説明

二酸化炭素分離回収装置を伴う水素分離型水素製造システム

【課題】水素分離型水素製造システムにおいて炭化水素系燃料由来の二酸化炭素を効率的に回収する。
【解決手段】炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器を有する水素分離型水素製造システムであって、水素分離型水蒸気改質器における改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスから水を分離する水分離器と、水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、水分吸着塔、メタン分離装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、前記メタン分離装置において水分吸着塔を経たオフガス中のメタンを分離し、二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収する水素分離型水素製造システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離回収装置を伴う水素分離型水素製造システム、すなわち二酸化炭素分離回収装置を備える水素分離型水素製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原料ガスを水蒸気改質して水素を製造するメンブレンリアクタと、当該メンブレンリアクタから排出されるオフガス中の二酸化炭素を除去するための二酸化炭素分離装置と、二酸化炭素を分離した後のオフガスを原料ガスに混合してメンブレンリアクタに循環する循環手段とを含む水素製造装置が開示されている。特許文献2には、燃焼器を備える、メンブレンリアクタなどの水素分離型水素製造装置において、水素が分離されたオフガスを燃焼器へ戻すオフガス流路と、当該オフガス流路にオフガスが保有するエネルギーを回収する回収手段、例えば発電機を設けた水素製造装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献3においては、炭化水素系燃料を酸素及び水蒸気により改質したガスから水素を分離し、且つ、水素分離済みのオフガスから二酸化炭素を分離する機構を有する水素製造システムが開示されている。しかし、この技術でのオフガスからの二酸化炭素の分離は、二酸化炭素分離済みガスを水素製造用に再利用するためのものであり、分離した二酸化炭素を回収するためのものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−146610号公報
【特許文献2】特開2003−183006号公報
【特許文献3】特開2005−145760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の水素分離型水素製造システムにおける、水素分離型水蒸気改質器からのオフガスについては、特許文献1のようにそのオフガスを原料ガスに混合することで可燃ガス分を再利用するか、特許文献2のようにそのオフガスを全て燃焼炉に送ることで可燃ガス分を再利用することにより、水素製造効率を高めているが、燃焼排ガスはそのまま外気に放出しているのが現状である。
【0006】
しかし、水素製造装置のオフガスや燃焼排ガスの主成分は、地球温暖化ガスである二酸化炭素であることから、外気への放出を回避する必要がある。そのような観点から、例えば、特許文献4では、天然ガスを水蒸気改質器に供給して水素を製造し、水蒸気改質器での水蒸気改質用加熱源であるバーナまたは燃焼触媒による燃焼ガスを液化天然ガスと熱交換し、液化天然ガスの冷熱により燃焼ガス中の炭酸ガスを固体炭酸として回収するようにした水素製造装置及び水素製造方法が提案されている。
【0007】
また、メンブレンリアクタなどの水素分離型水素製造装置は、従来型の水蒸気改質装置と比較して高効率で、シンプル且つコンパクトであることが知られており、水素自動車用等の水素ステーションの所在地で水素製造から貯蔵、供給まで行う、いわゆるオンサイト方式の水素ステーションでの実用化を目指して開発が進められている。
【0008】
そのような、オンサイト方式の水素ステーションにおいても、天然ガスや都市ガスなどを原料とし水素製造装置で生成した改質ガスから水素回収後のオフガス中の二酸化炭素は、地球温暖化ガスであることから、回収し、外気への放出を回避する必要がある。
【0009】
二酸化炭素を回収する技術として、アミン類を使用する方法(特許文献5、特許文献6、等)や、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムを使用する方法(特許文献7)などが実証段階の技術として知られている。しかし、それらの方法は、大型のプラントや発電所などの大規模施設での使用を想定しており、小規模での二酸化炭素回収にはコストやエネルギーがかかるため用いることができない。このことから、例えばオンサイト方式の水素ステーションのような小規模の施設では二酸化炭素の回収は困難と考えられていた。
【0010】
【特許文献4】特開2000−247604号公報
【特許文献5】特開2008−307519号公報
【特許文献6】特開2008−168227号公報
【特許文献7】特開2002−321904号公報
【0011】
本発明は、例えばオンサイト方式の水素ステーションのような小規模の施設にも適用できる、炭化水素系燃料を原料とする水素分離型水素製造装置において、炭化水素系燃料から高効率に水素製造を行うとともに、効率的な二酸化炭素回収によって炭化水素系燃料由来の二酸化炭素を回収するようにしてなる水素分離型水素製造システムを提供することを目的とするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(1)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムであって、
(a)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから分離された水素中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化器と、
(b)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、
(c)前記一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスからの水を分離する水分離器と、
(d)前記水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、順次、水分吸着塔、メタン分離装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、
(e)前記メタン分離装置において、水分吸着塔を経たオフガス中のメタンを分離し、二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収するようにしてなる
ことを特徴とする水素分離型水素製造システムである。
【0013】
本発明(2)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムであって、
(a)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから分離された水素中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化器と、
(b)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、
(c)前記一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスからの水を分離する水分離器と、
(d)前記水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、順次、水分吸着塔、メタン分離装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、
(e)前記メタン分離装置において、水分吸着塔を経たオフガス中のメタンを分離し、二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収するようにし、且つ、
(f)前記メタン分離装置からのオフガス(メタンリッチガス)と前記気液分離槽からの二酸化炭素分離済みオフガスを水素分離型改質器の燃焼器の燃料として再利用するようにしてなる
ことを特徴とする水素分離型水素製造システムである。
【0014】
本発明(2)は、本発明(1)の構成に加えて、上記構成(f)すなわち前記メタン分離装置からのオフガス(メタンリッチガス)と前記気液分離槽からの二酸化炭素分離済みオフガスを水素分離型改質器の燃焼器の燃料として再利用するようにしたものに相当している。
【0015】
本発明(3)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムであって、
(a)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから分離された水素中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化器と、
(b)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、
(c)前記一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスからの水を分離する水分離器と、
(d)前記水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、順次、水分吸着塔、二酸化炭素濃度富化装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、
(e)前記二酸化炭素濃度富化装置において、水分吸着塔を経たオフガス中の二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収するようにしてなる
ことを特徴とする水素分離型水素製造システムである。
【0016】
本発明(4)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムであって、
(a)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから分離された水素中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化器と、
(b)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、
(c)前記一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスからの水を分離する水分離器と、
(d)前記水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、順次、水分吸着塔、二酸化炭素濃度富化装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、
(e)前記二酸化炭素濃度富化装置において、水分吸着塔を経たオフガス中の二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収し、且つ、
(f)前記二酸化炭素濃度富化装置からのオフガスと前記気液分離槽からの二酸化炭素分離済みオフガスを水素分離型改質器の燃焼器の燃料として再利用するようにしてなる
ことを特徴とする水素分離型水素製造システムである。
【0017】
本発明(4)は、本発明(3)の構成に加えて、上記構成(f)すなわち前記二酸化炭素濃度富化装置からのオフガスと気液分離槽からの二酸化炭素分離済みオフガスを水素分離型改質器における燃焼器での燃料として利用するようにしたものに相当している。
【0018】
本発明(1)〜(4)の水素分離型水素製造システムにおいて、前記一酸化炭素選択メタン化器の運転温度範囲は通常350〜450℃であり、前記一酸化炭素選択酸化器の運転温度は通常140〜190℃であるため、前記水素分離型水蒸気改質器の上部に前記一酸化炭素選択メタン化器を設置し、さらにその上部に前記一酸化炭素選択酸化器を設置することができる。
【0019】
本発明の水素分離型水素製造システムは、例えばオンサイト方式の水素ステーションでの水素分離型水素製造システムとして利用することができる。また、本発明において、炭化水素系燃料としては好ましくは天然ガスまたは都市ガスを使用するが、これらに限定されず、灯油、ガソリン、LPG(液化石油ガス)なども使用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガスの出口側に一酸化炭素選択酸化器を設置するとともに、オフガスから二酸化炭素を回収するためのメタン分離膜装置または二酸化炭素濃度富化装置を含む二酸化炭素液化回収装置を配置することにより、水素製造時に発生する二酸化炭素の約半分の二酸化炭素を低エネルギーで効率的に回収することができ、環境負荷を著しく低減することができる。また、製造水素中の一酸化炭素不純物濃度を低減することから、水素分離膜の寿命を延ばすことができ、装置のコスト削減に繋げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明(1)〜(2)を説明する図である。
【図2】図2は本発明(3)〜(4)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
前述のとおり、二酸化炭素を回収する方法としてアミン類、炭酸カリウムなどを使用する化学吸収法が実証段階の技術として知られているが、これらは、大型のプラントや発電所などの大規模施設での使用を想定しており、小規模での二酸化炭素回収にはコストやエネルギーがかかるため用いることができない。このことから、例えばオンサイト方式の水素ステーションのような小規模の施設では二酸化炭素回収は困難と考えられていた。
【0023】
本発明においては、その前提として、二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素濃度が高ければ、圧縮液化のみによって二酸化炭素を容易に分離できることを確認した。そして、本発明はその事実、すなわちガス中の二酸化炭素濃度が高ければ、圧縮液化のみによって容易に二酸化炭素を分離できるとの事実を利用するものである。
【0024】
また、本発明においては、その前提として、水素分離型水蒸気改質器からのオフガス中の二酸化炭素回収処理において、オフガス中のメタンなどの二酸化炭素以外のガスが二酸化炭素の圧縮・液化効率を低下させることが実験的に明らかになった。本発明はその事実を利用し、オフガス中の二酸化炭素の圧縮液化前に、オフガス中のメタンを分離する、もしくは二酸化炭素の濃度を高めることにより、二酸化炭素の圧縮・液化効率の低下を回避して二酸化炭素を効率よく分離するものである。
【0025】
また、メタン及び一酸化炭素は、水素と比較して液化二酸化炭素に溶解しやすく、分離回収した液化二酸化炭素の純度を低下させる要因である。そこで、本発明においては、オフガス中の二酸化炭素の圧縮液化前に、液化二酸化炭素の純度を低下させる要因となるオフガス中の一酸化炭素を酸化によって除去し、メタン濃度を分離膜によって低下させることにより、分離回収した液化二酸化炭素の純度を低下させることなく二酸化炭素を分離するものである。
【0026】
〈本発明(1)〜(2)の態様〉
本発明(1)〜(2)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムにおいて、改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に変える一酸化炭素選択酸化器と、メタン分離装置Mを持つ二酸化炭素液化回収装置Zを備えることを基本とする。ここで、一酸化炭素選択酸化器とは「オフガス中の一酸化炭素を選択的に二酸化炭素に変える機器」の意味である。
【0027】
図1は本発明(1)〜(2)を説明する図である。図1のとおり、本発明の水素分離型水素製造システムにおいては、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器Aと、炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器Bと、炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラCと、水分離器Dと、CO2液化回収装置(二酸化炭素液化回収装置)Zを備えることを前提、必須とするものである。
【0028】
水素分離型水蒸気改質器Aは、例えばメンブレンリアクタのように原料ガスである炭化水素系燃料を水蒸気改質し、且つ、生成改質ガスから水素を選択的に分離する水蒸気改質器である。水素分離型水蒸気改質器Aは、水蒸気改質により改質ガスを生成し且つ改質ガスから水素を分離する構造をもつ水素分離型水蒸気改質器であればよく、例えばメンブレンリアクタなどが使用できる。
【0029】
水素分離型水蒸気改質器Aには燃焼器Bが付設されている。燃焼器Bは、燃料を空気で燃焼するバーナからなり、その燃焼により発生した熱が水蒸気改質器Aでの炭化水素系燃料の水蒸気改質に必要な加熱源として利用される。燃焼器Bは、燃焼触媒による燃焼器でもよいが、ここではバーナを例に説明している。
【0030】
図1中、符号1は改質用の天然ガス等の原料ガスである炭化水素系燃料供給管、符号4はボイラCへの水供給管、符号5は空気供給管である。空気供給管5から供給される空気は、ボイラCでの燃料燃焼用、燃焼器Bのバーナ用燃料の燃焼用として使用される。符号6は空気供給管5からボイラCへの空気供給用分岐管である。
【0031】
原料ガスである炭化水素系燃料は、供給管1、圧縮機P1を経て水素分離型水蒸気改質器Aの水蒸気改質器に供給する。炭化水素系燃料が例えば都市ガスのように硫黄化合物を含む燃料の場合には、硫黄化合物による改質触媒の被毒劣化を防止する必要があるので、脱硫器等による脱硫後に水蒸気改質器に供給される。
【0032】
圧縮機P1を経た高圧(例えば、約10kg/cm2G)の炭化水素系燃料ガスの一部を分岐して燃焼器Bの燃料として使用する。符号3はその分岐管である。燃焼器Bでは分岐管3からの炭化水素系燃料を空気供給管5からの空気により燃焼する。なお、空気に代えて、酸素や酸素リッチガスを使用してもよい。その燃焼熱による加熱により水蒸気改質器での炭化水素系燃料の改質反応が行われる。
【0033】
ここで、炭化水素系燃料が例えばメタンの場合の改質反応は「CH4+2H2O→4H2+CO2」で示され、改質ガスとして水素と二酸化炭素を生成する。他の炭化水素についても、生成水素と生成二酸化炭素の比率が異なる点、等を除き、同様である。
【0034】
炭化水素系燃料供給管1から供給される原料ガスである炭化水素系燃料は、その一部がボイラCでの水蒸気(=スチーム)発生用の燃料として使用される。符号2はその分岐管であり、炭化水素系燃料、すなわち原料ガスの流れ方向でみて圧縮機P1の配置箇所より上流側で分岐する。符号2はその分岐管である。分岐した燃料は分岐管2によりボイラCに供給され、空気供給管5の分岐管6からの空気により当該ボイラCで燃焼し、水供給管4から供給される水を加熱してスチームを発生する。
【0035】
〈燃焼器Bからの燃焼排ガスについて〉
燃焼器Bからの燃焼排ガスは、導出管11により導出し、熱交換器K3により冷却される。熱交換器K3において回収した燃焼排ガスの熱は、改質用の炭化水素系燃料の加熱、ボイラ用燃料ガスの加熱、ボイラ用水または水蒸気の加熱、などに利用される。
【0036】
〈ボイラCからの燃焼排ガスについて〉
ボイラCからの燃焼排ガスは、導出管12により導出し、熱交換器K4により冷却される。熱交換器K4において回収したボイラの燃焼排ガスの熱はボイラに投入する水の加熱などに利用される。
【0037】
また、本発明においては、後述のとおり、水分離器Dで分離したドレイン水も、中和器I、ドレイン導管14を経て水供給管4により供給されるボイラCへの供給水に合流させ、ボイラCでの水蒸気発生用の水として利用することもできる。
【0038】
ボイラCで発生したスチームは、水蒸気改質器へのスチーム供給管7を介して水蒸気改質器に供給され、原料ガスである炭化水素系燃料の改質に用いられる。水蒸気改質器で生成した改質ガス中の水素は、水素分離型水蒸気改質器A内に配置されたPd合金膜等の水素分離膜を選択的に透過し分離される。分離された水素は一酸化炭素選択メタン化器Tを介した後、熱交換器K1で冷却され、導出管8を介して取り出される。熱交換器K1において回収した精製水素の熱は、燃焼器B及び/又はボイラC用の空気、酸素もしくは酸素リッチガスの加熱などに使用される。
【0039】
〈水素分離型水蒸気改質器Aからの水素について〉
例えば、水素を燃料として利用する固体高分子形燃料電池において、水素中のCOは致命的な成分であり、固体高分子形燃料電池の性能を著しく劣化させる。通例、固体高分子型燃料電池ではCO濃度を10ppm以下、好ましくは1ppm以下に抑えなければならないとされており、燃料電池自動車についての国際標準化機構ISOにおける現時点での基準値は0.2ppm以下である。水素分離型水蒸気改質器Aで製造した水素を一酸化炭素選択メタン化器Tに通すことにより、水素分離型水蒸気改質器Aにおける水素分離膜が劣化したときなどにリークして水素中に含まれるCOをメタンに変えることができる(CO+3H2→CH4+H2O)。これにより、固体高分子形燃料電池の劣化を防止するとともに、水素分離膜の使用可能期間を延ばすことができる。一酸化炭素選択メタン化器Tは、一酸化炭素の水素による還元触媒(例えばNi、Fe、Co等)を容器中に配置することで構成され、ここで一酸化炭素は水素で還元されてメタンに変えられる。
【0040】
〈水素分離型水蒸気改質器Aからのオフガスについて〉
水素分離型水蒸気改質器Aにおいて、水蒸気改質器で生成した改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガスは、導出管9により導出し、一酸化炭素選択酸化器Sに供給する。一酸化炭素選択酸化器Sにおいて、一酸化炭素を選択的に酸化して二酸化炭素(CO2)に変えることにより、可燃ガスであるCOが除去される。(燃焼ガスとしての再利用においてエネルギー的にロスにはなるが、改質器オフガス中のCO濃度は約1%、オフガスの総熱量に占める割合は約2%であり、大きな影響はない。)一酸化炭素選択酸化器Sは、一酸化炭素を選択的に酸化する触媒(例えばPt、Pd等)を容器中に配置することで構成され、ここで一酸化炭素は酸化されて二酸化炭素に変えられる。
【0041】
しかし、オフガスにCOが1%含まれていることで、液化回収したCO2に最大で0.2%程度のCOが含まれることが試験的に得られており、微量のCOが回収後のCO2の純度を大きく低下させる。そのため、改質器オフガスを一酸化炭素選択酸化器Sに通すことによって回収したCO2の濃度を高めることができる。
【0042】
導出管10からのオフガスは、熱交換器K2において冷却され、水分離器Dへ導入される。熱交換器K2において回収したオフガスの熱は、燃焼器B及び/又はボイラC用の空気、酸素もしくは酸素リッチガスの加熱などに使用される。熱交換器K2で回収したオフガスの熱の利用は、例えば、当該熱交換器K2でのオフガス冷却用の媒体として空気を使用し、間接熱交換で加熱された空気を空気供給管5を介して供給することで利用することができる。
【0043】
その利用態様として、燃焼器B、ボイラCに供給する空気の全量を、熱交換器K2でのオフガス冷却用の媒体として利用して熱交換して、加熱するようにしてもよい。この態様を図1〜2を利用して説明すると(a)〜(c)のような態様を採ることができる。
(a)熱交換器K2でのオフガスの冷却用の媒体として空気供給管5からの空気を使用してオフガスを冷却する。
(b)オフガスの冷却用の媒体として使用した空気供給管5からの空気は熱交換器K2においてオフガスの熱で加熱される。
(c)熱交換器K2で加熱された空気は、空気供給管5により燃焼器Bのバーナ用燃料の燃焼用として使用し、空気供給管5から分岐した空気供給用分岐管6を介してボイラCでの燃料の燃焼用として使用する。
このように、燃焼器B及びボイラCに供給する投入空気の全量を熱交換器K2で熱交換することにより、本発明に係る水素分離型水素製造システムの熱効率を向上させることができる。
【0044】
〈オフガス中のメタンについて〉
水素分離型水蒸気改質器Aからのオフガスには、二酸化炭素のほか、水蒸気改質器での改質反応おいて、未反応の炭化水素、特にメタン、未利用の水蒸気、副生一酸化炭素(CO)が含まれている。オフガス中の成分の比率は、水素分離型水蒸気改質器Aの出力が低い時、例えば30%出力では、CO2=90%(容量%、以下同じ)、CO=1%、CH4=3%、H2=6%(ドライベース)程度であり、水素分離型水蒸気改質器Aの出力が高い時、例えば100%出力では、CO2=65%、CO=2%、CH4=18%、H2=15%(ドライベース)程度となっている。
【0045】
そのように、オフガス中の成分は、二酸化炭素以外では、水素とメタンが大部分を占めるが、このうち水素よりもメタンの方が二酸化炭素の回収率を大幅に低下させることが本発明者ら実験により明らかになった。例えば、二酸化炭素に10%のメタンが含まれている場合は、二酸化炭素気液分離槽Gの温度を0℃としたときにオフガス中の二酸化炭素は81%が回収可能であるが、二酸化炭素に10%の水素が含まれている場合は、オフガス中の二酸化炭素は90%が回収可能であった。
【0046】
このことから、オフガスに含まれる成分のうち、メタンのみもしくは実質上メタンのみを分離すれば、二酸化炭素気液分離槽Gでの二酸化炭素回収率が向上し、回収エネルギーのさらなる低減が可能となる。本発明(1)〜(2)はこの点に着目したものである。
【0047】
オフガス中に10%のメタンが含まれている場合に、オフガス中の二酸化炭素を90%回収しようとすると、二酸化炭素気液分離槽Gの温度を−20℃程度まで低下させなければならず、これを10%の水素の場合に比べて、1Nm3/h級試験機で試験した場合、0.2〜0.3kWh/Nm3−CO2の冷却起電力が余分に必要であり、二酸化炭素の回収に必要な総電力量も約20%増加した。
【0048】
実験結果からの試算により、CO2=85%、CH4=5%、H2=10%のガスから、当該5%のCH4を圧縮機P2での圧縮前に分離するだけで、オフガス中のCO2を90%回収するのに必要なエネルギーを10%低減できることがわかった。
【0049】
CH4の分子径は、CO2、H2Oなどの分子径と比較して一番大きいので(CH4の分子径=0.38nm、CO2の分子径=0.33nm、H2Oの分子径=0.32nm)、特許文献8に記載のようなゼオライト系の分離膜や特許文献9に記載のような炭素系の分離膜によってCH4を選択的に分離することができる。
【0050】
【特許文献8】特開2003−159518号公報
【特許文献9】特開平10−52629号公報
【0051】
本発明(1)〜(2)においては、水分吸着塔Eに続くメタン分離装置Mにそのような分離膜を配置し、オフガスからメタンを選択的に分離することでオフガス中の二酸化炭素を高濃度化する。そして、当該メタン分離装置Mに続く圧縮機P2、冷却熱交換器K5による圧縮液化のみを経て、二酸化炭素気液分離槽Gにおいて容易且つ効率的に二酸化炭素を回収するものである。このように、メタン分離装置M、これに続く圧縮機P2、冷却熱交換器K5は、本発明(1)〜(2)において重要な役割を果たすものである。
【0052】
〈本発明(3)〜(4)の態様〉
本発明(3)〜(4)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムにおいて、改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に変える一酸化炭素選択酸化器と、二酸化炭素濃度富化装置を持つ二酸化炭素液化回収装置を備えることを基本とする。ここで、一酸化炭素選択酸化器とは「オフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化して二酸化炭素に変える機器」の意味である。
【0053】
図2は本発明(3)〜(4)を説明する図である。図2のとおり、本発明(3)〜(4)の水素分離型水素製造システムにおいては、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器Aと、炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器Bと、炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラCと、水分離器Dと、CO2液化回収装置(二酸化炭素液化回収装置)Zを備えることを前提、必須とするものである。
【0054】
水素分離型水蒸気改質器Aは、例えばメンブレンリアクタのように原料ガスである炭化水素系燃料を水蒸気改質し、且つ、生成改質ガスから水素を選択的に分離する水蒸気改質器である。水素分離型水蒸気改質器Aは、水蒸気改質により改質ガスを生成し且つ改質ガスから水素を分離する構造をもつ水素分離型水蒸気改質器であればよく、例えばメンブレンリアクタなどが使用できる。
【0055】
水素分離型水蒸気改質器Aには燃焼器Bが付設されている。燃焼器Bは、燃料を空気で燃焼するバーナからなり、その燃焼により発生した熱が水蒸気改質器Aでの炭化水素系燃料の水蒸気改質に必要な加熱源として利用される。燃焼器Bは、燃焼触媒による燃焼器でもよいが、ここではバーナを例に説明している。
【0056】
図2中、符号1は改質用の天然ガス等の原料ガスである炭化水素系燃料供給管、符号4はボイラCへの水供給管、符号5は空気供給管である。空気供給管5から供給される空気は、ボイラCでの燃料燃焼用、燃焼器Bのバーナ用燃料の燃焼用として使用される。符号6は空気供給管5からボイラCへの空気供給用分岐管である。
【0057】
原料ガスである炭化水素系燃料は、供給管1、圧縮機P1を経て水素分離型水蒸気改質器Aの水蒸気改質器に供給する。炭化水素系燃料が例えば都市ガスのように硫黄化合物を含む燃料の場合には、硫黄化合物による改質触媒の被毒劣化を防止する必要があるので、脱硫器等による脱硫後に水蒸気改質器に供給される。
【0058】
圧縮機P1を経た高圧(例えば、約10kg/cm2G)の炭化水素系燃料ガスの一部を分岐して燃焼器Bの燃料として使用する。符号3はその分岐管である。燃焼器Bでは分岐管3からの炭化水素系燃料を空気供給管5からの空気により燃焼する。なお、空気に代えて、酸素や酸素リッチガスを使用してもよい。その燃焼熱による加熱により水蒸気改質器での炭化水素系燃料の改質反応が行われる。
【0059】
炭化水素系燃料供給管1から供給される原料ガスである炭化水素系燃料は、その一部がボイラCでの水蒸気(=スチーム)発生用の燃料として使用される。符号2はその分岐管であり、炭化水素系燃料、すなわち原料ガスの流れ方向でみて圧縮機P1の配置箇所より上流側で分岐する。分岐管2で分岐した燃料は分岐管2によりボイラCに供給され、空気供給管5の分岐管6からの空気により当該ボイラCで燃焼し、水供給管4から供給される水を加熱してスチームを発生する。
【0060】
〈燃焼器Bからの燃焼排ガスについて〉
燃焼器Bからの燃焼排ガスは、導出管11により導出し、熱交換器K3により冷却される。熱交換器K3において回収した燃焼排ガスの熱は、改質用の炭化水素系燃料の加熱、ボイラ用燃料ガスの加熱、ボイラ用水または水蒸気の加熱、などに利用される。
【0061】
〈ボイラCからの燃焼排ガスについて〉
ボイラCからの燃焼排ガスは、導出管12により導出し、熱交換器K4により冷却される。熱交換器K4において回収したボイラの燃焼排ガスの熱はボイラに投入する水の加熱などに利用される。
【0062】
また、本発明においては、後述のとおり、水分離器Dで分離したドレイン水は、中和器I、ドレイン導管14を経て水供給管4により供給されるボイラCへの供給水に合流させ、ボイラCでの水蒸気発生用の水として利用することができる。
【0063】
ボイラCで発生したスチームは、水蒸気改質器へのスチーム供給管7を介して水蒸気改質器に供給され、原料ガスである炭化水素系燃料の改質に用いられる。水蒸気改質器で生成した改質ガス中の水素は、水素分離型水蒸気改質器A内に配置されたPd合金膜等の水素分離膜を選択的に透過し分離される。分離された水素は一酸化炭素選択メタン化器Yを介した後、熱交換器K1で冷却され、導出管8を介して取り出される。熱交換器K1において回収した精製水素の熱は、燃焼器B及び/又はボイラC用の空気、酸素もしくは酸素リッチガスの加熱などに使用される。
【0064】
〈水素分離型水蒸気改質器Aからのオフガスについて〉
水素分離型水蒸気改質器Aからのオフガスには、二酸化炭素のほか、水蒸気改質器での改質反応おいて、未反応の炭化水素、特にメタン、未利用の水蒸気、副生一酸化炭素(CO)が含まれている。オフガス中の成分の比率は、水素分離型水蒸気改質器Aの出力が低い時、例えば30%出力では、CO2=90%(容量%、以下同じ)、CO=1%、CH4=3%、H2=6%(ドライベース)程度であり、水素分離型水蒸気改質器Aの出力が高い時、例えば100%出力では、CO2=65%、CO=2%、CH4=18%、H2=15%(ドライベース)程度となっている。
【0065】
〈一酸化炭素選択酸化器Xについて〉
本発明(3)〜(4)においては、水素分離型水蒸気改質器Aにおいて、水蒸気改質器で生成した改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガスを、導出管9により導出し、一酸化炭素選択酸化器Xに供給する。
【0066】
一酸化炭素選択酸化器Xにおいては、オフガス中の一酸化炭素を水蒸気と選択に反応させて二酸化炭素に変えることにより(CO+H2O→CO2+H2)、オフガスを二酸化炭素リッチのオフガスとし、導出管10により導出する。前記のとおり、水素分離型水蒸気改質器Aの出力が低い時、例えば30%出力ではCO=1%、水素分離型水蒸気改質器Aの出力が高い時、例えば100%出力ではCO=2%であるが、本発明(3)〜(4)においては、当該COを一酸化炭素選択酸化器XにおいてCO2に変えるものである。
【0067】
導出管10から導出される二酸化炭素リッチのオフガスは、熱交換器K2で冷却され、水分離器Dへ導入される。熱交換器K2において回収したオフガスの熱は、燃焼器B及び/又はボイラC用の空気、酸素もしくは酸素リッチガスの加熱などに使用される。熱交換器K2で回収したオフガスの熱の利用は、例えば、当該熱交換器K2でのオフガス冷却用の媒体として空気を使用し、間接熱交換で加熱された空気を空気供給管5を介して供給する空気に混合することで利用することができる。
【0068】
ところで、本発明者らは、前記と同様の二酸化炭素液化回収装置Zにおいて、メタン分離装置Mに代えて、二酸化炭素濃度富化装置Fを配置することにより、水分吸着塔を経たガス中の二酸化炭素濃度を90%以上に高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収する水素分離型水素製造システムを先に開発し出願している(特許文献10)。
【0069】
【特許文献10】特願2009−241083〔出願日=平成21年10月20日(優先日=平成21年3月30日)〕
【0070】
二酸化炭素濃度富化装置Fは二酸化炭素を選択的に透過する二酸化炭素分離膜を備える。そして、当該二酸化炭素分離膜により、水分吸着塔Eでの水分離後のオフガス中の二酸化炭素を選択的に透過し、70〜90%であった二酸化炭素の濃度を90%以上に高める。二酸化炭素分離膜としては、二酸化炭素をそのように高濃度化できる二酸化炭素分離膜であればいずれも使用できるが、その例としてはゼオライト系二酸化炭素分離膜、もしくは高分子膜などが用いられる。
【0071】
二酸化炭素濃度富化装置Fを透過しないガスは、導管16を介して気液分離槽Gからの二酸化炭素分離済みオフガスに合流させる。合流ガスつまり、二酸化炭素濃度富化装置Fからのオフガスと気液分離槽からの二酸化炭素分離済みオフガスの合流ガスは水素分離型改質器Aの燃焼器Bの燃料として再利用することができる。
【0072】
本発明(3)〜(4)においては、効率的に高濃度の二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の純度も高められるように、改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を一酸化炭素選択酸化器Xによって二酸化炭素に変えるものである。ここで、一酸化炭素選択酸化器とは「オフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化して二酸化炭素に変える機器」の意味である。
【0073】
本発明(3)〜(4)では、水素分離型水蒸気改質器Aからのオフガス中の一酸化炭素を一酸化炭素選択酸化器Xにより二酸化炭素に変え、二酸化炭素濃度富化装置Fを持つ二酸化炭素液化回収装置:Zに供給する。すなわち、本発明(3)〜(4)では、二酸化炭素液化回収装置:Zにおいて二酸化炭素濃度富化装置Fを配置する。
【0074】
ここで、特許文献11〜13には、水素分離型改質器を用いて二酸化炭素を分離回収することが記載されている。しかし、それらの水素分離型改質器における水素製造効率は、その膜分離改質工程で得られる改質器オフガスとして、例えば、水素25〜60%(モル%)、一酸化炭素3〜20%、二酸化炭素25〜65%、メタン3〜20%の混合ガスが得られるとされているように低い。
【0075】
このため、水素を一段で十分に分離できないだけでなく、二酸化炭素濃度25〜65%のままでは、気液分離を用いた液化回収に投入できないため、膜分離改質器つまり水素分離型改質器に加えて、もう一つの水素分離膜と二酸化炭素分離膜を水素分離型改質器に組み合わせている。これに対して、本発明(3)〜(4)の水素分離型改質器は一段で十分であり、そのようなもう一つの水素分離膜は不要である。
【0076】
【特許文献11】特開2009−029674号公報
【特許文献12】特開2009−029675号公報
【特許文献13】特開2009−029676号公報
【0077】
熱交換器K2において冷却されたオフガスは水分離器Dに送られる。オフガス中の水分は水分離器Dにおいて分離され、10℃〜40℃程度の水蒸気分圧(水蒸気=1.2〜7.2%)になるまで水を落とす(分離する)。分離した水つまりドレイン(drain)は酸性であるので、そのドレインを再利用するために中和器Iへ供給する。中和器Iには炭酸カルシウム系天然石などの中和剤を充填する。ドレインは、水分離器Dから、中和器I、ドレイン導管14を経て水供給管4により供給されるボイラCへの供給水に合流させ、ボイラCでの水蒸気発生用の水として利用する。
【0078】
一方、水分離器Dにおいて、水分を分離した後のガスは、二酸化炭素液化回収装置:Zに供給され、当該ガス中の二酸化炭素を液化炭酸として回収する。二酸化炭素液化回収装置:Zは、水分離器Dで水分を分離した後のガスの流れ方向でみて順次、水分吸着塔E、二酸化炭素濃度富化装置F、圧縮機P2、冷却熱交換器K5、気液分離槽G、タンクHを配置することにより構成される。
【0079】
水分離器Dを経たオフガスは、導管15を介して水分吸着塔Eに導入される。水分吸着塔Eには水分離器Dを経たガス中の水分を選択的に吸着する活性炭等の吸着剤を充填する。ガス中の水分の大部分は水分離器Dで分離されているが、水分吸着塔Eにおいて、水分離器Dで分離し得なかった1.2〜7.2%水蒸気に相当する水分をさらに吸着除去し、−20℃の露点(0.1%水蒸気)以下まで水蒸気分圧を低下させる。水分吸着塔Eを経たガスは二酸化炭素濃度富化装置Fへ導入する。
【0080】
二酸化炭素濃度富化装置Fは、二酸化炭素を選択的に透過する二酸化炭素分離膜を備える。二酸化炭素分離膜により水分吸着塔Eでの水分離後のオフガス中の二酸化炭素を選択的に透過し、70〜90%であった二酸化炭素の濃度を90%以上に高める。二酸化炭素分離膜としては、二酸化炭素をそのように高濃度化できる二酸化炭素分離膜であればいずれも使用できるが、その例としてはゼオライト系二酸化炭素分離膜、もしくは高分子膜などを用いることができる。
【0081】
二酸化炭素濃度富化装置Fの二酸化炭素分離膜を透過しないガスは、導管16を介して気液分離槽Gからの分離済みオフガスに合流させる。なお、二酸化炭素濃度富化装置Fの二酸化炭素分離膜を透過しないガスを、本明細書中「二酸化炭素濃度富化装置Fからのオフガス」とも称している。
【0082】
そのように、水分離器Dに続き、水分吸着塔E、二酸化炭素濃度富化装置F、圧縮機P2、冷却熱交換器K5、気液分離槽Gからなる二酸化炭素液化回収装置を接続することにより、効率的な二酸化炭素回収が可能になり、前記のように圧縮液化するガスの二酸化炭素濃度を90%以上に高めることにより、回収効率を著しく向上させることができる。
【0083】
二酸化炭素濃度富化装置Fの二酸化炭素分離膜を透過し、二酸化炭素を高濃度化したオフガスは、圧縮機P2を経て、冷却熱交換器K5に導入する。これにより、オフガス中の二酸化炭素を圧縮液化し、気液混合流として気液分離槽Gへ導入する。気液分離槽Gにおいて、液相である液化炭酸と二酸化炭素分離済みオフガスとに分離する。こうして、二酸化炭素を高濃度化したオフガスから圧縮液化により、二酸化炭素を液化炭酸として分離する。
【0084】
水素分離型改質器Aの出力が低い時、すなわち低〜中出力で運転する場合は、オフガス中の二酸化炭素濃度が90%程度であり、オフガス圧力は0.8MPaGと高く、液化に必要な5〜9MPaGの圧力に上げるための圧縮機P2に必要な電力も常圧から上げる場合と比較して約半分になる。
【0085】
一方、水素分離型改質器の出力が高い時、例えば出力100%乃至その付近で運転する場合、オフガス中の二酸化炭素濃度は70〜90%となる。本発明においては、その前提として、その濃度範囲でも、圧縮液化によって二酸化炭素の分離回収はできるが、回収のための消費エネルギーが高くなり回収効率が低下するとともに、気液分離槽においてスリップガスとして回収できない二酸化炭素の割合が高くなることを予備試験によって確認した。
【0086】
例えば、二酸化炭素に20%程度の不純物ガスが含まれている場合(二酸化炭素濃度80%)、単位二酸化炭素量を圧縮するために必要なエネルギー(電力)は20%程度、もしくはそれ以上増加するため、エネルギーロスが非常に大きくなる。そこで本発明においては、水素分離型改質器が高出力運転をする場合においても効率的に高濃度の二酸化炭素が回収できるように、水分吸着塔Eに続き、二酸化炭素を高濃度化する二酸化炭素濃度富化装置Fを配置する。これにより、二酸化炭素の濃度を90%以上に高めた上で、圧縮液化を行うものである。
【0087】
二酸化炭素濃度富化装置Fにおいて、水分吸着塔Eを経たオフガスから二酸化炭素を分離した残りのオフガス(未燃オフガス)は、全量、水素分離型改質器の燃焼器の燃料として利用する。すなわち、水分吸着塔Eを経たオフガスのうち二酸化炭素濃度富化装置Fを透過しない成分つまり「二酸化炭素濃度富化装置からのオフガス」は、導管16を介して気液分離槽Gからの分離済みオフガス導管17に合流させ、水素分離型改質器に付設の燃焼器Bの燃料として再利用する。
【0088】
水素分離型改質器Aを用いた水素製造能力300Nm3/hの水素ステーションを想定すると、水素分離型改質器Aのオフガスから90%の二酸化炭素を回収した場合、約72Nm3/h(141kg/h)の二酸化炭素を低エネルギーで効率的に回収することができる。これは、水素製造時に発生する二酸化炭素の約半分に相当する。
【0089】
二酸化炭素液化回収装置において、オフガスから分離した液化二酸化炭素の濃度は水素分離型改質器の出力が40%と低い時(このときのオフガスの二酸化炭素濃度=88%)であっても分離後の二酸化炭素濃度は99.2%とJIS規格K1106で規定する99.5%の濃度以下であり、工業的に使用することができない。しかし、二酸化炭素濃度富化装置Fを用いてオフガス中の二酸化炭素濃度を90%以上にすることで、圧縮液化による分離回収後の二酸化炭素を、JIS規格1106を満たし、工業的に利用可能なガスとすることができる。
【0090】
気液分離槽Gで分離した液化炭酸は、導管18を介してタンクHに導入、回収する。タンクH中の液化炭酸はタンクHから導管19、開閉弁V1を介して導出、運搬し、地下、海洋、海底貯蔵、あるいは炭酸ナトリウム製造用原料、その他の用途に利用される。
【符号の説明】
【0091】
A 水素分離型水蒸気改質器
B 炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器
C 炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラ
D 水分離器
E 水分吸着塔
M メタン分離装置
F 二酸化炭素濃度富化装置
G 気液分離槽
H タンク
I 中和器
S 一酸化炭素選択酸化器
T 一酸化炭素選択メタン化器
X 一酸化炭素選択酸化器
Y 一酸化炭素選択メタン化器
Z 二酸化炭素液化回収装置
1〜19 導管
K1〜K4 熱交換器
K5 冷却熱交換器
P1〜P2 圧縮機
V1 開閉弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムであって、
(a)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから分離された水素中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化器と、
(b)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、
(c)前記一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスからの水を分離する水分離器と、
(d)前記水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、順次、水分吸着塔、メタン分離装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、
(e)前記メタン分離装置において、水分吸着塔を経たオフガス中のメタンを分離し、二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収するようにしてなる
ことを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項2】
炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムであって、
(a)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから分離された水素中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化器と、
(b)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、
(c)前記一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスからの水を分離する水分離器と、
(d)前記水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、順次、水分吸着塔、メタン分離装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、
(e)前記メタン分離装置において、水分吸着塔を経たオフガス中のメタンを分離し、二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収するようにし、且つ、
(f)前記メタン分離装置からのオフガス(メタンリッチガス)と前記気液分離槽からの二酸化炭素分離済みオフガスを水素分離型改質器の燃焼器の燃料として再利用するようにしてなる
ことを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項3】
炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムであって、
(a)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから分離された水素中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化器と、
(b)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、
(c)前記一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスからの水を分離する水分離器と、
(d)前記水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、順次、水分吸着塔、二酸化炭素濃度富化装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、
(e)前記二酸化炭素濃度富化装置において、水分吸着塔を経たオフガス中の二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収するようにしてなる
ことを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項4】
炭化水素系燃料の水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と前記炭化水素系燃料の水蒸気改質用加熱源である燃焼器と前記炭化水素系燃料の改質用水蒸気発生用ボイラを有する水素分離型水素製造システムであって、
(a)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから分離された水素中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化器と、
(b)前記水素分離型水蒸気改質器において改質ガスから水素を分離した後の残りのガスであるオフガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化器と、
(c)前記一酸化炭素選択酸化器からのオフガスを冷却した後、当該オフガスからの水を分離する水分離器と、
(d)前記水分離器で分離したオフガスの流れ方向でみて、順次、水分吸着塔、二酸化炭素濃度富化装置、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素液化回収装置を備えてなり、
(e)前記二酸化炭素濃度富化装置において、水分吸着塔を経たオフガス中の二酸化炭素濃度を高めた後、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽に導入して液化炭酸を回収し、且つ、
(f)前記二酸化炭素濃度富化装置からのオフガスと前記気液分離槽からの二酸化炭素分離済みオフガスを水素分離型改質器の燃焼器の燃料として再利用するようにしてなる
ことを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の水素分離型水素製造システムにおいて、前記水素分離型水蒸気改質器の上部に前記一酸化炭素選択メタン化器を設置し、さらにその上部に前記一酸化炭素選択酸化器を設置することを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の水素分離型水素製造システムが、オンサイト方式の水素ステーションで設置する水素分離型改質システムであることを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の水素分離型水素製造システムにおいて、前記水分離器により分離したドレイン水を前記水素分離型水蒸気改質器での炭化水素系燃料の改質用水として再利用するようにしてなることを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項の水素分離型水素製造システムにおいて、前記炭化水素系燃料が天然ガスまたは都市ガスであることを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項の水素分離型水素製造システムにおいて、前記燃焼器での燃焼排ガスの熱を前記炭化水素系燃料の加熱に利用することを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項の水素分離型水素製造システムにおいて、前記燃焼器での燃焼排ガスの熱をボイラ用燃料ガスの加熱に利用することを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項の水素分離型水素製造システムにおいて、前記燃焼器での燃焼排ガスの熱をボイラに投入する水の加熱に利用することを特徴とする水素分離型水素製造システム。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項の水素分離型水素製造システムにおいて、前記ボイラでの燃焼排ガスの熱をボイラに投入する水の加熱に利用することを特徴とする水素分離型水素製造システム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116604(P2011−116604A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277094(P2009−277094)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】