説明

付加的に発酵させたジスチラーズ・グレインの、高血糖値の予防及び/又は治療のための使用

本発明の対象は、ヨーグルトのカルチャー及び/バターのカルチャーで発酵させたジスチラーズ・グレインの、高血糖値の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明の対象は、ヨーグルトのカルチャー及び/バターのカルチャーで発酵させたジスチラーズ・グレイン(Getreideschlemp)の、高血糖値の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための使用である。
【0002】
ジスチラーズ・グレインは多数の栄養生理学的に重要な成分、例えば残留炭水化物、脂肪、繊維質その他を含み、従ってこれは長い間飼料として動物飼育に、特に豚の肥育に重要な役割を果たしてきた。
【0003】
特に、酵母カルチャーで発酵させた(糖化した)ジスチラーズ・グレイン中にまだなお含有される繊維質及びビタミンは、この本来の「廃棄物」を価値のある二次原料にし、とりわけ人間の栄養にもする。
【0004】
従ってWO01/10245から食品、食事療法食及び食品添加物の製造方法が公知であり、前記方法は燃焼槽から直接的に取り出されたジスチラーズ・グレイン、即ち酵母で発酵させたジスチラーズ・グレインから出発する。前記ジスチラーズ・グレインを乾燥させずに濃縮した後で、これをミルクで、ヨーグルトのカルチャー及び/又はバターのカルチャーで更に発酵させる。この際本質的に4つの相互に引き続く方法工程が実施され、その際まず
a)ジスチラーズ・グレインを特定の圧力範囲で約15〜17%のTM(乾燥質量)に濃縮し、次いで
b)これをヨーグルトのカルチャー又はバターのカルチャーで接種したミルクと混合し、引き続き
c)ヨーグルトのカルチャーで38〜48℃の温度で10〜20時間発酵させるか、又はバターのカルチャーで18〜24℃の温度で36時間まで発酵させ、最後に
d)この予備生成物を更なるミルク又はミルク濃縮物と混合して、15℃を下回る温度に冷却し;場合により更に、付加的なスプレー乾燥工程が、粉体状でかつ貯蔵安定性の生成物を得るために引き続く。
【0005】
前記方法により安定な液状生成物としても貯蔵安定性の粉体としても得られる前記生成物は、栄養生理学的に価値のある全粒産物及びタンパク質産物を提供し、これは慎重かつ付加的に実施した発酵に基づいて変わらず高い繊維質割合で、このデンプン割合はほぼ完全に取り去られ、その際残留デンプン含量は最高で4質量%が達成される。
【0006】
全粒品、特に全粒米の栄養生理学的な特性に関連して、精殻した産物に比較して、これらがインスリン感受性及び血中脂肪値を顕著に改善することが可能であることが見出された(Jang Y. et al :"Consumption of Whole Grain and Legume Powder reduces Insulin Demand, ..., in Patients with Coronary, Artery Disease : Randomized Controlled Clinical Trial"; Arteroscler. Thromb. Vasc. Biol. 21 : 2065-2071,2001)。
【0007】
JP10146166より生理活性組成物が公知であり、前記組成物は特にビール醸造ジスチラーズ・グレイン又は前記ジスチラーズ・グレインからの水性抽出物を含有してよい。これらの酵母のみで発酵させたジスチラーズ・グレインは癌及び癌に関連した症状の治療のために使用され、その際特に糖尿病及び肥満も挙げられている。
【0008】
JP2002−371003によれば発酵させた小麦材料の濃縮した抽出物は糖尿病の治療に適するものであり、その際前記抽出物は特に血糖値レベルの上昇を妨げるものである。この抗糖尿病の効果は、マウス集団に対して酵母のみで発酵させた小麦抽出物を使用して証明された。
【0009】
特に糖尿病II型及びこれに関連した(予備)形態は産業国で、また社会文化的な変化によりますます発展途上国でも、かつ若年群で、既に現在、しかし特に未来に、保健政策的にまた国民経済的にも重要な役割を果たしている。
【0010】
糖尿病はもはやとうてい害のない老齢の同伴症状ではなく、深刻な代謝障害であり、これは生命を短縮する後続疾病を生じ、例えば心筋梗塞、卒中、腎障害、失明、又はいわゆる”糖に条件付けられた”切断術を生じる。
【0011】
国民経済的観点からは、特にこれらの糖尿病により条件付けられていてかつ恐れられている合併症は、高いコストのもととなっている。特に、糖尿病II型で顕性でありかつ前記症候群を数年先行するインスリン抵抗性は、これは年齢の進行と共に上昇するが、早期に認識するだけでなく前記の典型的な糖尿病症状を予防すべく処置することが必要である。
【0012】
従って本発明に対して、特に栄養生理学的な特性に基づいて、病理学的に高い血糖値を予防するか、及び/又は既に高い血糖値を下降させることに適している組成物を調製する課題が課せられる。この際十分に天然の、容易に入手可能であり、かつ可能な限り本来獲得される効果の他に、更にその他の有利な影響を身体の物質代謝に発揮できる組成物の使用が重要である。
【0013】
前記課題は、酵母での発酵に付加的に、ヨーグルトのカルチャー及び/又はバターのカルチャーでも発酵させたジスチラーズ・グレインの、高血糖値の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための使用により解決された。
【0014】
ジスチラーズ・グレインは、アルコールの蒸留による分離により、穀物由来の炭水化物含有原料の発酵から得た液状残留物である。前記ジスチラーズ・グレインは、糖化した原料の非発酵成分及び酵母細胞の残留物を含有している。それぞれ100kgの発酵させた穀物に5〜7%の乾燥残留物を有する約500lのジスチラーズ・グレイン(pH3.6〜4.0)が割り当てられる。前記乾燥残留物はおよそ半分は可溶性の、もう半分は不溶性の成分からなる。
【0015】
意外にも規則的な本発明の適用は高血糖値を顕著に、一定の低下した値に成すことが可能であることが明らかになった。
【0016】
高血糖値の判断には空腹時及び/又は食後(2時間の)血糖値とが区別される。空腹時血糖値≧110mg/dlは高血糖値に相当し、≧110mg/dl及び<126mg/dlの空腹時血糖値では前糖尿病の状態であり、そして≧126mg/dlの空腹時血糖値では糖尿病である。食後血糖値≧140mg/dlは高血糖値に相当し、≧140mg/dl及び<200mg/dlの食後血糖値では前糖尿病の状態であり、そして≧200mg/dlの食後血糖値では糖尿病である。
【0017】
本発明の関連において、ヨーグルトのカルチャー及び/又はバターのカルチャーで完全に発酵させたジスチラーズ・グレインの使用、特に有利には残留デンプン含量がこのジスチラーズ・グレインの総質量に対して最大で4質量%であるジスチラーズ・グレインの使用が極めて適することが明らかになった。
【0018】
有利な変形として本発明によるジスチラーズ・グレインの、前糖尿病及び/又は糖尿病及び/又は前記病のための素因、及び前記病に関連する形態及び/又は予備形態を有する患者の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための使用が示される。この際通常有利には、IA型及びIB型、IIA型及びIIB型の糖尿病及び/又は若年者の常染色体遺伝糖尿病である。
【0019】
前糖尿病は臨床的な症状、例えば高血糖、糖尿その他なしに、通常の耐糖能を有する段階であり、この段階は真性糖尿病の発生に数年先行してよい。この前糖尿病の適応は回顧的な診断に非強制的に基づき、尤も大抵は受胎と糖尿病の認識の間の期間に関係する。
【0020】
糖尿病I型又はインスリン依存型糖尿病は、完全なインスリン欠乏まで身体固有のインスリン分泌の徐々の枯渇を伴う、遺伝的な素因による糖尿病形態である。事実上小児の年齢で生じるIA型では、おそらくウィルス感染が発現促進性に作用するようである。成人のIB型では、これは35歳までの年齢で生じるが、しばしば島細胞抗体が血清中に見出される。前記型はたびたび他の自己免疫疾患と共に生じる。この治療は食事療法並びにインスリン補充からなる。
【0021】
糖尿病II型又はインスリン依存型糖尿病は、大抵はより高い年齢で、しばしばよく生じ、遺伝的に条件付けられているかもしれない。まれなIIA型では通常の体重であるが、その一方で大抵の患者はIIB型であり、前記患者は体重過剰である。糖尿病II型では、制限されたか、維持されたか又は部分的に高くさえあるインスリン分泌並びに低下した組織インスリン感受性にあり、これにより後々の年齢における完全なインスリン欠乏まで相対的なインスリン欠乏にある。従って糖尿病II型の後々の年齢においてインスリン療法はどうしても頻繁に直面しなくてはならないものである。これらは体重減少、食事療法及び場合により経口抗糖尿病剤により治療される。前記の若年者の常染色体遺伝糖尿病、MODY(maturity onset diabetes of the youngの略称)は異なる、通常は後々の合併症なしの臨床的に緩慢な進行を有する。前記糖尿病は独自の糖尿病形態であり、これは典型的には25歳の年齢以前に発生し、高いインスリン分泌、副次的なインスリン抵抗性及び肥満症が付随して起こる。前記糖尿病型は体重減少により治療される。インスリン及び経口抗糖尿病剤を用いた治療は求められないが一生にわたる物質代謝制御は必要である。
【0022】
本発明によるジスチラーズ・グレインは前述した糖尿病型の治療に適していて、というのはこの際、血糖値の減少が求められるか又は血糖値収支の可能な限り少ない負荷が達成されるからである。
【0023】
更に、本発明によるジスチラーズ・グレインは有利には、糖尿病に関連する形態及び/又は予備形態の予防及び/又は治療に使用される。これには二次的な糖尿病の形態、二次性糖尿病の形態、潜在性糖尿病、不顕性糖尿病、減少した耐糖能及び/又は臨床的に顕性である糖尿病が挙げられる。
【0024】
潜在性糖尿病は非病理的な経口ブドウ糖負荷試験値を有する人の場合に存在し、既知の負荷により高い確率を有する前記試験値は糖尿病を予想してよい。
【0025】
不顕性糖尿病は
1.経口ブドウ糖負荷試験で通常値を有し、負荷状況、例えば妊娠、感染、ストレス又は体重増加(肥満症)下で病理学的な値を示す人、
2.誘発試験の際に病理学的な血糖曲線を示す人
の場合に存在する。
減少した耐糖能は、
1.経口グルコース負荷試験において病理学的な値を有する人(前記試験の際空腹時血糖値が110mg/dlを下回る)
2.経口グルコース負荷試験において病理学的な値を示す人(前記試験の際空腹時血糖値が≧110mg/dl及び<126mg/dlを有する)、
3.食後血糖値≧140mg/dl及び200mg/dlを有する人
のことを指す。
【0026】
臨床的に顕性である糖尿病は、病理的な血糖値及び尿糖排出を有する患者の場合に、並びに主として糖尿病の典型的な症状及び場合により合併症を有する場合に存在する。
【0027】
二次性糖尿病の形態には膵疾患、例えばヘモクロマトーシス、内分泌疾患、例えば末端肥大症、薬により条件付けられた糖尿病、例えばステロイド糖尿、及び減少した耐糖能及び/又は妊娠糖尿病の他の形態が挙げられる。妊娠糖尿病の場合には、妊娠は発現促進の意味合いで作用するか、又は場合によりこの代謝状態を既に発現した真性糖尿病の場合に悪化させる。これらはインスリンを義務づけられた糖尿病の形態である。出産後このインスリン要求は顕著に下降する。糖尿病に関連した形態及び/又は予備形態の場合には同様に高血糖値の下降が治療により誘発されるので、前記の発酵させたジスチラーズ・グレインの本発明による使用は、前記の形態及び/又は予備形態の予防及び/又は治療に適している。
【0028】
本発明の枠内において糖尿病II型(糖尿病2型)、及び前記病に関連する形態及び/又は予備形態を有する患者の場合の使用が特に適することが示された。
【0029】
全体として、この特別な発酵させたジスチラーズ・グレインを本発明により、体重の減少化のために、特に有利には体重の同時の減少化のために使用することが可能であり、これは特に4週間で>1の顕著に改善したボディ・マス・インデックス(BMI)を示す。
【0030】
これに関連して本発明は、肥満症を有する患者の予防及び/又は治療のための、特に肥満症を有しかつ同時に高い空腹時血糖値を有する患者の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための有利な使用変形を考慮する。本発明により使用されるジスチラーズ・グレインにより、前記の同時に高い空腹時血糖値を有する肥満症の患者を、配慮して、かつこの患者の栄養習慣に劇的な干渉なしに十分に成功して治療することが可能であり、というのもこの製品の効果は単純な体重増加により引き起こされる効果を超えているからである。
【0031】
この使用した複数回発酵させたジスチラーズ・グレインの前記の有利な特性の組み合わせは予測できるものではない。
【0032】
この発酵させたジスチラーズ・グレインは、本発明の枠内において従って有利には、治療による適用も治療によらない適用にも関する。
【0033】
更なる有利な変形として本発明により使用されるジスチラーズ・グレインは、メタボリックシンドロームを有する患者の予防及び/又は治療に使用されてよい。WHOの定義(World Health Organization (1999), Definition, diagnosis and classification of diabetes mellitus and its complications. Part 1 : Diagnosis and classification of diabetes mellitus. WHO :(WHO/NCD/NCS/99.2))によればインスリン抵抗性の検出の他に以下の判定基準:
−高血圧療法耐性及び/又は血圧>160/90mmHgとして定義された高血圧症
−高血漿トリグリセリド(≧1.7mmol)及び又は低HDLコレステロール(男性で<0.9mmol、女性で<1.0mmol)として定義された異脂肪血症
−肥満症のBMI(30kg/m)及び/又はウェスト/腰回り指数(女性で>0.85及び男性で>0.9)、
−ミクロアルブミン尿症(アルブミン排出率(20μg/M))
の2つを満たす場合に、メタボリックシンドロームを有する。
糖尿病II型を示すか又は減少した耐糖能を示す場合には、前述の判断基準の2つを満たす時にメタボリックシンドロームを有する。
【0034】
特に有利にはインスリン抵抗性、動脈硬化、脂質代謝障害、タンパク質代謝障害及び/又は炭水化物代謝障害を有する患者の予防及び/又は治療のための本発明による適用である。意外にも規則的な本発明による適用の場合には、特に遺伝的な素因を有する人の場合にこのインスリン感受性が顕著にかつ持続的に改善されてよく、その際血糖値レベルもインスリンレベルも、極めて低い水準に維持されることが示された。この際ジスチラーズ・グレインはほぼインスリン中性であることが示され、そのためこのインスリン−飢餓スパイラルは極めて少ない程度でのみ動作する。
【0035】
これに対して、同様に予測できない観測、糖尿病の関連においてメタボリックシンドロームの決定的であると考慮すべき因子の改善が特に、それ以外に通常の厳しい減少食事療法なしでも達成されてよいとの観測に至り、これはおそらくはこの使用したジスチラーズ・グレインの極めて低いグリセミック・インデックス(GI)のためである。前記グリセミック・インデックスは炭水化物含有食料を、その血糖を上昇させる作用により分類する。前記グリセミック・インデックスは、数値で前記炭水化物又は炭水化物含有食料の血糖値を上昇させる作用を示す。グルコースの血糖値を上昇させる作用が参考として用いられ、100の参考値を割り当てられて有する。GIは血糖値曲線下面積として定義され、即ち50のGIは、空腹時の値を超えてこの製品の血糖値上昇が血中グルコース値の上昇の半分にしかならないことを意味する。より高いグリセミック・インデックスは70〜100で、中間的な指数は55〜70で、より低いグリセミック・インデックスは55を下回ると定義される。更に、フルクトサミン、血圧並びに血中脂肪トリアシルグリセリド及びコレステロールの減少を達成できる。
【0036】
本発明による使用は特に、特別に製造されたジスチラーズ・グレインの使用に基づき、例えばこれはWO01/10245に記載されている。従って有利には、ジスチラーズ・グレインを燃焼槽から直接的に取り出し、次いで乾燥させずに濃縮し、引き続きミルクで、及びヨーグルトのカルチャー及び/又はバターのカルチャーで発酵させることにより製造したジスチラーズ・グレインを、本発明により使用することが提案される。
【0037】
a)粗製であってかつ酵母カルチャーで、大抵はアルコール発酵の枠内で前発酵させたジスチラーズ・グレインを100〜800mbarの圧力で約15〜17%のTM(乾燥質量)に濃縮し、
次いで
b)ヨーグルトのカルチャー及び/又はバターのカルチャーで既に接種したミルクと混合し、
c)この混合物をヨーグルトのカルチャーで38〜48℃の温度で10〜20時間発酵させるか
又は
この混合物をバターのカルチャーで18〜24℃の温度で36時間まで発酵させ、この後に
d)更なるミルク又はミルク濃縮物と混合し、15℃を下回る温度に冷却し、
かつ
e)このジスチラーズ・グレインを場合により最後にスプレー乾燥する
ことにより製造したジスチラーズ・グレインの使用が特に適することが示された。
【0038】
このようにして、繊維質の豊富な、タンパク質含有の全粒産物を得、このカルチャーは、例えば非加熱ではあるが殺菌した液状組成物中でプロバイオティクスの特性を発揮する。更に、このように複数回発酵させたジスチラーズ・グレインは、必須脂肪酸、生命に必要なビタミン、無機質、及び微量元素を含有する。この後に続くスプレー乾燥によりこの使用したカルチャーはその生存能力を失い、これにより前記生成物を更に安定かつ貯蔵安定性になる。この貯蔵の間に場合によっては高まる湿分含量をも、前記発酵物は再度組み込んではならない。
【0039】
このように得られた生成物には無論、更なる、そして特に発酵可能な添加物が供給されてもよく、前記添加物はこの終産物の特性に、付加的に有利に影響を及ぼす。従って、例えば蜂蜜、レシチン及び/又は大豆タンパク質はジスチラーズ・グレインと合して複合混成物になってよいことが見出された。レシチン、タンパク質とジスチラーズ・グレインの単独の物質グループとの化学的/物理的相互作用により、その化学的、物理的及び生物学的な挙動に関して前記の単独の成分の挙動とは著しく異なる栄養素系が生じる。無論、無機質、ビタミン、フレーバー剤、芳香剤、及び着色剤と、スプレー乾燥した生成物との単なる混合も、未スプレー乾燥の生成物との単なる混合も可能であり、これはこの生成物の多様性を付加的に向上させる。
【0040】
強調されるのは、ジスチラーズ・グレインベースの全ての可能な生成物にフレーバー及び匂いに関して特別な品質を有させることが可能であり、これはもはや典型的な粗ジスチラーズ・グレインを想起させることがなく、従って消費者に極めて良好に受容されるものであり、これによって特により高いコンプライアンスを示すことである。
【0041】
原則的に、請求した範囲内の使用は特別な出発材料に制限されないが、小麦ベース、大麦ベース、ライ麦ベース、エンバクベース、トウモロコシベース及び/又は米ベースのジスチラーズ・グレインが推奨される。
【0042】
獲得される作用の達成のためには、この使用したジスチラーズ・グレインは本発明の範囲内で、100〜400g、有利には150〜300g、特に有利には200〜250gの一日量で与えられるものであり、その際一日当たり2〜5回の一回量、及び特に同サイズの一回量が推奨される。
【0043】
理想的な投与形態として前記ジスチラーズ・グレインに関しては、粘性のある状態のジスチラーズ・グレインが示され、その際有利には前記ジスチラーズ・グレインを、水又は発酵させたミルクに、とりわけ有利にはサワーミルク、バターミルク、ヨーグルト、クワルク(Quark)又はケフィア(Kefir)に混ぜ入れて与える。
【0044】
所望に応じて、この調製物を甘味料、例えばフルクトース(砂糖代替品)、シクラマート又はサッカリンでも調味してよい。しかし前記調製物は家庭用砂糖(サッカロース)、ブドウ糖(グルコース)及び麦芽糖(マルトース)を含有してはならない。前記ジスチラーズ・グレインはフルーツティー又はフルーツジュース又はこれらを含有する飲料中に混ぜ入れられていてもよいが、フルーツジュースはフルーツティーとは対照的に大抵は砂糖を含んでおり、これはインスリン上昇を介して脂肪燃焼を妨げるものである。全体として、この使用される混入媒体はあまりに多くの砂糖もあまりに多くの脂肪も含有してはならないことを考慮すべきである。
【0045】
本発明は同様に、前記ジスチラーズ・グレインを食物代用品として及び/又は食物補充品として与えることを考慮し、これを特に有利には少なくとも3週間の連続した期間にわたり実施されたい。健康が許すのであれば、本発明による使用を特に有利には期間に関して時間的に制限せずに実施してよい。
【0046】
所望であるか又は医学的に推奨される場合には、本発明による使用を、更なる抗糖尿病作用性の又は糖尿病予防性の作用物質と組み合わせて及び/又は一緒に、有利には抗糖尿病II型作用性の又は糖尿病II型予防性の作用物質と組み合わせて及び/又は一緒に行ってもよく、これによりこの所望の結果が付加的に増強される。
【0047】
特に有利には、栄養補助食品、機能性食品(Functional Food)及び/又は特別用途食品の形で、及び/又はこれらと組み合わせて、及び/又はこれらと一緒でのこの提案された使用である。
【0048】
栄養補助食品は食料であり、これはその栄養価に関して健康な人の一日の通常の栄養を補助すべく消費される食料であり、この通常の栄養からの1種以上の栄養素に関するその補給はぎりぎりであるか、はっきりしないか又は不十分である。目的は、身体に栄養素又はその他の栄養生理学的に作用する物質、例えばビタミン、無機質、微量元素、必須脂肪酸、アミノ酸、タンパク質及び又は炭水化物を含む物質を十分に供給することである。
【0049】
「Functional Food」、機能性食料又は機能性食品は、特別な付加的有用性(前記食品に含まれる栄養素の栄養生理学的有用性に付け加わった付加的有用性)を有する食品として定義されている。前記付加的有用性は、特定の物質の添加により又は本来の特性の変更により、例えば遺伝子技術により達成される。最も頻繁に添加される物質はこの際ビタミン、微量元素、プロバイオティクス物質及びプレバイオティクス物質、特定の脂肪酸又は脂肪代替物、二次的な植物内包物又は酵素である。
【0050】
特別用途食品には、例えば特殊栄養、殺菌食、乳幼児のためのミルク不含特別用途食品、乳幼児の栄養のためのラクトースアレルゲンの少ない特別用途食品その他が属する。栄養補助食品、機能性食品及び/又は特別用途食品の形で、及び/又はこれらと組み合わせての前記の提案した使用により、患者のコンプライアンスは更に顕著な上昇を経て、かつ前記ジスチラーズ・グレインの有利な作用は、その他の作用物質により増強され及び/又は補助される。
【0051】
これは特に、前記ジスチラーズ・グレインをクレアチン、クレアチン一水和物、α−リポ酸、フィトステロール、複数不飽和の脂肪酸及び/又はリン脂質並びにこれらの誘導体及び/又は混合物の形で、及び/又はこれらと組み合わせて、及び/又はこれらと一緒に使用する場合に効果を発揮する。特に有利には、複数回不飽和の脂肪酸、例えばドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又は共役したリノール酸(CLA)並びにリン脂質、例えばレシチン又はホスファチジルセリンの使用である。
【0052】
特別な複数回発酵させたジスチラーズ・グレインの本発明による使用の範囲内では、生物に全ての本質的な多量栄養素及び微量栄養素が供給されてよい。前記ジスチラーズ・グレインに含有されるタンパク質は、筋肉組織を供給しかつ配慮し、並びにこれは前記ジスチラーズ・グレインのその特別な組成及び食物代用品としてのその使用に基づいて主に脂肪を消費し、前記脂肪はその上前記ジスチラーズ・グレイン中に含有される成分との相互作用において最適に燃焼される。
【0053】
付加的な観点は、前記の複数回発酵させたジスチラーズ・グレインの使用が腸内細菌叢に調節的な影響を及ぼすことに見受けられる。特に有利には、前記ジスチラーズ・グレインの特別な、可溶性及び不溶性の繊維質の使用が著しく有利でかつ調節的な影響を腸内細菌叢に及ぼし、これは特に食物代用品及び/又は食物補充品としてのジスチラーズ・グレインの使用の際に、液体の十分な摂取時に有利に効果を発揮する。
【0054】
以下の実施例は、本発明による使用の際の特別な複数回発酵させたジスチラーズ・グレインの利点を明確にする。
【0055】
実施例
オープンの無作為化対照交差試験を実施し、この際肥満症及び同時に高い空腹時血糖値を有する被験者(前糖尿病患者)でインスリン感受性を検査した。WO01/10245により製造された、高含量のデンプン減少させた小麦全粒を有する2回発酵させたジスチラーズ・グレインを使用し、これは商標名”Vibamin(R)”で販売されている。
【0056】
この試験期間はそれぞれの参加者に対して約10週間であり、その際前記被験者は交差方法において、そのつど4週間の期間”Vibamin(R)”で又は購入して入手可能である比較製品で、作成した処置案に従って処置した;個々の処置期間の間には、いわゆる”洗い出し”相のために2週間が設けられた。”Vibamin(R)”の使用に対する比較として市場流通に組み込まれている製品を使用し、これは飲料として体重減少のために自由に購入可能である。
【0057】
全体として、この2回のオープンの無作為化”交差試験”に18〜70歳の30人の参加者が参加し、このボディ・マス・インデックス(BMI)は>29kg/m及び<40kg/mであった。この空腹時血糖値は、この試験の開始時に110〜126mg/dlであった。錠剤又はインスリンを用いた抗糖尿病性の付加的な処置は行われなかった。更に、被験者では深刻な前疾病は確認されなかった。
【0058】
少なくともそれぞれ45gの”Vibamin(R)”又は比較製品の供給により2回の毎日の(主)食物とし、この残りの主食物をそれ以外は通常のように摂取した。前記被験者に”Vibamin(R)”から又は前記比較製品からなる間食を任意の時刻に食すことを委ねた。
確かに、”Vibamin(R)”又は前記比較製品のもとでの試験の被験者に日毎のカロリー供給(十分バランスのとれた栄養の基準値は約1700kcal/日)の少ない減少が起こることが観測された。
【0059】
この試験の開始時に詳しい食事療法アドバイスが実施され、この際前記参加者にこの食事療法のコンセプトが説明された。
【0060】
一週間の食事療法後、”Vibamin(R)”でも比較製品でも、中間的な検査を行いその際、前記参加者に前記食事療法に関するその個人的な経験を質問し、現在の体重を算出した。補足して、前記処置の開始時及び終了時の検査の際と同様のパラメーターを集計した。
【0061】
前記被験者により、この試験の間に標準化した日記が記載され、この中に消費した”Vibamin(R)”又は比較製品の時刻及び量を記録した。
【0062】
前記試験の被験者のもとに未通告の電話をして、前記参加者のコンプライアンスを高めた。
【0063】
前記試験の中心には、それぞれ4週間の”Vibamin(R)”又は比較製品による食事療法後の、前糖尿病患者(肥満症及び同時に高い空腹時血糖値を有する被験者)でのインスリン抵抗性指数 HOMA−IR(HOMA−Index)の変更がある。この際、前記HOMA−Indexの完全な改善に関心が持たれ、そればかりかこの体重損失により引き起こされる効果の算出によるHOMA−Indexの相対的な改善に関心が持たれる。このようにして、この処置によってのみ特別に引き起こされる効果が算出されてよい。
【0064】
同様にそれぞれ4週間の食事療法後の体重の変化、フルクトサミン含量、空腹時血糖値、空腹時インスリン、ウェスト対ヒップ比、トリグリセリド及びコレステロール並びに血圧の変化も確認された。同様にこの主観的な健康及び食後の満腹感がそれぞれ4週間後に標準化したアンケートを使用して集計された。
【0065】
これら試験の以下の結果は特に、合計した被験者での空腹時血糖値レベルの著しい減少を強調するものである。同様に例外なく、全ての処置した被験者では劇的かつ連続的に生じる体重減少(特に、BMIとして把握された)が確認された。”Vibamin(R)”で処置した被験者に関して強調されるのはしかし、この空腹時血糖値、空腹時インスリン及び主パラメーターHOMA−Indexの改善は、干渉値”体重”を算出した後にも更に有意であるままであり(p=0.005;p=0.03及びp=0.007)、その一方で比較製品の場合には体重減少のみ改善を引き起こす。
【0066】
その他のバイタルサイン、例えば血圧、脈拍又は心電図に対する負の作用は、”Vibamin(R)”のもとでも比較製品のもとでも確認されなかった。
【0067】
被験者の3人が個人の所望に基づいて前記研究を予定より早く終了した。
【0068】
表1:HOMA−IR(P値と、絶対的)
【0069】
【表1】

【0070】
表2:空腹時インスリン(P値と、絶対的)
【0071】
【表2】

【0072】
表3:空腹時グルコース(P値と、絶対的)
【0073】
【表3】

【0074】
表4:体重(P値と、絶対的)
【0075】
【表4】

【0076】
表5:干渉値の除去後(”体重”)の有意性
【0077】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母での発酵に付加的に、ヨーグルトのカルチャー及び/又はバターのカルチャーでも発酵させたジスチラーズ・グレインの、高血糖値の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための使用。
【請求項2】
前記高血糖値は、空腹時血糖値及び/又は食後血糖値から選択されている、請求項1記載の使用。
【請求項3】
残留デンプン含量がこのジスチラーズ・グレインの総質量に対して最大で4質量%であるジスチラーズ・グレインが使用される、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前糖尿病及び/又は糖尿病及び/又は前記病のための素因、及び前記病に関連する形態及び/又は予備形態を有する患者の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
糖尿病が、Ia型及びIb型、IIa型及びIIb型の糖尿病及び/又は若年者の常染色体遺伝糖尿病から選択されていて、かつその際前記病に関連する形態及び/又は予備形態は、二次性糖尿病の形態、潜在性糖尿病、不顕性糖尿病、減少した耐糖能及び/又は臨床的に顕性である糖尿病から選択されている、請求項4記載の使用。
【請求項6】
糖尿病が、糖尿病II型である、請求項5記載の使用。
【請求項7】
体重の減少化のための組成物の製造のための、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
肥満症を有する患者の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
肥満症を有しかつ同時に高い空腹時血糖値を有する患者の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための請求項8記載の使用。
【請求項10】
メタボリックシンドロームを有する患者の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
インスリン抵抗性、動脈硬化、脂質代謝障害、タンパク質代謝障害及び/又は炭水化物代謝障害を有する患者の予防及び/又は治療のための組成物の製造のための、請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記ジスチラーズ・グレインが低グリセミック・インデックスを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
ジスチラーズ・グレインを燃焼槽から直接的に取り出し、次いで乾燥させずに濃縮し、引き続きミルクで、及びヨーグルトのカルチャー及び/又はバターのカルチャーで発酵させることにより製造したジスチラーズ・グレインを使用する、請求項1から12までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
a)ジスチラーズ・グレインを100〜800mbarの圧力で約15〜17%の乾燥質量に濃縮し、
次いで
b)ヨーグルトのカルチャー及び/又はバターのカルチャーで既に接種したミルクと混合し、
c)この混合物をヨーグルトのカルチャーで38〜48℃の温度で10〜20時間発酵させるか
又は
この混合物をバターのカルチャーで18〜24℃の温度で36時間まで発酵させ、
この後に
d)更なるミルク又はミルク濃縮物と混合し、15℃を下回る温度に冷却し、
かつ
e)このジスチラーズ・グレインを場合により最後にスプレー乾燥する
ことにより製造したジスチラーズ・グレインを使用する、請求項13記載の使用。
【請求項15】
小麦ベース、大麦ベース、ライ麦ベース、エンバクベース、トウモロコシベース及び/又は米ベースのジスチラーズ・グレインを使用する、請求項1から14までのいずれか1項記載の使用。
【請求項16】
前記ジスチラーズ・グレインを100〜400gの一日量で与える、請求項1から15までのいずれか1項記載の使用。
【請求項17】
前記ジスチラーズ・グレインを一日当たり2〜5回の一回量で与える、請求項16記載の使用。
【請求項18】
前記ジスチラーズ・グレインを同サイズの一回量で与える、請求項17記載の使用。
【請求項19】
前記ジスチラーズ・グレインを粘性のある状態で与える、請求項1から18までのいずれか1項記載の使用。
【請求項20】
前記ジスチラーズ・グレインを水又は発酵させたミルクにおいて与える、請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記ジスチラーズ・グレインをサワーミルク、バターミルク、ヨーグルト、クワルク又はケフィアにおいて与える、請求項19記載の使用。
【請求項22】
前記ジスチラーズ・グレインを食物代用品として及び/又は食物補充品として与える、請求項1から21までのいずれか1項記載の使用。
【請求項23】
前記ジスチラーズ・グレインを少なくとも3週間の連続した期間にわたり与える、請求項22記載の使用。
【請求項24】
前記ジスチラーズ・グレインを、更なる抗糖尿病作用性の又は糖尿病予防性の作用物質と組み合わせて及び/又は一緒に使用する、請求項1から23までのいずれか1項記載の使用。
【請求項25】
前記ジスチラーズ・グレインを、更なる抗糖尿病II型作用性の又は糖尿病II型予防性の作用物質と組み合わせて及び/又は一緒に使用する、請求項24記載の使用。
【請求項26】
前記ジスチラーズ・グレインを、栄養補助食品、機能性食品及び/又は特別用途食品の形で、及び/又はこれらと組み合わせて、及び/又はこれらと一緒に使用する請求項24又は25記載の使用。
【請求項27】
前記ジスチラーズ・グレインをクレアチン、クレアチン一水和物、α−リポ酸、フィトステロール、複数不飽和の脂肪酸及び/又はリン脂質並びにこれらの誘導体及び/又は混合物の形で、及び/又はこれらと組み合わせて、及び/又はこれらと一緒に使用する請求項24から26までのいずれか1項記載の使用。
【請求項28】
腸内細菌叢に調節的な影響を有する組成物の製造のための、請求項1から27までのいずれか1項記載の使用。
【請求項29】
前記ジスチラーズ・グレインの繊維質が前記作用を発揮する、請求項28記載の使用。
【請求項30】
前記ジスチラーズ・グレインを食物代用品として及び/又は食物補充品として与える、請求項28又は29記載の使用。
【請求項31】
前記ジスチラーズ・グレインを十分な液体と共に与える、請求項28から30までのいずれか1項記載の使用。

【公表番号】特表2007−510694(P2007−510694A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538812(P2006−538812)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012875
【国際公開番号】WO2005/046705
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504213238)ビオグルト ビオガルデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】Bioghurt Biogarde GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Lise−Meitner−Str. 34、 D−85354 Freising、 Germany
【Fターム(参考)】