説明

乾燥処理装置、撹拌体及び乾燥処理方法

【課題】被処理物に含まれる油が多くて処理室内が滑りやすくなっていても効率的な撹拌ができるようにし、処理物に骨片が含まれないほぼ完全な粉化処理を行うことができるようにした乾燥処理装置を提供する。
【解決手段】乾燥処理装置(A)は、被処理物の投入と排出ができる処理室(1)、撹拌体(2)、加熱室(4)とを備えている。撹拌体(2)は、正逆回転方向に駆動される回転軸(21)と、回転軸(21)に所要数設けられ、処理室(1)内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室(1)内において回転軸(21)の軸線方向に送ることができる羽根板(24)を有する撹拌パドル(22,22a)を備え、このうち撹拌パドル(22)には、刃部(28)が処理室(1)内の底部において内面に近接して回転移動し、被処理物が処理室(1)の一端側へ送られて被処理物の圧力が高くなったときに逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め板を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥処理装置、撹拌体及び乾燥処理方法に関するものである。更に詳しくは、例えば養鶏場において飼育途中で死んだ鶏を高温処理して滅菌し、短時間で粉体状にすることができる乾燥処理装置、撹拌体及び乾燥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ブロイラーを生産する養鶏場においては、60日の飼育期間中、2〜4%程度の鶏が病気などで死ぬ。これら斃死鶏は、鶏病の汚染源や悪臭の発生源とならないように早期に処分する必要がある。つまり、10万羽のブロイラーの飼育を行う養鶏場では、毎日平均して30〜40羽程度処分しなければならないことになる。
【0003】
斃死鶏の処分方法には、(1)土に埋める、(2)発酵槽による処理、(3)焼却、等の各方法がある。(1)は、処分するために広大な土地が必要であることや、地下水の汚染源となるおそれがある等、リスクが大きく、好ましい処理方法とはいえない。また、(2)の処分を行うものとしては、例えば特許文献1記載の処理装置があり、(3)の処分を行うものとしては、例えば特許文献2記載の焼却装置がある。
【0004】
特許文献1記載の処理装置は、無端状の搬送路が形成され、内部に鶏糞と共に斃死鶏が投入収納される処理層と、斃死鶏を切断細分化すると共に、この細分化された斃死鶏と鶏糞との混合物を撹拌することにより空気を供給することができ、処理層の上方から臨んで、回転軸の周囲に耕耘爪を放射状に植設した動輪を有する撹拌装置とを有し、斃死鶏の早期処理を確実に、簡単に達成することができるというものである。
【0005】
また、特許文献2記載の焼却装置は、燃焼装置と、燃焼装置に被燃焼物を送り込む供給装置を備え、供給装置は、搬送コンベア、崩落装置を備え、燃焼装置は、燃焼室を有する装置基体、燃焼室内部に設けられ供給装置により送られた被燃焼物を排出側へ搬送しながら無酸素状態で加熱炭化させる炭化装置、燃焼室内部に設けられ炭化装置から排出された可燃ガスと炭化物を排出側へ搬送しながら有酸素状態で燃焼させる燃焼部、焼灰を外部へ排出する排出コンベアを備えており、鶏糞等の被燃焼物の焼却を外部に悪臭が漏れないようにしながら高効率で行うことができるというものである。
【0006】
【特許文献1】特開2002−210437
【特許文献2】特開平5−312308
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1記載の処理装置及び特許文献2記載の焼却装置には、それぞれ次のような課題があった。
まず、特許文献1記載の処理装置は、斃死鶏を処理槽で撹拌しながら発酵させて処理するものであり、処理槽の設置に広い土地が必要になる。また、処理装置による斃死鶏の処理には相当の時間がかかる。このため、場内汚染の原因となる野良犬等の野生獣あるいは衛生害虫の場内侵入及び近年頻発している鳥インフルエンザの発生の原因となる野鳥の場内侵入を招きやすいという大きな問題がある。
【0008】
そこで、処理を短時間で行うことができ、野良犬、野鳥等の場内侵入を招く原因となりにくい焼却装置による処理が考えられる。特許文献2記載の焼却装置は本発明者が提案したものであり、鶏糞等の焼却処理には十分に有用なものである。しかしながら、これを仮に斃死鶏の処理に使用した場合には、次のようないくつかの問題が生じる。
【0009】
つまり、斃死鶏はいわゆる丸鶏のままで処分されるため、処理室に投入された斃死鶏を普通の撹拌羽根で撹拌したのでは、高温下での処理とはいえ細かくなるまでに相当に長い時間を必要とする。また、肉や羽根等が細かく粉化されても、足骨等の太い骨は粉化せず大きな骨片として残ってしまう。また、丸鶏の脂肪率は25%程もあるので、処理室内が油で滑りやすくなり、内部で撹拌しようとしても一塊で回ってしまい撹拌の効率が極めて悪いという根本的な問題もある。
【0010】
(本発明の目的)
本発明の目的は、例えば養鶏場で飼育途中で死んだ斃死鶏を処分する場合において、斃死鶏を処理室内において切断して細かくすることによって、斃死鶏に含まれる油が多くて処理室内が滑りやすくなっていても、確実で効率的な撹拌ができるようにし、高温処理によって処理物を滅菌すると共に処理物に骨片が含まれないほぼ完全な粉化処理を短時間で行うことができるようにした、乾燥処理装置、撹拌体及び乾燥処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
被処理物を処理する乾燥処理装置であって、
両端側に端壁を有し投入部と排出部を有する処理室と、
該処理室内に設けられた撹拌体と、
前記処理室を加熱する加熱室と、
を備えており、
前記撹拌体は、
駆動系によって正逆回転方向に駆動される回転軸と、
該回転軸に所要数設けられ、前記処理室内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室内において回転軸の軸線方向に送ることができる送り撹拌部と、
前記回転軸に所要数設けられ、回転移動に伴い一部または外周部が前記処理室内の底部において内面に近接して回転移動する戻り止め部と、
を備えており、
該戻り止め部は、被処理物が前記送り撹拌部によって処理室の一方の端壁側へ送られて被処理物の圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする、
乾燥処理装置である。
【0012】
本発明は、隣り合う戻り止め部を、回転軸の軸周方向へ所要角度でずらしながら設けてもよい。
【0013】
本発明は、戻り止め部を回転軸に偏心して固着された円板としてもよい。
【0014】
本発明は、送り撹拌部と戻り止め部を一体的に形成してもよい。
【0015】
本発明は、
乾燥処理装置に使用される撹拌体であって、
回転軸と、
回転軸に所要数設けられている撹拌パドルと、
を備えており、
前記撹拌パドルは、
乾燥処理装置の処理室内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室内において回転軸の軸線方向に送ることができる送り撹拌部と、
該送り撹拌部と一体的に設けられ、回転移動に伴い一部または外周部が前記処理室内の底部において内面に近接して回転移動し、被処理物が処理室の一方の端壁側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部と、
を備えている、撹拌体である。
【0016】
本発明は、
両側に端壁を有する処理室を加熱し、処理室内に設けられた撹拌体によって被処理物を一方の端壁側へ送り、被処理物の圧力が高くなったときに撹拌体の撹拌パドルに設けられている戻り止め部によって被処理物が逆方向へ戻りにくいようにして被処理物の圧力を維持して混練し、被処理物を粉化する、
乾燥処理方法である。
【0017】
戻り止め部は、被処理物を切断する機能性を高めるために、一部または外周部に片刃や両刃状の刃を形成するのが好ましいが、これに限定するものではなく、単に全体が同じ厚さの板状としたり、外周部の厚みを薄くする等、他の構造を採用することもできる。
【0018】
(作用)
本発明に係る乾燥処理装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0019】
被処理物が斃死鶏である場合を例にとり説明する。まず、加熱室によって処理室を加熱すると共に撹拌体を駆動系によって回転させる。そして、被処理物である斃死鶏を丸のまま、投入部から処理室内に投入する。
投入された各斃死鶏は、撹拌体の回転軸に所要数設けられている戻り止め部によって骨ごと順次切断され、細かくなる。この切断は、被処理物の重さにより主に処理室内の底部において行われ、戻り止め部の一部または外周部が処理室内の底部側の内面に近接して回転移動する際に内面と戻り止め部で被処理物を挟み切るようにして行われる。
【0020】
また、戻り止め部による被処理物の切断と並行して、切断された被処理物が送り撹拌部によって撹拌されながら、処理室内において回転軸の軸線方向の一方向へ送られる。なお、被処理物である斃死鶏は脂肪率が高く処理室内は油で滑りやすくなるが、被処理物は骨まで切断されることによって細かくなっており、撹拌の際に一塊にはなりにくく、効率的に撹拌される。
【0021】
送られた被処理物は、後続して送られてくる被処理物によって押され、処理室の一端部において圧力が高まり、さらに一端部近傍に位置する送り撹拌部によって高温・高圧下で一定時間混練される。この際には、被処理物は圧力が開放される方向、すなわち前記送り方向とは逆方向へ戻ろうとするが、回転移動している各戻り止め部によってその大部分が止められるので、被処理物の高い圧力は維持される。
【0022】
このような高温・高圧下での処理が所定時間行われると、制御部によって撹拌体の回転方向が切り替えられ、撹拌体は前記と逆方向に回転する。これにより、被処理物は処理室内において前記とは逆方向に送られ、処理室内の端部において前記と同様に高温・高圧下での処理が所定時間行われる。なお、前記処理中、処理室において内部に被処理物がない側は、温度がより高温になっており、被処理物が移動してきたときも十分に高い温度で効率的な処理を行うことができる。
【0023】
撹拌体の回転方向は、一定時間毎に切り替わるように制御されており、前記処理を繰り返すことにより、被処理物の乾燥が進み、次第に粉化する。そして、処理時間がある時間を超えると、最後には、理由は定かではないが残っていた骨片までが一気に粉化する。粉化した処理物は、処理中の高温・高圧によって十分に殺菌されている。処理物は、処理室の排出部から排出され、必要に応じて飼料等に利用される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る乾燥処理装置は、例えば斃死鶏を処分する場合において、斃死鶏を処理室内において切断して細かくすることによって、斃死鶏に含まれる油が多くて処理室内が滑りやすくなっていても、確実で効率的な撹拌ができるようにし、さらに処理室内においては、送り撹拌部及び戻り止め部の作用で高温・高圧下で処理を行うことができるので、処理物を滅菌することができると共に処理物に骨片が含まれないほぼ完全な粉化処理を短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1は本発明に係る乾燥処理装置の実施の形態を示す正面視説明図、
図2は乾燥処理装置の側面視説明図、
図3は乾燥処理装置の平面視説明図である。
【0026】
図4は乾燥処理装置の撹拌体の構造を示す説明図、
図5は撹拌体に設けられている切断羽根の構造を示す斜視説明図、
図6は図4におけるI−I断面説明図である。
【0027】
乾燥処理装置Aは、斃死鶏等の被処理物を処理室に投入し高温で処理して粉化するものである。乾燥処理装置Aは、斃死鶏の他、畜糞や焼酎の搾り滓、余剰汚泥等の乾燥処理を行うこともできる。
なお、斃死鶏(へいしどり)とは、各種鶏病に冒されて死んだ鶏、あるいは脱肛が原因で死んだ鶏等、食肉用の鶏または採卵用の鶏を飼育するにあたり、何らかの原因で飼育途中で死んだ鶏のことをいう。
【0028】
乾燥処理装置Aは、処理室1、処理室1内に設けられた撹拌体2、撹拌体2を回転駆動する駆動系である駆動装置3及び処理室1を加熱する加熱室4を備えている。
以下、各部について説明するが、前記撹拌体2以外の部分の構造は公知であるので、これらの部分については簡単に説明するに止める。
【0029】
処理室1は、円筒形状の周壁10と、その両端部に設けられた円形の端壁11、12を備えている。処理室1は、加熱室4の上部に中心軸線を水平にし、長さ方向の両端部の一部を外部に出して加熱室4内に収められている。処理室1において、周壁10の図1における左側(後述する熱風路45に対応する部分)の外面には、熱気の流通角部にあたる部分の周壁10が熱気によって過剰に熱せられることによる劣化を軽減する熱保護板15が張設されている。
【0030】
処理室1において図1で左側の端壁11には、処理室1内部を密閉することができる蓋装置16が設けられている。蓋装置16は、上下方向に回動できるように軸着されたアーム(符号省略)先端に、端壁11に設けられている排出口(符号省略)を開閉する蓋板(符号省略)を固定した構造であり、ハンドル17を回転操作することにより蓋板の開閉動作を行うことができる。符号18は、処理物を排出する際の案内部となるシュートである。
【0031】
加熱室4の上部には、処理室1の周壁10上部に連通した投入部48が設けられている。投入部48は四角形の筒状に形成され、投入口(符号省略)の上縁は一方側へやや傾斜させてある(図2参照)。投入部48には、処理室1内部を密閉することができる蓋装置49が設けられている。蓋装置49は、上部側が回動自在に軸支された蓋板を有し、ハンドルバー50の上下方向の操作で開閉動作をすることができる構造である。
【0032】
また、前記投入部48には、その壁部(符号省略)を貫通して臭気送気管51の一端が接続されている。臭気送気管51の他端は、加熱室4の側壁を貫通して後述する燃焼部42に接続されている。これにより、処理室1内で発生する臭気成分は、燃焼部42に送られて燃焼され、後述する煙突47から排出される排気を脱臭することによりほぼ無臭化することができる。
【0033】
前記加熱室4は、下部に台部40を有する中空体であり、処理室1の下方側にはバーナー41を備えた燃焼部42が設けられている。燃焼部42は、上部に耐火煉瓦で形成された天壁43を備えている。天壁43は、図1においてバーナー41がある右側から左側へ向けて設けられている。天壁43の先端と加熱室4の一方の端壁44との間には空隙が設けられ、熱風が通る熱風路45となっている。
【0034】
また、天壁43と処理室1の周壁10の間にも空隙が設けられ、この部分が熱風路45とつながる熱風路46となっている。なお、熱風路46は処理室1の周壁10を包む空隙(符号省略)を通り、加熱室4の上部一端側に設けられている煙突47につながっている。
【0035】
処理室1には、撹拌体2が回転できるように軸支されている。撹拌体2は、円管状の回転軸21を有している。回転軸21は管体の内部に冷却水を通す構造としてもよいし、管体でなく中実体で形成してもよい。回転軸21は、処理室1の両端壁11、12の外側にブラケット13及びモーター台14により固定された軸受20によって両端側が軸支されている。回転軸21の中心は、周壁10が円筒形状である処理室1の中心と共通である。回転軸21は、処理室1の両端壁11、12を、処理室1内の気密が保てるように、かつ回転できるように貫通させてある。
【0036】
撹拌体2は、駆動装置3によって駆動される。駆動装置3は、前記モーター台14上部に設けられているモーター30と、スプロケットやチェーンからなり、モーター30の動力を回転軸21に伝える伝達系31を備えている。駆動装置3は、制御部(符号省略)によって、撹拌体2を所定時間ごとに正逆方向に切り替えて回転させるように制御される。
【0037】
回転軸21において、処理室1内にある部分には、所要数の撹拌パドル22、22aが軸線方向に所要間隔をおいて取り付けられている。撹拌パドル22と撹拌パドル22aは構造が異なる。撹拌パドル22は、送り撹拌部と戻り止め部が一体的に形成されている。また、撹拌パドル22aは、送り撹拌部を有し、戻り止め部は設けられていない。
【0038】
図4、図5を主に参照して撹拌パドル22と撹拌パドル22aの構造を説明する。
撹拌パドル22は、回転軸21の外周部から回転軸21の直径線方向に延長して固定された円管状の桿体23を有している。桿体23の先端には、羽根板24が設けられている。羽根板24は、回転軸21の軸線方向に対し所要角度で傾斜させて固定されている。送り撹拌部は、桿体23と羽根板24により構成されている。
【0039】
後述する撹拌パドル22aの羽根板24を含め、各羽根板24は全部が被処理物を同じ方向へ送ることができるように傾斜させてある。なお、各羽根板24の傾斜角度は、本実施の形態では約30°に設定されているが、これに限定されるものではなく、適宜設定することができる。なお、羽根板24の先端辺部は、処理室1の内面形状にほぼ沿うように円弧状に形成されている。
【0040】
撹拌パドル22は、前記桿体23と羽根板24に戻り止め板25を一体的に固定した構造である。図5に示すように、戻り止め板25は外形がほぼ円形状の板体である。戻り止め板25は、回転軸21に対して偏心させて直角に固定されている。
戻り止め板25には、回転軸21、桿体23及び羽根板24を収める切欠部26があらかじめ設けてあり、この切欠部26に回転軸21、桿体23及び羽根板24を収めるようにし境目部分を溶接して固定されている。また、戻り止め板25には、桿体23を挟む二箇所に円形の圧抜き穴27が表裏面を貫通して形成されている。
【0041】
戻り止め板25の外周部には、全周にわたって両刃状の刃部28が設けられている。前記桿体23の位置は、戻り止め板25において回転軸21から外周部までの長さが最も長い部分に重なっており、羽根板24の先端辺部は、戻り止め板25の外周部(刃部28先端)と面一となっている。戻り止め板25は、円管状の桿体23の中心線を含む中心線と平行な平面と重なるように固定されている(図4も参照)。
なお、羽根板24は、先端辺部が処理室1の周壁10内面との間に若干の隙間を設けた状態で回転移動する(図6参照)。
【0042】
撹拌パドル22aは、前記撹拌パドル22から、桿体23と羽根板24を残して戻り止め板25をなくした構造である。
各撹拌パドル22、22aは、図4において、左から撹拌パドル22a、撹拌パドル22、撹拌パドル22a、撹拌パドル22、撹拌パドル22、撹拌パドル22a、撹拌パドル22、撹拌パドル22aの順に等間隔で設けられている。各撹拌パドル22、22aは、各桿体23を90°の角度で順に周方向へずらしながら設けられている。なお、戻り止め板25を有し四箇所に設けられている撹拌パドル22同士も90°ずつずらしてある。
【0043】
(作用)
図1ないし図6を参照して、本実施の形態に係る乾燥処理装置Aの作用を被処理物が斃死鶏である場合を例にとり説明する。
まず、加熱室4下部のバーナー41に点火して処理室1を加熱し、撹拌体2を駆動装置3によって回転させる。そして、蓋装置49の蓋板を開け、投入部48から被処理物である斃死鶏を丸のまま処理室1内に投入する。蓋装置49の蓋板は閉じる。
【0044】
投入された各斃死鶏は、撹拌体2の回転軸21に所要数設けられている戻り止め板25によって骨ごと順次切断されて小片化し細かくなる。この切断は、被処理物の重さにより主に処理室1内の底部において行われ、戻り止め板25の外周部に設けられている刃部28が処理室1の周壁10内面に近接して回転移動する際に周壁10内面と刃部28で被処理物を挟み切るようにして行われる。
【0045】
戻り止め板25による被処理物の切断と並行して、切断された被処理物は桿体23と羽根板24によって撹拌されながら、処理室1内において回転軸21の軸線方向の一方向へ送られる。なお、被処理物である斃死鶏は前記したように脂肪率が高く処理室1内は油で滑りやすくなるが、被処理物は骨まで切断されることによって細かくなっており、撹拌の際に一塊にはなりにくく、効率的に撹拌される。送られた被処理物は、処理室1の端壁11または端壁12で止まり、後続して送られてくる被処理物によって押されて端部において圧力が高まる。
【0046】
さらに端部近傍に位置する撹拌パドル22、22aの桿体23及び羽根板24によって高温・高圧下で一定時間強く摩擦されながら混練される。この際には、被処理物は圧力が開放される方向、すなわち前記送り方向とは逆方向へ戻ろうとする。しかし、回転移動している各戻り止め板25によってその大部分が止められるので、被処理物の高い圧力は維持される。なお、圧力が高まった被処理物は、一部が各戻り止め板25の圧抜き穴27を通り抜けて戻ることができるようにしてあり、被処理物の圧力が過剰に高まることを防止している。
【0047】
このような高温・高圧下での処理が所定時間行われると、制御部によって撹拌体2の回転方向が切り替えられ、撹拌体2は前記と逆方向に回転する。これにより、被処理物は処理室1内において前記とは逆方向に送られ、処理室1内の端部において前記と同様に高温・高圧下での処理が所定時間行われる。なお、前記処理中、処理室1において内部に被処理物がない側は、温度がより高温になっており、被処理物が移動してきたときも十分に高い温度で効率的な処理を行うことができる。
【0048】
撹拌体2の回転方向は、一定時間毎に切り替わるように制御されており、前記処理を繰り返すことにより、被処理物は加熱されて乾燥が進み、次第に粉化する。そして、処理時間がある時間を超えると、最後には、理由は定かではないが残っていた骨片までが一気に粉化する。なお、粉化した処理物は、いうまでもなく処理中の高温・高圧によって十分に滅菌(殺菌)されている。
処理室1内の処理物は、蓋装置16の蓋板を開けてシュート18を通し外部へ排出されて、必要に応じて飼料等として利用される。
【0049】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る乾燥処理装置の実施の形態を示す正面視説明図。
【図2】乾燥処理装置の側面視説明図。
【図3】乾燥処理装置の平面視説明図。
【図4】乾燥処理装置の撹拌体の構造を示す説明図。
【図5】撹拌体に設けられている切断羽根の構造を示す斜視説明図。
【図6】図4におけるI−I断面説明図。
【符号の説明】
【0051】
A 乾燥処理装置
1 処理室
10 周壁
11、12 端壁
13 ブラケット
14 モーター台
15 熱保護板
16 蓋装置
17 ハンドル
18 シュート
2 撹拌体
20 軸受
21 回転軸
22 撹拌パドル
22a 撹拌パドル
23 桿体
24 羽根板
25 戻り止め板
26 切欠部
27 圧抜き穴
28 刃部
3 駆動装置
30 モーター
31 伝達系
4 加熱室
40 台部
41 バーナー
42 燃焼部
43 天壁
44 端壁
45 熱風路
46 熱風路
47 煙突
48 投入部
49 蓋装置
50 ハンドルバー
51 臭気送気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理する乾燥処理装置であって、
両端側に端壁(11,12)を有し投入部と排出部を有する処理室(1)と、
該処理室(1)内に設けられた撹拌体(2)と、
前記処理室(1)を加熱する加熱室(4)と、
を備えており、
前記撹拌体(2)は、
駆動系(3)によって正逆回転方向に駆動される回転軸(21)と、
該回転軸(21)に所要数設けられ、前記処理室(1)内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室(1)内において回転軸(21)の軸線方向に送ることができる送り撹拌部(23,24)と、
前記回転軸(21)に所要数設けられ、回転移動に伴い一部または外周部(28)が前記処理室(1)内の底部において内面に近接して回転移動する戻り止め部(25)と、
を備えており、
該戻り止め部(25)は、被処理物が前記送り撹拌部(23,24)によって処理室(1)の一方の端壁(11,12)側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする、
乾燥処理装置。
【請求項2】
隣り合う戻り止め部(25)を、回転軸(21)の軸周方向へ所要角度でずらしながら設けた、
請求項1記載の乾燥処理装置。
【請求項3】
戻り止め部(25)を回転軸(21)に偏心して固着された円板とした、
請求項1または2のいずれかに記載の乾燥処理装置。
【請求項4】
送り撹拌部(23,24)と戻り止め部(25)を一体的に形成した、
請求項1、2または3のいずれかに記載の乾燥処理装置。
【請求項5】
乾燥処理装置に使用される撹拌体(2)であって、
回転軸(21)と、
回転軸(21)に所要数設けられている撹拌パドル(22)と、
を備えており、
前記撹拌パドル(22)は、
乾燥処理装置の処理室(1)内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室(1)内において回転軸(21)の軸線方向に送ることができる送り撹拌部(23,24)と、
該送り撹拌部(23,24)と一体的に設けられ、回転移動に伴い一部または外周部(28)が前記処理室(1)内の底部において内面に近接して回転移動し、被処理物が処理室(1)の一方の端壁(11,12)側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部(25)と、
を備えている、
撹拌体。
【請求項6】
両側に端壁(11,12)を有する処理室(1)を加熱し、処理室(1)内に設けられた撹拌体(2)によって被処理物を一方の端壁(11,12)側へ送り、被処理物の圧力が高くなったときに撹拌体(2)の撹拌パドル(22)に設けられている戻り止め部(25)によって被処理物が逆方向へ戻りにくいようにして被処理物の圧力を維持して混練し、被処理物を粉化する、
乾燥処理方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−43790(P2010−43790A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208166(P2008−208166)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(592120036)
【Fターム(参考)】