説明

二次元コード読取装置および方法並びに生産システム

【課題】ワークこのワークに組み付ける部品に設けた二次元コードの読み取りを正確にかつ安定性よく行え、ひいては前記ワークに関する生産効率の向上を図れ、トレーサビリティーや工程管理等にも寄与する二次元コード読取装置および方法並びに生産システムを提供すること。
【解決手段】順次搬送するワーク1に組み付けられた部品に設けた二次元コード2を複数の画像フィルタリング条件にて読み取り、当該部品に予め割り当てた部品情報を取得する読み取り部3を備え、また、前記ワーク1に予め割り当てたワーク情報とこのワークに組み付けた部品の前記部品情報との照合を行う演算処理部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、順次搬送されるワークおよびこのワークに組み付けられる部品に設けられた二次元コードを読み取り、その読み取った情報が蓄積・管理されてトレーサビリティーや工程管理に用いられる二次元コード読取装置および方法並びに生産システムに関し、特に、一つのラインにおいて、工程系列や作業方法が類似している複数種の製品(車両用エンジン等の中間製品又は半製品も含む)を連続的に生産し、それらを混合して流すいわゆる混合品種ラインを有する自動車(部品)の製造工場等において用いて好適な二次元コード読取装置および方法並びに生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のワークの搬送および前記ワークに対する部品の組み付けや加工を行って複数種の製品を連続的に生産する生産ラインを備えた生産システムが従来より用いられており、例えば、前記生産システムを有する自動車(部品)の製造工場では、エンジン型式の識別等のために、図4に示すように、生産ラインを流れるワーク1としてのシリンダブロックの外面に二次元コード2を刻印または印刷し、この二次元コード2をCCDセンサ50によって読み取っている。
【0003】
ここで、前記二次元コード2は、正面視において四角形の二次元分布パターンによって情報を表す二次元シンボル(例えば、データマトリックスやQRコード等)である。
【0004】
そして、前記製造工場で扱う全てのシリンダブロックは同一素材(材料)から形成されており、また、前記二次元コード2は全てのシリンダブロックの加工面(外面)の同一位置に設けられているので、いずれの二次元コード2の表面においても光の反射の仕方がほぼ同様ないし同一となる。
【0005】
そのため、前記二次元コード2表面にて発生した反射光を安定性よく前記CCDセンサ50により読み取ることができるように、二次元コード2からの距離が一定となるようにCCDセンサ50を設置し、前記反射光の光量等を考慮したフィルタを使用して二次元コード2を読み取るようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−130884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来のCCDセンサ50を用いた二次元コードの読取方法では、シリンダブロックに設けた二次元コード2の読み取りは問題なく行えても、このシリンダブロックに組み付ける部品(例えば、クランク、ピストン、ヘッド、カム等)に設けた二次元コード2の読み取りを良好に行うことができないことがあった。
【0008】
すなわち、エンジンの種類によりシリンダブロックに組み付ける部品は機能が同一であっても材質が異なる場合があり、この場合、二次元コード2の表面における反射光の光量が違なるため、特定の材質以外の材質からなる部品の二次元コード2を殆ど読み取れず、その結果、読取不良として処理され生産ラインが停止するケースが頻発することとなっていた。
【0009】
また、シリンダブロックに組み付けた部品が正規の位置から若干傾いた状態となることもあり、この場合、二次元コード2表面における光の反射の仕方が変化するため、当該二次元コード2の読み取りが良好に行われず、やはり読取不良として処理されることとなる。
【0010】
さらに、型の違い等から各部品の寸法にばらつきがあり、それに伴って、CCDセンサ50から二次元コード2までの距離が変わる場合には、CCDセンサ50のピントが二次元コード2の表面に合わず、この場合にも、読取不良として処理されるという問題があった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ワークこのワークに組み付ける部品に設けた二次元コードの読み取りを正確にかつ安定性よく行え、ひいては前記ワークに関する生産効率の向上を図れ、トレーサビリティーや工程管理等にも寄与する二次元コード読取装置および方法並びに生産システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る二次元コード読取装置は、順次搬送するワークに組み付けられた部品に設けた二次元コードを複数の画像フィルタリング条件にて読み取り、当該部品に予め割り当てた部品情報を取得する読み取り部を備え、また、前記ワークに予め割り当てたワーク情報とこのワークに組み付けた部品の前記部品情報との照合を行う演算処理部を備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、上記二次元コード読取装置が、各ワークに組み付けた複数の部品間におけるそれぞれの部品情報の照合を行う演算処理部を備えていてもよい(請求項2)。
【0014】
さらに、上記二次元コード読取装置が、前記読み取り部が、前記二次元コードを撮像する撮像部を備え、この撮像部が移動して複数の部品の二次元コードを撮像するように、前記撮像部を移動させる移動装置を設けていてもよい(請求項3)。
【0015】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る生産システムは、請求項1〜3のいずれかに記載の二次元コード読取装置を備えている(請求項4)。
【0016】
他方、上記目的を達成するために、本発明に係る二次元コード読取方法は、順次搬送するワークに組み付けられる部品に設けた二次元コードを複数の画像フィルタリング条件にて読み取り、当該部品に予め割り当てた部品情報を取得し、また、前記ワークに予め割り当てたワーク情報とこのワークに組み付けた部品の前記部品情報とを取得して両情報の照合を行うと共に、各ワークに組み付けた複数の部品間におけるそれぞれの部品情報の照合を行うことを特徴としている(請求項5)。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、読み取り部において、複数の画像フィルタリング条件にて複数回にわたって二次元コードの読み取りを行うので、ワークに組み付ける部品の材質が異なったり、ワークに対する部品の組み付け状態が正規の状態からずれていたり、前記部品の寸法にばらつきがあっても、確実に当該部品に設けられた二次元コードの読み取りを行うことができ、生産ラインの停止等の発生を防止して効率の良い生産の実現を図ることができる二次元コード読取装置が得られる。
【0018】
また、請求項1、2に係る発明では、演算処理部においてワーク情報および部品情報をチェックすることにより、部品の組み付けミスや読み取りミス等を早期に発見して即時に解決を図ることができる。
【0019】
さらに、請求項3に係る発明では、前記移動装置を用いて撮像部を移動させることにより、撮像部の設置数を最小限に止めることができ、二次元コードのデータ収集を低コストで行うことが可能となる。
【0020】
そして、請求項4に係る発明では、上記の効果を奏する生産システムが得られる。
【0021】
また、請求項5に係る発明では、請求項1に係る発明と同様の効果を奏する二次元コード読取方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係る二次元コード読取装置(以下、読取装置という)の構成を概略的に示す説明図である。なお、図4において示したものと同一または同等の部材等については、同じ符号を付しその説明を省略する。
【0023】
まず、前記読取装置は、複数のワークの搬送および前記ワークに対する部品の組み付けや加工を行って複数種の製品を連続的に生産する生産ラインを備えた生産システムに設けられており、この生産システムとしては、例えば、前記生産ラインにおいて自動車用のエンジンを製品として生産するものが挙げられる。
【0024】
そして、図1に示すように、前記読取装置は、順次搬送されるワーク1(図2参照)に組み付けられた部品(図示していない)に設けた二次元コード2を複数の画像フィルタリング条件にて読み取り、当該部品に予め割り当てた部品情報を取得する読み取り部3を備えている。なお、図1においては、図面を見やすくするために、ワーク1およびこのワーク1に組み付けられた部品の図示を省略し、複数(例えば四つ)の前記部品にそれぞれ設けられた二次元コード2のみを示している。また、前記複数の画像フィルタリング条件としては、例えば、フィルタ無しの条件と、七つの互いに異なる画像フィルタリング条件との計八つの条件を用いることが考えられる。そして、例えば、得られた複数の画像情報のうちの最も鮮明な画像情報に基づいて前記部品情報を取得することができる。
【0025】
前記読み取り部3は、前記二次元コード2を撮像する撮像部4(例えばCCDセンサ)と、この撮像部4に電気的に接続されたリーダ(二次元リーダ)5とを備えている。そして、前記リーダ5は、図1に示すように、制御部6としてのPLC(Programmable Logic Controller)によって制御される。
【0026】
また、前記読取装置は、前記ワーク1に予め割り当てたワーク情報とこのワーク1に組み付けた部品の前記部品情報との照合を行うと共に、各ワーク1に組み付けた複数の部品間におけるそれぞれの部品情報の照合を行う演算処理部(例えばパソコン。図示していない)を備えている。ここで、前記ワーク情報としては、例えばワークの種類(例えばエンジンの種類や車種番号など)を示す情報が挙げられ、前記部品情報としては、例えば部品の製作番号(日付・連番)などを示す情報が挙げられる。なお、この実施の形態では、製作番号が同一の部品がないように構成してある。
【0027】
さらに、前記読み取り部3は、前記撮像部4が移動して複数の部品の二次元コード2を撮像するように、前記撮像部4を移動させる移動装置を有している。具体的に説明すると、図1に示すように、前記移動装置は、前記撮像部4をガイドするガイド部材7と、前記撮像部4に駆動力を付与する駆動部8としてのサーボモータとを備えている。そして、前記駆動部8は、駆動部用コントローラ9を介して前記制御部6によって制御される。
【0028】
次に、前記読取装置を用いた二次元コード読取方法(以下、読取方法という)について図2をも参照しながら説明する。ここで、図2は、前記読取装置の作動および読取方法を概略的に示す説明図である。まず、前記読取装置を有する生産システムでは、図2に示すように、前記ワーク1(図示例ではシリンダブロック)がパレット10上に保持された状態で生産ライン上を搬送される。そして、前記生産ラインの適宜の処理ステーション(図示していない)においてパレット10は停止し、この処理ステーションに設けられた情報読取装置(図示していない)および前記読取装置により、ワーク1に予め割り当てたワーク情報の読み取りとこのワーク1に組み付けた部品(例えばインジェクタ)の前記部品情報の読み取りとが行われる。
【0029】
ここで、前記ワーク情報の読み取りは、図2に示すように、パレット10に設けられ前記ワーク1についてのワーク情報を予め記憶している記録媒体11から、前記処理ステーションに設けられた情報読取装置によって読み取ることによって行われる。なお、前記記録媒体11および情報読取装置としては、種々のものを採用できるが、この実施の形態においては、前記記録媒体11はRFIDタグ(Radio Frequency Identification tag)であり、前記情報読取装置はRFIDタグとの間で非接触で情報の授受(通信)を行えるRFIDアンテナである。
【0030】
他方、前記部品情報の読み取りは、前記移動装置により移動する前記読取装置によって行われるのであり、図2には、ワーク1(シリンダブロック)の左右に四つずつ(計八つ)取り付けられた部品であるインジェクタ(図示していない)にそれぞれ設けられた二次元コード2を読み取る例を示している。すなわち、計二つの撮像部4,4は、それぞれ矢印X方向に移動し、各二次元コード2を読み取る際には停止するように構成されている。これにより、各部品(インジェクタ)に割り当てられた部品情報の読み取りが上記複数の画像フィルタリング条件にて行われることになり、読み取られた部品情報はそれぞれの二次元コードに割り振られた位置情報(例えば位置番号)とともにパラレルに演算処理部へと送信される。
【0031】
このとき、図3(A)に示すように、本実施の形態では、前記撮像部4として焦点距離の短い(例えば16mm)広角レンズを備えたものを採用しているので、図3(B)に示す焦点距離の長い望遠レンズタイプのものよりも、その読み取り深度が深くピント調節可能な幅dが大きくなっているので、前記部品(インジェクタ)の寸法にばらつきがあっても良好に撮像を行うことができる。なお、図3(A)および(B)において、Sは撮像対象とする面(例えば二次元コード2)である。
【0032】
上記のように、情報読取装置と読取装置とによって読み取り取得したワーク情報および部品情報は、それぞれ前記演算処理部へと送られる。そして、前記ワーク1に予め割り当てたワーク情報とこのワーク1に組み付けた部品の前記部品情報との照合を行う。詳述すると、まず、前記ワーク情報に基づいてリーダ5、制御部6または演算処理部に登録してある相対表から部品の品番を割り出し、この割り出した品番と、前記読取装置により読み取った品番を含む部品情報とを照合して、品番の違う部品が組み付けられていないかをチェックする(品番同一照合)。
【0033】
加えて、各ワーク1に組み付けた複数の部品間におけるそれぞれの部品情報の照合を行う。詳述すると、この実施の形態では、上述したように、各部品に割り当てた部品情報(製作番号)が互いに同一とならないように構成してあり、これらの各部品の部品情報を演算処理部において相互に照合することにより、仮に同一の部品情報(製作番号)があれば何らかのエラーがあったと判断することができる(製番相違照合)。また、前記読取装置により自動で部品情報の読み取りを行ったときに読取不良が生じると、作業者がハンディタイプの読取装置を用いて当該部品の二次元コード2を手動で読み取り、その情報を演算処理部へと送信(バックアップ)することになるが、この際に作業者が誤って読取不良が生じていない部品の二次元コード2を読み取ってしまうことも考えられる。しかし、このような人為ミスが発生した場合でも、上記製番相違照合を行うことにより、何らかのミスが発生したことを把握できるので、その時点ですぐに対応することが可能となる。
【0034】
上記の構成からなる読取装置および方法並びに生産システムでは、前記読み取り部3において、複数の画像フィルタリング条件にて複数回にわたって二次元コード2の読み取りを行うので、前記部品の材質が異なったり、前記ワーク1に対する前記部品の組み付け状態が正規の状態からずれていたり、前記部品の寸法にばらつきがあっても、確実に当該部品に設けられた二次元コード2の読み取りを行うことができ、生産ラインの停止等の発生を防止して効率の良い生産の実現を図ることができる。
【0035】
また、演算処理部においてワーク情報および部品情報をチェックすることにより、部品の組み付けミスや読み取りミス等を早期に発見して即時に解決を図ることができる。
【0036】
さらに、前記移動装置を用いて撮像部4を移動させることにより、撮像部4の設置数を最小限に止めることができ、二次元コード2のデータ収集を低コストで行うことが可能となる。
【0037】
また、撮像部4に広角レンズを使用したことにより、前記移動装置による移動の際に撮像部4が振動したり、前記部品の寸法のばらつきにより撮像部4から二次元コード2までの距離が画一的ではなくても、二次元コード2の読み取りを安定性良く行うことができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、種々に変形して実施することができる。例えば、前記記録媒体11を、RFIDタグに代えてバーコードとしてもよく、この場合、情報授受装置はバーコードリーダとすることができる。また、記録媒体11は、パレット10ではなくワーク1に直接設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次元コード読取装置の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】前記読取装置の作動および二次元コード読取方法を概略的に示す説明図である。
【図3】(A)は上記実施の形態における撮像部の構成を概略的に示す説明図、(B)は、従来の撮像部の構成を概略的に示す説明図である。
【図4】従来の二次元コード読取方法の構成を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ワーク
2 二次元コード
3 読み取り部
4 撮像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次搬送するワークに組み付けられた部品に設けた二次元コードを複数の画像フィルタリング条件にて読み取り、当該部品に予め割り当てた部品情報を取得する読み取り部を備え、また、前記ワークに予め割り当てたワーク情報とこのワークに組み付けた部品の前記部品情報との照合を行う演算処理部を備えたことを特徴とする二次元コード読取装置。
【請求項2】
各ワークに組み付けた複数の部品間におけるそれぞれの部品情報の照合を行う演算処理部を備えた請求項1に記載の二次元コード読取装置。
【請求項3】
前記読み取り部が、前記二次元コードを撮像する撮像部を備え、この撮像部が移動して複数の部品の二次元コードを撮像するように、前記撮像部を移動させる移動装置を設けた請求項1または2に記載の二次元コード読取装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の二次元コード読取装置を備えた生産システム。
【請求項5】
順次搬送するワークに組み付けられる部品に設けた二次元コードを複数の画像フィルタリング条件にて読み取り、当該部品に予め割り当てた部品情報を取得し、また、前記ワークに予め割り当てたワーク情報とこのワークに組み付けた部品の前記部品情報とを取得して両情報の照合を行うと共に、各ワークに組み付けた複数の部品間におけるそれぞれの部品情報の照合を行うことを特徴とする二次元コード読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−323459(P2007−323459A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154222(P2006−154222)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000191353)新明工業株式会社 (75)
【Fターム(参考)】