説明

二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】 液晶パネルで使用されるレンズ層、拡散層やハードコート層、ならびに太陽電池セルの封止材のEVAシートとの接着性に優れた塗布層を有するフィルムであり、当該フィルムの製造工程で発生する再生原料として含むにも関わらず、フィルムの着色や輝度の低下が少なく、上記用途のフィルムとして優れたものであり、CO排出削減、石油資源の効率利用に寄与し、経済的合理性にも適うフィルムを提供する。
【解決手段】 基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格の少なくとも一つを有するポリウレタンと架橋剤とを含有するインラインコーティングによる塗布層を有する、全窒素量が30ppm以下のフィルムであり、基材ポリエステルフィルム中に自己再生原料を5重量%以上含有することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向ポリエステルフィルム並びに二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法に関するものであり、詳しくは、たとえばレンズシート、拡散シートやハードコートフィルム等などの液晶パネルやプラズマディスプレイなどの光学用部材に用いる基材フィルムや、太陽電池裏面保護用フィルムに好適な二軸配向フィルムの製造方法並びに二軸配向フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイによく用いられる部材用のフィルムの一つとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどに代表されるポリエステルフィルムがある。
【0003】
また、これらのポリエステルフィルムは、太陽電池用の裏面保護用フィルムとしてもよく用いられる。
【0004】
これらのポリエステルフィルムは、耐熱性や機械的強度、耐溶剤性など改善するため、多くの場合、二軸延伸および熱固定を施して、配向・結晶化させた二軸配向フィルムが用いられる。しかしながらこれらの二軸配向ポリエステルフィルムは、配向・結晶化することで、フィルム表面も高度に配向・結晶化が進行していて、各種上塗り剤との接着性が低下する結果となる。このため、接着性を改善するためのアンカーコート層(易接着層)を設けることが広く行われている。この易接着層には、フィルムの製膜工程のなかで、フィルムに水性の易接着層を塗布した後、少なくとも一方向に延伸し熱固定を行う、所謂インラインコーティング法を用いたものがよく用いられる。
【0005】
この様な易接着層を有する二軸配向ポリエステルフィルムとして、我々は既に易接着層にポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を用いたものを提案している。(引用文献1)このフィルムは、レンズシートのレンズ層に用いられる無溶剤型のUV硬化型樹脂との接着性に優れるものである。
【0006】
ところで、近年、世界的規模で広がりを見せている液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイを用いたテレビは、既に日本ではブラウン管ディスプレイを用いたテレビの普及率を凌駕しており、その流れは海外の新興国や途上国にも広がりつつある。これに伴い、液晶パネルやプラズマディスプレイパネルの低価格化が進行しており、それに用いる部材に関しても同様の傾向にある。
【0007】
また、太陽電池パネルも同様に世界的規模での実用化が進められているが、更なる普及の鍵になるのは、パネル自体の価格であると言われており、低価格化が進んでいる。
【0008】
一方で昨今では、CO2排出による温暖化等の地球環境に関する関心の高まりや、石油資源の枯渇に対する危惧から、特に合成樹脂分野では、素材をリサイクル利用することが進められている。従って、フラットパネルディスプレイに用いる光学部材用のフィルムや、太陽電池裏面保護用フィルムに関しても、例えばフィルム生産時に発生するスクラップをリサイクル利用することは、CO2排出削減、石油資源の効率利用に寄与すると共に、経済的合理性にも適うものである。
【0009】
易接着層を有するポリエステルフィルムを生産する場合には、例えば、所定幅にスリットする際に副生する製品とはならない部分や、所定長に達する前に破断したフィルムロールなどの製品とはならないスクラップが必ず発生する。これらのスクラップを原料として再利用することができれば、前述のように、製造コストを下げると共に、CO2排出削減、石油資源の効率利用に寄与する処となる。
【0010】
しかしながら、多くの場合、易接着層を有するポリエステルフィルムのスクラップをリサイクル使用すると、易接着層の影響によって、フィルムに黄味が発生するなどの着色が問題となる。特に、広範囲な用途で接着性に優れるウレタン樹脂を用いた易接着層を有する場合には、着色の問題が非常に顕著となることが多い。また、特に光学部材用フィルムでは、フィルムが透明でかつ厚い場合には、フィルムの輝度が低下すると共に、1枚のフィルムの僅かな着色でも目立ちやすくなるため、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−220376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、液晶パネルで使用されるレンズ層、拡散層やハードコート層、ならびに太陽電池セルの封止材のEVAシートとの接着性に優れた塗布層を有するフィルムであり、当該フィルムの製造工程で発生する再生原料として含むにも関わらず、フィルムの着色や輝度の低下が少なく、上記用途のフィルムとして優れたものであり、CO排出削減、石油資源の効率利用に寄与し、経済的合理性にも適うフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の条件を満たす二軸配向ポリエステルフィルム、並びにその製造方法であれば、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格の少なくとも一つを有するポリウレタンと架橋剤とを含有するインラインコーティングによる塗布層を有する、全窒素量が30ppm以下のフィルムであり、基材ポリエステルフィルム中に自己再生原料を5重量%以上含有することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、ポリエステルフィルムが、例えば液晶パネルで使用されるレンズ層、拡散層やハードコート層、ならびに太陽電池セルの封止材であるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)シートなどとの接着性に優れた塗布層を有していると共に、フィルムの製造工程で発生する塗布層を有するポリエステルフィルムを再生原料として含んでいるにも関わらず、ポリエステルフィルムの着色や輝度の低下が少ない。そのため、レンズシート、拡散シート、ハードコートフィルムの基材フィルムや太陽電池裏面保護用フィルムとして優れたものであると共に、CO2排出削減、石油資源の効率利用に寄与し、経済的合理性にも適うものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、そのポリエステルの構成成分として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体よりなるものなどが挙げられる。
【0017】
ポリエステルが共重合ポリエステルの場合には、第三成分の含有量が10モル%以下の共重合体であることが好ましい。かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。なお、こうした共重合成分の使用量が10モル%を超えると、フィルムの耐熱性、機械的強度、耐溶剤性などの低下が顕著となる。
【0018】
上記ポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレートを構成成分としたもの、およびその共重合ポリエステルを用いたフィルムが、基材フィルムとしての特性とコストとのバランス点で好適である。
【0019】
なお、上記のポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得るか、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、鉄化合物等公知の触媒を使用してよいが、アンチモン化合物の量をゼロまたはアンチモンとして100ppm以下とすることにより、フィルムのくすみを低減させる方法も好ましく用いることができる。またこれらの重合は、溶融状態で所望の重合度まで重合することも可能であるし、固相重合を併用することもできる。
【0020】
特に、再生原料を使用することでポリエステルの固有粘度が低下するのを補う形で追加使用する原料として、もしくはポリエステルに含まれるオリゴマーの量を減らす目的などで、固相重合を併用したポリエステル原料を用いることが好ましい。
【0021】
ポリエステルフィルムに用いるポリエステルの固有粘度は、0.40〜0.90dl/g、さらには0.45〜0.85dl/gであることが好ましい。固有粘度が低すぎると、フィルムの機械的強度が低下する傾向にある。また、固有粘度が高すぎると、フィルムの製膜時における溶融押出工程での負荷が大きく、生産性が低下する傾向にある。
【0022】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、2層以上のポリエステルが共押出法で積層された積層フィルムであってもよい。フィルムが3層以上の場合には、フィルムは2つの最表層と、それ自体が積層構成であってもよい中間層によって構成されるが、この2つの最表層の厚みは、各々、通常2μm以上、好ましくは5μm以上として、一方で、フィルム総厚みの通常1/4以下、好ましくは1/10以下の割合とすることができる。
また両表層のフィルムの厚みは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
さらに、フィルム加工中の熱履歴などにより、ポリエステルフィルム中に含有しているオリゴマーがフィルムの表面に析出し、これが異物となったりフィルムの透明性を悪化させたりすることを防ぐため、低オリゴマー化したポリエステルを用いることが可能である。
【0024】
低オリゴマー化したポリエステルとしては、前述した固相重合を併用して重合したポリエステル、または熱水処理や水蒸気処理を用いたポリエステル等を用いることができる。
これらのポリエステルは、フィルムが単層構成の場合にはフィルム全体に用い、フィルムが多層構造の場合には、両表層だけに低オリゴマー化したポリエステルを用いることもできる。
【0025】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムには、フィラーをあえて添加しないで透明性を高めることも可能であるし、フィルムとしての滑り性の確保や、工程中での傷発生防止のために、無機微粒子や有機微粒子をフィルム中に添加するか、もしくは析出させることが可能である。ポリエステルフィルム中に添加する微粒子としては特に限定されるものではないが、例示するならば、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、タルク、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウムなどの無機微粒子、ならびに架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等などの架橋高分子微粒子を挙げることができる。これらのなかでも、高度な透明性を得るために、屈折率が比較的ポリエステルに近く、二軸配向ポリエステルフィルム中でのボイド形成が少ない、無定形シリカ粒子を使用することが好ましい。
【0026】
また、フィルムが白色で隠蔽性を有するものであることが必要である場合には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウムなどの白色顔料などを使用することができる。
さらに、フィルムが黒色であることや、白や黒以外に着色されていることが必要である場合には、カーボンブラックなどの黒色顔料や、無機または有機の着色顔料を添加することが出来る。
【0027】
上記の微粒子や顔料は、平均粒径として通常0.001〜5μmの範囲のものを、一種または二種以上を併用して用いることができる。またその添加量は、通常0.0005〜25重量%の範囲から選択するのが好ましい。
【0028】
特にプリズムシート等のフラットパネルディスプレイ部材用などの光学用フィルムに用いる場合には、特に透明性が求められるため、ポリエステルフィルム中に微粒子を存在させないことも可能であるし、ポリエステルフィルムが3層以上の積層構成として、中間層には微粒子を積極的に添加せずに、両表層だけに微粒子を添加することで、ポリエステルフィルムの透明性を維持しつつ、しかも滑り性を確保する方法も用いることができる。特にフィルム厚みが厚い場合(例えば100μm以上)で、フィルムの透明性が求められる場合には、微粒子を存在させないこと、または両表層だけに微粒子を添加することが有効である。このとき、光学部材用のフィルムとして、フィルムヘーズが3.0%以下、好ましくは2.5%以下の透明性であることが好ましい。
【0029】
さらに、本発明における二軸配向ポリエステルフィルム中には、上記の微粒子以外に必要に応じて従来から公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、蛍光増白剤等の添加剤を添加することができる。これらの添加剤は、ポリエステルフィルムが3層以上の積層構成であってその中間層に添加することが、フィルム表面に添加剤が析出するのを防ぐことができる点で好ましい。
【0030】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、本発明の効果が得られる厚みとして25μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上である。厚みが25μm未満である場合には、フィルムの着色低減の効果を発揮し難くなる。一方で厚みの上限は特に限定しないが、通常500μm以下、好ましくは400μm以下である。
【0031】
本発明においては、基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格の少なくとも一つを有するポリウレタンと架橋剤とを含有するインラインコーティングによる塗布層(以下、塗布層Xと称することがある)を有する、全窒素量が30ppm以下のフィルムであり、基材ポリエステルフィルム中に自己再生原料を5重量%以上含有することが必要である。この全窒素量は、好ましくは25ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。全窒素量が30ppm以下であれば、このフィルムをリサイクル原料として繰り返して使用しても、フィルムの着色が少ないものとなる。
【0032】
この全窒素量は、窒素測定装置を用いて測定することができる。窒素測定装置は、フィルムサンプルを触媒存在下で熱分解させ、窒素を一酸化窒素に変換し、この一酸化窒素ガスをオゾンと反応させることで、化学発光した光の強度から窒素の定量を行うものである。
【0033】
全窒素量の下限は特に定めないが、上記のポリウレタンを含有する塗布層Xを有することから、全窒素量は0ppmとなることはない。しかし、全窒素量を測定する窒素測定装置には、再現性のある測定値が得られる測定下限値を有する場合があるが、この測定下限値以下となってもよい。
【0034】
上記全窒素量は、片面に上記塗布層Xのみが設けられた場合、両面に上記塗布層Xが設けられた場合、片面に上記塗布層Xが設けられ、反対面には上記塗布層X以外のインラインコーティングによる塗布層(以下、塗布層Yと称する)が設けられた場合も含めて、基材となるポリエステルフィルム自体と塗布層との、トータルとしての全窒素量を指すものである。
【0035】
本来ポリエステルには、窒素含有成分は含まれないが、窒素を含む塗布層を有するポリエステルフィルムに由来する再生原料を、原料の一部として使用することで、ポリエステルフィルム自体に窒素成分を含むこととなる。そしてこの窒素成分がポリエステルフィルムを着色する要因となる。従って、ポリエステルフィルムの着色を低減するには、ポリエステルフィルム中に混入する窒素成分を減らすことが肝要であるが、このための手段としては次のものが挙げられる。
【0036】
1.塗布層中の窒素成分を低減させる
2.塗布層の厚みを薄くする
3.リサイクル使用する原料割合を減らす
4.基材となるポリエステルフィルムを厚くする
これらのなかで、4の基材となるポリエステルフィルムの厚みに関しては、用途によって既に定まっているものであるため、変更の自由度が少ないのが一般的である。従って、1〜3の手段を組み合わせることで、ポリエステルフィルム中に混入する窒素成分を低減することになるが、フィルム中の窒素量は、これらの手段による効果の積で決まるものである。
【0037】
一方で、1の塗布層中の窒素成分を減らすことと、2の塗布層の厚みを薄くすることは、塗布層の特性、特に接着性に極めて大きな影響を及ぼす要素である。それに対して3のリサイクル使用する原料割合は、1よび2の手段で低減できた窒素量に見合った分だけ、増やすことができるようになるのである。従って、塗布層中の窒素成分の低減や、塗布層の厚みを薄くしたときに、如何に塗布層の接着性を低下させないかが重要となる。このための塗布層について次に述べる。
【0038】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面には、例えばフラットパネルディスプレイで使用されるレンズ層、拡散層やハードコート層、ならびに太陽電池セルの封止材であるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)シートなどとの接着性を付与するために、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格の少なくとも一つを有するポリウレタンと架橋剤とを含有するインラインコーティングによる塗布層(塗布層X)を有していることが必要である。ここで、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格を有するポリウレタンとは、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格を有する化合物を、各々ポリオールとして使用したポリウレタンである。なお、ポリカーボネート骨格とポリエーテル骨格とを同時に有していてもよい。
【0039】
塗布層Xのポリウレタンに用いるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート、またはホスゲンと、ジオールとの反応などで得られる。ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、3,4−ジメチル−1,6−ヘキサメチレンジオール等が挙げられる。これらの中でも、1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールは、工業的に入手しやすく、しかも接着性を向上させる点で良好であり、しかも耐加水分解性に関しても良好であるため、好ましい。
【0040】
ポリカーボネートポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量で、300〜5000であることが好ましい。
【0041】
塗布層Xのポリウレタンに用いるポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール)、ポリオキシテトラメチレングリコール(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、共重合ポリエーテルポリオール(ポリオキシエチレングリコールとポリオキシプロピレングリコールなどのブロック共重合体やランダム共重合体など)などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシテトラメチレングリコールが接着性を向上させる点で好適であり、しかも耐加水分解性に関しても良好であるため好ましい。
【0042】
ポリエーテルポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算の数平均分子量で、300〜5000であることが好ましい。
【0043】
上述したポリカーボネートポリオールやポリエーテルポリオールを用いたポリウレタンは、その他の汎用ポリオールであるポリエステルポリオールを用いたポリウレタンよりも、接着性や、加水分解に対する耐性が良好なものとなる。
【0044】
これらのポリカーボネートポリオールまたはポリエーテルポリオールは、各々1種類だけを単独で用いてもよいが、2種類以上を併用することも可能である。また、前述したように、これらのポリカーボネートポリオールとポリエーテルポリオールとを併用することもできる。
【0045】
塗布層Xのポリウレタンに用いるポリイソシアネートには、公知の脂肪族、脂環族、芳香族等のポリイソシアネートを挙げることができるが、特に本発明においては、脂肪族ポリイソシアネートや、脂環族ポリイソシアネートを用いた場合には、塗布層を含むフィルムをリサイクルして溶融成型する際に着色の程度が少なく、また塗布層の接着性においても優れるため、好ましい。
【0046】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例として、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0047】
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、水添ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0048】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0049】
またこれらのポリイソシアネートは単独で使用してもよいが、2種以上を混合して使用することもできる。
【0050】
本発明においては、塗布層(塗布層X)中の窒素量を低減させて、かつ優れた接着性を発現させるためには、上述したポリウレタン中の窒素原子の源であるポリイソシアネート量、すなわちウレタン結合やウレア結合の量は重要である。このため、上述のポリウレタン中のウレタンおよびウレアの結合濃度が、500〜3500(eq/ton)、さらには700〜3000(eq/ton)となるようにポリイソシアネートの量を選択するのが好ましい。
【0051】
鎖長延長剤などの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等のポリアルコール、ヒドラジン、エチレンジアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等のポリアミン、水などが挙げられる。
【0052】
本発明の塗布層(塗布層X)に使用する、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格の少なくとも一種を有するポリウレタンは、水溶性の有機溶剤を好ましくは50重量%以下の割合で含む水に、溶解または分散するものが好ましい。ポリウレタンを水に溶解または分散させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ポリウレタン中に親水性基を導入する自己乳化型、ならびに水溶型等がある。特に、ポリウレタンの骨格中にイオン性基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、接着性に優れており好ましい。
【0053】
この場合、導入するイオン性基としては、アニオン性基としては、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基等が挙げられ、カチオン性基としては、4級アンモニウム等が挙げられる。例えばアニオン性基としてカルボン酸塩基を例に挙げれば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸、トリメリット酸‐ビス(エチレングリコール)エステルなどのアンモニウム塩や低級アミン塩等を好ましく用いることができる。またカチオン性基の4級アンモニウムについては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミンなどの4級化物を好ましく用いることができる。これらのイオン性基の中でも、カルボン酸塩基であって、かつ、カウンターイオンがアンモニアやトリエチルアミン等の沸点が150℃以下の有機アミンである場合には、後述するオキサゾリン系架橋剤などとの反応性が高く、塗布層の架橋点となるので、特に好ましい。
【0054】
ポリウレタンにイオン性基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、イオン性基を持つ樹脂を共重合成分として用いたり、ポリオールや鎖延長剤などの一成分としてイオン性基を持つ成分を用いたりすることができる。
【0055】
本発明の塗布層(塗布層X)には、上述したポリウレタンの他に、塗布層に耐熱性、耐熱接着性、耐湿性、耐ブロッキング性等を付与するために、架橋剤を併用する必要がある。この架橋剤は、水溶性または水分散性であることが好ましく、具体的には、メチロール化ならびにアルコキシメチロール化したメラミン系化合物やベンゾグアナミン系化合物、尿素系化合物、アクリルアミド系化合物の他、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、シランカップリング剤系化合物、チタンカップリング剤系化合物などの、少なくとも1種類を選択することができる。これらの架橋剤の中でも、架橋剤が水溶性である場合には、架橋反応がスムースに進行するため好ましく、さらにはオキサゾリン系化合物であって、それ自体がポリマーである水溶性架橋剤が、塗布層の接着性を向上させる上で特に好ましい。このようなオキサゾリン系架橋剤は、例えば日本触媒社製の商品名エポクロス(登録商標)として工業的に入手できる。また、これらの架橋剤の添加量は、塗布層中のポリウレタンに対する重量比(ポリウレタン:架橋剤)で、95:5〜10:90、さらには90:10〜20:80の割合で使用することが好ましい。
【0056】
本発明の塗布層(塗布層X)には、以上述べたポリウレタンと架橋剤成分との合計が、60重量%以上、さらには80重量%以上の量で存在していることが好ましい。これらの樹脂成分以外に、付加的にその他の樹脂を添加することができる。付加的に添加できる樹脂成分としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、およびこれらのグラフトポリマー、ポリエステルポリウレタンなどが挙げられる。
【0057】
また、本発明では、塗布層Xのブロッキングの防止や滑り性の付与のために、塗布層中に微粒子を添加することも可能である。微粒子としては例えば、シリカやアルミナ、酸化金属等の無機粒子、ならびに架橋高分子粒子などの有機粒子等を用いることができる。微粒子の大きさは150nm以下、好ましくは100nm以下で、塗布層中の添加量としては、0.5〜10重量%の範囲で選択するのが好ましい。
【0058】
その他、塗布層X中には、必要に応じて上記述べた成分以外を添加することができる。
例えば、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等である。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明における塗布層(塗布層X)は、主として水を媒体とした塗布液として、ポリエステルフィルム上に塗布した後に少なくとも一方向に延伸され、さらに熱固定をする、所謂インラインコーティング法を用いて形成させたものであるが、この際に用いる塗布液は、その分散性や保存安定性の向上、ならびに塗布性や塗布膜特性の改善を目的に、水以外に、50重量%以下の割合で、水との相溶性のある有機溶剤の一種または二種以上を加えることも可能である。
【0060】
基材となるポリエステルフィルムへの塗布液の塗布方法としては、公知の任意の方法が適用できる。具体的には、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、バーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ダイコート法などを単独または組み合わせて適用することができる。
【0061】
上述した塗布層Xの塗工量は、二軸延伸・熱固定等を施された後の最終的な乾燥皮膜として、0.003〜0.15g/mの範囲から選択できる。塗布層厚みが0.003g/m未満では接着性が不十分となることがあり、0.15g/mを超える場合には、もはや接着性は飽和しており、全窒素量が30ppmを超えてしまうことが多く、この塗布層を有するフィルムをリサイクル使用した場合には、フィルムの着色が著しくなることが危惧される。上述の塗布層Xは、接着性に優れていて、塗工量を少なくすることが可能であることが多い。具体的には、塗工量として0.005〜0.05、さらには0.005〜0.03g/mの範囲であっても、十分な接着性を有していることが多いため、そのような塗布層組成を選択することで、全窒素量を30ppm以下とすることが可能となる。
【0062】
上述のポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格の少なくとも一つを有するポリウレタンと架橋剤とを含有する塗布層Xは、両面に設けられた場合、または片面だけに設けられ、反対面には塗布層がない場合以外に、片面には塗布層が設けられ、反対面にはその他の塗布層(塗布層Y)が設けられていてもよい。
【0063】
塗布層Yは、インラインコーティング法によりフィルムの製膜工程内で設けられたものであって、塗布層Xおよび塗布層Yを含めたポリエステルフィルムの全窒素量が、30ppm以下であれば、特に限定されるものではないが、例えば易接着性、易滑性や帯電防止性などの付与する目的で、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステルポリウレタンなどの樹脂バインダー、架橋剤、無機や有機の微粒子、帯電防止剤、界面活性剤等を含有するものなどを例示することができる。
【0064】
ところで、上述した塗布層を有するポリエステルフィルムを生産する場合には、例えば、所定幅にスリットする際に副生する製品とはならない部分や、所定長に達する前に破断したフィルムロールなどの製品とはならないスクラップが発生することは、前述の通りである。
【0065】
本発明においては、基材フィルム原料として、前述の塗布層(塗布層X)を有するポリエステルフィルムに由来する再生原料(自己再生原料と称する)を5重量%以上含有することが必要であり、好ましくは10重量%以上である。こうすることで、CO2排出削減、石油資源の効率利用に寄与すると共に、経済的合理性にも適うものとなる。再生原料はより多く使用すれば、よりそれらへの寄与や経済的合理性が高くなるため、上限に関しては特に定めるものではない。但し、再生原料を多量に用いることによって塗布層を含むフィルムの全窒素量が増加し、フィルムの着色が著しくなることや、フィルムの固有粘度低下等の弊害が生じやすくなること、また再生利用すべきスクラップフィルムの発生率等を勘案すると、60重量%が目安となる。
【0066】
上述の自己再生原料は、フィルムの状態から機械的に断裁・粉砕してフレークとするが、そのフレークを一旦溶融押出してチップ(ペレット)とするか、またはフレークのまま再生原料として使用する。このとき、塗布層Xを有するフィルムを溶融してチップ化(ペレット化)することで、自己再生原料が熱履歴を受けることとなるため、チップ化(ペレット化)せずにフレークのまま直接再生原料として使用することが好ましく、その割合は、自己再生原料の50重量%以上、さらには自己再生原料の全てが、フレークのままで使用することが好ましい。その場合、ポリエステルフィルムを生産するための押出機は、ベント式の二軸押出機を用いることが好ましい。ベント式二軸押出機を用いれば、フレークを直接原料として使用しても、押出時に原料の食い込み不良を起こさずに、スムースに溶融押出が可能となる。さらにフレークは乾燥を行わずに押出機に投入して、ポリエステルが半溶融〜溶融状態となったところで、ベント口を通じて、40ヘクトパスカル以下、好ましくは30ヘクトパスカル以下、さらに好ましくは20ヘクトパスカル以下の減圧を維持して、脱気をして水分を除去することができる。このようにすることで、熱乾燥工程を省き、自己再生原料に加わる熱履歴を低減することが可能となるため好ましい。
【0067】
上述の自己再生原料は、基材となるポリエステルフィルムが単層構成である場合には、基材フィルム全体に使用されることとなるが、基材フィルムが積層構成である場合には、全ての層に均等に自己再生原料を使用してもよいが、積層構成のなかでより厚みの厚い層にだけ配合するか、またはより高濃度で配合することが、自己再生原料をより多く配合した際にその悪影響をより低減できる点で好ましい。例えば積層構成が2層構成である場合には、どちらか厚みの厚い層にだけ配合するか、またはより高濃度で配合することが好ましい。積層構成が3層以上の場合には、前述したように、フィルムは2つの最表層と、それ自体が積層構成であってもよい中間層によって構成されるが、中間層を最も厚い層に設定して、この中間層だけに自己再生原料を配合するか、またはより高濃度で配合することが好ましい。
【0068】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、塗布層も含めたフィルムとして、分光側色計の反射法で色調を測定したときのy値が、0.3240以下、好ましくは0.3235であることが好ましく、特に光学部材用フィルムとして用いられる場合には、0.3230以下であることが好ましい。y値が0.3240を超える場合には、フィルムに黄味が感じられ、輝度も低下したものとなる。
【0069】
以下、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0070】
ポリエステルフィルムが単層構成の場合には1台の溶融押出機を使用し、ポリエステルフィルムが多層構成の場合には、その積層構成に応じて必要な複数台の溶融押出機と、それらを合流積層させるフィードブロックまたは多層のマルチマニホールドダイを用いる。
公知の手法により乾燥した自己再生原料およびバージンポリエステルチップを一軸押出機に供給するか、または、未乾燥の自己再生原料およびバージンポリエステルチップを減圧系に繋いだベント口を有する二軸押出機に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱溶融する。この際、異物を除去するために公知の適切なポリマーフィルターを用いることが好ましい。また、ギアーポンプを用いて溶融ポリマーの脈動を低減するのも、好ましい方法として採用できる。次いで、溶融したポリマーを口金から押出し、回転冷却ドラム上に急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0071】
本発明においては、このようにして得られた未延伸シートを二軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、逐次二軸延伸法を用いる場合には、前記未延伸シートを好ましくは縦方向(機械方向、MD方向)に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムとする。次に、前述した塗布層をインラインコーティング法により塗布を行い乾燥した後、横方向(機械方向と直交する方向、TD方向)に90〜160℃で2〜6倍に延伸を行い、160〜245℃で1〜600秒間熱処理を行う。同時二軸延伸機を用いる場合には、まず前記未延伸シートに前述した塗布層をインラインコーティング法により塗布を行い乾燥した後、縦方向および横方向に70〜160℃で面積倍率として5〜20倍の範囲で同時に延伸した後、逐次二軸延伸法と同じ条件で熱処理を行う方法も用いることができる。
【0072】
さらに、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法に共通で、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法も好ましく採用することもできる。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0073】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、再生原料を含み安価に製造することが可能でありながら、フィルムの黄味が少なく、輝度を高く維持することが可能である。しかも塗布層(塗布層X)を有しているため、例えば液晶パネルで使用されるレンズ層、拡散層やハードコート層などに用いられる溶剤系または無溶剤系の活性線硬化樹脂層や、有機や無機の透明導電層などとの接着性に優れているため、光学部材用フィルムに適している。
また、太陽電池セル用の封止材であるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)シートや、PVB(ポリビニルブチラール)シートなどとの接着性にも優れているため、太陽電池用裏面保護用フィルムや合わせガラス用フィルムにも適するものである。
【実施例】
【0074】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
【0075】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0076】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置「SA−CP3型」(島津製作所製)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0077】
(3)フィルムヘーズ
JIS−K−7136に準じて、積分球式濁度計「NDH2000」(日本電色工業社製)により、フィルムヘーズを測定した。
【0078】
(4)全窒素量分析
窒素測定装置「TN−110型」(三菱化学アナリテック社製)に固体用オートサンプルチェンジャーASC−120S(同社製)を接続して用い、塗布層を含むフィルムの全窒素量を分析した。窒素量のキャリブレーションは、テレフタル酸ジメチルと1,5−ジアミノナフタレンとの混合物を用い、N量の検出カウントに対する発生量のマスターカーブを作り、記憶させる。燃焼条件は、炉内温度800℃(INLET 800℃、CATALYST 900℃)にて燃焼し、Nの検出チャートより、プログラム時間内で含有窒素がすべて検出できたことを確認し、このカウント数を積算する。この積算カウントから、マスターカーブにより窒素量を求め、サンプル重量で除して全窒素含有量(重量ppm)とした。窒素検出感度は、サンプル毎にUltra(低濃度測定、1.25〜10ppm)、High(中濃度測定、2.5〜75ppm)、Middle(高濃度測定、5〜200ppm)を適宜選択して測定し、10点測定した平均値をもって測定値とした。
【0079】
(5)フィルムの色調反射法y値
分光測色計「CM−3730d」(コニカミノルタ社製)により、フィルムの色調反射法y値を測定した。このとき光源にはC光源を設定した。測定に際しては、例えば、フィルムの厚みが100μmの時は10枚重ね、125μmの時は8枚重ね、188μmの時は5枚重ね、250μmの時は4枚重ねとして、総厚みが900μmから1000μmになるように複数枚重ね合わせて測定した。
【0080】
(6)プリズム層との耐湿熱接着性
作成した二軸配向ポリエステルフィルムの塗布層(塗布層X)の表面に、下記に示すプリズム層形成用の組成物を塗布液として、ダイコーターで50g/mの厚みで塗布した。その後プリズム型のレンズ(0.05mmピッチ)の逆形状が形成されたプリズム層成型用金型ロールに圧着させてプリズム層を成型すると同時に、プリズム層とは反対側(フィルム基材側)から次の条件で紫外線照射を行った。すなわち、160W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離150mmにて30秒間照射して硬化させて、プリズム層を作成した。
【0081】
<プリズム層形成用塗布液の組成>
1,9−ノナンジオールジアクリレート 80部
エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート 20部
紫外線反応開始剤 4部
(チバスペシャルティケミカルズ社製 IRGACURE184)
上記で作成したプリズム層を積層したフィルムを、80℃、85%RHで50時間処理した後、23℃、50%RHで24時間調温調湿処理を施した。
【0082】
上記のプリズム層に、基材フィルムまで達する碁盤目のクロスカット(2mmの升目を25個)を施し、その上に18mmのテープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急速に剥がした後、剥離面を観察して剥離個数(/25個中)を数えて、次の基準のランクに分類する。(○以上が実用限界である)
◎:剥離個数が0個(/25個中)
○:剥離個数が1個以上5個未満(/25個中)
△:剥離面積が5個以上10個未満(/25個中)
×:剥離面積が10個以上(/25個中)
【0083】
(8)EVAとの耐湿熱接着性
長手方向がMD方向となるように、長さ300mm、幅25mmの二軸配向ポリエステルフィルムの小片を2本切り取った。一方で長さ50mm、幅25mmであるEVAフィルムの1本の小片を切り取り、2本のポリエステルフィルムの小片の塗布層(塗布層X)面でEVAフィルムを挟むように重ねた。これをヒートシール装置(テスター産業株式会社製 TP−701−B)を用いてラミネートした。使用したEVAフィルムは、ドイツ Etimax Solar社製 486.00FC(速硬化タイプ、厚み0.5mm)で、ヒートシール条件は、温度150℃、圧力0.13MPaで、20分間の条件を用いた。ラミネートフィルムを、80℃、85%RHで500時間処理した後、23℃、50%RHで24時間調温調湿処理を施した。
【0084】
EVAとの接着強度を測定するため、まず25mmの幅のポリエステルフィルム/EVAフィルムラミネート小片から、長さ300mm、幅15mmのサンプルを切り取る。この15mm幅のポリエステルフィルムの小片のラミネートされていない端部を、引張/曲げ試験機(島津製作所製 EZGraph)の中に取り付ける。引き続き、角度180°、速度100mm/分でこのポリエステルフィルム/EVAフィルムラミネートを分離するために必要な力(接着強度)を10個の試料について測定して、その平均値を下記のように分類にした。
【0085】
◎:接着強度が50N/15mm幅以上
○:接着強度が30N/15mm幅〜50N/15mm幅未満
△:接着強度が10N/15mm幅〜30N/15mm幅未満
×:接着強度が10N/15mm幅未満
【0086】
以下に実施例および比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
<ポリエステル(a)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.68に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(a)の極限粘度は0.68であった。
【0087】
<ポリエステル(b)の製造方法>
ポリエステル(a)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.1μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.66に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.66であった。
【0088】
<ポリエステル(c)の製造方法>
ポリエステル(a)の製造方法において、重合触媒としてエチレングリコール溶液とした酸化ゲルマニウムを使用したこと以外は、ポリエステル(a)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(c)を得た。なお、酸化ゲルマニウムの添加量は、ゲルマニウム金属としてポリエステル中に100ppmとなるように添加した。得られたポリエステル(c)の固有粘度は0.68であった。
【0089】
<ポリエステル(d)の製造法>
ポリエステル(c)を出発原料とし、真空下220℃にて固相重合を行ってポリエステル(d)を得た。ポリエステル(d)の極限粘度は0.75であった。
【0090】
実施例1〜5、比較例1〜4:
前述のポリエステル(d)、(b)をそれぞれ88重量%、12重量%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、B層の原料としてポリエステル(c)を100重量%使用して、2台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、A層を最外層(表層)、B層を中間層とする2種3層(A/B/A)の層構成となるようにマルチマニホールドダイで積層合流させて溶融押出を行った。これを、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して、未延伸シートを得た。この際に、A/B/Aの厚さ構成比が、4/92/4となるように2台の押出機の吐出量を調整した。また各々のメルトラインには、濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いて異物の濾過を行い、ギアーポンプを設置してメルトポリマーの脈動を低減させた。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度100℃で縦方向に3.2倍延伸した後、表1に示した組成の塗布剤を塗布層Xまたは塗布層Yとして表2に示した組み合わせで、バーコート方式でフィルムの片面または両面に塗布した後、テンターに導いて横方向に130℃で4.0倍延伸し、227℃で熱固定を行った後、熱固定出口のクーリングゾーンにおいて、横方向に5%弛緩し、厚さ188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。フィルムは両端部をスリットして1000mm幅で1000m長のフィルムロールとした。
【0091】
次に、このフィルムをスリットした際に発生する、片面または両面に塗布層を有する端部のスクラップフィルムを、機械的に断裁・粉砕してフレークとして、フレークタンクに貯めた。ある程度フレークが貯まったところで、この再生フレークを加熱乾燥せずにそのまま中間層(B層)に添加した。このときの添加量は、フィルム全体に対して30重量%となるように添加し、それに合わせてB層のバージン原料であるポリエステル(c)を減じて添加した。その他は上記製膜時と全く同様に行って、厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成し、フィルムは両端部をスリットして1000mm幅で1000m長のフィルムロールとし、フィルムの両端部をスリットする際に発生したスクラップフィルムをフレークとして同様にB層原料と使用した。このようにスクラップフィルムをリサイクル使用することを繰り返して、最初バージンレジンが3回リサイクル使用された時のフィルムロールを、それぞれ実施例1〜5、比較例1〜4のフィルムとした。
【0092】
【表1】

【0093】
・ポリカーボネートポリウレタン:(u1)
水添ジフェニルメタンジイソシアネート、数平均分子量が2000のポリ(1,6−ヘキサンジオールカーボネート)、トリエチルアミンで中和されたジメチロールブタン酸、で構成されたポリカーボネートポリウレタンの水分散体、ウレタンおよびウレアの結合濃度は1170eq/ton。
・ポリカーボネートポリエーテルポリウレタン:(u2)
イソホロンジイソシアネート、数平均分子量が1000のポリ(1,6−ヘキサンジオールカーボネート)、数平均分子量が1000のポリオキシテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチルアミンで中和されたジメチロールブタン酸、で構成されたポリカーボネートポリエーテルポリウレタンの水分散体、ウレタンおよびウレアの結合濃度は、1710eq/ton。
・ポリエーテルポリウレタン:(u3)
イソホロンジイソシアネート、数平均分子量が1000のポリオキシテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチルアミンで中和されたジメチロールプロピオン酸、で構成されたポリエーテルポリウレタンの水分散体、ウレタンおよびウレアの結合濃度は、3110eq/ton。
・ポリエステルポリウレタン:(u4)
水添ジフェニルジイソシアネート、ポリヘキサメチレンアジペート、ネオペンチルグリコール、トリエチルアミンで中和されたジメチロールプロピオン酸、で構成されたポリエステルポリウレタンの水分散体、ウレタンおよびウレアの結合濃度は3260eq/ton。
【0094】
・ポリエステル樹脂:(e1)
芳香族ポリエステルの水分散体である、DIC社製 商品名ファインテックス(登録商標)ES−670
・架橋剤:(c1)
メトキシメチロールメラミン DIC社製 商品名ベッカミン(登録商標)J101
・架橋剤:(c2)
オキサゾリン系水溶性樹脂架橋剤 日本触媒社製 商品名エポクロス(登録商標)WS−500
・架橋剤:(c3)
水溶性エポキシ系水溶液 ナガセケムテックス社製 商品名デナコール(登録商標)EX−521
・微粒子:(d1)
コロイダルシリカ微粒子 (平均粒径0.07μm)
【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のフィルムは、例えば、光学用部材に用いる基材フィルムや、太陽電池裏面保護用フィルムとして、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格の少なくとも一つを有するポリウレタンと架橋剤とを含有するインラインコーティングによる塗布層を有する、全窒素量が30ppm以下のフィルムであり、基材ポリエステルフィルム中に自己再生原料を5重量%以上含有することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリウレタンのウレタンおよびウレアの結合濃度が500〜3500(eq/ton)であることを特徴とする請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
一方の表面に塗布層を介してレンズ層を有する請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
一方の表面に塗布層を介してエチレン−酢酸ビニル樹脂の熱ラミネート層を有する請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−18281(P2013−18281A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218798(P2011−218798)
【出願日】平成23年10月1日(2011.10.1)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】