二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュール
【課題】大電流充放電特性を有する二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールを提供する。
【解決手段】二次電池は、電池素子と、電池素子を外装する外装材とを備える。電池素子は、正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが0.5<(wc/Wc)≦1.0の関係を満たすように正極集電体上に正極活物質層が設けられている正極と、負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが0.5<(wa/Wa)≦1.0の関係を満たすように負極集電体上に負極活物質層が設けられている負極と、交互に積層される正極と負極との間に介在するセパレータと、正極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された正極タブと、負極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された負極タブとを備える。
【解決手段】二次電池は、電池素子と、電池素子を外装する外装材とを備える。電池素子は、正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが0.5<(wc/Wc)≦1.0の関係を満たすように正極集電体上に正極活物質層が設けられている正極と、負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが0.5<(wa/Wa)≦1.0の関係を満たすように負極集電体上に負極活物質層が設けられている負極と、交互に積層される正極と負極との間に介在するセパレータと、正極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された正極タブと、負極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された負極タブとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールに関する。詳しくは、大電流充放電特性を有する二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラー体型VTR(Video Tape Recorder)、携帯電話機、パーソナルコンピュータなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。そしてこれらの電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池について、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。
【0003】
非水電解液を用いた二次電池、中でも、リチウムイオン二次電池は、従来の水溶液系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、市場も著しく成長している。とりわけ近年、リチウムイオン二次電池の軽量、高エネルギー密度という特徴が電動工具、電気自動車やハイブリッド電気自動車および電動アシスト自転車の用途に適することから、それらの車両用として用いるために更なる大型化、高出力化を目指した検討が盛んとなっている。
【0004】
リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、通常、セパレータを介して積層された複数の正極および負極と、その正極および負極にそれぞれ接続されたタブとから構成されている。そして、通常、タブ、および、タブと正極(負極)の間に介在する正極端子(負極端子)は、正極(負極)の幅と比べて細く形成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−178747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次電池の高出力化を図るためには、二次電池が大電流充放電特性を備えることが必要となる。しかし、特許文献1に記載されたような、正極および負極の幅に比べて細く形成されたタブまたは端子を備える二次電池では入出力する電流量が制限されてしまい、大電流の入出力に対応することができない。したがって、そのような構成を採用した二次電池では高出力化を図ることに限界がある。
【0007】
したがって、この発明の目的は、大電流充放電特性を有する二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、電池素子を外装する外装材とを備え、
電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが以下の式(1)を満たすように正極集電体上に正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが以下の式(2)を満たすように負極集電体上に負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される正極と負極との間に介在するセパレータと、
正極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された正極タブと、
負極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された負極タブと
を備える二次電池である。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(1)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(2)
【0009】
第2の発明は、
一組の二次電池と、
一組の二次電池の外周側面を囲う外周壁部が形成された支持体と
を備え、
一組の二次電池がそれぞれ、支持体の正面側および背面側から外周壁部内に挿入されており、
二次電池は、厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、電池素子を外装する外装材とを備え、
電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが以下の式(7)を満たすように正極集電体上に正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが以下の式(8)を満たすように負極集電体上に負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される正極と負極との間に介在するセパレータと、
正極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された正極タブと、
負極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された負極タブと
を備えるバッテリユニットである。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(7)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(8)
【0010】
第3の発明は、
複数のバッテリユニットを備え、
バッテリユニットは、
一組の二次電池と、
一組の二次電池の外周側面を囲う外周壁部が形成された支持体と
を備え、
一組の二次電池がそれぞれ、支持体の正面側および背面側から外周壁部内に挿入されており、
二次電池は、厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、電池素子を外装する外装材とを備え、
電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが以下の式(9)を満たすように正極集電体上に正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが以下の式(10)を満たすように負極集電体上に負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される正極と負極との間に介在するセパレータと、
正極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された正極タブと、
負極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された負極タブと
を備えるバッテリモジュールである。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(9)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(10)
【0011】
本発明を構成する電池素子は、厚みが3mm以上20mm以下であり、放電容量が3Ah以上50Ah以下である。電池素子の厚みが3mm未満であると、電池全体の体積中に電池素子の占める割合が低下し、体積エネルギー密度が低下する。また、電池素子の厚みが20mmを超えると、電池素子の放熱性が低下し、充放電を繰り返すサイクル寿命が低下するおそれがある。放電容量が3Ah未満であると、上記の構造をとることなくレート特性が確保される。
【0012】
さらに、正極は、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが以下の式(1)を満たすように形成されるとともに、負極は、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが以下の式(2)を満たすように形成されるので、大電流の入出力が可能となる。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(1)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(2)
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば大電流の入出力が可能となるため、二次電池のさらなる高出力化が可能となる。したがって、例えば、複数組み合わせることにより高出力を要求する電気自動車やハイブリッド電気自動車用の二次電池などとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池の一構成例を示す外観斜視図であり、図1Bは、二次電池の構成を示す略線図であり、図1Cは、二次電池の外観底面側を示す外観斜視図であり、図1Dは、外装材により外装される電池素子の側面図である。
【図2】図2Aおよび図2Bは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池に用いられる正極の構成例を示す略線図であり、図2Cおよび図2Dは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池に用いられる負極の構成例を示す略線図である。
【図3】図3A〜図3Eは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池に用いられる正極タブおよび負極タブの構成例を示す略線図である。
【図4】図4A〜図4Cは、正極タブと正極集電体露出部との接続状態を示す部分拡大図である
【図5】図5Aは、正極集電体露出部と正極タブの接続状態を示す略線図であり、図5Bは、負極集電体露出部と負極タブの接続状態を示す略線図である。
【図6】図6Aは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池の外観斜視図であり、図6Bおよび図6Cは、図6AにおけるVI−VI断面図であり、図6Dは、シーラントの設置状態を示す電池素子の側面図である。
【図7】図7A〜図7Fは、インシュレータの構成例を示す略線図である。
【図8】図8Aは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池における正極、負極およびセパレータの積層構造を示す略線図であり、図8Bは、正極、負極およびセパレータの積層構造を示す平面図である。
【図9】図9A〜図9Fは、二次電池の製造工程の概略を示す略線図である。
【図10】図10A〜図10Fは、二次電池の製造工程の概略を示す略線図である。
【図11】図11A〜図11Eは、集電体露出部の折り曲げ部形成工程を示す略線図である。
【図12】図12A〜図12Eは、集電体露出部の切断工程を示す略線図である。
【図13】図13A〜図13Cは、タブ接続工程を示す略線図である。
【図14】図14A〜図14Eは、タブおよび集電体露出部の折り曲げ部形成工程を示す略線図である。
【図15】図15Aは、本発明の第2の実施形態に係る二次電池における正極、負極およびセパレータの積層構造を示す略線図であり、図15Bは、正極、負極およびセパレータの積層構造を示す側面図である。
【図16】図16Aおよび図16Bは、正極、負極およびセパレータの積層構造の変形例を示す略線図である。
【図17】図17Aは、本発明の第3の実施形態に係る負極とセパレータの積層構造を示す略線図であり、図17Bは、本発明の第3の実施形態に係る二次電池における正極、負極およびセパレータの積層構造を示す略線図であり、図17Cは、正極、負極およびセパレータの積層構造を示す側面図である。
【図18】図18Aは、本発明の第3の実施形態に係る二次電池における正極、負極およびセパレータの積層構造の変形例を示す略線図であり、図18Bは、図18Aにおける矢視図である。
【図19】図19Aおよび図19Bは、本発明に係る二次電池を適用したバッテリユニットの構成例を示す斜視図である。
【図20】図20は、バッテリユニットが分解された状態を示す斜視図である。
【図21】図21は、バッテリユニットが組み合わされたバッテリモジュールの構成例を示す図である。
【図22】図22は、並列ブロックの端子の向きを説明する図である。
【図23】図23Aは、並列ブロックの挿入向きの間違いを防止する工夫について説明するためのモジュールケースの略線図であり、図23Bは、並列ブロックの挿入向きの間違いを防止する工夫について説明するための並列ブロックの略線図である。
【図24】図24Aは、並列ブロックの挿入向きの間違いを防止する工夫について説明するためのモジュールケースの略線図であり、図24Bは、並列ブロックの挿入向きの間違いを防止する工夫について説明するためのバッテリユニットの略線図である。
【図25】図25Aは、本発明の第4の実施形態に係る二次電池の外観の一例を示す斜視図である。図25Bは、電池素子の構成の一例を示す斜視図である。図25Cは、電池素子の構成の一例を示す分解斜視図である。
【図26】図26Aは、正極タブの形状の一例を示す斜視図である。図26Bは、負極タブの形状の一例を示す斜視図である。
【図27】図27A〜図27Dは、正極タブの第1〜第4の形状例を示す斜視図である。
【図28】図28A〜図28Cは、正極タブの第5〜第7の形状例を示す斜視図である。
【図29】図29A〜図29Cは、正極タブの作製方法の第1の例を示す工程図である。
【図30】図30A〜図30Cは、正極タブの作製方法の第2の例を示す工程図である。
【図31】図31は、正極集電体露出部と正極タブとの接合部を拡大して表す斜視図である。
【図32】図32A〜図32Dは、絶縁部材の形状例を示す斜視図である。
【図33】図33A〜図33Cは、正極タブと電池素子とを絶縁する絶縁部材としてセパレータを使用した第1〜第3の例を示す断面図である。
【図34】図34Aは、インシュレータの形状の第1の例を示す斜視図である。図34Bは、インシュレータの形状の第1の例を示す分解斜視図である。
【図35】図35Aは、インシュレータの形状の第2の例を示す斜視図である。図35Bは、インシュレータの形状の第2の例を示す分解斜視図である。
【図36】図36A〜図36Dは、本発明の第4の実施形態に係る二次電池の製造方法の一例について説明するための工程図である。
【図37】図37A〜図37Cは、本発明の第4の実施形態に係る二次電池の製造方法の一例について説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(枚葉のセパレータを介して正極および負極を積層した例)
2.第2の実施形態(つづら折りにより折り畳まれた一枚の帯状のセパレータを介して正極および負極を積層した例)
3.第3の実施形態(負極を挟んだ状態でつづら折りにより折り畳まれた一対のセパレータを介して正極および負極を積層した例)
4.第4の実施形態(正極タブおよび負極タブを同一の側面から導出した例)
5.第5の実施形態(二次電池を用いたバッテリユニットおよびバッテリモジュール)
【0016】
<1.第1の実施形態>
(1−1)二次電池の構成
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る非水電解質電池(以下、二次電池1と適宜称する)の外観を示す略線図であり、図1Bは、二次電池1の構成を示す略線図である。なお、図1Bは、図1Aに示す二次電池1の底面および上面を反転させた場合の構成を示している。また、図1Cは、二次電池1の外観底面側を示す略線図である。二次電池1は、例えば、いわゆるリチウムイオン二次電池であり、電池素子2と外装材3とを備えるものである。図1Dは、外装材3により外装される電池素子2の側面図である。外装材3は、電池素子2を収容する第1外装部3Aと、電池素子2を覆う蓋として機能する第2外装部3Bとから構成されている。電池素子2の電池素子2の厚みは3mm以上20mm以下であり、放電容量は3Ah以上50Ah以下である。電池素子2の厚みが3mm未満であると、電池全体の体積中に電池素子2の占める割合が低下し、体積エネルギー密度が低下する。また、電池素子2の厚みが20mmを超えると、電池素子2の放熱性が低下し、充放電を繰り返すサイクル寿命が低下するおそれがある。放電容量が3Ah未満であると、上記の構造をとることなくレート特性が確保される。
【0017】
電池素子2は、略矩形状の正極4と、正極4と対向して配された略矩形状の負極5とが、セパレータ6を介して交互に積層された積層型電極構造を有している。また、電池素子2からは、複数枚の正極4とそれぞれ電気的に接続された正極集電体露出部4Cと、複数枚の負極5とそれぞれ電気的に接続された負極集電体露出部5Cとが引き出されている。正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cには、それぞれ正極タブ7および負極タブ8が接続されている。さらに、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cは断面が略U字形状となるように折り曲げられて構成されている。
【0018】
このような電池素子2は、外装材3にて外装されており、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cとそれぞれ接続された正極タブ7および負極タブ8は外装材3の封止部から二次電池1外部に導出されている。外装材3は少なくとも一方の面、または両面に予め深絞り加工が施されることにより凹部が形成され、この凹部に電池素子2が収納される。図1Bでは、外装材3を構成する第1外装部3Aに凹部9が形成されており、電池素子2はこの凹部9に収納される。そして、第2外装部3Bが、凹部9の開口を覆うように配置され、凹部9の開口の周囲が熱融着等により接着されることにより封止される。正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cとそれぞれ接続された正極タブ7および負極タブ8は、外装材3の封止部分から外部に向かい異なる方向に導出されている。
【0019】
[正極]
図2Aおよび図2Bは、電池素子2を構成する正極4の構造を示す略線図である。図2Cおよび図2Dは、電池素子2を構成する負極5の構造を示す略線図である。正極4は、例えば、正極集電体4Aの両面に正極活物質層4Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体4Aの片面のみに正極活物質層4Bを設けるようにしてもよい。
【0020】
本発明においては、正極集電体4Aの両面全面に正極活物質層4Bが設けられているのではなく、正極集電体4Aの両面に所定の寸法の奥行きを有する正極集電体露出部4Cが形成されるように正極活物質層4Bが設けられている。正極集電体露出部4Cは正極端子として役割を担うものである。正極集電体露出部4Cの幅wc(図2A、図2Bにおいては正極集電体露出部4Cの長手方向の寸法)は正極活物質層4Bの幅Wc(図2A、図2Bにおいては正極活物質層4Bの短手方向の寸法)との関係において以下の式(1)を満たすように構成されている。
0.5<(wc/Wc)≦1.0 ・・・(1)
【0021】
式(1)において、0.5<(wc/Wc)の場合とはすなわち、正極集電体露出部4Cの幅が正極活物質層4Bの幅の半分を超える場合である。図2Aは(wc/Wc)=0.5、である場合を示すものである。
【0022】
また、式(1)において、(wc/Wc)=1.0の場合とはすなわち、正極集電体露出部4Cの幅と正極活物質層4Bの幅とが等しい場合である。図2Bは(wc/Wc)=1.0、である場合を示すものである。このように、本発明においては、従来の電池に比べて正極端子としての正極集電体露出部4Cの幅が大きくなるように構成されている。正極集電体露出部4Cの幅を大きく構成することにより、大電流の入出力が可能となる。また、正極集電体露出部4Cの幅と正極活物質層4Bの幅とが等しくなるように構成することにより、正極4の製造工程においては、正極集電体露出部4Cを細く形成するための打ち抜きや切り取りなどの工程を行う必要がないため、製造工程を簡略化することができる。
【0023】
なお、正極集電体4Aと、正極端子として機能する正極集電体露出部4Cとは一体的に構成されていてもよいし、別個のものとして形成して接続するという構成にしてもよい。図2Aおよび図2Bにおいては、正極集電体4Aと正極集電体露出部4Cとが一体的に形成されている例を示している。一体的に形成されている場合、正極集電体4A上に正極活物質層4Bを設けるだけで正極集電体露出部4Cが形成されるため、正極4の作製工程を簡略化することができる。
【0024】
なお、正極集電体露出部4Cを正極活物質層4Bの塗布方向と平行方向に形成する場合、正極集電体4A原反の幅が正極活物質層4Bの幅と正極集電体露出部4Cの幅の和の整数倍であることが好ましい。さらに好ましくは、正極集電体4A原反の幅が正極活物質層4Bと正極集電体露出部4Cの幅の和の偶数倍となるようにするとよい。これにより、材料歩留まりが向上する。
【0025】
また、正極集電体露出部4Cはその奥行きdc(図2A、図2Bにおいては正極集電体露出部4Cの短手方向の寸法)が、正極活物質層4Bの奥行きDc(図2A、図2Bにおいては正極活物質層4Bの長手方向の寸法)との関係において、以下の式(2)を満たすように形成されるのが好ましい。
0.02<(dc/Dc)≦0.40 ・・・(2)
【0026】
(dc/Dc)の値が0.02未満では正極集電体露出部4Cと正極タブ7との接続面積が小さくなり、入出力特性が低下することとなる。一方、(dc/Dc)の値が0.40以上となると正極一枚当たりの電池容量が小さくなる。よって、二次電池1全体における所望の電池容量を得るためには積層枚数を増やす必要が生じる。積層枚数を増やすと、例えば、超音波溶接により正極集電体露出部4Cと正極タブ7とを接続する場合、より大きなパワーとエネルギーが必要となる。これにより正極集電体露出部4Cが損傷し、溶接不良などの不具合が生じるおそれがある。さらに、積層枚数を増やすことに弊害として、放熱性の低下が挙げられる。放熱性が低下すると大電流入出時に二次電池1内部が高温となり、二次電池1の寿命の低下を招くおそれがある。
【0027】
正極集電体4Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層4Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
【0028】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、組成式(I)、組成式(II)もしくは組成式(III)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、組成式(IV)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または組成式(V)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.30O2、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c2O2(c1≒1,0<c2<1)、LidMn2O4(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0029】
LifMn(1-g-h)NigM1hO(2-j)Fk ・・・(I)
(式中、M1は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0030】
LimNi(1-n)M2nO(2-p)Fq ・・・(II)
(式中、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0031】
LirCo(1-s)M3sO(2-t)Fu ・・・(III)
(式中、M3は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0032】
LivMn2-wM4wOxFy ・・・(IV)
(式中、M4は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0033】
LizM5PO4 ・・・(V)
(式中、M5は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0034】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V2O5、V6O13、NiS、MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0035】
[負極]
負極5は、例えば、負極集電体5Aの両面に負極活物質層5Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体5Aの片面のみに負極活物質層5Bを設けるようにしてもよい。負極集電体5Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0036】
負極活物質層5Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層4Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
【0037】
なお、この電池素子2では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極4の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極5にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0038】
図2Cおよび図2Dに示すように、負極集電体5Aの両面全面に負極活物質層5Bが設けられているのではなく、負極集電体5Aの両面に所定の寸法の奥行きを有する負極集電体露出部5Cが形成されるように負極活物質層5Bが設けられている。負極集電体露出部5Cは負極端子として役割を担うものである。本発明においては、負極集電体露出部5Cの幅wa(図2C、図2Dにおいては負極集電体露出部5Cの長手方向の寸法)は負極活物質層5Bの幅Wa(図2C、図2Dにおいては負極活物質層5Bの短手方向の寸法)との関係において以下の式(3)を満たすように構成されている。
0.5<(wa/Wa)≦1.0 ・・・(3)
【0039】
式(3)において、0.5<(wa/Wa)の場合とはすなわち、負極集電体露出部5Cの幅が負極活物質層5Bの幅の半分を超える場合である。また、式(3)において、(wa/Wa)=1.0の場合とはすなわち、負極集電体露出部5Cの幅と負極活物質層5Bの幅とが等しい場合である。このように、上述した正極4と同様に負極集電体露出部5Cの幅を大きく構成することにより、大電流の入出力が可能となる。また、負極集電体露出部5Cの幅と負極活物質層5Bの幅とが等しくなるように構成することにより、負極5の製造工程においては、負極集電体露出部5Cを細く形成するための打ち抜きや切り取りなどの工程を行う必要がないため、製造工程を簡略化することができる。
【0040】
なお、負極集電体5Aと、負極端子として機能する負極集電体露出部5Cとは一体的に構成されていてもよいし、別個のものとして形成して接続するという構成にしてもよい。図2Cおよび図2Dにおいては、負極集電体5Aと負極集電体露出部5Cとが一体的に形成されている例を示している。一体的に形成されている場合、負極集電体5A上に負極活物質層5Bを設けるだけで負極集電体露出部5Cが形成されるため、負極5の作製工程を簡略化することができる。
【0041】
なお、負極集電体露出部5Cを負極活物質層5Bの塗布方向と平行方向に形成する場合、負極集電体5A原反の幅が負極活物質層5Bの幅と負極集電体露出部5Cの幅の和の整数倍であることが好ましい。さらには好ましくは、負極集電体5A原反の幅が負極活物質層5Bと負極集電体露出部5Cの幅の和の偶数倍となるようにするとよい。これにより、材料歩留まりが向上する。
【0042】
また、負極集電体露出部5Cはその奥行きda(図2C、図2Dにおいては負極集電体露出部5Cの短手方向の寸法)が、負極活物質層5Bの奥行きDa(図2C、図2Dにおいては負極活物質層5Bの長手方向の寸法)との関係において、以下の式(4)を満たすように形成されるのが好ましい。
0.02<(da/Da)≦0.40 ・・・(4)
【0043】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0044】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0045】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0046】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0047】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0048】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0049】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V2O5、V6O13などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、またはLiNiO2やLi4Ti5O12などのリチウム遷移金属酸化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0050】
[セパレータ]
セパレータ6は、正極4と負極5とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ6としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜を単層で、またはそれらを複数積層したもの用いることができる。また、不織布やセルロースの多孔質膜を用いてもよい。特に、セパレータ6としては、ポリオレフィン製の多孔質膜が好ましい。ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるからである。また、セパレータ6としては、ポリオレフィンなどの微多孔膜上に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
【0051】
一般的にセパレータ6の厚みは5μm以上50μm以下が好適に使用可能であるが、5μm以上20μm以下がより好ましい。セパレータ6は、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下し、異物などで正負両極がショートしたり、破れたりする。
【0052】
[正極タブおよび負極タブ]
図3は、この発明の第1の実施形態に係る二次電池1を構成する正極タブ7の外観を示す略線図である。なお、負極タブ8も同様の外観構成を有しているので負極タブ8についての図示は省略する。図3Aは、上面7−1および左側面7−2を示す斜視図であり、図3Bは、底面7−3および右側面7−4を示す斜視図であり、図3Cは、断面図である。
【0053】
正極集電体露出部4Cと接続される正極タブ7および負極集電体露出部5Cと接続される負極タブ8は、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cと、二次電池1が接続される電子機器などを中継するものである。正極タブ7および負極タブ8は、板状または直方体状に形成されている。
【0054】
正極タブ7および負極タブ8の厚さは50μm以上400μm以下とするのが好ましい。50μm未満であると強度が低くなり、集電体露出部との接続後の折り曲げ工程で亀裂が生じるおそれがある。一方、400μmを超えると外装材3との熱溶着部分で密封性が悪化し、リーク不良、水分侵入が生じて二次電池1の寿命の低下を招く恐れがある。
【0055】
また、正極タブ7および負極タブ8の導電率は50%IACS(International annealed copper standard:電気抵抗(又は電気伝導度)の基準として、国際的に採択された焼鈍標準軟銅の体積抵抗率は、1.7241×10-2μΩと規定される。)以上であることが好ましい。導電率が50%IACS未満では、大電流を流した際にタブの発熱が大きくなる。タブの発熱が大きくなると外装材3との熱溶着部分が軟化し、シール性が低下することとなる。また、外部短絡などが発生するとタブは赤熱するほどに高温になる。これにより、有機溶媒からなる電解液が着火し、二次電池1の熱暴走を招く恐れがある。
【0056】
正極タブ7および負極タブ8は、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の材料、または、リン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)を含む合金から構成される。好ましくは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)合金を用いて構成するとよい。
【0057】
また、正極タブ7は図3A乃至図3Cに示すように、一端面7−5および他端面7−6を除く上面7−1、左側面7−2、底面7−3および右側面7−4の合計4面がニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、スズ(Sn)のいずれかによって構成された被覆層7Aにより被覆されている。上述の被覆される4面は、正極タブ7および負極タブ8が外装材3とシーラント10を介して熱溶着される面である。この熱溶着される面において例えば、銅(Cu)やリン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)を含むCu合金が露出しているとシーラント10との溶着性、すなわちシール性が著しく低下し、電池寿命の低下を招くおそれがある。なお、被覆層7Aにより被覆されるのは必ずしも正極タブ7である必要はなく、正極タブ7または負極タブ8の少なくともいずれか一方が被覆されていることが好ましい。
【0058】
また、正極タブ7または負極タブ8の材料として銅(Cu)または銅(Cu)を含む合金が用いられた場合、銅(Cu)または銅(Cu)を含む合金が露出していると、それに接触する樹脂が劣化する、いわゆる銅害が引き起こされる。銅害が引き起こされると二次電池1の寿命に悪影響を与えることとなる。よって、正極タブ7、負極タブ8を銅(Cu)または銅(Cu)を含む合金を用いて形成した場合には被覆層7Aを設けることが好ましい。これにより、銅(Cu)または銅(Cu)を含む合金が樹脂に直接接触することを防いで、銅害を抑制することができる。
【0059】
正極タブ7および負極タブ8の被覆方法としては、例えば、電解メッキなどが挙げられる。電解メッキで被覆を行う場合、ロール状に伸ばした銅(Cu)やリン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)を含むCu合金の基材を所定の幅にスリットした後に電解槽を通すことによりメッキ処理を施すことができる。
【0060】
被覆層7Aの厚さは0.1μm以上3μm以下とするのが好ましい。0.1μm未満であると被覆層7Aが剥がれることによりタブ基材が露出してシール性が低下するおそれがある。一方、被覆層7Aが3μmを超えると集電体露出部とタブとの接続状態(溶接の場合には固着状態)が不十分となり、タブが備える高導電性が十分に発揮できないこととなる。
【0061】
図4A〜図4Cは、正極タブ7と正極集電体露出部4Cとの接続状態を示す部分拡大図である。図4Aは、正極集電体露出部4Cが折り曲げられていない状態を示し、図4Bおよび図4Cは、正極集電体露出部4Cが折り曲げられている状態を示すものである。正極タブ7は積層され断面略U字形状に折り曲げられた複数の正極集電体露出部4Cに固着される。これにより、正極タブ7は正極集電体露出部4Cに電気的に接続される。正極タブ7の正極集電体露出部4Cとの接続に用いられる部分を接続部7A、外装材3から導出される部分を導出部7B、折り曲げ部分を折り曲げ部7Cとそれぞれ称する。正極タブ7は、導出部7Bの底面と電池素子2の底面とが同一平面上に位置するように構成されている。また、図示しないが、両面が凹型に加工された外装材3で電池素子2を外装する場合などは、正極タブ7と電池素子2の底面とが必ずしも同一平面上に位置しなくても良い。正極タブ7と正極集電体露出部4Cとの接続方法としては、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接、スポット溶接などによる接続、またはクランプ固定、カシメ接続などが挙げられる。その中でも、複数枚の薄い正極集電体露出部4Cと正極タブ7とを広い面積で強く接続することができるという点で特に超音波溶接が好ましい。
【0062】
本実施形態においては、所定幅の外周側曲げしろRoが形成されるように正極集電体露出部4Cの折り曲げが行われる。外周側曲げしろRoを設けなかった場合には、正極タブ7が接続された正極集電体露出部4Cを正極4の面に対して略垂直方向に折り曲げようとすると、図4Cに示すように、正極タブ7が電池素子2に当接してしまい正極集電体露出部4Cを折り曲げることができないこととなる。また、正極集電体露出部4Cを正極4の面に対して略垂直方向に折り曲げることができたとしてもその折り曲げに伴い正極集電体露出部4C、正極タブ7および電池素子2が変形してしまうこととなる。そうすると、電池素子2のパックへの挿入性が低下することとなる。そこで、外周側曲げしろRoを設けることにより、図4Bに示すように、正極タブ7が積層された正極4および負極5に当接してしまうことなく正極集電体露出部4Cを正極4の面と略垂直の方向にまで折り曲げることが可能となる。
【0063】
また、正極タブ7は積層された正極集電体露出部4Cの内面に所定幅の内周側曲げしろRiが形成される位置に固着するのが好ましい。内周側曲げしろRiを形成することにより、正極集電体露出部4Cが図4A中のFの位置を支点として折り曲げられた場合でも正極タブ7が積層された正極4および負極5に当接してしまうことなく正極集電体露出部4Cを正極4の面と略垂直の方向にまで折り曲げることができる。よって、内周側曲げしろRiの幅は、正極タブ7の厚さ以上とする必要がある。なお、負極タブ8も同様にして負極集電体露出部5Cに接続されている。なお、U字曲げ工程の詳細については後述する。
【0064】
図5Aは、正極集電体露出部4Cと正極タブ7との接続面積について説明するための略線図である。正極タブ7の幅をTc、正極タブ7の厚みHc、電池素子2の厚みをB、接続範囲の幅をJw、接続範囲の奥行きをJdとすると、Jw×Jdで表される接続範囲の面積(接続面積)Scは以下の式(5)を満たすように設定されるのが好ましい。
Hc≦Sc/Tc≦B・・・(5)
【0065】
接続面積Scが狭すぎると、電流密度が高くなり、大電流を流すと発熱してしまうおそれがある。一方、接続面積Scが大きすぎると、例えば超音波溶接で接続を行う場合、複数枚の正極集電体露出部4Cを固着するためにより大きなパワーとエネルギーが必要となるが、これによって正極集電体露出部4Cが損傷し、溶解不良などの不具合が生じるおそれがある。そこで上述の式(5)を満たすように接続面積Scを設定することによりそれらの弊害を防止することができる。
【0066】
また、具体的な寸法としては、「接続面積Sc/正極タブ7の幅Tc」の値が0.05mm〜10.0mmとなるように設定するとよい。さらに、好ましくは「接続面積Sc/正極タブ7の幅Tc」の値が0.2mm以上7.0mm以下になるように設定するとよい。0.05mm未満とすると接続面積Scが狭く、電流密度が集中することになり、大電流を流すと発熱してしまうおそれがある。一方、10.0mmを超えると、例えば超音波溶接で接続を行う場合、複数枚の正極集電体露出部4Cを固着するためにより大きなパワーとエネルギーが必要となるが、これによって正極集電体露出部4Cが損傷し、溶解不良などの不具合が生じるおそれがある。
【0067】
なお、負極集電体露出部5Cと負極タブ8も同様にして接続されている。すなわち、図5Bに示すように、負極タブ8の幅をTa、負極タブ8の厚みHa、電池素子2の厚みをB、接続範囲の幅をJw、接続範囲の奥行きをJdとすると、Jw×Jdで表される接続範囲の面積(接続面積)Saは以下の式(6)を満たすように設定されるのが好ましい。
Ha≦Sa/Ta≦B・・・(6)
【0068】
また、具体的な寸法としては、「接続面積Sa/負極タブ8の幅Ta」の値が0.05mm〜10.0mmとなるように設定するとよい。さらに、好ましくは「接続面積Sa/負極タブ8の幅Ta」の値が0.2mm以上7.0mm以下になるように設定するとよい。
【0069】
[電解質]
電解質は、リチウムイオン二次電池に一般的に使用される電解質塩と非水溶媒が使用可能である。非水溶媒としては、具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、またはこれらの炭酸エステル類の水素をハロゲンに置換した溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、複数種を所定の組成で混合してもよい。
【0070】
電解質塩としては、上記非水溶媒に溶解するものが用いられ、カチオンとアニオンが組み合わされてなる。カチオンにはアルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられる。アニオンには、Cl-,Br-,I-,SCN-,ClO4-,BF4-,PF6-,CF3SO3-等が用いられる。具体的には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2F5SO2)2)、過塩素酸リチウム(LiClO4)等が挙げられる。電解質塩濃度としては、上記溶媒に溶解することができる濃度であれば問題ないが、リチウムイオン濃度が非水溶媒に対して0.4mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲であることが好ましい。
【0071】
ポリマー電解質を用いる場合は、非水溶媒と電解質塩とを混合してゲル状とした電解液をマトリクスポリマに取り込むことでポリマー電解質を得る。マトリクスポリマは、非水溶媒に相溶可能な性質を有している。このようなマトリクスポリマとしては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等が用いられる。また、フッ素系ポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体、フッ化ビニリデン(VdF)とトリフルオロエチレン(TFE)とを繰り返し単位に含む共重合体等のポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0072】
[シーラント]
図6A〜図6Dは、シーラント10の構成を説明するための図である。図6Aは、二次電池1の外観を示す略線図であり、図6Bおよび図6Cは、図6AにおけるVI−VI断面図である。図6Dは、電池素子2の側面図である。
【0073】
正極タブ7および負極タブ8にそれぞれ設けるシーラント10は、正極タブ7および負極タブ8との接着性に優れる樹脂材料からなる。このような樹脂材料としては、酸変性ポリプロピレン(PP)等の変性ポリマーが挙げられる。シーラント10は正極タブ7および負極タブ8と外装材3との接着性を向上させ外気、水分などの侵入を防止するためのものである。
【0074】
シーラント10の構成としては、図6Bまたは図6Cに示す構成のいずれも採用することが可能であるが、以下の観点から図6Cに示す構成とするのがより好ましい。図6Bにおいては、正極タブ7にシーラント10が設けられているが、正極タブ7を折り曲げることによって形成される角状の折り曲げ部7Cはシーラント10によって被覆されていない。そうすると、この折り曲げ部7Cが外装材3に直接当接することとなり、外装材3が突き破られてしまうおそれがある。そこで、シーラント10と正極タブ7とを一緒に折り曲げる構造とすることにより、図6Cに示す実施例のように折り曲げ部7Cも含めて正極タブ7をシーラント10で被覆する。これにより、正極タブ7の折り曲げ部7Cが外装材3に直接当接することがないため、折り曲げ部7Cにより外装材3が突き破られることを防止することができる。
【0075】
また、正極タブ7の折り曲げ部7Cを被覆するようにシーラント10が設けられることにより、図6Dに示すように、正極タブ7が電池素子2の最外層に位置する負極5に直接接触することがない。これにより正極タブ7と負極5とが接触し内部短絡が発生することを防止することができる。
【0076】
ただし、短絡を防ぐ方法としては他に、最外層負極5に余分にセパレータ6を設ける、最外層負極5の端面を覆うように絶縁テープを貼る、という手法をとることもできる。
【0077】
[インシュレータ]
図7A〜図7Fは、インシュレータ11の構成について説明するための略線図である。インシュレータ11は、正極4および負極5がセパレータ6を介して積層されて構成された電池素子2と正極タブ7との間に設けられる平板状、シート状またはフィルム状の絶縁部材である。前述のように正極タブ7の折り曲げ部にシーラント10が設けられることで正極タブ7と負極5の接触による短絡は防止できるが、シーラント10が介在していない正極集電箔露出部4C(特に角部)と負極5との接触し内部短絡が発生するおそれがある。インシュレータ11が電池素子2と正極タブ7との間に介在することにより、電池素子2と正極集電箔露出部4Cとが直接接触することによる短絡を防止する。
【0078】
インシュレータ11は例えば、高さは正極タブ7の接続部7Aの奥行き寸法以上であり電池素子2の厚さ以下となるように形成されている。正極タブ7の接続部の奥行き寸法未満の場合、インシュレータ11を回りこんで電池素子2と正極タブ7とが直接接触して短絡するおそれがある。一方、インシュレータ11の高さが電池素子2の厚さを超える場合、インシュレータ11が電池素子2とタブの導出部により形成される同一平面から突出し、インシュレータ11の端部が外装材3に当接して外装材3を破損させてしまうおそれがある。具体的寸法としては、インシュレータ11の厚さは約0.2mm以上が好ましく、さらに好ましくは約0.2mm以上1.0mm以下の範囲内である。厚さが0.2mm未満であると振動などの影響によって長期的な絶縁性が確保できない。一方、厚さが1.0mmを超えると電池素子2に対するインシュレータ11の体積割合が大きくなり、体積エネルギー密度が低下してしまう。
【0079】
インシュレータ11は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、不織布などの材料により構成される。
【0080】
ただし、電池素子2と正極集電体露出部4Cとが直接接触することによる短絡を防止する手法としては他にも、電池素子2の最外層に余分にセパレータを設ける、電池素子2の最外層の端部を被覆するように絶縁テープを貼設する、正極集電体露出部4Cに絶縁テープを貼設する、などが挙げられる。しかし、そのようなセパレータの設置、絶縁テープの貼設による短絡防止は長期振動による擦れ、電解液による絶縁テープの剥離によって機能が失われてしまうおそれがある。また、他にも、流動性の樹脂をタブの折り曲げ部に充填して固着させるという手法を採用することも可能ではある。しかし、電池素子2内部へ樹脂が侵入して電池性能が悪化するおそれがある。したがって、電池素子2と正極タブ7とが直接接触することによる短絡を長期的に防止するためには電池素子2と正極タブ7との間にインシュレータ11を設けるのが好ましいと考えられる。
【0081】
図7Aに示す例ではインシュレータ11は矩形状の平板として形成されているが、インシュレータ11の形状は平板状に限られるものではない。例えば、図7Bに示すように、略コ字状に形成してもよい。インシュレータ11を略コ字状に形成することにより、電池素子2と正極タブ7との接触を防止すると共に、電池素子2の外傷耐性を向上させて側面を衝撃などから保護することができる。
【0082】
ただし、インシュレータ11の角が鋭角に形成されているとその角によってインシュレータ11および電池素子2を外装する外装材3が破損してしまうおそれがある。そこで、図7Cに示すように、インシュレータ11を角丸矩形状の平板(曲率R=0.5〜2.0)として形成してもよい。インシュレータ11を角丸矩形状に形成することにより、インシュレータ11の角によって外装材3が破損することを防止することができる。
【0083】
さらに、図7Dに示すように、インシュレータ11にはパンチング加工などにより複数の孔が設けられているとよい。これにより、電解液の電池素子2内部への注液性を確保することができる。孔の形状は、インシュレータ11の本来の目的である、電池素子2と正極タブ7とが直接接触することによる短絡を長期的に防止する、とうことが担保されていればどのようなものであってもよい。
【0084】
また、インシュレータ11は図7Eに示すような電池素子2の全側面を覆う略ロ字状、図7Fに示すような電池素子2の側面および上面を覆う箱型に形成してもよい。インシュレータ11をこのような略ロ字状または箱型に形成した場合、上述したように電池素子2と正極タブ7の接触を防ぐ、二次電池1の外傷耐性を向上させるという効果に加え、正極4、負極5およびセパレータ6が積層されて構成されている電池素子2を保持してその形状を保つという効果も奏することができる。
【0085】
[外装材]
外装材3の一例として用いるラミネートフィルムは、金属箔の両面にそれぞれ外側樹脂層と内側樹脂層とが形成された、防湿性、絶縁性を有する多層フィルムからなる。外側樹脂層には、外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからナイロン(Ny)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられる。金属箔は、水分、酸素、光の浸入を防ぎ、内容物である電池素子2を守る最も重要な役割を担っており、軽さ、伸び性、価格、加工のしやすさからアルミニウム(Al)が最もよく使われる。内側樹脂層は、熱や超音波で溶け、互いに融着する部分であり、ポリオレフィン系樹脂材料、例えば無延伸ポリプロピレン(CPP)が多用される。なお、外装材3は、ラミネートフィルムに代えてポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0086】
[電池素子]
図8Aおよび図8Bは、正極4、負極5およびセパレータ6の積層構造を示す図である。図8Aは、外観斜視図であり、図8Bは、平面図である。第1の実施形態において電池素子2は、図8Aに示すように、正極4および負極5がセパレータ6を介して交互に、例えば、負極5、セパレータ6、正極4、セパレータ6、負極5・・・セパレータ6、負極5となるように重ね合わせて積層されることにより構成されている。
【0087】
なお、図8Bに示すように、セパレータ6は正極集電体露出部4Cの奥行きdcの半分以上を覆わないようにその寸法を設定するのが好ましい。すなわち、図8Bに示すように、正極集電体露出部4Cとセパレータ6とが重なる領域の奥行きGと正極集電体露出部4Cの奥行きdcとが下記の式(7)を満たすように構成するのが好ましい。
G<(dc/2) ・・・(7)
【0088】
同様に、図8Bに示すように、セパレータ6は負極集電体露出部5Cの奥行きdaの半分以上を覆わないようにその寸法を設定するのが好ましい。すなわち、図8Bに示すように、負極集電体露出部5Cとセパレータ6とが重なる領域の奥行きKと負極集電体露出部5Cの奥行きdaとが下記の式(8)を満たすように構成するのが好ましい。
K<(da/2) ・・・(8)
【0089】
セパレータ6により正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの奥行きの半分以上が覆われると、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部5Cと負極タブ8との接続面積が狭くなり入出力特性が低下することとなるからである。
【0090】
(1−2)二次電池の製造方法
上述のような二次電池1は、以下のような工程で作製することができる。
【0091】
[正極の作製]
まず、例えば、正極活物質と、低結晶性炭素と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体4Aの両面に塗布する。なお、この塗布工程においては、正極合剤スラリーを正極集電体4Aの全面に塗布するのではなく、正極集電体4A上に正極活物質層4Bが存在しない正極集電体露出部4Cが形成されるように正極合剤スラリーを塗布する。そして、正極合剤スラリーを乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層4Bを形成する。そして、所定のサイズとなるようにカットすることにより正極4を作製する。
【0092】
[負極の作製]
まず、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体5Aの両面に塗布する。なお、この塗布工程においては、上述した正極4と同様に、負極合剤スラリーを負極集電体5Aの全面に塗布するのではなく、負極集電体5A上に負極活物質層5Bが存在しない負極集電体露出部5Cが形成されるように負極合剤スラリーを塗布する。そして、負極合剤スラリーを乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層5Bを形成する。そして、所定のサイズとなるようにカットすることにより負極5を作製する。
【0093】
[積層工程]
次いで、正極4と負極5とを、セパレータ6を介して交互に、例えば、負極5、セパレータ6、正極4、セパレータ6、負極5・・・セパレータ6、負極5となるように重ね合わせて所定数の正極4および負極5を積層する。なお、本発明においては、図8Aに示すように、正極4と負極5とは正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが互いに反対の方向に向かうようにして積層される。すなわち、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが同一方向へ向かうようには構成されていない。これにより、正極集電体露出部4Cに接続する正極タブ7、負極集電体露出部5Cに接続する負極タブ8の幅を最大で電池素子2の幅と略同一とすることが可能となり、大電流の入出力が可能となる。
【0094】
続いて、正極4、負極5およびセパレータ6が密着するように固定し、積層電極体を作製する。固定には、接着テープ等の固定部材を用いる。固定部材は、例えば積層電極体の両サイド部およびボトム部に設ける。ゲル電解質を用いる場合は、正極4および負極5の両面にゲル電解質層を形成した後、セパレータ6を介して積層する。
【0095】
[積層以降の工程]
次に、図9および図10を参照して積層工程以降の製造工程の概略について説明する。図9Aは、積層工程において正極4、負極5およびセパレータ6を積層することにより構成された電池素子2である。積層工程後はまず、第1のU字折り曲げ工程において図9Bに示すように、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの折り曲げがなされる。次に、集電体露出部切断工程において図9Cに示すように、折り曲げられた正極集電体露出部4Cの先端の余剰分を切断することにより先端を切り揃える。同様に、負極集電体露出部5Cの先端も切り揃える。
【0096】
次に、タブ接続工程において図9Dに示すように、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部5Cと負極タブ8の接続をそれぞれ行う。なお、この工程においては正極タブ7および負極タブ8にシーラント10を設ける工程も含まれる。次に、タブ折り曲げ工程において、図9Eに示すように、正極集電体露出部4Cに接続した正極タブ7、負極集電体露出部5Cに接続した負極タブ8を所定の形状に折り曲げる。次に、インシュレータ設置工程において図9Fに示すように、電池素子2の正極集電体露出部4C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、必要に応じて、電池素子2の負極集電体露出部5C側の側面にインシュレータ11をさらに設ける。
【0097】
次に、図10Aに示すように、第2のU字折り曲げ工程において正極集電体露出部4Cにおける正極タブ7との接続部分を90°折り曲げる。次に、負極集電体露出部5Cにおける負極タブ8との接続部分を90°折り曲げる。次に、図10Bおよび図10Cに示すように、第1の外装工程において、略矩形状を有すると共に、第1外装部3Aの略中央の凹部9に電池素子2を収容することにより外装する。次に、図10Dに示すように、第2の外装工程において、平板状の第2外装部3Bによって収容部を閉蓋する。これにより電池素子2が外装材3により外装される。
【0098】
そして、図10Eに示すように、注液・シール工程において、凹部9の外周部分のうち1辺を残して熱融着等により溶着し、未溶着の一辺から電解液を注液した後、この一辺を熱溶着して封止する。以上の工程により、図10Fに示すように、二次電池1が製造される。
【0099】
[第1のU字曲げ工程]
積層した正極4から引き出された複数の正極集電体露出部4Cおよび積層した負極5から引き出された複数の負極集電体露出部5Cを、断面略U字形状となるように折り曲げる。第1のU字曲げ工程は、予め正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cに最適なU字曲げ形状を持たせるための工程である。予め最適なU字曲げ形状を持たせることにより、後に正極タブ7および負極タブ8と接続後の正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cを折り曲げてU字曲げ部を形成する際に正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cに引張り応力などのストレスがかからないようにすることができる。
【0100】
図11A〜図11Eは、正極集電体露出部4C1乃至4C3の第1のU字曲げ工程を説明する側面図である。図11A〜図11Eにおいては、正極集電体露出部4C1乃至4C3について行われる各工程を説明する。なお、負極集電体露出部5Cについても同様にして第1のU字曲げ工程が行われる。
【0101】
まず、図11Aに示すように、U字曲げ用薄板21を有するワークセット台20aの上部に積層電極体を配設する。U字曲げ用薄板21は、電池素子2の厚みよりもやや小さい分だけ、具体的には、少なくとも複数の正極集電体露出部4C1乃至4C3の総厚分小さい分だけ、ワークセット台20aから突出するように設置されている。このような構成とすることにより、正極集電体露出部4C3の曲げ外周側が電池素子2の厚みの範囲内に位置するため、二次電池1の厚みの増大や外観不良が生じるのを防止することができる。
【0102】
続いて、図11Bに示すように、電池素子2を下降させるか、もしくはワークセット台20aを上昇させる。このとき、電池素子2とU字曲げ用薄板21との間隙が小さいほど二次電池1のスペース効率が向上するため、例えば電池素子2とU字曲げ用薄板21との間隙が徐々に小さくなるようにする。
【0103】
図11Cに示すように、電池素子2がワークセット台20a上に載置され、正極集電体露出部4C1乃至4C3に曲げ部を形成した後、図11Dおよび図11Eに示すように、ローラ22を下降させて正極集電体露出部4C1乃至4C3がU字形状に折り曲げられる。
【0104】
U字曲げ用薄板21は、厚みが1mm以下、例えば0.5mm程度が好ましい。U字曲げ用薄板21には、このような薄さでも複数の正極集電体露出部4Cまたは負極集電体露出部5Cに曲げ形状を形成するために必要な強度を有する材料を用いることができる。U字曲げ用薄板21に必要な強度は、正極4および負極5の積層枚数や、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cに用いる材料の硬度等によって変わる。U字曲げ用薄板21が薄いほど、曲げ最内周の正極集電体露出部4C1の曲率を小さくすることができ、正極集電体露出部4Cの折り曲げに必要なスペースを小さくすることができるため好ましい。U字曲げ用薄板21としては、例えばステンレス(SUS)、強化プラスティック材およびめっきを施した鋼材などを用いることができる。
【0105】
[集電体露出部切断工程]
次に、U字曲げ部を形成した正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端を切り揃える。集電体露出部切断工程では、予め最適な形状を有するU字曲げ部を形成し、そのU字曲げ形状に合わせて正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの余剰分を切断する。図12は、正極集電体露出部4Cの切断工程を説明する側面図である。なお、負極集電体露出部5Cについても同様にして集電体露出部切断工程が行われる。
【0106】
図12Aに示すように、第1のU字曲げ工程においてU字曲げ部が形成された電池素子2の上面と底面を反転させ、集電体たるみ用逃げ部23を有するワークセット台20b上に電池素子2を固定する。
【0107】
次に、図12Bに示すように、U字曲げ部が形成された正極集電体露出部4C1乃至4C3のU字曲げ部から先端に至る先端部分がワークセット台20bに沿って略L字形状となるように先端部分を変形させる。このとき、再度U字曲げ部を形成するために必要な形状を維持することにより、曲げ外周側の正極集電体露出部4C3ほど大きなたるみが生じる。このようなたるみがワークセット台20bの集電体たるみ用逃げ部23に入り込むことにより、正極集電体露出部4C1乃至4C3をストレスなく変形させることができる。なお、正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端部分を固定した状態で正極集電体露出部4C1乃至4C3を変形させるようにしてもよい。
【0108】
続いて、図12Cに示すように、集電体押さえ24にて正極集電体露出部4C1乃至4C3をワークセット台20bに押さえつけた後、図12Dおよび図12Eに示すように、例えば集電体押さえ24に沿うように設けられた切断用刃25で正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端を切り揃える。正極集電体露出部4C1乃至4C3の切断箇所は、後に再度U字曲げを行った際に正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端が電池素子2の厚みの範囲内に位置するように、正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端の余剰分を少なくとも切断するようにする。
【0109】
[タブ接続工程]
続いて、正極集電体露出部4C1乃至4C3と、正極タブ7との接続を行う。タブ接続工程では、第1のU字曲げ工程で形成した最適なU字曲げ形状を維持しながら正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cと、正極タブ7および負極タブ8を固着する。これにより、正極集電体露出部4Cおよび正極タブ7と、負極集電体露出部5Cおよび負極タブ8が電気的に接続される。図13は、正極集電体露出部4C1乃至4C3と、正極タブ7との接続工程を説明する側面図である。なお、図示はしないが、正極タブ7にはあらかじめシーラント10が設けられているものとする。負極集電体露出部5Cと負極タブ8についても同様にして接続工程が行われる。
【0110】
図13Aに示すように、電極端子切断工程において正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端余剰分を切断した電池素子2の上面と底面を再度反転させる。次に、図13Bに示すように、集電体形成維持用板26を有するワークセット台20c上に電池素子2を固定する。正極集電体露出部4C1の曲げ内周側には集電体形成維持用板26の先端が位置しており、正極集電体露出部4C1乃至4C3の曲げ形状を維持するとともに、固着装置から発生する例えば超音波振動などの外的要因による影響を防止する。
【0111】
続いて、図13Cに示すように、例えば超音波溶着により正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7とを固着する。超音波溶着には、例えば、正極集電体露出部4C1乃至4C3の下部に備えられたアンビル27aと、正極集電体露出部4C1乃至4C3の上部に備えられたホーン27bが用いられる。アンビル27aには予め正極集電体露出部4C1乃至4C3がセットされ、ホーン27bが下降してアンビル27aとホーン27bとで正極集電体露出部4C1乃至4C3および正極タブ7が挟持される。そして、アンビル27aとホーン27bとにより、正極集電体露出部4C1乃至4C3および正極タブ7に超音波振動が与えられる。これにより、正極集電体露出部4C1乃至4C3および正極タブ7が互いに固着される。
【0112】
なお、タブ接続工程においては、図4Aを参照して、上述した内周側曲げしろRiが形成されるように正極タブ7を正極集電体露出部4Cに接続するとよい。
【0113】
[タブ折り曲げ工程]
次に、正極集電体露出部4C1乃至4C3と固着した正極タブ7を所定の形状に折り曲げる。図14A乃至図14Cは、正極タブ7のタブ折り曲げ工程を説明する側面図である。なお、図示はしないが、タブ折り曲げ工程においてはタブに設けられているシーラント10も一緒に折り曲げられる。また、負極集電体露出部5Cと負極タブ8についても同様にしてタブ折り曲げ工程が行われる。
【0114】
図14Aに示すように、接続工程において正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7とが固着された電池素子2の上面と底面を再度反転させて、集電体たるみ用逃げ部23を有するワークセット台20d上に電池素子2を固定する。正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7との接続部分は、タブ折り曲げ台28a上に載置する。
【0115】
続いて、図14Bに示すように、正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7との接続部分をブロック28bにて押さえ、図14Cに示すように、ローラ29を降下させることにより、タブ折り曲げ台28aおよびブロック28bから突出した正極タブ7を折り曲げる。
【0116】
このとき、正極タブ7は予め熱溶着されたシーラント10と一緒に折り曲げるのが好ましい。正極タブ7の折り曲げ部をシーラント10が被覆することになり、正極タブ7と外装材3とが直接接触しない構造とすることができる。この構造により、長期的な振動、衝撃などによる外装材3内部の樹脂層と正極タブ7との擦れ、外装材3の破損、外装材3の金属層との短絡の危険性を大幅に低減することができる。
【0117】
[インシュレータ設置工程]
続いて、図14Dに示すように、電池素子2と、後述する第2のU字曲げ工程で折り曲げられる正極集電体露出部4C1乃至4C3との間に介在するようにインシュレータ11を設置する。インシュレータ11は後述する第2のU字曲げ工程によって正極集電体露出部4C1乃至4C3が90°折り曲げられると、電池素子2と正極タブ7との間に介在することとなる。また、インシュレータ11の形状を略ロ字状、箱型とした場合には、電池素子2の全側面をインシュレータ11で覆うようにインシュレータ11を電池素子2に被せる。
【0118】
[第2のU字曲げ工程]
続いて、図14Eに示すように、正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7との接続部分を90°折り曲げ、電池素子2を作製する。第2のU字曲げ工程では、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cに正極タブ7および負極タブ8がそれぞれ予め第1のU字曲げ工程で形成したU字曲げ形状に沿ってU字曲げ部を形成する。
【0119】
このとき、U時曲げ部の曲率を有する部分において、正極集電体露出部4C1の曲げ外側の曲率と、正極集電体露出部4C1に隣接する正極集電体露出部4C2の曲げ内側の曲率とが略同等となることが好ましい。また、正極集電体露出部4C2の曲げ外側の曲率と、正極集電体露出部4C2に隣接する正極集電体露出部4C3の曲げ内側の曲率とが略同等となることが好ましい。曲げ最内周の正極集電体露出部4C1は、曲げ内側の形状がU字曲げ用薄板21の形状に沿って形成されていることが好ましい。
【0120】
すなわち、U字曲げ部において、隣接する2つの正極集電体露出部4Cの対向する面の曲率が略同等であることが好ましい。これにより、正極集電体露出部4CのU字曲げ部から先端までの部分において、正極集電体露出部4C間に無駄な間隙が生じず、スペース効率の向上につながる。
【0121】
なお、上述の工程では、正極集電体露出部4C1乃至4C3についてのみ記載したが、負極集電体露出部5Cについても同様の方法を用いることによりU字曲げを行うことができる。
【0122】
[外装工程および注液・シール工程]
上述のようにして作製された電池素子2は、図10B乃至図10Dに示すように、ラミネートフィルム等の外装材3で外装される。なお、上述したように外装材3が接触する正極タブ7および負極タブ8の各領域に、シーラント10が設けられている。
【0123】
外装工程においてはまず、電池素子2を深絞り加工により形成された第1外装部3Aの凹部9に収容し、第2外装部3Bとで電池素子2の上下から挟みこみ、凹部9の外周部分のうち1辺を残して熱融着等により溶着し、未溶着の一辺から電解液を注液した後、この一辺を熱溶着して封止する。これにより、二次電池1が得られる。なお、インシュレータ11も電池素子2と共に外装材3により外装される。なお、外装材3は、2枚のラミネートフィルムで電池素子2の上下から挟みこむものの他、1枚の外装材3の1部を深絞りにより凹型加工し、凹部9の開口を覆うように折り返したものでも良い。また、外装材3の凹部9は電池素子2の両面に深絞り加工されていても良い。この場合、正極タブ7および負極タブ8は電池素子2の厚みの中間付近で折り曲げられ、外装材3外部へと導出される構造をとる。
【0124】
このようにして作製された二次電池1は、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5CのU字曲げ部が、第1のU字曲げ工程によって得られたU字曲げ部の最適な曲げ形状を維持している。このため、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5CのU字曲げ部に過大なストレスやしわ、よれが生じることなくスペース効率の向上を図ることができる。
【0125】
<2.第2の実施形態>
(2−1)二次電池の構成
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図15Aおよび図15Bは、第2の実施形態における正極4、負極5およびセパレータ12の積層の手法を説明する略線図である。図15Aは、積層状態の外観を示す斜視図であり、図15Bは、積層状態の略線側面図である。第2の実施形態において第1の実施形態と同一または対応する箇所には同一の符号を付す。第2の実施形態は、セパレータ12を長尺の帯状に形成してつづら折りにより折り畳む点、正極4および負極5を折り畳んだセパレータ12の間に挟み込むことにより積層して電池素子2を構成する点において、第1の実施形態と異なっている。なお、セパレータ12以外の二次電池1の構成は第1の実施形態と同様である。
【0126】
[セパレータ]
セパレータ12は、正極4と負極5とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。第2の実施形態においては、セパレータ12は長尺の帯状に形成されている。そして、セパレータ12は、正極4および負極5の幅と略同一の間隔でつづら折り状に折り畳まれる。セパレータ12をつづら折り状に折りたたむことにより形成されるセパレータ12の各面の幅は正極4および負極5の幅と略同一となっている。セパレータ12は例えば、爪状の突起を折り目部分に当接させて引っ掛けることにより折り畳まれる。なお、セパレータ12は第1の実施形態と同様に、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜、または不織布やセルロースの多孔質膜を単層で、またはそれらを複数積層したもの用いることができる。特に、セパレータ12としては、ポリオレフィン製の多孔質膜が好ましい。また、セパレータ12としては、ポリオレフィンなどの微多孔膜上に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
【0127】
[電池素子]
上述のようにつづら折りにより折畳まれたセパレータ12の間に、複数枚の正極4および負極5が1枚ずつ交互に挟み込まれて挟持されることにより電池素子2が構成されている。正極4は、正極集電体露出部4Cがセパレータ12の折り目方向に対して平行方向に向けてセパレータ12間から導出されるように挟み込まれている。負極5も同様にセパレータ12の折り目方向に対して平行方向に向けてセパレータ12間から導出されるように挟み込まれている。
【0128】
さらに、正極4と負極5とは、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが互いに反対方向に向くようにセパレータ12に挟み込まれている。このように、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、電池素子2は、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが同一方向へ向かうようには構成されていない。これにより、正極集電体露出部4Cに接続する正極タブ7、負極集電体露出部5Cに接続する負極タブ8の幅を最大で電池素子2の幅と略同一とすることが可能となり、大電流の入出力が可能となる。
【0129】
(2−2)二次電池の製造方法
第2の実施形態に係る二次電池1は、以下のような工程で作製することができる。なお、正極4の作製、負極5の作製工程は第1の実施形態と同様である。
【0130】
[積層工程]
正極4および負極5は、図15Aおよび図15Bに示すように、つづら折り状に折り畳まれたセパレータ12の間に挟み込まれることにより設けられる。これにより、正極4と負極5とを、セパレータ12を介して交互に、例えば、負極5、セパレータ12、正極4、セパレータ12、負極5・・・セパレータ12、負極5となるように重ね合わせて所定数の正極4および負極5を積層させることができる。
【0131】
続いて、正極4、負極5およびセパレータ12が密着するように固定し、積層電極体を作製する。固定には、接着テープ等の固定部材(図示せず)を用いる。固定部材は、例えば積層電極体の両サイド部およびボトム部に設ける。ゲル電解質を用いる場合は、正極4および負極5の両面にゲル電解質層を形成した後、セパレータ12を介して積層する。これにより、電池素子2が構成される。
【0132】
また、第1の実施形態と同様に、セパレータ12は正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの奥行きの半分以上を覆わないようにその寸法を設定するのが好ましい。セパレータ12により正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの奥行きの半分以上が覆われると、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部5Cと負極タブ8との接合面積が狭くなり入出力特性が低下することとなるからである。
【0133】
[積層以降の工程]
積層工程以降の工程は、第1の実施形態と同様である。すなわち、積層工程後はまず、第1のU字折り曲げ工程において、図9Bに示すように、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの折り曲げがなされる。次に、集電体露出部切断工程において、図9Cに示すように、折り曲げられた正極集電体露出部4Cの先端の余剰分を切断することにより先端を切り揃える。同様に、負極集電体露出部5Cの先端も切り揃える。
【0134】
次に、タブ接続工程において、図9Dに示すように、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部5Cと負極タブ8の接続をそれぞれ行う。なお、この工程においては正極タブ7および負極タブ8にシーラント10を設ける工程も含まれる。次に、タブ折り曲げ工程において、図9Eに示すように、正極集電体露出部4Cに接続した正極タブ7、負極集電体露出部5Cに接続した負極タブ8を所定の形状に折り曲げる。
【0135】
次に、インシュレータ設置工程において、図9Fに示すように、電池素子2の正極集電体露出部4C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、必要に応じて、電池素子2の負極集電体露出部5C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、図10Aに示すように、第1のU字折り曲げ工程において正極集電体露出部4Cにおける正極タブ7との接続部分を90°折り曲げる。次に、第1のU字折り曲げ工程において負極集電体露出部5Cにおける負極タブ8との接続部分を90°折り曲げる。次に、図10Bおよび図11Cに示すように、第1の外装工程において、略矩形状を有すると共に、深絞りにより中央に凹部9を有する外装材としてのラミネートフィルム(第1外装材3A)の凹部9内に電池素子2を収容することにより外装する。次に、図10Dに示すように、第2の外装工程において、平板状のラミネートフィルム(第2外装材3B)によって凹部9を閉蓋する。これにより電池素子2が外装材3により外装される。
【0136】
そして、図10Eに示すように、注液・シール工程において、凹部の外周部分のうち1辺を残して熱融着等により溶着し、未溶着の一辺から電解液を注液した後、この一辺を熱溶着して封止する。以上の工程により図1Aまたは図10Fに示すような二次電池1が製造される。
【0137】
第2の実施形態によれば、電池素子2の製造工程において正極4、負極5およびセパレータ12を順に積層していく必要がなく、セパレータ12に正極4をはさみ込んでいく作業とセパレータ12に負極5をはさみ込んでいく作業とを同時に行うことができる。これにより、二次電池1の製造効率を高めて、生産性の向上を図ることができる。
【0138】
なお、セパレータ12の折り曲げ方向は、図16Aに示すようなセパレータ12の長手方向に沿う方向に限られるものではない。図16Bに示すように、セパレータ12の短手方向に沿う方向に折り曲げてもよい。この場合も長手方向に沿って折り曲げた場合と同様に、正極4と負極5とは正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが互いに反対方向に導出されるようにセパレータ12に挟み込まれる。
【0139】
<3.第3の実施形態>
(3−1)二次電池の構成
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図17A〜図17Cは、第3の実施形態における正極4、負極13およびセパレータの積層構造を説明する略線図である。図17Aは、第1セパレータ14、負極13および第2セパレータ15との積層構造を示す略線図であり、図17Bは、積層状態の外観を示す斜視図であり、図17Cは、積層状態の略線側面図である。第3の実施形態において第1の実施形態と同一または対応する箇所には同一の符号を付す。
【0140】
第3の実施形態は、つづら折りを用いて正極4、負極13およびセパレータを積層する点は第2の実施形態と共通する。しかし、セパレータのみでなく、負極13も長尺の帯状に形成する点、2枚のセパレータ間に負極13を挟み込み、それらをまとめてつづら折りにより折り畳む点、正極4を折り畳んだセパレータの間に挟み込むことにより電池素子を構成する点において、第2の実施形態とは異なっている。なお、セパレータ、負極13以外の二次電池1の構成は第1の実施形態と同様である。
【0141】
[負極]
負極13を構成する負極集電体13Aはセパレータと同様の長尺の帯状に形成されている。そして、負極集電体13Aの両面に短手方向に所定の寸法の奥行きを有する負極集電体露出部13Cが形成されるように、負極集電体13A上に負極活物質層13Bが設けられている。このようにして負極13は、図17Aに示すように、長尺の帯状に形成されている。第3の実施形態においても第1および第2の実施形態と同様に、負極集電体13Aの両面全面に負極活物質層13Bが設けられているのではない。負極13は長尺の帯状に形成されているため、負極集電体露出部13Cの幅と負極活物質層13Bの幅とは略同一となる。すなわち、負極集電体露出部13Cの幅wa(図17Aにおける長手方向の寸法)と負極活物質層13Bの幅Wa(図17Aにおける長手方向の寸法)とは以下の式(9)を満たすように構成されている。
(wa/Wa)=1.0 ・・・(9)
【0142】
負極集電体露出部13Cの幅と負極活物質層13Bの幅とは略同一であるため、負極13の製造工程においては、負極集電体13A上に負極活物質層13Bを塗布する工程の他に、負極集電体露出部13Cを細く形成するための打ち抜きや切り取りなどの工程を行う必要がない。これにより、負極13の製造工程を簡略化することができる。なお、負極集電体13Aの材質、負極活物質層13Bの材質などは第1の実施形態と同様である。
【0143】
また、負極集電体露出部13Cは第1の実施形態と同様にその奥行き(図17Aにおける短手方向の寸法)daが、負極活物質層13Bの奥行き(図17Aにおける短手方向の寸法)Daとの関係において、以下の式(10)を満たすように形成されるのが好ましい。
0.02<(da/Da)≦0.40 ・・・(10)
【0144】
[セパレータ]
セパレータは、正極4と負極13とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。第3の実施形態においては2つのセパレータ、第1セパレータ14および第2セパレータ15を用いる。第1セパレータ14および第2セパレータ15は共に負極13と同様に長尺の帯状に形成されており、その寸法は略同一とされている。また、第1セパレータ14および第2セパレータ15は共に、図17Aに示すように、負極13に比べて短手方向の寸法が短く構成されている。これは、第1セパレータ14と第2セパレータ15とで負極13を挟持した状態において、第1セパレータ14と第2セパレータ15との間から負極集電体露出部13Cが導出されるようにするためである。
【0145】
なお、セパレータは第1の実施形態と同様に、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜を単層で、またはそれらを複数積層したもの用いることができる。特に、セパレータとしては、ポリオレフィン製の多孔質膜が好ましい。また、セパレータとしては、ポリオレフィンなどの微多孔膜上に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
【0146】
[電池素子]
上述のように構成された第1セパレータ14と第2セパレータ15とで負極13を挟持することにより、第1セパレータ14、第2セパレータ15および負極13とを一体構成とする。以下、第1セパレータ14、第2セパレータ15で負極13を挟持した3層構造体を3層体16と称する。負極13は短手方向の寸法を第1セパレータ14および第2セパレータ15よりも大きく形成してあるので、3層体16の第1セパレータ14と第2セパレータ15との間からは負極集電体露出部13Cが導出される。
【0147】
3層体16は正極4の幅と略同一の間隔でつづら折り状に折り畳まれる。3層体16をつづら折り状に折りたたむことにより形成される3層体16の各面の幅は正極4の幅と略同一となっている。
【0148】
上述のようにつづら折りにより折畳まれた3層体16を構成するセパレータの間に、複数枚の正極4が1枚ずつ挟み込まれて挟持されることにより電池素子が構成されている。正極4は、正極集電体露出部4Cが3層体16の折り目方向と平行方向に向けてセパレータ間から導出するように挟み込まれている。さらに、正極4は、正極集電体露出部4Cが負極集電体露出部13Cの導出方向の反対方向に向くように挟み込まれている。このように、第3の実施形態においても第1の実施形態と同様に、電池素子は、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部13Cとが同一方向へ向かうようには構成されていない。これにより、正極集電体露出部4Cに接続する正極タブ、負極集電体露出部13Cに接続する負極タブの幅を最大で電池素子の幅と略同一とすることが可能となり、大電流の入出力が可能となる。
【0149】
(3−2)二次電池の製造方法
第3の実施形態に係る二次電池1は、以下のような工程で作製することができる。正極4の作製工程は第1の実施形態と同様である。
【0150】
[負極の作製]
まず、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体13Aに塗布する。なお、この塗布工程においては、負極合剤スラリーを負極集電体13Aの全面に塗布するのではなく、負極集電体13A上に負極活物質層13Bが形成されてない負極集電体露出部13Cが形成されるように負極合剤スラリーを塗布する。そして、負極溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層13Bを形成する。以上の工程により負極13が作製される。なお、第3の実施形態においては、負極13を所定のサイズにカットする裁断工程を行う必要がないため、製造効率を高めることができる。
【0151】
[積層工程]
まず、第1セパレータ14と第2セパレータ15の間に負極13を挟み込むことにより3層体16を形成する。次に、3層体16をつづら折りにより複数回折り畳む。3層体16は例えば、爪状の突起を折り目部分に当接させて引っ掛けることにより折り畳まれる。そして、正極4は、図17Aおよび図17Bに示すように、つづら折り状に折り畳まれた3層体16を構成するセパレータの間に1枚ずつ挟み込まれることにより設けられる。これにより、正極4と負極13とを、セパレータを介して交互に、例えば、負極13、セパレータ、正極4、セパレータ、負極13・・・セパレータ、負極13となるように重ね合わせて所定数の正極4および負極13を積層させることができる。なお、第3の実施形態においても第1の実施形態と同様に、正極4と負極13とは正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部13Cとが互いに反対の方向に向かうようにして積層される。すなわち、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部13Cとが同一方向へ向かうようには構成されていない。これにより、正極集電体露出部4Cに接続する正極タブ、負極集電体露出部13Cに接続する負極タブの幅を最大で電池素子の幅と略同一とすることが可能となり、大電流の入出力が可能となる。
【0152】
続いて、正極4、負極13およびセパレータが密着するように固定し、積層電極体を作製する。固定には、接着テープ等の固定部材(図示せず)を用いる。固定部材は、例えば積層電極体の両サイド部およびボトム部に設ける。ゲル電解質を用いる場合は、正極4および負極13の両面にゲル電解質層を形成した後、セパレータを介して積層する。これにより、電池素子が構成される。
【0153】
また、第1の実施形態と同様に、セパレータは正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部13Cの奥行きの半分以上を覆わないようにその寸法を設定するのが好ましい。セパレータにより正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部13Cの奥行きの半分以上が覆われると、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部13Cと負極タブ8との接合面積が狭くなり入出力特性が低下することとなるからである。
【0154】
[積層以降の工程]
積層工程以降の工程は、第1の実施形態と同様である。すなわち、積層工程後はまず、折り曲げ工程において、図9Bに示すように、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部13Cの折り曲げがなされる。次に、切断工程において、図9Cに示すように、折り曲げられた正極集電体露出部4Cの先端の余剰分を切断することにより先端を切り揃える。同様に、負極集電体露出部13Cの先端も切り揃える。
【0155】
次に、接続工程において、図9Dに示すように、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部13Cと負極タブ8の接続をそれぞれ行う。なお、この工程においては、正極タブ7および負極タブ8にシーラント10を設ける工程も含まれる。次に、タブ折り曲げ工程において、図9Eに示すように、正極集電体露出部4Cに接続した正極タブ7、負極集電体露出部13Cに接続した負極タブ8を所定の形状に折り曲げる。
【0156】
次に、インシュレータ設置工程において、図9Fに示すように、電池素子の正極集電体露出部4C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、必要に応じて、電池素子の負極集電体露出部5C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、図10Aに示すように、第2の折り曲げ工程において正極集電体露出部4Cにおける正極タブ7との接続部分を90°折り曲げる。次に、第2の折り曲げ工程において負極集電体露出部5Cにおける負極タブ8との接続部分を90°折り曲げる。次に、図10Bに示すように、第1の外装工程において、略矩形状を有すると共に、深絞りにより中央に凹部を有する外装材としてのラミネートフィルム(第1外装部3A)の凹部内に電池素子を収容することにより外装する。次に、図10Cに示すように、第2の外装工程において、平板状のラミネートフィルム(第2外装部3B)によって収容部を閉蓋する。これにより電池素子3が外装材により外装される。
【0157】
そして、図10Dに示すように、注液・シール工程において、凹部9の外周部分のうち1辺を残して熱融着等により溶着し、未溶着の一辺から電解液を注液した後、この一辺を熱溶着して封止する。以上の工程により、図10Fに示すような二次電池1が製造される。
【0158】
第3の実施形態によれば、1回のつづら折りで一組の正極4、負極13およびセパレータの積層が可能となるため、セパレータ1枚のみをつづら折りする構造に比べて積層速度を倍にすることができる。これにより二次電池1の製造効率を高めて、生産性の向上を図ることができる。また、セパレータのみではなく、第1セパレータ14と第2セパレータ15間に負極13を挟み込み、その負極13を含めてつづら折りにより折り畳んでいるため、セパレータのみをつづら折りする場合に比べて電池素子全体の剛性を向上させることができる。これにより、振動、衝撃などに対する耐性が増し、二次電池1を用いて構成した電池パックにおける積層ズレの発生を抑制することができる。
【0159】
また、第1セパレータ14、第2セパレータ15および負極13が密着状態とし、その3枚をまとめてつづら折りにより折り畳むため、積層精度誤差を許容するためのクリアランスを形成する必要要がない。したがって、正極4および負極13のサイズを大きくすることができ、エネルギー密度の高い二次電池1を実現することができる。また、負極13の製造工程において所定のサイズにカットする裁断工程を行う必要がないため、コンタミリスクを低減することができる。
【0160】
また、セパレータによって正極4、負極13を封袋する構成とはなっていないため、集電体との通電が容易であり、特に大電流型の二次電池1に有用である。また、セパレータによる封袋構造の懸念事項である折り返りによって生じるセパレータの歪みによる電池への悪影響がない。また、負極13内に正極4が挟まれて収まる構造となっているので、リチウム(Li)析出の懸念がない。さらに、片面塗布の正極4および負極13の箔面同士を背中合わせに積層するのではなく、両面塗布の正極4および負極13を効率よく積層することができるので、容量を保ちつつより薄い二次電池1、言い換えれば、エネルギー密度の高い二次電池1を作製することができる。
【0161】
上述の説明ではセパレータによって負極13を挟持する例として、2枚のセパレータ、第1セパレータ14と第2セパレータ15によって負極13を挟持する構成を挙げたが、負極13をセパレータによって挟持する構成はそのような例に限られない。図18Aおよび図18Bは、変形例を示す図である。図18Aは、積層状態の外観を示す斜視図であり、図18Bは、図18Aにおける矢印Bの矢視図である。図18Aおよび図18Bに示すように、1枚のセパレータ17を長手方向に沿って2つ折りにし、その間に負極13を挟み込むようにしてもよい。このような構成によっても上述の2枚のセパレータを用いる構成と同様の効果を奏することができる。
【0162】
<4.第4の実施形態>
(4−1)二次電池の構成
図25Aは、本発明の第4の実施形態に係る二次電池の外観の一例を示す斜視図である。図25Aに示すように、第4の実施形態に係る二次電池は、正極タブ31および負極タブ41が同一の側面から導出されている点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0163】
図25Bは、電池素子の構成の一例を示す斜視図である。図25Cは、電池素子の構成の一例を示す分解斜視図である。電池素子2は、対向する第1の主面A1および第2の主面A2と、第1の主面A1および第2の主面A2の間に設けられた側面部Sとを有する。側面部Sは、対向する第1の側面S1および第2の側面S2と、対向する第3の側面S3および第4の側面S4とを有している。第3の側面S3および第4の側面S4は、第1の側面S1と第2の側面S2との間に設けられる。
【0164】
第1の主面A1および第2の主面A2は、長辺と短辺とを有する矩形状を有している。第1の側面S1、第2の側面S2、第3の側面S3および第4の側面S4は、細長い矩形状を有する。第1の側面S1および第2の側面S2がそれぞれ、第1の主面A1および第2の主面A2の短辺側に設けられ、第3の側面S3および第4の側面S4がそれぞれ、第1の主面A1および第2の主面A2の長辺側に設けられる。
【0165】
正極集電体露出部4Cは、第1の側面S1の側に設けられているのに対して、負極集電体露出部5Cは、第2の側面S2の側に設けられている。正極タブ31は、第1の側面S1の側で正極集電体露出部4Cと接続されると共に、第3の側面S3の側から外装材3の外に導出されている。これに対して、負極タブ41は、第2の側面S2の側で負極集電体露出部5Cと接続されると共に、第3の側面S3の側から外装材3の外に導出されている。
【0166】
(電極タブ)
図26Aは、正極タブの形状の一例を示す斜視図である。正極タブ31は、例えば、電池素子2の第1の側面S1および第3の側面S3に倣うように屈曲された屈曲部32と、第3の側面S3に対して鉛直方向に導出される導出部33とを有する。屈曲部32は、例えば、電池素子2の第2の側面S1および第3の側面S3に対向する裏面Saと、この裏面Saとは反対側の表面Sbとを有する。屈曲部32は、例えば、電池素子2の第1の主面A1の側から見ると、略L字状の形状を有している。より具体的には、屈曲部32は、正極集電体露出部4Cと接続される接続部32aと、この接続部32aの一端から、接続部32aの裏面Saに対して略鉛直方向に延在された延在部32bとを有する板状部材である。導出部33は、延在部32bの表面Saに対して略鉛直方向に立設されている。
【0167】
図26Bは、負極タブの形状の一例を示す斜視図である。負極タブ41は、例えば、電池素子2の第2の側面S2および第3の側面S3に倣うように屈曲された屈曲部42と、第3の側面S3に対して鉛直方向に導出される導出部43とを有する。屈曲部42は、例えば、電池素子2の第2の側面S1および第3の側面S3に対向する裏面Saと、この裏面Saとは反対側の表面Sbとを有する。屈曲部42は、例えば、電池素子2の第1の主面A1の側から見ると、略L字状の形状を有している。より具体的には、屈曲部42は、負極集電体露出部5Cと接続される接続部42aと、この接続部42aの一端から、接続部42aの裏面Saに対して略鉛直方向に延在された延在部42bとを有する板状部材である。導出部43は、延在部42bの表面Saに対して略鉛直方向に立設されている。
【0168】
正極タブ31および負極タブ41の有効断面積は、二次電池1の定格容量(0.2C放電容量)あたりで0.1〜3.0mm2/Ahが好ましく、0.5〜1.0mm2/Ahがより好ましい。正極タブ31および負極タブ41の有効断面積が0.1mm2/Ah未満であると、電池容量に対して正極タブ31および負極タブ41の有効断面積が小さいため、大電流での入出力時に正極タブ31および負極タブ41が発熱してしまう。正極タブ31および負極タブ41が発熱すると、外装材3とのシール部の樹脂が軟化し、リーク不良が発生する虞がある。一方、正極タブ31および負極タブ41の有効断面積が3.0mm2/Ahを超えると、電池内部における正極タブ31および負極タブ41の割合が大きくなるため、体積エネルギー密度が低下してしまう。また、有効断面積が大きいために、外装材3とのシール不良が発生しやすくなる虞がある。ここで、有効断面積とは、正極タブ31または負極タブ41、およびその接合部の垂直断面積のうちで、最小の断面積を意味する。なお、垂直断面積は、二次電池1の充放電時に流れる電流の方向に対して垂直な断面の面積を意味する。また、定格容量(Ah)は、二次電池1を0.2C相当の電流値で放電したときに取り出せる電気量をいう。
【0169】
正極タブ31および負極タブ41の材料としては、導電性に優れた金属を主成分とするものが好ましい。このような金属としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、リン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、およびニッケル(Ni)などからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましい。具体的には例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、リン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)などの単体、またはこれらを2種以上含む合金を用いることが好ましい。合金としては、ステンレス鋼(Stainless Used Steel:SUS)、銅合金(Cu合金)などを用いることが好ましい。
【0170】
正極タブ31および負極タブ41の両方の導電率が、70(%IACS)以上を有することが好ましい。これにより、上述の有効断面積が0.1〜3.0mm2/Ahの間においても大電流での入出力時にも正極タブ31および負極タブ41での発熱が抑制される。ここで、IACS%は、導電率測定器(フェルスター社製シグマテスタ)を用いて体積抵抗率を測定し、焼きなまし銅の導電率1.7241×10-2μΩmに対する割合から算出したものである。
【0171】
(電極タブの形状例)
図27A〜図28Cは、正極タブの第1〜第7の形状例を示す斜視図である。なお、正極タブ31と負極タブ41との形状は、対称な関係にあるため、以下では、正極タブ31の形状例のみについて説明し、負極タブ41の形状例についての説明は省略する。
【0172】
図27Aでは、延在部32bの表面Sbの底辺側に導出部33が立設された例が示されている。このような構成は、電池素子2の第1の主面(上面)A1を覆う側に、深絞り加工により予め凹部9が形成された外装材3を用いる場合に好ましい。
【0173】
図27Bでは、延在部32bの表面Sbの上辺側に導出部33が立設された例が示されている。このような構成は、電池素子2の第2の主面(下面)A2を覆う側に、深絞り加工により予め凹部9が形成された外装材3を用いる場合に好ましい。
【0174】
図27Cでは、延在部32bの表面Sbの中央部に導出部33が立設された例が示されている。このような構成は、電池素子2の第1の主面(上面)A1および第2の主面(下面)A2を覆う側にそれぞれ、深絞り加工により予め凹部9が形成された外装材3を用いる場合に好ましい。
【0175】
延在部32bの表面Sbにて導出部33が立設される位置は特に限定されるものではなく、表面Sbの任意の位置とすることができ、例えば外装材3の凹部9の位置に応じて適宜選択することができる。
【0176】
図27Dでは、屈曲部32の角部に対して面取り加工が施された例が示されている。このような面取り加工は、屈曲部32の裏面Saと表面Sbのうち、少なくとも表面Sbに施されることが好ましく、裏面Saおよび表面Sbの両方に施されるようにしてもよい。表面Saに面取り加工を施すことで、二次電池1の製造時や使用時に、振動によって正極タブ31の角部が電池素子2や外装材3を破損することを抑制できる。屈曲部32の裏面Saにも面取り加工を施す場合には、電池素子2の角部にも表面Saと同様に面取り加工を施すことが好ましい。電池素子2の角部と屈曲部32の角部との間の隙間を無くし、両者を密着させることができるからである。
【0177】
面取り加工としては、例えば、C面加工、R面加工などが挙げられ、正極タブ31と負極タブ41との角部で異なる面取り加工が施されているようにしてもよい。例えば、正極タブ31と負極タブ41との角部のうち、一方をC面加工として、他方をR面加工としてもよい。
【0178】
図28Aでは、別々に形成された屈曲部32と導出部33とを用いた負極タブ41の例が示されている。導出部33は、例えば、矩形状を有し、その一辺に立設された接合部38aを有している。この接合部38aが、屈曲部32の延在部32bの表面Sbに接合されている。
【0179】
図28Bでは、図27Aに示したものよりも導出部33の幅を狭くし、導出部33と屈曲部32との幅をほぼ同程度とした例が示されている。
【0180】
図28Cでは、導出部33の先端部分にネジ部が設けられた例が示されている。これにより、ナット締めによる電池間接続方式にも対応できる。例えば、一方の二次電池1の導出部33と、他の二次電池1の導出部35とを、ナット34を介して電気的に接続することができる。
【0181】
(タブの作製方法)
正極タブ31および負極タブ41は、例えば、成型工程、プレス工程、屈折工程、および溶接工程などを適宜組み合わせて作製することができる。以下に、例として、正極タブ31の作製方法について説明する。
【0182】
(第1の例)
図29A〜図29Cは、正極タブの作製方法の第1の例を示す工程図である。まず、例えば打ち抜き加工などにより、金属片を加工する。これにより、図29Aに示すように、細長い矩形部36と、その長手方向の一端に設けられた幅広の矩形部37とからなる金属片が形成される。
【0183】
次に、幅広の矩形部37に対してL字曲げ加工を施す。これにより、図29Bに示すように、細長い矩形部36が幅広の矩形部37に対して立設されて、導出部33が形成される。次に、細長い矩形部36に対してL字曲げ加工を施す。これにより、図29Cに示すように、屈曲部32と導出部33とを有する正極タブ31が形成される。
【0184】
(第2の例)
図30A〜図30Cは、正極タブの作製方法の第2の例を示す工程図である。まず、例えば打ち抜き加工などにより、図30Aに示すように、矩形状の金属片を作製する。次に、金属片に対してL字加工を施す。これにより、図30Bに示すように、矩形状の金属の一辺側が立設されて、接合部38aを有する導出部33が形成される。次に、別工程にて作製された屈曲部32の延在部32bの表面Sbに対して、導出部33の接合部38aを接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接などを用いることができる。
【0185】
(被覆層)
正極タブ31および負極タブ41の少なくとも一方の表面が被覆層により被覆されていることが好ましく、正極タブ31および負極タブ41の両方の表面が被覆層により被覆されていることがより好ましい。被覆層としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0186】
(接合面積)
図31は、正極集電体露出部と正極タブとの接合部を拡大して表す斜視図である。正極集電体露出部4Cと正極タブ31との接合面積Scが、正極タブ31の有効断面積Ascと、正極集電体露出部幅wcと、電池素子2の厚みBと、以下の式(11)の関係を満たすことが好ましい。
Asc≦Sc≦wc×B ・・・(11)
【0187】
Asc>Scであると、大電流の充放電時に、正極集電体露出部4Cと正極タブ31との接合部に発熱が集中し、電池寿命を低下する虞がある。一方、Sc>wc×Bであると、接合部が正極集電体露出部4Cの幅または電池素子2の厚みよりもはみ出すため、二次電池1の体積エネルギー密度を低下させてしまう。また、はみ出た正極タブ31や正極集電体露出部4Cによって、アルミラミネートフィルムなどの外装材内部の樹脂層が破損し、アルミ層などと電気的に接触して内部ショートを引き起こす虞がある。
【0188】
負極集電体露出部5Cと負極タブ41との接合面積Saが、負極タブ41の有効断面積Asaと、負極集電体露出部幅waと、電池素子2の厚みBと、以下の式(12)の関係を満たすことが好ましい。
Asa≦Sa≦wa×B ・・・(12)
【0189】
Asa>Saであると、大電流の充放電時に、負極集電体露出部5Cと負極タブ41との接合部に発熱が集中し、電池寿命を低下する虞がある。一方、Sa>wa×Bであると、接合部が負極集電体露出部5Cの幅または電池素子2の厚みよりもはみ出すため、二次電池1の体積エネルギー密度を低下させてしまう。また、はみ出た正極タブ31や負極集電体露出部5Cによって、アルミラミネートフィルムなどの外装材内部の樹脂層が破損し、アルミ層などと電気的に接触して内部ショートを引き起こす虞がある。
【0190】
(電極タブと電池素子との間の絶縁部材)
正極タブ31および負極タブ41と電池素子2との間の少なくとも一部に、絶縁部材(以下インシュレータと適宜称する。)をさらに設けることが好ましい。より具体的には、正極タブ31の屈曲部32と、電池素子2の第1の側面S1および第3の側面S3の少なくとも一方の側面との間にインシュレータをさらに備えることが好ましい。また、負極タブ41の屈曲部42と、電池素子2の第2の側面S2および第3の側面S3の少なくとも一方の側面との間にインシュレータをさらに備えることが好ましい。電池素子2の最外層に正極4または負極5を設ける構成を採用した場合にも、正極4または負極5が、振動などにより正極タブ31または負極タブ41と接触し、内部短絡が発生することを抑制できる。すなわち、二次電池1の安全性を向上し、かつ、二次電池1の性能の低下を抑制できる。
【0191】
図32A〜図32Dは、絶縁部材の形状例を示す斜視図である。図32Aでは、電池素子2の第3の側面S3と、正極タブ31および負極タブ41との間に、インシュレータ51を設けた例が示されている。
【0192】
図32Bでは、インシュレータ51に1または複数の孔部51aを設けた例が示されている。このように孔部51aを設けることで、電解液の電池素子内部への注液性を確保することができる。孔部51aの形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形、不定形などが挙げられるが、これらに特に限定されるものではなく、2以上の形状を組み合わせて用いるようにしてもよい。孔部51aの配列パターンとしては、規則的パターンおよび不規則的パターンのいずれを用いることも可能である。孔部51aの形成方法としては、例えばパンチング加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0193】
図32Bでは、インシュレータ51に1または複数の切り欠き部51bを設けた例が示されている。このように切り欠き部51bを設けることで、電解液の電池素子内部への注液性を確保することができる。切り欠き部51bの形状としては、例えば、部分円形、部分楕円形、多角形、不定形などが挙げられるが、これらに特に限定されるものではなく、2以上の形状を組み合わせて用いるようにしてもよい。切り欠き部51bの配列パターンとしては、規則的パターンおよび不規則的パターンのいずれを用いることも可能である。切り欠き部51bの形成方法としては、例えばパンチング加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0194】
図32Dでは、インシュレータ51をコの字状とし、電池素子2の第1の側面S1、第2の側面S2および第3の側面S3を覆う例が示されている。このようにすることで、第3の側面に加えて、第1の側面S1および第2の側面S2における内部短絡も抑制することができる。すなわち、安全性をさらに向上することができる。また、インシュレータ51をロの字状とし、電池素子2の側面Sをすべて覆うようにしてもよい。
【0195】
インシュレータ51の形状としては、例えば、板状、シート状、フィルム状を挙げることができるが、これに限定されるものではない。インシュレータ51の材料としては、高分子樹脂または不織布などが好ましい。高分子樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)を用いることが好ましい。
【0196】
インシュレータ51は、正極タブ31および負極タブ41と電池素子2との間の絶縁を可能なものであればよく、上述の例に限定されるものではい。例えば、インシュレータ51として、粘着性の絶縁部材を用いるようにしてもよい。この場合、粘着性の絶縁部材は、例えば、正極タブ31および負極タブ41の裏面Sb、または電池素子2の第1の側面S1、第2の側面S2および第3の側面S3に貼り合わされる。粘着性の絶縁部材としては、例えば、粘着性の絶縁テープを用いることができる。また、流動性を有する樹脂材料を、正極タブ31および負極タブ41と電池素子2の側面Sとの間に充填し、固化するようにしてもよい。樹脂材料としては、例えば、ホットメルト樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、感光性樹脂を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0197】
インシュレータ51の厚みは、好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.2〜1.0mm以下の範囲内である。インシュレータ51の厚みが0.2mm未満であると、振動などが加えられる環境下で二次電池1を使用した場合に、長期的な絶縁性を確保できなくなる傾向がある。一方、インシュレータ51の厚みが1.0mmを超えると、二次電池1に対するインシュレータ51の体積割合が多くなり、二次電池1の体積エネルギー密度が低下してしまう傾向がある。
【0198】
インシュレータ51の幅は、正極タブ31および負極タブ41の幅以上、電池素子2の厚み以下であることが好ましい。インシュレータ51の幅が正極タブ31および負極タブ41の幅未満であると、インシュレータ51からはみ出した正極タブ31または負極タブ41の部分が、負極5または正極4と短絡する虞がある。一方、インシュレータ51の幅が電池素子2の厚みを超えると、インシュレータ51の端面が外装材3を突き破る虞がある。
【0199】
インシュレータ51の形状は特に限定されるものではないが、矩形状、コの字状、ロの字状、またはそれらの角部が切り落とされた形状であることが好ましい。角部が切り落とされた形状としては、角部に曲率Rが付されて、角部がR形状とされた形状が好ましく、その曲率Rは0.5〜2.0の範囲内であることが好ましい。角部がR形状とされた矩形状などの形状は、加工が容易であるため、生産性に優れ、かつ、インシュレータ51の角部が外装材3を突き破る危険性が低いからである。
【0200】
(セパレータの一部を絶縁部材として使用する例)
インシュレータ51をさらに備える代わりに、セパレータ6の一部を正極タブ31および負極タブ41と電池素子2との間を絶縁する絶縁部材として使用するようにしてもよい。
【0201】
図33Aは、正極タブと電池素子とを絶縁する絶縁部材としてセパレータを使用した第1の例を示す断面図である。電池素子2に含まれるセパレータ6の一部または全部が正極4および負極5よりも大きく設定され、積層された正極4および負極5からセパレータ6の余剰部6aがはみ出すようになっている。そして、このはみ出した余剰部6aにより電池素子2の第3の側面S3が覆われる。これにより、電池素子2の第3の側面S3と正極タブ31とを、セパレータ6の余剰部6aにより絶縁することができる。
【0202】
図33Bは、正極タブと電池素子とを絶縁する絶縁部材としてセパレータを使用した第2の例を示す断面図である。電池素子2は、最外層電極である負極5の表面にさらに積層されたセパレータ6を有する。このセパレータ6は、積層された正極4および負極5よりも大きく設定され、電池素子2の最外層からからセパレータ6の余剰部6aがはみ出すようになっている。そして、このはみ出した余剰部6aにより電池素子2の第3の側面S3が覆われる。これにより、電池素子2の第3の側面S3と正極タブ31とを、セパレータ6の余剰部6aにより絶縁することができる。また、電池素子2の第1の側面S1および/または第2の側面S2も余剰部6aにより覆う構成としてもよい。
【0203】
図33Cは、正極タブと電池素子とを絶縁する絶縁部材としてセパレータを使用した第3の例を示す断面図である。第2の実施形態において、つづら折りにより折り畳まれるセパレータ12の長手方向の一端を余分に長くし、最外層電極である正極4を覆うとともに、電池素子2の第3の側面S3に周り込む余剰部12aを設けるようにしてもよい。これにより、電池素子2の第3の側面S3と正極タブ31とを、セパレータ12の余剰部12aにより絶縁することができる。
【0204】
(電極タブと外装材との間の絶縁部材)
正極タブ31および負極タブ41と外装材3との間の少なくとも一部に、絶縁部材(以下インシュレータと適宜称する。)52をさらに設けることが好ましい。二次電池1の使用中に振動摩擦などが原因で、正極タブ31および負極タブ41、特にそれらの端部が外装材3の表面の樹脂層を突き破り、外装材3のアルミ層などと電気的に接触して内部ショート(内部短絡)が発生することを抑制できる。
【0205】
図34Aは、インシュレータの形状の第1の例を示す斜視図である。図34Bは、インシュレータの形状の第1の例を示す分解斜視図である。この第1の例では、インシュレータ52をコの字状とし、電池素子2の第1の側面S1、第2の側面S2および第3の側面S3を覆う例が示されている。
【0206】
図35Aは、インシュレータの形状の第2の例を示す斜視図である。図35Bは、インシュレータの形状の第2の例を示す分解斜視図である。この第2の例では、インシュレータ52をロの字状とし、電池素子2の側面Sのすべてを覆う例が示されている。
【0207】
インシュレータ52の形状としては、例えば、板状、シート状、フィルム状を挙げることができるが、これに限定されるものではない。インシュレータ52の材料としては、高分子樹脂または不織布などが好ましい。高分子樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)を用いることが好ましい。
【0208】
インシュレータ52の厚みは、好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.2〜1.0mm以下の範囲内である。インシュレータ52の厚みが0.2mm未満であると、振動などが加えられる環境下で二次電池1を使用した場合に、長期的な絶縁性を確保できなくなる傾向がある。一方、インシュレータ52の厚みが1.0mmを超えると、二次電池1に対するインシュレータ52の体積割合が多くなり、二次電池1の体積エネルギー密度が低下してしまう傾向がある。
【0209】
インシュレータ52の幅は、正極タブ31および負極タブ41の幅以上、電池素子2の厚み以下であることが好ましい。インシュレータ52の幅が正極タブ31および負極タブ41の幅未満であると、インシュレータ52からはみ出した正極タブ31または負極タブ41の部分が、外装材3の表面の樹脂層を突き破り、外装材3のアルミ層などと電気的に接触して内部ショート(内部短絡)が発生する虞がある。一方、インシュレータ52の幅が電池素子2の厚みを超えると、インシュレータ52の端面が外装材3を突き破る虞がある。
【0210】
インシュレータ52に1または複数の孔部を設けることが好ましい。このように孔部を設けることで、電解液の電池素子内部への注液性を確保することができる。孔部の形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形、不定形などが挙げられるが、これらに特に限定されるものではなく、2以上の形状を組み合わせて用いるようにしてもよい。孔部の配列パターンとしては、規則的パターンおよび不規則的パターンのいずれを用いることも可能である。孔部の形成方法としては、例えばパンチング加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0211】
インシュレータ52に1または複数の切り欠き部を設けることが好ましい。このように切り欠き部を設けることで、電解液の電池素子内部への注液性を確保することができる。切り欠き部の形状としては、例えば、部分円形、部分楕円形、多角形、不定形などが挙げられるが、これらに特に限定されるものではなく、2以上の形状を組み合わせて用いるようにしてもよい。切り欠き部の配列パターンとしては、規則的パターンおよび不規則的パターンのいずれを用いることも可能である。切り欠き部の形成方法としては、例えばパンチング加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0212】
インシュレータ52の形状は特に限定されるものではないが、矩形状、コの字状、ロの字状、またはそれらの角部が切り落とされた形状であることが好ましい。角部が切り落とされた形状としては、角部に曲率Rが付されて、角部がR形状とされた形状が好ましく、その曲率Rは0.5〜2.0の範囲内であることが好ましい。角部がR形状とされた矩形状などの形状は、加工が容易であるため、生産性に優れ、かつ、インシュレータ52の角部が外装材3を突き破る危険性が低いからである。
【0213】
(4−2)二次電池の製造方法
次に、図36A〜図37Cを参照しながら、二次電池の製造方法の一例について説明する。
【0214】
まず、タブ接続工程の前段の工程までを、第1の実施形態と同様にして、電池素子2を作製する。これにより、図36Aに示すように、電池素子2の第1の側面S1の側に、折り曲げられた正極集電体露出部4Cが形成され、電池素子2の第2の側面S2の側に、折り曲げられた負極集電体露出部5Cが形成される。
【0215】
次に、図36Bに示すように、正極タブ31の接続部32aの表面Sbを、正極集電体露出部4Cに接合するとともに、負極タブ41の接続部42aの表面Sbを、負極集電体露出部5Cに接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接などを用いることができる。
【0216】
次に、第1の実施形態と同様にして、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5CにU字折り曲げ部を形成する。これにより、図36Cに示すように、正極タブ31の屈曲部32が電池素子2の第1の側面S1および第3の側面S3に倣うように配置されるとともに、負極タブ41の屈曲部42が電池素子2の第2の側面S2および第3の側面S3に倣うように配置される。また、正極タブ31の導出部33が電池素子2の第3の側面S3に立設されるとともに、負極タブ41の導出部43が電池素子2の第3の側面S3に立設される。
【0217】
次に、図36Dに示すように、外装材3の凹部9に、電池素子2を収容した後、図37Aに示すように、外装材3を中央部にて折り返して、外装材3の周縁部を重ね合わせる。次に、重ね合わせた外装材3の周縁部を熱融着などにより融着することにより、その周縁部を封止する。この際、図37Bに示すように、正極タブ31および負極タブ41と外装材3との間に、密着フィルムであるシーラント材10を配置することが好ましい。次に、必要に応じて、図37Cに示すように、融着された外装材2の両端部を折り曲げて、立設させる。これにより、目的とする二次電池1が得られる。
【0218】
本発明の第4の実施形態に係る二次電池では、従来の二次電池に比べて正極端子としての正極集電体露出部4Cの幅が大きくなるように構成されている。正極集電体露出部4Cの幅を大きく構成することにより、大電流の入出力が可能となる。また、正極集電体露出部4Cの幅と正極活物質層4Bの幅とが等しくなるように構成することにより、正極4の製造工程においては、正極集電体露出部4Cを細く形成するための打ち抜きや切り取りなどの工程を行う必要がないため、製造工程を簡略化することができる。
【0219】
<5.第5の実施形態>
[二次電池を用いたバッテリユニットおよびバッテリモジュール]
以下、図19乃至図24を参照しながら、本発明に係る二次電池を用いて構成されたバッテリユニットおよびバッテリモジュールについて説明する。
【0220】
[バッテリユニット]
図19Aおよび図19Bは、本発明を適用したバッテリユニットの構成例を示す斜視図である。図19Aおよび図19Bには、それぞれ異なる側から見たバッテリユニット100が示されており、図19Aに主に示されている側をバッテリユニット100の正面側とし、図19Bに主に示されている側をバッテリユニット100の背面側とする。図19Aおよび図19Bに示すように、バッテリユニット100は、二次電池1−1および1−2、ブラケット110、並びに、バスバー120−1および120−2を備えて構成される。二次電池1−1および1−2は上述した第1乃至第4の実施形態のいずれかの構成を採用した二次電池である。
【0221】
ブラケット110は、二次電池1−1および1−2の強度を確保するための支持具であり、ブラケット110の正面側に二次電池1−1が装着され、ブラケット110の背面側に二次電池1−2が装着される。なお、ブラケット110は、正面側および背面側のどちらから見ても、ほぼ同じ形状をしているが、下側の一方の角部分に面取り部111が形成されており、面取り部111が右下に見える側を正面側とし、面取り部111が左下に見える側を背面側とする。
【0222】
バスバー120−1および120−2は、略L字形状をした金属の部材であり、二次電池1−1および1−2のタブに接続される接続部分がブラケット110の側面側に配置され、バッテリユニット100の外部と接続されるターミナルがブラケット110の上面に配置されるように、ブラケット110の両側面にそれぞれ装着される。
【0223】
図20は、バッテリユニット100が分解された状態を示す斜視図である。図20の上側をバッテリユニット100の正面側とし、図20の下側をバッテリユニット100の背面側とする。以下、二次電池1−1において内部に電池素子が収容された凸状部分を二次電池本体1−1Aと称する。同様に、二次電池1−2において内部に電池素子が収容された凸状部分を二次電池本体1−2Aと称する。
【0224】
そして、二次電池1−1および1−2は、凸形状となっている二次電池本体1−1Aおよび1−2A側を互いに向い合せた状態で、ブラケット110に装着される。つまり、二次電池1−1は正極タブ7−1および負極タブ8−1が設けられる面が正面側を向き、二次電池2−2は正極タブ7−2および負極タブ8−2が設けられる面が背面側を向くように、ブラケット110に装着される。
【0225】
ブラケット110は、外周壁112およびリブ部113を有している。外周壁112は、二次電池1−1および1−2の二次電池本体1−1Aおよび1−2Aの外周よりも若干広く、即ち、二次電池1−1および1−2が装着された状態で二次電池本体1−1Aおよび1−2Aを囲うように形成される。リブ部113は、外周壁112の内側の側面に外周壁112の厚み方向の中央部分から内側に向かって伸びるように形成される。
【0226】
図20の構成例では、二次電池1−1および1−2が、ブラケット110の正面側および背面側から外周壁112内に挿入され、両面に粘着性を有する両面テープ130−1および130−2により、ブラケット110のリブ部113の両面に貼着される。両面テープ130−1および130−2は、二次電池1−1および1−2の外周端に沿った所定の幅の略ロ字形状をしており、ブラケット110のリブ部113は、両面テープ130−1および130−2が貼着する面積だけ設けられていればよい。
【0227】
このように、リブ部113は、二次電池1−1および1−2の外周端に沿った所定の幅だけ、外周壁112の内側の側面から内側に向かって伸びるように形成されており、リブ部113よりも内側は、開口部となっている。従って、ブラケット110の正面側から両面テープ130−1によりリブ部113に貼着される二次電池1−1と、ブラケット110の背面側から両面テープ130−2によりリブ部113に貼着される二次電池2−2との間では、この開口部によって隙間が生じている。
【0228】
即ち、ブラケット110の中央部分に開口部が形成されていることで、二次電池1−1および1−2は、リブ部113の厚みと両面テープ130−1および130−2の厚みとを合計した寸法の隙間を有してブラケット110に装着される。例えば、二次電池1−1および1−2には、充放電やガスの発生などにより多少の膨らみが生じることがあるが、この開口部により設けられる間隙が、二次電池1−1および1−2の膨らみを逃がす空間となる。従って、二次電池1−1および1−2が膨らんだ部分によってバッテリユニット100全体の厚みが増加するなどの影響を排除することができる。
【0229】
また、二次電池1−1および1−2をリブ部113に接着する際に、接着面積が広い場合にはかなりの圧力が必要となるが、リブ部113の接着面を外周端に限定することにより、効率よく圧力をかけて、容易に接着することができる。これにより、製造時に二次電池1−1および1−2にかかるストレスを軽減することができる。
【0230】
図20に示すように、1つのブラケット110に2つの二次電池1−1および1−2を取り付けることにより、例えば、1つのブラケットに1つの二次電池を取り付ける場合よりも、ブラケット110の厚みと空間を削減することができる。これにより、エネルギー密度を向上させることができる。
【0231】
また、バッテリユニット100の厚み方向の剛性を、2枚の二次電池1−1および1−2を貼り合わせる相乗効果により得られるため、ブラケット110のリブ部113を薄肉化することができる。即ち、例えば、リブ部113の厚みを1mm以下(樹脂成型の限界の厚み程度)にしても、二次電池1−1および1−2をリブ部113の両側から貼り合わせることで、バッテリユニット100全体として十分な剛性を得ることができる。そして、リブ部113の厚みを薄くすることにより、バッテリユニット100の厚みが薄くなり容積が縮小することになる結果、バッテリユニット100のエネルギー密度を向上させることができる。
【0232】
また、バッテリユニット100は、外的なストレスに対する耐性を高めるため、二次電池1−1および1−2の外周面(両側面および上下面)が、ブラケット110の外周壁112の内周面と接触しない構造とし、二次電池1−1および1−2が有する広い面でリブ部113に貼り合わされる構造となっている。
【0233】
このような構成により、エネルギー密度が高く、かつ、外的なストレスに強いバッテリユニット100を実現することができる。
【0234】
[バッテリモジュール]
次に、図21乃至24を参照して、バッテリユニット100が組み合わされたバッテリモジュール200の構成例について説明する。バッテリモジュール200は、モジュールケース210、ゴムシート部220、二次電池部230、二次電池カバー240、固定シート部250、電気パーツ部260、およびボックスカバー270を備えて構成されている。
【0235】
モジュールケース210は、バッテリユニット100を収納して使用機器に搭載するためのケースであり、図21の構成例では、24個のバッテリユニット100が収納可能なサイズとされている。
【0236】
ゴムシート部220は、バッテリユニット100の底面に敷かれて、衝撃などを緩和するためのシートである。ゴムシート部220では、3個のバッテリユニット100ごとに1枚のゴムシートが設けられ、24個のバッテリユニット100に対応するために8枚のゴムシートが用意される。
【0237】
二次電池部230は、図21の構成例では、24個のバッテリユニット100が組み合わされて構成されている。また、二次電池部230では、3個のバッテリユニット100が並列に接続されて並列ブロック231を構成し、8個の並列ブロック231が直列に接続される接続構成となっている。
【0238】
二次電池カバー240は、二次電池部230を固定するためのカバーであり、二次電池1のバスバー120に対応した開口部が設けられている。
【0239】
固定シート部250は、二次電池カバー240の上面に配置され、ボックスカバー270がモジュールケース210に固定されたときに、二次電池カバー240およびボックスカバー270に密着して固定するシートである。
【0240】
電気パーツ部260は、バッテリユニット100の充放電を制御する充放電制御回路などの電気的な部品を有する。充放電制御回路は、例えば、二次電池部230において2本の列をなすバスバー120の間の空間に配置される。
【0241】
ボックスカバー270は、モジュールケース210に各部が収納された後に、モジュールケース210を閉鎖するためのカバーである。
【0242】
ここで、バッテリモジュール200では、3個のバッテリユニット100が並列に接続された並列ブロック231が直列に接続されて二次電池部230が構成されており、この直列の接続が、電気パーツ部260が有する金属板材で行われる。従って、二次電池部230では、並列ブロック231ごとに端子の向きが交互になるように、即ち、隣り合う並列ブロック231どうしでプラスの端子とマイナスの端子とが並ぶように、並列ブロック231がそれぞれ配置される。そこで、バッテリモジュール200では、隣り合う並列ブロック231で同極の端子が並ぶことを回避させるような工夫が必要である。
【0243】
例えば、図22に示すように、バッテリユニット100−1乃至100−3により構成される並列ブロック231−1と、バッテリユニット100−4乃至100−6により構成される並列ブロック231−2とでは、プラスの端子とマイナスの端子とが隣り合うような配置で、モジュールケース210に収納される。このような配置となるように規制するために、バッテリユニット100のブラケット110の下側の一方の角部分に形成されている面取り部111が利用される。
【0244】
例えば、図23および図24に示すように、並列ブロック231では、バッテリユニット100−1乃至100−3は、それぞれの面取り部111−1乃至111−3が同じ向きとなるように組み合わされており、面取り領域280を形成する。そして、モジュールケース210には、面取り領域280の傾斜に応じた傾斜部290が形成されており、傾斜部290は、二次電池1の3個分の厚みに応じた長さで、交互に配置されている。
【0245】
このように、並列ブロック231の面取り領域280と、モジュールケース210の傾斜部290とにより、並列ブロック231を間違った向きでモジュールケース210に収納しようとした場合には、並列ブロック231の底側の角部がモジュールケース210の傾斜部290に当接することになる。この場合、並列ブロック231がモジュールケース210の底面から浮き上がった状態となるため、並列ブロック231がモジュールケース210に完全に収納されなくなる。これにより、バッテリモジュール200では、隣り合う並列ブロック231で同極の端子が隣り合って並ぶことが回避される。
【実施例】
【0246】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。上述のようにして得られた二次電池に係る実施例1−1〜実施例1−9および比較例1−1〜比較例1−10について、出力密度の測定試験を行った。
【0247】
<実施例1−1>
(正極作製)
正極は以下のように作製した。まず、リン酸鉄リチウム90質量部、ポリフッ化ビニリデン5質量部、カーボンブラック5質量部、分量外のN−メチルピロリドンをミキサーで混錬、さらに所望の粘度になるようにN−メチルピロリドン(NMP)を添加し分散させ、正極合剤スラリーを得た。次に、正極集電体露出部が形成されるように正極合剤スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層を形成した。その後、矩形状に切断し、正極を得た。正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係が(wc/Wc)=1.0となるようにし、正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係が(dc/Dc)=0.1となるようにした。
【0248】
(負極作製)
負極は以下のようにして作製した。まず、人造黒鉛94質量部、ポリフッ化ビニリデン5質量部、気相成長炭素繊維(VGCF)1質量部、分量外のN−メチルピロリドンを混錬し、負極合剤スラリーを得た。次に、負極集電体露出部が形成され、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=1.0となるように、負極合剤スラリーを厚さ8μmの銅箔の両面に塗布、乾燥後、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層を形成した。その後、これを矩形状に切断し、負極を得た。負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係が(wa/Wa)=1.0となるようにし、負極集電体露出部の奥行きdaと負極活物質層の奥行きDaとの関係が(da/Da)=0.1となるようにした。
【0249】
なお、負極活物質層、正極活物質層をそれぞれ負極集電体、正極集電体に塗布形成する前に、あらかじめ負極合剤の重量あたりのリチウム吸蔵能力、正極合剤の重量あたりのリチウム放出能力を測定しておき、負極合剤層の単位面積あたりのリチウム吸蔵能力が、正極合剤層の単位面積あたりのリチウム放出能力を超えることのないようにした。
【0250】
(電池素子作製)
電池素子は以下のようにして作製した。まず、厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔フィルムを図8に示す形状に切断し、これをセパレータとした。次に、上述のようにして得られた負極26枚、正極25枚、セパレータ50枚を、図8に示すように、負極、セパレータ、正極、・・・、正極、セパレータ、負極の順で積層した。なお、正極と負極とは正極集電体露出部と負極集電体露出部とが反対向きになるように積層した。電池素子の厚みは8mmとなるようにした。これにより、正極合剤層、セパレータおよび負極合剤層からなる基本積層単位を50層分内包する電池素子が得られた。なお、電池素子の上下最外層は負極合剤層となるが、これらの部分は正極と対向していないため電池反応には寄与するものではない。また、この積層に際しては、積層方向から見て、正極合剤層の投影面が負極合剤層の投影面の内側に収まるように、負極と正極の相対位置を調整した。
【0251】
(二次電池作製)
次に、正極集電体露出部25枚を同時にアルミ(Al)製の正極タブに超音波溶接により接続した。同様にして、負極集電体露出部26枚を同時にニッケル(Ni)製の負極タブに超音波溶接した。次に、外装材であるアルムラミネートフィルムとして、無延伸ポリプロピレン(CPP)からなる樹脂層、接着層、アルミ箔、接着層、ナイロンからなる樹脂層を順次積層した矩形状のものを2枚準備した。2枚のアルミラミネートフィルムの一方には電池素子を収容する凹部を形成した。次に、正極タブおよび負極タブの一端を外部に引き出すようにして電池素子を一方のアルミラミネートフィルムの凹部に収容した。次に、他方のアルムラミネートフィルムを電池素子を収容した凹部を覆うように一方のアルミラミネートフィルムに重ね合わせて、1辺を除く周縁部を熱融着して袋状とした。
【0252】
次に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートを50:50の質量比で混合し、0.7kmol/kgのLiPF6を溶解して電解液を調製した。次に、袋状のアルミラミネートフィルムの開口部側から電解液を注入し、電池素子に含浸させたのち、開口部を熱融着して封止した。
以上により、目的とする二次電池が作製された。
【0253】
<実施例1−2>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.9とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0254】
<実施例1−3>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.8とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0255】
<実施例1−4>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.7とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0256】
<実施例1−5>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.6とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0257】
<比較例1−1>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.5とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0258】
<比較例1−2>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.4とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0259】
<比較例1−3>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.3とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0260】
<比較例1−4>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.2とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0261】
<比較例1−5>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.1とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0262】
<実施例1−6>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=1.0とし、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.9として、実施例1−6の二次電池を作製した。
【0263】
<実施例1−7>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.8とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0264】
<実施例1−8>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.7とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0265】
<実施例1−9>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.6とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0266】
<比較例1−6>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.5とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0267】
<比較例1−7>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.4とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0268】
<比較例1−8>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.3とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0269】
<比較例1−9>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.2とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0270】
<比較例1−10>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.1とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0271】
(出力密度の測定試験)
出力密度は充電深度(SOC:State of charge)50%の状態の電池に0.5C、1C、2C、3C、4Cの電流を10秒間印加して、それぞれの電流値における10秒目の電圧を測定し、電流−電圧特性から求めた。すなわち、出力(Po)は電池の放電終止電圧(Vd=2.0V)と電流−電圧特性の直線を、放電終止電圧まで外挿したときの電流値(Id)を用いて、式Po=Id×Vdより求めた。このときの出力(Po)を電池の重量で除することで出力密度とした。
【0272】
試験結果を表1に示す。
【0273】
【表1】
【0274】
表1に示すように、正極についての実施例1−1〜実施例1−5では、比較例1−1〜比較例1−5と比べて高い出力密度を得ることができた。また、負極についての実施例1−6〜実施例1−9においても、比較例1−6〜比較例1−10と比べて高い出力密度を得ることができた。また、wc/Wcの値およびwa/Waの値が1.0に近似していくに従い出力密度が高くなっていくことがわかった。したがって、出力密度の観点からは集電体露出部の幅は大きい方が好ましいということがわかった。
【0275】
また、以下に示す実施例2−1〜実施例2−6の二次電池について、放電容量維持率の測定試験を行った。
<実施例2−1>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.02とし、電池素子の厚みを6.3mmとし、電池放電容量を10Ahとした以外は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0276】
<実施例2−2>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層4Bの奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.10とし、電池素子2の厚みを6.8mmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0277】
<実施例2−3>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.30とし、電池素子の厚みを8.7mmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0278】
<実施例2−4>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.40とし、電池素子の厚みを10.0mmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0279】
<実施例2−5>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.01とした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0280】
<実施例2−6>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.42とし、電池素子の厚みを10.6mmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0281】
(放電容量維持率の測定試験)
放電容量維持率の測定試験を以下のようにして行なった。まず、10A、3.6Vの定電流定電圧充電で充電させた後、10Aで2.0Vまで放電し、1サイクル目の放電容量を求めた。次に、この1サイクル目の放電容量を測定した場合と同様の条件で充放電を繰り返し、1000サイクル目の放電容量を求めた。次に、1サイクル目の放電容量および1000サイクル目の放電容量を用いて、以下の式から1000サイクル後の放電容量維持率を求めた。
1000サイクル後の容量維持率[%]=(1000サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0282】
試験結果を表2に示す。
【0283】
【表2】
【0284】
表2に示すように、実施例2−1〜実施例2−4では、実施例2−5および実施例2−6と比べて高い放電容量維持率を得ることができた。なお、実施例2−5においては高レートサイクルにより溶接部分が発熱し、サイクル寿命が低下した。また、実施例2−6においては、高レートサイクルにより電池素子内部の放熱性が低下し、サイクル寿命が低下した。実施例2−1〜実施例2−4ではこのような不具合は生じなかった。この結果から、0.02<(dc/Dc)≦0.40が望ましい範囲であるということがわかった。
【0285】
また、以下に示す実施例3−1〜実施例3−21の二次電池について、電池素子の膨れ量の測定試験、外部短絡試験および折り曲げ加工後の亀裂の有無の確認試験を行った。
<実施例3−1>
正極タブの材質はアルミニウム(Al)とし、導電率は60%IACSとした。また、負極タブの材質は銅(Cu)合金とし、導電率は90%IACSとした。正極タブおよび負極タブの厚みは共に50μmとした。また、負極タブはニッケル(Ni)により一端面面および他端面を除く上面、左側面、底面および右側面の合計4面を被覆した。ニッケル(Ni)による被覆層の厚さは1μmとした。上述の点以外は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0286】
<実施例3−2>
正極タブおよび負極タブの厚みを100μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0287】
<実施例3−3>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0288】
<実施例3−4>
正極タブおよび負極タブの厚みを400μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0289】
<実施例3−5>
正極タブおよび負極タブの厚みは共に200μmとし、負極タブの材質はアルミニウム(Al)とし、導電率を60%IACSとし、さらに、タブの被覆は行っていない点以外は実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0290】
<実施例3−6>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの材質は銅(Cu)とし、導電率を100%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0291】
<実施例3−7>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの材質は銅(Cu)合金とし、負極タブの導電率を70%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0292】
<実施例3−8>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの導電率を80%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0293】
<実施例3−9>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの導電率を100%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0294】
<実施例3−10>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆材質をスズ(Sn)とした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0295】
<実施例3−11>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆層の厚みを0.1μmにした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0296】
<実施例3−12>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆層の厚みを3μmにした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0297】
<実施例3−13>
正極タブおよび負極タブの厚みを25μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0298】
<実施例3−14>
正極タブおよび負極タブの厚みを450μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0299】
<実施例3−15>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの材質をニッケル(Ni)とし、負極タブの導電率を20%IACSとし、さらに、タブの被覆を行わなかった点以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0300】
<実施例3−16>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの導電率を50%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0301】
<実施例3−17>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの導電率を30%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0302】
<実施例3−18>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆面を図3Dの斜線部に示すように上面および底面の2面とした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0303】
<実施例3−19>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆面を図3Eの斜線部に示すように左側面および右側面とした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0304】
<実施例3−20>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆層の厚みを0.05μmにした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0305】
<実施例3−21>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆層の厚みを4μmにした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0306】
(二次電池の膨れ量の測定試験)
二次電池の膨れ量の測定試験は、1組の平行平板で電池を挟み、加重300gで押し当てたときの平板間の厚みを二次電池の厚みとして測定することにより行った。なお、二次電池の膨れ量の測定試験は、温度60℃、湿度RH90%の条件下、1ヶ月保存した後の膨れ量を測定することにより行った。
【0307】
(外部短絡試験)
外部短絡試験は、正負極のタブをワイヤーハーネスで接続し、外部短絡させ、その後の電池の状態を観測することにより行った。
【0308】
(折り曲げ加工後の亀裂の有無の確認試験)
折り曲げ加工後の亀裂の有無の確認試験は、折り曲げ状態のタブを光学顕微鏡で観察し、亀裂の有無を判定することにより行った。
【0309】
上述した3つの試験結果を表3に示す。
【0310】
【表3】
【0311】
表3に示すように、二次電池の膨れ量の測定試験では、タブ厚みが厚いと、二次電池が膨れることがわかった。これはタブが厚いためタブ側面のシール性が不十分なためである。また、負極タブのNi被覆が平面または側面のみの場合、二次電池が膨れることがわかった。シーラント(樹脂)にCu合金が直接接触することで銅害は発生し、シール性が低下したためである。また、Ni被覆されていてもその被覆厚みが0.01mm程度であると、被覆に不十分な部分で銅害が発生したため、二次電池の膨れ量が増加した。
【0312】
また、表3に示すように、外部短絡試験では、実施例3−1乃至3−12では開裂は発生していない。一方、実施例3−13、実施例3−16および実施例3−21において開裂が発生した。また、実施例3−15および実施例3−17においては開裂が発生し、電解液への着火が発生した。
【0313】
さらに、表3に示すように、折り曲げ加工後の亀裂の有無の確認試験において、実施例3−1乃至3−12では折り曲げ加工による亀裂は生じていない。一方、実施例3−13では折り曲げ加工後により亀裂が生じた。
【0314】
実施例3−13においては、正極タブは実施例3−1乃至3−12に比べて薄いため大電流放電によって熱が発生し、被覆層が溶解した。実施例3−14においては、正極タブは実施例3−1乃至3−12に比べて厚いため、正極タブの脇から水分が侵入した。実施例3−15においては、実施例3−1乃至3−12に比べて負極タブの導電率が低く、大電流放電によって負極タブが赤熱し、被覆層の溶解し、電解液への着火が発生した。実施例3−16においては、実施例3−1乃至3−12に比べて負極タブの導電率が低く、大電流放電によって負極タブが発熱し、被覆層が溶解した。実施例3−17においては、実施例3−1乃至3−12に比べて負極タブの導電率が低く、大電流放電によって負極タブが赤熱し、被覆層の溶解し、電解液への着火が発生した。
【0315】
実施例3−18においては、銅害が発生することにより被覆材のシール性が低下し、水分が侵入した。実施例3−19においては、銅害が発生することにより被覆層のシール性が低下し、実施例3−18に比べて多量の水分が侵入した。実施例3−20においては、被覆層が不均一であるためにタブ基材が露出した。また、銅害が発生することにより被覆材のシール性が低下し、水分が侵入した。実施例3−21においては、被覆層が実施例3−1乃至3−12に比べて厚く、大電流放電によって発熱が起きた。
【0316】
また、以下に示す実施例4−1〜実施例4−6の二次電池について、接続部分の引っ張り強度の測定試験、および外部短絡試験を行った。
【0317】
<実施例4−1>
正極集電体露出部と正極タブとの接続は超音波溶接により行ない、接続面積/正極タブ幅=0.05とした以外は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0318】
<実施例4−2>
接続面積/正極タブ幅=0.2とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0319】
<実施例4−3>
接続面積/正極タブ幅=7とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0320】
<実施例4−4>
接続面積/正極タブ幅=10とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0321】
<実施例4−5>
接続面積/正極タブ幅=0.025とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0322】
<実施例4−6>
接続面積/正極タブ幅=11とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0323】
(接続部分の引っ張り強度の測定試験)
接続部分の引っ張り強度の測定試験は、接続された複数枚の集電箔とタブを1(mm/sec)で上下に引っ張り、単位長さあたりの強度(N/cm)の平均値を算出することにより行った。
【0324】
(外部短絡試験)
外部短絡試験は、正負極のタブをワイヤーハーネスで接続し、外部短絡させ、その後の電池の状態を観測することにより行った。
【0325】
上述した2つの試験結果を表4に示す。
【0326】
【表4】
【0327】
実施例4−1乃至実施例4−4においては高い引っ張り強度を得ることができる。一方、実施例4−5では、高い引っ張り強度を得ることはできるが、開裂が起きてしまっている。また、実施例4−6では、引っ張り強度が低い値となってしまっている。この試験結果から、接続面積/正極タブの値が0.05mm〜10.0mm、好ましくは0.2〜7.0mmになるよう接続を行うとよいことがわかった。
【0328】
さらに、以下に示す実施例5−1〜実施例5−36の二次電池について、体積エネルギー密度の測定試験、振動試験後のOCV(Open circuit voltage)測定試験および注液完了時間測定試験を行った。
【0329】
<実施例5−1>
正極タブの折り曲げ部にシーラントを設け、正極タブは正極集電体露出部と電池素子間において正極集電体露出部と接続した。また、正極タブと電池素子の最外周の負極との絶縁はインシュレータを設けることにより行った。インシュレータはポリプロピレン(PP)を用いて構成し、その厚みは0.4mmとし、高さは5.5mmとし、長さは負極の幅と略同一の寸法とした。また、形状は角丸矩形とし、パンチング加工は行わなかった。以上の点以外は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0330】
<実施例5−2>
正極タブと電池素子の最外周負極との絶縁はインシュレータおよび最外層セパレータを設けることにより行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0331】
<実施例5−3>
インシュレータにポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて構成した以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0332】
<実施例5−4>
インシュレータにポリエチレン(PE)を用いて構成した以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0333】
<実施例5−5>
インシュレータにポリイミド(PI)を用いて構成した以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0334】
<実施例5−6>
インシュレータの厚さを0.2mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0335】
<実施例5−7>
インシュレータの厚さを0.75mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0336】
<実施例5−8>
インシュレータの厚さを1.0mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0337】
<実施例5−9>
インシュレータの高さを5.0mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0338】
<実施例5−10>
インシュレータの高さを6mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0339】
<実施例5−11>
インシュレータの高さを6.5mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0340】
<実施例5−12>
インシュレータの高さを7.0mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0341】
<実施例5−13>
インシュレータの幅をセパレータの幅と略同一の寸法とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0342】
<実施例5−14>
インシュレータの形状を矩形状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0343】
<実施例5−15>
インシュレータに不織布を用いて構成し、インシュレータの形状を矩形状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0344】
<実施例5−16>
インシュレータの長さをセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略コ字状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0345】
<実施例5−17>
インシュレータの長さをセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略ロ字状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0346】
<実施例5−18>
インシュレータの長さをセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を箱型とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0347】
<実施例5−19>
パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0348】
<実施例5−20>
インシュレータの形状を矩形状とし、高さを6mmとし、パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0349】
<実施例5−21>
インシュレータの厚さを0.75mmとし、高さを6mmとし、インシュレータの幅をセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略コ字状とし、パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0350】
<実施例5−22>
インシュレータの厚さを0.75mmとし、高さを6mmとし、インシュレータの幅をセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略ロ字状とし、パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0351】
<実施例5−23>
インシュレータの厚さを0.75mmとし、高さを6mmとし、インシュレータの幅をセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を箱型とし、パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0352】
<実施例5−24>
インシュレータに不織布を用いて構成し、インシュレータの厚さを0.75mmとし、高さを6mmとし、インシュレータの幅をセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略コ字状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0353】
<実施例5−25>
インシュレータの形状を略ロ字状とした以外は、実施例5−24と同様にして、二次電池を作製した。
【0354】
<実施例5−26>
インシュレータの形状を箱型とした以外は、実施例5−24と同様にして、二次電池を作製した。
【0355】
<実施例5−27>
正極タブの折り曲げ部にシーラントを設けていない以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0356】
<実施例5−28>
正極タブは正極集電体露出部と外装材との間において正極集電体露出部と接続した以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0357】
<実施例5−29>
正極タブと電池素子の最外周負極との絶縁はインシュレータを用いずに最外層セパレータを設けることにより行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0358】
<実施例5−30>
正極タブと電池素子の最外周負極との絶縁はインシュレータを用いずにポリプロピレン(PP)粘着テープ用いて行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0359】
<実施例5−31>
インシュレータの厚さを0.1mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0360】
<実施例5−32>
インシュレータの厚さを1.2mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0361】
<実施例5−33>
インシュレータの高さを4.5mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0362】
<実施例5−34>
インシュレータの高さを7.5mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0363】
<実施例5−35>
インシュレータの長さを「負極の幅−1mm」とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0364】
<実施例5−36>
インシュレータの長さを「セパレータの幅+1mm」とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0365】
(体積エネルギー密度測定試験)
体積エネルギー密度測定試験を以下のようにして行なった。0.2C放電容量(Ah)と電池の平均放電電圧(V)から放電エネルギー量(Wh)を求め、これを電池の最大寸法体積(L)で除することで体積エネルギー密度とした(Wh/L)。
【0366】
(振動試験後のOCV測定試験)
振動試験後のOCV測定試験は、振動加速度3G、振動数20Hzで電池に対して縦、横、高さに方向に各100回ずつ振動させたあと、その後のOCVを測定することにより行った。
【0367】
(注液完了時間測定試験)
注液完了時間測定試験は、シールがされていない開口部を上にして電解液をディスペンサーから注液し、液面が開口部以下になる時間を測定することにより行った。(外装凹部に液が大気圧中で自然降下する時間を測定した。)
【0368】
上述した2つの試験結果を表5に示す。
【0369】
【表5】
【0370】
実施例5−29、実施例5−30のようにインシュレータを設けない場合、実施例5−31のようにインシュレータの厚さが薄い場合、体積エネルギー密度は高くなるという傾向があることがわかった。一方、実施例5−33のようにインシュレータの厚さが厚い場合には体積エネルギー密度が低くなるという傾向があることがわかった。
【0371】
振動試験後のOCV測定試験では、実施例5−1乃至5−26、実施例5−32においてはOCVに変化はないが、実施例5−27乃至5−31、実施例5−33乃至5−36においてはOCVが低下するという変化が生じるということが確認できた。
【0372】
注液完了時間測定試験では、インシュレータの形状が矩形および角丸矩形に比べて、コ字状、ロ字状および箱型では注液完了までの時間が長くなることが確認できた。
【0373】
また、正極タブの折り曲げ部にシーラントが設けられていない実施例5−27では正極タブ先端および負極タブ先端が電池素子の最外層と接触することによる短絡が発生した。また、正極集電体露出部と外装材間において正極タブを正極集電体露出部に接続した実施例5−28においても正極タブ先端および負極タブ先端が電池素子の最外層と接触することにより短絡が発生した。
【0374】
また、絶縁に最外層セパレータを用いて行った実施例5−29ではセパレータを突き破って正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。また、絶縁をポリプロピレン(PP)粘着テープで行った実施例5−30では粘着テープが剥がれて正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。
【0375】
また、実施例5−31ではインシュレータが薄いため正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。また、インシュレータの厚さが1.2mmである実施例5−32ではインシュレータが厚く、正極集電体露出部の折り曲げ間隔以上となり、体積エネルギー密度が大幅に低下した。また、実施例5−33では、インシュレータが低いため正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。
【0376】
また、実施例5−34ではインシュレータが電池素子以上の高さとなるため、振動によってインシュレータが外装材を突き破る。これにより二次電池内に水分が侵入しOCVが低下した。また、実施例5−35ではインシュレータの幅が短いため、正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。さらに、実施例5−36ではインシュレータが電池素子の幅以上となるため、振動によってインシュレータが外装材を突き破る。これにより二次電池内に水分が侵入しOCVが低下した。
【0377】
以上の結果より、正極タブおよび負極タブの折り曲げ部にはシーラントを設ける、正極タブおよび負極タブは集電体露出部と電池素子との間において集電体露出部と接続する、絶縁はインシュレータで行うことが好ましいということがわかった。また、インシュレータの厚さは約0.2mm以上とすることが好ましいということがわかった。
【0378】
このようにして本発明に係る二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールが構成されている。なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0379】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。また、上述の実施形態の各構成、方法、工程、形状、材料および数値は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0380】
また、上述の実施形態では、リチウムイオン二次電池に対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、外装材により電池素子を封止する構造を有する種々の二次電池および一次電池に対して適用可能である。
【0381】
この発明の二次電池1、二次電池1を組み合わせたバッテリユニット100およびバッテリモジュール200は、電動工具、電気自動車やハイブリッド電気自動車および電動アシスト自転車、ならびに住宅もしくはビル等に用いる蓄電システム等に用いることができる。
【符号の説明】
【0382】
1 二次電池
2 電池素子
3 外装材
4 正極
4A 正極集電体
4B 正極活物質層
4C 正極集電体露出部
5、13 負極
5A 負極集電体
5B 負極活物質層
5C 負極集電体露出部
6 セパレータ
7 正極タブ
7A 接続部
7B 導出部
8 負極タブ
9 凹部
10 シーラント
11 インシュレータ
14 第1セパレータ
15 第2セパレータ
100 バッテリユニット
110 ブラケット
200 バッテリモジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールに関する。詳しくは、大電流充放電特性を有する二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラー体型VTR(Video Tape Recorder)、携帯電話機、パーソナルコンピュータなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。そしてこれらの電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池について、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。
【0003】
非水電解液を用いた二次電池、中でも、リチウムイオン二次電池は、従来の水溶液系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、市場も著しく成長している。とりわけ近年、リチウムイオン二次電池の軽量、高エネルギー密度という特徴が電動工具、電気自動車やハイブリッド電気自動車および電動アシスト自転車の用途に適することから、それらの車両用として用いるために更なる大型化、高出力化を目指した検討が盛んとなっている。
【0004】
リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、通常、セパレータを介して積層された複数の正極および負極と、その正極および負極にそれぞれ接続されたタブとから構成されている。そして、通常、タブ、および、タブと正極(負極)の間に介在する正極端子(負極端子)は、正極(負極)の幅と比べて細く形成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−178747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次電池の高出力化を図るためには、二次電池が大電流充放電特性を備えることが必要となる。しかし、特許文献1に記載されたような、正極および負極の幅に比べて細く形成されたタブまたは端子を備える二次電池では入出力する電流量が制限されてしまい、大電流の入出力に対応することができない。したがって、そのような構成を採用した二次電池では高出力化を図ることに限界がある。
【0007】
したがって、この発明の目的は、大電流充放電特性を有する二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、電池素子を外装する外装材とを備え、
電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが以下の式(1)を満たすように正極集電体上に正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが以下の式(2)を満たすように負極集電体上に負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される正極と負極との間に介在するセパレータと、
正極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された正極タブと、
負極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された負極タブと
を備える二次電池である。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(1)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(2)
【0009】
第2の発明は、
一組の二次電池と、
一組の二次電池の外周側面を囲う外周壁部が形成された支持体と
を備え、
一組の二次電池がそれぞれ、支持体の正面側および背面側から外周壁部内に挿入されており、
二次電池は、厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、電池素子を外装する外装材とを備え、
電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが以下の式(7)を満たすように正極集電体上に正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが以下の式(8)を満たすように負極集電体上に負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される正極と負極との間に介在するセパレータと、
正極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された正極タブと、
負極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された負極タブと
を備えるバッテリユニットである。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(7)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(8)
【0010】
第3の発明は、
複数のバッテリユニットを備え、
バッテリユニットは、
一組の二次電池と、
一組の二次電池の外周側面を囲う外周壁部が形成された支持体と
を備え、
一組の二次電池がそれぞれ、支持体の正面側および背面側から外周壁部内に挿入されており、
二次電池は、厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、電池素子を外装する外装材とを備え、
電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが以下の式(9)を満たすように正極集電体上に正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが以下の式(10)を満たすように負極集電体上に負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される正極と負極との間に介在するセパレータと、
正極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された正極タブと、
負極集電体露出部に電気的に接続され、外装材の外部へ導出された負極タブと
を備えるバッテリモジュールである。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(9)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(10)
【0011】
本発明を構成する電池素子は、厚みが3mm以上20mm以下であり、放電容量が3Ah以上50Ah以下である。電池素子の厚みが3mm未満であると、電池全体の体積中に電池素子の占める割合が低下し、体積エネルギー密度が低下する。また、電池素子の厚みが20mmを超えると、電池素子の放熱性が低下し、充放電を繰り返すサイクル寿命が低下するおそれがある。放電容量が3Ah未満であると、上記の構造をとることなくレート特性が確保される。
【0012】
さらに、正極は、正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとが以下の式(1)を満たすように形成されるとともに、負極は、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとが以下の式(2)を満たすように形成されるので、大電流の入出力が可能となる。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(1)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(2)
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば大電流の入出力が可能となるため、二次電池のさらなる高出力化が可能となる。したがって、例えば、複数組み合わせることにより高出力を要求する電気自動車やハイブリッド電気自動車用の二次電池などとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池の一構成例を示す外観斜視図であり、図1Bは、二次電池の構成を示す略線図であり、図1Cは、二次電池の外観底面側を示す外観斜視図であり、図1Dは、外装材により外装される電池素子の側面図である。
【図2】図2Aおよび図2Bは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池に用いられる正極の構成例を示す略線図であり、図2Cおよび図2Dは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池に用いられる負極の構成例を示す略線図である。
【図3】図3A〜図3Eは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池に用いられる正極タブおよび負極タブの構成例を示す略線図である。
【図4】図4A〜図4Cは、正極タブと正極集電体露出部との接続状態を示す部分拡大図である
【図5】図5Aは、正極集電体露出部と正極タブの接続状態を示す略線図であり、図5Bは、負極集電体露出部と負極タブの接続状態を示す略線図である。
【図6】図6Aは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池の外観斜視図であり、図6Bおよび図6Cは、図6AにおけるVI−VI断面図であり、図6Dは、シーラントの設置状態を示す電池素子の側面図である。
【図7】図7A〜図7Fは、インシュレータの構成例を示す略線図である。
【図8】図8Aは、本発明の第1の実施形態に係る二次電池における正極、負極およびセパレータの積層構造を示す略線図であり、図8Bは、正極、負極およびセパレータの積層構造を示す平面図である。
【図9】図9A〜図9Fは、二次電池の製造工程の概略を示す略線図である。
【図10】図10A〜図10Fは、二次電池の製造工程の概略を示す略線図である。
【図11】図11A〜図11Eは、集電体露出部の折り曲げ部形成工程を示す略線図である。
【図12】図12A〜図12Eは、集電体露出部の切断工程を示す略線図である。
【図13】図13A〜図13Cは、タブ接続工程を示す略線図である。
【図14】図14A〜図14Eは、タブおよび集電体露出部の折り曲げ部形成工程を示す略線図である。
【図15】図15Aは、本発明の第2の実施形態に係る二次電池における正極、負極およびセパレータの積層構造を示す略線図であり、図15Bは、正極、負極およびセパレータの積層構造を示す側面図である。
【図16】図16Aおよび図16Bは、正極、負極およびセパレータの積層構造の変形例を示す略線図である。
【図17】図17Aは、本発明の第3の実施形態に係る負極とセパレータの積層構造を示す略線図であり、図17Bは、本発明の第3の実施形態に係る二次電池における正極、負極およびセパレータの積層構造を示す略線図であり、図17Cは、正極、負極およびセパレータの積層構造を示す側面図である。
【図18】図18Aは、本発明の第3の実施形態に係る二次電池における正極、負極およびセパレータの積層構造の変形例を示す略線図であり、図18Bは、図18Aにおける矢視図である。
【図19】図19Aおよび図19Bは、本発明に係る二次電池を適用したバッテリユニットの構成例を示す斜視図である。
【図20】図20は、バッテリユニットが分解された状態を示す斜視図である。
【図21】図21は、バッテリユニットが組み合わされたバッテリモジュールの構成例を示す図である。
【図22】図22は、並列ブロックの端子の向きを説明する図である。
【図23】図23Aは、並列ブロックの挿入向きの間違いを防止する工夫について説明するためのモジュールケースの略線図であり、図23Bは、並列ブロックの挿入向きの間違いを防止する工夫について説明するための並列ブロックの略線図である。
【図24】図24Aは、並列ブロックの挿入向きの間違いを防止する工夫について説明するためのモジュールケースの略線図であり、図24Bは、並列ブロックの挿入向きの間違いを防止する工夫について説明するためのバッテリユニットの略線図である。
【図25】図25Aは、本発明の第4の実施形態に係る二次電池の外観の一例を示す斜視図である。図25Bは、電池素子の構成の一例を示す斜視図である。図25Cは、電池素子の構成の一例を示す分解斜視図である。
【図26】図26Aは、正極タブの形状の一例を示す斜視図である。図26Bは、負極タブの形状の一例を示す斜視図である。
【図27】図27A〜図27Dは、正極タブの第1〜第4の形状例を示す斜視図である。
【図28】図28A〜図28Cは、正極タブの第5〜第7の形状例を示す斜視図である。
【図29】図29A〜図29Cは、正極タブの作製方法の第1の例を示す工程図である。
【図30】図30A〜図30Cは、正極タブの作製方法の第2の例を示す工程図である。
【図31】図31は、正極集電体露出部と正極タブとの接合部を拡大して表す斜視図である。
【図32】図32A〜図32Dは、絶縁部材の形状例を示す斜視図である。
【図33】図33A〜図33Cは、正極タブと電池素子とを絶縁する絶縁部材としてセパレータを使用した第1〜第3の例を示す断面図である。
【図34】図34Aは、インシュレータの形状の第1の例を示す斜視図である。図34Bは、インシュレータの形状の第1の例を示す分解斜視図である。
【図35】図35Aは、インシュレータの形状の第2の例を示す斜視図である。図35Bは、インシュレータの形状の第2の例を示す分解斜視図である。
【図36】図36A〜図36Dは、本発明の第4の実施形態に係る二次電池の製造方法の一例について説明するための工程図である。
【図37】図37A〜図37Cは、本発明の第4の実施形態に係る二次電池の製造方法の一例について説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(枚葉のセパレータを介して正極および負極を積層した例)
2.第2の実施形態(つづら折りにより折り畳まれた一枚の帯状のセパレータを介して正極および負極を積層した例)
3.第3の実施形態(負極を挟んだ状態でつづら折りにより折り畳まれた一対のセパレータを介して正極および負極を積層した例)
4.第4の実施形態(正極タブおよび負極タブを同一の側面から導出した例)
5.第5の実施形態(二次電池を用いたバッテリユニットおよびバッテリモジュール)
【0016】
<1.第1の実施形態>
(1−1)二次電池の構成
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る非水電解質電池(以下、二次電池1と適宜称する)の外観を示す略線図であり、図1Bは、二次電池1の構成を示す略線図である。なお、図1Bは、図1Aに示す二次電池1の底面および上面を反転させた場合の構成を示している。また、図1Cは、二次電池1の外観底面側を示す略線図である。二次電池1は、例えば、いわゆるリチウムイオン二次電池であり、電池素子2と外装材3とを備えるものである。図1Dは、外装材3により外装される電池素子2の側面図である。外装材3は、電池素子2を収容する第1外装部3Aと、電池素子2を覆う蓋として機能する第2外装部3Bとから構成されている。電池素子2の電池素子2の厚みは3mm以上20mm以下であり、放電容量は3Ah以上50Ah以下である。電池素子2の厚みが3mm未満であると、電池全体の体積中に電池素子2の占める割合が低下し、体積エネルギー密度が低下する。また、電池素子2の厚みが20mmを超えると、電池素子2の放熱性が低下し、充放電を繰り返すサイクル寿命が低下するおそれがある。放電容量が3Ah未満であると、上記の構造をとることなくレート特性が確保される。
【0017】
電池素子2は、略矩形状の正極4と、正極4と対向して配された略矩形状の負極5とが、セパレータ6を介して交互に積層された積層型電極構造を有している。また、電池素子2からは、複数枚の正極4とそれぞれ電気的に接続された正極集電体露出部4Cと、複数枚の負極5とそれぞれ電気的に接続された負極集電体露出部5Cとが引き出されている。正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cには、それぞれ正極タブ7および負極タブ8が接続されている。さらに、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cは断面が略U字形状となるように折り曲げられて構成されている。
【0018】
このような電池素子2は、外装材3にて外装されており、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cとそれぞれ接続された正極タブ7および負極タブ8は外装材3の封止部から二次電池1外部に導出されている。外装材3は少なくとも一方の面、または両面に予め深絞り加工が施されることにより凹部が形成され、この凹部に電池素子2が収納される。図1Bでは、外装材3を構成する第1外装部3Aに凹部9が形成されており、電池素子2はこの凹部9に収納される。そして、第2外装部3Bが、凹部9の開口を覆うように配置され、凹部9の開口の周囲が熱融着等により接着されることにより封止される。正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cとそれぞれ接続された正極タブ7および負極タブ8は、外装材3の封止部分から外部に向かい異なる方向に導出されている。
【0019】
[正極]
図2Aおよび図2Bは、電池素子2を構成する正極4の構造を示す略線図である。図2Cおよび図2Dは、電池素子2を構成する負極5の構造を示す略線図である。正極4は、例えば、正極集電体4Aの両面に正極活物質層4Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体4Aの片面のみに正極活物質層4Bを設けるようにしてもよい。
【0020】
本発明においては、正極集電体4Aの両面全面に正極活物質層4Bが設けられているのではなく、正極集電体4Aの両面に所定の寸法の奥行きを有する正極集電体露出部4Cが形成されるように正極活物質層4Bが設けられている。正極集電体露出部4Cは正極端子として役割を担うものである。正極集電体露出部4Cの幅wc(図2A、図2Bにおいては正極集電体露出部4Cの長手方向の寸法)は正極活物質層4Bの幅Wc(図2A、図2Bにおいては正極活物質層4Bの短手方向の寸法)との関係において以下の式(1)を満たすように構成されている。
0.5<(wc/Wc)≦1.0 ・・・(1)
【0021】
式(1)において、0.5<(wc/Wc)の場合とはすなわち、正極集電体露出部4Cの幅が正極活物質層4Bの幅の半分を超える場合である。図2Aは(wc/Wc)=0.5、である場合を示すものである。
【0022】
また、式(1)において、(wc/Wc)=1.0の場合とはすなわち、正極集電体露出部4Cの幅と正極活物質層4Bの幅とが等しい場合である。図2Bは(wc/Wc)=1.0、である場合を示すものである。このように、本発明においては、従来の電池に比べて正極端子としての正極集電体露出部4Cの幅が大きくなるように構成されている。正極集電体露出部4Cの幅を大きく構成することにより、大電流の入出力が可能となる。また、正極集電体露出部4Cの幅と正極活物質層4Bの幅とが等しくなるように構成することにより、正極4の製造工程においては、正極集電体露出部4Cを細く形成するための打ち抜きや切り取りなどの工程を行う必要がないため、製造工程を簡略化することができる。
【0023】
なお、正極集電体4Aと、正極端子として機能する正極集電体露出部4Cとは一体的に構成されていてもよいし、別個のものとして形成して接続するという構成にしてもよい。図2Aおよび図2Bにおいては、正極集電体4Aと正極集電体露出部4Cとが一体的に形成されている例を示している。一体的に形成されている場合、正極集電体4A上に正極活物質層4Bを設けるだけで正極集電体露出部4Cが形成されるため、正極4の作製工程を簡略化することができる。
【0024】
なお、正極集電体露出部4Cを正極活物質層4Bの塗布方向と平行方向に形成する場合、正極集電体4A原反の幅が正極活物質層4Bの幅と正極集電体露出部4Cの幅の和の整数倍であることが好ましい。さらに好ましくは、正極集電体4A原反の幅が正極活物質層4Bと正極集電体露出部4Cの幅の和の偶数倍となるようにするとよい。これにより、材料歩留まりが向上する。
【0025】
また、正極集電体露出部4Cはその奥行きdc(図2A、図2Bにおいては正極集電体露出部4Cの短手方向の寸法)が、正極活物質層4Bの奥行きDc(図2A、図2Bにおいては正極活物質層4Bの長手方向の寸法)との関係において、以下の式(2)を満たすように形成されるのが好ましい。
0.02<(dc/Dc)≦0.40 ・・・(2)
【0026】
(dc/Dc)の値が0.02未満では正極集電体露出部4Cと正極タブ7との接続面積が小さくなり、入出力特性が低下することとなる。一方、(dc/Dc)の値が0.40以上となると正極一枚当たりの電池容量が小さくなる。よって、二次電池1全体における所望の電池容量を得るためには積層枚数を増やす必要が生じる。積層枚数を増やすと、例えば、超音波溶接により正極集電体露出部4Cと正極タブ7とを接続する場合、より大きなパワーとエネルギーが必要となる。これにより正極集電体露出部4Cが損傷し、溶接不良などの不具合が生じるおそれがある。さらに、積層枚数を増やすことに弊害として、放熱性の低下が挙げられる。放熱性が低下すると大電流入出時に二次電池1内部が高温となり、二次電池1の寿命の低下を招くおそれがある。
【0027】
正極集電体4Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層4Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
【0028】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、組成式(I)、組成式(II)もしくは組成式(III)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、組成式(IV)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または組成式(V)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.30O2、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c2O2(c1≒1,0<c2<1)、LidMn2O4(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0029】
LifMn(1-g-h)NigM1hO(2-j)Fk ・・・(I)
(式中、M1は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0030】
LimNi(1-n)M2nO(2-p)Fq ・・・(II)
(式中、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0031】
LirCo(1-s)M3sO(2-t)Fu ・・・(III)
(式中、M3は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0032】
LivMn2-wM4wOxFy ・・・(IV)
(式中、M4は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0033】
LizM5PO4 ・・・(V)
(式中、M5は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0034】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V2O5、V6O13、NiS、MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0035】
[負極]
負極5は、例えば、負極集電体5Aの両面に負極活物質層5Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体5Aの片面のみに負極活物質層5Bを設けるようにしてもよい。負極集電体5Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0036】
負極活物質層5Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層4Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
【0037】
なお、この電池素子2では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極4の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極5にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0038】
図2Cおよび図2Dに示すように、負極集電体5Aの両面全面に負極活物質層5Bが設けられているのではなく、負極集電体5Aの両面に所定の寸法の奥行きを有する負極集電体露出部5Cが形成されるように負極活物質層5Bが設けられている。負極集電体露出部5Cは負極端子として役割を担うものである。本発明においては、負極集電体露出部5Cの幅wa(図2C、図2Dにおいては負極集電体露出部5Cの長手方向の寸法)は負極活物質層5Bの幅Wa(図2C、図2Dにおいては負極活物質層5Bの短手方向の寸法)との関係において以下の式(3)を満たすように構成されている。
0.5<(wa/Wa)≦1.0 ・・・(3)
【0039】
式(3)において、0.5<(wa/Wa)の場合とはすなわち、負極集電体露出部5Cの幅が負極活物質層5Bの幅の半分を超える場合である。また、式(3)において、(wa/Wa)=1.0の場合とはすなわち、負極集電体露出部5Cの幅と負極活物質層5Bの幅とが等しい場合である。このように、上述した正極4と同様に負極集電体露出部5Cの幅を大きく構成することにより、大電流の入出力が可能となる。また、負極集電体露出部5Cの幅と負極活物質層5Bの幅とが等しくなるように構成することにより、負極5の製造工程においては、負極集電体露出部5Cを細く形成するための打ち抜きや切り取りなどの工程を行う必要がないため、製造工程を簡略化することができる。
【0040】
なお、負極集電体5Aと、負極端子として機能する負極集電体露出部5Cとは一体的に構成されていてもよいし、別個のものとして形成して接続するという構成にしてもよい。図2Cおよび図2Dにおいては、負極集電体5Aと負極集電体露出部5Cとが一体的に形成されている例を示している。一体的に形成されている場合、負極集電体5A上に負極活物質層5Bを設けるだけで負極集電体露出部5Cが形成されるため、負極5の作製工程を簡略化することができる。
【0041】
なお、負極集電体露出部5Cを負極活物質層5Bの塗布方向と平行方向に形成する場合、負極集電体5A原反の幅が負極活物質層5Bの幅と負極集電体露出部5Cの幅の和の整数倍であることが好ましい。さらには好ましくは、負極集電体5A原反の幅が負極活物質層5Bと負極集電体露出部5Cの幅の和の偶数倍となるようにするとよい。これにより、材料歩留まりが向上する。
【0042】
また、負極集電体露出部5Cはその奥行きda(図2C、図2Dにおいては負極集電体露出部5Cの短手方向の寸法)が、負極活物質層5Bの奥行きDa(図2C、図2Dにおいては負極活物質層5Bの長手方向の寸法)との関係において、以下の式(4)を満たすように形成されるのが好ましい。
0.02<(da/Da)≦0.40 ・・・(4)
【0043】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0044】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0045】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0046】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0047】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0048】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0049】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V2O5、V6O13などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、またはLiNiO2やLi4Ti5O12などのリチウム遷移金属酸化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0050】
[セパレータ]
セパレータ6は、正極4と負極5とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ6としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜を単層で、またはそれらを複数積層したもの用いることができる。また、不織布やセルロースの多孔質膜を用いてもよい。特に、セパレータ6としては、ポリオレフィン製の多孔質膜が好ましい。ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるからである。また、セパレータ6としては、ポリオレフィンなどの微多孔膜上に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
【0051】
一般的にセパレータ6の厚みは5μm以上50μm以下が好適に使用可能であるが、5μm以上20μm以下がより好ましい。セパレータ6は、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下し、異物などで正負両極がショートしたり、破れたりする。
【0052】
[正極タブおよび負極タブ]
図3は、この発明の第1の実施形態に係る二次電池1を構成する正極タブ7の外観を示す略線図である。なお、負極タブ8も同様の外観構成を有しているので負極タブ8についての図示は省略する。図3Aは、上面7−1および左側面7−2を示す斜視図であり、図3Bは、底面7−3および右側面7−4を示す斜視図であり、図3Cは、断面図である。
【0053】
正極集電体露出部4Cと接続される正極タブ7および負極集電体露出部5Cと接続される負極タブ8は、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cと、二次電池1が接続される電子機器などを中継するものである。正極タブ7および負極タブ8は、板状または直方体状に形成されている。
【0054】
正極タブ7および負極タブ8の厚さは50μm以上400μm以下とするのが好ましい。50μm未満であると強度が低くなり、集電体露出部との接続後の折り曲げ工程で亀裂が生じるおそれがある。一方、400μmを超えると外装材3との熱溶着部分で密封性が悪化し、リーク不良、水分侵入が生じて二次電池1の寿命の低下を招く恐れがある。
【0055】
また、正極タブ7および負極タブ8の導電率は50%IACS(International annealed copper standard:電気抵抗(又は電気伝導度)の基準として、国際的に採択された焼鈍標準軟銅の体積抵抗率は、1.7241×10-2μΩと規定される。)以上であることが好ましい。導電率が50%IACS未満では、大電流を流した際にタブの発熱が大きくなる。タブの発熱が大きくなると外装材3との熱溶着部分が軟化し、シール性が低下することとなる。また、外部短絡などが発生するとタブは赤熱するほどに高温になる。これにより、有機溶媒からなる電解液が着火し、二次電池1の熱暴走を招く恐れがある。
【0056】
正極タブ7および負極タブ8は、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の材料、または、リン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)を含む合金から構成される。好ましくは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)合金を用いて構成するとよい。
【0057】
また、正極タブ7は図3A乃至図3Cに示すように、一端面7−5および他端面7−6を除く上面7−1、左側面7−2、底面7−3および右側面7−4の合計4面がニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、スズ(Sn)のいずれかによって構成された被覆層7Aにより被覆されている。上述の被覆される4面は、正極タブ7および負極タブ8が外装材3とシーラント10を介して熱溶着される面である。この熱溶着される面において例えば、銅(Cu)やリン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)を含むCu合金が露出しているとシーラント10との溶着性、すなわちシール性が著しく低下し、電池寿命の低下を招くおそれがある。なお、被覆層7Aにより被覆されるのは必ずしも正極タブ7である必要はなく、正極タブ7または負極タブ8の少なくともいずれか一方が被覆されていることが好ましい。
【0058】
また、正極タブ7または負極タブ8の材料として銅(Cu)または銅(Cu)を含む合金が用いられた場合、銅(Cu)または銅(Cu)を含む合金が露出していると、それに接触する樹脂が劣化する、いわゆる銅害が引き起こされる。銅害が引き起こされると二次電池1の寿命に悪影響を与えることとなる。よって、正極タブ7、負極タブ8を銅(Cu)または銅(Cu)を含む合金を用いて形成した場合には被覆層7Aを設けることが好ましい。これにより、銅(Cu)または銅(Cu)を含む合金が樹脂に直接接触することを防いで、銅害を抑制することができる。
【0059】
正極タブ7および負極タブ8の被覆方法としては、例えば、電解メッキなどが挙げられる。電解メッキで被覆を行う場合、ロール状に伸ばした銅(Cu)やリン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)を含むCu合金の基材を所定の幅にスリットした後に電解槽を通すことによりメッキ処理を施すことができる。
【0060】
被覆層7Aの厚さは0.1μm以上3μm以下とするのが好ましい。0.1μm未満であると被覆層7Aが剥がれることによりタブ基材が露出してシール性が低下するおそれがある。一方、被覆層7Aが3μmを超えると集電体露出部とタブとの接続状態(溶接の場合には固着状態)が不十分となり、タブが備える高導電性が十分に発揮できないこととなる。
【0061】
図4A〜図4Cは、正極タブ7と正極集電体露出部4Cとの接続状態を示す部分拡大図である。図4Aは、正極集電体露出部4Cが折り曲げられていない状態を示し、図4Bおよび図4Cは、正極集電体露出部4Cが折り曲げられている状態を示すものである。正極タブ7は積層され断面略U字形状に折り曲げられた複数の正極集電体露出部4Cに固着される。これにより、正極タブ7は正極集電体露出部4Cに電気的に接続される。正極タブ7の正極集電体露出部4Cとの接続に用いられる部分を接続部7A、外装材3から導出される部分を導出部7B、折り曲げ部分を折り曲げ部7Cとそれぞれ称する。正極タブ7は、導出部7Bの底面と電池素子2の底面とが同一平面上に位置するように構成されている。また、図示しないが、両面が凹型に加工された外装材3で電池素子2を外装する場合などは、正極タブ7と電池素子2の底面とが必ずしも同一平面上に位置しなくても良い。正極タブ7と正極集電体露出部4Cとの接続方法としては、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接、スポット溶接などによる接続、またはクランプ固定、カシメ接続などが挙げられる。その中でも、複数枚の薄い正極集電体露出部4Cと正極タブ7とを広い面積で強く接続することができるという点で特に超音波溶接が好ましい。
【0062】
本実施形態においては、所定幅の外周側曲げしろRoが形成されるように正極集電体露出部4Cの折り曲げが行われる。外周側曲げしろRoを設けなかった場合には、正極タブ7が接続された正極集電体露出部4Cを正極4の面に対して略垂直方向に折り曲げようとすると、図4Cに示すように、正極タブ7が電池素子2に当接してしまい正極集電体露出部4Cを折り曲げることができないこととなる。また、正極集電体露出部4Cを正極4の面に対して略垂直方向に折り曲げることができたとしてもその折り曲げに伴い正極集電体露出部4C、正極タブ7および電池素子2が変形してしまうこととなる。そうすると、電池素子2のパックへの挿入性が低下することとなる。そこで、外周側曲げしろRoを設けることにより、図4Bに示すように、正極タブ7が積層された正極4および負極5に当接してしまうことなく正極集電体露出部4Cを正極4の面と略垂直の方向にまで折り曲げることが可能となる。
【0063】
また、正極タブ7は積層された正極集電体露出部4Cの内面に所定幅の内周側曲げしろRiが形成される位置に固着するのが好ましい。内周側曲げしろRiを形成することにより、正極集電体露出部4Cが図4A中のFの位置を支点として折り曲げられた場合でも正極タブ7が積層された正極4および負極5に当接してしまうことなく正極集電体露出部4Cを正極4の面と略垂直の方向にまで折り曲げることができる。よって、内周側曲げしろRiの幅は、正極タブ7の厚さ以上とする必要がある。なお、負極タブ8も同様にして負極集電体露出部5Cに接続されている。なお、U字曲げ工程の詳細については後述する。
【0064】
図5Aは、正極集電体露出部4Cと正極タブ7との接続面積について説明するための略線図である。正極タブ7の幅をTc、正極タブ7の厚みHc、電池素子2の厚みをB、接続範囲の幅をJw、接続範囲の奥行きをJdとすると、Jw×Jdで表される接続範囲の面積(接続面積)Scは以下の式(5)を満たすように設定されるのが好ましい。
Hc≦Sc/Tc≦B・・・(5)
【0065】
接続面積Scが狭すぎると、電流密度が高くなり、大電流を流すと発熱してしまうおそれがある。一方、接続面積Scが大きすぎると、例えば超音波溶接で接続を行う場合、複数枚の正極集電体露出部4Cを固着するためにより大きなパワーとエネルギーが必要となるが、これによって正極集電体露出部4Cが損傷し、溶解不良などの不具合が生じるおそれがある。そこで上述の式(5)を満たすように接続面積Scを設定することによりそれらの弊害を防止することができる。
【0066】
また、具体的な寸法としては、「接続面積Sc/正極タブ7の幅Tc」の値が0.05mm〜10.0mmとなるように設定するとよい。さらに、好ましくは「接続面積Sc/正極タブ7の幅Tc」の値が0.2mm以上7.0mm以下になるように設定するとよい。0.05mm未満とすると接続面積Scが狭く、電流密度が集中することになり、大電流を流すと発熱してしまうおそれがある。一方、10.0mmを超えると、例えば超音波溶接で接続を行う場合、複数枚の正極集電体露出部4Cを固着するためにより大きなパワーとエネルギーが必要となるが、これによって正極集電体露出部4Cが損傷し、溶解不良などの不具合が生じるおそれがある。
【0067】
なお、負極集電体露出部5Cと負極タブ8も同様にして接続されている。すなわち、図5Bに示すように、負極タブ8の幅をTa、負極タブ8の厚みHa、電池素子2の厚みをB、接続範囲の幅をJw、接続範囲の奥行きをJdとすると、Jw×Jdで表される接続範囲の面積(接続面積)Saは以下の式(6)を満たすように設定されるのが好ましい。
Ha≦Sa/Ta≦B・・・(6)
【0068】
また、具体的な寸法としては、「接続面積Sa/負極タブ8の幅Ta」の値が0.05mm〜10.0mmとなるように設定するとよい。さらに、好ましくは「接続面積Sa/負極タブ8の幅Ta」の値が0.2mm以上7.0mm以下になるように設定するとよい。
【0069】
[電解質]
電解質は、リチウムイオン二次電池に一般的に使用される電解質塩と非水溶媒が使用可能である。非水溶媒としては、具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、またはこれらの炭酸エステル類の水素をハロゲンに置換した溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、複数種を所定の組成で混合してもよい。
【0070】
電解質塩としては、上記非水溶媒に溶解するものが用いられ、カチオンとアニオンが組み合わされてなる。カチオンにはアルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられる。アニオンには、Cl-,Br-,I-,SCN-,ClO4-,BF4-,PF6-,CF3SO3-等が用いられる。具体的には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2F5SO2)2)、過塩素酸リチウム(LiClO4)等が挙げられる。電解質塩濃度としては、上記溶媒に溶解することができる濃度であれば問題ないが、リチウムイオン濃度が非水溶媒に対して0.4mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲であることが好ましい。
【0071】
ポリマー電解質を用いる場合は、非水溶媒と電解質塩とを混合してゲル状とした電解液をマトリクスポリマに取り込むことでポリマー電解質を得る。マトリクスポリマは、非水溶媒に相溶可能な性質を有している。このようなマトリクスポリマとしては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等が用いられる。また、フッ素系ポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体、フッ化ビニリデン(VdF)とトリフルオロエチレン(TFE)とを繰り返し単位に含む共重合体等のポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0072】
[シーラント]
図6A〜図6Dは、シーラント10の構成を説明するための図である。図6Aは、二次電池1の外観を示す略線図であり、図6Bおよび図6Cは、図6AにおけるVI−VI断面図である。図6Dは、電池素子2の側面図である。
【0073】
正極タブ7および負極タブ8にそれぞれ設けるシーラント10は、正極タブ7および負極タブ8との接着性に優れる樹脂材料からなる。このような樹脂材料としては、酸変性ポリプロピレン(PP)等の変性ポリマーが挙げられる。シーラント10は正極タブ7および負極タブ8と外装材3との接着性を向上させ外気、水分などの侵入を防止するためのものである。
【0074】
シーラント10の構成としては、図6Bまたは図6Cに示す構成のいずれも採用することが可能であるが、以下の観点から図6Cに示す構成とするのがより好ましい。図6Bにおいては、正極タブ7にシーラント10が設けられているが、正極タブ7を折り曲げることによって形成される角状の折り曲げ部7Cはシーラント10によって被覆されていない。そうすると、この折り曲げ部7Cが外装材3に直接当接することとなり、外装材3が突き破られてしまうおそれがある。そこで、シーラント10と正極タブ7とを一緒に折り曲げる構造とすることにより、図6Cに示す実施例のように折り曲げ部7Cも含めて正極タブ7をシーラント10で被覆する。これにより、正極タブ7の折り曲げ部7Cが外装材3に直接当接することがないため、折り曲げ部7Cにより外装材3が突き破られることを防止することができる。
【0075】
また、正極タブ7の折り曲げ部7Cを被覆するようにシーラント10が設けられることにより、図6Dに示すように、正極タブ7が電池素子2の最外層に位置する負極5に直接接触することがない。これにより正極タブ7と負極5とが接触し内部短絡が発生することを防止することができる。
【0076】
ただし、短絡を防ぐ方法としては他に、最外層負極5に余分にセパレータ6を設ける、最外層負極5の端面を覆うように絶縁テープを貼る、という手法をとることもできる。
【0077】
[インシュレータ]
図7A〜図7Fは、インシュレータ11の構成について説明するための略線図である。インシュレータ11は、正極4および負極5がセパレータ6を介して積層されて構成された電池素子2と正極タブ7との間に設けられる平板状、シート状またはフィルム状の絶縁部材である。前述のように正極タブ7の折り曲げ部にシーラント10が設けられることで正極タブ7と負極5の接触による短絡は防止できるが、シーラント10が介在していない正極集電箔露出部4C(特に角部)と負極5との接触し内部短絡が発生するおそれがある。インシュレータ11が電池素子2と正極タブ7との間に介在することにより、電池素子2と正極集電箔露出部4Cとが直接接触することによる短絡を防止する。
【0078】
インシュレータ11は例えば、高さは正極タブ7の接続部7Aの奥行き寸法以上であり電池素子2の厚さ以下となるように形成されている。正極タブ7の接続部の奥行き寸法未満の場合、インシュレータ11を回りこんで電池素子2と正極タブ7とが直接接触して短絡するおそれがある。一方、インシュレータ11の高さが電池素子2の厚さを超える場合、インシュレータ11が電池素子2とタブの導出部により形成される同一平面から突出し、インシュレータ11の端部が外装材3に当接して外装材3を破損させてしまうおそれがある。具体的寸法としては、インシュレータ11の厚さは約0.2mm以上が好ましく、さらに好ましくは約0.2mm以上1.0mm以下の範囲内である。厚さが0.2mm未満であると振動などの影響によって長期的な絶縁性が確保できない。一方、厚さが1.0mmを超えると電池素子2に対するインシュレータ11の体積割合が大きくなり、体積エネルギー密度が低下してしまう。
【0079】
インシュレータ11は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、不織布などの材料により構成される。
【0080】
ただし、電池素子2と正極集電体露出部4Cとが直接接触することによる短絡を防止する手法としては他にも、電池素子2の最外層に余分にセパレータを設ける、電池素子2の最外層の端部を被覆するように絶縁テープを貼設する、正極集電体露出部4Cに絶縁テープを貼設する、などが挙げられる。しかし、そのようなセパレータの設置、絶縁テープの貼設による短絡防止は長期振動による擦れ、電解液による絶縁テープの剥離によって機能が失われてしまうおそれがある。また、他にも、流動性の樹脂をタブの折り曲げ部に充填して固着させるという手法を採用することも可能ではある。しかし、電池素子2内部へ樹脂が侵入して電池性能が悪化するおそれがある。したがって、電池素子2と正極タブ7とが直接接触することによる短絡を長期的に防止するためには電池素子2と正極タブ7との間にインシュレータ11を設けるのが好ましいと考えられる。
【0081】
図7Aに示す例ではインシュレータ11は矩形状の平板として形成されているが、インシュレータ11の形状は平板状に限られるものではない。例えば、図7Bに示すように、略コ字状に形成してもよい。インシュレータ11を略コ字状に形成することにより、電池素子2と正極タブ7との接触を防止すると共に、電池素子2の外傷耐性を向上させて側面を衝撃などから保護することができる。
【0082】
ただし、インシュレータ11の角が鋭角に形成されているとその角によってインシュレータ11および電池素子2を外装する外装材3が破損してしまうおそれがある。そこで、図7Cに示すように、インシュレータ11を角丸矩形状の平板(曲率R=0.5〜2.0)として形成してもよい。インシュレータ11を角丸矩形状に形成することにより、インシュレータ11の角によって外装材3が破損することを防止することができる。
【0083】
さらに、図7Dに示すように、インシュレータ11にはパンチング加工などにより複数の孔が設けられているとよい。これにより、電解液の電池素子2内部への注液性を確保することができる。孔の形状は、インシュレータ11の本来の目的である、電池素子2と正極タブ7とが直接接触することによる短絡を長期的に防止する、とうことが担保されていればどのようなものであってもよい。
【0084】
また、インシュレータ11は図7Eに示すような電池素子2の全側面を覆う略ロ字状、図7Fに示すような電池素子2の側面および上面を覆う箱型に形成してもよい。インシュレータ11をこのような略ロ字状または箱型に形成した場合、上述したように電池素子2と正極タブ7の接触を防ぐ、二次電池1の外傷耐性を向上させるという効果に加え、正極4、負極5およびセパレータ6が積層されて構成されている電池素子2を保持してその形状を保つという効果も奏することができる。
【0085】
[外装材]
外装材3の一例として用いるラミネートフィルムは、金属箔の両面にそれぞれ外側樹脂層と内側樹脂層とが形成された、防湿性、絶縁性を有する多層フィルムからなる。外側樹脂層には、外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからナイロン(Ny)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられる。金属箔は、水分、酸素、光の浸入を防ぎ、内容物である電池素子2を守る最も重要な役割を担っており、軽さ、伸び性、価格、加工のしやすさからアルミニウム(Al)が最もよく使われる。内側樹脂層は、熱や超音波で溶け、互いに融着する部分であり、ポリオレフィン系樹脂材料、例えば無延伸ポリプロピレン(CPP)が多用される。なお、外装材3は、ラミネートフィルムに代えてポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0086】
[電池素子]
図8Aおよび図8Bは、正極4、負極5およびセパレータ6の積層構造を示す図である。図8Aは、外観斜視図であり、図8Bは、平面図である。第1の実施形態において電池素子2は、図8Aに示すように、正極4および負極5がセパレータ6を介して交互に、例えば、負極5、セパレータ6、正極4、セパレータ6、負極5・・・セパレータ6、負極5となるように重ね合わせて積層されることにより構成されている。
【0087】
なお、図8Bに示すように、セパレータ6は正極集電体露出部4Cの奥行きdcの半分以上を覆わないようにその寸法を設定するのが好ましい。すなわち、図8Bに示すように、正極集電体露出部4Cとセパレータ6とが重なる領域の奥行きGと正極集電体露出部4Cの奥行きdcとが下記の式(7)を満たすように構成するのが好ましい。
G<(dc/2) ・・・(7)
【0088】
同様に、図8Bに示すように、セパレータ6は負極集電体露出部5Cの奥行きdaの半分以上を覆わないようにその寸法を設定するのが好ましい。すなわち、図8Bに示すように、負極集電体露出部5Cとセパレータ6とが重なる領域の奥行きKと負極集電体露出部5Cの奥行きdaとが下記の式(8)を満たすように構成するのが好ましい。
K<(da/2) ・・・(8)
【0089】
セパレータ6により正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの奥行きの半分以上が覆われると、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部5Cと負極タブ8との接続面積が狭くなり入出力特性が低下することとなるからである。
【0090】
(1−2)二次電池の製造方法
上述のような二次電池1は、以下のような工程で作製することができる。
【0091】
[正極の作製]
まず、例えば、正極活物質と、低結晶性炭素と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体4Aの両面に塗布する。なお、この塗布工程においては、正極合剤スラリーを正極集電体4Aの全面に塗布するのではなく、正極集電体4A上に正極活物質層4Bが存在しない正極集電体露出部4Cが形成されるように正極合剤スラリーを塗布する。そして、正極合剤スラリーを乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層4Bを形成する。そして、所定のサイズとなるようにカットすることにより正極4を作製する。
【0092】
[負極の作製]
まず、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体5Aの両面に塗布する。なお、この塗布工程においては、上述した正極4と同様に、負極合剤スラリーを負極集電体5Aの全面に塗布するのではなく、負極集電体5A上に負極活物質層5Bが存在しない負極集電体露出部5Cが形成されるように負極合剤スラリーを塗布する。そして、負極合剤スラリーを乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層5Bを形成する。そして、所定のサイズとなるようにカットすることにより負極5を作製する。
【0093】
[積層工程]
次いで、正極4と負極5とを、セパレータ6を介して交互に、例えば、負極5、セパレータ6、正極4、セパレータ6、負極5・・・セパレータ6、負極5となるように重ね合わせて所定数の正極4および負極5を積層する。なお、本発明においては、図8Aに示すように、正極4と負極5とは正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが互いに反対の方向に向かうようにして積層される。すなわち、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが同一方向へ向かうようには構成されていない。これにより、正極集電体露出部4Cに接続する正極タブ7、負極集電体露出部5Cに接続する負極タブ8の幅を最大で電池素子2の幅と略同一とすることが可能となり、大電流の入出力が可能となる。
【0094】
続いて、正極4、負極5およびセパレータ6が密着するように固定し、積層電極体を作製する。固定には、接着テープ等の固定部材を用いる。固定部材は、例えば積層電極体の両サイド部およびボトム部に設ける。ゲル電解質を用いる場合は、正極4および負極5の両面にゲル電解質層を形成した後、セパレータ6を介して積層する。
【0095】
[積層以降の工程]
次に、図9および図10を参照して積層工程以降の製造工程の概略について説明する。図9Aは、積層工程において正極4、負極5およびセパレータ6を積層することにより構成された電池素子2である。積層工程後はまず、第1のU字折り曲げ工程において図9Bに示すように、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの折り曲げがなされる。次に、集電体露出部切断工程において図9Cに示すように、折り曲げられた正極集電体露出部4Cの先端の余剰分を切断することにより先端を切り揃える。同様に、負極集電体露出部5Cの先端も切り揃える。
【0096】
次に、タブ接続工程において図9Dに示すように、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部5Cと負極タブ8の接続をそれぞれ行う。なお、この工程においては正極タブ7および負極タブ8にシーラント10を設ける工程も含まれる。次に、タブ折り曲げ工程において、図9Eに示すように、正極集電体露出部4Cに接続した正極タブ7、負極集電体露出部5Cに接続した負極タブ8を所定の形状に折り曲げる。次に、インシュレータ設置工程において図9Fに示すように、電池素子2の正極集電体露出部4C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、必要に応じて、電池素子2の負極集電体露出部5C側の側面にインシュレータ11をさらに設ける。
【0097】
次に、図10Aに示すように、第2のU字折り曲げ工程において正極集電体露出部4Cにおける正極タブ7との接続部分を90°折り曲げる。次に、負極集電体露出部5Cにおける負極タブ8との接続部分を90°折り曲げる。次に、図10Bおよび図10Cに示すように、第1の外装工程において、略矩形状を有すると共に、第1外装部3Aの略中央の凹部9に電池素子2を収容することにより外装する。次に、図10Dに示すように、第2の外装工程において、平板状の第2外装部3Bによって収容部を閉蓋する。これにより電池素子2が外装材3により外装される。
【0098】
そして、図10Eに示すように、注液・シール工程において、凹部9の外周部分のうち1辺を残して熱融着等により溶着し、未溶着の一辺から電解液を注液した後、この一辺を熱溶着して封止する。以上の工程により、図10Fに示すように、二次電池1が製造される。
【0099】
[第1のU字曲げ工程]
積層した正極4から引き出された複数の正極集電体露出部4Cおよび積層した負極5から引き出された複数の負極集電体露出部5Cを、断面略U字形状となるように折り曲げる。第1のU字曲げ工程は、予め正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cに最適なU字曲げ形状を持たせるための工程である。予め最適なU字曲げ形状を持たせることにより、後に正極タブ7および負極タブ8と接続後の正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cを折り曲げてU字曲げ部を形成する際に正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cに引張り応力などのストレスがかからないようにすることができる。
【0100】
図11A〜図11Eは、正極集電体露出部4C1乃至4C3の第1のU字曲げ工程を説明する側面図である。図11A〜図11Eにおいては、正極集電体露出部4C1乃至4C3について行われる各工程を説明する。なお、負極集電体露出部5Cについても同様にして第1のU字曲げ工程が行われる。
【0101】
まず、図11Aに示すように、U字曲げ用薄板21を有するワークセット台20aの上部に積層電極体を配設する。U字曲げ用薄板21は、電池素子2の厚みよりもやや小さい分だけ、具体的には、少なくとも複数の正極集電体露出部4C1乃至4C3の総厚分小さい分だけ、ワークセット台20aから突出するように設置されている。このような構成とすることにより、正極集電体露出部4C3の曲げ外周側が電池素子2の厚みの範囲内に位置するため、二次電池1の厚みの増大や外観不良が生じるのを防止することができる。
【0102】
続いて、図11Bに示すように、電池素子2を下降させるか、もしくはワークセット台20aを上昇させる。このとき、電池素子2とU字曲げ用薄板21との間隙が小さいほど二次電池1のスペース効率が向上するため、例えば電池素子2とU字曲げ用薄板21との間隙が徐々に小さくなるようにする。
【0103】
図11Cに示すように、電池素子2がワークセット台20a上に載置され、正極集電体露出部4C1乃至4C3に曲げ部を形成した後、図11Dおよび図11Eに示すように、ローラ22を下降させて正極集電体露出部4C1乃至4C3がU字形状に折り曲げられる。
【0104】
U字曲げ用薄板21は、厚みが1mm以下、例えば0.5mm程度が好ましい。U字曲げ用薄板21には、このような薄さでも複数の正極集電体露出部4Cまたは負極集電体露出部5Cに曲げ形状を形成するために必要な強度を有する材料を用いることができる。U字曲げ用薄板21に必要な強度は、正極4および負極5の積層枚数や、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cに用いる材料の硬度等によって変わる。U字曲げ用薄板21が薄いほど、曲げ最内周の正極集電体露出部4C1の曲率を小さくすることができ、正極集電体露出部4Cの折り曲げに必要なスペースを小さくすることができるため好ましい。U字曲げ用薄板21としては、例えばステンレス(SUS)、強化プラスティック材およびめっきを施した鋼材などを用いることができる。
【0105】
[集電体露出部切断工程]
次に、U字曲げ部を形成した正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端を切り揃える。集電体露出部切断工程では、予め最適な形状を有するU字曲げ部を形成し、そのU字曲げ形状に合わせて正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの余剰分を切断する。図12は、正極集電体露出部4Cの切断工程を説明する側面図である。なお、負極集電体露出部5Cについても同様にして集電体露出部切断工程が行われる。
【0106】
図12Aに示すように、第1のU字曲げ工程においてU字曲げ部が形成された電池素子2の上面と底面を反転させ、集電体たるみ用逃げ部23を有するワークセット台20b上に電池素子2を固定する。
【0107】
次に、図12Bに示すように、U字曲げ部が形成された正極集電体露出部4C1乃至4C3のU字曲げ部から先端に至る先端部分がワークセット台20bに沿って略L字形状となるように先端部分を変形させる。このとき、再度U字曲げ部を形成するために必要な形状を維持することにより、曲げ外周側の正極集電体露出部4C3ほど大きなたるみが生じる。このようなたるみがワークセット台20bの集電体たるみ用逃げ部23に入り込むことにより、正極集電体露出部4C1乃至4C3をストレスなく変形させることができる。なお、正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端部分を固定した状態で正極集電体露出部4C1乃至4C3を変形させるようにしてもよい。
【0108】
続いて、図12Cに示すように、集電体押さえ24にて正極集電体露出部4C1乃至4C3をワークセット台20bに押さえつけた後、図12Dおよび図12Eに示すように、例えば集電体押さえ24に沿うように設けられた切断用刃25で正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端を切り揃える。正極集電体露出部4C1乃至4C3の切断箇所は、後に再度U字曲げを行った際に正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端が電池素子2の厚みの範囲内に位置するように、正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端の余剰分を少なくとも切断するようにする。
【0109】
[タブ接続工程]
続いて、正極集電体露出部4C1乃至4C3と、正極タブ7との接続を行う。タブ接続工程では、第1のU字曲げ工程で形成した最適なU字曲げ形状を維持しながら正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cと、正極タブ7および負極タブ8を固着する。これにより、正極集電体露出部4Cおよび正極タブ7と、負極集電体露出部5Cおよび負極タブ8が電気的に接続される。図13は、正極集電体露出部4C1乃至4C3と、正極タブ7との接続工程を説明する側面図である。なお、図示はしないが、正極タブ7にはあらかじめシーラント10が設けられているものとする。負極集電体露出部5Cと負極タブ8についても同様にして接続工程が行われる。
【0110】
図13Aに示すように、電極端子切断工程において正極集電体露出部4C1乃至4C3の先端余剰分を切断した電池素子2の上面と底面を再度反転させる。次に、図13Bに示すように、集電体形成維持用板26を有するワークセット台20c上に電池素子2を固定する。正極集電体露出部4C1の曲げ内周側には集電体形成維持用板26の先端が位置しており、正極集電体露出部4C1乃至4C3の曲げ形状を維持するとともに、固着装置から発生する例えば超音波振動などの外的要因による影響を防止する。
【0111】
続いて、図13Cに示すように、例えば超音波溶着により正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7とを固着する。超音波溶着には、例えば、正極集電体露出部4C1乃至4C3の下部に備えられたアンビル27aと、正極集電体露出部4C1乃至4C3の上部に備えられたホーン27bが用いられる。アンビル27aには予め正極集電体露出部4C1乃至4C3がセットされ、ホーン27bが下降してアンビル27aとホーン27bとで正極集電体露出部4C1乃至4C3および正極タブ7が挟持される。そして、アンビル27aとホーン27bとにより、正極集電体露出部4C1乃至4C3および正極タブ7に超音波振動が与えられる。これにより、正極集電体露出部4C1乃至4C3および正極タブ7が互いに固着される。
【0112】
なお、タブ接続工程においては、図4Aを参照して、上述した内周側曲げしろRiが形成されるように正極タブ7を正極集電体露出部4Cに接続するとよい。
【0113】
[タブ折り曲げ工程]
次に、正極集電体露出部4C1乃至4C3と固着した正極タブ7を所定の形状に折り曲げる。図14A乃至図14Cは、正極タブ7のタブ折り曲げ工程を説明する側面図である。なお、図示はしないが、タブ折り曲げ工程においてはタブに設けられているシーラント10も一緒に折り曲げられる。また、負極集電体露出部5Cと負極タブ8についても同様にしてタブ折り曲げ工程が行われる。
【0114】
図14Aに示すように、接続工程において正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7とが固着された電池素子2の上面と底面を再度反転させて、集電体たるみ用逃げ部23を有するワークセット台20d上に電池素子2を固定する。正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7との接続部分は、タブ折り曲げ台28a上に載置する。
【0115】
続いて、図14Bに示すように、正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7との接続部分をブロック28bにて押さえ、図14Cに示すように、ローラ29を降下させることにより、タブ折り曲げ台28aおよびブロック28bから突出した正極タブ7を折り曲げる。
【0116】
このとき、正極タブ7は予め熱溶着されたシーラント10と一緒に折り曲げるのが好ましい。正極タブ7の折り曲げ部をシーラント10が被覆することになり、正極タブ7と外装材3とが直接接触しない構造とすることができる。この構造により、長期的な振動、衝撃などによる外装材3内部の樹脂層と正極タブ7との擦れ、外装材3の破損、外装材3の金属層との短絡の危険性を大幅に低減することができる。
【0117】
[インシュレータ設置工程]
続いて、図14Dに示すように、電池素子2と、後述する第2のU字曲げ工程で折り曲げられる正極集電体露出部4C1乃至4C3との間に介在するようにインシュレータ11を設置する。インシュレータ11は後述する第2のU字曲げ工程によって正極集電体露出部4C1乃至4C3が90°折り曲げられると、電池素子2と正極タブ7との間に介在することとなる。また、インシュレータ11の形状を略ロ字状、箱型とした場合には、電池素子2の全側面をインシュレータ11で覆うようにインシュレータ11を電池素子2に被せる。
【0118】
[第2のU字曲げ工程]
続いて、図14Eに示すように、正極集電体露出部4C1乃至4C3と正極タブ7との接続部分を90°折り曲げ、電池素子2を作製する。第2のU字曲げ工程では、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cに正極タブ7および負極タブ8がそれぞれ予め第1のU字曲げ工程で形成したU字曲げ形状に沿ってU字曲げ部を形成する。
【0119】
このとき、U時曲げ部の曲率を有する部分において、正極集電体露出部4C1の曲げ外側の曲率と、正極集電体露出部4C1に隣接する正極集電体露出部4C2の曲げ内側の曲率とが略同等となることが好ましい。また、正極集電体露出部4C2の曲げ外側の曲率と、正極集電体露出部4C2に隣接する正極集電体露出部4C3の曲げ内側の曲率とが略同等となることが好ましい。曲げ最内周の正極集電体露出部4C1は、曲げ内側の形状がU字曲げ用薄板21の形状に沿って形成されていることが好ましい。
【0120】
すなわち、U字曲げ部において、隣接する2つの正極集電体露出部4Cの対向する面の曲率が略同等であることが好ましい。これにより、正極集電体露出部4CのU字曲げ部から先端までの部分において、正極集電体露出部4C間に無駄な間隙が生じず、スペース効率の向上につながる。
【0121】
なお、上述の工程では、正極集電体露出部4C1乃至4C3についてのみ記載したが、負極集電体露出部5Cについても同様の方法を用いることによりU字曲げを行うことができる。
【0122】
[外装工程および注液・シール工程]
上述のようにして作製された電池素子2は、図10B乃至図10Dに示すように、ラミネートフィルム等の外装材3で外装される。なお、上述したように外装材3が接触する正極タブ7および負極タブ8の各領域に、シーラント10が設けられている。
【0123】
外装工程においてはまず、電池素子2を深絞り加工により形成された第1外装部3Aの凹部9に収容し、第2外装部3Bとで電池素子2の上下から挟みこみ、凹部9の外周部分のうち1辺を残して熱融着等により溶着し、未溶着の一辺から電解液を注液した後、この一辺を熱溶着して封止する。これにより、二次電池1が得られる。なお、インシュレータ11も電池素子2と共に外装材3により外装される。なお、外装材3は、2枚のラミネートフィルムで電池素子2の上下から挟みこむものの他、1枚の外装材3の1部を深絞りにより凹型加工し、凹部9の開口を覆うように折り返したものでも良い。また、外装材3の凹部9は電池素子2の両面に深絞り加工されていても良い。この場合、正極タブ7および負極タブ8は電池素子2の厚みの中間付近で折り曲げられ、外装材3外部へと導出される構造をとる。
【0124】
このようにして作製された二次電池1は、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5CのU字曲げ部が、第1のU字曲げ工程によって得られたU字曲げ部の最適な曲げ形状を維持している。このため、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5CのU字曲げ部に過大なストレスやしわ、よれが生じることなくスペース効率の向上を図ることができる。
【0125】
<2.第2の実施形態>
(2−1)二次電池の構成
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図15Aおよび図15Bは、第2の実施形態における正極4、負極5およびセパレータ12の積層の手法を説明する略線図である。図15Aは、積層状態の外観を示す斜視図であり、図15Bは、積層状態の略線側面図である。第2の実施形態において第1の実施形態と同一または対応する箇所には同一の符号を付す。第2の実施形態は、セパレータ12を長尺の帯状に形成してつづら折りにより折り畳む点、正極4および負極5を折り畳んだセパレータ12の間に挟み込むことにより積層して電池素子2を構成する点において、第1の実施形態と異なっている。なお、セパレータ12以外の二次電池1の構成は第1の実施形態と同様である。
【0126】
[セパレータ]
セパレータ12は、正極4と負極5とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。第2の実施形態においては、セパレータ12は長尺の帯状に形成されている。そして、セパレータ12は、正極4および負極5の幅と略同一の間隔でつづら折り状に折り畳まれる。セパレータ12をつづら折り状に折りたたむことにより形成されるセパレータ12の各面の幅は正極4および負極5の幅と略同一となっている。セパレータ12は例えば、爪状の突起を折り目部分に当接させて引っ掛けることにより折り畳まれる。なお、セパレータ12は第1の実施形態と同様に、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜、または不織布やセルロースの多孔質膜を単層で、またはそれらを複数積層したもの用いることができる。特に、セパレータ12としては、ポリオレフィン製の多孔質膜が好ましい。また、セパレータ12としては、ポリオレフィンなどの微多孔膜上に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
【0127】
[電池素子]
上述のようにつづら折りにより折畳まれたセパレータ12の間に、複数枚の正極4および負極5が1枚ずつ交互に挟み込まれて挟持されることにより電池素子2が構成されている。正極4は、正極集電体露出部4Cがセパレータ12の折り目方向に対して平行方向に向けてセパレータ12間から導出されるように挟み込まれている。負極5も同様にセパレータ12の折り目方向に対して平行方向に向けてセパレータ12間から導出されるように挟み込まれている。
【0128】
さらに、正極4と負極5とは、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが互いに反対方向に向くようにセパレータ12に挟み込まれている。このように、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、電池素子2は、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが同一方向へ向かうようには構成されていない。これにより、正極集電体露出部4Cに接続する正極タブ7、負極集電体露出部5Cに接続する負極タブ8の幅を最大で電池素子2の幅と略同一とすることが可能となり、大電流の入出力が可能となる。
【0129】
(2−2)二次電池の製造方法
第2の実施形態に係る二次電池1は、以下のような工程で作製することができる。なお、正極4の作製、負極5の作製工程は第1の実施形態と同様である。
【0130】
[積層工程]
正極4および負極5は、図15Aおよび図15Bに示すように、つづら折り状に折り畳まれたセパレータ12の間に挟み込まれることにより設けられる。これにより、正極4と負極5とを、セパレータ12を介して交互に、例えば、負極5、セパレータ12、正極4、セパレータ12、負極5・・・セパレータ12、負極5となるように重ね合わせて所定数の正極4および負極5を積層させることができる。
【0131】
続いて、正極4、負極5およびセパレータ12が密着するように固定し、積層電極体を作製する。固定には、接着テープ等の固定部材(図示せず)を用いる。固定部材は、例えば積層電極体の両サイド部およびボトム部に設ける。ゲル電解質を用いる場合は、正極4および負極5の両面にゲル電解質層を形成した後、セパレータ12を介して積層する。これにより、電池素子2が構成される。
【0132】
また、第1の実施形態と同様に、セパレータ12は正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの奥行きの半分以上を覆わないようにその寸法を設定するのが好ましい。セパレータ12により正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの奥行きの半分以上が覆われると、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部5Cと負極タブ8との接合面積が狭くなり入出力特性が低下することとなるからである。
【0133】
[積層以降の工程]
積層工程以降の工程は、第1の実施形態と同様である。すなわち、積層工程後はまず、第1のU字折り曲げ工程において、図9Bに示すように、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5Cの折り曲げがなされる。次に、集電体露出部切断工程において、図9Cに示すように、折り曲げられた正極集電体露出部4Cの先端の余剰分を切断することにより先端を切り揃える。同様に、負極集電体露出部5Cの先端も切り揃える。
【0134】
次に、タブ接続工程において、図9Dに示すように、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部5Cと負極タブ8の接続をそれぞれ行う。なお、この工程においては正極タブ7および負極タブ8にシーラント10を設ける工程も含まれる。次に、タブ折り曲げ工程において、図9Eに示すように、正極集電体露出部4Cに接続した正極タブ7、負極集電体露出部5Cに接続した負極タブ8を所定の形状に折り曲げる。
【0135】
次に、インシュレータ設置工程において、図9Fに示すように、電池素子2の正極集電体露出部4C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、必要に応じて、電池素子2の負極集電体露出部5C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、図10Aに示すように、第1のU字折り曲げ工程において正極集電体露出部4Cにおける正極タブ7との接続部分を90°折り曲げる。次に、第1のU字折り曲げ工程において負極集電体露出部5Cにおける負極タブ8との接続部分を90°折り曲げる。次に、図10Bおよび図11Cに示すように、第1の外装工程において、略矩形状を有すると共に、深絞りにより中央に凹部9を有する外装材としてのラミネートフィルム(第1外装材3A)の凹部9内に電池素子2を収容することにより外装する。次に、図10Dに示すように、第2の外装工程において、平板状のラミネートフィルム(第2外装材3B)によって凹部9を閉蓋する。これにより電池素子2が外装材3により外装される。
【0136】
そして、図10Eに示すように、注液・シール工程において、凹部の外周部分のうち1辺を残して熱融着等により溶着し、未溶着の一辺から電解液を注液した後、この一辺を熱溶着して封止する。以上の工程により図1Aまたは図10Fに示すような二次電池1が製造される。
【0137】
第2の実施形態によれば、電池素子2の製造工程において正極4、負極5およびセパレータ12を順に積層していく必要がなく、セパレータ12に正極4をはさみ込んでいく作業とセパレータ12に負極5をはさみ込んでいく作業とを同時に行うことができる。これにより、二次電池1の製造効率を高めて、生産性の向上を図ることができる。
【0138】
なお、セパレータ12の折り曲げ方向は、図16Aに示すようなセパレータ12の長手方向に沿う方向に限られるものではない。図16Bに示すように、セパレータ12の短手方向に沿う方向に折り曲げてもよい。この場合も長手方向に沿って折り曲げた場合と同様に、正極4と負極5とは正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部5Cとが互いに反対方向に導出されるようにセパレータ12に挟み込まれる。
【0139】
<3.第3の実施形態>
(3−1)二次電池の構成
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図17A〜図17Cは、第3の実施形態における正極4、負極13およびセパレータの積層構造を説明する略線図である。図17Aは、第1セパレータ14、負極13および第2セパレータ15との積層構造を示す略線図であり、図17Bは、積層状態の外観を示す斜視図であり、図17Cは、積層状態の略線側面図である。第3の実施形態において第1の実施形態と同一または対応する箇所には同一の符号を付す。
【0140】
第3の実施形態は、つづら折りを用いて正極4、負極13およびセパレータを積層する点は第2の実施形態と共通する。しかし、セパレータのみでなく、負極13も長尺の帯状に形成する点、2枚のセパレータ間に負極13を挟み込み、それらをまとめてつづら折りにより折り畳む点、正極4を折り畳んだセパレータの間に挟み込むことにより電池素子を構成する点において、第2の実施形態とは異なっている。なお、セパレータ、負極13以外の二次電池1の構成は第1の実施形態と同様である。
【0141】
[負極]
負極13を構成する負極集電体13Aはセパレータと同様の長尺の帯状に形成されている。そして、負極集電体13Aの両面に短手方向に所定の寸法の奥行きを有する負極集電体露出部13Cが形成されるように、負極集電体13A上に負極活物質層13Bが設けられている。このようにして負極13は、図17Aに示すように、長尺の帯状に形成されている。第3の実施形態においても第1および第2の実施形態と同様に、負極集電体13Aの両面全面に負極活物質層13Bが設けられているのではない。負極13は長尺の帯状に形成されているため、負極集電体露出部13Cの幅と負極活物質層13Bの幅とは略同一となる。すなわち、負極集電体露出部13Cの幅wa(図17Aにおける長手方向の寸法)と負極活物質層13Bの幅Wa(図17Aにおける長手方向の寸法)とは以下の式(9)を満たすように構成されている。
(wa/Wa)=1.0 ・・・(9)
【0142】
負極集電体露出部13Cの幅と負極活物質層13Bの幅とは略同一であるため、負極13の製造工程においては、負極集電体13A上に負極活物質層13Bを塗布する工程の他に、負極集電体露出部13Cを細く形成するための打ち抜きや切り取りなどの工程を行う必要がない。これにより、負極13の製造工程を簡略化することができる。なお、負極集電体13Aの材質、負極活物質層13Bの材質などは第1の実施形態と同様である。
【0143】
また、負極集電体露出部13Cは第1の実施形態と同様にその奥行き(図17Aにおける短手方向の寸法)daが、負極活物質層13Bの奥行き(図17Aにおける短手方向の寸法)Daとの関係において、以下の式(10)を満たすように形成されるのが好ましい。
0.02<(da/Da)≦0.40 ・・・(10)
【0144】
[セパレータ]
セパレータは、正極4と負極13とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。第3の実施形態においては2つのセパレータ、第1セパレータ14および第2セパレータ15を用いる。第1セパレータ14および第2セパレータ15は共に負極13と同様に長尺の帯状に形成されており、その寸法は略同一とされている。また、第1セパレータ14および第2セパレータ15は共に、図17Aに示すように、負極13に比べて短手方向の寸法が短く構成されている。これは、第1セパレータ14と第2セパレータ15とで負極13を挟持した状態において、第1セパレータ14と第2セパレータ15との間から負極集電体露出部13Cが導出されるようにするためである。
【0145】
なお、セパレータは第1の実施形態と同様に、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜を単層で、またはそれらを複数積層したもの用いることができる。特に、セパレータとしては、ポリオレフィン製の多孔質膜が好ましい。また、セパレータとしては、ポリオレフィンなどの微多孔膜上に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
【0146】
[電池素子]
上述のように構成された第1セパレータ14と第2セパレータ15とで負極13を挟持することにより、第1セパレータ14、第2セパレータ15および負極13とを一体構成とする。以下、第1セパレータ14、第2セパレータ15で負極13を挟持した3層構造体を3層体16と称する。負極13は短手方向の寸法を第1セパレータ14および第2セパレータ15よりも大きく形成してあるので、3層体16の第1セパレータ14と第2セパレータ15との間からは負極集電体露出部13Cが導出される。
【0147】
3層体16は正極4の幅と略同一の間隔でつづら折り状に折り畳まれる。3層体16をつづら折り状に折りたたむことにより形成される3層体16の各面の幅は正極4の幅と略同一となっている。
【0148】
上述のようにつづら折りにより折畳まれた3層体16を構成するセパレータの間に、複数枚の正極4が1枚ずつ挟み込まれて挟持されることにより電池素子が構成されている。正極4は、正極集電体露出部4Cが3層体16の折り目方向と平行方向に向けてセパレータ間から導出するように挟み込まれている。さらに、正極4は、正極集電体露出部4Cが負極集電体露出部13Cの導出方向の反対方向に向くように挟み込まれている。このように、第3の実施形態においても第1の実施形態と同様に、電池素子は、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部13Cとが同一方向へ向かうようには構成されていない。これにより、正極集電体露出部4Cに接続する正極タブ、負極集電体露出部13Cに接続する負極タブの幅を最大で電池素子の幅と略同一とすることが可能となり、大電流の入出力が可能となる。
【0149】
(3−2)二次電池の製造方法
第3の実施形態に係る二次電池1は、以下のような工程で作製することができる。正極4の作製工程は第1の実施形態と同様である。
【0150】
[負極の作製]
まず、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体13Aに塗布する。なお、この塗布工程においては、負極合剤スラリーを負極集電体13Aの全面に塗布するのではなく、負極集電体13A上に負極活物質層13Bが形成されてない負極集電体露出部13Cが形成されるように負極合剤スラリーを塗布する。そして、負極溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層13Bを形成する。以上の工程により負極13が作製される。なお、第3の実施形態においては、負極13を所定のサイズにカットする裁断工程を行う必要がないため、製造効率を高めることができる。
【0151】
[積層工程]
まず、第1セパレータ14と第2セパレータ15の間に負極13を挟み込むことにより3層体16を形成する。次に、3層体16をつづら折りにより複数回折り畳む。3層体16は例えば、爪状の突起を折り目部分に当接させて引っ掛けることにより折り畳まれる。そして、正極4は、図17Aおよび図17Bに示すように、つづら折り状に折り畳まれた3層体16を構成するセパレータの間に1枚ずつ挟み込まれることにより設けられる。これにより、正極4と負極13とを、セパレータを介して交互に、例えば、負極13、セパレータ、正極4、セパレータ、負極13・・・セパレータ、負極13となるように重ね合わせて所定数の正極4および負極13を積層させることができる。なお、第3の実施形態においても第1の実施形態と同様に、正極4と負極13とは正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部13Cとが互いに反対の方向に向かうようにして積層される。すなわち、正極集電体露出部4Cと負極集電体露出部13Cとが同一方向へ向かうようには構成されていない。これにより、正極集電体露出部4Cに接続する正極タブ、負極集電体露出部13Cに接続する負極タブの幅を最大で電池素子の幅と略同一とすることが可能となり、大電流の入出力が可能となる。
【0152】
続いて、正極4、負極13およびセパレータが密着するように固定し、積層電極体を作製する。固定には、接着テープ等の固定部材(図示せず)を用いる。固定部材は、例えば積層電極体の両サイド部およびボトム部に設ける。ゲル電解質を用いる場合は、正極4および負極13の両面にゲル電解質層を形成した後、セパレータを介して積層する。これにより、電池素子が構成される。
【0153】
また、第1の実施形態と同様に、セパレータは正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部13Cの奥行きの半分以上を覆わないようにその寸法を設定するのが好ましい。セパレータにより正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部13Cの奥行きの半分以上が覆われると、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部13Cと負極タブ8との接合面積が狭くなり入出力特性が低下することとなるからである。
【0154】
[積層以降の工程]
積層工程以降の工程は、第1の実施形態と同様である。すなわち、積層工程後はまず、折り曲げ工程において、図9Bに示すように、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部13Cの折り曲げがなされる。次に、切断工程において、図9Cに示すように、折り曲げられた正極集電体露出部4Cの先端の余剰分を切断することにより先端を切り揃える。同様に、負極集電体露出部13Cの先端も切り揃える。
【0155】
次に、接続工程において、図9Dに示すように、正極集電体露出部4Cと正極タブ7、負極集電体露出部13Cと負極タブ8の接続をそれぞれ行う。なお、この工程においては、正極タブ7および負極タブ8にシーラント10を設ける工程も含まれる。次に、タブ折り曲げ工程において、図9Eに示すように、正極集電体露出部4Cに接続した正極タブ7、負極集電体露出部13Cに接続した負極タブ8を所定の形状に折り曲げる。
【0156】
次に、インシュレータ設置工程において、図9Fに示すように、電池素子の正極集電体露出部4C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、必要に応じて、電池素子の負極集電体露出部5C側の側面にインシュレータ11を設ける。次に、図10Aに示すように、第2の折り曲げ工程において正極集電体露出部4Cにおける正極タブ7との接続部分を90°折り曲げる。次に、第2の折り曲げ工程において負極集電体露出部5Cにおける負極タブ8との接続部分を90°折り曲げる。次に、図10Bに示すように、第1の外装工程において、略矩形状を有すると共に、深絞りにより中央に凹部を有する外装材としてのラミネートフィルム(第1外装部3A)の凹部内に電池素子を収容することにより外装する。次に、図10Cに示すように、第2の外装工程において、平板状のラミネートフィルム(第2外装部3B)によって収容部を閉蓋する。これにより電池素子3が外装材により外装される。
【0157】
そして、図10Dに示すように、注液・シール工程において、凹部9の外周部分のうち1辺を残して熱融着等により溶着し、未溶着の一辺から電解液を注液した後、この一辺を熱溶着して封止する。以上の工程により、図10Fに示すような二次電池1が製造される。
【0158】
第3の実施形態によれば、1回のつづら折りで一組の正極4、負極13およびセパレータの積層が可能となるため、セパレータ1枚のみをつづら折りする構造に比べて積層速度を倍にすることができる。これにより二次電池1の製造効率を高めて、生産性の向上を図ることができる。また、セパレータのみではなく、第1セパレータ14と第2セパレータ15間に負極13を挟み込み、その負極13を含めてつづら折りにより折り畳んでいるため、セパレータのみをつづら折りする場合に比べて電池素子全体の剛性を向上させることができる。これにより、振動、衝撃などに対する耐性が増し、二次電池1を用いて構成した電池パックにおける積層ズレの発生を抑制することができる。
【0159】
また、第1セパレータ14、第2セパレータ15および負極13が密着状態とし、その3枚をまとめてつづら折りにより折り畳むため、積層精度誤差を許容するためのクリアランスを形成する必要要がない。したがって、正極4および負極13のサイズを大きくすることができ、エネルギー密度の高い二次電池1を実現することができる。また、負極13の製造工程において所定のサイズにカットする裁断工程を行う必要がないため、コンタミリスクを低減することができる。
【0160】
また、セパレータによって正極4、負極13を封袋する構成とはなっていないため、集電体との通電が容易であり、特に大電流型の二次電池1に有用である。また、セパレータによる封袋構造の懸念事項である折り返りによって生じるセパレータの歪みによる電池への悪影響がない。また、負極13内に正極4が挟まれて収まる構造となっているので、リチウム(Li)析出の懸念がない。さらに、片面塗布の正極4および負極13の箔面同士を背中合わせに積層するのではなく、両面塗布の正極4および負極13を効率よく積層することができるので、容量を保ちつつより薄い二次電池1、言い換えれば、エネルギー密度の高い二次電池1を作製することができる。
【0161】
上述の説明ではセパレータによって負極13を挟持する例として、2枚のセパレータ、第1セパレータ14と第2セパレータ15によって負極13を挟持する構成を挙げたが、負極13をセパレータによって挟持する構成はそのような例に限られない。図18Aおよび図18Bは、変形例を示す図である。図18Aは、積層状態の外観を示す斜視図であり、図18Bは、図18Aにおける矢印Bの矢視図である。図18Aおよび図18Bに示すように、1枚のセパレータ17を長手方向に沿って2つ折りにし、その間に負極13を挟み込むようにしてもよい。このような構成によっても上述の2枚のセパレータを用いる構成と同様の効果を奏することができる。
【0162】
<4.第4の実施形態>
(4−1)二次電池の構成
図25Aは、本発明の第4の実施形態に係る二次電池の外観の一例を示す斜視図である。図25Aに示すように、第4の実施形態に係る二次電池は、正極タブ31および負極タブ41が同一の側面から導出されている点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0163】
図25Bは、電池素子の構成の一例を示す斜視図である。図25Cは、電池素子の構成の一例を示す分解斜視図である。電池素子2は、対向する第1の主面A1および第2の主面A2と、第1の主面A1および第2の主面A2の間に設けられた側面部Sとを有する。側面部Sは、対向する第1の側面S1および第2の側面S2と、対向する第3の側面S3および第4の側面S4とを有している。第3の側面S3および第4の側面S4は、第1の側面S1と第2の側面S2との間に設けられる。
【0164】
第1の主面A1および第2の主面A2は、長辺と短辺とを有する矩形状を有している。第1の側面S1、第2の側面S2、第3の側面S3および第4の側面S4は、細長い矩形状を有する。第1の側面S1および第2の側面S2がそれぞれ、第1の主面A1および第2の主面A2の短辺側に設けられ、第3の側面S3および第4の側面S4がそれぞれ、第1の主面A1および第2の主面A2の長辺側に設けられる。
【0165】
正極集電体露出部4Cは、第1の側面S1の側に設けられているのに対して、負極集電体露出部5Cは、第2の側面S2の側に設けられている。正極タブ31は、第1の側面S1の側で正極集電体露出部4Cと接続されると共に、第3の側面S3の側から外装材3の外に導出されている。これに対して、負極タブ41は、第2の側面S2の側で負極集電体露出部5Cと接続されると共に、第3の側面S3の側から外装材3の外に導出されている。
【0166】
(電極タブ)
図26Aは、正極タブの形状の一例を示す斜視図である。正極タブ31は、例えば、電池素子2の第1の側面S1および第3の側面S3に倣うように屈曲された屈曲部32と、第3の側面S3に対して鉛直方向に導出される導出部33とを有する。屈曲部32は、例えば、電池素子2の第2の側面S1および第3の側面S3に対向する裏面Saと、この裏面Saとは反対側の表面Sbとを有する。屈曲部32は、例えば、電池素子2の第1の主面A1の側から見ると、略L字状の形状を有している。より具体的には、屈曲部32は、正極集電体露出部4Cと接続される接続部32aと、この接続部32aの一端から、接続部32aの裏面Saに対して略鉛直方向に延在された延在部32bとを有する板状部材である。導出部33は、延在部32bの表面Saに対して略鉛直方向に立設されている。
【0167】
図26Bは、負極タブの形状の一例を示す斜視図である。負極タブ41は、例えば、電池素子2の第2の側面S2および第3の側面S3に倣うように屈曲された屈曲部42と、第3の側面S3に対して鉛直方向に導出される導出部43とを有する。屈曲部42は、例えば、電池素子2の第2の側面S1および第3の側面S3に対向する裏面Saと、この裏面Saとは反対側の表面Sbとを有する。屈曲部42は、例えば、電池素子2の第1の主面A1の側から見ると、略L字状の形状を有している。より具体的には、屈曲部42は、負極集電体露出部5Cと接続される接続部42aと、この接続部42aの一端から、接続部42aの裏面Saに対して略鉛直方向に延在された延在部42bとを有する板状部材である。導出部43は、延在部42bの表面Saに対して略鉛直方向に立設されている。
【0168】
正極タブ31および負極タブ41の有効断面積は、二次電池1の定格容量(0.2C放電容量)あたりで0.1〜3.0mm2/Ahが好ましく、0.5〜1.0mm2/Ahがより好ましい。正極タブ31および負極タブ41の有効断面積が0.1mm2/Ah未満であると、電池容量に対して正極タブ31および負極タブ41の有効断面積が小さいため、大電流での入出力時に正極タブ31および負極タブ41が発熱してしまう。正極タブ31および負極タブ41が発熱すると、外装材3とのシール部の樹脂が軟化し、リーク不良が発生する虞がある。一方、正極タブ31および負極タブ41の有効断面積が3.0mm2/Ahを超えると、電池内部における正極タブ31および負極タブ41の割合が大きくなるため、体積エネルギー密度が低下してしまう。また、有効断面積が大きいために、外装材3とのシール不良が発生しやすくなる虞がある。ここで、有効断面積とは、正極タブ31または負極タブ41、およびその接合部の垂直断面積のうちで、最小の断面積を意味する。なお、垂直断面積は、二次電池1の充放電時に流れる電流の方向に対して垂直な断面の面積を意味する。また、定格容量(Ah)は、二次電池1を0.2C相当の電流値で放電したときに取り出せる電気量をいう。
【0169】
正極タブ31および負極タブ41の材料としては、導電性に優れた金属を主成分とするものが好ましい。このような金属としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、リン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、およびニッケル(Ni)などからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましい。具体的には例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、リン(P)、銀(Ag)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)などの単体、またはこれらを2種以上含む合金を用いることが好ましい。合金としては、ステンレス鋼(Stainless Used Steel:SUS)、銅合金(Cu合金)などを用いることが好ましい。
【0170】
正極タブ31および負極タブ41の両方の導電率が、70(%IACS)以上を有することが好ましい。これにより、上述の有効断面積が0.1〜3.0mm2/Ahの間においても大電流での入出力時にも正極タブ31および負極タブ41での発熱が抑制される。ここで、IACS%は、導電率測定器(フェルスター社製シグマテスタ)を用いて体積抵抗率を測定し、焼きなまし銅の導電率1.7241×10-2μΩmに対する割合から算出したものである。
【0171】
(電極タブの形状例)
図27A〜図28Cは、正極タブの第1〜第7の形状例を示す斜視図である。なお、正極タブ31と負極タブ41との形状は、対称な関係にあるため、以下では、正極タブ31の形状例のみについて説明し、負極タブ41の形状例についての説明は省略する。
【0172】
図27Aでは、延在部32bの表面Sbの底辺側に導出部33が立設された例が示されている。このような構成は、電池素子2の第1の主面(上面)A1を覆う側に、深絞り加工により予め凹部9が形成された外装材3を用いる場合に好ましい。
【0173】
図27Bでは、延在部32bの表面Sbの上辺側に導出部33が立設された例が示されている。このような構成は、電池素子2の第2の主面(下面)A2を覆う側に、深絞り加工により予め凹部9が形成された外装材3を用いる場合に好ましい。
【0174】
図27Cでは、延在部32bの表面Sbの中央部に導出部33が立設された例が示されている。このような構成は、電池素子2の第1の主面(上面)A1および第2の主面(下面)A2を覆う側にそれぞれ、深絞り加工により予め凹部9が形成された外装材3を用いる場合に好ましい。
【0175】
延在部32bの表面Sbにて導出部33が立設される位置は特に限定されるものではなく、表面Sbの任意の位置とすることができ、例えば外装材3の凹部9の位置に応じて適宜選択することができる。
【0176】
図27Dでは、屈曲部32の角部に対して面取り加工が施された例が示されている。このような面取り加工は、屈曲部32の裏面Saと表面Sbのうち、少なくとも表面Sbに施されることが好ましく、裏面Saおよび表面Sbの両方に施されるようにしてもよい。表面Saに面取り加工を施すことで、二次電池1の製造時や使用時に、振動によって正極タブ31の角部が電池素子2や外装材3を破損することを抑制できる。屈曲部32の裏面Saにも面取り加工を施す場合には、電池素子2の角部にも表面Saと同様に面取り加工を施すことが好ましい。電池素子2の角部と屈曲部32の角部との間の隙間を無くし、両者を密着させることができるからである。
【0177】
面取り加工としては、例えば、C面加工、R面加工などが挙げられ、正極タブ31と負極タブ41との角部で異なる面取り加工が施されているようにしてもよい。例えば、正極タブ31と負極タブ41との角部のうち、一方をC面加工として、他方をR面加工としてもよい。
【0178】
図28Aでは、別々に形成された屈曲部32と導出部33とを用いた負極タブ41の例が示されている。導出部33は、例えば、矩形状を有し、その一辺に立設された接合部38aを有している。この接合部38aが、屈曲部32の延在部32bの表面Sbに接合されている。
【0179】
図28Bでは、図27Aに示したものよりも導出部33の幅を狭くし、導出部33と屈曲部32との幅をほぼ同程度とした例が示されている。
【0180】
図28Cでは、導出部33の先端部分にネジ部が設けられた例が示されている。これにより、ナット締めによる電池間接続方式にも対応できる。例えば、一方の二次電池1の導出部33と、他の二次電池1の導出部35とを、ナット34を介して電気的に接続することができる。
【0181】
(タブの作製方法)
正極タブ31および負極タブ41は、例えば、成型工程、プレス工程、屈折工程、および溶接工程などを適宜組み合わせて作製することができる。以下に、例として、正極タブ31の作製方法について説明する。
【0182】
(第1の例)
図29A〜図29Cは、正極タブの作製方法の第1の例を示す工程図である。まず、例えば打ち抜き加工などにより、金属片を加工する。これにより、図29Aに示すように、細長い矩形部36と、その長手方向の一端に設けられた幅広の矩形部37とからなる金属片が形成される。
【0183】
次に、幅広の矩形部37に対してL字曲げ加工を施す。これにより、図29Bに示すように、細長い矩形部36が幅広の矩形部37に対して立設されて、導出部33が形成される。次に、細長い矩形部36に対してL字曲げ加工を施す。これにより、図29Cに示すように、屈曲部32と導出部33とを有する正極タブ31が形成される。
【0184】
(第2の例)
図30A〜図30Cは、正極タブの作製方法の第2の例を示す工程図である。まず、例えば打ち抜き加工などにより、図30Aに示すように、矩形状の金属片を作製する。次に、金属片に対してL字加工を施す。これにより、図30Bに示すように、矩形状の金属の一辺側が立設されて、接合部38aを有する導出部33が形成される。次に、別工程にて作製された屈曲部32の延在部32bの表面Sbに対して、導出部33の接合部38aを接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接などを用いることができる。
【0185】
(被覆層)
正極タブ31および負極タブ41の少なくとも一方の表面が被覆層により被覆されていることが好ましく、正極タブ31および負極タブ41の両方の表面が被覆層により被覆されていることがより好ましい。被覆層としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0186】
(接合面積)
図31は、正極集電体露出部と正極タブとの接合部を拡大して表す斜視図である。正極集電体露出部4Cと正極タブ31との接合面積Scが、正極タブ31の有効断面積Ascと、正極集電体露出部幅wcと、電池素子2の厚みBと、以下の式(11)の関係を満たすことが好ましい。
Asc≦Sc≦wc×B ・・・(11)
【0187】
Asc>Scであると、大電流の充放電時に、正極集電体露出部4Cと正極タブ31との接合部に発熱が集中し、電池寿命を低下する虞がある。一方、Sc>wc×Bであると、接合部が正極集電体露出部4Cの幅または電池素子2の厚みよりもはみ出すため、二次電池1の体積エネルギー密度を低下させてしまう。また、はみ出た正極タブ31や正極集電体露出部4Cによって、アルミラミネートフィルムなどの外装材内部の樹脂層が破損し、アルミ層などと電気的に接触して内部ショートを引き起こす虞がある。
【0188】
負極集電体露出部5Cと負極タブ41との接合面積Saが、負極タブ41の有効断面積Asaと、負極集電体露出部幅waと、電池素子2の厚みBと、以下の式(12)の関係を満たすことが好ましい。
Asa≦Sa≦wa×B ・・・(12)
【0189】
Asa>Saであると、大電流の充放電時に、負極集電体露出部5Cと負極タブ41との接合部に発熱が集中し、電池寿命を低下する虞がある。一方、Sa>wa×Bであると、接合部が負極集電体露出部5Cの幅または電池素子2の厚みよりもはみ出すため、二次電池1の体積エネルギー密度を低下させてしまう。また、はみ出た正極タブ31や負極集電体露出部5Cによって、アルミラミネートフィルムなどの外装材内部の樹脂層が破損し、アルミ層などと電気的に接触して内部ショートを引き起こす虞がある。
【0190】
(電極タブと電池素子との間の絶縁部材)
正極タブ31および負極タブ41と電池素子2との間の少なくとも一部に、絶縁部材(以下インシュレータと適宜称する。)をさらに設けることが好ましい。より具体的には、正極タブ31の屈曲部32と、電池素子2の第1の側面S1および第3の側面S3の少なくとも一方の側面との間にインシュレータをさらに備えることが好ましい。また、負極タブ41の屈曲部42と、電池素子2の第2の側面S2および第3の側面S3の少なくとも一方の側面との間にインシュレータをさらに備えることが好ましい。電池素子2の最外層に正極4または負極5を設ける構成を採用した場合にも、正極4または負極5が、振動などにより正極タブ31または負極タブ41と接触し、内部短絡が発生することを抑制できる。すなわち、二次電池1の安全性を向上し、かつ、二次電池1の性能の低下を抑制できる。
【0191】
図32A〜図32Dは、絶縁部材の形状例を示す斜視図である。図32Aでは、電池素子2の第3の側面S3と、正極タブ31および負極タブ41との間に、インシュレータ51を設けた例が示されている。
【0192】
図32Bでは、インシュレータ51に1または複数の孔部51aを設けた例が示されている。このように孔部51aを設けることで、電解液の電池素子内部への注液性を確保することができる。孔部51aの形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形、不定形などが挙げられるが、これらに特に限定されるものではなく、2以上の形状を組み合わせて用いるようにしてもよい。孔部51aの配列パターンとしては、規則的パターンおよび不規則的パターンのいずれを用いることも可能である。孔部51aの形成方法としては、例えばパンチング加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0193】
図32Bでは、インシュレータ51に1または複数の切り欠き部51bを設けた例が示されている。このように切り欠き部51bを設けることで、電解液の電池素子内部への注液性を確保することができる。切り欠き部51bの形状としては、例えば、部分円形、部分楕円形、多角形、不定形などが挙げられるが、これらに特に限定されるものではなく、2以上の形状を組み合わせて用いるようにしてもよい。切り欠き部51bの配列パターンとしては、規則的パターンおよび不規則的パターンのいずれを用いることも可能である。切り欠き部51bの形成方法としては、例えばパンチング加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0194】
図32Dでは、インシュレータ51をコの字状とし、電池素子2の第1の側面S1、第2の側面S2および第3の側面S3を覆う例が示されている。このようにすることで、第3の側面に加えて、第1の側面S1および第2の側面S2における内部短絡も抑制することができる。すなわち、安全性をさらに向上することができる。また、インシュレータ51をロの字状とし、電池素子2の側面Sをすべて覆うようにしてもよい。
【0195】
インシュレータ51の形状としては、例えば、板状、シート状、フィルム状を挙げることができるが、これに限定されるものではない。インシュレータ51の材料としては、高分子樹脂または不織布などが好ましい。高分子樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)を用いることが好ましい。
【0196】
インシュレータ51は、正極タブ31および負極タブ41と電池素子2との間の絶縁を可能なものであればよく、上述の例に限定されるものではい。例えば、インシュレータ51として、粘着性の絶縁部材を用いるようにしてもよい。この場合、粘着性の絶縁部材は、例えば、正極タブ31および負極タブ41の裏面Sb、または電池素子2の第1の側面S1、第2の側面S2および第3の側面S3に貼り合わされる。粘着性の絶縁部材としては、例えば、粘着性の絶縁テープを用いることができる。また、流動性を有する樹脂材料を、正極タブ31および負極タブ41と電池素子2の側面Sとの間に充填し、固化するようにしてもよい。樹脂材料としては、例えば、ホットメルト樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、感光性樹脂を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0197】
インシュレータ51の厚みは、好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.2〜1.0mm以下の範囲内である。インシュレータ51の厚みが0.2mm未満であると、振動などが加えられる環境下で二次電池1を使用した場合に、長期的な絶縁性を確保できなくなる傾向がある。一方、インシュレータ51の厚みが1.0mmを超えると、二次電池1に対するインシュレータ51の体積割合が多くなり、二次電池1の体積エネルギー密度が低下してしまう傾向がある。
【0198】
インシュレータ51の幅は、正極タブ31および負極タブ41の幅以上、電池素子2の厚み以下であることが好ましい。インシュレータ51の幅が正極タブ31および負極タブ41の幅未満であると、インシュレータ51からはみ出した正極タブ31または負極タブ41の部分が、負極5または正極4と短絡する虞がある。一方、インシュレータ51の幅が電池素子2の厚みを超えると、インシュレータ51の端面が外装材3を突き破る虞がある。
【0199】
インシュレータ51の形状は特に限定されるものではないが、矩形状、コの字状、ロの字状、またはそれらの角部が切り落とされた形状であることが好ましい。角部が切り落とされた形状としては、角部に曲率Rが付されて、角部がR形状とされた形状が好ましく、その曲率Rは0.5〜2.0の範囲内であることが好ましい。角部がR形状とされた矩形状などの形状は、加工が容易であるため、生産性に優れ、かつ、インシュレータ51の角部が外装材3を突き破る危険性が低いからである。
【0200】
(セパレータの一部を絶縁部材として使用する例)
インシュレータ51をさらに備える代わりに、セパレータ6の一部を正極タブ31および負極タブ41と電池素子2との間を絶縁する絶縁部材として使用するようにしてもよい。
【0201】
図33Aは、正極タブと電池素子とを絶縁する絶縁部材としてセパレータを使用した第1の例を示す断面図である。電池素子2に含まれるセパレータ6の一部または全部が正極4および負極5よりも大きく設定され、積層された正極4および負極5からセパレータ6の余剰部6aがはみ出すようになっている。そして、このはみ出した余剰部6aにより電池素子2の第3の側面S3が覆われる。これにより、電池素子2の第3の側面S3と正極タブ31とを、セパレータ6の余剰部6aにより絶縁することができる。
【0202】
図33Bは、正極タブと電池素子とを絶縁する絶縁部材としてセパレータを使用した第2の例を示す断面図である。電池素子2は、最外層電極である負極5の表面にさらに積層されたセパレータ6を有する。このセパレータ6は、積層された正極4および負極5よりも大きく設定され、電池素子2の最外層からからセパレータ6の余剰部6aがはみ出すようになっている。そして、このはみ出した余剰部6aにより電池素子2の第3の側面S3が覆われる。これにより、電池素子2の第3の側面S3と正極タブ31とを、セパレータ6の余剰部6aにより絶縁することができる。また、電池素子2の第1の側面S1および/または第2の側面S2も余剰部6aにより覆う構成としてもよい。
【0203】
図33Cは、正極タブと電池素子とを絶縁する絶縁部材としてセパレータを使用した第3の例を示す断面図である。第2の実施形態において、つづら折りにより折り畳まれるセパレータ12の長手方向の一端を余分に長くし、最外層電極である正極4を覆うとともに、電池素子2の第3の側面S3に周り込む余剰部12aを設けるようにしてもよい。これにより、電池素子2の第3の側面S3と正極タブ31とを、セパレータ12の余剰部12aにより絶縁することができる。
【0204】
(電極タブと外装材との間の絶縁部材)
正極タブ31および負極タブ41と外装材3との間の少なくとも一部に、絶縁部材(以下インシュレータと適宜称する。)52をさらに設けることが好ましい。二次電池1の使用中に振動摩擦などが原因で、正極タブ31および負極タブ41、特にそれらの端部が外装材3の表面の樹脂層を突き破り、外装材3のアルミ層などと電気的に接触して内部ショート(内部短絡)が発生することを抑制できる。
【0205】
図34Aは、インシュレータの形状の第1の例を示す斜視図である。図34Bは、インシュレータの形状の第1の例を示す分解斜視図である。この第1の例では、インシュレータ52をコの字状とし、電池素子2の第1の側面S1、第2の側面S2および第3の側面S3を覆う例が示されている。
【0206】
図35Aは、インシュレータの形状の第2の例を示す斜視図である。図35Bは、インシュレータの形状の第2の例を示す分解斜視図である。この第2の例では、インシュレータ52をロの字状とし、電池素子2の側面Sのすべてを覆う例が示されている。
【0207】
インシュレータ52の形状としては、例えば、板状、シート状、フィルム状を挙げることができるが、これに限定されるものではない。インシュレータ52の材料としては、高分子樹脂または不織布などが好ましい。高分子樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)を用いることが好ましい。
【0208】
インシュレータ52の厚みは、好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.2〜1.0mm以下の範囲内である。インシュレータ52の厚みが0.2mm未満であると、振動などが加えられる環境下で二次電池1を使用した場合に、長期的な絶縁性を確保できなくなる傾向がある。一方、インシュレータ52の厚みが1.0mmを超えると、二次電池1に対するインシュレータ52の体積割合が多くなり、二次電池1の体積エネルギー密度が低下してしまう傾向がある。
【0209】
インシュレータ52の幅は、正極タブ31および負極タブ41の幅以上、電池素子2の厚み以下であることが好ましい。インシュレータ52の幅が正極タブ31および負極タブ41の幅未満であると、インシュレータ52からはみ出した正極タブ31または負極タブ41の部分が、外装材3の表面の樹脂層を突き破り、外装材3のアルミ層などと電気的に接触して内部ショート(内部短絡)が発生する虞がある。一方、インシュレータ52の幅が電池素子2の厚みを超えると、インシュレータ52の端面が外装材3を突き破る虞がある。
【0210】
インシュレータ52に1または複数の孔部を設けることが好ましい。このように孔部を設けることで、電解液の電池素子内部への注液性を確保することができる。孔部の形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形、不定形などが挙げられるが、これらに特に限定されるものではなく、2以上の形状を組み合わせて用いるようにしてもよい。孔部の配列パターンとしては、規則的パターンおよび不規則的パターンのいずれを用いることも可能である。孔部の形成方法としては、例えばパンチング加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0211】
インシュレータ52に1または複数の切り欠き部を設けることが好ましい。このように切り欠き部を設けることで、電解液の電池素子内部への注液性を確保することができる。切り欠き部の形状としては、例えば、部分円形、部分楕円形、多角形、不定形などが挙げられるが、これらに特に限定されるものではなく、2以上の形状を組み合わせて用いるようにしてもよい。切り欠き部の配列パターンとしては、規則的パターンおよび不規則的パターンのいずれを用いることも可能である。切り欠き部の形成方法としては、例えばパンチング加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0212】
インシュレータ52の形状は特に限定されるものではないが、矩形状、コの字状、ロの字状、またはそれらの角部が切り落とされた形状であることが好ましい。角部が切り落とされた形状としては、角部に曲率Rが付されて、角部がR形状とされた形状が好ましく、その曲率Rは0.5〜2.0の範囲内であることが好ましい。角部がR形状とされた矩形状などの形状は、加工が容易であるため、生産性に優れ、かつ、インシュレータ52の角部が外装材3を突き破る危険性が低いからである。
【0213】
(4−2)二次電池の製造方法
次に、図36A〜図37Cを参照しながら、二次電池の製造方法の一例について説明する。
【0214】
まず、タブ接続工程の前段の工程までを、第1の実施形態と同様にして、電池素子2を作製する。これにより、図36Aに示すように、電池素子2の第1の側面S1の側に、折り曲げられた正極集電体露出部4Cが形成され、電池素子2の第2の側面S2の側に、折り曲げられた負極集電体露出部5Cが形成される。
【0215】
次に、図36Bに示すように、正極タブ31の接続部32aの表面Sbを、正極集電体露出部4Cに接合するとともに、負極タブ41の接続部42aの表面Sbを、負極集電体露出部5Cに接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接などを用いることができる。
【0216】
次に、第1の実施形態と同様にして、正極集電体露出部4Cおよび負極集電体露出部5CにU字折り曲げ部を形成する。これにより、図36Cに示すように、正極タブ31の屈曲部32が電池素子2の第1の側面S1および第3の側面S3に倣うように配置されるとともに、負極タブ41の屈曲部42が電池素子2の第2の側面S2および第3の側面S3に倣うように配置される。また、正極タブ31の導出部33が電池素子2の第3の側面S3に立設されるとともに、負極タブ41の導出部43が電池素子2の第3の側面S3に立設される。
【0217】
次に、図36Dに示すように、外装材3の凹部9に、電池素子2を収容した後、図37Aに示すように、外装材3を中央部にて折り返して、外装材3の周縁部を重ね合わせる。次に、重ね合わせた外装材3の周縁部を熱融着などにより融着することにより、その周縁部を封止する。この際、図37Bに示すように、正極タブ31および負極タブ41と外装材3との間に、密着フィルムであるシーラント材10を配置することが好ましい。次に、必要に応じて、図37Cに示すように、融着された外装材2の両端部を折り曲げて、立設させる。これにより、目的とする二次電池1が得られる。
【0218】
本発明の第4の実施形態に係る二次電池では、従来の二次電池に比べて正極端子としての正極集電体露出部4Cの幅が大きくなるように構成されている。正極集電体露出部4Cの幅を大きく構成することにより、大電流の入出力が可能となる。また、正極集電体露出部4Cの幅と正極活物質層4Bの幅とが等しくなるように構成することにより、正極4の製造工程においては、正極集電体露出部4Cを細く形成するための打ち抜きや切り取りなどの工程を行う必要がないため、製造工程を簡略化することができる。
【0219】
<5.第5の実施形態>
[二次電池を用いたバッテリユニットおよびバッテリモジュール]
以下、図19乃至図24を参照しながら、本発明に係る二次電池を用いて構成されたバッテリユニットおよびバッテリモジュールについて説明する。
【0220】
[バッテリユニット]
図19Aおよび図19Bは、本発明を適用したバッテリユニットの構成例を示す斜視図である。図19Aおよび図19Bには、それぞれ異なる側から見たバッテリユニット100が示されており、図19Aに主に示されている側をバッテリユニット100の正面側とし、図19Bに主に示されている側をバッテリユニット100の背面側とする。図19Aおよび図19Bに示すように、バッテリユニット100は、二次電池1−1および1−2、ブラケット110、並びに、バスバー120−1および120−2を備えて構成される。二次電池1−1および1−2は上述した第1乃至第4の実施形態のいずれかの構成を採用した二次電池である。
【0221】
ブラケット110は、二次電池1−1および1−2の強度を確保するための支持具であり、ブラケット110の正面側に二次電池1−1が装着され、ブラケット110の背面側に二次電池1−2が装着される。なお、ブラケット110は、正面側および背面側のどちらから見ても、ほぼ同じ形状をしているが、下側の一方の角部分に面取り部111が形成されており、面取り部111が右下に見える側を正面側とし、面取り部111が左下に見える側を背面側とする。
【0222】
バスバー120−1および120−2は、略L字形状をした金属の部材であり、二次電池1−1および1−2のタブに接続される接続部分がブラケット110の側面側に配置され、バッテリユニット100の外部と接続されるターミナルがブラケット110の上面に配置されるように、ブラケット110の両側面にそれぞれ装着される。
【0223】
図20は、バッテリユニット100が分解された状態を示す斜視図である。図20の上側をバッテリユニット100の正面側とし、図20の下側をバッテリユニット100の背面側とする。以下、二次電池1−1において内部に電池素子が収容された凸状部分を二次電池本体1−1Aと称する。同様に、二次電池1−2において内部に電池素子が収容された凸状部分を二次電池本体1−2Aと称する。
【0224】
そして、二次電池1−1および1−2は、凸形状となっている二次電池本体1−1Aおよび1−2A側を互いに向い合せた状態で、ブラケット110に装着される。つまり、二次電池1−1は正極タブ7−1および負極タブ8−1が設けられる面が正面側を向き、二次電池2−2は正極タブ7−2および負極タブ8−2が設けられる面が背面側を向くように、ブラケット110に装着される。
【0225】
ブラケット110は、外周壁112およびリブ部113を有している。外周壁112は、二次電池1−1および1−2の二次電池本体1−1Aおよび1−2Aの外周よりも若干広く、即ち、二次電池1−1および1−2が装着された状態で二次電池本体1−1Aおよび1−2Aを囲うように形成される。リブ部113は、外周壁112の内側の側面に外周壁112の厚み方向の中央部分から内側に向かって伸びるように形成される。
【0226】
図20の構成例では、二次電池1−1および1−2が、ブラケット110の正面側および背面側から外周壁112内に挿入され、両面に粘着性を有する両面テープ130−1および130−2により、ブラケット110のリブ部113の両面に貼着される。両面テープ130−1および130−2は、二次電池1−1および1−2の外周端に沿った所定の幅の略ロ字形状をしており、ブラケット110のリブ部113は、両面テープ130−1および130−2が貼着する面積だけ設けられていればよい。
【0227】
このように、リブ部113は、二次電池1−1および1−2の外周端に沿った所定の幅だけ、外周壁112の内側の側面から内側に向かって伸びるように形成されており、リブ部113よりも内側は、開口部となっている。従って、ブラケット110の正面側から両面テープ130−1によりリブ部113に貼着される二次電池1−1と、ブラケット110の背面側から両面テープ130−2によりリブ部113に貼着される二次電池2−2との間では、この開口部によって隙間が生じている。
【0228】
即ち、ブラケット110の中央部分に開口部が形成されていることで、二次電池1−1および1−2は、リブ部113の厚みと両面テープ130−1および130−2の厚みとを合計した寸法の隙間を有してブラケット110に装着される。例えば、二次電池1−1および1−2には、充放電やガスの発生などにより多少の膨らみが生じることがあるが、この開口部により設けられる間隙が、二次電池1−1および1−2の膨らみを逃がす空間となる。従って、二次電池1−1および1−2が膨らんだ部分によってバッテリユニット100全体の厚みが増加するなどの影響を排除することができる。
【0229】
また、二次電池1−1および1−2をリブ部113に接着する際に、接着面積が広い場合にはかなりの圧力が必要となるが、リブ部113の接着面を外周端に限定することにより、効率よく圧力をかけて、容易に接着することができる。これにより、製造時に二次電池1−1および1−2にかかるストレスを軽減することができる。
【0230】
図20に示すように、1つのブラケット110に2つの二次電池1−1および1−2を取り付けることにより、例えば、1つのブラケットに1つの二次電池を取り付ける場合よりも、ブラケット110の厚みと空間を削減することができる。これにより、エネルギー密度を向上させることができる。
【0231】
また、バッテリユニット100の厚み方向の剛性を、2枚の二次電池1−1および1−2を貼り合わせる相乗効果により得られるため、ブラケット110のリブ部113を薄肉化することができる。即ち、例えば、リブ部113の厚みを1mm以下(樹脂成型の限界の厚み程度)にしても、二次電池1−1および1−2をリブ部113の両側から貼り合わせることで、バッテリユニット100全体として十分な剛性を得ることができる。そして、リブ部113の厚みを薄くすることにより、バッテリユニット100の厚みが薄くなり容積が縮小することになる結果、バッテリユニット100のエネルギー密度を向上させることができる。
【0232】
また、バッテリユニット100は、外的なストレスに対する耐性を高めるため、二次電池1−1および1−2の外周面(両側面および上下面)が、ブラケット110の外周壁112の内周面と接触しない構造とし、二次電池1−1および1−2が有する広い面でリブ部113に貼り合わされる構造となっている。
【0233】
このような構成により、エネルギー密度が高く、かつ、外的なストレスに強いバッテリユニット100を実現することができる。
【0234】
[バッテリモジュール]
次に、図21乃至24を参照して、バッテリユニット100が組み合わされたバッテリモジュール200の構成例について説明する。バッテリモジュール200は、モジュールケース210、ゴムシート部220、二次電池部230、二次電池カバー240、固定シート部250、電気パーツ部260、およびボックスカバー270を備えて構成されている。
【0235】
モジュールケース210は、バッテリユニット100を収納して使用機器に搭載するためのケースであり、図21の構成例では、24個のバッテリユニット100が収納可能なサイズとされている。
【0236】
ゴムシート部220は、バッテリユニット100の底面に敷かれて、衝撃などを緩和するためのシートである。ゴムシート部220では、3個のバッテリユニット100ごとに1枚のゴムシートが設けられ、24個のバッテリユニット100に対応するために8枚のゴムシートが用意される。
【0237】
二次電池部230は、図21の構成例では、24個のバッテリユニット100が組み合わされて構成されている。また、二次電池部230では、3個のバッテリユニット100が並列に接続されて並列ブロック231を構成し、8個の並列ブロック231が直列に接続される接続構成となっている。
【0238】
二次電池カバー240は、二次電池部230を固定するためのカバーであり、二次電池1のバスバー120に対応した開口部が設けられている。
【0239】
固定シート部250は、二次電池カバー240の上面に配置され、ボックスカバー270がモジュールケース210に固定されたときに、二次電池カバー240およびボックスカバー270に密着して固定するシートである。
【0240】
電気パーツ部260は、バッテリユニット100の充放電を制御する充放電制御回路などの電気的な部品を有する。充放電制御回路は、例えば、二次電池部230において2本の列をなすバスバー120の間の空間に配置される。
【0241】
ボックスカバー270は、モジュールケース210に各部が収納された後に、モジュールケース210を閉鎖するためのカバーである。
【0242】
ここで、バッテリモジュール200では、3個のバッテリユニット100が並列に接続された並列ブロック231が直列に接続されて二次電池部230が構成されており、この直列の接続が、電気パーツ部260が有する金属板材で行われる。従って、二次電池部230では、並列ブロック231ごとに端子の向きが交互になるように、即ち、隣り合う並列ブロック231どうしでプラスの端子とマイナスの端子とが並ぶように、並列ブロック231がそれぞれ配置される。そこで、バッテリモジュール200では、隣り合う並列ブロック231で同極の端子が並ぶことを回避させるような工夫が必要である。
【0243】
例えば、図22に示すように、バッテリユニット100−1乃至100−3により構成される並列ブロック231−1と、バッテリユニット100−4乃至100−6により構成される並列ブロック231−2とでは、プラスの端子とマイナスの端子とが隣り合うような配置で、モジュールケース210に収納される。このような配置となるように規制するために、バッテリユニット100のブラケット110の下側の一方の角部分に形成されている面取り部111が利用される。
【0244】
例えば、図23および図24に示すように、並列ブロック231では、バッテリユニット100−1乃至100−3は、それぞれの面取り部111−1乃至111−3が同じ向きとなるように組み合わされており、面取り領域280を形成する。そして、モジュールケース210には、面取り領域280の傾斜に応じた傾斜部290が形成されており、傾斜部290は、二次電池1の3個分の厚みに応じた長さで、交互に配置されている。
【0245】
このように、並列ブロック231の面取り領域280と、モジュールケース210の傾斜部290とにより、並列ブロック231を間違った向きでモジュールケース210に収納しようとした場合には、並列ブロック231の底側の角部がモジュールケース210の傾斜部290に当接することになる。この場合、並列ブロック231がモジュールケース210の底面から浮き上がった状態となるため、並列ブロック231がモジュールケース210に完全に収納されなくなる。これにより、バッテリモジュール200では、隣り合う並列ブロック231で同極の端子が隣り合って並ぶことが回避される。
【実施例】
【0246】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。上述のようにして得られた二次電池に係る実施例1−1〜実施例1−9および比較例1−1〜比較例1−10について、出力密度の測定試験を行った。
【0247】
<実施例1−1>
(正極作製)
正極は以下のように作製した。まず、リン酸鉄リチウム90質量部、ポリフッ化ビニリデン5質量部、カーボンブラック5質量部、分量外のN−メチルピロリドンをミキサーで混錬、さらに所望の粘度になるようにN−メチルピロリドン(NMP)を添加し分散させ、正極合剤スラリーを得た。次に、正極集電体露出部が形成されるように正極合剤スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層を形成した。その後、矩形状に切断し、正極を得た。正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係が(wc/Wc)=1.0となるようにし、正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係が(dc/Dc)=0.1となるようにした。
【0248】
(負極作製)
負極は以下のようにして作製した。まず、人造黒鉛94質量部、ポリフッ化ビニリデン5質量部、気相成長炭素繊維(VGCF)1質量部、分量外のN−メチルピロリドンを混錬し、負極合剤スラリーを得た。次に、負極集電体露出部が形成され、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=1.0となるように、負極合剤スラリーを厚さ8μmの銅箔の両面に塗布、乾燥後、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層を形成した。その後、これを矩形状に切断し、負極を得た。負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係が(wa/Wa)=1.0となるようにし、負極集電体露出部の奥行きdaと負極活物質層の奥行きDaとの関係が(da/Da)=0.1となるようにした。
【0249】
なお、負極活物質層、正極活物質層をそれぞれ負極集電体、正極集電体に塗布形成する前に、あらかじめ負極合剤の重量あたりのリチウム吸蔵能力、正極合剤の重量あたりのリチウム放出能力を測定しておき、負極合剤層の単位面積あたりのリチウム吸蔵能力が、正極合剤層の単位面積あたりのリチウム放出能力を超えることのないようにした。
【0250】
(電池素子作製)
電池素子は以下のようにして作製した。まず、厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔フィルムを図8に示す形状に切断し、これをセパレータとした。次に、上述のようにして得られた負極26枚、正極25枚、セパレータ50枚を、図8に示すように、負極、セパレータ、正極、・・・、正極、セパレータ、負極の順で積層した。なお、正極と負極とは正極集電体露出部と負極集電体露出部とが反対向きになるように積層した。電池素子の厚みは8mmとなるようにした。これにより、正極合剤層、セパレータおよび負極合剤層からなる基本積層単位を50層分内包する電池素子が得られた。なお、電池素子の上下最外層は負極合剤層となるが、これらの部分は正極と対向していないため電池反応には寄与するものではない。また、この積層に際しては、積層方向から見て、正極合剤層の投影面が負極合剤層の投影面の内側に収まるように、負極と正極の相対位置を調整した。
【0251】
(二次電池作製)
次に、正極集電体露出部25枚を同時にアルミ(Al)製の正極タブに超音波溶接により接続した。同様にして、負極集電体露出部26枚を同時にニッケル(Ni)製の負極タブに超音波溶接した。次に、外装材であるアルムラミネートフィルムとして、無延伸ポリプロピレン(CPP)からなる樹脂層、接着層、アルミ箔、接着層、ナイロンからなる樹脂層を順次積層した矩形状のものを2枚準備した。2枚のアルミラミネートフィルムの一方には電池素子を収容する凹部を形成した。次に、正極タブおよび負極タブの一端を外部に引き出すようにして電池素子を一方のアルミラミネートフィルムの凹部に収容した。次に、他方のアルムラミネートフィルムを電池素子を収容した凹部を覆うように一方のアルミラミネートフィルムに重ね合わせて、1辺を除く周縁部を熱融着して袋状とした。
【0252】
次に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートを50:50の質量比で混合し、0.7kmol/kgのLiPF6を溶解して電解液を調製した。次に、袋状のアルミラミネートフィルムの開口部側から電解液を注入し、電池素子に含浸させたのち、開口部を熱融着して封止した。
以上により、目的とする二次電池が作製された。
【0253】
<実施例1−2>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.9とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0254】
<実施例1−3>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.8とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0255】
<実施例1−4>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.7とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0256】
<実施例1−5>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.6とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0257】
<比較例1−1>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.5とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0258】
<比較例1−2>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.4とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0259】
<比較例1−3>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.3とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0260】
<比較例1−4>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.2とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0261】
<比較例1−5>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=0.1とした以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0262】
<実施例1−6>
正極集電体露出部の幅wcと正極活物質層の幅Wcとの関係を(wc/Wc)=1.0とし、負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.9として、実施例1−6の二次電池を作製した。
【0263】
<実施例1−7>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.8とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0264】
<実施例1−8>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.7とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0265】
<実施例1−9>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.6とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0266】
<比較例1−6>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.5とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0267】
<比較例1−7>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.4とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0268】
<比較例1−8>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.3とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0269】
<比較例1−9>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.2とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0270】
<比較例1−10>
負極集電体露出部の幅waと負極活物質層の幅Waとの関係を(wa/Wa)=0.1とした以外は、実施例1−6と同様にして、二次電池を作製した。
【0271】
(出力密度の測定試験)
出力密度は充電深度(SOC:State of charge)50%の状態の電池に0.5C、1C、2C、3C、4Cの電流を10秒間印加して、それぞれの電流値における10秒目の電圧を測定し、電流−電圧特性から求めた。すなわち、出力(Po)は電池の放電終止電圧(Vd=2.0V)と電流−電圧特性の直線を、放電終止電圧まで外挿したときの電流値(Id)を用いて、式Po=Id×Vdより求めた。このときの出力(Po)を電池の重量で除することで出力密度とした。
【0272】
試験結果を表1に示す。
【0273】
【表1】
【0274】
表1に示すように、正極についての実施例1−1〜実施例1−5では、比較例1−1〜比較例1−5と比べて高い出力密度を得ることができた。また、負極についての実施例1−6〜実施例1−9においても、比較例1−6〜比較例1−10と比べて高い出力密度を得ることができた。また、wc/Wcの値およびwa/Waの値が1.0に近似していくに従い出力密度が高くなっていくことがわかった。したがって、出力密度の観点からは集電体露出部の幅は大きい方が好ましいということがわかった。
【0275】
また、以下に示す実施例2−1〜実施例2−6の二次電池について、放電容量維持率の測定試験を行った。
<実施例2−1>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.02とし、電池素子の厚みを6.3mmとし、電池放電容量を10Ahとした以外は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0276】
<実施例2−2>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層4Bの奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.10とし、電池素子2の厚みを6.8mmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0277】
<実施例2−3>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.30とし、電池素子の厚みを8.7mmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0278】
<実施例2−4>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.40とし、電池素子の厚みを10.0mmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0279】
<実施例2−5>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.01とした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0280】
<実施例2−6>
正極集電体露出部の奥行きdcと正極活物質層の奥行きDcとの関係を(dc/Dc)=0.42とし、電池素子の厚みを10.6mmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0281】
(放電容量維持率の測定試験)
放電容量維持率の測定試験を以下のようにして行なった。まず、10A、3.6Vの定電流定電圧充電で充電させた後、10Aで2.0Vまで放電し、1サイクル目の放電容量を求めた。次に、この1サイクル目の放電容量を測定した場合と同様の条件で充放電を繰り返し、1000サイクル目の放電容量を求めた。次に、1サイクル目の放電容量および1000サイクル目の放電容量を用いて、以下の式から1000サイクル後の放電容量維持率を求めた。
1000サイクル後の容量維持率[%]=(1000サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0282】
試験結果を表2に示す。
【0283】
【表2】
【0284】
表2に示すように、実施例2−1〜実施例2−4では、実施例2−5および実施例2−6と比べて高い放電容量維持率を得ることができた。なお、実施例2−5においては高レートサイクルにより溶接部分が発熱し、サイクル寿命が低下した。また、実施例2−6においては、高レートサイクルにより電池素子内部の放熱性が低下し、サイクル寿命が低下した。実施例2−1〜実施例2−4ではこのような不具合は生じなかった。この結果から、0.02<(dc/Dc)≦0.40が望ましい範囲であるということがわかった。
【0285】
また、以下に示す実施例3−1〜実施例3−21の二次電池について、電池素子の膨れ量の測定試験、外部短絡試験および折り曲げ加工後の亀裂の有無の確認試験を行った。
<実施例3−1>
正極タブの材質はアルミニウム(Al)とし、導電率は60%IACSとした。また、負極タブの材質は銅(Cu)合金とし、導電率は90%IACSとした。正極タブおよび負極タブの厚みは共に50μmとした。また、負極タブはニッケル(Ni)により一端面面および他端面を除く上面、左側面、底面および右側面の合計4面を被覆した。ニッケル(Ni)による被覆層の厚さは1μmとした。上述の点以外は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0286】
<実施例3−2>
正極タブおよび負極タブの厚みを100μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0287】
<実施例3−3>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0288】
<実施例3−4>
正極タブおよび負極タブの厚みを400μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0289】
<実施例3−5>
正極タブおよび負極タブの厚みは共に200μmとし、負極タブの材質はアルミニウム(Al)とし、導電率を60%IACSとし、さらに、タブの被覆は行っていない点以外は実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0290】
<実施例3−6>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの材質は銅(Cu)とし、導電率を100%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0291】
<実施例3−7>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの材質は銅(Cu)合金とし、負極タブの導電率を70%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0292】
<実施例3−8>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの導電率を80%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0293】
<実施例3−9>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの導電率を100%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0294】
<実施例3−10>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆材質をスズ(Sn)とした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0295】
<実施例3−11>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆層の厚みを0.1μmにした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0296】
<実施例3−12>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆層の厚みを3μmにした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0297】
<実施例3−13>
正極タブおよび負極タブの厚みを25μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0298】
<実施例3−14>
正極タブおよび負極タブの厚みを450μmとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0299】
<実施例3−15>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの材質をニッケル(Ni)とし、負極タブの導電率を20%IACSとし、さらに、タブの被覆を行わなかった点以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0300】
<実施例3−16>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの導電率を50%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0301】
<実施例3−17>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、負極タブの導電率を30%IACSとした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0302】
<実施例3−18>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆面を図3Dの斜線部に示すように上面および底面の2面とした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0303】
<実施例3−19>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆面を図3Eの斜線部に示すように左側面および右側面とした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0304】
<実施例3−20>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆層の厚みを0.05μmにした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0305】
<実施例3−21>
正極タブおよび負極タブの厚みを200μmとし、被覆層の厚みを4μmにした以外は、実施例3−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0306】
(二次電池の膨れ量の測定試験)
二次電池の膨れ量の測定試験は、1組の平行平板で電池を挟み、加重300gで押し当てたときの平板間の厚みを二次電池の厚みとして測定することにより行った。なお、二次電池の膨れ量の測定試験は、温度60℃、湿度RH90%の条件下、1ヶ月保存した後の膨れ量を測定することにより行った。
【0307】
(外部短絡試験)
外部短絡試験は、正負極のタブをワイヤーハーネスで接続し、外部短絡させ、その後の電池の状態を観測することにより行った。
【0308】
(折り曲げ加工後の亀裂の有無の確認試験)
折り曲げ加工後の亀裂の有無の確認試験は、折り曲げ状態のタブを光学顕微鏡で観察し、亀裂の有無を判定することにより行った。
【0309】
上述した3つの試験結果を表3に示す。
【0310】
【表3】
【0311】
表3に示すように、二次電池の膨れ量の測定試験では、タブ厚みが厚いと、二次電池が膨れることがわかった。これはタブが厚いためタブ側面のシール性が不十分なためである。また、負極タブのNi被覆が平面または側面のみの場合、二次電池が膨れることがわかった。シーラント(樹脂)にCu合金が直接接触することで銅害は発生し、シール性が低下したためである。また、Ni被覆されていてもその被覆厚みが0.01mm程度であると、被覆に不十分な部分で銅害が発生したため、二次電池の膨れ量が増加した。
【0312】
また、表3に示すように、外部短絡試験では、実施例3−1乃至3−12では開裂は発生していない。一方、実施例3−13、実施例3−16および実施例3−21において開裂が発生した。また、実施例3−15および実施例3−17においては開裂が発生し、電解液への着火が発生した。
【0313】
さらに、表3に示すように、折り曲げ加工後の亀裂の有無の確認試験において、実施例3−1乃至3−12では折り曲げ加工による亀裂は生じていない。一方、実施例3−13では折り曲げ加工後により亀裂が生じた。
【0314】
実施例3−13においては、正極タブは実施例3−1乃至3−12に比べて薄いため大電流放電によって熱が発生し、被覆層が溶解した。実施例3−14においては、正極タブは実施例3−1乃至3−12に比べて厚いため、正極タブの脇から水分が侵入した。実施例3−15においては、実施例3−1乃至3−12に比べて負極タブの導電率が低く、大電流放電によって負極タブが赤熱し、被覆層の溶解し、電解液への着火が発生した。実施例3−16においては、実施例3−1乃至3−12に比べて負極タブの導電率が低く、大電流放電によって負極タブが発熱し、被覆層が溶解した。実施例3−17においては、実施例3−1乃至3−12に比べて負極タブの導電率が低く、大電流放電によって負極タブが赤熱し、被覆層の溶解し、電解液への着火が発生した。
【0315】
実施例3−18においては、銅害が発生することにより被覆材のシール性が低下し、水分が侵入した。実施例3−19においては、銅害が発生することにより被覆層のシール性が低下し、実施例3−18に比べて多量の水分が侵入した。実施例3−20においては、被覆層が不均一であるためにタブ基材が露出した。また、銅害が発生することにより被覆材のシール性が低下し、水分が侵入した。実施例3−21においては、被覆層が実施例3−1乃至3−12に比べて厚く、大電流放電によって発熱が起きた。
【0316】
また、以下に示す実施例4−1〜実施例4−6の二次電池について、接続部分の引っ張り強度の測定試験、および外部短絡試験を行った。
【0317】
<実施例4−1>
正極集電体露出部と正極タブとの接続は超音波溶接により行ない、接続面積/正極タブ幅=0.05とした以外は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0318】
<実施例4−2>
接続面積/正極タブ幅=0.2とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0319】
<実施例4−3>
接続面積/正極タブ幅=7とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0320】
<実施例4−4>
接続面積/正極タブ幅=10とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0321】
<実施例4−5>
接続面積/正極タブ幅=0.025とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0322】
<実施例4−6>
接続面積/正極タブ幅=11とした以外は、実施例4−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0323】
(接続部分の引っ張り強度の測定試験)
接続部分の引っ張り強度の測定試験は、接続された複数枚の集電箔とタブを1(mm/sec)で上下に引っ張り、単位長さあたりの強度(N/cm)の平均値を算出することにより行った。
【0324】
(外部短絡試験)
外部短絡試験は、正負極のタブをワイヤーハーネスで接続し、外部短絡させ、その後の電池の状態を観測することにより行った。
【0325】
上述した2つの試験結果を表4に示す。
【0326】
【表4】
【0327】
実施例4−1乃至実施例4−4においては高い引っ張り強度を得ることができる。一方、実施例4−5では、高い引っ張り強度を得ることはできるが、開裂が起きてしまっている。また、実施例4−6では、引っ張り強度が低い値となってしまっている。この試験結果から、接続面積/正極タブの値が0.05mm〜10.0mm、好ましくは0.2〜7.0mmになるよう接続を行うとよいことがわかった。
【0328】
さらに、以下に示す実施例5−1〜実施例5−36の二次電池について、体積エネルギー密度の測定試験、振動試験後のOCV(Open circuit voltage)測定試験および注液完了時間測定試験を行った。
【0329】
<実施例5−1>
正極タブの折り曲げ部にシーラントを設け、正極タブは正極集電体露出部と電池素子間において正極集電体露出部と接続した。また、正極タブと電池素子の最外周の負極との絶縁はインシュレータを設けることにより行った。インシュレータはポリプロピレン(PP)を用いて構成し、その厚みは0.4mmとし、高さは5.5mmとし、長さは負極の幅と略同一の寸法とした。また、形状は角丸矩形とし、パンチング加工は行わなかった。以上の点以外は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0330】
<実施例5−2>
正極タブと電池素子の最外周負極との絶縁はインシュレータおよび最外層セパレータを設けることにより行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0331】
<実施例5−3>
インシュレータにポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて構成した以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0332】
<実施例5−4>
インシュレータにポリエチレン(PE)を用いて構成した以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0333】
<実施例5−5>
インシュレータにポリイミド(PI)を用いて構成した以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0334】
<実施例5−6>
インシュレータの厚さを0.2mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0335】
<実施例5−7>
インシュレータの厚さを0.75mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0336】
<実施例5−8>
インシュレータの厚さを1.0mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0337】
<実施例5−9>
インシュレータの高さを5.0mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0338】
<実施例5−10>
インシュレータの高さを6mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0339】
<実施例5−11>
インシュレータの高さを6.5mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0340】
<実施例5−12>
インシュレータの高さを7.0mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0341】
<実施例5−13>
インシュレータの幅をセパレータの幅と略同一の寸法とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0342】
<実施例5−14>
インシュレータの形状を矩形状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0343】
<実施例5−15>
インシュレータに不織布を用いて構成し、インシュレータの形状を矩形状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0344】
<実施例5−16>
インシュレータの長さをセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略コ字状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0345】
<実施例5−17>
インシュレータの長さをセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略ロ字状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0346】
<実施例5−18>
インシュレータの長さをセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を箱型とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0347】
<実施例5−19>
パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0348】
<実施例5−20>
インシュレータの形状を矩形状とし、高さを6mmとし、パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0349】
<実施例5−21>
インシュレータの厚さを0.75mmとし、高さを6mmとし、インシュレータの幅をセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略コ字状とし、パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0350】
<実施例5−22>
インシュレータの厚さを0.75mmとし、高さを6mmとし、インシュレータの幅をセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略ロ字状とし、パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0351】
<実施例5−23>
インシュレータの厚さを0.75mmとし、高さを6mmとし、インシュレータの幅をセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を箱型とし、パンチング加工を行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0352】
<実施例5−24>
インシュレータに不織布を用いて構成し、インシュレータの厚さを0.75mmとし、高さを6mmとし、インシュレータの幅をセパレータ幅(内寸)と略同一の寸法とし、インシュレータの形状を略コ字状とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0353】
<実施例5−25>
インシュレータの形状を略ロ字状とした以外は、実施例5−24と同様にして、二次電池を作製した。
【0354】
<実施例5−26>
インシュレータの形状を箱型とした以外は、実施例5−24と同様にして、二次電池を作製した。
【0355】
<実施例5−27>
正極タブの折り曲げ部にシーラントを設けていない以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0356】
<実施例5−28>
正極タブは正極集電体露出部と外装材との間において正極集電体露出部と接続した以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0357】
<実施例5−29>
正極タブと電池素子の最外周負極との絶縁はインシュレータを用いずに最外層セパレータを設けることにより行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0358】
<実施例5−30>
正極タブと電池素子の最外周負極との絶縁はインシュレータを用いずにポリプロピレン(PP)粘着テープ用いて行った以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0359】
<実施例5−31>
インシュレータの厚さを0.1mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0360】
<実施例5−32>
インシュレータの厚さを1.2mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0361】
<実施例5−33>
インシュレータの高さを4.5mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0362】
<実施例5−34>
インシュレータの高さを7.5mmとした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0363】
<実施例5−35>
インシュレータの長さを「負極の幅−1mm」とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0364】
<実施例5−36>
インシュレータの長さを「セパレータの幅+1mm」とした以外は、実施例5−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0365】
(体積エネルギー密度測定試験)
体積エネルギー密度測定試験を以下のようにして行なった。0.2C放電容量(Ah)と電池の平均放電電圧(V)から放電エネルギー量(Wh)を求め、これを電池の最大寸法体積(L)で除することで体積エネルギー密度とした(Wh/L)。
【0366】
(振動試験後のOCV測定試験)
振動試験後のOCV測定試験は、振動加速度3G、振動数20Hzで電池に対して縦、横、高さに方向に各100回ずつ振動させたあと、その後のOCVを測定することにより行った。
【0367】
(注液完了時間測定試験)
注液完了時間測定試験は、シールがされていない開口部を上にして電解液をディスペンサーから注液し、液面が開口部以下になる時間を測定することにより行った。(外装凹部に液が大気圧中で自然降下する時間を測定した。)
【0368】
上述した2つの試験結果を表5に示す。
【0369】
【表5】
【0370】
実施例5−29、実施例5−30のようにインシュレータを設けない場合、実施例5−31のようにインシュレータの厚さが薄い場合、体積エネルギー密度は高くなるという傾向があることがわかった。一方、実施例5−33のようにインシュレータの厚さが厚い場合には体積エネルギー密度が低くなるという傾向があることがわかった。
【0371】
振動試験後のOCV測定試験では、実施例5−1乃至5−26、実施例5−32においてはOCVに変化はないが、実施例5−27乃至5−31、実施例5−33乃至5−36においてはOCVが低下するという変化が生じるということが確認できた。
【0372】
注液完了時間測定試験では、インシュレータの形状が矩形および角丸矩形に比べて、コ字状、ロ字状および箱型では注液完了までの時間が長くなることが確認できた。
【0373】
また、正極タブの折り曲げ部にシーラントが設けられていない実施例5−27では正極タブ先端および負極タブ先端が電池素子の最外層と接触することによる短絡が発生した。また、正極集電体露出部と外装材間において正極タブを正極集電体露出部に接続した実施例5−28においても正極タブ先端および負極タブ先端が電池素子の最外層と接触することにより短絡が発生した。
【0374】
また、絶縁に最外層セパレータを用いて行った実施例5−29ではセパレータを突き破って正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。また、絶縁をポリプロピレン(PP)粘着テープで行った実施例5−30では粘着テープが剥がれて正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。
【0375】
また、実施例5−31ではインシュレータが薄いため正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。また、インシュレータの厚さが1.2mmである実施例5−32ではインシュレータが厚く、正極集電体露出部の折り曲げ間隔以上となり、体積エネルギー密度が大幅に低下した。また、実施例5−33では、インシュレータが低いため正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。
【0376】
また、実施例5−34ではインシュレータが電池素子以上の高さとなるため、振動によってインシュレータが外装材を突き破る。これにより二次電池内に水分が侵入しOCVが低下した。また、実施例5−35ではインシュレータの幅が短いため、正極集電体露出部と最外層負極とが接触することによる短絡が発生した。さらに、実施例5−36ではインシュレータが電池素子の幅以上となるため、振動によってインシュレータが外装材を突き破る。これにより二次電池内に水分が侵入しOCVが低下した。
【0377】
以上の結果より、正極タブおよび負極タブの折り曲げ部にはシーラントを設ける、正極タブおよび負極タブは集電体露出部と電池素子との間において集電体露出部と接続する、絶縁はインシュレータで行うことが好ましいということがわかった。また、インシュレータの厚さは約0.2mm以上とすることが好ましいということがわかった。
【0378】
このようにして本発明に係る二次電池、バッテリユニットおよびバッテリモジュールが構成されている。なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0379】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。また、上述の実施形態の各構成、方法、工程、形状、材料および数値は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0380】
また、上述の実施形態では、リチウムイオン二次電池に対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、外装材により電池素子を封止する構造を有する種々の二次電池および一次電池に対して適用可能である。
【0381】
この発明の二次電池1、二次電池1を組み合わせたバッテリユニット100およびバッテリモジュール200は、電動工具、電気自動車やハイブリッド電気自動車および電動アシスト自転車、ならびに住宅もしくはビル等に用いる蓄電システム等に用いることができる。
【符号の説明】
【0382】
1 二次電池
2 電池素子
3 外装材
4 正極
4A 正極集電体
4B 正極活物質層
4C 正極集電体露出部
5、13 負極
5A 負極集電体
5B 負極活物質層
5C 負極集電体露出部
6 セパレータ
7 正極タブ
7A 接続部
7B 導出部
8 負極タブ
9 凹部
10 シーラント
11 インシュレータ
14 第1セパレータ
15 第2セパレータ
100 バッテリユニット
110 ブラケット
200 バッテリモジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、上記電池素子を外装する外装材とを備え、
上記電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、上記正極集電体露出部の幅wcと上記正極活物質層の幅Wcとが以下の式(1)を満たすように上記正極集電体上に上記正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、上記負極集電体露出部の幅waと上記負極活物質層の幅Waとが以下の式(2)を満たすように上記負極集電体上に上記負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される上記正極と上記負極との間に介在するセパレータと、
上記正極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された正極タブと、
上記負極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された負極タブと
を備える二次電池。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(1)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(2)
【請求項2】
上記正極は、上記正極集電体露出部の長さ奥行きdcと上記正極活物質層の長さ奥行きDcとが以下の式(3)を満たすように形成され、
上記負極は、上記負極集電体露出部の長さ奥行きdaと上記負極活物質層の長さ奥行きDaとが以下の式(4)を満たすように形成されている
請求項1に記載の二次電池。
0.02<(dc/Dc)≦0.40・・・(3)
0.02<(da/Da)≦0.40・・・(4)
【請求項3】
上記正極タブにおける上記正極集電体露出部との接合面積Scと、上記正極タブの幅Tcと、上記正極タブの厚みHcと、上記電池素子の厚みBとが下記の式(5)を満たすように形成されており、
上記負極タブにおける上記負極集電体露出部との接合面積Saと、上記負極タブの幅Taと、上記負極タブの厚みHaと、上記電池素子の厚みBとが下記の式(6)を満たすように形成されている請求項1に記載の二次電池。
Hc≦Sc/Tc≦B・・・(5)
Ha≦Sa/Ta≦B・・・(6)
【請求項4】
上記正極タブを被覆する正極側シーラントと、上記負極タブを被覆する負極側シーラントをさらに備え、
上記正極集電体露出部は上記正極および上記負極の面に対して略垂直な方向に折り曲げられ、
上記正極タブは上記正極集電体露出部に接続される正極側接続部と、上記外装材の外部へ導出される正極側導出部とを有し、上記正極側接続部は上記正極側シーラントと共に上記正極および上記負極の面に対して略垂直な方向に折り曲られており、
上記正極側接続部は折り曲げられた上記正極集電体露出部の上記電池素子と対向する側の面に接続されており、
上記負極集電体露出部は上記正極および上記負極の面に対して略垂直な方向に折り曲げられ、
上記負極タブは上記負極集電体露出部に接続される負極側接続部と、上記外装材の外部へ導出される負極側導出部とを有し、上記負極側接続部は上記負極側シーラントと共に上記正極および上記負極の面に対して略垂直な方向に折り曲られており、
上記負極側接続部は折り曲げられた上記負極集電体露出部の上記電池素子と対向する側の面に接続されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
上記電池素子と、折り曲げられた上記正極タブの上記接続部との間に絶縁部材が設けられている請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
上記正極および上記負極は、上記正極集電体露出部と上記負極集電体露出部とが異なる方向へ向くように積層されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
上記セパレータは葛折りにより折り畳まれており、上記正極および上記負極は上記セパレータの間に挟み込まれている請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
上記負極は一対の上記セパレータ間に挟み込まれており、上記負極と上記一対のセパレータは共に葛折りにより折り畳まれており、上記正極は折り畳まれた上記セパレータ間に挟み込まれている請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
上記電池素子は、
対向する第1の主面および第2の主面と、
上記第1の主面および上記第2の主面の間に設けられた側面と
を有し、
上記側面は、
対向する第1の側面および第2の側面と、
上記第1の側面および第2の側面の間に設けられた第3の側面と
を有し、
上記正極集電体露出部は、上記第1の側面に設けられているのに対して、上記負極集電体露出部は、上記第2の側面に設けられており、
上記正極タブは、上記第1の側面の側で上記正極集電体露出部と接続されると共に、上記第3の側面の側から上記外装材の外に導出されており、
上記負極タブは、上記第2の側面の側で上記負極集電体露出部と接続されると共に、上記第3の側面の側から上記外装材の外に導出されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
上記正極タブは、上記第1の側面および上記第3の側面に倣うように屈曲された屈曲部と、上記第3の側面に対して鉛直方向に導出された導出部とを有し、
上記負極タブは、上記第2の側面および上記第3の側面に倣うように屈曲された屈曲部と、上記第3の側面に対して鉛直方向に導出された導出部とを有する請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
上記正極タブの屈曲部と、上記第1の側面および上記第3の側面の少なくとも一方の側面との間に絶縁部材をさらに備え、
上記負極タブの屈曲部と、上記第2の側面および上記第3の側面の少なくとも一方の側面との間に絶縁部材をさらに備える請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
上記正極タブの屈曲部と上記外装材との間に絶縁部材をさらに備え、
上記負極タブの屈曲部と上記外装材との間に絶縁部材をさらに備える請求項10に記載の二次電池。
【請求項13】
一組の二次電池と、
上記一組の二次電池の外周側面を囲う外周壁部が形成された支持体と
を備え、
上記一組の二次電池がそれぞれ、上記支持体の正面側および背面側から上記外周壁部内に挿入されており、
上記二次電池は、厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、上記電池素子を外装する外装材とを備え、
上記電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、上記正極集電体露出部の幅wcと上記正極活物質層の幅Wcとが以下の式(7)を満たすように上記正極集電体上に上記正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、上記負極集電体露出部の幅waと上記負極活物質層の幅Waとが以下の式(8)を満たすように上記負極集電体上に上記負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される上記正極と上記負極との間に介在するセパレータと、
上記正極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された正極タブと、
上記負極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された負極タブと
を備えるバッテリユニット。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(7)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(8)
【請求項14】
上記外周壁部の内側面から内側に向かって伸びるリブ部がさらに形成され、
2個の上記二次電池が、上記支持体の正面側および背面側から上記外周壁部内に挿入され、上記リブ部の両面に対して装着されて構成される請求項13に記載のバッテリユニット。
【請求項15】
複数のバッテリユニットを備え、
上記バッテリユニットは、
一組の二次電池と、
上記一組の二次電池の外周側面を囲う外周壁部が形成された支持体と
を備え、
上記一組の二次電池がそれぞれ、上記支持体の正面側および背面側から上記外周壁部内に挿入されており、
上記二次電池は、厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、上記電池素子を外装する外装材とを備え、
上記電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、上記正極集電体露出部の幅wcと上記正極活物質層の幅Wcとが以下の式(9)を満たすように上記正極集電体上に上記正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、上記負極集電体露出部の幅waと上記負極活物質層の幅Waとが以下の式(10)を満たすように上記負極集電体上に上記負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される上記正極と上記負極との間に介在するセパレータと、
上記正極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された正極タブと、
上記負極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された負極タブと
を備えるバッテリモジュール。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(9)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(10)
【請求項1】
厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、上記電池素子を外装する外装材とを備え、
上記電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、上記正極集電体露出部の幅wcと上記正極活物質層の幅Wcとが以下の式(1)を満たすように上記正極集電体上に上記正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、上記負極集電体露出部の幅waと上記負極活物質層の幅Waとが以下の式(2)を満たすように上記負極集電体上に上記負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される上記正極と上記負極との間に介在するセパレータと、
上記正極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された正極タブと、
上記負極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された負極タブと
を備える二次電池。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(1)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(2)
【請求項2】
上記正極は、上記正極集電体露出部の長さ奥行きdcと上記正極活物質層の長さ奥行きDcとが以下の式(3)を満たすように形成され、
上記負極は、上記負極集電体露出部の長さ奥行きdaと上記負極活物質層の長さ奥行きDaとが以下の式(4)を満たすように形成されている
請求項1に記載の二次電池。
0.02<(dc/Dc)≦0.40・・・(3)
0.02<(da/Da)≦0.40・・・(4)
【請求項3】
上記正極タブにおける上記正極集電体露出部との接合面積Scと、上記正極タブの幅Tcと、上記正極タブの厚みHcと、上記電池素子の厚みBとが下記の式(5)を満たすように形成されており、
上記負極タブにおける上記負極集電体露出部との接合面積Saと、上記負極タブの幅Taと、上記負極タブの厚みHaと、上記電池素子の厚みBとが下記の式(6)を満たすように形成されている請求項1に記載の二次電池。
Hc≦Sc/Tc≦B・・・(5)
Ha≦Sa/Ta≦B・・・(6)
【請求項4】
上記正極タブを被覆する正極側シーラントと、上記負極タブを被覆する負極側シーラントをさらに備え、
上記正極集電体露出部は上記正極および上記負極の面に対して略垂直な方向に折り曲げられ、
上記正極タブは上記正極集電体露出部に接続される正極側接続部と、上記外装材の外部へ導出される正極側導出部とを有し、上記正極側接続部は上記正極側シーラントと共に上記正極および上記負極の面に対して略垂直な方向に折り曲られており、
上記正極側接続部は折り曲げられた上記正極集電体露出部の上記電池素子と対向する側の面に接続されており、
上記負極集電体露出部は上記正極および上記負極の面に対して略垂直な方向に折り曲げられ、
上記負極タブは上記負極集電体露出部に接続される負極側接続部と、上記外装材の外部へ導出される負極側導出部とを有し、上記負極側接続部は上記負極側シーラントと共に上記正極および上記負極の面に対して略垂直な方向に折り曲られており、
上記負極側接続部は折り曲げられた上記負極集電体露出部の上記電池素子と対向する側の面に接続されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
上記電池素子と、折り曲げられた上記正極タブの上記接続部との間に絶縁部材が設けられている請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
上記正極および上記負極は、上記正極集電体露出部と上記負極集電体露出部とが異なる方向へ向くように積層されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
上記セパレータは葛折りにより折り畳まれており、上記正極および上記負極は上記セパレータの間に挟み込まれている請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
上記負極は一対の上記セパレータ間に挟み込まれており、上記負極と上記一対のセパレータは共に葛折りにより折り畳まれており、上記正極は折り畳まれた上記セパレータ間に挟み込まれている請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
上記電池素子は、
対向する第1の主面および第2の主面と、
上記第1の主面および上記第2の主面の間に設けられた側面と
を有し、
上記側面は、
対向する第1の側面および第2の側面と、
上記第1の側面および第2の側面の間に設けられた第3の側面と
を有し、
上記正極集電体露出部は、上記第1の側面に設けられているのに対して、上記負極集電体露出部は、上記第2の側面に設けられており、
上記正極タブは、上記第1の側面の側で上記正極集電体露出部と接続されると共に、上記第3の側面の側から上記外装材の外に導出されており、
上記負極タブは、上記第2の側面の側で上記負極集電体露出部と接続されると共に、上記第3の側面の側から上記外装材の外に導出されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
上記正極タブは、上記第1の側面および上記第3の側面に倣うように屈曲された屈曲部と、上記第3の側面に対して鉛直方向に導出された導出部とを有し、
上記負極タブは、上記第2の側面および上記第3の側面に倣うように屈曲された屈曲部と、上記第3の側面に対して鉛直方向に導出された導出部とを有する請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
上記正極タブの屈曲部と、上記第1の側面および上記第3の側面の少なくとも一方の側面との間に絶縁部材をさらに備え、
上記負極タブの屈曲部と、上記第2の側面および上記第3の側面の少なくとも一方の側面との間に絶縁部材をさらに備える請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
上記正極タブの屈曲部と上記外装材との間に絶縁部材をさらに備え、
上記負極タブの屈曲部と上記外装材との間に絶縁部材をさらに備える請求項10に記載の二次電池。
【請求項13】
一組の二次電池と、
上記一組の二次電池の外周側面を囲う外周壁部が形成された支持体と
を備え、
上記一組の二次電池がそれぞれ、上記支持体の正面側および背面側から上記外周壁部内に挿入されており、
上記二次電池は、厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、上記電池素子を外装する外装材とを備え、
上記電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、上記正極集電体露出部の幅wcと上記正極活物質層の幅Wcとが以下の式(7)を満たすように上記正極集電体上に上記正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、上記負極集電体露出部の幅waと上記負極活物質層の幅Waとが以下の式(8)を満たすように上記負極集電体上に上記負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される上記正極と上記負極との間に介在するセパレータと、
上記正極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された正極タブと、
上記負極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された負極タブと
を備えるバッテリユニット。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(7)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(8)
【請求項14】
上記外周壁部の内側面から内側に向かって伸びるリブ部がさらに形成され、
2個の上記二次電池が、上記支持体の正面側および背面側から上記外周壁部内に挿入され、上記リブ部の両面に対して装着されて構成される請求項13に記載のバッテリユニット。
【請求項15】
複数のバッテリユニットを備え、
上記バッテリユニットは、
一組の二次電池と、
上記一組の二次電池の外周側面を囲う外周壁部が形成された支持体と
を備え、
上記一組の二次電池がそれぞれ、上記支持体の正面側および背面側から上記外周壁部内に挿入されており、
上記二次電池は、厚さが3mm以上20mm以下であり、かつ、電池放電容量が3Ah以上50Ah以下である電池素子と、上記電池素子を外装する外装材とを備え、
上記電池素子は、
正極集電体と、正極活物質層とを備え、正極集電体露出部が形成されるとともに、上記正極集電体露出部の幅wcと上記正極活物質層の幅Wcとが以下の式(9)を満たすように上記正極集電体上に上記正極活物質層が設けられている正極と、
負極集電体と、負極活物質層とを備え、負極集電体露出部が形成されるとともに、上記負極集電体露出部の幅waと上記負極活物質層の幅Waとが以下の式(10)を満たすように上記負極集電体上に上記負極活物質層が設けられている負極と、
交互に積層される上記正極と上記負極との間に介在するセパレータと、
上記正極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された正極タブと、
上記負極集電体露出部に電気的に接続され、上記外装材の外部へ導出された負極タブと
を備えるバッテリモジュール。
0.5<(wc/Wc)≦1.0・・・(9)
0.5<(wa/Wa)≦1.0・・・(10)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2012−124146(P2012−124146A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135752(P2011−135752)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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