説明

不正装置検知システムおよび不正装置の検知方法

【課題】通信システム内に不正な通信装置Zが侵入しようとしていても、その不正な通信装置Zの存在を検知することができる不正装置検知システムを提供する
【解決手段】不正装置検知システムは、正規の路側機1が複数含まれる通信システムに設けられている。正規の第一路側機1Eから正規の第二路側機1Aへの情報通信の異常を、第一検知部15aによって検知する。第一検知部15aによって異常が検知された場合に、第二検知部15bは、第一路側機1Eと、別の路側機1G,1Hとの情報通信の状況に関する状況情報を取得する。この状況情報に基づいて前記状況が正常であると判断すると、不正通信装置が存在していると推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム内に不正に侵入しようとする不正通信装置の存在を検知する不正装置検知システムおよびその検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
この交通システムは、主に、インフラ側の通信装置としての複数の路側通信装置と、各車両に搭載される通信装置である車載通信装置(移動端末)とによって実現される。通信の組み合わせとしては、路側通信装置同士での路路間通信と、路側通信装置と車載通信装置とによる路車(または車路)間通信と、車載通信装置同士での車車間通信とがある。
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路側通信装置は、例えば道路の各交差点に設置されていて、ある交差点に設置された路側通信装置から送信された情報を、近隣または同一の交差点に設置された他の路側通信装置が受信することができる。このような路路間通信が行われるとともに、路側通信装置と、その周囲を走行している車両の車載通信装置との間で路車間通信が行われることにより、車載通信装置に、例えば交差点の死角になっている部分の情報を予め通知することが可能となり、交差点における交通事故を未然に防止することができる。
しかし、このようなシステム内に、不正な通信装置が侵入してしまうと、交通管制に関する情報が傍受される他に、不正な通信装置が周囲の車載通信装置へ偽った情報を送信してしまい、システムの機能を低下させるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、通信システム内に不正な通信装置が侵入しようとしても、その不正な通信装置の存在を検知することができる不正装置検知システムおよびその検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、正規の路側通信装置が複数含まれる通信システムにおける不正な路側通信装置の存在を検知する不正装置検知システムであって、正規の第一路側通信装置から正規の第二路側通信装置への情報通信の異常を検知する第一検知部と、前記第一検知部によって異常が検知された場合に、前記第一路側通信装置と別の通信装置との情報通信の状況に関する状況情報を取得し、当該状況情報に基づいて前記状況が正常であると判断すると不正通信装置が存在していると推定する第二検知部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
第一路側通信装置から第二路側通信装置への情報通信に異常がある場合として、第一路側通信装置と第二路側通信装置との間に不正通信装置が存在していて、例えば、当該不正通信装置から送信されている信号と、第一路側通信装置から送信されている信号とが干渉している場合の他に、第一路側通信装置が故障している場合がある。
不正通信装置が存在しているのではなく、第一路側通信装置が故障している場合は、第一路側通信装置と第二路側通信装置との情報通信に異常が発生する他に、第一路側通信装置と別の通信装置との情報通信についても異常が発生すると考えられる。
【0008】
そこで、本発明によれば、第一検知部が、第一路側通信装置から第二路側通信装置への情報通信の異常を検知した場合に、第二検知部が、第一路側通信装置と別の通信装置との情報通信の状況に関する状況情報を取得し、当該状況情報に基づいて前記状況が正常であると判断することで、第一路側通信装置が故障しているのではなくて、第一路側通信装置から第二路側通信装置への情報通信と干渉する不正通信装置が存在していると推定することができる。
これにより、通信システム内に不正通信装置が侵入しようとしていても、この不正通信装置を検知することができる。
【0009】
(2)また、前記第一検知部は、前記第一路側通信装置が信号を送信するタイミングに関する情報を取得可能であると共に、前記情報に基づいて、前記第一路側通信装置からの信号が正規のタイミングで前記第二路側通信装置が受信できなかったと判定した場合に、前記情報通信の異常を検知するように構成できる。
【0010】
(3)また、第二路側通信装置が受信した信号の強さが所定値以上であっても、不正通信装置から送信されている信号と、第一路側通信装置から送信されている信号とが干渉する場合、第二路側通信装置は情報を受信できず、情報通信に異常が生じる。
そこで、前記第一検知部は、前記第二路側通信装置が受信した信号の強さが所定値以上であっても当該信号に含まれている情報を取得できない場合に、前記異常を検知するように構成するのが好ましく、この構成により、第一路側通信装置から第二路側通信装置への情報通信の異常を検知することができる。
【0011】
(4)また、第一路側通信装置から第二路側通信装置への情報通信に異常がある場合、当該第二路側通信装置に設けられた第二検知部は、第一路側通信装置から前記状況情報を通信によって取得することができない。
そこで、前記通信システムは、前記正規の路側通信装置を統括する中央制御装置を有し、前記第二検知部は、前記第二路側通信装置に設けられていると共に、前記状況情報を、前記中央制御装置を介して通信によって取得するように構成すれば、第一路側通信装置から第二路側通信装置への情報通信に異常があっても、第二検知部は、中央制御装置を介して通信によって前記状況情報を取得することができる。
【0012】
(5)また、本発明は、正規の路側通信装置が複数含まれる通信システムにおける不正な路側通信装置の存在を検知する不正装置の検知方法であって、正規の第一路側通信装置から正規の第二路側通信装置への情報通信の異常を検知し、異常が検知された場合に、前記第一路側通信装置と別の通信装置との情報通信の状況を確認し、正常であると判断すると不正通信装置が存在していると推定することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、第一路側通信装置から第二路側通信装置への情報通信の異常を検知した場合に、第一路側通信装置と別の通信装置との情報通信の状況を確認し、正常であると判断すると、第一路側通信装置が故障しているのではなくて、不正通信装置が存在していることにより当該不正通信装置から送信されている信号によって前記異常が生じていると考えられるので、不正通信装置が存在していると推定することができる。
これにより、通信システム内に不正通信装置が侵入しようとしていても、この不正通信装置を検知することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通信システム内に不正通信装置が侵入しようとしていても、この不正通信装置を検知し、これ以上の侵入を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、通信システムが設けられている道路の模式図であり、図2は図1の一部(二点鎖線で囲まれた部分)を拡大して説明している説明図である。
通信システムは、複数の路側通信装置(以下、「路側機」という)1を有している。図1では路側機1として、路側機1A〜1I、1Qが示されている。また、通信システムは、複数の正規の路側機1を統括する交通管制センターの中央制御装置4を有している。これら路側機1は、交通管制センターの中央制御装置4と接続されていて、中央制御装置4と各路側機1との間は有線または無線で通信可能である。
なお、複数の正規の路側機1の統括は、前記交通管制センターの中央制御装置4ではなく、交通管制センターとは別として(図示しないが)例えば路側に設置された集中監視装置(通信制御装置)が行ってもよい。
【0016】
路側機1は、交差点(交差点の近傍を含む)Jに設置されていて、車両5(図2参照)に搭載された車載通信装置(以下、「車載機」という)2との間で通信が可能である。この路側機1と車載器2との間の通信を「路車間通信」というものとする。
また、路側機1(例えば路側機1A)は、他の路側機(路側機1B,1C,1D,1E)との間の通信も可能であり、路側機1同士で情報を交換することが可能である。この路側機1同士の通信を「路路間通信」というものとする。
なお、通信システムが使用する周波数は、例えば720MHz帯である。
【0017】
本実施形態では、道路構造の例として、南北方向の複数の道路と、東西方向の複数の道路が交差した碁盤目構造を想定する。したがって、一つの交差点Jには、東西南北の4方位から4本の道路RE,RW,RN,RSが流入するように接続されている。
図2において、各交差点Jには、4本の各道路RE,RW,RN,RS用に4つ(複数)の交通信号灯器20a,20b,20c,20dが設置されている。
また、各交差点の角には、ビル等の障害物がある。なお、道路構造は、上記に限定されるものではない。
【0018】
図3のブロック図に示しているように、各路側機1は、通信装置本体10と、この通信装置本体10に接続されたアンテナ部11とを有している。通信装置本体10が、通信システムを統括している前記交通管制センターの中央制御装置4と通信可能となっている。通信装置本体10は、無線部(送受信部)12と、通信に関する制御を行う制御部13とを有している。制御部13は、CPUを有するマイコンなどからなり、記憶しているプログラムによって各種処理を実行することができる。
【0019】
また、路側機1は、時分割多重方式によって通信を行うことができ、このために、制御部13は時分割スロットの管理を行う。なお、このスロットの管理は、無線部12が行っても良い。
路側機1は、車載機2に対して同報通信(1対多通信)が可能であり、交通情報などを、周囲に存在している車載機2に対して一斉に送信することができる。
【0020】
本実施形態のアンテナ部11は、図2に示しているように、交差点Jに接続された道路RE,RW,RN,RSの数に対応した複数(4本)の指向性アンテナ11aを有している。指向性アンテナ11aは、交差点Jに設置された4個の交通信号灯器20a,20b,20c,20dにそれぞれ設けられている。
【0021】
アンテナ部11は、路車間通信だけでなく、路路間通信にも用いられる。路路間通信では、通信相手となる路側機1が特定されて通信(個別通信または固定通信という)が行われるため、アンテナ部11に指向性を持たせている。本実施形態では、路車間通信を前記指向性アンテナ11aで行い、しかも、指向性アンテナ11aが指向する方向が、他の路側機1が設置されている位置の方向となっている。
【0022】
アンテナ部11の指向性について具体的に説明する。例えば、路側機1Aのアンテナ部11は、路側機1Bの方向、路側機1Cの方向、路側機1Dの方向および路側機1Eの方向の指向性を有している。さらに、この指向性は、交通信号灯器20a,20b,20c,20dが信号の指示対象とする道路の方向(灯器の投光方向)と一致している。これにより、指向性アンテナ11a,11a,11a,11aを有するアンテナ部11は、交差点Jに接続され車両5が走行している複数の道路RE,RW,RN,RSの道路方向に沿った指向性を持つ。
【0023】
図3において、車載機2は、通信装置本体20と、通信装置本体20に接続された無指向性アンテナ21とを有している。通信装置本体20は、路側機1の通信装置本体10と同様に、無線部22と制御部23とを有している。車載機2は、路側機1との通信の他、車載機同士の通信(車車間通信)が可能である。車載機2のアンテナ21は、無指向性であるため、路側機1や他の車載機2がいずれの方向にあっても電波を受信することができる。
【0024】
以上のように構成された通信システムの通信方式は、MACレイヤにおいて、TDMA方式とCSMA/CA方式とが組み合わされている。すなわち、図4(a)に示しているように、路側機1が信号を送信するための時間帯(第一時間帯)が確保されていて、さらに、この第一時間帯における複数の路側機1のスロットの割り当てに、TDMA方式が採用されている。
そして、前記第一時間帯以外の残りの第二時間帯が、車載機2が信号を送信することのできる時間であり、この第二時間帯で例えばCSMA/CA方式による車車間通信が行われる。
【0025】
これにより、第一時間帯では、路側機1同士の路路間通信、路側機1から車載機2へ信号が送られる路車間通信が行われる。そして、第二時間帯では、車載機2から路側機1へ信号が送られる路車間通信、車載機2同士の車車間通信が行われる。なお、第一時間帯では、車載機2は信号の送信が禁止されている。
このように、路側機1が信号を送信する時間(第一時間帯)が優先的に与えられていることで、路側機1から送信される信号の品質を確保している。
【0026】
また、すべての路側機1は、信号を送信するタイミングを制御するために、時刻を同期させる機能を有している。そして、前記交通管制センターの中央制御装置4から、通信によって各路側機1は、前記第一時間帯(および第二時間帯)の時間の割り当てに関する情報(割り当て情報)を得ることができる。
そして、各路側機1は、時刻を同期させ、通信エリア内に(通信エリア内の車載機2に対して)前記割り当て情報を送信する。なお、前記割り当て情報には、後述のスロット情報が含まれている。
【0027】
したがって、割り当て情報を共有している各路側機1は、第一時間帯の内の指定されたスロットで、路路間通信と路車間通信との内の一方または双方を行うことができる。
一方、割り当て情報を受信して取得した車載機2は、路側機1が信号を送信する時間帯(第一時間帯)と、当該車載機2が信号を送信することが可能となる通信可能時間帯(第二時間帯)とを知ることができる。これにより、車載機2は、第二時間帯で、車路間通信と車車間通信との内の一方または双方を行うことができる。
【0028】
前記スロット情報について図4(a)によりさらに説明する。
スロット情報は、各路側機1に割り当てられたタイムスロット(以下、スロットともいう)のタイミングに関する情報であり、例えば路側機1Aが信号を発信するスロットのタイミング(例えば順番と時間)に関する情報が含まれている。図4(a)の実施形態では、第一時間帯の最初に、路側機1Aが信号を時間t1の間送信し、その後順番に、路側機1B、路側機1C、路側機1D、路側機1Eが信号を送信するようにスロットが規定されている。このスロット情報によって、どのタイミングで、どの路側機1が信号を送信するのか判別することができる。
【0029】
前記のとおり、路側機1Aのアンテナ指向方向に、他の路側機1B〜路側機1Eが存在していても、前記スロット情報のように時間分割がされているため、近く(通信エリア内)に設置されている路側機の間で、干渉の発生を防止することができる。なお、第一時間帯には、どの路側機1にも割り当てられていない空白部分(空白スロット)があったり、近隣一群の路側機1A〜1I以外の他の路側機1Q(図1参照)のための割り当てスロットがあったりする。
【0030】
そして、例えば路路間通信では前記個別通信を適切に実行させるために、通信システムに不正装置検知システムが設けられている。不正装置検知システムは、この通信システム内に不正に侵入しようとする不正な路側通信装置(以下、不正通信装置という)の存在を検知する機能を備えている。
【0031】
このために、不正装置検知システムは、図3に示しているように、前記記憶部14と検知部15とを備えている。検知部15は、第一検知部15aと第二検知部15bとからなる。
記憶部14は、各種情報やコンピュータプログラムを記憶するROMやRAM等の記憶装置よりなる。検知部15は、CPUを有するマイコンなどからなり、前記コンピュータプログラムによって各種処理を実行する機能部である。本実施形態では、各路側機1の通信装置本体10に、記憶部14および検知部15が設けられている。また、前記検知部15の機能を、通信装置本体10の制御部13が有していてもよい。
【0032】
また、検知部15は、信号の受信を、アンテナ部11の複数の指向性アンテナ11aのうちいずれの指向性アンテナ11aで行ったのかを知ることによって、受信した信号の発信源の方向を判定する方路判定部としての機能も有している。
【0033】
また、本発明では、正規の各路側機1に、予め識別情報がそれぞれ割り当てられていて、各路側機1における記憶部14は、自己の識別情報(ID情報)を記憶していると共に、他の正規な路側機1の識別情報も記憶している。なお、各路側機1における記憶部14は、自己の通信エリア内に存在している他の正規の路側機1の識別情報を少なくとも記憶していればよい。つまり、個別通信を行う相手となる路側機1の識別情報を記憶していればよい。具体的には、路側機1Aにおける記憶部14には、四方向に延びる道路の先に設置されている路側機1B〜1Eの識別情報を記憶していればよく、通信相手となる可能性のない路側機1F〜1I,1Qの識別情報を記憶していなくてもよい。
そして、各路側機1は、アンテナ部11からの送信信号に自己の識別情報を含ませて、信号を送信することができる。
【0034】
前記不正装置検知システムによって実行される、不正通信装置の存在を検知する機能を説明する。
図1において、路側機1A〜1I,1Qが、システム運用者が運用している(本実施形態では、システム運用者が交通管制センターを介して管理している)正規の路側機であり、通信装置Zが通信システムに不正に侵入しようとしている不正通信装置Zである。
【0035】
不正通信装置Zは、路側機1Aと路側機1Eとの間に存在していて、これら路側機1A,1Eおよび周囲の車載機2に対して信号を送受信できるものとする。
この不正装置検知システムは、一つの路側機1(路側機1A)と通信対象となっている周囲の他の路側機1(路側機1B〜1E)が信号を送信するタイミングと重なって、不正通信装置Zが信号を送信している場合に、当該不正通信装置Zの検知が可能となる。
【0036】
つまり、不正通信装置Zが、周囲の路側機1(路側機1B〜1E)になりすましている場合に、当該不正通信装置Zの検知が可能となる。
そこで、路側機1Eが信号を送信するタイミングで不正通信装置Zが信号を送信している場合に、路側機1Aの検知部15が、この不正通信装置Zの存在を検知する例を説明する。
【0037】
路側機1Aにおける検知部15の第一検知部15aは、路側機1Aと通信相手となっている正規の路側機1B〜1Eそれぞれから当該路側機1Aへの情報通信の異常を検知する機能を有している。
異常を検知する場合としては、第一検知部15aは、正規の路側機1(路側機1B〜1E)が信号を送信するタイミングに関する前記スロット情報を取得可能であることから、第一検知部15aが、このスロット情報に基づいて、正規の路側機1(路側機1B〜1E)からの信号が正規のタイミングで路側機1Aが受信できなかったと判定した場合がある。
さらに、第一検知部15aは、路側機1Aが受信した信号の強さが路路間通信を行うために必要な所定値(例えば−70dBm)以上であっても、当該信号に含まれている情報を取得できない場合に、異常を検知することができる。
なお、信号に含まれている情報を取得できない場合としては、信号を受信できているが当該信号に含まれている情報にエラーがある場合や、信号の受信そのものが失敗している場合がある。
【0038】
路側機1Aにおける第一検知部15aの機能を図1の場合で説明する。
路側機1Aにおける記憶部14には、前記スロット情報が記憶されていることから、路側機1Aが信号を送信するタイムスロットのタイミングの他に、路側機1Aの通信相手となっている路側機1B〜1Eが信号を送信するタイムスロットのタイミングも記憶している。
したがって、前記スロット情報によれば、路側機1B〜1Eからの信号を路側機1Aが受信するタイミングが判るので、路側機1Aにおける第一検知部15Aは、前記スロット情報に基づいて、路側機1Aと、路側機1B〜1Eそれぞれとの間の受信状況を検知することができる。なお、図4(b)は、路側機1Aが路側機1B〜1Eから受信するはずである信号B,C,D,Eを示している。
【0039】
路側機1B、1C、1Dの各タイムスロットで、路側機1Aにおいて受信した信号の強さが路路間通信を行うために必要な所定値以上であり(受信レベルが十分に大きく)、かつ、当該信号に含まれている情報を取得できている場合(信号の受信エラーが無い場合)、路側機1Aと路側機1B、1C、1Dそれぞれとの路路間通信は適切に行われているので、その旨の情報を制御部13から取得することができ、この情報により、第一検知部15Aは、路側機1Aと路側機1B、1C、1Dそれぞれとの間の情報通信が正常であると検知することができる。
【0040】
これに対して、路側機1Eは路側機1Aへ適切なタイミングで信号を送信しているが、路側機1Aと路側機1Eとの間には不正通信装置Zが存在していて、この不正通信装置Zが路側機1Aの方向へ信号を発信していることから、図4(c)に示しているように、路側機1Eから送信された信号Eと、不正通信装置Zから送信された信号Zとが干渉し、路側機1Aは、路側機1Eからの信号を正しく受信することができない。
【0041】
すなわち、不正通信装置Zおよび路側機1Eが路側機1Aの方向へ信号を送信していることから、路側機1Aにおける受信信号の強さ(信号レベル)は、情報通信を行うために必要なレベルに達しているが、路側機1Aは干渉した信号を受信するため、当該信号に含まれている情報を取得できない(受信エラーが発生する)。
【0042】
この場合、第一検知部15Aは、路側機1Eのタイムスロットで路側機1Aにおいて受信信号に含まれている情報を取得できない旨の情報を、制御部13から取得することで、路側機1Aと路側機1Eとの間の情報通信に異常があると検知することができる。つまり、第一検知部15aは、路路間通信が可能な程度に受信レベルは大きくても、路側機1Aが、正確に所定の情報を取得することができなければ、その状態を検知することができ、路側機1Aと路側機1Eとの間の情報通信に異常があると判断することができる。
【0043】
または、路側機1Aは、不正通信装置Zから送信された信号を干渉がなく受信してしまう場合がある。この場合、路側機1Aは、路側機1Eから送信された信号を受信することができず、例えば路側機1Eの識別番号を確認(認証)できないことにより、第一検知部15Aは、路側機1Aと路側機1Eとの間の情報通信に、異常があることを検知する。
【0044】
なお、路側機1Eから路側機1Aへの情報通信に異常が生じる原因として、前記のように路側機1Aと路側機1Eとの間に不正通信装置Zが存在している場合の他に、路側機1Eが故障している場合(路側機1Eからの送信信号が異常の場合)がある。
これらを見分けるために、第二検知部15bを機能させる。
図5は、第二検知部15bの機能を説明するフロー図である。
【0045】
第一検知部15aによって、路側機1Eから路側機1Aへの情報通信に異常が検知された場合(ステップS11のYes)、第二検知部15bは、路側機1Eと別の正規の通信装置との間の情報通信の状況に関する状況情報を取得する。図1の場合では、路側機1Eと、正規の路側機1Gおよび正規の路側機1Hのそれぞれとは、路路間通信の通信相手となっていることから、第一検知部15aは、路側機1Eから路側機1Gおよび路側機1Hへの情報通信の状況に関する状況情報を取得する(ステップS12)。
【0046】
路側機1E,1G間に関する状況情報は、路側機1Eと路側機1Gとが路路間通信を行うことで生成される信号であり、また、路側機1Eと路側機1Hとが路路間通信を行うことで、路側機1E,1H間に関する状況情報も生成される。この路側機同士の情報通信が、正常に実現できている場合、成功である旨の情報を含む状況情報が生成され、路側機同士の情報通信が失敗している場合に、失敗である旨の情報を含む状況情報が生成される。この状況情報は、路側機1Gの検知部15および路側機1Hの検知部15によって生成される(ステップS21)。
【0047】
また、路側機1Gおよび路側機1Hは、交通管制センターの中央制御装置4と通信可能であることから、生成した状況情報を中央制御装置4へ送信する。そして、中央制御装置4は、前記状況情報を路側機1Aへ送信し(ステップS22)、路側機1Aは、状況情報を取得することができる(ステップS12)。
【0048】
そして、路側機1Aの第二検知部15bは、取得した前記状況情報に基づいて、路側機1Eと路側機1Gとの情報通信の状況、路側機1Eと路側機1Hとの情報通信の状況を判定する(ステップS13)。すなわち、所得した状況情報のすべてに、成功した旨の情報が含まれている場合(ステップS13でYes)、第二検知部15bは、双方の情報通信の状況は正常であると判断する(ステップS16)。一方、所得した状況情報に、失敗した旨の情報が含まれている場合(ステップS13でNo)、第二検知部15bは、情報通信の状況は異常であると判断する(ステップS14)。
【0049】
ここで、路側機1Eが故障をしているために、路側機1Eと路側機1Gとの間の情報通信が異常となり、さらに、路側機1Eと路側機1Hとの間の情報通信が異常となる場合、路側機1Aにおける第二検知部15bが取得する状況情報には、すべて失敗である旨の情報が含まれているはずである。
したがって、第二検知部15bが所得した状況情報のすべてが、失敗である旨の情報を含んでいる場合、この状況情報を取得した第二検知部15bは、路側機1Eと路側機1Gとの情報通信の状況、および、路側機1Eと路側機1Hとの情報通信の状況が、異常であると判断し(ステップS14)、不正通信装置Zが存在しているために路側機1Eと路側機1Aとの間の情報通信に異常が生じているのではなく、路側機1Eが故障をしている場合であると、第二検知部15bは推定することができる(ステップS15)。
【0050】
これに対して、第二検知部15bが取得した状況情報のすべてに、成功である旨の情報が含まれている場合、この状況情報を取得した第二検知部15bは、路側機1Eと路側機1Gとの情報通信の状況、および、路側機1Eと路側機1Hとの情報通信の状況が、正常であると判断し(ステップS16)、路側機1Eが故障をしているのではなくて、不正通信装置Zが存在していると推定する(ステップS17)。
【0051】
すなわち、路側機1Eから路側機1Aへの情報通信が異常であっても、路側機1Eとの通信相手である路側機1G、および、路側機1Eとの通信相手である路側機1Hにおいては、路側機1Eからの信号を正常に受信できている場合は、路側機1Eが故障ではないことを判断することができ、第二検知部15bは、路側機1Eから路側機1Aへの情報通信と干渉する不正通信装置Zが存在していると推定することができる。
このようにして、路側機1Aにおける検知部15によって、不正通信装置Zが検知される。
【0052】
さらに、路側機1Aでは、検知部15が有している機能(受信した信号の発信源の方向を判定する機能)により、路側機1Eの方向に不正通信装置Zが存在していることを判定することができる。
【0053】
前記のように構成された不正装置検知システムによれば、第一検知部15aによって、正規の路側機1Eから正規の路側機1Aへの情報通信についての異常を検知し、異常が検知された場合に、第二検知部15bによって、前記路側機1Eと別の正規の路側機1G,1Hとの情報通信についての状況を確認し、正常であると判断すると不正通信装置Zが存在していると推定する不正装置の検知方法が実行される。
これにより、不正装置検知システムによって、不正通信装置Zが検知され、その情報が、交通管制センターの中央制御部4へ送信される。
【0054】
このため、通信システム内に不正通信装置Zが侵入しようとしていても、交通管制センターは、この不正通信装置Zの存在を知ることができ、各路側機1に対して警告信号を送信し、当該各路側機1によってこれ以上の侵入を防ぐ処理を開始させることが可能となる。これにより、通信システムのセキュリティを向上させることができる。前記侵入を防ぐ処理としては、検知した不正通信装置Zの識別情報を含む信号(情報)は、その後においてすべて無視する処理等がある。
【0055】
また、前記実施形態によれば、不正通信装置Zの存在によって、路側機1Eから路側機1Aへの情報通信に異常があるため、路側機1Aに設けられた第二検知部15bは、路側機1Eと別の路側機1G,1Hとの情報通信の状況に関する状況情報を、路側機1Eから通信によって直接取得することができない。
しかし、第二検知部15bは、前記状況情報を、中央制御装置4を介した通信によって取得するように構成されているため、路側機1Eから路側機1Aへの情報通信に異常があっても、第二検知部15bは状況情報を取得することができる。
【0056】
また、本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、前記実施形態では、不正装置検知システム(検知部15)を、各路側機1に設けた場合を説明したが、これ以外として、不正装置検知システムを交通管制センター(又は路側に設置された前記集中監視装置(通信制御装置))に設けてもよい。この場合、交通管制センターは、各路側機1から情報通信に関する情報などを受信し、この信号に基づいて不正通信装置の検知を行う。
【0057】
また、前記実施形態では、路側機1G,1Hの検知部15が生成した状況情報に、成功または失敗である旨の情報が既に含まれている場合を説明したが、交通管制センターの中央制御装置4が路路間通信の状況を監視し、その監視して得られた情報を路側機1Aが取得して、当該情報に基づいて路側機1Aの検知部15が、路路間通信の情報通信が正常であるか異常であるかについて判断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】通信システムが設けられている道路の模式図である。
【図2】図1の一部を拡大して説明している説明図である。
【図3】交通管制センター、路側機および車載機のブロック図である。
【図4】スロット情報の説明図である。
【図5】不正装置検知方法の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 路側機(路側通信装置)
1A 路側機(第二路側通信装置)
1E 路側機(第一路側通信装置)
1G,1H 路側機(他の通信装置)
15 検知部
15a 第一検知部
15b 第二検知部
Z 不正通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正規の路側通信装置が複数含まれる通信システムにおける不正な路側通信装置の存在を検知する不正装置検知システムであって、
正規の第一路側通信装置から正規の第二路側通信装置への情報通信の異常を検知する第一検知部と、
前記第一検知部によって異常が検知された場合に、前記第一路側通信装置と別の通信装置との情報通信の状況に関する状況情報を取得し、当該状況情報に基づいて前記状況が正常であると判断すると不正通信装置が存在していると推定する第二検知部と、を備えていることを特徴とする不正装置検知システム。
【請求項2】
前記第一検知部は、前記第一路側通信装置が信号を送信するタイミングに関する情報を取得可能であると共に、前記情報に基づいて、前記第一路側通信装置からの信号が正規のタイミングで前記第二路側通信装置が受信できなかったと判定した場合に、前記情報通信の異常を検知する請求項1に記載の不正装置検知システム。
【請求項3】
前記第一検知部は、前記第二路側通信装置が受信した信号の強さが所定値以上であっても当該信号に含まれている情報を取得できない場合に、前記異常を検知する請求項1または2に記載の不正装置検知システム。
【請求項4】
前記通信システムは、前記正規の路側通信装置を統括する中央制御装置を有し、
前記第二検知部は、前記第二路側通信装置に設けられていると共に、前記状況情報を、前記中央制御装置を介して通信によって取得する請求項1〜3のいずれか一項に記載の不正装置検知システム。
【請求項5】
正規の路側通信装置が複数含まれる通信システムにおける不正な路側通信装置の存在を検知する不正装置の検知方法であって、
正規の第一路側通信装置から正規の第二路側通信装置への情報通信の異常を検知し、
異常が検知された場合に、前記第一路側通信装置と別の通信装置との情報通信の状況を確認し、正常であると判断すると不正通信装置が存在していると推定することを特徴とする不正装置の検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−141405(P2010−141405A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313288(P2008−313288)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】