことを含む。この方法は、IBS−A、IBS−DおよびIBS−Uの処置のためのアシマドリンの使用に対する請求の処理を含む。
【0132】
以下の例は発明の請求の範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ特定の態様の例示を意図するものである。当業者が想起する前記の例証された方法における任意の変法は、本発明の範囲内となるものとする。明確性のために別々の態様の文脈で記載された本発明の特定の特徴はまた、単一の態様において組合せて提供してもよいものとする。逆に、簡潔のために単一の態様の文脈において記載された本発明の種々の特徴はまた、別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供してもよい。
【実施例】
【0133】
例1
アシマドリンの頓服投与は、IBS−Aの処置に有用である
可変用量のアシマドリン(4週にわたり、0.5mg p.r.n.から1.0mg q.i.d.まで)または同じに見えるプラシーボの、IBSを有する参加者における痛みおよび胃腸症状の改善に対する効果を評価する、無作為化並行群二重盲検プラシーボ対照試験を行った。
【0134】
試験対象集団
IBSを有する合計155名の患者を募集した。組み入れ基準は、18〜65才の、非妊娠、非母乳養育女性、ローマII基準によるIBSの診断、警告症状の欠如、許容し得る避妊の方法、および、100mmの視覚アナログ尺度(VAS)の少なくとも40mmの腹痛または不快感が慣らし期間における14日のうちの少なくとも4日にわたるが、VASが60mmを超えない日が14日の慣らし期間のうち10日を超えることを含んだ。除外基準は、アシマドリンまたはオピエートアゴニストに対する過敏症、アルコール中毒者または薬物乱用者、胃腸の既往手術(胆嚢摘出術、虫垂切除術または子宮摘出術を除く)、胃腸系に影響を及ぼす構造または代謝状態、スクリーニング来院における臨床的に顕著に異常な臨床検査値、胃腸通過を変更する医薬、CYP 3A4および2D6を阻害する医薬、ベンゾジアゼピンまたは任意の鎮痛薬の離脱ができないことを含んだ。
【0135】
155名の最初の対象のうち30名はスクリーニングに失敗し、13名は無作為化に失敗し、9名は同意を取り下げ、3名は合併症を有し、2名は追跡不能であり、1名は無作為化の後で辞退した。97名の対象が試験を完了した。
【0136】
プロトコルはIRBの承認を受け、書面でのインフォームドコンセントを、この試験への登録の前に全ての参加者から得た。
【0137】
試験プロトコル
スクリーニング来院の際に、面接、身体検査、EKG、標準的な臨床検査を行い、腸疾患質問票(Bowel Disease Questionnaire)[BDQ (Hahn et al., (1998) Dig. Dis. Sci. 43, 27145-2718)]、病院不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale)[HADS (Zigmond & Snaith (1983) Acta Psychiatr Scand., 67(6), 361-70)]、および生活の質質問票[IBS QoL (Patrick et al., (1998) Dig Dis Sci., 43, 400-11)]を得、患者は日ごとの(daily)痛みおよび他のIBS症状を記録するための日誌を受け取った。ベースライン症状を確立するための2週間の慣らし期間の後、全ての組み入れ基準を満たした患者を無作為化し、4週間の二重盲検処置期間にわたり試験薬剤またはプラシーボを投与した。処置の割り当ては秘密にした。参加者は2週間の処置の後、試験センターに再来院し、EKGおよび標準的な臨床検査を行った。患者は、4週間の処置の後に再来院し、EKG、標準的な臨床検査を行い、BDQ、HADSとIBS QoL質問票に記入し、痛みおよび腸機能を記録した日々の日誌は回収された。
【0138】
二重盲検処置期間中、患者は、その日の試験薬剤の最初の用量を服用をする前に、その日に最初に少なくとも中程度の強度の痛みを感じたときは、VAS上の痛みの強さの評価を記入するよう指示された。薬剤服用の2時間後に、痛みの強さに関するVASを再度評価した。その日、それ以降痛みが適切に制御された場合、それを日誌に記録した。痛みが適切に制御されない場合、患者は、前回の服用の4時間後以降に再度の服用(0.5mg〜1.0mg)を許された。患者は、1回2錠まで、1日4回までの服用を許された。
【0139】
排便回数、硬度[ブリストル便形状スケール(Heaton et al., (1991) Gut, 32(1), 73-9)]、日ごとの便通容易性[7段階形容詞尺度(Coulie et al., (2000) Gastroenterology, 119, 41-50)]、およびそして、IBSによる痛みおよび不快感の日ごとの適切な軽減(バイナリーグローバルエンドポイント)(Camilleri et al., (2000) Lancet, 355, 1035-40)も収集した。
【0140】
安全性モニタリング
副作用は毎日試験サイトでモニターし、患者は、あらゆる副作用を報告するために治験責任医師と連絡をとるための電話番号を与えられた。以前の来院で観察されたすべての異常を追跡調査し、身体検査を行い、再度BDQを行うために、二重盲検処置期間終了の2週間後に追跡調査来院を行った。
【0141】
データ分析
分析のための主要エンドポイントは、参加者が少なくとも中程度の痛みを経験したそれぞれの日の最初の服用の2時間後における痛みの強さの平均的低減であった。要するに、VAS上で少なくとも30mmの、それぞれの日の最初の服用の前および2時間後の痛みの強度の変化を記録した。これらの各々の日について、最初の服用の痛みの低減を計算した:痛みの強度の差異(PID)=痛み2時−痛み0時。これらの日の痛みの低減の平均は、最初に、処置期間中の全てのPIDを加算し、この結果を、薬剤を用いた痛みを伴った日数で序することによって計算した。副次エンドポイントは、それぞれの日における最大の痛み(5段階VAS)、日ごとの排便回数(回)、日ごとの排便硬度(ブリストル大便スケール)、日ごとの便通(7段階形容詞尺度)、日ごとのIBSによる痛みおよび不快感の適切な軽減(対象ごとの連続的な日の割合として、および不連続な名目反応として分析されたグローバルエンドポイント、適切な軽減を伴う日が>50%)であり、また、BDQ、HADSおよび過敏性腸症候群の生活の質(IBS−QoL)を、試験の始めと終わりに評価した。
【0142】
統計解析
主要および副次エンドポイントに対する処置の効果は、関連する共変量(例えば、年齢、ベースラインの痛みの程度のVASスコア、痛みを伴う日の割合および痛みの強度の差異の分析のためのベースラインHAD不安スコア)を組み入れた共分散分析(ANCOVA)を用いて評価した。二次分析はまた、ANCOVAモデルにおけるサブタイプ別処置(treatment by subtype)の相互作用項とともに、優勢な腸機能によるIBSサブタイプ(predominant bowel function IBS subtype)を共変量として組み入れて検討した。一次分析、主要エンドポイントに関して、包括解析(ITT)パラダイムの後、エンドポイントの欠測値を、対応する全体的な(欠測値のない対象)平均値を用いて推定した。ANCOVAモデルのための誤差自由度のこれに伴う調整は、処置の効果を検定するための適切な残差分散を得るために推定した各々の欠測値について1つの自由度を減ずることにより行った。要約値は、示すとおり、中央値(IQR)または平均値(±SE)として報告した。
【0143】
結果
ベースライン症状および人口学的情報
表1Aで示すとおり、60名の対象をアシマドリンによる頓服処置に無作為化し、40名の対象をプラシーボに無作為化した。
【表1A】

【0144】
表1Aおよび1Bは、試験の4週間の能動的部分(active part)に組み入れられた対象の特徴をまとめたものである。処置群とプラシーボ群とは、年齢、IBSサブタイプ、胃腸症状、不安および抑うつスコアおよびIBSに関連する生活の質スコアについて同等であった。ベースラインBDQによる症状の特徴付けおよび患者病歴に基づき、交替型腸パターンを有する者が39名、便秘型の者が27名、および下痢型の者が27名であり(1名の対象は分類できなかった)、これらは、種々の処置にほぼ等しく無作為化されたが、アシマドリンに無作為化されたIBS−Dがプラシーボと比較して若干多かった。
【表1B】

【0145】
4週間の試験期間中の処置剤の摂取量
処置期間中に用いたアシマドリンまたはプラシーボ錠剤の全体の中央値は、14.5(IQR=8.0〜24.5)であり、プラシーボ中央値は13.5(IQR=9.5〜19.5)、アシマドリンの中央値は16.5(IQR=8.0〜25.5)であった。痛みを伴った日あたりの錠数は、アシマドリン群については1.62(1.18〜1.83)、プラシーボ群については1.43(1.08〜1.88)であった。
【0146】
優勢な腸パターンによるIBSサブグループの腹痛に対する頓服試験薬剤の効果
有意なサブタイプ別処置相互作用(p=0.004)が、デルタ痛み強度スコアについて検出された。プラシーボ処置と比較してより大きなデルタが、アシマドリンに割り当てられたIBS−A対象の痛みスコアにみられた。ペアワイズ比較(補正なし)はIBS−Aにおいて有意差を示しており(p=0.003)、アシマドリンが、交替型対象においてプラシーボよりも有意に優れていたことが確認された(表2A、BおよびC、ならびに図1A参照)。適切な軽減を伴った日の割合については、IBSサブタイプ別処置相互作用効果は検出されなかったが(図1B参照)、IBS−C対象における適切な軽減の割合は、他の2つのサブタイプよりも実質的に小さかった(すなわち、サブタイプの全体的な主効果(overall main effect)(p=0.001)が検出された)。このように、当該薬物はIBS−Aにおける症状の軽減により有効と思われる。
【0147】
種々のサブタイプにおける腸機能を、ベースラインからのプラシーボの変化について修正した後に分析したものを、図2として示す。1日あたりの排便回数の変化を、週表示の時間に対してプロットしてある。1日あたりの排便回数の増加がIBS−CおよびIBS−Aの両方についてみられ、IBS−Dについては減少がみられた。これは、アシマドリンが種々のIBSサブタイプにおける腸機能を正常化したことを示すものである。
【表2】

【0148】
不安および抑うつ反応
不安スコアはアシマドリン処置により軽度の影響(p=0.053)を受けたが、数値差は小さい(表1B参照)。
【0149】
有害事象
深刻な臨床上または臨床検査上の有害事象はみられなかった。4回以上報告された有害事象は表3で示されるカテゴリーに分類され、これは各群において同様であったが、プラシーボ群において報告された胃腸事象の数がより大きかった。
【表3】

【0150】
この試験では、患者をサブタイプ別に分析した場合に、IBS−Aに対する効果が観察された。分析は、交替型腸機能を有するIBS患者において、アシマドリンによる痛みスコアの変化がプラシーボに対して大きいことを示した。アシマドリンは良好に耐容され、顕著な副作用も認められなかった。
【0151】
例2
アシマドリンの固定用量投与は、IBS−DおよびIBS−Aを処置するのに有効である
固定用量のアシマドリン(0.15mg、0.5mgまたは1.0mg b.i.d.)または同じに見えるプラシーボの、IBSを有する参加者における痛みおよび胃腸症状の改善に対する効果を評価する、12週間の無作為化二重盲検用量設定プラシーボ対照試験を行った。
【0152】
試験対象集団およびプロトコル
下痢型(IBS−D)、便秘型(IBS−C)、および交替型IBS(IBS−A)患者を、米国の120の場所で募集した。患者は、適切な症状、およびインタラクティブ音声応答システム(IVRS)データ収集システムに対するコンプライアンスを確保するための2週間のスクリーニング期間に供された後、12週間の処置および4週間の追跡調査期間に供された。患者は、12週間の処置期間中、同じに見えるプラシーボ、0.15mg、0.5mgまたは1.0mgのアシマドリン錠剤をb.i.d.で投与された。スクリーニング、処置および追跡調査の間、患者は、データを毎日IVRSに入力した。
【0153】
主要エンドポイントは、患者が適切な軽減についてのレスポンダーであった月数であり、ここで主要な指標(measure)は、「過去7日間にIBSによる痛みまたは不快感の適切な軽減がありましたか?」という質問であった。この指標は7日に1回質問され、1ヵ月あたり少なくとも3週間「はい」と答えた者を月次レスポンダーとした。複数の副次エンドポイント、腹部の痛みまたは不快感、排便回数、切迫感、膨満感、便硬度、IBS症状の適切な軽減およびいきみも収集した。さらに、有害臨床事象、臨床検査データおよび心電図(ECG)を収集した。
【0154】
ベースライン症状および人口学的情報
合計596名の対象を無作為化した。あらかじめ定義した基準により、対象の約33%がIBS−Dとして、37%がIBS−Cとして、そして31%がIBS−Aとして特徴づけられた。445名の対象はアシマドリンによる用量設定処置に無作為化され、151名の対象はプラシーボに無作為化された。451名の対象が、試験の12週間の能動的部分ならびに4週間の追跡調査期間を完了した。試験を完了した者のうち、344名の対象がアシマドリンの種々の用量に無作為化され、107名の対象がプラシーボに無作為化された。全試験を完了した対象の人口学的特徴を表4Aに示す。
【表4A】

【0155】
表4Aおよび4Bは、試験の12週間の能動的部分を完了した対象の特徴をまとめたものである。3つの処置群とプラシーボ群とは、年齢、性別、IBSサブタイプ、痛みスコア、ならびに、排便の回数、硬度、および切迫感についてほぼ同等であった。ベースラインBDQによる症状の特徴付けおよび患者病歴に基づき、交替型腸パターンを有する者が142名、便秘型の者が164名、および下痢型の者が145名であった。対象は、種々の処置にほぼ等しく無作為化されたが、種々の用量のアシマドリンに無作為化されたIBS−Aがプラシーボと比較して若干多かった。
【表4B】

【0156】
結果
概要
無作為化された596名の対象のうち、344名は2.0以上のベースライン痛みスコアを報告した。痛みスコアは0〜3のスケール上の自己申告スコアであり、0=痛みなし1=軽度の痛み、2=中程度の痛み、そして3=重度の痛みである。2.0以上のスコアを有する対象は、中程度または重度の痛みを有すると分類した。344名の中程度または重度の痛みを有する対象のうち、104名はIBS−Dを、114名はIBS−Aを、そして126名はIBS−Cを有すると分類された。
【0157】
中程度または重度の痛みを有する対象において、適切な軽減を伴う月数のパーセンテージの17%の改善(23%対40%)が、0.5mg(p=0.006)および1.0mg(p=0.005)の両方の用量レベルで観察された。IBSサブタイプ別の対象の評価では、IBS−DおよびIBS−A対象における利益が明らかとなった(図3Aと3Bを比較)。IBS−D対象では、適切な軽減を伴う月のパーセンテージのプラシーボと比較した有意な増加が0.5mgで(20%対47%、p=0.011)、そして、IBS−Aでは、プラシーボと比較して1.0mgの用量で(27%対50%、p=0.022)みられた。IBS−D対象では、切迫感、IBS症状の適切な軽減、排便回数、膨満感および日ごとの痛みの有意な改善が、0.5mgの用量でみられた。有意な痛みの改善は第3週(週3)までにみられ、全12週の処置を通じて持続した。利益は、女性患者および男性患者の両方でみられた。IBS−C対象においては、痛みにおける利益は観察されなかった。
【0158】
優勢な腸パターンによるIBSサブグループにおける腹痛または不快感に対する固定用量アシマドリン処置の効果
中程度または重度の痛みを有するIBS−D対象において、プラシーボと比較した適切な軽減を伴う月の割合の統計学的に有意な増加が、0.5mgのアシマドリンでみられた(20%対47%、p=0.011、図3B参照)。この改善は、LOTRONEXTM(アロセトロン)の2つの第III相試験の結果と比べて有利であった(図4参照)。Lotronex Iは、Camilleri, et al., Lancet 2000, 355(9209):1035-1040に報告されたデータを指し、Lotronex IIは、Camilleri, et al., Arch. Intern. Med. 2001, 161(14):1733-1740に報告されたデータを指す。
【0159】
プラシーボと比較した0.5mgのアシマドリン処置の統計学的に有意な効果は第2週(週2)から始まり、12週間の試験の大部分を通じて観察された(図5A参照)。さらに、0.5mgのアシマドリンによる処置は、12週間の試験を通じて、IBS−D対象において、Camilleri, et al. Arch. Intern. Med. 2001, 161(14):1733-1740に報告されているLOTRONEXTM(アロセトロン)による類似の対象の処置よりも迅速かつより顕著なIBSによる痛みまたは不快感の改善をもたらした(図5B)。
【0160】
重要なことに、0.5mgのアシマドリンによる処置は、女性および男性IBS−D対象において極めて類似した結果をもたらした(図6A参照)。現時点で男性患者におけるIBS−Dを処置するために承認された薬物がないため、この結果は重要である。
【0161】
痛みのない日の数は第1週(週1)に改善を示し、それは第2〜12週(週2〜12)(図6B参照)から有意なものとなった。早期の有効性は、アシマドリンが短期処置および長期処置の両方に有用たり得ることを示す。痛みのない日のパーセンテージの改善は、0.15、0.5および1.0mgのアシマドリンについて観察された(図6C参照)。0.5mgで、痛みのない日のパーセンテージのプラシーボに対する〜30%の改善がみられた。これは、Bardhan et al., Aliment Pharmacol Ther 2000;14:23-34に報告されたLOTRONEXTMでみられた痛みのない日のパーセンテージの10%の改善より極めて高い。
【0162】
0.5mgのアシマドリンを投与されているIBS−D対象において、統計学的に有意な痛みの改善は毎週(第3週(週3)以降)および毎月みられた(図8AおよびB参照)。また、1.0mgのアシマドリンを投与されているIBS−D対象において、統計学的に有意な痛みの改善が毎月および試験の12週間のうち6週でみられた(図8AおよびB参照)。これらの結果によれば、0.5mgのアシマドリンにより処置されたIBS−Dの月次レスポンダーのパーセンテージの統計学的に有意な増加は、3つの処置月のすべてで観察された(第1月(月1)では20%対48%、p=0.045、第2月(月2)では、18%対52%、p=0.010、そして第3月(月3)では、27%対50%、p=0.010、図9A参照)。IBS−A対象における痛みスコアの統計学的に有意な改善は、これらの投薬量ではみられなかった(図8C)。
【0163】
中程度または重度の痛みを有するIBS−A対象において、適切な軽減を伴う月の割合のプラシーボと比較した統計学的に有意な増加は、1.0mgでみられた(27%対50%、p=0.022、図7A参照)。この結果と整合して、1.0mgのアシマドリンで処置したIBS−A月次レスポンダーのパーセンテージの統計学的に有意な増加は、処置の最初の月に観察された(19%対46%、p=0.017、図9B参照)。1.0mgのアシマドリンで処置したIBS−A対象の痛みスコアについては、統計学的に有意な効果がみられなかった。
【0164】
中程度または重度の痛みを有するIBS−C対象では、IBSと関連する腹痛または不快感の統計学的に有意な改善は観察されなかった(図7B参照)。
【0165】
中程度または重度の痛みを有するIBS−D対象において、IBS症状、切迫感、排便回数および膨満感の適切な軽減の統計学的に有意な改善が、0.5mgの用量のアシマドリンでみられた。このように、全体的なIBS症状の統計学的に有意な改善が、0.5mg(23%対47%、p=0.038、図10A参照)または1.0mgのアシマドリン(23%対43%、p=0.039、図10A参照)で処置したIBS−D対象で観察された。同様に、全体的なIBS症状の統計学的に有意な改善が、1.0mgのアシマドリンで処置したIBS−A対象で観察された(30%対57%、p=0.032、図10B)。
【0166】
さらに、1日あたりの排便回数の劇的な減少が、0.5mgのアシマドリンで処置した中程度または重度の痛みを有するIBS−D対象で観察され、これは、第3週(週3)から始まり、処置が終わるまで持続した(図11AおよびB参照)。この結果と整合して、切迫感の統計学的に有意な低減が、0.5mgまたは1.0mgのアシマドリンで処置した中程度または重度の痛みを有するIBS−D患者において、処置の全3ヵ月間報告された(図12参照)。膨満感の有意な低減もまた、0.5mgのアシマドリンで処置した中程度または重度の痛みを有するIBS−D患者において、処置の第2および第3月にみられた(図13参照)。
【0167】
便硬度の統計学的に有意な変化は、IBS−DおよびIBS−C対象において、3つの投薬量のいずれにおいても観察されなかったが、アシマドリンはIBS−C対象の便を軟化させ、IBS−D対象の便を硬化させ、それによって、便硬度を正常化するように思われた(図14AおよびB参照)。
【0168】
有害事象
処置に関連した重篤な臨床上または臨床検査上の有害事象は観察されなかった。6つの有害事象が、少なくとも5%の頻度で生じた。発生率が用量依存的増加を示す有害事象はなかった。概して、有害事象は、アシマドリンの最も低い用量において、より高い用量よりも頻度が高かった。最も一般的な有害症状を表5にまとめてある。
【表5】

【0169】
この試験において、アシマドリンの固定用量による処置は、中程度または重度の痛みを有するIBS−D患者において、痛み、切迫感および排便回数、膨満感および全体的なIBS症状を含む複数のパラメータにわたり有意な改善をもたらした。これらの結果は、まず最初に処置の最初の月に観察されて、処置の3ヵ月間を通じて持続した。利益はまた、IBS−A患者において、痛みの適切な軽減および症状の適切な軽減の重要なエンドポイントについてみられた。アシマドリンは、良好に耐容され、用量依存的に生じる有害事象はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下痢型過敏性腸症候群(IBS−D)を処置するための方法であって、以下の工程:
a)IBS−Dを有する対象を特定する工程、および
b)該対象に、末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
便秘と下痢が交互に生じる過敏性腸症候群(IBS−A)を処置するための方法であって、以下の工程:
a)IBS−Aを有する対象を特定する工程、および
b)該対象に、末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項3】
末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストが、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
投与が、痛みおよび不快感を改善する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
投与が、腸の運動性を正常化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
処置がIBSの少なくとも1つの症状を改善し、該症状が、異常な切迫感、異常な排便回数、異常な便形状、異常な便通過、粘液の排泄および膨満感または腹部膨張感からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
処置が、患者における痛みまたは不快感を低減する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対象が哺乳動物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
対象がヒトである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストが、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、ICI204448、U-50488H、ADL 10-0101、ADL 10-0116、ADL 1-0398、EMD 60400、U 69593、TRK-820およびCR665、およびその誘導体、1または2以上のその薬学的に許容し得る塩、およびその組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストが、カッパ−オピエート受容体への約1μmol未満の親和性を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストが、約1:100またはそれ未満の範囲の、デルタおよび/またはミューオピエート受容体への親和性に対するカッパ−オピエート受容体への親和性の比率を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストが、ヒト対象において約50%を超える生物学的利用能を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
医薬組成物が、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
治療有効用量が、1日あたり約0.3mg〜約2mgである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
治療有効用量が、1日あたり約1.0mgである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
治療有効用量が、1日あたり約2.0mgである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
対象が、1日あたり約0.5mgのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を2用量投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
請求項14の方法、対象が、1日あたり約1.0mgのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を2用量投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
下痢を処置するための方法であって、以下の工程:
a)下痢を有する対象を特定する工程、および
b)該対象に、末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項21】
末梢選択的カッパ−オピエートアゴニストが、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、ICI204448、U-50488H、ADL 10-0101、ADL 10-0116、ADL 1-0398、EMD 60400、U 69593、TRK-820およびCR665からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
医薬組成物が、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
治療有効用量が、1日あたり約0.3mg〜約2mgである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩の、IBS−Dの処置のための医薬の製造のための使用。
【請求項25】
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩の、IBS−Aの処置のための医薬の製造のための使用。
【請求項26】
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩の、下痢の処置のための医薬の製造のための使用。
【請求項27】
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の有効量と、IBS−DまたはIBS−Aを有する対象に該化合物を投与するための指示手段とを含むキット。
【請求項28】
医薬組成物が、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドおよび/またはその薬理学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の有効量と、下痢を有する対象に該化合物を投与するための指示手段とを含むキット。
【請求項30】
医薬組成物が、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩を含む、請求項29に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A−8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−523492(P2010−523492A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501048(P2010−501048)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/056317
【国際公開番号】WO2008/121496
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(507244002)ティオガ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】