説明

二軸延伸コポリエステルフィルム及び銅を含むその積層体

(1)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;(2)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び(3)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基を含み、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された二軸延伸ポリエステルフィルムを開示する。一実施態様において、前記二軸延伸ポリエステルフィルムは70〜150ミクロン(3〜5mil)の厚さを有する。別の実施態様において、前記二軸延伸ポリエステルフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合に、3%以下の収縮率を示す。前記フィルムは、厚さ約450〜1800ミクロン(18〜70mil)の本質的に非晶質のキャストフィルムを、温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして前記伸張フィルムを、寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な熱安定性コポリエステルフィルム並びに熱安定性ポリエステルフィルムを用いたポリエステル積層体及び銅−ポリエステル積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、種々のラッピング、パッケージング及び積層用途に広く用いられている。PETフィルムは、フィルムを物体(object)に適用してから加熱することによってフィルムを物体の周囲において収縮させる収縮包装用途に使用される場合がある。フレキシブル電子回路基板、耐熱性パッケージング及びクックイン・バッグのような他の用途においては、高温において良好な寸法安定性及び防縮性を有する二軸延伸及びヒートセットされたPETフィルムが使用される。しかし、二軸延伸PETフィルムは固有融解温度(Tm)が250℃であるので、250℃を超える温度においては有用でない。
【0003】
ある種のフレキシブル回路基板のような一部の用途は、260℃において熱安定性である(即ち、良好な寸法安定性を有している)フィルムを必要とする。具体的には、フィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴に浸漬した場合に、ふくれや皺を生じてはならない。より具体的には、これらのフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%又はそれ以下でなければならない。この要件を満たすフィルムは、接着剤及び回路部品と合して、次に260℃において噴流はんだ又はディップはんだに供されることができるフレキシブル積層体の形にする。このフレキシブル積層体は、260℃のはんだ付け過程における、この積層体のベースフィルムのふくれ又は皺は全て、最終用途における回路性能に影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
フレキシブル回路基板は普通は厚さ70〜150ミクロン(3〜5mil)のベース及びカバーフィルムを使用する。目的とする最終フィルム特性を得るために、これらのフィルムは、本質的に非晶質のキャストフィルムを約2.5×2.5〜3.5×3.5(又は更に具体的には、約2.5×2.5〜3×3)の比で伸張することによって得られる。このためには、本質的に非晶質のフィルムが約450〜1800ミクロン(18〜70mil)、又はより具体的には450〜1400ミクロン(18〜55mil)にキャストする必要があるであろう。フィルムは、伸張プロセスにおける破損を防ぐために、最初に本質的に非晶質な状態で押出してから伸張しなければならない。残念ながら、純粋なポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)はPETよりもはるかに速く結晶化する。従って、400ミクロン(16mil)超の厚さで本質的に非晶質のキャスト又は研磨フィルムを得るのは困難である。フィルムの縁は完全に非晶質である必要はなく、キャストフィルムの中央のみがその必要があることに留意すべきである。
【0005】
優れた加水分解安定性は、フレキシブル回路基板(特に自動車用の)及びクックイン・バッグに使用されるフィルムに望ましい別の特性である。優れた加水分解安定性を有するベースフィルムは、構造一体性を保持する回路基板及びバッグを生じる。更に、フレキシブル回路基板に使用する基体(又は下地)(substrate)及びカバーフィルムは、電荷が回路部品を橋絡しないように、絶縁材料であるのが望ましい。これらの用途において使用されるフィルムの絶縁能力は、誘電率によって測定される。フレキシブル回路基板用途において使用されるフィルムは可能な限り低い誘電率を有するのが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、本質的に非晶質のフィルムに厚さ約450ミクロン(18mil)又はそれ以上でキャスト可能な組成物を提供することにある。本発明の目的はまた、優れた加水分解安定性を有し且つ低い誘電率を有する、260℃において安定なフィルムを提供することにある。これら及びその他の目的は、本発明の以下の説明及び「特許請求の範囲」から明白であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はいくつかの態様を有する。第1の態様において、本発明は二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。一実施態様において、ポリエステルフィルムは、
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造し、70〜150ミクロンの厚さを有する。
【0008】
別の実施態様においては、ポリエステルフィルムを、
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造し、
前記ポリエステルフィルムは70〜150ミクロンの厚さを有し、
前記ポリエステルフィルムは、厚さ約450〜1800ミクロンの本質的に非晶質のキャストフィルムを、温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして前記伸張フィルムを、寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって製造し、
前記ポリエステルフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%以下である。
【0009】
第3の実施態様においては、ポリエステルを、
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造し、前記ポリエステルフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%以下である。
【0010】
第4の実施態様においては、ポリエステルフィルムを、
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造し、
前記ポリエステルフィルムは、厚さ約450〜1800ミクロンの本質的に非晶質のキャストフィルムを、温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして前記伸張フィルムを、寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって製造し、
前記ポリエステルフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%以下である。
【0011】
第2の態様において、本発明は1つ又はそれ以上の積層体を含む熱可塑性樹脂製品に関する。一実施態様において、少なくとも1つの積層体は、
I.熱硬化性接着剤;並びに
II.(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、厚さ70〜150ミクロンの二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む。
【0012】
第2の態様の第2の実施態様において、少なくとも1つの積層体は、
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;及び
III.第1の実施態様の二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む。
【0013】
第2の態様の第3の実施態様において、少なくとも1つの積層体は、
I.熱硬化性接着剤;並びに
II.(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%以下である二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む。
【0014】
第2の態様の第4の実施態様において、少なくとも1つの積層体は、
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;及び
III.第3の実施態様の二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む。
【0015】
第3の態様において、本発明は、1つ又はそれ以上の積層体を含む熱可塑性樹脂製品の製造方法に関する。少なくとの1つの積層体は、
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;並びに
III.(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、厚さ70〜150ミクロンの二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む。この方法は、前記積層体を、約120〜180℃の温度において、加圧下で熱硬化性接着剤を硬化させるのに充分な時間、加熱する工程を含む。
【0016】
第4の態様において、本発明はフレキシブル電子回路基板に関する。一実施態様において、フレキシブル電子回路基板は、
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、厚さ70〜150ミクロンの少なくとも1つの二軸延伸ポリエステルフィルムを含む。
【0017】
別の実施態様において、フレキシブル回路基板は前記の熱可塑性樹脂製品の1つを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明において有用な単層フレキシブル電子回路の図である。
【0019】
図2は本発明において有用な二層フレキシブル電子回路の図である。
【0020】
図3は本発明において有用な多層フレキシブル電子回路の図である。
【0021】
本発明の全ての実施態様のための二軸延伸ポリエステルフィルムは、
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含む(ここでポリエステルは合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含む)。「別のジカルボン酸又はジオール残基」とは、テレフタル酸残基又はCHDM残基以外のジカルボン酸又はジオール残基を意味する。
【0022】
好ましくは、二軸延伸ポリエステルフィルムは、
(a)約97〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約97〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.7〜約3モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含む(ここで、ポリエステルは合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含む)。
【0023】
ポリエステルフィルムは、最終フィルム組成が前記の組成に適合するならば、単一の組成物のべレット又はいくつかの組成物のペレットのブレンドから生成できる。例えば、ブレンドは、最終配合組成が前記基準を満たすならば、純粋なPCT及び5%コモノマーを含むPCTから種々の比で生成できる。
【0024】
CHDM残基は、任意の組合せのシス及びトランス異性体比を有することができる。しかし、好ましくは、CHDM残基は約60〜100モル%の範囲のトランス異性体含量を有する。より好ましい異性体含量は約60〜約80モル%の範囲のトランス異性体である。
【0025】
ポリエステルは、当業界でよく知られた常法によって容易に製造できる。例えば、必要ならば、溶融相重縮合法又は溶融相重縮合法と固相重縮合法との組合せを使用できる。ポリエステルは、典型的には、約0.4〜1.2、好ましくは約0.6〜1.1のインヘレント粘度(I.V.)を有する。0.6未満のI.V.を有するフィルムは、最終二軸伸張フィルムに折り目がつけた場合に靭性が低下する可能性がある。ここで使用するI.V.の測定は、フェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において行う。ここでの、ポリエステルI.V.の基本的な測定方法は、ASTM法D2857−95に記載されている。
【0026】
ポリエステルの二酸残基は、ジカルボン酸又は二酸の誘導体、例えば低級アルキルエステル、例えばテレフタル酸ジメチル、酸ハロゲン化物、例えば二酸塩化物若しくは場合によっては無水物に由来することができる。
【0027】
ポリエステルフィルム組成物は、キャスティングロール上への押出時のメルトの結晶化を防ぐために、約0.5モル%又はそれ以上の、他のジカルボン酸又は他のグリコールの残基を含む必要がある。しかし、このような材料の改質量は、ポリマーの高融点を保持するためには、約5モル%以下でなければならない。好ましくはポリエステルフィルム組成物は約0.7〜約3モル%の改質用ジカルボン酸又はジオール残基を含む。
【0028】
有用な改質用モノマーとしては、炭素数約4〜約14の他のジカルボン酸及び炭素数約2〜約12の他のグリコールが挙げられる。好ましい改質用酸としては、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。いくつかの好ましい改質用グリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールが挙げられる。
【0029】
本発明において使用するポリエステルの合成に用いることができる触媒材料の例は、チタン、マンガン、亜鉛、コバルト、アンチモン、ガリウム、リチウム、カルシウム、珪素及びゲルマニウムを含む。このような触媒系は、米国特許第3,907,754号、第3,962,189号、第4,010,145号、第4,356,299号、第5,017,680号、第5,668,243号及び第5,681,918号に記載されており、これらを参照することによってその全体を本明細書中に組み入れる。好ましい触媒金属としてはチタン及びマンガンが挙げられ、最も好ましいのはチタンである。触媒金属の使用量は約5〜100ppmの範囲であることができるが、良好な色、熱安定性及び電気的性質を有するポリエステルを得るためにはチタン約5〜約35ppmの触媒濃度の使用が好ましい。リン化合物も触媒金属と組合せて使用され、ポリエステルの製造に標準的に使用される任意のリン化合物を使用できる。典型的には、約100ppm以下の燐を使用できる。
【0030】
必要ではないが、ポリエステル中に典型的に存在する他の添加剤は、それらがフィルムの製造に使用するポリエステルの性能を妨げないならば、必要に応じて使用することができる。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線安定剤及び熱安定剤、金属不活性化剤、着色剤、顔料、ピニング剤(pinning agent)、耐衝撃性改良剤、成核剤、分岐剤、難燃剤などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0031】
本発明に関連して形成されるポリエステルの生成に有用な分岐剤は、ポリエステルの酸単位部分又はグリコール単位部分に分岐を生じるものであることもできるし、或いは混成物であることもできる。これらの分岐剤のいくつかは本明細書中に既に記載した。しかし、このような分岐剤の実例は、多官能性酸、多官能性無水物、多官能性グリコール及び酸/グリコール混成物である。例としては、トリ又はテトラカルボン酸及びそれらの対応する無水物、例えばトリメシン酸、ポリメリット酸及びそれらの低級アルキルエステルなど並びにテトロール、例えばペンタエリスリトールが挙げられる。また、トリオール、例えばトリメチロールプロパン又はジヒドロキシカルボン酸並びにヒドロキシジカルボン酸及び誘導体、例えばジメチルヒドロキシテレフタレートなども本発明の関連において有用である。
【0032】
フィルム又はシート材料の製造方法の第1工程においては、前記ポリエステルのメルトを、当業界で知られた任意の温度、例えば、典型的には、約290〜325℃の温度において本質的に非晶質のフィルムに押出する。非伸張(又は非延伸)フィルムの厚さは標準的には約450〜1800ミクロン(18〜70mil)、より典型的には約450〜1400ミクロン(18〜55mil)の範囲である。
【0033】
初期のフィルム押出は、一軸スクリュー押出機上での押出又は二軸スクリュー押出機上での押出を含む(これらに限定するものではない)任意の常法で実施できる。メルトはダイを通って押出機から出ると直ちに、メルトを冷却及び固化する回転ドラム上にキャストされる。ポリマーの結晶化速度が速すぎると、メルトはドラム上で、結晶化を防ぐのに充分に速い速度で冷却することができない。結晶性フィルムは、フィルム製造プロセスの次の工程において容易には伸張することができない。しかし、フィルムの縁(外側の約1/2インチ)のみが結晶化する場合にはそれは問題とはならないこと;これらの縁は伸張前に除去できることに注目されたい。
【0034】
ドラムと接触するメルトの冷却を改善するために、ドラム内部の高冷却水による内部からのドラムの冷却、静電気による(即ちピニングワイヤーを用いる)若しくはエアナイフを用いるキャスティングロールへのメルトの迅速な固定又は研磨(polishing)(2つのロール(いずれも冷却されている)の間にメルトを通すこと)を含むいくつかの方法に従うことができる。しかし、これらの方法の全てを用いても、純粋なPCTは、450ミクロン(18mil)超の厚さでキャストする場合には依然として結晶化するであろう。
【0035】
意外なことに、少量のコモノマーをPCTに添加することによって、この結晶化を防ぎ且つ450ミクロン超の厚さのフィルムをキャストできることがわかった。70〜150ミクロンの目的最終厚さまでPCTを伸張するためには、このようなキャスト厚さが望ましい。
【0036】
キャスト後、本質的に非晶質のポリエステルフィルムを、90〜130℃の温度において、約2.5×2.5〜3.5×3.5(好ましくは2.5×2.5〜3×3)の比で伸張することができ、伸張フィルムは、その寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリマーの融点である)の実際フィルム温度において、1〜120秒間、好ましくは1〜60秒間ヒートセットすることができる。
【0037】
好ましい実施態様において、フィルムは、90〜110℃の温度において、マシン方向(MD)に2.5〜3倍及びその横断方向(TD)に約2.5〜3倍の比で伸張する。3倍を超える比で伸張すると、フィルムの脆化が起きる可能性がある。伸張後、フィルムは、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリマーの融点である)の実際フィルム温度において、約5秒超の間、ヒートセットすることができる。オーブンの熱源(例えば対流、放射など)に応じて、フィルムを260℃まで加熱するのに時間を有する可能性があることを留意されたい。この時間は30秒以下であることができる。この追加時間は、ここに記載したヒートセット時間には含めない。ヒートセット時間は、サンプルが260℃〜Tmにおいて実際に費やす時間のみを指す。
【0038】
初期フィルム押出は、伸張の直前に(即ちインラインで)、又は連続しない時間において、実施できる。ヒートセットの間において、伸張フィルムは、幅出機又はヒートセット時の伸張フィルムの過度な弛緩を防ぐ他の機械装置によって、伸張された寸法に保持する。ヒートセットの間において、フィルムは10%以下だけ伸張又は弛緩できる、即ちフィルムの全体寸法は10%以下の増加又は減少が可能である。
【0039】
本発明の任意のフィルムの伸張又は延伸には任意の常法を使用できる。例えば、押出ポリエステルフィルムは、ロール伸張、長ギャップ伸張、テンター伸張、チューブラー伸張又はそれらの組合せによって伸張できる。これらの方法のいずれかを用いて、逐次二軸伸張、同時二軸伸張、一軸伸張又はそれらの組合せを行うことが可能である。同時二軸伸張は、フィルムのマシン方向及び横断方向を同時に伸張することを含む。同時二軸伸張においては、横断方向の伸張比はマシン方向の伸張比と同じである必要はない。逐次二軸伸張は、最初にマシン方向において、例えばロール−ロール伸張において伸張を行い、次いで続いて横断方向において、例えば幅出機を用いて伸張を行うことを含む。逐次伸張法において、2つの伸張は、一方を他方の直後に(インラインで)実施することもできるし、又は連続しない時間において、実施することもできる。マシン方向はフィルム圧延時のフィルムの長さ方向と定義する。横断方向は、フィルムの幅方向、即ちマシン方向に直角な方向と定義する。逐次二軸伸張を実施する場合には、横断方向の伸張比及び伸張温度はマシン方向と同じである必要はない。
【0040】
伸張又は延伸されたフィルムは既知の方法に従ってヒートセットすることができる。ヒートセットは連続法で、例えば1本の伸張フィルムをオーブンに連続的に通して行うこともできるし、又は回分法として、例えばフィルムをヒートセット用フレーム中に入れ且つ一定の時間、ヒートセット用オーブン中に個別に入れることによって行うこともできる。ヒートセットは伸張の直後に(即ちインラインで)行うこともできるし、或いは連続しない時間において実施することもできる。フィルムはヒートセットの間に10%以下だけ弛緩又は膨張させることができる。
【0041】
伸張及びヒートセット工程の数は変えることができる。ポリエステルフィルムは、単一の伸張パス若しくは処理と単一のヒートセットパス若しくは処理、単一の伸張パスと複数のヒートセットパス、複数の伸張パスと単一のヒートセットパス、又は複数の伸張パスと複数のヒートセットパスに供することができる。複数の伸張パス及び/又はヒートセットパスを実施する場合には、伸張パス及びヒートセットパスは時間的に交互に行うことが可能であるが、伸張パスを介在させずに、1つのヒートパスが前のヒートパスの後に続くことも可能である。各パスの条件は前のパスと同じである必要はない。例えば、ポリエステルフィルムは、最初のヒートセットを伸張温度より高い任意の実際フィルム温度において実施する2段ヒートセットプロセスによってヒートセットすることができる。続いて、フィルムを、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリマーの融点である)の範囲の実際フィルム温度でもう1回ヒートセットする。
【0042】
一実施態様において、本発明のポリエステルフィルムは、最終厚さ値、即ち伸張及びヒートセット後の厚さ値が、約70〜150ミクロン(約3〜5mil)である。
【0043】
別の実施態様において、二軸延伸ポリエステルエステルフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%以下である。本明細書中で使用する用語「二軸延伸」は、ポリエステルフィルムが伸張及びヒートセットの両方を受けたことを意味する。
【0044】
好ましくは、二軸延伸ポリエステルフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合に、ふくれも皺も生じない。好ましくは二軸延伸ポリエステルフィルムはまた、PETから製造された同様なフィルムと比較して向上した加水分解抵抗を示し、且つPET及びポリイミドから製造されたフィルムと比較して向上した誘電率を示す。
【0045】
本発明のポリエステフィルムは、高温において、しかし好ましくは260℃又はそれ以上において、寸法安定性を必要とするフィルムを含む任意の用途に有用であることができる。特定最終用途としてはとりわけ、フレキシブル回路基板、フレキシブルタッチスクリーンディスプレイ、液晶ディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、光起電力装置(即ち、太陽電池)、OLED(有機発光ダイオード)、マイクロ流体デバイス(使い捨て医学的検査キット)のフィルム用非導電層が挙げられる。
【0046】
本発明の新規積層構造体は、本発明によって提供される任意のフィルムの又はポリエステルを使用でき、熱硬化性若しくは紫外線硬化性又は硬化接着剤層及び二軸延伸ポリエステル層を順に含むことができる。銅層、熱硬化性若しくは紫外線硬化性又は硬化接着剤層及び二軸延伸ポリエステル層を順に含む銅/ポリエステル積層体もまた、本発明によって提供される。銅層は、典型的には約17〜140ミクロン、好ましくは約30〜70ミクロンの厚さを有する金属銅箔を含む。銅箔は、鍛造された又は圧延された又は電着された銅箔であることができる。熱硬化性接着剤層は、種々の既知の接着剤組成物、例えばアクリル樹脂、難燃性(FR)アクリル樹脂、ブチラールフェノール樹脂、アクリルエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシポリエステル樹脂、改質エポキシ樹脂などから選ばれることができる。これらの接着剤は典型的には、熱を適用して又は熱に暴露して、接着剤を約700〜3500キロパスカル(100〜500ポンド/平方インチ)の圧力下で約30分〜1時間の間、約120〜180℃に加熱することによって硬化させる。硬化接着剤層の厚さは典型的には約15〜100ミクロンの範囲である。
【0047】
積層構造に熱及び圧力を適用することを含む、これらの積層構造を含む熱可塑性樹脂製品の製造方法も本発明によって提供される。本発明の積層構造体は、当業界で知られた又は本明細書中に記載した任意の用途で使用できるが、好ましくはフレキシブル電子回路基板に使用される。図1を参照すると、本発明の積層体は、単層電子回路10に使用できる。電子回路10は、ポリエステルカバー20、当業者に知られた型及び厚さを有する接着剤層25、並びにポリエステル基体30に挟まれた銅パッド15を含む。銅パッド15は、電子装置のピンを受けるために、ポリエステルカバー20中の開口部を規定するアクセスホール35を経てアクセス可能である。図2を参照すると、2層電子回路50が示されている。2層電子回路50は、上部ポリエステルカバー60及び下部ポリエステルカバー65の間に挟まれた2つの銅パッド55を含む。カバー60及び65には接着剤層70が隣接しており、ポリエステル支持体75が接着剤層70を分離している。銅パッド50はまた、電子装置のピンを受けるために、ポリエステルカバー60中の開口部を規定するアクセスホール85を経てアクセス可能な銅メッキ・スルーホール80を含む。図3を参照すると、多層電子回路100が示されている。多層電子回路100は、上部ポリエステルカバー105及び下部ポリエステルカバー110を含む。カバー105と110の間には、複数の銅パッド115及び接着剤層120があり、各接着剤層120及び銅パッド115は、ポリエステル支持体125によって隣接層から隔てられている。多層電子回路100はまた、電子装置のピンを受けるために、ポリエステルカバー110中の開口部を規定するアクセスホール135を経てアクセス可能な銅メッキ・スルーホール130を含む。
【0048】
図示されるように、熱可塑性樹脂製品は、また、複数の前記の積層体又は「サンドウィッチ」に熱及び圧力を適用することによって得ることもできる。多層積層体の実施態様及び/又は「サンドウィッチ」構造において、前述のような接着剤層をまた、積層体の間に適用することもできる。
【0049】
図1〜3において、本発明のポリエステルフィルムは、それがポリエステル基体、ポリエステルカバー又は別の表現で称されるか否かにかかわらず、フレキシブル電子回路の外層及び/又は内層として使用できる。本発明は、図面中に図示したような「基体」又は「カバー」によって限定するものではない。
【0050】
本明細書中で使用する単数形の表現は1又はそれ以上を意味する。
【0051】
特に断らない限り、本明細書及び「特許請求の範囲」中に記載した成分の量、分子量のような性質、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において用語「約」で修飾されるものと理解すべきである。従って、そうでないことが示されない限り、以下の説明及び添付した「特許請求の範囲」中に記載した数値パラメーターは、本発明が得ようとする目的の性質によって異なる可能性のある近似値である。最低限でも、各数値パラメーターは少なくとも、報告した有効数字の数を考慮して、普通の丸めを適用することによって解釈しなければならない。更に、本明細書の開示及び「特許請求の範囲」において記載した範囲は、端点だけでなく、全範囲を具体的に含むものとする。例えば、0〜10と記載する範囲は、0と10との間の全ての整数、例えば、1、2、3、4など、0と10との間の全ての分数、例えば、1.5、2.3、4.57、6.1113など、並びに端点0及び10を開示するものとする。
【0052】
本発明を説明する数値範囲及びパラメーターが近似値であるとしても、具体例に記載した数値は、可能な限り正確に報告してある。しかし、数値はいずれも、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差によって必然的に生じる若干の誤差を本質的に含む。
【実施例】
【0053】
本発明に係るポリエステルフィルム及びその製造を、以下の例によって更に説明する。
【0054】
耐はんだ性は、IPC−TM−650 2.4.13.1に従って、260℃に設定されたはんだ浴温度を用いて測定した。
【0055】
以下の例中で試験する試験片は、積層体にせず、エッチングせず且つ被覆加工を施さなかった。即ち被覆も積層もしなかった。
【0056】
フィルムの収縮率は、MD(マシン方向)において2カ所及びTD(横断方向)において2カ所で5.1cm×5.1cm(2×2インチ)のフィルムサンプルの寸法を測定することによって算出した。次いで、フィルムサンプルを、本明細書中に記載したようにして、260℃に予熱したはんだ浴中に10秒間浸漬した。フィルムを、ふくれ及び皺について観察した。次いで、寸法を再び測定した。浸漬後の各寸法を元の寸法から減じ、次いで元の寸法で除して、%収縮率を得た。4つの%収縮率値(MDについて2つ及びTDについて2つ)を合わせて平均して、全%収縮率を得た。
【0057】
ヘイズは、ASTM D1003に従って測定した。
【0058】
例セット1
比較例C−1及びC−2並びに実施例1は、PCTから、並びに酸成分として95モル%のテレフタル酸及び5モル%のイソフタル酸を含み且つグリコール成分として100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含む種々の量のコポリエステルとペレット−ブレンドされたPCT(以下、PCTIと称する)から非晶質フィルムを押出及びキャストする能力に対する組成の影響を示す。
【0059】
それぞれのペレットは、100ppmのTi触媒(チタンイソブトキシドとして)を用いて溶融相重縮合プロセスにおいて製造した。ペレットは150℃において4時間乾燥させ、続いてバレル直径が64mm(2.5インチ)でL/Dが24:1の押出機上で厚さ430、550及び750ミクロンのシート材料に押出した。溶融温度及びダイ温度は315℃に保持した。シートは、幅21インチのダイを通して、15℃(60°F)に設定されたロール温度を有するキャスティングドラム上にキャストした。冷却を加速するために、ピニングワイヤーを用いてメルトとキャスティングドラムとの密着を助けた。
【0060】
以下の表Iは、このセットの各例におけるPCTIの量、フィルムの酸組成及び生成された各フィルムの目視検査による透明度を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表Iからわかるように、比較例C−1及びC−2は、550及び750ミクロンのキャストフィルム厚では透明な非晶質フィルムを生成しなかった。更に、これらのフィルムは、商業的な逐次伸張装置のロール−ロール伸張ユニットにそれらを通そうとすると、エッジビーズがトリミングされたとしても、破損した。
【0063】
実施例1は、本発明に係るフィルムの一例である、実施例1におけるフィルムは中央が透明であるが、外側の4分の1インチが3つの全ての厚さにおいて結晶性であった。縁は容易にトリミングされるので、縁の結晶化度は問題とならなかった。
【0064】
次いで、実施例1の厚さ430、550及び750ミクロンのキャストフィルムを、最初に温度95℃においてロールスタック上でマシン方向に伸張比2.6倍で伸張し、続いて温度95℃において幅出機中のクリップ間において横断方向に伸張比2.6倍で伸張することよって、それぞれ厚さ65、80及び110ミクロンのフィルムに伸張及び幅出した。フィルムは直ちに、270℃に設定されたアニールゾーン中に移し、ヒートセット処理を行った。フィルムを次に、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬し、得られた%収縮率を測定すると、3%未満であった。目に見えるふくれは観察されなかった。
【0065】
例セット2
比較例C−3及び実施例2〜8は、PCTから、並びに酸成分として95モル%のテレフタル酸及び5モル%のイソフタル酸を含み且つグリコール成分として100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含む種々の量のコポリエステルとペレット−ブレンドされたPCT(以下、PCTIと称する)から非晶質フィルムを押出及びキャストする能力に対する組成の影響を更に示す。
【0066】
それぞれのペレットは、100ppmのTi触媒(チタンイソブトキシドとして)を用いて溶融相重縮合プロセスにおいて製造した。ペレットは150℃において4時間乾燥させ、続いてバレル直径が52mm(2.0インチ)でL/Dが30:1の押出機上で厚さ900ミクロンのシート材料に押出した。溶融温度及びダイ温度は310℃に保持した。各シートは、幅21インチのダイを通して、55℃(130°F)に設定されたロール温度を有するキャスティングドラム上にキャストした。冷却を加速するために、エアナイフを用いてメルトとキャスティングドラムとの密着を助けた。各シートのヘイズを測定した。これを表IIに示す。
【0067】
【表2】

【0068】
比較例C−3のフィルム(純粋なPCT)は、白色であることが観察された。
【0069】
実施例2〜8の結果は、PCTIの量を増加させると、フィルムのヘイズが低下することを示している。典型的には、ヘイズの許容され得る範囲は15%又はそれ以下である。
【0070】
例セット3
実施例9〜14は、酸成分として95モル%のテレフタル酸及び5モル%のイソフタル酸を含み且つグリコール成分として100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含む30重量%のコポリエステルとペレット−ブレンドされたPCT(以下、PCTIと称する)から非晶質フィルムを押出及びキャストする能力に対する組成の影響を更に示す。
【0071】
それぞれのペレットは、100ppmのTi触媒(チタンイソブトキシドとして)を用いて溶融相重縮合プロセスにおいて製造した。ペレットは150℃において4時間乾燥させ、続いてバレル直径が40mm(1.5インチ)でL/Dが30:1の押出機上で種々の厚さのシート材料に押出した。溶融温度及びダイ温度は315℃に保持した。各シートは、幅12インチのダイを通して、60℃(140°F)に設定されたロール温度を有するキャスティングドラム上にキャストした。各シートのヘイズを測定した。これを表IIIに示す。
【0072】
【表3】

【0073】
例セット4
実施例15〜44及び比較例C−4〜C−29は、酸成分として95モル%のテレフタル酸及び5モル%のイソフタル酸を含み且つグリコール成分として100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含むコポリエステル(以下、PCTIと称する)、又はPCT 85重量%とPCTI 15重量%とのブレンド(以下、ブレンドと称する)から製造されたフィルムの収縮率に対するヒートセット温度の影響を示す。
【0074】
それぞれのペレットは、100ppmのTi触媒(チタンイソブトキシドとして)を用いて溶融相重縮合プロセスにおいて製造した。ペレットは120℃において16時間乾燥させ、続いてポリエステルバリヤー型スクリューを装着した、バレル直径が64mm(2.5インチ)のDavis Standard押出機上で厚さ450ミクロン(18mil)のシート材料に押出した。溶融温度及びダイ温度は300℃に保持した。各シートを、最上部から最下部までそれぞれ49℃/57℃/66℃(120°F/135°F/150°F)に設定されたロール温度を有する3ロールダウンスタック上にキャストした。
【0075】
シートを次に、市販の逐次伸張及び幅出装置上で伸張及び幅出した。マシン方向(MD)を、表IVに示した比及び温度でロールスタック上で伸張し、続いて、横断方向(TD)を、表IVに示した条件において幅出機中のクリップ間で伸張した。伸張フィルムを直ちにアニールゾーンに移し、第1ヒートセット(HS)処理又はパスを行った。このアニールゾーンは、表IVに示したヒートセットゾーン設定温度及び時間に設定した。
【0076】
アニールゾーン中の実際フィルム温度は、各フィルム上に温度表示テープを置くことによって得た。このテープは一連の既知温度において色を変化させて、フィルムが経験した最高温度を示す。
【0077】
実施例15〜30及び40並びに比較例C−4〜C−11及びC−14〜C−21において、フィルムをアルミニウムフレーム中に固定し、次いで表IVに示されたヒートセットゾーン設定温度及び時間においてボックスオーブン中に挿入することによって、第2のヒートセット処理を行った。これらの例に関して、2枚のフィルムをフレーム中に入れ、熱電対を2枚のフィルムの間に挟んで、実際フィルム温度を測定した。
【0078】
実施例31〜39及び41〜44並びに比較例C−12、C−13及びC−22〜C−29において、表IVに示したヒートセットゾーン設定温度及び時間においてフィルムを幅出機のアニールゾーンに通すことによって、第2のヒートセット処理を実施した。記載した実際フィルム温度は、第1ヒートセットと第2ヒートセットとの組合せの間に達した最高温度であった。設定温度は実際フィルム温度よりも高いこと及び記載したヒートセット時間は、サンプルを実際フィルム温度まで加熱するのに必要な時間を含むことを留意されたい。フィルムの昇温には時間を要するため、示した実際フィルム温度は温度と時間の両方と相関関係にある。次いで、ヒートセットフィルムを、260℃に予熱したはんだ浴中に10秒間浸漬した。得られた%収縮率を表IVに示す。
【0079】
表IVにおいて、「MD比」はマシン方向の伸張に関係し、「TD比」は横断方向における伸張に関係する。温度は℃で示す。時間は秒で示す。「n/a」は、第2ヒートセット処理を実施しなかったことを意味する。%収縮率は、フィルムのサンプルが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬後に収縮した百分率を指す。
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
表IVからわかるように、比較例C−4〜C−8及びC−12は、260℃未満の実際フィルム温度が、15重量%のPCTIを含むPCT(ブレンド)のフィルムに関して、260℃において過度に高い収縮率を生じたことを示している。
【0083】
比較例C−9〜C−11及びC−13は、280℃超の実際フィルム温度が、15重量%のPCTIを含むPCT(ブレンド)のフィルムを溶融させたことを示している。
【0084】
実施例15〜39に示した条件においてヒートセットした、15重量%のPCTIを含むPCT(ブレンド)のフィルムは、許容され得る収縮率を有する。
【0085】
比較例C−14〜C−20、C−22〜C−24及びC−26〜C−28は、270℃未満の実際フィルム温度が、純粋なPCTIのフィルムに関して260℃において過度に高い収縮率を生じたことを示している。
【0086】
比較例C−21、C−25及びC−29は、275℃超の実際フィルム温度が純粋なPCTのフィルムを溶融させたことを示している。
【0087】
実施例40〜44に示した条件においてヒートセットした純粋なPCTIのフィルムは、許容され得る収縮率を有する。
【0088】
セット4の例は、フィルム組成物中のコモノマーの量を増加させると、この場合にはイソフタル酸を0.75モル%から5モル%まで増加させると、フィルムの許容され得る温度加工ウィンドウが縮小されることを示している。PCTと15重量%のPCTIとのブレンドは、260℃未満において過度の収縮率を有することも280℃超で溶融することもなく、260〜280℃においてヒートセットさせることができる。これに対して、純粋なPCTI(イソフタル酸5モル%)は270〜275℃の間においてのみ加工できる。5モル%超へのコモノマー含量の増加は、いずれも、ヒートセット加工ウィンドウを効果的に閉じるであろう。
【0089】
本発明を、実例となる好ましい実施態様に関して特に詳述した。しかし、本発明の精神及び範囲内で変動及び変更が可能なことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明において有用な単層フレキシブル電子回路の図である。
【図2】本発明において有用な二層フレキシブル電子回路の図である。
【図3】本発明において有用な多層フレキシブル電子回路の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、70〜150ミクロンの厚さを有する二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
厚さ約450〜1800ミクロンの本質的に非晶質のキャストフィルムを、温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして前記伸張フィルムを、その寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって製造された、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記キャストフィルムが450〜1400ミクロンの厚さを有する請求項2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記キャストフィルムが2.5×2.5〜3×3の比で伸張された請求項3に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合に、3%以下の収縮率を示す請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が約60〜約100モル%の範囲のトランス異性体含量を有する請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が約60〜約80モル%の範囲のトランス異性体含量を有する請求項6に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記二酸残基が約99.5〜約95モル%のテレフタル酸残基及び約0.5〜約5モル%のイソフタル酸残基を含む請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項9】
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された厚さ70〜150ミクロンの二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルフィルムが、厚さ約450〜1800ミクロンの本質的に非晶質のキャストフィルムを温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして前記伸張フィルムを、その寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって製造され、
前記ポリエステルフィルムが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%以下である二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記キャストフィルムが450〜1400ミクロンの厚さを有する請求項9に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記キャストフィルムが2.5×2.5〜3×3の比で伸張された請求項10に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記伸張フィルムが、その寸法を保持しながら、1〜120秒間ヒートセットされた請求項9に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項13】
前記キャストフィルムを、マシン方向及びその横断方向に、逐次伸張させることによって製造された請求項12に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項14】
前記キャストフィルムを、マシン方向及びその横断方向に、同時に伸張させることによって製造された請求項12に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項15】
積層体の少なくとも1つが
I.熱硬化性接着剤;並びに
II.(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、厚さ70〜150ミクロンの二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む1つ又はそれ以上の積層体を含んでなる熱可塑性樹脂製品。
【請求項16】
前記ポリエステルフィルムが、厚さ約450〜1800ミクロンの本質的に非晶質のキャストフィルムを、温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして前記伸張フィルムを、その寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって、製造される請求項15に記載の熱可塑性樹脂製品。
【請求項17】
前記キャストフィルムが450〜1400ミクロンの厚さを有する請求項16に記載の熱可塑性樹脂製品。
【請求項18】
前記キャストフィルムが2.5×2.5〜3×3の比で伸張された請求項17に記載の熱可塑性樹脂製品。
【請求項19】
少なくとも1つの積層体が
I.銅層;
II.前記熱硬化性接着剤;及び
III.前記二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む請求項15に記載に熱可塑性樹脂製品。
【請求項20】
前記銅層が17〜140ミクロンの厚さを有し且つ前記ポリエステルが、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定された融点が少なくとも270℃及びASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たりポリマー0.50gを用いて25℃において測定されたインヘレント粘度が0.4〜1.2である請求項19に記載の熱可塑性樹脂製品。
【請求項21】
積層体を、約120〜180℃の温度において加圧下で熱硬化性接着剤を硬化させるのに充分な時間、加熱することを含んでなり、少なくとの1つの積層体が、
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;並びに
III.(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、厚さ70〜150ミクロンの二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む1つ又はそれ以上の積層体を含む熱可塑性樹脂製品の製造方法。
【請求項22】
前記ポリエステルフィルムが、厚さ約450〜1800ミクロンの本質的に非晶質のキャストフィルムを、温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして、その伸張フィルムを寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって製造される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記キャストフィルムが450〜1400ミクロンの厚さを有する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記キャストフィルムを2.5×2.5〜3×3の比で伸張する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、厚さ70〜150ミクロンの少なくとも1つの二軸延伸ポリエステルフィルムを含んでなるフレキシブル電子回路基板。
【請求項26】
前記ポリエステルフィルムが、厚さ約450〜1800ミクロンの本質的に非晶質のキャストフィルムを、温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして前記伸張フィルムを寸法を保持しながら260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって製造される請求項25に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項27】
前記キャストフィルムが450〜1400ミクロンの厚さを有する請求項26に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項28】
前記キャストフィルムが2.5×2.5〜3×3の比で伸張されたものである請求項27に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項29】
260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合に3%以下の収縮率を示す請求項25に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項30】
少なくとも1つの積層体が
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;及び
III.前記二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含んでなる、1つ又はそれ以上の積層体を含む請求項25に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項31】
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%以下である二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項32】
前記ポリエステルが、ASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たりポリマー0.50gを用いて25℃において測定した場合に、0.5〜1.1のインヘレント粘度を有する請求項31に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項33】
(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルフィルムが、厚さ約450〜1800ミクロンの本質的に非晶質のキャストフィルムを、温度を90〜130℃に保持しながら、約2.5×2.5〜3.5×3.5の比で伸張し、そして前記伸張フィルムを、寸法を保持しながら、260℃〜Tm(ここでTmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるポリエステルの融点である)の実際フィルム温度においてヒートセットすることによって製造され、
前記ポリエステルフィルムの、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮率が3%以下である
二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項34】
前記キャストフィルムが450〜1400ミクロンの厚さを有する請求項33に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項35】
前記キャストフィルムが2.5×2.5〜3×3の比で伸張された請求項34に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項36】
前記伸張フィルムが寸法を保持しながら1〜120秒間ヒートセットされた請求項33に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項37】
前記キャストフィルムを、マシン方向及びその横断方向に、逐次伸張させることによって製造された請求項36に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項38】
前記キャストフィルムを、マシン方向及びその横断方向に、同時に伸張させることによって製造された請求項36に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項39】
積層体の少なくとも1つが
I.熱硬化性接着剤;並びに
II.(a)約95〜約100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
(b)約95〜約100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基;及び
(c)約0.5〜約5モル%の別のジカルボン酸又はジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造された、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合に3%以下の収縮率を示す二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む1つ又はそれ以上の積層体を含んでなる熱可塑性樹脂製品。
【請求項40】
少なくとも1つの積層体が
I.銅層;
II.前記熱硬化性接着剤;及び
III.前記二軸延伸ポリエステルフィルム
を順に含む請求項39に記載に熱可塑性樹脂製品。
【請求項41】
請求項39に記載の熱可塑性樹脂製品を含むフレキシブル電子回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−524396(P2008−524396A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546914(P2007−546914)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/045501
【国際公開番号】WO2006/066040
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】