説明

中継端子

【課題】プリント基板等の損傷を回避しつつ、また特別な位置決め用治具等も必要とすることなく簡単な設備と作業で、接続端子をプリント基板等に対して高精度に且つ強固に固定装着することが出来る中継端子を提供する。
【解決手段】スルーホール14の一方の開口周縁部42に係止される環状の鍔部20と、該鍔部20から前記スルーホール14内に延び出す一対の弾性接続片22とを弾性導電材料で形成した中継端子10において、前記一対の弾性接続片22に、接続端子18と当接する当接部36と、前記接続端子18が挿入されることで前記スルーホール14の内周面56に押し付けられる接続部30,32と、前記スルーホール14の他方の開口周縁部44に係止される抜止係止部38を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路導体と接続端子との電気的接続に用いられる中継端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線等の回路導体には、外部の電気回路を接続するための接続端子が設けられている。一般に、この接続端子は、プリント基板に形成したスルーホールに挿通されて半田付けされることによって、プリント基板に対して固定されていると共にプリント基板の回路導体に導通されている。
【0003】
ところで、接続端子は、外部回路との接続用コネクタの着脱等に支障が出ないように、プリント基板に対する突出方向や位置を高精度に設定されていることが重要である。そこで、従来から、接続端子の半田付けに際しては、治具を用いて接続端子をプリント基板上で高精度に位置決めしている。
【0004】
しかしながら、このような治具を用いた従来からの接続端子の半田付けは、製造設備が複雑で作業工程も煩雑になり、治具の準備による製造コストの増大も避けられないという問題があった。より簡単な設備と作業工程で、接続端子をプリント基板の回路導体に接続させて精度良く位置決め固定することの出来る新たな構造の実現が要求されていたのである。
【0005】
なお、かかる要求に対して、例えば特開平9−306610号公報(特許文献1)に記載されているような、接続端子に固着した合成樹脂製の鍔部をプリント基板上に載置させて接続端子の位置決めに用いる構造や、接続端子をプリント基板のスルーホールに圧入固定する構造も考えられる。しかし、前者の鍔部は、単にプリント基板への載置状態であることから安定性が悪いことに加えて半田付け時のプリント基板と鍔部の熱膨張差で接続端子の捩れや位置ずれが生じ易く、それ故、充分な精度確保が達成され難い。加えて、熱膨張差に起因して半田クラックが発生するおそれもあった。また、後者の圧入構造では、接続端子をプリント基板のスルーホールに圧入する際に、スルーホール内部の損傷や変形のおそれがあり、特に多層式のプリント基板の場合は、スルーホール内部の損傷に起因してガラス繊維と樹脂が熱ストレスで剥離するミーズリング現象が引き起こされるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−306610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、プリント基板等の損傷を回避しつつ、また特別な位置決め用治具等も必要とすることなく簡単な設備と作業で、接続端子をプリント基板等に対して高精度に且つ強固に固定装着することが出来る中継端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、回路導体におけるスルーホールに装着されて、前記回路導体に接続端子を装着するのに用いられる中継端子であって、前記スルーホールの一方の開口周縁部に係止されて該一方の開口周縁部上に位置させられる環状の鍔部と、該鍔部の内周縁部から前記スルーホール内に延び出して該スルーホールの他方の開口部側に突出させられる一対の弾性接続片とが、弾性導電材料で形成されており、前記一対の弾性接続片には、該一対の弾性接続片の対向面間に挿入される接続端子と当接する当接部と、前記接続端子が挿入されることによって互いに離隔方向に弾性変形して前記回路導体の前記スルーホールの内周面に押し付けられる接続部と、前記スルーホールの他方の開口部側への突出部分で拡開されて該他方の開口周縁部に係止される抜止係止部とが、形成されていることを、特徴とする。
【0009】
本発明の中継端子は、一対の弾性接続片の突出端側からスルーホールに挿入されて、鍔部がスルーホールの開口周縁部に上方から係止された状態でプリント基板等に装着される。そして、環状の鍔部から接続端子が挿通されることにより、一対の弾性接続片が外方に広がるように弾性変形されて、各弾性接続片の当接部が接続端子に接触すると共に、接続部がスルーホールの内周面に接触される。これにより、内部に挿通された接続端子が中継端子で支持されて、中継端子を介してプリント基板等に突設されると共に、スルーホールに導通されたプリント配線等の回路導体と電気的に接続される。更に、抜止係止部がスルーホールの他方の開口周縁部に係止されることによって、中継端子のスルーホールからの抜けが阻止される。
【0010】
このような中継端子を用いることによって、本発明によれば、従来使用されていた半田を用いることなく、接続端子をプリント基板等に高精度且つ強固に固定して回路導体と電気的に接続することが出来る。これにより、煩雑な半田付けの工程や、その際に用いられる冶具等を廃止することが出来て、接続端子の回路導体への取付作業の簡略化・低コスト化が図られる。また、半田を廃止することにより、熱膨張差に起因する半田クラック等の問題も解消されて、中継端子の弾性接続片への接触による高度の接続信頼性が確保される。
【0011】
また、接続端子をスルーホール内に挿通するに際して、予め、中継端子の弾性接続片によってスルーホールの内周面がカバーされていることから、接続端子によるスルーホール内周面の損傷等が可及的に防止出来る。これにより、多層基板で特に問題となるミーズリング等の不具合も解消することが出来る。なお、中継端子の鍔部は、周方向に連続して延びる環状のものであれば良く、円環状のものや矩形の環状のもの等が何れも含まれる。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載のものにおいて、前記一対の弾性接続片の対向面間距離が、基端部において最大とされていると共に、先端部において最小とされており、スルーホールの他方の開口周縁部から突出する部分が先窄まり形状とされているものである。本態様によれば、中継端子をスルーホールに挿入する際に、中継端子のスルーホール内周面への引っ掛かりを防止して内周面の損傷を回避出来ると共に、中継端子をスルーホールにスムーズに挿入することが出来る。
【0013】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載の中継端子の複数個が配列されて、樹脂製の台座によって連結されている中継端子ユニットである。
【0014】
本態様によれば、例えば、コネクタのピッチに合わせて任意の数の中継端子を配列させて樹脂製の台座によって一体化することにより、多数のスルーホールのそれぞれに中継端子を同時に挿入することが出来、中継端子の組み付け作業の簡素化が図られる。更に、複数の中継端子間を樹脂製の台座で確実に絶縁することが出来る。
【0015】
本発明の第四の態様は、第一又は第二の態様に記載の中継端子が装着されており、該中継端子に接続端子が装着されているプリント基板である。
【0016】
このようなプリント基板によれば、複数の接続端子が半田を用いることなく固定されることから、半田付け工程が不要となり、低コストで製造することが出来る。更に、中継端子で接続端子が精度良く位置決めされることから、相手側コネクタ等との接続安定性も向上される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従う中継端子を用いれば、接続端子を半田を用いること無しにプリント基板等に精度良く且つ強固に固定することが出来る。これにより、半田付け工程を不要とすることが出来て、製造コストの低減を図ることが出来る。また、スルーホール内周面を中継端子でカバーすることによって、接続端子の挿入に伴うスルーホール損傷のおそれを低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態としての中継端子が装着されたプリント基板の斜視図。
【図2】図1におけるII−II断面に相当する断面図。
【図3】図2に示した中継端子の断面図。
【図4】図3に示した中継端子の上面図。
【図5】接続端子の斜視図。
【図6】図3に示した中継端子への接続端子の挿入状態を示す断面図。
【図7】図6におけるVII−VII断面図。
【図8】中継端子ユニットの斜視図。
【図9】接続端子の異なる態様を説明するための図6に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
先ず、図1および図2に、本発明の一実施形態としての中継端子10が装着されたプリント基板12を示す。プリント基板12には回路導体としての図示しないプリント配線が形成されていると共に、プリント配線に接続するスルーホール14が貫設されている。このスルーホール14に中継端子10が個別に、或いは複数がユニット化された中継端子ユニット16として装着されている。そして、各中継端子10に接続端子18が挿通されることによって、各接続端子18が中継端子10を介してプリント基板12に突設されている。
【0021】
図3および図4に、中継端子10をスルーホール14への挿入状態で示す。なお、図4は、中継端子10を接続端子18の挿入状態で示す。中継端子10は、例えば銅合金等の弾性導電材料からなる一体成形品とされている。中継端子10は、環状の鍔部20を有すると共に、鍔部20から突出される一対の弾性接続片22を有している。
【0022】
鍔部20は中央に挿入口24が貫通状態で形成された環形状とされている。鍔部20の内周面26および外周面28は、弾性接続片22に向けて次第に横断面寸法が小さくなるテーパ形状とされている。また、外周面28の横断面寸法は、弾性接続片22と反対側の端部においてスルーホール14の開口寸法よりも大きく、弾性接続片22側の端部においてスルーホール14の開口寸法よりも小さくされている。なお、本実施形態における鍔部20は、内周面26および外周面28が、角部が丸められた略長方形の横断面形状とされているが、スルーホール14のランドに合わせたオーバル形状とする等しても良い。
【0023】
そして、鍔部20の内周縁部において長方形形状の長辺部分から、一対の弾性接続片22がそれぞれ突出形成されている。これら一対の弾性接続片22は互いに同形状とされており、長方形断面を有する板形状とされると共に、その幅寸法:Wは、接続端子18の幅寸法:wよりも僅かに小さくされている。
【0024】
弾性接続片22には鍔部20と接続される基端部30、突出方向の中間部分に位置する中間部32、および突出先端部34が形成されている。これら基端部30、中間部32、突出先端部34は、何れも直線状に延び出されている。
【0025】
そして、基端部30と中間部32の間には、当接部36が形成されている。当接部36は、他方の弾性接続片22に向けて凸となり、中継端子10の内方に突出する湾曲形状とされている。
【0026】
一方、中間部32と突出先端部34の間には、抜止係止部38が形成されている。抜止係止部38は、当接部36とは逆に、他方の弾性接続片22に対して凹となり、中継端子10の外方に突出する湾曲形状とされている。
【0027】
なお、これら一対の弾性接続片22の対向面間距離は、接続端子18の非挿入状態で、基端部30において最大とされていると共に、突出先端部34において最小とされている。これにより、一対の弾性接続片22は、全体として基端部30から突出先端部34に行くに連れて互いに接近する先窄まり形状とされている。そして、一対の弾性接続片22は、スルーホール14に容易に挿通可能とするために、その外周面40の対向面間距離の最大値が、接続端子18の非挿入状態でスルーホール14の長手方向に直交する方向(図3中、左右方向)の寸法よりも小さくなるように設定されている。また、一対の当接部36の対向面間距離の最小値:Dは、接続端子18の厚さ寸法:dよりも小さくなるように設定されている。
【0028】
このような構造とされた中継端子10は、弾性接続片22の突出先端部34からスルーホール14内に挿入される。そして、テーパ形状とされた鍔部20の外周面28がスルーホール14の一方の開口周縁部42に係止されることによって鍔部20が開口周縁部42上に位置されると共に、中継端子10がスルーホール14に装着される。これにより、弾性接続片22が鍔部20の内周縁部からスルーホール14内に延び出されて、当接部36がスルーホール14内に位置される一方、抜止係止部38はスルーホール14の他方の開口周縁部44から突出される。
【0029】
スルーホール14に装着された中継端子10には、接続端子18が挿入される。図5に示すように、接続端子18は、長方形断面を有する平板形状とされており、一方の端部が突出端部46とされる一方、他方の端部が挿入端部48とされる。突出端部46と挿入端部48の間には、全周に亘って軸直角方向に突出する係止鍔部50が一体形成されている。係止鍔部50は、中継端子10の挿入口24の最大寸法よりも小さく、且つ最小寸法よりも大きな寸法をもって形成される。なお、接続端子18の軸方向における係止鍔部50の形成位置は、要求されるプリント基板12からの突出寸法等を考慮して決定される。更に、係止鍔部50から軸方向で挿入端部48側に所定距離だけ離隔した位置には、一対の係合凹部52が形成されている。係合凹部52は、接続端子18の一対の平面54上にそれぞれ形成されており、軸直角方向外方に開口して接続端子18の幅方向の全長に亘って延びる凹溝形状とされている。
【0030】
図6および図7に示すように、接続端子18が、スルーホール14に装着された中継端子10の挿入口24に、挿入端部48側から挿入される。接続端子18は、鍔部20の内周面26がテーパ形状とされていることによって、中継端子10の中央部分に案内される。接続端子18の中継端子10への挿入量は、係止鍔部50がテーパ形状とされた鍔部20の内周面26に係止されることで規定される。
【0031】
接続端子18が弾性接続片22の対向面間に挿入されることによって、一対の基端部30および中間部32はそれぞれ互いに離隔する方向に弾性変形されて、スルーホール14の内周面56に押し付けられる。それと共に、一対の弾性接続片22において内方に突出された当接部36が、それぞれ、弾性接続片22の復元力に基づいて接続端子18の係合凹部52への係合状態で接続端子18の平面54と接触する。これにより、接続端子18は一対の当接部36で挟まれて、中継端子10に支持されると共に、中継端子10を介してスルーホール14に装着される。そして、中継端子10が基端部30および中間部32でスルーホール14と接触すると共に、接続端子18が当接部36で中継端子10と接触される。その結果、接続端子18が中継端子10を介してスルーホール14およびスルーホール14に接続されたプリント配線と電気的に接続されることとなる。このように、本実施形態においては、基端部30および中間部32がスルーホール14との接続部とされている。
【0032】
また、接続端子18の中継端子10への挿入状態において、スルーホール14の他方の開口周縁部44から突出された抜止係止部38は、接続端子18が挿入されることで互いに離隔する方向に拡開される。これにより、一対の抜止係止部38の外周面40の最大離隔距離が、スルーホール14の長手方向に直交する方向の寸法よりも大きくされる。その結果、中継端子10がスルーホール14から抜け出す方向に移動した場合には、抜止係止部38がスルーホール14の開口周縁部44で係止されることによってスルーホール14からの抜けが防止される。
【0033】
これにより、接続端子18が中継端子10を介してプリント基板12に突設される。接続端子18が突設されたプリント基板12は、例えば図示しないアッパケースとロアケースの間に収容されると共に、接続端子18がアッパケースやロアケースに形成されたコネクタ収容部内に突出される。そして、外部回線のコネクタがコネクタ収容部内に嵌め入れられて、コネクタ内端子が接続端子18と接続される。
【0034】
このような中継端子10によれば、半田を用いることなく、特別な冶具や工具を用いることも無しに、接続端子18をスルーホール14に装着することが出来る。従って、煩雑な半田付け工程を不要とすることが出来て、接続端子18のスルーホール14への装着作業をより簡略化、低コスト化することが出来る。また、半田を廃止したことによって、半田クラック等の問題も解消される。
【0035】
そして、中継端子10の一対の弾性接続片22で接続端子18を挟持することによって、半田を用いずとも、接続端子18をスルーホール14に強固に固定することが出来る。特に本実施形態においては、弾性接続片22の当接部36が接続端子18の係合凹部52と係合することによって、接続端子18をより強固に保持出来ると共に、接続端子18の抜けを抑えることも出来る。更に、一対の弾性接続片22が先窄み形状とされていることから、スルーホール14への挿入に際してスルーホール14の内周面26を傷つけるおそれが低減されていると共に、接続端子18が挿入されることによって弾性接続片22が確実に拡開されて、弾性接続片22の復元力に基づく接続端子18の狭持力がより有効に発揮されるようになっている。加えて、突出先端部34は、抜止係止部38の湾曲形状によって接続端子18側に付勢されることで弾性接続片22の先端部でも有効な狭持力が発現され得て、接続端子18をより強固に保持することが可能とされている。
【0036】
さらに、中継端子10は、鍔部20の外周面28がスルーホール14の一方の開口周縁部42に係止される。これにより、スルーホール14のランドに対して鍔部20を確実且つ広範囲で接触させることが出来る。従って、スルーホール14延いてはプリント配線との電気的接続性が安定して確保され得ることから、スルーホール14のランドの小型化を図ることも出来る。特に本実施形態においては、スルーホール14がめっきスルーホールとされており、弾性接続片22の基端部30や中間部32がスルーホール14の内周面56に押し付けられて電気的に接続されることによって、より安定した電気的接続が可能とされている。
【0037】
また、幅広の接続端子18の平面54と弾性接続片22が重ね合わされることから、接続端子18と弾性接続片22の接触代を有効に確保することが出来て、より強固な保持力とより安定的な電気的接続性が得られることに加えて、平面同士の重ね合わせによって接続端子18の中心軸回りのローリングも抑えられて、接続端子18を精度良く位置決めすることが出来る。また、接続端子18の係止鍔部50が中継端子10の挿入口24の内周面26に係止されることによって接続端子18のプリント基板12からの突出量を精度良く設定することが出来る。また、特に本実施形態においては、弾性接続片22の幅寸法が接続端子18の幅寸法よりも僅かに小さくされていることによって、接続端子18の中継端子10への挿入状態を容易に視認することも出来る。
【0038】
なお、中継端子10は、プリント基板12のスルーホール14にそれぞれ独立して装着されても良いが、複数の中継端子10で中継端子ユニット16を構成して、複数のスルーホール14に一括して装着することも可能である。図1および図2に示したように、中継端子ユニット16は、矩形平板形状を有する合成樹脂製の台座60を有している。そして、複数の中継端子10が配列されて鍔部20が台座60にインサート成形されることによって、これら中継端子10が台座60で連結されている。なお、中継端子10の個数および配列間隔は、例えばコネクタの端子数やピッチ等に応じて設定される。また、台座60には中継端子10の個数に対応する貫通孔62が形成されており、この貫通孔62が各中継端子10の鍔部20の挿入口24と連通されている。接続端子18は、貫通孔62を通じて中継端子10内に挿入される。
【0039】
このような中継端子ユニット16を用いれば、複数の中継端子10を同時にスルーホール14に挿入することが出来る。そして、台座60へのインサート成形時に中継端子10の位置決めが為されることから、スルーホール14への挿入時に各中継端子10を位置決めすることも不要とされる。また、各中継端子10間の絶縁を合成樹脂製の台座60で確実に保障することが出来る。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態における中継端子10は、一対の弾性接続片22が鍔部20と一体形成されていたが、これら一対の弾性接続片22の内の一つ或いは両方を鍔部20と別体形成して溶接や接着等により鍔部20に連結する等しても良い。また、前記実施形態における中継端子10の鍔部20はテーパ形状とされていたが、弾性接続片22との接続部分に段差面をもって形成して、この段差面をスルーホール14の一方の開口周縁部42に係止させる等しても良い。また、鍔部20の挿入口24の形状は略長方形形状とされていたが、挿入口24の形状は接続端子18の形状に応じて適宜に変更可能であって、例えば接続端子18として正方形断面を有する端子を用いる場合には正方形形状としたり、接続端子18として円形断面を有する端子を用いる場合には円形状としたりしても良い。
【0041】
また、中継端子の大きさは挿入される接続端子の大きさに応じて適宜に設定可能である。従って、複数の中継端子を纏めて中継端子ユニットを構成する場合には、例えば所定の規格に応じて、互いに大きさの異なる複数の中継端子を纏めて中継端子ユニットを構成する等しても良い。
【0042】
また、前記実施形態における中継端子ユニット16はあくまでも例示であって、台座60に複数の中継端子10を複数列に配列しても良い。また、台座60の具体的形状は四角形状に限定されるものではなく、周囲の電気部品の配設態様やプリント配線等の回路導体の配索態様等を考慮して適宜に設定可能である。従って、例えば1つのコネクタ収容部の中継端子毎に台座で纏めて中継端子ユニットを構成しても良いし、或いは、複数のコネクタ収容部の中継端子を1つの台座に纏めて、1つの中継端子ユニットで複数のコネクタ収容部の中継端子を一度に装着可能としても良い。
【0043】
また、接続端子18における係止鍔部50や係合凹部52は必ずしも必要ではなく、平板形状の接続端子等でも良い。更に、例えば図9に示すように、接続端子18において弾性接続片22からの突出部分に、軸直角方向に広がる係止段差面64を形成して、係止段差面64を弾性接続片22の突出先端部に係止させることによって、中継端子10からの抜け止め構造を形成する等しても良い。
【0044】
更にまた、中継端子10に挿入される接続端子は、コネクタ接続に用いられる基板用端子に限定されるものではない。例えば、リレーやヒューズ等の電気部品の接続端子を中継端子に挿入して固定することによって、これらの電気部品を半田を用いることなくプリント基板上に実装すること等も可能である。
【0045】
更にまた、回路導体としてバスバー回路を用いて、バスバー回路に貫設されたスルーホールに本発明に従う中継端子を装着すると共に、中継端子でバスバーのタブを支持することによって、中継端子を用いてバスバー回路にタブを突設することも可能である。このようにすれば、タブの配設自由度を向上することが出来る。
【符号の説明】
【0046】
10:中継端子、12:プリント基板、14:スルーホール、16:中継端子ユニット、18:接続端子、20:鍔部、22:弾性接続片、30:基端部(接続部)、32:中間部(接続部)、34:突出先端部、36:当接部、38:抜止係止部、42:一方の開口周縁部、44:他方の開口周縁部、56:内周面、60:台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路導体におけるスルーホールに装着されて、前記回路導体に接続端子を装着するのに用いられる中継端子であって、
前記スルーホールの一方の開口周縁部に係止されて該一方の開口周縁部上に位置させられる環状の鍔部と、該鍔部の内周縁部から前記スルーホール内に延び出して該スルーホールの他方の開口部側に突出させられる一対の弾性接続片とが、弾性導電材料で形成されており、前記一対の弾性接続片には、該一対の弾性接続片の対向面間に挿入される接続端子と当接する当接部と、前記接続端子が挿入されることによって互いに離隔方向に弾性変形して前記回路導体の前記スルーホールの内周面に押し付けられる接続部と、前記スルーホールの他方の開口部側への突出部分で拡開されて該他方の開口周縁部に係止される抜止係止部とが、形成されていることを特徴とする中継端子。
【請求項2】
前記一対の弾性接続片の対向面間距離が、基端部において最大とされていると共に、先端部において最小とされており、スルーホールの他方の開口周縁部から突出する部分が先窄まり形状とされている請求項1に記載の中継端子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の中継端子の複数個が配列されて、樹脂製の台座によって連結されている中継端子ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の中継端子が装着されており、該中継端子に接続端子が装着されているプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−3618(P2011−3618A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143686(P2009−143686)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】