乗物用エアバッグ並びにエアバッグ装置
【課題】軽量化を達成すると同時に、構造を簡略化し取付け作業工数の軽減を図った乗物用エアバッグ並びにエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】乗物に搭載されて膨張用ガスを流入させることにより膨張展開すべくなしたエアバッグ1が、膨張用ガスを流入させるガス流入口を有し袋状に形成されて乗物の乗員に対向して膨張用ガスにより膨張展開するバッグ本体部11と、バッグ本体部11のガス流入口11aを囲繞するように形成された前記乗物側に取付けるための取付け基部12を有して構成しており、バッグ本体部11は、可撓性を有する織布から構成しているとともに、取付け基部は、バッグ本体部11に延在形成された基布層12aに自己保形性を有する補強層12bを重合して構成した。
【解決手段】乗物に搭載されて膨張用ガスを流入させることにより膨張展開すべくなしたエアバッグ1が、膨張用ガスを流入させるガス流入口を有し袋状に形成されて乗物の乗員に対向して膨張用ガスにより膨張展開するバッグ本体部11と、バッグ本体部11のガス流入口11aを囲繞するように形成された前記乗物側に取付けるための取付け基部12を有して構成しており、バッグ本体部11は、可撓性を有する織布から構成しているとともに、取付け基部は、バッグ本体部11に延在形成された基布層12aに自己保形性を有する補強層12bを重合して構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両が衝突した際の乗員を保護するエアバッグ並びにこのエアバッグを備えて構成するエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ところで、近年では、車両全体の重量を抑えて燃費性能の向上を図るべき社会的及び技術的要請が高まっている。すなわち、社会的要請という観点からは、地球環境保全の機運の高まりにより自動車等の車両の排出ガスを抑制することが重要課題として認識されており、そこで、技術的要請として、自動車の軽量化による燃費性能を向上させるのが最も合理的な解決策であるとの考え方から、車両を構成する全ての部品について軽量化することが要求されており、エアバッグ並びにこのエアバッグを備えて構成するエアバッグ装置にも当然ながらかかる軽量化の要求はなされているのである。
【0003】
かかる観点から、改良されたエアバッグ並びにこのエアバッグを備えて構成するエアバッグ装置は、従来から提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−281945号公報
【特許文献2】特表2007−532404号公報 (段落0022、0023,0036等を参照)
【0005】
先ず、特許文献1に記載の技術は、折り畳まれたエアバッグと、自動車の衝突時にエアバッグ内に高圧ガスを噴出するインフレーターと、エアバッグ上面を覆うように設けられエアバッグが膨張した際開裂するテアラインが形成されたカバーパネルと、エアバッグの下方に設けられかつインフレーターが取り付けられると共に両端部がエアバッグカバーに固着された剛体よりなる幅狭なベースプレート(エアバッグにおける膨張時の飛び出し反力を支えるリアクションプレート)と、可撓性シート状物からなりかつベースプレートとカバーパネルの間に架け渡されたバックアップ部材とからなり、エアバッグやインフレーターを収容するためのケースを用いずに、小型軽量化及び薄型化を可能としたものである。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術は、インフレーターとクッション(エアバッグ)とを収容するために、計器パネル内に配置されているハウジングを有し、該ハウジングを織物や薄いプラスチックシート等からなる可撓性材料から構成しており、そして、当該ハウジングは、クッションの一部分から形成された外壁を有し、かつ、該外壁から延在してクッションからインフレーターを概ね隔てている隔壁を有しており、この隔壁は、インフレーターの外周囲に巻き付けられる第1及び第2のフラップによって構成されている。第1のフラップはその他の部分より幾分か幅狭な舌片を有し、第2のフラップは、縦方向に沿って配置されているスリットを有して構成しており、第1のフラップは、インフレーターの外周囲に巻きつけながら、舌片が第2のフラップのスリットを通過した後に、第2のフラップの外側に重ね通過させており、第1のフラップ及び第2のフラップは、その端末部を一対のブラケットにより挟着した状態で、車両に取付けるようにしている。
【0007】
したがって、第1のフラップ及び第2のフラップを有して構成する隔壁が、インフレーターの外周囲を巻き付けることによって、インフレーターから噴出された高圧ガスをクッション内部に向かわせるためのリアクションプレートの役目を司っている。
【0008】
そして、かかるリアクションプレートとしての隔壁を有するハウジングは、織物や薄いプラスチックシート等からなる可撓性材料から構成することにより、小型軽量化を可能としたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、リアクションプレートとして、金属などで形成された剛体のベースプレートを使用しているために、その分、軽量化をさらに進める必要がある。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術は、リアクションプレートとして、織物や薄いプラスチックシート等からなる可撓性材料から構成したハウジングを使用していることから、特許文献1に記載の技術より、軽量化の面からすれば、改良されているものではあるとはいえ、かかるハウジングは、その第1のフラップをインフレーターの外周囲に巻き付けながら、舌片を第2のフラップのスリットを通過させた後に、第2のフラップの外側を重ね、しかる後に、第1のフラップ及び第2のフラップを、その端末部を一対のブラケットにより挟着した状態で、車両に取付けるようにしているために、構造が複雑で、取付け作業工数も嵩むことになる。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来の技術における課題に鑑み、軽量化を達成すると同時に、構造を簡略化し取付け作業工数の軽減を図った乗物用エアバッグ並びにエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエアバッグは、乗物に搭載されて膨張用ガスを流入させることにより膨張展開すべくなした乗物用エアバッグであって、前記エアバッグは、前記膨張用ガスを流入させるガス流入口を有し袋状に形成されて前記乗物の乗員に対向して前記膨張用ガスにより膨張展開するバッグ本体部と、該バッグ本体部の前記ガス流入口を囲繞するように形成された前記乗物側に取付けるための取付け基部を有して構成しており、前記バッグ本体部は、可撓性を有する織布から構成しているとともに、前記取付け基部は、前記バッグ本体部から一体に延在形成された基布層に自己保形性を有する補強層を重合して構成したことを特徴とする。
【0013】
かかる構成を有する本発明は、バッグ本体部と共にエアバッグを構成する取付け基部が織布からなる基布層に自己保形性を有する補強層を重合しているために、特許文献1に記載の技術のようなリアクションプレートを用いる必要がなく、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部が保形性を有する補強層を有することから、特許文献2に記載の技術のハウジング構造に比較して、当該取付け基部にインフレーターを収容取付けするための構造が簡単にして、取付け工数の軽減を図ることができる。
【0014】
また、本発明の実施形態として、上記発明における取付け基部は、織布よりなる前記基布層に前記補強層を積層形成して構成されているものである。
【0015】
かかる構成において、取付け基部は、基布層に流動状態のプラスチック材を吹きつけ融着させることによって、或いは基布層と予めプラステッキ材により成形しておいた補強層とを加熱する等により堰層形成することにより、自己保形性を有することになって、リアクションプレートとしての役目を十分果しながら、エアバッグの軽量化を達成することができる。
【0016】
また、本発明の実施の形態として、上記発明における取付け基部を構成する前記基布層と前記補強層とは、互いに融合結合した状態で積層されているものである。
【0017】
かかる構成により、取付け基部における補強層が、基布層に対して例えば超音波ホーン等を用いて融合結合することにより、インフレーターから噴出された膨張ガスのリアクションを堅固に受け止め、膨張ガスをバッグ本体部側に効率よくガイドすることができ、しかも、構造簡単にして軽量化を達成することができる。
【0018】
また、本発明に係るエアバッグ装置は、上記発明におけるいずれか一のエアバッグを前記乗物側に取付けるための取付け用ブラケットを前記取付け基部に設置し、該取付け基部に収納されて前記流入口より前記バッグ本体部内に膨張ガスを供給するインフレーターを取付けブラケットに支持させた状態で、該取付けブラケットを介して前記エアバッグを前記乗物側に設置して構成するようにしてもよい。
【0019】
かかる構成により、バッグ本体部と共にエアバッグを構成する取付け基部の補強層が、インフレーターが噴出した膨張ガスのリアクションプレートを構成することになって、従来のリアクションプレートを用いずして、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部にインフレーターを収容取付けした状態で、当該取付け基部を取付けブラケットを用いて車両に取付けることになって、構造を簡単にすることができ、取付け工数の軽減を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、バッグ本体部と共にエアバッグを構成する取付け基部が織布からなる基布層に自己保形性を有する補強層を重合しているために、従来のリアクションプレートを用いずして、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部にインフレーターを収容させて、例えば、ブラケット等を用いて車両に取付けるにしても、構造を簡単にすることができ、取付け工数の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施例1としての膨張展開状態のエアバッグ、インフレーターおよび取付けブラケットを分解して簡略的に描画した斜視図である。
【図2】図1におけるエアバッグ及びインフレーターを取付けブラケットを用いて車両である自動車のインストルメントパネルに装着して構成した助手席用のエアバッグ装置においてエアバッグの展開状態を車両前後方向に縦断して描画した断面図である。
【図3】図1におけるエアバッグを製造するに当たって、当該エアバッグをコンベア上に懸架した工程を示す説明図である。
【図4】同じく、図3に示す状態からエアバッグに設けた排気孔を利用して、風船をエアバッグ内に挿入する寸前の工程を示す説明図である。
【図5】同じく、図4に示す状態からエアバッグ内に挿入した風船にエアーを封入してエアバッグを膨張させると共に、エアバッグにおけるバッグ本体部における取付け基部近傍をマスキング治具によりマスキングする寸前の工程を示す説明図である。
【図6】同じく、図4に示す状態から、エアバッグにおけるバッグ本体部における取付け基部近傍をマスキング治具によりマスキングして、取付け基部に対して溶剤で稀釈化された流動状態の樹脂をスプレーガンにより吹き付けてコーティングすることにより、取付け基部に補強層を形成する工程を示す説明図である。
【図7】本発明に係る実施例1における取付けブラケットを装着したエアバッグを車両の左右方向に縦断して描画した部分的断面図である。
【図8】本発明に係るエアバッグの取付け基部に補強層を風船を用いて形成する変形例を示しており、風船をエアバッグ内に挿入する寸前の工程を描画した説明図である。
【図9】同じく、図8においてエアバッグ内の挿入した風船内に水を封入することにより、エアバッグをある程度膨張させた工程を示す説明図である。
【図10】図9の状態から、エアバッグの取付け基部を樹脂浴槽内における溶剤で稀釈化された流動状態の樹脂に浸漬(ディッピング)して、当該取付け基部に補強層を形成すべく樹脂を塗布している工程を示す説明図である。
【図11】図10における取付け基部に樹脂をコーティングした後、成形型内に取付け基部をセットし、エアバッグ内に挿入した風船内にさらに水を封入して風船をフル膨張状態にすることにより、当該風船の重力により取付け基部を成形型の成形面に押し付けて賦形する工程を示す説明図である。
【図12】水を封入した風船を使用する他の変形例を示しており、膨張させたエアバッグの取付け基部を成形型内にセットし、当該成形型の成形面と取付け基部との間にキャビティーを形成して、当該キャビティー内に溶剤で稀釈化された流動状態の樹脂を投入して、風船に封入された水の質量(水圧)を利用して、取付け基部に補強層を形成する工程を示す説明図である。
【図13】本発明に係る実施例2としての助手席用のエアバッグを製造すべく、エアバッグの取付け基部の基布層を二重構造にすることにより樹脂封入部を形成した状態を示す部分断面図である。
【図14】図13に示すエアバッグの取付け基部を成形型内にセットして、取付け基部の基布層を二重構造にすることにより形成された樹脂封入部内に発泡樹脂を封入した状態を示す説明図である。
【図15】図14の状態から成形型内において、当該取付け基部を賦形する工程を示す説明図である。
【図16】本発明に係る実施例2を採用したエアバッグにインフレーター及び取付けブラケットを装着した状態を描画した車両前後方向に縦断して描画した部分的断面図である。
【図17】本発明に係る実施例3としての自動車の運転席用のエアバッグについて、ロアパネルに対してアッパーパネルを取り外した状態を簡略的に描画した斜視図である。
【図18】図17におけるロアパネルのブラケット取付け孔周辺を描画した部分的斜視図である。
【図19】本発明に係る実施例3としての運転席用のエアバッグを採用したエアバッグ装置の取付け基部付近を縦断して描画した部分的断面図である。
【図20】本発明に係る実施例4としての運転席用のエアバッグにおけるロアパネルを部分的に描画した斜視図である。
【図21】図20におけるエアバッグの取付け基部に補強層を設けた状態を描画した部分的断面図である。
【図22】本発明に係る実施例4の変形例としての運転席用のエアバッグを描画した部分的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る乗物用エアバッグ並びにエアバッグ装置は、エアバッグの取付け基部に自己保形性を有する補強層を重合して構成することにより、エアバッグにおける膨張時の飛び出し反力を支えるリアクションプレートを廃止して、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部にインフレーターを収容させて、例えば、ブラケット等を用いて車両に取付けるにしても、構造を簡単にすることができ、取付け工数の軽減を図るべく構成している。
【0023】
次に、本発明のエアバッグ装置に係る実施例について、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
先ず、図1乃至図7を用いて、本発明に係る助手席用のエアバッグとしての実施例1の構成について説明する。
【0025】
本発明に係る実施例1においては、図1に示すように、エアバッグ1、インフレーター2及び取付けブラケット3によって、エアバッグモジュールAを構成している。
【0026】
エアバッグ1は、例えば、ナイロン66糸を織成した基布であり、目付け35g/m2、打ち込み本数、縦53.横53、420デニールのものを使用しており、インフレーター2から噴出された膨張用ガスにより膨張開して乗物の乗員に対向する位置に展開するバッグ本体部11と、バッグ本体部11のガス流入口11aを囲繞するように形成され取付けブラケット3を介して後述する図2に示す車両としての自動車のインストルメントパネル4に取付けられる取付け基部12とを一体化して構成している。
【0027】
バッグ本体部11は、膨張用ガスを流入させるガス流入口11aを取付け基部12との境界部に有して袋状に形成してあり、適宜の個所に膨張展開時のバッグ本体部11の乗員に対する押圧力を緩和するための排気孔11bが設けてある。
【0028】
取付け基部12は、ガス流入口11aを囲繞するように形成されており、バッグ本体部11から延在した基布層12aに、樹脂により形成した補強層12bを積層重合することにより、自己保形性を有して構成されており、車両左右方向に互いに対向するようにインフレーター挿入孔12c、12dが形成されている。
【0029】
一対のインフレーター挿入孔12c、12dのうち、インフレーター挿入孔12cは、インフレーター2の一端側の太径部分であるガス発生剤が封入されたボンベ部2aに嵌入するためにより太径に形成され、これに反して、インフレーター挿入孔12dは、インフレーター2の他端側における細形部分であるガス噴出部2bに嵌入するためにより細径に形成されている。
【0030】
取付けブラケット3は、たとえば樹脂或いは金属により構成した矩形状の基体部3eの両端部に折曲するように形成された起立壁片部3a、3bを有することによって、略コ字状に一体成形されており、起立壁片部3a、3bの先端には、それぞれ外方に張出させることによって、自動車のインストルメントパネル4の取付け部4a(図2参照)に取付けるための取付け片部3c、3dが形成されている。取付けブラケット3の基体部3eには、重量を軽減するために、肉盗み用の貫通孔3e−1が図1に示すように複数個形成されている。
【0031】
取付けブラケット3の起立壁片部3a、3bのうち、取付け片部3aには、インフレーター2のボンベ部2aを嵌入するために太径のボンベ部挿入孔3a−1に形成されているのに対し、起立壁片部3bには、インフレーター2のガス噴出部2bを嵌入するために細径のガス噴出部側嵌入孔3b−1が形成されている。
【0032】
さらに、ガス噴出部2bの先端には、取付けネジ棒部2b−1が突出形成されていると共に、ボンベ部2aの先端外周部には、鍔部2a−1が張り出し形成され、さらに、鍔部2a−1の外側壁には、インフレーター2と図示しない自動車の衝突検知手段との間を接続するハーネス5をコネクトするコネクター5aが装着されている。
【0033】
したがって、この実施例1は、先ず、取付け基部12におけるインフレーター挿入孔12c、12dが形成されている両側部を、起立壁片部3a、3b内に嵌入するようにして、取付け基部12を取付けブラケット3内に嵌合し、起立壁片部3aのボンベ部挿入孔3а−1とインフレーター挿入孔12cとを連通させると共に、ガス噴出部側嵌入孔3b−1とインフレーター挿入孔12bとを連通させておき、次に、インフレーター2をボンベ部挿入孔3a−1及びインフレーター挿入孔12c側から、インフレーター2をインフレーター挿入孔12d及びガス噴出部側嵌入孔3b−1側に移動して、取付けネジ棒部2b−1をインフレーター挿入孔12c及びネジ棒部嵌入孔3b−1を挿通し、次に、取付けネジ棒部2b−1のネジ棒部嵌入孔3b−1からの突出部分に締め付けナット2b−2を螺着して、締めつけナット2b−1と鍔部2a−1とによって、取付け基部12及び起立壁片部3a、3bを挟合して、構成することになる。
【0034】
この結果、インフレーター2は、自己保形性を有する補強層12bの存在により、取付け基部12内に堅固に支持されていることになり、また、インフレーター2のガス噴出部2bは、エアバッグ1内に配置されて、ガス噴出部2bに設けたガス噴出口2b−3よりインフレーター2から噴出された膨張用ガスをバッグ本体部11内に導入して、バッグ本体部11を膨張展開せせるようにして、エアバッグモジュールAが構成されることになる。
【0035】
そして、取付け基部12は、補強層12bの存在によってそれ自体自己保形性を有することから、エアバッグ1における膨張時の飛び出し反力を支えるリアクションプレートとしての機能を司ることになる。
【0036】
このように構成したエアバッグモジュールAは、自動車の取付け部であるインストルメントパネル4内に収容されて取付けられることになるが、このために、取付けブラケット3の取付け片部3c、3bには、それぞれ一対の取付け孔3c−1、3d−1が穿設され、取付け孔3c−1、3d−1を挿通させた不図示のビス等をインストルメントパネル4の裏面側に形成した取付け部4aに螺合等することにより、インストルメントパネル4に装着されることになる。
【0037】
この結果、車両の衝突した際に、噴出ガスにより膨張したバッグ本体部11が、インストルメントパネル4に設けた開口部4bから車室内に展開して、乗員に対向して乗員を捕捉保護することになる。
【0038】
なお、開口部4bは、平常時には、不図示のエアバッグモジュールカバーによって閉塞されている。
【0039】
次に、本発明の実施例1におけるエアバッグ1において、取付け基部12の基布層12aに補強層12bを形成する製造工程について説明する。
【0040】
かかる補強層12bを形成するには、先ず、図3に示すように、萎んだ状態のエアバッグ1のバッグ本体部11側を上にして、その先端を生産ラインである塗装ブースの天井部のコンベア20に装着されたチャック20aにより挟み込まれて、エアバッグ1を吊り下げ懸架しておく。
【0041】
次に、図4に示すように、コンベア20によって、エアホース21が設置されている場所までエアバッグ1を運搬して、エアホース21の先端に装着された風船22を排気孔11bからエアバッグ1内に挿入する。
【0042】
次に、図5に示すように、エアホース21からエアーを風船22内に封入して、当該風船22を膨らませて、エアバッグ1全体を膨張させると共に、バッグ本体部11における取付け基部12の境界近傍を一対のマスキング治具23によって挟合して、図6に示すようにマスキングしておく。
【0043】
次に、スプレーガン24の容器部24a内に予め貯留しておいた溶剤により稀釈化された流動状態の樹脂25をノズル部24bより噴霧して基布層12aに樹脂25をコーティングする。かかるコーティングは、取付け基部12を構成する基布層12aにムラなく所定の厚さの樹脂層を形成するようになされ、その後、コンベア20によりエアバッグ1を不図示の加熱乾燥炉内まで運搬し、樹脂層を乾燥させて、基布層12aに自己保形性を有する補強層25bを形成する(図7参照)。
【0044】
上記加熱乾燥炉による樹脂層の乾燥は、風船22を膨張させた状態を保持したまま、150℃位の温度で10分間くらいの時間行うことになる。この場合、風船22の内圧を適宜調整して、昇温による風船22の膨張拡大を抑制するのがよりよい。樹脂層が硬化して、自己保形性を有する補強層12bが形成された後、マスキング治具23を外すと共に、風船22内のエアーを抜き、萎んだ風船22と共にエアホース21を排気孔11bから抜出してエアバッグ1の外へと取り出す。
【0045】
ここにおいて、エアバッグ1の取付け基部12は、基布層12aに補強層12が積層形成されて、完成する。
【0046】
かかる補強層12bは、噴霧した樹脂25が基布層12aを浸透することによって、基布層12aの表裏共に形成されることになる。
【0047】
なお、噴霧する樹脂25は、ポリアミド系エラストマー、例えば、東洋紡株式会社製の「エコリーフ」(登録商標)を使用する。
【0048】
また、基布層12aへの樹脂25のコーティング時間を短縮するためには、複数個のスプレーガン24を用いて、基布層12aの複数箇所に同時に併行して樹脂25を噴霧するようにすればよい。
【0049】
さらに、上記樹脂25のスプレーガン24による噴霧作業は、プログラム制御された塗装ロボットを使用して行うようにしてもよい。
【0050】
以上のように構成したエアバッグ1は、バッグ本体部11と共にエアバッグ1を構成する取付け基部12が織布からなる基布層12aに自己保形性を有する補強層12bを重合しているために、エアバッグ1の膨張時に取付け基部12が図7の実線状態に保持されることになり、図7の二点鎖線示するように、球状に膨らむことを防止でき、しかも、膨張ガスの反動により取付け基部12が取付けブラケット3側に偏倚するのを規制できることから、従来技術のような鋼板などを折り曲げてハウジング状に形成して取付け基部12の周囲を取囲むような頑丈に構成したハウジング(リアクションプレート)に匹敵する機能を備えていることになり、さらなる軽量化を果し得ることになると共に、取付け基部が保形性を有する補強層を有することから、特許文献2に記載の技術のようなハウジング構造に比較して、取付け基部12にインフレーター2を収容取付けするための構造が簡単にして、取付け工数の軽減を図ることができる。
【0051】
上記実施例1における補強層12の形成方法の変形例を図8乃至図11を用いて説明する。
【0052】
この変形例においては、エアホース21に代えて、図8に示す水ホース21aを用いて、風船22内に水を封入することにより、エアバッグ1を膨張させるようにして補強層12を形成する点、及び取付け基部12の基布層12aに樹脂をコーティングする場合、スプレーガン24を使用せずに、図10に示す樹脂浴槽26内における流動状態の樹脂25を浸漬(ディッピング)するようにした点、及び、コーティングした樹脂25を補強層12bに成形するために、図11に示す成形型27内において風船22内の水の質量(水圧)により賦形するようにした点、が異にしている。
【0053】
すなわち、先ず、図8に示すように、萎んだ状態のエアバッグ1におけるバッグ本体部11側を上にして、その先端を生産ラインである塗装ブースの天井部に設けたコンベア20に装着されたチャック20aにより挟み込んで、エアバッグ1を吊り下げ懸架した状態で、水ホース21aが設置されている場所までエアバッグ1を運搬して、水ホース21aの先端に装着された風船22を排気孔11bからエアバッグ1内に挿入する(図9の状態)。
【0054】
次に、図9に示す状態において、水ホース21aから水を風船22内に封入して、当該風船22をある程度まで膨らませて、図10に示すように、再びコンベア20によりエアバッグ1を運搬して、樹脂浴槽26内に取付け基部12を収容する。
【0055】
かかる樹脂浴槽26内への取付け基部を構成する基布層12aを収容したことにより、基布層12aは、予め樹脂浴槽26内に貯留しておいた溶剤により稀釈化された流動状態の樹脂25(注型用の例えばナイロンやMCナイロン)内に浸漬され、樹脂25がコーティングされることになり、ムラなく所定の厚さの樹脂層が形成された後、エアバッグ1を樹脂浴槽26から、図11の成形型27のキャビティー内に運搬する。
【0056】
そして、キャビティー内において、風船22内にさらに水ホース21aから水を供給して、取付け基部12の基布層12aをフル状態に膨らませて、風船22内の水の質量(水圧)により賦形する。
【0057】
この状態において、やはり、樹脂25が基布層12aを浸透して、基布層12aの表裏共に樹脂25がコーティングされることになることから、賦形後の取付け基部12を成形型27および風船22から、樹脂層を剥離させることなく離型するには、予め、成形型27の成形面や風船22の外周部に、ラッカー等の離型剤を塗布しておくことがよい。
【0058】
その後、上記実施例1と同様に、乾燥工程に移り、基布層12aに補強層12bを積層形成することになり、かかる補強層12は、上記実施例1と同様の作用効果を発揮することになる。
【0059】
上記実施例1の変形例においては、基布層12aに樹脂25をコーティングするには、樹脂浴槽26内に貯溜されている流動状態の樹脂25に浸漬することによって行っているが、これに限定されるものではなく、図12に示す成形型27−1を用いてコーティングするようにしてもよい。
【0060】
すなわち、水を封入した風船22によって、エアバッグ1の取付け基部12を構成する基布層12aを膨張させた状態で、成形型27−1の成形凹部内にセットして、成形型27−1の成形面と基布層12aとの間にキャビティーを形成し、かかるキャビティー内に樹脂タンク28から供給パイプ29を介して供給された流動状態の樹脂25を、成形型27−1に設けた樹脂供給口27−1aから供給し、補強層12bを成形し、離型が可能なまでに硬化させた後、風船22内の水を抜き、萎んだ風船22を排気孔からエアバッグ1内から取り出し、その後、エアバッグ1を成形型27−1から離型させれば、基布層12aに補強層12bが重合積層されることになる。
【0061】
なお、キャビティー内に樹脂25を供給する際に、キャビティーよりオーバーフローした樹脂25は、成形型27−1の上面部に設けた樹脂溜め部27−1bにためるようになっている。
【0062】
次に、図13乃至図16を用いて、本発明に係るエアバッグおよびエアバッグ装置の実施例2について説明する。
【0063】
すなわち、実施例2におけるエアバッグ1は、図13に示すように、取付け基部12を構成する基布層12aには、小片からなる宛て基布12a−1の外周部全周を縫着することによって、二重構造になって樹脂封入部12a−2が形成しておく。宛て基布12a−1の略中央部には、樹脂封入部12a―2を開口する樹脂封入部12a−3が形成されている。
【0064】
かかる構成において、樹脂封入部12a−3より、発泡樹脂(例えば、ナイロン66やポリウレタンに発泡剤を混ぜ合わせもの)を注入して、基布層12aと宛て基布12a−1によって形成された樹脂封入部12a−2内に封入して、補強層12bを形成したものである。
【0065】
かかる補強層12bを成形するには、図13に示す取付け基部12を構成する二重構造の基布層12aを、図14に示すように、成形型27aにおける予め取付け基部12の形状を呈した成形凹部27а−1内にセットする。
【0066】
このとき、樹脂封入部12a−3より樹脂封入部12a−2内に、不図示の樹脂タンク内の樹脂25aを封入するノズル24aが装着しておく。
【0067】
次に、ノズル24aから樹脂25aを樹脂封入部12a−2内に封入して行き、樹脂封入部12a−2内に所定の量の樹脂25aが封入されたところで、ノズル24aからの樹脂25aの封入を停止し、樹脂25aの発泡後、図15に示すように、補強層12bが形成されることになる。
【0068】
かかる補強層12b内には、ノズル24aが残存することになるが、当該ノズル24aは、使い捨てノズルを使用しており、取付け基部12の成形型27aからの離型後には、突出した部分を削り取ることになる。
【0069】
なお、補強層12bを構成する発泡樹脂は、例えば注型用ナイロン樹脂材を使用すると、発泡時に当該樹脂材が高温にならず、結果的にノズル23aを捨てノズルに構成すべくポリエチレンなどの広く一般に使用されている比較的廉価な樹脂材料を使用することができる。
【0070】
また、基布層12aは、バッグ本体部11と同一でこれと一体に連続した織布(例えば、ナイロン66布帛)を使用するのに対し、宛て基布12a−1としては、樹脂との親和性(濡れ性)の良い材質の糸条を使用すると共に、折り目が比較的疎になされたものを選択するのが良い。
【0071】
以上のことから、図16に示すように、実施例2におけるエアバッグ1は、取付け基部12が基布層12a及び宛て基布12a−1を二重構造にすることによって形成された樹脂封入部12a−2内にこれを適宜膨張させた状態で樹脂25aを封入することにより、所定の形状を有する補強層12bが形成されて構成されることになり、インフレーター2と共に、取付けブラケット3に装着されて、エアバッグモジュールAを構成することになる。
【0072】
すなわち、取付けブラケット3は、図2に示す場合とほぼ同様に、例えば樹脂或いは金属により構成した板状の基体部3eの両端部に折曲形成された起立壁片部3a、3bを有した略コ字状に一体成形されており、起立壁片部3a、3bの先端には、それぞれ外方に張出させることによって、自動車のインストルメントパネル4の取付け部4a(図2参照)に取付けるための取付け片部3c、3dが形成されている。図示しないが、取付けブラケット3の基体部3eには、適宜重量を軽減するための肉盗み用の貫通孔が形成されている。
【0073】
取付けブラケット3の起立壁片部3a、3bのうち、取付け片部3aには、インフレーター2のボンベ部2aを嵌入させるために太径のボンベ部挿入孔3а−1に形成されているのに対し、起立壁片部3bには、インフレーター2のガス噴出部2bの先端に突出形成された取付けネジ棒部2b−1を嵌入させるために細径のネジ棒部嵌入孔3b−1が形成されている。
【0074】
さらに、ボンベ部2aの先端外周部には、鍔部2a−1が張り出し形成され、また、鍔部2a−1には、インフレーター2と図示しない自動車の衝突検知手段との間をコネクター5bを介して接続するハーネス5が引出されている。
【0075】
したがって、上記実施例1と同様に、実施例2は、先ず、取付け基部12におけるインフレーター挿入孔12c、12dが形成されている両側部を、起立壁片部3a、3b内に挟み込むようにして、取付け基部12をブラケット3内に嵌合し、起立壁片部3aのボンベ部挿入孔3а−1とインフレーター挿入孔12cとを連通させると共に、ネジ棒部嵌入孔3b−2とインフレーター挿入孔12dとを連通させておき、次に、インフレーター2のボンベ部挿入孔3а−1及びインフレーター挿入孔12c側から、インフレーター2の取付けネジ棒部2b−1側を挿入して、インフレーター2をインフレーター挿入孔12dおよび取付けねじ棒部嵌入孔3b−2側に移動して、インフレーター挿入孔12cおよびボンベ部挿入孔3a−1にボンベ部2aを挿通させるとともに、インフレーター挿入孔12dおよび取付けネジ棒部嵌入孔3b−2に取付けネジ棒部2b−1を挿通させ、次に、取付けネジ棒部2b−1のネジ棒部嵌入孔3b−2から突出した部分を締め付けナット2b−2と、ガス噴出部2b及び取付けネジ棒部2b−1間に形成した鍔部2b−4とよって、取付け基部12及び起立壁片部3bを挟合して、構成していて、このとき、鍔部2a−1と取付け片部3cとが密着されて、構成されていることになる。
【0076】
この結果、インフレーター2は、実施例1と同様に、自己保形性を有する補強層12bの存在により、取付け基部12内に堅固に支持されていることになり、また、インフレーター2のガス噴出部2bは、エアバッグ1内に配置されて、ガス噴出部2bに設けたガス噴出口2b−3よりインフレーター2から噴出された膨張用ガスをバッグ本体部11内に導入して、バッグ本体部11を膨張展開させるようにして、エアバッグモジュールAが構成されることになる。
【0077】
そして、取付け基部12は、補強層12bの存在によってそれ自体自己保形性を有することから、エアバッグ1における膨張時の飛び出し反力を支えるリアクションプレートとしての機能を司ることになる。
【0078】
次に、本発明をたとえば運転席用のエアバッグ1として構成した実施例3について説明する。
【0079】
すなわち、図17に示すように、運転席用のエアバッグ1は、上記実施例と同様に、バッグ本体部11と取付け基部12とで構成しているも、バッグ本体部11は、開口部を有する扁平な容器状のロアパネル11−1とロアパネル11に後述するようにベースプレート30等を装着した後に前記開口部を閉塞するように設けられたアッパーパネル11−2とをその周縁部同士を縫製することにより形成しており、ロアパネル11−1における平面視略中央は、貫通孔11−1aを有して取付け基部12の基布層12aになっている。基布層12aは、図19に示すように、断面略コ字状に形成されたベースプレート30の起立周壁部31の内面に後述する方法で接合されて、起立周壁部31と共に、取付け基部12を形成している。
【0080】
すなわち、ベースプレート30は、ナイロン66樹脂に長繊維(例えば、長さ10mm〜15mmのガラスファイバー)を30%程度を配合したものを射出成形にてロアパネル11−1と一体成形している。
【0081】
すなわち、ベースプレート30を射出成形する際に、不図示の成形型のキャビティー内に、ロアパネル11−1の基布層12に溶融樹脂を接触させることにより、基布層12を構成する糸条の表面を活性化させて、基布層12と接触界面で融合して接合することにより、起立周壁部31を形成し、起立周壁部31は、基布層12aと共に取付け基部12の補強層12bを構成することになる。
【0082】
また、ロアパネル11−1における基布層12aに設けた貫通孔11−1aの周囲には、図18に示すように、切り込み部11−1bが形成されていると共に、起立周壁部31の形成後に例えば図19に示すように二点鎖線示する超音波溶接機の超音波ホーン34を当てることにより、起立周壁部31と基布層12aとの接合強度を高めるようにしてもよい。
【0083】
また、起立周壁部31の内面は、階段状に複数個の段部32が形成されていて、基布層12aの接触面積を増大させるようにしている。
【0084】
さらに、ベースプレート30は、起立周壁部31の外面には、モジュールカバー係合片35が複数個突出形成されていて、モジュールカバー40の係合孔41に係合することによって、モジュールカバー40によってベースプレート30内に折り畳まれた状態で収容されたエアバッグ1をカバーしている。
【0085】
モジュールカバー40は、例えば、オレフィン系エラストマーを射出成形することによって形成されている。
【0086】
そして、ベースプレート30の底部33において、平面視略中央部には、インフレーター2を収容するためのインフレーター収容凹部36が形成されており、インフレーター収容部36には、扁平な丸型容器状のインフレーター2が収容されている。インフレーター2は、インフレーター収容部36より一体に複数個突出形成されたインフレーター係合片36aを係合凹部2b−5に係合することによって、インフレーター収容部36内に装着されている。
【0087】
また、インフレーター収容部36の上壁36bには、インフレーター2の膨張ガスをバッグ本体部11内に供給するガス吹き出し口36cが形成されている。
【0088】
さらに、ベースプレート30の底部33には、インフレーター係合片36aを外側より囲繞するように、ステアリングホイール取付け係合片37が複数個形成されており、ステアリングホイール取付け係合片36dを不図示のステアリングホイールに設けた係合部に係合させることによって、モジュールカバー46と共に、ベースプレート30をステアリングホイールに装着するようになっている。
【0089】
以上のように構成している実施例3においては、取付け基部12は、基布層12aをベースプレート30の起立周壁部31の内面に接合することによって、補強層12bを構成していることから、従来技術のような鋼板などを折り曲げてハウジング状に形成して取付け基部12の周囲を取囲むような頑丈に構成したハウジング(リアクションプレート)に匹敵する機能を備えていることになり、さらなる軽量化を果し得ることになると共に、取付け基部12が保形性を有する補強層を有することから、特許文献2に記載の技術のようなハウジング構造に比較して、取付け基部12にインフレーター2を収容取付けするための構造が簡単にして、取付け工数の軽減を図ることができる。
【0090】
なお、インフレーター2には、ガス噴出口2b−3が設けられていると共に、不図示の自動車の衝突検知手段との間をコネクター5bを介して接続するハーネス5が引出されている。
【0091】
図20及び図21と図22とは、上記実施例3の変形例1、2をそれぞれ示している。
【0092】
すなわち、当該変形例は、エアバッグ1において取付け基部12を構成する基布層12aは、図21に示すように、ベースプレート30の起立周壁部31から底部33まで回り込ませて、モジュールカバー係合片35を係合突出させると共に、ステアリングホイール係合片37及びインフレーター係合片36aをも係合突出させた状態で超音波溶着機の超音波ホーン等により基布層12aと起立周壁部31及び底部33とを融合結合することによって、重合積層されており、したがって、起立周壁部31が取付け基部12の補強層12bを構成していることになる。
【0093】
また、インフレーター収容凹部36に形成したインフレーター係合片36aは、やはり、基布層12aを挿通突出している。
【0094】
このために、基布層12aには、図20に示すように、平面視略中央部にインフレーター2が挿通するインフレーター係合片挿通孔12a−3が形成されているとともに、インフレーター係合片挿通孔12a―3の内壁には、インフレーター係合片36aを挿通させるインフレーター係合片挿通孔12a−4が形成されている。
【0095】
さらに、基布層12aにおいて、インフレーター係合片挿通孔12a−3を囲繞するように、モジュールカバー係合片35が挿通するモジュールカバー係合片挿通孔12a−5及びステアリングホイール係合片挿通孔12a−6が形成されている。
【0096】
そして、ベースプレート30の起立周壁部31及び底部33に重合積層された基布層12aは、図21の矢印Aの方向に引張上げた状態を保持して、加熱することにより起立周壁部31及び底部33に融合接合される。この場合、たとえば、エアバッグ1がナイロン66のガラスファイバー高含有率材料を使用した場合、熱による融合親和力が低目となる傾向を持っているが、基布層12aが係合状態で底部33側まで引き回されていることにより、支持強度が高くなって、融合親和力が低いための対策(親和性が向上する添加材の配合や溶融樹脂温度の調整など)を要せず、エアバッグ1をポロエステル系基布など、ナイロン系基布以外の糸条から作成した織布を使用することも容易となり、このことは、基布材料の組合せの選択自由度を高めることができることになる。
【0097】
また、実施例3においては、図22に示すように、当初は、基布層12aをベースプレート30の底部33のみに融合接合しておいて(二点鎖線示状態)、その後、基布層12aを引張上げながら、モジュールカバー係合片挿通孔12a−5をモジュールカバー係合片35に挿通係合するように構成することによって、ロアパネル11−1とアッパーパネル11−2との縫合に際して、ロアパネル側に皺が形成されないようにすることが可能であることから、取扱いが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上説明したように、本発明は、バッグ本体部と共にエアバッグを構成する取付け基部が織布からなる基布層に自己保形性を有する補強層を重合しているために、従来のリアクションプレートを用いずして、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部にインフレーターを収容させて、例えば、ブラケット等を用いて車両に取付けるにしても、構造を簡単にすることができ、取付け工数の軽減を図ることができるために、自動車等車両が衝突した際の乗員を保護するエアバッグ並びにこのエアバッグを備えて構成するエアバッグ装置等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0099】
1 エアバッグ
11 バッグ本体部
11a ガス流入口
12 取付け基部
12a 基布層
12b 補強層
2 インフレーター
3 取付けブラケット
4 インストルメントパネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両が衝突した際の乗員を保護するエアバッグ並びにこのエアバッグを備えて構成するエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ところで、近年では、車両全体の重量を抑えて燃費性能の向上を図るべき社会的及び技術的要請が高まっている。すなわち、社会的要請という観点からは、地球環境保全の機運の高まりにより自動車等の車両の排出ガスを抑制することが重要課題として認識されており、そこで、技術的要請として、自動車の軽量化による燃費性能を向上させるのが最も合理的な解決策であるとの考え方から、車両を構成する全ての部品について軽量化することが要求されており、エアバッグ並びにこのエアバッグを備えて構成するエアバッグ装置にも当然ながらかかる軽量化の要求はなされているのである。
【0003】
かかる観点から、改良されたエアバッグ並びにこのエアバッグを備えて構成するエアバッグ装置は、従来から提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−281945号公報
【特許文献2】特表2007−532404号公報 (段落0022、0023,0036等を参照)
【0005】
先ず、特許文献1に記載の技術は、折り畳まれたエアバッグと、自動車の衝突時にエアバッグ内に高圧ガスを噴出するインフレーターと、エアバッグ上面を覆うように設けられエアバッグが膨張した際開裂するテアラインが形成されたカバーパネルと、エアバッグの下方に設けられかつインフレーターが取り付けられると共に両端部がエアバッグカバーに固着された剛体よりなる幅狭なベースプレート(エアバッグにおける膨張時の飛び出し反力を支えるリアクションプレート)と、可撓性シート状物からなりかつベースプレートとカバーパネルの間に架け渡されたバックアップ部材とからなり、エアバッグやインフレーターを収容するためのケースを用いずに、小型軽量化及び薄型化を可能としたものである。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術は、インフレーターとクッション(エアバッグ)とを収容するために、計器パネル内に配置されているハウジングを有し、該ハウジングを織物や薄いプラスチックシート等からなる可撓性材料から構成しており、そして、当該ハウジングは、クッションの一部分から形成された外壁を有し、かつ、該外壁から延在してクッションからインフレーターを概ね隔てている隔壁を有しており、この隔壁は、インフレーターの外周囲に巻き付けられる第1及び第2のフラップによって構成されている。第1のフラップはその他の部分より幾分か幅狭な舌片を有し、第2のフラップは、縦方向に沿って配置されているスリットを有して構成しており、第1のフラップは、インフレーターの外周囲に巻きつけながら、舌片が第2のフラップのスリットを通過した後に、第2のフラップの外側に重ね通過させており、第1のフラップ及び第2のフラップは、その端末部を一対のブラケットにより挟着した状態で、車両に取付けるようにしている。
【0007】
したがって、第1のフラップ及び第2のフラップを有して構成する隔壁が、インフレーターの外周囲を巻き付けることによって、インフレーターから噴出された高圧ガスをクッション内部に向かわせるためのリアクションプレートの役目を司っている。
【0008】
そして、かかるリアクションプレートとしての隔壁を有するハウジングは、織物や薄いプラスチックシート等からなる可撓性材料から構成することにより、小型軽量化を可能としたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、リアクションプレートとして、金属などで形成された剛体のベースプレートを使用しているために、その分、軽量化をさらに進める必要がある。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術は、リアクションプレートとして、織物や薄いプラスチックシート等からなる可撓性材料から構成したハウジングを使用していることから、特許文献1に記載の技術より、軽量化の面からすれば、改良されているものではあるとはいえ、かかるハウジングは、その第1のフラップをインフレーターの外周囲に巻き付けながら、舌片を第2のフラップのスリットを通過させた後に、第2のフラップの外側を重ね、しかる後に、第1のフラップ及び第2のフラップを、その端末部を一対のブラケットにより挟着した状態で、車両に取付けるようにしているために、構造が複雑で、取付け作業工数も嵩むことになる。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来の技術における課題に鑑み、軽量化を達成すると同時に、構造を簡略化し取付け作業工数の軽減を図った乗物用エアバッグ並びにエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエアバッグは、乗物に搭載されて膨張用ガスを流入させることにより膨張展開すべくなした乗物用エアバッグであって、前記エアバッグは、前記膨張用ガスを流入させるガス流入口を有し袋状に形成されて前記乗物の乗員に対向して前記膨張用ガスにより膨張展開するバッグ本体部と、該バッグ本体部の前記ガス流入口を囲繞するように形成された前記乗物側に取付けるための取付け基部を有して構成しており、前記バッグ本体部は、可撓性を有する織布から構成しているとともに、前記取付け基部は、前記バッグ本体部から一体に延在形成された基布層に自己保形性を有する補強層を重合して構成したことを特徴とする。
【0013】
かかる構成を有する本発明は、バッグ本体部と共にエアバッグを構成する取付け基部が織布からなる基布層に自己保形性を有する補強層を重合しているために、特許文献1に記載の技術のようなリアクションプレートを用いる必要がなく、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部が保形性を有する補強層を有することから、特許文献2に記載の技術のハウジング構造に比較して、当該取付け基部にインフレーターを収容取付けするための構造が簡単にして、取付け工数の軽減を図ることができる。
【0014】
また、本発明の実施形態として、上記発明における取付け基部は、織布よりなる前記基布層に前記補強層を積層形成して構成されているものである。
【0015】
かかる構成において、取付け基部は、基布層に流動状態のプラスチック材を吹きつけ融着させることによって、或いは基布層と予めプラステッキ材により成形しておいた補強層とを加熱する等により堰層形成することにより、自己保形性を有することになって、リアクションプレートとしての役目を十分果しながら、エアバッグの軽量化を達成することができる。
【0016】
また、本発明の実施の形態として、上記発明における取付け基部を構成する前記基布層と前記補強層とは、互いに融合結合した状態で積層されているものである。
【0017】
かかる構成により、取付け基部における補強層が、基布層に対して例えば超音波ホーン等を用いて融合結合することにより、インフレーターから噴出された膨張ガスのリアクションを堅固に受け止め、膨張ガスをバッグ本体部側に効率よくガイドすることができ、しかも、構造簡単にして軽量化を達成することができる。
【0018】
また、本発明に係るエアバッグ装置は、上記発明におけるいずれか一のエアバッグを前記乗物側に取付けるための取付け用ブラケットを前記取付け基部に設置し、該取付け基部に収納されて前記流入口より前記バッグ本体部内に膨張ガスを供給するインフレーターを取付けブラケットに支持させた状態で、該取付けブラケットを介して前記エアバッグを前記乗物側に設置して構成するようにしてもよい。
【0019】
かかる構成により、バッグ本体部と共にエアバッグを構成する取付け基部の補強層が、インフレーターが噴出した膨張ガスのリアクションプレートを構成することになって、従来のリアクションプレートを用いずして、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部にインフレーターを収容取付けした状態で、当該取付け基部を取付けブラケットを用いて車両に取付けることになって、構造を簡単にすることができ、取付け工数の軽減を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、バッグ本体部と共にエアバッグを構成する取付け基部が織布からなる基布層に自己保形性を有する補強層を重合しているために、従来のリアクションプレートを用いずして、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部にインフレーターを収容させて、例えば、ブラケット等を用いて車両に取付けるにしても、構造を簡単にすることができ、取付け工数の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施例1としての膨張展開状態のエアバッグ、インフレーターおよび取付けブラケットを分解して簡略的に描画した斜視図である。
【図2】図1におけるエアバッグ及びインフレーターを取付けブラケットを用いて車両である自動車のインストルメントパネルに装着して構成した助手席用のエアバッグ装置においてエアバッグの展開状態を車両前後方向に縦断して描画した断面図である。
【図3】図1におけるエアバッグを製造するに当たって、当該エアバッグをコンベア上に懸架した工程を示す説明図である。
【図4】同じく、図3に示す状態からエアバッグに設けた排気孔を利用して、風船をエアバッグ内に挿入する寸前の工程を示す説明図である。
【図5】同じく、図4に示す状態からエアバッグ内に挿入した風船にエアーを封入してエアバッグを膨張させると共に、エアバッグにおけるバッグ本体部における取付け基部近傍をマスキング治具によりマスキングする寸前の工程を示す説明図である。
【図6】同じく、図4に示す状態から、エアバッグにおけるバッグ本体部における取付け基部近傍をマスキング治具によりマスキングして、取付け基部に対して溶剤で稀釈化された流動状態の樹脂をスプレーガンにより吹き付けてコーティングすることにより、取付け基部に補強層を形成する工程を示す説明図である。
【図7】本発明に係る実施例1における取付けブラケットを装着したエアバッグを車両の左右方向に縦断して描画した部分的断面図である。
【図8】本発明に係るエアバッグの取付け基部に補強層を風船を用いて形成する変形例を示しており、風船をエアバッグ内に挿入する寸前の工程を描画した説明図である。
【図9】同じく、図8においてエアバッグ内の挿入した風船内に水を封入することにより、エアバッグをある程度膨張させた工程を示す説明図である。
【図10】図9の状態から、エアバッグの取付け基部を樹脂浴槽内における溶剤で稀釈化された流動状態の樹脂に浸漬(ディッピング)して、当該取付け基部に補強層を形成すべく樹脂を塗布している工程を示す説明図である。
【図11】図10における取付け基部に樹脂をコーティングした後、成形型内に取付け基部をセットし、エアバッグ内に挿入した風船内にさらに水を封入して風船をフル膨張状態にすることにより、当該風船の重力により取付け基部を成形型の成形面に押し付けて賦形する工程を示す説明図である。
【図12】水を封入した風船を使用する他の変形例を示しており、膨張させたエアバッグの取付け基部を成形型内にセットし、当該成形型の成形面と取付け基部との間にキャビティーを形成して、当該キャビティー内に溶剤で稀釈化された流動状態の樹脂を投入して、風船に封入された水の質量(水圧)を利用して、取付け基部に補強層を形成する工程を示す説明図である。
【図13】本発明に係る実施例2としての助手席用のエアバッグを製造すべく、エアバッグの取付け基部の基布層を二重構造にすることにより樹脂封入部を形成した状態を示す部分断面図である。
【図14】図13に示すエアバッグの取付け基部を成形型内にセットして、取付け基部の基布層を二重構造にすることにより形成された樹脂封入部内に発泡樹脂を封入した状態を示す説明図である。
【図15】図14の状態から成形型内において、当該取付け基部を賦形する工程を示す説明図である。
【図16】本発明に係る実施例2を採用したエアバッグにインフレーター及び取付けブラケットを装着した状態を描画した車両前後方向に縦断して描画した部分的断面図である。
【図17】本発明に係る実施例3としての自動車の運転席用のエアバッグについて、ロアパネルに対してアッパーパネルを取り外した状態を簡略的に描画した斜視図である。
【図18】図17におけるロアパネルのブラケット取付け孔周辺を描画した部分的斜視図である。
【図19】本発明に係る実施例3としての運転席用のエアバッグを採用したエアバッグ装置の取付け基部付近を縦断して描画した部分的断面図である。
【図20】本発明に係る実施例4としての運転席用のエアバッグにおけるロアパネルを部分的に描画した斜視図である。
【図21】図20におけるエアバッグの取付け基部に補強層を設けた状態を描画した部分的断面図である。
【図22】本発明に係る実施例4の変形例としての運転席用のエアバッグを描画した部分的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る乗物用エアバッグ並びにエアバッグ装置は、エアバッグの取付け基部に自己保形性を有する補強層を重合して構成することにより、エアバッグにおける膨張時の飛び出し反力を支えるリアクションプレートを廃止して、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部にインフレーターを収容させて、例えば、ブラケット等を用いて車両に取付けるにしても、構造を簡単にすることができ、取付け工数の軽減を図るべく構成している。
【0023】
次に、本発明のエアバッグ装置に係る実施例について、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
先ず、図1乃至図7を用いて、本発明に係る助手席用のエアバッグとしての実施例1の構成について説明する。
【0025】
本発明に係る実施例1においては、図1に示すように、エアバッグ1、インフレーター2及び取付けブラケット3によって、エアバッグモジュールAを構成している。
【0026】
エアバッグ1は、例えば、ナイロン66糸を織成した基布であり、目付け35g/m2、打ち込み本数、縦53.横53、420デニールのものを使用しており、インフレーター2から噴出された膨張用ガスにより膨張開して乗物の乗員に対向する位置に展開するバッグ本体部11と、バッグ本体部11のガス流入口11aを囲繞するように形成され取付けブラケット3を介して後述する図2に示す車両としての自動車のインストルメントパネル4に取付けられる取付け基部12とを一体化して構成している。
【0027】
バッグ本体部11は、膨張用ガスを流入させるガス流入口11aを取付け基部12との境界部に有して袋状に形成してあり、適宜の個所に膨張展開時のバッグ本体部11の乗員に対する押圧力を緩和するための排気孔11bが設けてある。
【0028】
取付け基部12は、ガス流入口11aを囲繞するように形成されており、バッグ本体部11から延在した基布層12aに、樹脂により形成した補強層12bを積層重合することにより、自己保形性を有して構成されており、車両左右方向に互いに対向するようにインフレーター挿入孔12c、12dが形成されている。
【0029】
一対のインフレーター挿入孔12c、12dのうち、インフレーター挿入孔12cは、インフレーター2の一端側の太径部分であるガス発生剤が封入されたボンベ部2aに嵌入するためにより太径に形成され、これに反して、インフレーター挿入孔12dは、インフレーター2の他端側における細形部分であるガス噴出部2bに嵌入するためにより細径に形成されている。
【0030】
取付けブラケット3は、たとえば樹脂或いは金属により構成した矩形状の基体部3eの両端部に折曲するように形成された起立壁片部3a、3bを有することによって、略コ字状に一体成形されており、起立壁片部3a、3bの先端には、それぞれ外方に張出させることによって、自動車のインストルメントパネル4の取付け部4a(図2参照)に取付けるための取付け片部3c、3dが形成されている。取付けブラケット3の基体部3eには、重量を軽減するために、肉盗み用の貫通孔3e−1が図1に示すように複数個形成されている。
【0031】
取付けブラケット3の起立壁片部3a、3bのうち、取付け片部3aには、インフレーター2のボンベ部2aを嵌入するために太径のボンベ部挿入孔3a−1に形成されているのに対し、起立壁片部3bには、インフレーター2のガス噴出部2bを嵌入するために細径のガス噴出部側嵌入孔3b−1が形成されている。
【0032】
さらに、ガス噴出部2bの先端には、取付けネジ棒部2b−1が突出形成されていると共に、ボンベ部2aの先端外周部には、鍔部2a−1が張り出し形成され、さらに、鍔部2a−1の外側壁には、インフレーター2と図示しない自動車の衝突検知手段との間を接続するハーネス5をコネクトするコネクター5aが装着されている。
【0033】
したがって、この実施例1は、先ず、取付け基部12におけるインフレーター挿入孔12c、12dが形成されている両側部を、起立壁片部3a、3b内に嵌入するようにして、取付け基部12を取付けブラケット3内に嵌合し、起立壁片部3aのボンベ部挿入孔3а−1とインフレーター挿入孔12cとを連通させると共に、ガス噴出部側嵌入孔3b−1とインフレーター挿入孔12bとを連通させておき、次に、インフレーター2をボンベ部挿入孔3a−1及びインフレーター挿入孔12c側から、インフレーター2をインフレーター挿入孔12d及びガス噴出部側嵌入孔3b−1側に移動して、取付けネジ棒部2b−1をインフレーター挿入孔12c及びネジ棒部嵌入孔3b−1を挿通し、次に、取付けネジ棒部2b−1のネジ棒部嵌入孔3b−1からの突出部分に締め付けナット2b−2を螺着して、締めつけナット2b−1と鍔部2a−1とによって、取付け基部12及び起立壁片部3a、3bを挟合して、構成することになる。
【0034】
この結果、インフレーター2は、自己保形性を有する補強層12bの存在により、取付け基部12内に堅固に支持されていることになり、また、インフレーター2のガス噴出部2bは、エアバッグ1内に配置されて、ガス噴出部2bに設けたガス噴出口2b−3よりインフレーター2から噴出された膨張用ガスをバッグ本体部11内に導入して、バッグ本体部11を膨張展開せせるようにして、エアバッグモジュールAが構成されることになる。
【0035】
そして、取付け基部12は、補強層12bの存在によってそれ自体自己保形性を有することから、エアバッグ1における膨張時の飛び出し反力を支えるリアクションプレートとしての機能を司ることになる。
【0036】
このように構成したエアバッグモジュールAは、自動車の取付け部であるインストルメントパネル4内に収容されて取付けられることになるが、このために、取付けブラケット3の取付け片部3c、3bには、それぞれ一対の取付け孔3c−1、3d−1が穿設され、取付け孔3c−1、3d−1を挿通させた不図示のビス等をインストルメントパネル4の裏面側に形成した取付け部4aに螺合等することにより、インストルメントパネル4に装着されることになる。
【0037】
この結果、車両の衝突した際に、噴出ガスにより膨張したバッグ本体部11が、インストルメントパネル4に設けた開口部4bから車室内に展開して、乗員に対向して乗員を捕捉保護することになる。
【0038】
なお、開口部4bは、平常時には、不図示のエアバッグモジュールカバーによって閉塞されている。
【0039】
次に、本発明の実施例1におけるエアバッグ1において、取付け基部12の基布層12aに補強層12bを形成する製造工程について説明する。
【0040】
かかる補強層12bを形成するには、先ず、図3に示すように、萎んだ状態のエアバッグ1のバッグ本体部11側を上にして、その先端を生産ラインである塗装ブースの天井部のコンベア20に装着されたチャック20aにより挟み込まれて、エアバッグ1を吊り下げ懸架しておく。
【0041】
次に、図4に示すように、コンベア20によって、エアホース21が設置されている場所までエアバッグ1を運搬して、エアホース21の先端に装着された風船22を排気孔11bからエアバッグ1内に挿入する。
【0042】
次に、図5に示すように、エアホース21からエアーを風船22内に封入して、当該風船22を膨らませて、エアバッグ1全体を膨張させると共に、バッグ本体部11における取付け基部12の境界近傍を一対のマスキング治具23によって挟合して、図6に示すようにマスキングしておく。
【0043】
次に、スプレーガン24の容器部24a内に予め貯留しておいた溶剤により稀釈化された流動状態の樹脂25をノズル部24bより噴霧して基布層12aに樹脂25をコーティングする。かかるコーティングは、取付け基部12を構成する基布層12aにムラなく所定の厚さの樹脂層を形成するようになされ、その後、コンベア20によりエアバッグ1を不図示の加熱乾燥炉内まで運搬し、樹脂層を乾燥させて、基布層12aに自己保形性を有する補強層25bを形成する(図7参照)。
【0044】
上記加熱乾燥炉による樹脂層の乾燥は、風船22を膨張させた状態を保持したまま、150℃位の温度で10分間くらいの時間行うことになる。この場合、風船22の内圧を適宜調整して、昇温による風船22の膨張拡大を抑制するのがよりよい。樹脂層が硬化して、自己保形性を有する補強層12bが形成された後、マスキング治具23を外すと共に、風船22内のエアーを抜き、萎んだ風船22と共にエアホース21を排気孔11bから抜出してエアバッグ1の外へと取り出す。
【0045】
ここにおいて、エアバッグ1の取付け基部12は、基布層12aに補強層12が積層形成されて、完成する。
【0046】
かかる補強層12bは、噴霧した樹脂25が基布層12aを浸透することによって、基布層12aの表裏共に形成されることになる。
【0047】
なお、噴霧する樹脂25は、ポリアミド系エラストマー、例えば、東洋紡株式会社製の「エコリーフ」(登録商標)を使用する。
【0048】
また、基布層12aへの樹脂25のコーティング時間を短縮するためには、複数個のスプレーガン24を用いて、基布層12aの複数箇所に同時に併行して樹脂25を噴霧するようにすればよい。
【0049】
さらに、上記樹脂25のスプレーガン24による噴霧作業は、プログラム制御された塗装ロボットを使用して行うようにしてもよい。
【0050】
以上のように構成したエアバッグ1は、バッグ本体部11と共にエアバッグ1を構成する取付け基部12が織布からなる基布層12aに自己保形性を有する補強層12bを重合しているために、エアバッグ1の膨張時に取付け基部12が図7の実線状態に保持されることになり、図7の二点鎖線示するように、球状に膨らむことを防止でき、しかも、膨張ガスの反動により取付け基部12が取付けブラケット3側に偏倚するのを規制できることから、従来技術のような鋼板などを折り曲げてハウジング状に形成して取付け基部12の周囲を取囲むような頑丈に構成したハウジング(リアクションプレート)に匹敵する機能を備えていることになり、さらなる軽量化を果し得ることになると共に、取付け基部が保形性を有する補強層を有することから、特許文献2に記載の技術のようなハウジング構造に比較して、取付け基部12にインフレーター2を収容取付けするための構造が簡単にして、取付け工数の軽減を図ることができる。
【0051】
上記実施例1における補強層12の形成方法の変形例を図8乃至図11を用いて説明する。
【0052】
この変形例においては、エアホース21に代えて、図8に示す水ホース21aを用いて、風船22内に水を封入することにより、エアバッグ1を膨張させるようにして補強層12を形成する点、及び取付け基部12の基布層12aに樹脂をコーティングする場合、スプレーガン24を使用せずに、図10に示す樹脂浴槽26内における流動状態の樹脂25を浸漬(ディッピング)するようにした点、及び、コーティングした樹脂25を補強層12bに成形するために、図11に示す成形型27内において風船22内の水の質量(水圧)により賦形するようにした点、が異にしている。
【0053】
すなわち、先ず、図8に示すように、萎んだ状態のエアバッグ1におけるバッグ本体部11側を上にして、その先端を生産ラインである塗装ブースの天井部に設けたコンベア20に装着されたチャック20aにより挟み込んで、エアバッグ1を吊り下げ懸架した状態で、水ホース21aが設置されている場所までエアバッグ1を運搬して、水ホース21aの先端に装着された風船22を排気孔11bからエアバッグ1内に挿入する(図9の状態)。
【0054】
次に、図9に示す状態において、水ホース21aから水を風船22内に封入して、当該風船22をある程度まで膨らませて、図10に示すように、再びコンベア20によりエアバッグ1を運搬して、樹脂浴槽26内に取付け基部12を収容する。
【0055】
かかる樹脂浴槽26内への取付け基部を構成する基布層12aを収容したことにより、基布層12aは、予め樹脂浴槽26内に貯留しておいた溶剤により稀釈化された流動状態の樹脂25(注型用の例えばナイロンやMCナイロン)内に浸漬され、樹脂25がコーティングされることになり、ムラなく所定の厚さの樹脂層が形成された後、エアバッグ1を樹脂浴槽26から、図11の成形型27のキャビティー内に運搬する。
【0056】
そして、キャビティー内において、風船22内にさらに水ホース21aから水を供給して、取付け基部12の基布層12aをフル状態に膨らませて、風船22内の水の質量(水圧)により賦形する。
【0057】
この状態において、やはり、樹脂25が基布層12aを浸透して、基布層12aの表裏共に樹脂25がコーティングされることになることから、賦形後の取付け基部12を成形型27および風船22から、樹脂層を剥離させることなく離型するには、予め、成形型27の成形面や風船22の外周部に、ラッカー等の離型剤を塗布しておくことがよい。
【0058】
その後、上記実施例1と同様に、乾燥工程に移り、基布層12aに補強層12bを積層形成することになり、かかる補強層12は、上記実施例1と同様の作用効果を発揮することになる。
【0059】
上記実施例1の変形例においては、基布層12aに樹脂25をコーティングするには、樹脂浴槽26内に貯溜されている流動状態の樹脂25に浸漬することによって行っているが、これに限定されるものではなく、図12に示す成形型27−1を用いてコーティングするようにしてもよい。
【0060】
すなわち、水を封入した風船22によって、エアバッグ1の取付け基部12を構成する基布層12aを膨張させた状態で、成形型27−1の成形凹部内にセットして、成形型27−1の成形面と基布層12aとの間にキャビティーを形成し、かかるキャビティー内に樹脂タンク28から供給パイプ29を介して供給された流動状態の樹脂25を、成形型27−1に設けた樹脂供給口27−1aから供給し、補強層12bを成形し、離型が可能なまでに硬化させた後、風船22内の水を抜き、萎んだ風船22を排気孔からエアバッグ1内から取り出し、その後、エアバッグ1を成形型27−1から離型させれば、基布層12aに補強層12bが重合積層されることになる。
【0061】
なお、キャビティー内に樹脂25を供給する際に、キャビティーよりオーバーフローした樹脂25は、成形型27−1の上面部に設けた樹脂溜め部27−1bにためるようになっている。
【0062】
次に、図13乃至図16を用いて、本発明に係るエアバッグおよびエアバッグ装置の実施例2について説明する。
【0063】
すなわち、実施例2におけるエアバッグ1は、図13に示すように、取付け基部12を構成する基布層12aには、小片からなる宛て基布12a−1の外周部全周を縫着することによって、二重構造になって樹脂封入部12a−2が形成しておく。宛て基布12a−1の略中央部には、樹脂封入部12a―2を開口する樹脂封入部12a−3が形成されている。
【0064】
かかる構成において、樹脂封入部12a−3より、発泡樹脂(例えば、ナイロン66やポリウレタンに発泡剤を混ぜ合わせもの)を注入して、基布層12aと宛て基布12a−1によって形成された樹脂封入部12a−2内に封入して、補強層12bを形成したものである。
【0065】
かかる補強層12bを成形するには、図13に示す取付け基部12を構成する二重構造の基布層12aを、図14に示すように、成形型27aにおける予め取付け基部12の形状を呈した成形凹部27а−1内にセットする。
【0066】
このとき、樹脂封入部12a−3より樹脂封入部12a−2内に、不図示の樹脂タンク内の樹脂25aを封入するノズル24aが装着しておく。
【0067】
次に、ノズル24aから樹脂25aを樹脂封入部12a−2内に封入して行き、樹脂封入部12a−2内に所定の量の樹脂25aが封入されたところで、ノズル24aからの樹脂25aの封入を停止し、樹脂25aの発泡後、図15に示すように、補強層12bが形成されることになる。
【0068】
かかる補強層12b内には、ノズル24aが残存することになるが、当該ノズル24aは、使い捨てノズルを使用しており、取付け基部12の成形型27aからの離型後には、突出した部分を削り取ることになる。
【0069】
なお、補強層12bを構成する発泡樹脂は、例えば注型用ナイロン樹脂材を使用すると、発泡時に当該樹脂材が高温にならず、結果的にノズル23aを捨てノズルに構成すべくポリエチレンなどの広く一般に使用されている比較的廉価な樹脂材料を使用することができる。
【0070】
また、基布層12aは、バッグ本体部11と同一でこれと一体に連続した織布(例えば、ナイロン66布帛)を使用するのに対し、宛て基布12a−1としては、樹脂との親和性(濡れ性)の良い材質の糸条を使用すると共に、折り目が比較的疎になされたものを選択するのが良い。
【0071】
以上のことから、図16に示すように、実施例2におけるエアバッグ1は、取付け基部12が基布層12a及び宛て基布12a−1を二重構造にすることによって形成された樹脂封入部12a−2内にこれを適宜膨張させた状態で樹脂25aを封入することにより、所定の形状を有する補強層12bが形成されて構成されることになり、インフレーター2と共に、取付けブラケット3に装着されて、エアバッグモジュールAを構成することになる。
【0072】
すなわち、取付けブラケット3は、図2に示す場合とほぼ同様に、例えば樹脂或いは金属により構成した板状の基体部3eの両端部に折曲形成された起立壁片部3a、3bを有した略コ字状に一体成形されており、起立壁片部3a、3bの先端には、それぞれ外方に張出させることによって、自動車のインストルメントパネル4の取付け部4a(図2参照)に取付けるための取付け片部3c、3dが形成されている。図示しないが、取付けブラケット3の基体部3eには、適宜重量を軽減するための肉盗み用の貫通孔が形成されている。
【0073】
取付けブラケット3の起立壁片部3a、3bのうち、取付け片部3aには、インフレーター2のボンベ部2aを嵌入させるために太径のボンベ部挿入孔3а−1に形成されているのに対し、起立壁片部3bには、インフレーター2のガス噴出部2bの先端に突出形成された取付けネジ棒部2b−1を嵌入させるために細径のネジ棒部嵌入孔3b−1が形成されている。
【0074】
さらに、ボンベ部2aの先端外周部には、鍔部2a−1が張り出し形成され、また、鍔部2a−1には、インフレーター2と図示しない自動車の衝突検知手段との間をコネクター5bを介して接続するハーネス5が引出されている。
【0075】
したがって、上記実施例1と同様に、実施例2は、先ず、取付け基部12におけるインフレーター挿入孔12c、12dが形成されている両側部を、起立壁片部3a、3b内に挟み込むようにして、取付け基部12をブラケット3内に嵌合し、起立壁片部3aのボンベ部挿入孔3а−1とインフレーター挿入孔12cとを連通させると共に、ネジ棒部嵌入孔3b−2とインフレーター挿入孔12dとを連通させておき、次に、インフレーター2のボンベ部挿入孔3а−1及びインフレーター挿入孔12c側から、インフレーター2の取付けネジ棒部2b−1側を挿入して、インフレーター2をインフレーター挿入孔12dおよび取付けねじ棒部嵌入孔3b−2側に移動して、インフレーター挿入孔12cおよびボンベ部挿入孔3a−1にボンベ部2aを挿通させるとともに、インフレーター挿入孔12dおよび取付けネジ棒部嵌入孔3b−2に取付けネジ棒部2b−1を挿通させ、次に、取付けネジ棒部2b−1のネジ棒部嵌入孔3b−2から突出した部分を締め付けナット2b−2と、ガス噴出部2b及び取付けネジ棒部2b−1間に形成した鍔部2b−4とよって、取付け基部12及び起立壁片部3bを挟合して、構成していて、このとき、鍔部2a−1と取付け片部3cとが密着されて、構成されていることになる。
【0076】
この結果、インフレーター2は、実施例1と同様に、自己保形性を有する補強層12bの存在により、取付け基部12内に堅固に支持されていることになり、また、インフレーター2のガス噴出部2bは、エアバッグ1内に配置されて、ガス噴出部2bに設けたガス噴出口2b−3よりインフレーター2から噴出された膨張用ガスをバッグ本体部11内に導入して、バッグ本体部11を膨張展開させるようにして、エアバッグモジュールAが構成されることになる。
【0077】
そして、取付け基部12は、補強層12bの存在によってそれ自体自己保形性を有することから、エアバッグ1における膨張時の飛び出し反力を支えるリアクションプレートとしての機能を司ることになる。
【0078】
次に、本発明をたとえば運転席用のエアバッグ1として構成した実施例3について説明する。
【0079】
すなわち、図17に示すように、運転席用のエアバッグ1は、上記実施例と同様に、バッグ本体部11と取付け基部12とで構成しているも、バッグ本体部11は、開口部を有する扁平な容器状のロアパネル11−1とロアパネル11に後述するようにベースプレート30等を装着した後に前記開口部を閉塞するように設けられたアッパーパネル11−2とをその周縁部同士を縫製することにより形成しており、ロアパネル11−1における平面視略中央は、貫通孔11−1aを有して取付け基部12の基布層12aになっている。基布層12aは、図19に示すように、断面略コ字状に形成されたベースプレート30の起立周壁部31の内面に後述する方法で接合されて、起立周壁部31と共に、取付け基部12を形成している。
【0080】
すなわち、ベースプレート30は、ナイロン66樹脂に長繊維(例えば、長さ10mm〜15mmのガラスファイバー)を30%程度を配合したものを射出成形にてロアパネル11−1と一体成形している。
【0081】
すなわち、ベースプレート30を射出成形する際に、不図示の成形型のキャビティー内に、ロアパネル11−1の基布層12に溶融樹脂を接触させることにより、基布層12を構成する糸条の表面を活性化させて、基布層12と接触界面で融合して接合することにより、起立周壁部31を形成し、起立周壁部31は、基布層12aと共に取付け基部12の補強層12bを構成することになる。
【0082】
また、ロアパネル11−1における基布層12aに設けた貫通孔11−1aの周囲には、図18に示すように、切り込み部11−1bが形成されていると共に、起立周壁部31の形成後に例えば図19に示すように二点鎖線示する超音波溶接機の超音波ホーン34を当てることにより、起立周壁部31と基布層12aとの接合強度を高めるようにしてもよい。
【0083】
また、起立周壁部31の内面は、階段状に複数個の段部32が形成されていて、基布層12aの接触面積を増大させるようにしている。
【0084】
さらに、ベースプレート30は、起立周壁部31の外面には、モジュールカバー係合片35が複数個突出形成されていて、モジュールカバー40の係合孔41に係合することによって、モジュールカバー40によってベースプレート30内に折り畳まれた状態で収容されたエアバッグ1をカバーしている。
【0085】
モジュールカバー40は、例えば、オレフィン系エラストマーを射出成形することによって形成されている。
【0086】
そして、ベースプレート30の底部33において、平面視略中央部には、インフレーター2を収容するためのインフレーター収容凹部36が形成されており、インフレーター収容部36には、扁平な丸型容器状のインフレーター2が収容されている。インフレーター2は、インフレーター収容部36より一体に複数個突出形成されたインフレーター係合片36aを係合凹部2b−5に係合することによって、インフレーター収容部36内に装着されている。
【0087】
また、インフレーター収容部36の上壁36bには、インフレーター2の膨張ガスをバッグ本体部11内に供給するガス吹き出し口36cが形成されている。
【0088】
さらに、ベースプレート30の底部33には、インフレーター係合片36aを外側より囲繞するように、ステアリングホイール取付け係合片37が複数個形成されており、ステアリングホイール取付け係合片36dを不図示のステアリングホイールに設けた係合部に係合させることによって、モジュールカバー46と共に、ベースプレート30をステアリングホイールに装着するようになっている。
【0089】
以上のように構成している実施例3においては、取付け基部12は、基布層12aをベースプレート30の起立周壁部31の内面に接合することによって、補強層12bを構成していることから、従来技術のような鋼板などを折り曲げてハウジング状に形成して取付け基部12の周囲を取囲むような頑丈に構成したハウジング(リアクションプレート)に匹敵する機能を備えていることになり、さらなる軽量化を果し得ることになると共に、取付け基部12が保形性を有する補強層を有することから、特許文献2に記載の技術のようなハウジング構造に比較して、取付け基部12にインフレーター2を収容取付けするための構造が簡単にして、取付け工数の軽減を図ることができる。
【0090】
なお、インフレーター2には、ガス噴出口2b−3が設けられていると共に、不図示の自動車の衝突検知手段との間をコネクター5bを介して接続するハーネス5が引出されている。
【0091】
図20及び図21と図22とは、上記実施例3の変形例1、2をそれぞれ示している。
【0092】
すなわち、当該変形例は、エアバッグ1において取付け基部12を構成する基布層12aは、図21に示すように、ベースプレート30の起立周壁部31から底部33まで回り込ませて、モジュールカバー係合片35を係合突出させると共に、ステアリングホイール係合片37及びインフレーター係合片36aをも係合突出させた状態で超音波溶着機の超音波ホーン等により基布層12aと起立周壁部31及び底部33とを融合結合することによって、重合積層されており、したがって、起立周壁部31が取付け基部12の補強層12bを構成していることになる。
【0093】
また、インフレーター収容凹部36に形成したインフレーター係合片36aは、やはり、基布層12aを挿通突出している。
【0094】
このために、基布層12aには、図20に示すように、平面視略中央部にインフレーター2が挿通するインフレーター係合片挿通孔12a−3が形成されているとともに、インフレーター係合片挿通孔12a―3の内壁には、インフレーター係合片36aを挿通させるインフレーター係合片挿通孔12a−4が形成されている。
【0095】
さらに、基布層12aにおいて、インフレーター係合片挿通孔12a−3を囲繞するように、モジュールカバー係合片35が挿通するモジュールカバー係合片挿通孔12a−5及びステアリングホイール係合片挿通孔12a−6が形成されている。
【0096】
そして、ベースプレート30の起立周壁部31及び底部33に重合積層された基布層12aは、図21の矢印Aの方向に引張上げた状態を保持して、加熱することにより起立周壁部31及び底部33に融合接合される。この場合、たとえば、エアバッグ1がナイロン66のガラスファイバー高含有率材料を使用した場合、熱による融合親和力が低目となる傾向を持っているが、基布層12aが係合状態で底部33側まで引き回されていることにより、支持強度が高くなって、融合親和力が低いための対策(親和性が向上する添加材の配合や溶融樹脂温度の調整など)を要せず、エアバッグ1をポロエステル系基布など、ナイロン系基布以外の糸条から作成した織布を使用することも容易となり、このことは、基布材料の組合せの選択自由度を高めることができることになる。
【0097】
また、実施例3においては、図22に示すように、当初は、基布層12aをベースプレート30の底部33のみに融合接合しておいて(二点鎖線示状態)、その後、基布層12aを引張上げながら、モジュールカバー係合片挿通孔12a−5をモジュールカバー係合片35に挿通係合するように構成することによって、ロアパネル11−1とアッパーパネル11−2との縫合に際して、ロアパネル側に皺が形成されないようにすることが可能であることから、取扱いが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上説明したように、本発明は、バッグ本体部と共にエアバッグを構成する取付け基部が織布からなる基布層に自己保形性を有する補強層を重合しているために、従来のリアクションプレートを用いずして、さらなる軽量化を果していると共に、取付け基部にインフレーターを収容させて、例えば、ブラケット等を用いて車両に取付けるにしても、構造を簡単にすることができ、取付け工数の軽減を図ることができるために、自動車等車両が衝突した際の乗員を保護するエアバッグ並びにこのエアバッグを備えて構成するエアバッグ装置等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0099】
1 エアバッグ
11 バッグ本体部
11a ガス流入口
12 取付け基部
12a 基布層
12b 補強層
2 インフレーター
3 取付けブラケット
4 インストルメントパネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載されて膨張用ガスを流入させることにより膨張展開すべくなした乗物用エアバッグであって、
前記エアバッグは、前記膨張用ガスを流入させるガス流入口を有し袋状に形成されて前記乗物の乗員に対向して前記膨張用ガスにより膨張展開するバッグ本体部と、該バッグ本体部の前記ガス流入口を囲繞するように形成された前記乗物側に取付けるための取付け基部を有して構成しており、
前記バッグ本体部は、可撓性を有する織布から構成しているとともに、前記取付け基部は、前記バッグ本体部から一体に延在形成された基布層に自己保形性を有する補強層を重合して構成したことを特徴とする乗物用エアバッグ。
【請求項2】
前記取付け基部は、織布よりなる前記基布層に前記補強層を積層形成して構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗物用エアバッグ。
【請求項3】
前記取付け基部を構成する前記基布層と前記補強層とは、互いに融合結合した状態で積層されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用エアバッグ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のエアバッグを前記乗物側に取付けるための取付け用ブラケットを前記取付け基部に設置し、該取付け基部に収納されて前記流入口より前記バッグ本体部内に膨張ガスを供給するインフレーターを取付けブラケットに支持させた状態で、該取付けブラケットを介して前記エアバッグを前記乗物側に設置したことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項1】
乗物に搭載されて膨張用ガスを流入させることにより膨張展開すべくなした乗物用エアバッグであって、
前記エアバッグは、前記膨張用ガスを流入させるガス流入口を有し袋状に形成されて前記乗物の乗員に対向して前記膨張用ガスにより膨張展開するバッグ本体部と、該バッグ本体部の前記ガス流入口を囲繞するように形成された前記乗物側に取付けるための取付け基部を有して構成しており、
前記バッグ本体部は、可撓性を有する織布から構成しているとともに、前記取付け基部は、前記バッグ本体部から一体に延在形成された基布層に自己保形性を有する補強層を重合して構成したことを特徴とする乗物用エアバッグ。
【請求項2】
前記取付け基部は、織布よりなる前記基布層に前記補強層を積層形成して構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗物用エアバッグ。
【請求項3】
前記取付け基部を構成する前記基布層と前記補強層とは、互いに融合結合した状態で積層されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用エアバッグ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のエアバッグを前記乗物側に取付けるための取付け用ブラケットを前記取付け基部に設置し、該取付け基部に収納されて前記流入口より前記バッグ本体部内に膨張ガスを供給するインフレーターを取付けブラケットに支持させた状態で、該取付けブラケットを介して前記エアバッグを前記乗物側に設置したことを特徴とするエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−63125(P2011−63125A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215605(P2009−215605)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]