説明

二次電池の寿命期間を保証する充電システム

【課題】二次電池の寿命期間を保証する。
【解決手段】ライン23−1は、ストレージ劣化を生じない低い電池電圧のもとで測定した満充電容量比である。ライン21は寿命期間を保証できる標準使用条件のもとで測定した満充電容量比である。ライン23−2は、ライン21の寿命期間の終期tfを一致させるようにライン23−1を平行移動した修正後の満充電容量比である。標準使用条件の電圧で充電した二次電池の満充電容量がライン25−1、25−2に従って低下したような場合は、時刻t1、t2以降はそれぞれライン23−2に従って劣化するように低い充電電圧で充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の寿命期間を保証する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型電子機器の一例であるノートブック型パーソナル・コンピュータ(以後ノートPCという。)には、リチウム・イオン電池を内蔵した電池パックが使用されている。リチウム・イオン電池に限らず二次電池は使用時間が経過するに伴って劣化して容量が低下する。二次電池の寿命期間は使用環境や充電方法により変化するが、リチウム・イオン電池の劣化モードは2つに大別することができる。1つは、リチウム・イオン電池の充放電サイクルを繰り返す間に生ずる電気化学的変化および物理的変化に起因するサイクル劣化で、他の1つはリチウム・イオン電池が一定の充電状態を持続する間に生ずる電気化学的変化に起因するストレージ劣化またはカレンダー劣化である。
【0003】
特許文献1は、リチウム・イオン電池のサイクル寿命を長くする発明を開示する。同文献の発明は、使用するリチウム電池の充放電可能容量が大きいうちは実際の充電電圧を上限より低くしかつ放電電圧を下限より高くする。また、充放電可能容量が小さくなるにつれて充電電圧を上限に近くしていきかつ放電電圧を下限に近くしていく。そして、寿命の末期は充電電圧を上限に設定しかつ放電電圧を下限に設定することで充放電可能容量の低下を少なくして寿命を長くしている。
【0004】
特許文献2は、電池パックの性能劣化や短命化を抑制する発明を開示する。同文献には、リチウム・イオン電池は満充電の状態またはそれに近い状態で放置または保管されると容量劣化が大幅に進行するという性質を有していることが記載されている。さらに、リチウム・イオン電池は、満充電の状態またはそれに近い状態での放置時間が長くなるほど、また、高温になるほどその容量劣化は一層加速し一旦容量劣化した電池は、その容量を回復させることができないと記載されている。そして同文献の発明は、電池パックの温度が比較的高い場合には、電池パックの目標充電容量を比較的小さく設定し、電池パックの温度が比較的低い場合には、目標充電容量を比較的大きく設定することで、電池パックを満充電まで充電させないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−120843号公報
【特許文献2】特開2005−287092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年電気機器に搭載されるリチウム・イオン電池の寿命期間を、電気機器の製造者が3年間あるいは5年間といったような所定期間だけ保証するシステムが開始されようとしている。寿命期間を保証するためには、充放電サイクル数(以下、サイクル数という。)、電池温度、および電池電圧といった容量劣化に強い影響を及ぼす要因に関連する使用条件を標準使用条件として設定する。しかし、ユーザが標準使用条件どおりに使用すれば寿命期間を保証することができるが、実際には、ユーザが標準使用条件から外れて使用することがあるため寿命期間を保証できない場合が生ずる。そこで、標準使用条件から外れて使用されることがあってもリチウム・イオン電池の寿命期間を保証することができる充電システムが望まれる。
【0007】
そこで本発明の目的は、二次電池の寿命期間を保証することができる充電システムを提供することにある。さらに本発明の目的はそのような充電システムを搭載する電気機器またはコンピュータを提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような充電システムを実現する電池パックを提供することにある。さらに本発明の目的は二次電池の寿命期間を保証する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は二次電池の寿命期間を保証できる充電システムを提供する。本発明が対象にする二次電池は寿命期間が電池温度と電池電圧を主要因とするストレージ劣化に大きく支配される。具体的には、電池温度が所定値以上高くかつ電池電圧が所定値以上高い場合にストレージ劣化が激しく進行するような二次電池を対象にしている。電池温度は二次電池が使用される環境温度で決まるため充電システムは制御できない。本発明にかかる充電システムは容量劣化が進行していると判断したときに電池電圧を下げることで寿命期間を保証する。充電制御回路は、充電器に第1の充電電圧値を設定して充放電サイクルを繰り返しながら所定の時間が経過したときの二次電池の容量劣化の大きさに関連する劣化特性値を閾値と比べて充電電圧の切り替えが必要であるか否かを判断する。充放電サイクルには、充電期間および放電期間に加えて二次電池が充放電回路から切り離されて自然放電している期間を含んでもよい。充電制御回路は劣化特性値が閾値に到達したと判断したときに充電器に第1の充電電圧値より低い第2の充電電圧値を設定する。
【0009】
第1の充電電圧値は、寿命期間を保証する前提として設定した標準使用条件における充電電圧値とすることができる。第2の充電電圧値を電池温度が標準使用条件より高くてもストレージ劣化がほとんど進行せず、かつ定格容量を確保できる値に設定すれば、充電電圧を変更したあとのストレージ劣化を標準使用条件の場合よりも抑制して寿命期間が保証できるようになる。本発明にかかる二次電池は正極がコバルト系リチウムで形成されたリチウム・イオン電池とすることが好適であるが、寿命期間がストレージ劣化に強く支配されかつ充電電圧で制御可能なタイプの二次電池一般に適用することが可能である。
【0010】
劣化特性値には、電池温度が第1の温度値以上でかつ電池電圧が所定値以上である第1の劣化促進状態の時間または累積時間を選定することができる。また劣化特性値には、二次電池の劣化の大きさを示す劣化量を選択することも可能である。劣化量は、満充電容量、二次電池の内部インピーダンス、および二次電池を放電したときの単位容量当たりの電池電圧の変化値から選択することができる。また複数選択した劣化特性値と対応する閾値との関係に論理演算を加えて充電電圧を切り替えるようにしてもよい。
【0011】
充電制御回路は、電池温度が第2の温度値以上でかつ電池電圧が所定値以上である第2の劣化促進状態が所定時間継続したときに、二次電池を充電開始電圧よりも高い所定の電圧まで放電させることができる。第2の劣化促進状態を、第2の温度値が第1の温度値よりも高いといったように第1の劣化促進状態よりも厳しくなるような状態に設定しておけば、急激な劣化の進行を強制放電により緩和させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、二次電池の寿命期間を保証することができる充電システムを提供することができた。さらに本発明によりそのような充電システムを搭載する電気機器またはコンピュータを提供することができた。さらに本発明により、そのような充電システムを実現する電池パックを提供することができた。さらに本発明により二次電池の寿命期間を保証する方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】正極にコバルト系リチウムを使用したリチウム・イオン電池の寿命期間を保証する方法の概要を説明する図である。
【図2】本実施の形態にかかる基本的な充電システムの機能ブロック図である。
【図3】劣化特性値として満充電容量比を選択した場合に寿命期間を保証する方法を説明する図である。
【図4】劣化特性値として劣化促進状態の継続時間を選択した場合に寿命期間を保証するための閾値を決定する方法を説明する図である。
【図5】充電システムが劣化特性値に基づいてリチウム・イオン電池の寿命期間を保証する手順を示すフローチャートである。
【図6】電池パックと電池パックを搭載するノートPCで構成された充電システムの概要を示す機能ブロック図である。
【図7】スマート・バッテリィ・システム(SBS)規格に準拠した電池パックの内部構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[リチウム・イオン電池の寿命期間]
二次電池の寿命期間は、使用開始時の満充電容量に対して所定の割合以上の満充電容量が残存している期間として定義することができる。リチウム・イオン電池の寿命期間を保証するには、使用中に容量劣化の程度を判断して制御因子を適切に制御する必要がある。発明者の実験によれば、リチウム・イオン電池は正極の材料により劣化に大きな影響を与える要因が異なることがわかった。現在、リチウム・イオン電池の正極材料にはコバルト系リチウムと、ニッケル系リチウムが主に採用されている。コバルト系リチウムとしては、コバルト酸リチウムまたはコバルト酸リチウムとマンガン酸リチウムを混合した材料が主として使用されている。ニッケル系リチウムとしては、ニッケル酸リチウムとコバルト酸リチウムまたはマンガン酸リチウムを混合した材料が主として使用されている。
【0015】
そして正極材料と容量劣化の関係を調べていくと、正極にコバルト系リチウムを使用したリチウム・イオン電池では、電池の表面温度である電池温度が高くかつ充放電回路から切り離したときの端子電圧である電池電圧が高い状態が続くと容量劣化が激しくなり、ストレージ劣化が支配的であることがわかった。また、電池温度が高くても電池電圧を下げることでサイクル劣化を抑制することができることもわかった。これに対して、正極にニッケル酸リチウムを使用したリチウム・イオン電池では、想定サイクル数を越えると容量劣化が激しくなりサイクル劣化が支配的であることがわかった。また、電池温度が高くてもストレージ劣化は少なく、さらに、電池電圧を下げてもサイクル劣化を抑制することができないこともわかった。
【0016】
電池は、使用開始後にさまざまな要因で劣化していくが、劣化要因のなかには充電電圧に支配される電池電圧のように充電システムで制御できる因子と、環境温度に支配される電池温度のように制御できない因子がある。使用条件を過剰に制約することなく寿命期間を確実に保証するためには、あらかじめ適切な制御因子を特定する必要がある。本実施の形態では、正極にコバルト系リチウムを使用したリチウム・イオン電池を例示して、適切に使用条件を制御して寿命期間を保証することができる充電システムを説明する。
【0017】
[寿命期間を保証する方法の概要]
図1は、正極にコバルト系リチウムを使用したリチウム・イオン電池の寿命期間を保証する方法の概要を説明する図である。ライン11、13、15は、いずれも初期の満充電容量に対する経過時間ごとに測定した満充電容量の比を表している。以後、満充電容量の初期値に対する所定の経過時間後の値の割合を満充電容量比という。満充電容量は、その時点で電池が蓄積できる最大の電気量をいいリチウム・イオン電池の物理的変化および化学的変化により経年的に低下する値である。リチウム・イオン電池は、定電流定電圧(CCCV)方式で充電する。定電流定電圧方式では、定電流充電で充電を開始し電池電圧が所定値まで上昇したときに定電圧充電に切り替える。定電圧充電を継続すると充電電流が次第に減少する。そして充電電流が放電終止電流に到達した時点で充電を終了する。
【0018】
したがって電池電圧は充電を停止する直前の電圧である充電電圧に支配される。満充電容量は放電終止電圧またはその近辺から放電終止電流まで充電する間に電池に蓄積される総電気量として計測することができる。なお、複数の電池を直列に接続している場合の電池電圧は、単体の電池(電池セル)の電圧をいう。本実施の形態では、リチウム・イオン電池の寿命期間を2年あるいは3年といった所定期間として保証するために標準使用条件を設定する。標準使用条件を構成する項目は、充電電圧、電池温度、およびサイクル数に集約されるが正極がコバルト系リチウムのリチウム・イオン電池では充電電圧と電池温度が特に重要である。充電電圧を低くすると寿命期間が長くなることは一般に知られているが、充電電圧を下げると満充電容量まで充電しないことになり放電により利用できる電気量が低下するため寿命期間を保証する前の充電電圧はこれまで4.2Vにしていた。ここに、満充電容量に対して実際に電池が蓄積している電気量の割合をRSOC(%)(Relative State Of Charge)という。
【0019】
充電電圧は定電流定電圧方式の充電において、定電圧領域で充電している間に各電池セルに印加される電圧に対応する。充電電圧を4.2Vにすると電池温度およびサイクル数を標準使用条件の範囲に納めても3年間の寿命期間を満たすことは困難であるため、本実施の形態では初期の充電電圧を一例として4.1Vにする。そして、充電電圧として4.1V、時間的に平均的した電池温度として25度、寿命期間中の合計のサイクル数として800回を標準使用条件とする。電池の定格容量は、4.1Vで充電したときのRSOC(%)で規定している。本実施の形態では寿命期間である3年の終期tfにおける満充電容量比が60%以上になるように設定している。ただし、寿命期間の終期tfでの満充電容量比および寿命期間に他の値を採用することもできる。
【0020】
電池温度は、リチウム・イオン電池が充電中、放電中または充放電回路からの開放状態のいずれかの状態におかれているときに電池セルの表面で測定した値を時間的に平均した温度である。ただし、安全上電池温度が所定値を越えた場合は充電が制限されるので、その場合は放電中または開方状態のいずれかの状態で測定することになる。ライン11は標準使用条件のときの満充電容量比の経年変化を示しており、寿命期間が保証されていることを示している。ライン13は電池温度を40度でかつ電池電圧を4.1Vにしたときの満充電容量比の経年変化を示しており寿命期間を保証することができないことを示している。ライン15は、電池温度を60度でかつ電池電圧を4.1Vにしたときの満充電容量比の経年変化を示しており、この使用状態では時刻txでリチウム・イオン電池が寿命に到達している。
【0021】
点線で示したライン17は、時期t1で充電電圧を初期の充電電圧より下げて4.05Vにしたときの満充電容量比の経年変化を示している。時刻t1のときのライン15の満充電容量比がライン11の満充電容量比よりも小さい場合は、標準使用条件で使用した場合よりも劣化が進行していることになるため、それ以降に標準使用条件で使用しても寿命期間を保証することはできなくなる。正極にコバルト系リチウムを使用したリチウム・イオン電池では、電池電圧を4.05V程度以下に下げると電池温度が高くても標準使用条件の場合よりもそれ以降のストレージ劣化の進行が少ないことが実験でわかっている。
【0022】
よって、本実施の形態では上記の特質を利用して容量劣化が標準使用条件の場合よりも所定量以上進行していることが判明した場合には、それ以降の充電電圧を低下させてストレージ劣化を抑制し寿命期間を保証する。ライン17における時刻t1以降の充電電圧(4.05V)を劣化抑制電圧といい、充電電圧を変更する時刻t1を充電電圧の切替時期という。劣化抑制電圧は、リチウム・イオン電池が搭載される電気機器に許容される最大の環境温度においても標準使用状態のときよりもストレージ劣化の進行を抑制することができる充電電圧ということができる。
【0023】
[充電システム]
図2は、本実施の形態にかかる基本的な充電システムの機能ブロック図である。充電システム50は、電気機器、情報機器、電動工具、または自動車などの電力機器に搭載することができる。直流電源51は、充電器55および負荷65に直流電圧の電力を供給する。直流電源51は、常時充電システム50の一部を構成して充電できる状態にしておく必要はなく、リチウム・イオン電池57の充電が必要なときだけスイッチ53に接続するようにしてもよい。充電器55は、直流電源51から供給された直流電圧をスイッチング制御して所定の直流電圧に変換し定電流定電圧制御でリチウム・イオン電池57を充電する。充電器55は、直流電源51が供給する電圧を検知して充電制御回路61に直流電源51が接続されていることを知らせる。リチウム・イオン電池57は正極にコバルト系リチウムを採用している。
【0024】
電流測定回路54は、リチウム・イオン電池57に流れる充電電流または放電電流を測定してその値を充電制御回路61に送る。電圧測定回路56は、リチウム・イオン電池57を構成する電池セルの電圧を測定して充電制御回路61に送る。温度測定回路59はリチウム・イオン電池57の表面温度を測定して充電制御回路61に送る。
【0025】
充電制御回路61は、電流測定回路54、電圧測定回路56および温度測定回路59から受け取ったデータに基づいて充電器55の動作を制御する。充電制御回路61は、充電器55に定電圧領域で動作するときの充電電圧および定電流領域で動作するときの充電電流を設定する。充電制御回路61は、電流測定回路54から受け取ったデータに基づいてリチウム・イオン電池57の使用を開始してから実行されたサイクル数をカウントする。充電制御回路61は、リチウム・イオン電池57の使用を開始してからの経過時間を計測する。
【0026】
充電制御回路61は、所定のサイクル数ごとまたは所定の経過時間ごとに充電器55に電圧が印加されていることを確認してから、リチウム・イオン電池57を放電終止電圧またはその近辺まで強制的に放電させ、その後充電終了電流まで充電するときの全電気量から満充電容量を計算する。充電制御回路61は、リチウム・イオン電池57の劣化量に関する劣化特性値を測定して切替時期が到来したことを判断し、充電器55に設定する充電電圧を変更する。充電制御回路61は、電池電圧が所定値以上でかつ電池温度が所定値以上である劣化促進状態が継続している時間、およびその累積時間を劣化特性値として測定する。劣化促進状態とその継続時間は切替時期を判断したり強制放電の時期を判断したりするために利用される。
【0027】
充電制御回路61は、EEPROM62を備えている。EEPROM62には、リチウム・イオン電池57の充放電に関する固有情報、劣化特性値の閾値、累積のサイクル回数、および経過時間などのデータが書き込まれる。充電制御回路61は、充電器55を通じて直流電源51がスイッチ53に接続されていることを認識する。負荷65は、リチウム・イオン電池57または直流電源51から電力の供給を受けて動作する。
【0028】
[劣化特性値]
つぎに、リチウム・イオン電池57の劣化特性値について説明する。リチウム・イオン電池が標準使用条件からはずれて使用されると、寿命期間を保証するときに予定していたよりも容量劣化が進行し、所定の寿命期間を保証できなくなる。本実施の形態では、使用を開始してから所定の時間ごとまたは所定のサイクル数ごとにリチウム・イオン電池57の劣化特性値を計測して劣化の程度を判断し必要な場合に充電電圧を変更する。あるいは、使用を開始してから劣化特性値が閾値に到達したと判断したときに充電電圧を変更する。劣化特性値は、リチウム・イオン電池57の容量劣化の大きさに関連する劣化量とすることができる。劣化特性値は、使用開始時の劣化値に対する使用開始後の劣化値の割合で表すことができる。満充電容量比は使用開始時の劣化量をゼロとしたときに直接容量劣化を示す劣化特性値となる。
【0029】
満充電容量と電池セルの内部インピーダンスは相関関係がある。また、放電させたときの単位容量当たりの電池電圧の変化値(以下、容量電圧変化率(ΔV/ΔC)という。)も満充電容量と相関関係がある。満充電容量が低下するに伴って内部インピーダンスは上昇し、また、容量電圧変化率も上昇するので、それぞれの初期値に対する割合として内部インピーダンス比または容量電圧変化率の比を計算し、満充電容量比に代えてそれらを劣化特性値として採用することができる。内部インピーダンス比と容量電圧変化率の比は逆数を使用して、満充電容量比と同じように経過時間とともに低下する値として利用することもできる。
【0030】
リチウム・イオン電池57の劣化特性値としては、電池の劣化の大きさを直接示す劣化量以外に劣化をもたらす要因に関連する情報を採用することもできる。リチウム・イオン電池57は、電池温度が所定値以上でかつ電池電圧が所定値以上の劣化促進状態が継続すると容量劣化が激しくなる。したがって、あらかじめ、リチウム・イオン電池57が所定の電池温度および所定の電池電圧で規定される劣化促進状態におかれている継続時間または累積時間を劣化特性値として採用することもできる。
【0031】
[寿命期間の保証方法]
つぎに、劣化特性値として満充電容量比を選択して寿命期間を保証する方法を、図3を参照して説明する。図3のライン21は、寿命期間の終期tfに60%以上の満充電容量比を保証するために標準使用条件(電池温度25度、電池電圧4.1V)で使用したときの満充電量容量比の経年変化を示している。ライン23−1は、電池温度が60度で電池電圧を4.05Vまで下げたときの満充電量容量比の経年変化を示している。ライン23−2は、寿命期間の終期tfにおける満充電容量比がライン21のそれと一致するようにライン23−1を下方向に平行移動させたものである。
【0032】
ライン25−1は電池電圧が4.1Vで電池温度が60度の満充電容量比の経年変化を示し、ライン25−2は電池電圧が4.1Vで電池温度が55度のときの満充電容量比の経年変化を示している。なお、電池温度が55度を超えるときはリチウム・イオン電池に対する充電が禁止されているので、ライン23−1、25−1、25−2は、リチウム・イオン電池57が充電以外の状態におかれているときの特性である。時刻t1ではライン21が示す標準使用条件では満充電容量比がC1%であるが、ライン25−1が示す電池温度が60度のときはC2%まで低下している。
【0033】
しかし、時刻t1で充電電圧を劣化抑制電圧である4.05Vに変更するとその後はライン23−2にしたがって容量が低下するため、寿命期間の終期tfにおいて60%の満充電容量比を維持することができる。なお、時刻t1以前に充電電圧を劣化抑制電圧に変更することでも寿命期間を満たすことはできるが、劣化抑制電圧で充電すると蓄積できる電気量が減るので時刻t1で変更することが望ましい。また、ライン25−1に従って容量が低下した場合は、時刻t1が経過してから充電電圧を劣化抑制電圧に変更するとライン23−2がさらに下方向にシフトすることになり寿命期間を満たすことができなくなる。
【0034】
時刻t2では、ライン21が示す標準使用条件では満充電容量比がC3%であるが、ライン25−2が示す電池温度が55度のときはC4%まで低下している。しかし、時刻t2で充電電圧を劣化抑制電圧である4.05Vに変更するとその後はライン23−2にしたがって容量が低下するため、寿命期間の終期tfにおいて60%の満充電容量比を満たすことができる。なお、時刻t2以前に充電電圧を劣化抑制電圧に変更することでも寿命期間を満たすことはできるが、ライン25−1の場合と同様に劣化抑制電圧で充電すると蓄積できる電気量が減るのでライン25−2で劣化した場合は時刻t2で切り替えることが望ましい。これらのことから、最適な切替時期は各時刻において満充電容量比がライン23−2まで低下した時期として決定できることがわかる。
【0035】
内部インピーダンス比または容量電圧変化率の比を劣化特性値として採用する場合は、あらかじめそれらの値と満充電容量の関係を実験で求めておく。そして満充電容量比の場合と同様にそれぞれの値について標準使用条件で使用したときの経年変化と劣化抑制電圧で充電したときの経年変化を実験で求めて切替時期を決定することができる。
【0036】
劣化特性値として、電池温度と電池電圧で規定する劣化促進状態の継続時間を採用する場合は、劣化促進状態の累積時間としての閾値を満充電容量比がライン23−2に近づくように決定することで最適な切替時期を決定することができる。図4は、劣化特性値として劣化促進状態の継続時間を選択した場合に寿命期間を保証するための累積時間の閾値を決定する方法を説明する図である。図4のライン23−2は、図3で説明したものと同じである。劣化促進状態は、たとえば電池温度が45度以上でかつ電池電圧が4.1V以上と設定することができる。
【0037】
劣化促進状態はリチウム・イオン電池57の使用環境により、連続的に発生する場合もあるし間欠的に発生する場合もある。したがって、劣化促進状態が所定の累積時間に到達するときの経過時間は使用環境により変化する。ライン23−2が示すように、寿命期間の保証のために許容できる劣化量は、経過時間が長くなるほど大きくなる。したがって、累積時間の閾値に対応する満充電容量比がライン23−2であるとすれば、経過時間が長いほど閾値を大きくすることができる。
【0038】
たとえば、時刻t1では劣化量Δ1を許容でき時刻t2では劣化量Δ2(Δ2>Δ1)を許容できる。したがって、劣化促進状態の累積時間に対する閾値は、経過時間の関数として定めてもよい。一例として、劣化促進状態が連続して発生するような場合では経過時間t1が2400時間のときの累積時間の閾値は2400時間とし、経過時間t2が12000時間のときの累積時間の閾値は3000時間にするといったように、各経過時間において満充電容量比がライン23−2にできるだけ近づくように閾値を設定することが望ましい。
【0039】
劣化特性値に劣化促進状態の継続時間を採用する場合は電池温度、電池電圧および累積時間を計算するだけでよく劣化量を測定する必要がないため実現が容易である。また切替時期は、劣化量および劣化促進状態を複数設定しそれらと閾値との関係に論理和または論理積などの演算を施して決定するようにしてもよい。たとえば、満充電容量比と劣化促進状態の累積時間がともに閾値に到達したときに充電電圧を切り替えたり、劣化促進状態を構成する電池温度を複数設定して設定した各電池温度で構成される劣化促進状態と劣化量との間で論理演算をして切替時期を判断したりすることができる。
【0040】
[寿命期間を保証する手順]
つぎに充電システム50において、劣化特性値に基づいてリチウム・イオン電池57の寿命期間を保証する手順を図5のフローチャートに基づいて説明する。ブロック101からブロック105までは切替時期を決定するために劣化特性値に適用する閾値を求めて充電制御回路61のEEPROM62に格納する手順を示し、ブロック107からブロック121までは充電システム50の実際の動作の手順を示している。ブロック101では、図3のライン23−1に示したような電池電圧を劣化抑制電圧に一致させたときの劣化特性値の経年変化に関する実験データを取得する。実験中の電池温度は、リチウム・イオン電池57が搭載される電気機器に許容される範囲で予測しえる最大の温度とする。
【0041】
ブロック103では、寿命期間の終期tf、初期の充電電圧、および電池温度を設定して、図3のライン21に示したような標準使用条件での劣化特性値の実験データを取得する。ブロック105では、ブロック101で取得した実験データの寿命終期における劣化特性値をブロック103で取得した実験データの寿命終期における劣化特性値に一致させるように実験データを修正して図3のライン23−2に示したような修正データを取得する。劣化量を劣化特性値に選択した場合は、修正データが切替時期を判定するための閾値となる。劣化促進状態の継続時間を劣化特性値に選択した場合は、図4で示した手順に基づいて累積時間に対する閾値を設定する。修正データおよび累積時間の閾値は、充電制御回路61のEEPROM62に格納する。
【0042】
ブロック107ではリチウム・イオン電池57の使用を開始する。スイッチ53は通常オンになっている。充電制御回路61は、充電器55に初期の充電電圧(4.1V)と充電電流を設定する。直流電源51がスイッチ53に接続されると充電器55が電圧を検知して充電制御回路61がそれを認識しスイッチ63をオフにする。負荷65には直流電源51から電力が供給され、自然放電で充電開始電圧まで低下した電池電圧を電圧測定回路56が検出すると、充電制御回路61は充電器55を動作させて充電を開始させる。充電制御回路61は、電流測定回路54が測定する充電電流が充電終了電流に到達したと判断したときに充電器55の動作を停止させる。
【0043】
直流電源51が停止したり、スイッチ53から外されたりしたときには、充電制御回路61はスイッチ63をオンにして負荷65にリチウム・イオン電池57から電力を供給する。そして、つぎに直流電源51が接続されたことを認識したときに充電制御回路61は充電器55を動作させて充電を開始させ、かつ、直流電源51から負荷65に電力を供給させる。このような一連のサイクルで充電システム50の動作が継続する。
【0044】
ブロック109では充電制御回路61が、温度測定回路59が測定した電池温度、電圧測定回路56が測定した電池電圧、および電流測定回路54が測定した充電電流に基づいて、所定時間ごとまたは所定のサイクル数ごとに劣化特性値を測定する。ブロック111では、充電制御回路61はリチウム・イオン電池57が強制放電を必要とするような劣化促進状態におかれているか否かを判断する。
【0045】
強制放電は、リチウム・イオン電池57が電池温度および電池電圧が高い劣化促進状態が所定時間継続したときに、一旦負荷65を通じて電荷を放電させて電池電圧を低下させ劣化促進状態から解放する操作である。強制放電は、劣化を抑制することを目的とする点で充電電圧を切り替える操作と一致するが、劣化が著しく進行し易い状況になっていると判断したときに一時的に行う点で相違する。そして、強制放電の必要性の判断の一例として、劣化特性値として電池温度が60度以上でかつ電池電圧が4.1V以上で規定される劣化促進状態の継続時間を採用し、それに対する閾値として連続する2時間を設定する。
【0046】
充電制御回路61は、直流電源51が接続されていることを確認し、さらに強制放電のための劣化促進状態が閾値に到達したことを確認すると、ブロック113でスイッチ53をオフにし、スイッチ63をオンにして、負荷65を通じてリチウム・イオン電池57を強制的に放電させて電池電圧を低下させる。放電は、電池電圧が充電を開始する電圧よりは大きな値であって、たとえば3.75V程度まで行う。強制放電が終了したあとは、充電制御回路61はスイッチ53をオンにしてスイッチ63をオフにすることで、負荷65に直流電源51から電力を供給する。その後自然放電で電池電圧が充電開始電圧まで下がったときに充電器55により充電が再開される。再充電までの時間は1週間〜2週間といった比較的長い時間となるように放電を停止する電圧を設定することで、リチウム・イオン電池57はその間劣化促進状態から解放される。強制放電は、常に直流電源51が接続されてリチウム・イオン電池57が満充電状態に維持されているような充電システムにおける劣化の抑制に特に適している。
【0047】
ブロック115では、劣化測定値として劣化量を採用した場合は、充電制御回路61は劣化特性値が切替時期を決定するための閾値に到達したか否かを所定のサイクル数ごとまたは所定の経過時間ごとに判断する。このとき充電制御回路61は劣化量がブロック105で取得しEEPROM105に格納しておいた修正データに到達したか否かを判断する。劣化特性値に劣化促進状態を採用した場合は、充電制御回路61は切り替え時期の決定のための劣化促進状態の累積時間がEEPROM62に保存しておいた閾値に到達したか否かを判断する。いずれの場合であっても、閾値に到達したと判断したときはブロック117に移行し、閾値に到達していないと判断したときはブロック109に戻る。
【0048】
ブロック117では、充電制御回路61が充電器55に劣化抑制電圧(4.05V)を設定する。ブロック119では、充電制御回路61は、経過時間が寿命期間の終期tfに到達したか否かを判断し、終期に到達した場合はブロック121で寿命期間の保証のための手順を終了する。終期に到達していない場合はブロック109に戻る。この手順では充電電圧をブロック117で一度だけ切り替えているが、劣化抑制電圧をステップ状に設定して劣化特性値に基づいて2回以上変更するようにしてもよい。また、これまで正極がコバルト系リチウムの材料で形成されたリチウム・イオン電池を例にして寿命期間を保証する手順を説明したが、本発明は寿命期間を電池温度と電池電圧を主要因とするストレージ劣化が支配している他のタイプの二次電池に適用することも可能である。
【0049】
[ノートPCへの適用]
本発明にかかる充電システムはノートPCに適用することができる。図6は、電池パックと電池パックを搭載するノートPCで構成された充電システムの概要を示す機能ブロック図である。充電システムは、ノートPC200、ACアダプタ201、および電池パック300で構成されている。ノートPC200は、充電システムに関連する部分だけを示している。
【0050】
電池パック300はスマート・バッテリィ・システム(SBS)の規格に適合しておりノートPC200の筐体に着脱可能に装着される。ACアダプタ201は交流電圧を直流電圧に変換しノートPC200の電源端子に接続される。充電器209は、定電流定電圧特性を備えている。充電器209は入力電圧をPWM方式でオン/オフ制御するスイッチング制御回路と平滑回路とを備える。充電器209は、ACアダプタ201から入力された直流電圧を電池パック300の充電に適した直流電圧に変換して出力する。充電器209は、出力電流または出力電圧を設定された充電電流または充電電圧に一致させるためのフィードバック回路を備えている。充電器209は定電圧制御期間においては、出力電圧が充電電圧に一致するように動作する。また、充電器209は定電流制御期間においては、出力電流が充電電流に一致するように動作する。
【0051】
充電器209には、エンベデッド・コントローラ(EC)211により充電電圧および充電電流が設定される。充電器209は出力電圧が充電電圧を超えないように、および出力電流が充電電流を超えないように動作する。したがって充電器209は、充電初期には出力電流が充電電流に一致するように定電流制御で動作するが、充電が進行して充電電圧が上昇すると出力電圧を充電電圧に一致させるように定電圧制御で動作する。
【0052】
EC211は、電源以外にもノートPC200を構成する多くのハードウェア要素を制御する集積回路である。EC211は、電池パック300と通信して、電池パック300が生成した電池の表面温度、電池電圧、充電電流、残存容量、満充電容量および充電器に設定する充電電圧および充電電流などの情報を取得することができる。EC211は、電池パック300から受け取った指示に基づいて、充電器209を動作させたり停止させたりする。
【0053】
DC/DCコンバータ215は、ACアダプタ201または電池パック300から受け取った直流電圧を所定の直流電圧に変換してノートPC200内のシステム負荷に電力を供給する。システム負荷には、CPU、液晶ディスプレイ、無線モジュール、ハードディスク装置、およびコントローラなどの様々なデバイスを含む。FET205およびFET207は、電池パック300に対する充放電を制御するためのスイッチであり、電池パック300の充放電回路に接続されている。
【0054】
FET208は、電池パック300とDC/DCコンバータ215との間に接続され、電池パック300からDC/DCコンバータ215に対する放電回路を形成するためのスイッチである。FET203は、ACアダプタ201からDC/DCコンバータ215に電力を供給する回路に接続されている。AC/DCアダプタ201からDC/DCコンバータ215に電力を供給している際、電池が劣化促進状態に入った場合にFET203を一時的にオフにして電池パック300からDC/DCコンバータ215に電力を供給して強制放電することができる。FET駆動回路213は、EC211からの指示に基づいてFET203、205、207、208を制御する。
【0055】
[電池パック]
図7は、スマート・バッテリィ・システム(SBS)規格に準拠した電池パック300の内部構成を示す機能ブロック図である。電池パック300は、電源ライン301、通信ライン303、およびグランド・ライン305がそれぞれP端子、D端子、およびG端子でノートPC200に接続される。電源ライン301には、それぞれp型MOS−FETで構成された充電保護スイッチ307と放電保護スイッチ309が直列に接続されている。放電保護スイッチ309には、3本のリチウム・イオン電池セル311、313、315で構成された電池セット317の正極が直列に接続されている。電池セット317からの放電電流および電池セット317に対する充電電流は、電源ライン301およびグランド・ライン305で構成される充放電回路を通じてノートPC200との間を流れる。
【0056】
電池セット317を構成する電池セル311〜315の電圧側の端子はアナログ/インターフェース319のアナログ入力V1〜V3端子に接続されている。電池セット317の表面には、1個〜複数個のサーミスタなどの温度素子321が貼り付けられている。温度素子321は電池セル311〜315の表面温度を測定し、MPU323のT端子に出力する。なお、表面温度は、センサを電池セル311〜315の筐体に接触させる接触式または筐体から離す非接触式のいずれの方式で測定してもよい。電池セル315の負端子とG端子との間のグランド・ライン305には、電流センス抵抗325が接続されている。電流センス抵抗325の両端は、アナログ/インターフェース319のI1、I2端子に接続されている。
【0057】
アナログ/インターフェース319は、電池セル311〜315のそれぞれのセル電圧を取得するアナログ入力端子V1、V2、V3、および電流センス抵抗325の両端の電位差を検出するアナログ入力端子I1、I2を備える。アナログ/インターフェース319はさらに充電保護スイッチ307および放電保護スイッチ309をオン/オフ制御する信号を出力するアナログ出力端子C−CTLおよびD−CTLを備える。アナログ/インターフェース319は、電池セット317のセル電圧を測定してディジタル値に変換しMPU323に送る。
【0058】
アナログ/インターフェース319は、電流センス抵抗325が検出した電圧から電池セット317に流れる充電電流および放電電流の値を測定してディジタル値に変換しMPU323に送る。MPU323は、8〜16ビット程度のCPUの他に、RAM、ROM、フラッシュ・メモリ、タイマなどを1個のパッケージの中に備えた集積回路である。MPU323は、アナログ/インターフェース319と通信が可能になっており、アナログ/インターフェース319から送られた電池セット106に関する電圧および電流に基づいて充電電気量や放電電気量を計算し、さらに満充電容量比を計算してフラッシュ・メモリに記憶しておく。
【0059】
MPU323はまた、過電流保護機能、過電圧保護機能(過充電保護機能ともいう。)、および低電圧保護機能(過放電保護機能ともいう。)を備え、アナログ/インターフェース319から受け取った電圧や電流から電池セル311〜315に異常を検出した場合に、アナログ/インターフェース319を通じて充電保護スイッチ307および放電保護スイッチ309またはそのいずれかをオフにする。過電流保護機能、過電圧保護機能、および低電圧保護機能はMPU323で実行されるプログラムで構成される。
【0060】
MPU323からはD端子を通じて通信ライン303がノートPC200のEC211に接続され通信が可能になっている。通信ライン303にはクロック・ラインも含まれている。MPU323は、EC211に対して充電器209に設定する充電電流および充電電圧を送る。MPU323が充電電圧および充電電流のデータをレジスタに記憶しておくと、EC211が定期的にそれを読み取ることでデータが転送される。EC211は図示しない基準電圧源を経由してこの設定値を充電器209に設定し、充電器209の動作を開始させたり停止させたりする。
【0061】
MPU323はROMに、図5の手順で説明した方法で充電電圧を切り替えるための閾値および強制放電の必要性を判断するための閾値を格納している。MPU323は使用開始後のサイクル数および経過時間を計算してデータをROMに格納する。MPU323は、電池セット317の表面温度およびセル電圧に基づいて充電器209に対する充電電圧の切り替えまたは強制放電のための劣化促進状態が閾値に到達したか否かを判断する。MPU323は、劣化量が閾値に到達したか否かを判断する。
【0062】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0063】
50…充電システム
200…ノートPCの充電システム
300…電池パック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充電システムであって、
前記二次電池を充電する充電器と、
前記二次電池の容量劣化の大きさに関連する劣化特性値を測定する測定回路と、
第1の充電電圧値が設定された前記充電器による充電期間および放電期間を含む充放電サイクルを繰り返しながら所定の時間が経過したときの前記劣化特性値が閾値に到達したと判断したときに前記充電器に前記第1の充電電圧値より低い第2の充電電圧値を設定する充電制御回路と
を有する充電システム。
【請求項2】
前記二次電池が、正極がコバルト系リチウムで形成されたリチウム・イオン電池である請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記第1の充電電圧値が、前記寿命期間を保証するために設定した標準使用条件における充電電圧値である請求項1または請求項2に記載の充電システム。
【請求項4】
前記劣化特性値が、前記二次電池の電池温度が第1の温度値以上でかつ電池電圧が所定値以上である第1の劣化促進状態の累積時間を含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の充電システム。
【請求項5】
前記劣化特性値が、前記二次電池の劣化の大きさを示す劣化量を含む請求項1から請求項4のいずれかに記載の充電システム。
【請求項6】
前記劣化量が、前記二次電池の満充電容量、前記二次電池の内部インピーダンス、および前記二次電池を放電したときの単位容量当たりの電池電圧の変化値からなるグループから選択されたいずれか1つまたは複数の組み合わせに基づいて設定されている請求項5に記載の充電システム。
【請求項7】
前記充電制御回路は、前記二次電池の電池温度が第2の温度値以上でかつ電池電圧が所定値以上である第2の劣化促進状態が所定時間継続したときに、前記二次電池を充電開始電圧よりも高い所定の電圧まで放電させる請求項1から請求項6のいずれかに記載の充電システム。
【請求項8】
前記第2の温度値は前記第1の温度値よりも高い請求項7に記載の充電システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の充電システムを搭載した電気機器。
【請求項10】
充電器を搭載する電気機器に装着が可能な電池パックであって、
前記充電器により充電される二次電池と、
前記二次電池の容量劣化の大きさに関連する劣化特性値を測定する測定回路と、
前記電気機器と通信する通信回路と、
第1の充電電圧値が設定された前記充電器による前記二次電圧の充電期間および放電期間を含む充放電サイクルを繰り返しながら所定の時間が経過したときの前記劣化特性値が閾値に到達したと判断したときに、前記通信回路を通じて前記充電器に前記第1の充電電圧値より低い第2の充電電圧値を設定するプロセッサと
を有する電池パック。
【請求項11】
充電器を搭載する携帯式コンピュータであって、
ACアダプタまたは二次電池から電力の供給を受けるシステム負荷と、
前記二次電池の容量劣化の大きさに関連する劣化特性値を測定する測定回路と、
第1の充電電圧値が設定された前記充電器による充電期間および前記システム負荷による放電期間を含む充放電サイクルを繰り返しながら所定の時間が経過したときの前記劣化特性値が閾値に到達したと判断したときに前記充電器に前記第1の充電電圧値より低い第2の充電電圧値を設定するコントローラと
を有する携帯式コンピュータ。
【請求項12】
充電システムにおいて充電器の動作を制御して二次電池の寿命期間を保証する方法であって、
前記二次電池の満充電容量の低下に関連する劣化特性値に基づいて前記充電器に設定する充電電圧を変更するための閾値を提供するステップと、
前記充電器に第1の充電電圧値を設定して充放電サイクルを繰り返すステップと、
使用開始から所定の時間が経過した時点での前記劣化特性値が前記閾値に到達したか否かを判断するステップと、
前記劣化特性値が前記閾値に到達したときに前記充電器に前記第1の充電電圧値よりも低い第2の充電電圧値を設定して充放電サイクルを繰り返すステップと
を有する方法。
【請求項13】
前記第1の充電電圧値は、前記二次電池の電池温度が標準温度のときに前記寿命期間を保証できるように選定されている請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記第2の充電電圧値は、前記電池温度が前記標準温度より高い場合であっても、前記充電器に前記第1の充電電圧を設定して充放電サイクルを繰り返すよりも前記満充電容量の低下が少なくなるように選定されている請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記二次電池の電池温度が所定値以上でかつ電池電圧が所定値以上である劣化促進状態が所定時間継続したときに前記電池電圧を低下させるステップと、
前記電池電圧が低下してから充電を開始するまで前記二次電池を自然放電させるステップと
を有する請求項12から請求項14のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−109840(P2011−109840A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263514(P2009−263514)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】