不整地用四輪走行車のフロアー構造
【課題】不整地用四輪走行車において、車輌の揺れ及び傾斜に対し、搭乗者が速やかに、かつ、簡単に、適正な乗車姿勢を維持できるフロアー構造を提供する。
【解決手段】左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2との間に、操作部及びシート15,16を収納するキャビン5を備え、該キャビン5の下端部にフロアープレート28よりなるフロアーを設けている。前記フロアープレート28又は前記フロアープレート近傍に、搭乗者が足の裏面側を押し当てることができる足用押当面50を設けている。好ましくは、前記足用押当面50は、前上がりに傾斜している。このフロアー構造は、シート近傍にエンジンを搭載している不整地用四輪走行車に適している。
【解決手段】左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2との間に、操作部及びシート15,16を収納するキャビン5を備え、該キャビン5の下端部にフロアープレート28よりなるフロアーを設けている。前記フロアープレート28又は前記フロアープレート近傍に、搭乗者が足の裏面側を押し当てることができる足用押当面50を設けている。好ましくは、前記足用押当面50は、前上がりに傾斜している。このフロアー構造は、シート近傍にエンジンを搭載している不整地用四輪走行車に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の前車輪と左右一対の後車輪との間に、操作部及びシートを収納するキャビンを備え、該キャビンの下端部にフロアーを設けている不整地用四輪走行車のフロアー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の車道を走行する自動車においては、運転シートの前のフロアーに、アクセルペダル及びブレーキペダル等のペダル類と共に、ペダル操作をしない足を載せるためのフットレストを設けた構造のものがある(特許文献1等)。
【0003】
これに対し、主として凹凸の有る地面を走行する不整地用四輪走行車では、運転シートの前のフロアーには、アクセルペダルとブレーキペダルは前記自動車と同様に配置されているが、ペダル操作をしない足を載せて休めるためのフットレストは設けられていない。すなわち、凹凸の有る地面を走行する際には、車輌が揺れたり、傾いたりするので、ペダル操作をしない側の足を休めていては、搭乗者の姿勢を保ち難く、フットレストを利用する必要性が少ないからである。
【特許文献1】特開2000−280762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不整地用四輪走行車においては、フットレストが特に必要でない代わりに、車輌の揺れや傾斜に対し、搭乗者が適正な乗車姿勢を保つために、ペダル操作をしない足の裏面を、フロアー面または足近くのフレーム部分に強く押し当て、突っ張った状態とすることが必要となる場合があるが、乗車姿勢を適正に保てるような適切な面を、速やかに選んで足を押し当てることは困難である。
【0005】
本発明は、主として凹凸の有る地面を走行する不整地用四輪走行車において、車輌の揺れや傾きに対し、搭乗者が、速やかに、かつ、簡単に、適正な乗車姿勢を保つことができるフロアー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、左右一対の前車輪と左右一対の後車輪との間に、操作部及びシートを収納するキャビンを備え、該キャビンの下端部にフロアーを設けている不整地用四輪走行車のフロアー構造において、前記フロアー又は前記フロアー近傍に、搭乗者が足の裏面側を押し当てることができる足用押当面を設けている。
【0007】
上記構成によると、凹凸の有る不整地を走行する際、車輌の揺れや傾きに対し、搭乗者はペダル操作しない足を足用押当面に強く押し当てることにより、速やかに、かつ、簡単に、適正な乗車姿勢を維持できる。
【0008】
前記フロアー構造は、前記シート近傍にエンジンを搭載している不整地用四輪走行車に適用することができる。
【0009】
シート近傍にエンジンを搭載している不整地用四輪走行車では、エンジンの振動が搭乗者に伝わり易いが、このような不整地用四輪走行車においても、乗車姿勢を適正に保つことができる。
【0010】
前記不整地用四輪走行車のフロアー構造において、前記足用押当面は、前上がりに傾斜させることができる。
【0011】
上記構成によると、搭乗者は足を前下方に延ばした際、足の裏全面を、無理なく足用押当面に押し当てることが可能となる。
【0012】
前記不整地用四輪走行車のフロアー構造において、前記足用押当面は、車幅方向と略平行に形成することも、平面視で、車幅方向に対し、左右の一方に傾斜させることもできる。
【0013】
上記構成により、搭乗者が最も自然な状態で足を突っ張ることができる状態に、足用押当面を形成することが可能となる。
【0014】
前記不整地用四輪走行車のフロアー構造において、前記フロアーは、フロアー面の前端部から立ち上がる立ち上がり壁を有しており、前記足用押当面は、前記フロアー面から前記立ち上がり壁に亘って設けることができる。
【0015】
上記構成によると、足用押当面をトラス構造にすることができ、押当面の強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図10は、本発明にかかるフロアー構造を備えた不整地用四輪走行車であり、これらの図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、説明の都合上、搭乗者から見た左右方向を、車輌の左右方向としている。
【0017】
[不整地用四輪走行車の全体構造]
図2は不整地用四輪走行車の簡略斜視図であり、車輌の前部に左右一対の前車輪1を備え、車輌の後部に左右一対の後車輪2を備え、前車輪1と後車輪2との間に保護フレーム3で囲まれたキャビン5を備え、キャビン5の後方に荷台6を備え、キャビン5の前方に、ボンネット8、左右一対の前フェンダー9及びバンパー10等を備えている。ボンネット8の前端部及びバンパー10の前端部にはそれぞれ空気取入口11,12が形成されている。
【0018】
保護フレーム3は、左右一対の下開きコの字状の側部フレーム部材3aと、該左右の側部フレーム部材3aの上端部同士を連結する前後一対の上部連結部材3bと、左右の側部フレーム部材3aの後部同士をX字状に連結する後部連結部材3cとから構成されている。後部フレーム部材3cには、左右一対のヘッドレスト14が設けられ、右側の側部フレーム部材3aの前上端部には、取手19が設けられている。
【0019】
キャビン5内には、左側に運転シート15が設置され、右側に同乗者シート16が設置され、前部にダッシュボード(操作部)17が設けられ、該ダッシュボード17の左側部分に、運転シート15の前方に位置するハンドル18が設けられている。運転シート15の左側並びに同乗者シート16の右側には、下開きコの字状のガード20がそれぞれ設けられている。
【0020】
図3は保護フレーム3及びガード20(図1及び図2)を取り外して示す不整地用四輪走行車の平面図であり、運転シート15と同乗者シート16との間には、各シート15、16よりも下方位置にエンジンルーム21が設けられ、該エンジンルーム21内にエンジン20が収納されている。エンジンルーム21は、左右のシート15,16の下側空間まで拡張しており、運転シート15の下側のルーム拡張部分には、たとえばバッテリ(図示せず)及び電装部品等が収納され、同乗者シート16の下側のルーム拡張部分には、たとえば燃料タンク(図示せず)が収納されている。ボンネット8内の空間にはラジエター30が設けられている。
【0021】
図1は不整地用四輪走行車の左側面図であり、前記エンジンルーム21は、前方が前壁23により覆われると共に上方が上壁24により覆われており、前壁23と上壁24は、それぞれシート15,16の下側のルーム拡張部分まで左右に延びている。また、エンジンルーム21の左右側方はそれぞれ側壁25により覆われ、エンジンルーム21の下側はアンダーガード26により覆われている。
【0022】
[フロアー構造(含空気ダクト構造)]
図1において、キャビン5の下端部には、フロアーを構成するために、エンジンルーム21の前壁23の下端部から略水平に前方に延びるフロアープレート28が設けられており、このフロアープレート28の前端部には、図5のフロアープレート28の側面拡大図に示すように、ダッシュボード17の下方位置のやや前方位置から立ち上がる立ち上がり壁28aがフロアープレート28と一体に形成されており、この立ち上がり壁28aにより、図1のようにキャビン5を、キャビン前方のボンネット8及び前フェンダー9内の空間から仕切っている。
【0023】
図1において、エンジンルーム21の前壁23には、エンジンルーム21内を冷却するための空気ダクト32が接続されており、該空気ダクト32は、エンジンルーム21内からフロアープレート28と略平行に前方に延び、立ち上がり壁28aに形成された貫通孔を通過してキャビン5内からボンネット8内に突出し、ボンネット8内において、立ち上がり壁28aの前面に沿って立ち上がり、上端部がボンネット8の下面近傍位置で前方に折れ曲がり、該折れ曲がり状の上端部が前方に向いて開口している。
【0024】
図4はダッシュボード17及びフロアープレート28の拡大斜視図であり、フロアープレート28には車幅方向の略中央部に上方に突出する逆U字部28bが設けられており、該逆U字部28b内に前記空気ダクト32(図1)が配置されている。フロアープレート28の全領域のうち、逆U字部28bより左側の領域は運転者用の領域であり、該左側領域の前部には、仮想線で示すように、逆U字部28bから順に、アクセルペダル40及びブレーキペダル41が配置され、そして左側領域の左端部に、左側の足用押当面50がフロアープレート28と一体に形成されている。また、立ち上がり壁28aは、左右側端部に後方突出状の湾曲部28cを一体に有しており、前記左側の足用押当面50は、フロアープレート28から立ち上がり壁28aの左側の湾曲部28cに亘って形成されている。
【0025】
フロアープレート28の全領域のうち、逆U字部28bより右側の領域は同乗者用の領域であり、該右側領域の右側端部に、右側の足用押当面51がフロアープレート28と一体に形成されており、この右側足用押当面51は、フロアープレート28から立ち上がり壁28aの右側の湾曲部28cに亘って形成されている。左右の足用押当面50,51は、フロアープレート28及び立ち上がり壁28a(含湾曲部28c)と共に、同一材料により一体成形されている。
【0026】
図6は、フロアープレート28等の側面図である図5のVI-VI断面図であり、左右の足用押当面50,51は、後方から見て、略左右対称な形状に形成されている。
【0027】
図7は図6のVII-VII断面図であり、左側足用押当面50は、水平面Lに対し所定の角度α1で前上がりに傾斜しており、該実施の形態では、前記傾斜角度α1は、たとえば略45°に設定されているが、好ましくは40°〜70°の範囲に設定されている。 図4に示す右側足用押当面51も、前記左側足用押当面50と同様に、水平面Lに対し所定の角度α1(図7参照)で前上がりに傾斜している。
【0028】
図8は図7のVIII-VIII 断面図であり、両足用押当面50、51は、平面視で、車幅方向Wと平行に形成されている。
【0029】
図9は、左側足用押当面50の拡大部分図、図10は図9のX-X断面図であり、左側足用押当面50の表面には、滑り止めとして、多数の菱形の凸部50aが略全面に亘って形成されている。図4の右側足用押当面51にも同様な菱形の多数の凸51aが略全面に亘って形成されている。
【0030】
なお、図4に示すように、フロアープレート28の表面(上面)にも、滑り止めとして、平面視でV字状の突起53が、多数連続的に形成されている。
【0031】
[作用]
図2において、走行中、車輌が揺れたり、傾いたりした時、運転シート15に座っている運転者は左足を左側の足用押当面50に強く押し当て、これにより、姿勢が崩れないように維持し、一方、同乗者シート16に座っている同乗者は、たとえば右手で取手19を掴み、右足を右側の足用押当面51(図4)に強く押し当て、これにより、姿勢が崩れないように維持する。また、運転者と同乗者の姿勢は、前記足による突っ張りと共に、各ガード20及びヘッドレスト14等も利用して、適正な姿勢に保たれる。
【0032】
[実施の形態の効果]
(1)フロアープレート28に、運転者及び同乗者がそれぞれ足の裏面側を押し当てることができる足用押当面50,51を設けているので、凹凸の有る不整地を走行する際、車輌の揺れや傾きに対し、運転者及び同乗者は、足用押当面50,51に足の裏面を強く押し当てることにより、速やかに、かつ、簡単に、適正な乗車姿勢を維持できる。
【0033】
(2)シート15,16の近傍にエンジン20を搭載している不整地用四輪走行車では、エンジンの振動が搭乗者に伝わり易いが、このような不整地用四輪走行車においても、乗車姿勢を適正に保つことができる。
【0034】
(3)足用押当面50,51は、前上がりに傾斜しているので、運転者及び同乗者は、足を前下方に延ばした際、足の裏全面を、無理なく足用押当面50,51に押し当てることが可能となる。
【0035】
(4)足用押当面50,51は、フロアープレート28から前記立ち上がり壁28aの湾曲部28cに亘って設けているので、トラス構造となり、押当面50,51の強度を高めることができる。
【0036】
(5)足用押当面50,51を、フロアープレート28と一体成形しているので、製造が容易である。
【0037】
[その他の実施の形態]
(1)図11は、足用押当面50,51の変形例であり、左側の足用押当面50は、平面視で、車幅方向Wに対して所定角度θ1だけ右向き(車幅中央側)に傾斜しており、一方、右側の足用押当面51は、平面視で、車幅方向Wに対して所定角度θ1だけ左向き(車幅中央側)に傾斜している。前記傾斜角度θ1は、たとえば、5°〜10°程度の小さい角度に設定されている。
【0038】
このように、足用押当面50,51を、車幅方向Wに対し傾斜させることにより、運転者及び同乗者は、無理なく、足の裏全体を足用押当面50,51に押し当てることが可能となる。
【0039】
(2)図12は、図11と同様に、左側の足用押当面50は、平面視で、車幅方向Wに対して所定角度θ2だけ右向き(車幅中央側)に傾斜し、右側の足用押当面51は、平面視で、車幅方向Wに対して所定角度θ2だけ左向き(車幅中央側)に傾斜しているが、傾斜角度θ2をたとえば45°近くまで大きくした構造である。
【0040】
(3)図13〜図15は、左右の足用押当面50,51を、フロアープレート28とは別部材で形成し、ビス60によりフロアープレート28及び立ち上がり壁28aの湾曲部28cに固着した構造である。その他の構造は前記図1〜図10の実施の形態と同じであり、同じ部品には同じ符号を付している。足用押当面5,51をフロアープレート28とは別部材とすることにより、たとえば車種によって、フロアープレート28を共通部材としながらも、前下上がりの傾斜角度α1や左右の傾斜角度θ1等の異なる足用押当面50,51を任意に取り付けることが可能となる。
【0041】
(4)図16は、足用押当面50のさらに別の変形例であり、表面の滑り止めとして、左右に直線状に延びる多数のリブ61を形成した構造である。
【0042】
(5)前記各実施の形態では、足用押当面を前上がりに傾斜させた構造を採用しているが、足用押当面を垂直に形成することも可能である。この場合には、少なくとも、図11及び図12の構造と同様に、運転者用の左側の足用押当面50は車幅方向Wに対し、右向きに傾斜させ、同乗者用の足用押当面51は車幅方向Wに対し、左向きに傾斜させる。
【0043】
(6)足用押当面50に形成される凸部50aの形状は、菱形やリブには限定されず、三角形や円形等、各種形状を採用することができる。
【0044】
(7)本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲において、各種変形例が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、各種不整地用四輪走行車に適用可能であり、たとえば、図1及び図3において、運転シート15と同乗者シート16との2つのシートの代わりに、一体的なベンチシートを備えた不整地用四輪走行車に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明にかかるフロアー構造を備えた不整地用四輪走行車の一実施の形態を示す左側面図である。
【図2】図1の不整地用四輪走行車の簡略斜視図である。
【図3】図1の不整地用四輪走行車の平面図である。
【図4】図1の不整地用四輪走行車のフロアープレート及びダッシュボードの斜視図である。
【図5】図4フロアープレート及びダッシュボードの左側面図である。
【図6】図5のフロアープレートのVI-VI断面図である。
【図7】図6のフロアープレートのVII-VII断面図である。
【図8】図7のフロアープレートのVIII-VIII断面図である。
【図9】足用押当面の表面の拡大部分図である。
【図10】図9の足用押当面のX-X断面図である。
【図11】足用押当面の変形例を示す図8と同様の断面図である。
【図12】足用押当面の別の変形例を示す図8と同様の断面図である。
【図13】足用押当面の別の変形例を示す図4と同様の斜視図である。
【図14】図13のフロアープレート等の図6と同様の断面図である。
【図15】図14のフロアープレートのXV-XV断面図である。
【図16】足用押当面のさらに別の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 前車輪
2 後車輪
5 キャビン
15 運転シート
16 同乗者シート
17 ダッシュボード(操作部)
20 エンジン
28 フロアープレート
28a フロアープレートの立ち上がり壁
28c 立ち上がり壁の湾曲部
50,51 足用押当面
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の前車輪と左右一対の後車輪との間に、操作部及びシートを収納するキャビンを備え、該キャビンの下端部にフロアーを設けている不整地用四輪走行車のフロアー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の車道を走行する自動車においては、運転シートの前のフロアーに、アクセルペダル及びブレーキペダル等のペダル類と共に、ペダル操作をしない足を載せるためのフットレストを設けた構造のものがある(特許文献1等)。
【0003】
これに対し、主として凹凸の有る地面を走行する不整地用四輪走行車では、運転シートの前のフロアーには、アクセルペダルとブレーキペダルは前記自動車と同様に配置されているが、ペダル操作をしない足を載せて休めるためのフットレストは設けられていない。すなわち、凹凸の有る地面を走行する際には、車輌が揺れたり、傾いたりするので、ペダル操作をしない側の足を休めていては、搭乗者の姿勢を保ち難く、フットレストを利用する必要性が少ないからである。
【特許文献1】特開2000−280762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不整地用四輪走行車においては、フットレストが特に必要でない代わりに、車輌の揺れや傾斜に対し、搭乗者が適正な乗車姿勢を保つために、ペダル操作をしない足の裏面を、フロアー面または足近くのフレーム部分に強く押し当て、突っ張った状態とすることが必要となる場合があるが、乗車姿勢を適正に保てるような適切な面を、速やかに選んで足を押し当てることは困難である。
【0005】
本発明は、主として凹凸の有る地面を走行する不整地用四輪走行車において、車輌の揺れや傾きに対し、搭乗者が、速やかに、かつ、簡単に、適正な乗車姿勢を保つことができるフロアー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、左右一対の前車輪と左右一対の後車輪との間に、操作部及びシートを収納するキャビンを備え、該キャビンの下端部にフロアーを設けている不整地用四輪走行車のフロアー構造において、前記フロアー又は前記フロアー近傍に、搭乗者が足の裏面側を押し当てることができる足用押当面を設けている。
【0007】
上記構成によると、凹凸の有る不整地を走行する際、車輌の揺れや傾きに対し、搭乗者はペダル操作しない足を足用押当面に強く押し当てることにより、速やかに、かつ、簡単に、適正な乗車姿勢を維持できる。
【0008】
前記フロアー構造は、前記シート近傍にエンジンを搭載している不整地用四輪走行車に適用することができる。
【0009】
シート近傍にエンジンを搭載している不整地用四輪走行車では、エンジンの振動が搭乗者に伝わり易いが、このような不整地用四輪走行車においても、乗車姿勢を適正に保つことができる。
【0010】
前記不整地用四輪走行車のフロアー構造において、前記足用押当面は、前上がりに傾斜させることができる。
【0011】
上記構成によると、搭乗者は足を前下方に延ばした際、足の裏全面を、無理なく足用押当面に押し当てることが可能となる。
【0012】
前記不整地用四輪走行車のフロアー構造において、前記足用押当面は、車幅方向と略平行に形成することも、平面視で、車幅方向に対し、左右の一方に傾斜させることもできる。
【0013】
上記構成により、搭乗者が最も自然な状態で足を突っ張ることができる状態に、足用押当面を形成することが可能となる。
【0014】
前記不整地用四輪走行車のフロアー構造において、前記フロアーは、フロアー面の前端部から立ち上がる立ち上がり壁を有しており、前記足用押当面は、前記フロアー面から前記立ち上がり壁に亘って設けることができる。
【0015】
上記構成によると、足用押当面をトラス構造にすることができ、押当面の強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図10は、本発明にかかるフロアー構造を備えた不整地用四輪走行車であり、これらの図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、説明の都合上、搭乗者から見た左右方向を、車輌の左右方向としている。
【0017】
[不整地用四輪走行車の全体構造]
図2は不整地用四輪走行車の簡略斜視図であり、車輌の前部に左右一対の前車輪1を備え、車輌の後部に左右一対の後車輪2を備え、前車輪1と後車輪2との間に保護フレーム3で囲まれたキャビン5を備え、キャビン5の後方に荷台6を備え、キャビン5の前方に、ボンネット8、左右一対の前フェンダー9及びバンパー10等を備えている。ボンネット8の前端部及びバンパー10の前端部にはそれぞれ空気取入口11,12が形成されている。
【0018】
保護フレーム3は、左右一対の下開きコの字状の側部フレーム部材3aと、該左右の側部フレーム部材3aの上端部同士を連結する前後一対の上部連結部材3bと、左右の側部フレーム部材3aの後部同士をX字状に連結する後部連結部材3cとから構成されている。後部フレーム部材3cには、左右一対のヘッドレスト14が設けられ、右側の側部フレーム部材3aの前上端部には、取手19が設けられている。
【0019】
キャビン5内には、左側に運転シート15が設置され、右側に同乗者シート16が設置され、前部にダッシュボード(操作部)17が設けられ、該ダッシュボード17の左側部分に、運転シート15の前方に位置するハンドル18が設けられている。運転シート15の左側並びに同乗者シート16の右側には、下開きコの字状のガード20がそれぞれ設けられている。
【0020】
図3は保護フレーム3及びガード20(図1及び図2)を取り外して示す不整地用四輪走行車の平面図であり、運転シート15と同乗者シート16との間には、各シート15、16よりも下方位置にエンジンルーム21が設けられ、該エンジンルーム21内にエンジン20が収納されている。エンジンルーム21は、左右のシート15,16の下側空間まで拡張しており、運転シート15の下側のルーム拡張部分には、たとえばバッテリ(図示せず)及び電装部品等が収納され、同乗者シート16の下側のルーム拡張部分には、たとえば燃料タンク(図示せず)が収納されている。ボンネット8内の空間にはラジエター30が設けられている。
【0021】
図1は不整地用四輪走行車の左側面図であり、前記エンジンルーム21は、前方が前壁23により覆われると共に上方が上壁24により覆われており、前壁23と上壁24は、それぞれシート15,16の下側のルーム拡張部分まで左右に延びている。また、エンジンルーム21の左右側方はそれぞれ側壁25により覆われ、エンジンルーム21の下側はアンダーガード26により覆われている。
【0022】
[フロアー構造(含空気ダクト構造)]
図1において、キャビン5の下端部には、フロアーを構成するために、エンジンルーム21の前壁23の下端部から略水平に前方に延びるフロアープレート28が設けられており、このフロアープレート28の前端部には、図5のフロアープレート28の側面拡大図に示すように、ダッシュボード17の下方位置のやや前方位置から立ち上がる立ち上がり壁28aがフロアープレート28と一体に形成されており、この立ち上がり壁28aにより、図1のようにキャビン5を、キャビン前方のボンネット8及び前フェンダー9内の空間から仕切っている。
【0023】
図1において、エンジンルーム21の前壁23には、エンジンルーム21内を冷却するための空気ダクト32が接続されており、該空気ダクト32は、エンジンルーム21内からフロアープレート28と略平行に前方に延び、立ち上がり壁28aに形成された貫通孔を通過してキャビン5内からボンネット8内に突出し、ボンネット8内において、立ち上がり壁28aの前面に沿って立ち上がり、上端部がボンネット8の下面近傍位置で前方に折れ曲がり、該折れ曲がり状の上端部が前方に向いて開口している。
【0024】
図4はダッシュボード17及びフロアープレート28の拡大斜視図であり、フロアープレート28には車幅方向の略中央部に上方に突出する逆U字部28bが設けられており、該逆U字部28b内に前記空気ダクト32(図1)が配置されている。フロアープレート28の全領域のうち、逆U字部28bより左側の領域は運転者用の領域であり、該左側領域の前部には、仮想線で示すように、逆U字部28bから順に、アクセルペダル40及びブレーキペダル41が配置され、そして左側領域の左端部に、左側の足用押当面50がフロアープレート28と一体に形成されている。また、立ち上がり壁28aは、左右側端部に後方突出状の湾曲部28cを一体に有しており、前記左側の足用押当面50は、フロアープレート28から立ち上がり壁28aの左側の湾曲部28cに亘って形成されている。
【0025】
フロアープレート28の全領域のうち、逆U字部28bより右側の領域は同乗者用の領域であり、該右側領域の右側端部に、右側の足用押当面51がフロアープレート28と一体に形成されており、この右側足用押当面51は、フロアープレート28から立ち上がり壁28aの右側の湾曲部28cに亘って形成されている。左右の足用押当面50,51は、フロアープレート28及び立ち上がり壁28a(含湾曲部28c)と共に、同一材料により一体成形されている。
【0026】
図6は、フロアープレート28等の側面図である図5のVI-VI断面図であり、左右の足用押当面50,51は、後方から見て、略左右対称な形状に形成されている。
【0027】
図7は図6のVII-VII断面図であり、左側足用押当面50は、水平面Lに対し所定の角度α1で前上がりに傾斜しており、該実施の形態では、前記傾斜角度α1は、たとえば略45°に設定されているが、好ましくは40°〜70°の範囲に設定されている。 図4に示す右側足用押当面51も、前記左側足用押当面50と同様に、水平面Lに対し所定の角度α1(図7参照)で前上がりに傾斜している。
【0028】
図8は図7のVIII-VIII 断面図であり、両足用押当面50、51は、平面視で、車幅方向Wと平行に形成されている。
【0029】
図9は、左側足用押当面50の拡大部分図、図10は図9のX-X断面図であり、左側足用押当面50の表面には、滑り止めとして、多数の菱形の凸部50aが略全面に亘って形成されている。図4の右側足用押当面51にも同様な菱形の多数の凸51aが略全面に亘って形成されている。
【0030】
なお、図4に示すように、フロアープレート28の表面(上面)にも、滑り止めとして、平面視でV字状の突起53が、多数連続的に形成されている。
【0031】
[作用]
図2において、走行中、車輌が揺れたり、傾いたりした時、運転シート15に座っている運転者は左足を左側の足用押当面50に強く押し当て、これにより、姿勢が崩れないように維持し、一方、同乗者シート16に座っている同乗者は、たとえば右手で取手19を掴み、右足を右側の足用押当面51(図4)に強く押し当て、これにより、姿勢が崩れないように維持する。また、運転者と同乗者の姿勢は、前記足による突っ張りと共に、各ガード20及びヘッドレスト14等も利用して、適正な姿勢に保たれる。
【0032】
[実施の形態の効果]
(1)フロアープレート28に、運転者及び同乗者がそれぞれ足の裏面側を押し当てることができる足用押当面50,51を設けているので、凹凸の有る不整地を走行する際、車輌の揺れや傾きに対し、運転者及び同乗者は、足用押当面50,51に足の裏面を強く押し当てることにより、速やかに、かつ、簡単に、適正な乗車姿勢を維持できる。
【0033】
(2)シート15,16の近傍にエンジン20を搭載している不整地用四輪走行車では、エンジンの振動が搭乗者に伝わり易いが、このような不整地用四輪走行車においても、乗車姿勢を適正に保つことができる。
【0034】
(3)足用押当面50,51は、前上がりに傾斜しているので、運転者及び同乗者は、足を前下方に延ばした際、足の裏全面を、無理なく足用押当面50,51に押し当てることが可能となる。
【0035】
(4)足用押当面50,51は、フロアープレート28から前記立ち上がり壁28aの湾曲部28cに亘って設けているので、トラス構造となり、押当面50,51の強度を高めることができる。
【0036】
(5)足用押当面50,51を、フロアープレート28と一体成形しているので、製造が容易である。
【0037】
[その他の実施の形態]
(1)図11は、足用押当面50,51の変形例であり、左側の足用押当面50は、平面視で、車幅方向Wに対して所定角度θ1だけ右向き(車幅中央側)に傾斜しており、一方、右側の足用押当面51は、平面視で、車幅方向Wに対して所定角度θ1だけ左向き(車幅中央側)に傾斜している。前記傾斜角度θ1は、たとえば、5°〜10°程度の小さい角度に設定されている。
【0038】
このように、足用押当面50,51を、車幅方向Wに対し傾斜させることにより、運転者及び同乗者は、無理なく、足の裏全体を足用押当面50,51に押し当てることが可能となる。
【0039】
(2)図12は、図11と同様に、左側の足用押当面50は、平面視で、車幅方向Wに対して所定角度θ2だけ右向き(車幅中央側)に傾斜し、右側の足用押当面51は、平面視で、車幅方向Wに対して所定角度θ2だけ左向き(車幅中央側)に傾斜しているが、傾斜角度θ2をたとえば45°近くまで大きくした構造である。
【0040】
(3)図13〜図15は、左右の足用押当面50,51を、フロアープレート28とは別部材で形成し、ビス60によりフロアープレート28及び立ち上がり壁28aの湾曲部28cに固着した構造である。その他の構造は前記図1〜図10の実施の形態と同じであり、同じ部品には同じ符号を付している。足用押当面5,51をフロアープレート28とは別部材とすることにより、たとえば車種によって、フロアープレート28を共通部材としながらも、前下上がりの傾斜角度α1や左右の傾斜角度θ1等の異なる足用押当面50,51を任意に取り付けることが可能となる。
【0041】
(4)図16は、足用押当面50のさらに別の変形例であり、表面の滑り止めとして、左右に直線状に延びる多数のリブ61を形成した構造である。
【0042】
(5)前記各実施の形態では、足用押当面を前上がりに傾斜させた構造を採用しているが、足用押当面を垂直に形成することも可能である。この場合には、少なくとも、図11及び図12の構造と同様に、運転者用の左側の足用押当面50は車幅方向Wに対し、右向きに傾斜させ、同乗者用の足用押当面51は車幅方向Wに対し、左向きに傾斜させる。
【0043】
(6)足用押当面50に形成される凸部50aの形状は、菱形やリブには限定されず、三角形や円形等、各種形状を採用することができる。
【0044】
(7)本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲において、各種変形例が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、各種不整地用四輪走行車に適用可能であり、たとえば、図1及び図3において、運転シート15と同乗者シート16との2つのシートの代わりに、一体的なベンチシートを備えた不整地用四輪走行車に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明にかかるフロアー構造を備えた不整地用四輪走行車の一実施の形態を示す左側面図である。
【図2】図1の不整地用四輪走行車の簡略斜視図である。
【図3】図1の不整地用四輪走行車の平面図である。
【図4】図1の不整地用四輪走行車のフロアープレート及びダッシュボードの斜視図である。
【図5】図4フロアープレート及びダッシュボードの左側面図である。
【図6】図5のフロアープレートのVI-VI断面図である。
【図7】図6のフロアープレートのVII-VII断面図である。
【図8】図7のフロアープレートのVIII-VIII断面図である。
【図9】足用押当面の表面の拡大部分図である。
【図10】図9の足用押当面のX-X断面図である。
【図11】足用押当面の変形例を示す図8と同様の断面図である。
【図12】足用押当面の別の変形例を示す図8と同様の断面図である。
【図13】足用押当面の別の変形例を示す図4と同様の斜視図である。
【図14】図13のフロアープレート等の図6と同様の断面図である。
【図15】図14のフロアープレートのXV-XV断面図である。
【図16】足用押当面のさらに別の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 前車輪
2 後車輪
5 キャビン
15 運転シート
16 同乗者シート
17 ダッシュボード(操作部)
20 エンジン
28 フロアープレート
28a フロアープレートの立ち上がり壁
28c 立ち上がり壁の湾曲部
50,51 足用押当面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前車輪と左右一対の後車輪との間に、操作部及びシートを収納するキャビンを備え、該キャビンの下端部にフロアーを設けている不整地用四輪走行車のフロアー構造において、
前記フロアー又は前記フロアー近傍に、搭乗者が足の裏面側を押し当てることができる足用押当面を設けていることを特徴とする不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項2】
前記不整地用四輪走行車は、前記シート近傍にエンジンを搭載していることを特徴とする請求項1記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項3】
前記足用押当面は、前上がりに傾斜していることを特徴とする請求項1又は2記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項4】
前記足用押当面は、車幅方向と略平行に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項5】
前記足用押当面は、平面視で、車幅方向に対し、左右の一方に傾斜していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項6】
前記フロアーは、フロアー前端部から立ち上がる立ち上がり壁を有しており、前記足用押当面は、前記フロアーから前記立ち上がり壁に亘って設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項1】
左右一対の前車輪と左右一対の後車輪との間に、操作部及びシートを収納するキャビンを備え、該キャビンの下端部にフロアーを設けている不整地用四輪走行車のフロアー構造において、
前記フロアー又は前記フロアー近傍に、搭乗者が足の裏面側を押し当てることができる足用押当面を設けていることを特徴とする不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項2】
前記不整地用四輪走行車は、前記シート近傍にエンジンを搭載していることを特徴とする請求項1記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項3】
前記足用押当面は、前上がりに傾斜していることを特徴とする請求項1又は2記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項4】
前記足用押当面は、車幅方向と略平行に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項5】
前記足用押当面は、平面視で、車幅方向に対し、左右の一方に傾斜していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【請求項6】
前記フロアーは、フロアー前端部から立ち上がる立ち上がり壁を有しており、前記足用押当面は、前記フロアーから前記立ち上がり壁に亘って設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の不整地用四輪走行車のフロアー構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−44552(P2008−44552A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223375(P2006−223375)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
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