説明

人工骨材の製造方法

【課題】原料中にクロムが含有されている場合でも、六価クロム溶出量が少ない骨材を提供することである。
【解決手段】無機系材料を連続式焼成窯で焼成することによって人工骨材を製造する方法であって、前記窯内に、前記無機系材料100体積部に対して0.1〜10mm径の可燃性物質が3〜30体積部の割合で、該無機系材料と該可燃性物質とを供給し、無機系材料と可燃性物質とを共存させて焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工骨材の製造方法に関する。特に、クロムを含有する原料を焼成して製造する人工骨材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高吸水性の骨材の開発・利用が進められている。すなわち、吸水性の骨材を路盤に利用した場合、雨水等の水を吸って保持する。従って、水の供給がなくても、太陽光などのエネルギーが供給されると、保持された水が気化し、気化熱によって周囲温度を低下させる。よって、現在、都市部で問題になっているヒートアイランド対策として、路盤に高吸水性骨材を用いることが期待されている。
【0003】
さて、高吸水性の骨材(人工骨材)は、原料を焼成炉で焼成し、焼結させて製造される。原料としては、一般的には、頁岩等の天然資源が用いられる。但し、近年、廃棄物の有効利用の観点から、石炭灰等の廃棄物焼却灰を用いることが提案されている。すなわち、上記廃棄物焼却灰(通常、これ等の焼却灰は粉末状のものである。)に水を加えて造粒し、ロータリーキルン等の焼成窯で焼成することによって、高吸水性の骨材(人工骨材)が得られている。
【0004】
ところで、上記産業廃棄物焼却灰中には、クロム(三価もしくは六価のクロム。通常は、三価のクロムが多い。)が含まれている場合が多い。そして、この種の焼却灰が人工骨材の原料として用いられた場合、特に、大気雰囲気下において、1000℃以上の高温で焼成された場合、三価クロムは六価クロムに酸化されている。そして、融点以上の高温で溶融・焼結されると、六価クロムは骨材中に固定される場合も有るが、固定されず、即ち、水に浸漬された場合、水相に移動(溶出)する六価クロムも有る。
【0005】
この六価クロムは環境基準で目標値が定められている。すなわち、水質基準では0.05mg/L以下、土壌環境基準では溶出液が0.05mg/L以下とされている。従って、上記した如く、完全に溶融していない骨材(固定されていない六価クロムを有する骨材)を路盤・盛土などに利用した場合、上記環境基準値が護られない恐れが有る。
【0006】
さて、六価クロムを低減する方法として、還元剤を同時に添加して焼成する方法が提案されている。例えば、セメントクリンカの品質を損なわずにセメントクリンカ中に含まれる六価クロムを低減させることができるセメントを提供することを目的として、ロータリーキルン内で最も高温になる位置よりロータリーキルンの被焼成物出口側にある被焼成物中に可燃性物質を添加、例えばロータリーキルンの被焼成物出口側から被焼成物入口に向かってキルン内径Dの約4倍奥の位置からロータリーキルンの被焼成物出口までの範囲、或いはクリンカクーラの入口部にある被焼成物上に、主燃料に比べて燃焼速度の遅い可燃性物質あるいは主燃料と同様の燃焼速度を有しかつ主燃料よりも粗い粒の可燃性物質を添加する技術が提案(特開平11−100244号公報)されている。
【0007】
又、冷却時に固形可燃物の混入がなく、有害な六価クロムの含有量が減少したセメントクリンカ(又は、該クリンカを使用した水硬性材料)を提供することを目的として、クリンカークーラに導入されたセメントクリンカの温度が850℃〜1000℃となる領域に、5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物を供給する技術が提案(特開2002−211961号公報)されている。
【0008】
又、有害な六価クロムの溶出の無いセメントクリンカを提供することを目的として、セメントクリンカの焼成工程で、造粒中の原料粒子乃至クリンカ粒子の内部に存在する六価クロム(Cr6+)を還元し得るように可燃物を供給するセメントクリンカの製造方法において、六価クロム(Cr6+)を還元する条件が、クリンカークーラ側からキルン内に、粒径が1mm〜4mmであって微粉炭の粒度より大きい粒度の可燃物を供給する技術が提案(特開2003−73154号公報)されている。
【特許文献1】特開平11−100244号公報
【特許文献2】特開2002−211961号公報
【特許文献3】特開2003−73154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、上記提案の技術は、セメント製造に関する技術ではあるが、六価クロムを低減する技術であることから、人工骨材の製造に際しても同様に適用できるであろうと思われた。
【0010】
そこで、上記提案の技術を人工骨材の製造に適用した。
ところが、思惑は全く外れたものであった。すなわち、六価クロムの溶出が基準値を超えるものであった。
【0011】
従って、本発明が解決しようとする課題は、原料中にクロムが含有されている場合でも、六価クロム溶出量が少ない骨材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記提案のセメント製造技術を骨材製造技術に援用した場合に起きた問題点(六価クロムの溶出量が多い)の原因に対する追究が、本発明者によって、鋭意、推し進められて行った。
【0013】
その結果、次のようなことに起因しているのであろうことが判って来た。
すなわち、セメント製造は、湿式方式で、かつ、溶融状態で焼成される為、クリンカ間の空間が少なく、上記技術でも十分な還元効果が得られている。これに対して、骨材焼成は、乾式方式であり、かつ、骨材間に隙間が有り、そうであるが故に、空気(気体)との接触面積が大きい。従って、セメント製造の場合に比べて、骨材の製造の場合には、含有されているクロムは酸化され易く、上記提案の技術では六価クロムが出来易いのであろうと考えられた。
【0014】
よって、上記提案の技術よりも遥かに酸化され難い雰囲気下で焼成すれば問題が解決できるであろうとの啓示を得るに至ったのである。そして、より酸素が少ない焼成雰囲気で粉末を焼成して骨材を製造した場合、これは、予想通り、六価クロムの溶出量が少ない骨材であることが判った。
【0015】
上記知見に基づいて本発明が達成されたものである。
すなわち、前記の課題は、
無機系材料を連続式焼成窯で焼成することによって人工骨材を製造する方法であって、
前記窯内に、前記無機系材料100体積部に対して0.1〜10mm径の可燃性物質が3〜30体積部の割合で供給し、
焼成時に無機系材料と可燃性物質とが共存するようにする
ことを特徴とする人工骨材の製造方法によって解決される。
【0016】
又、上記人工骨材の製造方法であって、好ましくは、無機系材料100体積部に対して可燃性物質が3〜15体積部の割合で供給することを特徴とする人工骨材の製造方法によって解決される。
【0017】
又、上記人工骨材の製造方法であって、好ましくは、クロム含有量が100〜2000mg/kg、又は大気雰囲気中において1000℃で焼成した場合に六価クロムの溶出量が0.05mg/Lを超える量のクロムを含有する廃棄物を含む無機系材料を焼成することによって人工骨材が製造される方法である。
【0018】
又、上記人工骨材の製造方法であって、好ましくは、可燃性物質が石炭、コークス、活性炭、木炭、プラスチック、廃棄物固形燃料の群の中から選ばれる一種または二種以上のものであることを特徴とする人工骨材の製造方法によって解決される。
【発明の効果】
【0019】
六価クロムの溶出量が少ない骨材がクロムを含有する産業廃棄物(無機系原料:骨材原料)より得られる。すなわち、クロム含有廃棄物を原料として得た骨材を路盤材として用いても、六価クロムの溶出量が少なく、再資源化技術として有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は人工骨材の製造方法である。特に、無機系材料を焼成することによって人工骨材を製造する方法である。例えば、製紙スラッジ焼却灰、フライアッシュ、建設発生土など廃棄物の群の中から選ばれる一種または二種以上のものを焼成することによって人工骨材を製造する方法である。特に、粒状のものを焼成することによって人工骨材を製造する方法である。更には、クロム含有量が100〜2000mg/kgの廃棄物を含む無機系材料を焼成することによって人工骨材を製造する方法である。或いは、大気雰囲気中において1000℃で焼成した場合に六価クロムの溶出量が0.05mg/Lを超える量のクロムを含有する廃棄物を含む無機系材料を焼成することによって人工骨材を製造する方法である。焼成温度は、好ましくは、800〜1250℃である。これは、焼成温度が低すぎると、得られた骨材の強度が乏しく、逆に、高すぎると、得られた骨材の空隙率が乏しく、吸水性に富む骨材が得られ難いからである。より好ましい焼成温度は1000〜1200℃である。すなわち、800〜1250℃(特に、1000℃以上。1200℃以下)の温度で焼成する焼成工程を有する。焼成には連続式焼成窯が用いられる。そして、連続式焼成窯内に、上記の無機系材料と可燃性物質とが共存(例えば、混合物、可燃性物質で被覆、或いは隣接設置など)するように供給(例えば、投入。或いは、圧縮ガスによって吹き込む)され、焼成される。無機系材料と可燃性物質との供給量は、無機系材料100体積部に対して0.1〜10mm径の可燃性物質が3〜30体積部の割合である。尚、可燃性物質が0.1〜5mm径の比較的小さなものである場合は、無機系材料100体積部に対して可燃性物質は、好ましくは、特に、5〜30体積部の割合である。そして、このような比較的小さなものが用いられる場合には、圧縮ガスを用いて連続式焼成窯内に吹き込む方式を採用するのが好ましい。可燃性物質が5〜10mm径の比較的大きなものである場合は、無機系材料100体積部に対して可燃性物質は、好ましくは、特に、5〜25体積部の割合である。特に、好ましくは、上記無機系材料100体積部に対して可燃性物質が0.5〜15体積部の割合で該無機系材料と該可燃性物質とが焼成時に共存するよう供給することである。可燃性物質として、例えば石炭、コークス、活性炭や木炭(以上は炭化物燃料)、プラスチック、或いは廃棄物固形燃料などが用いられる。
【0021】
以下、更に詳しく説明する。
先ず、骨材原料を用意する。原料としては、クロムを含有する焼却灰または処理土壌が用いられる。具体的には、クロム含有量100mg/kg以上の焼却灰とか処理土壌が用いられる。本発明によれば、原料に含まれるクロム含有量が100mg/kg以上でも、製造後の六価クロム溶出量が0.05mg/L以下の骨材が得られる。尚、原料のクロム含有量が2000mg/kgより多くなると、例えば可燃性物質の添加量が多く必要となり、可燃物の燃焼による温度上昇が甚だしくなり、焼成操作が不安定となる。従って、原料におけるクロム含有量は2000mg/kg以下であることが好ましい。
【0022】
用いられる焼却灰には、石炭火力発電所の微粉炭燃焼灰、流動層燃焼石炭灰、コークス灰、ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰、製紙スラッジ焼却灰、廃プラスチック焼却灰などが挙げられる。尚、焼却灰は、その平均粒径が44μm以下のものが好ましい。その理由は、これより大きいと、造粒が困難となったからである。
【0023】
上記焼却灰の中、製紙スラッジ焼却灰は、主成分としてCa,Al等の無機成分を持つ。そして、製紙スラッジ焼却灰は多孔質であることから、焼却灰の中でも製紙スラッジ焼却灰は好ましいものである。この他、薪、木炭、廃材、食品絞りカス等の有機質原料からの灰分は、その内部構造が多孔質なものであることから、高吸水性の特徴を持つ。従って、これら多孔質系の焼却灰を原料として焼結した骨材は高吸水性の骨材となるので、多孔質系の焼却灰は本発明の骨材原料として好ましい。
【0024】
上記焼却灰の他にも建設発生土を用いることが出来る。例えば、建設残土、汚染土壌、浚渫土などを用いることが出来る。建設発生土は、シルト質土が80%以上含まれているものが好ましい。それは、砂分が多いと、造粒が困難であったからによる。
尚、上記各種焼却灰や建設発生土は、必要に応じて粉砕し、粉末原料とする。
【0025】
そして、骨材原料(例えば、粉末あるいは粒子)に水を混合して数mm〜十数mmの造粒物を作成する。この造粒に際しては、ベントナイト等の無機物やリグニン等の有機物などの造粒助剤を用いて造粒しても良い。そして、造粒には、例えば圧縮成型機(ロールプレス等)、転動造粒機(パンペレタイザ等)、攪拌造粒機(アイリッヒミキサ等)等の造粒機が用いられる。
【0026】
造粒後、800℃以上(特に、1000℃以上)の温度で焼成を行う。焼成には、例えばロータリーキルンが用いられる。このロータリキルン内に上記造粒物と可燃性物質とが供給され、そして焼成が行なわれる。
【0027】
可燃性物質としては、例えば石炭、コークス、活性炭、木炭などの炭化物燃料が用いられる。或いは、プラスチックや廃棄物固形燃料などを用いることも出来る。尚、前記の中から選ばれる一種のものが用いられるのみでも、二種以上のものが用いられても良い。要するに、燃焼によって、酸素が消費されるものであれば良い。
【0028】
上記造粒物(骨材原料)と可燃性物質とは、両者が混合している状態で焼成域を通過するのが好ましい。造粒物(骨材原料)と可燃性物質とはロータリーキルン内で攪拌されながら焼成域を通過する。この時、可燃性物質(可燃性物質の燃焼雰囲気)は造粒物(骨材原料)が存在している空間の酸素を遮断し、三価クロムが六価クロムに酸化されるのを抑制する。又、場合によっては、造粒物(骨材原料)と可燃性物質(可燃性物質の燃焼雰囲気)とが接触している部分において、六価クロムが三価クロムに還元される。
【0029】
可燃性物質の添加(供給:送入)方法は造粒物(骨材原料)送入側の窯尻でも、焼成物出口側の窯前のどちらからでも良い。窯尻から添加される場合には、造粒物(骨材原料)と共に送入される。可燃性物質が非常に小さい場合には、焼成域に到達する前に燃焼してしまい、効果が得られ難い。逆に、大き過ぎる場合には、表面積が小さい為、原料と可燃性物質との接触面積が小さくなる為、これ、また、効果が得られ難い。従って、可燃性物質は、その80%以上のものが、0.1〜10mm径のものであることが好ましい。そして、上記のような特徴の可燃性物質は次のような割合で添加されることが好ましい。造粒物(骨材原料)100体積部に対して可燃性物質が3〜30体積部の割合である。可燃性物質が0.1〜5mm径の比較的小さなものである場合は、造粒物(骨材原料)100体積部に対して可燃性物質は、特に、5〜30体積部の割合である。可燃性物質が5〜10mm径の比較的大きなものである場合は、造粒物(骨材原料)100体積部に対して可燃性物質は、特に、5〜25体積部の割合である。これは、可燃性物質が少な過ぎる場合には、焼成域に到達するまでの間に可燃性物質は燃焼してしまい、目的とするCrの酸化抑制効果が弱く、逆に、可燃性物質が多すぎる場合には、焼成域における焼成温度のコントロールが困難となるからである。
【0030】
窯前から投入される場合には、空気と共に圧送し、ステンレスパイプ等のパイプを通して投入する。投入箇所は焼成域よりも窯尻側にする。可燃性物質の粒径が小さい場合には焼成域に到達する前に燃焼してしまい、効果が得られ難いものの、窯尻から投入される場合に比べて、可燃性物質の燃焼域の通過時間が短い為、比較的小さくても良い。そして、可燃性物質が大き過ぎる場合には、表面積が小さい為、造粒物(骨材原料)と可燃性物質(可燃性物質の燃焼雰囲気)との接触面積が小さくなる為、効果が得られ難い。又、空気圧送が困難となる。従って、可燃性物質は上記特徴のものが好ましいものとした。
【0031】
以下、具体的実施例を挙げて本発明を説明する。
[実施例1]
人工骨材の原料として、平均粒径が18.3μmの製紙スラッジ焼却灰を用いた。尚、この製紙スラッジ焼却灰のCr含有量は180mg/kgであった。
【0032】
この製紙スラッジ焼却灰を、先ず、パンペレタイザで平均径が5〜15mmのものに造粒した。
そして、この造粒物(密度:1.75)を内熱のロータリーキルン内に投入した。又、可燃性物質(コークス(密度:1.8))を窯前から空気圧送した。
この後、1000℃で焼成を行った。
【0033】
そして、焼成して得られた骨材の六価クロム溶出量を調べたので、その結果を表−1に示す。
表−1
造粒物投入量 コークス吹込量 窯前焼成域付近での Cr6+溶出量
(kg/h) (kg/h) コークス量/造粒物量 (mg/L)
2500 0 0 0.10
2500 100 0.003 0.06
2500 150 0.012 0.05
2500 200 0.028 0.02以下
*窯前焼成域付近でのコークス量/造粒物量は、窯前焼成域付近より採取したものをコークスと造粒物とに分離し、体積比を算出した。
*Cr6+溶出量は環境庁告示46号に準じて行なった。
【0034】
これによれば、焼成域において可燃性物質/造粒物(製紙スラッジ焼却灰造粒物)が体積比で0.005〜0.15となるよう、即ち、可燃性物質と造粒物とを0.03〜0.3の割合でロータリキルンに投入して焼成した場合、Cr6+溶出量が基準値以下の骨材が得られていることが判る。
【0035】
しかも、この焼成物、即ち、製紙スラッジ焼却灰製の骨材は多孔質系のものであった。従って、保水性に富む骨材である。
【0036】
[実施例2]
人工骨材の原料として、平均粒径が11.3μmのフライアッシュを用いた。尚、このフライアッシュのCr含有量は135mg/kgであった。
【0037】
このフライアッシュを、先ず、パンペレタイザで平均径が5〜15mmのものに造粒した。
そして、この造粒物(密度:1.71)を内熱のロータリーキルン内に投入した。又、可燃性物質(コークス)を窯前から空気圧送した。
この後、1000℃で焼成を行った。
【0038】
そして、焼成して得られた骨材の六価クロム溶出量を調べたので、その結果を表−2に示す。
表−2
造粒物投入量 コークス吹込量 窯前焼成域付近での Cr6+溶出量
(kg/h) (kg/h) コークス量/造粒物量 (mg/L)
2500 0 0 0.06
2500 100 0.001 0.05
2500 150 0.008 0.03
2500 200 0.012 0.02以下
*窯前焼成域付近でのコークス量/造粒物量は、窯前焼成域付近より採取したものをコークスと造粒物とに分離し、体積比を算出した。
*Cr6+溶出量は環境庁告示46号に準じて行なった。
【0039】
これによれば、焼成域において可燃性物質/造粒物(フライアッシュ造粒物)が体積比で0.005〜0.15となるよう、即ち、可燃性物質と造粒物とを0.03〜0.3の割合でロータリキルンに投入して焼成した場合、Cr6+溶出量が基準値以下の骨材が得られていることが判る。
【0040】
しかも、この焼成物、即ち、フライアッシュ製の骨材は多孔質系のものであった。従って、保水性に富む骨材である。
【0041】
[実施例3]
人工骨材の原料として、シルト質の建設発生土を用いた。尚、この建設発生土のCr含有量は212mg/kgであった。
【0042】
このシルト質の建設発生土を、先ず、パンペレタイザで平均径が5〜15mmのものに造粒した。
そして、この造粒物(密度:1.51)を内熱のロータリーキルン内に投入した。又、可燃性物質(コークス)を窯前から空気圧送した。
この後、1000℃で焼成を行った。
【0043】
そして、焼成して得られた骨材の六価クロム溶出量を調べたので、その結果を表−3に示す。
表−3
造粒物投入量 コークス吹込量 窯前焼成域付近での Cr6+溶出量
(kg/h) (kg/h) コークス量/造粒物量 (mg/L)
2000 0 0 0.12
2000 100 0.004 0.04
2000 150 0.011 0.02以下
2000 200 0.025 0.02以下
*窯前焼成域付近でのコークス量/造粒物量は、窯前焼成域付近より採取したものをコークスと造粒物とに分離し、体積比を算出した。
*Cr6+溶出量は環境庁告示46号に準じて行なった。
【0044】
これによれば、焼成域において可燃性物質/造粒物(建設発生土造粒物)が体積比で0.005〜0.15となるよう、即ち、可燃性物質と造粒物とを0.03〜0.3の割合でロータリキルンに投入して焼成した場合、Cr6+溶出量が基準値以下の骨材が得られていることが判る。

特許出願人 太平洋マテリアル株式会社
代 理 人 宇 高 克 己


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機系材料を連続式焼成窯で焼成することによって人工骨材を製造する方法であって、
前記窯内に、前記無機系材料100体積部に対して0.1〜10mm径の可燃性物質が3〜30体積部の割合で供給し、
焼成時に無機系材料と可燃性物質とが共存するようにする
ことを特徴とする人工骨材の製造方法。
【請求項2】
クロム含有量が100〜2000mg/kg、又は大気雰囲気中において1000℃で焼成した場合に六価クロムの溶出量が0.05mg/Lを超える量のクロムを含有する廃棄物を含む無機系材料を焼成することによって人工骨材を製造する方法である
ことを特徴とする請求項1の人工骨材の製造方法。
【請求項3】
可燃性物質が石炭、コークス、活性炭、木炭、プラスチック、廃棄物固形燃料の群の中から選ばれる一種または二種以上のものである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の人工骨材の製造方法。


【公開番号】特開2009−132565(P2009−132565A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310119(P2007−310119)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】