説明

二酸化窒素の浄化方法及び二酸化窒素の浄化装置

【課題】還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガス中の二酸化窒素を低温条件下において十分に浄化することが可能な二酸化窒素の浄化方法を提供すること。
【解決手段】還元性成分を本質的に含まない内燃機関10からの排ガス中の二酸化窒素を低温で触媒により分解して浄化する二酸化窒素の浄化方法であって、前記触媒12として金属酸化物多孔質担体と該金属酸化物多孔質担体に担持された貴金属とを備えるものを用い、一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを前記触媒12に接触させることにより前記排ガス中の二酸化窒素を低温で分解して浄化することを特徴とする二酸化窒素の浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化窒素の浄化方法並びにその方法に好適に使用することが可能な二酸化窒素の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から内燃機関からの排ガス中の二酸化窒素を浄化する方法として種々の方法が提案されている。例えば、特表2006−523797号公報(特許文献1)においては、炭化水素と酸素との混合割合が特定の範囲にある排ガスを触媒に接触させてリーン・バーン内燃機関(例えばディーゼルエンジン)の排ガス中の二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に分解する二酸化窒素の浄化方法が開示されている。また、特開2001−73745号公報(特許文献2)においては、NOxを還元処理するNOx浄化触媒と、排気ガス組成調整手段とを内燃機関又は燃焼装置の排気ガス通路に設置して成り、上記NOx浄化触媒の排気ガス通路上流側に、上記排気ガス組成調整手段として水素を含む還元ガスを供給する還元ガス供給装置を配置して成る排気ガス浄化装置を用いる二酸化窒素の浄化方法が開示されている。しかしながら、上記特許文献1〜2に記載のような従来の二酸化窒素の浄化方法においては、低温条件下で排ガス中の二酸化窒素を必ずしも十分に浄化することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−523797号公報
【特許文献2】特開2001−73745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガス中の二酸化窒素を低温条件下において十分に浄化することが可能な二酸化窒素の浄化方法及びその方法に好適に用いることが可能な二酸化窒素の浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガス中の二酸化窒素を浄化する際に、前記排ガス中の一酸化炭素の含有比率を排ガス中の二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満となるように調整し、その一酸化炭素の含有比率が調整された排ガスを金属酸化物多孔質担体と前記金属酸化物多孔質担体に担持された貴金属とを備える触媒に接触させることにより、前記排ガス中の二酸化窒素を低温条件下において効率よく且つ十分に浄化することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の二酸化窒素の浄化方法は、還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガス中の二酸化窒素を低温で触媒により分解して浄化する二酸化窒素の浄化方法であって、
前記触媒として金属酸化物多孔質担体と該金属酸化物多孔質担体に担持された貴金属とを備えるものを用い、一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを前記触媒に接触させることにより前記排ガス中の二酸化窒素を低温で分解して浄化することを特徴とする方法である。
【0007】
また、上記本発明の二酸化窒素の浄化方法においては、前記貴金属が白金、パラジウム及びロジウムの中から選択される一種以上を含むことが好ましい。更に、上記本発明の二酸化窒素の浄化方法においては、前記金属酸化物多孔質担体は、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ケイ素の中から選択される一種以上を含むことが好ましい。
【0008】
また、本発明の二酸化窒素の浄化装置は、還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガスが供給される排ガス供給管と、
前記排ガス中の一酸化炭素の含有比率を二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整するための一酸化炭素の比率調整手段と、
前記一酸化炭素の含有比率を調整した後の排ガスが接触するように前記排ガス供給管内に配置され且つ金属酸化物多孔質担体と該金属酸化物多孔質担体に担持された貴金属とを備える触媒と、
を備え、且つ、前記一酸化炭素の比率調整手段により一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを前記触媒に接触させて、前記排ガス中の二酸化窒素を低温で分解して浄化するためのものであることを特徴とする装置である。
【0009】
なお、本発明の二酸化窒素の浄化方法及び二酸化窒素の浄化装置によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、触媒を用いて二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に分解する反応は、下記化学反応式:
【0010】
【化1】

【0011】
に示すような平衡反応である。このような平衡反応は、排ガスの温度条件が低温になるほどNOが分解される正反応より、NOが生成される逆反応の方が熱力学的に有利となる。そのため、低温条件下においてはNOの分解反応は殆ど進行しない。このような理由により、上記特許文献1〜2に記載のような従来の二酸化窒素の分解方法では、低温条件下において排ガス中の悪臭成分であるNOを十分に浄化することができなかったものと推察される。これに対して、本発明においては、触媒に接触させる排ガス中の一酸化炭素の含有比率が排ガス中の二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整されているため、一酸化炭素の過剰な排出を抑制しつつ、式:NO+CO→NO+COで示すような反応が進行することから、二酸化窒素が十分に浄化されるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガス中の二酸化窒素を低温条件下において十分に浄化することが可能な二酸化窒素の浄化方法及びその方法に好適に用いることが可能な二酸化窒素の浄化装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】内燃機関に接続されている状態の本発明の二酸化窒素の浄化装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
【図2】実施例1〜2及び比較例1〜9における出ガス中のNOの濃度並びにCO又はHの濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の二酸化窒素の浄化方法及び二酸化窒素の浄化装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、内燃機関に接続されている状態の本発明の二酸化窒素の浄化装置の好適な一実施形態を示す模式図である。図1に示す実施形態の二酸化窒素の浄化装置1は、基本的に、内燃機関10に接続された排ガス供給管11と、触媒12と、一酸化炭素導入管13と、排ガス供給管11に一酸化炭素導入管13を介して接続された一酸化炭素供給手段14と、内燃機関10及び一酸化炭素供給手段14に電気的に接続された内燃機関の制御手段15とを備える。
【0016】
内燃機関10は、その内燃機関からの排ガスが本質的に還元性成分を含まない排ガスとなるような内燃機関である。ここで、本発明において「本質的に還元成分を含まない」とは、排ガス中における還元性成分の含有比率が0.001容量%以下であることをいう。また、前記還元性成分としては一酸化炭素、水素、炭化水素ガス等のNOを還元することが可能な成分が挙げられる。このような内燃機関10としては、例えば、空調等の用途の内燃機関が挙げられ、より具体的には、ガスヒートポンプ(GHP)や小型ガスポンプ等が挙げられる。なお、このような内燃機関10からの排気ガスの温度は通常300℃以下程度のものである。本発明においては、このような比較的低温の排ガス中の二酸化窒素を十分に分解して浄化することを可能とする。
【0017】
排ガス供給管11は、内燃機関10に接続されている。このような排ガス供給管11には、内燃機関10から排ガスが供給され、その排ガス供給管11の内部にガスが流通する。なお、本実施形態においては、排ガスは矢印Aの示す方向に流れる。また、このような排ガス供給管11の材質、大きさ、形状等は特に制限されず、それらの設計を適宜変更することができる。
【0018】
触媒12は、金属酸化物多孔質担体と、前記金属酸化物多孔質担体に担持された貴金属とを備える触媒である。このような金属酸化物多孔質担体としては特に制限されず、公知の金属酸化物からなる多孔質担体を適宜用いることができる。このような金属酸化物多孔質担体としては、より高い触媒活性が得られるという観点から、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素が好ましく、中でも、酸化アルミニウムが特に好ましい。このような金属多孔質担体としては1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また、このような金属酸化物多孔質担体の細孔の平均直径としては、特に制限されないが、100nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが特に好ましい。このような非常に微細な細孔を有している金属酸化物多孔質担体は、各種基材に対する付着性が十分に高いものとなるため、基材にコートした場合の耐久性がより高度なものとなる傾向にある。
【0020】
さらに、このような金属酸化物多孔質担体の比表面積は10〜200m/gであることが好ましい。前記比表面積が前記上限を超えると、金属酸化物多孔質担体が焼結し易くなる傾向にあり、前記下限未満では、得られる触媒の活性が低下する傾向にある。このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0021】
また、このような金属酸化物多孔質担体の形状は特に制限されないが、粉末状であることが好ましい。更に、このような第一多孔質担体の平均粒子径としては、50〜5000nm(より好ましくは100〜1000nm)であることが好ましい。このような平均粒子径が前記下限未満では、金属酸化物多孔質担体が焼結し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると比表面積が小さくなり貴金属の分散性が低下する傾向にある。なお、このような平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、任意の100個の粒子の粒径分布をとることにより求めることができる。
【0022】
また、このような金属酸化物多孔質担体の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このような金属酸化物多孔質担体としては、市販の多孔質酸化物を用いてもよい。
【0023】
また、このような貴金属としては白金、パラジウム、ロジウム、金、イリジウム、ルテニウム等が挙げられるが、より高い触媒活性が得られるという観点からは、白金、パラジウム、ロジウムが好ましく、白金が特に好ましい。なお、このような貴金属としては1種を単独で用いてもよくあるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
また、触媒12中における貴金属の含有比率としては0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが好ましい。このような貴金属の含有比率が前記下限未満では、二酸化窒素を十分に分解して浄化することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属を担持することにより得られる効果が飽和する傾向にある。なお、このような貴金属を前記金属酸化物多孔質担体に担持せしめる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、貴金属の塩(例えば硝酸塩等)を含有する溶液を前記金属酸化物多孔質担体に接触せしめて焼成する方法を採用してもよい。
【0025】
また、触媒12の形態としては特に制限されず、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態にすることができる。このような形態の排ガス浄化用触媒を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、金属酸化物多孔質担体のスラリーを触媒基材にコートし、その後、貴金属を担持して触媒を得る方法等を採用してもよい。また、このような触媒基材としては特に制限されず、DPF基材、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような触媒基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。なお、触媒12においては、前記担体に貴金属以外にも二酸化窒素浄化触媒に用いることが可能な各種成分を適宜担持してもよい。
【0026】
一酸化炭素供給手段14としては、排ガス供給管内に一酸化炭素を供給することが可能なものであればよく、特に制限されず、一酸化炭素を供給することが可能なガスボンベ、燃料改質装置等を適宜用いることができる。また、一酸化炭素供給手段14は一酸化炭素導入管13を介して排ガス供給管11に接続されている。このような一酸化炭素導入管13の形状、材質、大きさ等は特に制限されず、その設計を適宜変更することができる。
【0027】
内燃機関の制御手段15は、内燃機関10と一酸化炭素供給手段14とにそれぞれ電気的に接続され、それらの運転状況を制御することが可能なものである。このような制御手段15としては、内燃機関10と一酸化炭素供給手段14との運転状況を制御することが可能なものであればよく、特に制限されないが、例えば、エンジンコントロールユニット(ECU)等を利用することができる。このようなECUは、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なROM、RAM等の周辺装置を組み合わせたコンピュータとして構成されたものである。
【0028】
また、本実施形態においては、制御手段15を利用して一酸化炭素供給手段14の運転状況を制御し、一酸化炭素供給手段14から排ガス供給管11内の排ガス中に供給される一酸化炭素の量を調整する。すなわち、本実施形態においては、一酸化炭素導入管13と一酸化炭素供給手段14と制御手段15とを組み合わせて、これを排ガス中の一酸化炭素の含有比率を調整するための一酸化炭素の比率調整手段20として用いている。
【0029】
また、一酸化炭素の比率調整手段20は、触媒12に接触する前の排ガス中に一酸化炭素を添加することが可能なように排ガス供給管11に接続される。すなわち、排ガス供給管11の触媒12を配置した位置よりも上流側の位置に一酸化炭素の比率調整手段20中の一酸化炭素導入管13が接続される。このようにして排ガス供給管の触媒12よりも上流側に一酸化炭素の比率調整手段20中の一酸化炭素導入管13を接続することによって、触媒12に接触する前の排ガスの一酸化炭素の濃度を効率よく調整することが可能となる。
【0030】
また、このような一酸化炭素の比率調整手段20は、触媒12に接触させる排ガス中の一酸化炭素の含有比率を二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整することができる。このように触媒12に接触させる排ガス中の一酸化炭素の含有比率を二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整する方法としては特に制限されないが、例えば、制御手段15(例えば、ECU)を利用し、エンジン回転数、アクセル開度、スロットル開度、トルク、吸気流量、燃料噴射量等のデータと、排ガス中のNO及びCOの量との関係のマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて制御手段15により一酸化炭素供給手段14の駆動状況を変化させて排ガス中に供給する一酸化炭素の量を制御し、触媒12に接触させる排ガス中の一酸化炭素の含有比率を二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整する方法や、排ガス中のガス成分を測定できるセンサーを排ガス供給管11の触媒12よりも上流側に設置し、かかるセンサーから得られるデータを制御手段15に入力し、そのデータに基づいて制御手段15により一酸化炭素供給手段14の駆動状況を変化させて排ガス中に供給する一酸化炭素の量を制御し、触媒12に接触させる排ガス中の一酸化炭素の含有比率を二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整する方法等が挙げられる。
【0031】
次に、上記実施形態の二酸化窒素の浄化装置1を利用した本発明の二酸化窒素の浄化方法として好適な方法を説明する。
【0032】
上記実施形態の二酸化窒素の浄化装置1を利用した二酸化窒素の浄化方法においては、内燃機関10から排ガス供給管11内に供給された排ガスは、一酸化炭素の比率調整手段20により触媒12に接触する前に、その排ガス中の一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満となるように調整される。そして、一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスが触媒12に接触する。
【0033】
このように、本実施形態においては、先ず、一酸化炭素の比率調整手段20により、触媒12に接触させる排ガス中の一酸化炭素の含有比率は二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満となるように調整する。このような一酸化炭素の含有比率が前記下限未満では、二酸化窒素を十分に分解して浄化することができなくなる。他方、前記一酸化炭素の含有比率が前記上限を超えると、二酸化窒素の分解性能が飽和して一酸化窒素の排出量が増えてしまう。また、このような一酸化炭素の含有比率としては、臭気成分である二酸化窒素をより十分に浄化しながら一酸化炭素の排出も抑制できるという観点から、6当量以上8当量以下であることがより好ましい。
【0034】
次に、一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを、触媒12に接触させる。このようにして一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを触媒12に接触させることで、低温条件下においても、一酸化炭素の過剰な排出を抑制しつつ、二酸化窒素を分解して一酸化窒素にすることができる。ここにいう「低温条件」としては、300℃以下の温度条件が好ましく、100〜200℃の温度条件がより好ましい。すなわち、本発明においては、通常、NOの分解反応が殆ど進行しない低温条件下(好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下)においても、二酸化窒素を一酸化窒素に十分に分解することができる。そのため、本発明によれば、GHPや小型のガスエンジンのような内燃機関からの排ガス中の臭気成分である二酸化窒素を十分に分解して浄化することが可能となり、これにより、かかる内燃機関からの排ガスの臭気を十分に抑制することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の二酸化窒素の浄化装置及び二酸化窒素の浄化方法の好適な実施形態について説明したが、本発明の二酸化窒素の浄化装置及び二酸化窒素の浄化方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の酸化窒素の浄化方法においては一酸化炭素の比率調整手段20中により一酸化炭素供給手段14から添加される一酸化炭素の量を調整して、排ガス中の一酸化炭素の含有比率が排ガス中の二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満となるように調整された排ガスを触媒12に接触させているが、本発明の二酸化窒素の浄化方法においては、一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを前記触媒に接触させる方法は特に制限されず、一酸化炭素供給手段1を用いずに、制御手段15により内燃機関の運転状況を変更させて、内燃機関から排ガス中の一酸化炭素の含有比率が排ガス中の二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満となるように調整されたガスを排出させて、これを直接触媒12に接触させる方法を採用してもよい。
【0036】
また、上記実施形態の二酸化窒素の浄化装置においては、一酸化炭素導入管13と一酸化炭素供給手段14と制御手段15とを組み合わせた構成のものを一酸化炭素の比率調整手段20としているが、本発明の二酸化窒素の浄化装置においては、前記一酸化炭素の比率調整手段の構成は特に制限されず、例えば、一酸化炭素導入管13や一酸化炭素供給手段14を用いずに、制御手段15により内燃機関に導入される空気の量や燃料の量等を調整して内燃機関からの排ガス中の一酸化炭素の含有比率が当初より二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満となるように調整できるように構成したものを、一酸化炭素の比率調整手段20としてもよい。また、上記実施形態の二酸化窒素の浄化装置においては、内燃機関10と一酸化炭素供給手段14とを制御手段15に接続し、制御手段15により内燃機関と一酸化炭素供給手段14の運転状況を制御しているが、本発明においては、一酸化炭素供給手段14を他の運転制御手段に接続してもよく、この場合には、一酸化炭素の比率調整手段は、少なくとも一酸化炭素供給手段14と前記他の運転制御手段とを組み合わせた構成のものとなる。このように、本発明においては、一酸化炭素の比率調整手段の構成は、内燃機関からの排ガス中の一酸化炭素の含有比率を二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満とすることが可能な構成とすればよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(製造例1:触媒の製造)
Al(W.R.グレース社製)に対して、白金(Pt)の担持量が1質量%となるようにしてPt(NH(NO水溶液(田中貴金属工業製)を含浸し、これを空気中110℃で12時間乾燥させた後、空気中、300℃で3時間焼成して触媒前駆体を得た。次に、得られた触媒前駆体を1tonの条件で圧粉成型し、0.5〜1.0mmの範囲で整粒して、粒子状の触媒を得た。
【0039】
(実施例1〜2及び比較例1〜9)
実施例1〜2及び比較例1〜9においては、製造例1で得られた触媒を1gずつそれぞれ用い、下記表1に記載の組成(NO、CO、H、O、CO、HOの含有比率)の排ガスのモデルガスをそれぞれ使用した。また、各実施例及び比較例においては、以下に記載のような試験をそれぞれ行った。
【0040】
すなわち、前記触媒を排ガス管(直径12mm、長さ300mm)の中心部近傍の直径12mm、長さ10mmの領域に配置した後、前記排ガス管のガス供給口から表1に記載の組成を有するモデルガスを供給し、前記触媒に対して前記モデルガスを接触せしめ、前記排ガス供給管の排出口から排出されるガス(出ガス)中に含まれるNO濃度を測定する試験を行った。なお、かかる試験においては、前記排ガス管のガス供給口から導入する前記モデルガスの温度は150℃とし、前記モデルガスの流量は10L/分とした。また、出ガス中のNO濃度は、出ガス中のNOx濃度とNO濃度とをそれぞれ測定した後、NOx濃度からNO濃度を差し引いた値(式:[NO濃度]=[NOx濃度]−[NO濃度])として求めた。また、各実施例及び各比較例で用いたモデルガス中に含まれる還元成分(CO又はH)の種類に応じて、出ガス中のCO濃度、H濃度も併せて測定した。各実施例及び各比較例において測定されたNO濃度の値並びにCO濃度又はH濃度の値の結果を表1及び図2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1及び図2に示した結果から明らかなように、一酸化炭素(CO)の含有比率が二酸化窒素(NO)1当量に対して6当量(実施例1)に調整されたモデルガスを触媒に接触させた場合(実施例1)及び二酸化窒素(NO)1当量に対して8当量に調整されたモデルガスを触媒に接触させた場合(実施例2)においては、NOを十分に分解して浄化しながら、COの排出量が十分に低い値となることが確認された。
【0043】
これに対して、還元性ガス(H及びCO)を何ら含有しないモデルガスを触媒に接触させた場合(比較例1)においては、NOをほとんど浄化することができないことが確認された。また、COの含有比率がNO1当量に対して2当量に調整されたモデルガスを触媒に接触させた場合(比較例2)又はNO1当量に対して4当量に調整されたモデルガスを触媒に接触させた場合(比較例3)においては、NOを十分に浄化することができないことが確認された。更に、COの含有比率がNO1当量に対して10当量の場合(比較例4)においては、NOを十分に分解して浄化することはできるものの、COの排出量が多くなってしまうことが確認された。また、還元性ガスとしてCOではなくHを用いた場合には、NOをほとんど浄化することができないことが確認された。
【0044】
このような結果から、排ガス温度が低温条件下にある場合には、触媒として金属酸化物多孔質担体と該担体に担持された貴金属とを備えるものを用いて、その触媒に一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを接触させることにより、COの排出量を十分に抑制しながらNOを十分に浄化することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガス中の二酸化窒素を低温条件下において十分に浄化することが可能な二酸化窒素の浄化方法及びその方法に好適に用いることが可能な二酸化窒素の浄化装置を提供することが可能となる。
【0046】
したがって、本発明の二酸化窒素の浄化方法は、GHPや小型ガスエンジン等から排出される排ガス中の二酸化窒素を分解して、排ガスの悪臭を低減させる方法等として特に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1…二酸化窒素の浄化装置、10…内燃機関、11…排ガス供給管、12…触媒、13…一酸化炭素導入管、14…一酸化炭素供給手段、15…内燃機関の制御手段、20…一酸化炭素の比率調整手段、A…排ガスの流れる方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガス中の二酸化窒素を低温で触媒により分解して浄化する二酸化窒素の浄化方法であって、
前記触媒として金属酸化物多孔質担体と該金属酸化物多孔質担体に担持された貴金属とを備えるものを用い、一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを前記触媒に接触させることにより前記排ガス中の二酸化窒素を低温で分解して浄化することを特徴とする二酸化窒素の浄化方法。
【請求項2】
前記貴金属が白金、パラジウム及びロジウムの中から選択される一種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の二酸化窒素の浄化方法。
【請求項3】
前記金属酸化物多孔質担体が酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ケイ素の中から選択される一種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化窒素の浄化方法。
【請求項4】
還元性成分を本質的に含まない内燃機関からの排ガスが供給される排ガス供給管と、
前記排ガス中の一酸化炭素の含有比率を二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整するための一酸化炭素の比率調整手段と、
前記一酸化炭素の含有比率を調整した後の排ガスが接触するように前記排ガス供給管内に配置され且つ金属酸化物多孔質担体と該金属酸化物多孔質担体に担持された貴金属とを備える触媒と、
を備え、且つ、前記一酸化炭素の比率調整手段により一酸化炭素の含有比率が二酸化窒素1当量に対して5当量以上10当量未満に調整された排ガスを前記触媒に接触させて、前記排ガス中の二酸化窒素を低温で分解して浄化するためのものであることを特徴とする二酸化窒素の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−242614(P2010−242614A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91984(P2009−91984)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】