不揮発性半導体記憶装置及びその製造方法
【課題】 素子間の抵抗値のバラツキを軽減すると共に、高抵抗状態の読み出しディスターブを抑制し、安定したスイッチング動作を高速で行うことのできる可変抵抗素子を備えた不揮発性半導体記憶装置を実現する。
【解決手段】 ビット線BLによって第1電極が実現される。第2電極26は第1電極よりも仕事関数が小さい導電性材料で構成されており、中継配線67の上面に接触する底面を有し、第1層間絶縁膜21、第1電極(ビット線BL)、及び第2層間絶縁膜22を貫通して鉛直上方に突出してなる筒形状を示す領域を備える。可変抵抗体25は、第2電極26の外側面に接触して鉛直上方に突出して形成され、底面の下層に金属酸化物で形成された第1バッファ層23を介して中継配線67の上面と連絡され、第1電極(ビット線BL)の高さ位置において、金属酸化物で形成された第2バッファ層24を介して水平方向に第1電極(ビット線BL)と連絡される。
【解決手段】 ビット線BLによって第1電極が実現される。第2電極26は第1電極よりも仕事関数が小さい導電性材料で構成されており、中継配線67の上面に接触する底面を有し、第1層間絶縁膜21、第1電極(ビット線BL)、及び第2層間絶縁膜22を貫通して鉛直上方に突出してなる筒形状を示す領域を備える。可変抵抗体25は、第2電極26の外側面に接触して鉛直上方に突出して形成され、底面の下層に金属酸化物で形成された第1バッファ層23を介して中継配線67の上面と連絡され、第1電極(ビット線BL)の高さ位置において、金属酸化物で形成された第2バッファ層24を介して水平方向に第1電極(ビット線BL)と連絡される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気抵抗の変化により情報を記憶する可変抵抗素子と、この素子の一端に一方の拡散領域が接続する選択トランジスタを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュメモリに代わる高速動作可能な次世代不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM:Nonvolatile Random Access Memory)として、FeRAM(Ferroelectric RAM)、MRAM(Magnetic RAM)、PRAM(Phase Change RAM)等の様々なデバイス構造が提案されており、高性能化、高信頼性化、低コスト化、及びプロセス整合性という観点で激しい開発競争が行われている。
【0003】
これらの既存技術に対して、電気的ストレス(電圧パルス)を印加することによって可逆的に電気抵抗が変化する性質を有する可変抵抗体を用いた抵抗性不揮発性メモリ(RRAM:Resistive Random Access Memory;「RRAM」はシャープ株式会社の登録商標)が提案されている。RRAM素子(可変抵抗素子)は、通常、可変抵抗体を挟んで2つの電極を備える構成とし、この2つの電極間に所定の電圧パルスを印加することで素子の抵抗値を可逆的に変化させて、情報の記憶状態を変化させる。
【0004】
不揮発性半導体記憶装置は、可変抵抗素子を備えた複数のメモリセルを行方向及び列方向にマトリクス状に配置してメモリセルアレイを形成すると共に、各メモリセルに対するデータの書き込み、消去、及び読み出し動作を制御する周辺回路を配置して構成される。そして、このメモリセルとしては、その構成要素の違いから、1つのメモリセルが1つの可変抵抗素子Rのみで構成される「1R型」メモリセル、1つの可変抵抗素子Rと1つの選択トランジスタTで構成される「1T1R型」メモリセル等が存在する。
【0005】
可変抵抗体材料としては、チタン酸化(TiO2)膜,ニッケル酸化(NiO)膜,酸化亜鉛(ZnO)膜,酸化ニオブ(Nb2O5)膜等の遷移金属元素の酸化物が利用可能であることが知られている。例えば、非特許文献1及び非特許文献2には、上記各材料で構成された素子が、可逆的な抵抗変化を示すことが開示されている。
【0006】
また、このような可逆的な抵抗変化を示す可変抵抗素子は、金属酸化物中に酸素欠損に起因する不純物準位がバンドギャップ中に形成されることで、n型又はp型の半導体の伝導を示す。そして、この抵抗変化は電極界面近傍の状態変化に起因するものであることが確認されている。
【0007】
可変抵抗体材料として遷移金属酸化物を利用して構成した可変抵抗素子において、安定的な抵抗スイッチング(低抵抗状態と高抵抗状態の間での安定的な遷移)を行うためには、可変抵抗体と2つの電極が接触する夫々の界面のうち、何れか一方の界面のみをスイッチング領域とするのが好ましい。より詳細には、これら2つの電極に用いる材料を異ならせ、一方の電極との界面をオーミック接合として非スイッチング界面とし、もう一方の電極との界面を例えばショットキー接合としてスイッチング界面とすることが好ましい。
【0008】
遷移金属酸化物を利用して構成した可変抵抗素子は、製造直後の初期抵抗が非常に高い性質を有している。このため、このままの状態では、通常の書き換え動作に用いる電圧パルス(以下、この段落において「書き換え電圧パルス」と呼ぶ)を印加しても安定的にスイッチング動作が行えない場合がある。この対策として、メモリ素子として使用する前に、書き換え電圧パルスより電圧振幅が大きく且つパルス幅が長い電圧パルス(フォーミング電圧パルス)を初期状態の可変抵抗素子に印加して、抵抗スイッチングを生じさせるための電流経路(以下、適宜「フィラメントパス」と呼ぶ)を形成しておく。このフィラメントパスを予め形成しておくことで、可変抵抗素子に書き換え電圧パルスを印加すると、当該フィラメントパスを通じて書き換え電流が流れ、所望の抵抗状態に安定して遷移する。
【0009】
なお、このように、可変抵抗体内にフィラメントパスを形成する処理は、「フォーミング処理」と呼ばれる。このフォーミング処理によって形成されるフィラメントパスが、可変抵抗素子の電気的特性を決定する。
【0010】
フォーミング処理は、ソフトブレークダウンの一種であり、ブレークダウン開始時からの電流の制御態様によって、フィラメントパスの形成経路、つまりは素子の電気的特性が決定される。
【0011】
理論的には、フォーミング時の電流は、可変抵抗素子と直列に接続したトランジスタ等の電流制御素子によって制御可能である。よって、かかる電流制御素子によってフォーミング時の電流を適切に制御しながらフィラメントパスを形成すれば、スイッチング素子の電気的特性を任意に制御できるようにも思える。しかし、実際には、ブレークダウン時に非常に急峻な電流量の増加を伴う。例えば、電流制御素子としてトランジスタを用いた場合には、当該トランジスタの寄生容量の影響を受けて、制御できないスパイク電流と呼ばれる急峻な電流が流れる。この結果、可変抵抗素子間において、形成されるフィラメントパスにバラツキが生じ、低い書き込み電流値で安定的なスイッチング動作を実現する可変抵抗素子を安定して製造することは困難となる。
【0012】
これに対し、可変抵抗体として利用する金属酸化物と電極の間にバッファ層(界面酸化物)を設けることで、電気的特性を向上させる方法が特許文献1及び非特許文献3に報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−306157号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】H.Pagnia他,"Bistable Switchingin Electroformed Metal-Insulator-MetalDevices",Phys.Stat.Sol.(a),vol.108,pp.11-65,1988年
【非特許文献2】Baek,I.G.他,"Highly Scalable Non-volatile Resistive Memory using Simple Binary Oxide Driven by Asymmetric Unipolar Voltage Pulses",IEDM 04,pp.587-590,2004年
【非特許文献3】M.Terai他,"Effect of Bottom Electrode of ReRAM with Ta2O5/TiO2Stack on RTN and Retention",IEDM 09,pp.775-778,2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
RRAMの分野においては、開発が開始されてからあまり期間が経過していないこともあり、依然として対策が見出せていないいくつかの課題がある。例えば、素子間で可変抵抗素子の抵抗値にバラツキが存在することや、高抵抗状態において読み出しディスターブ発生することは、この一例に挙げられる。
【0016】
読み出しディスターブとは、読み出し動作時に印加されるバイアス電圧によって可変抵抗素子の抵抗値が変化してしまう現象をいう。可変抵抗素子を備えたメモリセルからデータを読み出すに際しては、可変抵抗素子にバイアス電圧を印加して読み出し電流を流し、その電流の大小によって可変抵抗素子の抵抗値を判定することで行う。従って、メモリセルの構成に関係なく、読み出し動作に伴って、可変抵抗素子には所定のバイアス電圧が印加される。この読み出し動作時に印加されるバイアス電圧によって可変抵抗素子の抵抗値が変化してしまうと、最悪の場合には記録した情報を消失してしまう。このため、読み出しディスターブの程度及び頻度を可能な限り低減することが要求される。
【0017】
本願発明者らは、鋭意研究により、図1に示す構造の可変抵抗素子を作成し、高抵抗状態の読み出しディスターブの抑制に効果があることを見出した。図1に示す可変抵抗素子10は、可変抵抗体11としてHfOx(ハフニウム酸化物)、一方の電極(第1電極)13としてTiNを、他方の電極(第2電極)15としてTiを夫々用いて形成している。
【0018】
この図1に示す可変抵抗素子10において、TiN電極13側から消去用パルス電圧を印加した後の高抵抗状態について、消去動作時の電圧パルスと、読み出し動作時の電圧パルスの極性を同じにすることにより、高抵抗状態の読み出しディスターブを低減できることを見出した。なお、ここでは、高抵抗化することを消去動作と呼び、低抵抗化することを書き込み動作と呼んでいるが、呼び方は逆でも良い。
【0019】
図2は、消去動作後(すなわち高抵抗状態)の可変抵抗素子を読み出した際の、読み出し電圧の極性の相違を比較したグラフである。(a)は、消去用パルス電圧と読み出し電圧を逆極性とした場合、(b)は同極性とした場合の、累積読み出し回数と抵抗値の関係を示している。なお、(a)の場合は読み出し電圧を0.6V,(b)の場合は読み出し電圧を0.8Vとした。
【0020】
図2によれば、(a)の場合、約5回目の読み出しで既に大きな抵抗値の変化が見受けられる。また、約700回を超えると、読み出された抵抗値が著しく不安定になっていることが分かる。なお、(a)では、抵抗値が上下に激しく変動することを示すために読み出し回数が1000回〜10000回の場合の抵抗値も表示している。
【0021】
これに対し(b)の場合、異なる4つの素子に対して抵抗値の読み出しを行ったが、いずれも安定した抵抗値が読み出された。
【0022】
ここで、Tiの仕事関数は4.14eVで、オーミック接合であり、TiNの仕事関数は4.7eVで、スイッチング界面となるショットキー接合となっている。つまり、図2の結果に基づけば、消去動作および読み出し動作においては、スイッチング界面となる仕事関数が大きい方の電極から電圧を印加することにより、安定した読み出しが行えることが分かる。
【0023】
また、高速動作を実現するためには、信号の遅延によるディスターブを軽減すべく電圧変動を伴う配線をなるべく負荷を軽くする必要がある。このため、一般的には、選択トランジスタを介することになるソース線側ではなく、負荷の軽いビット線側から読出し電圧を印加する構成が望ましい。
【0024】
更に本願発明者らは、鋭意研究により、特性のバラツキや読み出しディスターブを引き起こす原因は、スイッチング領域側で起こっていると考え、非特許文献3の教示に反して、バッファ層としての金属酸化物を、ショットキー接合となる電極との界面に挿入した。この結果、バラツキ低減、並びに読み出しディスターブの抑制に大きな効果があることを見出した。この内容は別途出願しており、本願出願時点では未公開である(特願2010-171079号)。
【0025】
図3は、本願発明者が開発した可変抵抗素子の概略断面構造図である。可変抵抗素子10aは、半導体基板12上に絶縁膜16を介して第1電極13を備える(ここでもTiNとする)。そして、第1電極13に対して酸化処理を行い、表面にバッファ層17としての金属酸化物を形成する。このバッファ層17は、図3の例ではTiOx(酸化チタン)で構成される。
【0026】
そして、このバッファ層17の上層に、可変抵抗体11を形成し、その上層に第2電極15を形成する。図1の例と同様、可変抵抗体11をHfOx(ハフニウム酸化物)、第2電極15をTiとした。つまり、第2電極15は、第1電極13よりも仕事関数が小さい金属材料で構成されており、第2電極15の界面はオーミック接合、第1電極13の界面はショットキー接合となる。
【0027】
このとき、バッファ層17は、ショットキー接合を示す第1電極13の界面に形成されており、バラツキ低減、並びに読み出しディスターブの抑制効果を示す。
【0028】
ここで、上述したように、安定した読み出しを行うには、仕事関数の大きい方の電極、すなわち第1電極13から電圧を与えることが求められる。つまり、第1電極13に対して電圧が印加できるよう、上方から第1電極13に連絡するコンタクト電極を形成する必要がある。
【0029】
そして、このとき、電圧は第1電極13から第2電極15へと構造上上向きに与えられることとなる。
【0030】
ところで、1T1R型のメモリセルを実現しようとした場合、選択トランジスタのソース/ドレインは、半導体基板12上(絶縁膜16の下層)に形成される。このため、第1電極13から第2電極15へと上向きに与えられた電圧を、第2電極15よりも遙かに深い位置に存在する選択トランジスタのソース/ドレインの一方に与える必要がある。すなわち、ここでも、第2電極15から半導体基板12の表面付近に連絡するコンタクト電極が必要となる。
【0031】
つまり、図3の構造においては、第1電極13に対して外から電圧印加可能にしつつ、第2電極15に選択トランジスタのソース/ドレインの一方を電気的に接続する構成を実現するには、複雑な構造を余儀なくされ、プロセスの複雑化や、素子領域の拡大という問題を引き起こす。
【0032】
他方、このような問題を解消するために、第1電極13と第2電極15の上下位置を反転させる方法が考えられる(図4参照)。この場合、上方に位置する第1電極13に対しては容易に外から電圧が印加可能であるし、第2電極15は図3よりも深い位置に形成されているため、第2電極15と選択トランジスタのソース/ドレインの一方とを電気的に接続するのも容易である。
【0033】
しかし、図4の構造を実現するには、可変抵抗体11を形成した後にバッファ層17を形成する必要がある。可変抵抗体11もバッファ層17も共に金属酸化物で構成されるため、可変抵抗体11を積層した後にバッファ層17を成膜すると、これらの界面で酸素の移動が発生し、所望の電気的特性を有する可変抵抗体11を形成することが困難になってしまうという別の問題を生じさせる。
【0034】
本発明は、本発明者が得た上記の知見に基づき、素子間の抵抗値のバラツキを軽減すると共に、高抵抗状態の読み出しディスターブを抑制し、安定したスイッチング動作を高速で行うことのできる可変抵抗素子を備えた不揮発性半導体記憶装置を、簡易なプロセスで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記目的を達成するため、本発明の不揮発性半導体記憶装置は、半導体基板上に、第1電極、第2電極、及び当該両電極の間に挟持された可変抵抗体を有する可変抵抗素子と、前記第2電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続した選択トランジスタとを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置であって、
前記選択トランジスタの上方に、第1配線、第2配線、中継配線の各配線層を有すると共に、当該配線層を覆う上面に第1層間絶縁膜を有し、更にその上層に前記第1電極、第2層間絶縁膜を下からこの順に有し、
前記第1電極は、前記第2電極よりも仕事関数が大きい導電性材料で構成されており、
前記第2電極は、前記中継配線の上面に接触する底面を有し、前記第1層間絶縁膜、前記第1電極、及び前記第2層間絶縁膜を貫通する第1筒状部を備えており、
前記可変抵抗体は、金属酸化物からなり、前記第2電極の前記第1筒状部の外側面に接触し、前記第1層間絶縁膜、前記第1電極、及び前記第2層間絶縁膜を貫通し、且つ底面の高さ位置が前記第2電極の底面よりも高い第2筒状部を備えており、
前記第2筒状部の外側面と前記第1電極の間には、前記可変抵抗体とは異なる材料の金属酸化物で形成されたバッファ層を有し、
前記中継配線は前記選択トランジスタのソース又はドレインの一方に、前記第1配線はゲート電極に、前記第2配線はソース又はドレインの他方に、夫々電気的に接続することを特徴とすることを特徴とする。
【0036】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記バッファ層が、前記第1電極を構成する材料の酸化物で構成されていることを別の特徴とする。
【0037】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記可変抵抗体が、Hf又はZrの酸化物を含む構成であることを別の特徴とする。
【0038】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記第1電極が、Ti窒化物、Ta窒化物、W、Ni、Coの何れかの導電性材料を含む構成であることを別の特徴とする。
【0039】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記第2電極が、Ti,Ta,Al,Hf,Zrの何れかの導電性材料を含む構成であることを別の特徴とする。
【0040】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記メモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列してなるメモリセルアレイを備え、複数の前記第1配線がワード線として、複数の前記第2配線がソース線として、夫々行方向に延伸し、複数の前記第1電極がビット線として列方向に延伸する構成であり、
前記メモリセルアレイ内において、同一行に配列した複数の前記メモリセルは、各前記選択トランジスタの前記ゲート電極を共通の前記ワード線に、前記ソース又はドレインの他方を共通の前記ソース線に電気的に接続し、同一列に配列した複数の前記メモリセルは、各前記第1電極を共通の前記ビット線によって実現する構成であることを別の特徴とする
【0041】
また、本発明の不揮発性半導体記憶装置の製造方法は、半導体基板上に、第1電極、第2電極、及び当該両電極の間に挟持された可変抵抗体を有する可変抵抗素子と、前記第2電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続した選択トランジスタとを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、
前記半導体基板上に前記選択トランジスタを形成する工程と、
前記選択トランジスタの上層に下地層間絶縁膜を形成する工程と、
前記下地層間絶縁膜を貫通し、前記選択トランジスタのドレイン、ソース、及びゲート電極に夫々電気的に接続する第1,第2,及び第3コンタクトプラグを形成する工程と、
前記第1コンタクトプラグに電気的に接続する中継配線、前記第2コンタクトプラグに接続する第1配線、前記第3コンタクトプラグに接続する第2配線を前記下地層間絶縁膜の上層に形成する工程と、
前記下地層間絶縁膜の上層に、前記中継配線、前記第1配線、前記第2配線の上方を覆うように第1層間絶縁膜を形成し、更にその上層に前記第1電極の材料膜、第2層間絶縁膜をこの順に形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜、前記第1電極の材料膜、前記第2層間絶縁膜を貫通し、側面の一部分に前記第1電極の材料膜を露出させる第1開口部を形成する工程と、
熱酸化処理を行って、前記第1開口部内において露出していた前記第1電極の材料膜をバッファ層に変化させる工程と、
前記バッファ層に接触するように前記可変抵抗体の材料膜を前記第1開口部内に堆積する工程と、
前記中継配線の上方位置に形成されている前記可変抵抗体の材料膜の一部及びその下層に形成されている材料膜を除去して、前記中継配線の上面を露出して第2開口部を形成する工程と、
前記第1電極の材料膜よりも仕事関数の値が小さい前記第2電極の材料膜を、少なくとも前記第2開口部を完全には充填しない範囲内の膜厚で堆積する工程と、
前記可変抵抗体の材料膜及び前記第2電極の材料膜をエッチング加工して、前記可変抵抗体と前記第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明の構成を有する不揮発性半導体記憶装置によれば、選択トランジスタのソース又はドレインと電気的に接続するのは比較的仕事関数の小さい第2電極であり、それよりも仕事関数の大きい第1電極は、可変抵抗体を挟んで選択トランジスタとは反対側に位置している。そして、この第1電極と可変抵抗体の間、すなわちショットキー接合となる電極との界面にバッファ層が設けられている。これにより、バラツキ低減、読み出しディスターブの抑制に効果を有する。
【0043】
そして、本発明の構成の場合、可変抵抗体の材料膜を堆積するより前の段階でバッファ層を形成することが可能である。このため、可変抵抗体を形成した後にバッファ層を形成することで、両者の界面を通じて可変抵抗体内の酸素が移動してしまい、電気的特性に影響を及ぼすという問題点が解消する。
【0044】
更に、第1電極は、第1配線や第2配線よりも上方の位置に形成され、外部から容易に電圧印加が可能な構成である。より具体的には、読み出し動作において、第1電極側に読み出し電圧を印加し、この第1電極を流れる電流を検出することで抵抗状態の検出を行うことができる。つまり、選択トランジスタを介して流れる電流を検出する必要がないため、選択トランジスタの負荷の影響を受けることなく電流の読み出しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】高抵抗状態の読み出しディスターブの抑制に効果を示す可変抵抗素子の構造例
【図2】高抵抗状態の可変抵抗素子に対する読み出し動作を繰り返し行った場合において、読み出し電圧の極性の相違による抵抗値の変化を比較した図
【図3】バッファ層を備えた可変抵抗素子の概略断面構造図の一例
【図4】バッファ層を備えた可変抵抗素子の概略断面構造図の別の一例
【図5】本発明の不揮発性半導体記憶装置の回路構成を示す図
【図6】周辺回路を含む記憶装置全体の概念的ブロック図
【図7】メモリセルの構造を示す概略断面図
【図8】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの工程断面図(その1)
【図9】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの工程断面図(その2)
【図10】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの工程断面図(その3)
【図11】本発明の不揮発性半導体記憶装置の製造工程の概略を示すフローチャート
【図12】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの別実施形態の工程断面図(その1)
【図13】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの別実施形態の工程断面図(その2)
【発明を実施するための形態】
【0046】
図5は、本発明の不揮発性半導体記憶装置の回路構成を示している。(a)がメモリセルアレイの回路構成を示しており、(b)がメモリセル部分を拡大した回路図である。
【0047】
メモリセルアレイ20は、複数のメモリセル1を行方向(図面上では横方向)及び列方向(図面上では縦方向)にマトリクス状に配置してなり、行方向に延伸する複数のワード線(WL1〜WLm)、複数のソース線(SL1〜SLm)、及び列方向に延伸する複数のビット線(BL1〜BLn)を有している。なお、m,nは2以上の自然数である。また、以下では、ワード線に関し、各ワード線WL1〜WLmを区別せずに言及するときは、これらを代表して「ワード線WL」と呼ぶ。同様に、各ソース線SL1〜SLmを代表して「ソース線SL」と呼び、各ビット線BL1〜BLnを代表して「ビット線BL」と呼ぶ。
【0048】
図5に示すように、各メモリセル1は、可変抵抗素子2と選択トランジスタ3が直列に接続されてなる1T1R型の構造を示しており、各ワード線WLと各ビット線BLが交差する箇所に形成されている。そして、同一列に位置するメモリセル1同士は同一のビット線BLに電気的に接続され、同一行に位置するメモリセル1同士は同一のワード線WL及び同一のソース線SLに電気的に接続されている。なお、ソース線SLについては、各ソース線SL1〜SLmが相互に電気的に接続される構成として良い。
【0049】
可変抵抗素子2は、図1に示す可変抵抗素子10と同様に、一方の端部はショットキー接合を示し、他方の端部はオーミック接合を示すように構成されている。本発明の構成では、可変抵抗素子2のショットキー接合側の端部31をビット線BLに電気的に接続させ、オーミック接合側の端部33を選択トランジスタ3のソース/ドレインの一方に電気的に接続させる。本実施形態では、可変抵抗素子2のオーミック接合側の端部33は、選択トランジスタ3のドレイン41と電気的に接続し、選択トランジスタ3のソース43はソース線SLと電気的に接続している。また、選択トランジスタ3のゲート45はワード線WLと電気的に接続している。
【0050】
図6は、メモリセルアレイとその周辺回路を含む記憶装置全体の概念的ブロック図である。半導体記憶装置は、メモリセルアレイ20の周辺回路として、ワード線デコーダ51,ビット線デコーダ53,電圧発生回路55,制御回路57,読み出し回路59を備えている。
【0051】
制御回路57は、メモリセルアレイ20の書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作の制御及びフォーミング処理の制御を行う。具体的には、制御回路57はアドレス線から入力されたアドレス信号、データ線から入力されたデータ信号、制御信号線から入力された制御信号に基づいて、ワード線デコーダ51、ビット線デコーダ53を制御して、メモリセルの各メモリ動作及びフォーミング処理を制御する。より具体的には、アドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路の機能を有する(不図示)。
【0052】
電圧発生回路55は、書き込み、消去、読み出しの各動作時において、当該各動作に必要な印加電圧を発生してワード線デコーダ51及びビット線デコーダ53に与える。
【0053】
ワード線デコーダ51は、メモリセルアレイ20の各ワード線WLの一端に接続しており、書き込み、消去、読み出しの各動作時において、アドレス線から与えられたアドレス信号に基づいて所定のワード線を選択する。より具体的には、選択したワード線に対して電圧発生回路55から出力される所定の電圧を印加することで、当該選択ワード線に接続された選択トランジスタ3のみをON状態とする。
【0054】
ビット線デコーダ53は、メモリセルアレイ20の各ビット線BLの一端に接続しており、書き込み、消去、読み出しの各動作時において、アドレス線から与えられたアドレス信号に基づいて所定のビット線を選択する。より具体的には、選択したビット線に対して電圧発生回路55から出力される所定の電圧を印加する。
【0055】
読み出し回路59は、各ビット線BLに接続されている。読み出し時において、選択されたビット線に流れる電流を非選択のビット線に流れる電流と分離して検知することで、選択メモリセルの抵抗状態を検知する。本実施形態では、読み出し回路59が電流の大小を判別する電流センス回路であることを想定している。
【0056】
[メモリセルの構造]
図7は、メモリセル1の構造の一例を示す概略断面図である。図7において、図5内の回路図と対応する要素については同一の符号を付している。なお、各断面図は、模式的に示したものであり、図面上の寸法比は実際の寸法比と必ずしも一致しない。
【0057】
また、説明の都合上、図面に向かって左右方向をX方向、上下方向をY方向とし、図面を貫通する方向をZ方向とする。これらの表記を用いて説明すると、メモリセル1は、XZ平面上に配置された半導体基板40上に、下地層間絶縁膜60等の各形成膜が鉛直方向(Y方向)に積層して形成される。
【0058】
半導体基板40上には素子分離領域47が設けられている。そして、この素子分離領域47によって分離された基板表面の活性領域の一部上面には、ゲート絶縁膜42及びゲート電極45が下からこの順に形成されている。また、ゲート電極45の外側における同活性領域内の基板表面には、ドレイン41及びソース43の両拡散領域が、基板面に平行なX方向に離間を有して形成されている。
【0059】
ドレイン41,ソース43,ゲート絶縁膜42,ゲート電極45、及びゲート絶縁膜42の下層に位置する半導体基板40の一部によって選択トランジスタ3が形成されている。
【0060】
選択トランジスタ3の上層には下地層間絶縁膜60が形成されている。下地層間絶縁膜60には、ドレイン41に接続されたコンタクトプラグ61、ソース43に接続されたコンタクトプラグ63、及びゲート電極45に接続されたコンタクトプラグ65が夫々分離して埋め込まれている。コンタクトプラグ61が「第1コンタクトプラグ」に対応し、コンタクトプラグ62が「第2コンタクトプラグ」に対応し、コンタクトプラグ63が「第3コンタクトプラグ」に対応する。
【0061】
下地層間絶縁膜60の上層には、ソース線SL,ワード線WL,及び中継配線67が夫々分離して形成されている。ソース線SLは、コンタクトプラグ63と接触し、Z方向に延伸して形成されている。ワード線WLは、コンタクトプラグ65と接触し、ソース線SLと同じくZ方向に延伸して形成されている。中継配線67は、コンタクトプラグ61と接触し、Z方向においては、少なくとも隣接メモリセルの位置には達しないように、選択トランジスタ3毎に形成されている。なお、ワード線WLが「第1配線」に対応し、ソース線SLが「第2配線」に対応する。
【0062】
そして、ソース線SL,ワード線WL,中継配線67、及び下地層間絶縁膜60の上層には、第1層間絶縁膜21が形成されている。
【0063】
第1層間絶縁膜21上には、可変抵抗素子の一方の電極(第1電極)を兼ねるビット線BLが形成されており、X方向に延伸している。このビット線BLの材料としては例えばTiN等の仕事関数が比較的大きい導電性材料が利用される。このビット線BLの上層には第2層間絶縁膜22が形成されている。
【0064】
また、中継配線67の上方位置において、第1層間絶縁膜21,ビット線BL,及び第2層間絶縁膜22が、可変抵抗体25及び可変抵抗素子の他方の電極(第2電極)26によってY方向に分断されている。
【0065】
中継配線67の一部表面領域には、第2電極26と酸化膜23が形成されている。酸化膜23は、中継配線67の一部表面領域において、第2電極26の底面付近においてその側面と接触する位置に形成されている。
【0066】
第2電極26は、中継配線67の上面に接触する底面を有し、第1層間絶縁膜21、第1電極BL、前記第2層間絶縁膜22をY方向に貫通する筒状部(「第1筒状部」に対応)を備える。そして、この筒状部の側壁部分を構成する位置において、第2電極26の筒状部の外側には可変抵抗体25が筒状に形成されている(「第2筒状部」に対応)。可変抵抗体25の筒状部は、第1層間絶縁膜60,ビット線BL,第2層間絶縁膜22をY方向に貫通するように形成されており、底面の高さ位置が第2電極26の底面よりも高くなっている。そして、可変抵抗体25は、中継配線67の上面に接触して形成されている酸化膜23と接触している。
【0067】
また、ビット線BLが形成されている高さ位置において、可変抵抗体25の側面にバッファ層24が形成されており、このバッファ層24を介して可変抵抗体25とビット線BLが連絡される構成である。なお、可変抵抗体25は、第2層間絶縁膜22の上層に達する位置まで形成されている。また、第2電極26は、第2層間絶縁膜22の上層位置において、可変抵抗体25の上層に達する位置まで形成されている。
【0068】
第2電極26は、中継配線67,コンタクトプラグ61を介してドレイン41と電気的に接続される構成である。なお、第2電極26の材料としては、例えばTa等の、第1電極(ビット線BL)の材料よりは仕事関数の小さい導電性材料が利用される。また、酸化膜23及びバッファ層24の材料としては、例えばTiO2が利用される。可変抵抗体25の材料としては、例えばHfO2が利用される。利用可能なその他の材料の例については後述する。
【0069】
[製造方法]
以下、図7の示すメモリセルの製造方法につき、図8〜図10の各工程断面図、及び図11のフローチャートを参照して説明する。なお、下記説明内における#1〜#13の各ステップ番号は、図11のフローチャート内におけるステップ番号に対応している。
【0070】
なお、以下の各工程断面図では、図7に示す断面構造図と同一の要素に対しては同一の符号を付している。また、符号が煩雑化するのを避けるべく、パターニング等の成形処理を行う前の膜(例えば可変抵抗体材料膜)と成形後の構造体(例えば可変抵抗体)に対して同一の符号を付している。
【0071】
まず、公知の手順に従い、半導体基板40(例えばSi基板)上に、選択トランジスタ3を形成する(#1)。すなわち、素子分離領域47を形成した半導体基板40上にゲート絶縁膜42、ゲート電極45、ドレイン41、ソース43から構成される選択トランジスタ3を形成する。
【0072】
次に、選択トランジスタ3を形成した半導体基板40上に膜厚1400nm程度で下地層間絶縁膜60(例えばBPSG膜)を堆積させた後、さらにその表面をCMP法にて、膜厚が600nm程度になるまで研磨して表面を平坦化する(図8(a),#2)。
【0073】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、下地層間絶縁膜60内に、ドレイン41の上面に達するコンタクトホール、ソース43の上面に達するコンタクトホール、ゲート電極45の上面に達するコンタクトホールを夫々形成する。そして、CVD法でバリア膜およびコンタクトプラグ用材料膜(例えばタングステン膜)を形成し、さらに、CMP法にて成形処理することで、コンタクトプラグ61、63、65を埋め込み形成する(#3)。
【0074】
次に、コンタクトプラグ61、63、65が埋め込まれた下地層間絶縁膜60上に、配線用導電膜をスパッタリング法で堆積する。配線用導電膜の一例としては、下から順に、Ti(膜厚15nm)/AlCu(膜厚175nm)/Ti(膜厚5nm)/TiN(膜厚30nm)で積層された材料膜を利用することができる。
【0075】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、前記配線用導電膜をパターニングすることで、ワード線WL,ソース線SL,及び中継配線67を形成する(図8(b),#4)。ワード線WLは、コンタクトプラグ65を介してゲート電極45と電気的に接続される。ソース線SLは、コンタクトプラグ63を介してソース43と電気的に接続される。中継配線67は、コンタクトプラグ61を介してドレイン41と電気的に接続される。
【0076】
次に、CVD法により、第1層間絶縁膜21(例えばSiO2膜)を膜厚650nm程度で全面に堆積する。更に、その表面をCMP法にて、中継配線67上の第1層間絶縁膜21の膜厚が250nm程度となるまで研磨することにより表面を平坦化する(#5)。
【0077】
次に、スパッタリング法により、ビット線BL(第1電極)の材料膜(例えばTiN膜)を膜厚100nm程度堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることで、ビット線BLが形成される(#6)。上述したように、このビット線BLが可変抵抗素子2の第1電極を構成する。
【0078】
次に、CVD法で第2層間絶縁膜22(例えばSiO2膜)を膜厚200nm程度で全面に堆積する(図8(c),#7)。
【0079】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、パターニングすることで、中継配線67の上方位置において、第2層間絶縁膜22,ビット線BL,及び第1層間絶縁膜21を貫通して中継配線67の上面にまで到達する第1開口部80を形成する(#8)。これにより、第1開口部80の側壁の一部分にビット線BLの断面が環状に露出する(図8(d))。
【0080】
次に、第1開口部80によって露出された導電性材料部分に対して、酸素を含む250〜450℃程度の雰囲気下で熱酸化する。これにより、第1開口部80の底面を構成する中継配線67の露出部分には酸化膜23を、第1開口部80の側壁に存在するビット線BLの露出部分にはバッファ層24を、夫々膜厚5nm程度で形成する(図9(a),#9)。本実施形態では、これらの酸化膜23及びバッファ層24は何れもTiO2膜で実現される。
【0081】
次に、スパッタリング法により全面に可変抵抗体材料膜25(例えばHfO2膜)を膜厚5nm程度で堆積する。このとき、第1開口部80を完全に充填させることなく、依然として開口部81が形成され得る程度の膜厚で堆積すると良い(図9(b),#10)。
【0082】
次に、第1開口部80内に存在している可変抵抗体材料膜25の一部分、及びその直下層に存在するバッファ層23に対し、フォトリソグラフィ技術を用いてエッチングすることで、第2開口部82を形成し、中継配線67の上面を露出させる(#11)。これにより、第2開口部82の底面として中継配線67が露出し、側壁としてバッファ層23と可変抵抗体材料膜25が下から積層された状態で露出する(図9(c))。
【0083】
次に、スパッタリング法で、第2電極材料膜26(例えばTa膜)を膜厚100nm程度で堆積する(#12)。このとき、第2開口部82を完全には充填しない範囲内の膜厚で材料膜を成膜する。これにより、依然として開口部83が形成されているような状態とする(図10(a))。なお、第2電極材料膜26の材料としては、少なくともビット線BL(すなわち第1電極)の材料よりも仕事関数の小さい導電性材料であることが要求される。利用可能な材料の例は、後述において列挙している。
【0084】
本ステップ#12により、それまで形成されていた第2開口部82の底面には第2電極26の材料膜が形成されることで、第2電極材料膜26と中継配線67とが接触し、両者の電気的接続が確保される。
【0085】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、第1開口部80の外側位置における第2層間絶縁膜22の上層に形成されていた可変抵抗体材料膜25,及び第2電極材料膜26をパターニング処理する(#13)。これにより、可変抵抗体25と第2電極26が成形される(図10(b),図7)。
【0086】
その後は、公知の技術によって、ワード線デコーダ51,ビット線デコーダ53,電圧発生回路55,制御回路57,読み出し回路59等の各種周辺回路を完成させる。
【0087】
[動作方法]
次に、上記構造を有するメモリセル1を備えた不揮発性半導体記憶装置に対する消去、書き込み、及び読み出しの各動作方法について説明する。
【0088】
なお、前述したように、本実施形態では、メモリセル1の可変抵抗素子2を高抵抗化することを「消去」、低抵抗化することを「書き込み」と呼ぶ。また、以下では、各動作対象となるメモリセルを「対象メモリセル1E」と呼び、この対象メモリセル1Eに接続された特定のワード線及びビット線を、夫々「ワード線WLE」、「ビット線BLE」と呼ぶ。
【0089】
(消去動作)
メモリセルに対して消去動作を行う場合、すなわち、可変抵抗素子2を高抵抗化する場合につき説明する。この場合、ワード線デコーダ51が、対象メモリセル1Eに接続されたワード線WLEを選択して所定電圧を印加する。また、ソース線SLを接地状態とする。これにより、対象メモリセル1Eと同一行に配置された各メモリセルの選択トランジスタはON状態となる。
【0090】
この状態の下で、ビット線デコーダ53が、対象メモリセル1Eに接続されたビット線BLEを選択して、消去動作用の所定の正電圧パルスを印加する。前述のように、ビット線BLは可変抵抗素子2の第1電極を兼ねており、第2電極26よりも仕事関数が大きい材料で形成されている。よって、ビット線BL側から正電圧を印加することで、対象メモリセル1Eにおいて、可変抵抗素子2のショットキー接合側の端部31(図5(b)参照)が高電位となるバイアスが発生し、高抵抗状態への遷移が起こる。よって、対象メモリセル1Eは消去状態となる。
【0091】
(書き込み動作)
メモリセルに対して書き込み動作を行う場合、すなわち、可変抵抗素子2を低抵抗化する場合につき説明する。この場合も、消去動作のときと同様に、ワード線デコーダ51が、対象メモリセル1Eに接続されたワード線WLEを選択して所定電圧を印加し、ソース線SLを接地状態とする。これにより、対象メモリセル1Eと同一行に配置された各メモリセルの選択トランジスタはON状態となる。
【0092】
なお、書き込み動作の際は、可変抵抗素子2の抵抗状態が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するため、抵抗状態が低抵抗状態に遷移する瞬間又はその直後において大電流が流れることが予想される。このとき、場合によっては選択トランジスタ3を破壊する危険がある。このような事態を避けるべく、ワード線WLEに印加する電圧としては、選択トランジスタ3によって電流量が制限できるような範囲内に設定するのが好適である。
【0093】
この状態の下で、ビット線デコーダ53が、対象メモリセル1Eに接続されたビット線BLEを選択して、書き込み動作用の所定の負電圧パルスを印加する。このとき、対象メモリセル1Eにおいて、可変抵抗素子2のオーミック接合側の端部33(図5(b)参照)が高電位となるバイアスが発生し、低抵抗状態への遷移が起こる。よって、対象メモリセル1Eは消去状態となる。
【0094】
(読み出し動作)
メモリセルに対して読み出し動作を行う場合、すなわち、可変抵抗素子2の抵抗状態を変化させることなく読み出し電流を検出する場合につき説明する。この場合、ワード線デコーダ51が、対象メモリセル1Eに接続されたワード線WLEを選択して所定電圧を印加し、ソース線SLを接地状態とする。これにより、対象メモリセル1Eと同一行に配置された各メモリセルの選択トランジスタはON状態となる。
【0095】
この状態の下で、ビット線デコーダ53が、対象メモリセル1Eに接続されたビット線BLEを選択して、読み出し動作用の所定の正電圧パルスを印加する。このとき、ワード線WLEに印加する電圧は、可変抵抗素子2の抵抗状態が遷移しない範囲内の値に設定される。これにより、対象メモリセル1Eにおいて、可変抵抗素子2のショットキー接合側の端部31からオーミック接合側の端部33(図5(b)参照)に向かう電流が発生する。
【0096】
対象メモリセル1Eが高抵抗状態の場合、ビット線BLEには比較的小さい電流が流れる。これに対し、対象メモリセル1Eが低抵抗状態の場合、ビット線BLEには比較的大きい電流が流れる。読み出し回路59は、ビット線BLEに流れる電流をセンスアンプにより検出し、抵抗状態を判断する。つまり、読み出し回路59は、可変抵抗素子2から選択トランジスタ3を経てソース線SLへと流れ出た電流を検出するのではなく、ビット線BLEから可変抵抗素子2の端部31へ向かって流れる電流を検出する構成であるため、選択トランジスタ3の負荷の影響を受けずに電流を読み出すことができる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態の構造によれば、消去動作と読み出し動作において印加する電圧の極性を同じにすることができ、且つ、比較的負荷の軽いビット線BL側から電圧を印加して、ショットキー接合側端部31を正極性とするバイアスを与えることで、高抵抗状態の読み出しディスターブを抑制することができる。
【0098】
また、ショットキー接合となる電極(ここではビット線BL)と可変抵抗体25の間に金属酸化物からなるバッファ層24が挿入されているため、素子間の抵抗値のバラツキが軽減される。
【0099】
そして、メモリセル1を製造するに際し、可変抵抗体材料膜25を堆積する時点(#10)において、既に予め酸化膜23,バッファ層24が形成されている(#9)。このため、可変抵抗体を形成後にバッファ層を成膜する場合のように、可変抵抗体内に含有する酸素が、バッファ層側へと移動することがない。これにより、素子間での電気的特性のバラツキが大幅に抑制される。
【0100】
[材料]
以下、利用可能な材料について説明する。
【0101】
可変抵抗体25としては、Hf又はZrの何れかの元素の酸化物を含んでなることが好ましい。なぜなら、これらの材料はバンドギャップが大きいため、既存半導体設備で使用可能な、仕事関数が中間的な値を示す導電性材料を第1電極として利用でき、電極材料の選択の幅が拡がるためである。
【0102】
一例として、HfO2,ZrO2の伝導帯の底の真空準位からのエネルギー位置は、夫々、−2.8eV、−3.0eVである。
【0103】
ビット線BL(第1電極)、第2電極26の各電極材料としては、前者が後者よりも仕事関数が大きいという関係を満たす導電性材料であれば、上記の例に限定されるものではない。
【0104】
例えば、ビット線BL(第1電極)の材料としては、TiN(4.7eV),TaNx(窒素の化学量論的組成に依存して、4.05〜5.4eV),W(4.5eV),Ni(5.2eV),Co(4.45eV)等が利用可能である。なお、括弧内は各材料の仕事関数値である。TiN、TaNを利用するのが特に好適である。
【0105】
また、第2電極26の材料としては、第1電極よりも仕事関数が小さい材料を選択するという制約の下で、Ti(4.14eV),Ta(4.2eV),Al(4.1eV),Hf(3.9eV),Zr(4.05eV)等が利用可能である。
【0106】
バッファ層24は、ビット線BLの一部分が酸化されることで形成される。このため、バッファ層24の材料は、専らビット線BLの材料に依存する。例えば、ビット線BLとしてTiNを用いた場合には、バッファ層24は一例としてTiO2によって構成される。
【0107】
なお、バッファ層24は、Ti,Ta,Zn,Nb,Wの何れかの元素の酸化物を含んでなることが好ましい。これを踏まえれば、ビット線BL(第1電極)の材料としては、Ti,Ta,Zn,Nb,Wを含む導電性材料であることが好ましい。一例として、前掲の各材料の酸化物であるTiO2,Ta2O5,ZnO,Nb2O5,WO3の伝導帯の底の真空準位からのエネルギー位置は、夫々、−3.8eV、−3.7eV、−4eV、−4eV、−4.2eVである。
【0108】
[別実施形態]
以下に別実施形態につき、説明する。
【0109】
〈1〉 上記実施形態では、選択トランジスタ3のドレイン41が可変抵抗素子の第2電極26と電気的に接続する構成とした。これは、選択トランジスタ3がNチャネル型であることを前提に議論したものである。つまり、導電型が反転すれば、ソースとドレインの呼称は反転する。
【0110】
〈2〉 上記実施形態では、ステップ#8として第1開口部80を中継配線67の上面が露出するように形成するものとした。しかし、この開口部は少なくともビット線BLより下方に形成されていれば、必ずしも中継配線67の上面を露出させなくても良い。
【0111】
図12〜図13は、この別実施形態におけるプロセスに従ったときの各工程断面図の一部である。ステップ#8においてビット線BLより下方で中継配線67より距離dだけ上方の位置まで第1開口部80aを開口する(図12(a))。その後、ステップ#9と同様に、酸化処理を行い、第1開口部80aの側面に露出したビット線BL部分にバッファ層24を形成する(図12(b))。一方、中継配線67の上面は露出していないため、このステップ#9において酸化膜23が形成されることはない。
【0112】
次に、可変抵抗体材料膜10を堆積し(図12(c),#10)、中継配線67の上面に達する第2開口部28を形成する(図13(a),#11)。その後、第2電極材料膜68を第2開口部28を完全には充填しない膜厚で堆積し(図13(b),#12)、パターニング処理により可変抵抗体25,第2電極26を形成する(図13(c),#13)。
【0113】
図13(c)に示す構造においても、図7と同様、仕事関数の大きい材料で構成された第1電極(ビット線BL)の界面にはバッファ層24が形成され、ビット線BLはこのバッファ層24を介して可変抵抗体25と連絡される。そして、第2電極は、可変抵抗体25と接触すると共に、外部から電圧印加が可能な構成である。
【0114】
〈3〉 図4の構成において、ソース線SLに対する印加電圧を制御するためのソース線デコーダを備える構成としても良い。このとき、書き込み動作時において選択されたビット線BLEに対して負電圧パルスを印加する代わりに、ソース線SLと非選択ビット線に正電圧を印加することで、選択ビット線をソース線SLに対して相対的に負電圧状態とするものとしても良い。
【符号の説明】
【0115】
1: メモリセル(不揮発性半導体記憶装置の最小単位)
2: 可変抵抗素子
3: 選択トランジスタ
10,10a,10b: 可変抵抗素子
11: 可変抵抗体(HfOx)
12: 半導体基板
13: 第1電極(TiN)
15: 第2電極(Ti)
16: 絶縁膜
17: バッファ層
20: メモリセルアレイ
21: 第1層間絶縁膜
22: 第2層間絶縁膜
23: 酸化膜
24: バッファ層
25: 可変抵抗体(材料膜)
26: 第2電極(材料膜)
31: 可変抵抗素子のショットキー接合側端部
33: 可変抵抗素子のオーミック接合側端部
40: 半導体基板
41: 選択トランジスタのドレイン
42: 選択トランジスタのゲート絶縁膜
43: 選択トランジスタのソース
45: 選択トランジスタのゲート電極
47: 素子分離領域
51: ワード線デコーダ
53: ビット線デコーダ
55: 電圧発生回路
57: 制御回路
59: 読み出し回路
60: 下地層間絶縁膜
61: コンタクトプラグ(第1コンタクトプラグ)
63: コンタクトプラグ(第2コンタクトプラグ)
65: コンタクトプラグ(第3コンタクトプラグ)
67: 中継配線
80: 第1開口部
81: 開口部
82: 第2開口部
83: 開口部
BL1〜BLn: ビット線
SL1〜SLm: ソース線
WL1〜WLm: ワード線
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気抵抗の変化により情報を記憶する可変抵抗素子と、この素子の一端に一方の拡散領域が接続する選択トランジスタを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュメモリに代わる高速動作可能な次世代不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM:Nonvolatile Random Access Memory)として、FeRAM(Ferroelectric RAM)、MRAM(Magnetic RAM)、PRAM(Phase Change RAM)等の様々なデバイス構造が提案されており、高性能化、高信頼性化、低コスト化、及びプロセス整合性という観点で激しい開発競争が行われている。
【0003】
これらの既存技術に対して、電気的ストレス(電圧パルス)を印加することによって可逆的に電気抵抗が変化する性質を有する可変抵抗体を用いた抵抗性不揮発性メモリ(RRAM:Resistive Random Access Memory;「RRAM」はシャープ株式会社の登録商標)が提案されている。RRAM素子(可変抵抗素子)は、通常、可変抵抗体を挟んで2つの電極を備える構成とし、この2つの電極間に所定の電圧パルスを印加することで素子の抵抗値を可逆的に変化させて、情報の記憶状態を変化させる。
【0004】
不揮発性半導体記憶装置は、可変抵抗素子を備えた複数のメモリセルを行方向及び列方向にマトリクス状に配置してメモリセルアレイを形成すると共に、各メモリセルに対するデータの書き込み、消去、及び読み出し動作を制御する周辺回路を配置して構成される。そして、このメモリセルとしては、その構成要素の違いから、1つのメモリセルが1つの可変抵抗素子Rのみで構成される「1R型」メモリセル、1つの可変抵抗素子Rと1つの選択トランジスタTで構成される「1T1R型」メモリセル等が存在する。
【0005】
可変抵抗体材料としては、チタン酸化(TiO2)膜,ニッケル酸化(NiO)膜,酸化亜鉛(ZnO)膜,酸化ニオブ(Nb2O5)膜等の遷移金属元素の酸化物が利用可能であることが知られている。例えば、非特許文献1及び非特許文献2には、上記各材料で構成された素子が、可逆的な抵抗変化を示すことが開示されている。
【0006】
また、このような可逆的な抵抗変化を示す可変抵抗素子は、金属酸化物中に酸素欠損に起因する不純物準位がバンドギャップ中に形成されることで、n型又はp型の半導体の伝導を示す。そして、この抵抗変化は電極界面近傍の状態変化に起因するものであることが確認されている。
【0007】
可変抵抗体材料として遷移金属酸化物を利用して構成した可変抵抗素子において、安定的な抵抗スイッチング(低抵抗状態と高抵抗状態の間での安定的な遷移)を行うためには、可変抵抗体と2つの電極が接触する夫々の界面のうち、何れか一方の界面のみをスイッチング領域とするのが好ましい。より詳細には、これら2つの電極に用いる材料を異ならせ、一方の電極との界面をオーミック接合として非スイッチング界面とし、もう一方の電極との界面を例えばショットキー接合としてスイッチング界面とすることが好ましい。
【0008】
遷移金属酸化物を利用して構成した可変抵抗素子は、製造直後の初期抵抗が非常に高い性質を有している。このため、このままの状態では、通常の書き換え動作に用いる電圧パルス(以下、この段落において「書き換え電圧パルス」と呼ぶ)を印加しても安定的にスイッチング動作が行えない場合がある。この対策として、メモリ素子として使用する前に、書き換え電圧パルスより電圧振幅が大きく且つパルス幅が長い電圧パルス(フォーミング電圧パルス)を初期状態の可変抵抗素子に印加して、抵抗スイッチングを生じさせるための電流経路(以下、適宜「フィラメントパス」と呼ぶ)を形成しておく。このフィラメントパスを予め形成しておくことで、可変抵抗素子に書き換え電圧パルスを印加すると、当該フィラメントパスを通じて書き換え電流が流れ、所望の抵抗状態に安定して遷移する。
【0009】
なお、このように、可変抵抗体内にフィラメントパスを形成する処理は、「フォーミング処理」と呼ばれる。このフォーミング処理によって形成されるフィラメントパスが、可変抵抗素子の電気的特性を決定する。
【0010】
フォーミング処理は、ソフトブレークダウンの一種であり、ブレークダウン開始時からの電流の制御態様によって、フィラメントパスの形成経路、つまりは素子の電気的特性が決定される。
【0011】
理論的には、フォーミング時の電流は、可変抵抗素子と直列に接続したトランジスタ等の電流制御素子によって制御可能である。よって、かかる電流制御素子によってフォーミング時の電流を適切に制御しながらフィラメントパスを形成すれば、スイッチング素子の電気的特性を任意に制御できるようにも思える。しかし、実際には、ブレークダウン時に非常に急峻な電流量の増加を伴う。例えば、電流制御素子としてトランジスタを用いた場合には、当該トランジスタの寄生容量の影響を受けて、制御できないスパイク電流と呼ばれる急峻な電流が流れる。この結果、可変抵抗素子間において、形成されるフィラメントパスにバラツキが生じ、低い書き込み電流値で安定的なスイッチング動作を実現する可変抵抗素子を安定して製造することは困難となる。
【0012】
これに対し、可変抵抗体として利用する金属酸化物と電極の間にバッファ層(界面酸化物)を設けることで、電気的特性を向上させる方法が特許文献1及び非特許文献3に報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−306157号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】H.Pagnia他,"Bistable Switchingin Electroformed Metal-Insulator-MetalDevices",Phys.Stat.Sol.(a),vol.108,pp.11-65,1988年
【非特許文献2】Baek,I.G.他,"Highly Scalable Non-volatile Resistive Memory using Simple Binary Oxide Driven by Asymmetric Unipolar Voltage Pulses",IEDM 04,pp.587-590,2004年
【非特許文献3】M.Terai他,"Effect of Bottom Electrode of ReRAM with Ta2O5/TiO2Stack on RTN and Retention",IEDM 09,pp.775-778,2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
RRAMの分野においては、開発が開始されてからあまり期間が経過していないこともあり、依然として対策が見出せていないいくつかの課題がある。例えば、素子間で可変抵抗素子の抵抗値にバラツキが存在することや、高抵抗状態において読み出しディスターブ発生することは、この一例に挙げられる。
【0016】
読み出しディスターブとは、読み出し動作時に印加されるバイアス電圧によって可変抵抗素子の抵抗値が変化してしまう現象をいう。可変抵抗素子を備えたメモリセルからデータを読み出すに際しては、可変抵抗素子にバイアス電圧を印加して読み出し電流を流し、その電流の大小によって可変抵抗素子の抵抗値を判定することで行う。従って、メモリセルの構成に関係なく、読み出し動作に伴って、可変抵抗素子には所定のバイアス電圧が印加される。この読み出し動作時に印加されるバイアス電圧によって可変抵抗素子の抵抗値が変化してしまうと、最悪の場合には記録した情報を消失してしまう。このため、読み出しディスターブの程度及び頻度を可能な限り低減することが要求される。
【0017】
本願発明者らは、鋭意研究により、図1に示す構造の可変抵抗素子を作成し、高抵抗状態の読み出しディスターブの抑制に効果があることを見出した。図1に示す可変抵抗素子10は、可変抵抗体11としてHfOx(ハフニウム酸化物)、一方の電極(第1電極)13としてTiNを、他方の電極(第2電極)15としてTiを夫々用いて形成している。
【0018】
この図1に示す可変抵抗素子10において、TiN電極13側から消去用パルス電圧を印加した後の高抵抗状態について、消去動作時の電圧パルスと、読み出し動作時の電圧パルスの極性を同じにすることにより、高抵抗状態の読み出しディスターブを低減できることを見出した。なお、ここでは、高抵抗化することを消去動作と呼び、低抵抗化することを書き込み動作と呼んでいるが、呼び方は逆でも良い。
【0019】
図2は、消去動作後(すなわち高抵抗状態)の可変抵抗素子を読み出した際の、読み出し電圧の極性の相違を比較したグラフである。(a)は、消去用パルス電圧と読み出し電圧を逆極性とした場合、(b)は同極性とした場合の、累積読み出し回数と抵抗値の関係を示している。なお、(a)の場合は読み出し電圧を0.6V,(b)の場合は読み出し電圧を0.8Vとした。
【0020】
図2によれば、(a)の場合、約5回目の読み出しで既に大きな抵抗値の変化が見受けられる。また、約700回を超えると、読み出された抵抗値が著しく不安定になっていることが分かる。なお、(a)では、抵抗値が上下に激しく変動することを示すために読み出し回数が1000回〜10000回の場合の抵抗値も表示している。
【0021】
これに対し(b)の場合、異なる4つの素子に対して抵抗値の読み出しを行ったが、いずれも安定した抵抗値が読み出された。
【0022】
ここで、Tiの仕事関数は4.14eVで、オーミック接合であり、TiNの仕事関数は4.7eVで、スイッチング界面となるショットキー接合となっている。つまり、図2の結果に基づけば、消去動作および読み出し動作においては、スイッチング界面となる仕事関数が大きい方の電極から電圧を印加することにより、安定した読み出しが行えることが分かる。
【0023】
また、高速動作を実現するためには、信号の遅延によるディスターブを軽減すべく電圧変動を伴う配線をなるべく負荷を軽くする必要がある。このため、一般的には、選択トランジスタを介することになるソース線側ではなく、負荷の軽いビット線側から読出し電圧を印加する構成が望ましい。
【0024】
更に本願発明者らは、鋭意研究により、特性のバラツキや読み出しディスターブを引き起こす原因は、スイッチング領域側で起こっていると考え、非特許文献3の教示に反して、バッファ層としての金属酸化物を、ショットキー接合となる電極との界面に挿入した。この結果、バラツキ低減、並びに読み出しディスターブの抑制に大きな効果があることを見出した。この内容は別途出願しており、本願出願時点では未公開である(特願2010-171079号)。
【0025】
図3は、本願発明者が開発した可変抵抗素子の概略断面構造図である。可変抵抗素子10aは、半導体基板12上に絶縁膜16を介して第1電極13を備える(ここでもTiNとする)。そして、第1電極13に対して酸化処理を行い、表面にバッファ層17としての金属酸化物を形成する。このバッファ層17は、図3の例ではTiOx(酸化チタン)で構成される。
【0026】
そして、このバッファ層17の上層に、可変抵抗体11を形成し、その上層に第2電極15を形成する。図1の例と同様、可変抵抗体11をHfOx(ハフニウム酸化物)、第2電極15をTiとした。つまり、第2電極15は、第1電極13よりも仕事関数が小さい金属材料で構成されており、第2電極15の界面はオーミック接合、第1電極13の界面はショットキー接合となる。
【0027】
このとき、バッファ層17は、ショットキー接合を示す第1電極13の界面に形成されており、バラツキ低減、並びに読み出しディスターブの抑制効果を示す。
【0028】
ここで、上述したように、安定した読み出しを行うには、仕事関数の大きい方の電極、すなわち第1電極13から電圧を与えることが求められる。つまり、第1電極13に対して電圧が印加できるよう、上方から第1電極13に連絡するコンタクト電極を形成する必要がある。
【0029】
そして、このとき、電圧は第1電極13から第2電極15へと構造上上向きに与えられることとなる。
【0030】
ところで、1T1R型のメモリセルを実現しようとした場合、選択トランジスタのソース/ドレインは、半導体基板12上(絶縁膜16の下層)に形成される。このため、第1電極13から第2電極15へと上向きに与えられた電圧を、第2電極15よりも遙かに深い位置に存在する選択トランジスタのソース/ドレインの一方に与える必要がある。すなわち、ここでも、第2電極15から半導体基板12の表面付近に連絡するコンタクト電極が必要となる。
【0031】
つまり、図3の構造においては、第1電極13に対して外から電圧印加可能にしつつ、第2電極15に選択トランジスタのソース/ドレインの一方を電気的に接続する構成を実現するには、複雑な構造を余儀なくされ、プロセスの複雑化や、素子領域の拡大という問題を引き起こす。
【0032】
他方、このような問題を解消するために、第1電極13と第2電極15の上下位置を反転させる方法が考えられる(図4参照)。この場合、上方に位置する第1電極13に対しては容易に外から電圧が印加可能であるし、第2電極15は図3よりも深い位置に形成されているため、第2電極15と選択トランジスタのソース/ドレインの一方とを電気的に接続するのも容易である。
【0033】
しかし、図4の構造を実現するには、可変抵抗体11を形成した後にバッファ層17を形成する必要がある。可変抵抗体11もバッファ層17も共に金属酸化物で構成されるため、可変抵抗体11を積層した後にバッファ層17を成膜すると、これらの界面で酸素の移動が発生し、所望の電気的特性を有する可変抵抗体11を形成することが困難になってしまうという別の問題を生じさせる。
【0034】
本発明は、本発明者が得た上記の知見に基づき、素子間の抵抗値のバラツキを軽減すると共に、高抵抗状態の読み出しディスターブを抑制し、安定したスイッチング動作を高速で行うことのできる可変抵抗素子を備えた不揮発性半導体記憶装置を、簡易なプロセスで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記目的を達成するため、本発明の不揮発性半導体記憶装置は、半導体基板上に、第1電極、第2電極、及び当該両電極の間に挟持された可変抵抗体を有する可変抵抗素子と、前記第2電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続した選択トランジスタとを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置であって、
前記選択トランジスタの上方に、第1配線、第2配線、中継配線の各配線層を有すると共に、当該配線層を覆う上面に第1層間絶縁膜を有し、更にその上層に前記第1電極、第2層間絶縁膜を下からこの順に有し、
前記第1電極は、前記第2電極よりも仕事関数が大きい導電性材料で構成されており、
前記第2電極は、前記中継配線の上面に接触する底面を有し、前記第1層間絶縁膜、前記第1電極、及び前記第2層間絶縁膜を貫通する第1筒状部を備えており、
前記可変抵抗体は、金属酸化物からなり、前記第2電極の前記第1筒状部の外側面に接触し、前記第1層間絶縁膜、前記第1電極、及び前記第2層間絶縁膜を貫通し、且つ底面の高さ位置が前記第2電極の底面よりも高い第2筒状部を備えており、
前記第2筒状部の外側面と前記第1電極の間には、前記可変抵抗体とは異なる材料の金属酸化物で形成されたバッファ層を有し、
前記中継配線は前記選択トランジスタのソース又はドレインの一方に、前記第1配線はゲート電極に、前記第2配線はソース又はドレインの他方に、夫々電気的に接続することを特徴とすることを特徴とする。
【0036】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記バッファ層が、前記第1電極を構成する材料の酸化物で構成されていることを別の特徴とする。
【0037】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記可変抵抗体が、Hf又はZrの酸化物を含む構成であることを別の特徴とする。
【0038】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記第1電極が、Ti窒化物、Ta窒化物、W、Ni、Coの何れかの導電性材料を含む構成であることを別の特徴とする。
【0039】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記第2電極が、Ti,Ta,Al,Hf,Zrの何れかの導電性材料を含む構成であることを別の特徴とする。
【0040】
この不揮発性半導体記憶装置は、上記特徴に加えて、前記メモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列してなるメモリセルアレイを備え、複数の前記第1配線がワード線として、複数の前記第2配線がソース線として、夫々行方向に延伸し、複数の前記第1電極がビット線として列方向に延伸する構成であり、
前記メモリセルアレイ内において、同一行に配列した複数の前記メモリセルは、各前記選択トランジスタの前記ゲート電極を共通の前記ワード線に、前記ソース又はドレインの他方を共通の前記ソース線に電気的に接続し、同一列に配列した複数の前記メモリセルは、各前記第1電極を共通の前記ビット線によって実現する構成であることを別の特徴とする
【0041】
また、本発明の不揮発性半導体記憶装置の製造方法は、半導体基板上に、第1電極、第2電極、及び当該両電極の間に挟持された可変抵抗体を有する可変抵抗素子と、前記第2電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続した選択トランジスタとを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、
前記半導体基板上に前記選択トランジスタを形成する工程と、
前記選択トランジスタの上層に下地層間絶縁膜を形成する工程と、
前記下地層間絶縁膜を貫通し、前記選択トランジスタのドレイン、ソース、及びゲート電極に夫々電気的に接続する第1,第2,及び第3コンタクトプラグを形成する工程と、
前記第1コンタクトプラグに電気的に接続する中継配線、前記第2コンタクトプラグに接続する第1配線、前記第3コンタクトプラグに接続する第2配線を前記下地層間絶縁膜の上層に形成する工程と、
前記下地層間絶縁膜の上層に、前記中継配線、前記第1配線、前記第2配線の上方を覆うように第1層間絶縁膜を形成し、更にその上層に前記第1電極の材料膜、第2層間絶縁膜をこの順に形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜、前記第1電極の材料膜、前記第2層間絶縁膜を貫通し、側面の一部分に前記第1電極の材料膜を露出させる第1開口部を形成する工程と、
熱酸化処理を行って、前記第1開口部内において露出していた前記第1電極の材料膜をバッファ層に変化させる工程と、
前記バッファ層に接触するように前記可変抵抗体の材料膜を前記第1開口部内に堆積する工程と、
前記中継配線の上方位置に形成されている前記可変抵抗体の材料膜の一部及びその下層に形成されている材料膜を除去して、前記中継配線の上面を露出して第2開口部を形成する工程と、
前記第1電極の材料膜よりも仕事関数の値が小さい前記第2電極の材料膜を、少なくとも前記第2開口部を完全には充填しない範囲内の膜厚で堆積する工程と、
前記可変抵抗体の材料膜及び前記第2電極の材料膜をエッチング加工して、前記可変抵抗体と前記第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明の構成を有する不揮発性半導体記憶装置によれば、選択トランジスタのソース又はドレインと電気的に接続するのは比較的仕事関数の小さい第2電極であり、それよりも仕事関数の大きい第1電極は、可変抵抗体を挟んで選択トランジスタとは反対側に位置している。そして、この第1電極と可変抵抗体の間、すなわちショットキー接合となる電極との界面にバッファ層が設けられている。これにより、バラツキ低減、読み出しディスターブの抑制に効果を有する。
【0043】
そして、本発明の構成の場合、可変抵抗体の材料膜を堆積するより前の段階でバッファ層を形成することが可能である。このため、可変抵抗体を形成した後にバッファ層を形成することで、両者の界面を通じて可変抵抗体内の酸素が移動してしまい、電気的特性に影響を及ぼすという問題点が解消する。
【0044】
更に、第1電極は、第1配線や第2配線よりも上方の位置に形成され、外部から容易に電圧印加が可能な構成である。より具体的には、読み出し動作において、第1電極側に読み出し電圧を印加し、この第1電極を流れる電流を検出することで抵抗状態の検出を行うことができる。つまり、選択トランジスタを介して流れる電流を検出する必要がないため、選択トランジスタの負荷の影響を受けることなく電流の読み出しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】高抵抗状態の読み出しディスターブの抑制に効果を示す可変抵抗素子の構造例
【図2】高抵抗状態の可変抵抗素子に対する読み出し動作を繰り返し行った場合において、読み出し電圧の極性の相違による抵抗値の変化を比較した図
【図3】バッファ層を備えた可変抵抗素子の概略断面構造図の一例
【図4】バッファ層を備えた可変抵抗素子の概略断面構造図の別の一例
【図5】本発明の不揮発性半導体記憶装置の回路構成を示す図
【図6】周辺回路を含む記憶装置全体の概念的ブロック図
【図7】メモリセルの構造を示す概略断面図
【図8】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの工程断面図(その1)
【図9】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの工程断面図(その2)
【図10】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの工程断面図(その3)
【図11】本発明の不揮発性半導体記憶装置の製造工程の概略を示すフローチャート
【図12】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの別実施形態の工程断面図(その1)
【図13】本発明の不揮発性半導体記憶装置を構成するメモリセルの別実施形態の工程断面図(その2)
【発明を実施するための形態】
【0046】
図5は、本発明の不揮発性半導体記憶装置の回路構成を示している。(a)がメモリセルアレイの回路構成を示しており、(b)がメモリセル部分を拡大した回路図である。
【0047】
メモリセルアレイ20は、複数のメモリセル1を行方向(図面上では横方向)及び列方向(図面上では縦方向)にマトリクス状に配置してなり、行方向に延伸する複数のワード線(WL1〜WLm)、複数のソース線(SL1〜SLm)、及び列方向に延伸する複数のビット線(BL1〜BLn)を有している。なお、m,nは2以上の自然数である。また、以下では、ワード線に関し、各ワード線WL1〜WLmを区別せずに言及するときは、これらを代表して「ワード線WL」と呼ぶ。同様に、各ソース線SL1〜SLmを代表して「ソース線SL」と呼び、各ビット線BL1〜BLnを代表して「ビット線BL」と呼ぶ。
【0048】
図5に示すように、各メモリセル1は、可変抵抗素子2と選択トランジスタ3が直列に接続されてなる1T1R型の構造を示しており、各ワード線WLと各ビット線BLが交差する箇所に形成されている。そして、同一列に位置するメモリセル1同士は同一のビット線BLに電気的に接続され、同一行に位置するメモリセル1同士は同一のワード線WL及び同一のソース線SLに電気的に接続されている。なお、ソース線SLについては、各ソース線SL1〜SLmが相互に電気的に接続される構成として良い。
【0049】
可変抵抗素子2は、図1に示す可変抵抗素子10と同様に、一方の端部はショットキー接合を示し、他方の端部はオーミック接合を示すように構成されている。本発明の構成では、可変抵抗素子2のショットキー接合側の端部31をビット線BLに電気的に接続させ、オーミック接合側の端部33を選択トランジスタ3のソース/ドレインの一方に電気的に接続させる。本実施形態では、可変抵抗素子2のオーミック接合側の端部33は、選択トランジスタ3のドレイン41と電気的に接続し、選択トランジスタ3のソース43はソース線SLと電気的に接続している。また、選択トランジスタ3のゲート45はワード線WLと電気的に接続している。
【0050】
図6は、メモリセルアレイとその周辺回路を含む記憶装置全体の概念的ブロック図である。半導体記憶装置は、メモリセルアレイ20の周辺回路として、ワード線デコーダ51,ビット線デコーダ53,電圧発生回路55,制御回路57,読み出し回路59を備えている。
【0051】
制御回路57は、メモリセルアレイ20の書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作の制御及びフォーミング処理の制御を行う。具体的には、制御回路57はアドレス線から入力されたアドレス信号、データ線から入力されたデータ信号、制御信号線から入力された制御信号に基づいて、ワード線デコーダ51、ビット線デコーダ53を制御して、メモリセルの各メモリ動作及びフォーミング処理を制御する。より具体的には、アドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路の機能を有する(不図示)。
【0052】
電圧発生回路55は、書き込み、消去、読み出しの各動作時において、当該各動作に必要な印加電圧を発生してワード線デコーダ51及びビット線デコーダ53に与える。
【0053】
ワード線デコーダ51は、メモリセルアレイ20の各ワード線WLの一端に接続しており、書き込み、消去、読み出しの各動作時において、アドレス線から与えられたアドレス信号に基づいて所定のワード線を選択する。より具体的には、選択したワード線に対して電圧発生回路55から出力される所定の電圧を印加することで、当該選択ワード線に接続された選択トランジスタ3のみをON状態とする。
【0054】
ビット線デコーダ53は、メモリセルアレイ20の各ビット線BLの一端に接続しており、書き込み、消去、読み出しの各動作時において、アドレス線から与えられたアドレス信号に基づいて所定のビット線を選択する。より具体的には、選択したビット線に対して電圧発生回路55から出力される所定の電圧を印加する。
【0055】
読み出し回路59は、各ビット線BLに接続されている。読み出し時において、選択されたビット線に流れる電流を非選択のビット線に流れる電流と分離して検知することで、選択メモリセルの抵抗状態を検知する。本実施形態では、読み出し回路59が電流の大小を判別する電流センス回路であることを想定している。
【0056】
[メモリセルの構造]
図7は、メモリセル1の構造の一例を示す概略断面図である。図7において、図5内の回路図と対応する要素については同一の符号を付している。なお、各断面図は、模式的に示したものであり、図面上の寸法比は実際の寸法比と必ずしも一致しない。
【0057】
また、説明の都合上、図面に向かって左右方向をX方向、上下方向をY方向とし、図面を貫通する方向をZ方向とする。これらの表記を用いて説明すると、メモリセル1は、XZ平面上に配置された半導体基板40上に、下地層間絶縁膜60等の各形成膜が鉛直方向(Y方向)に積層して形成される。
【0058】
半導体基板40上には素子分離領域47が設けられている。そして、この素子分離領域47によって分離された基板表面の活性領域の一部上面には、ゲート絶縁膜42及びゲート電極45が下からこの順に形成されている。また、ゲート電極45の外側における同活性領域内の基板表面には、ドレイン41及びソース43の両拡散領域が、基板面に平行なX方向に離間を有して形成されている。
【0059】
ドレイン41,ソース43,ゲート絶縁膜42,ゲート電極45、及びゲート絶縁膜42の下層に位置する半導体基板40の一部によって選択トランジスタ3が形成されている。
【0060】
選択トランジスタ3の上層には下地層間絶縁膜60が形成されている。下地層間絶縁膜60には、ドレイン41に接続されたコンタクトプラグ61、ソース43に接続されたコンタクトプラグ63、及びゲート電極45に接続されたコンタクトプラグ65が夫々分離して埋め込まれている。コンタクトプラグ61が「第1コンタクトプラグ」に対応し、コンタクトプラグ62が「第2コンタクトプラグ」に対応し、コンタクトプラグ63が「第3コンタクトプラグ」に対応する。
【0061】
下地層間絶縁膜60の上層には、ソース線SL,ワード線WL,及び中継配線67が夫々分離して形成されている。ソース線SLは、コンタクトプラグ63と接触し、Z方向に延伸して形成されている。ワード線WLは、コンタクトプラグ65と接触し、ソース線SLと同じくZ方向に延伸して形成されている。中継配線67は、コンタクトプラグ61と接触し、Z方向においては、少なくとも隣接メモリセルの位置には達しないように、選択トランジスタ3毎に形成されている。なお、ワード線WLが「第1配線」に対応し、ソース線SLが「第2配線」に対応する。
【0062】
そして、ソース線SL,ワード線WL,中継配線67、及び下地層間絶縁膜60の上層には、第1層間絶縁膜21が形成されている。
【0063】
第1層間絶縁膜21上には、可変抵抗素子の一方の電極(第1電極)を兼ねるビット線BLが形成されており、X方向に延伸している。このビット線BLの材料としては例えばTiN等の仕事関数が比較的大きい導電性材料が利用される。このビット線BLの上層には第2層間絶縁膜22が形成されている。
【0064】
また、中継配線67の上方位置において、第1層間絶縁膜21,ビット線BL,及び第2層間絶縁膜22が、可変抵抗体25及び可変抵抗素子の他方の電極(第2電極)26によってY方向に分断されている。
【0065】
中継配線67の一部表面領域には、第2電極26と酸化膜23が形成されている。酸化膜23は、中継配線67の一部表面領域において、第2電極26の底面付近においてその側面と接触する位置に形成されている。
【0066】
第2電極26は、中継配線67の上面に接触する底面を有し、第1層間絶縁膜21、第1電極BL、前記第2層間絶縁膜22をY方向に貫通する筒状部(「第1筒状部」に対応)を備える。そして、この筒状部の側壁部分を構成する位置において、第2電極26の筒状部の外側には可変抵抗体25が筒状に形成されている(「第2筒状部」に対応)。可変抵抗体25の筒状部は、第1層間絶縁膜60,ビット線BL,第2層間絶縁膜22をY方向に貫通するように形成されており、底面の高さ位置が第2電極26の底面よりも高くなっている。そして、可変抵抗体25は、中継配線67の上面に接触して形成されている酸化膜23と接触している。
【0067】
また、ビット線BLが形成されている高さ位置において、可変抵抗体25の側面にバッファ層24が形成されており、このバッファ層24を介して可変抵抗体25とビット線BLが連絡される構成である。なお、可変抵抗体25は、第2層間絶縁膜22の上層に達する位置まで形成されている。また、第2電極26は、第2層間絶縁膜22の上層位置において、可変抵抗体25の上層に達する位置まで形成されている。
【0068】
第2電極26は、中継配線67,コンタクトプラグ61を介してドレイン41と電気的に接続される構成である。なお、第2電極26の材料としては、例えばTa等の、第1電極(ビット線BL)の材料よりは仕事関数の小さい導電性材料が利用される。また、酸化膜23及びバッファ層24の材料としては、例えばTiO2が利用される。可変抵抗体25の材料としては、例えばHfO2が利用される。利用可能なその他の材料の例については後述する。
【0069】
[製造方法]
以下、図7の示すメモリセルの製造方法につき、図8〜図10の各工程断面図、及び図11のフローチャートを参照して説明する。なお、下記説明内における#1〜#13の各ステップ番号は、図11のフローチャート内におけるステップ番号に対応している。
【0070】
なお、以下の各工程断面図では、図7に示す断面構造図と同一の要素に対しては同一の符号を付している。また、符号が煩雑化するのを避けるべく、パターニング等の成形処理を行う前の膜(例えば可変抵抗体材料膜)と成形後の構造体(例えば可変抵抗体)に対して同一の符号を付している。
【0071】
まず、公知の手順に従い、半導体基板40(例えばSi基板)上に、選択トランジスタ3を形成する(#1)。すなわち、素子分離領域47を形成した半導体基板40上にゲート絶縁膜42、ゲート電極45、ドレイン41、ソース43から構成される選択トランジスタ3を形成する。
【0072】
次に、選択トランジスタ3を形成した半導体基板40上に膜厚1400nm程度で下地層間絶縁膜60(例えばBPSG膜)を堆積させた後、さらにその表面をCMP法にて、膜厚が600nm程度になるまで研磨して表面を平坦化する(図8(a),#2)。
【0073】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、下地層間絶縁膜60内に、ドレイン41の上面に達するコンタクトホール、ソース43の上面に達するコンタクトホール、ゲート電極45の上面に達するコンタクトホールを夫々形成する。そして、CVD法でバリア膜およびコンタクトプラグ用材料膜(例えばタングステン膜)を形成し、さらに、CMP法にて成形処理することで、コンタクトプラグ61、63、65を埋め込み形成する(#3)。
【0074】
次に、コンタクトプラグ61、63、65が埋め込まれた下地層間絶縁膜60上に、配線用導電膜をスパッタリング法で堆積する。配線用導電膜の一例としては、下から順に、Ti(膜厚15nm)/AlCu(膜厚175nm)/Ti(膜厚5nm)/TiN(膜厚30nm)で積層された材料膜を利用することができる。
【0075】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、前記配線用導電膜をパターニングすることで、ワード線WL,ソース線SL,及び中継配線67を形成する(図8(b),#4)。ワード線WLは、コンタクトプラグ65を介してゲート電極45と電気的に接続される。ソース線SLは、コンタクトプラグ63を介してソース43と電気的に接続される。中継配線67は、コンタクトプラグ61を介してドレイン41と電気的に接続される。
【0076】
次に、CVD法により、第1層間絶縁膜21(例えばSiO2膜)を膜厚650nm程度で全面に堆積する。更に、その表面をCMP法にて、中継配線67上の第1層間絶縁膜21の膜厚が250nm程度となるまで研磨することにより表面を平坦化する(#5)。
【0077】
次に、スパッタリング法により、ビット線BL(第1電極)の材料膜(例えばTiN膜)を膜厚100nm程度堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることで、ビット線BLが形成される(#6)。上述したように、このビット線BLが可変抵抗素子2の第1電極を構成する。
【0078】
次に、CVD法で第2層間絶縁膜22(例えばSiO2膜)を膜厚200nm程度で全面に堆積する(図8(c),#7)。
【0079】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、パターニングすることで、中継配線67の上方位置において、第2層間絶縁膜22,ビット線BL,及び第1層間絶縁膜21を貫通して中継配線67の上面にまで到達する第1開口部80を形成する(#8)。これにより、第1開口部80の側壁の一部分にビット線BLの断面が環状に露出する(図8(d))。
【0080】
次に、第1開口部80によって露出された導電性材料部分に対して、酸素を含む250〜450℃程度の雰囲気下で熱酸化する。これにより、第1開口部80の底面を構成する中継配線67の露出部分には酸化膜23を、第1開口部80の側壁に存在するビット線BLの露出部分にはバッファ層24を、夫々膜厚5nm程度で形成する(図9(a),#9)。本実施形態では、これらの酸化膜23及びバッファ層24は何れもTiO2膜で実現される。
【0081】
次に、スパッタリング法により全面に可変抵抗体材料膜25(例えばHfO2膜)を膜厚5nm程度で堆積する。このとき、第1開口部80を完全に充填させることなく、依然として開口部81が形成され得る程度の膜厚で堆積すると良い(図9(b),#10)。
【0082】
次に、第1開口部80内に存在している可変抵抗体材料膜25の一部分、及びその直下層に存在するバッファ層23に対し、フォトリソグラフィ技術を用いてエッチングすることで、第2開口部82を形成し、中継配線67の上面を露出させる(#11)。これにより、第2開口部82の底面として中継配線67が露出し、側壁としてバッファ層23と可変抵抗体材料膜25が下から積層された状態で露出する(図9(c))。
【0083】
次に、スパッタリング法で、第2電極材料膜26(例えばTa膜)を膜厚100nm程度で堆積する(#12)。このとき、第2開口部82を完全には充填しない範囲内の膜厚で材料膜を成膜する。これにより、依然として開口部83が形成されているような状態とする(図10(a))。なお、第2電極材料膜26の材料としては、少なくともビット線BL(すなわち第1電極)の材料よりも仕事関数の小さい導電性材料であることが要求される。利用可能な材料の例は、後述において列挙している。
【0084】
本ステップ#12により、それまで形成されていた第2開口部82の底面には第2電極26の材料膜が形成されることで、第2電極材料膜26と中継配線67とが接触し、両者の電気的接続が確保される。
【0085】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、第1開口部80の外側位置における第2層間絶縁膜22の上層に形成されていた可変抵抗体材料膜25,及び第2電極材料膜26をパターニング処理する(#13)。これにより、可変抵抗体25と第2電極26が成形される(図10(b),図7)。
【0086】
その後は、公知の技術によって、ワード線デコーダ51,ビット線デコーダ53,電圧発生回路55,制御回路57,読み出し回路59等の各種周辺回路を完成させる。
【0087】
[動作方法]
次に、上記構造を有するメモリセル1を備えた不揮発性半導体記憶装置に対する消去、書き込み、及び読み出しの各動作方法について説明する。
【0088】
なお、前述したように、本実施形態では、メモリセル1の可変抵抗素子2を高抵抗化することを「消去」、低抵抗化することを「書き込み」と呼ぶ。また、以下では、各動作対象となるメモリセルを「対象メモリセル1E」と呼び、この対象メモリセル1Eに接続された特定のワード線及びビット線を、夫々「ワード線WLE」、「ビット線BLE」と呼ぶ。
【0089】
(消去動作)
メモリセルに対して消去動作を行う場合、すなわち、可変抵抗素子2を高抵抗化する場合につき説明する。この場合、ワード線デコーダ51が、対象メモリセル1Eに接続されたワード線WLEを選択して所定電圧を印加する。また、ソース線SLを接地状態とする。これにより、対象メモリセル1Eと同一行に配置された各メモリセルの選択トランジスタはON状態となる。
【0090】
この状態の下で、ビット線デコーダ53が、対象メモリセル1Eに接続されたビット線BLEを選択して、消去動作用の所定の正電圧パルスを印加する。前述のように、ビット線BLは可変抵抗素子2の第1電極を兼ねており、第2電極26よりも仕事関数が大きい材料で形成されている。よって、ビット線BL側から正電圧を印加することで、対象メモリセル1Eにおいて、可変抵抗素子2のショットキー接合側の端部31(図5(b)参照)が高電位となるバイアスが発生し、高抵抗状態への遷移が起こる。よって、対象メモリセル1Eは消去状態となる。
【0091】
(書き込み動作)
メモリセルに対して書き込み動作を行う場合、すなわち、可変抵抗素子2を低抵抗化する場合につき説明する。この場合も、消去動作のときと同様に、ワード線デコーダ51が、対象メモリセル1Eに接続されたワード線WLEを選択して所定電圧を印加し、ソース線SLを接地状態とする。これにより、対象メモリセル1Eと同一行に配置された各メモリセルの選択トランジスタはON状態となる。
【0092】
なお、書き込み動作の際は、可変抵抗素子2の抵抗状態が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するため、抵抗状態が低抵抗状態に遷移する瞬間又はその直後において大電流が流れることが予想される。このとき、場合によっては選択トランジスタ3を破壊する危険がある。このような事態を避けるべく、ワード線WLEに印加する電圧としては、選択トランジスタ3によって電流量が制限できるような範囲内に設定するのが好適である。
【0093】
この状態の下で、ビット線デコーダ53が、対象メモリセル1Eに接続されたビット線BLEを選択して、書き込み動作用の所定の負電圧パルスを印加する。このとき、対象メモリセル1Eにおいて、可変抵抗素子2のオーミック接合側の端部33(図5(b)参照)が高電位となるバイアスが発生し、低抵抗状態への遷移が起こる。よって、対象メモリセル1Eは消去状態となる。
【0094】
(読み出し動作)
メモリセルに対して読み出し動作を行う場合、すなわち、可変抵抗素子2の抵抗状態を変化させることなく読み出し電流を検出する場合につき説明する。この場合、ワード線デコーダ51が、対象メモリセル1Eに接続されたワード線WLEを選択して所定電圧を印加し、ソース線SLを接地状態とする。これにより、対象メモリセル1Eと同一行に配置された各メモリセルの選択トランジスタはON状態となる。
【0095】
この状態の下で、ビット線デコーダ53が、対象メモリセル1Eに接続されたビット線BLEを選択して、読み出し動作用の所定の正電圧パルスを印加する。このとき、ワード線WLEに印加する電圧は、可変抵抗素子2の抵抗状態が遷移しない範囲内の値に設定される。これにより、対象メモリセル1Eにおいて、可変抵抗素子2のショットキー接合側の端部31からオーミック接合側の端部33(図5(b)参照)に向かう電流が発生する。
【0096】
対象メモリセル1Eが高抵抗状態の場合、ビット線BLEには比較的小さい電流が流れる。これに対し、対象メモリセル1Eが低抵抗状態の場合、ビット線BLEには比較的大きい電流が流れる。読み出し回路59は、ビット線BLEに流れる電流をセンスアンプにより検出し、抵抗状態を判断する。つまり、読み出し回路59は、可変抵抗素子2から選択トランジスタ3を経てソース線SLへと流れ出た電流を検出するのではなく、ビット線BLEから可変抵抗素子2の端部31へ向かって流れる電流を検出する構成であるため、選択トランジスタ3の負荷の影響を受けずに電流を読み出すことができる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態の構造によれば、消去動作と読み出し動作において印加する電圧の極性を同じにすることができ、且つ、比較的負荷の軽いビット線BL側から電圧を印加して、ショットキー接合側端部31を正極性とするバイアスを与えることで、高抵抗状態の読み出しディスターブを抑制することができる。
【0098】
また、ショットキー接合となる電極(ここではビット線BL)と可変抵抗体25の間に金属酸化物からなるバッファ層24が挿入されているため、素子間の抵抗値のバラツキが軽減される。
【0099】
そして、メモリセル1を製造するに際し、可変抵抗体材料膜25を堆積する時点(#10)において、既に予め酸化膜23,バッファ層24が形成されている(#9)。このため、可変抵抗体を形成後にバッファ層を成膜する場合のように、可変抵抗体内に含有する酸素が、バッファ層側へと移動することがない。これにより、素子間での電気的特性のバラツキが大幅に抑制される。
【0100】
[材料]
以下、利用可能な材料について説明する。
【0101】
可変抵抗体25としては、Hf又はZrの何れかの元素の酸化物を含んでなることが好ましい。なぜなら、これらの材料はバンドギャップが大きいため、既存半導体設備で使用可能な、仕事関数が中間的な値を示す導電性材料を第1電極として利用でき、電極材料の選択の幅が拡がるためである。
【0102】
一例として、HfO2,ZrO2の伝導帯の底の真空準位からのエネルギー位置は、夫々、−2.8eV、−3.0eVである。
【0103】
ビット線BL(第1電極)、第2電極26の各電極材料としては、前者が後者よりも仕事関数が大きいという関係を満たす導電性材料であれば、上記の例に限定されるものではない。
【0104】
例えば、ビット線BL(第1電極)の材料としては、TiN(4.7eV),TaNx(窒素の化学量論的組成に依存して、4.05〜5.4eV),W(4.5eV),Ni(5.2eV),Co(4.45eV)等が利用可能である。なお、括弧内は各材料の仕事関数値である。TiN、TaNを利用するのが特に好適である。
【0105】
また、第2電極26の材料としては、第1電極よりも仕事関数が小さい材料を選択するという制約の下で、Ti(4.14eV),Ta(4.2eV),Al(4.1eV),Hf(3.9eV),Zr(4.05eV)等が利用可能である。
【0106】
バッファ層24は、ビット線BLの一部分が酸化されることで形成される。このため、バッファ層24の材料は、専らビット線BLの材料に依存する。例えば、ビット線BLとしてTiNを用いた場合には、バッファ層24は一例としてTiO2によって構成される。
【0107】
なお、バッファ層24は、Ti,Ta,Zn,Nb,Wの何れかの元素の酸化物を含んでなることが好ましい。これを踏まえれば、ビット線BL(第1電極)の材料としては、Ti,Ta,Zn,Nb,Wを含む導電性材料であることが好ましい。一例として、前掲の各材料の酸化物であるTiO2,Ta2O5,ZnO,Nb2O5,WO3の伝導帯の底の真空準位からのエネルギー位置は、夫々、−3.8eV、−3.7eV、−4eV、−4eV、−4.2eVである。
【0108】
[別実施形態]
以下に別実施形態につき、説明する。
【0109】
〈1〉 上記実施形態では、選択トランジスタ3のドレイン41が可変抵抗素子の第2電極26と電気的に接続する構成とした。これは、選択トランジスタ3がNチャネル型であることを前提に議論したものである。つまり、導電型が反転すれば、ソースとドレインの呼称は反転する。
【0110】
〈2〉 上記実施形態では、ステップ#8として第1開口部80を中継配線67の上面が露出するように形成するものとした。しかし、この開口部は少なくともビット線BLより下方に形成されていれば、必ずしも中継配線67の上面を露出させなくても良い。
【0111】
図12〜図13は、この別実施形態におけるプロセスに従ったときの各工程断面図の一部である。ステップ#8においてビット線BLより下方で中継配線67より距離dだけ上方の位置まで第1開口部80aを開口する(図12(a))。その後、ステップ#9と同様に、酸化処理を行い、第1開口部80aの側面に露出したビット線BL部分にバッファ層24を形成する(図12(b))。一方、中継配線67の上面は露出していないため、このステップ#9において酸化膜23が形成されることはない。
【0112】
次に、可変抵抗体材料膜10を堆積し(図12(c),#10)、中継配線67の上面に達する第2開口部28を形成する(図13(a),#11)。その後、第2電極材料膜68を第2開口部28を完全には充填しない膜厚で堆積し(図13(b),#12)、パターニング処理により可変抵抗体25,第2電極26を形成する(図13(c),#13)。
【0113】
図13(c)に示す構造においても、図7と同様、仕事関数の大きい材料で構成された第1電極(ビット線BL)の界面にはバッファ層24が形成され、ビット線BLはこのバッファ層24を介して可変抵抗体25と連絡される。そして、第2電極は、可変抵抗体25と接触すると共に、外部から電圧印加が可能な構成である。
【0114】
〈3〉 図4の構成において、ソース線SLに対する印加電圧を制御するためのソース線デコーダを備える構成としても良い。このとき、書き込み動作時において選択されたビット線BLEに対して負電圧パルスを印加する代わりに、ソース線SLと非選択ビット線に正電圧を印加することで、選択ビット線をソース線SLに対して相対的に負電圧状態とするものとしても良い。
【符号の説明】
【0115】
1: メモリセル(不揮発性半導体記憶装置の最小単位)
2: 可変抵抗素子
3: 選択トランジスタ
10,10a,10b: 可変抵抗素子
11: 可変抵抗体(HfOx)
12: 半導体基板
13: 第1電極(TiN)
15: 第2電極(Ti)
16: 絶縁膜
17: バッファ層
20: メモリセルアレイ
21: 第1層間絶縁膜
22: 第2層間絶縁膜
23: 酸化膜
24: バッファ層
25: 可変抵抗体(材料膜)
26: 第2電極(材料膜)
31: 可変抵抗素子のショットキー接合側端部
33: 可変抵抗素子のオーミック接合側端部
40: 半導体基板
41: 選択トランジスタのドレイン
42: 選択トランジスタのゲート絶縁膜
43: 選択トランジスタのソース
45: 選択トランジスタのゲート電極
47: 素子分離領域
51: ワード線デコーダ
53: ビット線デコーダ
55: 電圧発生回路
57: 制御回路
59: 読み出し回路
60: 下地層間絶縁膜
61: コンタクトプラグ(第1コンタクトプラグ)
63: コンタクトプラグ(第2コンタクトプラグ)
65: コンタクトプラグ(第3コンタクトプラグ)
67: 中継配線
80: 第1開口部
81: 開口部
82: 第2開口部
83: 開口部
BL1〜BLn: ビット線
SL1〜SLm: ソース線
WL1〜WLm: ワード線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、第1電極、第2電極、及び当該両電極の間に挟持された可変抵抗体を有する可変抵抗素子と、前記第2電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続した選択トランジスタとを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置であって、
前記選択トランジスタの上方に、第1配線、第2配線、中継配線の各配線層を有すると共に、当該配線層を覆う上面に第1層間絶縁膜を有し、更にその上層に前記第1電極、第2層間絶縁膜を下からこの順に有し、
前記第1電極は、前記第2電極よりも仕事関数が大きい導電性材料で構成されており、
前記第2電極は、前記中継配線の上面に接触する底面を有し、前記第1層間絶縁膜、前記第1電極、及び前記第2層間絶縁膜を貫通する第1筒状部を備えており、
前記可変抵抗体は、金属酸化物からなり、前記第2電極の前記第1筒状部の外側面に接触し、前記第1層間絶縁膜、前記第1電極、及び前記第2層間絶縁膜を貫通し、且つ底面の高さ位置が前記第2電極の底面よりも高い第2筒状部を備えており、
前記第2筒状部の外側面と前記第1電極の間には、前記可変抵抗体とは異なる材料の金属酸化物で形成されたバッファ層を有し、
前記中継配線は前記選択トランジスタのソース又はドレインの一方に、前記第1配線はゲート電極に、前記第2配線はソース又はドレインの他方に、夫々電気的に接続することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記バッファ層は、前記第1電極を構成する材料の酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記可変抵抗体が、Hf又はZrの酸化物を含む構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1電極が、Ti窒化物、Ta窒化物、W、Ni、Coの何れかの導電性材料を含む構成であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第2電極が、Ti,Ta,Al,Hf,Zrの何れかの導電性材料を含む構成であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項6】
前記メモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列してなるメモリセルアレイを備え、複数の前記第1配線がワード線として、複数の前記第2配線がソース線として、夫々行方向に延伸し、複数の前記第1電極がビット線として列方向に延伸する構成であり、
前記メモリセルアレイ内において、同一行に配列した複数の前記メモリセルは、各前記選択トランジスタの前記ゲート電極を共通の前記ワード線に、前記ソース又はドレインの他方を共通の前記ソース線に電気的に接続し、同一列に配列した複数の前記メモリセルは、各前記第1電極を共通の前記ビット線によって実現する構成であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項7】
半導体基板上に、第1電極、第2電極、及び当該両電極の間に挟持された可変抵抗体を有する可変抵抗素子と、前記第2電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続した選択トランジスタとを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、
前記半導体基板上に前記選択トランジスタを形成する工程と、
前記選択トランジスタの上層に下地層間絶縁膜を形成する工程と、
前記下地層間絶縁膜を貫通し、前記選択トランジスタのドレイン、ソース、及びゲート電極に夫々電気的に接続する第1,第2,及び第3コンタクトプラグを形成する工程と、
前記第1コンタクトプラグに電気的に接続する中継配線、前記第2コンタクトプラグに接続する第1配線、前記第3コンタクトプラグに接続する第2配線を前記下地層間絶縁膜の上層に形成する工程と、
前記下地層間絶縁膜の上層に、前記中継配線、前記第1配線、前記第2配線の上方を覆うように第1層間絶縁膜を形成し、更にその上層に前記第1電極の材料膜、第2層間絶縁膜をこの順に形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜、前記第1電極の材料膜、前記第2層間絶縁膜を貫通し、側面の一部分に前記第1電極の材料膜を露出させる第1開口部を形成する工程と、
熱酸化処理を行って、前記第1開口部内において露出していた前記第1電極の材料膜をバッファ層に変化させる工程と、
前記バッファ層に接触するように前記可変抵抗体の材料膜を前記第1開口部内に堆積する工程と、
前記中継配線の上方位置に形成されている前記可変抵抗体の材料膜の一部及びその下層に形成されている材料膜を除去して、前記中継配線の上面を露出して第2開口部を形成する工程と、
前記第1電極の材料膜よりも仕事関数の値が小さい前記第2電極の材料膜を、少なくとも前記第2開口部を完全には充填しない範囲内の膜厚で堆積する工程と、
前記可変抵抗体の材料膜及び前記第2電極の材料膜をエッチング加工して、前記可変抵抗体と前記第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【請求項1】
半導体基板上に、第1電極、第2電極、及び当該両電極の間に挟持された可変抵抗体を有する可変抵抗素子と、前記第2電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続した選択トランジスタとを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置であって、
前記選択トランジスタの上方に、第1配線、第2配線、中継配線の各配線層を有すると共に、当該配線層を覆う上面に第1層間絶縁膜を有し、更にその上層に前記第1電極、第2層間絶縁膜を下からこの順に有し、
前記第1電極は、前記第2電極よりも仕事関数が大きい導電性材料で構成されており、
前記第2電極は、前記中継配線の上面に接触する底面を有し、前記第1層間絶縁膜、前記第1電極、及び前記第2層間絶縁膜を貫通する第1筒状部を備えており、
前記可変抵抗体は、金属酸化物からなり、前記第2電極の前記第1筒状部の外側面に接触し、前記第1層間絶縁膜、前記第1電極、及び前記第2層間絶縁膜を貫通し、且つ底面の高さ位置が前記第2電極の底面よりも高い第2筒状部を備えており、
前記第2筒状部の外側面と前記第1電極の間には、前記可変抵抗体とは異なる材料の金属酸化物で形成されたバッファ層を有し、
前記中継配線は前記選択トランジスタのソース又はドレインの一方に、前記第1配線はゲート電極に、前記第2配線はソース又はドレインの他方に、夫々電気的に接続することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記バッファ層は、前記第1電極を構成する材料の酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記可変抵抗体が、Hf又はZrの酸化物を含む構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1電極が、Ti窒化物、Ta窒化物、W、Ni、Coの何れかの導電性材料を含む構成であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第2電極が、Ti,Ta,Al,Hf,Zrの何れかの導電性材料を含む構成であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項6】
前記メモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列してなるメモリセルアレイを備え、複数の前記第1配線がワード線として、複数の前記第2配線がソース線として、夫々行方向に延伸し、複数の前記第1電極がビット線として列方向に延伸する構成であり、
前記メモリセルアレイ内において、同一行に配列した複数の前記メモリセルは、各前記選択トランジスタの前記ゲート電極を共通の前記ワード線に、前記ソース又はドレインの他方を共通の前記ソース線に電気的に接続し、同一列に配列した複数の前記メモリセルは、各前記第1電極を共通の前記ビット線によって実現する構成であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項7】
半導体基板上に、第1電極、第2電極、及び当該両電極の間に挟持された可変抵抗体を有する可変抵抗素子と、前記第2電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続した選択トランジスタとを有してなるメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、
前記半導体基板上に前記選択トランジスタを形成する工程と、
前記選択トランジスタの上層に下地層間絶縁膜を形成する工程と、
前記下地層間絶縁膜を貫通し、前記選択トランジスタのドレイン、ソース、及びゲート電極に夫々電気的に接続する第1,第2,及び第3コンタクトプラグを形成する工程と、
前記第1コンタクトプラグに電気的に接続する中継配線、前記第2コンタクトプラグに接続する第1配線、前記第3コンタクトプラグに接続する第2配線を前記下地層間絶縁膜の上層に形成する工程と、
前記下地層間絶縁膜の上層に、前記中継配線、前記第1配線、前記第2配線の上方を覆うように第1層間絶縁膜を形成し、更にその上層に前記第1電極の材料膜、第2層間絶縁膜をこの順に形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜、前記第1電極の材料膜、前記第2層間絶縁膜を貫通し、側面の一部分に前記第1電極の材料膜を露出させる第1開口部を形成する工程と、
熱酸化処理を行って、前記第1開口部内において露出していた前記第1電極の材料膜をバッファ層に変化させる工程と、
前記バッファ層に接触するように前記可変抵抗体の材料膜を前記第1開口部内に堆積する工程と、
前記中継配線の上方位置に形成されている前記可変抵抗体の材料膜の一部及びその下層に形成されている材料膜を除去して、前記中継配線の上面を露出して第2開口部を形成する工程と、
前記第1電極の材料膜よりも仕事関数の値が小さい前記第2電極の材料膜を、少なくとも前記第2開口部を完全には充填しない範囲内の膜厚で堆積する工程と、
前記可変抵抗体の材料膜及び前記第2電極の材料膜をエッチング加工して、前記可変抵抗体と前記第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−60072(P2012−60072A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204586(P2010−204586)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構の助成事業「遷移金属酸化物を用いた超大容量不揮発性メモリとその極微細加工プロセスに関する研究開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構の助成事業「遷移金属酸化物を用いた超大容量不揮発性メモリとその極微細加工プロセスに関する研究開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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