説明

二軸延伸ポリエテルフィルム

【課題】 表面へのオリゴマーの析出量が少なく、フィルムの光沢度を高く保ちながら光散乱性を有し、かつ当該フィルムの表面を加工する時の接着性に優れた共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも3層のポリエステル層からなり、少なくとも片面に塗布層を有するフィルムであり、表層を形成するポリエステルのオリゴマー含有量が0.7重量%以下であり、中間層を形成するポリエステル中に平均粒径が2.0μm以上の粒子を含有し、フィルムヘーズが15%以上であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムの表面を接着剤層や紫外線硬化樹脂層などを設けて使用される艶消し性を必要とするガラスや成形体貼り合わせ用途、ラベル用途や蒸着包装用途、また液晶ディスプレイの構成部品、例えばバックライトユニットの拡散板やプリズムシート、またプロジェクター用のスクリーンのレンズシートなどの基材フィルムとして使用されるフィルムであって、光散乱性を与えることができる二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光散乱性を与える物質を中間層含有させた二軸延伸ポリエステルフィルムは、過去にも提案されている。特許文献1または特許文献2によれば、平均粒子径が数μmの無機粒子または有機粒子を数%含有させたポリエステルフィルムが提案されている。しかしながらこれらのフィルムは中間層が融点の低いポリエステルレジンから構成されているためにフィルムの機械強度や耐熱性が劣る問題がある。
【0003】
一方、フィルム表面に接着剤層、紫外線線硬化樹脂層など有機溶剤を含有する塗布層を設けて使用される用途や表面に蒸着加工を行う場合などポリエステルフィルム表面でのオリゴマーの析出が問題になることがある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−272508号公報
【特許文献2】特開2004−174788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、表面へのオリゴマーの析出量が少なく、フィルムの光沢度を高く保ちながら光散乱性を有し、かつ当該フィルムの表面を加工する時の接着性に優れた共押出し積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有する二軸延伸ポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも3層のポリエステル層からなり、少なくとも片面に塗布層を有するフィルムであり、表層を形成するポリエステルのオリゴマー含有量が0.7重量%以下であり、中間層を形成するポリエステル中に平均粒径が2.0μm以上の粒子を含有し、フィルムヘーズが15%以上であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとは、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等のような芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール等のようなグリコールとのエステルを主たる成分とするポリエステルである。当該ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接重合させて得られるほか、芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させる方法、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる等の方法によっても得られる。当該ポリエステルの代表的なものとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。かかるポリエステルは、共重合されないホモポリマーであってもよく、またジカルボン酸成分の40モル%以下が主成分以外のジカルボン酸成分であり、ジオール成分の40モル%以下が主成分以外のジオール成分であるような共重合ポリエステルであってもよく、またそれらの混合物であってもよい。
【0009】
本発明のフィルムは少なくとも三層のポリエステル層からなり中間層に特定粒径の粒子を含有する。中間層に用いるレジンは、フィルム延伸工程後の熱処理温度よりも融点の高いポリエステルを用いることが好ましい。熱処理温度よりも融点の低いポリエステルレジンを用いると熱処理時に延伸配向が消失してしまい、フィルムの光散乱性が低下する傾向がある。
【0010】
本発明のフィルムの中間層を形成するポリエステルに配合する物質は、無機または有機粒子であり、それらの平均粒子径は、2μm以上であることが必要であり、好ましくは2〜40μm、さらに好ましくは2〜30μm、特に好ましくは3〜20μmの範囲である。平均粒子径が2μm未満では、本発明のフィルムの特徴である光散乱性に劣り、一方、平均粒子径が40μmを超える場合は、フィルム製造時のポリエステル押出工程におけるフィルターの圧力上昇が大きくなり、生産性が低下する問題が発生することがある。
【0011】
かかる粒子の含有量は、フィルム全体のポリエステルに対して好ましくは0.02〜2重量%、さらに好ましくは0.04〜1重量%の範囲である。粒子の含有量が0.02重量%未満では、本発明が意図する光散乱性フィルムとならない場合がある。一方、2重量%を超えても光散乱性を大きく改善することはなく、フィルム製造時の破断等のトラブルの原因にもなる。かかる粒子の必要量の範囲がフィルム全体のポリエステルに対する含有量となる理由は、与える光散乱性が粒子の量に依存するためであって、中間層の厚みが総厚みに対して占める割合によって、中間層ポリエステルに対する粒子含有量の必要範囲が異なるためである。
【0012】
なお、本発明で使用する無機または有機粒子は、単成分でもよく、また、2成分以上を同時に用いてもよい。具体的な粒子の例としては、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ガラス等の無機質微粒子やメラミン樹脂、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等の有機粒子が挙げられる。
【0013】
本発明のフィルムの表層を形成するポリエステルのオリゴマー含有量は0.7重量%以下であり、好ましくは0.6重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。オリゴマー含有量が0.7重量%を超えると、塗布工程でフィルムと接触する搬送ロールにオリゴマーが付着堆積したり、また析出オリゴマーにより蒸着欠陥を発生したりする等の問題が発生する。なお、オリゴマー含有量の少ないポリエステル原料は、例えば通常のポリエステルを固相重合する等公知の方法を採用して得ることができる。
【0014】
表層の厚み(L)は、好ましくは中間層に含有する粒子の平均粒子径(R)の0.2〜2.0倍、さらに好ましくは0.3〜1.5倍の範囲である。表層の厚みが用いる有機粒子の平均粒子径の0.2倍未満では、表面粗さが大きくなり光沢度が小さくなる傾向がある。一方、2.0倍を超えると表層の表面粗さに与える影響は小さく、また中間層の厚みが減少し光散乱性が低下することがある。
【0015】
なお表層には、必要に応じて平均粒子径が3μm以下の不活性粒子を含有してもよく、また、本発明のフィルム中には必要に応じて、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、蛍光増白剤等の添加剤を含有してもよい。
【0016】
本発明では、フィルムの上に存在する各種機能層との接着性を向上させるために少なくとも一方の表面に塗布層を設ける。かかる塗布層は、通常、ポリマーおよび架橋剤を主成分として構成される。ポリマーは、水性ポリウレタン、水性ポリエステルおよび水性アクリル樹脂の少なくとも1つからなり、好ましくは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものであり、さらに好ましくはポリウレタンの中でもポリエステルポリウレタンであり、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているものである。また架橋剤は、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が好ましい。
【0017】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0018】
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.02〜0.5μm、好ましくは0.03〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.02μm未満の場合は、接着性が劣る傾向がある。一方、塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなる。
【0019】
さらに易滑性、離型性、帯電防止性を付与する目的のコーティング処理をフィルムの他面に行うこともできる。
【0020】
本発明のフィルムのヘーズは、15%以上であり、好ましくは20%以上である。ヘーズが15%未満では光散乱性の効果が不充分となる。
【0021】
また本発明のフィルムの表面粗さRzは、0.4μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.3μm以下である。Rzが0.4μmを超えるとフィルム自身や蒸着加工後のフィルム表面光沢性が低下する傾向がある。
【0022】
本発明のフィルムの総厚みは、30〜400μmである。30μm未満では、加工作業性が悪いことがある。一方、フィルム総厚みが400μmを超えると重量増加や取り扱い性の悪化が起こるおそれがある。
【0023】
次に本発明のフィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、以下の例示に特に限定されるものではない。
【0024】
本発明のフィルムを製造するときには、ポリエステルを少なくとも2台の押出機に供給し、各ポリエステルの融点以上の温度に加熱してそれぞれ溶融させる。次いで、各押出機からの溶融ポリマーをギヤポンプとフィルターを介してフィードブロックで合流させ、ダイを通してキャスティングドラムに引き取りポンプとフィルターを介してTダイから溶融シートとして押出す。続いて、溶融シートを回転冷却ドラム上でガラス転位温度未満にまで急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得る。このとき、未延伸フィルムの平面性を向上させるために、静電印加密着法や液体塗布密着法等によって、未延伸フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を向上させてもよい。そして、ロール延伸機を用いて、未延伸フィルムをその長手方向に延伸(縦延伸)することにより一軸延伸フィルムを得る。このときの延伸温度は、原料レジンのガラス転移温度(Tg)のマイナス10℃からプラス40℃の温度範囲で延伸する。また、延伸倍率は、好ましくは1.5〜6.0倍、さらに好ましくは2.0〜5.0倍である。さらに、縦延伸を一段階のみで行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。次いで、易接着層を設けるためコーターにより水性塗布剤を塗布する。その後、テンターに導きテンター延伸機を用いて、一軸延伸フィルムをその幅方向に延伸(横延伸)することにより二軸延伸フィルムを得る。このときの延伸温度は、原料レジンのガラス転移温度(Tg)からプラス50℃の温度範囲で延伸する。また、延伸倍率は、好ましくは2.5〜6.0倍、さらに好ましくは3.0〜5.0倍である。さらに、横延伸を一段階のみで行ってもよいし、二段以上に分けて行ってもよい。また縦と横を同時に行う同時二軸延伸を行ってもよい。そして二軸延伸フィルムを熱処理することにより積層フィルムが製造される。このときの熱処理温度は、130〜250℃である。二軸延伸フィルムを熱処理するときには、二軸延伸フィルムに対して20%以内の弛緩を行ってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、表面へのオリゴマーの析出量が少なく、フィルムの光沢度を高く保ちながら光散乱性を有し、かつ当該フィルムの表面を加工する時の接着性に優れた共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および本発明で用いた測定法および用語の定義は次のとおりである。
【0027】
(1)中間層の平均粒子径
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、フィルム切断面がフィルム幅(横)延伸方向と平行になるようにミクロトームで切断し、切断面を走査型電子顕微鏡にて2μm粒子が分布する中間層の厚みを観察する。次に低温灰化プラズマ装置にて、フィルム延伸方向の表面を中間層まで灰化した後、走査型電子顕微鏡にて、粒径2μm以上の粒子の長径と短径を少なくとも100個について求め、相加平均を平均粒子径とする。
【0028】
(2)ヘーズ、全光線透過率
分球式濁度計NDH−300A(日本電色工業株式会社製)を用いてその値を測定する。
【0029】
(3)表面粗さRa
小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用い、JIS−B−0601−1982に準じて測定する。ただし、カットオフ値80μm、測定長2.5mmとする。
【0030】
(4)ポリエステルの融点
ポリエステル原料またはフィルムサンプル試料をティー・エイ・インスツルメント社製MDSC2910を用いて、昇温速度20℃/分で0℃から300℃まで測定を行い、結晶融解における吸熱ピーク温度を融点とした。
【0031】
(5)ポリエステル中のオリゴマー量
表層レジンに用いるレジン原料またはフィルムから得たサンプルをクロロホルム/1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(混合比:3/2)混合溶液に溶解した後、クロロホルム/メタノール(混合比:2/1)で再析出して濾過し、線状ポリエチレンテレフタレートを除いた後、次いで得られた濾液中の溶媒を、エバポレータを用いて蒸発させ、得られた析出物を所定量のDMFに溶解させる。得られたDMFを、液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してポリエステル中に含まれるオリゴマー(環状三量体)量を求め、この値を測定に用いたポリエステル量で割って、ポリエステル中に含まれるオリゴマー(環状三量体)量とする。液体クロマトグラフィーで求めるオリゴマー(環状三量体)量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求める(絶対検量線法)。標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成する。液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとする。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0032】
(6)フィルム表面オリゴマー量
ポリエステルフィルム表面にメチルエチルケトンを塗布し、窒素雰囲気下、120℃の熱風循環オーブンにて1分間乾燥した後、このフィルムを窒素雰囲気下、180℃の熱風循環オーブンにて10分間処理する。熱処理後のポリエステルフィルムの表面をDMFと3分間接触させ、表面に析出したオリゴマーを溶解させる。次いで得られたDMFを必要に応じて希釈等の方法で濃度を調整し、液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とする。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積との比より求める(絶対検量線法)。
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成する。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとする。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0033】
(7)光散乱性
蛍光灯下の机にMSゴシックの書体で大きさが8ポイントの1から9の数字を印刷した紙を置き、試験フィルムを通して30cmの距離から観察して、数字が判別できなくなるフィルムと紙の間の距離を測定する。 光散乱性は以下のように評価する。
【0034】
○:数字が見えなくなる距離が5cm以下、光散乱性が良好
×:数字が見えなくなる距離が5cmを超える、光散乱性不良
【0035】
(8)光硬化性樹脂との接着性
易接着面の表面にアクリル系光硬化樹脂(日本化薬製KAYANOVA FOP−1700)を硬化後の厚さが6μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射して、表面硬化フィルムを得る。アクリル系光硬化層形成直後、当該層に1インチ幅の中に碁盤目が100個になるようクロスカットを入れ、直ちに、同一箇所について3回セロテープ(登録商標)急速剥離テストを実施し、剥離面積により評価する。判定基準は以下のとおりである。
◎:碁盤目剥離個数=0
○:1≦碁盤目剥離個数≦10
△:11≦碁盤目剥離個数≦20
×:21<碁盤目剥離個数
【0036】
(原料の調整)
・ポリエステルa
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルaの極限粘度は0.63、オリゴマー(環状三量体)の含有量は0.83重量%であった。
・ポリエステルb
ポリエステルaを、予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.78、オリゴマー(環状三量体)含有量0.24重量%のポリエステルbを得た。
・ポリエステルc
テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチルとエチレングルコールを用いて、イソフタル酸を25モル%含有する共重合ポリエステルを常法により合成したものである。
・ポリエステルd
ポリエステルaに平均粒径9μmの架橋スチレン-アクリル有機粒子を練り込み10重量%含有させたものである。
・ポリエステルe
ポリエステルaに平均粒径6μmの架橋スチレン-アクリル有機粒子を練り込み10重量%含有させたものである。
・ポリエステルf
ポリエステルaに平均粒径8μmの架橋アクリル有機粒子を練り込み10重量%含有させたものである。
・水性塗布剤A
水性塗布剤は下記(a)、(b)、(c)、(d)の化合物を47/20/30/3の重量比で混合した混合物である。
(a):テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/1.4−ブタンジオール/ジエチレングリコールを各々28/20/2/35/10/5のモル比で反応させたポリエステル水分散体
(b):メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/N−メチロールメタアクリルアミドを各々45/45/5/5のモル比で重合された重合物水分散体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(c):メラミン系架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン)
(d):平均粒径0.06μmの酸化ケイ素の水分散体
【0037】
実施例1:
表層(A層)を形成するポリエステルbをベント付き2軸押出機(サブ)に供給し、中間層(B層)を構成するポリエステルaが90.7重量%とポリエステルdが9.3重量%の混合物を別のベント付き2軸押出機(メイン)に供給して溶融温度280℃で溶融したあと、各押出機からの溶融ポリマーをギヤポンプとフィルターを介してフィードブロックで合流させ、ダイを通してキャスティングドラムに引き取り2種3層の未延伸フィルムを得た。かくして得られた未延伸フィルムを縦延伸ロールに送り込み、まずフィルム温度83℃で3.0倍延伸した後、片面に水性塗布剤Aを塗布し、テンターに導き95℃で横方向に3.6倍延伸して二軸配向フィルムを得た。次いで、得られた二軸配向フィルムを熱固定ゾーンに導き、220℃で熱処理し、下記表1に記載する厚みのポリエステルフィルムを得た。
【0038】
比較例1:
表層(A層)を形成するポリエステルをポリエステルaとしたほか実施例1と同じ方法でフィルムを得た。
【0039】
比較例2:
易接着層を設けなかったほかは実施例1と同じ方法でフィルムを得た。
【0040】
比較例3:
表層(A層)を形成するポリエステルaが86.4重量%とポリエステルeが13.4重量%の混合物をベント付き2軸押出機(サブ)に供給し、中間層(B層)を構成するポリエステルaを別のベント付き2軸押出機(メイン)に供給して溶融温度280℃で溶融したあと、各押出機からの溶融ポリマーをギヤポンプとフィルターを介してフィードブロックで合流させ、ダイを通してキャスティングドラムに引き取り2種3層の未延伸フィルムを得た。その後は実施例1と同じく、片面に水性塗布剤Aを塗布し、テンターに導き延伸し熱固定し表1に記載する厚み構成のフィルムを得た。
【0041】
比較例4:
表層(A層)を形成するポリエステルbをベント付き2軸押出機(サブ)に供給し、中間層(B層)を構成するポリエステルaが36.9重量%とポリエステルcが55.0重量%とポリエステルfが36.9重量%の混合物を別のベント付き2軸押出機(メイン)に供給して溶融温度280℃で溶融したあと、各押出機からの溶融ポリマーをギヤポンプとフィルターを介してフィードブロックで合流させ、ダイを通してキャスティングドラムに引き取り2種3層の未延伸フィルムを得た。その後は実施例1と同じく、片面に水性塗布剤Aを塗布し、テンターに導き延伸し熱固定し表1に記載した厚み構成のフィルムを得た。
以上、得られた結果をまとめて下記表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1においては、表面オリゴマー量が小さく、光沢度が大きい光散乱性に優れた易接着性フィルムである。一方、比較例1は、表層に低オリゴマーポリエステルレジンを用いていないため表面オリゴマー量が大きい。比較例2は易接着塗布層がないため、アクリル系光硬化樹脂と接着性が劣った。比較例3は、表層に光散乱剤を添加しているため光沢度が小さい。比較例4は、中間層を形成するポリエステルレジンの融点が熱処理温度よりも低いため、ヘーズが低く光散乱性に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のフィルムは、例えば、リエステルフィルムの表面を接着剤層や紫外線硬化樹脂層などを設けて使用される艶消し性を必要とするガラスや成形体貼り合わせ用途、ラベル用途や蒸着包装用途、また液晶ディスプレイの構成部品、例えばバックライトユニットの拡散板やプリズムシート、またプロジェクター用のスクリーンのレンズシートなどの基材フィルムとして、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層のポリエステル層からなり、少なくとも片面に塗布層を有するフィルムであり、表層を形成するポリエステルのオリゴマー含有量が0.7重量%以下であり、中間層を形成するポリエステル中に平均粒径が2.0μm以上の粒子を含有し、フィルムヘーズが15%以上であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2008−155576(P2008−155576A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349687(P2006−349687)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】