説明

丸鋸による直線及び任意曲線切断装置

【課題】 航空機の機体となる炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、金属薄板、石材、アスファルト道路等々を任意形状の高精度製品として容易に直線及び任意曲線切断できる新規な丸鋸による直線及び任意曲線切断装置を提供する。
【解決手段】 工具回転軸2に丸鋸6の中心孔6Aを嵌着させ、上記丸鋸の両面外周縁6B,6Cに一対のコーン体8,9の突外周縁8A,9Aを対接すべく工具回転軸に軸方向に進退可能に押圧させ、上記コーン体の一方を弾発部材10で丸鋸の片側に押圧Fさせ、他方側のコーン体を押圧駆動部材20により可調的に押圧させ、上記押圧駆動部材の押圧力F0の制御によりコーン体が丸鋸を直伸姿勢と弾発部材側への撓み姿勢と押圧駆動部材への撓み姿勢とする丸鋸による直線及び任意曲線切断装置100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸鋸(メタルソー)による直線及び任意曲線切断に係わり、特に、航空機の機体となる炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他合成樹脂板、金属薄板、石材、アスファルト道路等々を直線及び任意曲線切断させる新規な丸鋸による直線及び任意曲線切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、航空機による国際的な物流増大に対応する事と、対地球環境向上を図るための低燃費性の要求が高まり、航空機の機体軽量化と燃費改善が図られている。その具体的方策として、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等の繊維強化プラスチック系複合材製品が軽量で、且つ、高い強度と剛性とを備えているため、航空機等の構造部材(主翼・尾翼・胴体等)として使用されている。上記航空機の構造部材の直線及び任意曲線切断は、専用の直線及び任意曲線切断機や手工具(丸鋸を使用した切断具)や曲刃カッター、ウオータージェット装置により直線及び任意曲線切断されている。
【0003】
上記専用の直線及び任意曲線切断機の一例に、薄板切断加工機が提供されている。その構成は、保持部材をワークテーブルに対し任意な三次元方向へ相対移動可能に設けると共に、この保持部材の先端部には、超硬材料よりなる断面V字状刃先部をもつ回転刃を装着する。この回転刃をモータで高速回転駆動しながら、保持部材を所定の高さまで下降させて旋回しつつX軸,Y軸方向に適宜動かすことで、ワークテーブル上の薄い素材を切断するものである。これにより、小径の円盤状の回転刃を板材に対して相対的に旋回しつつ、X,Y軸方向へ移動して板材の切断を行なうので、例えば従来のレーザ加工機のごとく、板材から適宜形状の製品を容易に切り抜くことかできるとしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記曲刃カッターは、平円形カッター(丸鋸を含む)を改良したもので、その構成は、円形の中心部に回転軸への取付け孔を有し、該円形の外周に植刃部材又は鋸歯部材を付備する金属製皿状の円形カッターであって、この外周周辺は、円錐状の皿鍔部材で形成し、該皿鍔部材の円錐状の全周面に数条の切り込み溝が、該円錐放射状に等間隔で配備し、更に該皿鍔部材の外周縁に付備する植刃部材又は鋸歯部材も、該切り込み溝を跨いで等間隔で、各々が該円錐状に周配列をなし、且つ該植刃部材又は鋸歯部材の円錐形状の内外両側面が該円錐円弧形状の切削刃を形成したものである。これにより、先ず、回転切削する切断刃は、絶えず、平板ワーク材の表面に対して垂立状態を保持することができ、同時に切削切断刃の刃先巾に対して、回転切削切断中は、該回転刃物の両側面に、絶えず一定のクリアランスを保持することができる。次に、平板ワーク材の要切断円形の大小の円弧に、合理的に合致する回転切削曲刃物として、回転切削切断中にコジリ、軋み等の無理な負荷の掛らないものである(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 実開平05−029625号公報
【特許文献2】 実公平06−036881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記薄板切断加工機は、小径の円盤状の回転刃を板材に対して相対的に旋回しつつ、X,Y軸方向へ移動して板材の切断を行なうので、板材から適宜形状の製品を容易に切り抜くことができるとするものの、回転刃が断面V字状刃先部を有するものであるから、板材の切断面がV字状の斜め形状を呈し、この切断面を垂直面とする修正加工をしなければならないという問題が解決されていない。
【0007】
また、上記曲刃カッターは、平板ワーク材の要切断円形の大小の円弧に、合理的に合致する回転切削曲刃物として、回転切削切断中にコジリ、軋み等の無理な負荷の掛らないとするものの、曲刃カッターの円錐内角度が一定・固定されたものであるから、この円錐内角度に拘束された直線及び所定曲線加工に限定される。これが為に、加工直線及び任意曲線で左右に湾曲変化するものや曲率半径が任意に連続的に変化する直線及び任意曲線加工は、不可能であるという問題点が残存している。即ち、航空機等の構造部材(主翼・尾翼・胴体等)のように、大物ワークで精密な直線及び任意曲線加工を要求される直線及び任意曲線加工には適用できない。
【0008】
上記の他、航空機等の構造部材(主翼・尾翼・胴体等)の加工を損ねる大きな問題点が存在しており、これらの問題を早急に解決した直線及び任意曲線切断用メタルソーとその直線及び任意曲線切断装置の開発・実用化が求められている。更に、その他の合成樹脂板、金属薄板、石材、アスファルト道路等々においては、直線切断を基本技術とし切断後に直線及び任意曲線切断面とすべく、贅肉の切削・ハツリ作業・やすり作業等の工具による直線及び任意曲線切断加工を余儀なくされている。
【0009】
本発明は、航空機の機体となる炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他合成樹脂板、金属薄板、石材、アスファルト道路等々を直線及び任意曲線切断させられる新規な丸鋸による直線及び任意曲線切断装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置は、主軸に着脱可能に繋がれる工具回転軸と、上記工具回転軸に嵌着されるフランジの外周に1枚の円板をその外周に加工用の刃先チップを備え左右方向に撓み可能な丸鋸と、上記丸鋸の円板の外周縁両面に突外周縁を対接して押圧すべく工具回転軸に軸方向に進退可能とした一対のコーン体と、上記一対のコーン体の一方を丸鋸の外周縁両面の片側に押圧させる弾発部材と、他方側のコーン体を可調的に押圧させる押圧駆動部材と、上記弾発部材の押圧力に対抗する押圧駆動部材の押圧力制御により一対のコーン体が丸鋸の円板を直伸姿勢と弾発部材側への撓み姿勢と押圧駆動部材側への撓み姿勢とするアンブレラ機構とを、備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置は、主軸に着脱可能に繋がれる工具回転軸と、上記工具回転軸に嵌着されるフランジの外周に複数枚の扇状板をその外周に加工用の刃先チップを備え左右方向に揺動可能な両隣隙間を設けて枢支された丸鋸と、上記丸鋸の複数枚の扇状板となる外周縁両面に突外周縁を対接して押圧すべく工具回転軸に軸方向に進退可能とした一対のコーン体と、上記一対のコーン体の一方を丸鋸の外周縁両面の片側に押圧させる弾発部材と、他方側のコーン体を可調的に押圧させる押圧駆動部材と、上記弾発部材の押圧力に対抗する押圧駆動部材の押圧力制御により一対のコーン体が丸鋸の複数枚の扇状板を直伸姿勢と弾発部材側への撓み姿勢と押圧駆動部材側への撓み姿勢とするアンブレラ機構とを、備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3による丸鋸による直線及び任意曲線切断装置は、請求項1または2記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置において、上記丸鋸は、1枚の円板または複数枚の扇状板を撓み可能なバネ鋼としたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4による丸鋸による直線及び任意曲線切断装置は、請求項1または2記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置において、上記丸鋸は、1枚の円板または複数枚の扇状板を撓み可能な樹脂材としたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5による丸鋸による直線及び任意曲線切断装置は、請求項1または2記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置において、上記押圧駆動部材は、進退動する押体の先端に設けたローラーを丸鋸と一体回転するコーン体に転がり押圧させた構成とすることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置は、請求項1記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装において、上記丸鋸の1枚の円板の外周縁両面に、外部から供給される潤滑冷却液又は気体を自己圧と遠心力で外縁周に放射状噴出し、加工点を直接潤滑冷却することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置は、請求項2記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装において、上記丸鋸の複数枚の扇状板の両隣隙間に、外部から供給される潤滑冷却液又は気体を自己圧と遠心力で外縁周に放射状噴出し、加工点を直接潤滑冷却することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項1と2による丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の作用は、上記丸鋸をこの回転軸芯方向となる左右側面への弾発部材と押圧駆動部材との押動力のバランスの変化となる外力により同転軸芯の左右方向へ撓み制御を可能としたから、丸鋸がこの左右側面に対して均等にバランスした直伸状態にある時は、炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他の合成樹脂板、金属薄板、石材、アスファルト道路等々の板材・素材に対して、丸鋸の直線切断が可能となる。また、丸鋸がこの左側面に対して湾曲した撓み姿勢にある時は、板材・素材に対する丸鋸の断面形状に倣った左側面方向への直線及び任意曲線切断が可能となる。そして、丸鋸がこの右側面に対して湾曲した撓み姿勢にある時は、板材・素材に対する丸鋸の断面形状に倣った右側面方向への直線及び任意曲線切断が可能となる。
【0018】
本発明の請求項3と4による丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の作用は、上記丸鋸は、撓み可能なバネ鋼又は樹脂材であるから、丸鋸の左右側面への撓み量や直伸性に優れているので、板材・素材に対する丸鋸による左右方向の任意な直線及び任意曲線切断や直線切断が正確に行われる。
【0019】
本発明の請求項5による丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の作用は、押圧駆動部材は、進退動する押体の先端に設けたローラーを丸鋸と一体回転するコーン体の側面に転がり押圧させているから、押圧駆動部材のローラーが丸鋸と一体回転するコーン体の側面に低抵抗(低摩擦)で転がりながら押圧回転して丸鋸を変形制御させられる。
【0020】
本発明の請求項6と7による丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の作用は、上記丸鋸に対して、外部から供給される潤滑冷却液又は気体を自己圧と遠心力で外縁周に放射状噴出し加工点を直接潤滑冷却するから、ワーク材に対する切断抵抗・切断摩擦が低減しチップの発熱や摩耗を抑えた円滑な切断作用が維持される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置によると、丸鋸をこの回転軸芯方向となる左右側面への外力により回転軸芯方向へ撓み可能としたから、丸鋸がこの左右側面に対して均等にバランスした直伸状態では、丸鋸の直線切断ができる。丸鋸がこの左側面に対して湾曲した撓み姿勢では、板材・素材に対する丸鋸の断面形状に倣った左側面方向への直線及び任意曲線切断ができる。そして、丸鋸がこの右側面に対して湾曲した撓み姿勢では、板材・素材に対する丸鋸の断面形状に倣った右側面方向への直線及び任意曲線切断が正確にできる。
【0022】
上記丸鋸は、撓み可能なバネ鋼又は樹脂材としたから、丸鋸の左右側面への撓み量や直伸性に優れ、板材に対する丸鋸による左右方向の任意な直線及び任意曲線切断や直線切断がより一層正確にできる。
【0023】
上記押圧駆動部材は、進退動する押体の先端に設けた低抵抗に転がるローラーを丸鋸と一体回転するコーン体の側面に押圧させたから、押圧駆動部材のローラーが丸鋸と一体回転するコーン体の側面に低抵抗(低摩擦)で転がりながら押圧回転して丸鋸を変形制御でき、この部分の発熱摩耗を飛躍的に低減できる。
【0024】
上記丸鋸に対して、外部から供給される潤滑冷却液又は気体を自己圧と遠心力で外縁周に放射状噴出し加工点を直接潤滑冷却するから、ワーク材に対する切断抵抗・切断摩擦が低減でき、チップの発熱や摩耗を抑えた円滑な切断作用が維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示し、丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の断面図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態を示し、丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の作用図である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態を示し、丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の作用図である。
【図4】 本発明の第1の実施の形態を示し、板材・素材の直線及び任意曲線切断の作用図である。
【図5】 本発明の第2の実施の形態を示し、丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の断面図である。
【図6】 本発明の第2の実施の形態を示し、丸鋸による直線及び任意曲線切断装置の作用図である。
【図7】 本発明の第1の実施の形態の丸鋸に噴射用ノズルを配置した直線及び任意曲線切断装置の断面図である。
【図8】 本発明の第2の実施の形態の丸鋸に噴射用ノズルを配置した直線及び任意曲線切断装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1乃至図8を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0027】
本発明の第1の実施の形態は、図1〜図3に示す丸鋸による直線及び任意曲線切断装置100である。工作機械の主軸1にテーパー部2Aで繋がれる工具回転軸2は、コ型形状の枠体5の左右片枠5A,5Bに軸受B1,B2で回転自在に支持されている。上記工具回転軸2に丸鋸6を嵌め、このフランジとなる中心孔6Aを嵌着させている。上記丸鋸6の両面外周縁6B,6Cに一対のコーン体8,9がその突外周縁8A,9Aを対接させ、工具回転軸2に一体回転するように嵌められている。上記丸鋸は、撓み可能なバネ鋼、または、撓み可能な樹脂材である。そして、一対のコーン体8,9を両側から軸方向に進退可能に丸鋸6の両面外周縁6B,6Cに押圧させている。
【0028】
その構成は、上記一対のコーン体8,9の一方のコーン体8の背面中心部をコイル状の弾発部材10で丸鋸6の両面外周縁における片側6Bと片枠5Aとの間の工具回転軸2に縮入して押圧させるとともに、他方側のコーン体9を押圧駆動部材20により可調的に押圧させている。上記押圧駆動部材20は、外周縁6Cと片枠5Bとの間の工具回転軸2に嵌合させた押板21と、この押板21を油圧叉は空圧叉は電動(モータによりネジ棒を回転)で駆動される進退駆動部(図示はピストン22とシリンダ23からなる)24に繋がれている。即ち、ピストン22の先端に付設したローラーRが押板21の外周縁面21Aに押圧されていて、工具回転軸2の回転に伴って一体回転する押板21の外周縁面21A上を転動する。上記ローラーRは、ピストン22の先端に架絡させたピン22Aに対して低抵抗、即ち、摩擦抵抗(低トルクで回転可能)の元に回転自在に支持されている。しかして、高速回転する丸鋸6・コーン体9と押板21の外周縁面21Aに対してローラーRが低抵抗即ち摩擦抵抗(低トルクで回転可能)の元に回転可能に構成されている。なお、丸鋸6、一対のコーン体8,9、弾発部材10も工具回転軸2と一体回転する。
【0029】
しかして、丸鋸6と一対のコーン体8,9間には、弾発部材10及びコーン体9と押圧駆動部材20とからなるアンブレラ機構AKを構成し、上記進退駆動部24において、ピストン22の進退動により、押板21を工具回転軸2上でコーン体9を弾発部材10の弾発力Fに対抗する押圧力F0で図2と図3に示すように進退させる。即ち、図1は、上記押圧駆動部材の押圧力F0の制御により弾発力F=押圧力F0の状態を示し、一対のコーン体8,9が丸鋸6及び外周刃部(加工用の刃先チップ)6Dを直伸姿勢とする。また、図2は弾発力F>押圧力F0の状態を示し、一対のコーン体が丸鋸を右側撓み姿勢に規制される。また、図3は、弾発力F<押圧力F0の状態を示し、一対のコーン体が丸鋸を左側撓み姿勢に規制される。
【0030】
本発明の第1の実施の形態となる丸鋸による直線及び任意曲線切断装置100は、上記構成からなり、図4のように作用する。先ず、丸鋸6とコーン体8,9間には、アンブレラ機構AKを備えており、上記進退駆動部24において、上記押圧駆動部材20の押圧力F0の制御により弾発力F=押圧力F0の状態とすると、一対のコーン体が丸鋸を直伸姿勢とし、板材Pに対して丸鋸6は直線切断(直線加工)aを行なう。また、上記進退駆動部24において、上記押圧駆動部材20の押圧力F0の制御により弾発力弾発力F押圧力>F0の状態とすると、一対のコーン体が丸鋸を右側撓み姿勢とし、板材Pに対して丸鋸6は右直線及び任意曲線切断(右直線及び任意曲線加工)bを行なう。また、上記進退駆動部24において、上記押圧駆動部材20の押圧力F0の制御により弾発力弾発力F<押圧力F0の状態とすると、一対のコーン体が丸鋸を左側撓み姿勢とし、板材Pに対して丸鋸6は左直線及び任意曲線切断(左直線及び任意曲線加工)cを行なう。
【0031】
更に、上記丸鋸6は、撓み可能なバネ鋼又は樹脂材としたから、丸鋸の左右側面への撓み量や直伸性に優れているので、板材Pに対する丸鋸6による左右方向の任意な直線及び任意曲線切断b,cや直線切断aが正確に行われる。また、押圧駆動部材20は、進退動するピストン22の先端に設けたローラーRを丸鋸6と一体回転するコーン体9の側面を押す押板21を押圧させているから、押圧駆動部材のローラーが丸鋸と一体回転するコーン体9を押す押板21の側面に低抵抗(低摩擦)で転がりながら押圧回転して丸鋸を変形制御させられる。
【0032】
本発明の第1の実施形態となる丸鋸による直線及び任意曲線切断装置100によれば、下記の効果が奏せられる。
本発明の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置100によると、丸鋸6をこの回転軸芯方向となる左右側面への外力により回転軸芯方向へ撓み可能としたから、丸鋸がこの左右側面に対して均等にバランスした直伸状態では、丸鋸6が直線切断できる。丸鋸がこの左側面に対して湾曲した撓み姿勢では、板材・素材Pに対する丸鋸の断面形状に倣った左側面方向への直線及び任意曲線切断ができる。また、丸鋸がこの右側面に対して湾曲した撓み姿勢では、板材・素材に対する丸鋸の断面形状に倣った右側面方向への直線及び任意曲線切断ができる。
【0033】
上記丸鋸6は、撓み可能なバネ鋼又は樹脂材としたから、丸鋸の左右側面への撓み量や直伸性に優れ、板材に対する丸鋸による左右方向の任意な任意曲線切断b,cや直線切断aがより一層正確にできる。
【0034】
上記押圧駆動部材20は、進退動するピストン22の先端に設けた低抵抗に転がるローラーRを丸鋸6と一体回転するコーン体9の側面を押す押板21を押圧させたから、押圧駆動部材のローラーが丸鋸と一体回転するコーン体の側面を押す押板21に低抵抗(低摩擦)で転がり押圧回転して丸鋸を変形制御でき、この部分の発熱摩耗を飛躍的に低減できる。
【0035】
本発明の丸鋸6による直線及び任意曲線切断装置100は、上記実施の形態における構成に限定されず、その発明の要旨内での設計変更が自由にできる。図5に示すように、本発明の第2の実施の形態の丸鋸60による直線及び任意曲線切断装置200を示す。その構成は、主軸1に着脱可能に繋がれる工具回転軸2と、上記工具回転軸に嵌着されるフランジ60Aの外周に複数枚の扇状板60B・・・をその外周に加工用の刃先チップCPを備え左右方向に揺動可能な両隣隙間Xを設けてヒンジHで枢支された丸鋸60とを主体とする。上記丸鋸60の複数枚の扇状板扇状板60Bとなる外周縁両面60C,60Dを姿勢制御するには、一対のコーン体8,9の突外周縁8A,9Aを対接すべく工具回転軸2に軸方向に進退可能に押圧させ、上記一対のコーン体の一方の突外周縁8Aを弾発部材10で丸鋸60の外周縁両面の片側60Cに押圧力Fで押圧させるとともに、他方側のコーン体9を押圧駆動部材20により外周縁両面の片側60Dに上記第1の実施例と同様の構成で造られる押圧力F0により可調的に押圧する。即ち、上記押圧駆動部材による押圧力F0の制御により一対のコーン体8,9が丸鋸60の複数枚の扇状板60Bを直伸姿勢(F=F0)と弾発部材側への撓み姿勢(F<F0)と押圧駆動部材側への撓み姿勢(F>F0)とするアンブレラ機構AKを備えたものである。その他の構成は、同一符号を附して説明を省略する。
【0036】
上記丸鋸60による直線及び任意曲線切断装置200の作用は、図6に示すように、上記丸鋸60をこの回転軸芯方向となる左右側面への弾発部材10と押圧駆動部材20との押動力のバランスの変化となる外力により回転軸芯の左右方向へ撓み制御を可能としたから、丸鋸がこの左右側面に対して均等にバランスした直伸状態(F=F0)にある時は、炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他の合成樹脂板、金属薄板、石材、アスファルト道路等々の板材・素材Pに対して、丸鋸60の直線切断aが可能となる。また、丸鋸60がこの左側面に対して湾曲した撓み姿勢(F<F0)にある時は、板材・素材Pに対する丸鋸60の断面形状に倣った左側面方向への直線及び任意曲線切断cが可能となる。そして、丸鋸がこの右側面に対して湾曲した撓み姿勢(F>F0)にある時は、板材・素材Pに対する丸鋸の断面形状に倣った右側面方向への直線及び任意曲線切断bは可能となる。
【0037】
本発明の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置200によると、丸鋸60をこの回転軸芯方向となる左右側面への外力により回転軸芯方向へ複数枚の扇状板扇状板60Bとなる外周縁両面60C,60Dを左右へ撓み可能としたから、丸鋸がこの左右側面に対して均等にバランスした直伸状態では、丸鋸の直線切断aできる。丸鋸がこの左側面に対して湾曲した撓み姿勢では、板材・素材Pに対する丸鋸の断面形状に倣った左側面方向への直線及び任意曲線切断cができる。また、丸鋸がこの右側面に対して湾曲した撓み姿勢では、板材・素材に対する丸鋸の断面形状に倣った右側面方向への直線及び任意曲線切断bができる。また、丸鋸は、フランジ60Aと複数枚の扇状板扇状板60Bとなる外周縁両面60C,60Dとその外周に加工刃先チップCを備え左右方向に揺動可能な両隣隙間Xを設けてヒンジHで枢支されているから、大きく湾曲した撓み姿勢となり、曲率半径の小さな大きくカーブした直線及び任意曲線切断が得意とする。
【0038】
その他の作用効果は、上記第1の実施形態となる丸鋸による直線及び任意曲線切断装置100と同一のものが発揮される。
【0039】
上記丸鋸による直線及び任意曲線切断装置100において、図7に示すように、丸鋸6の1枚の円板の外周縁両面6B,6Cに、外部に設置したノズルNから供給される潤滑冷却液E又は気体Kを加工点K0に直接潤滑冷却する。叉は、工具回転軸2内を貫く通孔hからフランジとなる中心孔6Aから突出するノズルN1から自己圧と遠心力で外周縁両面6B,6Cに潤滑冷却液E又は気体Kを放射状に噴出し、加工点K0を直接潤滑冷却する。
【0040】
また、上記丸鋸による直線及び任意曲線切断装置200において、図8に示すように、丸鋸60の複数枚の扇状板60Bの両隣隙間Xに、外部に設置したノズルNから供給される潤滑冷却液E又は気体Kを加工点K0に直接潤滑冷却する。叉は、工具回転軸2内を貫く通孔hからフランジとなる中心孔6Aから突出するノズルN1から自己圧と遠心力で外周縁両面6B,6Cに潤滑冷却液E又は気体Kを放射状に噴出し、加工点K0を直接潤滑冷却する。
【0041】
しかして、上記丸鋸6,60に対して、外部から加工点K0に潤滑冷却液E又は気体Kを供給して直接潤滑冷却するか。叉は、潤滑冷却液E又は気体Kを自己圧と遠心力で外縁周に放射状噴出し加工点K0を直接潤滑冷却するから、ワーク材Pに対する切断抵抗・切断摩擦が低減でき、加工用の刃先チップの発熱や摩耗を抑えた円滑な切断作用が維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、その対象物を航空機の機体となる炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他合成樹脂板、金属薄板、石材、アスファルト道路等々の被加工物を対象とした実施例で説明したものであるが、様々な製品装置における板状・素材の被加工物を対象としての適用が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 主軸
2 工具回転軸
2A テーパー部
5 枠体
5A,5B 左右片枠
6 丸鋸
6A 中心孔(フランジ)
6B,6C 両面外周縁
6D 外周刃部
8,9 コーン体
8A,9A 突外周縁
10 弾発部材
20 押圧駆動部材
21 押板
21A 外周縁面
24 進退駆動部
22 ピストン
23 シリンダ
60 丸鋸
60A フランジ
60B 扇状板
60C,60D 外周縁両面
60D 外周刃部
a 直線切断
b 右への任意曲線切断
c 左への任意曲線切断
AK アンブレラ機構
B1,B2 軸受
CP 加工刃先チップ
F0 押圧力
F 弾発力
E 潤滑冷却液
K 気体
K0 加工点
N ノズル
N1 ノズル
H ヒンジ
h 通孔
R ローラー
100 丸鋸による直線及び任意曲線切断装置
200 丸鋸による直線及び任意曲線切断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に着脱可能に繋がれる工具回転軸と、上記工具回転軸に嵌着されるフランジの外周に1枚の円板をその外周に加工用の刃先チップを備え左右方向に撓み可能な丸鋸と、上記丸鋸の円板の外周縁両面に突外周縁を対接して押圧すべく工具回転軸に軸方向に進退可能とした一対のコーン体と、上記一対のコーン体の一方を丸鋸の外周縁両面の片側に押圧させる弾発部材と、他方側のコーン体を可調的に押圧させる押圧駆動部材と、上記弾発部材の押圧力に対抗する押圧駆動部材の押圧力制御により一対のコーン体が丸鋸の円板を直伸姿勢と弾発部材側への撓み姿勢と押圧駆動部材側への撓み姿勢とするアンブレラ機構とを、備えたことを特徴とする丸鋸による直線及び任意曲線切断装置。
【請求項2】
主軸に着脱可能に繋がれる工具回転軸と、上記工具回転軸に嵌着されるフランジの外周に複数枚の扇状板をその外周に加工用の刃先チップを備え左右方向に揺動可能な両隣隙間を設けて枢支された丸鋸と、上記丸鋸の複数枚の扇状板となる外周縁両面に突外周縁を対接して押圧すべく工具回転軸に軸方向に進退可能とした一対のコーン体と、上記一対のコーン体の一方を丸鋸の外周縁両面の片側に押圧させる弾発部材と、他方側のコーン体を可調的に押圧させる押圧駆動部材と、上記弾発部材の押圧力に対抗する押圧駆動部材の押圧力制御により一対のコーン体が丸鋸の複数枚の扇状板を直伸姿勢と弾発部材側への撓み姿勢と押圧駆動部材側への撓み姿勢とするアンブレラ機構とを、備えたことを特徴とする丸鋸による直線及び任意曲線切断装置。
【請求項3】
上記丸鋸は、1枚の円板または複数枚の扇状板を撓み可能なバネ鋼としたことを特徴とする請求項1または2記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置。
【請求項4】
上記丸鋸は、1枚の円板または複数枚の扇状板を撓み可能な樹脂材としたことを特徴とする請求項1または2記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置。
【請求項5】
上記押圧駆動部材は、進退動する押体の先端に設けたローラーを丸鋸と一体回転するコーン体に転がり押圧させた構成とすることを特徴とする請求項1または2記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置。
【請求項6】
上記丸鋸の1枚の円板の外周縁両面に、外部から供給される潤滑冷却液又は気体を自己圧と遠心力で外縁周に放射状噴出し、加工点を直接潤滑冷却することを特徴とする請求項1記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置。
【請求項7】
上記丸鋸の複数枚の扇状板の両隣隙間に、外部から供給される潤滑冷却液又は気体を自己圧と遠心力で外縁周に放射状噴出し、加工点を直接潤滑冷却することを特徴とする請求項2記載の丸鋸による直線及び任意曲線切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−240473(P2011−240473A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127280(P2010−127280)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(509153364)
【Fターム(参考)】