説明

亜硫酸塩の臭いの抑制方法

【課題】亜硫酸塩を含有する外用剤組成物の使用時における、亜硫酸塩に基づく不快な臭いを抑制する方法の提供。
【解決手段】亜硫酸塩を含有する外用剤組成物において、ミリスチン酸オクチルドデシルを含有せしめることによる皮膚外用剤組成物の使用時の臭いの抑制方法。該亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸カリウムよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。該外用剤として、γ−オリザノールを含有する組成物の場合に、特に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜硫酸塩を含有する外用剤組成物の使用時における不快な臭いの抑制方法、及び当該臭いが抑制された外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
亜硫酸水素ナトリウムやピロ亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩は種々の成分の変質防止作用・安定化作用を有することが知られており(例えば、特許文献1〜3)、安定化剤・抗酸化剤などとして医薬品分野・化粧品分野等において利用される、有用性の高い成分である。
【0003】
一方、ミリスチン酸オクチルドデシルは、2−オクチルドデカノールのミリスチン酸エステルからなる、臭いのない無色透明な油液であり、外用剤において乳化剤等として使用されている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−209288号公報
【特許文献2】特開2004−269363号公報
【特許文献3】特開2004−331524号公報
【非特許文献1】医薬品添加物辞典2007 p288 株式会社薬事日報社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
亜硫酸塩は非常に有用性の高い成分であるが、これを外用剤組成物に配合すると、皮膚等への適用時に亜硫酸塩に基づく不快な臭いが問題となること、特に亜硫酸塩を0.1質量%以上含有する外用剤組成物においては、亜硫酸塩に基づく不快な臭いが過大となることが判明した。外用剤組成物の使用時における不快な臭いは、その商品価値を大きく低下させる原因となる。
従って、本発明は、亜硫酸塩を含有する外用剤組成物の使用時における不快な臭いを抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、それ自体臭いの無いミリスチン酸オクチルドデシルが、意外にも外用剤組成物の使用時における亜硫酸塩に基づく不快な臭いを抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、亜硫酸塩を含有する外用剤組成物において、ミリスチン酸オクチルドデシルを含有せしめることを特徴とする、外用剤組成物使用時の臭いの抑制方法を提供するものである。
また、本発明は、亜硫酸塩及びミリスチン酸オクチルドデシルを含有する、使用時の臭いの抑制された外用剤組成物を提供するものである。
さらに、本発明は、亜硫酸塩を含有する外用剤組成物の製造方法であって、ミリスチン酸オクチルドデシルを含有せしめる工程を含む、使用時の臭いの抑制された外用剤組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、安定化剤、抗酸化剤として有用性の高い亜硫酸塩を含有する皮膚若しくは粘膜外用剤又は坐剤等の外用剤組成物の使用時における、亜硫酸塩に基づく不快な臭いを抑制でき、その商品価値を大きく向上させることができる。
本発明によれば、安定化剤、抗酸化剤などとして汎用される亜硫酸塩を含有し、かつ使用時における亜硫酸塩に基づく不快な臭いが抑制されており、商品価値が高い皮膚若しくは粘膜外用剤又は坐剤等の外用剤組成物を提供できる。また、外用剤組成物が乳化組成物、特に水中油型乳化組成物の形態である場合には、油分を含有するにも関わらずべたつかず使用感が良好で、かつ、経時的な分離が抑制されており、特に商品価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられる「亜硫酸塩」としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩などが挙げられ、亜硫酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸カリウムよりなる群から選択される1種以上が好ましく、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸カリウムよりなる群から選択される1種以上が特に好ましい。
【0009】
本発明において、外用剤組成物中の亜硫酸塩の含有量は特に制限されないが、使用時において、外用剤組成物全質量に対し0.1質量%以上、より好ましくは0.1〜0.5質量%、特に好ましくは0.1〜0.3質量%含有する場合に、亜硫酸塩に基づく不快な臭いが過大となることから、本発明は、上記含有量の場合に特にその利用価値が大きい。
【0010】
本発明に用いられる「ミリスチン酸オクチルドデシル」は、2−オクチルドデカノールのミリスチン酸エステルであり、それ自体臭いはない。本発明においては、ミリスチン酸オクチルドデシルの市販品を使用することができ、市販品としては、例えば、エキセパールOD−M(花王社製)、ミリスチン酸オクチルドデシル(日本油脂社製)などが挙げられる。
【0011】
本発明において、ミリスチン酸オクチルドデシルの含有量は特に制限されないが、亜硫酸塩に基づく不快な臭いの抑制効果、外用剤組成物の使用感及び外観安定性の観点から、使用時において、外用剤全質量に対し、0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは2〜10質量%含有するのが好ましい。
【0012】
本発明において、亜硫酸塩とミリスチン酸オクチルドデシルの含有比は特に制限されないが、亜硫酸塩に基づく不快な臭いの抑制効果、外用剤組成物の使用感及び外観安定性の観点から、亜硫酸塩1質量部に対し、2〜200質量部が好ましく、5〜100質量部が好ましく、10〜50質量部が特に好ましい。
【0013】
本発明において、「使用時の臭いの抑制」とは、外用剤組成物を皮膚等に適用した場合において、亜硫酸塩に基づく不快な臭いが感じられないことをいい、亜硫酸塩に基づく不快な臭いの発生の抑制及び発生した亜硫酸塩に基づく不快な臭いの消臭を包含する概念である。
【0014】
本発明の外用剤組成物においては、さらに油相にγ−オリザノールを含有せしめるのが好ましい。
γ−オリザノールは、米ヌカ油、米胚芽油、トウモロコシ油、その他穀類のヌカ油中に存在する物質で、主としてトリテルペンアルコールのフェルラ酸(3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)エステルからなるものであり、成長促進作用、自律神経失調症の緩和作用、性腺刺激作用、皮脂分泌促進作用、血流促進作用、皮膚温度上昇作用、抗酸化作用、紫外線吸収作用、チロシナーゼ活性抑制作用などの種々の薬理作用を有し、さらに安全性も高い物質である。本発明者らは、γ−オリザノールを油相中に配合した場合、得られた油相が経時的に黄色に変色してしまうという問題が生じること、亜硫酸水素ナトリウムが係る経時的な変色を抑制できることを見出した。
すなわち、亜硫酸塩、ミリスチン酸オクチルドデシルに加えて、さらにγ−オリザノールを含有する外用剤組成物は、種々の薬理作用、生理作用を有するγ−オリザノールを油相に含有し、長期間変色せず、かつ、使用時に亜硫酸塩に基づく不快なにおいが抑制され、商品価値が高い。
【0015】
「γ−オリザノール」は、イネ(Oryza sativa L.)の種皮等から得られ、主としてトリテルペンアルコールのフェルラ酸(3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)エステルからなるものであり、本発明に用いられる「γ−オリザノール」としては、原料、精製方法、製造方法等は特に限定されないが、医薬部外品原料規格2006に記載のγ−オリザノールが好ましい。γ−オリザノールの市販品としては、例えばγ−オリザノール「理研」(理研ビタミン社製)、γ−オリザノール(オリザ油化社製)、オリザノール−C(岡安商店社製)などが挙げられる。
【0016】
本発明の外用剤組成物中のγ−オリザノールの含有量は、薬理効果、生理効果及び経時的な変色の抑制の点から、外用剤組成物全質量に対し、0.01〜5質量%が好ましく、さらに0.1〜3質量%がより好ましく、特に0.5〜2質量%が特に好ましい。なお、γ−オリザノールの含有量は、例えばHPLC法(UV検出)によって定量することが出来る。
【0017】
γ−オリザノールと亜硫酸塩との含有比は、外用剤組成物の経時的な変色の抑制の点から、γ−オリザノール1質量部に対し、0.01〜1質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部が特に好ましい。
【0018】
本発明の外用剤には、前記成分以外に、外用剤の使用目的、形態等種々の条件に応じて、必要により油性成分、乳化剤、水性成分、防腐剤、酸化防止剤、他の薬効成分、水等を含有せしめることができる。
【0019】
油性成分としては、乳化組成物や油性軟膏組成物等において油相を構成する成分として一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、炭化水素類(白色ワセリン、流動パラフィン、スクワラン等)、ロウ類(サラシミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等)、油脂類(大豆油、ハードファット、ヒマシ油、オリーブ油、トリアシルグリセロール等)、アルコール類(セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等)、シリコーン油(メチルポリシロキサン等)、ビタミン誘導体類(パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等)、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ショ糖脂肪酸エステル、モノアシルグリセロール(モノステアリン酸グリセリル等)、ジアシルグリセロール(ジステアリン酸グリセリル等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ジグリセリル等)、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド(ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等)、レシチン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(モノラウリン酸ポリエチレングリコール等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、ソルビタン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ソルビタン等)、アルキル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩(ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
水性成分としては、例えば、低級アルコール類(エタノール、イソプロピルアルコール等)、多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、水溶性高分子類(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、水溶性コラーゲン、ヒアルロン酸等)、アミノ酸類(グリシン、アラニン等)、その他(クエン酸、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、エデト酸塩等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
他の薬効成分としては、例えば、鎮痒を目的として、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(アミノ安息香酸エチル、リドカイン等)、局所消炎鎮痒剤(カンフル、メントール等)、その他(クロタミトン、グリチルレチン酸等)等を配合でき、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、保湿を目的として、多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、アミノ酸(グリシン、アラニン等)、酸性ムコ多糖類(ヒアルロン酸、ヘパリン類似物質等)、糖アルコール(ソルビトール、トレハロース等)、その他(尿素、乳酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸塩等)等を配合でき、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
本発明において、外用剤のpHは、刺激性の点から、4〜9が好ましく、5〜8がより好ましい。
【0026】
本発明の外用剤組成物の稠度は、使用感の点から、2〜50gが好ましく、5〜40gがより好ましい。ここで稠度は、25℃にて直径1cmの金属球を6cm/分の速度で1cm進入させた際の応力の最大値を表し、レオメーター(FUDOHレオメーター:(株)レオテック)にて測定できる。
【0027】
本発明において、外用剤組成物の剤形は特に制限されず、医薬品分野・化粧品分野において採用される剤形であればよく、具体的には例えば、液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲルクリーム剤、ローション剤、パップ剤、貼付剤、リニメント剤、経皮吸収型製剤、エアゾール剤等の第十五改正日本薬局方の製剤総則に記載されているもの等が挙げられる。本発明においては、亜硫酸塩が水に溶けやすい成分である一方、ミリスチン酸オクチルドデシルは水にほとんど溶けない油状の成分であることから、外用剤の製造の観点から、乳化組成物、特に水中油型乳化組成物であるのが好ましく、特にクリーム、乳剤性ローション等の剤形が好ましい。また、本発明の外用剤組成物が、乳化組成物、特に水中油型乳化組成物である場合には、油分を含有するにも関わらずべたつかず使用感が良好で、かつ、経時的な分離が抑制されており、特に商品価値が高い。
【0028】
本発明の外用剤組成物が乳化組成物である場合における、油相/水相の質量比は、乳化安定性の観点から、0.01〜1/1が好ましく、0.05〜0.5/1がより好ましい。
【0029】
本発明の外用剤組成物は、常法に従って製造することができる。
本発明の外用剤組成物の使用形態としては、例えば、皮膚局所若しくは粘膜への塗布又は坐剤としての肛門への注入等が挙げられるが、皮膚局所への塗布が好ましい。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
亜硫酸水素ナトリウム(片山化学工業社製)0.2g、カルボキシビニルポリマー0.25g、およびローション剤のpHが7となる量に相当する水酸化ナトリウムを、ローション剤の全量が100gとなる量に相当する精製水に加え、70℃に加熱・混合したものを水相とした。一方、γ−オリザノール(オリザノール−C:岡安商店社製)1g、白色ワセリン2g、ステアリルアルコール0.5g、スクワラン5g、ミリスチン酸オクチルドデシル3g(エキセパールOD−M、花王社製)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50 1g、およびモノステアリン酸ソルビタン1gを加えて70℃に加熱・混合したものを油相とした。水相に油相を加え、70℃で撹拌・混合して乳化した後に40℃以下に冷却して全量100gのローション剤を製造した。
【0032】
〔比較例1〕
実施例1においてミリスチン酸オクチルドデシルを配合しないものを比較例1のローション剤として製造した。
【0033】
試験例1
実施例1及び比較例1で製造したローション剤について、下記評価項目につき評価を行なった。
【0034】
(亜硫酸塩に基づく不快な臭いの抑制の評価)
実施例1及び比較例1で調製したローション剤の香り(塗布直後の香り)を官能試験にて評価した。ここでの香りは亜硫酸塩に基づく不快な臭いの抑制効果を示す。
亜硫酸水素ナトリウムの不快な臭いを感じないものを○、亜硫酸水素ナトリウムの不快な臭いを感じるものを×とした。
【0035】
(使用感の評価)
実施例1及び比較例1で調製したローション剤の使用感を官能試験にて評価した。
官能試験は7名のパネラーにより実施した。使用感の評価は、
良い:ベタツキを感じない。
普通:若干のベタツキを感じる。
悪い:ベタツキを感じる。
とする3段階評価で行った。
【0036】
(経時的な分離の抑制の評価)
実施例1及び比較例1で調製したローション剤の外観安定性を検討するためにそれぞれガラス瓶(2K瓶)に充填し、60℃、1週保存後の分離の有無を確認した。分離の有無は、目視により評価した。分離が認められないものを○、分離が生じたものを×とした。
(経時的な変色の抑制の評価)
変色は、調製直後の色調に対する40℃、2箇月暗所保存後における色調の変化を目視で評価した。色調に変化がないものを○、黄色に変色したものを×とした。
結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から明らかなように、亜硫酸水素ナトリウムに加えて、それ自体臭いのないミリスチン酸オクチルドデシルを配合した実施例1のローション剤だけ、ローション剤塗布時における亜硫酸水素ナトリウムに基づく不快な臭いが抑制された。さらに、実施例1のローション剤は、ベタツキがなく使用感に優れ、経時的な分離・変色が抑制された外観安定な乳化組成物であることが明らかとなった。
【0039】
〔実施例2〕
亜硫酸水素ナトリウム(片山化学工業社製)0.1g、カルボキシビニルポリマー0.25g、キサンタンガム0.3g、グリシン3gおよびローション剤のpHが7となる量に相当する水酸化ナトリウムを、ローション剤の全量が100gとなる量に相当する精製水に加え、70℃に加熱・混合したものを水相とした。一方、γ−オリザノール(オリザノール−C:岡安商店社製)1g、白色ワセリン2g、ステアリルアルコール0.5g、スクワラン5g、ミリスチン酸オクチルドデシル3g、ポリソルベート60 0.24g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50 0.9g、およびモノステアリン酸ソルビタン0.82gを加えて70℃に加熱・混合したものを油相とした。水相に油相を加え、70℃で撹拌・混合して乳化した後に40℃以下に冷却して全量100gのローション剤を製造した。
【0040】
〔実施例3、4〕
実施例2と同様にして、表2に示した分量に従ってローション剤を製造した。
【0041】
〔比較例2〕
実施例2において亜硫酸水素ナトリウムを配合しないものを比較例2のローション剤として製造した。
【0042】
〔比較例3〜6〕
実施例2において亜硫酸水素ナトリウムの代わりに、抗酸化剤として知られる水素添加大豆リン脂質、BHA、BHT、酢酸トコフェロールを配合したものをそれぞれ比較例3、4、5、6のローション剤とした。
【0043】
試験例2
実施例2〜4、比較例2〜6で製造したローション剤について、下記評価項目につき評価を行なった。
(経時的な変色の抑制の評価)
変色は、調製直後の色調に対する40℃、2箇月暗所保存後における色調の変化を目視で評価した。色調に変化がないものを○、黄色に変色したものを×とした。
【0044】
試験結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から明らかなように、亜硫酸水素ナトリウム及びγ−オリザノールを含有するローション剤においては、経時的な変色が抑制された。一方、亜硫酸水素ナトリウムの代わりに、公知の抗酸化剤である水素添加大豆リン脂質、BHA、BHT、酢酸トコフェロールを含有するローション剤においては、γ−オリザノールの経時的な変色は抑制できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硫酸塩を含有する外用剤組成物において、ミリスチン酸オクチルドデシルを含有せしめることを特徴とする、外用剤組成物使用時の臭いの抑制方法。
【請求項2】
使用時における外用剤組成物中の亜硫酸塩の含有量が0.1質量%以上である請求項1記載の方法。
【請求項3】
亜硫酸塩が、亜硫酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸カリウムよりなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
亜硫酸塩及びミリスチン酸オクチルドデシルを含有する、使用時の臭いの抑制された外用剤組成物。
【請求項5】
亜硫酸塩0.1質量%以上及びミリスチン酸オクチルドデシルを含有する外用剤組成物。
【請求項6】
亜硫酸塩が、亜硫酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸カリウムよりなる群から選択される1種以上である、請求項4又は5記載の外用剤組成物。
【請求項7】
さらにγ−オリザノールを含有する、請求項4〜6のいずれか1項記載の外用剤組成物。

【公開番号】特開2010−100557(P2010−100557A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272838(P2008−272838)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】