説明

乗客コンベア

【課題】本発明は、部品数を低減して挟域な空間への弛み検出手段の設置設計及び設置作業を容易にできる可逆運転対応の乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】本発明は、移動手摺5を挟圧する駆動ローラ11A〜11Cに入る側と出る側に位置する駆動チェーン19の夫々接触する摺動子22A,22Bを共通の弾性体(25)で押圧すると共に、これら摺動子22A,22Bの変位量を検出して駆動チェーン19の弛みを検出するチェーン弛み検出手段(27A,27B)を設けたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜区間で乗客搭載面に段差が生じるエスカレーターや乗客搭載面に段差が生じない電動道路を含む乗客コンベアに係り、特に、移動手摺駆動系の信頼性を高めた乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗客コンベアの移動手摺駆動系は、乗客搭載面を駆動するための駆動装置から得た動力によって駆動チェーンを介して移動手摺を挟圧する駆動ローラを駆動するように構成されている。そして、移動手摺駆動系の信頼性を高めるために、駆動チェーンの伸びや切断をいち早く検出するために、特許文献1に示すように、駆動チェーンのチェーン弛み吸収手段とチェーン弛み検出手段を設けることが既に提案されている。
【0003】
上記特許文献1に記載のチェーン弛み吸収及び検出手段は、駆動チェーンのうち、駆動張力が作用しない側に摺動子を弾性的に押付け、これにより駆動チェーンが伸びて弛んだ場合、その弛みを吸収して除去し、さらに駆動チェーンが所定寸法以上伸びて弛んだ場合、前記摺動子の変位を検出してチェーンの交換時期を報知するものである。
【0004】
【特許文献1】特開平3−102093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のチェーン弛み吸収及び検出手段は、摺動子を駆動チェーンの駆動張力が作用しない側に弾性的に押付けて弛みを除去すると共に弛みによる摺動子の変位量を検出するものであるために、乗客コンベアが上昇運転と下降運転の可逆運転を行うものである場合には、運転方向に応じて変わる駆動チェーンの駆動張力無作用側に対応して夫々同じ機構のチェーン弛み吸収及び検出手段を設置する必要がある。
【0006】
しかしながら、2組のチェーン弛み吸収及び検出手段を設置することは、2組の摺動子、摺動子の変位量を検出する2組の検出器のほかに、摺動子を押圧する2組の弾性体を設けなければならず、その結果、乗客コンベアの挟域な空間への弛み吸収及び検出手段の設置設計が困難になると共に、設置作業が厄介になる問題がある。
【0007】
本発明の目的は部品数を低減して挟域な空間への弛み吸収及び検出手段の設置設計及び設置作業を容易にできる可逆運転対応の乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、駆動チェーンの移動手摺を挟圧する駆動ローラに入る側と出る側に夫々摺動子を接触させて共通の弾性体で押圧するチェーン弛み吸収手段を構成すると共に、これら摺動子の変位量を検出して駆動チェーンの緩みを検出するチェーン弛み検出手段を設けたのである。
【0009】
このように、駆動ローラに入る側と出る側に位置する駆動チェーンの夫々に摺動子を押圧接触させることで、上昇運転と下降運転の可逆運転を行う乗客コンベアに対して駆動チェーンの伸びを吸収して弛みを除去することができる。そして、駆動チェーンの駆動ローラに入る側と出る側に対向して夫々設けた摺動子を共通の弾性体で押圧するように構成したことで、ばね部材及びこれらに付随する部品数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、部品数を低減して挟域な空間への弛み吸収及び検出手段の設置設計及び設置作業を容易にできる可逆運転対応の乗客コンベアを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明による乗客コンベアの第1の実施の形態を図1〜図2に示すエスカレーターに基づいて説明する。
【0012】
エスカレーター1は、大きく分けて、上下階に跨って設置された枠体2と、この枠体2内に移動自在に案内された無端状に連結された複数の踏段3と、枠体2の幅方向両側に立設された欄干4と、この欄干4の周縁を案内されて移動する無端状の移動手摺5とを備えている。
【0013】
前記踏段3は、往路側においては前記枠体2の上部水平部2A,中間傾斜部2B,下部水平部2Cで乗客搭載面が水平を維持するように案内されている。また前記踏段3は、前記踏段チェーン6を駆動装置7のターミナルギア8に巻き掛け、このターミナルギア8を原動機9で駆動することで枠体2内を循環移動するように構成されている。
【0014】
一方、前記移動手摺5は、前記欄干パネル4の下方においてその帰路側を手摺駆動装置10で駆動され、前記踏段3と同期して駆動されている。
【0015】
手摺駆動装置10は、帰路側手摺5Rを挟圧する複数の駆動ローラ11A〜11Cと、従動ローラ12A〜12Cとを有している。駆動ローラ11A〜11Cは帰路側手摺5Rに上方から当接し、従動ローラ12A〜12Cは駆動ローラ11A〜11Cに対向して帰路側手摺5Rに下方から当接している。また、従動ローラ12A〜12Cは支持枠13に軸支されており、支持枠13は固定部材14に固定されている。他方、駆動ローラ11A〜11Cは可動枠15に軸支されており、この可動枠15は、前記支持枠13に対して前記帰路側手摺5Rを下方に向って挟圧する方向にのみ変位可能に支持されている。
【0016】
可動枠15に軸支された各駆動ローラ11A〜11Cの同軸上に、夫々スプロケット16A〜16Cが固定されている。さらに、可動枠15には、下方に動力伝達スプロケット17が軸支されていると共に、上方にはアイドラスプロケット18が軸支されている。動力伝達スプロケット17は、第1のスプロケット17Aと第2のスプロケット17Bとが同軸上に固定されている。
【0017】
このように構成された手摺駆動装置10において、駆動チェーン19が、第1のスプロケット17A−スプロケット16−スプロケット16B−アイドラスプロケット18−スプロケット16C−第1のスプロケット17Aの順に巻き掛けられている。また、第2のスプロケット17Bには、ターミナルギア8から方向転換スプロケット20A,20Bを経由した動力伝達チェーン21が巻き掛けられている。
【0018】
上記構成とすることで、駆動装置7の駆動によって動力伝達チェーン21に作用する張力により、可動枠15は紙面下方に変位し、この可動枠15の下方への変位により、駆動ローラ11A〜11Cは、固定された支持枠13に軸支された従動ローラ12A〜12Cとの間で帰路側手摺5Rを挟圧しながら駆動させることになる。
【0019】
このように構成とすることで、駆動装置7の動力で踏段3と移動手摺5とを動機的に循環移動させている。
【0020】
ところで、手摺駆動装置10において、駆動チェーン19に弛みが生じた場合、駆動チェーン19のスプロケットに対する巻き付け角度が浅くなってチェーン飛びが生じて動力の伝達が不十分になったり、チェーン騒音の発生を引き起こしたりするので、駆動チェーン19に弛みが生じた場合、その弛みを除去する必要がある。
【0021】
そこで本実施の形態においては、駆動ローラ11A,11Cのスプロケット16A,16Cに出入する駆動チェーン19の両側、云い代えれば、スプロケット16Aと動力伝達スプロケット17の第1のスプロケット17Aとの間に張架された駆動チェーン19及びスプロケット16Cと動力伝達スプロケット17の第のスプロケット17Aとの間に張架された駆動チェーン19に、夫々摺動子22A,22Bを常時接触させて摺動させている。
【0022】
この摺動子22A,22Bは、夫々レバー23A,23Bの一端側に揺動自在に連結されており、これらレバー23A,23Bは前記可動枠15に固定されたブラケット24A,24Bに軸支されている。これらレバー23A,23Bは軸支部よりも反摺動子側に夫々延在されており、これらレバー23A,23Bの各延在端部に跨って共通の弾性体である圧縮ばね25が設けられている。この圧縮ばね25は、レバー23A,23Bの延在端部間に跨って設けられて延在端部の間隔の変化を妨げないばねロッド26に装荷されている。したがって、共通の弾性体である圧縮ばね25の圧縮力によって夫々の摺動子22A,22Bを駆動チェーン19に対して押圧させることで、駆動チェーン19の弛みを除去できるので、各摺動子22A,22B及び各レバー23A,23Bと圧縮ばね25がチェーン弛み吸収手段となる。
【0023】
さらに、前記レバー23A,23Bの延在側に対向して、駆動チェーン19が所定以上弛んだ場合、それを検出するためにチェーン弛み検出手段である弛み検出スイッチ27A,27Bが夫々位置しており、この弛み検出スイッチ27A,27Bは可動枠15に支持されたブラケット24Bに固定されている。
【0024】
以上のように構成した本実施の形態によれば、エスカレーター1が上昇運転を行っている場合、手摺駆動装置10の駆動チェーン19は矢印A方向に移動する。したがって、二次的な駆動源となる動力伝達スプロケット17の第1のスプロケット17Aとスプロケット16Cとの間の駆動チェーン19には駆動張力が作用するので弛みの発生はないが、スプロケット16Aから第1のスプロケット17Aに戻る駆動チェーン19には駆動張力が作用しないので弛みが発生し易い。この弛みは、長期使用によるチェーンの伸びが発生すると顕著となり、第1のスプロケット17Aへの巻き付け角度を浅くしたり騒音を発生したりする。
【0025】
しかしながら、本実施の形態によれば、レバー23A,23Bの延在端部を押し広げる圧縮ばね25の圧縮力で、摺動子22Aがスプロケット16Aから第1のスプロケット17Aに戻る駆動チェーン19を押圧しているので、弛みは摺動子22Aのチェーン押圧方向への変位によって除去吸収される。その結果、第1のスプロケット17Aへの駆動チェーン19の巻き付け角度を浅くしたり騒音を発生したりすることを防止することができる。
【0026】
さらに、長期運転中に、駆動チェーン19が所定以上伸びて弛んだ場合には、レバー23A,23Bの延在端部の押し広げ量が大きくなって弛み検出スイッチ27Aを作動させる。したがって、この弛み検出スイッチ27Aの作動信号を別置の制御装置で監視することで、駆動チェーン19の異常な弛みを監視室に報知して交換を促すことができる。さらに、駆動チェーン19が切断した場合には、レバー23A,23Bの延在端部の押し広げ量が大きくなるので、弛み検出スイッチ27A,27Bのいずれかが作動するので、同様に監視室に報知することができる。
【0027】
ここで、駆動チェーン19の弛み量の検出と切断の検出を区別するためには、レバー23A,23Bの延在端部の押し広げ量を多段に検出できる弛み検出スイッチ27A,27Bを用いると良い。
【0028】
次に、エスカレーター1を下降運転に切り替えた場合、手摺駆動装置10の駆動チェーン19は矢印B方向に移動する。したがって、二次的な駆動源となる動力伝達スプロケット17の第1のスプロケット17Aとスプロケット16Aとの間の駆動チェーン19には駆動張力が作用するので弛みの発生はないが、スプロケット16Cから第1のスプロケット17Aに戻る駆動チェーン19には駆動張力が作用しないので弛みが発生し易い。
【0029】
しかしながら、本実施の形態によれば、レバー23A,23Bの延在端部を押し広げる圧縮ばね25の圧縮力で、摺動子22Bがスプロケット16Cから第1のスプロケット17Aに戻る駆動チェーン19を押圧しているので、弛みは摺動子22Bのチェーン押圧方向への変位によって除去吸収される。その結果、第1のスプロケット17Aへの駆動チェーン19の巻き付け角度を浅くしたり騒音を発生したりすることを防止することができる。また、異常な駆動チェーン19の弛みは弛み検出スイッチ27Bで検出でき、駆動チェーン19の切断は弛み検出スイッチ27A,27Bのいずれかで検出できる。
【0030】
このように本実施の形態によれば、上昇及び下降の可逆運転を行うエスカレーター1において、手摺駆動装置10の駆動チェーン19の弛みを、一対の摺動子22A,22Bと共通の圧縮ばね25で除去吸収することができると共に、駆動チェーン19の交換時期や切断を弛み検出スイッチ27A,27Bで監視できるので、単純に2組の摺動子や2組の圧縮ばね、さらには2組の弛み検出スイッチを設ける場合に比べて部品数を低減することができる。その結果、エスカレーター1の挟域な空間への弛み検出手段の設置設計及び設置作業を容易に行うことができる。
【0031】
図3は、図2に示す手摺駆動装置10の変形例の手摺駆動装置10Aであり、図2と同一符号は同一構成部材を示すので、再度の詳細な説明は省略する。
【0032】
図3に示す手摺駆動装置10Aが図2に示す手摺駆動装置10と異なる点は、駆動ローラ11A〜11C、動力伝達スプロケット17、アイドラスプロケット18が夫々軸支された枠体が固定部材に支持された固定枠15Aとした点と、帰路側手摺5Rを挟圧駆動するために、従動ローラ12A〜12Cを圧縮ばね28A〜28Cによって駆動ローラ11A〜11C側に押圧する構成とした点である。
【0033】
このように構成しても、駆動チェーン19の弛みの除去機構や検出機構及び駆動チェーン19の切断検出機構は、第1の実施の形態と同じであり、同じ効果を奏することができる。
【0034】
次に、本発明による第2の実施の形態を図4に基づいて説明する。尚、図2と同符号は同一構成部材を示すので、再度の詳細な説明は省略する。
【0035】
本実施の形態においては、手摺駆動装置10の駆動チェーン19の弛みを除去吸収したり検出したりするほかに、手摺駆動装置10に動力を伝達する動力伝達チェーン21についても弛みの除去や検出及び切断検出を行うように構成したのである。したがって、駆動チェーン19の弛みを除去吸収したり検出したりする構成についての説明は省略し、動力伝達チェーン21の弛みの除去吸収や検出及び切断検出構成について説明する。
【0036】
即ち、動力伝達スプロケット17に出入りする動力伝達チェーン21の両側にも夫々摺動子29A,29Bを当接して摺動させ、共通の弾性体である圧縮ばね31により押圧させるように構成したのである。摺動子29A,29Bは夫々レバー30A,30Bの一端側に回動自在に軸支されており、これらレバー30A,30Bは摺動子22A,22Bのレバー23A,23Bと同軸に前記ブラケット24A,24Bに軸支されている。そしてこのレバー30A,30Bの摺動子29A,29Bと軸支部との中間に、両レバー30A,30Bに跨るばねロッド32を設け、このばねロッド32がレバー30A,30Bのうち一方側のレバー、本実施の形態においてはレバー30Bを貫通した側に圧縮ばね31を装荷してレバー30A,30Bの摺動子29A,29Bの間隔が狭くなるように押圧して摺動子29A,29Bを動力伝達チェーン21に押付けるようにしたのである。そして、レバー30A,30Bの軸支部を超えて延在した側には、延在した側のレバー30A,30Bの端部間隔が広がる方向に対向してチェーン弛み検出手段である弛み検出スイッチ33A,33Bを夫々設置したのである。
【0037】
上記構成において、エスカレーター1が上昇運転を行っている場合、動力伝達チェーン21は矢印a方向に移動する。したがって、動力伝達スプロケット17の第2のスプロケット17Bから引出される動力伝達チェーン21には駆動張力が作用し弛みの発生はないが、第2のスプロケット17Bに戻る動力伝達チェーン21には駆動張力が作用しないので弛みが発生し易い。
【0038】
しかしながら、本実施の形態によれば、レバー30A,30Bの摺動子29A,29B間を狭める圧縮ばね31の圧縮力で、摺動子29Aが第2のスプロケット17Bに戻る動力伝達チェーン21を押圧しているので、弛みは摺動子29Aのチェーン押圧方向への変位によって除去吸収される。
【0039】
さらに、長期運転中に、動力伝達チェーン21が所定以上伸びて弛んだ場合には、レバー30A,30Bの延在端部の押し広げ量が大きくなって弛み検出スイッチ33Aを作動させる。したがって、この弛み検出スイッチ33Aの作動信号を別置の制御装置で監視することで、動力伝達チェーン21の異常な弛みを監視室に報知して交換を促すことができる。さらに、動力伝達チェーン21が切断した場合にも、レバー30A,30Bの延在端部の押し広げ量が大きくなって弛み検出スイッチ33A,33Bのいずれかが作動するので、同様に監視室に報知することができる。
【0040】
一方、エスカレーター1を下降運転に切り替えた場合、動力伝達チェーン21は矢印b方向に移動する。したがって、動力伝達スプロケット17の第2のスプロケット17Bから引出される動力伝達チェーン21には駆動張力が作用するので弛みの発生はないが、スプロケット第2のスプロケット17Bに戻る動力伝達チェーン21には駆動張力が作用しないので弛みが発生し易い。
【0041】
しかしながら、本実施の形態によれば、圧縮ばね31の圧縮力で、摺動子29Bが動力伝達チェーン21を押圧しているので、弛みは摺動子29Bのチェーン押圧方向への変位によって除去吸収され、弛み量も弛み検出スイッチ33Bで検出でき、動力伝達チェーン21の切断は弛み検出スイッチ33A,33Bのいずれかで検出することができる。
【0042】
このように本実施の形態によれば、上昇及び下降の可逆運転を行うエスカレーター1において、動力伝達チェーン21の弛みを、一対の摺動子29A,29Bと共通の圧縮ばね31で除去することができると共に、動力伝達チェーン21の交換時期や切断を弛み検出スイッチ33A,33Bで監視できるので、動力伝達チェーン21のために単純に2組の摺動子や2組の圧縮ばねを設ける場合に比べて部品数を低減することができる。その結果、挟域な空間への弛み検出手段の設置設計及び設置作業を容易に行うことができる。
【0043】
尚、図4に示す第2の実施の形態において、摺動子22A,22Bが本発明の第1の摺動子であり、摺動子29A,29Bが本発明の第2の摺動子となる。レバー23A,23B及び圧縮ばね25が本発明の第1のチェーン弛み吸収手段であり、レバー30A,30B及び圧縮ばね31が本発明の第2のチェーン弛み吸収手段となる。さらに、弛み検出スイッチ27A,27Bが本発明による第1のチェーン弛み検出手段であり、弛み検出スイッチ33A,33Bが本発明の第2のチェーン弛み検出手段である。また、圧縮ばね25が本発明の第1の共通の弾性体であり、圧縮ばね31が本発明の第2の共通の弾性体である。
【0044】
図5は、第2の実施の形態の構成部材をさらに低減させた第3の実施の形態を示すもので、図4と同一符号は同一構成部材を示すので、再度の詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施の形態が図4に示す第2の実施の形態と異なる構成は、図4に示すばねロッド26,32を撤去し、変わりにレバー23A,30A間及びレバー23B,30B間に夫々共通の弾性体である圧縮ばね34A,34Bを夫々介在させたのである。このように構成することで、各レバー23A,30A及びレバー23B,30Bの一端に設けられた摺動子22A,22B,29A,29Bは、駆動チェーン19及び動力伝達チェーン21に押付けられるので、各チェーンの弛みを除去することができるのである。
【0046】
上記構成によっても第2の実施の形態と同じ作用により、駆動チェーン19及び動力伝達チェーン21の弛みの除去や切断の検知を行うことができると共に、部品数の低減を行うことができる。
【0047】
ところで以上説明の各実施の形態において、乗客コンベアとしてエスカレーター1を一例に説明したが、基本構成が同じである電動道路についても本発明を適用できるのは云うまでもない。
【0048】
また、共通の弾性体として圧縮ばね25,31を説明したが、駆動チェーン19の弛み除去に関しては、図2〜図4に示すレバー23A,23Bの摺動子22A,22Bと軸支部との間に共通の弾性体として引張ばねを設け、また、動力伝達チェーン21の弛み除去に関しては、図4に示すレバー30A,30Bの摺動子29A,29Bとの間に跨って共通の弾性体として引張ばねを設けるようにしてもよい。
【0049】
さらに、チェーン弛み検出手段である弛み検出スイッチ27A,27B,33A,33Bをレバー23A,23B,30A,30Bに対向させて設置したが、摺動子22A,22B,29A,29Bの変位量を検出できるのであれば、その設置位置は特定されない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による乗客コンベアの第1の実施の形態としてエスカレーターの概要を示す側面図。
【図2】図1に示すエスカレーターの手摺駆動装置を示す拡大図。
【図3】図2の変形例。
【図4】本発明による乗客コンベアの第2の実施の形態を示す手摺駆動装置近傍の拡大図。
【図5】本発明による乗客コンベアの第3の実施の形態を示す図4相当図。
【符号の説明】
【0051】
1…エスカレーター、5…移動手摺、5R…帰路側手摺、10,10A…手摺駆動装置、11A〜11C…駆動ローラ、12A〜12C…従動ローラ、13…支持枠、15…可動枠、15A…固定枠、16A〜16C…スプロケット、17…動力伝達スプロケット、17A…第1のスプロケット、17B…第2のスプロケット、19…駆動チェーン、21…動力伝達チェーン、22A,22B,29A,29B…摺動子、23A,23B,30A,30B…レバー、25,31,34A,34B…圧縮ばね、27A,27B,33A,33b…弛み検出スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動手摺を挟圧する駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラを駆動する駆動チェーンと、この駆動チェーンに巻き掛けた動力伝達スプロケットと、この動力伝達スプロケットに駆動装置からの動力を伝達する動力伝達チェーンとを備え、前記駆動チェーンに対して弾性体を介して摺動子を押圧するチェーン弛み吸収手段と、前記摺動子の変位量を検出して駆動チェーンの弛みを検出するチェーン弛み検出手段とを有する乗客コンベアにおいて、前記駆動ローラに出入する両側で前記駆動ローラと前記動力伝達スプロケットとの間に位置する前記駆動チェーンに夫々摺動子を接触させると共に、これら摺動子を共通の弾性体で前記駆動チェーンに押圧させことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記摺動子は、固定部に軸支されたレバーによって夫々支持されており、前記共通の弾性体は、前記レバーの間に介在されていることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記共通の弾性体は、前記レバーの軸支部よりも反摺動子側に位置する圧縮ばねであることを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記共通の弾性体は、前記レバーの軸支部よりも摺動子側に位置する引張ばねであることを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア。
【請求項5】
移動手摺を挟圧する駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラを駆動する駆動チェーンと、この駆動チェーンに巻き掛けた動力伝達スプロケットと、この動力伝達スプロケットに駆動装置からの動力を伝達する動力伝達チェーンとを備え、前記駆動チェーンに対して弾性体を介して第1の摺動子を押圧する第1のチェーン弛み吸収手段と、前記第1の摺動子の変位量を検出して駆動チェーンの弛みを検出する第1のチェーン弛み検出手段と、前記動力伝達チェーンに対して弾性体を介して第2の摺動子を押圧する第2のチェーン弛み吸収手段と、前記第2の摺動子の変位量を検出して動力伝達チェーンの弛みを検出する第2のチェーン弛み検出手段とを有する乗客コンベアにおいて、前記駆動ローラに出入する両側で前記駆動ローラと前記動力伝達スプロケットとの間に位置する前記駆動チェーンに夫々第1の摺動子を接触させると共に、これら第1の摺動子を第1の共通の弾性体で前記駆動チェーンに押圧させ、かつ、前記駆動装置から動力伝達スプロケットに出入する両側の動力伝達チェーンに夫々第2の摺動子を接触させると共に、これら第2の摺動子を第2の共通の弾性体で前記動力伝達チェーンに押圧させたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
前記第1の摺動子は、固定部に軸支された第1のレバーによって夫々支持されていると共に、前記第2の摺動子は、固定部に軸支された第2のレバーによって夫々支持されており、前記第1の共通の弾性体及び前記第2の共通の弾性体は、前記第1の摺動子及び前記第2の摺動子の間隔を狭める方向に弾性力を発揮するように配置されていることを特徴とする請求項5記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記第1の共通の弾性体は、前記第1のレバーの軸支部よりも反第1の摺動子側に位置する第1の圧縮ばねであり、前記第2の共通の弾性体は、前記第2のレバーの軸支部よりも第2の摺動子側に位置する第2の圧縮ばねであることを特徴とする請求項6記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記第1の共通の弾性体は、前記第1のレバーの軸支部よりも第1の摺動子側に位置する第1の引張ばねであり、前記第2の共通の弾性体は、前記第2のレバーの軸支部よりも第2の摺動子側の第2のレバー間に介在された第2の引張ばねであることを特徴とする請求項6記載の乗客コンベア。
【請求項9】
移動手摺を挟圧する駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラを駆動する駆動チェーンと、この駆動チェーンに巻き掛けた動力伝達スプロケットと、この動力伝達スプロケットに駆動装置からの動力を伝達する動力伝達チェーンとを備え、前記駆動チェーンに対して弾性体を介して第1の摺動子を押圧する第1のチェーン弛み吸収手段と、前記第1の摺動子の変位量を検出して駆動チェーンの弛みを検出する第1のチェーン弛み検出手段と、前記動力伝達チェーンに対して弾性体を介して第2の摺動子を押圧する第2のチェーン弛み吸収手段と、前記第2の摺動子の変位量を検出して動力伝達チェーンの弛みを検出する第2のチェーン弛み検出手段とを有する乗客コンベアにおいて、前記駆動ローラに出入する両側で前記駆動ローラと前記動力伝達スプロケットとの間に位置する前記駆動チェーンに夫々第1の摺動子を接触させると共に、前記駆動装置から動力伝達スプロケットに出入する両側の動力伝達チェーンに夫々第2の摺動子を接触させ、かつ、前記第1の摺動子及び前記第2の摺動子は固定部の軸支部に支持された第1のレバー及び第2のレバーによって夫々支持されており、前記第1のレバーと第2のレバーの間に前記第1の摺動子及び前記第2の摺動子を前記駆動チェーン及び前記動力伝達チェーンに押圧する共通の弾性体を設けたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項10】
前記共通の弾性体は、前記軸支部よりも反第1の摺動子側に位置する第1のレバイト第2のレバーとの間に位置する圧縮ばねであることを特徴とする請求項9記載の乗客コンベア。
【請求項11】
前記第1のレバーと第2のレバーは、共通の軸支部に支持されていることを特徴とする請求項9記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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