説明

両面塗工装置

【課題】塗膜の厚みを一定にできる両面塗工装置を提供する。
【解決手段】両面塗工装置は、ウェブ材Wを支持するバックアップローラ2と、バックアップローラ2に対向して配置され、ウェブ材Wの第1の面に塗料Pを塗布する第1塗装ヘッド1と、バックアップローラ2の下流に、下流側程間隔が広がるように配置され、多数の貫通穴9が開いた無端ベルト7と、無端ベルト7の裏側から貫通穴9を介してウェブ材Wを吸引する吸引チャンバ8とを備え、ウェブ材Wの第1の面の非塗装部分を吸着するように掛け渡された複数の吸引コンベア4と、吸引コンベア4に対向して配置され、ウェブ材Wの第2の面に塗料を塗布する第2塗装ヘッド3と、吸引コンベア4の間に配置され、ウェブ材Wの第1の面に向かってガスを噴射する多数の小孔10を備える静圧パッド5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ材の両面に塗料を塗布する両面塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブ材の両面に塗料を塗布する必要がある場合、一般的には、片面塗工装置を用い、片面に塗料を塗布して塗料を乾燥してから巻き取ったウェブ材を、再度、片面塗工装置にセットして裏面に塗料を塗布している。また、最初に片面に塗料を塗布して乾燥し、続けて、反対面に塗料を塗布して乾燥する連続塗工装置も存在する。
【0003】
電気自動車等へのニーズの高まりにつれ、二次電池の高密度化と低価格化とが強く求められている。二次電池セルの製造においては、金属箔電極の両面に活物質をより均一に塗布できる塗工装置が求められている。
【0004】
一般に、ダイヘッドによって塗料を塗布する塗工装置は、バックアップローラに巻き付けられたウェブ材に対向するようにダイを配置することで、ウェブ材とダイヘッドとの隙間を一定に保ち、塗膜の厚みを一定にしている。ウェブ材の両面を塗装可能とするために、ウェブ材をバックアップローラに巻き付けた状態で塗装するダイヘッドを2つ設けようとすると、ウェブ材を2つめのバックアップローラに巻き付ける前に最初のダイヘッドで塗布された塗料を乾燥しなければならず、2つのドライヤが必要であるために装置が長くなり、設備コストが高くなってしまう。
【0005】
特許文献1および2には、ウェブ材を挟み込むようにして2つのダイヘッドを配置した塗工装置が記載されているが、塗装時にウェブ材を支持することができないので、ダイヘッドの間でウェブ材が振動し、ダイヘッドとウェブ材との隙間が変化して、塗膜の厚みがばらついてしまう。
【0006】
特許文献3には、ダイヘッドの直前にウェブ材を挟み込むローラを配置し、ダイヘッドの直後にウェブ材の両側の塗装されていないマージン部分を挟み込んで張力を与えるローラを配置した発明が記載されている。しかしながら、この塗工装置においても、ダイヘッドの間で塗装されている瞬間のウェブ材は支持されておらず、ウェブ材の振動を完全に防止することは難しい。
【0007】
特許文献4には、表面に設けた多数の小孔から空気を噴出するローラによって、ウェブ材の塗装された面を空気浮上させた状態で支持し、この空気浮上ローラに対向するように配置したダイヘッドにより反対面を塗装する塗工装置が記載されている。この場合も、ウェブ材を支持する空気層の厚みを一定に保つことは難しく、ダイヘッドとウェブ材との隙間が変動して膜厚がばらついてしまう。
【0008】
特許文献5には、一定のピッチで溝が形成され、ウェブ材と反対向きに回転する溝付ローラによって、ウェブ材の塗装面を支持し、溝付ローラに対向するダイヘッドでウェブ材の反対面を塗装する発明が記載されている。この発明では、溝付ローラに支持される瞬間、溝の山が当接する部分に塗布されている塗料が溝の谷の部分に押し出されるため、塗料の物性によってウェブ材が溝付ローラから離間したときに塗膜の厚みを均一に回復できる場合にしか適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−72976号公報
【特許文献2】特開平10−216603号公報
【特許文献3】特開2008−284528号公報
【特許文献4】特開平2−214564号公報
【特許文献5】特開平7−185436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記問題点に鑑みて、本発明は、塗膜の厚みを一定にできる両面塗工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明による両面塗工装置は、ウェブ材の第1の面に塗料を塗布する第1塗装ヘッドと、前記第1塗装ヘッドに対して前記ウェブ材の搬送方向下流に配置され、多数の貫通穴が開いた無端ベルトと、前記無端ベルトの裏側から前記貫通穴を介して前記ウェブ材を吸引する吸引チャンバとを備え、前記ウェブ材の前記第1の面の非塗装部分を吸着するように掛け渡された複数の吸引コンベアと、前記吸引コンベアに対向して配置され、前記ウェブ材の第2の面に塗料を塗布する第2塗装ヘッドとを有するものとする。
【0012】
この構成によれば、第2塗装ヘッドによりウェブ材の第2の面を塗装するとき、ウェブ材の第1の面の塗装されていない部分、すなわちマージン部分を吸引コンベアによって吸着して保持するので、ウェブ材の第2塗装ヘッドに対する相対位置が厳密に維持され、厚みが均一な塗膜を形成できる。
【0013】
また、本発明の両面塗工装置は、前記吸引コンベアの間に配置され、前記ウェブ材の前記第1の面に向かってガスを噴射する静圧パッドをさらに有してもよい。
【0014】
この構成によれば、ウェブ材の支持部の間に張架されている部分が、第2塗装ヘッドによる塗料の吐出圧力や第1の面の塗料の重量によって凹まないように、ガス圧によって支持することができ、塗膜の厚みを幅方向に均一にできる。
【0015】
また、本発明の両面塗工装置において、前記複数の吸引コンベアは下流側程間隔が広がるように配置されてもよい。
【0016】
この構成によれば、吸引コンベアによりウェブ材を幅方向に拡げて張力を付与するので、第2の面を塗装するときに張力によってウェブ材を平坦に保持し、第2塗装ヘッドとの隙間を一定に保って均一な厚みの塗膜を形成できる。
【0017】
また、本発明の両面塗工装置は、前記第1塗装ヘッドに対向して配置され、ウェブ材を支持するバックアップローラをさらに有してもよい。
【0018】
この構成によれば、第1の面の塗工が容易である。
【0019】
また、本発明の両面塗工装置において、前記第1塗装ヘッドは、前記ウェブ材の前記第1の面に複数の条線状に塗料を塗布し、前記吸引コンベアは、前記ウェブ材の前記複数の条線状の塗料の間の非塗装部分を吸着する位置にも設けられてもよい。
【0020】
この構成によれば、幅広のウェブ材に並列して塗膜を形成できるので、処理量を多くできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ウェブ材の第2の面を塗装するときに、吸引コンベアによってウェブ材の塗装のマージン部分を吸着して保持するので、ウェブ材が振動せず、厚みが均一な塗膜を形成できる。また、第2の面を塗装するときに、吸引コンベアが第1の面の塗膜には接触しないので、第2の面を塗装する前に第1の面の塗膜を乾燥する必要がない。このため、設備を小型化でき、エネルギー消費も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の1つの実施形態の両面塗工装置の部分斜視図である。
【図2】図1の両面塗工装置の搬送方向断面図である。
【図3】図1の第2塗装ヘッドの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
これより、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。図1乃至3に、本発明の第1実施形態の両面塗工装置の塗工に係る部分の構成を示す。本実施形態の両面塗工装置は、ウェブ材Wを矢印A方向に搬送する。そしてこの両面塗工装置は、ウェブ材Wの第1の面(裏面)に、塗料Pを等間隔の2本の条線状に塗布する第1塗装ヘッド(コーティングダイ)1と、第1塗装ヘッド1が対向する位置においてウェブ材Wの第2の面を支持するバックアップローラ2と、バックアップローラ2に対してウェブ材Wの搬送方向Aの下流において、ウェブ材Wの第2の面(表面)に、塗料を第1の面の塗料Pと表裏一致する2本の条線状に塗布する第2塗装ヘッド(コーティングダイ)3と、第2塗装ヘッド3が対向する位置においてウェブ材Wの第1の面の未塗装部分(マージン部分)を吸着して搬送する3つの吸引コンベア4と、吸引コンベア4の間に配置され、ウェブ材Wの第1の面の塗装部分に空気を噴射する2つの静圧パッド5とを有する。
【0024】
吸引コンベア4は、それぞれ、2つのプーリ6の間に張架され、ウェブ材Wの搬送速度よりも僅かに高い速度で回転駆動される無端ベルト7と、無端ベルト7の裏面に開口し、内部が真空引きされる吸引チャンバ8とを備える。無端ベルト7には多数の貫通穴9が設けられており、吸引チャンバ8は、貫通穴9を介して無端ベルト7の表面に近接するウェブ材Wを吸引する。
【0025】
また、両側の吸引コンベア4は、ウェブ材Wの搬送方向に対して僅かに傾斜して配置さている。つまり、3つの吸引コンベア4は、下流側程互いの間隔が広くなるように配置されている。これにより、吸引コンベア4は、ウェブ材Wの貫通穴9によって吸着している部分の距離を拡げるように移動する。吸引コンベア4の吸引力は、ウェブ材Wの張力が高くなると、吸引コンベア4の表面上でウェブ材Wが滑る程度であり、連続してウェブ材Wを拡幅することで、ウェブ材Wに幅方向の張力を与える。
【0026】
静圧パッド5は、中空の箱型をなし、上面に多数の小孔10が設けられている。静圧パッド5には、不図示の圧空源が接続され、小孔10からウェブ材Wの塗装された部分に向かって空気を噴射するようになっている。
【0027】
本実施形態の両面塗工装置では、第1塗装ヘッド1が塗装したウェブ材Wの第1の面と反対側の第2の面を第2塗装ヘッド3によって塗装する際、吸引コンベア4がウェブ材Wの第1の面を吸引して支持するので、ウェブ材Wの第2の面と第2塗装ヘッド3との隙間が一定に保たれ、結果として、第2塗装ヘッド3によって塗布される塗膜の厚みを一定にすることができる。
【0028】
このとき、吸引コンベア4は、下流側ほど間隔が広くなっており、ウェブ材Wに幅方向の張力を与えるので、ウェブ材Wの第2塗装ヘッド3に塗装されている部分の弛みをなくすことができる。
【0029】
さらに、静圧パッド5は、ウェブ材Wの第1面に塗布された塗料の重みや第2面に塗布される塗料の吐出圧に対向して、ウェブ材Wが下側に弛まないように支持する。この静圧パッド5の空気圧は、噴射した空気によって第1面の塗料の表面を荒らされない程度の低圧でなければならない。
【0030】
このように、本発明では、吸引コンベア4と静圧パッド5とによって、ウェブ材Wの第1の面の塗膜に直接触れることなく、第2の面を第2塗装ヘッド3に対して一定の距離に保つように支持するので、第2の面にも厚みの一定な塗膜を形成できる。
【0031】
また、本発明では、第1塗装ヘッド1と第2塗装ヘッド3との間に乾燥工程が必要ないので、装置を小型化でき、消費エネルギーも少なくて済む。
【0032】
さらに、本実施形態において、静圧パッド5からウェブ材Wに向かって温風を噴射するようにすれば、下流の乾燥装置(不図示)における塗料Pの乾燥時間を短縮できる。
【0033】
以上の実施形態では、塗料Pを2条に塗工するが、本発明によれば、1条または3条以上に塗料Pを塗工する塗工装置も構成できる。
【0034】
3条以上の塗工をするために4つ以上の吸引コンベア4を設ける場合、全ての吸引コンベア4の間隔が下流側で広くなるようにしてもよいが、外側の吸引コンベア4だけを傾斜して配置しても、ウェブ材Wが無端ベルト7上で滑ることで、内側の吸引コンベア4の間にも張力を作用させられる。
【0035】
本発明によれば、上記実施形態のバックアップローラ2に替えて、吸引コンベア4および静圧パッド5と同様の構成を第1塗装ヘッド1に対向して設けてもよい。
【0036】
また、当然ながら、本発明の塗工装置を用いて、ウェブ材Wの第1の面と第2の面とに異なる塗料を塗工することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1…第1塗装ヘッド
2…バックアップローラ
3…第2塗装ヘッド
4…吸引コンベア
5…静圧パッド
6…プーリ
7…無端ベルト
8…吸引チャンバ
9…貫通穴
10…小孔
P…塗料
W…ウェブ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ材の第1の面に塗料を塗布する第1塗装ヘッドと、
前記第1塗装ヘッドに対して前記ウェブ材の搬送方向下流に配置され、多数の貫通穴が開いた無端ベルトと、前記無端ベルトの裏側から前記貫通穴を介して前記ウェブ材を吸引する吸引チャンバとを備え、前記ウェブ材の前記第1の面の非塗装部分を吸着するように掛け渡された複数の吸引コンベアと、
前記吸引コンベアに対向して配置され、前記ウェブ材の第2の面に塗料を塗布する第2塗装ヘッドとを有することを特徴とする両面塗工装置。
【請求項2】
前記吸引コンベアの間に配置され、前記ウェブ材の前記第1の面に向かってガスを噴射する静圧パッドをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の両面塗工装置。
【請求項3】
前記複数の吸引コンベアは下流側程間隔が広がるように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の両面塗工装置。
【請求項4】
前記第1塗装ヘッドに対向して配置され、ウェブ材を支持するバックアップローラをさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の両面塗工装置。
【請求項5】
前記第1塗装ヘッドは、前記ウェブ材の前記第1の面に複数の条線状に塗料を塗布し、
前記吸引コンベアは、前記ウェブ材の前記複数の条線状の塗料の間の非塗装部分を吸着する位置にも設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の両面塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−40467(P2012−40467A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181561(P2010−181561)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】