説明

二重正帰還電圧制御発振器

【課題】低供給電圧の性能でのマイクロ波帯域における電圧制御発振器の効率を向上させるための二重正帰還電圧制御発振器を提供する。
【解決手段】2つのコルピッツ回路20、21は第1正帰還ループを提供し、第1負抵抗と等価である。NMOS交差結合ペア回路30は、第2正帰還ループを提供し第2負抵抗と等価である。2つのコルピッツ回路20、21及びNMOS交差結合ペア回路30によって生成される2つの各負抵抗は、LCタンクの寄生抵抗に対して並列に接続されている。この為2つの各負抵抗は、LCタンクの寄生抵抗をオフセットする。2つの各負抵抗が生成されるので、低電圧の稼動時において、及び、直流電流の共有において、高い負抵抗が二重正帰還電圧制御発振器10によって生成される。この為、二重正帰還電圧制御発振器10は、より低い電力下で発振可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振器に関し、特に、低供給電圧の性能でのマイクロ波帯域における電圧制御発振器の効率を向上させるための二重正帰還電圧制御発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術が繁栄している。無線通信システムに適用される受信機および送信機の品質の決定因子は、電圧制御発振器(VCO)から生成される可変周波数信号の質によって決定される。さらに、電圧制御発振器は、通常、信号生成器において適用される。
【0003】
VCOは、入力電圧により発振周波数が制御されるように設計される電子的発振器である。発振の周波数は、印加される直流(DC)電圧によって変更される。一方、変調信号が、また、周波数変調を生じるようにVCOに供給されることが可能である。
【0004】
しかしながら、標準電圧において設計される従来の電圧制御発振器は、コイル−コンデンサ(一般的にはLC)タンクの寄生抵抗をオフセットするための負抵抗生成回路を用いる。負抵抗生成回路は、n型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(一般的にはNMOSとも記す)またはp型金属酸化膜半導体(一般的にはPMOSとも記す)の交差結合ペア回路、片端発振回路、またはコルピッツ回路のようなものである。または、従来の電圧制御発振器は、NMOS−PMOS構造を有する相補的な交差結合ペア回路などの二重負抵抗生成回路を用いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記二重負抵抗生成回路の回路タイプは、低電圧の設計に基づくものではない。それゆえ、上記の各方法は、低電圧設計において、オフセットのための大きな直流電圧が必要となるので、消費電力が増加する。一方、低電圧のため、上記電圧制御発振器における信号とノイズの比率(SNR)は減少し、位相ノイズへの性能が減衰されてしまう。
【0006】
その結果、低電圧での稼動において、位相ノイズとVCOの電力とを低減する方法が重要な問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、低供給電圧の実行でのマイクロ波帯域における電圧制御発振器の効率を向上させるための発振回路および交差結合ペア回路を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、より多くの電力を節約するために、直流電流のより少ない消費において、二重負抵抗を生成するための発振回路および交差結合ペア回路を提供することである。
【0009】
1つの側面では、本発明は、発振回路および交差結合ペア回路を有する二重正帰還電圧制御発振器を提供する。
【0010】
発振回路は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、コイルと、複数の各コンデンサとを有する。第1トランジスタのゲートと、第2トランジスタのゲートとは、互いに対向し、コイルにおける2つの各ポイントに結合される。コイルと各コンデンサとは、LCタンクとして形成される。LCタンクの各コンデンサは、発振回路の第1出力および第1トランジスタのソースに電気的に接続される第1コンデンサと、発振回路の第2出力および第2トランジスタのソースに電気的に接続される第2コンデンサと、第3トランジスタのドレインおよびグランドに電気的に接続される第1可変コンデンサと、第4トランジスタのドレインおよびグランドに電気的に接続される第2可変コンデンサとを含む。
【0011】
交差結合ペア回路は、第3トランジスタと第4トランジスタとを有する。第3トランジスタのゲートおよび第4トランジスタのゲートは、コイルにおける2つのポイントに交差結合され、第3トランジスタのゲートは、第2トランジスタのゲートと結合され、第4トランジスタのゲートは、第1トランジスタのゲートに結合されている。第3トランジスタのドレインは、第1トランジスタのソースに結合され、第4トランジスタのドレインは、第2トランジスタのソースに結合されている。第3トランジスタのソースおよび第4トランジスタのソースは、接地(グランドに接続)されている。
【0012】
一実施形態では、供給電圧を提供する電圧源をさらに含む。第1トランジスタのドレイン、第2トランジスタのドレインおよびコイルは、電圧源に結合されている。
【0013】
本発明の他の目的、特徴および有利な点は、本発明の実施形態によって開示されるさらなる技術的特徴から理解できるであろう。これらの技術的特徴は、本発明の好ましい実施形態として示し説明されるが、これは本発明を実施するために最良の状態で研究された形態の単なる例示である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】二重正帰還電圧制御発振器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の範囲から逸脱しない程度に他の実施形態が用いられてもよく、構造的に変化させてもよいことは理解できるであろう。また、本明細書において用いられる表現および用語は説明目的のものであって、限定的なものとして解釈してはならないことも理解できるであろう。本明細書において用いられる“含む”、“備える”、または“有する”およびこれらの変形は、以下に列挙する項目と、追加の項目と同様に、これらと同等な項目をも包含することを意図している。特に限定されない限り、“接続される”および“結合される”およびそれらの変形は、広い意味合いで用いられ、直接および間接の接続、結合および搭載の意味を包含する。
【0016】
二重正帰還電圧制御発振器10の回路図を模式的に示した図1を参照する。二重正帰還電圧制御発振器10は、発振回路と、NMOS交差結合ペア回路30とを含む。上記発振回路は、第1トランジスタM1と、第2トランジスタM2と、コイルLcと、複数の各コンデンサC1、C2、Cvar1およびCvar2とを含む。上記発振回路は、2つの相補的なコルピッツ回路20、21からなる。コイルLcは、2つのコルピッツ回路20、21の間に共有されている。NMOS交差結合ペア回路30は、第3トランジスタM3および第4トランジスタM4を含む。
【0017】
2つのコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30は、カスケードに配置されている。2つのコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30における直流電流(DC)のバイアス電流は、同一の電流路にある。直流電流は、電力を節約するために2つのコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30によって共有されている。上記第1トランジスタM1、上記第2トランジスタM2、上記第3トランジスタM3および上記第4トランジスタM4は、n型電界効果トランジスタである。
【0018】
LCタンクは、コイルLcおよび各コンデンサC1、C2、Cvar1、Cvar2を含む。二重正帰還電圧制御発振器10の発振周波数は、上記LCタンクによって制御される。
【0019】
一実施形態では、電圧源は、供給電圧Vddを提供する。第1トランジスタM1のドレイン、第2トランジスタM2のドレインおよびコイルLcは、電圧源に結合されている。第1トランジスタM1のゲートおよび第2トランジスタM2のゲートは、互いに対向し、コイルLcにおける2つの各ポイントN1、N2と結合される。第3トランジスタM3のゲートおよび第4トランジスタM4のゲートは、それぞれ、コイルLcにおける2つの各ポイントN2、N1と交差結合され、供給電圧Vddにてバイアスされる。2つのコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30のカスケード構造を用いて、回路における必要な電圧ヘッドルームを低減することができ、低供給電圧の目的を達成する。これにより、第3トランジスタM3のゲートは、ポイントN2を介して第2トランジスタM2のゲートに結合され、第4トランジスタM4のゲートは,ポイントN1を介して第1トランジスタM1のゲートへ結合される。第3トランジスタM3のドレインは、ポイントN3を介して第1トランジスタM1のソースに結合され、第4トランジスタM4のドレインは、ポイントN4を介して第2トランジスタM2のソースに結合される。第3トランジスタM3のソースおよび第4トランジスタM4のソースは、ポイントN5に結合される。
【0020】
さらに、LCタンクの第1コンデンサC1は、発振回路の第1出力および第1トランジスタM1のソースに電気的に接続される。第2コンデンサC2は、発振回路の第2出力および第2トランジスタM2のソースに電気的に接続される。第2可変コンデンサCvar1は、第3トランジスタM3のドレインおよびグランドに電気的に接続される。第2可変コンデンサCvar2は、第4トランジスタM4のドレインおよびグランドに電気的に接続される。
【0021】
一実施形態では、第5トランジスタM5は、さらに、電流源40として含まれている。第5トランジスタM5のドレインは、第3トランジスタM3のソースおよび第4トランジスタM4のソースに結合されている。電流源40は、バイアス電圧Vbiasを介して、2つのコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30にDCバイアス電流を提供する。直流電流の流れは、全ての種類の回路の任意の仕様に適用するための第5トランジスタM5によって制御される。
【0022】
他の実施形態では、第5トランジスタM5を除去することによって、第3トランジスタM3のソースおよび第4トランジスタM4のソースは、ポイントN5を介して接地され、バイアス電圧Vbiasは、ゼロになる。したがって、二重正帰還電圧制御発振器10の合計電力は低減される。
【0023】
2つのコルピッツ回路20、21は、第1正帰還ループを提供し、第1正帰還ループは、第1負抵抗と等価なものである。第3トランジスタM3および第4トランジスタM4を有するNMOS交差結合ペア回路30は、第2正帰還ループを提供し、第2正帰還ループは、第2負抵抗と等価なものである。2つのコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30によって生成される上記2つの各負抵抗は、LCタンクの寄生抵抗に対して並列に接続されている。このため、2つの各負抵抗は、LCタンクの寄生抵抗をオフセットする。
【0024】
2つのコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30によって2つの各負抵抗が生成されるので、低電圧の稼動時において、および、直流電流の共有において、高い負抵抗が二重正帰還電圧制御発振器10によって生成される。このため、二重正帰還電圧制御発振器10は、より低い電力下で発振可能である。さらに、2つのコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30の二重正帰還ループにおいて、発振回路の等価ループゲインを上昇させ、位相ノイズを改善させるための出力信号振幅が増加される。
【0025】
とりわけ、上記の各実施形態は以下の有利な各点を有する。
【0026】
1.2つの相補的なコルピッツ回路20、21の信号対称性によって、二重正帰還電圧制御発振器10の位相ノイズが、マイクロ波帯域において低減される。
【0027】
2.NMOS交差結合ペア回路30によって、二重正帰還電圧制御発振器10の合計電力が、マイクロ波帯域で低減される。
【0028】
3.2つの相補的なコルピッツ回路20、21およびNMOS交差結合ペア回路30の信号対称性によって、マイクロ波帯域において二重正帰還電圧制御発振器10の供給電圧が低減される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態についての上記説明は、解説および説明の目的でなされたものである。網羅的なものにしようという意図もなく、発明を特定の形態または開示の例示的実施形態に限定する意図もない。したがって、上記の説明は、限定的なものというよりはむしろ説明的なものとして見なされるべきである。当然ながら、当業者であれば多くの改変や変形を明らかに思いつくことができる。本発明の原理および実用に際して最良の形態を最もよく説明するために上記実施形態が選択され説明されてきた。これにより、様々な実施形態について、また、特定の使用または実施にふさわしい様々な改変について、当業者が本発明を理解することが可能となる。本発明の範囲は、添付の請求項と、特に記載の無い場合に最も広い適切な意味合いにおいて全ての用語が示される等価なものによって規定されることが意図される。このため、“発明”、“本発明”等の用語は、必ずしも請求項の範囲を特定の実施形態に限定せず、本発明における特定の好ましい例示的実施形態への言及は、発明に対する限定を包含せず、そのような限定は推測されるべきものでもない。本発明は、添付の請求項の精神および範囲によってのみ限定される。本開示の要約を、要約を必要とするルールに則って記載する。これによって、読者は本開示から任意の特許についての技術的開示の主題を素早く確認することができる。要約は、請求項の範囲または意味を解釈または限定するために用いられるものではないということを理解されたい。記載される有利な点および利益のいずれも、本発明の全ての実施形態に適用されるわけではない。以下の請求項によって規定されるような、本発明の範囲を逸脱しない程度に、当業者によって説明される実施形態において変形がなされてもよい。さらに、本開示における要素および組成について、これらが以下の請求項に明確に文言されているかどうかに関わらずに公にするという意図はない。
【符号の説明】
【0030】
10 二重正帰還電圧制御発振器
20、21 コルピッツ回路
30 NMOS交差結合ペア回路
40 電流源
C1、C2、Cvar1、Cvar2 コンデンサ
Lc コイル
M1、M2、M3、M4、M5 トランジスタ
N1、N2、N3、N4、N5 ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路と、交差結合ペア回路とを備え
上記発振回路は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、コイルと、複数の各コンデンサとを含み、
上記第2トランジスタのゲートと上記第1トランジスタのゲートとは対向し、上記第1トランジスタおよび上記第2トランジスタの各ゲートは、それぞれ、上記コイルにおける2つの各ポイントに結合され、上記コイルおよび上記各コンデンサは、LCタンクとして形成され、
上記交差結合ペア回路は、第3トランジスタおよび第4トランジスタを含み、
上記第3トランジスタのゲートおよび上記第4トランジスタのゲートが上記コイルにおける上記2つの各ポイントと結合され、上記第3トランジスタのゲートは、上記第2トランジスタのゲートに結合され、上記第4トランジスタのゲートは、上記第1トランジスタのゲートに結合され、上記第3トランジスタのドレインは、上記第1トランジスタのソースに結合され、上記第4トランジスタのドレインは、上記第2トランジスタのソースに結合されている、二重正帰還電圧制御発振器。
【請求項2】
供給電圧を提供する電圧源をさらに備え、
上記第1トランジスタのドレイン、上記第2トランジスタのドレインおよび上記コイルが、上記電圧源に結合されている、請求項1に記載の二重正帰還電圧制御発振器。
【請求項3】
上記LCタンクの各コンデンサは、
上記発振回路の第1出力と、上記第1トランジスタのソースとの間に電気的に接続されている第1コンデンサと、
上記発振回路の第2出力と、上記第2トランジスタのソースとの間に電気的に接続される第2コンデンサと、
上記第3トランジスタのドレインとグランドとの間に電気的に接続されている第1可変コンデンサと、
上記第4トランジスタのドレインと上記グランドとの間に電気的に接続されている第2可変コンデンサとを含む、請求項1に記載の二重正帰還電圧制御発振器。
【請求項4】
上記第3トランジスタのソースおよび上記第4トランジスタのソースが接地されている、請求項1に記載の二重正帰還電圧制御発振器。
【請求項5】
上記発振回路および上記交差結合ペア回路にバイアス電流を提供する電流源としての第5トランジスタをさらに備え、
上記第5トランジスタのドレインは、上記第3トランジスタのソースおよび上記第4トランジスタのソースに結合されている、請求項1に記載の二重正帰還電圧制御発振器。
【請求項6】
上記第1トランジスタ、上記第2トランジスタ、上記第3トランジスタおよび上記第4トランジスタは、n型電界効果トランジスタである、請求項1に記載の二重正帰還電圧制御発振器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−239359(P2011−239359A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169101(P2010−169101)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】