説明

不均一エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマー

エチレンおよび少なくとも1種類のアルファ−オレフィンのインターポリマーが請求され、ここでエチレンインターポリマーは平均Mならびにインターポリマーおよび高結晶性画分の間の谷温度Thcを、ATREFからのThcを上回る画分の平均MをATREFからの全ポリマーの平均Mで割ったもの(Mhc/M)が約1.95未満であるように有するものとして特徴付けられ、ならびにインターポリマーは60%未満のCDBIを有する。エチレンおよび少なくとも1種類のアルファ−オレフィンのインターポリマーは、高密度(HD)画分および全体密度をHD画分%<−2733.3+2988.7x+144111.5(x−0.92325)(式中、xはグラム/立方センチメートルでの密度である)となるように有するものとして特徴付けることもできる。これらの新規インターポリマーを含む組立物品も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【背景技術】
【0002】
改善された美観(光学的)および乱用抵抗(abuse resistance)(落槍(dart))特性を有するフィルムを製造することができるエチレンアルファ−オレフィンコポリマー樹脂は、最終使用者にとっての価値を創出する。不均一エチレンアルファ−オレフィンコポリマーは高結晶性(厚い結晶)およびコポリマー(薄板結晶)画分の両者を有する。
【0003】
フィルムの光学特性は表面の光沢、曇り(Haze)および清澄性の観点で定義することができる。曇りは内部曇り(バルク散乱)および外部曇り(表面散乱)に依存し得る。外部曇りおよび内部曇りの両者は、そのフィルムの製造に用いた樹脂の高結晶性画分含有率および高結晶性画分分子量の関数であり得る。高結晶性画分は光を散乱する厚い結晶で製造され得るものであり、したがって、高結晶性画分含有率の増加がフィルムの曇りを増加させ、その光学特性を損なう。高結晶性画分の分子量の減少は高結晶性画分内の結晶の厚みを増加させ得る。高結晶性画分結晶が厚くなればなるほど、フィルム光学は悪くなる。したがって、大きすぎる分子量は高い溶融弾性のために溶融破断を生じる可能性があるものの、高結晶性画分の含有率の減少および分子量の増加が光学の改善に望ましい。その上、光学の改善のための高結晶性画分の分子量の増加は、フィルムの落槍特性を損なう可能性がある。コポリマー画分のより大きい分子量は、より高いフィルム落槍に望ましい。特定の樹脂メルトインデックス(MIまたはI)については、光学の改善のための高結晶性画分の分子量の増加は、MIを一定に保つため、コポリマー画分の分子量を減少させることによって均衡を保たなければならない。このコポリマー分子量の減少は落槍特性を損なう。したがって、均衡のとれた落槍および光学特性に最適の高結晶性画分分子量が望ましい。高結晶性画分からの厚い結晶はフィルムに強度をもたらし、その引き裂き特性を改善する。したがって、光学を改善するための高結晶性画分含有率の減少は、フィルム引き裂きを損なう。引き裂きおよび光学特性の均衡を達成するため、高結晶性画分の最適含有率が望ましい。
【0004】
フィルムの表面曇りはエチレンアルファ−オレフィンコポリマーの分子量分布に依存し得る。非常に広い分子量分布は、通常、樹脂の溶融弾性を増加させ、それが表面溶融破断につながり、その一方で非常に狭い分子量分布は、表面溶融破断を生じる、ダイでの加工の問題を生じ得る。表面溶融破断の存在がフィルム光学特性を損ねるため、光学特性の改善には最適分子量分布も必要である。
【0005】
フィルムの落槍特性は分子量分布およびコポリマー画分含有率に依存し得る。分子量分布が狭いほど、およびコポリマー画分含有率が多いほど、フィルム落槍が大きくなる。狭すぎる分子量分布は光学特性および加工性(フィルム製作)を損なう可能性があり、したがって、加工性、落槍および光学特性の均衡には最適分子量分布が必要である。その上、コポリマー画分含有率の増加は高結晶性画分含有率の減少の代価として達成することができ、これはフィルム引き裂きを損ねる可能性がある。したがって、加工性、落槍、引き裂きおよび光学特性の良好な均衡を達成するため、分子量分布ならびに高結晶性およびコポリマー画分含有率の特定の組み合わせが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この分子量分布ならびに高結晶性およびコポリマー画分含有率および分子量の特定の組み合わせを有する、樹脂ファミリーおよびそれらの製造方法である。等しい密度およびメルトインデックスについては、この樹脂特性の組み合わせは均衡のとれた光学、落槍、引き裂きおよび加工性を有するフィルムを生成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、エチレンおよび少なくとも1種類のアルファ−オレフィンのインターポリマーであって、インターポリマーが平均Mならびにインターポリマーおよび高結晶性画分の間の谷温度(valley temperature)Thcを、ATREFからのThcを上回る画分の平均MをATREFからの全ポリマーの平均Mで割ったもの(Mhc/M)が約1.95未満、好ましくは、1.7未満であるように有し、ならびにインターポリマーが60%未満、好ましくは、55%未満のCDBIを有することを特徴とするインターポリマーが製造される。
【0008】
第2の実施形態において、エチレンおよび少なくとも1種類のアルファ−オレフィンのインターポリマーであって、インターポリマーが、高密度(HD)画分および全体密度をHD画分%<−2733.3+2988.7x+144111.5(x−0.92325)(式中、xはグラム/立方センチメートルでの密度である)となるように有するものと特徴付けられるインターポリマーが製造される。
【0009】
いずれの実施形態においても、インターポリマーは、好ましくは不均一に分岐する。いずれの実施形態のインターポリマーからも、フィルム、特には、少なくとも550グラムの落槍Aを含むか、または10%未満の曇価を含むか、または75単位超の45度光沢単位を含むか、または400グラム/ミル超の規準化MD引き裂きを含むフィルムを製造することができる。フィルムは第1または第2実施形態のいずれかのインターポリマーを含有する少なくとも1つの層を含むことができる。
【0010】
いずれの実施形態においても、インターポリマーは、少なくとも1種類の他の天然または合成ポリマー、好ましくは、低密度ポリエチレンをさらに含むことができる。いずれの実施形態のインターポリマーも約0.1〜約10g/10分のメルトインデックスを含むことができ、または約0.9〜約0.935g/cmの全体密度を含むことができ、または1000C原子あたり1未満の長鎖分岐を含むことができ、または約5未満の分子量分布、M/Mを含むことができる。
【0011】
作製された物品が第1または第2実施形態のいずれかのインターポリマーを含むことができる。さらに、第1または第2実施形態のいずれかのインターポリマーは少なくとも5重量%のゲルまで少なくとも部分的に架橋することができる。
【0012】
第3実施形態は、エチレンおよび少なくとも1種類のアルファ−オレフィンのインターポリマーを製造する方法であって、エチレンを少なくとも1種類のアルファ−オレフィンと重合の温度および圧力の下で触媒組成物と共に接触させてエチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを形成し、前記インターポリマーは平均Mならびにインターポリマーおよび高結晶性画分の間の谷温度Thcを、ATREFからのThcを上回る画分の平均MをATREFからの全ポリマーの平均Mで割ったもの(Mhc/M)が約1.95未満であるように有し、ならびに60%未満のCDBIを有し、前記重合条件は約1:1〜約5:1のアルミニウムの触媒金属原子に対するモル比を含む工程、ならびにエチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを回収する工程を含み、前記触媒組成物が、好ましくは、以下を組み合わせることから生じる生成物を含む方法:
(A)反応温度が約60℃を超えることがなく、好ましくは約40℃を超えることがなく、最も好ましくは約35℃を超えることがないような条件下で、以下を接触させることによって調製されるハロゲン化マグネシウム:
(1)一般式R”R’Mg.xAlR’3(式中、R”およびR’はアルキル基である)によって表される、少なくとも1種類の炭化水素可溶性マグネシウム成分、
(2)少なくとも1種類の非金属または金属ハロゲン化物源、
(B)式Tm(OR)yXy−x(式中、Tmは周期律表のIVB、VB、VIB、VIIBまたはVIII族の金属であり、Rは1〜約20、好ましくは、1〜約10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)によって表される、少なくとも1種類の遷移金属化合物、および
(C)存在する成分(A−2)の量が不十分である場合、望ましい過剰X:Mg比をもたらす、追加ハロゲン化物源。
【図面の簡単な説明】
【0013】
前述の要約に加えて以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むとき、より良好に理解されるであろう。しかしながら、本発明が示されるまさにその配置および手段に限定されるものではないことは理解されるべきである。図面内の構成要素は、本発明の原理を明瞭に示すことに立脚する代わりに強調を伴って、必ずしも縮尺比に従う必要はない。さらに、図面においては、幾つかの表示を通して同様の参照番号は対応する部品を示す。
【0014】
【図1】本発明の実施例1および比較例1の短鎖分岐分布およびATREFからのlog Mvデータをプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の考察は当業者が開示された組成物および方法を作製し、および用いることができるように提示される。記述される一般原理は、開示される組成物および方法の精神および範囲から逸脱することなく、詳述されるもの以外の実施態様および用途に適用することができる。開示される組成物および方法は示される実施形態に限定しようとするものではなく、開示される原理および特徴と矛盾しない最も広い範囲を容認しようとするものである。
【0016】
加工性、落槍、引き裂きおよび光学特性の均衡を樹脂分子量分布ならびに高結晶性およびコポリマー画分含有率の独自の組み合わせを作製することによって達成した。樹脂の特徴およびフィルム特性の詳細を表1、図1および表2に列挙する。高密度画分含有率が著しく低下し、コポリマー画分のものが増加した。高結晶性画分の粘度平均分子量の全ポリマーのものに対する比が低下し、高結晶性画分のより小さい分子量が示された。コポリマー画分の粘度平均分子量の全ポリマーのものに対する比が増加し、コポリマー画分のより大きい分子量が示された。樹脂の特徴におけるこれらの相違は、反応温度を約160Cから約180C、特には、175℃まで低下させ、およびAl/Tiモル比を約1:1から約5:1、特には、1:1から約2.5:1まで低下させることによって達成された。
【0017】
分子特性の独自の組み合わせを有する本発明の樹脂から製造されるフィルムは、MD引き裂きおよび加工性にいかなる犠牲もなく、著しく改善された落槍および光学を有していた。
【0018】
この樹脂は、フィルム引き裂き特性およびフィルム製作の最中の加工性を犠牲にすることなく光学および落槍特性の改善を必要とする用途に用いることができる。
【0019】
低反応温度は分子量分布を狭くするのに有用である。175℃の反応温度は、生産高(lb/hr)を著しく減少させることなく、狭い分子量分布を有する生成物を生成した。温度の有意のさらなる低下で分子量分布をさらに狭くすることができるが、生産を著しく低下させ、生成物に樹脂の加工性(フィルム製作)を損なわせもする。
【0020】
低Al/Ti比は分子量分布を狭くし、ならびに、その上、高結晶性画分を減少させ、およびコポリマー画分を増加させるのに有用である。3.0 Ti/40 Mg比を有するHEC−3触媒では、1.5のAl/Ti比で、反応器安定性を著しく冒すことなく、狭い分子量分布、少ない高結晶性画分および多くのコポリマー画分を有する生成物が生じた。
【0021】
好ましくは、反応器温度は約160℃〜約180℃である。
【0022】
好ましくは、アルミニウムの金属原子に対する比、好ましくは、Al/Tiは、約1:1〜約5:1である。
【0023】
開示されるエチレン性ポリマーのメルトインデックスは、ASTM 1238−04(2.16kgおよび190℃)による測定で、約0.01〜約1000g/10分であり得る。
エチレン系ポリマー
【0024】
適切なエチレン系ポリマーはチーグラー・ナッタ触媒で調製することができる。直鎖エチレン系ポリマーの例には、高密度ポリエチレン(HDPE)および直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が含まれる。適切なポリオレフィンには、これらに限定されるものではないが、エチレン/ジエンインターポリマー、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、エチレンホモポリマーおよびそれらの配合物が含まれる。
【0025】
適切な不均一直鎖エチレン系ポリマーには、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)および極低密度ポリエチレン(VLDPE)が含まれる。例えば、チーグラー・ナッタ触媒を用いて生成した幾つかのインターポリマーは約0.89〜約0.94g/cmの密度および、ASTM 1238−04(2.16kgおよび190℃)による測定で、約0.01〜約1,000g/10分のメルトインデックス(I)を有する。好ましくは、メルトインデックス(I)は約0.1〜約50g/10分であり得る。不均一直鎖エチレン系ポリマーは約3.5〜約5の分子量分布、M/Mを有することができる。
【0026】
直鎖エチレン系ポリマーは、そのポリマー中に少なくとも50モルパーセントの重合エチレンモノマーが存在する限り、1種類以上のα−オレフィンコポリマーから誘導される単位を含むことができる。
【0027】
高密度ポリエチレン(HDPE)は約0.94〜約0.97g/cmの範囲の密度を有し得る。HDPEは、典型的には、エチレンのホモポリマーまたはエチレンおよび低レベルの1種類以上のα−オレフィンコポリマーのインターポリマーである。HDPEが有する分岐鎖は、エチレンおよび1種類以上のα−オレフィンコポリマーの様々なコポリマーに対して、比較的少ない。HDPEは1種類以上のα−オレフィンコモノマーから誘導される単位5モル%未満を含んでなるものであり得る。
【0028】
直鎖エチレン系ポリマー、例えば、直鎖低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレン(ULDPE)は、従来の低結晶性高分岐エチレン系ポリマー、例えば、LDPEとは反対に、長鎖分岐が存在しないことを特徴とする。不均一直鎖エチレン系ポリマー、例えば、LLDPEは、米国特許第4,076,698号(Andersonら)に開示されるもののような方法により、チーグラー・ナッタ触媒の存在下におけるエチレンおよび1種類以上のα−オレフィンコモノマーの溶液、スラリーまたは気相重合によって調製することができる。これらのクラスの物質およびそれらの調製方法の両者に関連する考察は米国特許第4,950,541号(Taborら)に見出される。LLDPEを製造する他の特許および刊行物には、WO 2008/0287634、US 4198315、US 5487938、EP 0891381およびUS 5977251が含まれる。
【0029】
α−オレフィンコモノマーは、例えば、3〜20個の炭素原子を有することができる。好ましくは、α−オレフィンコモノマーは3〜8個の炭素原子を有し得る。例示的なα−オレフィンコモノマーには、これらに限定されるものではないが、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンが含まれる。インターポリマーである直鎖エチレン系ポリマーの商品例には、ATTANE(商標)超低密度直鎖ポリエチレンコポリマー、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂およびFLEXOMER(商標)極低密度ポリエチレンが含まれ、これらはすべてThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0030】
さらなる態様において、エチレンホモポリマー(すなわち、いかなるコモノマーをも含まず、したがって、短鎖分岐を含まない、高密度エチレンホモポリマー)を参照して用いるとき、そのようなポリマーを説明するのに「均一エチレンポリマー」または「均一直鎖エチレンポリマー」という用語を用いることができる。
【0031】
ここで説明されるエチレン系ポリマーは、短鎖分岐を有し、および比較的低い組成分布幅指数(composition distribution breadth index)(CDBI)を特徴とする比較的非同質の(または不均一の)エチレンポリマーである。すなわち、このエチレンポリマーは約55パーセント以下、好ましくは約50パーセント以下、より好ましくは約45パーセント以下のCDBIを有するが、通常は測定可能な高密度(結晶性)ポリマー画分を含む。
【0032】
CDBIはメジアン総コモノマーモル含有率(median total molar co-monomer content)の50パーセント以内のコモノマー含有率を有するポリマーの重量パーセントと定義され、ベルヌーイ分布で期待されるコモノマー分布に対するポリマー中のコモノマー分布の比較を表す。ポリオレフィンのCDBIは、当分野において公知の技術、例えば、Wild, et al., Journal of Polymer Science, Poly. Phys. Ed., Vol. 20, 441 (1982);L. D. Cady, 「The Role of Comonomer Type and Distribution in LLDPE Product Performance,」 SPE Regional Technical Conference, Quaker Square Hilton, Akron, OH, 107-119 (Oct. 1-2, 1985;または米国特許第4,798,081号(Hazlittら)および米国特許第5,008,204号(Stehling)に例えば記述される、昇温溶離分別(「TREF」)から得られるデータより都合良く算出することができる。しかしながら、TREF技術はCDBI算出におけるパージ量を含まない。より好ましくは、ポリマーのコモノマー分布は、例えば、米国特許第5,292,845号(Kawasakiら)に、およびJ.C.RandallによってRev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317に記述される技術に従い、13C NMR分析を用いて決定する。
【0033】
長鎖分岐の存在はエチレンホモポリマーにおいては13C核磁気共鳴(NMR)分光分析を用いることによって決定することができ、Randall(Rev. Macromol Chem. Phys., C29, V. 2&3, 285-297)によって記述される方法によって定量される。エチレン/1−オクテンインターポリマーを含むエチレンポリマーにおける長鎖分岐の存在を決定するのに有用な他の公知技術が存在する。2つのそのような例示法が小角レーザー光散乱検出器と組み合わされたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−LALLS)および示差粘度計検出器と組み合わされたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−DV)である。これらの技術の長鎖分岐検出および基礎理論への使用は文献において十分に文書化されている。例えば、Zimm, G. H. and Stockmayer, W. H., J. Chem. Phys., 17, 1301 (1949)、およびRudin, A., Modern Methods of Polymer Characterization, John Wiley & Sons, New York (1991) 103-112を参照。
【0034】
「不均一」および「不均一分岐」という用語は、そのエチレンポリマーを様々なエチレン対コモノマーモル比を有するインターポリマー分子の混合物と特徴付けることができることを意味する。不均一分岐直鎖エチレンポリマーはThe Dow Chemical CompanyからDQWLEX(商標)直鎖低密度ポリエチレンおよびATTANE(商標)超低密度ポリエチレン樹脂として入手可能である。不均一分岐直鎖エチレンポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒の存在下でのエチレンおよび1種類以上の任意のα−オレフィンコモノマーの溶液、スラリーまたは気相重合により、米国特許第4,076,698号(Andersonら)に開示されるような方法によって調製することができる。不均一分岐エチレンポリマーは、典型的には、約3〜約5の分子量分布、Mw/Mnを有するものと特徴付けられ、そのようなものとして、組成上の短鎖分岐分布および分子量分布の両者の点で実質的に直鎖のエチレンポリマーおよび均一分岐直鎖エチレンポリマーから区別される。
【0035】
超長鎖分岐(Highly Long Chain Branched)エチレン系ポリマー
ここでの新規不均一エチレンポリマーと配合することができる超長鎖分岐エチレン系ポリマー、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)は、エチレンモノマーの重合にフリーラジカル化学を用いる高圧法を用いて製造することができる。典型的なLDPEポリマー密度は約0.91〜約0.94g/cmである。低密度ポリエチレンは約0.01〜約150g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。超長鎖分岐エチレン系ポリマー、例えば、LDPEは「高圧エチレンポリマー」と呼ぶこともでき、これはそのポリマーが、オートクレーブまたは管状反応器内、約13,000psigの圧力で、フリーラジカル開始剤、例えば、過酸化物(例えば、米国特許第4,599,392号(McKinneyら)を参照)を用いて部分的に、または完全にホモ重合または共重合されていることを意味する。この方法は、長鎖分岐を含む、著しい分岐を有するポリマーを創出する。
【0036】
超長鎖分岐エチレン系ポリマーは、典型的には、エチレンのホモポリマーである。しかしながら、このポリマーは、ポリマー中に少なくとも50モルパーセントの重合エチレンが存在する限り、1種類以上のα−オレフィンコポリマーから誘導される単位を含むことができる。
【0037】
高度分岐エチレン系ポリマーの形成において用いることができるコモノマーには、これらに限定されるものではないが、典型的には20個以下の炭素原子を有する、α−オレフィンコモノマーが含まれる。例えば、これらのα−オレフィンコモノマーは、例えば、3〜10個の炭素原子を有することができ、または、代わりの場面において、α−オレフィンコモノマーは、例えば、3〜8個の炭素原子を有することができる。例示的なα−オレフィンコモノマーには、これらに限定されるものではないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび4−メチル−1−ペンテンが含まれる。代わりの場面において、例示的コモノマーには、これらに限定されるものではないが、α,β−不飽和C−C−カルボン酸、特には、α,β−不飽和C−C−カルボン酸のマレイン酸、ギ酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸誘導体、例えば、不飽和C−C15−カルボン酸エステル、特には、C−C−アルカノールのエステルまたは無水物,特には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、無水メタクリレート、無水マレイン酸および無水イタコン酸が含まれる。別の代わりの場面において、例示コモノマーには、これらに限定されるものではないが、カルボン酸ビニル、例えば、酢酸ビニルが含まれる。別の代わりの場面において、例示コモノマーには、これらに限定されるものではないが、n−ブチルアクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれる。
【0038】
方法
本発明のエチレン系ポリマーを製造するには、液相重合法を用いることができる。典型的には、そのようなプロセスは十分に撹拌された反応器、例えば、ループ反応器または球形反応器内、約150〜約300℃、好ましくは、約160〜約180℃の温度および約30〜約1000psi、好ましくは、約30〜約750psiの圧力で生じる。そのようなプロセスにおける滞留時間は約2〜約20分、好ましくは、約10〜約20分である。エチレン、溶媒、触媒および、任意に、1種類以上のコモノマーを反応器に連続的に供給する。これらの実施形態における例示的触媒には、これに限定されるものではないが、チーグラー・ナッタ触媒が含まれる。
例示的溶媒には、これに限定されるものではないが、イソパラフィンが含まれる。例えば、そのような溶媒はISOPAR E(ExxonMobil Chemical Co.、ヒューストン、テキサス州)の名称で商業的に入手可能である。次に、得られるエチレン系ポリマーおよび溶媒の混合物を反応器から取り出し、ポリマーを単離する。溶媒は、典型的には、溶媒回収ユニット、すなわち、熱交換器および気液分離ドラム(vapor liquid separator drum)によって回収され、再循環されて重合システムに戻される。
【0039】
超長鎖分岐エチレン系ポリマーを製造するには、高圧フリーラジカル開始重合法が典型的に用いられる。2つの異なる高圧フリーラジカル開始重合法のタイプが公知である。第1のタイプにおいては、1以上の反応域を有する撹拌オートクレーブ容器が用いられる。オートクレーブ反応器は、通常、開始剤もしくはモノマー供給またはその両者のための幾つかの注入点を有する。第2のタイプにおいては、1以上の反応域を有するジャケット装着管が反応器として用いられる。適切ではあるがそれに限定されるものではない、反応器の長さは約100〜約3000メートル、好ましくは、約1000〜約2000メートルであり得る。いずれのタイプの反応器の反応域の始まりも、反応のいずれかの開始剤、エチレン、テロマー、コモノマー(1種類以上)に加えてそれらのあらゆる組み合わせの側部注入によって定義される。高圧法は、各々1以上の反応器を含む、オートクレーブもしくは管状反応器内またはオートクレーブおよび管状反応器の組み合わせの内で行うことができる。
【0040】
触媒または開始剤はフリーラジカル重合を誘導しようとする反応域の前に注入する。他の実施形態の方法においては、エチレン系ポリマーを反応器システムの前で反応系に供給することができ、システムそれ自体の内部では形成しない。触媒活性の停止は、反応のフリーラジカル重合部分では高反応器温度の組み合わせによって、または極性溶媒、例えば、イソプロパノール、水の混合液または従来の開始剤溶液、例えば、分岐もしくは非分岐アルカンに溶解した開始剤を反応器に供給することによって達成することができる。
【0041】
実施形態の方法はプロセス再循環ループを含んで変換効率を改善することができる。幾つかの実施形態の方法においては、エチレン系ポリマーもしくは超長鎖分岐エチレン系ポリマーのいずれかの重合を阻害し得るか、または開示されるエチレン性ポリマーを形成する反応を阻害し得る、前反応サイクルからの残滓または副生物を中和するため、再循環ループを処理することができる。幾つかの実施形態の方法においては、新たなモノマーをこの流れに添加する。
【0042】
エチレン系ポリマーまたは超長鎖分岐エチレン系ポリマーの製造に用いられるエチレンは精製エチレンであり得、これはループ再循環流から極性成分を除去することによって、または新鮮なエチレンのみがエチレン系ポリマーの製造に用いられるように反応系構成を用いることによって得られる。超長鎖分岐エチレン系ポリマーの製造に精製エチレンが必要であることは典型ではない。そのような場合、再循環ループからのエチレンを用いることができる。
【0043】
フリーラジカル重合法におけるメルトインデックスの制御には連鎖移動剤またはテロゲン(CTA)が典型的に用いられる。連鎖移動はポリマー鎖の成長の停止を含み、したがって、そのポリマー材料の最終分子量を制限する。連鎖移動剤は、典型的には、成長するポリマー鎖と反応してその鎖の重合反応を停止させる水素原子供与体である。高圧フリーラジカル重合については、これらの薬剤は多くの異なるタイプのもの、例えば、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、アルデヒド、ケトンまたはアルコールであり得る。用いることができる典型的なCTAには、これらに限定されるものではないが、プロピレン、イソブタン、n−ブタン、1−ブテン、メチルエチルケトン、プロピオンアルデヒド、ISOPAR(ExxonMobil Chemical Co.)およびイソプロパノールが含まれる。プロセスにおいて用いようとするCTAの量は全反応混合物の約0.03〜約10重量パーセントである。
【0044】
分子量に反比例するポリマーのメルトインデックス(MIまたはI)は連鎖移動剤の濃度を操作することによって制御する。フリーラジカル重合では、水素原子の供与の後、モノマーと反応し、または既に形成されたオリゴマーもしくはポリマーと反応して新規ポリマー鎖を開始することができるラジカルをCTAが形成する。これは、連鎖移動剤中に存在するあらゆる官能基がポリマー鎖に導入されることを意味する。オレフィン性不飽和結合を有する多数のCTA、例えば、プロピレンおよび1−ブテンも、共重合反応により、それら自体をポリマー鎖に組み込むことができる。連鎖移動剤の存在下で生成されるポリマーは、幾つかの物理特性、例えば、加工性、光学特性、例えば、曇りおよび透明度、密度、剛性、降伏点、フィルム延伸および引き裂き強度の点で改変される。
【0045】
水素は、高結晶化度エチレン系ポリマーの製造において、高圧フリーラジカル重合の連鎖移動剤であることが示されている。開示される方法のための反応域において作製される分子量の制御は、触媒または開始剤が導入される反応域に水素を供給することによって達成することができる。最終生成物メルトインデックス制御は、フリーラジカル重合が行われる反応域に連鎖移動剤を供給することによって達成される。フリーラジカル連鎖移動剤の供給は反応域への直接注入によって、または反応器の前にそれらを供給することによって達成することができる。幾つかの実施形態の方法においては、プロセスの前端におけるCTAの過剰構築を防止するため、過剰のCTAを再循環流から除去するか、または注入を制限することが必要となり得る。
【0046】
エチレン系ポリマーの製造に一般に用いられるフリーラジカル開始剤は酸素であり、これは管状反応器において重合可能なモノマーおよび過酸化物の重量の0.0001〜0.005wt.%の従来量で使用可能である。好ましい開始剤は、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシアセテートおよびt−ブチルペルオキシ−2−ヘキサノエートまたはそれらの混合物である。これらの有機ペルオキシ開始剤は、重合可能なモノマーの重量の0.005〜0.2wt.%の従来量で用いられる。
【0047】
過酸化物開始剤は、例えば、有機過酸化物であり得る。例示的有機過酸化物には、これらに限定されるものではないが、環状過酸化物、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステルおよびペルオキシケタールが含まれる。
【0048】
例示的環状過酸化物には、これに限定されるものではないが、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナンが含まれる。そのような環状過酸化物は、例えば、商品名TRIGONOX 301(Akzo Nobel;Amhem、オランダ)で商業的に入手可能である。例示的ジアシルペルオキシドには、これに限定されるものではないが、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシドが含まれる。そのようなジアシルペルオキシドは、例えば、商品名TRIGONOX 36(Akzo Nobel)で商業的に入手可能である。例示的ジアルキルペルオキシドには、これらに限定されるものではないが、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、およびtert−ブチルクミルペルオキシドが含まれる。そのようなジアルキルペルオキシドは、例えば、商品名TRIGONOX 101、TRIGONOX 145、TRIGONOX 201、TRIGONOX BおよびTRIGONOX T(Akzo Nobel)で商業的に入手可能である。例示的ヒドロペルオキシドには、これらに限定されるものではないが、tert−アミルヒドロペルオキシド、および1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが含まれる。そのようなヒドロペルオキシドは、例えば、商品名TRIGONOX TAHPおよびTRIGONOX TMBH(Akzo Nobel)で商業的に入手可能である。例示的ペルオキシカーボネートには、これらに限定されるものではないが、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、tert−アミルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、およびtert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートが含まれる。そのようなペルオキシカーボネートは、例えば、商品名TRIGONOX 117、TRIGONOX 131およびTRIGONOX BPIC(Akzo Nobel)で商業的に入手可能である。例示的ペルオキシジカーボネートには、これらに限定されるものではないが、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、およびジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネートが含まれる。そのようなペルオキシジカーボネートは、例えば、商品名TRIGONOX EHPおよびTRIGONOX SBP(Akzo Nobel)で商業的に入手可能である。例示的ペルオキシエステルには、これらに限定されるものではないが、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルペルオキシネオデカノエート、tert−アミルペルオキシピバレート、tert−アミルペルオキシベンゾエート、tert−アミルペルオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、およびtert−ブチルペルオキシアセテートが含まれる。そのようなペルオキシエステル溶媒は、例えば、商品名TRIGONOX 121、TRIGONOX 123、TRIGONOX 125、TRIGONOX 127、TRIGONOX 133、TRIGONOX 141、TRIGONOX 21、TRIGONOX 23、TRIGONOX 257、TRIGONOX 25、TRIGONOX 27、TRIGONOX 41、TRIGONOX 421、TRIGONOX 423、TRIGONOX 425、TRIGONOX 42、TRIGONOX 99、TRIGONOX C、およびTRIGONOX F(Akzo Nobel)で商業的に入手可能である。例示的ペルオキシケタールには、これらに限定されるものではないが、1,1−ジ(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−シ゛(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、および2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタンが含まれる。そのようなペルオキシケタールは、例えば、商品名TRIGONOX 122、TRIGONOX 22、TRIGONOX 29およびTRIGONOX D(Akzo Nobel)で商業的に入手可能である。フリーラジカル開始剤系には、例えば、前述の過酸化物開始剤のいずれかの混合物または組み合わせが含まれる。過酸化物開始剤はフリーラジカル開始剤系の60重量パーセント未満を構成し得る。
【0049】
フリーラジカル開始剤系は、少なくとも1種類の炭化水素溶媒をさらに含む。炭化水素溶媒は、例えば、C〜C30炭化水素溶媒であり得る。例示的炭化水素溶媒には、これらに限定されるものではないが、無機溶媒、直鎖パラフィン溶媒、イソパラフィン溶媒、環状溶媒等が含まれる。炭化水素溶媒は、例えば、n−オクタン、イソ−オクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)、n−ドデカン、イソ−ドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン)および他のイソパラフィン溶媒からなる群より選択することができる。例示的炭化水素溶媒、例えば、イソパラフィン溶媒は、商品名ISOPAR C、ISOPAR EおよびISOPAR H(ExxonMobil Chemical Co.)で商業的に入手可能である。炭化水素溶媒はフリーラジカル開始剤系の99重量パーセント未満を構成することができる。
【0050】
実施形態の方法における使用に適する触媒には、望ましい組成またはタイプのポリマー、エチレン系ポリマーまたは超長鎖分岐エチレン系ポリマーの調製に適合する、あらゆる化合物または化合物の組み合わせが含まれる。不均一触媒を用いることができる。幾つかの実施形態の方法において、周知のチーグラー・ナッタ組成物、特には、2族金属ハロゲン化物上に支持される4族金属ハロゲン化物または混合ハロゲン化物およびアルコキシドならびに周知のクロムまたはバナジウム系触媒を含む不均一触媒を用いることができる、幾つかの実施形態の方法において、使用するための触媒は比較的純粋な有機金属化合物または金属錯体、特には、3−10族またはランタノイド系列から選択される金属に基づく化合物または錯体を含む均一触媒であり得る。系において1種類を上回る触媒が用いられる場合、用いられるあらゆる触媒が重合の条件下で他の触媒の性能に著しい悪影響を及ぼさないことが好ましい。望ましくは、重合の条件下で、活性が25パーセントを上回って、より好ましくは、10パーセントを上回って低下する触媒が存在しない。
【0051】
錯体金属触媒を用いる実施形態の方法においては、そのような触媒を、共触媒、好ましくは、共触媒、強ルイス酸またはそれらの組み合わせを形成するカチオンと組み合わせることによって活性化し、活性触媒組成物を形成することができる。用いるのに適する共触媒には、ポリマー性またはオリゴマー性アルミノキサン、特には、メチルアルミノキサンに加えて、不活性適合性非配位性イオン形成性化合物が含まれる。いわゆる修飾メチルアルミノキサン(MMAO)またはトリエチルアルミニウム(TEA)も共触媒としての使用に適する。そのような修飾アルミノキサンを調製するための技術の1つが米国特許第5,041,584号(Crapoら)に開示される。アルミノキサンは.米国特許第5,542,199号(Laiら)、第4,544,762号(Kaminskyら)、第5,015,749号(Schmidtら)、および第5,041,585号(Deavenportら)に開示されるように製造することもできる。
【0052】
幾つかの実施形態の方法において、処理助剤、例えば、可塑剤を実施形態のエチレン性ポリマー生成物に含めることもできる。これらの助剤には、これらに限定されるものではないが、フタレート、例えば、ジオクチルフタレートおよびジイソブチルフタレート、天然油、例えば、ラノリン、ならびに石油精製から得られるパラフィン、ナフテンおよび芳香族油、ならびにロジンまたは石油原料からの液体樹脂が含まれる。処理助剤として有用な油の例示的クラスには、白色鉱油、例えば、KAYDOL油(Chemtura Corp.;Middlebury、Conn.)およびSHELLFLEX 371ナフテン油(Shell Lubricants;ヒューストン、Tex.)が含まれる。他の適切な油はTUFFLO油(Lyondell Lubricants;ヒューストン、Tex)である。
【0053】
幾つかの実施形態の方法においては、実施形態のエチレン性ポリマーを1種類以上の安定化剤、例えば、酸化防止剤、例えば、IRGANOX 1010およびIRGAFOS 168(Ciba Specialty Chemicals;Glattbrugg、スイス)で処理する。一般には、押出しまたは他の溶融処理に先立ってポリマーを1種類以上の安定化剤で処理する。他の実施形態の方法において、他のポリマー添加物には、これらに限定されるものではないが、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核形成剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、処理助剤、潤滑剤、安定化剤、煙防止剤(smoke inhibitors)、粘度調節剤および粘着防止剤が含まれる。実施形態のエチレン性ポリマー組成物は、例えば、実施形態のエチレン性ポリマー実施形態のエチレン性ポリマーの重量を基準にして、総重量で10パーセント未満の1種類以上の添加物を含み得る。
【0054】
実施形態のエチレン性ポリマーはさらに混合することができる。幾つかの実施形態のエチレン性ポリマー組成物において、1種類以上の酸化防止剤をポリマーとさらに混合し、混合したポリマーをペレット化することができる。混合エチレン性ポリマーは1種類以上の酸化防止剤をいかなる量でも含むことができる。例えば、混合エチレン性ポリマーは100万部のポリマーあたり約200〜約600部の1種類以上の酸化防止剤を含むことができる。加えて、混合エチレン性ポリマーは100万部のポリマーあたり約800〜約1200部の亜リン酸系酸化防止剤を含むことができる。混合された開示エチレン性ポリマーは100万部のポリマーあたり約300〜約1250部のステアリン酸カルシウムをさらに含むことができる。
【0055】
架橋剤
幾つかの適切な架橋剤がZweifel Hans et al., 「Plastics Additives Handbook,」 Hanser Gardner Publications, Cincinnati, Ohio, 5th edition, Chapter 14, pages 725-812 (2001);Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 17, 2nd edition, Interscience Publishers (1968):およびDaniel Seern, 「Organic Peroxides,」 Vol. 1, Wiley-Interscience, (1970)に開示され、これらはすべて参照によりここに組み込まれる。
【0056】
適切な架橋剤の非限定的な例には、過酸化物、フェノール、アジド、アルデヒド−アミン反応生成物、置換尿素、置換グアニジン、置換キサンタン、置換ジチオカルバメート、イオウ含有化合物、例えば、チアゾール、スルフェンアミド、チウラミジスルフィド(thiuramidisulfides)、パラキノンジオキシム、ジベンゾパラキノンジオキシム、イオウ、イミダゾール、シランおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0057】
適切な有機過酸化物架橋剤の非限定的な例には、アルキル過酸化物、アリール過酸化物、ペルオキシエステル、ペルオキシカーボネート、ジアシル過酸化物、ペルオキシケタール、環状過酸化物およびそれらの組み合わせが含まれる。幾つかの実施形態において、有機過酸化物はジクミルペルオキシダーゼ、t−ブチルイソプロピリデンペルオキシベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチル−クミルペルオキシダーゼ、ジ−t−ブチルペルオキシダーゼ、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシンまたはそれらの組み合わせである。一実施形態において、有機過酸化物はジクミルペルオキシダーゼである。有機過酸化物架橋剤に関するさらなる教示はC. P. Park, 「Polyolefin Foam」, Chapter 9 of Handbook of Polymer Foams and Technology, edited by D. Klempner and K. C. Frisch, Hanser Publishers, pp. 198-204, Munich (1991)に開示され、これは参照によりここに組み込まれる。
【0058】
適切なアジド架橋剤の非限定的な例には、アジドホルメート、例えば、テトラメチレンビス(アジドホルメート)、芳香族ポリアジド、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアジド、およびスルホンアジド、例えば、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルアジド)が含まれる。アジド架橋剤の開示は米国特許第3,284,421号および第3,297,674号に見出すことができ、これらの両者は参照によりここに組み込まれる。
【0059】
ポリ(スルホニルアジド)は、ここで開示されるエチレン/α−オレフィンインターポリマーに対して反応性である、少なくとも2つのスルホニルアジド基(すなわち、−SO)を有するあらゆる化合物である。幾つかの実施形態において、ポリ(スルホニルアジド)はX−R−Xの構造を有し、式中、各々のXは−SOであり、Rは非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル、ヒドロカルビルエーテルまたはケイ素含有基である。幾つかの実施形態において、R基は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーおよびスルホニルアジド基の容易な反応を許容するのに十分なほどに、スルホニルアジド基を分離するのに十分な炭素、酸素またはケイ素、好ましくは炭素原子を有する。他の実施形態において、R基は少なくとも1、少なくとも2または少なくとも3個の炭素、酸素またはケイ素、好ましくは、炭素原子をスルホニルアジド基間に有する。「不活性に置換された」という用語は、望ましい反応(1以上)または生じる架橋ポリマーの望ましい特性を望ましくないように妨害することがない原子または基での置換を指す。そのような基にはフッ素、脂肪族または芳香族エーテル、シロキサン等が含まれる。Rの適切な構造の非限定的な例には、アリール、アルキル、アルカリール、アリールアルキル、シラニル、ヘテロシクリル、および他の不活性基が含まれる。幾つかの実施形態において、R基は少なくとも1つのアリール基をスルホニル基の間に含む。他の実施形態において、R基は少なくとも2つのアリール基を含む(例えば、Rが4,4’ジフェニルエーテルまたは4,4’−ビニフェルであるとき)。Rが1つのアリール基であるとき、ナフチレンビス(スルホニルアジド)の場合にように、その基が1を上回る環を有することが好ましい。幾つかの実施形態において、ポリ(スルホニル)アジドには1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、ならびに分子あたり平均で1〜8個の塩素原子および約2〜5のスルホニルアジド基を含む塩素化脂肪族炭化水素の混合スルホニルアジド、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。他の実施形態において、ポリ(スルホニルアジド)には、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)およびビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタンならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0060】
適切なアルデヒド−アミン反応生成物の非限定的な例には、ホルムアルデヒド−アンモニア、ホルムアルデヒド−塩化エチル−アンモニア、アセトアルデヒド−アンモニア、ホルムアルデヒド−アニリン、ブチルアルデヒド−アニリン、ヘプトアルデヒド−アニリンおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0061】
適切な置換尿素の非限定的な例には、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリペンチルチオ尿素、1,3−ビス(2−ベンゾチアゾリルメルカプトメチル)尿素、N,N−ジフェニルチオ尿素およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0062】
適切な置換グアニジンの非限定的な例には、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、ジフェニルグアニジンフタレート、ホウ酸ジカテコールのジ−o−トリルグアニジン塩およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0063】
適切な置換キサンテートの例には、亜鉛エチルキサンテート、ナトリウムイソプロピルキサンテート、二硫化ブチルキサントゲン酸、カリウムイソプロピルキサンテート、亜鉛ブチルキサンテートおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0064】
適切なジチオカルバメートの非限定的な例には、銅ジメチル−、亜鉛ジメチル−、テルルジエチル−、カドミウムジシクロヘキシル−、鉛ジメチル−、鉛ジメチル−、セレンジブチル−、亜鉛ペンタメチレン−、亜鉛ジデシル−、亜鉛イソプロピルオクチル−ジチオカルバメートおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0065】
適切なチアゾールの非限定的な例には、2−メルカプトベンゾチアゾール、亜鉛メルカプトチアゾリルメルカプチド、2−ベンゾチアゾリル−N,N−ジエチルチオカルバミルスルフィド、2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0066】
適切なイミダゾールの非限定的な例には、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプト−4,4,6−トリメチルジヒドロピリミジンおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0067】
適切なスルフェンアミドの非限定的な例には、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾール−、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール−、N,N−ジイソプロピルベンゾチアゾール−、N−(2,6−ジメチルモルホリノ)−2−ベンゾチアゾール−、N,N−ジエチルベンゾチアゾール−スルフェンアミドおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0068】
適切なチウラミジスルフィドの非限定的な例には、N,N’−ジエチル−、テトラブチル−、N,N’−ジイソプロピルジオクチル−、テトラメチル−、N,N’−ジシクロヘキシル−、N,N’−テトララウリルチウラミジスルフィドおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0069】
幾つかの実施形態において、架橋剤はシランである。ここで開示されるエチレン/α−オレフィンインターポリマーまたはポリマー配合物に有効にグラフト化し、および/またはそれらを架橋することができるあらゆるシランを用いることができる。適切なシラン架橋剤の非限定的な例には、エチレン性不飽和ヒドロカルビル基、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニルまたはガンマ−(メト)アクリルオキシアリル基、ならびに加水分解性基、例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシおよびヒドロカルビルアミノ基を含む不飽和シランが含まれる。適切な加水分解性基の非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロピオニルオキシ(proprionyloxy)、アルキルおよびアリールアミノ基が含まれる。他の実施形態において、シランはインターポリマーにグラフト化することができる不飽和アルコキシシランである。これらのシランの幾つかおよびそれらの調製方法は米国特許第5,266,627号により完全に説明され、これは参照によりここに組み込まれる。さらなる実施形態において、シラン架橋剤はビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよびそれらの組み合わせである。
【0070】
シラン架橋剤の量は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーまたはポリマー配合物の性質、用いられるシラン、処理条件、グラフト化開始剤の量、最終用途および他の要素依存して広範に変化し得る。ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)が用いられるとき、VTMOSの量は、シラン架橋剤およびインターポリマーまたはポリマー配合物の総量を基準にして、一般には少なくとも約0.1重量パーセント、少なくとも約0.5重量パーセントまたは少なくとも約1重量パーセントである。
【0071】
使用
実施形態のエチレン性ポリマーは有用物品を製造するのに様々な通常の熱可塑性製造プロセスにおいて用いることができ、それらの物品には、少なくとも1つのフィルム層を含む物体、例えば、単層フィルム、またはキャスト、ブロー、カレンダー処理もしくは押出しコーティング法によって調製される多層フィルム中に少なくとも1つの層を含む物体、成型物品、例えば、ブロー成型、注型またはロトモールド物品、押出し、繊維、および織物または不織布が含まれる。実施形態のエチレン性ポリマーを含む熱可塑性組成物には、他の天然または合成材料、ポリマー、添加物、補強剤、発火抵抗性添加物、酸化防止剤、安定化剤、着色剤、増量剤、架橋剤、発泡剤および可塑剤との配合物が含まれる。
【0072】
実施形態のエチレン性ポリマーを他の用途のための繊維の製造において用いることができる。実施形態のエチレン性ポリマーまたはそれらの配合物から調製することができる繊維には、ステープル繊維、トウ、多成分、シース/コア、ツイストおよびモノフィラメントが含まれる。適切な繊維形成法には、米国特許第4,340,563号(Appelら)、第4,663,220号(Wisneskiら)、第4,668,566号(Nohrら)および第4,322,027号(Reba)に開示されるようなスパンボンデッドおよびメルトブロー技術、米国特許第4,413,110号(Kaveshら)に開示されるようなゲルスパン繊維、米国特許第3,485,706号(May)に開示されるような織物もしくは不織布、または、他の繊維、例えば、ポリエステル、ナイロンもしくは木綿との配合物を含む、そのような繊維から製造される構造物、熱形成物品、異形押出しおよび共押出しを含む押出し成形品、カレンダー処理物品ならびに伸加工、撚りもしくは捲縮加工糸もしくは繊維が含まれる。
【0073】
実施形態のエチレン性ポリマーは様々なフィルムにおいて用いることができ、それらのフィルムには、これらに限定されるものではないが、透明収縮フィルム(clarity shrink films)、照合収縮フィルム、キャスト延伸フィルム、サイレージフィルム、延伸フーダーフィルム(stretch hooder films)、シーラント、自立型袋フィルム(stand up pouch films)、ライナーフィルムおよびおむつ後板が含まれる。
【0074】
実施形態のエチレン性ポリマーは他の直接最終使用用途においても有用である。実施形態のエチレン性ポリマーは、ワイヤおよびケーブルコーティング作業に、真空形成作業のためのシート押出しにおいて、および、注型、ブロー成型法もしくはロトモールディング法の使用を含む、成型物品の形成に有用である。実施形態のエチレン性ポリマーを含む組成物は通常のポリオレフィン加工技術を用いて組立物品に形成することもできる。
【0075】
実施形態のエチレン性ポリマーに適する他の用途には、フィルムおよび繊維、ソフトタッチ商品、例えば、歯ブラシの柄および機器の取っ手、ガスケットおよび輪郭、接着剤(ホットメルト接着剤および感圧型接着剤を含む)、履物(靴底およびシューライナーを含む)、自動車内装部品および輪郭、フォーム商品(連続および独立気泡の両者)、他の熱可塑性ポリマー、例えば、高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレンまたは他のオレフィンポリマーの耐衝撃性改良剤、コート布、ホース、管類、目止め剤、キャップライナー、床材、および潤滑剤の、流動点改良剤としても知られる、粘度指数改良剤が含まれる。
【0076】
実施形態のエチレン性ポリマーのさらなる処理を行って実施形態のエチレン性ポリマーを他の最終用途に適用させることができる。例えば、本発明のポリマーまたはそれらを含む配合物を用いて分散体(水性および非水性の両者)を形成することもできる。PCT公開第2005/021622号(Strandburgら)に開示されるように、実施形態のエチレン性ポリマーを含む発泡フォームを形成することもできる。実施形態のエチレン性ポリマーをあらゆる公知手段、例えば、過酸化物、電子ビーム、シラン、アジドまたは他の架橋技術の使用によって架橋させることもできる。実施形態のエチレン性ポリマーを、例えば、グラフト化(例えば、無水マレイン酸(MAH)、シランまたは他のグラフト化剤の使用による)、ハロゲン化、アミノ化、スルホン化または他の化学的修飾により、化学的に修飾することもできる。
【0077】
添加物および補助剤を形成後の実施形態のエチレン性ポリマーに添加することができる。適切な添加物には、充填剤、例えば、粘土、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末化金属を含む有機または無機粒子、炭素繊維、窒化ケイ素繊維、スチールワイヤもしくはメッシュおよびナイロンもしくはポリエスエルコードを含む有機または無機繊維、ナノサイズ粒子、粘土等、増粘剤、パラフィンまたはナフテレン油(napthelenic oils)を含む油増量剤、ならびに、実施形態の方法に従って製造されるか、または製造することができる他のポリマーを含む、他の天然および合成ポリマーが含まれる。
【0078】
実施形態のエチレン性ポリマーと他のポリオレフィンとの配合および混合を行うことができる。実施形態のエチレン性ポリマーとの配合に適するポリマーには、天然および合成ポリマーを含む、熱可塑性および非熱可塑性ポリマーが含まれる。配合用の例示ポリマーには、ポリプロピレン(耐衝撃改良性ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンおよびランダムエチレン/プロピレンコポリマーの両者)、多反応器PE(チーグラー・ナッタPEおよびメタロセンPEの「反応器内」配合物、例えば、米国特許第6,545,088号(Kolthammerら)、第6,538,070号(Cardwellら)、第6,566,446号(Parikhら)、第5,844,045号(Kolthammerら)、第5,869,575号(Kolthammerら)、および第6,448,341号(Kolthammerら)に開示される生成物)を含む、高圧フリーラジカルLDPE、チーグラー・ナッタLLDPE、メタロセンPEを含む様々なタイプのポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、耐衝撃性改良ポリ睡蓮、ABS、スチレン/ブタジエンブロックコポリマーおよびそれらの水素化誘導体(SBSおよびSEBS)、ならびに熱可塑性ポリウレタンが含まれる。均質ポリマー、例えば、オレフィンプラストマーおよびエラストマー、エチレンおよびプロピレン系コポリマー(例えば、商品名VERSIFY(商標)Plastomers & Elastomers(The Dow Chemical Company)およびVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)で入手可能なポリマー)も実施形態のエチレン性ポリマーを含む配合物中の成分として有用であり得る。
【0079】
実施形態のエチレン性ポリマーの配合物および混合物には、熱可塑性ポリオレフィン配合物(TPO)、熱可塑性エラストマー配合物(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)およびスチレン性ポリマー配合物が含まれ得る。TPEおよびTPV配合物は、それらの官能化または不飽和誘導体を含む実施形態のエチレン性ポリマーを通常のブロックコポリマー、特には、SBSブロックコポリマーを含む任意のゴムおよび、任意に、架橋剤または加硫剤と組み合わせることによって調製することができる。TPO配合物は、一般には、実施形態のエチレン性ポリマーをポリオレフィンおよび、任意に、架橋剤または加硫剤と配合することによって調製される。前記配合物は成型体の形成および、任意に、得られる成型物品の架橋において用いることができる。異なる成分を用いる類似の手順が米国特許第6,797,779号(Ajbaniら)に従来開示されている。
【0080】
定義
「組成物」という用語は、ここで用いられる場合、その組成物を構成する物質の混合物に加えて、その組成物の物質から形成される反応生成物および分解生成物を含む。
【0081】
「配合物」または「ポリマー配合物」という用語は、ここで用いられる場合、2種類以上のポリマーの緊密物理混合物(すなわち、反応なし)を意味する。配合物は混和性であってもなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。配合物は相分離していてもいなくてもよい。配合物は、透過型電子顕微鏡検査、光散乱、X線散乱および当分野において公知の他の方法からの決定で、1以上のドメイン構造を含んでいてもいなくてもよい。配合は2種類以上のポリマーをマクロレベル(例えば、溶融配合樹脂または混合)またはマイクロレベル(例えば、同じ反応器内で同時に形成する)で物理的に混合することによってなすことができる。
【0082】
「直鎖」という用語はポリマーのポリマー主鎖に測定可能または実証可能な長鎖分岐が欠けているポリマーを指し、例えば、そのポリマーは平均で1000炭素あたり0.01未満の長分岐で置換される。
【0083】
「ポリマー」という用語は、同じタイプであろうと異なるタイプであろうと、モノマーを重合することによって調製されるポリマー性化合物を指す。したがって、一般用語のポリマーは、通常は1タイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すのに用いられる「ホモポリマー」という用語および定義される通りの「インターポリマー」という用語を包含する。「エチレン/α−オレフィンポリマー」という用語は説明される通りのインターポリマーを示すものである。
【0084】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。一般用語インターポリマーは2種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すのに通常用いられるコポリマーおよび3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0085】
「エチレン系ポリマー」という用語は、50モルパーセントを上回る重合エチレンモノマー(重合性モノマーの総量を基準とする)を含むポリマーを指し、任意に、少なくとも1種類のコモノマーを含むことができる。
【0086】
「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」という用語は、50モルパーセントを上回る重合エチレンモノマー(重合性モノマーの総量を基準とする)および少なくとも1種類のα−オレフィンを含むインターポリマーを指す。
【0087】
「エチレン性ポリマー」という用語は、エチレン系ポリマーおよび少なくとも1種類の超長鎖分岐エチレン系ポリマーの結合から得られるポリマーを指す。
【0088】
試験方法
密度
密度(g/cm)はイソプロパノール中でASTM−D 792−03、方法Bに従って測定する。検体は、成型の1時間以内に、測定前にイソプロパノール浴中、23℃で8分間調整して熱平衡を達成した後に測定する。検体は、ASTM D−4703−00附属Aに従い、手順Cによる約190℃で約5分の初期化熱期間および15℃/分冷却速度で圧縮成型する。検体は、「触って冷たく」なるまで、プラス内で連続的に冷却しながら45℃まで冷却する。
【0089】
メルトインデックス
メルトインデックス、すなわちIはASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定し、10分あたりに溶出するグラムで報告する。I10はASTM D 1238、条件190℃/10kgに従って測定し、10分あたりに溶出するグラムで報告する。
【0090】
DSC結晶化度
広範囲の温度にわたるポリマーの溶融および結晶化挙動を測定するのに示差走査熱量測定(DSC)を用いることができる。例えば、RCS(冷蔵冷却システム)およびオートサンプラーを備えるTA Instruments Q1000 DSCがこの分析の実施に用いられる。試験の間、50ml/分の窒素パージガス流を用いる。各々のサンプルを約175℃で薄膜に溶融圧縮する。次に、溶融したサンプルを室温(〜25℃)まで空冷する。3−10mg、6mm径の検体を冷却ポリマーから抜き出し、秤量して軽量アルミニウムパン(約50mg)に入れ、圧着閉鎖する。その後、分析を行ってその熱特性を決定する。
【0091】
サンプルの熱的挙動はサンプル温度を上下に傾斜させて熱流対温度プロフィールを作成することによって決定する。まず、その熱的履歴を除去するため、サンプルを180℃まで急速に加熱し、等温で3分間保持する。次に、サンプルと10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、−40℃で3分間等温保持する。続いて、サンプルを10℃/分の加熱速度で150℃まで(これが「第2熱」傾斜である)加熱する。その冷却および第2加熱曲線を記録する。冷却曲線は結晶化の開始からの基線終末点を−20℃に設定することによって分析する。加熱曲線は−20℃からの基線終末点を溶融の終了に設定することによって分析する。決定される値はピーク融解温度(T)、ピーク結晶化温度(T)、融解熱(H)(ジュール毎グラム表示)および以下を用いるポリエチレンサンプルの算出結晶化度%である:
結晶化度%=((H)/(292J/g))×100。
融解熱(H)およびピーク融解温度は第2加熱曲線から報告する。ピーク結晶化温度は冷却曲線から決定する。
【0092】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
GPCシステムは、オンボード示差屈折系(RI)を備えるWaters(Milford、MA)150C高温クロマトグラム(他の適切な高温GPC機器には、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)モデル210およびモデル220が含まれる)からなる。追加の検出器には、Polymer ChAR(Valencia、スペイン)からのIR4赤外線検出器、Precision Detectors(Amherst、MA)2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、およびViscotek(ヒューストン、TX)150R 4−キャピラリ溶液粘度計が含まれる。最後の2つの独立した検出器および少なくとも1つの第1検出器を備えるGPCは、「GPC」という用語が単独では一般に従来のGPCを指すのに対して、時折「3D−GPC」と呼ばれる。サンプルに依存して、光散乱検出器の15度角または90度角を算出目的で用いる。データ収集はViscotek TriSECソフトウェア、バージョン3および4−チャンネル Viscotek Data Manager DM400を用いて行う。システムはPolymer Laboratories(Shropshire、UK)からのオンライン溶媒脱気装置も備える。適切な高温GPCカラム、例えば、4本の30cm長Shodex HT803 13ミクロンカラムまたは4本の20ミクロン混合細孔径包装(20-micron mixed-pore-size packing)の30cm Polymer Labsカラム(MixA LS、Polymer Labs)を用いることができる。サンプルカルーセル区画は140℃で稼動させ、カラム区画は150℃で稼動させる。サンプルは溶媒50ミリリットル中にポリマー0.1グラムの濃度で調製する。クロマトグラフィー溶媒およびサンプル調製溶媒は200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む。両溶媒は窒素と共に散布する。ポリエチレンサンプルは、一般には、160℃で4時間撹拌する。注入容積は200マイクロリットルである。GPCを通過する流束は1 ml/分に設定する。
【0093】
GPCカラムセットは、実施例を流す前に、21のナロー分子量分布ポリスチレン標準を流すことによって較正する。標準の分子量(MW)はモルあたり580〜8,400,000グラムの範囲であり、それらの標準が6つの「カクテル」混合物に含まれていた。各々の標準混合物は個々の分子量の間に少なくとも10倍の隔たりを有する。標準混合物はPolymer Laboratories(Shropshire、UK)から購入する。ポリスチレン標準は、モルあたり1,000,000グラム以上の分子量については溶媒50mL中に0.025gで、モルあたり1,000,000グラム未満の分子量については溶媒50mlあたり0.05gで調製する。ポリスチレン標準は30分間穏やかに撹拌しながら80℃で溶解した。まず、最高分子量成分を減少させて分解を最小限にするため、ナロー標準混合物を流す。ポリスチレン標準ピーク分子量はMark−Houwink Kならびに(時折、αと呼ばれる)ポリスチレンおよびポリエチレンについて後述される値を用いてポリエチレンMに変換する。この手順の論証については実施例の項を参照のこと。
【0094】
3D−GPCで、絶対重量平均分子量(「Mw,Abs」)および固有粘度も適切なナローポリエチレン標準から前述のものと同じ条件を用いて得られる。これらのナロー直鎖ポリエチレン標準はPolymer Laboratories(Shropshire、UK;Part No.’s PL2650−0101およびPL2650−0102)から入手することができる。
【0095】
多検出器オフセットを決定するための系統的な取り組みは、Dow 1683ブロードポリスチレン(American Polymer Standards Corp.;Mentor、OH)からの三検出器log(Mおよび固有粘度)結果またはナローポリスチレン標準較正曲線からのナロー標準カラム較正結果に対するその等価物を最適化する、Balke、Moureyら(Mourey and Balke, Chromatography Polym., Chapter 12, (1992))(Balke, Thitiratsakul, Lew, Cheung, Mourey, Chromatography Polym., Chapter 13, (1992))によって公開されるものに一致する方法で行う。検出器容積オフセット決定を説明する分子量データはZimm(Zimm, B.H., J. Chem. Phys., 16, 1099 (1948))およびKratochvil(Kratochvil, P., Classical Light Scattering from Polymer Solutions, Elsevier, Oxford, NY (1987))によって公開されるものに一致する方法で入手する。分子量の決定において用いられる全体の注入濃度は、質量検出器面積および適切な直鎖ポリエチレンホモポリマーまたはポリエチレン標準のうちの1つから誘導される質量検出器定数から得られる。算出分子量は、言及されるポリエチレン標準のうちの1つ以上および0.104の屈折率濃度計数、dn/dcから誘導される光散乱定数を用いて得られる。一般には、質量検出器応答および光散乱定数は約50,000ダルトンを上回る分子量を有する直鎖標準から決定するべきである。粘度計較正は、製造者によって記述される方法を用いて、または、その代わりに、適切な直鎖標準、例えば、Standard Reference Materials(SRM)1475a、1482a、1483または1484aの公開値を用いることによって達成することができる。クロマトグラフィー濃度は第2ビリアル係数効果(2nd viral coefficient effects)(分子量に対する濃度効果)の取り組みを排除するのに十分な低さであるものと仮定する。
【0096】
分析的昇温溶離分別(ATREF)
高密度画分(パーセント)は分析的昇温溶離分別(ATREF)によって測定する。ATREF分析は米国特許第4,798,081号およびWilde, L.; RyIe, T.R.; Knobeloch, D. C; Peat, I. R. ; Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers, Journal of Polymer Science, 20, 441-455 (1982)に記述される方法に従って行う。分析しようとする組成物をトリクロロベンゼンに溶解し、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を収容するカラム内で0.1℃/分の冷却速度で温度を20℃まで徐々に低下させることによって結晶化させる。カラムは赤外検出器を備える。次に、溶離溶媒(トリクロロベンゼン)の温度を20から120℃まで1.5℃/分の速度で徐々に上昇させることによって結晶化ポリマーサンプルをカラムから溶出することにより、ATREFクロマトグラム曲線を生成する。溶出するポリマーの粘度平均分子量(Mv)を測定し、報告する。ATREFプロットには短鎖分岐分布(SCBD)プロットおよび分子量プロットがある。SCBDプロットは3つのピーク、高結晶性画分のもの(典型的には、90℃を上回る)、コポリマー画分のもの(典型的には、30−90℃内)およびパージ画分のもの(典型的には、30℃未満)を有する。この曲線にはコポリマーおよび高結晶性画分の間に谷もある。
Thcはこの谷における最低温度である。高密度(HD)画分%はThcを上回る曲線の下の面積である。MvはATREFからの粘度平均分子量である。MhcはThcを上回る画分の平均Mvである。Mcは60−90℃の間のコポリマーの平均Mvである。Mpは全ポリマーの平均Mvである。
【0097】
高速昇温溶離分別(Fast Temperature Rising Elution Fractionation)(F−TREF)
高速−TREFは、組成モード(compositional mode)のIR−4赤外検出器(Polymer ChAR、スペイン)および光散乱(LS)検出器(Precision Detector Inc.、Amherst、MA)を有するPolymer ChAR(Valencia、スペイン)によるCrystex機器を用いてオルトジクロロベンゼン(ODCB)中で行うことができる。
【0098】
F−TREFを試験するとき、120mgのサンプルを160℃で60分間保持された40mlのODCBと共に、機械的に撹拌してサンプル溶解を達成しながら、Crystex反応容器に添加する。そのサンプルをTREFカラムにロードする。次に、サンプル溶液を2段階で冷却する:(1)40℃/分で160℃から100℃まで、および(2)0.4℃/分で100℃から30℃まででポリマー結晶化プロセスを開始する。続いて、サンプル溶液を30℃で30分間等温的に保持する。流速を0.6ml/分とし、5℃/分で30℃から160℃までで昇温溶離プロセスを開始する。サンプルロード容量は0.8mlである。サンプル分子量(Mw)をIR−4検出器のセンサの測定からのシグナル全体に対する15°または90°LSシグナルの比として算出する。LS−MW較正定数はポリエチレン規格基準局(national bureau of standards)SRM 1484aを用いることによって入手する。溶離温度は実際のオーブン温度として報告する。TREFおよび検出器の間の管系遅延容積(tubing delay volume)は報告されるTREF溶離温度において説明される。
【0099】
調製用昇温溶離分別(Preparative Temperature Rising Elution Fractionation)(P−TREF)
昇温溶離分別法(TREF)はポリマーの調製的分別(P−TREF)に用いることができ、カラム寸法、溶媒、流れおよび温度プログラムを含めて、Wilde, L.; RyIe, T.R.; Knobeloch, D.C.; Peat, I.R. ; 「Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers」, J. Polym. Sci., 20, 441-455 (1982)から誘導される。赤外(IR)吸収検出器を用いてカラムからのポリマーの溶出を監視する。分離温度プログラム化液浴 − カラムロードのためのものおよびカラム溶出のためのもの − も用いる。
【0100】
サンプルは、約0.5% 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有するトリクロロベンゼン(TCB)に、160℃で、撹拌をもたらす磁気撹拌棒を用いて溶解することによって調製する。サンプルロードはカラムあたり約150mgである。125℃でロードした後、カラムおよびサンプルを約72時間にわたって25℃に冷却する。次に、冷却したサンプルおよびカラムを第2温度プログラム可能浴に移し、TCBを4ml/分で一定に流しながら25℃で平衡化する。直線温度プログラムを開始して温度を約0.33℃/分で上昇させ、約4時間で102℃の最高温度を達成する。
【0101】
収集瓶をIR検出器の出口に配置することによって画分を手で収集する。以前のATREF分析に基づき、56〜60℃から第1画分を収集する。副画分と呼ばれる次の小画分を4℃毎に92℃まで、次いで2℃毎に102℃まで収集する。副画分は、その副画分が収集される中点溶出温度によって参照される。
【0102】
副画分は、しばしば、試験を行う中点温度の範囲により、大画分に凝集する。試験の目的で、画分をよりさらに組み合わせてより大きな画分とすることができる。
【0103】
各副画分の溶出温度範囲の平均および副画分の重量対サンプルの総重量に基づき、重量平均溶出温度を各々の画分について決定する。重量平均温度は以下のように定義され:
【数1】

式中、T(f)はナローシリカまたはセグメントの中点温度であり、A(f)は、セグメント内のポリマーの量に比例する、セグメントの面積である。
【0104】
データはデジタル的に保存し、EXCEL(Microsoft Corp.;Redmond、WA)スプレッドシートを用いて処理する。TREFプロット、ピーク最高温度、画分重量パーセンテージ、および画分重量平均温度はスプレッドシートプログラムで算出した。
【0105】
曇りはASTM−D 1003に従って決定する。
【0106】
45°光沢はASTM−2457に従って決定する。
【0107】
エルメンドルフ引き裂き抵抗はASTM−D 1922に従って測定する。
【0108】
落槍衝撃強さはASTM−D 1709−04、方法Aに従って測定する。
C13 NMRコモノマー含有率
【0109】
ポリマー組成の決定にNMR分光分析法を用いることは周知である。ASTM D 5017−96、「NMR and Macromolecules」 ACS Symposium series 247, J. C. Randall, Ed., Am. Chem. Soc, Washington, D.C., 1984, Ch. 9におけるJ.C.Randallら、および「Polymer Sequence Determination」, Academic Press, New York (1977)におけるがNMR分光分析によるポリマー分析の一般法を提供する。
【0110】
ゲル含有率測定
単独の、または組成物中に含まれる、エチレンインターポリマーが少なくとも部分的に架橋するとき、その組成物を指定された持続時間溶媒に溶解し、ゲルまたは非抽出性成分のパーセントを算出することによって架橋の程度を促成することができる。ゲルパーセントは、通常、架橋レベルの増加に伴って増加する。本発明による硬化物品については、ゲル含有率パーセントは、望ましくは、ASTM D−2765による測定で、少なくとも約5〜100パーセントの範囲にある。
【実施例】
【0111】
エチレン系ポリマーの調製
多成分触媒
例示的多成分触媒系には、前駆触媒および共触媒を含む、マグネシウムおよびチタンを含有するチーグラー・ナッタ触媒組成物が含まれる。前駆触媒は40:1.0のMg:Tiモル比を特徴とするチタン支持MgClチーグラー・ナッタ触媒である。共触媒はトリエチルアルミニウムである。前駆触媒は1.0:40〜5.0:40、好ましくは、3.0:40のTi:Mg比を有することができる。前駆触媒および共触媒成分は、反応器に入る前、または反応器内のいずれかで接触することができる。前駆触媒、例えば、他のいかなるチタン系チーグラー・ナッタ触媒であってもよい。共触媒成分の前駆触媒成分に対するAl:Tiモル比は約1:1〜約5:1であり得る。
【0112】
多成分触媒系の一般的な説明
多成分触媒系は、ここで用いられる場合、前駆触媒および共触媒を含む、マグネシウムおよびチタンを含有するチーグラー・ナッタ触媒組成物を指す。前駆触媒には、例えば、二塩化マグネシウム、二ハロゲン化アルキルアルミニウムおよびチタンアルコキシドの反応生成物が含まれる。
【0113】
オレフィン重合前駆触媒前駆体は以下を組み合わせることから生じる生成物が含まれる:
【0114】
(A)ハロゲン化マグネシウムであって:
【0115】
(1)一般式R”R’Mg.xAlR’3(式中、各々のR”およびR’はアルキル基である)によって表される、少なくとも1種類の炭化水素可溶性マグネシウム成分、
【0116】
(2)少なくとも1種類の非金属または金属ハロゲン化物源を、反応温度が約60℃以下であり、好ましくは約40℃以下であり、最も好ましくは約35℃以下であるような条件下で接触させることによって調製されるハロゲン化マグネシウム、
【0117】
(B)式Tm(OR)yXy−x(式中、Tmは周期律表のIVB、VB、VIB、VIIBまたはVIII族の金属であり、Rは1〜約20、好ましくは、1〜約10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)によって表される、少なくとも1種類の遷移金属化合物、
【0118】
(C)成分(A−2)の量が不十分である場合、望ましい過剰X:Mg比をもたらす追加ハロゲン化物源、
【0119】
特に適切な遷移金属化合物には、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、四塩化バナジウム、四塩化ジルコニウム、テトラ(イソプロポキシ)−チタン、テトラブトキシチタン、二臭化ジエトキシチタン、二塩化ジブトキシチタン、テトラフェノキシチタン、酸化トリ−イソプロポキシバナジウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、それらの混合物等が含まれる。
ここでの遷移金属成分として用いることができる他の適切なチタン化合物には:
(A)式Ti(OR)xX4−x(式中、各々のRは、独立に、1〜約20、好ましくは約1〜約10、最も好ましくは約2〜約4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Xはハロゲンであり、xは0〜4の値を有する)によって表される少なくとも1種類のチタン化合物を、
(B)少なくとも1つの芳香族ヒドロキシル基を含む少なくとも1種類の化合物、
と反応させることから得られるチタン錯体および/または化合物が含まれる。
前記前駆触媒成分を前述の原子比をもたらすのに十分な割合で組み合わせる。
【0120】
前記前駆触媒反応生成物は、好ましくは、不活性希釈剤の存在下で調製する。触媒成分の濃度は、好ましくは、触媒反応生成物の必須成分が組み合わされるとき、得られるスラリーがマグネシウムに関して約0.005〜約1.0モル濃度(モル/リットル)であるようなものである。適切な不活性有機希釈剤の例として、液化エタン、プロパン、イソブタン、n−ブタン、n−ヘキサン、様々な異性ヘキサン、イソオクタン、8〜12個の炭素原子を有するアルカンのパラフィン混合物、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロヘキサン、ドデカン、飽和または芳香族炭化水素で構成される産業用溶媒、例えば、ケロセン、ナフサ等、特には、いかなるオレフィン化合物および他の不純物をも含まないとき、ならびに、特には、約−50℃〜約200℃の範囲の沸点を有するものを挙げることができる。望ましい触媒反応生成物を提供する前駆触媒成分の混合は、反応温度が約60℃を超えないようにハロゲン化マグネシウム支持体が調製されるという条件で、不活性雰囲気、例えば、窒素、アルゴンまたは他の不活性ガスの下、約−100℃〜約約200℃、好ましくは、約−20℃〜約100℃の範囲の温度で有利に準備される。触媒反応生成物の調製において、炭化水素可溶性成分を反応生成物の炭化水素不溶性成分から分離することは必ずしも必要ではない。
【0121】
前駆触媒組成物は、共触媒との組み合わせにおいて、チーグラー・ナッタ触媒の1成分として役立つ。共触媒は、好ましくは、1:1〜100:1の前駆触媒中のチタンに基づくモル比で用いられるが、より好ましくは、1:1〜5:1のモル比で用いられる。
【0122】
発明例1
発明例1は以下の手順に従って製造する:不均一分岐エチレン/α−オレフィンコポリマーを、エチレンおよび1種類以上のα−オレフィンコモノマー、例えば、1−オクテンの(共)重合に適する、上で説明される多成分触媒系を用いて、溶液条件下で稼動する、互いに直列に連結する2つの断熱球形反応器内で調製する。エチレンモノマー、1−オクテンコモノマーおよび水素を溶媒、例えば、ExxonMobilから商業的に入手可能であるIsopar(登録商標)Eと組み合わせた。供給流を極性不純物、例えば、水、一酸化炭素、イオウ化合物および不飽和化合物、例えば、アセチレンから精製し、13℃に冷却した後、反応器に入れる。大部分(85−90%)の反応は10フィート径(10-foot diameter)である第1球形反応器内で生じる。混合ブレードを備える攪拌機でポリマー/触媒/共触媒/溶媒/エチレン/コモノマー/水素溶液を循環させることによって混合を達成する。供給物(エチレン/コモノマー/溶媒/水素)は底部から反応器に入り、触媒/共触媒は供給物とは別に、これも底部から反応器に入る。第1反応器温度は約175℃であり、反応器圧力は約500psiである。第1と直列の第2反応器の温度は、約10−15%の残りの反応が生じ、および追加流が添加されないのに伴い、202℃に上昇する。触媒/共触媒Al/Tiモル供給比は1.5に設定する。平均反応器滞留時間は、その目的で特別に設計された流体による反応器後停止(termination post-reactor)の前に、球形反応器あたり約8分である。ポリマー溶液が反応器を離れた後、非変換エチレンモノマーおよび1−オクテンコモノマーを含む溶媒を2段階揮発分除去装置システム(devolatilizer system)によってポリマー溶液から除去し、再循環させる。再循環流は、精製した後、再度反応器に入れる。ポリマー溶融物は水面下ペレット化のために特別に設計されたダイを通して汲み上げる。それらのペレットを選別機ふるいに移し、特大および極小粒子を除去する。その後、仕上がったペレットを気動車に移す。不均一分岐エチレン/α−オレフィンコポリマーの特性を表1に列挙する。図1は発明例1のATREFである。
【0123】
不均一分岐エチレン/α−オレフィンコポリマーを、6インチ径Sanoダイを有するGloucesterラインでのブローフィルム押出し法によりさらに処理する。このダイは70ミルのギャップを有する。フィルムは約2.5のブローアップ比および約30インチの凍結線高でブローする。フィルムの折り径は約23.5インチであり、その一方でフィルムの厚みは約2ミルである。不均一分岐エチレン/α−オレフィンコポリマーを輪状円形ダイを通して溶融押出しする。ホットメルトがダイから現れ、それにより管が形成される。管は空気によって広げられ、同時に、冷却空気がそのウェブを冷却して固体状態とする。その後、フィルム管をローラーのV字型フレーム内でつぶし、フレームの末端でかしめて泡内に空気を捕捉する。ニップローラーは、その上、フィルムをダイから引き離す。管を切り開き、単一フィルム層としてロール上に巻き付ける。発明フィルム1の特性を表2に列挙する。
【0124】
比較例1
比較例1、直鎖低密度ポリエチレンは、190C反応器温度および3.5:1 Al/Ti比で製造する。他のすべての条件は発明例1と同じままである。比較例1の特性を表1に列挙する。図1は比較例1のATREFである。比較例1を、上で説明されるように、ブローフィルム押出し法によって処理する。比較例1を輪状円形ダイを通して溶融押出しする。ホットメルトがダイから現れ、それにより管が形成される。管は空気によって広げられ、同時に、冷却空気がそのウェブを冷却して固体状態とする。その後、フィルム管をローラーのV字型フレーム内でつぶし、フレームの末端でかしめて泡内に空気を捕捉する。ニップローラーは、その上、フィルムをダイから引き離す。管を切り開き、単一フィルム層としてロール上に巻き付ける。比較フィルム1の特性を表2に列挙する。
【表1】

【表2】

【0125】
実施形態を詳細に説明したが、当業者には他の様々な変更が明らかであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それを容易になし得ることは理解されるであろう。したがって、請求の範囲を記載される例および説明に限定することは意図されておらず、むしろ、本発明が属する分野における熟練者によって等価物として扱われるすべての特徴を含めて、本発明に存在する特許可能な新規性のすべての特徴を包含するものとして請求の範囲が解釈されることが意図される。
【0126】
好ましい、もしくは望ましい、より好ましい、もしくはより望ましい、非常に好ましい、もしくは非常に望ましい、または最も好ましい、もしくは最も望ましい置換基、範囲、最終使用、方法または開示される組成物および方法のいずれか1つに関する組み合わせを、他のあらゆる具体的な置換基、範囲、使用、方法または組み合わせの正体とは無関係に、開示される組成物および方法の先行または後続実施形態の他のいかなるものにも同様に適用可能である。
【0127】
他に述べられない限り、当分野における状況または慣習から暗黙的に、すべての部およびパーセンテージは重量に基づくものである。
【0128】
引用されるすべての出願、刊行物、特許、試験手順および、優先権文書を含む、他の文献は、そのような開示が開示される組成物および方法と矛盾しない程度まで参照により十分に組み込まれ、ならびにそのような組み込みが許容されるすべての権限のために組み込まれる。
【0129】
そのような値が記載される文脈に依存して、および他に具体的に述べられない限り、そのような値は1パーセント、2パーセント、5パーセントまたは、時折、10〜20パーセント変化し得る。下限RLおよび上限RUを有する数値範囲が開示されるときにはいつでも、この範囲に入るあらゆる数字が、それら自体の限界を含めて、具体的に開示される。特には、範囲内の以下の数字が具体的に開示される:R=RL+k*(RU−RL)、式中、kは増分が0.01である0.01〜1.00の範囲の変数であり、すなわち、kは0.01または0.02から0.99または1.00である。さらに、定義される2つのR数によって定義される数値範囲も具体的に開示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンおよび少なくとも1種類のアルファ−オレフィンのインターポリマーであって、インターポリマーが平均Mならびにインターポリマーおよび高結晶性画分の間の谷温度Thcを、ATREFからのThcを上回る画分の平均MをATREFからの全ポリマーの平均Mで割ったもの(Mhc/M)が約1.95未満であるように有し、ならびにインターポリマーが60%未満のCDBIを有することを特徴とするインターポリマー。
【請求項2】
前記インターポリマーが不均一に分岐する請求項1のインターポリマー。
【請求項3】
前記インターポリマーが55%未満のCDBIを有する請求項1のインターポリマー。
【請求項4】
前記インターポリマーが約1.7未満のMhc/Mを有する請求項1のインターポリマー。
【請求項5】
エチレンおよび少なくとも1種類のアルファ−オレフィンのインターポリマーであって、インターポリマーが、高密度(HD)画分および全体密度をHD画分%<−2733.3+2988.7x+144111.5(x−0.92325)(式中、xはグラム/立方センチメートルでの全体密度である)となるように有するものと特徴付けられるインターポリマー。
【請求項6】
請求項1のインターポリマーを含むフィルム。
【請求項7】
少なくとも550gmの落槍Aを含む請求項6のフィルム。
【請求項8】
10%未満の曇価を含む請求項6のフィルム。
【請求項9】
75単位超の45度光沢を含む請求項6のフィルム。
【請求項10】
400gm/ミル超の規準化MD引き裂きを含む請求項6のフィルム。
【請求項11】
少なくとも1種類の他の天然または合成ポリマーをさらに含む請求項1のインターポリマー。
【請求項12】
合成ポリマーが低密度ポリエチレンである請求項11のインターポリマー。
【請求項13】
約0.1〜約10g/10分のメルトインデックスを含む請求項1のインターポリマー。
【請求項14】
約0.9〜約0.935g/cmの全体密度を含む請求項1のインターポリマー。
【請求項15】
1000C原子あたり1未満の長鎖分岐を含む請求項1のインターポリマー。
【請求項16】
約5未満の分子量分布M/Mを含む請求項1のインターポリマー。
【請求項17】
請求項1のインターポリマーを含む組立物品。
【請求項18】
インターポリマーが少なくとも5重量%ゲルまで少なくとも部分的に架橋している請求項1のインターポリマー。
【請求項19】
エチレンおよび少なくとも1種類のアルファ−オレフィンのインターポリマーを製造する方法であって、エチレンを少なくとも1種類のアルファ−オレフィンと重合の温度および圧力の下で触媒組成物と共に接触させてエチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを形成し、前記インターポリマーは平均Mならびにインターポリマーおよび高結晶性画分の間の谷温度Thcを、ATREFからのThcを上回る画分の平均MをATREFからの全ポリマーの平均Mで割ったもの(Mhc/M)が約1.95未満であるように有し、ならびに60%未満のCDBIを有し、前記重合条件は約1:1〜約5:1のアルミニウムの触媒金属原子に対するモル比を含む工程、ならびにエチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを回収する工程を含む方法。
【請求項20】
前記触媒組成物が以下を組み合わせることから生じる生成物を含む請求項19の方法:
(A)反応温度が約60℃を超えることがないような条件下で、以下を接触させることによって調製されるハロゲン化マグネシウム:
(1)一般式R”R’Mg.xAlR’3(式中、各々のR”およびR’はアルキル基である)によって表される、少なくとも1種類の炭化水素可溶性マグネシウム成分、
(2)少なくとも1種類の非金属または金属ハロゲン化物源、
(B)式Tm(OR)yXy−x(式中、Tmは周期律表のIVB、VB、VIB、VIIBまたはVIII族の金属であり、Rは1〜約20を有するヒドロカルビル基である)によって表される、少なくとも1種類の遷移金属化合物、および
(C)存在する成分(A−2)の量が不十分である場合、望ましい過剰X:Mg比をもたらす、追加ハロゲン化物源。

【図1】
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【公表番号】特表2012−522123(P2012−522123A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503616(P2012−503616)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029214
【国際公開番号】WO2010/117792
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】