説明

亜鉛を基礎とした合金層を有するディスクリート製品を被覆する方法

本発明は、亜鉛が豊富な完全な合金層を有するディスクリート製品に適した方法に関する。かかる製品の腐食保護のための公知の方法は、溶融メッキガルバニーリング、典型的に続いてペイントの工程を含む。この溶融メッキプロセスは、しかしながら高温で実施されるべきであり、従って製品は、過酷な熱応力を受ける。従って新規のZnの真空蒸着法を提供する。前記製品を金属Zn蒸気と接触する工程において、該製品の温度は、Zn蒸気の露点と同じ又はそれより高い。該プロセスは、均一な厚さを有する被覆をもたらし、ほとんど接触可能表面がない。その表面の粗さは、ペイントの付着に良好に適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛が豊富な完全な合金層を有する被覆物品、及び特にディスクリート製品に適した方法に関する。
【0002】
ディスクリート製品に関して、典型的に少なくとも1つの凹表面を有する不連続製品を意味する。それらは、しばしば連結部の組立を含む。
【0003】
開示されている方法は、鉄又は鋼鉄上の亜鉛を基礎とした保護被覆に適しており、それによってZn−Fe金属間が、被覆の完全な厚さを超えて形成される。この被覆は、いわゆる"ガルバニーリング"法から得られる層に類似する。それは、その外表面でFeを有さないZnを有する亜鉛メッキした層とは異なる。
【0004】
Zn−Fe金属間からなる表面は、基材の印刷を想定する場合に、Zn表面に好ましい。実際に、ペイントとZn−支持層との境界面で優れた長期のペイント付着及び優れた耐食性を提供する。他の利点は、自動車市場に重要な、良好なスポット溶接挙動である。しかしながら、前記層の制限された延性を、生成物をさらに変形する必要がある場合に、典型的に連続生成物のための場合であるために、考慮に入れなければならない。
【0005】
亜鉛が豊富な完全な合金層を製造するために、連続生成物、例えばシート及びワイヤは、たいてい、表面を亜鉛メッキするすぐ前に、亜鉛の融点より高い再熱によって亜鉛メッキされる。
【0006】
JP−A−58034167は、溶融メッキ法を使用して、連続生成物を溶融したZn浴中で約465℃で亜鉛メッキすることによる典型的な方法を記載している。前記浴から抜き取った場合に、亜鉛メッキした層の上部上に付着した液体亜鉛を、いわゆるエアナイフを使用して吹き払う。そして、その表面を急速に600℃まで加熱し、そして高温でしばらくの間、アニーリング法が完了するように維持する。
【0007】
JP−A−2194162において公表された他の方法によって、前記生成物は、真空蒸着装置中で亜鉛メッキされる。Znの良く定義された量は、比較的冷たい鋼鉄基材上に、100〜300℃の温度で蒸着される。数秒のみである短い加工時間、及び比較的低い鋼鉄の温度であるために、Zn蒸着装置は圧縮に基づく。そして亜鉛メッキした生成物は、実施するアニーリングのための加熱装置を通過する。
【0008】
JP−A−59083765は、鋼鉄シートを亜鉛メッキするための連続真空蒸着法に関する。該明細書によってシートの温度は、亜鉛の再蒸発を妨げるために、300℃未満、有利には200℃未満を維持する。その方法は、亜メッキを意図し、それによって亜鉛結晶をその表面上に観察する。Zn−Feの形成は挙げられていない:通常連続メッキにおいて使用されるような、低い加工温度及び比較的短い滞留時間は、Zn−Fe合金の形成を理論的に除外する。
【0009】
JP−A−63004057も、鋼鉄シートを亜鉛メッキするための連続真空蒸着法に関する。2工程法が記載されている。第一工程は、Znがシート上で圧縮する場合に、真空蒸着容器中で実施される。圧縮熱に加えて、追加の加熱が、巻線ロールによってシートに提供される。そしてZn−Fe合金は、シート中で容器を出て実施する第二工程において形成される。この文献は、再度、合金の形成のための反応条件を後に達するだけであるようなZnの物理的圧縮を教示している。
【0010】
前記方法は、単純な幾何学を有する連続生成物、例えばシート及びワイヤに対して実施されうるだけである。ディスクリート製品のために、バッチ方法が使用される。
【0011】
完全に合金した表面は、ディスクリート製品上で、第一工程において、Zn浴中での560〜630℃の比較的高い温度での溶融メッキによって製造されうる。Znは、特にこの温度で液体であり、前記浴から物品を抜き出す場合に天然の流れは付着した表面Znを除去するために十分である。それにもかかわらず、物品は、Zn除去を加速するためにしばしば遠心分離される。その高温は、被覆の完全な厚さを超えて、Zn−Fe金属間の形成を促進する。
【0012】
しかしながら、かかる高温での溶融メッキは、潜在的に有害な物品の熱応力を含む。さらに、鋼鉄の特徴は、それ自体不利に影響しうる。この問題は、典型的に多数の種々の物品を運ぶラックの溶融メッキが鋼鉄の異なるグレードを製造することによって複雑にさせる。そして、全ての物品に適したプロセスパラメータ、例えば浴温度又は浸漬時間を定義することが不可能となる。
【0013】
本発明によるバッチプロセスは、ガルバニーリングに強化した代替法を提供する。均一な金属間被覆の厚さは、種々の鋼鉄グレードから製造され、又は複雑な形状を有する物品上でさえ得られる。また、誘発された熱応力の問題は、本質的にゆっくりな及びより均一な加熱プロセスのために、大半は避けられる。
【0014】
鉄又は鋼鉄製品をZn−Fe金属間層で被覆するための開示されている方法は、
− 加熱手段、ガスを導入及び抜き出すための手段、及び被覆された製品のための出入り口を備えたプロセス容器を有する、密閉可能な炉を提供する工程、
− 前記プロセス容器中で被覆されるべき製品を取り入れる工程、
− プロセス容器中で200〜650℃の温度で前記製品と還元ガスとを接触させ、それによって表面の酸化を取り除く工程、
− ガスをプロセス容器から1000Pa未満、及び有利には100Pa未満の残りの圧力まで抜き出す工程、
− プロセス容器中で225〜650℃の温度で前記物品と金属Zn蒸気とを接触させ、それによって該製品をZn−Fe金属間層で被覆する工程、
− 被覆した製品をプロセス容器から取り出す工程
を含む。
【0015】
さらに、前記製品を金属Zn蒸気と接触する工程において、該製品の温度は、有利には恒久的にこの工程中に、Zn蒸気の露点と同じ又はそれより高い。
【0016】
Zn蒸気の露点に関して、Znの周囲分圧が圧縮する温度を意味する。前記露点は、公知の表を使用する分圧から得られる。前記条件を、例えば、実際に被覆反応器中で冷域又はコールドフィンガーを提供することによって確実にできる。コールドに関して、わずかに被覆すべき鋼鉄製品の温度を下回るように調整された温度を意味する。
【0017】
好ましい一実施態様において、前記製品を金属Zn蒸気と接触させる工程は、該製品の温度は、Zn蒸気の温度と同じ、又はそれより高くてよい。温度のこの関係は、Znを該製品上での圧縮から妨げる。
【0018】
要求される還元条件は、有利には、還元ガス、例えばN2とH2との混合物を使用することによって得られる。350〜550℃の製品温度が好ましい。
【0019】
金属Zn蒸気との接触工程において、350〜550℃の製品温度が好ましい。部分Zn分圧は、有利には、1〜500Paの範囲であるべきであり、その際その上限は、特にあらゆる圧縮を妨げるように製品の温度に従って決定される。より高い温度、及びより高いZn分圧は、より早い層成長を導く。
【0020】
得られた製品は、有用にペイントされる。前記Zn−Fe金属間層は、前記ペイントの良好な付着を保証するために要求される粗さを提供する。
【0021】
通常、製品は、被覆炉に入る前に、予備の表面作成を受ける。製品は、実際にしばしば鋼鉄熱間圧延プロセスから、又はそれらの製造プロセスから酸化物によって被覆される。一般に、この層を取り除くための処理は、酸洗い又はショットブラストを含む。 これは、公知の方法、専用の装置で実施されるこの工程後、その表面は、まだ、室温での空気酸化による、数ナノメートルの厚さの天然の酸化物の薄層によって覆われている。本発明によって、残っている酸化物は、被覆炉内で実施される工程において還元される。この工程は、亜鉛蒸気に対する表面の反応性を活性化することを狙っている。
【0022】
還元ガスを接触するプロセスにおいて、200℃以上の製品温度が、十分に早い還元速度を確実にするために要求される。例えば、この工程は、大気圧で、N2/H2混合物中で、静的条件で実施されうる。前記還元は、低い圧力、例えば100〜1000Paで、早い流れのガス条件下でも実施されうる。加圧下は、H2が炉から逃げないことを保証するタメに有用であり、過剰圧力は、還元速度を高める。350〜550℃の製品温度が好ましい。
【0023】
Znを接触させるプロセスにおいて、225℃以上の製品温度が、Zn−Fe金属間の形成を可能にするために必要である。350〜550℃の温度が、製品をあらゆる熱分解から保護する間に前記層を介してFeの十分に早い分散を確実にすることから好ましい。
【0024】
還元ガス又はZn蒸気と接触する方法における650℃より高い温度は、プロセスの経済性に不利益であり、又はしばしば製品の熱分解を導く。
【0025】
被覆炉に入る前の製品の予熱及び被覆炉から該製品が出た後の製品の冷却は、真空炉中でプロセス時間が短くなる。
【0026】
製品の表面に炭素及び有機基を有する製品を扱う場合に、O2接触ガスでの予備酸化工程を、被覆炉中で実施してよい。
【0027】
Znの蒸着が縮合ではなく、むしろ反応性蒸着であることが考えられる。Zn蒸気は、直接表面Feと反応し、それによってZn−Fe金属間を形成する。Zn−Fe相は、典型的に予見される操作温度で固体である。また、Zは、安定な化合物で捕捉されている。これは、製品の表面上での滴加水の危険がないことを意味する。比較的長い滞留時間及び製品及びその表面の高い温度によって、Fe及びZnは、Znに曝されている間金属間層を介して移動する傾向がある。合金層の厚さが増加するために、Feの相を介した分散は減速し、Zn蒸気に対する表面の低減した反応性をもたらす。この効果は、全ての被覆されるべき部分の均一な厚さを有する層の成長を提供する。100μmまでの層が成長されうる。
【0028】
本発明の利点は、溶融メッキ中に鋼鉄を支持するSi及びP上の金属間Fe−Zn化合物の成長の制御を低下する、Sandelin効果が、完全に妨げられることである。この効果は、中温で生じ、かつζ相(FeZn13)フィラメントの形成による。本発明におけるあらゆる液体Znの存在はこの挙動を説明すると考える。
【0029】
このプロセスは、特に、複雑な形状の被覆製品に十分に適している。これに関して、空く案区とも1つの凹表面及び/又は全ての軸について可変の断面を有する製品を意味する。かかる製品は、典型的に、10mmより厚い厚さを有する領域を有し、かつ/又は溶接部分の組立からなる。それらは、しばしば、接触可能領域、例えば管の内表面をほとんど有さない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】被覆炉を示す図。
【0031】
図1に関して、被覆炉は、本質的に
− 気密密閉プロセス容器(1)、
− 製品の温度、しかし容器の大気及び壁の温度も調整するための加熱装置(2);この装置は、プロセス溶液の内部又は周辺にあってよい、
− ガス、例えばN2、H2、H2O及び空気を抜き出すための真空システム(3)、
− ガス、例えばN2、H2及び空気のためのガス注入手段(4)、
− 処理されるべき製品を導入する及び取り出すための出入り口(5)、
− プロセス容器中にZnを導入するための設備(6);金属は、該容器中に直接もたらされるか、又は蒸発器に連結されたガス注入器を介して導入される、
を含む。
【0032】
次の実施例は、本発明を詳述するものである。
【0033】
この実施例は、熱間圧延した鋼鉄プレート上でのZn−Fe金属間及びZnの蒸着に関する。このために、2つの100mm、200mmずつ、3mmずつの鋼鉄プレートを、それらの平行表面間で10mmの間隔でプロセス容器中にそれぞれ近くに設置する。そして、この配置を、2つの外表面及び2つの内表面を定義し、それによって現実の複雑な製品上の表面のアクセシビリティーにおける差異をシミュレートする。
【0034】
次の工程を実施する。
工程1:ショットブラストによって熱間圧延した鋼鉄試料の、熱間圧延プロセスにおいて形成した酸化鉄層を取り除くための洗浄。
工程2:試料の導入を塗工機中で導入する。前記塗工機は、均一な加熱を提供する電気抵抗炉(100kW)によって覆われている処理容器(直径0.2m、長さ1m)を含む。この部品は真空容器(1m3)中にある。Zn40gを、塗工機の底部に位置する蒸発器中に導入する。
工程3:0.1mbarまでの真空吸引、及びプロセス容器中への還元ガスの導入(5%H1及びN295%、露点:−30℃、温度:450℃、圧力:0.8bar)。
工程4:塗工機及び試料の、10℃/分で450℃までの加熱。
工程5:600秒間還元ガス中で表面酸化物の還元。
工程6:0.03mbarまでの真空吸引、及び450℃での温度均一化。
工程7:450℃までのZn蒸発器の加熱、及び20分間の安定化。
工程8:空気を使用して、圧力の大気までの増加。
工程9:プロセス容器及び試料の10℃/分で室温までの冷却。
工程10:塗工機の開放及び被覆された鋼鉄試料の取り出し。
【0035】
前記試料は、Zn−Fe金属間50μmによって形成される均一な層を有する内表面を含む、それぞれの表面上で被覆されることが明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
− 加熱手段、ガスを導入及び抜き出すための手段、及び被覆されるべき製品のための出入り口を備えたプロセス容器を有する、密閉可能な炉を提供する工程、
− 前記プロセス容器中で被覆されるべき製品を取り入れる工程、
− プロセス容器中で200〜650℃の温度で前記製品と還元ガスとを接触させて、表面の酸化を取り除く工程、
− ガスをプロセス容器から1000Pa未満の残りの圧力まで抜き出す工程、
− プロセス容器中で225〜650℃の温度で前記物品と金属Zn蒸気とを接触させて、該製品をZn−Fe金属間層で被覆する工程、
− 被覆した製品をプロセス容器から取り出す工程
を含む、鉄又は鋼鉄製品を、Zn−Fe金属間層で被覆するための方法であって、該製品と金属Zn蒸気とを接触する工程において、該製品の温度が、Zn蒸気の露点と同じであるか、又は露点よりも高いことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記製品と金属Zn蒸気とを接触する工程において、該製品の温度が、Zn蒸気の温度と同じ、又はその温度よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
還元ガスと接触する工程において、H2含有ガスを使用し、有利にはN2/H2混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
還元ガスと接触する工程において、前記製品が、350〜550℃の温度であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
金属Zn蒸気と接触する工程において、前記製品が、350〜550℃の温度であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記被覆した製品を取り出す工程後に、該製品がペイントされている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−516944(P2012−516944A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548602(P2011−548602)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000684
【国際公開番号】WO2010/089110
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(509126003)ユミコア ソシエテ アノニム (23)
【氏名又は名称原語表記】Umicore S.A.
【住所又は居所原語表記】Rue du Marais 31, B−1000 Brussels, Belgium
【Fターム(参考)】