説明

付着物を除去する方法

【課題】ガスタービンエンジンは高温度にて作動するため、高温のガスに曝される構成部材の壁に対し保護熱バリア被覆を施す。保護熱バリア被覆は、構成部材の壁に冷却通路が穿孔された後、被覆されるが、その際、被覆材が冷却通路を覆い、冷却通路を通る冷却空気の流れを制限し、構成部材の冷却を不十分にすることがあるため、冷却通路から不要被覆材を除去する方法を提供する。
【解決手段】冷却通路16を液体中に浸漬させるステップと、浸漬液体内の供給源から付着物の少なくとも一部を除去するのに十分な速度にて液体ジェット38を冷却通路16に向けるステップとを備え、冷却通路16から不要な被覆付着物30を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、その壁を貫通する穴を有する構成部材から材料を除去する方法に関する。特に、本発明は、被覆したガスタービンの構成部材の冷却穴内から余剰な被覆材料を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、増大した性能及び効率が得られるよう極めて高温度にて作動する。しかし、殆どのガスタービンエンジンの設計における制約的なファクタは、エンジンの色々な構成部材が耐えることのできる最高温度である。このように制限された構成部材のかかる特定の領域は、ガスタービンエンジンの燃焼室である。
【0003】
許容可能な最高温度を増大させ且つ(又は)構成部材の金属の温度を低下させる1つの方法は、構成部材の壁に冷却穴を提供することである。これらの冷却穴は、冷却空気が高いガス温度に曝される構成部材の壁を通り且つその壁に沿って流れることを許容する。空気が壁の表面に沿って流れるとき、その空気は冷却層を形成する。この冷却層は、壁表面の温度を低下させ、また、高温のガスが構成部材の壁と接触するのを物理的に防止し、これにより構成部材がその他の場合に可能である場合よりも高いガス温度に耐えることを許容する。
【0004】
より高いガス温度を使用することを許容する別の方法は、高温のガスに曝される構成部材の壁に対し保護熱バリア被覆を施すことである。燃焼装置、すなわち特に、火炎管の内壁の場合、外壁は、より低温度のコンプレッサからの吐出空気に曝される。かかる被覆は、従来、例えば、熱及び腐食からの保護効果を提供するMCrAlY材料を備えている。MCrAlYは、Mがニッケル、コバルト、鉄又はそれらの混合体を表わし、Crがクロム、Alがアルミニウム、Yがイットリウムを表わす既知の被覆システムを意味する。改良された熱的保護効果を与えるため、更なるセラミック層がMCrAlY層の頂部にしばしば施される。かかる構成において、MCrAlY層は、セラミック被覆層に対するボンドコートとして作用する。かかるセラミック被覆材料の一例は、MCrAlY層の頂部に施されるイットリア安定化ジルコニアである。
【0005】
MCrAlY及びセラミック保護被覆は、典型的に、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)又はプラズマ溶射手段によって施される。保護被覆及びその施工方法の例は、周知であり、その他のものの内、米国特許明細書4,321,311号、米国特許明細書5,514,482号、米国特許明細書4,248,940号に記載されたものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷却穴及び保護被覆は、ある構成部材が高温度にて作動することを許容することと相俟って使用でき且つ使用されている。冷却穴及び保護被覆を有するかかる構成部材を製造する2つの基本的な方法がある。第一の方法において、被覆は構成部材に施され、次に、被覆した構成部材に穴が穿孔される。この方法の例は、レーザ穿孔法を使用して熱バリア被覆及び構成部材の金属に貫入するものであり、欧州特許明細書0,826,457号に記載されている。この方法に伴う問題点は、設計上、熱障壁被覆が材料に穿孔するレーザにより発生された熱に対する抵抗性があることである。その結果、被覆への穿孔は、高パワーのレーザを必要とし、作業時間が長引き、その結果、取り囲む領域を顕著に加熱することになり、これは望ましくないことである。また、機械式の穿孔技術が使用される場合、熱障壁被覆は全体として弱体であるから、問題が生ずる。機械式穿孔は、穴の回りの領域内の被覆に亀裂を生じさせ且つ損傷を与えて、機械的加工工程中に又は使用中に過早の時点の何れかにて被覆が構成部材から剥落する可能性がある。
【0007】
第二の方法において、構成部材に穴が穿孔され、その後、穿孔した構成部材に被覆が施される。この方法には、上述した被覆の穿孔/機械的加工に関係した問題点は全くない。しかし、穴が穿孔された後、被覆を施すことは、穴の一部又は全体を少なくとも部分的に妨害する傾向となる。このことは、穴を通る冷却空気の流れを制限し、構成部材の冷却を不十分にし、高温箇所、構成部材の過熱及び破損の可能性を招来する。更に、冷却穴が妨害されることは予見不可能であり、このため、ある程度の妨害を受容し得るよう穴を設計することは問題を生じ、また、それが可能であるとしても、エンジンの効率を低下させることになろう。
【0008】
その結果、冷却穴を妨害する全ての被覆材料を除去しなければならない。冷却穴の妨害の問題点及び被覆を冷却穴から除去する方法は、欧州特許明細書0,916,445号に記載されている。高圧の流体ジェットが被覆が施された面と反対側の構成部材の面に向けられる。そのとき、貫通穴がマスクとして作用し且つ被覆を損傷から保護する。
【0009】
413.685MPa(60,000psi)までの高圧力にて作動する流体ジェットは、120dBレベルの騒音を発生させる。更に、流体ジェットが向けられる構成部材の表面の損傷を防止するため、慎重に制御することが必要とされる。
【0010】
このため、上述した問題点に対処し且つ(又は)全体としてかかる方法を改良する、構成部材の穴から材料を除去する改良された方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従い、通路を液体中に浸漬させるステップと、液体内にて且つ付着物の少なくとも一部を除去するのに十分な速度にて液体ジェットを供給源から通路にて向けるステップとを備える、構成部材を貫通して伸びる通路から付着物を除去する方法が提供される。
【0012】
この方法において、通路が浸漬される液体は、過程の騒音を減衰させる作用を果たす。
【0013】
付着物は、構成部材の第一の面に施された被覆に連続するものとすることができ、また、液体ジェットは第一の面と反対側の構成部材の第二の面から通路に向けられるようにすることが好ましい。
【0014】
この方法において、構成部材自体は、高圧力の流体ジェットを冷却穴を通して向けるマスクとして使用され、このとき、この流体ジェットは、穴を妨害する全ての材料を機械的に分離し且つ除去する。このことは、ジェットを特定の穴に正確に向ける必要はなく、より精密でなく、低廉で且つより簡単な機械を使用することを許容するという有利な効果がある。更に、穴を妨害しない被覆のその他の部分は、構成部材自体によってジェットから保護される。このため、被覆への全ての損傷が減少する。構成部材自体をマスクとして使用することは、この過程が簡単で且つ相対的に迅速であることも意味する。
【0015】
液体ジェットは、その内部に配分された固体粒子を更に有することができる。固体粒子はガラスビードとすることができる。
【0016】
構成部材内の通路は、第一及び第二の面に対して角度を成した軸線を有することが好ましい。ジェットは、通路の軸線に対して0°ないし5°の範囲の負のすくい角度を有することが好ましく、このようにして、ジェットは塵埃に向け、また、穴の入口を損傷させることなく、塵埃を穴から除去することができる。
【0017】
好ましくは、この方法は、その後、第二の液体ジェットを浸漬液体内の第二の供給源から通路に向けるステップを更に備えるものとする。好ましくは、第二の液体を保持するジェットはその内部に混合させた気体を更に有するものとする。
【0018】
第二のジェットは、通路の軸線に対して0°ないし5°の正のすくい角度にて通路に向けられることが好ましい。第二のジェットは、通路を清浄にし、また、正のすくい角度は、冷却穴の出口にて被覆が欠損するのを防止するのを助ける。
【0019】
構成部材は複数の通路を有することができ、また、この方法は、第一の液体ジェットを複数の通路の第一の通路に向けるステップと、その後、ジェットを構成部材の第二の面を横切って第二の通路まで移動させるステップと、第一の液体ジェットを複数の通路の第二の通路に向けるステップとを備えている。
【0020】
第二の液体ジェットを第一の液体ジェットと共に移動させ、第一の液体ジェットが複数の通路の第一の通路に向けられた後、第二の液体ジェットを複数の通路の第一の通路に向けることができる。
【0021】
好ましくは、第一の液体ジェットは、通路が配置された構成部材の第二の面の領域を横切って一定の速度にて移動するものとする。
【0022】
第一の液体ジェットが複数の通路の第二の通路まで移動する前に、複数の通路の第一の通路内の実質的に全ての付着物を除去することができる。
【0023】
構成部材を軸線の回りにて且つ、第一の液体ジェットに対して回転させ、液体ジェットが通路に断続的に向けられるようにすることができる。好ましくは、軸線は、第一の液体ジェットが移動する方向に対し直交するものとする。
【0024】
好ましくは、通路が浸漬される流体は、構成部材に向けて流れる流れを有するものとする。好ましくは、この流れは、構成部材の第一の面に向けて流れるものとする。
【0025】
好ましくは、通路は、使用時、構成部材に対する冷却流れを提供し得るよう配置されるものとする。構成部材は、金属にて出来たものとし、付着物はセラミックとすることができる。構成部材は、燃焼装置の火炎管又はタービンブレードとすることができる。
【0026】
以下に、添付図面を参照して単に一例としてのみ本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1を参照すると、ガスタービンエンジンの燃焼装置の部分20が示されている。内側及び外側環状ケーシング壁2、4は、それぞれ環状導管11を画成する。この環状導管11内には環状火炎管6が設けられている。ガスタービンエンジンのコンプレッサ部分(図示せず)からの圧縮した空気は、矢印Aで示すように、入口14を通ってこの導管11内に流れる。この空気の一部は、矢印Gで示すように、上流の環状火炎管の入口8を通って火炎管6の内部7内に流れる。残りの空気は、矢印Hで示すように、火炎管6の外側の回りを流れる(9)。火炎管6に入る空気は、火炎管6内の多数の燃料ノズル18から供給される燃料と混合される。次に、火炎管6の内部7内に形成された燃空混合気を燃焼させて高温のガス流を発生させる。この高温のガス流は、矢印Bで示すように、火炎管6の下流端及び燃焼装置20における環状出口10及び一連の出口案内ベーン12を通って火炎管6に沿って流れ、ガスタービンエンジンのタービン部分及び(又は)排気部分に入る。
【0028】
環状火炎管6の壁44には多数の冷却穴16が穿孔されている。冷却穴16は火炎管6の壁44を貫通する通路として作用する。火炎管6の回りを流れる冷却した圧縮空気は、これらの冷却穴16を通って火炎管6の内部7に入り、また、火炎管6の壁44に沿って流れる。この火炎管6の壁44を通る冷却空気の流れは、火炎管6の壁44を冷却する。火炎管6の内壁22に沿った空気の流れは、これらの壁22に隣接して相対的に低温の空気層を発生させ、この空気層は、火炎管6の壁44と火炎管6の内部7の高温燃焼ガスとの間に熱障壁を提供する。全体としてセラミック材料層を有する熱障壁被覆28は、火炎管6の内壁22にも施され、これは、火炎管6の壁44を高温の燃焼ガスから保護することにもなる。
【0029】
火炎管6は、壁44に多数のその他の大きい開口部26も有しており、追加的な圧縮した空気を火炎管6の内部7に導入することができる。この追加的な空気は、火炎管6の内部7の燃焼を更に助け、また、より完全燃焼させるために提供される。
【0030】
火炎管6は、例えば、ニッケルコバルト、又は鉄超合金のような高温度合金の如きシート金属にて出来ており、全体として、火炎管の壁44の必要とされる形状に製造されている。金属壁の厚さは、典型的に、1ないし1.6mmの範囲にある。これと代替的に、金属火炎管6は、鍛造リング又は鋳造品からさえも製造することが可能である。
【0031】
火炎管壁44の冷却穴16は、従来通り放電機械加工(EDM)又はレーザ穿孔法のような方法により製造される。図3aには、火炎管壁44に形成された穴16の詳細図が示されている。図示するように、冷却穴16は、流れ方向に対して全体として角度が付けられ、また、構成部材の壁44を通る通路として機能する効果を果たす。かかる角度を付けることは、火炎管壁44の内側22に沿って冷却空気の空気層を形成するのを促進することになる。冷却穴16の直径は、典型的に約0.25mmないし約0.76mmの範囲にある。
【0032】
冷却穴16を形成した後、火炎管6の内部7を画成する火炎管の壁44の第一の(内側)面22を熱障壁被覆28にて被覆する。第一の(内)面22におけるこの被覆28は、火炎管の壁44に対し高温度の燃焼気体からの保護効果を提供する。相対的に低温のコンプレッサ空気9に曝される火炎管7の第二の(外)面24は熱的保護を必要とせず、従って被覆されていない。典型的に、被覆28は、壁に最初に施されるMCrAlY及び(又は)アルミナイドボンドコートを備えている。このボンドコートの頂部には、例えば、リットリア安定化ジルコニアのようなセラミック被覆が堆積されている。かかる被覆は、当該技術にて周知であり、例えば、スパッタリング、電子ビーム物理的気相成長法(EBPVD)、及びプラズマ溶射のような従来の技術によって施される。かかる被覆28及び施工方法の一例は、MCrAlYボンドコート及びアルミナ層並びにEBPVD柱状粒子セラミック層について説明する、米国特許明細書4,321,311号に記載されている。米国特許明細書5,514,482号には、アルミナ層と、次に、EBPVDセラミック層との拡散アルミナイドボンドコートが記載されている。米国特許明細書5,262,245号には、プラズマ溶射したセラミック層を有するMCrAlYボンドコートが記載されている。更なる例は、米国特許明細書4,248,940号、米国特許明細書5,645,893号及び米国特許明細書5,667,663号に記載されている。
【0033】
これらの被覆28の厚さは、典型的に、燃焼装置20又は保護される構成部材の特定の必要条件に依存して約0.3mmないし約0.5mmの範囲にある。
【0034】
被覆28を施す結果、図2及び図3bに示すように、冷却穴16内に且つ冷却穴16の上にしばしば被覆材料の望ましくない蓄積物30が生じる。この蓄積物は、冷却穴16を部分的に又は完全に妨害して、これによりエンジンが作動する間、冷却空気が冷却穴16を通って流れるのを制限し又は阻止する可能性がある。これは、除去しなかったならば、火炎管壁44が不十分に冷却され、また、火炎管壁44に隣接する冷却層の厚さが減少し又は失われる可能性がある。一方、これによって、火炎管の壁44に局所的な高温箇所が生じ、これにより火炎管の壁は、破損し又は構成部材の有効寿命を短縮することになろう。
【0035】
従って、被覆28を施した後、冷却穴16内部及び冷却穴16の上の被覆材料の蓄積分30を除去する。構成部材又は材料を除去すべき少なくとも冷却穴は、水101に浸漬させる。冷却穴の清浄化は、図2に示したような高圧水ジェット38を使用して実現される。高圧水ジェットの機械的作用及びこの過程を実行することのできる機械は全体として既知である。かかる機械の例は、ドイツ国のフローヨーロッパ(Flow Europe)GmbHにより製造され且つ該会社から入手可能である。かかる機械は、典型的に、約68.9MPa(約10,000psi(689バール))ないし約413.6MPa(約60,000psi(4136バール))の範囲の高圧水が供給されるノズル32を有している。この高圧水は、全体として円形の高圧水のジェット38を形成する円形のオリフィスを通ってノズル32から出る。ジェット38の直径は、全体として0.7mmないし1.7mmの範囲にあり、典型的に、約1mmである。ノズル32は、例えば、ノズル32及びジェット38を加工物、例えば、火炎管6に対して動かすことのできるロボットアームのような適宜な支持手段(図示せず)に取り付けられる。
【0036】
高圧水ジェットのノズル32は、構成部材44と共に水101内に浸漬される。ジェット38は、冷却穴16の領域内にて火炎管6の外面24に向けられる。ジェット38は、該ジェットが冷却穴16の軸線と実質的に同一の角度である0°ないし5°の範囲の角度にて火炎管6の壁44と衝突し、また、全体として矢印Cで示したように、火炎管の壁44の冷却穴16の上を移動するような角度とされている。水ジェット38の圧力、ノズル32と火炎管の壁44との間の距離49(分離距離と呼ばれることがある)及びジェット38が表面に衝突する時間の長さは、全て火炎管の壁44の非被覆外面24の金属が実質的に何ら機械的作用を受けないよう制御される。典型的に、約20mm以内の分離距離49が使用される。
【0037】
ジェット38が火炎管の壁44の非被覆側部24を移動するとき、該ジェットは冷却穴16と出会う。冷却穴は通路して作用し、ジェット38が冷却穴16に入ったならば、そのジェットは、冷却穴16の第一の部分42の妨害されない金属側部により案内され且つ送られる。冷却穴の出口にて、ジェット38は、冷却穴16を妨害し又は部分的に制限する、被覆の蓄積物30又はその他の塵埃と出会う。例えば、セラミックのような被覆28の材料は、火炎管の壁44の金属よりも水ジェット38に対する抵抗性が小さい。このため、水ジェット38は、ジェット38が冷却穴16を自由に通ることができる迄、粒子の浸食により冷却穴16内の被覆の蓄積物30を機械的作用により除去する。材料が除去された冷却穴16の一例が図3cに示されている。理解し得るように、この方法により、被覆28を通して材料が除去され良好に画成された冷却穴の出口48が形成される。次に、ジェット38を次の冷却穴16を横切るように移動させ、冷却穴16の全てから材料が除去される迄、この過程を反復する。この方法により、冷却穴16の各々から連続的に材料が除去される。
【0038】
液中の水ジェットは、約344.7MPa(約50,000psi)にて送り出される除去過程の媒体として12メッシュのガラスビードを保持している。ビードは、毎分60gの速度にて通路まで送り出される。
【0039】
ジェット38は冷却穴16の第一の部分42によって案内されるため、この方法を使用する場合、ジェット38を冷却穴16と正確に整合させる必要はない。従って、この場合、冷却穴16は、水ジェット38よりも小径であるから、ジェット38は、完全に整合していないときでさえ依然として冷却穴16と重ね合わさる。更に、水ジェット38は火炎管6の外側部24に対して向けられるから、冷却穴16内にない内面22の被覆28が水ジェット38に曝されることはない。その結果、壁44の内側部22における被覆28の残りが水ジェット38により損傷される可能性は実質的に解消される。このことは、機械的に作用するジェット又は研磨性流体が構成部材の被覆した内側部22から供給される先行技術の方法では実現されないことである。
【0040】
第二の水ジェットノズルは、第一のジェットが通路に作用した後、その通路に向けられる。この第二の水ジェットは、第一の水ジェットと異なり、ガラスビードを保持していない。その代わり、水及び空気が流れる。
【0041】
望ましくは、2つの水ジェットは、僅かに異なるメカニズムを使用して清浄化を行うものとする。従って、粒子が水ジェット内に存在する場合、研磨性の動作を使用して清浄化するジェットは、被覆を過剰噴霧により腐食させるが、典型的に、完全に妨害された冷却穴にて作用することは難しいであろう。これに反して、空気を保持する水ジェットは、破断メカニズムを使用して被覆を除去し、このことは、穴が完全に妨害されたときでさえ良好に作用する。
【0042】
ガラスビード清浄化を行う間、ノズルが穴に対して角度を付けて傾斜する状態は、0°ないし5°の範囲の負のすくい角度でなければならない。このことは、穴の入口を損傷させず、全てのボンドコート又はTBCを穴から除去することになる。負のすくい角度が適用されない場合、穴の形状及び角度は悪影響を受ける可能性がある。水/空気清浄化が適用される場合、穴の出口におけるTBCの欠損を減少させるため正の角度が必要とされる。
【0043】
構成部材を水にて清浄化し、清浄ジェットの供給源が水の下方に配置されるようにすることにより、ジェットの騒音は減衰される。空気中にて高圧ジェットを使用することは、120dB以上の騒音レベルを発生させる。ジェットが固体粒子を保持しない場合、騒音レベルは更に増大する。
【0044】
構成部材及びジェット供給源が水101内に浸漬されている間に清浄化作業が実行されるとき、騒音レベルは約90dBに減少する。
【0045】
好ましい実施の形態において、構成部材44の回りを流れる流れ103が水101内に誘発される。この流れは低圧力であるが、体積は大きい。望ましくは、この流れは、水101の外側に配置されたセンサによって感知される騒音を約70dBまで更に減少させる。水の流れ103の方向は、騒音の減少に与える影響は最小であるが、被覆28を有する構成部材の表面に向けた流れであることが好ましい。
【0046】
1つの代替的な方法において、水ジェット38は、冷却穴16を保持する火炎管の壁44の非被覆側部を反復的に移動する。移動する間又は通過する毎に、ジェットは、冷却穴16と周期的に出会い且つ、これらの冷却穴を通って流れる。全体として、ジェット38が実質的に直線状に移動する場合、約0.5m/分ないし10m/分、典型的に、2m/分の移動速度が使用される。かかる速度のとき、ジェットが1回通過する際に冷却穴16内から被覆30の全てを除去するのに十分な時間はない。その結果、ジェット38が冷却穴16の上を及び冷却穴16を1回、通る間、材料30の一部分のみが冷却穴16の内部
から除去される。ジェット38が冷却穴16の上及び冷却穴16を通って多数回個別に通った後、冷却穴16は完全に清浄化される。
【0047】
この方法の有利な点は、ジェットが1回通過する間、多数の冷却穴16の材料を実質的に同時に除去することが可能な点である。また、ジェット38は停止させ且つ、冷却穴16の各々に個々に向ける必要はない。その結果、この代替的な方法は、ジェット38を冷却穴16との整合程度が少なくて済み、また、冷却穴16の材料を除去する更に迅速な方法を提供する。更に、この方法にて水ジェット38を精密に制御することは重要でないため、より簡単で且つ経済的である、低い制御精度の水ジェット機械を使用することができる。
【0048】
上記の方法の更なる変形例が図4に示されている。図1に関して上記に説明したように、火炎管6は、火炎管6により画成された輪の内壁22に被覆28を有している。火炎管6は、水101を保持する浸漬液体105内に没入される。固体の媒体を保持することが好ましい半径方向に向けた水ジェット38は、参照符号Dで示したように、火炎管6をその長手方向軸線50の回りにて回転させることにより、冷却穴16を横切って移動する。これにより、ジェット38は、火炎管6が回転する間、冷却穴16が穿孔された火炎管壁44の全周に作用する。次に、水ジェット38は、矢印Eで示したように、軸方向に平行移動し、火炎管6に沿って軸方向に更なる円周に及び一連の冷却穴16に衝突する。また、ジェット38は、矢印Fで示したように、火炎管の壁44に対して半径方向に動いて、必要とされる分離距離49を実現する。火炎管6の回転は、例えば、火炎管6を回転台に取り付けることにより任意の従来の手段によって実行される。上記の回転システムは、ジェット38を構成部材の表面を横切って移動させる簡単で且つ容易な方法を提供し、直線状システムにて容易に実現可能な速い移動速度を形成することができる。回転システムにおいて、構成部材の表面の上にて5m/秒のジェット38の移動速度を使用することができる。かかる迅速な移動速度にて、ジェットが冷却穴16の上を通るときに極く少量の被覆28の材料のみが除去されることが理解されよう。
【0049】
図4に示した構成において、火炎管の内壁52の冷却穴16の材料を除去するためジェット38が使用される状態が示されている。外壁54の冷却穴16の材料を除去するためには、ジェット38は火炎管6の外壁54の外側に取り付け、ジェット38が半径方向内方に向けられるようにすることが理解されよう。この方法により、火炎管の壁44に穿孔された冷却穴16は、火炎管6が回転するとき、水ジェット38の反復的な通過により材料が除去される。
【0050】
構成部材が清浄化されるときの速度を増すため、追加的なジェットヘッド32を同一の支持体に取り付けることができる。これらのヘッドは、清浄化すべき通路に対して等間隔にて隔てられている。
【0051】
図2に関して説明した実施の形態について説明したように、固体媒質ビードを含む水ジェットは、第二のヘッドにより供給され、該第二のヘッドは水及び空気ジェットを通路に向けて噴射する。このヘッドは、構成部材を処理するのに必要な時間を減少させるように二重に設けることができる。
【0052】
本発明の基本的な方法の特定の一例としての試験において、ニッケルコバルト超合金である、C263の厚さ1mmの試験片をレーザ穿孔して0.5mmの穴を多数列に形成し、穴の各々は30°の角度にて傾斜させた。次に、試験片の一側部を標準的なセラミック熱障壁被覆の0.4mmの厚さの層にて被覆した。この試験において、プラズマ溶射によって0.1mm層のMCrAlYボンドコートから成る被覆を施し、イットリア安定化ジルコニアセラミックの0.3mm層をプラズマ溶射によってボンドコートの頂部に堆積させた。この被覆は、予め穿孔した穴を少なくとも部分的に妨害した。344.738MPa(50000psi)の圧力で且つ12メッシュのガラスビードを保持する、1mmの円形の水ジェットを穴と同一の30°の角度に向き決めし、試験片の金属側部に向け、水ジェットノズルが試験片から約10mmの距離にあるようにした。このジェットは、2m/分の一定の速度にて穴の列を横切って移動するようにした。圧力344.738MPa(50000psi)で、穴と同一の30°の角度に向き決めした第二の1mmの円形の水ジェットは、2m/分の一定の速度にて第一の水ジェットと供に移動し且つ、水ジェットのノズルを試験片から約10mmの距離にした最初のジェットの後、試験片の金属側に向けた。第二の水ジェットには気泡が混入していた。
【0053】
穴を検査すると、これらの穴は、その前に穴内に堆積したセラミック被覆を十分に除去することが分かった。穴の回りの被覆も実質的に影響されず、清浄な穴は、水ジェットにより被覆を通じて機械的作用を受けていた。また、ジェットが穴の間を横切って移動する間、水ジェットに曝された試験片の表面は何ら顕著に損傷されなかった。この方法は、環状の火炎管6の穴から材料を除去することに関して説明したが、この方法は、冷却穴又はその他の小さい穴を有し、また、穴の領域内にてその壁の一側部に被覆材料が施された、その他の既知の型式の燃焼装置にも適用可能であることが理解されよう。例えば、この方法は、エンジンの回りに配設された多数の個別の円筒状の燃焼カンを備える管状の燃焼装置に対して使用することができる。本発明の方法は、タイル付き燃焼装置の燃焼装置タイルの冷却穴の材料を除去するためにも適用することができる。タイルの側部は、全体として熱障壁被覆にて被覆されている。かかるタイル付き燃焼装置は、また、当該技術において周知である。
【0054】
本発明の方法は、ガスタービンエンジンの燃焼部分20内のその他の構成部材に適用可能であり、また、より一般的に適用できる。実際上、この方法は、製造中、被覆材料によって妨害され又は部分的に妨害される穴を有するであろう任意の構成部材を製造するため使用することができる。例えば、この方法は、冷却穴を有すると共に、その外側が熱障壁被覆にて被覆されたタービンブレードを製造するためにも適用することができる。しかし、この方法を適用するときの1つの制約は、ジェットを冷却穴に向けるのに十分なアクセス部が存在しなければならない点である。このことは、ノズル及びジェットを挿入し且つブレードの内部にて作動するため十分なスペースがなければならない、一部のタービンブレード、特に、小型のものにて問題となる可能性がある。
【0055】
この方法は、冷却穴内から熱障壁保護被覆を除去するため使用することにのみ限定されるものではない。その他の被覆も火炎管6又は任意のその他の構成部材の任意の穴を同様に妨害し又は部分的に妨害する可能性がある。かかる被覆は、例えば、構成部材の浸食保護効果を提供するために施すことが可能である。
【0056】
この方法は、構成部材の修理及びそれらの最初の製造に適用することが可能であることも理解されよう。使用した構成部材を修理し且つ分解する間、被覆材料は通常、除去される。次に、新たな被覆が施されるが、この被覆は、構成部材の当初の冷却穴を全体として妨害し又は部分的に妨害するであろう。従って、そのとき、この余剰な被覆材料をこれらの冷却穴から除去するため、本発明の方法を適用することができる。
【0057】
本発明の実施の形態において、穴の材料を除去するため水ジェット38が使用されるものとして説明した。しかし、代替的な実施の形態において、その他の流体を使用することができる。
【0058】
本発明の範囲から逸脱せずに色々な改変例を為すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ガスタービンエンジンの環状の燃焼装置部分の一部分を示す断面図である。
【図2】本発明に従った燃焼装置の火炎管壁の一部にて作用する流体ジェットの説明図である。
【図3】3aないし3cは、製造中の色々な段階における燃焼装置の火炎管壁及び冷却穴を示す線図である。
【図4】本発明に従った燃焼装置の火炎管に穴を機械加工する第二の実施の形態の方法を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
2 内側環状ケーシング壁
4 外側環状ケーシング壁
6 火炎管
7 火炎管の内部
8 火炎管の入口
9 コンプレッサ空気
10 環状出口
11 環状導管
12 出口案内ベーン
14 入口
16 冷却穴
18 燃料ノズル
20 ガスタービンエンジンの燃焼装置
22 火炎管の内側部/火炎管の内壁/火炎管の(内)面
24 火炎管の外側部/火炎管の(外)面
26 開口部
28 熱障壁被覆
30 材料
32 ジェットヘッド
38 水ジェット
44 火炎管の壁
49 分離距離
50 長手方向軸線
52 火炎管の内壁
54 火炎管の外壁
101 水
103 水の流れ
105 浸漬液体
A矢印 圧縮した空気の流れ方向
B矢印 高温のガス流の流れ方向
D矢印 火炎管の回転方向
E矢印 水ジェットの平行移動方向
F矢印 ジェットの半径方向動作方向
G矢印 圧縮した空気の一部の流れ方向
H矢印 残りの空気の流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部材を貫通して伸びる通路から付着物を除去する方法において、通路を液体中に浸漬させるステップと、浸漬液体内の供給源から且つ付着物の少なくとも一部を除去するのに十分な速度にて液体ジェットを通路に向けるステップとを備える、構成部材を貫通して伸びる通路から付着物を除去する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、付着物は、構成部材の第一の面に施された被覆に連続している、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、液体ジェットは第一の面と反対側の構成部材の第二の面から通路に向けられる、方法。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つの項に記載の方法において、液体ジェットは、その内部に配分された固体粒子を更に有する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、固体粒子はガラスビードである、方法。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つの項に記載の方法において、その後、第二の液体ジェットを浸漬液体内の第二の供給源から通路に向けるステップを更に備える、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、第二の液体を保持するジェットはその内部に混合させた気体を更に有する、方法。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つの項に記載の方法において、構成部材は複数の通路を有し、第一の液体ジェットを複数の通路の第一の通路に向けるステップと、その後、ジェットを構成部材の第二の面を横切って第二の通路まで移動させるステップと、第一の液体ジェットを複数の通路の第二の通路に向けるステップとを備える、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、第二の液体ジェットを第一の液体ジェットと共に移動させ、第一の液体ジェットが複数の通路の第一の通路に向けられた後、第二の液体ジェットを複数の通路の第一の通路に向ける、方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法において、第一の液体ジェットは、通路が配置された構成部材の第二の面の領域を横切って一定の速度にて移動する、方法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の方法において、第一の液体ジェットが複数の通路の第二の通路まで移動する前に、複数の通路の第一の通路内の実質的に全ての付着物を除去する、方法。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか1つの項に記載の方法において、構成部材を軸線の回りにて且つ、第一の液体ジェットに対して回転させ、液体ジェットは通路に断続的に向けられる、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、軸線は、第一の液体ジェットが移動する方向に対し直交する、方法。
【請求項14】
請求項1ないし13の何れか1つの項に記載の方法において、通路が浸漬される流体は、構成部材に向けて流れる流れを有する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記流れは、構成部材の第一の面に向けて流れる、方法。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか1つの項に記載の方法において、通路は、使用時、構成部材に対する冷却流れを提供し得るよう配置される、方法。
【請求項17】
請求項1ないし16の何れか1つの項に記載の方法において、構成部材は、金属にて出来ており、また、付着物はセラミックである、方法。
【請求項18】
請求項1ないし17の何れか1つの項に記載の方法において、構成部材は、燃焼装置の火炎管である、方法。
【請求項19】
請求項1ないし18の何れか1つの項に記載の方法において、構成部材は、タービンブレードである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163104(P2012−163104A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−71666(P2012−71666)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【分割の表示】特願2007−137406(P2007−137406)の分割
【原出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(591005785)ロールス・ロイス・ピーエルシー (88)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】