説明

人工筋肉及び柔軟関節機構

【課題】使用目的・使用状況に応じ剛性を任意に構成可能な駆動機構とそれを用いた柔軟関節機構を提供する。
【解決手段】駆動基盤本体に固定された二台のサーボモータとアームに固定されたプーリとの間を、複数の弾性体を束ねてなる負荷変位特性生成部1013を介して接続し、拮抗機構を構成する。複数の弾性体は例えばゴムであって、長さを異ならせることによって、サーボモータで引張したときに伸び始める点、すなわち発火点が異なるようにする。二台のサーボモータを反対方向に駆動すればプーリが回転し関節が回転する。同一方向に駆動すればプーリすなわち関節は回転しないが負荷変位特性生成部が伸縮し、プーリすなわち関節の回転剛性を可変できる。弾性体が複数あることから負荷変位特性は折れ線とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人と共生可能なロボット等の関節への応用を目的とする、回転角度及び剛性の同時制御が可能な、生物の関節により近い負荷変位特性を備えた関節機構の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
介護・福祉・医療・エンターテイメント等に従事するロボットが人間との共生空間で動作する場合、接触を考慮したアクチュエータ部の柔軟性が重要視される。しかし、作業を遂行するためのトルクも同時に持ち合わせなければならず、アクチュエータ部には柔軟かつ高トルクという相反する機能が要求される。このような目的の駆動装置は一般的なアクチュエータと区別してソフトアクチュエータと呼ばれている。現在多く普及している電機系アクチュエータを用いて上述した機能を実現することは難しく、一般に空気圧系アクチュエータ(いわゆるMcKibben型人工筋肉)が使用され、特許文献1のように拮抗機構により構成される場合が多い。ソフトアクチュエータでは、柔軟・高トルクと同時にそのトルクを任意に制御可能であることも要求され、特許文献2では拮抗部にカム機構を備えることでその機能を実現している。
【0003】
しかし、McKibben型人工筋肉を使った拮抗機構は、空気圧入のためのコンプレッサーを必要とするなど、構造が複雑にして高価であるのみならず、人工筋肉の収縮率が空気圧に対して一定でないため微細な制御が困難なものであった。それらは、工場の塗装用ロボット等に使用するには十分であるが、実際に人間と共生が可能なロボット等のシステムに使用するには問題がある。例えば、介護・福祉ロボットであれば被介護者に無機質な感覚をもたせない柔軟性、ペットロボット等であれば実際の動物と比較して違和感のない柔軟性が求められる。これを実現するには、使用目的・使用状況に応じ負荷変位特性を任意に構成可能な弾性要素と、任意の角度と任意の剛性を同時的に微細に制御可能な特性とを兼ね備えた関節機構が必要となる。
【0004】
そこで、本願の発明者は、非特許文献1において動物らしさを構成する一因として関節の柔軟性に焦点を当て、関節の角度と剛性を同時に制御可能な柔軟関節機構を提案した。
【0005】
図1は、非特許文献1の柔軟関節機構の概略図である。駆動基盤本体0101にアーム0102がアーム回転軸0103において回転可能に接続されている。この接続部分を関節部と呼ぶ。駆動基盤本体には図示されていない二台のサーボモータが関節を挟んだ両側に設置されており、ふたつのサーボ用プーリ0104及び0105はこれら二台のサーボモータの回転駆動軸に固定されている。図には示されていないが、サーボ用プーリの外周上には、紐条の部材を巻き掛けてこれが回転中に外れないように、溝が形成されている。また、アームには、関節部においてアーム用プーリ0107がその中心がアーム回転軸上になるように固定されている。図からは分からないが、アーム用プーリは二枚重ねて装着されている。ひとつは、図の左側のサーボモータの駆動力をアームに伝達するためのものであり、もうひとつは、図の右側のサーボモータの駆動力をアームに伝達するためのものである。駆動力の伝達には伸縮性のある二本のゴムベルト0108及び0109が用いられる。左側ゴムベルト0108はその一方の端が左側サーボ用プーリ0104の外周上の一点で固定されて巻き掛けられている。そして他方の端が一のアーム用プーリ0107の外周上の一点で固定されて巻き掛けられている。右側のゴムベルト0109はその一方の端が右側サーボ用プーリ0105の外周上の一点で固定されて巻き掛けられている。そしてその他方の端が別のアーム用プーリ0107の外周上の一点で固定されて先のゴムベルト0108とは反対回転方向に巻き掛けられている。
【0006】
以下に、非特許文献1の柔軟関節機構の機能・動作を説明する。以下の説明で、単に「プーリ」というときは、サーボ用プーリとアーム用プーリの両方をいうものとする。また、ゴムベルトの、プーリに巻き掛った部分を「巻き掛け部分」と呼び、プーリに巻き掛っておらず、プーリとプーリの間を略直線に結ぶ部分を「解放部分」と呼ぶこととする。
【0007】
図1の状態では、ゴムベルトは一定の力で引っ張られて緊張した状態となっている。アームになんらの負荷もかかっていないとすると、二本のゴムベルトの解放部分における張力が釣り合った状態となるように、アームは特定の関節角度で停止する。そしてアームに何らかの負荷がかかるとアームはその位置から負荷が掛かった方向に回転する。このとき、アームがその負荷に応じてどの程度回転するかは、関節部の剛性による。そして、その剛性は図1の柔軟関節機構においては、アームが二台のサーボモータによりゴムベルトを介してどの程度の力により両側に引っ張られているかによって決定される。すなわち、より強い力で両側に引っ張られると関節の剛性は高くなり、関節の動きは固くなる。逆に、より弱い力で両側に引っ張られると関節の剛性は低くなり、関節の動きは柔らかくなる。
【0008】
図2は、非特許文献1の柔軟関節機構において関節角度を変える制御の概略図である。図の左側サーボ用プーリ0204で左側ゴムベルト0208を巻きとりながら、同時に右側サーボ用プーリ0205で右側ゴムベルト0209を同じ長さだけ送り出す。アーム0202は左側サーボ用プーリが巻き上げるゴムベルトに引っ張られて反時計回りに回転する。巻き上げられるゴムベルトと送り出されるゴムベルトの長さは同一であるからゴムベルトの張力は一定に維持され、その結果、関節部0203の剛性も一定に維持される。
【0009】
図3は、非特許文献1の柔軟関節機構において関節剛性を変える制御の概略図である。上の図は、関節剛性を高くして関節の動きを固くするための制御方法を示し、下の図は、関節剛性を低くして関節の動きを柔らかくするための制御方法を示す。上の図で、左側サーボ用プーリ0304で左側ゴムベルト0308を巻きとりながら、同時に右側サーボ用プーリ0305で右側ゴムベルト0309を同じ長さだけ巻き取る。ゴムベルトが巻き上げられる長さは両側で同一であるからアーム0302の関節角度は変化することなく、関節部0303の剛性だけが高まる。
【0010】
同様に、下の図で、左側サーボ用プーリ0304で左側ゴムベルト0308を送り出しながら、同時に右側サーボ用プーリ0305で右側ゴムベルト0309を同じ長さだけ送り出す。ゴムベルトが送り出される長さは両側で同一であるからアーム0302の関節角度は変化することなく、関節部0303の剛性だけが低下する。
【0011】
上記においては、関節角度と関節剛性の一方を一定に保ちながら、他方を変化させる制御についての説明であったが、非特許文献1の柔軟関節機構においては、これらを組み合わせて順次実行することにより、両者の同時制御が可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−24772
【特許文献2】特許第3984641号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「サーボモータを用いた関節の柔軟性に関する検証」東京工芸大学 卒業論文発表会 工学部 システム電子情報学科 及び 電子情報工学科 Part I 要旨集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記非特許文献1の柔軟関節機構には解決すべきふたつの課題があった。第一の課題は、関節角度と関節剛性の同時制御が厳密には期待通りに行えない問題である。すなわち、図3で示した関節剛性の制御を行った際に、ゴムベルトの巻き掛け部分と解放部分との間でゴムベルトの張力にばらつきが生じてしまう。つまり、関節剛性を高める制御をおこなっている間、ゴムベルトの解放部分の張力は上昇し、一方アーム用プーリ外周上の巻き掛け部分の張力は元のままである。その結果、解放部分と巻き掛け部分の張力に違いが生じる。そして次に、図2で示した関節角度の制御を行った際には、一のアーム用プーリに巻き取られる解放部分と他のアーム用プーリから送り出される巻き掛け部分の張力が異なっているために、ゴムベルトの送り出された部分が伸びたり縮んだりして予定した回転角度が得られないという問題である。そして、巻き掛け部分と解放部分の張力の差が過大になると、ゴムベルトがプーリ外周上でずれ動いてしまい、アームが予期しない動きをする結果にもなった。
【0015】
上記非特許文献1の第二の課題は、その柔軟関節機構の関節部の負荷変位特性が実際の生き物のそれと異なるために、それを応用したロボットの動きがぎこちなかったり、ロボットの腕等に触った場合の感触が動物らしくない無機質なものになったりという問題である。すなわち、生き物の筋肉は、赤筋、白筋など、収縮の速さ、発生張力等の点において異なる、多種類の筋繊維が複合して形成されている。そのため、実際の生き物では、そのような筋肉により支えられている関節の剛性は負荷に対して直線的な変位を示すものではなく、曲線的で複雑な変位を示すのが通常である。これに対し、非特許文献1の柔軟関節機構では、負荷に対して略直線的な変位を示す。これはアームに負荷が掛かったときに、引っ張られるゴムベルトの張力は一定の割合で上昇するために負荷に対するアームの変位も直線的になるということである。このため、非特許文献1の柔軟関節機構は非常に無機質な感触を与える。
【0016】
以上をまとめると、特許文献1や特許文献2のアクチュエータは構造が複雑で高価なばかりか、関節角度と関節剛性の精緻な制御が困難なものであった。非特許文献1の柔軟関節機構は、関節角度と関節剛性の同時制御を簡易な構造により安価に実現しようとするものではあったが、関節角度と関節剛性の同時制御が完全なものでなく、また、関節の剛性は無機質で非生物的なものであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願の発明は、上記課題に鑑みて開発されたもので、使用目的・使用状況に応じ負荷変位特性を任意に構成可能な弾性要素と、任意の角度と任意の剛性を同時的に微細に制御可能な特性とを兼ね備えた、簡易な構造を有し安価に製造することのできる柔軟関節機構を提案するものである。
【0018】
請求項1に記載の第一発明は、前記非特許文献1の第二の課題に鑑みて開発されたものであり、これによれば、使用目的・使用状況に応じ負荷変位特性を任意に構成可能な人工筋肉が提供される。すなわち、第一発明によれば、長さおよび/または弾性の異なる複数の弾性体の両端を接合して成る負荷変位特性生成部と、サーボモータにより伸縮運動を生成する伸縮運動生成部と、制御部前記負荷変位特性生成部の一方の端と、前記サーボモータとを接続して成る接続部と制御部を有する人工筋肉が提供される。制御部
【0019】
また、請求項2に記載の第二発明は、前記非特許文献1の第一の課題に鑑みて開発されたものである。発明者は、ゴムベルトがプーリ外周上で自由に滑るようにプーリ外周上にゴムベルトを転がすための小さなローラーを多数装着することで課題を解決した。これにより、巻き掛け部分と解放部分におけるゴムベルトの張力が一定となるように、ゴムベルトは必要に応じてプーリ外周のローラー上で移動する。その結果、第二発明によれば、プーリにより巻き取られる部分と送り出される部分の張力は常に同一となり、関節の剛性及び回転角度が同時に正確に制御可能となる。すなわち、第二発明によれば、駆動基盤本体と、制御部前記駆動基盤本体に回転可能に接続され、前記駆動基盤本体により駆動される被駆動体と、制御部前記駆動基盤本体に固定された一対のサーボモータである、第一サーボモータ及び第二サーボモータと、制御部前記駆動基盤本体と前記被駆動体の接続部位において前記被駆動体に同一回転軸上で固定された一対のプーリである、第一プーリ及び第二プーリと、制御部前記一対のサーボモータの駆動力を前記被駆動体に伝達するための、弾性体を素材とする、一対の伝達部材である第一伝達部材及び第二伝達部材と制御部からなる柔軟関節機構であって、制御部前記第一伝達部材は、その一方の端が前記第一サーボモータに接続され、その他方の端は前記第一プーリにその外周上で固定されたうえで巻き掛けられ、制御部前記第二伝達部材は、その一方の端が前記第二サーボモータに接続され、その他方の端は前記第二プーリにその外周上で固定されたうえで前記第一伝達部材とは反対回転方法に巻き掛けられ、制御部前記第一プーリ及び第二プーリは、いずれも、巻き掛けられた伝達部材がその外周上で伸縮可能とするため、その外周が摩擦係数を低下させる部材又は機構を備えていることを特徴とする柔軟関節機構、が提供される。
【0020】
また、請求項3に記載の第三発明は、第二発明と同様に、前記非特許文献1の第一の課題に鑑みて開発されたものである。発明者は、伸縮可能なゴムベルトは解放部分にのみ使用し、巻き掛け部分は伸縮性のないワイヤーとすることで課題を解決した。これにより、第三発明によれば、プーリにより巻き取られる部分と送り出される部分は共に伸縮性のないワイヤーとなるため、関節の剛性及び回転角度が同時に正確に制御可能となる。すなわち、第三発明によれば、駆動基盤本体と、前記駆動基盤本体に回転可能に接続され、前記駆動基盤本体により駆動される被駆動体と、前記駆動基盤本体に固定された一対のサーボモータである、第一サーボモータ及び第二サーボモータと、前記駆動基盤本体と前記被駆動体の接続部位において前記被駆動体に同一回転軸上で固定された一対のプーリである、第一プーリ及び第二プーリと、前記一対のサーボモータの駆動力を前記被駆動体に伝達するための、一対の伝達部材である第一伝達部材及び第二伝達部材とからなる柔軟関節機構であって、前記第一伝達部材は、その一方の端が前記第一サーボモータに接続され、その他方の端は前記第一プーリにその外周上で固定されたうえで巻き掛けられ、前記第二伝達部材は、その一方の端が前記第二サーボモータに接続され、その他方の端は前記第二プーリにその外周上で固定されたうえで前記第一伝達部材とは反対回転方法に巻き掛けられ、前記第一伝達部材及び前記第二伝達部材は、プーリに巻き掛けられうる部分以外の部分の全部又は一部が弾性体により成ることを特徴とする柔軟関節機構が提供される。
【0021】
また、請求項4に記載の第四発明は、非特許文献1の二つの課題を共に解決したものであり、使用目的・使用状況に応じ負荷変位特性を任意に構成可能な弾性要素を備え、かつ、関節の剛性及び回転角度が同時に制御可能な柔軟関節機構が提供される。すなわち、第四発明によれば、請求項3の柔軟関節機構であって、前記第一伝達部材及び前記第二伝達部材は、その弾性体により成る部分が、請求項1の人工筋肉の負荷変位特性生成部であることを特徴とする柔軟関節機構が提供される。
【0022】
また、請求項5に記載の第五発明は、第二乃至第四発明の柔軟関節機構に、関節の剛性を一定に保ったまま関節角度を変えることのできる関節角度制御部を組み合わせたものである。すなわち、第五発明によれば、請求項2乃至4の柔軟関節機構であって、
一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引すると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ送り出すことによって、関節の剛性を保持したまま前記被駆動体を回転させる関節角度制御部
をさらに有するが提供される。
【0023】
また、請求項6に記載の第六発明は、第二乃至第四発明の柔軟関節機構に、関節の角度を一定に保ったまま関節剛性を変えることのできる関節剛性制御部を組み合わせたものである。すなわち、第六発明によれば、請求項2乃至4の柔軟関節機構であって、
一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引すると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ牽引することによって、関節の角度を保持したまま関節の剛性を高め、あるいは、
一の伝達部材を一のサーボモータにより送り出すと同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ送り出すことによって、関節の角度を保持したまま関節の剛性を和らげる関節剛性制御部
をさらに有するが提供される。
【0024】
また、請求項7に記載の第七発明は、第二乃至第四発明の柔軟関節機構に、関節の剛性と関節角度とを同時に制御することのできる回転角及び剛性同時制御部を組み合わせたものである。すなわち、第七発明によれば、請求項2乃至4の柔軟関節機構であって、
一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引又は送り出しすると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて牽引又は送り出しすることによって、被駆動体の回転角及び関節の剛性を同時に制御する回転角及び剛性同時制御部
をさらに有するが提供される。
【発明の効果】
【0025】
以上の発明によれば、使用目的・使用状況に応じ負荷変位特性を任意に構成可能な弾性要素と、任意の角度と任意の剛性を同時的に微細に制御可能な特性とを兼ね備えた、柔軟関節機構を、簡易かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】非特許文献1の柔軟関節機構の概略図
【図2】非特許文献1の柔軟関節機構において関節角度を変える制御の概略図
【図3】非特許文献1の柔軟関節機構において関節剛性を変える制御の概略図
【図4】実施例1の人工筋肉の概略図
【図5】実施例1の人工筋肉の負荷変位特性生成部の機能を説明する図
【図6】実施例1の負荷変位特性生成部の負荷変位特性を表すグラフ
【図7】実施例2の柔軟関節機構の図
【図8】実施例2の柔軟関節機構で使用される第一プーリ及び第二プーリの構造図
【図9】実施例3の柔軟関節機構の図
【図10】実施例4の柔軟関節機構の図
【図11】実施例5の柔軟関節機構の関節角度制御部のハードウェア構成図
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施例1は第一発明に関する。実施例2は第二発明に関する。実施例3は第三発明に関する。実施例4は第四発明に関する。実施例5は第五発明に関する。実施例6は第六発明に関する。実施例7は第七発明に関する。
【実施例1】
【0028】
〈〈概略〉〉
第一の発明は、使用目的・使用状況に応じ負荷変位特性を任意に構成可能な人工筋肉、に関する。図4は、実施例1の人工筋肉の概略図である。回転駆動軸0401にプーリ0402が取り付けられたサーボモータ0403がある。前記プーリの外周には、紐状の部材を巻き掛けることができ、回転中に紐が外れないように溝0404が形成されている。そしてその外周上の一点0405において伸縮性のないワイヤー0406の端が固定され、ワイヤーはプーリ外周に巻き掛けられている。ワイヤーのもう一方の端0407には、伸縮性及び/又は長さの異なる複数の紐状のゴム0408が接続されている。前記複数のゴムの他方の端0409は相互に接続されている。
【0029】
図5は、実施例1の人工筋肉の負荷変位特性生成部の機能を説明する図である。図5の人工筋肉の負荷変位特性生成部は三本のゴム、A、B及びCの両端を接合することにより形成されている。これらのゴムはAのゴムが最も短く、Cのゴムが最も長い。(I)図では、Aのゴムが緊張し、他のゴムは弛んだ状態である。すなわち、負荷変位特性生成部の負荷変位特性はAのゴムのそれと同一である。(II)図は、(I)図から進んで、サーボモータ0503を駆動させてプーリ0502によりワイヤー0506をすこし巻き上げた図である。ここでは、AのゴムがBのゴムの発火点(ゴムが伸び始めるところをいう)まで伸びたために今度はAだけでなくBのゴムも緊張した状態になっている。この状態では負荷変位特性生成部の負荷変位特性はAとBのゴムを併せたものの負荷変位特性となっており、(I)のときよりも負荷変位特性が小さく(すなわち、筋肉が硬く)なっている。(III)図は、(II)図から進んで、プーリによりワイヤーをさらに巻き上げた図である。ここでは、A及びBのゴムがCのゴムの発火点まで伸びたために今度はA及びBだけでなくCのゴムも緊張した状態になっている。この状態では負荷変位特性生成部の負荷変位特性はA、B及びCの三本のゴムを併せたものの負荷変位特性となっており、(II)のときよりも負荷変位特性がさらに小さく(すなわち、筋肉がさらに硬く)なっている。
【0030】
図6は、実施例1の負荷変位特性生成部の負荷変位特性を表すグラフである。横軸が変位、縦軸が負荷となっている。概念の説明のための図であるので、ひと目盛の大きさはここでは特定しない。図中、Aとあるのは、Aのゴムの負荷変位特性という意味であり、他も同様である。Aがグラフの原点から一定の傾きで上昇しているのは、Aの発火点を横軸の原点にしたという意味である。BとCが横軸の途中から上昇を始めているのは、それぞれの発火点が1及び2単位の長さということである。線の傾きはゴムの伸びやすさを示しており、傾きが緩やかであるほどよく伸びる、あるいは、傾きが急であるほど同じ変位を得る(つまり、同じ長さだけ伸ばす)のに、力を要するという意味である。実施例1の負荷変位特性生成部の負荷変位特性はグラフの「A+B+C」で表わされる折れ線である。すなわち、伸び始めは柔らかいが途中で二回、すなわち、変位1の場所と変位2の場所で硬さが増すということである。
【0031】
実施例1の負荷変位特性生成部は三本のゴムによりなるためその負荷変位特性も簡単な折れ線にすぎないが、伸縮性や発火点の異なる多数のゴムを自在に組み合わせることによりいかような負荷変位特性でも作りだすことが出来る。但し、負荷変位特性の曲線は常に下に凸となる。すなわち、最初は固いが途中から柔らかくなるという負荷変位特性は作れない。しかし、生物の関節の動きは動き始めに遊びがある下に凸の負荷変位特性を有すると考えられるから、本発明の目的を達するにはこれで十分である。
【0032】
〈〈構成要件〉〉
以下に、第一発明の構成要件を説明する。第一発明の人工筋肉は、負荷変位特性生成部と、伸縮運動生成部と、接続部とを有する。
【0033】
「負荷変位特性生成部」は、「長さおよび/または弾性の異なる複数の弾性体の両端を接合して成る。」負荷変位特性生成部の構造は図4及び5において説明したが、ここでは若干の説明を付け加える。
【0034】
「弾性体」とは、弾性を有するものであれば何でもよい。すなわち、「弾性」とは、力を加えると変形するが力を除くと元に戻る性質をいい、弾性体としては、上記のゴムのほか、ばねが含まれる。弾性体の形状は、両端を接合しやすいような、紐状あるいは帯状とするのがよい。「紐状」とは、形状が細長く、かつ、繊維のように曲がって形状が変化できる状態を意味する。必ずしも断面の形状が丸や正多角形に近いものである必要はない。「帯状」とは、紐よりも幅のある状態であり、例えば、薄い板状のゴムである。また、コイル状のばねであっても、それを数本束ねることにより上記の機能を発揮できる十分な長さがあれば、「紐状」に含まれる。また、輪ゴムの二点を固定して伸ばす場合にも、それは二本の紐状のゴムを両端で接合したものと構造が同一といえるから「紐状」に含まれる。
【0035】
「両端を接合」する方法は問わない。上記の機能を発揮できる方法であればよい。
【0036】
「伸縮運動生成部」は、「サーボモータにより伸縮運動を生成する。」すなわち、前記負荷変位特性生成部は、人工筋肉において生き物らしい負荷変位特性を生成するためのものであるが、それ自体収縮運動を制御できるものではない。伸縮運動生成部は人工筋肉において収縮運動の駆動力となる部分でり、その駆動力はサーボモータから得るものである。
【0037】
「サーボモータ」は、位置、速度等を制御するためのモータであり、通常、回転角度や移動位置を測定するための検出器を備えている。これまでの説明では駆動部が回転する方式のサーボモータを想定して説明してきたが、駆動部が直線運動を行うリニア式サーボモータもあり、人工筋肉のような伸縮運動を生成し制御するにはリニア式サーボモータのほうが相性がよいかもしれない。なぜなら、ロボットの棒状の腕に組み込む場合には細長い形状のリニア式サーボのほうが装着しやすく、またプーリを必要としないため巻き取りによるトラブルがないからである。
【0038】
「接続部」は「前記負荷変位特性生成部の一方の端と、前記サーボモータとを接続して成る。」接続部は、サーボモータの駆動力を負荷変位特性生成部に伝達する機能を有する。サーボモータが回転駆動式であれば紐状のロープあるいは帯状のベルトとすればよいし、リニア式のサーボモータであれば、針金状のロッドとすればよい。
【0039】
実施例1の人工筋肉は、上記のように、使用目的・使用状況に応じ負荷変位特性を任意に構成可能な人工筋肉を提供するものである。
【実施例2】
【0040】
〈〈概略〉〉
【0041】
図7は、実施例2の柔軟関節機構の図である。駆動基盤本体0701と被駆動体0702とが回転可能に関節部0703において接続されている。関節部の回転軸上には、第一プーリ0704及び第二プーリ0705が被駆動体に固定されている。駆動基盤本体には、二つのリニア式サーボモータである、第一サーボモータ0706及び第二サーボモータ0707が対置されている。それぞれのサーボモータから左右に突出した爪0708はその駆動部であり、この爪が上下に移動する作りとなっている。ゴム製にして紐状の第一伝達部材0709は、その一方の端が第一サーボモータの爪に固定され、他方の端は第一プーリの外周上の一点で固定され、これに巻き掛けられている。また、同じくゴム製にして紐状の第二伝達部材0710は、その一方の端が第二サーボモータの爪に固定され、他方の端は第二プーリの外周上の一点で固定され、第一伝達部材とは反対回転方向に巻き掛けられている。
【0042】
図8は、実施例2の柔軟関節機構で使用される第一プーリ及び第二プーリの構造図である。左図はプーリの回転軸を含む平面での断面図である。右図は、プーリの回転軸と垂直な平面による断面図であり、プーリの厚みの中間点での断面図である。プーリ本体0801は、その外周上に溝が形成されており、その溝の中に多数のローラー0802が回転可能に装着されている。それぞれのローラーにも紐状の部材を支持しやすいように溝0803が形成されている。
【0043】
実施例2の柔軟関節機構の機能・動作は基本的に非特許文献1のそれと同様である。すなわち、一のサーボモータにより一の伝達部材を牽引すると同時に、他のサーボモータにより他の伝達部材を送り出すことにより関節の回転角度を制御することが出来、また、両方のサーボモータにより両方の伝達部材を牽引することにより関節の剛性を高め、あるいは、両方のサーボモータにより両方の伝達部材を送り出すことにより関節の剛性を低くすることが出来る。そして、前者と後者の制御を組み合わせることにより関節の角度及び剛性を同時に自在に制御することが出来る。
【0044】
実施例2の柔軟関節機構と非特許文献1のそれとの相違は、プーリを図8にて説明したように、巻き掛けられた伝達部材がその外周上で自由に伸縮又は移動できるようにしたことで上述の、非特許文献1の柔軟関節機構が有する第一の課題を解決した点にある。
【0045】
〈〈構成要件〉〉
以下に、第二発明の構成要件を説明する。第二発明の柔軟関節機構は、駆動基盤本体と、被駆動体と、第一サーボモータと、第二サーボモータと、第一プーリと、第二プーリと、第一伝達部材と、第二伝達部材と、を有する。
【0046】
「駆動基盤本体」は、一組のサーボモータが設置可能であり、また、被駆動体と共に関節を構成するに必要な強度を備えれば、その材質、形状を問わない。駆動基盤本体の形状は、関節が生物の肘関節を模したものであれば棒状となろうし、肩関節であれば胴体のように大きなものになろう。
【0047】
「被駆動体」も、駆動基盤本体と同様、材質、形状を問わない。駆動基盤本体と被駆動体は相対的に「回転可能に接続」される。この回転可能な接続部がいわゆる関節を構成する。
【0048】
「第一サーボモータ」及び「第二サーボモータ」は上記実施例2の〈〈概略〉〉で述べた機能を果たすための伸縮運動の駆動力になりうるものであればどのようなものでもよい。実施例2ではリニア式のサーボモータが使用されているが、実施例1の人工筋肉のように、プーリを装着した回転駆動式のサーボモータでも構わない。これらのサーボモータは、「駆動基盤本体に固定」される。
【0049】
「第一プーリ」及び「第二プーリ」は、「前記駆動基盤本体と前記被駆動体の接続部位において前記被駆動体に同一回転軸上で固定」される。これは、図7に示した通り、両プーリの回転軸と上記関節の回転軸とが同一直線上に重なるように、両プーリが被駆動体に固定されるという意味である。
【0050】
「第一伝達部材」及び「第二伝達部材」は、「前記一対のサーボモータの駆動力を前記被駆動体に伝達するための、弾性体を素材とする、一対の伝達部材である。」「弾性体」の意味は実施例1で説明したと同様である。弾性体の形状は紐状あるいは帯状にするとよい。「紐状」とは、形状が細長く、かつ、繊維のように曲がって形状が変化できる状態を意味する。必ずしも断面の形状が丸や正多角形に近いものである必要はない。「帯状」とは、紐が幅をもった状態をいい、たとえば、ベルトのような板状の形状をいう。
【0051】
「前記第一伝達部材は、その一方の端が前記第一サーボモータに接続され、その他方の端は前記第一プーリにその外周上で固定されたうえで巻き掛けられ、前記第二伝達部材は、その一方の端が前記第二サーボモータに接続され、その他方の端は前記第二プーリにその外周上で固定されたうえで前記第一伝達部材とは反対回転方法に巻き掛け」られる。伝達部材のプーリへの巻き掛け方は、非特許文献1の柔軟関節機構や図7で説明したとおりである。伝達部材のサーボモータへの接続の方法は、サーボモータがリニア式であれば、図7で説明したとおりその駆動部に直接接続することとなろうし、サーボモータが回転駆動式であれば、非特許文献1の柔軟関節機構で説明したようにプーリへ巻き掛ける方法になろう。
【0052】
「前記第一プーリ及び第二プーリは、いずれも、巻き掛けられた伝達部材がその外周上で伸縮可能とするため、その外周が摩擦係数を低下させる部材又は機構を備えていることを特徴とする。」「その外周が摩擦係数を低下させる機構」の一例が、前述の外周上にローラーを備えた実施例2のプーリであり、その構造については図8で説明した。但し、伝達部材が板状のベルトである場合には、ローラー自体に溝が必ずしも形成されている必要はない。要は、プーリの外周上で伝達部材がプーリから脱輪することなく「収縮可能」であればよい。装着されるローラーは、プーリが伝達部材を十分滑らかに巻き上げられるものであれば数を問わない。「その外周が摩擦係数を低下させる部材」は、その外周が摩擦係数が低い材料若しくはそのような表面処理することによりその機能が実現可能である。また、この機能は、弾性伝達部材をより低摩擦係数部材で構成することによりより効果がある。
これら低摩擦な材料としては、例えば、フッ素系やテフロン(登録商標)系の周知の潤滑性樹脂やこれらの樹脂コーティングにより実現できる。また、これらの潤滑粉やシリカのような潤滑粉や周知の潤滑油をプーリと弾性伝達部材の間に介在させることによっても効果が得られる。
【0053】
非特許文献1の柔軟関節機構が有する課題の一つは、一のアーム用プーリに巻き取られる解放部分と他のアーム用プーリから送り出される巻き掛け部分の張力が異なっているために、ゴムベルトの送り出された部分が伸びたり縮んだりして予定した回転角度が得られないという問題であった。実施例2の柔軟関節機構は、伝達部材がプーリ上で自由に伸縮可能とすることで、伝達部材が解放部分と巻き掛け部分で常に同一の張力を有するようにし、この課題を解決した。実施例2の柔軟関節機構は、関節角度及び剛性をより精緻に制御することのできる関節機構である。
【実施例3】
【0054】
〈〈概略〉〉
【0055】
図9は、実施例3の柔軟関節機構の図である。実施例3の柔軟関節機構も、非特許文献1のそれが有する第一の課題を、実施例2の柔軟関節機構とは、違った方法で解決するものである。すなわち、第一プーリ0904及び第二プーリ0905にローラーを装着するのではなく、第一伝達部材0911及び第二伝達部材0912の巻き掛け部分が常に非弾性体となるように、弾性体を巻き掛けられうる部分以外(図の伝達部材の黒く塗りつぶした部分)にのみ使用して、解放部分と巻き掛け部分の張力が不一致となる事態を回避した。
【0056】
〈〈構成要件〉〉
以下に、第三発明の構成要件を説明する。第三発明の柔軟関節機構は、駆動基盤本体と、被駆動体と、第一サーボモータと、第二サーボモータと、第一プーリと、第二プーリと、第一伝達部材と、第二伝達部材と、を有する。以下では、これらの構成のうち、実施例2の柔軟関節機構と異なる点のみを説明する。ここで説明しない部分は、実施例2の柔軟関節機構と同様である。
【0057】
「第一プーリ」及び「第二プーリ」は、特にローラーを備えている必要はなく、通常のものでよい。
【0058】
「第一伝達部材」及び「第二伝達部材」は、「プーリに巻き掛けられうる部分以外の部分の全部又は一部が弾性体により成ることを特徴とする。」伝達部材は、関節の動きによってプーリに巻き取られたり送り出されたりするのであるが、「プーリに巻き掛けられうる部分」とは、プーリに巻き取られる可能性がある部分をいう。そして、それ「以外の部分」とは、どのような使用状況にあっても、プーリに巻き取られることがない部分である。実施例3の柔軟関節機構は、この「それ以外の部分」の「一部」にのみ弾性体を使用することにより、伝達部材が解放部分と巻き掛け部分とで異なる張力を有する事態を回避するものである。「プーリに巻き掛けられうる部分」は伸縮性のない部材とする。
【0059】
実施例3の柔軟関節機構は、実施例2の柔軟関節機構と同様に、非特許文献1の柔軟関節機構とが有する第一の課題を解決しており、関節角度及び剛性をより精緻に制御することのできる関節機構である。
【実施例4】
【0060】
〈〈概略〉〉
実施例4の柔軟関節機構は、実施例1の人工筋肉における負荷変位特性生成部を実施例3の柔軟関節機構における弾性体使用部位に応用することで、非特許文献1の柔軟関節機構が抱えていた二つの課題を同時に解決するものである。
【0061】
図10は、実施例4の柔軟関節機構の図である。伝達部材の巻き掛けられうる部分以外の部分に実施例1の人工筋肉の負荷変位特性生成部1013が使用されている。
【0062】
〈〈構成要件〉〉
以下に、第四発明の構成要件を説明する。第四発明の柔軟関節機構は、駆動基盤本体と、被駆動体と、第一サーボモータと、第二サーボモータと、第一プーリと、第二プーリと、第一伝達部材と、第二伝達部材と、を有する。以下では、これらの構成のうち、実施例3の柔軟関節機構と異なる点のみを説明する。ここで説明しない部分は、実施例3の柔軟関節機構と同様である。
【0063】
「第一伝達部材」及び「第二伝達部材」は、「その弾性体により成る部分が、請求項1の人工筋肉の負荷変位特性生成部であることを特徴とする。」
【0064】
実施例4の柔軟関節機構は、伝達部材の巻き掛けられうる部分以外の部分に弾性体を採用したことにより関節角度及び剛性をより精緻に制御することができるようになっただけでなく、使用目的・使用状況に応じ負荷変位特性を任意に構成可能な負荷変位特性生成部を採用したことにより、その関節の剛性は、生き物の関節のそれのように、自然で温かみのある感触を人に感じさせることのできるものとなった。
【実施例5】
【0065】
〈〈概略〉〉
実施例5の柔軟関節機構は、実施例2乃至4の柔軟関節機構であって、関節剛性を一定に維持しながら関節角度を制御するための制御部をさらに有する柔軟関節機構である。関節剛性を一定に維持しながら、関節角度を変える制御方法については、非特許文献1の柔軟関節機構について、図2を用いて説明したのでここでは繰り返さない。
【0066】
〈〈構成要件〉〉
実施例5の柔軟関節機構は、実施例2乃至4の柔軟関節機構であって、関節角度制御部をさらに有する。
「関節角度制御部」は、「一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引すると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ送り出すことによって、関節の剛性を保持したまま前記被駆動体を回転させる」制御部である。このような機能についても既に説明したので、ここでは、そのハードウェア構成についてのみ説明する。
【0067】
図11は、実施例5の柔軟関節機構の関節角度制御部のハードウェア構成図である。関節角度制御部1115は、サーボモータに電力を供給するとともにサーボモータを電子的に制御する制御手段1117、及び所定の条件に従って制御手段に指令を与える司令手段1116を有する。司令手段は、各種演算処理を行うCPU1118と、プログラムやデータを保持するためのROMなどの外部記憶装置1121と、プログラムやデータを一時的に記憶して保持するメモリ1119と、制御手段と通信を行うための通信IF1120を備えている。そしてそれらがデータ通信経路であるシステムバス1122によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。外部記憶装置に保持されたプログラムは必要に応じてメモリに読みだされ、CPUは当該プログラムをメモリに参照することで各種演算処理を実行する。また、このメモリにはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、CPUの演算処理においては、そのアドレスを特定し格納されているデータにアクセスすることで、データを用いた演算処理を行うことが可能になっている。制御手段は、柔軟関節機構1101に設置された二台のサーボモータ1106・1107に接続され、司令手段から受けた指令に基づいてサーボモータを制御する。このような、サーボモータ、制御手段、司令手段からなるサーボ機構を使った制御装置は当業者においてはひろく知られたものである。
【実施例6】
【0068】
〈〈概略〉〉
実施例6の柔軟関節機構は、実施例2乃至4の柔軟関節機構であって、関節角度を一定に維持しながら関節剛性を制御するための制御部を組み合わせた柔軟関節機構である。関節角度を一定に維持しながら、関節剛性を変える制御方法については、非特許文献1の柔軟関節機構について、図3を用いて説明したのでここでは繰り返さない。
【0069】
〈〈構成要件〉〉
実施例6の柔軟関節機構は、実施例2乃至4の柔軟関節機構と、関節剛性制御部とを有する。柔軟関節機構については、既に詳しく説明した。
「関節剛性制御部」は、「一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引すると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ牽引することによって、関節の角度を保持したまま関節の剛性を高め、あるいは、一の伝達部材を一のサーボモータにより送り出すと同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ送り出すことによって、関節の角度を保持したまま関節の剛性を和らげる」装置である。このような機能についても既に説明した。関節剛性制御部のハードウェア構成についても、既に説明した実施例5のそれと異ならないので説明を省略する。
【実施例7】
【0070】
〈〈概略〉〉
実施例7の柔軟関節機構は、実施例2乃至4の柔軟関節機構に、関節角度と関節剛性とを同時に制御するための制御部を組み合わせた柔軟関節機構である。関節角度と関節剛性とを同時に制御する方法については、非特許文献1の柔軟関節機構において説明したのでここでは繰り返さない。
【0071】
〈〈構成要件〉〉
実施例7の柔軟関節機構は、実施例2乃至4の柔軟関節機構と、回転角及び剛性同時制御部とを有する。柔軟関節機構については、既に詳しく説明した。
「回転角及び剛性同時制御部」は、「一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引又は送り出しすると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて牽引又は送り出しすることによって、被駆動体の回転角及び関節の剛性を同時に制御する」装置である。このような機能についても既に説明した。回転角及び剛性同時制御部のハードウェア構成についても、既に説明した実施例5のそれと異ならないので説明を省略する。
【符号の説明】
【0072】
1013 負荷変位特性生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さおよび/または弾性の異なる複数の弾性体の両端を接合して成る負荷変位特性生成部と、
サーボモータにより伸縮運動を生成する伸縮運動生成部と、
前記負荷変位特性生成部の一方の端と、前記サーボモータとを接続して成る接続部と
を有する人工筋肉。
【請求項2】
駆動基盤本体と、
前記駆動基盤本体に回転可能に接続され、前記駆動基盤本体により駆動される被駆動体と、
前記駆動基盤本体に固定された一対のサーボモータである、第一サーボモータ及び第二サーボモータと、
前記駆動基盤本体と前記被駆動体の接続部位において前記被駆動体に同一回転軸上で固定された一対のプーリである、第一プーリ及び第二プーリと、
前記一対のサーボモータの駆動力を前記被駆動体に伝達するための、弾性体を素材とする、一対の伝達部材である第一伝達部材及び第二伝達部材と
からなる柔軟関節機構であって、
前記第一伝達部材は、その一方の端が前記第一サーボモータに接続され、その他方の端は前記第一プーリにその外周上で固定されたうえで巻き掛けられ、
前記第二伝達部材は、その一方の端が前記第二サーボモータに接続され、その他方の端は前記第二プーリにその外周上で固定されたうえで前記第一伝達部材とは反対回転方法に巻き掛けられ、
前記第一プーリ及び第二プーリは、いずれも、巻き掛けられた伝達部材がその外周上で伸縮可能とするため、その外周が摩擦係数を低下させる部材又は機構を備えていることを特徴とする柔軟関節機構。
【請求項3】
駆動基盤本体と、
前記駆動基盤本体に回転可能に接続され、前記駆動基盤本体により駆動される被駆動体と、
前記駆動基盤本体に固定された一対のサーボモータである、第一サーボモータ及び第二サーボモータと、
前記駆動基盤本体と前記被駆動体の接続部位において前記被駆動体に同一回転軸上で固定された一対のプーリである、第一プーリ及び第二プーリと、
前記一対のサーボモータの駆動力を前記被駆動体に伝達するための、一対の伝達部材である第一伝達部材及び第二伝達部材と
からなる柔軟関節機構であって、
前記第一伝達部材は、その一方の端が前記第一サーボモータに接続され、その他方の端は前記第一プーリにその外周上で固定されたうえで巻き掛けられ、
前記第二伝達部材は、その一方の端が前記第二サーボモータに接続され、その他方の端は前記第二プーリにその外周上で固定されたうえで前記第一伝達部材とは反対回転方法に巻き掛けられ、
前記第一伝達部材及び前記第二伝達部材は、プーリに巻き掛けられうる部分以外の部分の全部又は一部が弾性体により成ることを特徴とする柔軟関節機構。
【請求項4】
請求項3の柔軟関節機構であって、
前記第一伝達部材及び前記第二伝達部材は、その弾性体により成る部分が、請求項1の人工筋肉の負荷変位特性生成部であることを特徴とする柔軟関節機構。
【請求項5】
請求項2乃至4の柔軟関節機構であって、
一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引すると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ送り出すことによって、関節の剛性を保持したまま前記被駆動体を回転させる関節角度制御部
をさらに有する柔軟関節機構。
【請求項6】
請求項2乃至4の柔軟関節機構であって、
一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引すると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ牽引することによって、関節の角度を保持したまま関節の剛性を高め、あるいは、
一の伝達部材を一のサーボモータにより送り出すと同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて同一駆動長だけ送り出すことによって、関節の角度を保持したまま関節の剛性を和らげる関節剛性制御部
をさらに有する柔軟関節機構。
【請求項7】
請求項2乃至4の柔軟関節機構であって、
一の伝達部材を一のサーボモータにより牽引又は送り出しすると同時に他方の伝達部材を他方のサーボモータにおいて牽引又は送り出しすることによって、被駆動体の回転角及び関節の剛性を同時に制御する回転角及び剛性同時制御部
をさらに有する柔軟関節機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−131305(P2011−131305A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291427(P2009−291427)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(597040902)学校法人東京工芸大学 (28)
【Fターム(参考)】