説明

乳化剤形の化粧料

【課題】 肌の柔軟性を向上せしめる因子の少なくとも一部を明らかにし、肌を柔軟化する作用を有する化粧料を設計する手段を提供する。
【解決手段】 1)硬化菜種油と、2)リン脂質とを含有する乳化剤形の化粧料であって、前記硬化菜種油の含有量が1〜10質量%であり、且つ、前記菜種油の含有量に対して、リン脂質の含有量が1〜20質量%である、化粧料を提供する。前記リン脂質は、水酸化レシチンであることが好ましく、予め、硬化菜種油とリン脂質とを加熱溶解させて、相溶状態の複合体を作製し、しかる後に、これを極性油からなる希釈剤で希釈し、予め溶解してある他の油相成分の混合物に加えて作製されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関し、更に詳細には、皮膚の柔らかさを向上させるのに有用な、乳化剤形の化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料に於いて、その使用によって、肌の柔軟性が増加することは、好ましい現象であり、化粧料の有益な作用の一つに数えられている。この様な肌の柔軟性を測定する手段としても、公知の方法が存し、且つ、既にこの方法を利用した、市販の機器が存する。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)しかしながら、どのような化粧料がこの様に肌を柔軟にする作用に優れているのかは全く知られておらず、その要因もつかめていないのが現状であった。即ち、これらの因子の少なくとも一部を明らかにし、趣旨に添った肌を柔軟化する作用を有する化粧料を設計する手段の開発が望まれていたと言える。肌の柔軟性を向上させることは、肌の表面を滑らかにすることとはことなる。
【0003】
一方、硬化菜種油、リン脂質は化粧料の原料であるが(例えば、特許文献4、特許文献5を参照)、これらが肌の柔軟性を高める作用に寄与していることは全く知られていない。更に、1)硬化菜種油と、2)リン脂質とを含有する乳化剤形の化粧料であって、前記硬化菜種油の含有量が1〜10質量%であり、且つ、前記菜種油の含有量に対して、リン脂質の含有量が1〜20質量%である化粧料は全く知られていないし、この様な構成の化粧料が肌の柔軟性を高める効果に優れることも全く知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2006−6541号公報
【特許文献2】特開2005−348991号公報
【特許文献3】特開2005−220084号公報
【特許文献4】特開2005−220119号公報
【特許文献5】特開2005−8591号公報
【特許文献6】特開2000−199753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、肌の柔軟性を向上せしめる因子の少なくとも一部を明らかにし、肌を柔軟化する作用を有する化粧料を設計する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、肌の柔軟性を向上せしめる因子の少なくとも一部を明らかにし、肌を柔軟化する作用を有する化粧料を設計する手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、化粧料の1)硬化菜種油と、2)リン脂質との併用により、この様な効果が得られることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
【0007】
(1)1)硬化菜種油と、2)リン脂質とを含有する乳化剤形の化粧料であって、前記硬化菜種油の含有量が1〜10質量%であり、且つ、前記菜種油の含有量に対して、リン脂質の含有量が1〜20質量%であることを特徴とする、化粧料。
(2)前記リン脂質は、水酸化レシチンであることを特徴とする、(1)に記載の化粧料。
(3)予め、硬化菜種油とリン脂質とを加熱溶解させて、相溶状態の複合体を作製し、しかる後に、これを極性油からなる希釈剤で希釈し、予め溶解してある他の油相成分の混合物に加えて作製されることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の化粧料。
(4)前記希釈剤は、セチルアルコール、グリセリン、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールから選択されるアルコールと、2−エチルヘキサン酸とのエステルであることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の化粧料。
(5)有効成分として、グリチルレチン酸誘導体、オトギリソウ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、クジン抽出物、ソウハクヒ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、ツボクサ抽出物、イガイ抽出物、真珠抽出物、ダイズ抽出物、チョウジ抽出物、バクモンドウ抽出物、マルバハギ抽出物、コウキ抽出物、シラカバ抽出物、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、ジンセン抽出物、セイヨウトチノキ抽出物、油溶性カンゾウ抽出物、ビタミンE並びにその誘導体、アルブチン、ビタミンC並びにその誘導体及びベニバナ抽出物から選択されるものを含有することを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の化粧料。
(5)皮膚の柔らかさを向上させる作用を有することを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、肌の柔軟性を向上せしめる因子の少なくとも一部を明らかにし、肌を柔軟化する作用を有する化粧料を設計する手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)本発明の化粧料の必須成分である硬化菜種油
本発明の化粧料は、硬化菜種油を必須成分として含有することを特徴とする。ここで、本発明における、化粧料とは、皮膚を健やかに保つ経皮投与組成物であって、医薬用途のものを除くものであり、医薬部外品については包含する。又、前記硬化菜種油とは、ナノハナ科ナノハナの種子より、抽出或いは圧搾などにより得られる菜種油を触媒の存在下水素添加し得られたものであり、沃素価が45〜15、より好ましくは40〜20のものである。これは沃素価が下限値を下回っても、上回っても、後記リン脂質との相互作用による、肌の柔軟化作用が減じ、効果が充分でない場合が存するためである。この様な硬化菜種油としては、既に市販されているものが存し、この様な市販品を購入し、利用することが出来る。好ましい市販品としては、例えば、「菜種硬化油HR−35」(横関油脂工業株式会社製)等が例示できる。かかる成分は、後記リン脂質とともに働いて、乳化剤形の化粧料に於いて、かかる化粧料を使用することにより、その使用後、肌の柔軟性を向上させる作用を有する。この肌の柔軟性を向上せしめる作用は、AXIOM社製の「ヴィーナストロン」(Venustron)による計測値として把握することが出来る。この測定機器は、プローブからある一定の周波数(Hz)を出し、物体に接触した時の周波数の差Δfで柔らかさを評価する。具体的には、柔らかいものに触れると周波数が低くなるのでΔfがマイナスに、硬いもの触れると周波数が高くなるのでΔfがプラスになる。即ち、処置後の測定値から処置前の測定値を減じた値が負の値であって、その絶対値が大きいほど、肌の柔軟性が向上したと鑑別できる。この様な効果の閾値としては、−3が好ましく、より好ましくは、−3.5が例示できる。この様な効果を奏するためには、本発明の化粧料に於いては、前記硬化菜種油は、化粧料全量に対して、1〜10質量%含有させることが好ましく、より好ましくは、2〜8質量%である。これは少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても効果が頭打ちになり、処方の自由度を損なう場合が存するためである。
【0010】
(2)本発明の化粧料の必須成分であるリン脂質
本発明の化粧料は、必須成分としてリン脂質を含有することを特徴とする。前記リン脂質としては、通常化粧料等で使用されるものであれば特段の限定はなく、例えば、レシチン、フォスファチジン酸、フォスファチジルグリセロール、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン或いはこれらのリゾ体が好ましく例示でき、これらの中ではレシチンの不飽和結合を酸化しジヒドロキシ体とした水酸化レシチンが特に好ましい。これらのリン脂質は、ダイズ、鶏卵の卵黄、哺乳動物の脳などから抽出、精製することによって得ることが出来る。この様なものには既に化粧料原料として市販しているものが存し、かかる市販品を購入して利用することが出来る。例えば、水酸化レシチンであれば、ダイズを基源とする、水酸化レシチンとグリセリンの等量混合物である、「NIKKOL レシノール SH50」(日本サーファクタント工業株式会社製)等が好ましく例示できる。これらのリン脂質は、唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。かかる成分は、乳化系に於いて、前記他方の必須成分である、硬化菜種油とともに働いて、肌の柔軟性を向上させる作用を有する。この様な作用を奏するためには、かかるリン脂質は、総量で化粧料全量に対し、0.01〜2質量%含有することが好ましく、0.05〜1質量%含有することがより好ましい。これは少なすぎても、又、多すぎても前記効果を奏さない場合が存するためである。尚、本発明の化粧料の必須成分である、前記硬化菜種油と、リン脂質とは、本発明の化粧料を製造するに際し、予め、充分に相互に溶媒和させた状態で油相成分全体に、均一に分散させるのが好ましく、この為には、溶融状態で効果菜種油と、リン脂質とを予め良く混合し、溶媒和した状態の一種の複合体を形成させ、しかる後に、かかる複合体との相溶性のよい、極性油で希釈し、しかる後のこれら以外の油相成分と混合する過程を経て製造することが好ましい。前記希釈のための極性油としては、セチルアルコール、グリセリン、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールから選択されるアルコールと、2−エチルヘキサン酸とのエステルが好ましく、該希釈のための極性油剤と前記複合体の混合比は、1:2〜2:1が好ましい。前記の希釈のための極性油の市販品としては、例えば、2−エチルヘキサン酸セチルエステルである、「セチオールSN−1」(コグニスジャパン株式会社製)、テトラ(2−エチルヘキサン酸)ペンタエリスリットである、「セチオールPEEH4」(コグニスジャパン株式会社製)、2−エチルヘキサン酸トリグリセリドである、「ノムコートTIO」(日清オイリオグループ株式会社製)、ネオペンチルグリコール−2−エチルヘキサン酸ジエステルである、「コスモール525」(日清オイリオグループ株式会社製)等が好適に例示できる。
【0011】
(3)本発明の化粧料
本発明の化粧料は、前記の必須成分を含有し、乳化剤形であることを特徴とする、かかる乳化剤形としては、水中油乳化剤形、油中水乳化剤形、これらの複合化した多層乳化剤形などが好ましく例示でき、水中油乳化剤形がこれらの中では特に好ましい。これは本発明の効果が、水中油乳化剤形では特に如実にあらわれるからである。
【0012】
本発明の化粧料に於いては、これまで述べてきた成分以外に、通常化粧料で使用される任意成分を、本発明の効果を妨げない範囲で含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、硬化されていないナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。これらの成分の内、特に好ましいものは、肌の柔軟化に好適な、コラーゲンの弾性消失の原因である、炎症を抑える、有効成分、或いは、線維芽細胞のコラーゲンの産生能を高める作用を有する、有効成分等であり、具体的には、グリチルレチン酸誘導体、オトギリソウ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、クジン抽出物、ソウハクヒ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、ツボクサ抽出物、イガイ抽出物、真珠抽出物、ダイズ抽出物、チョウジ抽出物、バクモンドウ抽出物、マルバハギ抽出物、コウキ抽出物、シラカバ抽出物、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、ジンセン抽出物、セイヨウトチノキ抽出物、油溶性カンゾウ抽出物、ビタミンE並びにその誘導体、アルブチン、ビタミンC並びにその誘導体及びベニバナ抽出物から選択されるものである。グリチルレチン酸誘導体としては、グリチルレチン酸ステアリルなどのグリチルレチン酸のエステル、グリチルレチン酸の配糖体の塩である、グリチルリチン酸ジカリウムなどが好ましく例示でき、その含有量は0.03〜0.3質量%が好ましい。これらはカンゾウの抽出物として含有させることも出来る。オトギリソウの抽出物はファレロールを少なくとも100μM含有する形で含有させることが好ましい。ローヤルゼリー抽出物は1)ローヤルゼリー中のタンパク質の非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳永動において単一バンドを形成する、2)還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定される分子量が約57キロダルトンである、蛋白を(例えば、特許文献6を参照)、総蛋白に対して少なくとも9質量%含有するものを0.001〜0.1質量%含有することが好ましい。クジン抽出物は、ソフォラフラバノンGを少なくとも100μM 含有するものを少なくとも0.001質量%含有することが好ましい。セイヨウノコギリソウはセンタウレイジンを少なくとも100μM含有するものを0.01〜1質量%含有することが好ましい。ダイズ抽出物としては、大豆蛋白を酵素加水分解したもの、ダイズイソフラボンが好ましく、かかる成分の好ましい含有量は、総量で0.01〜0.2質量%である。イガイ抽出物は、イガイの貝柱乃至はヒモのグリコーゲンを抽出したものが好ましく、その含有量は0.001〜0.2質量%が好ましい。チョウジ抽出物はオイゲノールを0.1〜1質量%含有するものが好ましく、かかる抽出物を0.01〜0.3質量%含有することが好ましい。バクモンドウはオフィオポゴナノンBを0.01〜0.1質量%含有するものを0.01〜0.2質量%含有することが好ましい。シラカバ抽出物は、ベツリン乃至はベツリン酸を200μM以上含有するものが好ましく、かかる抽出物を0.01〜0.1質量%含有することが好ましい。セイヨウトチノキ抽出物は、果実の抽出物が好ましく、中でもエスシンを0.01〜1質量%含有するものを0.01〜1質量%含有することが好ましい。油溶性カンゾウは、グラブリジンを0.01〜1質量%含有するものを0.01〜0.1質量%含有することが好ましい。ベニバナ抽出物は、カーサミンを含有すれば良く、カーサミン含有量に換算して、0.01〜0.2質量%含有することが好ましい。ローズマリーはロスマリン酸を0.001〜0.1質量%含有するものが好ましい。ビタミンCは1〜5質量%含有することが好ましく、アルブチン乃至はその塩は1〜10質量%含有することが好ましい。更に、化粧料の使用後感を向上させ、肌の柔軟性の向上を使用者に認識させるためには、パルミチン酸セチルを0.1〜1質量%含有させることが好ましい。
【0013】
本発明の化粧料は、前記の成分を常法に従って処理することにより、製造することが出来る。斯くして得られた、本発明の化粧料は、それを塗布することにより、肌の柔軟性を向上せしめ、堅く、弾性を消失した肌を、もち肌のように柔らかい肌にリカバーする作用に優れる。
【0014】
以下に、実施例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0015】
以下に示す処方に従って、本発明の化粧料である、乳液1(水中油乳化剤形)を製造した。即ち、イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘの成分をそれぞれ80℃に加熱し、溶解状態のイとロとを良く混合し、均一にさせた後、一度冷却し、しかる後に再度加熱溶解させた。これにハを加えて希釈し、これを一様に攪拌し、これをニに加え、油相を作製した。油相を、80℃に保ったまま、攪拌しながら、徐々にホを加え乳化し、ホモジナイザーで乳化粒子を整えた後に、攪拌下、徐々にヘを加え、中和し、増粘させた。これを攪拌冷却し、本発明の化粧料である、乳液1を得た。同様に、硬化菜種油を菜種油(沃素価120)に置換した比較例1、硬化ヤシ油(沃素価32)に置換した比較例2、リゾレシチンをステアリン酸モノグリセリドに置換した比較例3も同様に作製した。
【0016】
【表1】

【0017】
<試験例1>
乳液1、比較例1〜3を用いて、肌柔軟化作用を比較した。即ち、パネラー1群10名、計40名を用意し、Day0に「ヴィーナストロン」で肌の柔軟性を測定した後、1日朝晩2回、それぞれの化粧料で処理した。この作業を2週間連続して行った後、再度「ヴィーナストロン」で肌の柔軟性を測定した。処理後の数値から、処理前の数値を減じた値(差分)を求めた。結果を表2に示す。これより、硬化菜種油と、リン脂質の組み合わせにより、優れた肌の柔軟性の向上作用の具現化が行われていることがわかる。
【0018】
【表2】

【実施例2】
【0019】
実施例1と同様に、下記の処方に従って、本発明の化粧料である、乳液2〜を作製した。このものを試験例1の方法に従って評価した結果を表4に示す。リン脂質であればリゾレシチン同様の作用を有するが、この様な作用はリゾレシチンが特に優れることがわかる。
【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、肌の柔軟性を向上せしめる化粧料に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)硬化菜種油と、2)リン脂質とを含有する乳化剤形の化粧料であって、前記硬化菜種油の含有量が1〜10質量%であり、且つ、前記菜種油の含有量に対して、リン脂質の含有量が1〜20質量%であることを特徴とする、化粧料。
【請求項2】
前記リン脂質は、水酸化レシチンであることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
予め、硬化菜種油とリン脂質とを加熱溶解させて、相溶状態の複合体を作製し、しかる後に、これを極性油からなる希釈剤で希釈し、予め溶解してある他の油相成分の混合物に加えて作製されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記希釈剤は、セチルアルコール、グリセリン、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールから選択されるアルコールと、2−エチルヘキサン酸とのエステルであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の化粧料。
【請求項5】
有効成分として、グリチルレチン酸誘導体、オトギリソウ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、クジン抽出物、ソウハクヒ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、ツボクサ抽出物、イガイ抽出物、真珠抽出物、ダイズ抽出物、チョウジ抽出物、バクモンドウ抽出物、マルバハギ抽出物、コウキ抽出物、シラカバ抽出物、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、ジンセン抽出物、セイヨウトチノキ抽出物、油溶性カンゾウ抽出物、ビタミンE並びにその誘導体、アルブチン、ビタミンC並びにその誘導体及びベニバナ抽出物から選択されるものを含有することを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の化粧料。
【請求項6】
皮膚の柔らかさを向上させる作用を有することを特徴とする、請求項1〜5何れか1項に記載の化粧料。

【公開番号】特開2008−115111(P2008−115111A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299873(P2006−299873)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】