説明

交通情報処理システム、交通情報処理方法及び交通情報処理プログラム

【課題】突発的要因により発生した渋滞を的確に検出することができる交通情報処理システム、交通情報処理方法及び交通情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】交通情報処理サーバ2は、各車線の渋滞を検出し、対向する各車線上に渋滞を検出した場合に、各車線間に中央分離帯があるか否かを判断する。中央分離帯がある場合には、一方の前記車線から他方の前記車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断する。そして、各車線間に中央分離帯が無い場合に、各車線に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定するとともに、各車線間に中央分離帯が存在し、且つ一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であると判断した際に、検出した前記渋滞を突発性渋滞であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報処理システム、交通情報処理方法及び交通情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の円滑な走行を支援するために、渋滞発生区間を、該区間周辺の車両に通知するシステムが知られている。最近では、渋滞発生区間の案内だけでなく、渋滞要因を判定し、渋滞要因に応じて各種案内を行うシステムも提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、走行車線と、該車線に隣り合う対向車線とに渋滞が発生している場合に、その渋滞が突発性渋滞であるか否かを判断するシステムが記載されている。このシステムでは、外部から受信した渋滞情報に係わる道路に中央分離帯があるか否かを判断する。即ち、中央分離帯の有無を判断することにより、一方の車線に突発的に渋滞が発生した場合に、その車線から、その車線に隣り合う他方の車線に進入可能であるか否かを判断する。また、そのシステムが、そのような渋滞を検出した場合には、各車線の渋滞が実質的に同一地点から発生しているか否かを判断する。
【0004】
そして、走行車線及び対向車線の同一地点から渋滞が発生し、且つその車線間に中央分離帯が無い場合、その渋滞を、事故や工事等の突発的な要因による突発性渋滞であると判断する。
【特許文献1】特開2005−331378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、各車線間に中央分離帯が存在するにも関わらず、突発的な渋滞が発生する場合がある。即ち、一方の車線に突発的な渋滞要因が発生した場合、その要因発生地点がある車線の対向車線を走行するドライバーの注意が、要因発生地点に向けられ、その結果、いわゆる見物渋滞が発生することがある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、突発的要因により発生した渋滞を的確に検出することができる交通情報処理システム、交通情報処理方法及び交通情報処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、各車線の渋滞を検出する渋滞検出手段と、対向する各車線上に渋滞を検出した場合に、前記各車線間に中央分離帯があるか否かを判断し、中央分離帯がある場合に、一方の前記車線から他方の前記車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断する可否判断手段と、前記各車線間に中央分離帯が無い場合に、前記各車線に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定するとともに、前記各車線間に中央分離帯が存在し、且つ一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であると判断した際に、検出した前記渋滞を突発性渋滞であると判定する判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の交通情報処理システムにおいて、前記可否判断手段は、前記渋滞検出手段が前記各車線上に渋滞を検出した場合に、渋滞始点を基準とした所定範囲内であって前記各車線の間に遮蔽物があるか否かを判断し、該遮蔽物がある場合に状況確認が可能でないと判断することを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の交通情報処理システムにおいて、前記可否判断手段は、渋滞が先に発生した要因発生車線と、該要因発生車線に対向する隣接車線とを特定するとともに、前記要因発生車線の前記隣接車線に対する高低を判断し、前記要因発生車線が前記隣接車線よりも高い場合には、状況確認が可能でないと判断することを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、各車線の渋滞を検出する制御手段を用いて、渋滞要因を判定する交通情報処理方法であって、前記制御手段が、対向する各車線上に渋滞を検出した場合に、前記各車線間に中央分離帯があるか否かを判断し、中央分離帯がある場合に、一方の前記車線から他方の前記車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断するとともに、前記各車線間に中央分離帯が無い場合に、前記各車線に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定するとともに、前記各車線間に中央分離帯が存在し、且つ一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であると判断した際に、検出した前記渋滞を突発性渋滞であると判定することを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、各車線の渋滞を検出する制御手段を用いて、渋滞要因を判定する交通情報処理プログラムであって、前記制御手段を、対向する各車線上に渋滞を検出した場合に、前記各車線間に中央分離帯があるか否かを判断し、中央分離帯がある場合に、一方の前記車線から他方の前記車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断する可否判断手段と、前記各車線間に中央分離帯が無い場合に、前記各車線に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定するとともに、前記各車線間に中央分離帯が存在し、且つ一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であると判断した際に、検出した前記渋滞を突発性渋滞であると判定する判定手段として機能させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、互いに対向した車線上に渋滞を検出した際に、中央分離帯の有無を判断し、中央分離帯が無い場合に、車両が対向車線に進入可能であるため、突発性渋滞であると判断する。また、中央分離帯がある場合でも、一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断し、状況確認が可能であると判断した際に、検出した渋滞を見物渋滞という突発性渋滞であると判定する。このため、渋滞要因を的確に判定することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、対向する複数の車線上に渋滞を検出した場合であって、各車線の間に遮蔽物がある場合、状況確認が困難であると判断する。このため、状況確認が可能であるか否かを的確に判断できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、要因発生車線と隣接車線の相対高さに基づき状況確認が可能であるか否かを判断する。このため、状況確認が可能であるか否かを的確に判断できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、互いに対向した車線上に渋滞を検出した際に、中央分離帯の有無を判断する。また、中央分離帯がある場合、一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断し、状況確認が可能であると判断した際に、検出した渋滞を突発性渋滞であると判定する。このため、渋滞要因を的確に判定することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、交通情報処理プログラムに従って、互いに対向した車線上に渋滞を検出した際に、中央分離帯の有無を判断する。また、中央分離帯がある場合、一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断し、状況確認が
可能であると判断した際に、検出した渋滞を突発性渋滞であると判定する。このため、渋滞要因を的確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。図1は、本実施形態のプローブシステム1の概略図である。プローブシステム1は、交通情報処理システムを構成する交通情報処理サーバ2と、路側機3と、車両Cに搭載されたナビゲーション装置10(図2参照)とを備えている。交通情報処理サーバ2及び路側機3は、専用線又は公衆回線網からなるネットワークNを介して各種データを送受信可能に接続されている。路側機3は、道路沿いに設置され、無線通信によって車両Cに搭載されたナビゲーション装置10に対してプローブデータのデータ要求を行う。
【0018】
ナビゲーション装置10は、このデータ要求に対してプローブデータを送信し、路側機3は、取得したプローブデータを交通情報処理サーバ2にネットワークNを介して送信する。交通情報処理サーバ2は、プローブデータを統計することにより、渋滞要因を判定する。
【0019】
次に、ナビゲーション装置10のハードウェア構成について、図2に従って説明する。ナビゲーション装置10は、制御部11を備えている。制御部11は、CPU12、RAM13、ROM14、車両側インターフェース(I/F)15、通信インターフェース(I/F)16を備えている。
【0020】
CPU12は、車両側I/F15を介して、GPS(Global Positioning System)受
信部21、車速センサ22及びジャイロセンサ23から取得した検出信号に基づき、電波航法及び自律航法によって自車位置を特定する。
【0021】
また、CPU12は、車両側I/F15を介して、車両Cに搭載された電子制御装置(以下、ECU24)から、ブレーキペダルの踏み込みを示す検出信号を受信する。
また、ナビゲーション装置10は、内蔵ハードディスク、又は光ディスク等の外部記憶媒体からなる地理情報記憶部17から各種データをそれぞれ読み出し可能となっている。地理情報記憶部17には、経路ネットワークデータ(以下、経路データ19という)及び地図描画データ20が格納されている。
【0022】
経路データ19は、リンクID、接続ノード、道路種別、車線数、道路の進行方向等を有している。ノードは、交差点、インターチェンジ、道路の端点等を示すデータ要素であって、リンクは各ノードを接続するデータ要素である。
【0023】
また、地図描画データ20は、全国の地図を分割したメッシュ毎に格納され、背景データ、道路の形状を示す道路形状データ、道路名称、道路種別、進行方向等を有している。制御部11は、この道路形状データと走行軌跡とを照合して、自車位置を道路上に特定するマップマッチングを行う。
【0024】
また、上記したように、制御部11は、通信I/F16を介して、路側機3からプローブデータのデータ要求を受信すると、プローブデータ30を生成し、路側機3に送信する。プローブデータ30を生成する際には、識別データ記憶部18の車両ID18Aを含めて、送信元の車両Cを識別可能にする。
【0025】
図3は、プローブデータ30のデータ構成を説明する概念図である。プローブデータ30は、識別データ記憶部18に記憶された車両ID18Aと同一の車両ID30A、車両
Cの現在位置30B、走行リンク30Cを有している。また、現在時刻30D、進行方向30E、速度30F、ブレーキペダルの踏み込みの有無を示すブレーキフラグ30Gを有している。
【0026】
交通情報処理サーバ2は、ナビゲーション装置10からプローブデータ30を受信すると、そのプローブデータ30を蓄積する。
また、図2に示すように、ナビゲーション装置10は、画像プロセッサ25及び音声プロセッサ26を備えている。画像プロセッサ25は、地図描画データ20を読み出して、地図画面28をディスプレイ27に表示したり、交通情報処理サーバ2から受信した道路交通データに応じて、渋滞・混雑区間への接近及びその要因等の交通案内表示を表示する。また、音声プロセッサ26は、交通情報処理サーバ2から受信した道路交通データに従って、車室に設けられたスピーカ29から、渋滞・混雑区間への接近及びその要因等の案内音声を出力する。
【0027】
次に、交通情報処理サーバ2のハードウェア構成について、図4に従って説明する。交通情報処理サーバ2は、プローブデータ30に基づき、その渋滞が突発性渋滞であるか否かを判断する。尚、突発性渋滞とは、事故や故障車両等の突発性要因により発生する渋滞であって、料金所、サグ部等の所定の区間で所定の時間帯に自然発生する自然渋滞とは異なる渋滞である。
【0028】
交通情報処理サーバ2は、制御部40、プローブデータ記憶部45、道路詳細情報記憶部46を備えている。制御部40は、CPU41、RAM42、ROM43、通信インターフェース(I/F)44を備え、渋滞検出手段、可否判断手段、判定手段、制御手段を構成する。また、ROM43又は図示しない記憶部には、交通情報処理プログラムが格納されている。
【0029】
プローブデータ記憶部45には、ナビゲーション装置10から受信したプローブデータ30が蓄積されている。制御部40は、同じ車線上の一定区間内から送信されたプローブデータ30を抽出し、プローブデータ30に含まれる速度30Fが、渋滞時の低速走行を示す速度に該当するか否か、或いはブレーキフラグ30Gが示すブレーキの頻度に基づき、各地点での渋滞の有無を判断する。また、制御部40は、隣接且つ対向した車線の両方に渋滞が発生しているか否かを判断する。尚、隣接とは、各車線が離れていても、各車線の間の距離が所定距離以内である状態を含む。
【0030】
道路詳細情報記憶部46には、路側物データ47が格納されている。路側物データ47は、各車線間の中央分離帯の有無と、隣接した各車線の間の遮蔽物の有無を示している。遮蔽物とは、車線沿いに設けられ、上記各車線の一方からの他方の車線に対する視界を妨げ、他方の車線に対する状況確認を不可能とする路側物であって、車線間に設けられた柵や樹木等である。尚、車線の間に設けられる柵であっても、柵の高さが低い場合には、他方の車線に対する視認性を妨げないので、遮蔽物に含まれない。また、車線の間に、間隔を空けて樹木が植裁されている場合、樹木の間隔の間から他方の車線が視認できる場合には、その樹木は遮蔽物に含まれない。
【0031】
この路側物データ47は、車線のリンク又は道路名称と、車線沿いの中央分離帯の有無と、各車線沿いの遮蔽物の有無と、遮蔽物が設けられている区間とを有している。
図5に示すように、制御部40は、隣接且つ対向した車線L1,L2の両方に渋滞が発生しているか否かを判断し、各車線L1,L2の両方に渋滞が発生している場合には、路側物データ47に基づき、各車線L1,L2の間に中央分離帯102があるか否かを判断する。
【0032】
具体的には、まず、制御部40は、隣接且つ対向した車線L1,L2の両方に渋滞が発生していると判断した場合、各車線L1,L2の渋滞列100,101の各始点をプローブデータ30に基づき算出し、各始点が近いか否かを判断する。各始点が近い場合には、各始点のうち、早い時刻に出現した方の始点付近を、渋滞要因が発生した地点(以下、要因発生地点P2という)として特定する。さらに、要因発生地点P2が存在する車線を、要因発生車線として判定する。図5では、図中右側の車線L2が要因発生車線となる。さらに、制御部40は、要因発生車線に隣接し、且つ対向した車線L1を、隣接車線と判定する。図5では、図中左側の車線L1を、隣接車線と判定する。
【0033】
また、制御部40は、各車線の渋滞列100,101の始点A,Bを算出すると、要因発生車線の始点Bから、要因発生車線の進行方向と逆方向の所定距離(例えば50m)内に中央分離帯102があるか否かを路側物データ47に基づき判断する。即ち、中央分離帯102が無い場合には、要因発生車線の始点Bに位置する車両Cが、始点B付近にある要因発生地点P2を避けて、隣接車線に進入可能であって、隣接車線に対する進入待ちの渋滞が発生する。また、隣接車線の車両Cは、要因発生車線からの車両Cの進入により一時待機するため、隣接車線にも渋滞が発生する。このため、中央分離帯が無い場合には、上記したように渋滞が突発性渋滞であると判断する。
【0034】
一方、図5に示すように、中央分離帯102がある場合、本実施形態では、隣接車線沿いの遮蔽物の有無を判断する。このとき制御部40は、隣接車線と要因発生車線の間であって、要因発生車線の渋滞列101の始点Bから、隣接車線の進行方向と逆方向に所定距離(例えば100メートル)までの区間を、所定範囲としての判定区間Zとする。即ち、隣接車線を走行する車両Cが要因発生地点P2に接近する際、接近途中にドライバーから要因発生地点P2付近が視認可能である場合に、要因発生地点P2に注意を向けることにより発生するいわゆる見物渋滞が発生するので、要因発生地点P2に対して接近するときのエリアに判定区間Zを設定する。
【0035】
制御部40は、判定区間Z内に遮蔽物があるか否かを路側物データ47に基づき判断する。遮蔽物が無い場合には、隣接車線から要因発生車線に対し、状況確認が可能であると判定し、隣接車線に発生した渋滞が見物渋滞であると判定する。遮蔽物が存在する場合には、隣接車線に発生した渋滞が、見物渋滞を含む突発性渋滞でないと判定する。
【0036】
次に、ナビゲーション装置10及び交通情報処理サーバ2の処理手順について、図6及び図7に従って説明する。図6は、ナビゲーション装置10のプローブデータ送信処理、図7は、交通情報処理サーバ2の渋滞要因を判定する処理を説明するフローチャートである。
【0037】
図6に示すように、ナビゲーション装置10の制御部11は、所定のタイミングで、上記したように現在位置を取得し(ステップS1−1)、走行情報を取得する(ステップS1−2)。走行情報とは、現在時刻、進行方向、速度、ブレーキペダルのオン又はオフ等である。現在位置及び走行情報を取得すると、それらのデータを用いてプローブデータ30を生成し、生成したプローブデータ30を交通情報処理サーバ2に送信する(ステップS1−3)。
【0038】
交通情報処理サーバ2は、プローブデータ30を受信すると、プローブデータ記憶部45にプローブデータ30を蓄積する。
次に、図7に従って、交通情報処理サーバ2の処理手順について説明する。まず、交通情報処理サーバ2の制御部40は、プローブデータ記憶部45に蓄積されたプローブデータ30から、所定のエリアから送信されたプローブデータ30を抽出する(ステップS2−1)。
【0039】
また、制御部40は、抽出したプローブデータ30に基づき、対向した各車線の両方に渋滞が発生したか否かを判断する(ステップS2−2)。各車線の両方に渋滞が発生していないと判断した場合には(ステップS2−2においてNO)、ステップS2−1に戻り、所定間隔で該処理を繰り返す。
【0040】
一方、対向した各車線の両方に渋滞が発生していると判断した場合には(ステップS2−2においてYES)、渋滞列100,101の始点A,Bをプローブデータ30に基づき特定する(ステップS2−3)。さらに、始点A,Bの相対距離を算出し、相対距離が所定距離以下であるか否かを判断する(ステップS2−4)。即ち、渋滞列100,101の始点A,Bが比較的近いか否かを判断する。
【0041】
上記相対距離が所定距離以下である場合には(ステップS2−4においてYES)、ステップS2−5に進む。上記相対距離が所定距離以下でない場合には(ステップS2−4においてNO)、ステップS2−1に戻る。
【0042】
ステップS2−5では、要因発生車線を特定する。このとき、始点A,Bが出現した時刻をプローブデータ30に基づき判断し、早い時刻に出現した方の始点付近に、要因発生地点P2を設定するとともに、要因発生地点P2が存在する車線を要因発生車線として特定する。
【0043】
要因発生車線を特定すると、制御部40は、上記したように、要因発生車線の始点から、要因発生車線の進行方向と逆方向の所定距離内に中央分離帯102が存在しているか否かを路側物データ47に基づき判断する(ステップS2−6)。即ち、要因発生車線の始点Bから所定距離内に相当する路側物データ47に基づき、中央分離帯の有無を判断する。
【0044】
中央分離帯102が無いと判断した場合には(ステップS2−6においてNO)、ステップS2−9に進み、各車線に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定して処理を終了する。また、中央分離帯102があると判断した場合には(ステップS2−6においてYES)、遮蔽物の有無を判断するための判定区間Zを上記したように設定する(ステップS2−7)。
【0045】
判定区間Zを設定すると、該区間において状況確認が可能であるか否かを判断する(ステップS2−8)。ここでは、制御部40は、判定区間Zにおいて遮蔽物があるか否かを路側物データ47に基づき判断する。遮蔽物が無いと判断すると、要因発生車線に対する状況確認が可能であると判断して(ステップS2−8においてYES)、各車線に発生した渋滞を、見物渋滞を含む突発性渋滞であると判定する(ステップS2−9)。
【0046】
一方、隣接した車線の間に遮蔽物があると判断すると、要因発生車線に対する状況確認が不可能であると判断して(ステップS2−8においてNO)、対向した各車線の両方に発生した渋滞を、通常の渋滞であると判定する(ステップS2−10)。
【0047】
このように、渋滞の要因を判定すると、渋滞要因、渋滞始点、渋滞区間等を含む渋滞情報を、各ナビゲーション装置10に配信する。このとき例えば、隣接車線に発生した渋滞を見物渋滞であると案内してもよい。渋滞情報を受信したナビゲーション装置10は、画像プロセッサ25を制御して、渋滞要因等を示す案内表示をディスプレイ27に表示したり、音声プロセッサ26を制御して、渋滞要因等を示す案内音声をスピーカ29から出力する。
【0048】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1実施形態では、交通情報処理サーバ2は、各車線の渋滞をプローブデータ30に基づき検出し、対向する車線上に渋滞を検出した場合に、各車線間に中央分離帯102があるか否かを判断し、中央分離帯102がある場合に、隣接車線から要因発生車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断する。そして、各車線間に中央分離帯102が無い場合に、各車線L1,L2に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定するとともに、各車線間に中央分離帯102が存在し、要因発生車線に対する状況確認が可能であると判断した際に、検出した渋滞を突発性渋滞であると判定する。このため、隣接車線を走行するドライバーから要因発生地点P2に注意が向けられることにより発生するいわゆる見物渋滞を突発性渋滞として、通常の渋滞とは区別して検出することができる。このため、例えば、渋滞要因を含む詳細な渋滞情報を、その渋滞区間の周囲を走行する車両Cに案内することができる。
【0049】
(2)第1実施形態では、交通情報処理サーバ2は、対向する各車線上に渋滞を検出した場合に、各車線の間であって、要因発生車線の渋滞列101の始点Bを基準とした判定区間Z内に遮蔽物があるか否かを判断する。そして、該遮蔽物がある場合に状況確認が可能でないと判断する。このため、状況確認が可能であるか否かを的確に判断できる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図7及び図8に従って説明する。尚、第2実施形態は、第1実施形態の処理手順を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、交通情報処理サーバ2は、図8に示す高低データ50を有している。高低データ50は、各車線の相対高さを示すデータであって、車線識別データ50A、区間50B、高さ50Cを有している。車線識別データ50Aは、車線を識別するためのデータであって、区間50Bは、その車線の高さを判定するための区間である。高さ50Cは、その区間50Bにおける、周囲の車線に対する高さを示す。高さ50Cは、例えば、「1」又は「0」といった、周囲の車線に対してどちらが高いか又は同じ高さであるかを示すフラグでもよいし、「1メートル」等の車線の道路に対する実際の相対高さを示すデータでもよい。
【0052】
図7に示すように、交通情報処理サーバ2の制御部40は、ステップS2−8において、車線間に遮蔽物があるか否かを路側物データ47に基づいて判断するとともに、高低データ50に基づき、要因発生車線が、周囲の車線よりも高い位置にあるか否かを判断する。各車線間に遮蔽物がある場合、及び要因発生車線が周囲の車線よりも高い位置にある場合には、要因発生車線の状況確認が不可能であると判断して(ステップS2−8においてNO)、通常の渋滞として判定する(ステップS2−10)。尚、要因発生車線の高低のみに基づき状況確認が可能であるか否かを判断してもよい。
【0053】
一方、ステップS2−8において、遮蔽物が無く、且つ要因発生車線が周囲の隣接車線よりも高さが低い又は同じ高さである場合には、要因発生車線の状況確認が可能であると判断して(ステップS2−8においてYES)、突発性渋滞であると判定する(ステップS2−9)。
【0054】
従って、第2実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(3)第2実施形態では、交通情報処理サーバ2は、渋滞要因が発生した要因発生車線と、該要因発生車線に隣接した隣接車線とを特定し、要因発生車線の隣接車線に対する相対高さを高低データ50に基づき判断し、要因発生車線が前記隣接車線よりも高い場合に
は、状況確認が可能でないと判断する。このため、状況確認が可能であるか否かを的確に判断できる。
【0055】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、交通情報処理システムを、交通情報処理サーバ2として具体化したが、ナビゲーション装置10として具体化してもよい。この場合、ナビゲーション装置10の制御部11は、VICS(Vehicle Information and Communication System、登録商標)から渋滞区間、始点等を含む渋滞情報を取得する渋滞検出手段、中央分離帯の有無及び状況確認の可否を判断する可否判断手段、渋滞要因を判定する判定手段とを構成する。また、路側物データ47及び交通情報処理プログラムを図示しない記憶部に記憶する。
【0056】
・第1実施形態では、要因発生車線と隣接車線とを特定した上で、各車線の渋滞が突発性渋滞であるか否かを判断したが、要因発生車線と隣接車線とを特定しなくてもよい。この場合、例えば、渋滞列100,101の始点A,Bの中間に基準点を設定し、基準点から道路に沿って双方向に所定距離内の中央分離帯の有無、遮蔽物の有無を判断しても良い。
【0057】
・路側物データ47は、視線の方向を加味したデータでもよい。即ち、車線L1から車線L2を見た場合に状況確認が妨害される遮蔽物の有無と、車線L2から車線L1を見た場合に状況確認が妨害される遮蔽物の有無とを示すデータでもよい。
【0058】
・第2実施形態では、要因発生地点P2の高さと、隣接車線に設定された所定区間との高さとを比較し、所定区間が要因発生地点P2よりも高い場合に、要因発生車線に対する状況確認が可能であると判断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】プローブシステムの概略図。
【図2】ナビゲーション装置のハードウェア構成を説明するブロック図。
【図3】プローブデータの模式図。
【図4】交通情報処理サーバのハードウェア構成を説明するブロック図。
【図5】渋滞要因を判定するための処理を説明する概念図。
【図6】プローブデータ送信処理のフローチャート。
【図7】渋滞要因を判定する処理のフローチャート。
【図8】第2実施形態の高低データの模式図。
【符号の説明】
【0060】
1…プローブシステム、2…交通情報処理システムを構成する交通情報処理サーバ、11…渋滞検出手段、可否判断手段、判定手段、制御手段としての制御部、40…渋滞検出手段、可否判断手段、判定手段、制御手段としての制御部、102…中央分離帯、A,B…始点、L1,L2…車線、Z…所定範囲としての判定区間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各車線の渋滞を検出する渋滞検出手段と、
対向する各車線上に渋滞を検出した場合に、前記各車線間に中央分離帯があるか否かを判断し、中央分離帯がある場合に、一方の前記車線から他方の前記車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断する可否判断手段と、
前記各車線間に中央分離帯が無い場合に、前記各車線に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定するとともに、前記各車線間に中央分離帯が存在し、且つ一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であると判断した際に、検出した前記渋滞を突発性渋滞であると判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする交通情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の交通情報処理システムにおいて、
前記可否判断手段は、
前記渋滞検出手段が前記各車線上に渋滞を検出した場合に、渋滞始点を基準とした所定範囲内であって前記各車線の間に遮蔽物があるか否かを判断し、該遮蔽物がある場合に状況確認が可能でないと判断することを特徴とする交通情報処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の交通情報処理システムにおいて、
前記可否判断手段は、
渋滞が先に発生した要因発生車線と、該要因発生車線に対向する隣接車線とを特定するとともに、
前記要因発生車線の前記隣接車線に対する高低を判断し、前記要因発生車線が前記隣接車線よりも高い場合には、状況確認が可能でないと判断することを特徴とする交通情報処理システム。
【請求項4】
各車線の渋滞を検出する制御手段を用いて、渋滞要因を判定する交通情報処理方法であって、
前記制御手段が、
対向する各車線上に渋滞を検出した場合に、前記各車線間に中央分離帯があるか否かを判断し、中央分離帯がある場合に、一方の前記車線から他方の前記車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断するとともに、前記各車線間に中央分離帯が無い場合に、前記各車線に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定するとともに、前記各車線間に中央分離帯が存在し、且つ一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であると判断した際に、検出した前記渋滞を突発性渋滞であると判定することを特徴とする交通情報処理方法。
【請求項5】
各車線の渋滞を検出する制御手段を用いて、渋滞要因を判定する交通情報処理プログラムであって、
前記制御手段を、
対向する各車線上に渋滞を検出した場合に、前記各車線間に中央分離帯があるか否かを判断し、中央分離帯がある場合に、一方の前記車線から他方の前記車線に対する状況確認が可能であるか否かを判断する可否判断手段と、
前記各車線間に中央分離帯が無い場合に、前記各車線に発生した渋滞を突発性渋滞であると判定するとともに、前記各車線間に中央分離帯が存在し、且つ一方の車線から他方の車線に対する状況確認が可能であると判断した際に、検出した前記渋滞を突発性渋滞であると判定する判定手段として機能させることを特徴とする交通情報処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−223796(P2009−223796A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69951(P2008−69951)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】