事件情報報知システム
【課題】事件現場付近に居合わせた人自らが身を守るための支援を行う。
【解決手段】事件情報報知システムは、固定局である100親機を複数備えて構成され、移動体である複数の子機との間で無線通信路を介して相互に情報の授受を行う。無線通信処理部110は、複数の子機のひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報を受信する。この事件遭遇情報には、この情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含んでいる。すると、制御部130は、子機の各々の位置と事件現場情報で示されている位置との距離を、子機距離情報として取得する。ここで、制御部130は、この事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、子機距離情報に基づき、複数の子機の各々について作成し、その複数の子機の各々に対し、各子機についての避難誘導情報を通知して報知させる。
【解決手段】事件情報報知システムは、固定局である100親機を複数備えて構成され、移動体である複数の子機との間で無線通信路を介して相互に情報の授受を行う。無線通信処理部110は、複数の子機のひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報を受信する。この事件遭遇情報には、この情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含んでいる。すると、制御部130は、子機の各々の位置と事件現場情報で示されている位置との距離を、子機距離情報として取得する。ここで、制御部130は、この事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、子機距離情報に基づき、複数の子機の各々について作成し、その複数の子機の各々に対し、各子機についての避難誘導情報を通知して報知させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報伝達の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、不審者から子供を守る目的で、学校や警察など経由して、不審者の情報を各家庭に配信するシステムが運用されている。ここでは、このシステムを「地域見守りシステム」と称することとする。
【0003】
地域見守りシステムは、事件が発生したときに、センターに収集された事件の情報を、通信回線を用いて保護者に宛てて配信し、この情報を受け取った保護者が子供を保護するという方式のものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−229462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような地域見守りシステムは、子供の保護を保護者(大人)が行うことを前提としている。このため、子供は、保護されるまでは、事件発生の事実を知らないまま事件現場付近に居続けてしまうことがある。
【0006】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、事件現場付近に居合わせた人自らが身を守るための支援を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する事件情報報知システムは、移動体である複数の子機との間で無線通信路を介して相互に情報の授受を行うものである。このシステムは、事件遭遇情報受信手段、子機距離情報取得手段、避難誘導情報作成手段、及び避難誘導情報通知手段を有する。
【0008】
ここで、事件遭遇情報受信手段は、複数の子機のひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報を受信する。なお、事件遭遇情報は、この情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含んでいる。子機距離情報取得手段は、子機の各々の位置と事件現場情報で示されている位置との距離を、子機距離情報として取得する。避難誘導情報作成手段は、この事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、子機距離情報に基づき、複数の子機の各々について作成する。避難誘導情報通知手段は、複数の子機の各々に対し、避難誘導情報作成手段が作成した、通知先の子機についての避難誘導情報を通知して報知させる。
【0009】
このシステムによれば、避難誘導情報が、各子機についての子機距離情報に基づいて作成されて、各子機で報知される。従って、事件現場付近に居合わせても、この子機を所持していれば、報知される避難誘導情報に従って移動することで、事件現場から遠ざかる方向に避難することができる。つまり、このシステムにより、子機のユーザ自らが身を守るための支援を行うことができる。
【0010】
また、本明細書で開示する子機は、移動体であって、無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されている事件情報報知システムとの間で、該無線通信路を介して情報の授受を行うものである。この子機は、子機存在確認情報受信手段、避難先決定手段、及び避難先報知手段を有する。
【0011】
ここで、子機存在確認情報受信手段は、事件に遭遇したことを示しており他の子機から発信された事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信したことによって各親機から送られてくる子機存在確認情報を受信する。なお、子機存在確認情報は、事件を識別する事件識別情報、及び、この子機存在確認情報の発信元である各親機の位置情報である確認元親機位置情報を含んでいる。避難先決定手段は、子機存在確認情報受信手段が受信した子機存在確認情報に含まれている、事件識別情報及び確認元親機位置情報に基づき、この事件からの避難先を決定する。避難先報知手段は、避難先決定手段が決定した避難先の情報を報知する。
【0012】
子機存在確認情報を発信した親機は、事件情報報知システムを構成しているものであるので、この親機の設置場所は安全な避難先と見ることができる。子機は、事件識別情報に基づいて抽出可能である、同一の事件についての異なる親機から送られてきた子機存在確認情報に含まれている確認元親機位置情報で示される位置を、この事件からの避難先として決定し、決定された避難先の情報を報知する。従って、事件現場付近に居合わせても、この子機を所持していれば、報知される避難先の情報に従って移動することで、安全な避難先に避難することができる。つまり、この子機により、ユーザ自らが身を守るための支援を行うことができる。
【0013】
また、本明細書で開示する事件情報報知システムは、無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されており、移動体である複数の子機との間で該無線通信路を介して相互に情報の授受を行うものである。なお、この親機は、事件遭遇情報受信手段、誘導要求情報受信手段、避難経路決定手段、及び避難経路情報通知手段を有する。
【0014】
ここで、事件遭遇情報受信手段は、複数の子機のうちのひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信する。なお、事件遭遇情報は、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含んでいる。誘導要求情報受信手段は、複数の子機のうちのひとつから送られてくる、子機毎に予め設定されている避難先までの経路の誘導の要求を示している誘導要求情報を受信する。なお、誘導要求情報は、その避難先の位置を示す避難先位置情報を含んでいる。避難経路決定手段は、誘導要求情報の発信元である子機を避難先に向かわせる経路を決定する。この決定は、事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に含まれている事件現場情報、及び、誘導要求情報受信手段が受信した誘導要求情報に含まれている避難先位置情報に基づいて行う。避難経路情報通知手段は、誘導要求情報の発信元である子機に対し、避難経路決定手段により決定された経路の情報を通知して報知させる。
【0015】
このシステムによれば、避難経路として、事件現場情報で示されている事件現場の位置に近づくことがない方向に位置している避難先への経路を決定することができ、その経路の情報が各子機に報知される。従って、事件現場付近に居合わせても、この子機を所持していれば、報知される経路の情報に従って移動することで、事件現場から離れる方向に避難することができる。つまり、このシステムにより、子機のユーザ自らが身を守るための支援を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本明細書で開示する事件情報報知システム及び子機のどちらによっても、事件現場付近に居合わせた人自らが身を守るための支援を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】事件情報報知システムを構成する親機単体の構成図である。
【図1B】子機の構成図である。
【図1C】センタサーバの構成図である。
【図2】事件遭遇情報のデータ構造図である。
【図3】事件遭遇信号直接受信時処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】転送中の事件遭遇情報のデータ構造図である。
【図5A】事件遭遇情報の転送におけるデータ改変例(その1)である。
【図5B】事件遭遇情報の転送におけるデータ改変例(その2)である。
【図6】事件遭遇情報間接受信時処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図7A】避難誘導親機側処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図7B】避難誘導子機側処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】子機存在確認情報のデータ構造図である。
【図9】避難先決定処理の第一の例の処理内容を示すフローチャートである。
【図10A】事件情報報知システムを構成する複数の親機と各子機(子供)とについての、事件発生時における所在位置の第一の例である。
【図10B】図10Aの場合における、各子機と直接通信可能な親機の一覧である。
【図10C】図10Aの場合における、事件遭遇情報の転送経路及び転送回数の一覧である。
【図11】避難先決定処理の第二の例の処理内容を示すフローチャートである。
【図12】誘導要求情報のデータ構造図である。
【図13】事件情報報知システムを構成する複数の親機と各子機(子供)とについての、事件発生時における所在位置の第二の例である。
【図14】避難先決定処理の第三の例の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、事件の発生時に、事件の発生現場(事件現場)の近くに居合わせた子供に対し、当該事件からの避難に関する情報を提供する事件情報報知システムについて説明する。
【0019】
まず、図1A、図1B、及び図1Cについて説明する。
図1Aは、事件情報報知システムを構成する親機100単体の構成図である。この親機(ホームゲートウェイ(HGW)とも表記することがある。)100は固定局である。事件情報報知システムは、無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な複数の親機100を備えて構成される。この親機100は、子供の保護者宅、及び子供の保護活動に協力する地域住民宅に設置することを前提としている。従って、この親機100の設置場所の位置は、子供にとって安全な避難先とみなされる。
【0020】
図1Bは、子機200の構成図である。この子機200は移動体である。複数の親機100で構成される事件情報報知システムは、複数の子機200との間で、無線通信路を介して相互に情報の授受を行うことができる。この子機200は、子供が携帯することを前提としている。子供は、自身が携帯している子機200から報知される避難指示や避難経路の誘導指示に従うことで、安全な避難行動を取ることができる。
【0021】
図1Cは、センタサーバ300の構成図である。センタサーバ300は、事件情報報知システムを構成している複数の親機100との間で相互に情報の授受を行うことができる。このセンタサーバ300は、例えば学校や警察等の関係部門に設置することを前提としており、発生した事件の情報を収集して当該関係部門に報知する。
【0022】
ここで、本願で用いる幾つかの用語について説明しておく。
事件遭遇情報は、事件に遭遇したことを示す情報である。この事件遭遇情報は、事件に遭遇した子供が自身で携帯している子機200を操作することによって、子機200が発信するものである。親機100は、この事件遭遇情報を受信すると、この情報を受信した旨の通知(事件遭遇情報受信通知)を、事件遭遇情報の発信元の子機200へ発信する。更に、親機100は、この事件遭遇情報を受信すると、所定の条件の下で、事件情報報知システムを構成している他の親機100へ順次転送する。
【0023】
事件現場情報は、事件の発生現場の位置を示す情報であり、より具体的には、事件遭遇情報の発信元である子機200の発信時における位置情報である。子機200が発信する事件遭遇情報には、この事件現場情報が含まれている。
【0024】
子機距離情報は、子機200の各々の位置と、事件現場情報で示されている位置との距離を示す情報である。
避難誘導情報は事件からの避難を誘導する情報であり、その内容は、避難指示や避難経路の誘導指示などである。
【0025】
転送経路情報は、親機100から他の親機100への事件遭遇情報の転送が行われた場合における転送経路を示す情報である。親機100は、事件遭遇情報を他の親機100へ転送するときには、受信した事件遭遇情報に、この転送経路情報を付加して転送する。
【0026】
転送回数情報は、事件遭遇情報が他の親機100により転送された場合における、その転送の回数を示す情報である。この転送回数情報は、事件遭遇情報を転送する際に親機100により付加されるものであり、親機100は、新たに転送を行う度に、この転送回数情報で示されている転送回数の値を1ずつ増加させる。
【0027】
近隣親機情報は、親機100から、無線通信路を介して直接に(すなわち、他の親機100からの転送を経ることなく)各種の情報の相互授受を常時行うことのできる、近隣の親機100を特定する情報である。親機100は、事件遭遇情報の転送を、この近隣親機情報で特定される親機100に対して行う。
【0028】
事件識別情報は、事件を個別に識別する情報である。事件識別情報は、事件遭遇情報を、発信元である子機200から直接に(すなわち、他の親機100からの転送を経ることなく)受信した親機100が、受信した事件遭遇情報で示されている事件に対して付与する。
【0029】
子機識別情報は、子機200を個別に識別する情報である。事件遭遇情報には、この事件遭遇情報の発信元である子機200についての子機識別情報が含まれている。
日時情報は、事件遭遇情報の発信元である子機200が当該事件遭遇情報を送信したときの日時を示す情報である。子機200が発信する事件遭遇情報には、この日時情報が含まれている。
【0030】
危険区域は、子機200においては、事件遭遇情報の発信元である子機200の位置から所定の距離(危険距離)内の区域のことである。また、親機100においては、事件遭遇情報の発信元である子機200からの事件遭遇情報を直接受信した親機100の位置から当該危険距離内の区域のことである。この危険区域は、親機100が事件遭遇情報の転送を行うか否かを判定する基準のひとつとして利用される。
【0031】
子機存在確認情報は、親機100との通信可能範囲内に位置している子機200の存在を確認するために、親機100が発信する情報である。親機100は、事件遭遇情報を、発信元である子機200から直接に受信した場合、及び、他の親機100による転送を経て受信した場合のどちらにおいても、この子機存在確認情報を発信する。親機100は、この子機存在確認情報に、受信した事件遭遇情報で示されている事件に対して付与された事件識別情報を含ませて発信する。更に、親機100は、この子機存在確認情報に、受信した事件遭遇情報に含まれている事件現場情報と、予め指定されている危険距離の情報とをも含ませて発信する。
【0032】
親機識別情報は、親機100を個別に識別する情報である。
親機位置情報は、親機100の各々の位置を示す情報である。この親機位置情報のうち、特に、確認元親機位置情報は、子機存在確認情報の発信元である親機100の位置を示す情報である。親機100は、前述した子機存在確認情報に、この子機存在確認情報の発信元である親機100についての確認元親機位置情報をも更に含ませて発信する。
【0033】
子機存在回答情報は、親機100と直接の通信が可能な範囲内に子機200が位置していることを当該親機100に認識させるために、当該子機200が発信する情報である。この子機存在回答情報は、親機100から発信された子機存在確認情報を受信した子機200が、その返答として発信するものである。子機存在回答情報には、この子機存在回答情報の発信元である子機200についての子機識別情報と子機距離情報とが含まれている。
【0034】
確認元親機距離は、子機存在確認情報の発信元である親機100の位置(すなわち、確認元親機位置情報で示されている位置)と、この子機存在確認情報を受信した子機200の位置との距離である。
【0035】
誘導要求情報は、所定の避難先までの経路の誘導を親機100に要求するために、子機200が発信する情報である。
最終避難先位置情報は、子機200毎に予め設定されている情報であり、子機200を携帯する子供の最終的な避難先(例えば自宅や通学先である学校)の位置を示す情報である。子機200が発信する誘導要求情報には、当該子機200に対して設定されている最終避難先位置情報が含まれている。
【0036】
親機位置要求情報は、親機100が、他の親機100についての親機位置情報を当該他の親機100に対し要求するために、発信する情報である。親機100が発信した親機位置要求情報は、当該親機100と直接の通信が可能な範囲内に配置されている他の親機100により受信される。親機位置要求情報を受信した親機100は、自身の親機位置情報を、当該親機位置要求情報の発信元である親機100へ返信する。
【0037】
以降の説明は、上述した用語を用いて行う。
まず、図1Aの親機100について更に説明する。
親機100は、無線通信処理部110、有線通信部120、情報保持部130、制御部140、及び報知部150を備えている。
【0038】
無線通信処理部110は、子機200及び事件情報報知システムを構成している他の親機100との間で、無線伝送路を介して、各種の情報の授受を行う。無線通信処理部110は、より具体的には、事件遭遇情報の受信・転送、避難誘導情報通知の発信、子機存在確認情報の発信、子機存在回答情報の受信、誘導要求情報の受信、親機位置情報要求情報の送信、及び、親機位置情報の返信・受信等の各機能を提供する。無線通信処理部110は、信号発信部と信号受信部とをハードウェア構成として備えている。ここで、信号発信部は、親機100が発信する各種の情報を表しているデータ信号で変調された高周波信号をアンテナ101へ給電して電磁波を空間に放射させる。信号受信部は、他の機器より発信されてアンテナ101に励起した高周波信号からデータ信号を復調して、このデータ信号で表されている各種の情報を受信し取得する。
【0039】
有線通信部120は、有線通信網、ここではインターネット網10、を介して、センタサーバ300との間で各種の情報の授受を行うインタフェース部である。より具体的には、無線通信処理部110が受信した事件遭遇情報をセンタサーバ300へ送付する。
【0040】
情報保持部130は、親機100に関する情報が予め登録されて保持されている記憶装置である。より具体的には、情報保持部130には、固定局である親機100自身についての親機識別情報、親機位置情報、及び近隣親機情報が保持されている。更に、情報保持部130には危険距離の値が予め設定登録されている。この危険距離の値は、事件情報報知システムを構成している親機100の間で共通の値である。
【0041】
制御部140は、親機100全体の動作制御を行うものである。制御部140は、より具体的には、事件遭遇情報の転送制御、危険区域の判定、子機200へ通知する避難メッセージの作成、及び、避難経路の決定等の各制御機能を提供する。制御部140は、例えば演算処理装置と、当該演算処理装置で実行される各種の制御プログラムが予め格納されている半導体記憶装置とを備えて構成される。この演算処理装置が制御プログラムを半導体記憶装置から読み出して実行することで、制御部140は、上述した各種の制御機能の提供や、後述する各種の制御処理の実行が可能になる。
【0042】
報知部150は、親機100の設置場所に在る保護者・地域住民等に対し、無線通信処理部110が事件遭遇情報を受信した旨を報知するものである。報知部150は、より具体的には、その旨を示す警報音を発するスピーカやブザー、その旨を赤色等の光で警告するランプ、振動を発生させてその旨を警告するバイブレータ等を備えている。
【0043】
次に、図1Bの子機200について更に説明する。
子機200は、無線通信処理部210、情報保持部220、制御部230、及び報知部240を備えている。
【0044】
無線通信処理部210は、事件情報報知システムを構成している親機100との間で、無線伝送路を介して、各種の情報の授受を行う。無線通信処理部210は、より具体的には、事件遭遇情報の発信、事件遭遇情報受信通知の受信、子機存在確認情報の受信、及び、子機存在回答情報の発信等の各機能を提供する。無線通信処理部210は、信号発信部と信号受信部とをハードウェア構成として備えている。ここで、信号発信部は、子機200が発信する各種の情報を表しているデータ信号で変調された高周波信号をアンテナ201へ給電して電磁波を空間に放射させる。信号受信部は、親機100より発信されてアンテナ201に励起した高周波信号からデータ信号を復調して、このデータ信号で表されている各種の情報を受信し取得する。
【0045】
情報保持部220は、この子機200に関する情報が登録されて保持されている記憶装置である。より具体的には、情報保持部220には、この子機200についての子機識別情報、及び、最終避難先位置情報である学校・自宅等の位置情報が予め保持されている。また、情報保持部220は、子機存在確認情報を無線通信処理部210が受信した場合には、受信した子機存在確認情報を記憶して保持する機能も提供する。
【0046】
制御部230は、子機200全体の動作制御を行うと共に、避難先の決定等の機能の提供と、事件現場情報の取得を行う。制御部230は、例えば演算処理装置と、当該演算処理装置で実行される各種の制御プログラムが予め格納されている半導体記憶装置とを備えている。この演算処理装置が制御プログラムを半導体記憶装置から読み出して実行することで、制御部230は、子機200全体の動作制御、及び避難先の決定等の機能の提供、更には、後述する各種の制御処理の実行が可能になる。更に、制御部230は、GPS(全地球測位システム)受信機を備えており、子機200の位置情報を、GPSの測位により取得することができる。
【0047】
報知部240は、子機200を携帯する子供に対して各種の情報を報知するものである。報知部150は、より具体的には、各種のメッセージや避難誘導情報等の各種の情報を表示する表示装置と、音・光・振動を発生させて事件の発生を子供に報知するスピーカ・ブザー・ランプ・バイブレータ等とを備えている。
【0048】
なお、子機200のハードウェア構成は、GPS機能を備えている昨今の携帯電話機の多くが備えている構成であるので、このような携帯電話機を子機200として利用することも可能である。
【0049】
次に、図1Cのセンタサーバ300について更に説明する。
無線通信処理部310は、事件情報報知システムを構成している親機100との間で、無線伝送路を介して、各種の情報の授受を行う。無線通信処理部310は、より具体的には、事件遭遇情報の受信等の各機能を提供する。無線通信処理部310は、信号発信部と信号受信部とをハードウェア構成として備えている。ここで、信号発信部は、センタサーバ300が発信する各種の情報を表しているデータ信号で変調された高周波信号をアンテナ301へ給電して電磁波を空間に放射させる。信号受信部は、親機100より発信されてアンテナ301に励起した高周波信号からデータ信号を復調して、このデータ信号で表されている各種の情報を受信し取得する。
【0050】
有線通信部320は、有線通信網、ここではインターネット網10、を介して、親機100や他のセンタサーバ300との間で各種の情報の授受を行うインタフェース部である。有線通信部320は、より具体的には、親機100から送付される事件遭遇情報の受信機能、及び、受信した事件遭遇情報を、他の関係部門に設置されている他のセンタサーバ300へ宛てて発信する機能等を提供する。
【0051】
事件情報管理部330は、事件情報報知システムを構成している親機100から受け取った事件遭遇情報を蓄積し管理するデータベース(DB)機能を提供する。
報知部340は、センタサーバ300の設置場所に在るオペレータ等の者に対し、センタサーバ300が事件遭遇情報を受信した旨を報知するものである。報知部340は、より具体的には、その旨を示す警報音を発するスピーカやブザー、その旨を赤色等の光で警告するランプ、振動を発生させてその旨を警告するバイブレータ等を備えている。
【0052】
次に、図1Aの親機100を複数備えて構成される事件情報報知システムの動作について説明する。
この事件情報報知システム(以下、単にシステムと記すこととする)を構成する各親機100は、無線通信処理部110が常時受信動作を行っている。ここで、いずれかの子機200から発信される事件遭遇情報を、いずれかの親機100の無線通信処理部110が受信すると各種の動作が開始される。
【0053】
ところで、事件遭遇情報は、子機200に備えられているスイッチに対する所定の操作(事件に遭遇した子供による操作)を制御部230が検出したときに、当該制御部230により生成される。
【0054】
ここで図2について説明する。図2は事件遭遇情報のデータ構造図である。制御部230が生成する事件遭遇情報には、このデータが事件遭遇情報であることを示す識別データと共に、「識別子」、「発信者ID」、「発信日時」、及び「子機の発信場所」の各データが含まれる。
【0055】
「識別子」は、この事件遭遇情報が、「オリジナル信号」であるか「転送信号」であるかを示すフラグデータである。子機200の制御部230は、事件識別情報の生成時には、この「識別子」を「オリジナル信号」にセットする。その後、親機100が事件遭遇信号を転送する際には、親機100の制御部140は、この「識別子」を「転送信号」にセットした上で、無線通信処理部110に転送を行わせる。
【0056】
「発信者ID」は、事件遭遇情報の発信元となる、この子機200に割り当てられている子機識別情報である。制御部230は、この子機識別情報を情報保持部220から読み出して「発信者ID」のデータとする。
【0057】
「発信日時」は、この事件遭遇情報の発信日時を示すデータである。制御部230は、自身が備えている時計から現在(事件遭遇情報の作成時)の日時データを取得して「発信日時」のデータとする。
【0058】
「子機の発信場所」は事件現場情報である緯度・経度のデータである。制御部230は、自身が備えているGPS受信機を動作させて子機200の現在(事件遭遇情報の作成時)の位置データを取得して、「子機の発信場所」のデータとする。
【0059】
制御部230は、上述した事件遭遇情報を生成すると、無線通信処理部210を制御してこの事件遭遇信号を発信させる。
事件情報報知システムは、子機200から発信された事件遭遇情報を受信すると、[1]第一報の処理、[2]子供達への避難誘導処理、[3]関係部門への通知処理、の順序で各処理を進める。以下、この各処理について説明する。
【0060】
[1]第一報の処理
まず図3について説明する。図3は、事件遭遇情報直接受信時処理の処理内容を示すフローチャートである。この処理は制御部140により行われる。
制御部140は、子機200から発信された事件遭遇情報を無線通信処理部110が直接に(すなわち、他の親機100からの転送を経ることなく)受信したことを検出すると、この処理を開始する。なお、無線通信処理部110が受信した事件遭遇情報が子機200から直接に送られてきたものであるか否かは、その事件遭遇情報に含まれている「識別子」が「オリジナル信号」を示しているか否かにより判定することができる。
【0061】
図3において、まず、S101では、制御部140は、無線通信処理部110を制御して、受信された事件遭遇情報を発信した子機200へ宛てて、事件遭遇情報受信通知を発信させる処理を行う。子機200では、制御部230が、この事件遭遇情報受信通知の無線通信処理部210での受信を検出すると、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、当該通知が受信された旨を報知させる制御処理を行う。この報知は、例えばその旨を示すメッセージを表示して行うが、発音や発光、あるいは振動によって行ってもよい。子供は、この報知部240による報知によって、事件遭遇情報が親機100で受信されたことを認識できるので、遭遇した事件への不安に対しての安心を感じることができる。
【0062】
次に、S102では、制御部140は、報知部150を制御して、親機100の設置場所に在る保護者・地域住民等に対し、無線通信処理部110が事件遭遇情報を受信した旨を報知させる処理を行う。この報知は、例えばその旨を示す発音や発光、あるいは振動によって行う。保護者・地域住民等は、この報知部150による報知によって、事件遭遇情報が親機100で受信されたこと(すなわち事件の発生)を認識できるので、当該親機100の設置場所の周囲に在る子供達(事件に遭遇した子供を含む)を一時的に保護することができる。
【0063】
次に、S103では、制御部140は、受信された事件遭遇情報に改変を加えた上で、無線通信処理部110を制御して、当該改変後の事件遭遇情報を発信させ、情報保持部130の近隣親機情報で特定される親機100へ転送する処理を行う。その後は、この事件遭遇信号直接受信時処理を終了する。
【0064】
ここで図4について説明する。図4は、親機100間を転送中の事件遭遇情報のデータ構造図である。
親機100間を転送中の事件遭遇情報には、子機200が発信したものと同様の情報に、幾つかの付加情報が制御部140によって付加される。
【0065】
図4において、「識別子」、「発信者ID」、「発信日時」、及び「子機の発信場所」の各データは、図2のデータ構造図におけるものと同一である。但し、前述したように、「識別子」については、親機100が事件遭遇信号を転送する際には、親機100の制御部140は、この「識別子」を「転送信号」にセットした上で、無線通信処理部110に転送を行わせる。
【0066】
「事件番号」は、異なる事件についての事件遭遇情報を個別に識別するために利用されるデータであって、事件遭遇情報を子機200から直接受信した親機100の制御部140により生成されるデータである。この制御部140は、自身が備えている時計から現在(「事件番号」の作成時)の日時データを、時間IDとして取得して「発信日時」のデータとする。なお、他の親機100の転送を経て無線通信処理部110が受信した事件遭遇情報には、「事件番号」が既に付加されているので、制御部140は、この場合には、新たな「事件番号」の生成は行わない。
【0067】
なお、制御部140は、前述したS103の転送処理を行う際に、転送対象である事件遭遇情報に含まれている「事件番号」のデータを情報保持部130に記憶させ、事件遭遇情報の転送履歴として保持させる。ここで、制御部140は、この転送履歴として、「事件番号」のデータの代わりに、転送対象である事件遭遇情報に含まれている「発信者ID」及び「発信日時」のデータを、情報保持部130に記憶させて保持させるようにしてもよい。
【0068】
「ホップ数」は、この事件遭遇情報についての転送回数情報である。事件遭遇情報を子機200から直接受信した親機100の制御部140は、この「ホップ数」を、初期値である「0」とする。他の親機100の転送を経た事件遭遇情報を無線通信処理部110が受信した場合には、制御部140は、この「ホップ数」を1増加させた上で、他の親機100への転送を無線通信処理部110に行わせる。
【0069】
この「ホップ数」に続く「1番」、「2番」、…の各項目は転送経路情報である。この転送経路情報の各項目は、この事件遭遇情報の転送を行う各親機100についての親機識別情報(ID)と親機位置情報である。制御部140は、親機識別情報と親機位置情報とを情報保持部130から読み出して事件遭遇情報に付加する。なお、この各項目は、この事件遭遇情報の転送を行う順に付加される。従って、この転送経路情報より、事件遭遇情報の転送が行われた場合における親機100間での転送経路を知ることができる。
【0070】
図5A及び図5Bを用いて、事件遭遇情報の転送における改変の具体例を説明する。
図5Aは、事件遭遇情報を子機200から直接受信した親機100の制御部140が改変した事件遭遇情報の改変例である。この例では、「ホップ数」が初期値「0」とされて事件遭遇情報に付加されており、更に、「1番」の転送経路情報として、この親機100についての親機識別情報(ここでは「#1」)と親機位置情報とが付加されている。
【0071】
図5Bは、他の親機100が転送した図5Aの事件遭遇情報を受信した親機100の制御部140が改変した事件遭遇情報の改変例である。この例では、「ホップ数」が、図5Aの例から1増加させて「1」とされており、更に、「1番」の転送経路情報に続く「2番」の転送経路情報として、この親機100についての親機識別情報(ここでは「#2」)と親機位置情報とが付加されている。
【0072】
次に、他の親機100からの転送を経て(すなわち、子機200から直接ではなく)事件遭遇情報を受信した親機100による当該事件遭遇情報の更なる転送動作について、説明する。
【0073】
各親機100は、いわゆるアドホックネットワークを構築しており、アドホック通信によって、他の親機100から転送されてきた事件遭遇情報を、情報保持部130で保持されている近隣親機情報で特定される親機100へ更に転送する。但し、この場合の転送は、これより説明する幾つかの条件を満たした場合にのみ行われる。
【0074】
ここで図6について説明する。図6は、事件遭遇情報間接受信時処理の処理内容を示すフローチャートである。この処理は制御部140により行われる。
制御部140は、他の親機100から転送されてきた(すなわち、子機200から直接送られてきたものではない)事件遭遇情報を無線通信処理部110が受信したことを検出すると、この処理を開始する。なお、無線通信処理部110が受信した事件遭遇情報が他の親機100から転送されてきたものであるか否かは、その事件遭遇情報に含まれている「識別子」が「転送信号」を示しているか否かにより判定することができる。
【0075】
制御部140は、まず、S201において、受信された事件遭遇情報が、この親機100が過去に転送したものと同一の事件についてのものであるか否かを判定する処理を行う。この判定は、事件遭遇情報の転送履歴として情報保持部130で保持させている「事件番号」のデータに、受信された事件遭遇情報における「事件番号」のデータと一致するものがあるか否かを判定することによって行われる。なお、事件遭遇情報の転送履歴として「発信者ID」及び「発信日時」のデータを情報保持部130に保持させている場合には、この両データに、受信された事件遭遇情報におけるこれらのデータと一致するものがあるか否かを判定することによって行われる。
【0076】
ここで、制御部140は、受信された事件遭遇情報が過去に転送したものと同一の事件についてのものであると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS202に処理を進める。一方、制御部140は、受信された事件遭遇情報が過去に転送したものとは異なる事件についてのものであると判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS204に処理を進める。
【0077】
次に、制御部140は、S202において、受信された事件遭遇情報の転送を最初に行ったのが、この親機100自身であるか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における「1番」の項目の親機識別情報が、この親機100自身であるか否かを判定することによって行われる。
【0078】
ここで、制御部140は、受信された事件遭遇情報の転送を最初に行ったのがこの親機100自身であると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S203に処理を進め、受信した事件遭遇情報の無線通信処理部110による転送を禁止する処理を行う。そしてその後はこの図6の処理を終了する。一方、制御部140は、受信された事件遭遇情報の転送を最初に行ったのがこの親機100自身ではないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S204に処理を進める。
【0079】
上述したS201及びS202の判定処理の結果が共にYesとなる場合は、受信された事件遭遇情報の転送をこの親機100が行うと、同一事件についての事件遭遇情報の転送が繰り返されることが明らかな場合である。このような転送は無駄であり、アドホックネットワークの混雑を招くため、図6の処理では、受信された事件遭遇情報の転送を禁止して、無駄な通信を削減しているのである。
【0080】
次に、制御部140は、S204において、受信された事件遭遇情報のこれまでの転送経路に、この親機100自身が含まれているか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報に、この親機100自身の親機識別情報が含まれているか否かを判定することによって行われる。
【0081】
ここで、制御部140は、受信された事件遭遇情報の転送経路に親機100自身が含まれていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS205に処理を進める。一方、制御部140は、受信された事件遭遇情報の転送経路に親機100自身が含まれていないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS206に処理を進める。
【0082】
次に、制御部140は、S205において、この親機100がこの事件遭遇情報を過去に受信したときの転送元が、当該事件遭遇情報を今回受信したときの転送元と一致しているか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における、親機100自身への転送元の親機識別情報が、当該事件遭遇情報を今回受信したときの転送元についてのものであるか否かを判定することによって行われる。
【0083】
ここで、制御部140は、事件遭遇情報の過去の受信時と今回の受信時とで転送元が一致していると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S203に処理を進め、受信した事件遭遇情報の無線通信処理部110による転送を禁止する処理を行う。そしてその後はこの図6の処理を終了する。一方、制御部140は、事件遭遇情報の過去の受信時と今回の受信時とで転送元が一致していないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S206に処理を進める。
【0084】
上述したS204及びS205の判定処理の結果が共にYesとなる場合は、受信された事件遭遇情報の転送をこの親機100が行うと、同一事件についての事件遭遇情報の転送経路が環状(ループ)となり、その転送が繰り返されることが明らかな場合である。このような転送は無駄であり、アドホックネットワークの混雑を招くため、図6の処理では、受信された事件遭遇情報の転送を禁止して、無駄な通信を削減しているのである。
【0085】
次に、制御部140は、S206において、受信された事件遭遇情報のこれまでの転送経路に、受信された事件遭遇情報をこれから転送しようとしている転送先が含まれているか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報に、情報保持部130の近隣親機情報で特定される親機100の親機識別情報が含まれているか否かを判定することによって行われる。
【0086】
ここで、制御部140は、事件遭遇情報の転送経路に、これから転送しようとしている転送先が含まれていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS207に処理を進める。一方、制御部140は、事件遭遇情報の転送経路に、これから転送しようとしている転送先が含まれていないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS208に処理を進める。
【0087】
次に、制御部140は、S207において、事件遭遇情報をこれから転送しようとしている転送先へ過去に同一事件の事件遭遇情報を転送した転送元が、この親機100自身であるか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における、過去に当該転送先へ事件遭遇情報を転送した転送元の親機識別情報が、この親機100自身についてのものであるか否かを判定することによって行われる。
【0088】
ここで、制御部140は、事件遭遇情報の転送先へ過去に事件遭遇情報を転送した転送元が親機100自身であると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S203に処理を進め、事件遭遇情報の無線通信処理部110による転送を禁止する処理を行う。一方、制御部140は、事件遭遇情報の転送先へ過去に事件遭遇情報を転送した転送元が親機100自身ではないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S208に処理を進める。
【0089】
上述したS206及びS207の判定処理の結果が共にYesとなる場合は、この事件遭遇情報の転送を親機100が行うと、同一事件についての事件遭遇情報が同一転送経路で往復し(キャッチボール状態)、その転送が繰り返されることが明らかな場合である。このような転送は無駄であり、アドホックネットワークの混雑を招くため、図6の処理では、受信された事件遭遇情報の転送を禁止して、無駄な通信を削減しているのである。
【0090】
以上のように、制御部140は、S204からS207の判定処理によって、受信した事件遭遇情報の転送を行うと同一の事件についての事件遭遇情報の同一経路での転送の繰り返しが発生するか否かを判定する。そして、この転送の繰り返しが発生すると判定したときには、S203の処理を行って無線通信処理部110を制御し、転送の繰り返しが発生することになる事件遭遇情報の転送を禁止させる。
【0091】
次に、制御部140は、S208において、受信された事件遭遇情報に基づき危険区域を設定する処理を行う。危険区域は、事件遭遇情報の発信元である子機200からの事件遭遇情報を直接に(すなわち、他の親機100からの転送を経ることなく)受信した親機100の位置から、予め設定されている所定距離以内の区域とする。ここで、子機200から事件遭遇情報を直接に受信した親機100の位置は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における「1番」の項目の親機位置情報から知ることができる。制御部140は、情報保持部130に予め設定登録されている危険距離の値を読み出し、子機200から事件遭遇情報を直接に受信した親機100の位置を中心とし、この危険距離を半径とする円内の区域を危険区域に設定する。
【0092】
次に、制御部140は、S209において、親機100自身が、前ステップの処理によって設定された危険区域内に配置されているか否かを判定する処理を行う。このために、制御部140は、まず、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における「1番」の項目の親機位置情報で示されている位置と、情報保持部130に保持されている親機100自身の親機位置情報で示されている位置との距離を算出する。そして、算出された距離を、情報保持部130に予め設定登録されている危険距離の値と比較する。ここで、算出された距離が危険距離以下であれば、親機100自身が危険区域内に配置されているとの判定を下し、危険距離よりも長ければ、危険区域外に配置されているとの判定を下す。
【0093】
ここで、制御部140は、親機100自身が危険区域内に配置されていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS210に処理を進める。一方、制御部140は、親機100自身が危険区域外に配置されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS203に処理を進め、受信した事件遭遇情報の無線通信処理部110による転送を禁止する処理を行う。そしてその後はこの図6の処理を終了する。
【0094】
このように、S209の判定結果がNoとなる場合は、その親機100は、その事件遭遇情報についての事件現場から十分遠くに配置されているので、その配置場所の周辺は、その事件に関係することはないとみなし、転送を行わないようにしている。
【0095】
次に、制御部140は、S210において、受信された事件遭遇情報に、図4を用いて説明したような改変(転送経路情報の追加)を加えた上で、無線通信処理部110を制御して、当該改変後の事件遭遇情報を発信させて転送させる処理を行う。なお、このときの転送先は、情報保持部130の近隣親機情報で特定される親機100のうち、S203の処理により転送を禁止されたものを除いたものとなる。
【0096】
以上の処理を終えた後は、この図6の処理を終了する。
なお、前述した危険距離の設定は任意でよい。但し、危険距離を余りに短く設定すると、危険区域内である親機100への事件遭遇情報の転送が途中の転送経路で途絶えてしまうことも考えられる。従って、危険距離は、親機100による無線通信可能距離を考慮し、その距離程度に長めに設定しておくことが望ましい。
第一報の処理は、以上までで完了する。
【0097】
[2]子供達への避難誘導処理
事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機100からの転送を経て、受信した親機100は、直接通信可能な子機200に対する避難誘導情報の通知を行う。ここでは、まず、この避難誘導の処理について説明する。
【0098】
親機100は、事件遭遇情報を受信すると、自身と直接通信可能な子機200を調べるために、子機存在確認情報を発信する。この子機存在確認情報を受信した子機200は、子機存在回答情報を親機100へ返信する。この返信を受信した親機100は、受信した子機存在回答情報に基づいた避難誘導情報を作成して子機200へ通知する。この通知を受け取った子機200は、通知された避難誘導情報を、子機200を携帯する子供へ報知して、避難誘導を行う。子供は、この避難誘導に従った避難行動を取ることで、発生した事件から身を守ることができる。
【0099】
ここで図7A及び図7Bについて説明する。図7Aは、親機100の制御部140により行われる、避難誘導親機側処理の処理内容を示すフローチャートである。また、図7Bは、子機200の制御部230により行われる、避難誘導子機側処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0100】
親機100の制御部140は、事件遭遇情報を無線通信処理部110が受信したことを検出すると、図7Aの処理を開始する。
制御部140は、まず、図7AのS301において、子機存在確認情報を生成すると共に、無線通信処理部110を制御して、生成した子機存在確認情報を発信させる処理を行う。
【0101】
ここで図8について説明する。図8は、子機存在確認情報のデータ構造図である。
図8において、「識別子」、「発信場所」、「事件ID」、「ホップ数」、「1番」、「2番」、…(転送経路情報)は、受信された事件遭遇情報に含まれているデータと同一のものである。なお、図8のデータ例は、転送経路情報として「1番」及び「2番」が付加されていた事件遭遇情報に基づき作成されるものである。従って、「ホップ数」は「1」となっている。
【0102】
「自身の位置情報」は、この親機100についての親機識別情報及び親機位置情報(すなわち確認元親機位置情報)のデータ、及び、この親機100の設置位置の事件現場からの距離を示すデータである。制御部140は、親機100についての親機識別情報及び親機位置情報を情報保持部130から読み出して「自身の位置情報」のデータとする。また、事件現場の位置は、事件遭遇情報に含まれている「発信場所」のデータ(すなわち事件現場情報)で知ることができる。従って、制御部140は、親機100の親機位置情報と、事件遭遇情報における「発信場所」のデータとから両者間の距離を算出して、「自身の位置情報」のデータとする。
【0103】
「危険区域距離」は危険距離のデータであり、制御部140は、危険距離の値を情報保持部130から読み出してこのデータとする。
制御部140は、以上のようにして作成した子機存在確認情報を、無線通信処理部110に発信させる。
【0104】
一方、子機200の制御部230は、子機存在確認情報を無線通信処理部210が受信したことを検出すると、図7Bの処理を開始する。
制御部230は、まず、図7BのS351において、受信された子機存在確認情報を情報保持部220に記憶させて保持させる処理を行う。
【0105】
次に、制御部230は、S352において、まず、この子機200の現在位置と事件現場の位置との距離を子機距離情報として算出する処理を行う。そして、子機200についての子機識別情報と算出した子機距離情報とを含む子機存在回答情報を作成し、無線通信処理部210を制御して、作成した子機存在回答情報を、受信された子機存在確認情報の発信元である親機100へ宛てて発信する処理を行う。なお、子機距離情報の算出の処理において、子機200の現在位置は、制御部230自身が備えているGPS受信機を動作させて取得する。また、事件現場の位置は、受信された子機存在確認情報に含まれている事件遭遇情報から取得する。
【0106】
以上のようにして子機200から発信された子機存在回答情報は、制御部140による図7AのS302の制御処理による受信制御が行われている、親機100の無線通信処理部110により受信される。ここで、制御部140は、無線通信処理部110で受信された子機存在回答情報から、この子機200についての子機距離情報を取得する処理を行う。
【0107】
次に、制御部140は、S303において、取得した子機距離情報が、予め設定されている第一の所定距離(例えば50メートル)よりも近い近距離を示しているか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部140は、子機距離情報が近距離を示していると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS305に処理を進め、子機距離情報が近距離を示してはいないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS304に処理を進める。
【0108】
次に、制御部140は、S304において、取得した子機距離情報が、予め設定されている、当該第一の所定距離よりも遠い距離である第二の所定距離(例えば200メートル)よりも近い中距離を示しているか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部140は、子機距離情報が中距離を示していると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS306に処理を進め、子機距離情報が中距離を示してはいないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS307に処理を進める。
【0109】
制御部140は、以上の判定処理のうちのS303の判定処理で子機距離情報が近距離を示していると判定した場合には、S305において、近距離用の避難誘導情報を作成する処理を行い、その後はS308に処理を進める。この処理により作成する近距離用の避難誘導情報は、例えば「すぐ近くで事件が起きました。ブザーを鳴らし、安心の家に助けを求めてください。」といったメッセージ情報である。
【0110】
一方、制御部140は、以上の判定処理のうちのS303及びS304の判定処理で、子機距離情報が近距離ではなく中距離を示していると判定した場合には、S306において、中距離用の避難誘導情報を作成する処理を行い、その後はS308に処理を進める。この処理により作成する中距離用の避難誘導情報は、例えば「近くで事件が起きました。安全信号が確認できるまで、安心の家にいてください。」といったメッセージ情報である。
【0111】
なお、子機距離情報が近距離若しくは中距離の場合(上記第二の所定距離よりも短い場合)における上述したメッセージ情報の例は、どちらも、親機100のいずれかが配置されている位置(「安心の家」と称している)への避難を指示するものである。
【0112】
また、制御部140は、以上の判定処理のうちのS304の判定処理で、子機距離情報が中距離よりも更に遠い遠距離を示していると判定した場合には、S307において、遠距離用の避難誘導情報を作成する処理を行い、その後はS308に処理を進める。この処理により作成する遠距離用の避難誘導情報は、例えば「通学路内で事件が起きました。寄り道せずに、所定の避難先に向かってください。」といったメッセージ情報である。
【0113】
このように、子機距離情報が遠距離の場合(上記第二の所定距離以上である場合)における上述したメッセージ情報の例は、所定の避難先への避難を指示するものである。
以上のS303からS307にかけての処理により、制御部140は、事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、受信された子機存在回答情報に含まれていた子機200の子機距離情報に基づき、子機200の各々について作成する処理を行う。
【0114】
次に、制御部140は、S308において、無線通信処理部110を制御して、以上のS305、S306、若しくはS307の処理により作成した避難誘導情報を発信させて、子機存在回答情報の発信元の子機200に当該避難誘導情報を通知する処理を行う。その後はこの図7Aの処理を終了する。
【0115】
以上のようにして、制御部140が子機200毎に作成する避難誘導情報が、子機200の各々に対して通知される。
一方、以上のようにして親機100から通知された避難誘導情報は、制御部230による図7BのS353の制御処理による受信制御が行われている、子機200の無線通信処理部210により受信される。ここで、制御部230は、親機100から通知された避難誘導情報が、どの事件についてのものであるかを判別する処理を行う。制御部230は、この判別のために、情報保持部220の記憶内容を探索し、この避難誘導情報が、どの子機存在確認情報(に対応する子機存在回答情報)についてのものかを特定する。そして、特定された子機存在確認情報に含まれていた「事件ID」より、避難誘導情報がどの事件についてのものであるかを判別する。
【0116】
次に、制御部230は、S354において、親機100から通知された避難誘導情報が、過去に避難誘導情報を受信していない事件についてのもの(同一の事件について初めて受信したもの)であるか否かを判定する処理を行う。この判定は、上述したようにして情報保持部220から得た「事件ID」が、過去に受信していた避難誘導情報についてのものと異なるか否かを判定することによって行われる。ここで、制御部230は、避難誘導情報が同一の事件について初めて受信したものであると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS355に処理を進める。一方、制御部230は、避難誘導情報と同一の事件についての避難誘導情報を過去に受信していたと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS356に処理を進める。
【0117】
制御部230は、S355では、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、親機100から新たに通知された避難誘導情報の内容を報知させる制御処理を行い、その後はこの図7Bの処理を終了する。報知部240は、例えば、避難誘導情報であるメッセージ情報を表示装置に表示することで、避難誘導情報の子供への報知を行う。
【0118】
一方、制御部230は、S356では、報知部240により既に行われている、避難誘導情報の内容の報知をそのまま維持する処理が行われ、その後はこの図7Bの処理を終了する。
【0119】
以上のように、子機200の制御部230は、同一の事件についての避難誘導情報を複数回受信した場合には、そのうち最初に受信したもののみを報知部240に報知させる。これは、子機200は、その位置によっては、同一事件についての子機存在確認情報を複数の親機100から別個に受信する場合があるからである。この場合、子機200は、子機存在回答情報を各親機100に返信する。すると、各親機100から、同一の事件についての避難誘導情報が別個に送られてくる。このときに、避難誘導情報の全てを報知すると、子機200を携帯する子供が混乱してしまうことが考えられる。そこで、この混乱を避けるために、同一の事件についての避難誘導情報の報知の重複を防止しているのである。
【0120】
以上の避難誘導親機側処理及び避難誘導子機側処理が、親機100の制御部140及び子機200の制御部230でそれぞれ行われることにより、子機200を携帯する子供への避難誘導が行われる。子供は、この避難誘導に従って避難行動を取ることにより、事件現場付近に居合わせても、自らが身を守ることができる。
【0121】
次に、この事件情報報知システムを利用した、より具体的な避難誘導指示の手法として、子機200により行われる避難先の誘導指示の手法について説明する。この手法では、子機200の制御部230が、前述したようにして無線通信処理部210が受信した子機存在確認情報に基づき、事件からの避難先とする親機100の位置を決定する。
【0122】
まず、配置位置を避難先とする親機100の決定の第一の手法について説明する。この第一の手法では、子機200の制御部230が、子機存在確認情報に含まれている、事件識別情報(「事件ID」)と確認元である親機100についての親機位置情報(「自身の位置情報」)とに基づき、配置位置を避難先とする親機100を決定する。そして、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、この決定に係る避難先である親機100の配置位置の情報を報知させる。
【0123】
ここで、制御部230による避難先とする親機100の位置の決定は、以下のようにして行われる。すなわち、この決定では、まず、原則として、自身と直接通信可能な親機100のうち子機200の現在の位置に最も近いものの配置位置を避難先とする。但し、親機100が危険区域内に在る場合には、事件現場から遠く離れることがより重要であるとの方針により、自身と直接通信可能な親機100のうち事件現場から最も遠いものの配置位置を避難先とする。
【0124】
ここで図9について説明する。図9は、制御部230により行われる、避難先決定処理の第一の例の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば、図7Bの避難誘導子機側処理が制御部230で実行されて避難誘導情報が報知された後に、子供が、携帯する子機200の操作部を操作して行う所定の指示を制御部230が検出すると開始される。
【0125】
制御部230は、図9のS401において、まず、図7BのS351の処理によって無線通信処理部210で受信された子機存在確認情報の発信元である親機100の各々の配置位置と事件現場との距離を取得する処理を行う。加えて、制御部230は、この子機200の現在位置と子機存在確認情報の発信元である親機100の各々の配置位置との距離(すなわち確認元親機距離)を算出して取得する処理を行う。なお、この親機100の配置位置と事件現場との距離は、子機存在確認情報で「自身の位置情報」として示されている。また、確認元親機距離は、子機存在確認情報で「自身の位置情報」として示されている確認元親機位置情報と、制御部230自身が備えているGPS受信機で取得できる子機200の現在位置データとから算出することができる。
【0126】
次に、制御部230は、S402において、無線通信処理部210で受信された全ての子機存在確認情報の発信元である(すなわち避難先の候補である)親機100について、後述するS403からS405にかけての処理を実行したか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部230は、避難先の候補である全ての親機100について、後述の処理を実行したと判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S406に処理を進める。一方、制御部230は、避難先の候補である全ての親機100のうち、後述の処理を実行していないものが残されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S403に処理を進める。
【0127】
次に、制御部230は、S403において、避難先の候補である親機100が、危険区域内に配置されているか否かを判定する処理を行う。この判定は、判定対象の親機100についてS401の処理により取得した、当該親機100の配置位置と事件現場との距離が、子機存在確認情報に「危険区域距離」として示されている危険距離以内であるか否かを判定することによって行われる。ここで、制御部230は、避難先の候補である親機100が危険区域内に配置されていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS404に処理を進める。一方、制御部230は、避難先の候補である親機100が危険区域外に配置されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS405に処理を進める。なお、危険区域(危険距離)が特に設定されていない場合にも、このS403の判定処理の判定結果をNoとし、S405に処理を進めるものとする。
【0128】
次に、制御部230は、S404において、S403の判定処理により危険区域内に配置されていると判定された親機100のうち、その配置位置と事件現場との距離が最遠であるものを避難先候補として選択する処理を行い、この後はS401へ処理を戻す。
【0129】
次に、制御部230は、S405において、S403の判定処理により危険区域外に配置されていると判定された親機100のうち、確認元親機距離が最短であるものを避難先候補として選択する処理を行い、この後はS401へ処理を戻す。
【0130】
次に、制御部230は、S406において、その配置位置を避難先とする親機100の最終決定処理を行い、その後はこの図9の処理を終了する。
この最終決定処理では、まず、S405の処理で避難先候補として選択された親機100が存在する場合には、S404の処理での選択結果に拘らず、その親機100の配置位置を避難先として決定する。一方、S405の処理で選択された親機100が全く存在しない場合には、S404の処理で避難先候補として選択された親機100の配置位置を避難先として決定する。
【0131】
従って、この最終決定処理によれば、例えば、図7BのS351の処理により無線通信処理部210が子機存在確認情報を唯一つの親機100から受信していた場合には、危険区域内外のどちらであっても、その親機100の配置位置が避難先として決定される。また、例えば、無線通信処理部210が同一事件についての子機存在確認情報を複数の親機100から受信していた場合であって、危険区域(危険距離)が設定されていない場合には、確認元親機距離が最短である親機100の配置位置が避難先として決定される。更に、例えば、無線通信処理部210が同一事件についての子機存在確認情報を複数の親機100から受信していた場合であっても、危険距離の情報が子機存在確認情報に含まれていた場合がある。この場合において、この親機100の全てが事件現場から危険距離以内に配置されていた場合には、親機100のうちで事件現場との距離が最長である位置に配置されているものの配置位置が避難先として決定される。
【0132】
配置位置を避難先とする親機100の決定の第一の手法は、制御部230により以上のようにして行われる。その後、制御部230は、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、このようにして決定した避難先の情報を報知させる。
【0133】
次に、配置位置を避難先とする親機100の決定の第二の手法について説明する。この第二の手法では、子機200の制御部230が、子機存在確認情報に含まれている、事件識別情報と親機位置情報とに加え、更に、転送回数情報(「ホップ数」)にも基づいて、避難先とする親機100の位置を決定する。そして、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、この決定に係る避難先である親機100の配置位置の情報を報知させる。
【0134】
ここで、制御部230による避難先とする親機100の位置の決定は、以下のようにして行われる。すなわち、この決定では、まず、無線通信処理部210で受信された子機存在確認情報に含まれている転送回数情報(「ホップ数」)を参照する。ここで、子機200自身と直接通信可能な親機100のうち、この転送回数情報が最大であった子機存在確認情報の発信元であるものの配置位置を避難先とする。但し、この親機100の配置位置が危険区域内に在る場合には、事件現場から遠く離れることがより重要であるとの方針により、事件遭遇情報の転送経路上の親機100のうちで事件現場から最も遠いものの配置位置を避難先とする。
【0135】
更に、制御部230は、転送回数情報が最大であった子機存在確認情報の発信元である親機100が受信した事件遭遇情報についての、当該決定した避難先である親機100からの転送経路を遡る経路を、当該決定した避難先までの避難経路として決定する。そして、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、この決定に係る避難経路を報知させる。子機存在確認情報の発信元である親機100が受け取った事件遭遇情報の転送経路は、当該子機存在確認情報に転送経路情報として含まれているので、制御部230は、この転送経路情報に基づいて避難経路の決定を行う。
【0136】
ここで、図10A、図10B、及び図10Cについて説明する。
図10Aは、事件情報報知システムを構成する複数の親機100と各子機200(子供)とについての、事件発生時における所在位置の第一の例である。図10Aにおいて、HGW1〜HGW6の各々が親機100を表しており、子供1〜子供5の各々が子機200を表している。
【0137】
この例において、子供1が事件遭遇情報の発信元であり、子供1から発信された事件遭遇情報を、HGW1が直接受信したものとする。また、HGW1〜HGW6の全ては、子供1が遭遇した事件についての危険区域内に配置されているものとする。
【0138】
図10Bは、図10Aに描かれている各子機200が直接通信可能であった親機100の一覧である。前述したように、子機200は、各親機100から発信される子機存在確認情報を受信することにより、自身と直接通信可能である親機100を知ることができる。
【0139】
図10Aにおいて、HGW1〜HGW6のうちのいずれか2つを結ぶ矢印は、事件遭遇情報の転送経路を示している。図10Cは、この転送経路と転送回数の一覧であり、各親機100に事件遭遇情報が転送されてきたときの転送経路が表されている。前述したように、子機200は、親機100が事件遭遇情報を受け取ったときの転送経路を、当該親機100から受信した子機存在確認情報より知ることができる。
【0140】
この図10Aの例において、前述した第二の手法に従う各子機200の制御部230は、避難先とする親機100及び避難経路を、次のようにして決定する。
まず、子供1において、直接通信可能であるものはHGW1のみであるので、子供1の制御部230は、このHGW1の配置位置を避難先(且つ避難経路)として決定する。
【0141】
子供2において、直接通信可能であるものはHGW2とHGW6とがある。ここで、HGW2は、ホップ数2で事件遭遇情報を受け取っており、HGW6は、ホップ数3で事件遭遇情報を受け取っている。従って、子供2の制御部230は、ホップ数が多いHGW6の配置位置を避難先(且つ避難経路)として決定する。
【0142】
子供3において、直接通信可能であるものはHGW2とHGW3とがある。ここで、HGW2はホップ数2で事件遭遇情報を受け取っており、HGW3はホップ数1で事件遭遇情報を受け取っている。従って、子供3の制御部230は、ホップ数が多いHGW2の配置位置を避難先(且つ避難経路)として決定する。
【0143】
子供4において、直接通信可能であるものはHGW3とHGW4とHGW5とがある。ここで、HGW3はホップ数1で事件遭遇情報を受け取っており、HGW4はホップ数3で事件遭遇情報を受け取っており、HGW5はホップ数2で事件遭遇情報を受け取っている。従って、ホップ数が多いのはHGW4である。しかし、HGW4への転送経路上の親機100のうち、事件現場から最も遠い位置に配置されているのはHGW5である。従って、子供4の制御部230は、このHGW5の配置位置を避難先として決定し、HGW4からHGW5への経路を避難経路として決定する。
【0144】
子供5において、直接通信可能であるものはHGW2とHGW3とHGW5とHGW6とがある。ここで、HGW2はホップ数2で事件遭遇情報を受け取っており、HGW3はホップ数1で事件遭遇情報を受け取っており、HGW5はホップ数2で事件遭遇情報を受け取っており、HGW6はホップ数3で事件遭遇情報を受け取っている。従って、子供5の制御部230は、ホップ数が多いHGW6の配置位置を避難先(且つ避難経路)として決定する。
【0145】
ここで図11について説明する。図11は、制御部230により行われる避難先決定処理の第二の例の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば、図7Bの避難誘導子機側処理が制御部230で実行されて避難誘導情報が報知された後に、子供が、携帯する子機200の操作部を操作して行う所定の指示を制御部230が検出すると開始される。
【0146】
制御部230は、図10のS501において、図7BのS351の処理で受信された子機存在確認情報の転送経路情報を取得して、子機存在確認情報の発信元の親機100が受信した事件遭遇情報の転送経路及び転送回数(「ホップ数」)を検索する処理を行う。
【0147】
次に、制御部230は、S502において、S501の検索結果より、転送回数が最大であった転送経路情報を含む子機存在確認情報の発信元である親機100を避難先候補として選択する処理を行う。
【0148】
次に、制御部230は、S503において、避難先の候補である親機100が、危険区域内に配置されているか否かを判定する処理を行う。この判定は、判定対象の親機100の配置位置と事件現場との距離が、子機存在確認情報に「危険区域距離」として示されている危険距離以内であるか否かを判定することによって行われる。なお、親機100の配置位置と事件現場との距離は、親機100から発信される子機存在確認情報で「自身の位置情報」として示されている。ここで、制御部230は、避難先の候補である親機100が危険区域内に配置されていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS504に処理を進める。一方、制御部230は、避難先の候補である親機100が危険区域外に配置されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS506に処理を進める。なお、危険区域(危険距離)が特に設定されていない場合にも、このS503の判定処理の判定結果をNoとし、S506に処理を進めるものとする。
【0149】
次に、制御部230は、S504において、転送回数が最大であった場合の転送経路上の親機100のうち、その配置位置が事件現場から最も遠いものの配置位置を、事件からの避難先として最終決定する処理を行う。
【0150】
次に、制御部230は、S505において、転送回数が最大であった転送経路情報に示されている、決定された親機100から子機存在確認情報の発信元までの事件遭遇情報の転送経路を遡る経路を、避難先への避難経路として決定する処理を行う。そして、この処理を終えた後は、この図11の処理を終了する。
【0151】
その一方、制御部230は、S506では、S502の処理により選択された避難先候補である親機100を、避難先(且つ避難経路)として最終決定する処理を行う。そして、この処理を終えた後は、この図11の処理を終了する。
【0152】
配置位置を避難先とする親機100の決定の第二の手法は、制御部230により以上のようにして行われる。その後、制御部230は、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、このようにして決定した避難先及び避難経路の情報を報知させる。
【0153】
なお、避難経路の決定を上述したようにして行うときに、親機100間の経路に対し、安全性に応じた重み付けを与えた上で避難経路を選択するようにしてもよい。例えば、人家が多い経路や、道幅の広い経路、人車の通行量の多い経路等については、必ずしも事件現場から離れる方向でなかったとしても、避難経路として優先して制御部230が選択するようにしてもよい。また、避難経路の途中に子供の保護活動に協力する施設(ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、商店、公共施設など)が存在する場合には、制御部230は、報知部240を制御して、この施設に立ち寄る旨を報知させるようにしてもよい。
【0154】
次に、この事件情報報知システムを利用した、より具体的な避難誘導指示の手法として、親機100により行われる避難経路の誘導指示の手法について説明する。この手法では、親機100の制御部140が、子機200からの避難誘導の要求に応じ、子機200を携帯する子供を所定の避難先へ向かわせる避難経路を決定し、決定された避難経路の情報を子機200に通知して子供へ報知させるというものである。
【0155】
ここで、制御部140による避難経路の決定は、以下のようにして行われる。
まず、この決定処理は、子機200に備えられているスイッチに対する所定の操作を子供が行うことで子機200から発信される誘導要求情報を無線通信処理部110が受信したことを制御部140が検出することによって開始される。子供は、例えば、前述した第二の手法に従って報知部240により報知された避難先に到着したものの保護されなかった場合(留守など)に、子機200を操作して誘導要求情報を発信させる。
【0156】
図12は、誘導要求情報のデータ構造図である。図12の誘導要求情報には、「宛先」として、この誘導要求情報の送り先である親機100の親機識別情報(ID)が記される。更に、この誘導要求情報には、「#1」及び「#2」の2つの位置情報が含まれている。この位置情報は、子機200を携帯する子供の最終の避難先を示している最終避難先位置情報であり、子機200の情報保持部220に予め登録されている情報である。子機200の制御部230は、情報保持部220から読み出した最終避難先位置情報を付加した誘導要求情報を、無線通信処理部210に送信させる。
【0157】
制御部140による避難経路の決定は、無線通信処理部210が受信した、事件遭遇情報に含まれている事件現場情報と、誘導要求情報に含まれている最終避難先位置情報とに基づいて行われる。ここで、この決定は、事件現場から遠ざかる方向の経路とすることを大原則とする。
【0158】
前述したように、図12の誘導要求情報には、2つの最終避難先位置情報が含まれている。この場合において、制御部140は、まず、避難先位置情報により示されている2つの避難先の位置を結ぶ直線に事件現場情報の位置及び親機100自身の位置を投影してみる。そして、このときに、この直線における親機100自身の位置の投影点から見て、事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向にある避難先を、この誘導要求情報の発信元である子機200の最終避難先として選択する。
【0159】
次に、制御部140は、他の親機100についての親機位置情報を取得する。このために、制御部140は、無線通信処理部110を制御して、親機位置要求情報を発信させる。この親機位置要求情報は、直接の通信が可能な範囲内に配置されている他の親機100により受信される。すると、この親機位置要求情報の受信を検出した他の親機100の制御部140は、無線通信処理部110を制御して、情報保持部130から読み出した自身の親機位置情報を、親機位置要求情報の発信元である親機100へ返信させる。返信された親機位置情報は、親機位置要求情報の発信元の親機100の無線通信処理部110で受信される。制御部140は、このようにして、他の親機100についての親機位置情報の取得を行う。
【0160】
ここで、制御部140は、親機位置情報を取得した親機100のうち、自身から見て、事件現場から遠ざかる方向に配置されているものを、最終避難先への避難経路において次に向かわせる経由先の候補として選択する。このために、制御部140は、まず、避難先位置情報により示されている2つの避難先の位置を結ぶ直線に、事件現場情報の位置と、親機位置情報を取得した親機100の位置とを投影してみる。そして、このときに、この直線における親機100自身の位置の投影点から見て、事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向に投影点がある親機100を、最終避難先への避難経路における次の経由先の候補として選択する。
【0161】
次に、制御部140は、以上のようにして選択した経由先の候補と最終避難先との配置位置に基づき、避難距離を算出する。最終避難先に直接向かう場合の避難距離は、この親機100自身の配置位置と最終避難先の位置との距離である。また、経由先の候補を経由して最終避難先に向かう場合の避難距離は、この親機100自身の配置位置と経由先の候補の位置との距離に、当該経由先の候補から最終避難先までの距離を加算した距離である。なお、この親機100自身の配置位置の情報は、情報保持部130に予め登録されている。
【0162】
ここで、最終避難先に直接向かう場合の避難距離が、この親機100自身の配置位置と経由先の候補の位置との距離よりも短い場合には、制御部140は、最終避難先を、子機200を次に向かわせる避難先として決定する。一方、この他の場合では、制御部140は、経由先の候補を経由する場合の避難距離が最短である場合の経由先の候補を、子機200を次に向かわせる経由先として決定する。
【0163】
その後、制御部140は、無線通信処理部110を制御して、以上のようにして決定された避難先若しくは経由先を示す情報を発信させて、受信された誘導要求情報の発信元である子機200にその情報を通知する。
【0164】
以上のようにして行われる、制御部140による避難経路の決定の具体例を、図13を用いて説明する。図13は、事件情報報知システムを構成する複数の親機100と各子機200(子供)とについての、事件発生時における所在位置の第二の例である。
【0165】
図13において、HGW1〜HGW8の各々が親機100を表しており、子供1〜子供5の各々が子機200を表している。
この例において、子供1〜子供5の各々の情報保持部220には、最終避難先位置情報として、「自宅」と「学校」との位置情報が予め登録されているものとする。なお、説明を簡単にするために、各子供の「自宅」及び通学先の「学校」は共通とする。
【0166】
図13において、「自宅」と「学校」とを結ぶ直線に、事件現場の位置及びHGW1〜HGW8の各々の位置を投影してみる。すると、このとき、HGW1〜HGW8の各々の位置の投影点から見て、事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向にある最終避難先は、いずれも「学校」であることは明らかである。従って、図13の例では、子供1〜子供5のいずれについても、「学校」が最終避難先として選択される。
【0167】
ここで子供5に注目する。この子供5が、HGW6に到着した時点で、HGW6宛ての誘導要求情報を発信したとする。
この誘導要求情報がHGW6で受信されると、HGW6の制御部140は、無線通信処理部110を制御して親機位置要求情報を発信させる。ここで、この親機位置要求情報を受信した親機100が、HGW2、HGW5、HGW7、及びHGW8であったとする。
【0168】
HGW2、HGW5、HGW7、及びHGW8の制御部140は、この親機位置要求情報の受信を検出すると、無線通信処理部110を制御して、自身の親機位置情報を、親機位置要求情報の発信元であるHGW6へ返信させる。
【0169】
HGW6の制御部140は、受信されたHGW2、HGW5、HGW7、及びHGW8各々の親機位置情報に基づき、HGW6から見て事件現場から遠ざかる方向に配置されている親機100を、子供5に次に向かわせる経由先の候補として選択する。ここでは、経由先の候補として、HGW7とHGW8とが選択されたものとする。
【0170】
次に、HGW6の制御部140は、このHGW6自身の配置位置と、経由先の候補として選択されたHGW7及びHGW8並びに最終避難先として選択された「学校」との距離を比較する。このうちで、HGW6自身の配置位置と「学校」との距離は最短ではない。そこで、制御部140は、HGW7を経由して「学校」に至る避難距離と、HGW8を経由して「学校」に至る避難距離とを比較する。ここで、HGW7を経由して「学校」に至る避難距離が最短であったとすると、HGW6の制御部140は、HGW7を、子供5を次に向かわせる避難先(経由先)として決定する。そして、無線通信処理部110を制御して、以上のようにして決定されたHGW7を示す情報を発信させて、子供5にその情報を通知する。
【0171】
子供5は、報知部240での報知内容に従い、HGW7へ移動する。ここで、HGW7に到着したものの保護されなかった場合には、HGW7宛ての誘導要求情報の発信を行う。以降、HGW7の制御部140が、上述したHGW6の制御部140と同様にして、子供5を次に向かわせる避難先(経由先)の決定を行う。
【0172】
ここで図14について説明する。図14は、親機100の制御部140により行われる、避難先決定処理の第三の例の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、子機200から発信される誘導要求情報を無線通信処理部110が受信したことを制御部140が検出することによって開始される。
【0173】
制御部140は、図14のS601において、誘導要求情報に含まれている2つの最終避難先のうち、親機100自身の位置から見て、事件現場から遠ざかる方向に在る方を選択する処理を行う。このために、制御部140は、まず、避難先位置情報により示されている2つの最終避難先の位置(二次元座標)を結ぶ直線上における、事件遭遇情報に含まれていた事件現場情報の位置の投影点と、親機100自身の位置の投影点との座標を取得する。そして、親機100自身の位置の投影点から事件現場情報の位置の投影点への方向ベクトルと、親機100自身の位置の投影点から2つの最終避難先の位置へ向かう2つの方向ベクトルとを算出する。ここで、制御部140は、事件現場情報の位置の投影点への方向ベクトルと向きが逆である方の最終避難先を選択する。
【0174】
次に、制御部140は、S602において、無線通信処理部110を制御して、親機位置要求情報を発信させる処理を行う。この親機位置要求情報の受信を検出した他の親機100は、自身の親機位置情報を返信する。返信された親機位置情報は、無線通信処理部110で受信される。
【0175】
次に、制御部140は、S603において、無線通信処理部110で受信された全ての親機位置情報の発信元である親機100について、後述するS604からS605にかけての処理を実行したか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部230は、当該全ての親機100について、後述の処理を実行したと判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S606に処理を進める。一方、制御部230は、当該全ての親機100のうち、後述の処理を実行していないものが残されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S604に処理を進める。
【0176】
次に、制御部140は、S604において、制御部140は、親機位置情報を取得した親機100が、自身から見て、事件現場から遠ざかる方向に配置されているか否かを判定する処理を行う。このために、制御部140は、まず、避難先位置情報により示されている2つの避難先の位置(二次元座標)を結ぶ直線上における、事件遭遇情報に含まれていた事件現場情報で示されている位置の投影点と親機100自身の位置の投影点との座標を取得する。そして、親機100自身の位置の投影点から事件現場情報の位置の投影点への方向ベクトルと、親機100自身の位置の投影点から親機位置情報を取得した親機100の投影点への方向ベクトルとを算出する。ここで、この方向ベクトルの向きが逆であるか否かを判定することによって、この判定処理が行われる。
【0177】
制御部140は、この判定処理において、親機位置情報を取得した親機100が、自身から見て事件現場から遠ざかる方向に配置されていると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、その親機100を経由先の候補として選択し、S605に処理を進める。一方、制御部140は、親機位置情報を取得した親機100が事件現場から遠ざかる方向には配置されていないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、その親機100を経由先の候補から除外し、S603に処理を戻して上述した処理を改めて実行する。
【0178】
次に、制御部140は、S605において、S601の処理で選択された最終避難先の位置と、S604の処理で選択された各経由先の候補の位置と、親機100自身の位置との相互間の距離を算出する処理を行う。その後はS603に処理を戻して上述した処理を改めて実行する。
【0179】
その一方で、制御部140は、S606において、避難先(経由先)の最終決定処理を行う。この処理では、この親機100自身の配置位置から最終避難先までの距離(避難距離)が、この親機100自身の配置位置と経由先の候補の位置との距離よりも短い場合には、最終避難先を、次に向かわせる避難先として決定する。一方、この他の場合では、制御部140は、経由先の候補を経由する場合の避難距離(この親機100と経由先の候補との距離に、当該経由先の候補から最終避難先までの距離を加算した距離)が最短である場合の経由先の候補を、経由先として決定する。
【0180】
このS606の処理を終えると、制御部140は、この図9の処理を終了する。その後、制御部140は、無線通信処理部110を制御して、以上のようにして決定された避難先若しくは経由先を示す情報を発信させて、受信された誘導要求情報の発信元である子機200にその情報を通知する。
この事件情報報知システムを構成する親機100により行われる避難経路の誘導指示は、以上のようにして行われる。
【0181】
[3]関係部門への通知処理
事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機100からの転送を経て、受信した親機100は、子供達への前述した避難誘導処理を行うと共に、インターネット網10を介して、センタサーバ300へ事件遭遇情報を転送する。ここで、インターネット網10に起因する事件遭遇情報のセンタサーバ300への未着の可能性を軽減するため、事件遭遇情報を受信した全ての親機100は、事件遭遇情報のセンタサーバ300への転送を行う。その一方で、センタサーバ300では、同一事件についての事件遭遇情報を重複して受信した場合でも、そのうちで最初に受信したものについてのみ、他のセンタサーバ300への発信や、報知部340による事件遭遇情報を受信した旨の報知を行うようにする。
【0182】
以上のように構成された事件情報報知システムは、小学生、中学生、高齢者等、対象者によって探索方法、検索範囲、通知範囲等を変更するようにしてもよい。また、事件情報報知システムを構成する親機100のうち、設置場所に保護活動の協力者の在宅が確認されている場合にのみ、避難先・経由先として選択可能な親機100とするようにしてもよい。
【0183】
なお、以上までに説明した実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
移動体である複数の子機との間で無線通信路を介して相互に情報の授受を行う事件情報報知システムであって、
該複数の子機のひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報であって、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含む該事件遭遇情報を受信する事件遭遇情報受信手段と、
該子機の各々の位置と該事件現場情報で示されている位置との距離を、子機距離情報として取得する子機距離情報取得手段と、
該事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、該子機距離情報に基づき、該複数の子機の各々について作成する避難誘導情報作成手段と、
該複数の子機の各々に対し、該避難誘導情報作成手段が作成した、通知先の子機についての避難誘導情報を通知して報知させる避難誘導情報通知手段と、
を有することを特徴とする事件情報報知システム。
(付記2)
該事件情報報知システムは、固定局である親機を複数備えており、
該親機は、該事件遭遇情報受信手段、該子機距離情報取得手段、該避難誘導情報作成手段、及び該避難誘導情報通知手段を各々有していると共に、更に、該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に、該事件遭遇情報の転送経路を示す転送経路情報を付加して他の該親機へ転送する事件遭遇情報転送手段を各々有しており、
該事件遭遇情報受信手段は、更に、他の親機の該事件遭遇情報転送手段から転送されてきた該事件遭遇情報を受信し、
該親機は、
該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報の転送を該事件遭遇情報転送手段が行うと同一の事件についての事件遭遇情報の同一経路での転送の繰り返しが発生するか否かを、該事件遭遇情報に付加されている該転送経路情報に基づき判定する繰り返し転送判定手段と、
該転送の繰り返しが発生すると該繰り返し転送判定手段が判定したときに、該事件遭遇情報転送手段を制御して、該繰り返しが発生することになる該事件遭遇情報の転送を禁止させる事件遭遇情報転送制御手段と、
を更に有する、
ことを特徴とする付記1に記載の事件情報報知システム。
(付記3)
該事件遭遇情報には、該子機を識別する情報である子機識別情報であって該事件遭遇情報の発信元である子機についてのものと、該子機が該事件遭遇情報を送信したときの日時を示す日時情報とが含まれており、
該繰り返し転送判定手段は、該事件遭遇情報の同一性を、該事件遭遇情報に含まれている該子機識別情報及び該日時情報に基づいて判定する、
ことを特徴とする付記2に記載の事件情報報知システム。
(付記4)
該親機は、該事件遭遇情報受信手段が事件遭遇情報を受信したときに、その旨を報知する事件遭遇情報受信報知手段を更に有することを特徴とする付記2に記載の事件情報報知システム。
(付記5)
該親機は、該事件遭遇情報の発信元である子機からの該事件遭遇情報を直接受信した親機の位置に基づき設定される危険区域に自身が配置されているか否かを判定する危険区域内存在判定手段を更に有し、
該事件遭遇情報転送手段は、該親機が該危険区域内に自身が配置されていると該危険区域内存在判定手段が判定したときにのみ、該事件遭遇情報の転送を行う、
ことを特徴とする付記2に記載の事件情報報知システム。
(付記6)
該事件情報報知システムは、固定局である親機を複数備えており、
該親機は、該事件遭遇情報受信手段、該子機距離情報取得手段、該避難誘導情報作成手段、及び該避難誘導情報通知手段を有しており、
該子機距離情報取得手段は、
該事件遭遇情報受信手段が事件遭遇情報を受信したときに、該事件遭遇情報に含まれていた該事件現場情報を含む子機存在確認情報を発信する子機存在確認情報発信手段と、
該子機存在確認情報を受信した子機から送られてくる子機存在回答情報であって、該子機を識別する子機識別情報と該子機についての該子機距離情報とを含む該子機存在回答情報を受信する子機存在回答情報受信手段と、
を有しており、
該避難誘導情報作成手段は、該子機存在回答情報受信手段が受信した子機存在回答情報に含まれている子機距離情報に基づいて該避難誘導情報を作成し、
該避難誘導情報通知手段は、該子機存在回答情報受信手段が受信した子機存在回答情報に含まれている子機識別情報で識別される子機に対し、該子機存在回答情報に含まれている子機距離情報に基づいて該避難誘導情報作成手段が作成した避難誘導情報を通知して報知させる、
ことを特徴とする付記1に記載の事件情報報知システム。
(付記7)
該避難誘導情報作成手段は、該子機距離情報が所定の安全距離よりも短い場合には、該複数の親機のいずれかが配置されている位置への避難を指示する避難誘導情報を作成し、該子機距離情報が該所定の安全距離以上である場合には、所定の避難先への避難を指示する避難誘導情報を作成することを特徴とする付記6に記載の事件情報報知システム。
(付記8)
無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されている事件情報報知システムとの間で、該無線通信路を介して情報の授受を行う、移動体である子機であって、
事件に遭遇したことを示しており他の子機から発信された事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信したことによって各親機から送られてくる子機存在確認情報であって、該事件を識別する事件識別情報、及び、該子機存在確認情報の発信元である各親機の位置情報である確認元親機位置情報を含む該子機存在確認情報を受信する子機存在確認情報受信手段と、
該子機存在確認情報受信手段が受信した該子機存在確認情報に含まれている該事件識別情報及び該確認元親機位置情報に基づき、該事件からの避難先とする親機の位置を決定する避難先決定手段と、
該避難先決定手段が決定した避難先の情報を報知する避難先報知手段と、
を有することを特徴とする子機。
(付記9)
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が該子機存在確認情報を唯一つの親機から受信した場合には、該親機の位置を該避難先として決定することを特徴とする付記8に記載の子機。
(付記10)
該子機の位置を取得する子機位置取得手段と、
該子機位置取得手段が取得した該子機の位置と、該子機存在確認情報受信手段が受信した該子機存在確認情報に含まれている該確認元親機位置情報において示されている親機の位置との距離である確認元親機距離を算出する確認元親機距離算出手段と、
を更に有し、
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が、同一の事件識別情報が含まれている該子機存在確認情報を複数の親機から受信した場合には、該確認元親機距離算出手段が算出した確認元親機距離が最短である親機が配置されている位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする付記8に記載の子機。
(付記11)
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が、同一の事件識別情報が含まれている該子機存在確認情報を複数の親機から受信した場合であっても、該子機存在確認情報に、更に、該事件遭遇情報の発信元である他の子機の位置情報である事件現場情報と、予め指定されている、危険区域を定義する危険距離の情報との両者が含まれていた場合であって、且つ、該子機存在確認情報に含まれている該確認元親機位置情報により示されている該親機の位置が、該事件現場情報で示されている位置から該危険距離内に全て配置されていた場合には、該親機のうちで該事件現場情報で示されている位置との距離が最長である位置に配置されているものの該配置位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする付記10に記載の子機。
(付記12)
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報が他の親機による転送を経た場合における該転送の回数を示す転送回数情報が含まれており、
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が、同一の事件識別情報が含まれている該子機存在確認情報を複数の親機から受信した場合には、最大の転送回数を示している該転送回数情報を含む該子機存在確認情報を発信した親機が配置されている位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする付記8に記載の子機。
(付記13)
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報の発信元である他の子機の位置情報である事件現場情報と、予め指定されている、危険区域を定義する危険距離の情報との両者が含まれており、
該避難先決定手段は、最大の転送回数を示している該転送回数情報を含む該子機存在確認情報を発信した親機の配置位置が、該事件現場情報で示されている位置から該危険距離内に全て配置されていた場合には、該事件遭遇情報を転送経路上の親機のうちで該事件現場情報で示されている位置との距離が最長である位置に配置されているものの該配置位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする付記12に記載の子機。
(付記14)
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報が他の親機による転送を経た場合における該転送の経路を示す転送経路情報が含まれており、
該避難先決定手段が決定した避難先までの避難経路を、該転送経路情報に基づき決定する避難経路決定手段を更に有し、
該避難先報知手段は、更に、該避難経路決定手段が決定した避難経路の情報を報知する、
ことを特徴とする付記8に記載の子機。
(付記15)
該避難経路決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が受信した該子機存在確認情報の発信元である親機が受信した該事件遭遇情報についての、該避難先決定手段が決定した避難先である親機からの転送経路を遡る経路を、該避難経路として決定することを特徴とする付記14に記載の子機。
(付記16)
無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されており、移動体である複数の子機との間で該無線通信路を介して相互に情報の授受を行う事件情報報知システムであって、
該親機は、
該複数の子機のうちのひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報であって、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含む該事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信する事件遭遇情報受信手段と、
該複数の子機のうちのひとつから送られてくる、該子機毎に予め設定されている避難先までの経路の誘導の要求を示している誘導要求情報であって、該避難先の位置を示す避難先位置情報を含む該誘導要求情報を受信する誘導要求情報受信手段と、
該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に含まれている該事件現場情報、及び、該誘導要求情報受信手段が受信した誘導要求情報に含まれている該避難先位置情報に基づき、該誘導要求情報の発信元である子機を該避難先に向かわせる経路を決定する避難経路決定手段と、
該誘導要求情報の発信元である子機に対し、該避難経路決定手段により決定された該経路の情報を通知して報知させる避難経路情報通知手段と、
を有することを特徴とする事件情報報知システム。
(付記17)
該避難先位置情報は、2つの最終避難先についての位置を示しており、
該避難経路決定手段は、該最終避難先位置情報により示されている2つの避難先の位置を結ぶ直線に該事件現場情報の位置及び該親機自身の位置を投影したときに、該直線において該親機自身の位置の投影点から見て、該事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向にある避難先を、該誘導要求情報の発信元である子機の最終避難先として選択し、該最終避難先に向かう経路を決定する
ことを特徴とする付記16に記載の事件情報報知システム。
(付記18)
他の親機の位置を示す親機位置情報を取得する親機位置情報取得手段を更に有し、
該避難経路決定手段は、該親機位置情報取得手段が取得した親機位置情報で示されている他の親機の位置を該直線に更に投影したときに、該他の親機のうち、該直線において該親機自身の位置の投影点から見て、投影点が該事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向にあるものの位置を、該誘導要求情報の発信元である子機を次に向かわせる経由先の候補とし、該経由先の候補から該避難先に向かう経路を決定する、
ことを特徴とする付記17に記載の事件情報報知システム。
(付記19)
該親機位置情報取得手段は、
該親機位置情報の要求を示している親機位置情報要求情報を送信する親機位置情報要求情報送信手段と、
他の親機の親機位置情報要求情報送信手段が送信した親機位置情報要求情報の受信を行うと共に、該受信に応じて自身の親機位置情報を返信する親機位置情報返信手段と、
該親機位置情報要求情報送信手段が送信した親機位置情報要求情報に応じて他の親機の親機位置情報返信手段が返信した、該他の親機についての親機位置情報を受信する親機位置情報受信手段と、
を有することを特徴とする付記18に記載の事件情報報知システム。
(付記20)
該避難経路決定手段は、該親機自身の位置から、該親機位置情報で示されている該経由先の候補である親機の位置を経由して、該選択された最終避難先の位置に至るまでの距離である避難距離を算出する避難距離算出手段を有しており、該経由先の候補である親機のうち、該避難距離が最短であるものの位置を、該誘導要求情報の発信元である子機を次に向かわせる経路として決定することを特徴とする付記18に記載の事件情報報知システム。
【符号の説明】
【0184】
10 インターネット網
100 親機
101、201、301 アンテナ
110、210、310 無線通信処理部
120、320 有線通信部
130、220 情報保持部
140、230 制御部
150、240、340 報知部
200 子機
300 センタサーバ
330 事件情報管理部
【技術分野】
【0001】
本発明は情報伝達の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、不審者から子供を守る目的で、学校や警察など経由して、不審者の情報を各家庭に配信するシステムが運用されている。ここでは、このシステムを「地域見守りシステム」と称することとする。
【0003】
地域見守りシステムは、事件が発生したときに、センターに収集された事件の情報を、通信回線を用いて保護者に宛てて配信し、この情報を受け取った保護者が子供を保護するという方式のものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−229462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような地域見守りシステムは、子供の保護を保護者(大人)が行うことを前提としている。このため、子供は、保護されるまでは、事件発生の事実を知らないまま事件現場付近に居続けてしまうことがある。
【0006】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、事件現場付近に居合わせた人自らが身を守るための支援を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する事件情報報知システムは、移動体である複数の子機との間で無線通信路を介して相互に情報の授受を行うものである。このシステムは、事件遭遇情報受信手段、子機距離情報取得手段、避難誘導情報作成手段、及び避難誘導情報通知手段を有する。
【0008】
ここで、事件遭遇情報受信手段は、複数の子機のひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報を受信する。なお、事件遭遇情報は、この情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含んでいる。子機距離情報取得手段は、子機の各々の位置と事件現場情報で示されている位置との距離を、子機距離情報として取得する。避難誘導情報作成手段は、この事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、子機距離情報に基づき、複数の子機の各々について作成する。避難誘導情報通知手段は、複数の子機の各々に対し、避難誘導情報作成手段が作成した、通知先の子機についての避難誘導情報を通知して報知させる。
【0009】
このシステムによれば、避難誘導情報が、各子機についての子機距離情報に基づいて作成されて、各子機で報知される。従って、事件現場付近に居合わせても、この子機を所持していれば、報知される避難誘導情報に従って移動することで、事件現場から遠ざかる方向に避難することができる。つまり、このシステムにより、子機のユーザ自らが身を守るための支援を行うことができる。
【0010】
また、本明細書で開示する子機は、移動体であって、無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されている事件情報報知システムとの間で、該無線通信路を介して情報の授受を行うものである。この子機は、子機存在確認情報受信手段、避難先決定手段、及び避難先報知手段を有する。
【0011】
ここで、子機存在確認情報受信手段は、事件に遭遇したことを示しており他の子機から発信された事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信したことによって各親機から送られてくる子機存在確認情報を受信する。なお、子機存在確認情報は、事件を識別する事件識別情報、及び、この子機存在確認情報の発信元である各親機の位置情報である確認元親機位置情報を含んでいる。避難先決定手段は、子機存在確認情報受信手段が受信した子機存在確認情報に含まれている、事件識別情報及び確認元親機位置情報に基づき、この事件からの避難先を決定する。避難先報知手段は、避難先決定手段が決定した避難先の情報を報知する。
【0012】
子機存在確認情報を発信した親機は、事件情報報知システムを構成しているものであるので、この親機の設置場所は安全な避難先と見ることができる。子機は、事件識別情報に基づいて抽出可能である、同一の事件についての異なる親機から送られてきた子機存在確認情報に含まれている確認元親機位置情報で示される位置を、この事件からの避難先として決定し、決定された避難先の情報を報知する。従って、事件現場付近に居合わせても、この子機を所持していれば、報知される避難先の情報に従って移動することで、安全な避難先に避難することができる。つまり、この子機により、ユーザ自らが身を守るための支援を行うことができる。
【0013】
また、本明細書で開示する事件情報報知システムは、無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されており、移動体である複数の子機との間で該無線通信路を介して相互に情報の授受を行うものである。なお、この親機は、事件遭遇情報受信手段、誘導要求情報受信手段、避難経路決定手段、及び避難経路情報通知手段を有する。
【0014】
ここで、事件遭遇情報受信手段は、複数の子機のうちのひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信する。なお、事件遭遇情報は、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含んでいる。誘導要求情報受信手段は、複数の子機のうちのひとつから送られてくる、子機毎に予め設定されている避難先までの経路の誘導の要求を示している誘導要求情報を受信する。なお、誘導要求情報は、その避難先の位置を示す避難先位置情報を含んでいる。避難経路決定手段は、誘導要求情報の発信元である子機を避難先に向かわせる経路を決定する。この決定は、事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に含まれている事件現場情報、及び、誘導要求情報受信手段が受信した誘導要求情報に含まれている避難先位置情報に基づいて行う。避難経路情報通知手段は、誘導要求情報の発信元である子機に対し、避難経路決定手段により決定された経路の情報を通知して報知させる。
【0015】
このシステムによれば、避難経路として、事件現場情報で示されている事件現場の位置に近づくことがない方向に位置している避難先への経路を決定することができ、その経路の情報が各子機に報知される。従って、事件現場付近に居合わせても、この子機を所持していれば、報知される経路の情報に従って移動することで、事件現場から離れる方向に避難することができる。つまり、このシステムにより、子機のユーザ自らが身を守るための支援を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本明細書で開示する事件情報報知システム及び子機のどちらによっても、事件現場付近に居合わせた人自らが身を守るための支援を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】事件情報報知システムを構成する親機単体の構成図である。
【図1B】子機の構成図である。
【図1C】センタサーバの構成図である。
【図2】事件遭遇情報のデータ構造図である。
【図3】事件遭遇信号直接受信時処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】転送中の事件遭遇情報のデータ構造図である。
【図5A】事件遭遇情報の転送におけるデータ改変例(その1)である。
【図5B】事件遭遇情報の転送におけるデータ改変例(その2)である。
【図6】事件遭遇情報間接受信時処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図7A】避難誘導親機側処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図7B】避難誘導子機側処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】子機存在確認情報のデータ構造図である。
【図9】避難先決定処理の第一の例の処理内容を示すフローチャートである。
【図10A】事件情報報知システムを構成する複数の親機と各子機(子供)とについての、事件発生時における所在位置の第一の例である。
【図10B】図10Aの場合における、各子機と直接通信可能な親機の一覧である。
【図10C】図10Aの場合における、事件遭遇情報の転送経路及び転送回数の一覧である。
【図11】避難先決定処理の第二の例の処理内容を示すフローチャートである。
【図12】誘導要求情報のデータ構造図である。
【図13】事件情報報知システムを構成する複数の親機と各子機(子供)とについての、事件発生時における所在位置の第二の例である。
【図14】避難先決定処理の第三の例の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、事件の発生時に、事件の発生現場(事件現場)の近くに居合わせた子供に対し、当該事件からの避難に関する情報を提供する事件情報報知システムについて説明する。
【0019】
まず、図1A、図1B、及び図1Cについて説明する。
図1Aは、事件情報報知システムを構成する親機100単体の構成図である。この親機(ホームゲートウェイ(HGW)とも表記することがある。)100は固定局である。事件情報報知システムは、無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な複数の親機100を備えて構成される。この親機100は、子供の保護者宅、及び子供の保護活動に協力する地域住民宅に設置することを前提としている。従って、この親機100の設置場所の位置は、子供にとって安全な避難先とみなされる。
【0020】
図1Bは、子機200の構成図である。この子機200は移動体である。複数の親機100で構成される事件情報報知システムは、複数の子機200との間で、無線通信路を介して相互に情報の授受を行うことができる。この子機200は、子供が携帯することを前提としている。子供は、自身が携帯している子機200から報知される避難指示や避難経路の誘導指示に従うことで、安全な避難行動を取ることができる。
【0021】
図1Cは、センタサーバ300の構成図である。センタサーバ300は、事件情報報知システムを構成している複数の親機100との間で相互に情報の授受を行うことができる。このセンタサーバ300は、例えば学校や警察等の関係部門に設置することを前提としており、発生した事件の情報を収集して当該関係部門に報知する。
【0022】
ここで、本願で用いる幾つかの用語について説明しておく。
事件遭遇情報は、事件に遭遇したことを示す情報である。この事件遭遇情報は、事件に遭遇した子供が自身で携帯している子機200を操作することによって、子機200が発信するものである。親機100は、この事件遭遇情報を受信すると、この情報を受信した旨の通知(事件遭遇情報受信通知)を、事件遭遇情報の発信元の子機200へ発信する。更に、親機100は、この事件遭遇情報を受信すると、所定の条件の下で、事件情報報知システムを構成している他の親機100へ順次転送する。
【0023】
事件現場情報は、事件の発生現場の位置を示す情報であり、より具体的には、事件遭遇情報の発信元である子機200の発信時における位置情報である。子機200が発信する事件遭遇情報には、この事件現場情報が含まれている。
【0024】
子機距離情報は、子機200の各々の位置と、事件現場情報で示されている位置との距離を示す情報である。
避難誘導情報は事件からの避難を誘導する情報であり、その内容は、避難指示や避難経路の誘導指示などである。
【0025】
転送経路情報は、親機100から他の親機100への事件遭遇情報の転送が行われた場合における転送経路を示す情報である。親機100は、事件遭遇情報を他の親機100へ転送するときには、受信した事件遭遇情報に、この転送経路情報を付加して転送する。
【0026】
転送回数情報は、事件遭遇情報が他の親機100により転送された場合における、その転送の回数を示す情報である。この転送回数情報は、事件遭遇情報を転送する際に親機100により付加されるものであり、親機100は、新たに転送を行う度に、この転送回数情報で示されている転送回数の値を1ずつ増加させる。
【0027】
近隣親機情報は、親機100から、無線通信路を介して直接に(すなわち、他の親機100からの転送を経ることなく)各種の情報の相互授受を常時行うことのできる、近隣の親機100を特定する情報である。親機100は、事件遭遇情報の転送を、この近隣親機情報で特定される親機100に対して行う。
【0028】
事件識別情報は、事件を個別に識別する情報である。事件識別情報は、事件遭遇情報を、発信元である子機200から直接に(すなわち、他の親機100からの転送を経ることなく)受信した親機100が、受信した事件遭遇情報で示されている事件に対して付与する。
【0029】
子機識別情報は、子機200を個別に識別する情報である。事件遭遇情報には、この事件遭遇情報の発信元である子機200についての子機識別情報が含まれている。
日時情報は、事件遭遇情報の発信元である子機200が当該事件遭遇情報を送信したときの日時を示す情報である。子機200が発信する事件遭遇情報には、この日時情報が含まれている。
【0030】
危険区域は、子機200においては、事件遭遇情報の発信元である子機200の位置から所定の距離(危険距離)内の区域のことである。また、親機100においては、事件遭遇情報の発信元である子機200からの事件遭遇情報を直接受信した親機100の位置から当該危険距離内の区域のことである。この危険区域は、親機100が事件遭遇情報の転送を行うか否かを判定する基準のひとつとして利用される。
【0031】
子機存在確認情報は、親機100との通信可能範囲内に位置している子機200の存在を確認するために、親機100が発信する情報である。親機100は、事件遭遇情報を、発信元である子機200から直接に受信した場合、及び、他の親機100による転送を経て受信した場合のどちらにおいても、この子機存在確認情報を発信する。親機100は、この子機存在確認情報に、受信した事件遭遇情報で示されている事件に対して付与された事件識別情報を含ませて発信する。更に、親機100は、この子機存在確認情報に、受信した事件遭遇情報に含まれている事件現場情報と、予め指定されている危険距離の情報とをも含ませて発信する。
【0032】
親機識別情報は、親機100を個別に識別する情報である。
親機位置情報は、親機100の各々の位置を示す情報である。この親機位置情報のうち、特に、確認元親機位置情報は、子機存在確認情報の発信元である親機100の位置を示す情報である。親機100は、前述した子機存在確認情報に、この子機存在確認情報の発信元である親機100についての確認元親機位置情報をも更に含ませて発信する。
【0033】
子機存在回答情報は、親機100と直接の通信が可能な範囲内に子機200が位置していることを当該親機100に認識させるために、当該子機200が発信する情報である。この子機存在回答情報は、親機100から発信された子機存在確認情報を受信した子機200が、その返答として発信するものである。子機存在回答情報には、この子機存在回答情報の発信元である子機200についての子機識別情報と子機距離情報とが含まれている。
【0034】
確認元親機距離は、子機存在確認情報の発信元である親機100の位置(すなわち、確認元親機位置情報で示されている位置)と、この子機存在確認情報を受信した子機200の位置との距離である。
【0035】
誘導要求情報は、所定の避難先までの経路の誘導を親機100に要求するために、子機200が発信する情報である。
最終避難先位置情報は、子機200毎に予め設定されている情報であり、子機200を携帯する子供の最終的な避難先(例えば自宅や通学先である学校)の位置を示す情報である。子機200が発信する誘導要求情報には、当該子機200に対して設定されている最終避難先位置情報が含まれている。
【0036】
親機位置要求情報は、親機100が、他の親機100についての親機位置情報を当該他の親機100に対し要求するために、発信する情報である。親機100が発信した親機位置要求情報は、当該親機100と直接の通信が可能な範囲内に配置されている他の親機100により受信される。親機位置要求情報を受信した親機100は、自身の親機位置情報を、当該親機位置要求情報の発信元である親機100へ返信する。
【0037】
以降の説明は、上述した用語を用いて行う。
まず、図1Aの親機100について更に説明する。
親機100は、無線通信処理部110、有線通信部120、情報保持部130、制御部140、及び報知部150を備えている。
【0038】
無線通信処理部110は、子機200及び事件情報報知システムを構成している他の親機100との間で、無線伝送路を介して、各種の情報の授受を行う。無線通信処理部110は、より具体的には、事件遭遇情報の受信・転送、避難誘導情報通知の発信、子機存在確認情報の発信、子機存在回答情報の受信、誘導要求情報の受信、親機位置情報要求情報の送信、及び、親機位置情報の返信・受信等の各機能を提供する。無線通信処理部110は、信号発信部と信号受信部とをハードウェア構成として備えている。ここで、信号発信部は、親機100が発信する各種の情報を表しているデータ信号で変調された高周波信号をアンテナ101へ給電して電磁波を空間に放射させる。信号受信部は、他の機器より発信されてアンテナ101に励起した高周波信号からデータ信号を復調して、このデータ信号で表されている各種の情報を受信し取得する。
【0039】
有線通信部120は、有線通信網、ここではインターネット網10、を介して、センタサーバ300との間で各種の情報の授受を行うインタフェース部である。より具体的には、無線通信処理部110が受信した事件遭遇情報をセンタサーバ300へ送付する。
【0040】
情報保持部130は、親機100に関する情報が予め登録されて保持されている記憶装置である。より具体的には、情報保持部130には、固定局である親機100自身についての親機識別情報、親機位置情報、及び近隣親機情報が保持されている。更に、情報保持部130には危険距離の値が予め設定登録されている。この危険距離の値は、事件情報報知システムを構成している親機100の間で共通の値である。
【0041】
制御部140は、親機100全体の動作制御を行うものである。制御部140は、より具体的には、事件遭遇情報の転送制御、危険区域の判定、子機200へ通知する避難メッセージの作成、及び、避難経路の決定等の各制御機能を提供する。制御部140は、例えば演算処理装置と、当該演算処理装置で実行される各種の制御プログラムが予め格納されている半導体記憶装置とを備えて構成される。この演算処理装置が制御プログラムを半導体記憶装置から読み出して実行することで、制御部140は、上述した各種の制御機能の提供や、後述する各種の制御処理の実行が可能になる。
【0042】
報知部150は、親機100の設置場所に在る保護者・地域住民等に対し、無線通信処理部110が事件遭遇情報を受信した旨を報知するものである。報知部150は、より具体的には、その旨を示す警報音を発するスピーカやブザー、その旨を赤色等の光で警告するランプ、振動を発生させてその旨を警告するバイブレータ等を備えている。
【0043】
次に、図1Bの子機200について更に説明する。
子機200は、無線通信処理部210、情報保持部220、制御部230、及び報知部240を備えている。
【0044】
無線通信処理部210は、事件情報報知システムを構成している親機100との間で、無線伝送路を介して、各種の情報の授受を行う。無線通信処理部210は、より具体的には、事件遭遇情報の発信、事件遭遇情報受信通知の受信、子機存在確認情報の受信、及び、子機存在回答情報の発信等の各機能を提供する。無線通信処理部210は、信号発信部と信号受信部とをハードウェア構成として備えている。ここで、信号発信部は、子機200が発信する各種の情報を表しているデータ信号で変調された高周波信号をアンテナ201へ給電して電磁波を空間に放射させる。信号受信部は、親機100より発信されてアンテナ201に励起した高周波信号からデータ信号を復調して、このデータ信号で表されている各種の情報を受信し取得する。
【0045】
情報保持部220は、この子機200に関する情報が登録されて保持されている記憶装置である。より具体的には、情報保持部220には、この子機200についての子機識別情報、及び、最終避難先位置情報である学校・自宅等の位置情報が予め保持されている。また、情報保持部220は、子機存在確認情報を無線通信処理部210が受信した場合には、受信した子機存在確認情報を記憶して保持する機能も提供する。
【0046】
制御部230は、子機200全体の動作制御を行うと共に、避難先の決定等の機能の提供と、事件現場情報の取得を行う。制御部230は、例えば演算処理装置と、当該演算処理装置で実行される各種の制御プログラムが予め格納されている半導体記憶装置とを備えている。この演算処理装置が制御プログラムを半導体記憶装置から読み出して実行することで、制御部230は、子機200全体の動作制御、及び避難先の決定等の機能の提供、更には、後述する各種の制御処理の実行が可能になる。更に、制御部230は、GPS(全地球測位システム)受信機を備えており、子機200の位置情報を、GPSの測位により取得することができる。
【0047】
報知部240は、子機200を携帯する子供に対して各種の情報を報知するものである。報知部150は、より具体的には、各種のメッセージや避難誘導情報等の各種の情報を表示する表示装置と、音・光・振動を発生させて事件の発生を子供に報知するスピーカ・ブザー・ランプ・バイブレータ等とを備えている。
【0048】
なお、子機200のハードウェア構成は、GPS機能を備えている昨今の携帯電話機の多くが備えている構成であるので、このような携帯電話機を子機200として利用することも可能である。
【0049】
次に、図1Cのセンタサーバ300について更に説明する。
無線通信処理部310は、事件情報報知システムを構成している親機100との間で、無線伝送路を介して、各種の情報の授受を行う。無線通信処理部310は、より具体的には、事件遭遇情報の受信等の各機能を提供する。無線通信処理部310は、信号発信部と信号受信部とをハードウェア構成として備えている。ここで、信号発信部は、センタサーバ300が発信する各種の情報を表しているデータ信号で変調された高周波信号をアンテナ301へ給電して電磁波を空間に放射させる。信号受信部は、親機100より発信されてアンテナ301に励起した高周波信号からデータ信号を復調して、このデータ信号で表されている各種の情報を受信し取得する。
【0050】
有線通信部320は、有線通信網、ここではインターネット網10、を介して、親機100や他のセンタサーバ300との間で各種の情報の授受を行うインタフェース部である。有線通信部320は、より具体的には、親機100から送付される事件遭遇情報の受信機能、及び、受信した事件遭遇情報を、他の関係部門に設置されている他のセンタサーバ300へ宛てて発信する機能等を提供する。
【0051】
事件情報管理部330は、事件情報報知システムを構成している親機100から受け取った事件遭遇情報を蓄積し管理するデータベース(DB)機能を提供する。
報知部340は、センタサーバ300の設置場所に在るオペレータ等の者に対し、センタサーバ300が事件遭遇情報を受信した旨を報知するものである。報知部340は、より具体的には、その旨を示す警報音を発するスピーカやブザー、その旨を赤色等の光で警告するランプ、振動を発生させてその旨を警告するバイブレータ等を備えている。
【0052】
次に、図1Aの親機100を複数備えて構成される事件情報報知システムの動作について説明する。
この事件情報報知システム(以下、単にシステムと記すこととする)を構成する各親機100は、無線通信処理部110が常時受信動作を行っている。ここで、いずれかの子機200から発信される事件遭遇情報を、いずれかの親機100の無線通信処理部110が受信すると各種の動作が開始される。
【0053】
ところで、事件遭遇情報は、子機200に備えられているスイッチに対する所定の操作(事件に遭遇した子供による操作)を制御部230が検出したときに、当該制御部230により生成される。
【0054】
ここで図2について説明する。図2は事件遭遇情報のデータ構造図である。制御部230が生成する事件遭遇情報には、このデータが事件遭遇情報であることを示す識別データと共に、「識別子」、「発信者ID」、「発信日時」、及び「子機の発信場所」の各データが含まれる。
【0055】
「識別子」は、この事件遭遇情報が、「オリジナル信号」であるか「転送信号」であるかを示すフラグデータである。子機200の制御部230は、事件識別情報の生成時には、この「識別子」を「オリジナル信号」にセットする。その後、親機100が事件遭遇信号を転送する際には、親機100の制御部140は、この「識別子」を「転送信号」にセットした上で、無線通信処理部110に転送を行わせる。
【0056】
「発信者ID」は、事件遭遇情報の発信元となる、この子機200に割り当てられている子機識別情報である。制御部230は、この子機識別情報を情報保持部220から読み出して「発信者ID」のデータとする。
【0057】
「発信日時」は、この事件遭遇情報の発信日時を示すデータである。制御部230は、自身が備えている時計から現在(事件遭遇情報の作成時)の日時データを取得して「発信日時」のデータとする。
【0058】
「子機の発信場所」は事件現場情報である緯度・経度のデータである。制御部230は、自身が備えているGPS受信機を動作させて子機200の現在(事件遭遇情報の作成時)の位置データを取得して、「子機の発信場所」のデータとする。
【0059】
制御部230は、上述した事件遭遇情報を生成すると、無線通信処理部210を制御してこの事件遭遇信号を発信させる。
事件情報報知システムは、子機200から発信された事件遭遇情報を受信すると、[1]第一報の処理、[2]子供達への避難誘導処理、[3]関係部門への通知処理、の順序で各処理を進める。以下、この各処理について説明する。
【0060】
[1]第一報の処理
まず図3について説明する。図3は、事件遭遇情報直接受信時処理の処理内容を示すフローチャートである。この処理は制御部140により行われる。
制御部140は、子機200から発信された事件遭遇情報を無線通信処理部110が直接に(すなわち、他の親機100からの転送を経ることなく)受信したことを検出すると、この処理を開始する。なお、無線通信処理部110が受信した事件遭遇情報が子機200から直接に送られてきたものであるか否かは、その事件遭遇情報に含まれている「識別子」が「オリジナル信号」を示しているか否かにより判定することができる。
【0061】
図3において、まず、S101では、制御部140は、無線通信処理部110を制御して、受信された事件遭遇情報を発信した子機200へ宛てて、事件遭遇情報受信通知を発信させる処理を行う。子機200では、制御部230が、この事件遭遇情報受信通知の無線通信処理部210での受信を検出すると、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、当該通知が受信された旨を報知させる制御処理を行う。この報知は、例えばその旨を示すメッセージを表示して行うが、発音や発光、あるいは振動によって行ってもよい。子供は、この報知部240による報知によって、事件遭遇情報が親機100で受信されたことを認識できるので、遭遇した事件への不安に対しての安心を感じることができる。
【0062】
次に、S102では、制御部140は、報知部150を制御して、親機100の設置場所に在る保護者・地域住民等に対し、無線通信処理部110が事件遭遇情報を受信した旨を報知させる処理を行う。この報知は、例えばその旨を示す発音や発光、あるいは振動によって行う。保護者・地域住民等は、この報知部150による報知によって、事件遭遇情報が親機100で受信されたこと(すなわち事件の発生)を認識できるので、当該親機100の設置場所の周囲に在る子供達(事件に遭遇した子供を含む)を一時的に保護することができる。
【0063】
次に、S103では、制御部140は、受信された事件遭遇情報に改変を加えた上で、無線通信処理部110を制御して、当該改変後の事件遭遇情報を発信させ、情報保持部130の近隣親機情報で特定される親機100へ転送する処理を行う。その後は、この事件遭遇信号直接受信時処理を終了する。
【0064】
ここで図4について説明する。図4は、親機100間を転送中の事件遭遇情報のデータ構造図である。
親機100間を転送中の事件遭遇情報には、子機200が発信したものと同様の情報に、幾つかの付加情報が制御部140によって付加される。
【0065】
図4において、「識別子」、「発信者ID」、「発信日時」、及び「子機の発信場所」の各データは、図2のデータ構造図におけるものと同一である。但し、前述したように、「識別子」については、親機100が事件遭遇信号を転送する際には、親機100の制御部140は、この「識別子」を「転送信号」にセットした上で、無線通信処理部110に転送を行わせる。
【0066】
「事件番号」は、異なる事件についての事件遭遇情報を個別に識別するために利用されるデータであって、事件遭遇情報を子機200から直接受信した親機100の制御部140により生成されるデータである。この制御部140は、自身が備えている時計から現在(「事件番号」の作成時)の日時データを、時間IDとして取得して「発信日時」のデータとする。なお、他の親機100の転送を経て無線通信処理部110が受信した事件遭遇情報には、「事件番号」が既に付加されているので、制御部140は、この場合には、新たな「事件番号」の生成は行わない。
【0067】
なお、制御部140は、前述したS103の転送処理を行う際に、転送対象である事件遭遇情報に含まれている「事件番号」のデータを情報保持部130に記憶させ、事件遭遇情報の転送履歴として保持させる。ここで、制御部140は、この転送履歴として、「事件番号」のデータの代わりに、転送対象である事件遭遇情報に含まれている「発信者ID」及び「発信日時」のデータを、情報保持部130に記憶させて保持させるようにしてもよい。
【0068】
「ホップ数」は、この事件遭遇情報についての転送回数情報である。事件遭遇情報を子機200から直接受信した親機100の制御部140は、この「ホップ数」を、初期値である「0」とする。他の親機100の転送を経た事件遭遇情報を無線通信処理部110が受信した場合には、制御部140は、この「ホップ数」を1増加させた上で、他の親機100への転送を無線通信処理部110に行わせる。
【0069】
この「ホップ数」に続く「1番」、「2番」、…の各項目は転送経路情報である。この転送経路情報の各項目は、この事件遭遇情報の転送を行う各親機100についての親機識別情報(ID)と親機位置情報である。制御部140は、親機識別情報と親機位置情報とを情報保持部130から読み出して事件遭遇情報に付加する。なお、この各項目は、この事件遭遇情報の転送を行う順に付加される。従って、この転送経路情報より、事件遭遇情報の転送が行われた場合における親機100間での転送経路を知ることができる。
【0070】
図5A及び図5Bを用いて、事件遭遇情報の転送における改変の具体例を説明する。
図5Aは、事件遭遇情報を子機200から直接受信した親機100の制御部140が改変した事件遭遇情報の改変例である。この例では、「ホップ数」が初期値「0」とされて事件遭遇情報に付加されており、更に、「1番」の転送経路情報として、この親機100についての親機識別情報(ここでは「#1」)と親機位置情報とが付加されている。
【0071】
図5Bは、他の親機100が転送した図5Aの事件遭遇情報を受信した親機100の制御部140が改変した事件遭遇情報の改変例である。この例では、「ホップ数」が、図5Aの例から1増加させて「1」とされており、更に、「1番」の転送経路情報に続く「2番」の転送経路情報として、この親機100についての親機識別情報(ここでは「#2」)と親機位置情報とが付加されている。
【0072】
次に、他の親機100からの転送を経て(すなわち、子機200から直接ではなく)事件遭遇情報を受信した親機100による当該事件遭遇情報の更なる転送動作について、説明する。
【0073】
各親機100は、いわゆるアドホックネットワークを構築しており、アドホック通信によって、他の親機100から転送されてきた事件遭遇情報を、情報保持部130で保持されている近隣親機情報で特定される親機100へ更に転送する。但し、この場合の転送は、これより説明する幾つかの条件を満たした場合にのみ行われる。
【0074】
ここで図6について説明する。図6は、事件遭遇情報間接受信時処理の処理内容を示すフローチャートである。この処理は制御部140により行われる。
制御部140は、他の親機100から転送されてきた(すなわち、子機200から直接送られてきたものではない)事件遭遇情報を無線通信処理部110が受信したことを検出すると、この処理を開始する。なお、無線通信処理部110が受信した事件遭遇情報が他の親機100から転送されてきたものであるか否かは、その事件遭遇情報に含まれている「識別子」が「転送信号」を示しているか否かにより判定することができる。
【0075】
制御部140は、まず、S201において、受信された事件遭遇情報が、この親機100が過去に転送したものと同一の事件についてのものであるか否かを判定する処理を行う。この判定は、事件遭遇情報の転送履歴として情報保持部130で保持させている「事件番号」のデータに、受信された事件遭遇情報における「事件番号」のデータと一致するものがあるか否かを判定することによって行われる。なお、事件遭遇情報の転送履歴として「発信者ID」及び「発信日時」のデータを情報保持部130に保持させている場合には、この両データに、受信された事件遭遇情報におけるこれらのデータと一致するものがあるか否かを判定することによって行われる。
【0076】
ここで、制御部140は、受信された事件遭遇情報が過去に転送したものと同一の事件についてのものであると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS202に処理を進める。一方、制御部140は、受信された事件遭遇情報が過去に転送したものとは異なる事件についてのものであると判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS204に処理を進める。
【0077】
次に、制御部140は、S202において、受信された事件遭遇情報の転送を最初に行ったのが、この親機100自身であるか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における「1番」の項目の親機識別情報が、この親機100自身であるか否かを判定することによって行われる。
【0078】
ここで、制御部140は、受信された事件遭遇情報の転送を最初に行ったのがこの親機100自身であると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S203に処理を進め、受信した事件遭遇情報の無線通信処理部110による転送を禁止する処理を行う。そしてその後はこの図6の処理を終了する。一方、制御部140は、受信された事件遭遇情報の転送を最初に行ったのがこの親機100自身ではないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S204に処理を進める。
【0079】
上述したS201及びS202の判定処理の結果が共にYesとなる場合は、受信された事件遭遇情報の転送をこの親機100が行うと、同一事件についての事件遭遇情報の転送が繰り返されることが明らかな場合である。このような転送は無駄であり、アドホックネットワークの混雑を招くため、図6の処理では、受信された事件遭遇情報の転送を禁止して、無駄な通信を削減しているのである。
【0080】
次に、制御部140は、S204において、受信された事件遭遇情報のこれまでの転送経路に、この親機100自身が含まれているか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報に、この親機100自身の親機識別情報が含まれているか否かを判定することによって行われる。
【0081】
ここで、制御部140は、受信された事件遭遇情報の転送経路に親機100自身が含まれていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS205に処理を進める。一方、制御部140は、受信された事件遭遇情報の転送経路に親機100自身が含まれていないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS206に処理を進める。
【0082】
次に、制御部140は、S205において、この親機100がこの事件遭遇情報を過去に受信したときの転送元が、当該事件遭遇情報を今回受信したときの転送元と一致しているか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における、親機100自身への転送元の親機識別情報が、当該事件遭遇情報を今回受信したときの転送元についてのものであるか否かを判定することによって行われる。
【0083】
ここで、制御部140は、事件遭遇情報の過去の受信時と今回の受信時とで転送元が一致していると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S203に処理を進め、受信した事件遭遇情報の無線通信処理部110による転送を禁止する処理を行う。そしてその後はこの図6の処理を終了する。一方、制御部140は、事件遭遇情報の過去の受信時と今回の受信時とで転送元が一致していないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S206に処理を進める。
【0084】
上述したS204及びS205の判定処理の結果が共にYesとなる場合は、受信された事件遭遇情報の転送をこの親機100が行うと、同一事件についての事件遭遇情報の転送経路が環状(ループ)となり、その転送が繰り返されることが明らかな場合である。このような転送は無駄であり、アドホックネットワークの混雑を招くため、図6の処理では、受信された事件遭遇情報の転送を禁止して、無駄な通信を削減しているのである。
【0085】
次に、制御部140は、S206において、受信された事件遭遇情報のこれまでの転送経路に、受信された事件遭遇情報をこれから転送しようとしている転送先が含まれているか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報に、情報保持部130の近隣親機情報で特定される親機100の親機識別情報が含まれているか否かを判定することによって行われる。
【0086】
ここで、制御部140は、事件遭遇情報の転送経路に、これから転送しようとしている転送先が含まれていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS207に処理を進める。一方、制御部140は、事件遭遇情報の転送経路に、これから転送しようとしている転送先が含まれていないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS208に処理を進める。
【0087】
次に、制御部140は、S207において、事件遭遇情報をこれから転送しようとしている転送先へ過去に同一事件の事件遭遇情報を転送した転送元が、この親機100自身であるか否かを判定する処理を行う。この判定は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における、過去に当該転送先へ事件遭遇情報を転送した転送元の親機識別情報が、この親機100自身についてのものであるか否かを判定することによって行われる。
【0088】
ここで、制御部140は、事件遭遇情報の転送先へ過去に事件遭遇情報を転送した転送元が親機100自身であると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S203に処理を進め、事件遭遇情報の無線通信処理部110による転送を禁止する処理を行う。一方、制御部140は、事件遭遇情報の転送先へ過去に事件遭遇情報を転送した転送元が親機100自身ではないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S208に処理を進める。
【0089】
上述したS206及びS207の判定処理の結果が共にYesとなる場合は、この事件遭遇情報の転送を親機100が行うと、同一事件についての事件遭遇情報が同一転送経路で往復し(キャッチボール状態)、その転送が繰り返されることが明らかな場合である。このような転送は無駄であり、アドホックネットワークの混雑を招くため、図6の処理では、受信された事件遭遇情報の転送を禁止して、無駄な通信を削減しているのである。
【0090】
以上のように、制御部140は、S204からS207の判定処理によって、受信した事件遭遇情報の転送を行うと同一の事件についての事件遭遇情報の同一経路での転送の繰り返しが発生するか否かを判定する。そして、この転送の繰り返しが発生すると判定したときには、S203の処理を行って無線通信処理部110を制御し、転送の繰り返しが発生することになる事件遭遇情報の転送を禁止させる。
【0091】
次に、制御部140は、S208において、受信された事件遭遇情報に基づき危険区域を設定する処理を行う。危険区域は、事件遭遇情報の発信元である子機200からの事件遭遇情報を直接に(すなわち、他の親機100からの転送を経ることなく)受信した親機100の位置から、予め設定されている所定距離以内の区域とする。ここで、子機200から事件遭遇情報を直接に受信した親機100の位置は、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における「1番」の項目の親機位置情報から知ることができる。制御部140は、情報保持部130に予め設定登録されている危険距離の値を読み出し、子機200から事件遭遇情報を直接に受信した親機100の位置を中心とし、この危険距離を半径とする円内の区域を危険区域に設定する。
【0092】
次に、制御部140は、S209において、親機100自身が、前ステップの処理によって設定された危険区域内に配置されているか否かを判定する処理を行う。このために、制御部140は、まず、受信された事件遭遇情報に含まれている転送経路情報における「1番」の項目の親機位置情報で示されている位置と、情報保持部130に保持されている親機100自身の親機位置情報で示されている位置との距離を算出する。そして、算出された距離を、情報保持部130に予め設定登録されている危険距離の値と比較する。ここで、算出された距離が危険距離以下であれば、親機100自身が危険区域内に配置されているとの判定を下し、危険距離よりも長ければ、危険区域外に配置されているとの判定を下す。
【0093】
ここで、制御部140は、親機100自身が危険区域内に配置されていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS210に処理を進める。一方、制御部140は、親機100自身が危険区域外に配置されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS203に処理を進め、受信した事件遭遇情報の無線通信処理部110による転送を禁止する処理を行う。そしてその後はこの図6の処理を終了する。
【0094】
このように、S209の判定結果がNoとなる場合は、その親機100は、その事件遭遇情報についての事件現場から十分遠くに配置されているので、その配置場所の周辺は、その事件に関係することはないとみなし、転送を行わないようにしている。
【0095】
次に、制御部140は、S210において、受信された事件遭遇情報に、図4を用いて説明したような改変(転送経路情報の追加)を加えた上で、無線通信処理部110を制御して、当該改変後の事件遭遇情報を発信させて転送させる処理を行う。なお、このときの転送先は、情報保持部130の近隣親機情報で特定される親機100のうち、S203の処理により転送を禁止されたものを除いたものとなる。
【0096】
以上の処理を終えた後は、この図6の処理を終了する。
なお、前述した危険距離の設定は任意でよい。但し、危険距離を余りに短く設定すると、危険区域内である親機100への事件遭遇情報の転送が途中の転送経路で途絶えてしまうことも考えられる。従って、危険距離は、親機100による無線通信可能距離を考慮し、その距離程度に長めに設定しておくことが望ましい。
第一報の処理は、以上までで完了する。
【0097】
[2]子供達への避難誘導処理
事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機100からの転送を経て、受信した親機100は、直接通信可能な子機200に対する避難誘導情報の通知を行う。ここでは、まず、この避難誘導の処理について説明する。
【0098】
親機100は、事件遭遇情報を受信すると、自身と直接通信可能な子機200を調べるために、子機存在確認情報を発信する。この子機存在確認情報を受信した子機200は、子機存在回答情報を親機100へ返信する。この返信を受信した親機100は、受信した子機存在回答情報に基づいた避難誘導情報を作成して子機200へ通知する。この通知を受け取った子機200は、通知された避難誘導情報を、子機200を携帯する子供へ報知して、避難誘導を行う。子供は、この避難誘導に従った避難行動を取ることで、発生した事件から身を守ることができる。
【0099】
ここで図7A及び図7Bについて説明する。図7Aは、親機100の制御部140により行われる、避難誘導親機側処理の処理内容を示すフローチャートである。また、図7Bは、子機200の制御部230により行われる、避難誘導子機側処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0100】
親機100の制御部140は、事件遭遇情報を無線通信処理部110が受信したことを検出すると、図7Aの処理を開始する。
制御部140は、まず、図7AのS301において、子機存在確認情報を生成すると共に、無線通信処理部110を制御して、生成した子機存在確認情報を発信させる処理を行う。
【0101】
ここで図8について説明する。図8は、子機存在確認情報のデータ構造図である。
図8において、「識別子」、「発信場所」、「事件ID」、「ホップ数」、「1番」、「2番」、…(転送経路情報)は、受信された事件遭遇情報に含まれているデータと同一のものである。なお、図8のデータ例は、転送経路情報として「1番」及び「2番」が付加されていた事件遭遇情報に基づき作成されるものである。従って、「ホップ数」は「1」となっている。
【0102】
「自身の位置情報」は、この親機100についての親機識別情報及び親機位置情報(すなわち確認元親機位置情報)のデータ、及び、この親機100の設置位置の事件現場からの距離を示すデータである。制御部140は、親機100についての親機識別情報及び親機位置情報を情報保持部130から読み出して「自身の位置情報」のデータとする。また、事件現場の位置は、事件遭遇情報に含まれている「発信場所」のデータ(すなわち事件現場情報)で知ることができる。従って、制御部140は、親機100の親機位置情報と、事件遭遇情報における「発信場所」のデータとから両者間の距離を算出して、「自身の位置情報」のデータとする。
【0103】
「危険区域距離」は危険距離のデータであり、制御部140は、危険距離の値を情報保持部130から読み出してこのデータとする。
制御部140は、以上のようにして作成した子機存在確認情報を、無線通信処理部110に発信させる。
【0104】
一方、子機200の制御部230は、子機存在確認情報を無線通信処理部210が受信したことを検出すると、図7Bの処理を開始する。
制御部230は、まず、図7BのS351において、受信された子機存在確認情報を情報保持部220に記憶させて保持させる処理を行う。
【0105】
次に、制御部230は、S352において、まず、この子機200の現在位置と事件現場の位置との距離を子機距離情報として算出する処理を行う。そして、子機200についての子機識別情報と算出した子機距離情報とを含む子機存在回答情報を作成し、無線通信処理部210を制御して、作成した子機存在回答情報を、受信された子機存在確認情報の発信元である親機100へ宛てて発信する処理を行う。なお、子機距離情報の算出の処理において、子機200の現在位置は、制御部230自身が備えているGPS受信機を動作させて取得する。また、事件現場の位置は、受信された子機存在確認情報に含まれている事件遭遇情報から取得する。
【0106】
以上のようにして子機200から発信された子機存在回答情報は、制御部140による図7AのS302の制御処理による受信制御が行われている、親機100の無線通信処理部110により受信される。ここで、制御部140は、無線通信処理部110で受信された子機存在回答情報から、この子機200についての子機距離情報を取得する処理を行う。
【0107】
次に、制御部140は、S303において、取得した子機距離情報が、予め設定されている第一の所定距離(例えば50メートル)よりも近い近距離を示しているか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部140は、子機距離情報が近距離を示していると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS305に処理を進め、子機距離情報が近距離を示してはいないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS304に処理を進める。
【0108】
次に、制御部140は、S304において、取得した子機距離情報が、予め設定されている、当該第一の所定距離よりも遠い距離である第二の所定距離(例えば200メートル)よりも近い中距離を示しているか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部140は、子機距離情報が中距離を示していると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS306に処理を進め、子機距離情報が中距離を示してはいないと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS307に処理を進める。
【0109】
制御部140は、以上の判定処理のうちのS303の判定処理で子機距離情報が近距離を示していると判定した場合には、S305において、近距離用の避難誘導情報を作成する処理を行い、その後はS308に処理を進める。この処理により作成する近距離用の避難誘導情報は、例えば「すぐ近くで事件が起きました。ブザーを鳴らし、安心の家に助けを求めてください。」といったメッセージ情報である。
【0110】
一方、制御部140は、以上の判定処理のうちのS303及びS304の判定処理で、子機距離情報が近距離ではなく中距離を示していると判定した場合には、S306において、中距離用の避難誘導情報を作成する処理を行い、その後はS308に処理を進める。この処理により作成する中距離用の避難誘導情報は、例えば「近くで事件が起きました。安全信号が確認できるまで、安心の家にいてください。」といったメッセージ情報である。
【0111】
なお、子機距離情報が近距離若しくは中距離の場合(上記第二の所定距離よりも短い場合)における上述したメッセージ情報の例は、どちらも、親機100のいずれかが配置されている位置(「安心の家」と称している)への避難を指示するものである。
【0112】
また、制御部140は、以上の判定処理のうちのS304の判定処理で、子機距離情報が中距離よりも更に遠い遠距離を示していると判定した場合には、S307において、遠距離用の避難誘導情報を作成する処理を行い、その後はS308に処理を進める。この処理により作成する遠距離用の避難誘導情報は、例えば「通学路内で事件が起きました。寄り道せずに、所定の避難先に向かってください。」といったメッセージ情報である。
【0113】
このように、子機距離情報が遠距離の場合(上記第二の所定距離以上である場合)における上述したメッセージ情報の例は、所定の避難先への避難を指示するものである。
以上のS303からS307にかけての処理により、制御部140は、事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、受信された子機存在回答情報に含まれていた子機200の子機距離情報に基づき、子機200の各々について作成する処理を行う。
【0114】
次に、制御部140は、S308において、無線通信処理部110を制御して、以上のS305、S306、若しくはS307の処理により作成した避難誘導情報を発信させて、子機存在回答情報の発信元の子機200に当該避難誘導情報を通知する処理を行う。その後はこの図7Aの処理を終了する。
【0115】
以上のようにして、制御部140が子機200毎に作成する避難誘導情報が、子機200の各々に対して通知される。
一方、以上のようにして親機100から通知された避難誘導情報は、制御部230による図7BのS353の制御処理による受信制御が行われている、子機200の無線通信処理部210により受信される。ここで、制御部230は、親機100から通知された避難誘導情報が、どの事件についてのものであるかを判別する処理を行う。制御部230は、この判別のために、情報保持部220の記憶内容を探索し、この避難誘導情報が、どの子機存在確認情報(に対応する子機存在回答情報)についてのものかを特定する。そして、特定された子機存在確認情報に含まれていた「事件ID」より、避難誘導情報がどの事件についてのものであるかを判別する。
【0116】
次に、制御部230は、S354において、親機100から通知された避難誘導情報が、過去に避難誘導情報を受信していない事件についてのもの(同一の事件について初めて受信したもの)であるか否かを判定する処理を行う。この判定は、上述したようにして情報保持部220から得た「事件ID」が、過去に受信していた避難誘導情報についてのものと異なるか否かを判定することによって行われる。ここで、制御部230は、避難誘導情報が同一の事件について初めて受信したものであると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS355に処理を進める。一方、制御部230は、避難誘導情報と同一の事件についての避難誘導情報を過去に受信していたと判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS356に処理を進める。
【0117】
制御部230は、S355では、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、親機100から新たに通知された避難誘導情報の内容を報知させる制御処理を行い、その後はこの図7Bの処理を終了する。報知部240は、例えば、避難誘導情報であるメッセージ情報を表示装置に表示することで、避難誘導情報の子供への報知を行う。
【0118】
一方、制御部230は、S356では、報知部240により既に行われている、避難誘導情報の内容の報知をそのまま維持する処理が行われ、その後はこの図7Bの処理を終了する。
【0119】
以上のように、子機200の制御部230は、同一の事件についての避難誘導情報を複数回受信した場合には、そのうち最初に受信したもののみを報知部240に報知させる。これは、子機200は、その位置によっては、同一事件についての子機存在確認情報を複数の親機100から別個に受信する場合があるからである。この場合、子機200は、子機存在回答情報を各親機100に返信する。すると、各親機100から、同一の事件についての避難誘導情報が別個に送られてくる。このときに、避難誘導情報の全てを報知すると、子機200を携帯する子供が混乱してしまうことが考えられる。そこで、この混乱を避けるために、同一の事件についての避難誘導情報の報知の重複を防止しているのである。
【0120】
以上の避難誘導親機側処理及び避難誘導子機側処理が、親機100の制御部140及び子機200の制御部230でそれぞれ行われることにより、子機200を携帯する子供への避難誘導が行われる。子供は、この避難誘導に従って避難行動を取ることにより、事件現場付近に居合わせても、自らが身を守ることができる。
【0121】
次に、この事件情報報知システムを利用した、より具体的な避難誘導指示の手法として、子機200により行われる避難先の誘導指示の手法について説明する。この手法では、子機200の制御部230が、前述したようにして無線通信処理部210が受信した子機存在確認情報に基づき、事件からの避難先とする親機100の位置を決定する。
【0122】
まず、配置位置を避難先とする親機100の決定の第一の手法について説明する。この第一の手法では、子機200の制御部230が、子機存在確認情報に含まれている、事件識別情報(「事件ID」)と確認元である親機100についての親機位置情報(「自身の位置情報」)とに基づき、配置位置を避難先とする親機100を決定する。そして、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、この決定に係る避難先である親機100の配置位置の情報を報知させる。
【0123】
ここで、制御部230による避難先とする親機100の位置の決定は、以下のようにして行われる。すなわち、この決定では、まず、原則として、自身と直接通信可能な親機100のうち子機200の現在の位置に最も近いものの配置位置を避難先とする。但し、親機100が危険区域内に在る場合には、事件現場から遠く離れることがより重要であるとの方針により、自身と直接通信可能な親機100のうち事件現場から最も遠いものの配置位置を避難先とする。
【0124】
ここで図9について説明する。図9は、制御部230により行われる、避難先決定処理の第一の例の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば、図7Bの避難誘導子機側処理が制御部230で実行されて避難誘導情報が報知された後に、子供が、携帯する子機200の操作部を操作して行う所定の指示を制御部230が検出すると開始される。
【0125】
制御部230は、図9のS401において、まず、図7BのS351の処理によって無線通信処理部210で受信された子機存在確認情報の発信元である親機100の各々の配置位置と事件現場との距離を取得する処理を行う。加えて、制御部230は、この子機200の現在位置と子機存在確認情報の発信元である親機100の各々の配置位置との距離(すなわち確認元親機距離)を算出して取得する処理を行う。なお、この親機100の配置位置と事件現場との距離は、子機存在確認情報で「自身の位置情報」として示されている。また、確認元親機距離は、子機存在確認情報で「自身の位置情報」として示されている確認元親機位置情報と、制御部230自身が備えているGPS受信機で取得できる子機200の現在位置データとから算出することができる。
【0126】
次に、制御部230は、S402において、無線通信処理部210で受信された全ての子機存在確認情報の発信元である(すなわち避難先の候補である)親機100について、後述するS403からS405にかけての処理を実行したか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部230は、避難先の候補である全ての親機100について、後述の処理を実行したと判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S406に処理を進める。一方、制御部230は、避難先の候補である全ての親機100のうち、後述の処理を実行していないものが残されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S403に処理を進める。
【0127】
次に、制御部230は、S403において、避難先の候補である親機100が、危険区域内に配置されているか否かを判定する処理を行う。この判定は、判定対象の親機100についてS401の処理により取得した、当該親機100の配置位置と事件現場との距離が、子機存在確認情報に「危険区域距離」として示されている危険距離以内であるか否かを判定することによって行われる。ここで、制御部230は、避難先の候補である親機100が危険区域内に配置されていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS404に処理を進める。一方、制御部230は、避難先の候補である親機100が危険区域外に配置されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS405に処理を進める。なお、危険区域(危険距離)が特に設定されていない場合にも、このS403の判定処理の判定結果をNoとし、S405に処理を進めるものとする。
【0128】
次に、制御部230は、S404において、S403の判定処理により危険区域内に配置されていると判定された親機100のうち、その配置位置と事件現場との距離が最遠であるものを避難先候補として選択する処理を行い、この後はS401へ処理を戻す。
【0129】
次に、制御部230は、S405において、S403の判定処理により危険区域外に配置されていると判定された親機100のうち、確認元親機距離が最短であるものを避難先候補として選択する処理を行い、この後はS401へ処理を戻す。
【0130】
次に、制御部230は、S406において、その配置位置を避難先とする親機100の最終決定処理を行い、その後はこの図9の処理を終了する。
この最終決定処理では、まず、S405の処理で避難先候補として選択された親機100が存在する場合には、S404の処理での選択結果に拘らず、その親機100の配置位置を避難先として決定する。一方、S405の処理で選択された親機100が全く存在しない場合には、S404の処理で避難先候補として選択された親機100の配置位置を避難先として決定する。
【0131】
従って、この最終決定処理によれば、例えば、図7BのS351の処理により無線通信処理部210が子機存在確認情報を唯一つの親機100から受信していた場合には、危険区域内外のどちらであっても、その親機100の配置位置が避難先として決定される。また、例えば、無線通信処理部210が同一事件についての子機存在確認情報を複数の親機100から受信していた場合であって、危険区域(危険距離)が設定されていない場合には、確認元親機距離が最短である親機100の配置位置が避難先として決定される。更に、例えば、無線通信処理部210が同一事件についての子機存在確認情報を複数の親機100から受信していた場合であっても、危険距離の情報が子機存在確認情報に含まれていた場合がある。この場合において、この親機100の全てが事件現場から危険距離以内に配置されていた場合には、親機100のうちで事件現場との距離が最長である位置に配置されているものの配置位置が避難先として決定される。
【0132】
配置位置を避難先とする親機100の決定の第一の手法は、制御部230により以上のようにして行われる。その後、制御部230は、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、このようにして決定した避難先の情報を報知させる。
【0133】
次に、配置位置を避難先とする親機100の決定の第二の手法について説明する。この第二の手法では、子機200の制御部230が、子機存在確認情報に含まれている、事件識別情報と親機位置情報とに加え、更に、転送回数情報(「ホップ数」)にも基づいて、避難先とする親機100の位置を決定する。そして、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、この決定に係る避難先である親機100の配置位置の情報を報知させる。
【0134】
ここで、制御部230による避難先とする親機100の位置の決定は、以下のようにして行われる。すなわち、この決定では、まず、無線通信処理部210で受信された子機存在確認情報に含まれている転送回数情報(「ホップ数」)を参照する。ここで、子機200自身と直接通信可能な親機100のうち、この転送回数情報が最大であった子機存在確認情報の発信元であるものの配置位置を避難先とする。但し、この親機100の配置位置が危険区域内に在る場合には、事件現場から遠く離れることがより重要であるとの方針により、事件遭遇情報の転送経路上の親機100のうちで事件現場から最も遠いものの配置位置を避難先とする。
【0135】
更に、制御部230は、転送回数情報が最大であった子機存在確認情報の発信元である親機100が受信した事件遭遇情報についての、当該決定した避難先である親機100からの転送経路を遡る経路を、当該決定した避難先までの避難経路として決定する。そして、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、この決定に係る避難経路を報知させる。子機存在確認情報の発信元である親機100が受け取った事件遭遇情報の転送経路は、当該子機存在確認情報に転送経路情報として含まれているので、制御部230は、この転送経路情報に基づいて避難経路の決定を行う。
【0136】
ここで、図10A、図10B、及び図10Cについて説明する。
図10Aは、事件情報報知システムを構成する複数の親機100と各子機200(子供)とについての、事件発生時における所在位置の第一の例である。図10Aにおいて、HGW1〜HGW6の各々が親機100を表しており、子供1〜子供5の各々が子機200を表している。
【0137】
この例において、子供1が事件遭遇情報の発信元であり、子供1から発信された事件遭遇情報を、HGW1が直接受信したものとする。また、HGW1〜HGW6の全ては、子供1が遭遇した事件についての危険区域内に配置されているものとする。
【0138】
図10Bは、図10Aに描かれている各子機200が直接通信可能であった親機100の一覧である。前述したように、子機200は、各親機100から発信される子機存在確認情報を受信することにより、自身と直接通信可能である親機100を知ることができる。
【0139】
図10Aにおいて、HGW1〜HGW6のうちのいずれか2つを結ぶ矢印は、事件遭遇情報の転送経路を示している。図10Cは、この転送経路と転送回数の一覧であり、各親機100に事件遭遇情報が転送されてきたときの転送経路が表されている。前述したように、子機200は、親機100が事件遭遇情報を受け取ったときの転送経路を、当該親機100から受信した子機存在確認情報より知ることができる。
【0140】
この図10Aの例において、前述した第二の手法に従う各子機200の制御部230は、避難先とする親機100及び避難経路を、次のようにして決定する。
まず、子供1において、直接通信可能であるものはHGW1のみであるので、子供1の制御部230は、このHGW1の配置位置を避難先(且つ避難経路)として決定する。
【0141】
子供2において、直接通信可能であるものはHGW2とHGW6とがある。ここで、HGW2は、ホップ数2で事件遭遇情報を受け取っており、HGW6は、ホップ数3で事件遭遇情報を受け取っている。従って、子供2の制御部230は、ホップ数が多いHGW6の配置位置を避難先(且つ避難経路)として決定する。
【0142】
子供3において、直接通信可能であるものはHGW2とHGW3とがある。ここで、HGW2はホップ数2で事件遭遇情報を受け取っており、HGW3はホップ数1で事件遭遇情報を受け取っている。従って、子供3の制御部230は、ホップ数が多いHGW2の配置位置を避難先(且つ避難経路)として決定する。
【0143】
子供4において、直接通信可能であるものはHGW3とHGW4とHGW5とがある。ここで、HGW3はホップ数1で事件遭遇情報を受け取っており、HGW4はホップ数3で事件遭遇情報を受け取っており、HGW5はホップ数2で事件遭遇情報を受け取っている。従って、ホップ数が多いのはHGW4である。しかし、HGW4への転送経路上の親機100のうち、事件現場から最も遠い位置に配置されているのはHGW5である。従って、子供4の制御部230は、このHGW5の配置位置を避難先として決定し、HGW4からHGW5への経路を避難経路として決定する。
【0144】
子供5において、直接通信可能であるものはHGW2とHGW3とHGW5とHGW6とがある。ここで、HGW2はホップ数2で事件遭遇情報を受け取っており、HGW3はホップ数1で事件遭遇情報を受け取っており、HGW5はホップ数2で事件遭遇情報を受け取っており、HGW6はホップ数3で事件遭遇情報を受け取っている。従って、子供5の制御部230は、ホップ数が多いHGW6の配置位置を避難先(且つ避難経路)として決定する。
【0145】
ここで図11について説明する。図11は、制御部230により行われる避難先決定処理の第二の例の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば、図7Bの避難誘導子機側処理が制御部230で実行されて避難誘導情報が報知された後に、子供が、携帯する子機200の操作部を操作して行う所定の指示を制御部230が検出すると開始される。
【0146】
制御部230は、図10のS501において、図7BのS351の処理で受信された子機存在確認情報の転送経路情報を取得して、子機存在確認情報の発信元の親機100が受信した事件遭遇情報の転送経路及び転送回数(「ホップ数」)を検索する処理を行う。
【0147】
次に、制御部230は、S502において、S501の検索結果より、転送回数が最大であった転送経路情報を含む子機存在確認情報の発信元である親機100を避難先候補として選択する処理を行う。
【0148】
次に、制御部230は、S503において、避難先の候補である親機100が、危険区域内に配置されているか否かを判定する処理を行う。この判定は、判定対象の親機100の配置位置と事件現場との距離が、子機存在確認情報に「危険区域距離」として示されている危険距離以内であるか否かを判定することによって行われる。なお、親機100の配置位置と事件現場との距離は、親機100から発信される子機存在確認情報で「自身の位置情報」として示されている。ここで、制御部230は、避難先の候補である親機100が危険区域内に配置されていると判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS504に処理を進める。一方、制御部230は、避難先の候補である親機100が危険区域外に配置されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)にはS506に処理を進める。なお、危険区域(危険距離)が特に設定されていない場合にも、このS503の判定処理の判定結果をNoとし、S506に処理を進めるものとする。
【0149】
次に、制御部230は、S504において、転送回数が最大であった場合の転送経路上の親機100のうち、その配置位置が事件現場から最も遠いものの配置位置を、事件からの避難先として最終決定する処理を行う。
【0150】
次に、制御部230は、S505において、転送回数が最大であった転送経路情報に示されている、決定された親機100から子機存在確認情報の発信元までの事件遭遇情報の転送経路を遡る経路を、避難先への避難経路として決定する処理を行う。そして、この処理を終えた後は、この図11の処理を終了する。
【0151】
その一方、制御部230は、S506では、S502の処理により選択された避難先候補である親機100を、避難先(且つ避難経路)として最終決定する処理を行う。そして、この処理を終えた後は、この図11の処理を終了する。
【0152】
配置位置を避難先とする親機100の決定の第二の手法は、制御部230により以上のようにして行われる。その後、制御部230は、報知部240を制御して、子機200を携帯する子供に対し、このようにして決定した避難先及び避難経路の情報を報知させる。
【0153】
なお、避難経路の決定を上述したようにして行うときに、親機100間の経路に対し、安全性に応じた重み付けを与えた上で避難経路を選択するようにしてもよい。例えば、人家が多い経路や、道幅の広い経路、人車の通行量の多い経路等については、必ずしも事件現場から離れる方向でなかったとしても、避難経路として優先して制御部230が選択するようにしてもよい。また、避難経路の途中に子供の保護活動に協力する施設(ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、商店、公共施設など)が存在する場合には、制御部230は、報知部240を制御して、この施設に立ち寄る旨を報知させるようにしてもよい。
【0154】
次に、この事件情報報知システムを利用した、より具体的な避難誘導指示の手法として、親機100により行われる避難経路の誘導指示の手法について説明する。この手法では、親機100の制御部140が、子機200からの避難誘導の要求に応じ、子機200を携帯する子供を所定の避難先へ向かわせる避難経路を決定し、決定された避難経路の情報を子機200に通知して子供へ報知させるというものである。
【0155】
ここで、制御部140による避難経路の決定は、以下のようにして行われる。
まず、この決定処理は、子機200に備えられているスイッチに対する所定の操作を子供が行うことで子機200から発信される誘導要求情報を無線通信処理部110が受信したことを制御部140が検出することによって開始される。子供は、例えば、前述した第二の手法に従って報知部240により報知された避難先に到着したものの保護されなかった場合(留守など)に、子機200を操作して誘導要求情報を発信させる。
【0156】
図12は、誘導要求情報のデータ構造図である。図12の誘導要求情報には、「宛先」として、この誘導要求情報の送り先である親機100の親機識別情報(ID)が記される。更に、この誘導要求情報には、「#1」及び「#2」の2つの位置情報が含まれている。この位置情報は、子機200を携帯する子供の最終の避難先を示している最終避難先位置情報であり、子機200の情報保持部220に予め登録されている情報である。子機200の制御部230は、情報保持部220から読み出した最終避難先位置情報を付加した誘導要求情報を、無線通信処理部210に送信させる。
【0157】
制御部140による避難経路の決定は、無線通信処理部210が受信した、事件遭遇情報に含まれている事件現場情報と、誘導要求情報に含まれている最終避難先位置情報とに基づいて行われる。ここで、この決定は、事件現場から遠ざかる方向の経路とすることを大原則とする。
【0158】
前述したように、図12の誘導要求情報には、2つの最終避難先位置情報が含まれている。この場合において、制御部140は、まず、避難先位置情報により示されている2つの避難先の位置を結ぶ直線に事件現場情報の位置及び親機100自身の位置を投影してみる。そして、このときに、この直線における親機100自身の位置の投影点から見て、事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向にある避難先を、この誘導要求情報の発信元である子機200の最終避難先として選択する。
【0159】
次に、制御部140は、他の親機100についての親機位置情報を取得する。このために、制御部140は、無線通信処理部110を制御して、親機位置要求情報を発信させる。この親機位置要求情報は、直接の通信が可能な範囲内に配置されている他の親機100により受信される。すると、この親機位置要求情報の受信を検出した他の親機100の制御部140は、無線通信処理部110を制御して、情報保持部130から読み出した自身の親機位置情報を、親機位置要求情報の発信元である親機100へ返信させる。返信された親機位置情報は、親機位置要求情報の発信元の親機100の無線通信処理部110で受信される。制御部140は、このようにして、他の親機100についての親機位置情報の取得を行う。
【0160】
ここで、制御部140は、親機位置情報を取得した親機100のうち、自身から見て、事件現場から遠ざかる方向に配置されているものを、最終避難先への避難経路において次に向かわせる経由先の候補として選択する。このために、制御部140は、まず、避難先位置情報により示されている2つの避難先の位置を結ぶ直線に、事件現場情報の位置と、親機位置情報を取得した親機100の位置とを投影してみる。そして、このときに、この直線における親機100自身の位置の投影点から見て、事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向に投影点がある親機100を、最終避難先への避難経路における次の経由先の候補として選択する。
【0161】
次に、制御部140は、以上のようにして選択した経由先の候補と最終避難先との配置位置に基づき、避難距離を算出する。最終避難先に直接向かう場合の避難距離は、この親機100自身の配置位置と最終避難先の位置との距離である。また、経由先の候補を経由して最終避難先に向かう場合の避難距離は、この親機100自身の配置位置と経由先の候補の位置との距離に、当該経由先の候補から最終避難先までの距離を加算した距離である。なお、この親機100自身の配置位置の情報は、情報保持部130に予め登録されている。
【0162】
ここで、最終避難先に直接向かう場合の避難距離が、この親機100自身の配置位置と経由先の候補の位置との距離よりも短い場合には、制御部140は、最終避難先を、子機200を次に向かわせる避難先として決定する。一方、この他の場合では、制御部140は、経由先の候補を経由する場合の避難距離が最短である場合の経由先の候補を、子機200を次に向かわせる経由先として決定する。
【0163】
その後、制御部140は、無線通信処理部110を制御して、以上のようにして決定された避難先若しくは経由先を示す情報を発信させて、受信された誘導要求情報の発信元である子機200にその情報を通知する。
【0164】
以上のようにして行われる、制御部140による避難経路の決定の具体例を、図13を用いて説明する。図13は、事件情報報知システムを構成する複数の親機100と各子機200(子供)とについての、事件発生時における所在位置の第二の例である。
【0165】
図13において、HGW1〜HGW8の各々が親機100を表しており、子供1〜子供5の各々が子機200を表している。
この例において、子供1〜子供5の各々の情報保持部220には、最終避難先位置情報として、「自宅」と「学校」との位置情報が予め登録されているものとする。なお、説明を簡単にするために、各子供の「自宅」及び通学先の「学校」は共通とする。
【0166】
図13において、「自宅」と「学校」とを結ぶ直線に、事件現場の位置及びHGW1〜HGW8の各々の位置を投影してみる。すると、このとき、HGW1〜HGW8の各々の位置の投影点から見て、事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向にある最終避難先は、いずれも「学校」であることは明らかである。従って、図13の例では、子供1〜子供5のいずれについても、「学校」が最終避難先として選択される。
【0167】
ここで子供5に注目する。この子供5が、HGW6に到着した時点で、HGW6宛ての誘導要求情報を発信したとする。
この誘導要求情報がHGW6で受信されると、HGW6の制御部140は、無線通信処理部110を制御して親機位置要求情報を発信させる。ここで、この親機位置要求情報を受信した親機100が、HGW2、HGW5、HGW7、及びHGW8であったとする。
【0168】
HGW2、HGW5、HGW7、及びHGW8の制御部140は、この親機位置要求情報の受信を検出すると、無線通信処理部110を制御して、自身の親機位置情報を、親機位置要求情報の発信元であるHGW6へ返信させる。
【0169】
HGW6の制御部140は、受信されたHGW2、HGW5、HGW7、及びHGW8各々の親機位置情報に基づき、HGW6から見て事件現場から遠ざかる方向に配置されている親機100を、子供5に次に向かわせる経由先の候補として選択する。ここでは、経由先の候補として、HGW7とHGW8とが選択されたものとする。
【0170】
次に、HGW6の制御部140は、このHGW6自身の配置位置と、経由先の候補として選択されたHGW7及びHGW8並びに最終避難先として選択された「学校」との距離を比較する。このうちで、HGW6自身の配置位置と「学校」との距離は最短ではない。そこで、制御部140は、HGW7を経由して「学校」に至る避難距離と、HGW8を経由して「学校」に至る避難距離とを比較する。ここで、HGW7を経由して「学校」に至る避難距離が最短であったとすると、HGW6の制御部140は、HGW7を、子供5を次に向かわせる避難先(経由先)として決定する。そして、無線通信処理部110を制御して、以上のようにして決定されたHGW7を示す情報を発信させて、子供5にその情報を通知する。
【0171】
子供5は、報知部240での報知内容に従い、HGW7へ移動する。ここで、HGW7に到着したものの保護されなかった場合には、HGW7宛ての誘導要求情報の発信を行う。以降、HGW7の制御部140が、上述したHGW6の制御部140と同様にして、子供5を次に向かわせる避難先(経由先)の決定を行う。
【0172】
ここで図14について説明する。図14は、親機100の制御部140により行われる、避難先決定処理の第三の例の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、子機200から発信される誘導要求情報を無線通信処理部110が受信したことを制御部140が検出することによって開始される。
【0173】
制御部140は、図14のS601において、誘導要求情報に含まれている2つの最終避難先のうち、親機100自身の位置から見て、事件現場から遠ざかる方向に在る方を選択する処理を行う。このために、制御部140は、まず、避難先位置情報により示されている2つの最終避難先の位置(二次元座標)を結ぶ直線上における、事件遭遇情報に含まれていた事件現場情報の位置の投影点と、親機100自身の位置の投影点との座標を取得する。そして、親機100自身の位置の投影点から事件現場情報の位置の投影点への方向ベクトルと、親機100自身の位置の投影点から2つの最終避難先の位置へ向かう2つの方向ベクトルとを算出する。ここで、制御部140は、事件現場情報の位置の投影点への方向ベクトルと向きが逆である方の最終避難先を選択する。
【0174】
次に、制御部140は、S602において、無線通信処理部110を制御して、親機位置要求情報を発信させる処理を行う。この親機位置要求情報の受信を検出した他の親機100は、自身の親機位置情報を返信する。返信された親機位置情報は、無線通信処理部110で受信される。
【0175】
次に、制御部140は、S603において、無線通信処理部110で受信された全ての親機位置情報の発信元である親機100について、後述するS604からS605にかけての処理を実行したか否かを判定する処理を行う。ここで、制御部230は、当該全ての親機100について、後述の処理を実行したと判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S606に処理を進める。一方、制御部230は、当該全ての親機100のうち、後述の処理を実行していないものが残されていると判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S604に処理を進める。
【0176】
次に、制御部140は、S604において、制御部140は、親機位置情報を取得した親機100が、自身から見て、事件現場から遠ざかる方向に配置されているか否かを判定する処理を行う。このために、制御部140は、まず、避難先位置情報により示されている2つの避難先の位置(二次元座標)を結ぶ直線上における、事件遭遇情報に含まれていた事件現場情報で示されている位置の投影点と親機100自身の位置の投影点との座標を取得する。そして、親機100自身の位置の投影点から事件現場情報の位置の投影点への方向ベクトルと、親機100自身の位置の投影点から親機位置情報を取得した親機100の投影点への方向ベクトルとを算出する。ここで、この方向ベクトルの向きが逆であるか否かを判定することによって、この判定処理が行われる。
【0177】
制御部140は、この判定処理において、親機位置情報を取得した親機100が、自身から見て事件現場から遠ざかる方向に配置されていると判定したとき(判定結果がYesのとき)には、その親機100を経由先の候補として選択し、S605に処理を進める。一方、制御部140は、親機位置情報を取得した親機100が事件現場から遠ざかる方向には配置されていないと判定したとき(判定結果がNoのとき)には、その親機100を経由先の候補から除外し、S603に処理を戻して上述した処理を改めて実行する。
【0178】
次に、制御部140は、S605において、S601の処理で選択された最終避難先の位置と、S604の処理で選択された各経由先の候補の位置と、親機100自身の位置との相互間の距離を算出する処理を行う。その後はS603に処理を戻して上述した処理を改めて実行する。
【0179】
その一方で、制御部140は、S606において、避難先(経由先)の最終決定処理を行う。この処理では、この親機100自身の配置位置から最終避難先までの距離(避難距離)が、この親機100自身の配置位置と経由先の候補の位置との距離よりも短い場合には、最終避難先を、次に向かわせる避難先として決定する。一方、この他の場合では、制御部140は、経由先の候補を経由する場合の避難距離(この親機100と経由先の候補との距離に、当該経由先の候補から最終避難先までの距離を加算した距離)が最短である場合の経由先の候補を、経由先として決定する。
【0180】
このS606の処理を終えると、制御部140は、この図9の処理を終了する。その後、制御部140は、無線通信処理部110を制御して、以上のようにして決定された避難先若しくは経由先を示す情報を発信させて、受信された誘導要求情報の発信元である子機200にその情報を通知する。
この事件情報報知システムを構成する親機100により行われる避難経路の誘導指示は、以上のようにして行われる。
【0181】
[3]関係部門への通知処理
事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機100からの転送を経て、受信した親機100は、子供達への前述した避難誘導処理を行うと共に、インターネット網10を介して、センタサーバ300へ事件遭遇情報を転送する。ここで、インターネット網10に起因する事件遭遇情報のセンタサーバ300への未着の可能性を軽減するため、事件遭遇情報を受信した全ての親機100は、事件遭遇情報のセンタサーバ300への転送を行う。その一方で、センタサーバ300では、同一事件についての事件遭遇情報を重複して受信した場合でも、そのうちで最初に受信したものについてのみ、他のセンタサーバ300への発信や、報知部340による事件遭遇情報を受信した旨の報知を行うようにする。
【0182】
以上のように構成された事件情報報知システムは、小学生、中学生、高齢者等、対象者によって探索方法、検索範囲、通知範囲等を変更するようにしてもよい。また、事件情報報知システムを構成する親機100のうち、設置場所に保護活動の協力者の在宅が確認されている場合にのみ、避難先・経由先として選択可能な親機100とするようにしてもよい。
【0183】
なお、以上までに説明した実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
移動体である複数の子機との間で無線通信路を介して相互に情報の授受を行う事件情報報知システムであって、
該複数の子機のひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報であって、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含む該事件遭遇情報を受信する事件遭遇情報受信手段と、
該子機の各々の位置と該事件現場情報で示されている位置との距離を、子機距離情報として取得する子機距離情報取得手段と、
該事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、該子機距離情報に基づき、該複数の子機の各々について作成する避難誘導情報作成手段と、
該複数の子機の各々に対し、該避難誘導情報作成手段が作成した、通知先の子機についての避難誘導情報を通知して報知させる避難誘導情報通知手段と、
を有することを特徴とする事件情報報知システム。
(付記2)
該事件情報報知システムは、固定局である親機を複数備えており、
該親機は、該事件遭遇情報受信手段、該子機距離情報取得手段、該避難誘導情報作成手段、及び該避難誘導情報通知手段を各々有していると共に、更に、該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に、該事件遭遇情報の転送経路を示す転送経路情報を付加して他の該親機へ転送する事件遭遇情報転送手段を各々有しており、
該事件遭遇情報受信手段は、更に、他の親機の該事件遭遇情報転送手段から転送されてきた該事件遭遇情報を受信し、
該親機は、
該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報の転送を該事件遭遇情報転送手段が行うと同一の事件についての事件遭遇情報の同一経路での転送の繰り返しが発生するか否かを、該事件遭遇情報に付加されている該転送経路情報に基づき判定する繰り返し転送判定手段と、
該転送の繰り返しが発生すると該繰り返し転送判定手段が判定したときに、該事件遭遇情報転送手段を制御して、該繰り返しが発生することになる該事件遭遇情報の転送を禁止させる事件遭遇情報転送制御手段と、
を更に有する、
ことを特徴とする付記1に記載の事件情報報知システム。
(付記3)
該事件遭遇情報には、該子機を識別する情報である子機識別情報であって該事件遭遇情報の発信元である子機についてのものと、該子機が該事件遭遇情報を送信したときの日時を示す日時情報とが含まれており、
該繰り返し転送判定手段は、該事件遭遇情報の同一性を、該事件遭遇情報に含まれている該子機識別情報及び該日時情報に基づいて判定する、
ことを特徴とする付記2に記載の事件情報報知システム。
(付記4)
該親機は、該事件遭遇情報受信手段が事件遭遇情報を受信したときに、その旨を報知する事件遭遇情報受信報知手段を更に有することを特徴とする付記2に記載の事件情報報知システム。
(付記5)
該親機は、該事件遭遇情報の発信元である子機からの該事件遭遇情報を直接受信した親機の位置に基づき設定される危険区域に自身が配置されているか否かを判定する危険区域内存在判定手段を更に有し、
該事件遭遇情報転送手段は、該親機が該危険区域内に自身が配置されていると該危険区域内存在判定手段が判定したときにのみ、該事件遭遇情報の転送を行う、
ことを特徴とする付記2に記載の事件情報報知システム。
(付記6)
該事件情報報知システムは、固定局である親機を複数備えており、
該親機は、該事件遭遇情報受信手段、該子機距離情報取得手段、該避難誘導情報作成手段、及び該避難誘導情報通知手段を有しており、
該子機距離情報取得手段は、
該事件遭遇情報受信手段が事件遭遇情報を受信したときに、該事件遭遇情報に含まれていた該事件現場情報を含む子機存在確認情報を発信する子機存在確認情報発信手段と、
該子機存在確認情報を受信した子機から送られてくる子機存在回答情報であって、該子機を識別する子機識別情報と該子機についての該子機距離情報とを含む該子機存在回答情報を受信する子機存在回答情報受信手段と、
を有しており、
該避難誘導情報作成手段は、該子機存在回答情報受信手段が受信した子機存在回答情報に含まれている子機距離情報に基づいて該避難誘導情報を作成し、
該避難誘導情報通知手段は、該子機存在回答情報受信手段が受信した子機存在回答情報に含まれている子機識別情報で識別される子機に対し、該子機存在回答情報に含まれている子機距離情報に基づいて該避難誘導情報作成手段が作成した避難誘導情報を通知して報知させる、
ことを特徴とする付記1に記載の事件情報報知システム。
(付記7)
該避難誘導情報作成手段は、該子機距離情報が所定の安全距離よりも短い場合には、該複数の親機のいずれかが配置されている位置への避難を指示する避難誘導情報を作成し、該子機距離情報が該所定の安全距離以上である場合には、所定の避難先への避難を指示する避難誘導情報を作成することを特徴とする付記6に記載の事件情報報知システム。
(付記8)
無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されている事件情報報知システムとの間で、該無線通信路を介して情報の授受を行う、移動体である子機であって、
事件に遭遇したことを示しており他の子機から発信された事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信したことによって各親機から送られてくる子機存在確認情報であって、該事件を識別する事件識別情報、及び、該子機存在確認情報の発信元である各親機の位置情報である確認元親機位置情報を含む該子機存在確認情報を受信する子機存在確認情報受信手段と、
該子機存在確認情報受信手段が受信した該子機存在確認情報に含まれている該事件識別情報及び該確認元親機位置情報に基づき、該事件からの避難先とする親機の位置を決定する避難先決定手段と、
該避難先決定手段が決定した避難先の情報を報知する避難先報知手段と、
を有することを特徴とする子機。
(付記9)
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が該子機存在確認情報を唯一つの親機から受信した場合には、該親機の位置を該避難先として決定することを特徴とする付記8に記載の子機。
(付記10)
該子機の位置を取得する子機位置取得手段と、
該子機位置取得手段が取得した該子機の位置と、該子機存在確認情報受信手段が受信した該子機存在確認情報に含まれている該確認元親機位置情報において示されている親機の位置との距離である確認元親機距離を算出する確認元親機距離算出手段と、
を更に有し、
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が、同一の事件識別情報が含まれている該子機存在確認情報を複数の親機から受信した場合には、該確認元親機距離算出手段が算出した確認元親機距離が最短である親機が配置されている位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする付記8に記載の子機。
(付記11)
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が、同一の事件識別情報が含まれている該子機存在確認情報を複数の親機から受信した場合であっても、該子機存在確認情報に、更に、該事件遭遇情報の発信元である他の子機の位置情報である事件現場情報と、予め指定されている、危険区域を定義する危険距離の情報との両者が含まれていた場合であって、且つ、該子機存在確認情報に含まれている該確認元親機位置情報により示されている該親機の位置が、該事件現場情報で示されている位置から該危険距離内に全て配置されていた場合には、該親機のうちで該事件現場情報で示されている位置との距離が最長である位置に配置されているものの該配置位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする付記10に記載の子機。
(付記12)
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報が他の親機による転送を経た場合における該転送の回数を示す転送回数情報が含まれており、
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が、同一の事件識別情報が含まれている該子機存在確認情報を複数の親機から受信した場合には、最大の転送回数を示している該転送回数情報を含む該子機存在確認情報を発信した親機が配置されている位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする付記8に記載の子機。
(付記13)
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報の発信元である他の子機の位置情報である事件現場情報と、予め指定されている、危険区域を定義する危険距離の情報との両者が含まれており、
該避難先決定手段は、最大の転送回数を示している該転送回数情報を含む該子機存在確認情報を発信した親機の配置位置が、該事件現場情報で示されている位置から該危険距離内に全て配置されていた場合には、該事件遭遇情報を転送経路上の親機のうちで該事件現場情報で示されている位置との距離が最長である位置に配置されているものの該配置位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする付記12に記載の子機。
(付記14)
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報が他の親機による転送を経た場合における該転送の経路を示す転送経路情報が含まれており、
該避難先決定手段が決定した避難先までの避難経路を、該転送経路情報に基づき決定する避難経路決定手段を更に有し、
該避難先報知手段は、更に、該避難経路決定手段が決定した避難経路の情報を報知する、
ことを特徴とする付記8に記載の子機。
(付記15)
該避難経路決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が受信した該子機存在確認情報の発信元である親機が受信した該事件遭遇情報についての、該避難先決定手段が決定した避難先である親機からの転送経路を遡る経路を、該避難経路として決定することを特徴とする付記14に記載の子機。
(付記16)
無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されており、移動体である複数の子機との間で該無線通信路を介して相互に情報の授受を行う事件情報報知システムであって、
該親機は、
該複数の子機のうちのひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報であって、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含む該事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信する事件遭遇情報受信手段と、
該複数の子機のうちのひとつから送られてくる、該子機毎に予め設定されている避難先までの経路の誘導の要求を示している誘導要求情報であって、該避難先の位置を示す避難先位置情報を含む該誘導要求情報を受信する誘導要求情報受信手段と、
該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に含まれている該事件現場情報、及び、該誘導要求情報受信手段が受信した誘導要求情報に含まれている該避難先位置情報に基づき、該誘導要求情報の発信元である子機を該避難先に向かわせる経路を決定する避難経路決定手段と、
該誘導要求情報の発信元である子機に対し、該避難経路決定手段により決定された該経路の情報を通知して報知させる避難経路情報通知手段と、
を有することを特徴とする事件情報報知システム。
(付記17)
該避難先位置情報は、2つの最終避難先についての位置を示しており、
該避難経路決定手段は、該最終避難先位置情報により示されている2つの避難先の位置を結ぶ直線に該事件現場情報の位置及び該親機自身の位置を投影したときに、該直線において該親機自身の位置の投影点から見て、該事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向にある避難先を、該誘導要求情報の発信元である子機の最終避難先として選択し、該最終避難先に向かう経路を決定する
ことを特徴とする付記16に記載の事件情報報知システム。
(付記18)
他の親機の位置を示す親機位置情報を取得する親機位置情報取得手段を更に有し、
該避難経路決定手段は、該親機位置情報取得手段が取得した親機位置情報で示されている他の親機の位置を該直線に更に投影したときに、該他の親機のうち、該直線において該親機自身の位置の投影点から見て、投影点が該事件現場情報の位置の投影点の方向とは反対の方向にあるものの位置を、該誘導要求情報の発信元である子機を次に向かわせる経由先の候補とし、該経由先の候補から該避難先に向かう経路を決定する、
ことを特徴とする付記17に記載の事件情報報知システム。
(付記19)
該親機位置情報取得手段は、
該親機位置情報の要求を示している親機位置情報要求情報を送信する親機位置情報要求情報送信手段と、
他の親機の親機位置情報要求情報送信手段が送信した親機位置情報要求情報の受信を行うと共に、該受信に応じて自身の親機位置情報を返信する親機位置情報返信手段と、
該親機位置情報要求情報送信手段が送信した親機位置情報要求情報に応じて他の親機の親機位置情報返信手段が返信した、該他の親機についての親機位置情報を受信する親機位置情報受信手段と、
を有することを特徴とする付記18に記載の事件情報報知システム。
(付記20)
該避難経路決定手段は、該親機自身の位置から、該親機位置情報で示されている該経由先の候補である親機の位置を経由して、該選択された最終避難先の位置に至るまでの距離である避難距離を算出する避難距離算出手段を有しており、該経由先の候補である親機のうち、該避難距離が最短であるものの位置を、該誘導要求情報の発信元である子機を次に向かわせる経路として決定することを特徴とする付記18に記載の事件情報報知システム。
【符号の説明】
【0184】
10 インターネット網
100 親機
101、201、301 アンテナ
110、210、310 無線通信処理部
120、320 有線通信部
130、220 情報保持部
140、230 制御部
150、240、340 報知部
200 子機
300 センタサーバ
330 事件情報管理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体である複数の子機との間で無線通信路を介して相互に情報の授受を行う事件情報報知システムであって、
該複数の子機のひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報であって、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含む該事件遭遇情報を受信する事件遭遇情報受信手段と、
該子機の各々の位置と該事件現場情報で示されている位置との距離を、子機距離情報として取得する子機距離情報取得手段と、
該事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、該子機距離情報に基づき、該複数の子機の各々について作成する避難誘導情報作成手段と、
該複数の子機の各々に対し、該避難誘導情報作成手段が作成した、通知先の子機についての避難誘導情報を通知して報知させる避難誘導情報通知手段と、
を有することを特徴とする事件情報報知システム。
【請求項2】
該事件情報報知システムは、固定局である親機を複数備えており、
該親機は、該事件遭遇情報受信手段、該子機距離情報取得手段、該避難誘導情報作成手段、及び該避難誘導情報通知手段を各々有していると共に、更に、該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に、該事件遭遇情報の転送経路を示す転送経路情報を付加して他の該親機へ転送する事件遭遇情報転送手段を各々有しており、
該事件遭遇情報受信手段は、更に、他の親機の該事件遭遇情報転送手段から転送されてきた該事件遭遇情報を受信し、
該親機は、
該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報の転送を該事件遭遇情報転送手段が行うと同一の事件についての事件遭遇情報の同一経路での転送の繰り返しが発生するか否かを、該事件遭遇情報に付加されている該転送経路情報に基づき判定する繰り返し転送判定手段と、
該転送の繰り返しが発生すると該繰り返し転送判定手段が判定したときに、該事件遭遇情報転送手段を制御して、該繰り返しが発生することになる該事件遭遇情報の転送を禁止させる事件遭遇情報転送制御手段と、
を更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の事件情報報知システム。
【請求項3】
該事件情報報知システムは、固定局である親機を複数備えており、
該親機は、該事件遭遇情報受信手段、該子機距離情報取得手段、該避難誘導情報作成手段、及び該避難誘導情報通知手段を有しており、
該子機距離情報取得手段は、
該事件遭遇情報受信手段が事件遭遇情報を受信したときに、該事件遭遇情報に含まれていた該事件現場情報を含む子機存在確認情報を発信する子機存在確認情報発信手段と、
該子機存在確認情報を受信した子機から送られてくる子機存在回答情報であって、該子機を識別する子機識別情報と該子機についての該子機距離情報とを含む該子機存在回答情報を受信する子機存在回答情報受信手段と、
を有しており、
該避難誘導情報作成手段は、該子機存在回答情報受信手段が受信した子機存在回答情報に含まれている子機距離情報に基づいて該避難誘導情報を作成し、
該避難誘導情報通知手段は、該子機存在回答情報受信手段が受信した子機存在回答情報に含まれている子機識別情報で識別される子機に対し、該子機存在回答情報に含まれている子機距離情報に基づいて該避難誘導情報作成手段が作成した避難誘導情報を通知して報知させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の事件情報報知システム。
【請求項4】
無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されている事件情報報知システムとの間で、該無線通信路を介して情報の授受を行う、移動体である子機であって、
事件に遭遇したことを示しており他の子機から発信された事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信したことによって各親機から送られてくる子機存在確認情報であって、該事件を識別する事件識別情報、及び、該子機存在確認情報の発信元である各親機の位置情報である確認元親機位置情報を含む該子機存在確認情報を受信する子機存在確認情報受信手段と、
該子機存在確認情報受信手段が受信した該子機存在確認情報に含まれている該事件識別情報及び該確認元親機位置情報に基づき、該事件からの避難先とする親機の位置を決定する避難先決定手段と、
該避難先決定手段が決定した避難先の情報を報知する避難先報知手段と、
を有することを特徴とする子機。
【請求項5】
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報が他の親機による転送を経た場合における該転送の回数を示す転送回数情報が含まれており、
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が、同一の事件識別情報が含まれている該子機存在確認情報を複数の親機から受信した場合には、最大の転送回数を示している該転送回数情報を含む該子機存在確認情報を発信した親機が配置されている位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の子機。
【請求項6】
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報が他の親機による転送を経た場合における該転送の経路を示す転送経路情報が含まれており、
該避難先決定手段が決定した避難先までの避難経路を、該転送経路情報に基づき決定する避難経路決定手段を更に有し、
該避難先報知手段は、更に、該避難経路決定手段が決定した避難経路の情報を報知する、
ことを特徴とする請求項4に記載の子機。
【請求項7】
無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されており、移動体である複数の子機との間で該無線通信路を介して相互に情報の授受を行う事件情報報知システムであって、
該親機は、
該複数の子機のうちのひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報であって、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含む該事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信する事件遭遇情報受信手段と、
該複数の子機のうちのひとつから送られてくる、該子機毎に予め設定されている避難先までの経路の誘導の要求を示している誘導要求情報であって、該避難先の位置を示す避難先位置情報を含む該誘導要求情報を受信する誘導要求情報受信手段と、
該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に含まれている該事件現場情報、及び、該誘導要求情報受信手段が受信した誘導要求情報に含まれている該避難先位置情報に基づき、該誘導要求情報の発信元である子機を該避難先に向かわせる経路を決定する避難経路決定手段と、
該誘導要求情報の発信元である子機に対し、該避難経路決定手段により決定された該経路の情報を通知して報知させる避難経路情報通知手段と、
を有することを特徴とする事件情報報知システム。
【請求項1】
移動体である複数の子機との間で無線通信路を介して相互に情報の授受を行う事件情報報知システムであって、
該複数の子機のひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報であって、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含む該事件遭遇情報を受信する事件遭遇情報受信手段と、
該子機の各々の位置と該事件現場情報で示されている位置との距離を、子機距離情報として取得する子機距離情報取得手段と、
該事件からの避難を誘導する情報である避難誘導情報を、該子機距離情報に基づき、該複数の子機の各々について作成する避難誘導情報作成手段と、
該複数の子機の各々に対し、該避難誘導情報作成手段が作成した、通知先の子機についての避難誘導情報を通知して報知させる避難誘導情報通知手段と、
を有することを特徴とする事件情報報知システム。
【請求項2】
該事件情報報知システムは、固定局である親機を複数備えており、
該親機は、該事件遭遇情報受信手段、該子機距離情報取得手段、該避難誘導情報作成手段、及び該避難誘導情報通知手段を各々有していると共に、更に、該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に、該事件遭遇情報の転送経路を示す転送経路情報を付加して他の該親機へ転送する事件遭遇情報転送手段を各々有しており、
該事件遭遇情報受信手段は、更に、他の親機の該事件遭遇情報転送手段から転送されてきた該事件遭遇情報を受信し、
該親機は、
該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報の転送を該事件遭遇情報転送手段が行うと同一の事件についての事件遭遇情報の同一経路での転送の繰り返しが発生するか否かを、該事件遭遇情報に付加されている該転送経路情報に基づき判定する繰り返し転送判定手段と、
該転送の繰り返しが発生すると該繰り返し転送判定手段が判定したときに、該事件遭遇情報転送手段を制御して、該繰り返しが発生することになる該事件遭遇情報の転送を禁止させる事件遭遇情報転送制御手段と、
を更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の事件情報報知システム。
【請求項3】
該事件情報報知システムは、固定局である親機を複数備えており、
該親機は、該事件遭遇情報受信手段、該子機距離情報取得手段、該避難誘導情報作成手段、及び該避難誘導情報通知手段を有しており、
該子機距離情報取得手段は、
該事件遭遇情報受信手段が事件遭遇情報を受信したときに、該事件遭遇情報に含まれていた該事件現場情報を含む子機存在確認情報を発信する子機存在確認情報発信手段と、
該子機存在確認情報を受信した子機から送られてくる子機存在回答情報であって、該子機を識別する子機識別情報と該子機についての該子機距離情報とを含む該子機存在回答情報を受信する子機存在回答情報受信手段と、
を有しており、
該避難誘導情報作成手段は、該子機存在回答情報受信手段が受信した子機存在回答情報に含まれている子機距離情報に基づいて該避難誘導情報を作成し、
該避難誘導情報通知手段は、該子機存在回答情報受信手段が受信した子機存在回答情報に含まれている子機識別情報で識別される子機に対し、該子機存在回答情報に含まれている子機距離情報に基づいて該避難誘導情報作成手段が作成した避難誘導情報を通知して報知させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の事件情報報知システム。
【請求項4】
無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されている事件情報報知システムとの間で、該無線通信路を介して情報の授受を行う、移動体である子機であって、
事件に遭遇したことを示しており他の子機から発信された事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信したことによって各親機から送られてくる子機存在確認情報であって、該事件を識別する事件識別情報、及び、該子機存在確認情報の発信元である各親機の位置情報である確認元親機位置情報を含む該子機存在確認情報を受信する子機存在確認情報受信手段と、
該子機存在確認情報受信手段が受信した該子機存在確認情報に含まれている該事件識別情報及び該確認元親機位置情報に基づき、該事件からの避難先とする親機の位置を決定する避難先決定手段と、
該避難先決定手段が決定した避難先の情報を報知する避難先報知手段と、
を有することを特徴とする子機。
【請求項5】
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報が他の親機による転送を経た場合における該転送の回数を示す転送回数情報が含まれており、
該避難先決定手段は、該子機存在確認情報受信手段が、同一の事件識別情報が含まれている該子機存在確認情報を複数の親機から受信した場合には、最大の転送回数を示している該転送回数情報を含む該子機存在確認情報を発信した親機が配置されている位置を該避難先として決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の子機。
【請求項6】
該子機存在確認情報には、更に、該事件遭遇情報が他の親機による転送を経た場合における該転送の経路を示す転送経路情報が含まれており、
該避難先決定手段が決定した避難先までの避難経路を、該転送経路情報に基づき決定する避難経路決定手段を更に有し、
該避難先報知手段は、更に、該避難経路決定手段が決定した避難経路の情報を報知する、
ことを特徴とする請求項4に記載の子機。
【請求項7】
無線通信路を介して相互に情報の授受が可能な固定局である複数の親機で構成されており、移動体である複数の子機との間で該無線通信路を介して相互に情報の授受を行う事件情報報知システムであって、
該親機は、
該複数の子機のうちのひとつから送られてくる、事件に遭遇したことを示している事件遭遇情報であって、該事件遭遇情報の発信元である子機の位置情報である事件現場情報を含む該事件遭遇情報を、直接に、若しくは他の親機による転送を経て受信する事件遭遇情報受信手段と、
該複数の子機のうちのひとつから送られてくる、該子機毎に予め設定されている避難先までの経路の誘導の要求を示している誘導要求情報であって、該避難先の位置を示す避難先位置情報を含む該誘導要求情報を受信する誘導要求情報受信手段と、
該事件遭遇情報受信手段が受信した事件遭遇情報に含まれている該事件現場情報、及び、該誘導要求情報受信手段が受信した誘導要求情報に含まれている該避難先位置情報に基づき、該誘導要求情報の発信元である子機を該避難先に向かわせる経路を決定する避難経路決定手段と、
該誘導要求情報の発信元である子機に対し、該避難経路決定手段により決定された該経路の情報を通知して報知させる避難経路情報通知手段と、
を有することを特徴とする事件情報報知システム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図14】
【図10A】
【図13】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図14】
【図10A】
【図13】
【公開番号】特開2010−231649(P2010−231649A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80354(P2009−80354)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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