説明

二次元マッピング分析装置

【課題】ラインスキャン方式において、電子ビームの位置ずれを補正して正確な二次元マッピング画像を得る。
【解決手段】ビーム走査部により電子ビームで試料表面の所定の領域を走査して得られた二次元画像の1つを参照画像として記憶しておき、予め設定された本数のラインスキャンごとにビーム走査部を駆動させて二次元画像を得、参照画像記憶部に記憶されている参照画像と比較して電子ビームのズレ量を算出する。その算出されたズレ量に基づいて偏向レンズにより電子ビームの位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束電子ビームを試料に照射し、試料表面に対して相対的に二次元的に走査しながら試料上の所望の領域からのX線やオージェ電子などの信号を検出し、それを基にして二次元マッピング画像を得ることのできる分析装置、例えば透過型電子顕微鏡(以下、TEMとも称す)や走査型電子顕微鏡(以下、SEMとも称す)などの分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SEMやTEMで電子ビーム照射位置からのX線やオージェ電子により二次元マッピングを行なうための走査方法として、試料ステージを固定しておいて電子ビームを測定領域にわたって走査するビーム走査方式と、電子ビームを固定しておいて試料ステージを移動させるステージ走査方式の2つの方法がある。
【0003】
ビーム走査方式の場合、一般には、測定領域全域にわたる複数回の走査を繰り返し、その走査回分の面情報を積層して一枚の二次元マッピング情報を作成する方式が採用されている。電子ビーム走査方式で複数数回の繰返し走査を行なう測定時間中に測定装置周辺の温度や磁場などの環境状態が変化すると電子ビームの位置がずれ、積算したときの二次元マッピング画像が不正確なものとなることがある。そのため、この位置ずれを補正することが提案されている。その一例は、最初の1回目のビーム走査時に、試料上の走査領域のSEM像を基準像として記憶しておき、その後、所定回数のビーム走査のたびにSEM像を得て、それを比較対象像とする。そして、基準像と比較対象像との相互相関関数から比較対象像が基準像からどの方向にどれだけずれているかを求め、そのずれをなくすように電子ビームの位置を補正する(特許文献1参照。)。
(特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2000−106121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はビーム走査方式における複数回の繰返し走査による積算方式ではなく、ビーム走査方式又はステージ走査方式によるラインスキャン方式を採用するものである。ラインスキャン方式は、測定範囲のマッピング画像を得るために、複数回の面情報を得るための二次元走査を繰り返すのではなく、集束電子ビームが照射された試料照射部位をビーム走査方式又はステージ走査方式によりラインに沿って移動させて行なう線分析を各ラインについて1回ずつ行ない、このラインごとの線分析データを二次元的に合成して一枚の面画像を得る方式である。
【0005】
従来技術で行なっているように、ビーム走査方式で1回あたりの面情報を得る走査時間を短くして複数回の面画像を積算する方法は、1回あたりの走査時間が短いために微量成分で感度が低い場合は測定限界以下となるため測定できなくなる。そのため、積算する面画像の数を増やしても1回の走査で測定限界以下にある微量成分はマッピング像としては現れてこない。
【0006】
本発明が採用するような、ラインごとに1回ずつの線分析データを得て二次元マッピング画像を合成するラインスキャン方式は、走査速度を遅くすることにより測定限界を下げることができるという利点を備えている。その反面、この方法は、走査速度が遅くなるために、一枚の面画像を得るための走査の間に、温度や磁場などの環境条件の変化により電子ビームの位置ずれが生じるおそれがある。
【0007】
しかし、ラインスキャン方式では1枚の二次元マッピング画像を得るための走査が完了するまでの間に電子ビームの位置ずれが生じたかどうかを検知することは行なわれておらず、したがって電子ビームの位置ずれを補正することも行なわれていない。
本発明はラインスキャン方式において、電子ビームの位置ずれを補正して正確な二次元マッピング画像を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施例を示す図1を参照して概略的に示すと、本発明の分析装置は、試料2を載置するとともに試料表面に平行な平面内で試料2を二次元的に移動することのできる試料ステージ4、試料ステージ4上の試料2に集束電子ビーム6を照射する集束電子ビーム発生系8、試料2に照射される集束電子ビーム6を偏向する偏向レンズ10、集束電子ビーム6が照射された試料照射部位12から発生した第1信号(X線又はオージェ電子など)14を検出する第1検出器16、試料照射部位12が試料表面上を二次元的に相対的に移動するように試料照射部位12を移動させる走査機構18,24、及び試料照射部位12が走査されたときの第1信号14による二次元マッピング画像を作成する二次元マッピング画像作成部20を備えている。
【0009】
そして、走査機構として偏向レンズ10を介して集束電子ビーム6を二次元的に走査するビーム走査部24を備えている。走査機構は、二次元マッピング画像を作成するための試料照射部位の走査をラインごとに1回ずつの線分析データを得て二次元マッピング画像を合成するように行なうラインスキャン方法を実行するものである。
【0010】
この分析装置は、さらに、試料照射部位12から発生した第2信号(二次電子26又は反射電子28)を検出する第2検出器としての二次電子検出器28及び反射電子検出器29と、ビーム走査部24により集束電子ビーム6で試料表面の所定の領域を走査して得られた第2信号26による二次元画像を作成する二次元画像作成部30と、二次元画像作成部30により作成された二次元画像の1つを参照画像として記憶する参照画像記憶部32と、走査機構による二次元マッピング画像を作成するための予め設定された本数のラインの走査ごとに二次元画像を作成するためにビーム走査部24を駆動させる走査制御部34と、二次元画像作成部30により得られた二次元画像で参照画像以外のものを参照画像記憶部32に記憶されている参照画像と比較して集束電子ビーム6のズレ量を算出するズレ量算出部36と、ズレ量算出部36により算出されたズレ量に基づいて偏向レンズ10により集束電子ビーム6の位置を補正するビーム位置補正部38とを備えている。
【0011】
本発明は、ビーム走査方式によってもステージ走査方式によっても実現することができる。一般的にいって、ビーム走査方式とステージ走査方式は基本的に目的が異なる。ビーム走査方式は微小領域の面分析に適してはいるが、広い範囲の面分析は電子ビームによる照射位置と検出器との相対位置関係の変化が大きくなり、また、電子ビームが照射される位置が常に変化しているため、検出器に対する信号発生源の相対位置が常に変化しており、検出感度を一定にするのが容易でない。それに対し、ステージ走査方式は電子ビームによる照射位置と検出器との相対位置関係が常に固定されているため、広い領域での分析に適する。
【0012】
本発明をビーム走査方式の分析装置で実現する場合は、走査機構は二次元マッピング画像を作成するためのラインスキャンをビーム走査部24による集束電子ビーム6の走査により行なうものとなる。
【0013】
また、本発明をステージ走査方式の分析装置で実現する場合は、走査機構は試料ステージ4を二次元的に走査するステージ走査部18を備え、二次元マッピング画像を作成するためのラインスキャンを集束電子ビーム6を固定した状態での試料ステージ4の走査により行なうものとなる。
【0014】
二次元画像を作成するための予め設定されたラインスキャン本数は1〜数十本が適当である。1本のラインごとにビーム走査部24を駆動させて二次元画像を作成し参照画像と比較してズレ量を算出するようにすれば、集束電子ビーム6の位置を最も正確に補正することができるが、1枚の二次元マッピング画像を作成するための時間が長くなる。逆にその予め設定されたラインスキャン本数を多くするほど1枚の二次元マッピング画像を作成するための時間が短くてすむものの、集束電子ビーム6の位置補正の精度が低下する。ビーム走査部24を駆動させて二次元画像を作成するために予め設定するラインスキャン本数は、二次元マッピング画像を作成するのに要する時間と集束電子ビーム6の位置補正精度に対する要請を考慮して適当な本数に設定する。
【0015】
参照画像は集束電子ビーム6の位置補正の基準となるものである。参照画像の一形態は、二次元マッピング画像を作成するためのラインスキャン開始前にビーム走査部24を駆動させて作成した二次元画像である。この形態は、ステージ走査方式では二次元画像を取得するビーム走査領域がステージ走査領域よりも広い場合に適する。
【0016】
参照画像の他の形態は、二次元マッピング画像を作成するためのラインスキャンについての予め設定された本数のラインスキャンの前に取得した最新の二次元画像であり、それを参照画像として参照画像記憶部32に記憶されている参照画像を更新し、次に得られる二次元画像の参照画像とするものである。この形態は、ステージ走査方式では二次元画像を取得するビーム走査領域がステージ走査領域と同じあるか、それよりも狭い場合に適する。
【0017】
比較しようとする二次元画像と参照画像との比較は、それらの画像中の特徴的な1又は数個の画像を取り出し、それらの画像が二次元画像と参照画像で重なるように二次元画像をずらし、そのズレ量を集束電子ビーム6の位置補正量とする。
【0018】
第2信号(二次電子26又は反射電子27)により参照画像及びその後の二次元画像を作成する試料表面上の領域は、第1信号(X線又はオージェ電子など)14により二次元マッピング画像を作成する領域と、位置においても、大きさにおいても一致している必要はない。
第1信号14の例はX線又はオージェ電子である。第2信号の例は二次電子26又は反射電子27である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、ラインスキャン方式で二次元マッピング分析を行なう際に、ビーム走査部24により集束電子ビーム6で試料表面の所定の領域を走査して第2信号26又は27による二次元画像を作成してそのうちの1つを参照画像として記憶しておく。そして、予め設定された本数のラインスキャンごとにビーム走査部24を駆動させて二次元画像を得、それを参照画像記憶部32に記憶されている参照画像と比較して集束電子ビーム6のズレ量を算出するようにした。その結果、ラインスキャン方式でありながら、集束電子ビーム6の位置を補正することができ、正確な二次元マッピング画像を作成することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は一実施例を概略的に表わしたものである。この実施例は電子ビームにより照射された試料から発生するX線を検出して二次元マッピング分析を行なうものであり、同時に二次電子26によるSEM画像又は反射電子27によるBSE画像を取得できる機能をもったものである。
【0021】
真空排気される鏡筒1内に、試料ステージ4、ステージ走査部18、収束電子ビーム発生系8、偏向レンズ10、第1検出器としてのX線検出器16及び第2検出器としての二次電子検出器28が配置されている。
【0022】
収束電子ビーム発生系8は鏡筒1内の上方に配置され、電子発生源と収束レンズ系を含んでいる。収束電子ビーム発生系8の下方には試料ステージ4が配置され、試料ステージ4上には試料2が載置され、収束電子ビーム発生系8からの収束した電子ビーム6が試料2上に照射される。偏向レンズ10は電子ビーム6を挟む位置に配置されており、電子ビーム6を偏向させて走査する。
【0023】
X線検出器16は試料2上で電子ビーム6により照射された位置12から発生するX線14を検出するために試料2に向けて配置されている。二次電子検出器28は試料上の位置12から発生した二次電子を受ける位置に配置されている。
【0024】
ステージ4は試料表面が水平面内で二次元的に走査されるように、水平面内のX方向とY方向に移動することができる。ステージ走査部18はステージ4を移動させる機構であり、ステージ4と一体に設けられている。
【0025】
X線検出器16が取得したX線信号から二次元マッピング画像を作成するために二次元マッピング画像作成部20が設けられ、得られた画像は液晶表示装置などの表示部22に表示される。
偏光コイル10による電子ビームの走査を行なうためにビーム走査部24が設けられている。偏光レンズ10には、さらにビーム位置を補正するビーム位置補正部38も接続されている。ビーム走査部24とビーム位置補正部38はビーム走査系25を構成している。
【0026】
二次電子検出器28が検出した二次電子信号26から電子ビーム6の走査による二次元画像を作成するために、二次電子検出器28が二次元画像作成部30に接続されている。また、反射電子検出器29が検出した反射電子信号27から電子ビーム6の走査による二次元画像を作成するために、反射電子検出器29も二次元画像作成部30に接続されている。ステージ4上への試料2の載置後、二次元画像作成部30が作成した二次元画像を参照画像として記憶する参照画像記憶部32と、最新の二次元画像と参照画像記憶部32に記憶された参照画像とを比較して、その差から電子ビームのズレ量を算出するズレ量算出部36が設けられている。参照画像記憶部32に記憶された参照画像は、ビーム走査部24による電子ビーム走査によるラインスキャンの開始前もしくはステージ走査によるラインスキャンの開始前に取得した二次元画像、又は予め設定された本数のラインスキャンごとに取得する最新の二次元画像を参照画像として更新されたものである。
二次元マッピング画像作成部20、二次元画像作成部30、参照画像記憶部32及びズレ量算出部36はコンピュータからなる画像処理装置31内に構成されている。
【0027】
走査制御部34は、マッピング分析時にビーム走査部24により偏向レンズ10を介して電子ビーム6を走査し、又はステージ走査部18によりステージを移動させることにより、試料2上のビーム照射位置12をラインスキャンし、ズレ量を補正するときはビーム走査部24により偏向レンズ10を介して電子ビーム6を二次元的に走査し、ビーム位置を補正するときはズレ量算出部36に算出動作を起動する信号を送る。ズレ量算出部36の算出結果に基づいてビーム位置補正部38が偏向レンズ10により電子ビーム6の位置を補正する。
【0028】
次に、本実施例の動作について、さらに詳細に説明する。
(ビーム走査方式)
二次元マッピング分析を行なうときは、ビーム走査方式はステージ4が固定され、電子ビーム6がX方向のラインに沿って移動しつつX線検出器16により試料から発生するX線14を検出していく。次に電子ビーム6がX方向の元の位置にもどされ、Y方向の次のラインまでY方向に移動した後、X方向のラインに沿って移動しつつX線検出器16により試料から発生するX線14を検出していく。X方向のラインに沿った走査、すなわちラインスキャンは、各ラインについて1回ずつ行なわれる。ラインスキャンによる線分析を繰り返すことによって二次元マッピング画像を取得する。
【0029】
ラインスキャンの1ラインごと又は数ラインごとに、電子ビーム6を偏向レンズ10により二次元的に走査し、そのときの試料2から発生する二次電子26を二次電子検出器28で検出し、又は反射電子27を反射電子検出器29で検出する。電子ビームによる所定の範囲の二次元走査により二次元画像が取得される。取得された二次元画像がズレ量算出部36で参照画像記憶部32からの参照画像と比較され、両画像を重ね合わせたときのズレ量が算出される。そのズレ量に基づき、ビーム位置補正部38により偏光レンズ10を介して電子ビームの位置の補正が行なわれる。
【0030】
(ステージ走査方式)
二次元マッピング分析をステージ走査方式で実施するときは、電子ビーム6の位置が固定され、ステージ4がX方向のラインに沿って移動しつつX線検出器16により試料から発生するX線14を検出していく。次にステージ4がY方向の次のラインまでY方向に移動した後、ステージ4がX方向のラインに沿って移動しつつX線検出器16により試料から発生するX線14を検出していく。
ラインに沿った走査による線分析を繰り返すことによって二次元マッピング画像を取得する。
【0031】
図2に示されるように二次元マッピング画像を作成するためのステージ走査方式によるステージの走査領域が電子ビームによるビーム走査領域よりも小さい場合は、図3に示される動作を行ない、そうでない場合は図5に示される動作を行なう。
【0032】
まず、ステージの走査領域がビーム走査領域よりも小さい場合について説明する。
図3に示されるように、ビーム走査部24によりビーム走査領域についてビーム走査を行ない(ステップS1)、二次電子検出部28による二次電子の検出信号に基づいて二次元画像作成部30が二次元画像を作成する(ステップS2)。
【0033】
このビーム走査がステージの走査開始前である場合は、その二次元画像を参照画像として参照画像記憶部32に記憶させる(ステップS3,S4)。
その後、ステージ走査部18により1ライン部のステージ走査を行なって検出器16によりX線データを取得する(ステップS5)。ステージ走査を所定ライン数分行なったのち(ステップS7,S8,S5,S6,S7)、再び、ビーム走査を行なう(ステップS1)。ビーム走査により二次元画像を作成し(ステップS2)、今回は参照画像が常に記憶されているので、取得した二次元画像をズレ量算出部36で参照画像記憶部32からの参照画像と比較し、両画像を重ね合わせたときのズレ量を算出する(ステップS9,S10)。そのズレ量に基づき、ビーム位置補正部38により偏光レンズ10を介して電子ビームの位置の補正を行なう(ステップS11)。
【0034】
その後、同様にステージ走査を行ない、所定ライン数のステージ走査を行なうごとにビーム走査を行なって二次元画像を取り込み、参照画像と比較してズレ量の算出とズレ量補正を行なう操作を繰り返していく。
所定の走査領域全てのステージ走査を完了すると(ステップS8)、この試料についての分析完了となる。
【0035】
図4はこの動作時のビーム走査とステージ走査の関係を示したものである。(A)において、大きな枠40で示される領域はビーム走査領域であり、図3のステップS1でのビーム走査の際にはその領域40にわたってビーム走査を行ない、その領域内の二次元画像を作成する。二次元画像は例えば符号46として示される領域で作成する。
【0036】
一方、ハッチングで示された領域42はステージ走査を行なってマッピング用のX線信号をとりこむための領域である。電子ビームの初期位置は符号44で示される位置である。ビーム位置44は外部の影響でずれることがあるので、この位置のズレを補正するのが本発明である。ステージ走査はステージがX方向に移動することにより試料上のビーム位置がaで示されるようにX方向とは反対方向に試料に対して相対的に移動し、Y方向に順次移動することによって走査領域42内をビームが相対的に移動するように走査を行なう。
【0037】
符号46で示された領域の画像が二次元画像として取得され、最初のものが参照画像として記憶される。この二次元画像の中にある特徴的なパターンが比較対象となり、その後の二次元画像と重ね合わせたときのズレ量によりビーム位置44を補正する。
【0038】
ステージ走査が進むと、図4(B)のように、試料が移動していくことに伴い、マッピング画像収集領域42はb方向に移動していく。それに伴ってビーム位置を修正するための二次元画像を取得する領域46もb方向に移動していく。領域46の画像を参照画像と比較するときは参照画像のY方向の座標をずらしたうえで両画像を重ねて、ズレ量を求める。マッピング画像を収集するための領域42はビーム走査領域40よりも小さいため、参照画像と比較する二次元画像領域46は常に観察することができ、ステージの移動に合わせて見込みの移動量との相関からズレ量を求めてビーム位置44を補正する。
【0039】
次に、図2に戻ってステージの走査領域がビーム走査領域と同じであるかそれよりも大きい場合、図5のフローに従って動作する。
図5に示されるように、ビーム走査部24によりビーム走査領域についてビーム走査を行ない(ステップS21)、二次電子検出部28による二次電子の検出信号に基づいて二次元画像作成部30が二次元画像を作成する(ステップS22)。
【0040】
このビーム走査がステージの走査開始前である場合、その二次元画像を参照画像として参照画像記憶部32に記憶させる(ステップS23,S24)。
その後、ステージ走査部18により1ライン部のステージ走査を行なって検出器16によりX線データを取得する(ステップS25)。ステージ走査を所定ライン数分行なったのち(ステップS27,S28,S25,S26,S27)、再び、ビーム走査を行なう(ステップS21)。ビーム走査により二次元画像を作成し(ステップS22)、今回は参照画像が常に記憶されているので、取得した二次元画像をズレ量算出部36で参照画像記憶部32からの参照画像と比較し、両画像を重ね合わせたときのズレ量を算出する(ステップS29,S30)。そのズレ量に基づき、ビーム位置補正部38により偏光レンズ10を介して電子ビームの位置の補正を行なう(ステップS31)。
【0041】
その後、いま取得した二次元画像により参照画像記憶部32に記憶されている参照画像を更新した後(ステップS32)、その後、同様にステージ走査を行ない、所定ライン数のステージ走査を行なうごとにビーム走査を行なって二次元画像を取り込み、参照画像と比較してズレ量の算出とズレ量補正を行ない、最新の二次元画像により参照画像記憶部32に記憶されている参照画像を更新する操作を繰り返していく。
所定の走査領域全てのステージ走査を完了すると(ステップS8)、この試料についての分析完了となる。
【0042】
図6はこの動作時のビーム走査とステージ走査の関係を示したものである。(A)において、ビーム走査領域40はマッピング画像を収集するための領域42よりも小さいものとする。
【0043】
ステージ走査によりラインスキャンを実行していくと、ステージは徐々に矢印の方向へ移動する。電子線ビームの二次元走査により観察できる領域はステージが移動しても変わらない。いま、ステージがLの距離だけ移動したとすると、移動前の(A)に示されるビーム走査領域40は移動後には(B)に示されるビーム走査領域40aとなる。ビーム走査領域40aはビーム走査領域40と同じ大きさであるが、試料は距離Lの分だけ移動したものとなる。ステージ移動前のビーム走査領域40の画像と、移動後のビーム走査領域40aの画像とにおいて、移動前後で両画像40,40aでの重なり部分43と予想される画像を重ね合わせてズレ量を算出する。重なり部分43は移動量Lがわかっているので、画像の座標をシフトさせることにより計算により求めることができる。ビーム位置ズレがあったときは、ビーム中心を補正してビーム走査領域40aの画像を位置ズレ補正した新たな画像40bとし、これを新たな参照画像として参照画像記憶部32の参照画像を更新し、次のビーム走査領域の二次元画像の参照画像とする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一実施例を概略的に示すブロック図である。
【図2】同実施例の動作の開始部を示すフローチャートである。
【図3】同実施例の動作の一形態を示すフローチャートである。
【図4】同形態における走査領域の移動を示す概念図である。
【図5】同実施例の動作の他の形態を示すフローチャートである。
【図6】同形態における走査領域の移動を示す概念図である。
【符号の説明】
【0045】
1 鏡筒
2 試料
4 試料ステージ
6 電子ビーム
8 収束電子ビーム発生系
10 偏向レンズ
12 電子ビーム照射位置
16 X線検出器
18 ステージ走査部
20 二次元マッピング画像作成部
22 表示部
24 ビーム走査部
25 ビーム走査系
26 二次電子信号
28 二次電子検出器
30 二次元画像作成部
31 画像処理装置
32 参照画像記憶部
36 ズレ量算出部
38 ビーム位置補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ステージ上の試料に集束電子ビームを照射する集束電子ビーム発生系、試料に照射される集束電子ビームを偏向する偏向レンズ、集束電子ビームが照射された試料照射部位から発生した第1信号を検出する第1検出器、前記試料照射部位が試料表面上を相対的に二次元的に移動するように試料照射部位を移動させる走査機構、及び前記試料照射部位が走査されたときの第1信号による二次元マッピング画像を作成する二次元マッピング画像作成部を備えた分析装置において、
前記走査機構は前記偏向レンズを介して前記集束電子ビームを二次元的に走査するビーム走査部を備えるとともに、二次元マッピング画像を作成するための前記試料照射部位の走査をラインごとに1回ずつの線分析データを得て二次元マッピング画像を合成するように行なうラインスキャン方法を実行するものであり、
該分析装置は、さらに
前記試料照射部位から発生した第2信号を検出する第2検出器と、
前記ビーム走査部により前記集束電子ビームで試料表面の所定の領域を走査して得られた第2信号による二次元画像を作成する二次元画像作成部と、
前記二次元画像作成部により作成された二次元画像の1つを参照画像として記憶する参照画像記憶部と、
前記走査機構による二次元マッピング画像を作成するための予め設定された本数のラインの走査ごとに前記二次元画像を作成するために前記ビーム走査部を駆動させる走査制御部と、
前記二次元画像作成部により得られた二次元画像で参照画像以外のものを前記参照画像記憶部に記憶されている参照画像と比較して前記集束電子ビームのズレ量を算出するズレ量算出部と、
前記ズレ量算出部により算出されたズレ量に基づいて前記偏向レンズにより前記集束電子ビームの位置を補正するビーム位置補正部と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記走査機構は二次元マッピング画像を作成するためのラインスキャンを前記ビーム走査部による前記集束電子ビームの走査により行なうものである請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記走査機構は前記試料ステージを二次元的に走査するステージ走査部を備え、二次元マッピング画像を作成するためのラインスキャンを前記集束電子ビームを固定した状態での前記試料ステージの走査により行なうものである請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記参照画像記憶部に記憶する参照画像は、二次元マッピング画像を作成するためのラインスキャン開始前に取得した二次元画像である請求項1から3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
前記参照画像記憶部に記憶する参照画像は、二次元マッピング画像を作成するためのラインスキャンについての前記予め設定された本数のラインスキャンの走査の前に取得した最新の二次元画像である請求項1から3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
前記第1信号はエックス線である請求項1から5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
前記第1信号はオージェ電子である請求項1から5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
前記第2信号は二次電子である請求項1から7のいずれかに記載の分析装置。
【請求項9】
前記第2信号は反射電子である請求項1から7のいずれかに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−39439(P2008−39439A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210429(P2006−210429)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】