説明

二及び多環式置換イソキノリン及びイソキノリノン誘導体

本発明は、Rho−キナーゼ及び/又はミオシン軽鎖ホスファターゼのRho−キナーゼ介在性リン酸化に関連する疾患の処置及び/又は予防に有用な式(I)の二及び多環式置換イソキノリン及びイソキノリノン[ここで、R1〜R12は、本出願中の定義と同様である]、及びそうした化合物を含む組成物に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二及び多環式置換イソキノリン及びイソキノリノン誘導体、その製造、そうした誘導体を含む医薬製剤、及びRho−キナーゼ及び/又はミオシン軽鎖ホスファターゼのRho−キナーゼ介在性リン酸化の阻害に関連する疾患の処置及び/又は予防におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アゴニスト刺激による小分子GTPアーゼRhoAの活性化は、不活性のGDP結合型から活性GTP結合型へのRhoAの変換をもたらし、引き続いてRho−キナーゼへの結合及び活性化を惹起する。二つのアイソフォームには、Rho−キナーゼ1とRho−キナーゼ2が知られている。Rhoキナーゼ2は、血管平滑筋細胞及び内皮細胞内で発現する。活性GTP結合RhoAによるRho−キナーゼ2の活性化は、ミオシン軽鎖ホスファターゼ活性のリン酸化介在阻害を介して平滑筋細胞のカルシウム感作をもたらし、それによってミオシンの調節軽鎖の活性のアップレギュレーションを導く(非特許文献1)。
【0003】
Rho−キナーゼは、筋原性緊張及び平滑筋高収縮性の発生(非特許文献2)を含む血管収縮、気管支平滑筋収縮(非特許文献3)、喘息(非特許文献4;5)及び慢性閉塞性肺疾患(COPD, 非特許文献6)、高血圧症、肺高血圧症(非特許文献7;8)並びに高眼圧症及び眼圧の調節(非特許文献9)、内皮機能不全(非特許文献10)、狭心症(非特許文献11;12)、高血圧誘発性、非高血圧誘発性、及び糖尿病性腎症を含む腎症、腎不全及び末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)(非特許文献13)、心筋梗塞(非特許文献14;15)、心臓肥大及び不全(非特許文献16;17;18)、冠動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄(restenosis)(非特許文献19;20;21)、糖尿病、糖尿病性合併症、グルコース利用及び代謝症候群(非特許文献22;23)、性的機能不全、例えば、ペニス勃起不全(非特許文献24)、網膜症、炎症、免疫疾患、エイズ(AIDS)、骨粗しょう症、内分泌機能異常、例えば、高アルドステロン症、神経変性及び脊髄損傷などの中枢神経系障害(非特許文献25)、脳虚血(非特許文献26;27;28;29)、脳血管けいれん(非特許文献30;31)、疼痛、例えば、神経障害性疼痛(非特許文献32;33)、細菌による消化管感染症(特許文献1)、癌発生及び進行、新生組織形成[Rhoキナーゼの阻害が腫瘍細胞増殖及び転移を抑制することが示されている](非特許文献34I;35)、血管形成(非特許文献36;37)、血管平滑筋細胞増殖及び運動性(非特許文献38;39)、内皮細胞の増殖、内皮細胞退縮(endothelial cell retraction)及び運動性(非特許文献40)、ストレス線維形成(非特許文献41;42)、血栓疾患(非特許文献43;44;45;46)及び白血球凝集(非特許文献47;48;49)、及び骨吸収(非特許文献50)、Na/H交換輸送系活性化(非特許文献51)、アルツハイマー病(非特許文献52)、アデュシン活性化(非特許文献53)、並びにSREB[ステロール応答結合エレメント(Sterol response binding element)]シグナル伝達及び脂質代謝に対するその作用(非特許文献54)に関与していることが知られている。
【0004】
それ故、Rho−キナーゼ及び/又はミオシン軽鎖ホスファターゼのRho−キナーゼ介在性リン酸化に対して阻害作用を有する化合物は、高血圧症、肺高血圧症、高眼圧症、網膜症、及び緑内障、末梢循環障害、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、冠動脈性心疾患、狭心症、心肥大、心不全、虚血性疾患、虚血性臓器不全(末端器官障害)、肺線維症、肝線維症、肝不全、高血圧誘発性、非高血圧誘発性及び糖尿病性腎症を含む腎症、腎不全、腎線維症、腎糸球体硬化症、臓器肥大、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群、血栓疾患、脳卒中、脳血管痙攣、脳虚血、疼痛、例えば神経障害性疼痛、神経変性、脊髄損傷、アルツハイマー病、早産、勃起機能不全、内分泌機能異常、動脈硬化症、前立腺肥大、糖尿病及び糖尿病合併症、代謝症候群、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、炎症、自己免疫疾患、AIDS、骨そしょう症などの骨疾患、細菌による消化管感染症、敗血症、がん発生及び進行、例えば乳房、結腸、前立腺、卵巣、脳及び肺のがん並びにそれらの転移のような、Rho−キナーゼが原発性又は二次性疾患の原因として関与している心臓血管及び非心臓血管疾患の処置及び/又は予防に有用である。
【0005】
特許文献2には、神経保護薬として有用な、場合により、−(CH1−6−O−(CH0−6−、−(CH0−6−S−(CH0−6−又は−(CH0−6−結合ヘテロサイクリック(heterocyclic)基によって置換されていることもあるイソキノリン−5−スルホンアミド誘導体が記載されている。
【0006】
特許文献3には、イソキノリン環の1位にエーテル又はエステル基を持っているRho−キナーゼ阻害剤、ファスジルのプロドラッグが記載されている。
【0007】
特許文献4には、細菌感染症の処置に有用な−O−(C−C10)アルキル−ヘテロアリールによって置換されたシクロヘキシル誘導体が一般的に記載されている。
【0008】
特許文献5には、例えば、胃炎、がん、又は胃潰瘍などの、ヘリコバクター・ピロリによって引き起こされる疾患の処置に有用なイソキノリン誘導体が記載されている。このイソキノリン誘導体は、OHによって1位で置換されていてもよく、そして好ましくは、5位が、X[(C−C)アルキレン)]0−1−Y[式中、Xは、酸素であり、そしてYは、アリール又はヘテロサイクリック基であってもよい]によって置換されている。
【0009】
非特許文献55には、ヘリコバクター・ピロリによって引き起こされる感染症を処置するための6−ベンジルオキシ−イソキノリンが記載されている。
【0010】
特許文献6には、式“Ar I−X−Ar II”[式中、Xは、(CHR−Z−(CHRであることができ、例えば、Z−CHでありえ(ここで、ZはOでありうる)、Rは、水素又はアルキルであり、Ar Iは、とりわけ、場合により、置換されていることもあるイソキノロンでありえ、そしてAr IIは、とりわけ、場合により、置換されていることもあるC3−7の単環式の飽和ヘテロサイクリック系でありうる]の化合物が、細胞増殖を阻害するのに有用であるEGF及び/又はPDGF受容体阻害剤として一般的に開示されている。
【0011】
特許文献7には、不整脈、脳卒中、うっ血性心不全などを処置するカリウムチャネル阻害剤として、イソキノロン誘導体が一般的に記載されており、この誘導体は、場合により、6位において基(CROR43{式中、pは0であってもよく、そしてR43は、例えば、場合により、NR5152[ここで、R51及びR52は、水素、(C−C)アルキルなどであってもよい]によって置換されていることもあるC−C10シクロアルキル残基であるか;又はR43は、1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を有する4〜6員の不飽和又は飽和単環式ヘテロサイクリック環と定義される基R81である}によって置換されていることもあり;そして、4位において直接結合した、場合により置換されていることもある、アリール又はヘテロアリール環によって置換されている。
【0012】
特許文献8には、不整脈、脳卒中、うっ血性心不全などの処置のためのカリウムチャネル阻害剤としてイソキノリン誘導体が一般的に記載されており、この誘導体は、1位においてヒドロキシによって置換されていてもよく、そして、場合により、6位において、基(CROR43{式中、pは0であってもよく、そしてR43は、例えば、場合により、NR5152[ここで、R51及びR52は、水素、(C−C)アルキルなどであってもよい]によって置換されていることもある(C−C10)シクロアルキル残基であるか;又はR43は、1、2、3又は4個のヘテロ原子を有する4〜6員の不飽和又は飽和の単環式のヘテロサイクリック環と定義されている基R81である}によって置換されていることもあり、そして、4位において直接結合した、場合により置換されていることもある、アリール又はヘテロアリール環によって置換されている。
【0013】
特許文献9には、式:
【化1】

のイソキノロン誘導体がRho−キナーゼ阻害剤として一般的に記載されている。
【0014】
特許文献10には、式:
【化2】

のイソキノリン及びイソキノロン誘導体がRho−キナーゼ阻害剤として一般的に記載されている。
【0015】
特許文献11及び12にはまた、6−置換イソキノリン及びイソキノロン誘導体がRho−キナーゼ阻害剤として記載されている。
【0016】
特許文献13及び14には、6−置換イソキノリン誘導体がRho−キナーゼ阻害剤として記載されている。
【0017】
いくつかのRhoキナーゼ阻害剤が記載されているけれども、Rhoキナーゼ介在性疾患の処置に有用な更なる化合物のニーズが依然として残されたままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO 98/06433
【特許文献2】WO 2001/64238
【特許文献3】WO 2004/106325(Schering AG)
【特許文献4】WO 2001/039726
【特許文献5】JP 10087629A
【特許文献6】米国特許第5,480,883号
【特許文献7】WO 2005/030791(Merck & Co)
【特許文献8】WO 2005/030130(Merck & Co)
【特許文献9】WO 2003/053330(Ube)
【特許文献10】WO 2007/012422(Sanofi-Aventis)
【特許文献11】WO 2008/077555
【特許文献12】WO 2008/077556(Sanofi-Aventis)
【特許文献13】WO 2007/039563
【特許文献14】WO 2008/020081(Organon)
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Uehata et al. Nature 1997, 389, 990-994
【非特許文献2】Gokina et al. J. Appl. Physiol. 2005, 98, 1940-1948
【非特許文献3】Yoshii et al. Am. J. Resp. Cell Mol. Biol. 1999, 20, 1190-1200
【非特許文献4】Setoguchi et al. Br. J. Pharmacol. 2001, 132, 111-118
【非特許文献5】Nakahara et al. Eur. J. Pharmac. 2000, 389, 103-106
【非特許文献6】Maruoka et al. Nippon Rinsho, 1999 , 57, 1982-1987
【非特許文献7】Fukumoto et al. Heart 2005, 91, 391-392
【非特許文献8】Mukai et al. Nature 1997, 389, 990-994
【非特許文献9】Honjo et al. Invest. Ophthalmol. Visual Sci. 2001, 42, 137-144
【非特許文献10】Steioff et al. Eur. J. Pharmacol. 2005, 512, 247-249
【非特許文献11】Masumoto et al. Circulation 2002, 105, 1545-47
【非特許文献12】Shimokawa et al. J. Cardiovasc. Pharmacol. 2002, 40, 751-761
【非特許文献13】Wakino et al. Drug News Perspect. 2005, 18, 639-643
【非特許文献14】Demiryurek et al. Eur. J. Pharmacol. 2005, 527, 129-140
【非特許文献15】Hattori et al. Circulation 2004, 109, 2234-2239
【非特許文献16】Yamakawa et al. Hypertension 2000, 35, 313-318
【非特許文献17】Liao et al. Am. J. Physiol. Cell Physiol. 2006, 290, C661-668
【非特許文献18】Kishi et al. Circulation 2005, 111, 2741-2747
【非特許文献19】Pacaud et al. Arch. Mal. Coeur 2005, 98, 249-254
【非特許文献20】Retzer et al. FEBS Lett. 2000, 466, 70-74
【非特許文献21】Negoro et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1999, 262, 211-215
【非特許文献22】Sandu et al. Diabetes 2000, 49, 2178-2189
【非特許文献23】Maeda et al. Cell Metab. 2005, 2, 119-129
【非特許文献24】Chitaley et al. Nature Medicine 2001, 7, 119-122
【非特許文献25】Hara et al. J. Neurosurg. 2000, 93, 94-101
【非特許文献26】Uehara et al. Nature 1997, 389, 990-994
【非特許文献27】Satoh et al. Life Sci. 2001, 69, 1441-1453
【非特許文献28】Hitomi et al. Life Sci. 2000, 67, 1929-1939
【非特許文献29】Yamamoto et al. J. Cardiovasc. Pharmacol. 2000, 35, 203-211
【非特許文献30】Sato et al. Circ. Res. 2000, 87, 195-200
【非特許文献31】Kim et al. Neurosurgery 2000, 46, 440-447
【非特許文献32】Tatsumi et al. Neuroscience 2005, 131, 491-498
【非特許文献33】Inoue et al. Nature medicine 2004, 10, 712-718
【非特許文献34】Itoh et al. Nature Medicine 1999, 5, 221-225
【非特許文献35】Somlyo et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2000, 269, 652-659
【非特許文献36】Uchida et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2000, 269, 633-640
【非特許文献37】Gingras et al. Biochem. J. 2000, 348, 273-280
【非特許文献38】Tammy et al. Circ. Res. 1999, 84, 1186-1193
【非特許文献39】Tangkijvanich et al. Atherosclerosis 2001, 155, 321-327
【非特許文献40】Oikawa et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2000, 269, 633-640
【非特許文献41】Kimura et al. Science 1997, 275, 1308-1311
【非特許文献42】Yamashiro et al. J. Cell Biol. 2000, 150, 797-806
【非特許文献43】Kikkawa et al. FEBS Lett. 2000, 466, 70-74
【非特許文献44】Bauer et al. Blood 1999, 94, 1665-1672
【非特許文献45】Klages et al. J. Cell Biol. 1999,144, 745-754
【非特許文献46】Retzer et al. Cell Signal 2000,12, 645-648
【非特許文献47】Kawaguchi et al. Eur. J. Pharmacol. 2000, 403, 203-208
【非特許文献48】Sanchez-Madrid et al. J. Immunol. 2003, 171, 1023-1034
【非特許文献49】Sanchez-Madrid, et al. J. Immunol. 2002, 168, 400-410
【非特許文献50】Chellaiah et al. J. Biol. Chem. 2003, 278, 29086-29097
【非特許文献51】Kawaguchi et al. Eur. J. Pharmacol. 2000, 403, 203-208
【非特許文献52】Zhou et al. Science 2003, 302, 1215-1217
【非特許文献53】Fukata et al. J. Biol. Chem., 1998, 273, 5542-5548
【非特許文献54】Lin et al. Circ. Res. 2003, 92, 1296-304
【非特許文献55】Hagihara et al. (Bioorg. Med. Chem. 1999, 7, 2647-2666)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明の実施態様は、式(I):
【化3】

〔式中、
1は、H、OH又はNH2であり;
3は、H、ハロゲン、CN、(C1−C6)アルキル、OH、NH2、又はNHR’であり;
4は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、(C1−C6)アルキル、R’、又は(C1−C6)アルキレン−R’であり;
5は、H、ハロゲン、CN、(C1−C6)アルキル、又はR’であり;
7は、H、ハロゲン、CN、(C1−C6)アルキル、O−(C1−C6)アルキル、R’、又はSO2−NH2であり;
8は、H、ハロゲン又は(C1−C6)アルキルであり;
6は、シクロアルキル環に結合する1個の(C1−C4)アルキレン[ここで、(C1−C4)アルキレンは、シクロアルキル環の異なる炭素原子と第二の結合を形成して、二環式環系を形成する]であり、
上記において、二環式環系では、1個又は2個の炭素原子はO、N−R13、S、SO又はSO2から独立して選択される基によって置き換えられているか;
又は、
m及びsが2である場合、mが3であり、そしてsが1である場合、又はmが4であり、そしてsが0である場合は、
6は、CH2−CH−(CH22[このCH2−CH−(CH22は、一つのCH2はシクロアルキル環に結合しており、そして二つの他のCH2は、シクロアルキル環の異なる炭素原子に結合している]であり、
【0021】
そして、mが3であり、そしてsが3である場合は、
6は、シクロアルキル環の異なる炭素原子に結合している二つのメチレン基であり、
上記において、メチレン基又はCH2−CH−(CH22基は、シクロアルキル環の炭素原子に結合し、そして式
【化4】

(式中、Lは、任意の第二級又は第三級炭素原子に結合することができる)のアダマンタン系を形成し;
又は、
6は、R11及びN原子と一緒になって、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル[これは、シクロアルキル残基に、縮合するか、又は、スピロ環式環系として結合して、
式:
【化5】

の残基を形成する]を形成し、
上記において、二環式環系又はアダマンタン系又は(C3−C8)ヘテロシクロアルキルを含む環系は、非置換であるか、又は場合によりR9によって置換されていることもあり;
【0022】
9は、
R’、
OH、
ハロゲン、
(C1−C6)アルキル、
O−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−R’、
(C2−C6)アルケニル、
(C2−C6)アルキニル、
(C1−C6)アルキレン−O−R’、
(C1−C6)アルキレンCH[R’]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)N[R’]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)O−(C1−C6)アルキル、
COOH、
C(O)O−(C1−C6)アルキル、
C(O)OR’、
C(O)(C1−C6)アルキル、
C(O)R’、
CONH2
C(O)−NH−(C2−C6)アルケニル、
C(O)−NH−(C2−C6)アルキニル、
C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
C(O)NHR’、
C(O)−NH(C1−C6)アルキレン−R’、
C(O)N[(C1−C6)アルキル]R’、
C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
C(O)−(C1−C6)アルキレン−R’、又は
C(O)O(C1−C6)アルキレン−R’であり;
【0023】
11及びR12は、互いに独立して、
H、
R’、
(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−R’、
(C1−C6)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−O−R’、
(C1−C6)アルキレン−CH[R’]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)N[R’]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)O−(C1−C6)アルキル、
C(O)O−(C1−C6)アルキル、
C(O)OR’、
C(O)(C1−C6)アルキル、
C(O)R’、
C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
C(O)NHR’、
C(O)N[(C1−C6)アルキル]R’
C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
C(O)−(C1−C6)アルキレン−R’、
C(O)O(C1−C6)アルキレン−R’、
又は
11及びR12は、それらが結合しているN原子と一緒になって(C3−C8)ヘテロシクロアルキルを形成し;
【0024】
13は、H又は(C1−C6)アルキルであり;
nは、0、1、2、3又は4であり;
mは、1、2、3又は4であり;
sは、0、1、2、又は3であり;
Lは、O(CH2p、S(CH2p、S(O)(CH2p、SO2(CH2p、NH(CH2p、N(C1−C6)アルキル−(CH2p、N(C3−C6)シクロアルキル−(CH2p、又はN[(C1−C3)アルキレン−R’]−(CH2pであり;
pは、0、1、2、3又は4であり;
R’は、
(C3−C8)シクロアルキル、
(C5−C10)ヘテロアリール、
(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、
(C6−C10)アリールであり;
上記において、残基R3〜R13中、アルキル又はアルキレンは、非置換であるか、又は場合により、OH、OCH3、C(O)OH、C(O)OCH3、NH2、NHCH3、N(CH32、C(O)NH2、C(O)NHCH3又はC(O)N(CH32によって、1回又は複数回、置換されていることもあり;
上記において残基R3〜R13中、シクロアルキル又はヘテロシクロアルキルは、非置換であるか、又は場合により、(C1−C6)アルキル、ハロゲン、OH、OCH3、C(O)OH、C(O)OCH3、NH2、NHCH3、N(CH32、C(O)NH2、C(O)NHCH3又はC(O)N(CH32によって、1回又は複数回、置換されていることもあり;
上記において、残基R3〜R13中、アルキル又はアルキレンは、非置換であるか、又は場合により、ハロゲンによって、1回又は複数回、置換されていることもあり;
【0025】
上記において、残基R3〜R13中、(C6−C10)アリール及び(C5−C10)ヘテロアリールは、非置換であるか、又は場合により、ハロゲン、OH、NO2、N3、CN、C(O)(C1−C6)アルキル、C(O)−(C6−C10)アリール、C(O)OH、C(O)O(C1−C6)アルキル、C(O)NH2、C(O)NH(C1−C6)アルキル、C(O)N[(C1−C6)アルキル]2、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−NH(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−N[(C1−C6)アルキル]2、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、O−(C1−C6)アルキル、O−C(O)−(C1−C6)アルキル、PO32、SO3H、SO2−NH2、SO2NH(C1−C6)アルキル、SO2N[(C1−C6)アルキル]2、S−(C1−C6)アルキル、SO−(C1−C6)アルキル、SO2−(C1−C6)アルキル、SO2−N=CH−N[(C1−C6)アルキル]2、SF5、C(NH)(NH2)、NH2、NH−(C1−C6)アルキル、N[(C1−C6)アルキル]2、NH−C(O)−(C1−C6)アルキル、NH−C(O)O−(C1−C6)アルキル、NH−SO2−(C1−C6)アルキル、NH−SO2−(C6−C10)アリール、NH−SO2−(C5−C10)ヘテロアリール、NH−SO2−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)−(C1−C6)アルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)O−(C1−C6)アルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)−NH−(C1−C6)アルキル]、(C6−C10)アリール、(C1−C6)アルキレン(C6−C10)アリール、O−(C6−C10)アリール、O(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、(C1−C6)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、(C1−C6)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、O−(C1−C6)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、O−(C1−C6)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル
{上記において、この(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、又は(C3−C8)シクロアルキルは、ハロゲン、OH、N
2、CN、O−(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキル、NH2、NH(C1−C6)アルキル、N[(C1−C6)アルキル]2、SO2CH3、C(O)OH、C(O)O−(C1−C6)アルキル、C(O)NH2、(C1−C6)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−O−(C6−C10)アリール、又はO−(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリールから独立して選択される基によって、1〜3回置換されていてもよい}から独立して選択される基によって、1回又は複数回、置換されていることもあり;
又は
上記において、(C6−C10)アリールは、O−(C1−C4)アルキレン−O基によって隣接して置換され[このことによって5〜8員の環が、酸素原子が結合している炭素原子と一緒になって形成される];
そして
上記において、(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル基及び(C3−C8)シクロアルキルのアリール置換基は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル又はシクロアルキルからなる基によって更に置換されることはない〕
の化合物、それらの立体異性体及び/又は互変異性体形態及び/又はそれらの製薬学的に許容される塩である。
【0026】
別の実施態様では、この発明はまた、医薬として使用する式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩に関する。これはまた、高血圧症、肺高血圧症、高眼圧症、網膜症、緑内障、末梢循環障害、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、冠動脈性心疾患、狭心症、心肥大、心不全、虚血性疾患、虚血性臓器不全(末端臓器障害(end organ damage))、肺線維症、肝線維症、肝不全、腎症、腎不全、腎線維症、腎糸球体硬化症、臓器肥大、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群、血栓疾患、脳卒中、脳血管痙攣、脳虚血、疼痛、神経変性、脊髄損傷、アルツハイマー病、早産、勃起機能不全、内分泌機能異常、動脈硬化症、前立腺肥大、糖尿病及び糖尿病合併症、代謝症候群、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、炎症、自己免疫疾患、AIDS、骨疾患(osteopathy)、細菌による消化管感染症、敗血症、又はがん発生及び進行などのRho−キナーゼ介在性疾患の処置及び/又は予防のための少なくとも一つの式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩の使用に関する。本発明は更に、有効な量の少なくとも一つの式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩を含んでなる医薬に関する。この発明の別の目的は、式(I)の化合物を製造する方法である。
【0027】
(C1−C2)アルキル、(C1−C4)アルキル、又は(C1−C6)アルキル及びその対応するアルキレン置換基中で使用されているアルキルという用語は、直線、すなわち、直鎖状、又は分枝鎖状の鎖であることができ、そして、それぞれ1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有している炭化水素残基であると理解される。このことはまた、アルキル基が、別の基、例えば、アルコキシ基(O−アルキル)、S−アルキル又は−O(C1−C6)アルキレン−O−、アルコキシカルボニル基又はアリールアルキル基中での置換基として出現する場合にも適用される。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルがあり、すべてのこうした基のn−異性体(n-isomers)には、イソプロピル、イソブチル、1−メチルブチル、イソペンチル、ネオペンチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル、tert−ブチル又はtert−ペンチルがある。アルキル又はアルキレン基は、場合により、1回又は複数回ハロゲン化されていてもよく、例えば、アルキル基は、フッ素化、例えば、全フッ素置換(perfluorinated)されていてもよい。ハロゲン化アルキル基の例には、CH2F、CHF2、CF3及びCH2CF3、OCF3、SCF3、又は−O−(CF22−O−がある。
【0028】
(C2−C6)−アルケニルという用語は、その炭素鎖が直鎖状、又は分枝鎖状の鎖であり、そして2〜6個の炭素原子を含み、そして鎖の長さに左右されるが、1、2又は3個の二重結合を有する、炭化水素残基を意味し、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル(=アリル)、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、5−ヘキセニル又は1,3−ペンタジエニルがある。この二重結合は、可能な場合には、E又はZ配座(orientation)を有していてもよい。この二重結合は、内部及び末端の双方に存在することができる。
【0029】
(C2−C6)−アルキニル基は、その炭素鎖が直鎖状、又は分枝鎖状の鎖であり、2〜6個の炭素原子を含み、そして鎖の長さに左右されるが、1又は2個の三重結合を有する、炭化水素残基であり、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル(=プロパルギル)又は2−ブチニルがある。この三重結合は、内部及び末端の双方に存在することができる。
【0030】
ハロゲンは、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)又はヨード(I)を意味する。
【0031】
(C1−C8)ヘテロアルキル又はその対応する(C1−C8)ヘテロアルキレン置換基という用語は、少なくとも一つの炭素原子、好ましくは一つ又は二つの炭素原子、より好ましくは、一つの炭素原子が、O、NH、又はSから選択される基によって置き換えられており、そしてこの窒素及び硫黄原子は、場合により酸化されていてもよい、(C1−C8)アルキル又は(C1−C8)アルキレン基であると理解される。このヘテロ原子は、アルキル又はアルキレン基の任意の位置に置かれていてもよい。(C1−C8)ヘテロアルキル基の例には、−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−CH2−NH−CH2−CH3、−CH2−N(CH2−CH32−CH2−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−CH2−S−CH3、−CH2−O−CH(CH32、−CH2−O−CH2−CH2−O−CH3又はO−CH2−CH3が含まれる。
【0032】
(C3−C8)シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロオクチルのような3、4、5、6、7又は8個の環炭素原子を含む環状アルキル基であり、これはまた、置換されていてもよいし、及び/又は、例えば、シクロペンテニル又はシクロヘキセニルのように、任意の炭素原子を介して結合することができる1又は2個の二重結合(不飽和シクロアルキル基)を含んでいてもよい。
【0033】
(C6−C10)アリール基は、一つの芳香族環か、あるいは、縮合しているか、さもなければ連結している二つの芳香族環から構成されるか、又は二つの芳香族から構成され、そのうちの一つの環は飽和しているか、若しくは部分的に飽和している(すなわち、一つの環が少なくとも一つのC−C単結合を含んでいる)二つの芳香族環から構成される環系を意味し、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テトラヒドロナフチル、α−又はβ−テトラロン−、インダニル−又はインダン−1−オン−イル(indan-1-on-イル)基がある。好ましい(C6−C10)アリール基は、フェニルである。
【0034】
(C3−C8)ヘテロシクロアルキル基は、3、4、5、6、7又は8個の環原子を含んでいる飽和(二重結合を含まない)の単環式炭素環系を意味し、この環中で、一つ又はそれより多い炭素原子が、例えば、1、2又は3個の窒素原子、1又は2個の酸素原子、1又は2個の硫黄原子あるいは、異なったヘテロ原子の組み合わせなどの、一つ又はそれより多いヘテロ原子によって置き換えられていてもよい。このヘテロシクロアルキル残基は、任意の位置で、例えば、1−位、2−位、3−位、4−位、5−位、6−位、7−位又は8−位で結合することができる。また、こうした化合物の対応するN−オキシド、スルホキシド又はスルホンも含まれる。
【0035】
(C3−C8)ヘテロシクロアルキル基の例には、オキシラニル、オキセタニル、アジリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル[例えば、1,3−ジオキソラニル]、ジオキサニル[例えば、1,4−ジオキサニル]、ピペリジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、トリアゾリジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、ピペラジニル、トリアジナニル[例えば、1,3,5−トリアジナニル、1,2,3−トリアジナニル又は1,2,4−トリアジナニル]、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロ−チオピラニル、ジチオラニル[例えば、1,3−ジチオラニル]、ジチアニル、チアゾリジニル、オキサゾリジニル、オキサチオラニル[例えば、1,3−オキサチオラニル]、モルホリニル又はチオモルホリニル、ジアゼパニル[例えば、1,4−ジアゼパニル]がある。
【0036】
好ましい(C3−C8)ヘテロシクロアルキル基は、モルホリニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、オキセタニル又はテトラヒドロピラニルである。
【0037】
(C5−C10)ヘテロアリールは、単又は二環式環系において、一つ又はそれより多い炭素原子が、例えば、1、2、3又は4個の窒素原子、1又は2個の酸素原子、1又は2個の硫黄原子あるいは、異なったヘテロ原子の組み合わせなどの、一つ又はそれより多いヘテロ原子によって置き換えられることができる単又は二環式環系を意味する。このヘテロアリール残基は、例えば、1−位、2−位、3−位、4−位、5−位、6−位、7−位又は8−位である任意の位置で結合することができる。(C5−C10)ヘテロアリール基は、(1)芳香族単環式又は二環式環系、又は(2)一つの環が芳香族であり、そして第二の環が少なくとも部分的に飽和している二環式環系であることができる。また、こうした化合物の対応するN−オキシド、スルホキシド又はスルホンも含まれる。
【0038】
適切な(C5−C10)ヘテロアリール基は、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、アザインドリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、カルボリニル、シンノリニル、クロマニル、クロメニル、ナフチリジニル、フタラジニル、ピリドイミダゾリル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、フリル、フラザニル、チエニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、1H−インダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラゾリニル、ピロリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、テトラゾリルである。
【0039】
ピリジルは、2−、3−及び4−ピリジルの双方を表す。チエニルは、2−及び3−チエニルの双方を表す。フリルは、2−及び3−フリルの双方を表す。また、こうした化合物の対応するN−オキシド、例えば、1−オキシ−2−、3−又は4−ピリジルも含まれる。
【0040】
(C5−C10)ヘテロアリール残基中の置換は、遊離の炭素原子又は窒素原子上で起こりうる。
【0041】
好ましい(C5−C10)ヘテロアリール残基の例には、ベンゾフリル、キノリニル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル及びテトラゾリルがある。
【0042】
好ましい(C5−C10)ヘテロアリールは、(C5−C6)ヘテロアリール基である。好ましい(C5−C6)ヘテロアリール残基は、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、及びピリダジニルである。好ましい(C5−C6)ヘテロアリール残基の例には、2−又は3−チエニル、2−又は3−フリル、1−、2−又は3−ピロリル、1−、2−、4−又は5−イミダゾリル、1−、3−、4−又は5−ピラゾリル、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−又は−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−又は−5−イル、2−、4−又は5−オキサゾリル、3−、4−又は5−イソオキサゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−又は−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−又は−5−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−又は−5−イル、2−、4−又は5−チアゾリル、3−、4−又は5−イソチアゾリル、2−、3−又は4−ピリジル、2,4−、5−又は6−ピリミジニル、3−又は4−ピリダジニル、又はピラジニルがある。
【0043】
残基R3〜R13では、(C6−C10)アリール及び(C5−C10)ヘテロアリール残基は、別途明記しない限り、非置換であるか、又は、場合により、ハロゲン、OH、NO2、N3、CN、C(O)−(C1−C6)アルキル、C(O)−(C6−C10)アリール、C(O)OH、C(O)O(C1−C6)アルキル、C(O)NH2、C(O)NH(C1−C6)アルキル、C(O)N[(C1−C6)アルキル]2、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−NH(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−N[(C1−C6)アルキル]2、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、O−(C1−C6)アルキル、O−C(O)−(C1−C6)アルキル、PO32、SO3H、SO2−NH2、SO2NH(C1−C6)アルキル、SO2N[(C1−C6)アルキル]2、S−(C1−C6)アルキル、SO−(C1−C6)アルキル、SO2−(C1−C6)アルキル、SO2−N=CH−N[(C1−C6)アルキル]2、SF5、C(NH)(NH2)、NH2、NH−(C1−C6)アルキル、N[(C1−C6)アルキル]2、NH−C(O)−(C1−C6)アルキル、NH−C(O)O−(C1−C6)アルキル、NH−SO2−(C1−C6)アルキル、NH−SO2−(C6−C10)アリール、NH−SO2−(C5−C10)ヘテロアリール、NH−SO2−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)−(C1−C6)アルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)O−(C1−C6)アルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)−NH−(C1−C6)アルキル]、(C6−C10)アリール、(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリール、O−(C6−C10)アリール、O−(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、(C1−C6)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、(C1−C6)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、O−(C1−C6)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、O−(C1−C6)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル{上記において、前記の(C6−C10)アリール又は(C5−C10)ヘテロアリール又は(C3−C8)ヘテロシクロアルキル又は(C3−C8)シクロアルキルは、ハロゲン、OH、NO2、CN、O(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキル、NH2、NH(C1−C6)アルキル、N[(C1−C6)アルキル]2、SO2CH3、C(O)OH、C(O)O−(C1−C6)アルキル、C(O)NH2、(C1−C6)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−O−(C6−C10)アリール、又はO−(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリールから、独立して選択される基によって1〜3回置換されていてもよい}から、独立して選択される基によって、1回又は複数回、好ましくは1〜3回置換されていることもあり;
又は、上記において、(C6−C10)アリールは、O−(C1−C4)アルキレン−O基によって隣接して置換され、それによって酸素原子が結合している炭素原子と一緒になっ
て5〜8員の環が形成され;
そして、上記において、(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル基又は(C3−C8)シクロアルキルのアリール置換基は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル又はシクロアルキルからなる基によって更に置換されることはない。
【0044】
(C6−C10)アリール及び(C5−C10)ヘテロアリール基の好ましい置換基は、OH、(C1−C4)アルキル、O−(C1−C4)アルキル、O−フェニル、フェニル、C(O)O−(C1−C6)アルキル、C(O)OH、C(O)−(C1−C4)アルキル、ハロゲン、NO2、SO2NH2、CN、SO2−(C1−C4)アルキル、SO2−N=CH−N[(C1−C6)アルキル]2、NH−SO2−(C1−C4)アルキル、NH2、NH−C(O)−(C1−C4)アルキル、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C4)アルキル−OH、C(O)N[(C1−C4)アルキル]2、C(O)NH(C1−C6)アルキル、C(O)NH2、N[(C1−C4)アルキル]2、(C1−C4)アルキレン−N[(C1−C4)アルキル]2、(C1−C4)アルキレン−O−(C1−C4)アルキル、(C5−C6)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、(C1−C4)アルキレン−(C6−C10)アリール[上記において、(C6−C10)アリールは、ハロゲン、(C1−C4)アルキル、O−(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、(C6−C10)アリール、O−(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリールによって、更に1〜3回、好ましくは1回、置換されていてもよい]であるか、又は、O−(C1−C4)アルキレン−O基によって隣接して置換されていてもよく、それによって酸素原子が結合している炭素原子と一緒になって5〜8員の環が形成されている。
【0045】
(C6−C10)アリール及び(C5−C10)ヘテロアリールのより好ましい置換基は、OH、ハロゲン、CN、フェニル、O−フェニル、NH−C(O)−(C1−C4)アルキル、C(O)−(C1−C4)アルキル、C(O)−O(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルキル、O−(C1−C4)アルキル、CONH2、SO2−NH2、SO2−(C1−C4)アルキル又はSO2−N=CH−N[(C1−C4)アルキル]2、(C1−C4)アルキレン−フェニル、(C1−C4)アルキレン−O−(C1−C4)アルキル又は(C5−C6)ヘテロアリール[上記において、フェニルは、非置換であるか、又は、場合により、OH、ハロゲン、(C1−C4)アルキル又はO−(C1−C4)アルキルによって、1〜3回、好ましくは、1回、置換されていることもある]である。
【0046】
(C6−C10)アリール及び(C5−C10)ヘテロアリールの更により好ましい置換基は、OH、ハロゲン、CN、フェニル、O−フェニル、NH−C(O)−(C1−C4)アルキル[殊に、NH−C(O)−CH3]、C(O)−(C1−C4)アルキル[殊に、C(O)−CH3]、C(O)−O(C1−C4)アルキル[殊に、C(O)−OCH3]、(C1−C4)アルキル[殊にCH3又はCF3]、O−(C1−C4)アルキル[殊に、O−CH3]、CONH2、SO2−NH2、SO2−(C1−C4)アルキル[殊に、SO2−CH3又はSO2−CF3];又はSO2−N=CH−N[(C1−C4)アルキル]2[殊に、SO2−N=CH−N[(CH32]{上記において、フェニルは、非置換であるか、又は、場合により、OH、ハロゲン、(C1−C4)アルキル又はO−(C1−C4)アルキルによって、1〜3回、好ましくは、1回置換されていることもある}である。
【0047】
(C6−C10)アリール及び(C5−C10)ヘテロアリール基のより殊に好ましい置換基は、OH、CN、(C1−C4)アルキル[殊に、CH3又はCF3]、O(C1−C4)アルキル[殊に、O−CH3]、ハロゲン又はフェニル{上記において、フェニルは、OH、ハロゲン、(C1−C4)アルキル[殊に、CH3又はCF3]、又はO−(C1−C4)アルキル[殊に、O−CH3]によって、1〜3回、好ましくは、1回、更に置換されていてもよい}である。
【0048】
(C6−C10)アリール及び(C5−C10)ヘテロアリール基の最も好ましい置換基は、OH、CN、ハロゲン、(C1−C4)アルキル[殊に、CH3又はCF3]、O(C1−C4)アルキル[殊に、O−CH3]、又はハロゲンである。
【0049】
一置換フェニル基では、置換基は、2−位、3−位又は4−位に位置することができ、3−位及び4−位が好ましい。フェニル基が、二つの置換基を持っている場合は、それらは、2,3−位、2,4−位、2,5−位、2,6−位、3,4−位又は3,5−位に位置することができる。三つの置換基を持っているフェニル基では、2,3,4−位、2,3,5−位、2,3,6−位、2,4,5−位、2,4,6−位、又は3,4,5−位に位置することができる。
【0050】
フェニル基に関する上記の陳述は、フェニル基から誘導される二価の基、すなわち、非置換であるか、又は置換1,2−フェニレン、1,3−フェニレン又は1,4−フェニレンであってもよい、フェニレンにも同様に適用される。この上記の陳述はまた、アリールアルキレン基中のアリールサブグループ(aryl subgroup)にも同様に適用される。アリールサブグループ及びアルキレンサブグループ中、非置換でありうるか、又は置換されうるアリールアルキレン基の例には、ベンジル、1−フェニルエチレン、2−フェニルエチレン、3−フェニルプロピレン、4−フェニルブチレン、1−メチル−3−フェニル−プロピレンがある。
【0051】
残基R3〜R13では、アルキル又はアルキレンは、非置換であるか、又は、別途明記しない限り、場合により、ハロゲンによって、1回又は複数回置換されていることもある。アルキル又はアルキレンは、置換される場合は、好ましくは、クロロ又はブロモから選択されるハロゲンによって、1〜3回置換されるが、1回または複数回、フルオロによって[例えば、全フッ素置換される]置換されていてもよい。好ましくは、ハロゲンはフルオロである。アルキレンはハロゲン化されないのが好ましい。アルキル又はアルキレンは、ハロゲン化されないのがより好ましい。
【0052】
残基R3〜R13では、アルキル又はアルキレンは、非置換であるか、又は、別途明記しない限り、場合により、OH、OCH3、COOH、COOCH3、NH2、NHCH3、N(CH32、CONH2、CONHCH3又はCON(CH32から独立して選択される基によって1回又は複数回、置換されていることもある。置換される場合は、置換基の数は、好ましくは1、2、3又は4の間であり、より好ましくは、1又は2であり、更により好ましくは1である。アルキレンは、好ましくはこうした基の一つによって置換されない。R3、R4、R5、R7及びR8中のアルキル又はアルキレンは、置換されないのが好ましい。更なる実施態様では、R4、R7及びR8〜R14中のアルキル又はアルキレンは、こうした基の一つによって置換されない。
【0053】
残基R3〜R13では、シクロアルキル又はヘテロシクロアルキルは、非置換であるか、又は、別途明記しない限り、場合により、(C1−C6)アルキル、ハロゲン、OH、OCH3、COOH、COOCH3、NH2、NHCH3、N(CH32、CONH2、CONHCH3又はCON(CH32によって1回又は複数回置換されていることもある。
【0054】
置換されている場合は、置換基の数は、好ましくは、1、2、3又は4の間であり、より好ましくは1又は2、更により好ましくは1である。R3、R4、R5、R7及びR9中のシクロアルキル又はヘテロシクロアルキルは、好ましくは、置換されていない。更なる実施態様では、R3〜R13中のシクロアルキル又はヘテロシクロアルキルは、置換されていない。好ましい実施態様では、ヘテロシクロアルキルは置換されていない。別の実施態様ではシクロアルキルは置換されていない。
【0055】
前記に定義された(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル及び(C3−C8)シクロアルキル基の一般的でかつ好ましい置換基は、式(I)の化合物の次の実施態様中に述べられているR1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R11、R12、R13、n、s、m、p及びLの一般的でかつ好ましい定義と組み合わせることができる。
【0056】
式(I)の化合物の次の実施態様は、更にこの発明の一部を特徴づけ、そしてこの発明の一部である。
【0057】
式(I)の化合物の一つの実施態様では、R1はHであり、そしてこの化合物は式(II):
【化6】

によって特徴付けられる。
【0058】
この発明の別の実施態様では、R1はOHであり、そしてこの化合物は、式(IIIa):
【化7】

によって特徴付けられる。
【0059】
1がOHである式(I)のイソキノリン誘導体は、式(IIIb):
【化8】

によって特徴付けられる対応する互変異性体の1−イソキノロン誘導体を含む。
【0060】
この互変異性体形態もまた、この発明の実施態様である。
【0061】
更なる実施態様では、R1は、NH2であり、そしてこの化合物は式(IV):
【化9】

によって特徴付けられる。
【0062】
次の更なる実施態様は、式(I)、(II)、(IIIa)、(IIIb)及び(IV)の化合物を同等に意味する。
【0063】
好ましい実施態様では、R1は、H又はOHであり;より好ましくは、R1はOHである。
【0064】
一つの実施態様では、R3は、好ましくはH、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、又はNH−R’である。別のより好ましい実施態様では、R3は、H、ハロゲン、非置換若しくは置換NH−(C5−C6)ヘテロアリール、非置換若しくは置換NH−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル又は非置換若しくは置換NH−フェニルである。更により好ましい実施態様では、R3は、一つ又はそれより多いN原子を含んでいる非置換若しくは置換NH−(C5−C6)ヘテロアリールであるか、又は非置換若しくは置換NH−フェニルである。最も好ましい実施態様では、R3は、Hである。
【0065】
3におけるNHR’置換基の例は、下記の通りである。
【化10】

アステリスク()は、結合が環のC−原子に連結する場所を示す。
【0066】
好ましい実施態様では、R4は、H、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、又は(C1−C2)−フェニルである。より好ましい実施態様では、R4は、H、ハロゲンであるか、又は非置換若しくは置換(C1−C4)アルキル又は(C1−C2)−フェニルであり、好ましくは非置換(C1−C4)アルキル又は(C1−C2)−フェニルである。最も好ましいR4は、Hである。
【0067】
好ましい実施態様では、R5は、H、CN、ハロゲン、非置換若しくは置換(C1−C6)アルキル、非置換若しくは置換(C6−C10)アリール、又は非置換若しくは置換(C5−C10)ヘテロアリールである。R5の例には、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、フェニル、チエニル又はピリジル、ニトリル、(p−メトキシ)−フェニル、N−アニリン、シクロプロピル、テトラゾール、4−メトキシ−アニリンがある。より好ましい実施態様では、(C1−C6)アルキル、(C6−C10)アリール又は(C5−C10)ヘテロアリールは、非置換である。更により好ましい実施態様では、R5は、H、ハロゲン、メチル、エチル、フェニル、チエニル、又はピリジルであり、より具体的には、H、ハロゲン、メチル、又はエチルである。最も好ましいR5は、Hである。
【0068】
好ましい実施態様では、R7は、H、ハロゲン、ニトリル、非置換若しくは置換(C1−C6)アルキル、非置換若しくは置換O−(C1−C6)アルキル、又は非置換若しくは置換R’である。より好ましい実施態様では、R7は、H、ハロゲン、ニトリル、非置換若しくは置換(C1−C4)アルキル、非置換若しくは置換O−(C1−C4)アルキル、非置換若しくは置換フェニル、非置換若しくは置換(C5−C6)ヘテロアリール、又は非置換若しくは置換(C3−C6)シクロアルキルである。好ましくは、(C1−C6)アルキル、フェニル又は(C5−C6)ヘテロアリールは、非置換である。
【0069】
更により好ましい実施態様では、R7は、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、エチル、メトキシ、フェニル、ニトリル、シクロプロピル、又はチエニルである。より好ましくは、R7は、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はメトキシ、特にH又はクロロである。最も好ましいR7は、クロロである。
【0070】
好ましい実施態様では、R8は、H、Cl、F、メチル又はエチルである。より好ましい実施態様では、R8は、Hである。
【0071】
好ましい実施態様では、R9は、R’、OH、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−R’、(C2−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−R’、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−(C1−C6)アルキル、COO
H、CONH2、C(O)NH−(C1−C6)アルキル、C(O)NHR’、C(O)−NH−(C1−C6)アルキニル、C(O)−NH(C1−C6)アルキレン−R’、又はC(O)N[(C1−C6)アルキル]2であり;上記において、アルキル、アルキレン及びR’は、非置換であるか又は置換されている。
【0072】
より好ましい実施態様では、R9は、OH、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、R’、(C1−C6)アルキレン−R’、(C2−C6)アルケニル、COOH、CONH2、C(O)NH−(C1−C6)アルキル、C(O)NHR’、又はC(O)N[(C1−C6)アルキル]2[上記においてアルキル、アルキレン及びR’は、非置換であるか、又は置換されている]である。
【0073】
より好ましくは、R9は、OH、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、COOH、CONH2、O−CH3、フェニル、(C5−C6)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、(C1−C2)アルキレン−フェニル、(C3−C8)シクロアルキル[上記において、アルキル、フェニル、(C3−C8)シクロアルキル、(C5−C6)ヘテロアリール又は(C3−C8)ヘテロシクロアルキルは、非置換であるか、又は置換されている]である。更により好ましいR9は、OH、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、COOH、CONH2、O−CH3、フェニル、(C1−C2)アルキレン−フェニル、(C3−C8)シクロアルキル[上記においてアルキル、フェニル又は(C3−C8)シクロアルキルは、非置換であるか、又は置換されている]である。
【0074】
最も好ましくは、R9は、アリル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロプロピルメチレン、イソプロピルオキシメチレン、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、フェニル又はベンジルである。
【0075】
9は、リンカー基Lが結合する位置を含む環の任意の炭素原子に結合することができる。
【0076】
こうした実施態様の例としては、R9は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、
【化11】

である。
アステリスク()は、結合が環のC−原子に連結する場所を示す。
【0077】
式(I)の化合物の一つの実施態様では、R11及びR12は、互いに独立して、
H、
R’、
(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−R’、
(C1−C6)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−O−R’、
C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
C(O)NHR’、
C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
であり、上記においてR’、(C1−C6)アルキル及び(C1−C6)アルキレンは、非置換であるか、又は置換されている。
【0078】
式(I)の化合物の好ましい実施態様では、R11及びR12は、互いに独立して、
H、
(C1−C6)アルキル、
(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C6−C10)アリール、
(C1−C4)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、
C(O)NH−(C1−C6)アルキルであるか、又は
11及びR12は、それらが結合しているN原子と一緒になって(C3−C8)ヘテロシクロアルキル基を形成し、
上記において、(C1−C6)アルキル、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C4)アルキレン、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、(C6−C10)アリールは、非置換であるか、又は置換されている。
【0079】
好ましくは、R11及びR12中において、この形成されたヘテロシクリル基は、モルホリニル、ピペリジニル、ピロリジニル又はピペラジニルである。より好ましくは、このヘテロシクリル基は、モルホリニル又はピペラジニルである。
【0080】
式(I)の化合物のより好ましい実施態様では、R11は、H、(C1−C6)アルキル、(C3−C8)シクロアルキル、又は(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)シクロアルキルであり;
そして
12は、
H、
(C1−C6)アルキル、
(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C6−C10)アリール、
(C1−C4)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、又は
C(O)NH−(C1−C6)アルキルであり、
上記において、(C1−C6)アルキル、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C4)アルキレン、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、(C6−C10)アリールは、非置換であるか、又は置換されている。
【0081】
式(I)の化合物の更により好ましい実施態様では、R11は、H又は(C1−C6)アルキルであり;
そして
12は、
H、
(C1−C6)アルキル、
(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C6−C10)アリール、又は
(C1−C4)アルキレン−O−(C1−C6)アルキルであり、
上記において(C1−C6)アルキル、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C4)アルキレン、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、(C6−C10)アリールは、非置換であるか、又は置換されている。
【0082】
より好ましくは、R11は、H、(C1−C6)アルキルであり、そして
12は、H、(C1−C6)アルキル又は(C3−C8)シクロアルキルであり、
上記において(C1−C6)アルキル又は(C3−C8)シクロアルキルは、非置換であるか、又は置換されており、好ましくは非置換である。
【0083】
更なる実施態様では、R11は、Hであり、そしてR12は、H、(C1−C6)アルキル又は(C3−C8)シクロアルキルであり、ここで(C1−C6)アルキル又は(C3−C8)シクロアルキルは、非置換である。
【0084】
最も好ましいR11及びR12はHである。
【0085】
先に言及した実施態様の例としては、R11又はR12は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、3−メチル−ブチル、2−メチル−プロピル、ブチル、ペンチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、又は
【化12】

から成る群から選択される置換基である。アステリスク()は、結合がアミンのN−原子に連結する場所を示す。
【0086】
一つの実施態様では、R13は、H又は(C1−C6)アルキル[これは非置換であるか、又は場合により、置換されていることもある]であり、より好ましくは、R13は、H又は(C1−C4)アルキルであり、最も好ましくはHである。好ましくは、アルキルは、非置換である。
【0087】
式(I)の化合物の一つの実施態様では、R6で形成される二環式環(bicyclus)は、
【化13】

[上記は、非置換であるか、場合によりR9によって置換されていることもある]の群から選択される。(Nに随伴している点線は、NR1112残基の位置を示している)。
【0088】
式(I)の化合物の別の実施態様では、R6で形成されるアダマンタンは、
【化14】

の基から選択され、これは非置換であるか、又は場合により残基R9によって置換されていることもある。
【0089】
好ましくは、この二環式環又はアダマンタンは非置換である(nは0である)。
【0090】
一つの実施態様では、形成されるアダマンタンは、次の構造
【化15】

[上記は、非置換であるか、場合により残基R9によって置換されていることもある]を
有する。
【0091】
6で形成されるアダマンタンの好ましい実施態様は、式
【化16】

を有する残基である。
【0092】
この残基の特別な実施態様は、式
【化17】

に属する。
【0093】
例えば、構造の中でアダマンタン残基のシス及びトランス異性体には、
【化18】

が含まれる。
【0094】
別の実施態様では、R6は、R11又はR12、及びN原子と一緒になって、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル[これは、シクロアルキル残基に縮合するか、又は、スピロ環式環系として結合して、式:
【化19】

の残基を形成する]を形成する[前記環系は、非置換であるか、場合により残基R9によって置換されていることもある]。
【0095】
6及びR11によって形成される残基の例には、
【化20】

がある。
【0096】
一つの実施態様では、mは2であり、そしてsは2である。別の実施態様では、mは3であり、そしてsは1である。
【0097】
更なる実施態様では、mは2であり、そしてsは1である。更に別の実施態様では、mは3であり、そしてsは0である。
【0098】
更に別の実施態様では、mは4であり、そしてsは0である。
【0099】
式(I)の化合物の一つの実施態様では、nは、0、1、又は2である。より好ましくは、nは、0又は1である。最も好ましくは、nは0である。
【0100】
別の実施態様では、Lは、O(CH2pである。更なる実施態様では、Lは、S(CH2p、S(O)(CH2p又はSO2(CH2pである。別の実施態様では、Lは、NH(CH2p、N[(C1−C6)アルキル](CH2p、N[(C3−C6)シクロアルキル](CH2p、N[(C1−C3)アルキレン−アリール](CH2p又はN[(C1−C3)アルキレン−(C5−C6)ヘテロアリール](CH2pであり、NH(CH2p、N(C1−C6)アルキル−(CH2pがより好ましい。好ましいN(C1−C6)アルキルは、N(C1−C4)アルキルであり、より好ましくは、NCH3又はNCH2CH3であり、NCH3がより好ましい。好ましい実施態様では、Lは、O(CH2pである。別の好ましい実施態様では、LはS(CH2pである。更なる実施態様では、LはNH(CH2pである。最も好ましいLは、O、S又はNHであり、Oが特に好ましい。
【0101】
好ましくは、pは、0、1、2、又は3であり、より好ましくは、0又は1であり、0が最も好ましい。
【0102】
より好ましくは、Lは、O、S又はNHであり、好ましくは、LはOである。
【0103】
更なる実施態様では、この発明は、
6−(4−アミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アリル−4−アミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アミノ−4−プロピル−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アミノ−4−メチル−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アミノ−4−フェニル−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アミノ−4−シクロプロピル−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−ベンジルアミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(3−アミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(5−アミノ−アダマンタン−2−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(5−アミノ−アダマンタン−2−イルオキシ)−7−メチル−2H−イソキノリン−1−オン、
6−{[(7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、
6−{[(−7−アミノ−3−チアビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン
6−{[(7−アミノ−3−(ジオキソ−チア)ビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン 3、3−ジオキシド、又は
6−(1−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
から成る群より選択される式(I)の化合物、それらの立体異性体及び/又は互変異性体形態及び/又はそれらの製薬学的に許容されるその塩に関する。
【0104】
更なる実施態様では、式(I)の化合物は、
シス−6−(5−アミノ−アダマンタン−2−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
トランス−6−(5−アミノ−アダマンタン−2−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−{[(7−エンド(endo),9−アンチ(anti))−7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、
6−{[(7−エンド,9−シン(syn))−7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、
6−{[(7−エンド,9−アンチ)−7−アミノ−3−チアビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、
6−{[(7−エンド,9−シン)−7−アミノ−3−チアビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、及び
6−{[(7−エンド,9−アンチ)−7−アミノ−3−(ジオキソ−チア)ビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン 3,3−ジオキシド、
それらの立体異性体及び/又は互変異性体形態及び/又はそれらの製薬学的に許容されるその塩から成る群より選択される。
【0105】
この発明のあらゆる実施態様では、式(I)の化合物に含まれている一つ又はそれより多い又はすべての基は互いに独立して、上記に明記されている、あらゆる好ましい、より好ましい又は最も好ましい基の定義、又は基の定義によって構成され、そして上記に明記されている任意の一つ又はいくつかの具体的な明示、この発明の対象である好ましい定義、より好ましい又は最も好ましい及び/又は具体的な明示のすべての組み合わせを有しうる。また、すべての好ましい実施態様に関して、本発明は、すべての立体異性体形態及びあらゆる比率の立体異性体形態の混合物、及びそれらの製薬学的に許容される塩を包含して、式(I)の化合物を含む。
【0106】
イソキノリン置換様式は、IUPAC規則にしたがってナンバリングされる:
【化21】

【0107】
イソキノロン及びイソキノリノンという用語は、同意語として使用される。
【0108】
本明細書において“式(I)の化合物”の言及は、すべて、先に述べられている式(I)、(II)(IIIa)、(IIIb)及び(IV)の化合物、及びそれらの製薬学的に許容される塩、及び/又はそれらの立体異性体形態、多形体及び溶媒和物を指している。本明細書中で述べられている生理学的に機能できる誘導体も含まれる。
【0109】
式(I)の化合物の製薬学的に許容される塩は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (17th edition, page 1418 (1985))中に記載されているそれらの有機及び無機塩の双方を意味する。物理的及び化学的安定性及び溶解性のため、酸性基の場合は、とりわけ、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びアンモニウム塩が好ましく;塩基性基の場合は、とりわけ、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、メチルスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、又はカルボン酸又はスルホン酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、そしてアミノ酸の塩、天然塩基又はカルボン酸の塩などが好ましい。それらの立体異性体形態を含む、塩形成が可能な式(I)の化合物からの製薬学的に許容される塩の製造は、それ自体公知の方法で行われる。式(I)の化合物は、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、アルコラート及びアンモニア又は有機塩基、例えば、トリメチル−又はトリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン、トロメタモール、又はそのほかの塩基性アミノ酸、例えば、リシン、オルニチン又はアルギニンなどの塩基性反応物との安定なアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は場合により、置換されていることもあるアンモニウム塩を形成する。式(I)の化合物が塩基性基を有する場合は、強酸を用いて安定な酸付加塩もまた製造することができる。好適な本発明化合物の製薬学的に許容される酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸などの無機酸、及び例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グリコール酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸及び酒石酸などの有機酸の塩である。塩酸塩が好ましい塩である。
【0110】
製薬学的に許容されないアニオンとの塩、例えば、トリフルオロ酢酸塩は、製薬学的に許容される塩を製造するか、又は精製するための有用な中間体として、及び/又は非治療的、例えば、インビトロの応用における使用のために本発明の枠内に同様に属する。
【0111】
この発明はまた、式(I)の化合物の生理学的に機能できる誘導体を含む。本明細書中で使用される生理学的に機能できる誘導体は、例えば、ヒトなどの哺乳類に投与すると、式(I)の化合物を(直接的又は間接的に)、又はその活性代謝物を形成することができる本発明の式(I)の化合物のあらゆる生理学的に許容される誘導体、例えば、N−オキシドを指している。
【0112】
生理学的に機能できる誘導体には、例えば、H. Okada et al., Chem. Pharm. Bull. 1994, 42, 57-61中に記載されているように本発明の化合物のプロドラッグが含まれる。そうしたプロドラッグは、インビボで代謝されて、本発明の化合物に成ることができる。こうしたプロドラッグは、それ自身では活性であっても、活性でなくてもよい。
【0113】
本発明は、ラセミ体、鏡像異性的に濃縮された混合物、純粋なエナンチオマー及びジアステレオマー及びその任意の比率の混合物を含むそれらの立体異性体形態の形の式(I)の化合物に関する。
【0114】
本発明の化合物はまた、例えば、アモルファス及び結晶多形形態として様々な多形形態の形で存在することができる。本発明化合物の多形形態は、すべて、本発明の枠内に属し、そして本発明の更なる局面である。
【0115】
ラジカル又は置換基が式(I)の化合物中で1回より多く存在する場合は、それらは、すべて、互いに独立して、表示された意味を有することができ、そして同一であっても又は相異なっていてもよい。
【0116】
この発明はまた、医薬(又は薬剤)として使用するための式(I)の化合物及び/又はそれらの製薬学的に許容される塩、Rho−キナーゼ及び/又はミオシン軽鎖ホスファターゼのRho−キナーゼ介在性リン酸化に関連する疾患を処置し、及び/又は予防する、すなわち、高血圧症、肺高血圧症、高眼圧症、網膜症、及び緑内障、末梢循環障害、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、冠動脈性心疾患、狭心症、心肥大、心不全、虚血性疾患、虚血性臓器不全(末端器官障害)、肺線維症、肝線維症、肝不全、高血圧誘発性、非高血圧誘発性及び糖尿病性腎症を含む腎症、腎不全、腎線維症、腎糸球体硬化症、臓器肥大、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群、血栓疾患、脳卒中、脳血管痙攣、脳虚血、疼痛、例えば神経障害性疼痛、神経変性、脊髄損傷、アルツハイマー病、早産、勃起機能不全、内分泌機能異常、動脈硬化症、前立腺肥大、糖尿病及び糖尿病合併症、代謝症候群、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、炎症、自己免疫疾患、AIDS、骨そしょう症などの骨疾患、細菌による消化管感染症、敗血症、がん発生及び進行、例えば乳房、結腸、前立腺、卵巣、脳及び肺のがん並びにそれらの転移を処置し及び/又は予防する、医薬の製造のための式(I)の化合物及び/又はそれらの製薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0117】
更なる実施態様では、本発明はまた、高血圧症、肺高血圧症、肝線維症、肝不全、腎症、腎不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳血管痙攣、疼痛、脊髄損傷、勃起機能不全、血管再狭窄、又はがんの発生及び進行の処置及び/又は予防のための式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0118】
更に、この発明は、有効な量の少なくとも一つの式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩と、製薬学的に許容される担体、すなわち、一つ又はそれより多い製薬学的に許容される担体物質(又はビヒクル)及び/又は添加剤(又は賦形剤)を含む医薬製剤(又は医薬組成物)に関する。
【0119】
この医薬は、経口的に、例えば、ピル、錠剤、ラッカー錠剤(lacquered tablets)、被覆錠、顆粒剤、ハード及びソフトゼラチンカプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤又はエアゾール混合物の形で投与することができる。しかしながら、投与はまた、直腸経由で、例えば坐剤の形で、又は非経口的に、例えば静脈内、筋肉内若しくは皮下的に、注射用液剤若しくは注入用液剤、マイクロカプセル剤、インプラント剤若しくはロッド剤の形で、又は経皮的若しくは局所的に、例えば軟膏剤、液剤若しくはチンキ剤の形で、又は他の方法で、例えばエアゾール剤若しくは鼻スプレー剤の形で行うことができる。
【0120】
本発明による医薬製剤は、それ自体公知で当技術分野の当業者によく知られた方法で製造され、製薬学的に許容される不活性な無機及び/又は有機担体物質及び/又は添加物が式(I)の化合物及び/又はその(それらの)製薬学的に許容される塩及び/又はその(それらの)プロドラッグに加えて使用される。ピル、錠剤、被覆錠及びハードゼラチンカプセルを製造する場合は、例えば乳糖、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などを使用することが可能である。ソフトゼラチンカプセル及び坐剤の担体物質には、例えば脂肪、ワックス、半固体及び液体ポリオール、天然又は硬化油などがある。液剤、例えば注射用液剤、又は乳剤若しくはシロップ剤を製造する場合の好適な担体物質は、例えば水、生理食塩水、アルコール、グリセリン、ポリオール、ショ糖、転化糖、ブドウ糖、植物油などである。マイクロカプセル、インプラント剤又はロッド剤に好適な担体物質には、例えばグリコール酸と乳酸との共重合体がある。医薬製剤は、通常約0.5〜約90(質量)%の式(I)の化合物及び/又はそれらの製薬学的に許容される塩及び/又はそれらのプロドラッグを含む。医薬製剤中の式(I)の活性成分及び/又はその製薬学的に許容される塩及び/又はそのプロドラッグの量は、通常約0.5〜約1000mg、好ましくは約1〜約500mgである。
【0121】
式(I)の活性成分及び/又はそれらの製薬学的に許容される塩並びに担体物質に加えて、医薬製剤は、例えば増量剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、保存剤、甘味剤、着色剤、着香剤、芳香剤、増粘剤、希釈剤、緩衝物質、溶剤、可溶化剤、デポー効果を達成する物質、浸透圧を変化させる塩、コーティング剤又は抗酸化剤などの1つ又はそれより多い添加物を含むことができる。それらはまた、2つ又はそれより多い式(I)の化合物及び/又はそれらの製薬学的に許容される塩を含むこともできる。医薬製剤が2つ又はそれより多い式(I)の化合物を含む場合には、個々の化合物の選択は医薬製剤の特定の全体の薬理学的プロファイルを目的とすることができる。例えば、より短時間作用型の高度に効果のある化合物は、より低い効果の長時間作用型化合物と組み合わせることができる。式(I)の化合物における置換基の選択に関して許容される適応性によって、化合物の生物学的及び物理化学的特性に対して多くの制御が可能となり、すなわち、こうした所望の化合物の選択が可能となる。更に、少なくとも1つの式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩に加えて、この医薬製剤はまた、1つ又はそれより多い他の治療的又は予防的に活性を持つ成分を含むこともできる。
【0122】
式(I)の化合物を使用する場合は、用量は広い範囲内で変動可能であり、そして通例となっており、そして医師に知られているように、それぞれの個体の場合に個体の状態に適しているものでなければならない。それは、例えば、使用される具体的な化合物、処置するべき疾患の性質と重症度、投与様式と投与計画、又は急性若しくは慢性状態を処置するのか、あるいは予防を行なうのか否かに左右される。適切な投与量は、医学分野でよく知られている臨床手法を用いて確立することが可能である。一般的に、約75kgの体重の成人で所望の結果を達成するための1日用量は、約0.01〜約100mg/kgであり、好ましくは約0.1〜約50mg/kg、特に約0.1〜約10mg/kgである(各場合、体重1kg当りのmg)。1日用量は分割することができ、特に比較的大量投与の場合では、幾つかの、例えば2、3又は4回の部分投与に分割可能である。通常の通り、個体の反応次第であるが、指示された一日投与量から上方又は下方に逸脱することは必要でありうる。
【0123】
更に、式(I)の化合物は、例えば、置換基を導入すること又は官能基を修飾することによって式(I)の化合物から得られうる他の化合物、特に他の医薬活性を持つ成分の製造の場合の合成中間体として使用することができる。
【0124】
式(I)の化合物は、次の方法で製造することができる:
【0125】
一般式(I)の化合物は、適切に置換されたイソキノリンモイエティ及び適切に置換されたシクロアルキルアミンモイエティから製造することができる。
【0126】
6−位にカップリングのための有用な残基を持っている、(i)又は(ii)のようなイソキノリン及びイソキノロンは、例えば、Alvarez et al. Science of Synthesis 2005, 15, 661-838及び839-906中及び本明細書中で引用されている引例中で概説されている広範囲の様々な方法によって得ることができる。イソキノリンはまた、適切なイソキノリンを、過酸化水素又はメタクロロ過安息香酸のような酸化剤を加え、対応するN−オキシドに変換し、次にオキシ塩化リンのような塩素化剤によって対応する1−クロロ誘導体に変換させ、引き続いてメタノール中のナトリウムメトキシドのような塩基性条件下で塩素をアルコールに置換するか、又は、例えば、高温で酢酸中の酢酸アンモニウムで処理することによって対応する2H−イソキノロンに変換するように、文献、例えば、WO 2007/012421又はWO 2007/012422中に記載されている方法によってイソキノロンに変換することもできる。(ii)の6−位のヒドロキシル基は、合成の適切な段階で[例えば、対応する6−メトキシ誘導体を、塩化アルミニウム又は三臭化ホウ素のようなルイス酸で処理することから]遊離させることができるということが理解される。更に、2H−イソキノロンは、様々な方法によって[例えば、トルエン又はTHFのような適切な溶媒中、炭酸銀又はトリエチルアミンのような適切な塩基の存在下で、対応する2H−イソキノロンを臭化ベンジル又はヨウ化メチルのようなアルキル化剤と処理するか、あるいは、前記の2H−イソキノロンを、オキシ塩化リンのような塩素化剤と処理することによって1−クロロ誘導体に変換し、引き続いて、例えば、メタノール中のナトリウムメトキシドのような塩基性条件下で、塩素をアルコールに置換することによって]適切に保護された1−アルコキシイソキノロンに変換することができるということが理解される。残基R3、R4、R5、R7、及び/又はR8は、それぞれのイソキノリンまたはイソキノロンの合成の場合の出発物質中に組み込むこともできるし、又は適切なその後のステージで導入[例えば、臭素化または塩素化のようなハロゲン化、引き続いて、例えば、適切な触媒及びボロン酸、アミン又はアニリンのようなカップリング・パートナーを用い、鈴木(Suzuki)又は Hartwig Buchwaldカップリングのような文献中に十分先例のある方法によって前記ハロゲンを置換することによって]することもできる。
【0127】
シクロアルキルアミン置換イソキノリノン(v)の一つの可能な合成は、下記に例示的に述べられているが、この発明を限定するものではない。このシクロアルキルアミン置換イソキノリノン(例えば、化合物v)は、様々な方法によって合成することができる。次の一般的なスキーム1は、イソキノリノンにアクセスするいくつかの可能な方法を図解しているが、この発明を限定するものではない。
【0128】
【化22】

【0129】
例えば、例として、互いに独立して、水素、アルキル、アルコキシ又はハライド(halide)のような他の置換基である、R3、R4、R5、R7、及び/又はR8によって置換されている6−フルオロ−イソキノロン(i)は、適切なR11/R12によって置換されているアミノアルコール[上記において、R11/R12は、互いに独立して、例えば、水素、アルキル又は、例えば、Boc又はCbzのような保護基である]と、周囲〜100℃の範囲である温度でDBU、炭酸セシウムまたは水素化ナトリウムなどの塩基の存在下で反応させると、対応する誘導体(iv)を得ることができる。場合により、この変換は、合成の初期のステージでそれ以前に行なうことができる(例えば、適切な中間体を反応させることによって)。これは、塩基の存在下で適切に保護されたアルキル又はベンジルハロゲン化物との反応のように、適切な方法によってイソキノロンモイエティの窒素又は酸素上でイソキノロン保護が未保護である場合に必要となる可能性があるということが理解される。
【0130】
あるいは、このアミノアルコールは、テトラヒドロフラン又はトルエンのような適切な溶媒中、トリフェニルホスフィン及び、ジエチルアゾジカルボキシラート又はジイソプロピルアゾジカルボキシラートのようなジアルキルアゾジカルボキシラートを用いる光延反応(Mitsunobu reaction)を介して、適切な保護基Qで保護されているか、又は未保護である、(iii)のような化合物の中心炭素(carbon center)を持っているヒドロキシルを反転させて、(ii)のような6−ヒドロキシ−イソキノロンと結合することができる。
【0131】
次いでこうした方法を介して得られる(iv)のような生成物は、遊離されて、タイプ(v)の化合物が得られうるか、又は、適切なアミノ官能基(functionality)が存在す
る場合は、適切な溶媒中、そして分子篩のような水分吸着剤(water withdrawing agent)又は適切なオルトエステルの存在下、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤の存在下で適切なアルデヒド又はケトンと反応させることができる。このアミノ基は、例えば、Boc−基を酸性で除去するように、初期の工程で遊離する必要がありうる。更にアミノ基は、それをトリエチルアミン又はヒューニッヒ塩基のような塩基の存在下で、適切な酸塩化物と反応させることによるか、又はそれをトリエチルアミン又はヒューニッヒ塩基のような塩基及びEDC、PyBOP又はTOTUのようなカップリング剤の存在下で適切なカルボン酸と反応させることによってアシル化してもよい。
【0132】
保護されたイソキノロンを使用する場合は、使用される保護基の開裂が所望のイソキノロン(v)を遊離させるのに必要である。しかしながら、この遊離は、使用されるアルデヒド/ケトン及び使用される保護基の性質に依存するが、還元的アミノ化工程の前又は後に行なうことができる。
【0133】
(v)のようなイソキノロン誘導体は、遊離の塩基として、又は例えば、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩又はフマル酸塩のような様々な塩として得ることができる。得られるこの塩は、それらをイオン交換クロマトグラフィーに付すか、又は例えば、アルカリ水溶液処理、引き続いて例えば、メチルtert−ブチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル若しくはイソプロパノール/ジクロロメタン混合物のような適切な有機溶媒で抽出し、そして次に蒸発・乾固することにより、対応する遊離の塩基に変換することができる。
【0134】
例えば、(iii)のようなシクロアルキルアミンモイエティは、様々な方法を介して合成することができる。次の一般的なスキームによって、アミンにアクセスするいくつかの可能な方法が図解されているが、この発明を限定するものではない。このスキーム中に示されている例示的な化合物及びこのテキストに与えられている例示的試薬を適切な代替化合物又は試薬によって置き換えること、又は適宜、合成工程を削除するか若しくは加えることは、当技術分野の当業者の能力の範囲内である。
【0135】
シクロアルキルアミノアルコール(iii)の合成は、スキーム2中に例示的に述べられているが、この発明の置換基の範囲を限定することはない。
【0136】
シクロアルキルアミンモイエティ(iii)は、例えば、適切なジケトンからアクセスすることができ、このジケトンは、p−トルエンスルホン酸のような酸の存在下、エチレングリコールのような適切なジオールで処理することによってモノケタール化され、化合物(vi)が得られる。(vi)はまた、例えば、対応するジケタールを単一脱保護するか、又は適切なアルコール前駆体を対応するケトンに酸化[例えば、マンガン(mangane)若しくはクロム試薬又は超原子価ヨウ素試薬のような適切な酸化剤と反応させることによって]することによって得ることができるということが理解される。次いで(iv)は、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤の存在下、場合によりルイス酸の存在下で、アンモニア、ベンジルアミン又はエチルアミンのようなアミンと反応させることによって、タイプ(vii)のアミンに変換することができる。ケトン(viii)は、例えば、高温でアセトンと塩酸または酢酸水溶液のような酸性条件のもとで(vii)を処理することによって得ることができる。次いで、このケトンは、メタノール、エタノール又はTHFのような適切な溶媒中で水素化ホウ素ナトリウムのような適切な還元剤を用いて反応させることによって、アルコール(iii)に変換することができる。
【0137】
【化23】

【0138】
例えば、化合物(iii)のヒドロキシ官能基は、チオアセタートを用いて光延反応、引き続いて適切な塩基を用いて塩基性開裂を介してチオールに変換し、タイプ(x)のアミノモイエティに到達させることができる。次いでこうしたチオールは−有用な反応条件[例えば、(iii)のカップリングの場合、スキーム1中の上記に述べられているのと同様な方法]のもとで、適切なイソキノリノンにカップリングした後−リンカーユニットL=S−を有する式(I)の化合物を得るのに使用されるか、又は場合により、当技術分野の当業者に知られている方法を介して酸化されることもあり、この結果対応するスルホキシド及びスルホン(リンカーユニットL=SO及びSO2を有する式(I)の化合物を得る場合)になる。
【0139】
対応するアミンには、分子篩のような水分吸着剤又は適切なオルトエステルの存在下、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤の存在下で、適切なアミンを用い、化合物(viii)のようなケトンから出発して還元的アミノ化工程を介して到達することができる。
【0140】
【化24】

【0141】
このアミンのα−位に残基R9を導入する一つの選択は、(vi)のような適切に保護されたケトンを、適切な溶媒中でアンモニアのようなアミン源とアリルボランのような適切な有機金属試薬と反応させることである。別の選択は、保護されたアルコール(xii)を、2−メチル−2−プロパンスルフィンアミドのような試薬と反応させ、対応するスルフィミン(xiii)にし、これは更に、アリールリチウム又はグリニャール試薬のような適切な有機金属試薬と反応させると、タイプ(xiv)のアミンが得られ、次いでこれは更に誘導体化することができる。
【0142】
別の選択は、クルチウス(Curtius)反応によって、(xv)のようなケトモイエティ又は保護されたケトモイエティを含む二環又は多環の炭素環式の酸誘導体を構築することであり、例えば、まず、酸を、塩化スルフリル又は塩化チオニルのような塩素化剤での処理、次いで適切な溶媒中でアジ化ナトリウムのようなアジ化源との反応、引き続いて高温で前記の酸クロリドの反応によって、アシルアジドに変換すると、対応するイソシアネートが得られ、これをベンジルアルコールのような適切なアルコールで捕捉すると、対応するカルバマートによって保護されたアミンを得ることができる。化合物(xvi)は、その後更に変換することができる。
【0143】
【化25】

【0144】
一般的には、カップリング反応中で得られる生成物中に依然として存在しうる保護基は、次いで標準的な手順によって取り除くことができる。例えば、tert−ブチル保護基、特にアミノ基の保護形態であるtert−ブトキシカルボニル基は、脱保護することができ、すなわち、トリフルオロ酢酸との処理によってアミノ基に変換することができる。すでに説明したように、カップリング反応の後でもまた、官能基は、適切な前駆体基から生ぜしめることができる。加えて、式(I)の化合物の製薬学的に許容される塩又はプロドラッグへの変換は、その後でも、公知のプロセスによって行なうことができる。
【0145】
一般的には、式(I)の最終化合物又は中間体を含む反応混合物は、後処理され、そして生成物は所望により、当技術分野の当業者に知られている慣習的なプロセスによって精製される。例えば、合成された化合物は、結晶化、クロマトグラフィー又は逆相−高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)又は、例えば、化合物の大きさ、帯電又は疎水性をベースとした分離の他の方法などのよく知られている方法を用いて精製することができる。同様に、本発明の化合物をキャラクタライズするために、NMR、IR及び質量分析法(MS)などのよく知られている方法を用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0146】
実施例
次の実施例は、この発明の様々な実施態様を説明しており、この発明の一部である。
【0147】
1−ベンジルオキシ−7−クロロ−6−フルオロ−イソキノリン(1)
【化26】

7−クロロ−6−フルオロ−2H−イソキノリン−1−オン(WO 2007/012422に従って製造された;52.2g)を、THF(1L)中に溶解した。炭酸銀(145.5g)及びベンジルブロミド(40.6mL)を添加した後、この混合物を室温で終夜撹拌した。更に6.2mLのベンジルブロミドを加え、そしてこの混合物を70℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、この反応混合物を1Lの酢酸エチルを加えることによって希釈し、セライトを介してろ過した。このフィルターケーキを完全に洗浄し、有機層を蒸発させ、そしてシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘプタン:メチルtert−ブチルエーテル)に付すと、27.8gの表題化合物1が得られた。Rt=3.73分(方法1)。検出質量:288.1(M+H+)。
【0148】
1−ベンジルオキシ−6−フルオロ−7−メチルイソキノリン(2)
【化27】

6−フルオロ−7−メチル−2H−イソキノリン−1−オン(WO2007012421中の記載と同様に製造した、13.2g,mmol)を、テトラヒドロフラン(175mL)中に溶解した。炭酸銀(41.2g)を添加した後、ベンジルブロミド(15.3g)を滴下した。この混合物を終夜撹拌した。この混合物を70℃に加熱し、そして更に3mLのベンジルブロミドを加えた。加熱を更なる変換が観察されなくなるまで継続した。この混合物を酢酸エチル中に加え、セライトを介してろ過し、蒸発させ、そしてこの残留物をほんの少しの酢酸エチル中に加えた。形成された沈殿物をろ別すると、3.0gの(2)が得られた。母液を濃縮し、そしてシリカゲルクロマトグラフィーに付すと、更に8.6gの(2)が生じた。Rt=4.00分(方法2)。検出質量:268.1(M+H+)。
【0149】
4−アリル−4−アミノ−アダマンタン−1−オール(3)
【化28】

5−ヒドロキシ−2−アダマンタノン(3.0g,18.1mmol)を、メタノール中のアンモニアの溶液(7N,26mL,180mmol,10当量)中に溶解し、そして室温で15分間撹拌した。次いで、2−アリル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサ−ボロラン(5.4mL,28.9mmol,1.6当量)を滴下した。この反応混合物を室温で16時間撹拌し、その後揮発性物質を真空中で除去した。この残留物をメタノール中に2回加え、そして蒸発させ、次いで水から凍結乾燥すると4−アリル−4−アミノ−アダマンタン−1−オール(3)がジアステレオマーの混合物として得られた。Rt=1.05分、1.79分(方法2)。検出質量:270.3(M+H+)。
【0150】
4−プロピル−4−アミノ−アダマンタン−1−オール(4)
【化29】

メタノール(50mL)中の4−アリル−4−アミノ−アダマンタン−1−オール(3,3.6g,17.4mmol)溶液を50mgの10%パラジウム・活性炭で処理し、そしてこの混合物を水素雰囲気下(1atm)、室温で終夜撹拌した。この触媒をろ過により除去し、そしてこのろ液を真空中で蒸発させると、2.8gの表題化合物がジアステレオマー混合物(4)として得られた。Rt=0.21分、0.73分(方法3)。検出質量:210.2(M+H+)。
【0151】
2−メチル−プロパン−2−スルフィン酸[5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−アダマンタン−(2E)−イリデン]−アミド(5)
【化30】

テトラヒドロフラン(2.5mL)中の5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−アダマンタン−2−オン(1.00g,3.57mmol)の溶液に、チタン(IV)エトキシド(1.12mL,5.35mmol,1.5当量)及び2−メチル−2−プロパンスルフィンアミド(454mg,3.74mmol,1.05当量)を加えた。この結果生じた混合物を、還流下で、6時間、そして室温で16時間撹拌し、その後、急速に撹拌しながら等容量の飽和NaHCO3水溶液中に注ぎ、そしてセライトろ過した。このフィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し、この水層を分離し、そして酢酸エチルで2回抽出した。集められた有機層を、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下で濃縮すると、1.00gの表題化合物(5)が得られた。Rt=2.25分(方法3)。検出質量:384.3(M+H+)。
【0152】
2−メチル−プロパン−2−スルフィン酸[5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−フェニル−アダマンタン−2−イル]−アミド(6)
【化31】

ジエチルエーテル(10mL)中の2−メチル−プロパン−2−スルフィン酸[5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−アダマンタン−(2E)−イリデン]−アミド(5,1.50g,3.91mmol)の溶液を、−78℃にあらかじめ冷却したジエチルエーテル中のフェニルマグネシウムクロリドの0.5Mの溶液(17.2mL,8.60mmol,2.2当量)に滴下した。この反応溶液を室温に終夜暖めた。更に等量のフェニルマグネシウムクロリド(1.8M(ジエチルエーテル中),2.2mL)を加え、そしてこの反応混合物を更に2時間撹拌した。この反応物を0℃に冷却し、飽和Na2SO4水溶液を滴下することによってクエンチし、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下で濃縮した。この粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製すると、1.41gの表題化合物(6)がジアステレオマー混合物として生じた。Rt=5.19分(方法4)。検出質量:462.2(M+H+)。
【0153】
4−フェニル−4−アミノ−アダマンタン−1−オール(7)
【化32】

2−プロパノール(10mL)中の2−メチル−プロパン−2−スルフィン酸[5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−フェニル−アダマンタン−2−イル]−アミド(6)の溶液に、1N塩酸(5mL)を加え、そしてこの混合物を変換の完結が達成されるまで室温で時間撹拌した。この反応混合物をジエチルエーテルで洗浄し、この水相を真空中で濃縮し、そして凍結乾燥すると、676mgの4−フェニル−4−アミノ−アダマンタン−1−オール(7)のジアステレオマーの混合物がその塩酸塩として生じた。Rt=0.33分、0.85分(方法3)。検出質量:227.2(M−NH3+H+)。
【0154】
次の生成物が、7の合成の場合の記載と同様に、2−メチル−プロパン−2−スルフィン酸[5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−アダマンタン−(2E)−イリデン]−アミド(5)及びそれぞれのグリニャール試薬から出発して、ジアステレオマーの混合物としての塩酸塩として合成された。
【0155】
【表1】

【0156】
5−アミノ−アダマンタン−2−オール(14)の合成
a)4−オキソ−アダマンタン−1−カルボン酸メチルエステル(10)
【化33】

38mLの発煙硫酸を二つ口フラスコ内に入れ、そして60℃に暖めた。ギ酸(8.5ml)中に溶解した1.5gの5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンを、2時間にわたって滴下した。更に9mLのギ酸を2時間にわたって加え、そして撹拌を60℃で1時間、そして室温で終夜継続した。氷冷却下、この反応混合物を100mLの乾燥メタノール上に注ぎ、室温で2時間撹拌し、次に400mLの氷上に注いだ。この水層をジクロロメタンで3回抽出し、集められた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして蒸発・乾固すると、1.64gの所望の生成物が得られた。Rt=1.75分(5)。検出質量:209.2(M+H+)。
【0157】
b)4−オキソ−アダマンタン−1−カルボン酸(11)
【化34】

1.64gの4−オキソ−アダマンタン−1−カルボン酸メチルエステル(10)を、2M水溶液のLiOH/MeOH(1:1)4mL中に溶解し、そして室温で終夜撹拌した。更に5mlのMeOH/LiOH混合物を加え、そして撹拌を変換が完結するまで継続した。この反応混合物を酸性にし、そして酢酸エチルで3回抽出した。この有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして蒸発・乾固すると、1.4gの(11)が固形物として得られた。Rt=0.87分(方法3)。検出質量:195.2(M+H+)。
【0158】
c)(4−オキソ−アダマンタン−1−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(12)
【化35】

0.7gの4−オキソ−アダマンタン−1−カルボン酸(11)を、トルエンを加えて2回共蒸留し、そして5.5mLの乾燥トルエン中に溶解した。1.1mLのトリエチルアミンを加えた。0℃で0.9mLのジフェニルホスホリルアジドを滴下した。この混合物を室温に暖め、次いでこの混合物をあらかじめ加熱した浴(90℃)に入れた。この混合物をガスの発生が止まるまで(約1.5時間)加熱した。1.9mLのベンジルアルコールを加え、そして撹拌を100℃で継続した。この反応が完結した時、これを室温に冷却し、次いで酢酸エチルを加え、そしてこの混合物を1M炭酸ナトリウム水溶液で2回抽出した。この水層を酢酸エチルで抽出し、そして集められた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥しそして蒸発させた。この結果生じる油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル)に付すと、871mgの所望の生成物が得られた。Rt=1.40分(方法3)。検出質量:300.2(M+H+)。
【0159】
d)(4−ヒドロキシ−アダマンタン−1−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(13)
【化36】

865mgの(4−オキソ−アダマンタン−1−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(12)を、15mLのTHF中に溶解し、そして109mgの水素化ホウ素ナトリウムを0℃で加えた。撹拌を2時間継続し、次いでこの反応混合物を、2M HClを加えることによって酸性にした。この反応混合物を酢酸エチルで3回抽出し、そして集められた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして蒸発させた。この結果生じる油状物を、HPLC分離に付すと、463mgの所望の生成物が、119mgのシス誘導体(13a)と10mgのトランス誘導体(13b)と共に、シス/トランス混合物として得られた。13a:Rt=1.37分(方法3)。検出質量:302.3(M+H+)。13b:Rt=1.39分(方法3)。検出質量:302.3(M+H+);
【0160】
e)5−アミノ−アダマンタン−2−オール(14)
【化37】

113mgの(13a)を、13.5mLのメタノール中に溶解し、そして15mgの10%Pd・炭を加えた。水素雰囲気下で撹拌を、この反応が完結するまで3時間継続した。この触媒をろ別し、そしてこの結果生じる有機層を蒸発させると、63mgの所望の生成物が得られた。Rt=0.36分(方法3)。検出質量:168.2(M+H+)。
【0161】
同様な方法で、(13b)とシス/トランス混合物(13)を、脱保護することができ、カップリングの場合に用いられるそれぞれのアミノアルコール(14b及び14)が得られた。
【0162】
6−(4−アミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オンの合成(実施例1及び実施例2)
a)5−(1−ベンジルオキシ−7−クロロ−イソキノリン−6−イルオキシ)−アダマンタン−2−イルアミン(15)
【化38】

ジメチルアセトアミド(7mL)中の水素化ナトリウム(60%(鉱物油中),417mg,10.4mmol,3当量)の懸濁液に、ジメチルアセトアミド(7mL)中の4−アミノ−アダマンタン−1−オール(640mg,3.82mmol,1.1当量)の溶液を加えた。室温で60分間撹拌後、ジメチルアセトアミド(7mL)中の1−ベンジルオキシ−7−クロロ−6−フルオロ−イソキノリン(1,1.0g,3.48mmol)の溶液を加え、そして撹拌を室温でこの反応が完結に至るまで継続した。この反応を水(15mL)を加えてクエンチし、この反応混合物をジクロロメタンと2−プロパノール(3:1)の混合物で2回抽出した。集められた有機層を蒸発させ、水を加え、そしてこの混合物を凍結乾燥に付し、ジメチルアセトアミドの残存物を除去した。得られた粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(SiO2,0%→30%メタノール(ジクロロメタン中))によって精製すると、473mgの表題化合物がジアステレオマー混合物として生じた。Rt=1.35分,1.55分(方法3)。検出質量:435.2(M+H+)。
【0163】
b)6−(4−アミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン(実施例1及び実施例2)
【化39】

2−プロパノール(4mL)中の5−(1−ベンジルオキシ−7−クロロ−イソキノリン−6−イルオキシ)−アダマンタン−2−イルアミン(15、473mg)の溶液を、1N塩酸水溶液(2mL)で処理し、そして室温で変換の完結が観察されるまで撹拌した。この反応混合物を蒸発させ、そして水から2回凍結乾燥すると、385mgの粗生成物が生じた。分取HPLC及び1N HClと水からの凍結乾燥による精製により、10mgの純粋なジアステレオ異性体、実施例1及び11mgの実施例2がそのそれぞれの塩酸塩として、異性体の混合物としての更なる物質と共に得られた。実施例1:Rt=2.40分(方法4)。検出質量:345.1(M+H+);実施例2:2.38分(方法2)。検出質量:345.1(M+H+)。相対的立体化学は決定しなかった。
【0164】
次の実施例は、例えば、実施例1の場合の記載と同様な手順を用いて、それぞれのアミノアダマンタノール[これらは双方とも市販されており(実施例13の場合)、それらの合成は上記に述べられており(実施例3〜11及び14と15の場合)、あるいは上記に述べられているように合成された]と1−ベンジルオキシ−7−クロロ−6−フルオロ−イソキノリン(1)から塩酸塩として合成された。実施例16の場合には、1−ベンジルオキシ−7−メチル−6−フルオロ−イソキノリン(2)がイソキノリンビルディングブロックとして使用された。
【0165】
ジアステレオ異性体が合成の初期の段階で分離できなかった場合は、脱保護生成物を、それぞれ、分取HPLC及び1N HClと水からの凍結乾燥によって精製した。実施例14及び実施例15(シス/トランス混合物(13)から合成された)の場合には、工程a)におけるカップリングの後、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)によってO−ベンジル保護イソキノリノンとして、シス/トランス異性体を分離することが可能であった。実施例3〜10については、相対的立体化学は決定しなかった。
【0166】
【表2】

【0167】
【表3】

【0168】
【表4】

【0169】
(9−オキソ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナ−7−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(16)
【化40】

【0170】
a)無水アセトニトリル(55ml)中のトリエチルアミン(10.1ml,72mmol)と3,6−ジヒドロ−4−(1−ピロリジニル)−2H−チオピラン(12.9g,76mmol,Tetrahedron Asymmetry 1997, 1811-1820に記載されている手順に従って製造された)の混合物を、加熱・還流し、次いで乾燥アセトニトリル(42ml)中のエチル3−ブロモ−2−(ブロモメチル)プロピオナート(14.6g,53mmol)を45分間にわたって滴下した。この結果生じる反応混合物を更に1.5時間還流し、次いで室温に冷却し、その後、10%酢酸水溶液(5.2ml)を加えた。次いでこの混合物を1時間還流し、そして蒸発・乾固した。塩水をこの残留物に加え、この水相を酢酸エチルで抽出し、集められた有機抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、そして真空中で濃縮すると、9−オキソ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸エチルエステルが褐色油状物として生じた(15.5g)。
【0171】
b)0℃でTHF(55ml)/水(30ml)混合物中の9−オキソ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸エチルエステル(5g,22mmol)の溶液に、1N水酸化ナトリウム溶液(24ml,24mmol)を滴下した。この反応混合物を室温で終夜撹拌し、次いで60℃で1時間加熱し、その後THFを蒸発させた。残存する水層を酢酸エチルで洗浄し、1N HClを用いて酸性にし、この結果生じた沈殿物をろ過し、そして乾燥すると、9−オキソ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸(2.22g)が固形物として生じた。
【0172】
c)乾燥トルエン(20ml)中の9−オキソ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸(2.22g,11mmol)、トリエチルアミン(1.7ml,12mmol)及びジフェニルホスホリルアジド(2.6ml,12mmol)の混合物を、室温で2時間撹拌し、次いで更に2時間還流し、そして室温に冷却した。ベンジルアルコール(benzylic alcohol)(11.4ml,110mmol)を加え、この溶液を終夜還流し、そして蒸発・乾固した。水をこの残留物に加え、そしてこの水層を酢酸エチルで抽出した。集められた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮すると、粗生成物が得られた。この残留物を、シリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル1:1)によって精製すると、粗(9−オキソ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナ−7−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(16,4.5g)が生じた。。Rt=4.6分(方法6)、検出質量:306.1(M+H+)。
【0173】
(7−エンド(endo))−7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オール(17)
【化41】

【0174】
a)エタノール(172ml)中の(9−オキソ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナ−7−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(16,4.2g,13.7mmol)の溶液に、室温で水素化ホウ素ナトリウム(0.78g,20.6mmol)を分割添加した。この溶液を1時間撹拌し、その後、水素化ホウ素ナトリウム(0.2g,5mmol)を加えた。この反応混合物を2日間撹拌し、水素化ホウ素ナトリウム(0.340g,9mmol)の更なる部分を加え、そして撹拌を4時間継続した。次いでこの混合物を減圧下で濃縮し、そして冷却した水及びジクロロメタンをこの残留物に加えた。水相をジクロロメタンで抽出した後、集められた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。この粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル40:60)によって精製すると、9−ヒドロキシ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナ−7−イル)−カルバミン酸ベンジルエステルが白色固形物として生じた(0.84g)。
【0175】
b)6N HCl(0.3ml,1.8mmol)中の(9−ヒドロキシ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナ−7−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(0.19g,0.63mmol)の溶液を1時間還流した。次いでこの反応混合物を室温に冷却し、そしてトルエンと共蒸発させると、表題化合物がその塩酸塩として無色油状物で得られた(110mg)。検出質量:173(m/z,EI)。
【0176】
(7−エンド)−7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オール 3,3−ジオキシド(18)
【化42】

無水クロロホルム(28ml)中の9−ヒドロキシ−3−チア−ビシクロ[3.3.1]ノナ−7−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(17,工程a,1.5g,4.47mmol)の溶液に3−クロロ過安息香酸(1.54g,8.9mmol)を加えた。この結果生じる混合物を室温で終夜撹拌し、次いで3時間還流し、その後、3−クロロ過安息香酸(0.75g,4.3mmol)の更なる部分を加えた。この反応混合物を更に3時間還流し、次いで水上に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を亜硫酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、その後無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮すると、粗生成物が生じ、これは更に精製することなく次の工程で用いた。無水メタノール(170ml)中の得られた物質1.15gに、水酸化パラジウム(20%・活性炭,0.093g)を加えた。この反応混合物を水素雰囲気下(1バール)で、激しく4時間撹拌し、その後これをろ過した。水酸化パラジウム(0.47g)をろ液に加え、この結果生じた懸濁液を、水素雰囲気下(3バール)で1時間撹拌し、その後ろ過した。このろ液を真空中で濃縮すると、0.58gの表題化合物(18)がガム状物質として生じ、これは、更に精製することなく次の工程で用いた。Rt=0.40分(方法7)。検出質量:206(M+H+)。
【0177】
(7−エンド)−7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オール(19)
【化43】

1−(3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピロリジン(Tetrahedron Asymmetry 1997, 1811-1820中に公表されている手順に従って得られた)から出発して、表題化合物を、(7−エンド)−7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オール(17)の合成の場合に述べられている反応シークエンスと同様な方法で製造した。検出質量:157(m/z,EI)。
【0178】
次の実施例は、実施例01の場合の記載と同様な手順を用いて、それぞれのアミノアダマンタノール及び1−ベンジルオキシ−7−クロロ−6−フルオロ−イソキノリン(1)からの塩酸塩として合成された。このシス/トランス異性体は、工程a)のカップリングの後に、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)によって、O−ベンジル保護イソキノリノンとして分離された。
【0179】
【表5】

【0180】
【表6】

【0181】
トランス−1−アザ−スピロ[4.5]デカン−8−オール(20)
【化44】

メタノール(30mL)中の669mg(1.62mmol)の9−ベンジル−11−ヨード−1,4−ジオキサ−9−アザ−ジスピロ[4.2.4.2]テトラデカン(J. Bonjoch et al., Tetrahedron Lett. 2003, 44, 8387中に公表されている手順に従って1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカン−8−オンから出発して製造された)の溶液を、50mgの20%水酸化パラジウム・活性炭で処理し、この混合物を水素雰囲気下(1気圧)で、室温で終夜撹拌した。この触媒をろ過により除去し、そしてこのろ液を真空中で蒸発させると、粗9−ベンジル−1,4−ジオキサ−9−アザ−ジスピロ[4.2.4.2]テトラデカンが得られ、これをアセトンと6N塩酸水溶液(10mL)の1:1の混合物中に直接溶解し、そして室温で撹拌した。この反応が完結に至った後、この混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液上に注ぎ、そして酢酸エチルで2回抽出した。集められた有機部分を塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2,0%→100%酢酸エチル(ヘプタン中))により精製すると、180mg(0.74mmol)の1−ベンジル−1−アザ−スピロ[4.5]デカン−8−オンが得られ、これををエタノール(10mL)中に溶解し、そして0℃に冷却した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(14mg,0.37mmol,0.5当量)を加えた。この反応混合物をゆっくり室温に暖め、そして2時間撹拌し、その後濃縮し、そしてジクロロメタンと飽和重炭酸ナトリウム水溶液の間で分配した。この混合物を激しく15分間撹拌すると、その後相分離し、そしてこの水相をジクロロメタンで3回、ジクロロメタンと2−プロパノールの混合物(3:1)で2回抽出した。集められた有機相を真空中で濃縮すると、粗トランス−1−ベンジル−1−アザ−スピロ[4.5]デカン−8−オールが得られた。
【0182】
このアルコールを、酢酸(15μL)を含むエタノール(4mL)中に溶解し、15mgのパラジウム・炭(10%)で処理した。この混合物を水素雰囲気下(1気圧)で変換が完結するまで撹拌した。この触媒をろ別し、そしてこの反応混合物を蒸発・乾固し、次いで1N HCl及び水から順に凍結乾燥すると、粗表題化合物がその塩酸塩として得られた。Rt=0.17分(方法3)。検出質量:156.2(M+H+)。
【0183】
6−(1−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン(実施例22)
【化45】

6−(1−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン(実施例22)を、実施例1の場合に述べられている手順を用いて、トランス−1−アザ−スピロ[4.5]デカン−8−オール(20)及び1−ベンジルオキシ−7−クロロ−6−フルオロ−イソキノリン(1)から塩酸塩として合成した。Rt=2.01分(方法2)。検出質量:333.1(M+H+)。
【0184】
方法
【表7】

【0185】
【表8】

【0186】
〔発明の効果〕
Rhoキナーゼ阻害の決定
Rho−キナーゼ阻害を測定するために、IC50値を次のプロトコールによって決定した:
活性ヒト組み換え型ROCK II(N-terminal His6-tagged recombinant human ROCK-II residues 11-552)を、Millipore GmbH,Schwalbach,Germanyから購入した。このペプチド基質、Fluorescein−AKRRRLSSLRA−COOHは、JPT Peptide Technologies, Berlin, Germanyから得られた。アデノシン−5’−三リン酸(ATP)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(Hepes)、Brij−35、ジチオスレイトール(DTT)及びプルロニックF−68は、Sigma-Aldrich,Munich,Germanyから購入した。トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(Tris)、塩化マグネシウム、NaOH、1M HCl及びEDTAは、Merck Biosciences, Darmstadt, Germanyから得られた。“コンプリート”プロテアーゼインヒビターは、Roche Diagnostics, Mannheim,Germanyに起源した。試験化合物を、緩衝液1(25mM Tris−HCl、pH7.4、5mM MgCl2、2mM DTT、0.02%(w/v)BSA、0.01% プルロニックF−68及び3% DMSO)中で適切な濃度に希釈した。このROCK II酵素を、緩衝液2(25mM Tris−HCl、pH7.4、5mM MgCl2、2mM DTT及び0.02%(w/v) BSA)中で100ng/mLの濃度に希釈した。このペプチド基質及びATPを、緩衝液2中でそれぞれ、3μMと120μMの濃度に希釈した。2μlの化合物溶液を384ウェル小容量マイクロタイタープレート(Greiner, Bio-One, Frickenhausen, Germany)中で2μlの希釈酵素と混和し、そしてキナーゼ反応をペプチド基質及びATPを含んでいる2μlの溶液を加えて開始した。32℃で60分、インキュベーションした後、この反応を100mM Hepes−NaOH、pH7.4,0、015%(v/v) Brij−35、45mM EDTA及び0.227% チップコーティング試薬1(Caliper Lifescience Inc, Hopkinton, MA)を含む20μlの溶液を加えることによって停止させた。次いで基質ペプチドのリン酸化をPommereau et al (J. Biomol. Screening 9(5), 409-416, 2004)によって基本的に記載されているCaliper 3000 instrumentで検出した。分離条件は次のとおりであった:圧力−1.3psi,上流電圧−1562V,下流電圧−500V,サンプルシップ時間(sample sip time) 200ms。ポジティブコントロール(化合物の代わりに緩衝液1)及びネガティブコントロール(化合物の代わりに緩衝液1及びROCK IIの代わりに緩衝液2)を各プレートで並行して稼動した。
【0187】
次の生成物/化合物を、上記実施例で述べられているように得られたそれぞれの形態(塩又は遊離塩基)を用いて前記アッセイで試験し、そして次の活性が測定された。
【0188】
【表9】

【0189】
所与の活性は、次の様にIC50(pIC50)の10を底とする負の対数(negative decadal logarithm)として示されている。
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

〔式中、
1は、H、OH又はNH2であり;
3は、H、ハロゲン、CN、(C1−C6)アルキル、OH、NH2、又はNHR’であり;
4は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、(C1−C6)アルキル、R’、又は(C1−C6)アルキレン−R’であり;
5は、H、ハロゲン、CN、(C1−C6)アルキル、又はR’であり;
7は、H、ハロゲン、CN、(C1−C6)アルキル、O−(C1−C6)アルキル、R’、又はSO2−NH2であり;
8は、H、ハロゲン又は(C1−C6)アルキルであり;
6は、シクロアルキル環に結合する1個の(C1−C4)アルキレンであって、ここで、この(C1−C4)アルキレンは、シクロアルキル環の異なる炭素原子と第二の結合を形成して、二環式環系を形成する[上記において、二環式環系では、1個又は2個の炭素原子はO、N−R13、S、SO又はSO2から独立して選択される基によって置き換えられている]か;
又は、
m及びsが2である場合、mが3であり、そしてsが1である場合、又はmが4であり、そしてsが0である場合は、
6は、CH2−CH−(CH22[このCH2−CH−(CH22は、一つのCH2はシクロアルキル環に結合しており、そして二つの他のCH2は、シクロアルキル環の異なる炭素原子に結合している]であり、
そして、mが3であり、そしてsが3である場合は、
6は、シクロアルキル環の異なる炭素原子に結合している二つのメチレン基であり、
上記において、メチレン基又はCH2−CH−(CH22基は、シクロアルキル環の炭素原子に結合し、そして式
【化2】

(式中、Lは、任意の第二級又は第三級炭素原子に結合することができる)のアダマンタン系を形成し、
又は、
6は、R11及びN原子と一緒になって、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル[これは、シクロアルキル残基に、スピロ環式環系として結合して、
式:
【化3】

の残基を形成する]を形成し、
上記において、二環式環系又はアダマンタン系又は(C3−C8)ヘテロシクロアルキルを含む環系は、非置換であるか、又は場合によりR9によって置換されていることもあり;
9は、
R’、
OH、
ハロゲン、
(C1−C6)アルキル、
O−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−R’、
(C2−C6)アルケニル、
(C2−C6)アルキニル、
(C1−C6)アルキレン−O−R’、
(C1−C6)アルキレン−CH[R’]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)N[R’]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)O−(C1−C6)アルキル、
COOH、
C(O)O−(C1−C6)アルキル、
C(O)OR’、
C(O)(C1−C6)アルキル、
C(O)R’、
CONH2
C(O)−NH−(C2−C6)アルケニル、
C(O)−NH−(C2−C6)アルキニル、
C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
C(O)NHR’、
C(O)−NH(C1−C6)アルキレン−R’、
C(O)N[(C1−C6)アルキル]R’、
C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
C(O)−(C1−C6)アルキレン−R’、又は
C(O)O(C1−C6)アルキレン−R’であり;
11及びR12は、互いに独立して、
H、
R’、
(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−R’、
(C1−C6)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−O−R’、
(C1−C6)アルキレン−CH[R’]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)N[R’]2
(C1−C6)アルキレン−C(O)O−(C1−C6)アルキル、
C(O)O−(C1−C6)アルキル、
C(O)OR’、
C(O)(C1−C6)アルキル、
C(O)R’、
C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
C(O)NHR’、
C(O)N[(C1−C6)アルキル]R’
C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
C(O)−(C1−C6)アルキレン−R’、
C(O)O(C1−C6)アルキレン−R’、
又は
11及びR12は、それらが結合しているN原子と一緒になって(C3−C8)ヘテロシクロアルキルを形成し;
13は、H又は(C1−C6)アルキルであり;
nは、0、1、2、3又は4であり;
mは、1、2、3又は4であり;
sは、0、1、2、又は3であり;
Lは、O(CH2p、S(CH2p、S(O)(CH2p、SO2(CH2p、NH(CH2p、N(C1−C6)アルキル−(CH2p、N(C3−C6)シクロアルキル−(CH2p、又はN[(C1−C3)アルキレン−R’]−(CH2pであり;
pは、0、1、2、3又は4であり;
R’は,
(C3−C8)シクロアルキル、
(C5−C10)ヘテロアリール、
(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、
(C6−C10)アリールであり;
上記において,残基R3〜R13では、アルキル又はアルキレンは、非置換であるか、又は場合により、OH、OCH3、C(O)OH、C(O)OCH3、NH2、NHCH3、N(CH32、C(O)NH2、C(O)NHCH3又はC(O)N(CH32によって、1回又は複数回、置換されていることもあり;
上記において、残基R3〜R13では、シクロアルキル又はヘテロシクロアルキルは、非置換であるか、又は場合により、(C1−C6)アルキル、ハロゲン、OH、OCH3、C(O)OH、C(O)OCH3、NH2、NHCH3、N(CH32、C(O)NH2、C(O)NHCH3又はC(O)N(CH32によって、1回又は複数回、置換されていることもあり;
上記において、残基R3〜R13において、アルキル又はアルキレンは、非置換であるか、又は場合により、ハロゲンによって1回又は複数回、置換されていることもあり;
上記において、残基R3〜R13では、(C6−C10)アリール及び(C5―C10)ヘテロアリールは、非置換であるか、又は場合により、ハロゲン、OH、NO2、N3、CN、C(O)−(C1−C6)アルキル、C(O)−(C6−C10)アリール、C(O)OH、C(O)O(C1−C6)アルキル、C(O)NH2、C(O)NH(C1−C6)アルキル、C(O)N[(C1−C6)アルキル]2、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−NH(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−N[(C1−C6)アルキル]2、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、O−(C1−C6)アルキル、O−C(O)−(C1−C6)アルキル、PO32、SO3H、SO2−NH2、SO2NH(C1−C6)アルキル、SO2N[(C1−C6)アルキル]2、S−(C1−C6)アルキル、SO(C1−C6)アルキル、SO2−(C1−C6)アルキル、SO2−N=CH−N[(C1−C6)アルキル]2、SF5、C(NH)(NH2)、NH2、NH−(C1−C6)アルキル、N[(C1−C6)アルキル]2、NH−C(O)−(C1−C6)アルキル、NH−C(O)O−(C1−C6)アルキル、NH−SO2−(C1−C6)アルキル、NH−SO2−(C6−C10)アリール、NH−SO2−(C5−C10)ヘテロアリール、NH−SO2−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)−(C1−C6)アルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)O−(C1−C6)アルキル、N(C1−C6)アルキル−C(O)−NH−(C1−C6)アルキル]、(C6−C10)アリール、(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリール、O−(C6−C10)アリール、O−(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、(C1−C6)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、(C1−C6)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、O−(C1−C6)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、O−(C1−C6)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル{上記において、前記の(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、又は(C3−C8)シクロアルキルは、ハロゲン、OH、NO2、CN、O−(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキル、NH2、NH(C1−C6)アルキル、N[(C1−C6)アルキル]2、SO2CH3、C(O)OH、C(O)O−(C1−C6)アルキル、C(O)NH2、(C1−C6)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−O−(C6−C10)アリール、又はO−(C1−C6)アルキレン−(C6−C10)アリールから独立して選択される基によって、1〜3回置換されていてもよい}から独立して選択される基によって、1回又は複数回、置換されていることもあり;
又は
上記において、(C6−C10)アリールは、O−(C1−C4)アルキレン−O基によって隣接して置換され[このことによって5〜8員の環が、酸素原子が結合している炭素原子と一緒になって形成される];
そして
上記において、(C6−C10)アリール、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル基及び(C3−C8)シクロアルキル又はのアリール置換基は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル又はシクロアルキルからなる基によって更に置換されることはない〕
の化合物、それらの立体異性体及び/又は互変異性体形態及び/又はそれらの製薬学的に許容される塩。
【請求項2】
1がHであり、そして式(II):
【化4】

によって特徴付けられる、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
1がOHであり、そして式(IIIa):
【化5】

によって、
又は、式(IIIb):
【化6】

によって特徴付けられる、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
1がNH2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
3が、H、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、又はNHR’[上記において、(C1−C6)アルキル及びR’は、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
3がHである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
4が、H、ハロゲン、(C1−C6)アルキル又は(C1−C2)−フェニル[上記にお
いて、(C1−C6)アルキル又はフェニルは、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
4がHである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
5が、H、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、(C6−C10)アリール、又は(C5−C10)ヘテロアリール[上記において、(C1−C6)アルキル、(C6−C10)アリール、又は(C5−C10)ヘテロアリールは、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
5がHである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
7が、H、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、O−(C1−C6)アルキル、又はR’[上記において(C1−C6)アルキル又はR’は、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
7がクロロである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
8がHである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
9が、
R’、
OH、
ハロゲン、
(C1−C6)アルキル、
(C1−C8)ヘテロアルキル、
(C1−C6)アルキレン−R’、
(C2−C6)アルケニル、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−R’、
(C1−C6)アルキレン−C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
COOH、
CONH2
C(O)NH−(C1−C6)アルキル、
C(O)NHR’、
C(O)−NH−(C1−C6)アルキニル、
C(O)−NH(C1−C6)アルキレン−R’、又は
C(O)N[(C1−C6)アルキル]2
[上記において、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン又はR’は、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
9が、OH、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、R’、(C1−C6)アルキレン−R’、(C2−C6)アルケニル、COOH、CONH2、C(O)NH−(C1−C6)アルキル、C(O)NHR’、又はC(O)N[(C1−C6)アルキル]2
[上記において、アルキル、アルキレン及びR’は、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
9が、OH、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、COOH、CONH2、O−CH3、フェニル、(C1−C2)アルキレン−フェニル、(C3−C8)シクロアルキル
[上記において、アルキル、フェニル又は(C3−C8)シクロアルキルは、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
9が、アリル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロプロピルメチレン、イソプロピルオキシメチレン、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、フェニル又はベンジルである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
11及びR12は、互いに独立して、
H、
(C1−C6)アルキル、
(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C6−C10)アリール、
(C1−C6)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル、
C(O)NH−(C1−C6)アルキルであるか、
又は
11及びR12、は、それらが結合しているN原子と一緒になって(C3−C8)ヘテロシクロアルキル基を形成する
[上記において(C1−C6)アルキル、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C4)アルキレン、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、又は(C6−C10)アリールは、非置換であるか、又は置換されている]、請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
11は、H又は(C1−C6)アルキルであり、
そして
12は、
H、
(C1−C6)アルキル、
(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)シクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C5−C10)ヘテロアリール、
(C1−C4)アルキレン−(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、
(C1−C4)アルキレン−(C6−C10)アリール、又は
(C1−C4)アルキレン−O−(C1−C6)アルキル
[上記において(C1−C6)アルキル、(C3−C8)シクロアルキル、(C1−C4)アルキレン、(C5−C10)ヘテロアリール、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル、又は(C6−C10)アリールは、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
11はHであり、
そして
12は、H、(C1−C6)アルキル又は(C3−C8)シクロアルキル
[上記において、(C1−C6)アルキル又は(C3−C8)シクロアルキルは、非置換であるか、又は置換されている]である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
11及びR12が、Hである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
6で形成される二環式環が、
【化7】

[上記は、非置換であるか、場合によりR9によって置換されていることもある]の群から選択される、
請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
6で形成されるアダマンタンが、
【化8】

[上記は、非置換であるか、場合により残基R9によって置換されていることもある]から選択される、請求項1〜22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
6が、R11及びN原子と一緒になって、(C3−C8)ヘテロシクロアルキル[これは、シクロアルキル残基に、スピロ環式系として結合して、式:
【化9】

の残基を生じせしめる]を形成し、上記において、この(C3−C8)ヘテロシクロアルキルを含む環系は、非置換であるか、場合によりR9によって置換されていることもある、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
mが2であり、そしてsが2である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
mが3であり、そしてsが1である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
nが0である、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
Lが、S(CH2p、S(O)(CH2p、又はSO2(CH2pである、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
Lが、NH(CH2p又はN(C1−C6)アルキル)−(CH2pである、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
LがO(CH2pである、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
pが0である、請求項1〜30のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
6−(4−アミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アリル−4−アミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アミノ−4−プロピル−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アミノ−4−メチル−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アミノ−4−フェニル−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−アミノ−4−シクロプロピル−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(4−ベンジルアミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(3−アミノ−アダマンタン−1−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(5−アミノ−アダマンタン−2−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−(5−アミノ−アダマンタン−2−イルオキシ)−7−メチル−2H−イソキノリン−1−オン、
6−{[(7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、
6−{[(−7−アミノ−3−チアビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン
6−{[(7−アミノ−3−(ジオキソ−チア)ビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン 3,3−ジオキシド、又は
6−(1−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン
から成る群より選択される請求項1に記載の化合物、それらの立体異性体及び/又は互変異性体形態及び/又はそれらの製薬学的に許容されるその塩。
【請求項33】
シス−6−(5−アミノ−アダマンタン−2−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
トランス−6−(5−アミノ−アダマンタン−2−イルオキシ)−7−クロロ−2H−イソキノリン−1−オン、
6−{[(7−エンド,9−アンチ)−7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、
6−{[(7−エンド,9−シン)−7−アミノ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、
6−{[(7−エンド,9−アンチ)−7−アミノ−3−チアビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、
6−{[(7−エンド,9−シン)−7−アミノ−3−チアビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン、及び
6−{[(7−エンド,9−アンチ)−7−アミノ−3−(ジオキソ−チア)ビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル]オキシ}−7−クロロイソキノリン−1(2H)−オン 3,3−ジオキシド、
から成る群より選択される請求項1に記載の化合物、それらの立体異性体及び/又は互変異性体形態及び/又はそれらの製薬学的に許容されるその塩。
【請求項34】
医薬として使用するための請求項1〜33のいずれか1項に記載の式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項35】
医薬を製造するための請求項1〜33のいずれか1項に記載の式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【請求項36】
高血圧症、肺高血圧症、高眼圧症、網膜症、緑内障、末梢循環障害、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、冠動脈性心疾患、狭心症、心肥大、心不全、虚血性疾患、虚血性臓器不全(末端臓器障害)、肺線維症、肝線維症、肝不全、腎症、腎不全、腎線維症、腎糸球体硬化症、臓器肥大、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群、血栓疾患、脳卒中、脳血管痙攣、脳虚血、疼痛、神経変性、脊髄損傷、アルツハイマー病、早産、勃起機能不全、内分泌機能異常、動脈硬化症、前立腺肥大、糖尿病及び糖尿病合併症、代謝症候群、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、炎症、自己免疫疾患、AIDS、骨疾患、細菌による消化管感染症、敗血症又はがん発生及び進行の処置及び/又は予防のための請求項1〜33のいずれか1項に記載の式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【請求項37】
高血圧症、肺高血圧症、肝線維症、肝不全、腎症、腎不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳血管痙攣、疼痛、脊髄損傷、勃起機能不全、血管再狭窄、又はがん発生及び進行の処置及び/又は予防のための請求項1〜33のいずれか1項に記載の式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【請求項38】
有効量の請求項1〜33のいずれか1項に記載の式(I)の化合物及び/又はその製薬学的に許容される塩、製薬学的に許容される賦形剤及び担体、及び必要に応じて更に添加剤及び/又は他の活性成分を含んでなる医薬。

【公表番号】特表2011−525508(P2011−525508A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515170(P2011−515170)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004393
【国際公開番号】WO2009/156092
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】