説明

乗用田植機

【課題】 本発明の課題は、枕地(圃場の畦の近傍)で整地作業を忘れることなく、枕地に来ると自動的に整地作業をする乗用田植機を提供することである。
【解決手段】 左右の前輪及び後輪を備える走行車体の後部に昇降リンク装置を介して苗植付部を昇降可能に装着し、マーカアームを線引き作用部が圃場内に線を引く線引き位置とマーカアームを起立する非線引き位置に作動させる線引きマーカを設け、走行車体の後側で且つ苗植付部よりも前側に配置されると共に苗植付部に取り付けられる均平装置(28)を設け、電動モータ(37)の正逆転により支持アーム(32)を回動させて均平装置(28)を昇降させると共に、バネ(33)の付勢力に抗して支持アーム(32)が下側へ回動する構成とした乗用田植機とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用田植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の一種である従来の乗用田植機は、走行車体の後部に昇降リンク機構を介して苗植付部を昇降自在に連結し、苗植付部の苗植付装置の前側に位置するフロートで圃場の植付面を整地し、苗植付装置により苗を植え付ける構成を備え、前記フロートで整地した植付面に苗植付装置により苗を植え付ける構成である。
【0003】
上記構成では走行車体が旋回した枕地の苗植付作業では、車輪による泥の移動量が多く、圃場の植付面に凹凸が多いため、フロートだけでは均平整地作業が不十分で、苗の植付精度を向上させることが困難であるという不具合があるため、例えば、本出願人は先に特開2002−101714号公報に記載の発明のようにフロートの前方で走行車体の後輪後方に昇降自在の均平装置を付設した乗用田植機を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特開2002−101714号公報記載の乗用田植機の均平装置を用いて枕地を整地できるが、各種作業を行っているオペレータが枕地にきても、その整地作業をすることを忘れてしまうことがしばしばあった。
【0005】
そこで本発明の課題は、枕地(圃場の畦の近傍)で整地作業を忘れることなく、枕地に来ると自動的に整地作業をする乗用田植機を提供することである。また、枕地(圃場の畦の近傍)で線引きマーカが破損するのを防止すると共に、植付作業中に圃場の負荷で線引きマーカが勝手に収納されるのを防ぐことを課題とする。更に、左右補助車輪を装着する場合には、左右整地板を取り外し、中央整地板のみ取り付けて農作業ができるようにすることを課題とする。また、中央整地板で小さな凹凸を均平整地しセンサフロートの感知精度を向上させることを課題とする。更に、センサフロートへの泥の流入を少なくすることで整地性を安定させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、左右の前輪(5)及び後輪(6)を備える走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)を昇降可能に装着し、マーカアーム(82)を線引き作用部(83)が圃場内に線を引く線引き位置とマーカアーム(82)を起立する非線引き位置に作動させる線引きマーカ(80)を設け、走行車体(2)の後側で且つ苗植付部(4)よりも前側に配置されると共に苗植付部(4)に取り付けられる均平装置(28)を設け、電動モータ(37)の正逆転により支持アーム(32)を回動させて均平装置(28)を昇降させると共に、バネ(33)の付勢力に抗して支持アーム(32)が下側へ回動する構成とした乗用田植機とした。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、機体側面に沿って折り曲げて収納できるマーカフレーム(79)を設け、該マーカフレーム(79)が折り曲げ始められたことを検出するリミットスイッチ(62)を設け、マーカフレーム(79)の先端部にはマーカアーム(82)及びマーカモータ(89)を設け、マーカモータ(89)の駆動によりマーカアーム(82)を線引き位置と起立する非線引き位置に作動させ、マーカフレーム(79)が折り曲げ始められたことをリミットスイッチ(62)が検出すると線引きマーカ(80)を自動的に上昇させる構成とした請求項1に記載の乗用田植機とした。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、苗植付部(4)には、複数の苗植付装置(25)と苗植付部(4)を昇降制御するために苗植付部(4)の地表面からの距離を検出する中央のセンサフロート(27a)と圃場表面を整地する左右フロート(27b)を備え、苗植付装置(25)の作動を個別に入切する畦クラッチ(53)と、該畦クラッチ(53)を操作する畦クラッチレバー(35)を設け、該畦クラッチレバー(35)の操作に基づいて均平装置(28)を作業状態に切り替える制御装置を設けると共に、均平装置(28)はセンサフロート(27a)の前方に配置した中央整地板(28a)と該中央整地板(28a)の左右両側に着脱自在に取り付けられている左右整地板(28b、28c)により構成され、左右整地板(28b、28c)を外側が後方に位置するように後傾斜に配置し、中央整地板(28a)のセンサフロート(27a)に対応する部位(a)の溝幅を狭くしその両サイド(b)の溝幅を広くするか、又は前記部位(a)の溝を無くしてその両サイド(b)だけに溝を設けた請求項1又は2に記載の乗用田植機とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、畦際近く(枕地)は別の農作業機や本乗用田植機が旋回したりするために圃場面が荒れやすいが、電動モータ(37)の正逆転により支持アーム(32)を回動させて均平装置(28)を昇降させると共に、バネ(33)の付勢力に抗して支持アーム(32)が下側へ回動する構成としたので、畦際近くで確実に均平作業を行うことができ、植付作業の適正化が図れる。
【0010】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、線引きマーカ(80)が畦等に当たって機体の側面に収納されても、線引きマーカ(80)が例えば後輪(6)と干渉して破損するようなことを防止できる。また、圃場の負荷によりマーカーフレーム(79)部分が後に折り曲げられようとするとき、マーカアーム(82)を自動的に上昇させて線引き作用部(83)が圃場内に深く入らないようにでき、植付作業中に圃場の負荷で線引きマーカ(80)が勝手に収納されるのを防ぐことができる。
【0011】
請求項3に係る発明によると、請求項1又は2に係る発明の効果に加えて、畦際近くで確実に均平作業を行うことができ、植付作業の適正化が図れると共に、左右整地板(28b、28c)の取付位置に左右補助車輪(29)が位置する関係となる場合、左右補助車輪(29)を装着する場合には、左右整地板(28b、28c)を取り外し、中央整地板(28a)のみ取り付けて農作業ができる。また、中央整地板(28a)で小さな凹凸を均平整地しセンサフロート(27a)の感知精度を向上させることができると共に、中央整地板(28a)のセンサフロート(27a)に対応する部位(a)の溝幅を狭くしその両サイド(b)の溝幅を広くするか、又は前記部位(a)の溝を無くしてその両サイド(b)だけに溝を設けたので、センサフロート(27a)への泥の流入を少なくすることで整地性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】乗用田植機の平面図である。
【図3】乗用田植機の苗植付け部の平面図である。
【図4】乗用田植機の苗植付け部の要部側面図である。
【図5】乗用田植機の均平装置の作動フロー図である。
【図6】乗用田植機の均平装置の斜視図である。
【図7】乗用田植機の苗植付け部の駆動部の平面略図である。
【図8】乗用田植機の線引きマーカ部分の側面図である。
【図9】乗用田植機の線引きマーカ部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1と図2に乗用田植機(苗移植機)の側面図と平面図をそれぞれ示し、その乗用田植機(苗移植機)の全体構成について説明する。
【0014】
この乗用田植機1は、乗用の走行車体2の後部に昇降リンク装置3を介して例えば6条植えの苗植付部4が昇降可能に装着されていて、全体で乗用田植機として構成されている。
【0015】
走行車体2には、左・右前輪5、5及び左・右後輪6、6を備えている。機体の前部に配したミッションケース7の左右両側に前輪ファイナルケース8、8を設けて、この前輪ファイナルケース8、8の下部から横側方に突出する前車輪軸に左・右前輪5、5を取り付けている。また、ミッションケース7の背面部に主フレーム9の前端を固着し、その主フレーム9の後端中央部に前後方向水平の後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース10、10をローリング自在に支持し、その後輪ギヤケース10、10から横側方に突出する後車軸に左・右後輪6、6を取り付けている。
【0016】
主フレーム9上にエンジン11を搭載し、エンジン11の左側面に突出しているエンジン出力軸に回転動力を取り出し、この回転動力を第1ベルト伝動装置12を介して油圧ポンプ(図示せず)の駆動軸に伝動し、更に、無段変速可能な第2ベルト伝動装置13を経由してミッションケース7に伝達している。
【0017】
ミッションケース7に伝動された回転動力は、ケース7内の主変速装置(図示せず)で変速して走行動力と作業機動力に分岐して取り出し、走行動力を前輪ファイナルケース8、8経由で左・右前輪5、5に伝動すると共に、後輪ギヤケース10、10経由で左・右後輪6、6に伝動する。また、作業機動力をPTO軸14から屈折自在の作業機伝動軸15を経て苗植付部4に伝達してその作動部を駆動する。
【0018】
エンジン11の上部はエンジンカバー16で被覆され、エンジンカバー16上に操縦席17を設けている。操縦席17の前方に左・右前輪5、5を操舵操作するハンドル18を設け、走行車体2の前部左右両側に補給用苗を載せる予備苗載せ台19を設けている。
【0019】
昇降リンク装置3は平行リンク構成で、1本の上部リンク3aと左右一対の下部リンク3b、3bにより構成している。これらのリンク3a、3b、3bの基部側を主フレーム9の後端部に立設したリンク前フレーム20に回動自在に軸支し、リンク3a、3b、3bの先端部にリンク後フレーム21を連結している。そして、リンク後フレーム21に苗植付部4をローリング自在に装着している。
【0020】
主フレーム9に固着した支持部材と上部リンク3aに一体形成したスイングアーム22先端との間に、油圧昇降シリンダ23を介装し、この油圧昇降シリンダ23を油圧により伸縮させて、上部リンク3aを上下に回動させ、リンク後フレーム21に連結した苗植付部4を略一定姿勢で昇降させる。油圧昇降シリンダ23は走行車体2に設けた油圧昇降バルブ(図示省略)により伸縮制御される。
【0021】
苗植付部4は、例えば6条植えで苗を一株分づつ所定の苗取出口に供給する苗載せ台24と、苗取出口に供給された苗を圃場に植え付ける6組の苗植付装置25、25、…と、これら苗載せ台24と苗植付装置25、25、…を支持し、かつこれらに動力を伝達する伝動フレーム26と、苗植え付けに先行して圃場表面を整地する中央フロート27a、左・右フロート27b、27cとを備えている。
【0022】
次に、苗植付部4の平面図を図3に、均平装置28の側面図を図4に示し、これらの図面により苗植付部4の均平装置28について説明する。
均平装置28は、中央整地板28aと該中央整地板28aの左右両側に着脱自在に取り付けられている左・右整地板28b、28cにより構成されている。この中央整地板28a及び左・右整地板28b、28cは前記苗植付部4よりも前側で、且つ、走行車体2の後側に配置されていて、苗植付部4側に取り付けられている。
【0023】
苗植付部4の中央フロート27aを左・右フロート27b、27cよりも前方に配置し、前記中央整地板28aを中央フロート27aの前方に接近して配置し、且つ、左・右後輪6、6の内側に位置し、下部リンク3b、3bの後部下方に位置するように配置している。そして、中央フロート27aに中央整地板28aを介して取り付けられている左・右整地板28b、28cは、その左右外側の自由端側を順次後方に位置するように後傾斜に配置し、且つ、左・右後輪6、6の内側に配置している。
【0024】
なお、走行車体2に左・右後輪6、6及び左・右補助車輪29、29(図3)を装着した場合には、前記左・右整地板28b、28cの取付位置に左・右補助車輪29、29が位置する関係となる。従って、左・右補助車輪29、29を装着する場合には、左・右整地板28b、28cを取り外し、中央整地板28aのみ取り付けて苗植付作業をする。
【0025】
苗植付部4の伝動フレーム26に取り付けた左右のブラケット30、30に、ピン31、31を介して左右一対の支持アーム32、32の後端部を上下回動自在に軸支し、支持アーム32、32の前端部に均平装置28の中央整地板28aを取り付けている。このブラケット30と支持アーム32、32との間にバネ33、33を介装して、上下方向に荷重のかからない状態で支持アーム32、32を前後方向に沿わせた状態で支持し、支持アーム32、32に対して所定荷重が上方から作用すると下方に退避回動する構成としている。
【0026】
また、切替アーム34、34の前端のL字形部分で支持アーム32、32の基部の上側面を押圧する構成である。図1に示す畦クラッチレバー35又は整地深さ切替レバー41を介して、前記切替アーム34、34を下方の整地位置及び上方の非整地位置との切り替えができる構成である。尚、前記切替アーム34、34が、均平装置28を作業、非作業状態に切り替え可能な切替手段となる。
【0027】
また、この実施例では、図4に示すように、支持アーム32、32の前端部の縦方向の筒部38に、中央整地板28a側の支持ピン39を嵌合保持し、ロック装置40により、例えば5段階に上下調節して固定できる構成としている。従って、中央フロート27aに対して中央整地板28a及び左・右整地板28b、28cの整地角度を変更せずに上下に調節できて、安定した均平作業をすることができる。
【0028】
また、図3の苗植付部4の平面図に示すように、伝動フレーム26に取り付けた一方のブラケット30には電動モータ37が取り付けられ、該電動モータ37の出力軸はワンウエイクラッチ36を経由して前記ピン31に駆動力を出力する構成を備えている。
【0029】
上記構成により、図5のフローチャートに示すように、畦クラッチレバー35(又は整地深さ切替レバー41又は均平レーキ作動スイッチ42)の操作で均平装置28を整地するようにセットすると、電動モータ37が正転して切替アーム34、34の下動により該切替アーム34の前端のL字形部分により支持アーム32、32の上側面が押圧され、バネ33、33の付勢力に抗して支持アーム32、32がピン31、31を支点として下側に回動して整地板28a、28b、28cを下降させる。圃場検出センサ44(図4)により畦又は圃場を検出すると(圃場検出センサ44の先端が圃場に接当するとポテンショメータ45が作動することで圃場を検出する)、電動モータ37の正転を停止させる。このとき、ワンウエイクラッチ36があるため、整地板28a、28b、28cの下動停止位置で整地板28a、28b、28cが止まるので、整地板28a、28b、28cにより整地作業ができる。
【0030】
逆に畦クラッチレバー35(又は整地深さ切替レバー41又は均平レーキ作動スイッチ42)の操作で均平装置28を整地しない状態にするときは、電動モータ37が逆転して切替アーム34、34の前部が上方に回動して整地板28a、28b、28cを所定の位置まで上昇させて停止する。この整地板28a、28b、28cの所定の上昇停止位置はブラケット30の底部に設けたレーキ用のリミットスイッチ47(図4)に切替アーム34の端部が当接したときに行われる。
【0031】
このように均平装置28を作業状態の配置位置と非作業状態の配置位置に畦クラッチレバー35に限らず整地深さ切替レバー41又は均平レーキ作動スイッチ42などで切り替えできる構成にしたので、圃場内の畦際近くで農作業をしていることを判断する判別手段に基づいて、均平装置28を作業状態にすることができる。
【0032】
均平装置28は、通常の植付工程では泥押しの問題があるため作動しなくても良いが、畦際近く(枕地)では、別の乗用田植機や本乗用田植機が旋回したりするために圃場面が荒れやすいので、本実施例により畦際近くで確実に整地(均平)作業を行うことができ、農作業の適正化が図れる。
【0033】
また、枕地の作業時に限らず、低速で苗を植付ける畦クラッチを作動させる場合にも均平装置28を使用することが望ましい。
また、この実施例では、中央フロート27aをセンサフロートに兼用して、苗植付部4の地表面からの距離を検出し苗植付部4を昇降制御する構成であるが、この中央フロート27aの前方に中央整地板28aを配置し、中央整地板28aに取り付けられている左・右整地板28b、28cを平面視で左右両側ほど後方に位置する後傾斜にして中央フロート27aの前部左右両側に接近させ、中央整地板28a及び左・右整地板28b、28cで中央フロート27aの前部を囲むようにしている。
【0034】
従って、中央整地板28aにより小さな凹凸を均平整地しセンサフロートとしての感知精度を向上させることができ、また、左・右後輪6、6により盛り上げられた泥を左・右整地板28b、28cにより外側の車輪跡に導いてきれいに均平整地することができて、苗植付精度を向上させることができる。
【0035】
また、図6(a)の斜視図に示すように、中央整地板28aのセンタフロート27aに対応する部位(a)の溝幅を狭くし、その両サイド(b)の溝幅は広くする構成にして、センタフロート27aへの泥の流入を少なくすることで整地性を安定させることができる。
【0036】
また、図6(b)の斜視図に示すように、中央整地板28aのセンタフロート27aに対応する部位(a)の溝を無くして、その両サイド(b)だけに溝を設けた構成にしても良い。これはセンタフロート27aに対応する部位(a)の中央整地板28aは泥のはき出しが無い方が整地性が安定しやすいためである。
【0037】
図7には苗植付け部4の駆動要部平面略図を示す。伝動フレーム26には左右2個づつの苗植付装置25、25がその伝動機構を介して設けられている。伝動フレーム26には4段階に横移動量(移動速度)を変速できる横送り切替ギア51が設けられ、このギア51の出力が全ての苗植付装置25、25に連動される構成になっている。また苗載せ台24を左右方向に移動させるための横送り移動用ロッド52が設けられており、この横送り移動用ロッド52は苗植付け部への伝動入力部からの動力で回転するリードカム軸54により横送りリードカム55を駆動させることで左右方向に往復移動される。
【0038】
そして、前記左右2個ずつの苗植付装置25、25は、左右に長い主伝動軸56からそれぞれの苗植付装置伝動部(伝動チェーン)57を介して伝動される。
この主伝動軸56と苗植付装置伝動部(伝動チェーン)57との間に各々の畦クラッチ53が設けられ、該畦クラッチ53が、各々の畦クラッチレバー35の操作により入切され、左右2個ずつの苗植付装置25、25の作動を個別に入切する構成となっている。
【0039】
また、図8、図9に乗用田植機の線引きマーカ部分の側面図と平面図に示すように本実施例では電動モータ駆動式の線引きマーカ80を用いる。電動マーカの構成では、支持フレーム61にはマーカーフレーム79が支持フレーム61との接続部を中心に、水平方向に機体側面に沿って収納できるように折り曲げ可能な構成を有し、またマーカーフレーム79の先端にはマーカアーム82がマーカモータ89で折り曲げ自在に接続されている。
【0040】
マーカフレーム79の作用部にはブラケット88が取り付けられ、該ブラケット88にはマーカモータ89が設けられ、該モータ89の回転軸に取り付けたピニオン90とマーカアーム82の基部に設けた円形ギア91とが噛合している。
【0041】
また該ギア91の回転により、前記ブラケット88に取り付けたマーカセンサ92は、マーカアーム82の回動量を検出することができ、マーカアーム82が線引き位置である水平位置(線引き作用部83が圃場内に線を引く)に移動を完了した時点でマーカモータ89の回転が停止する一方、マーカアーム82を起立させ、図8の点線位置(マーカ非線引き位置)または一点鎖線位置(マーカ収納位置)にマーカアーム82を移動させた後、停止させることができる。
【0042】
また、マーカアーム82の収納位置(一点鎖線位置)へのマーカアーム82の回動量の制御は、マーカフレーム79とマーカアーム82の各端部にそれぞれ設けた図示しない一対の近接センサからなるマーカ収納センサ93を用いて行うこともできる。マーカアーム82が一点鎖線で示す収納位置に回動すると一対の近接センサがもっとも近接位置に来るので、このときマーカ収納センサ93がオン状態となるので、マーカ収納位置へのマーカアーム82の回動が行われたことが分かる。
【0043】
また、マーカーフレーム79と支持フレーム61との接続部にはリミットスイッチ62が設けられ、支持フレーム61に対してマーカフレーム79が折り曲げ始められると、スイッチ62がオフとなり、図示しないコントローラを介してマーカモータ89が作動して線引きマーカ80を収納動作させる構成になっている。
【0044】
本実施例では、上記電動式線引きマーカ80が農作業時に線引き途中でも畦等に当たって、マーカーフレーム79が支持フレーム61との接続部を中心に、水平方向に機体側面に沿って折り曲げられると、コントローラの指示により、図8の一点鎖線位置(マーカ収納位置)に線引きマーカ80を自動的に上昇させることを特徴としている。
【0045】
線引きマーカ80が畦等に当たって水平位置に折れ曲がり状態で機体の側面に収納されても、苗の植付などの作業を続けると線引きマーカ80が車輪6と干渉して破損するおそれがあるため、上述のように線引きマーカ80が自動的に上げ位置に切り替わる構成にすると破損のおそれが無くなる。
【0046】
また、線引きマーカ80により線引き作業時に圃場の負荷により、線引きマーカ80のマーカーフレーム79部分が後ろに回りかけると、マーカアーム82の水平に対する下げ角度を少し上げるように制御すると、線引き作用部83が圃場内に深く入らないので、植付作業中に圃場の負荷で線引きマーカ80が勝手に収納されるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0047】
1:乗用田植機、2:走行車体、3:昇降リンク装置、4:苗植付部、5:前輪、6:後輪、25:苗植付装置、27a:センサフロート、27b:左右フロート、28:均平装置、28a:中央整地板、28b、28c:左右整地板、32:支持アーム、33:バネ、35:畦クラッチレバー、37:電動モータ、53:畦クラッチ、62:リミットスイッチ、79:マーカフレーム、80:線引きマーカ、82:マーカアーム、83:線引き作用部、89:マーカモータ、a:中央整地板のセンサフロートに対応する部位、b:中央整地板のセンサフロートに対応する部位の両サイド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開2002−101714号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の前輪(5)及び後輪(6)を備える走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)を昇降可能に装着し、マーカアーム(82)を線引き作用部(83)が圃場内に線を引く線引き位置とマーカアーム(82)を起立する非線引き位置に作動させる線引きマーカ(80)を設け、走行車体(2)の後側で且つ苗植付部(4)よりも前側に配置されると共に苗植付部(4)に取り付けられる均平装置(28)を設け、電動モータ(37)の正逆転により支持アーム(32)を回動させて均平装置(28)を昇降させると共に、バネ(33)の付勢力に抗して支持アーム(32)が下側へ回動する構成とした乗用田植機。
【請求項2】
機体側面に沿って折り曲げて収納できるマーカフレーム(79)を設け、該マーカフレーム(79)が折り曲げ始められたことを検出するリミットスイッチ(62)を設け、マーカフレーム(79)の先端部にはマーカアーム(82)及びマーカモータ(89)を設け、マーカモータ(89)の駆動によりマーカアーム(82)を線引き位置と起立する非線引き位置に作動させ、マーカフレーム(79)が折り曲げ始められたことをリミットスイッチ(62)が検出すると線引きマーカ(80)を自動的に上昇させる構成とした請求項1に記載の乗用田植機。
【請求項3】
苗植付部(4)には、複数の苗植付装置(25)と苗植付部(4)を昇降制御するために苗植付部(4)の地表面からの距離を検出する中央のセンサフロート(27a)と圃場表面を整地する左右フロート(27b)を備え、苗植付装置(25)の作動を個別に入切する畦クラッチ(53)と、該畦クラッチ(53)を操作する畦クラッチレバー(35)を設け、該畦クラッチレバー(35)の操作に基づいて均平装置(28)を作業状態に切り替える制御装置を設けると共に、均平装置(28)はセンサフロート(27a)の前方に配置した中央整地板(28a)と該中央整地板(28a)の左右両側に着脱自在に取り付けられている左右整地板(28b、28c)により構成され、左右整地板(28b、28c)を外側が後方に位置するように後傾斜に配置し、中央整地板(28a)のセンサフロート(27a)に対応する部位(a)の溝幅を狭くしその両サイド(b)の溝幅を広くするか、又は前記部位(a)の溝を無くしてその両サイド(b)だけに溝を設けた請求項1又は2に記載の乗用田植機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−100759(P2009−100759A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4981(P2009−4981)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【分割の表示】特願2003−70279(P2003−70279)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】