説明

乗員検知用検知線付き面状発熱体

【課題】乗員の着座や荷物を置く等の様々なストレスにより基材にしわが発生することがあっても、より安全性の高い乗員検知用検知線付き面状発熱体を提供する。
【解決手段】基材1の同一面上に、ヒータ線2と検知線3を上糸4と下糸5により縫製し、縫製の間隔をヒータ線と検知線間ピッチよりも狭くしたため、線の飛び出しによる線同士の交差・接触を防ぐことで、より安全な乗員検知用検知線付き面状発熱体を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、自動車、電車などの座席に用いられる乗員検知用検知線付き面状発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の面状発熱体は、基材と、ヒータ線とから構成されているものであり、自動車、航空機、電車などの座席に配設され、発熱することにより寒い季節にでも使用者が快適に着座することができるようになっていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の検知線(検知コイル)を有する乗員(物体)検知装置もあった(例えば特許文献2参照)。この従来技術では、座席に配設された検知線(検知コイル)に高周波信号を供給し、座席の状態に応じた反射波信号を取り込んで乗員を検知することができるように構成されているものであり、乗員がいない際の不必要な装置の自動的な電源OFFや乗員がいる際の必要な装置の自動的な電源ONを可能にすることができるようになっている。
【0004】
さらに上記ヒータ線と検知線とを組み合わせて、図6に示すように、基材1の同一面上にヒータ線2と検知線3とを平行に配設することで、より効率的に乗員検知を行える面状発熱体も開発されている。
【0005】
図7は図6のA部の詳細図である。ヒータ線2と検知線3の配設方法として上糸4と下糸5による縫製が主流であり、上糸4はヒータ線2あるいは検知線3をほぼ全周にわたって包み込み、裏側で下糸5と絡み基材1に縫製されている。
【特許文献1】特許第2621437号公報
【特許文献2】特開2000−46955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、乗員の着座や荷物を置く等の様々なストレスにより、基材にしわが発生することで、縫製個所と次の縫製個所との間で線の飛び出しが発生しやすくなり、平行に配設しているヒータ線あるいは検知線との交差あるいは接触が発生する場合があった。
【0007】
その際、各線の被覆に破れ、傷等の異常があった場合にはショートすることとなり、検知線の信号が異常となり正確な乗員検知ができなくなるばかりか、ヒータ線へ流れている大電流が検知線へ流れてしまうことも考えられ、乗員検知している制御回路等の破壊を招くおそれもあるという課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、より安全性の高い乗員検知用検知線付き面状発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明に係る乗員検知用検知線付き面状発熱体は、基材とヒータ線と乗員検知用検知線とを備え、基材の同一面上にヒータ線と検知線を上糸と下糸により縫製し、縫製の間隔をヒータ線と検知線間ピッチよりも狭くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乗員検知用検知線付き面状発熱体は、ヒータ線と検知線の縫製間隔をヒータ線と検知線間ピッチよりも狭くしたことにより、線の飛び出しによる線同士の交差・接触を防ぐことで、より安全性の高い乗員検知用検知線付き面状発熱体を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、基材とヒータ線と乗員検知用検知線とを備え、基材の同一面上にヒータ線と検知線を上糸と下糸により縫製し、縫製の間隔をヒータ線と検知線間ピッチよりも狭くしたものであり、線の飛び出しによる線同士の交差・接触を防ぐことで、より安全な乗員検知用検知線付き面状発熱体を提供できる。また、本発明の乗員検知用検知線付き面状発熱体を装着した乗り物用座席により、より安全な乗員検知を行うことができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態を図1、図2、図3、図4、図5を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態における乗員検知用検知線付き面状発熱体の外観図である。図中、基材1は、柔軟性のある面状のもの、例えばポリエステル製の不織布である。この基材1の表面上に、ヒータ線2と検知線3が配設されている。
【0015】
図2は図1のA部詳細図である。ヒータ線2あるいは検知線3は基材1の表面に上糸4と下糸5により縫製されて配設されている。ここで上糸4はヒータ線2あるいは検知線3をほぼ全周にわたって包み込み、裏側で下糸5と絡み基材1に縫製されている。
【0016】
また、縫製間隔a(縫製ポイントAと縫製ポイントBとの間隔)がヒータ線2と検知線3とのピッチbよりも狭くしている(a<b)ことを特徴とする。
【0017】
上記特徴の説明を以下に示す。
【0018】
座席への乗員乗降や荷物の積み下ろしにより、基材1にしわが発生するおそれがあり、例えば、図2の縫製ポイントAと縫製ポイントCの距離が縮まった場合を想定すると、図3のイメージ図に示すようにヒータ線2あるいは検知線3が縫製ポイントAと縫製ポイントCを基点にして飛び出すこととなる。
【0019】
この場合、縫製ポイントAから縫製ポイントCまでのヒータ線2あるいは検知線3の長さ分が飛び出すこととなるため、飛び出し距離としては最大で縫製ポイントAから縫製ポイントBまでの距離(a)となる。
【0020】
そのため、本発明では縫製間隔aをヒータ線2と検知線3とのピッチbよりも狭く(a<b)することで、基材1にしわが発生し、ヒータ線2あるいは検知線3の飛び出しが発生しても、平行配設している各線との交差あるいは接触が発生しないこととなる。
【0021】
なお、図2はヒータ線2及び検知線3の縫製ポイントがお互いに同じ方向で実施している場合の図であるが、図4に示すようにヒータ線2及び検知線3とで縫製ポイントの左右位置が逆転している場合も想定される。
【0022】
このとき、基材1にしわが入り、縫製ポイントAと縫製ポイントCとの距離が縮まった場合には、図5のイメージ図に示すように、ヒータ線2は縫製ポイントAと縫製ポイント
Cを基点にして右側に飛び出し、一方検知線3は縫製ポイントDと縫製ポイントFを基点にして左側に飛び出すこととなる。 このような場合には、縫製間隔(a)をヒータ線2と検知線3とのピッチ(b)の半分より狭くすることが望ましい。(a<b/2)
さらに、ヒータ線2あるいは検知線3を所定の距離で屈曲させ、そこで縫製することで、線の飛び出しを抑制することができる。
【0023】
また、基材1を柔軟性のある面状のもの、例えばポリエステル製の不織布で構成しているため、座席に組み込まれた状態で、そこに乗員が着座しても座り心地に違和感がなく、快適である。
【0024】
なお、ヒータ線2は面状発熱体としての制御回路(図示せず)に接続され、検知線3は乗員検知装置としての制御回路(図示せず)に接続され、各々適切に制御されるように構成する。
【0025】
また、検知線3は、この検知線3に高周波信号を供給し、座席の状態に応じた反射波信号を取り込んで乗員を検知することができる乗員検知装置の検知コイルとして使用してもよいし、静電容量の変化によって乗員を検知することができる乗員検知装置のアンテナとして使用してもよく、様々な乗員検知装置の検知線3として使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかる乗員検知用検知線付き面状発熱体は、自動車、航空機、電車などの座席に配設され、発熱することにより寒い季節にでも使用者が快適に着座することが可能である上、正確な乗員検知が可能であるため、乗員がいない際の不必要な装置の自動的な電源OFFや、乗員がいる際の必要な装置の自動的な電源ONを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態における乗員検知用検知線付き面状発熱体の外観図
【図2】図1におけるA部の詳細図
【図3】しわ発生時のイメージ図
【図4】縫製ポイントが逆転している場合の線の詳細図
【図5】図4のしわ発生時のイメージ図
【図6】従来の乗員検知用検知線付き面状発熱体の外観図
【図7】図6におけるA部の詳細図
【符号の説明】
【0028】
1 基材
2 ヒータ線
3 検知線
4 上糸
5 下糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とヒータ線と乗員検知用検知線とを備え、基材の同一面上にヒータ線と検知線を上糸と下糸により縫製し、縫製の間隔をヒータ線と検知線間ピッチよりも狭くしたことを特徴とする乗員検知用検知線付き面状発熱体。
【請求項2】
請求項1に記載の乗員検知用検知線付き面状発熱体を装着した乗り物用座席。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−73530(P2010−73530A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240489(P2008−240489)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】