説明

乳化剤形の皮膚外用剤

【課題】 炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭酸ジエステル、短鎖分岐脂肪酸の多価アルコールエステルなどの溶剤性の油脂を安定に乳化する技術を提供する。
【解決手段】 1)アルギン酸の多価アルコールエステル及び/又はその塩と、2)炭酸ジエステル及び分岐脂肪酸(炭素数4〜10)の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上とを乳化剤形の皮膚外用剤に含有させる。前記アルギン酸の多価アルコールエステルは、アルギン酸プロピレングリコールエステルが好ましく、前記炭酸ジエステル及び炭素数4〜10の分岐脂肪酸の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキサン酸エステルから選択されるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤に関し、更に詳細には乳化剤形の皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
メークアップ化粧料は、粉体の光学的効果を利用し、シミやソバカスなどの好ましくない色調特異部位をカバーし美しく装う化粧料である。化粧膜が崩れることによる、粉体の光学効果の変化はメークアップ化粧料に於いては最も回避すべき現象であり、この為メークアップ化粧料の化粧持ちの向上が種々検討され、幾多の化粧持ちに優れる化粧料が開発されている。この様な化粧料としては、例えば、疎水性の高い被膜を形成するポリマーを含有させた化粧料、3次元構造を有するシリコーンなどのように、皮膚との接着、密着性に優れた被膜に粉体を分散させたもの、油中水乳化剤形を採用し、耐水性の高い被膜を形成させる等の技術が例示できる。これらの新規技術の開発により、化粧持ちは向上されたが、その反面、化粧膜を除去するには、従来のクレンジングや洗顔などの方法では除去しにくくなりつつあり、この様な技術に対応した、除去化粧料の開発が望まれていた。
【0003】
この様な落としにくい化粧膜の除去には、ネイルカラーの除去技術である、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭酸ジエステル、短鎖分岐脂肪酸の多価アルコールエステルなどの溶剤性の油脂を利用する方法(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)が考えられるが、粉体のような両親媒性の成分に対しては、この様な溶剤性油脂によっても、粉体類或いは被膜が皮膚上に残存してしまう場合が存し、この原因は親水性の成分の不足によるものと考えられた。この様な状況は二酸化チタンなどの紫外線遮蔽剤を含有する紫外線ケア用の化粧料に於いても、光学効果を紫外線防護効果に読み替えれば同様の状況であると言える。
【0004】
親油性物質と親水性物質とをともに可溶化、分散する技術としては、乳化物を媒体に使用する技術が存するが、前記溶剤性油脂は、乳化のための必須条件である界面活性剤の界面への配向を、油相に界面活性剤を溶解させることにより阻害するため、容易には乳化できない問題が存した。
【0005】
視点を変えて、「溶剤性油脂」を乳化した剤形は、ポリエンマクロライド系抗生物質、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤等の水難溶性或いは油脂難溶性薬剤の経皮投与のためのベヒクルとして好適とも考えられ、この点からも溶剤性油脂を乳化した外用剤形の開発が望まれていると言える。
【0006】
一方、アルギン酸プロピレングリコールエステルのような、アルギン酸の多価アルコールエステル及び/又はその塩は増粘剤として化粧料などに使用されている(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7を参照)が、前記溶剤性油脂の乳化の為に使用された例はないし、かかる成分を利用することにより、溶剤性油脂の乳化がなしうることも全く知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−269540号公報
【特許文献2】特開平9−227357号公報
【特許文献3】特表2001−521881号公報
【特許文献4】特開2006−28177号公報
【特許文献5】特表平9−506098号公報
【特許文献6】特開2002−194168号公報
【特許文献7】WO01/093812
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭酸ジエステル、短鎖分岐脂肪酸の多価アルコールエステルなどの溶剤性の油脂を安定に乳化する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭酸ジエステル、短鎖分岐脂肪酸の多価アルコールエステルなどの溶剤性の油脂を安定に乳化する技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)アルギン酸の多価アルコールエステル及び/又はその塩乳化剤乃至は乳化助剤として使用することにより、この様な溶剤性の油脂を乳化し、皮膚外用剤に剤形化できることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)1)アルギン酸の多価アルコールエステル及び/又はその塩と、2)炭酸ジエステル及び分岐脂肪酸(炭素数4〜10)の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上とを含有する乳化剤形の皮膚外用剤。
(2)前記アルギン酸の多価アルコールエステルは、アルギン酸プロピレングリコールエステルであることを特徴とする、(1)に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
(3)前記炭酸ジエステル及び炭素数4〜10の分岐脂肪酸の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキサン酸エステル及びプロピレングリコールジ−2−エチルヘキサン酸エステルから選択される1種乃至は2種以上であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
(4)前記炭酸ジエステル及び炭素数4〜10の分岐脂肪酸の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキサン酸エステル及びエチレングリコールジ−2−エチルヘキサン酸エステルから選択される1種乃至は2種以上の含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、5〜30質量%であることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
(5)クレンジング化粧料であることを特徴とする(1)〜(4)何れか1項に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
(6)更に、親水性の非イオン界面活性剤を0.5〜5質量%含有し、ウォッシュオフ態様で使用されるべきものであることを特徴とする、(5)に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭酸ジエステル、短鎖分岐脂肪酸の多価アルコールエステルなどの溶剤性の油脂を安定に乳化する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分である溶剤性の油脂
本発明の皮膚外用剤は、炭酸ジエステル及び分岐脂肪酸(炭素数4〜10)の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上を含有し、乳化剤形であることを特徴とする。ここで、炭酸ジエステル及び分岐脂肪酸(炭素数4〜10)の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上は、化粧料などの皮膚外用剤に於いて、皮膚を滑らかにし、且つ、閉塞性によって皮膚を保湿する油脂としての作用を有しながら、ポリマー、コポリマー、高融点ワックスなどの難溶性の成分を溶かす作用に優れる溶剤としての性格も併せ持つ。かかる成分は、コポリマー類を含有する化粧料によって、塗布後に皮膚上の形成される、除去しにくい化粧膜の骨格部分となっているコポリマー類を溶解せしめ、落としやすくさせる効果を有する。この様な炭酸ジエステル及び分岐脂肪酸(炭素数4〜10)の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上の具体例を例示するならば、炭酸ジエステルであれば、炭酸メチレン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレンなどの炭素数1〜4のものの環状ジエステル乃至は炭酸ジカプリン、炭酸ジカプリルなどの炭素数6〜12の中鎖アルコールのジエステルが好ましい。特に好ましいものは、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリルである。又、分岐脂肪酸(炭素数4〜10)の多価アルコールエステルとしては、イソブタン酸、2−メチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルオクタン酸などの、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、1,3−ブタンジオールエステル、グリセロールエステルなどが好適に例示でき、特にプロピレングリコールエステル及びエチレングリコールエステルが好ましい。エステルとしては、ジエステルでも、モノエステルでも特段の制限は無い。特に好ましい具体例としては、2−エチルヘキサン酸モノプロピレングリコールエステル、2−エチルヘキサン酸ジプロピレングリコールエステル、2−エチルヘキサン酸モノエチレングリコールエステル、2-エチルヘキサン酸エチレングリコールジエステル、2−エチルヘキサン酸グリセリルモノエステルなどが挙げられ、中でも2−エチルヘキサン酸プロピレングリコールモノエステル乃至は2-エチルヘキサン酸エチレングリコールジエステルが特に好適に例示できる。これらのエステルに於いては少なくとも1個の水酸基を有することが好ましい。特に好ましくは多価アルコールのモノエステルの形態を取ることである。かかる成分は唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。前記の溶剤効果と、油脂効果を同時に発現するためには、かかる成分は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは8〜25質量%であり、更に好ましくは、9〜22質量%である。これは少なすぎると前記溶剤効果を奏しない場合が存し、多すぎると本発明の効果である乳化剤形の乳化を損なう場合が存するからである。
【0012】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるアルギン酸の多価アルコールエステル
本発明の皮膚外用剤は、乳化剤形であって、アルギン酸の多価アルコールエステル及び/又はその塩を含有することを特徴とする。この様なアルギン酸の多価アルコールエステルを構成する多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、1,3−ブタンジオール、エリスリトール等が好適に例示できるが、プロピレングリコールエステルが特に好ましい。かかるエステルは、アルギン酸のカルボン酸の少なくとも一部がプロピレングリコールなどの多価アルコールと結合したものであり、フリーのカルボキシル基の存在も容認する。この様なアルギン酸の多価アルコールエステルには既に市販されているものが存し、この様な市販品を購入し利用することが出来る。この様な市販品としては、例えば、株式会社キミカ製の「キミロイド」シリーズが好適に例示できる。「キミロイド」シリーズは、粘度の違いにより、LLV(10〜30mPa・s)、NLS−K(30〜60mPa・s)、LV(60〜100mPa・s)、MV(100〜150mPa・s)、HV(150〜250mPa・s)、BF(50〜175mPa・s)の6つのグレードが存し、何れも使用可能であるが、本発明に於いては、「キミロイド」シリーズでは「キミロイドBF」が特に好ましい。これらにはフリーのカルボキシル基が存し、かかるカルボキシル基を塩に誘導して使用することも出来、塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。これらの内では、乳化安定化作用に優れるアルカリ土類金属塩が特に好ましく、中でもカルシウム塩が特に好ましい。かかるカルシウム塩を形成するための塩化カルシウムのような水溶性塩をアルギン酸多価アルコールエステルに対して1/10〜1/2質量倍加えて塩とすることが好ましい。本発明の皮膚外用剤におけるアルギン酸の多価アルコールの好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。かかる成分は、この様な量範囲において、前記溶剤性の油脂を乳化し、安定化する作用を発揮する。
【0013】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有し、乳化剤形を取ることを特徴とする。前記乳化剤形としては、特段の限定は存しないが、水中油乳化剤形であることが好ましい。ここで、本発明に言う、水中油乳化剤形とは、最外相が水相であって、内相に油滴相を有する乳化剤形の総称であり、水中油中水剤形などの複合乳化剤形も、前記条件を充足する限りに於いては包含する。
【0014】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる必須成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0015】
前記の任意成分の中で特に好ましいものは、非イオン界面活性剤であり、中でも、HLBが10以上の親水性非イオン界面活性剤は特に好ましい。かかる成分を含有する形態に於いては、後記クレンジング化粧料に適用した場合、汚れを製剤で包含した後に、水洗することにより、化粧料と汚れとを洗浄料なしに流水のみで洗い流すことが出来るからである。この様な作用を本発明に於いてはウォッシュオフ機能という。この様なウォッシュオフ機能を具現化するためにはHLB10以上の非イオン界面活性剤を0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%含有することが好ましい。HLB10以上の非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンの付加モル数が20以上の硬化されていても良いヒマシ油、ポリオキシエチレンの付加モル数が7以上のポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンの付加モル数が7以上のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンの付加モル数が7以上のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが好適に例示でき、これらの中ではポリオキシエチレン(25)ステアリン酸エステル(HLB15)が特に好適に例示できる。
【0016】
更に、前記アルギン酸の多価アルコールエステルによる乳化の安定性を高める上で、アルギン酸及び/又はその塩を、アルギン酸の多価アルコールエステルと同量乃至は2質量倍含有することも好ましい。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、皮膚の外用で適用されるものであれば特段の限定無く適用することが可能であり、例えば、保湿クリーム、保湿乳液、美白クリーム、マッサージクリーム、栄養乳液、栄養クリーム、クレンジングクリームなどの化粧料、抗真菌皮膚外用医薬、抗炎症皮膚外用医薬、ステロイド皮膚外用医薬、殺菌創傷治癒皮膚外用医薬などの皮膚外用医薬などが特に好適に例示できる。特に好ましいものは、前記溶剤性の油脂の溶剤効果と、水性成分の水性成分包含、除去効果をともに利用できる、クレンジング化粧料である。クレンジング化粧料に於いては、前記の如く、HLB10以上の非イオン界面活性剤を含有させて、ウォッシュオフ効果を持たせることが好ましい。又、かかるクレンジング化粧料の、落とすべき対象としては、ポリマー乃至はコポリマーを含有し、且つ、粉体とワックスなどの水難溶性成分を含む蓋然性の高い化粧料であり、加えて、アイライナーやマスカラなどのように、センシチブな部位の近傍に適用する化粧料である。この様な化粧料に対しては、本発明の皮膚外用剤の効果が特に顕著に発現される。
【0018】
又、本発明の皮膚外用剤は、難溶性の薬剤を有効成分として含有する、皮膚外用医薬に適用することも好ましい。これは、難溶性薬剤の可溶化と経皮吸収に本発明の皮膚外用剤の特性を生かせるからである。この様な難溶性薬剤としては、例えば、ポリエンマクロライドのような抗生物質、ステロイド、ウルソール酸、オレアノール酸などのトリテルペン酸、ウルソール酸ステアリル、ウルソール酸ベンジルなどのトリテルペン酸のエステル、ウルソール酸グルコシドなどのトリテルペン酸配糖体、スフィンゴシン、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スチグマスタノールなどのフィトステロール、スチグマスタノールグルコシド、スチグマスタノールマルトシドなどのフィトステロールの配糖体などが好適に例示できる。かかる難溶性の薬剤の好ましい含有量は、0.01〜10質量%である。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、前記の成分を常法に従って処理することにより、製造することが出来る。以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、かかる実施例にのみ限定されないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0020】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤であるクレンジング化粧料を製造した。即ち、イ、ロ、ハをそれぞれ80℃に加熱し、攪拌下イに徐々にロを加えて乳化し、しかる後に、ハを加えて構造を形成せしめ、攪拌冷却して、本発明の乳化剤形の皮膚外用剤である、水中油乳化剤形のクレンジング化粧料1を得た。同様に操作して、「キミロイドBF」をアルギン酸ナトリウムに置換した比較例1、2−エチルヘキサン酸プロピレングリコールモノエステルを2−エチルヘキサン酸セチルに置換した比較例2、「キミロイドBF」をPOE(25)ステアリン酸に置換した比較例3、2−エチルヘキサン酸プロピレングリコールモノエステルを2−エチルヘキサン酸セチルに、且つ、「キミロイドBF」をPOE(25)ステアリン酸に置換した比較例4も同様に作製してみたところ、比較例1、比較例3は製造直後に分離しており、乳化物が得られなかった。
【0021】
【表1】

【0022】
<試験例1>
クレンジング化粧料1、比較例2、比較例4についてクレンジング効果を比較した。方法は型どり用のシリコーンゴムを用いて上瞼の形状を写し取った型を4つ用意し、この瞼の型の淵の部位に下記の表2に処方を示すアイライナーを塗布し、乾燥させた後、3つについて、これを電子天秤にのせ、それぞれクレンジング1、比較例2、比較例4を含浸した綿棒で15〜25gに圧着力がおさまるように20回擦過し、しかる後に流水下に30分さらし、「キムワイプ」で水分を除去し、拡大ビデオで画像として取込、塗布部位について、「フォトショップ」でGBRに分解し、Bチャンネル画像を作製し、総輝度を算出し、これを比較した。クレンジング操作を行わなかったものを無処置とし、同様にBチャンネル画像の総輝度を求めた。即ち、アイライナーが残存していれば総輝度は大きくなり、アイライナーが除去されれば総輝度は小さくなる。下記の表3に処置の総輝度を無処置の総輝度で除した値である、Bチャンネル総輝度比を示す。これより本発明の皮膚外用剤であるクレンジング化粧料は、細かい起伏を有し、力をかけにくい部位に塗布された、コポリマーやワックスを配合した、例えば、アイライナーなどのアイメークアップ化粧料などのメークアップ化粧料を除去する作用に優れることがわかる。
【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【実施例2】
【0025】
実施例1と同様に、下記処方に従って、本発明のクレンジング化粧料2を作製した。このものの試験例1の評価は0.13で同様の効果を示した。また、このものをクレンジング化粧料1とともに5℃に3年間保存したところ、クレンジング化粧料1には外観上の変化は認められなかったが、クレンジング化粧料2は表面の状態が粗くなり、乳化粒子も大きくなっていた。これより、本発明の皮膚外用剤に於いては、アルギン酸を併用する方が好ましいことが判明した。
【0026】
【表4】

【実施例3】
【0027】
実施例1と同様に、下記処方に従って、本発明のクレンジング化粧料3を作製した。このものの試験例1の評価は0.11で同様の効果を示した。他のグレードのアルギン酸プロピレングリコールエステルも使用可能であることがわかる。
【0028】
【表5】

【実施例4】
【0029】
下記に示す処方に従って、難溶性有効成分を含有するクリーム4〜12を作製した。何れの難溶性成分も結晶を析出することなく配合された。また、この製剤については、シリコーン板に塗布し、流水下に30秒さらしても皮膚外用剤は残存しており、塗布膜に耐水性を付与したり、ウォッシュオフ性を付与したりするのも、非イオン界面活性剤の添加によって任意にコントロールできることもわかった。
【0030】
【表6】

【0031】
【表7】

【実施例5】
【0032】
実施例1と同様に、下記処方に従って、本発明のクレンジング化粧料13を作製した。このものの試験例1の評価は0.13で同様の効果を示した。
【0033】
【表8】

【実施例6】
【0034】
下記に示す処方に従って、難溶性有効成分を含有するクリーム14〜22を作製した。何れの難溶性成分も結晶を析出することなく配合された。また、この製剤については、シリコーン板に塗布し、流水下に30秒さらしても皮膚外用剤は残存しており、塗布膜に耐水性を付与したり、ウォッシュオフ性を付与したりするのも、非イオン界面活性剤の添加によって任意にコントロールできることもわかった。
【0035】
【表9】

【0036】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、クレンジング化粧料や難溶性有効成分含有皮膚外用剤など、皮膚外用剤全般に応用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)アルギン酸の多価アルコールエステル及び/又はその塩と、2)炭酸ジエステル及び分岐脂肪酸(炭素数4〜10)の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上とを含有する乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項2】
前記アルギン酸の多価アルコールエステルは、アルギン酸プロピレングリコールエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記炭酸ジエステル及び炭素数4〜10の分岐脂肪酸の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキサン酸エステル及びエチレングリコールジ−2−エチルヘキサン酸エステルから選択される1種乃至は2種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記炭酸ジエステル及び炭素数4〜10の分岐脂肪酸の多価アルコールエステルから選択される1種乃至は2種以上は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキサン酸エステル及びエチレングリコールジ−2−エチルヘキサン酸エステルから選択される1種乃至は2種以上の含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、5〜30質量%であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項5】
クレンジング化粧料であることを特徴とする請求項1〜4何れか1項に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項6】
更に、親水性の非イオン界面活性剤を0.5〜5質量%含有し、ウォッシュオフ態様で使用されるべきものであることを特徴とする、請求項5に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2008−266249(P2008−266249A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113740(P2007−113740)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】