説明

付着物除去装置

【課題】メタルマスク版の表面にはみ出した半田等の付着物の拭き取りに使用した拭き取りシートから付着物を除去して、拭き取りシートを何度も再利用できるようにした付着物除去装置を提供する。
【解決手段】拭き取りシートSに染み込んだ液媒体及び振動ユニット40により剥離された後で拭き取りシートS表面に再付着した付着物を吸引除去する吸引除去ユニット50を備える。吸引除去ユニット50は、拭き取りシートSが巻き掛けられる面に吸引孔51aが形成された筒状の吸引ノズル51と、吸引ノズル51内の空気を吸引する吸引ポンプ52とを有する。吸引ノズル51には、吸引ポンプ52が接続される一方、開口部には蓋部材が着脱自在に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタルマスク版を用いて印刷配線基板にクリーム半田や部品接着用の接着剤を印刷する技術が知られている。このメタルマスク版にはステンレス、ニッケル板等の金属製の版が用いられている。ここで、例えばクリーム半田を印刷配線基板上に印刷した後は、メタルマスク版の基板側の表面に半田がはみ出してしまい、所望の印刷品質が得られなくなるおそれがある。
【0003】
したがって、このような印刷に用いるメタルマスク版は、特許文献1に示すように、基板に半田を印刷した後、所定回数や所定時間ごとにメタルマスク版の基板側表面にはみ出した半田を不織布で拭き取るようにしている。また、特許文献1の発明では、半田を拭き取った後の不織布は、片面のみが半田で汚れているため、表裏を逆転させて再びロール状に巻き直すことで、不織布の両面ともに半田の拭き取りに使用できるようにしている。これにより、片面のみを拭き取りに使用する場合に比べて、大幅なコストダウンを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−301809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の拭き取り装置では、拭き取りシートの両面を半田の拭き取りに使用した後は、その拭き取りシートを廃棄処分しなければならないため、その都度、新しい拭き取りシートに交換しなければならず、コストがかかっていた。さらに、拭き取り後の拭き取りシートには半田が付着しているため、対環境性を考慮して産業廃棄物として廃棄処分しなければならず、手間がかかっていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、メタルマスク版の表面にはみ出した半田等の付着物の拭き取りに使用した拭き取りシートから付着物を除去して、拭き取りシートを何度も再利用できるようにした付着物除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、付着物の拭き取りに使用された後でロール状に巻かれた長尺の拭き取りシートから該付着物を除去するための付着物除去装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、ロール状に巻かれた前記拭き取りシートを回転自在に支持する上流側ローラと、
前記上流側ローラから引き出された前記拭き取りシートを下流側に搬送しながら再びロール状に巻き取るための下流側ローラと、
前記上流側ローラと前記下流側ローラとの間に配設され、前記拭き取りシートに対して振動伝達媒体としての液媒体を供給する液供給ユニットと、
前記液供給ユニットから供給された液媒体を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に対向して上方に配設され、前記拭き取りシートに染み込んだ液媒体に対して振動を与える超音波振動子を有する振動ユニットと、
前記振動ユニットの下流側に配設され、前記拭き取りシートに染み込んだ液媒体及び該振動ユニットにより剥離された後で該拭き取りシート表面に再付着した付着物を吸引除去する吸引除去ユニットとを備え、
前記吸引除去ユニットは、前記拭き取りシートの幅方向に延び且つ該拭き取りシートが巻き掛けられる面に吸引孔が形成された筒状の吸引ノズルと、該吸引ノズルの少なくとも一端側に開口する開口部を密閉するように着脱自在に取り付けられた蓋部材と、該吸引ノズル内の空気を吸引する吸引ポンプとを有していることを特徴とするものである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
前記吸引孔は、前記吸引ノズルの軸方向に延びるスリット形状で且つ軸方向に間隔をあけて複数形成されており、
前記吸引ノズルに巻き掛けられる前記拭き取りシートの幅方向両端よりも外側位置で開口する前記吸引孔を塞ぐ閉塞部材を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、
前記吸引孔は、前記拭き取りシートの搬送方向に対して傾斜するように前記吸引ノズルの周方向に延びるスリット形状で且つ軸方向に間隔をあけて複数形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記吸引ノズルは、前記吸引孔が形成されたノズル外筒部と、該ノズル外筒部の内周面に沿って回転自在に嵌合されたノズル内筒部とを有し、
前記ノズル内筒部には、その回転角度に応じて前記吸引孔を選択的に開閉させる連通孔が、周方向に間隔をあけて複数形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
第5の発明は、第1乃至第4の発明のうち何れか1つにおいて、
前記吸引ノズルにおける前記拭き取りシートが巻き掛けられる面を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
第6の発明は、第1乃至第5の発明のうち何れか1つにおいて、
前記貯留槽の底板は、前記拭き取りシートの搬送方向の上流側から下流側に向かって下方に傾斜していることを特徴とするものである。
【0014】
第7の発明は、第1乃至第6の発明のうち何れか1つにおいて、
前記貯留槽内には、該貯留槽の底板と所定の間隙を存して対向するようにパンチングメタルが配設されていることを特徴とするものである。
【0015】
第8の発明は、第1乃至第7の発明のうち何れか1つにおいて、
前記振動ユニットと前記吸引除去ユニットとの間に配設され、該振動ユニットに対する前記拭き取りシートの高さ位置を調整するための位置調整ローラを備え、
前記振動ユニット及び前記位置調整ローラは、前記貯留槽に対向する位置と、該貯留槽から離間する位置との間で同期して移動可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
第9の発明は、第1乃至第8の発明のうち何れか1つにおいて、
前記下流側ローラにおける前記拭き取りシートの巻き取りが開始されてから、前記上流側ローラと前記下流側ローラとの間に張られた該拭き取りシートに所定の張力が付与されるまでの間、該上流側ローラの回転を規制する回転規制手段を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
第10の発明は、第1乃至第9の発明のうち何れか1つにおいて、
前記振動ユニットは、前記超音波振動子を複数有しており、
前記複数の超音波振動子は、それぞれ独立に作動又は停止を切り替え可能に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、ロール状に巻かれた拭き取りシートを引き出して下流側に搬送し、液供給ユニットで拭き取りシートに液媒体を供給し、拭き取りシートに染み込んだ液媒体を介して振動ユニットの振動を拭き取りシート及び付着物に対して伝搬させるようにしたから、拭き取りシートに付着した付着物を、拭き取りシートを伝搬する振動と付着物を伝搬する振動との伝搬速度差による振幅変動によって剥離することができる。これにより、付着物の拭き取りに使用した拭き取りシートを何度でも再利用することができ、拭き取りシートを廃棄処分にする必要が無く、コスト低減に有利である。
【0019】
また、付着物の剥離を何度も繰り返すことにより、拭き取りシートの繊維質が痛んで再利用が不可能な状態になったとしても、半田等の付着物が拭き取りシートに付着していないために産業廃棄物として廃棄処分する必要が無く、環境負荷が軽減される。
【0020】
また、例えば、半田の代わりに銀ペーストを拭き取った拭き取りシートに対して本発明を適用すれば、拭き取りシートから剥離させた銀成分を回収して、拭き取りシートだけでなく銀成分を再利用することもできる。
【0021】
また、吸引除去ユニットを振動ユニットの下流側に設けたから、拭き取りシートから付着物を剥離した後で、拭き取りシートに染み込んだ液媒体を吸引して短時間で乾燥させるとともに、拭き取りシートから剥離された後、搬送途中で拭き取りシートの表面に再付着した付着物を吸引除去することができ、拭き取りシートの乾燥作業と付着物の除去作業とを同時に行うことができる。
【0022】
なお、拭き取りシート表面の繊維が毛羽立った状態で拭き取りシートをロール状に巻き取ると、繊維が毛羽立っている箇所でロールの厚さが厚くなる等、ロールの厚さが不均一になるおそれがある。しかしながら、本発明では、拭き取りシート表面の繊維が毛羽立っていたとしても、吸引除去ユニットにより毛羽立った繊維が引きちぎられて吸引除去されるため、このような問題が解消される。
【0023】
さらに、吸引除去ユニットの吸引ノズルの少なくとも一端側には開口部が開口しており、その開口部を密閉する蓋部材が着脱自在に取り付けられているから、吸引ノズル内の清掃作業が行いやすくなる。
【0024】
具体的に、吸引除去ユニットでは、液媒体の他にも、拭き取りシートの表面に再付着した付着物や繊維が吸引される。そのため、付着物や繊維が吸引ノズル内に堆積されてしまい、吸引ノズル内の空気流路が狭くなって吸引効率が低下してしまうおそれがある。
【0025】
これに対し、本発明では、吸引ノズルの開口部に蓋部材を着脱自在に取り付けているから、蓋部材を取り外して吸引ノズル内の付着物や繊維の詰まり状況を定期的に確認し、長尺のブラシ等を用いて付着物や繊維を容易に取り除くことができる。
【0026】
第2の発明によれば、吸引ノズルの軸方向に延びるスリット形状の吸引孔を、軸方向に間隔をあけて複数設けたから、吸引ノズルの軸方向の全長にわたって1本のスリット形状の吸引孔を設けた場合に比べて吸引ノズルの剛性を十分に確保できるとともに、拭き取りシートの幅方向の広範囲にわたって効率良く液媒体を吸引除去することができる。
【0027】
さらに、吸引ノズルに巻き掛けられる拭き取りシートの幅方向両端よりも外側位置で開口する吸引孔、すなわち、液媒体の吸引除去に寄与しない吸引孔を閉塞部材で塞ぐようにしたから、吸引効率を向上させることができる。
【0028】
第3の発明によれば、吸引ノズルの周方向に延びるスリット形状の吸引孔を、拭き取りシートの搬送方向に対して傾斜させて且つ軸方向に間隔をあけて複数設けたから、効率良く液媒体を吸引除去することができる。
【0029】
第4の発明によれば、ノズル内筒部を回転させ、ノズル内筒部の連通孔とノズル外筒部の吸引孔とを選択的に連通させることで、所望の吸引孔を開閉させるようにしたから、拭き取りシートの幅寸法に応じて液媒体の吸引除去に寄与しない吸引孔を塞ぐことができ、吸引効率を向上させることができる。
【0030】
さらに、拭き取りシートの繊維を吸引した後、吸引孔の周縁部にその繊維が引っ掛かって残っていた場合でも、ノズル内筒部を回転させることで繊維を容易に取り除くことができる。
【0031】
第5の発明によれば、加熱手段により、吸引ノズルにおける拭き取りシートが巻き掛けられる面を加熱するようにしたから、吸引ノズルで液媒体を吸引除去するとともに、吸引ノズルの加熱面に拭き取りシート表面が押し当てられ、熱によって拭き取りシートの皺を延ばす、いわゆるアイロンのように機能する。そのため、液媒体の乾燥を促進できるとともに、拭き取りシート表面の繊維の毛羽立ちを修正することができる。
【0032】
第6の発明によれば、拭き取りシートの搬送方向の上流側から下流側に向かって貯留槽の底板を下方に傾斜させているから、拭き取りシートから剥離した付着物が、貯留槽の底板の傾斜に沿って下流側に堆積することとなり、拭き取りシートの搬送途中でその表面に再付着することを抑制する上で有利となる。
【0033】
第7の発明によれば、貯留槽の底板と所定の間隙を存して対向するようにパンチングメタルを配設したから、拭き取りシートから剥離した付着物が、拭き取りシートの搬送途中でその表面に再付着することを抑制する上で有利となる。
【0034】
具体的に、貯留槽内にパンチングメタルを配設しない場合には、拭き取りシートから剥離した付着物は貯留槽の底板に堆積するが、拭き取りシートの搬送途中でその表面が貯留槽の底板に接触してしまい、貯留槽の底板に堆積していた付着物が拭き取りシートの表面に再付着するおそれがある。
【0035】
これに対し、本発明では、拭き取りシートから剥離した付着物の一部は、パンチングメタルのパンチ孔を介して貯留槽の底板に堆積する一方、残りの付着物はパンチングメタル上面に堆積する。そして、振動ユニットの振動が、液媒体を介してパンチングメタルまで伝搬されると、パンチングメタル上面に堆積していた付着物が振動し、パンチングメタルのパンチ孔を介して貯留槽の底板に排出されて堆積する。これにより、パンチングメタル上面には付着物がほとんど堆積しなくなり、拭き取りシートの搬送途中でその表面がパンチングメタル上面に接触したとしても、拭き取りシートに付着物が再付着することが抑制できる。
【0036】
第8の発明によれば、振動ユニット及び位置調整ローラを、貯留槽に対向する位置と貯留槽から離間する位置との間で同期して移動可能としたから、振動ユニットを貯留槽から離間するように上方に移動させることで、拭き取りシートを上流側ローラから引き出して下流側ローラに巻き付ける作業や、搬送途中で拭き取りシートを装置から取り外す作業を容易に行うことができる。そして、振動ユニットを貯留槽に対向させる場合にも、位置調整ローラの再調整を行う必要がなく作業効率が向上する。
【0037】
第9の発明によれば、回転規制手段により、下流側ローラにおける拭き取りシートの巻き取りが開始されてから、上流側ローラと下流側ローラとの間に張られた拭き取りシートに所定の張力が付与されるまでの間、上流側ローラの回転を規制するようにしたから、拭き取りシートが波打った状態のままで拭き取りシートの搬送が開始されてしまい、拭き取りシートが搬送中に絡まったり、振動ユニットの振動が拭き取りシート及び付着物に十分に伝搬されないといった不具合を回避することができる。
【0038】
第10の発明によれば、複数の超音波振動子をそれぞれ独立に作動又は停止を切り替えるようにしたから、例えば、付着物がそれほど付着していない拭き取りシートが搬送されてきた場合には、一部の超音波振動子の動作を停止させて残りの超音波振動子のみで付着物の除去作業を行うことで、超音波振動子の駆動に用いる電力を省力化することができ、消費電力を抑える上で有利となる。
【0039】
また、長時間、超音波振動子を駆動させ続けて振動ユニットの温度が上昇した場合には、超音波振動子の熱による破損を防止するために、一部の超音波振動子の動作を停止させることで、それ以上の温度上昇を抑制して超音波振動子の長寿命化を図る上で有利となる。さらに、温度上昇が急激である場合には、全ての超音波振動子を数分間停止させる等の制御を行い、超音波振動子の熱による破損を抑えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る付着物除去装置の構成を示す正面図である。
【図2】振動ユニット周りの装置構成を一部拡大して示す正面図である。
【図3】吸引ノズルの構成を示す平面図である。
【図4】吸引ノズルの構成を示す断面図である。
【図5】幅広の拭き取りシートに応じた吸引孔の閉塞位置を示す平面図である。
【図6】幅狭の拭き取りシートに応じた吸引孔の閉塞位置を示す平面図である。
【図7】吸引ノズルの吸引孔を搬送方向に対して傾斜させた構成を示す平面図である。
【図8】吸引ノズルを搬送方向に2本並べて配置した構成を示す平面図である。
【図9】吸引ノズルに吸引配管を複数接続させた構成を示す正面図である。
【図10】吸引ノズルのノズル外筒部の構成を示す平面図である。
【図11】吸引ノズルのノズル内筒部の構成を示す平面図である。
【図12】吸引ノズルの吸引孔の開閉状態を説明するための断面図である。
【図13】軸受部材の構成を示す平面図である。
【図14】図13のA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0042】
図1は本発明の実施形態に係る付着物除去装置の構成を示す正面図、図2は振動ユニット周りの装置構成を一部拡大して示す正面図である。図1及び図2に示すように、この付着物除去装置10は、付着物Pの拭き取りに使用された拭き取りシートSから付着物Pを除去するものである。
【0043】
具体的に、前記拭き取りシートSは、メタルマスク版を用いて印刷配線基板にクリーム半田を印刷した際に、メタルマスク版の基板側の表面にはみ出した付着物Pとしてのクリーム半田を拭き取るのに用いられる。なお、本実施形態では、拭き取りシートSとして不織布を用いているが、繊維を織り込んで作成した織物シートを用いても構わない。
【0044】
前記付着物除去装置10は、付着物Pの拭き取りに使用された後で付着物Pが付着した面を内側にしてロール状に巻かれた長尺の拭き取りシートSを回転自在に支持する上流側ローラ20と、上流側ローラ20から引き出された拭き取りシートSを下流側に搬送しながら再びロール状に巻き取るための下流側ローラ60と、上流側ローラ20と下流側ローラ60との間に配設され、拭き取りシートSに対して振動伝達媒体としての液媒体を供給する液供給ユニット30と、液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに対して振動を与える振動ユニット40と、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を吸引除去する吸引除去ユニット50とを備えている。これらのユニットは、本体カバー15により覆われている。この本体カバー15は、図示しない中心軸を中心に回動することで開閉される。
【0045】
前記上流側ローラ20は、下流側ローラ60の回転駆動に連動して回転する、いわゆる従動ローラとして構成され、ローラ軸の両端が後述する軸受部材70(図13参照)によって回転自在に両端支持されている。なお、上流側ローラ20を図示しない駆動モータによって回転駆動させる構成としてもよい。
【0046】
そして、前記上流側ローラ20は、使用済みの拭き取りシートSがロール状に巻かれた状態で軸受部材70から着脱自在とされている。より詳細には、拭き取りシートSは筒状の巻芯に巻き付けられ、この巻芯の内筒部分が上流側ローラ20のローラ軸に嵌合されることで、ロール状の拭き取りシートSが上流側ローラ20に取り付けられている。なお、上流側ローラ20を着脱自在に支持する軸受部材70の構成については、下流側ローラ60を回転自在に支持する軸受部材70と同様の構成であるため後述する。
【0047】
また、前記上流側ローラ20の下流側近傍には、終端検出センサ28が設けられている。この終端検出センサ28は、上流側ローラ20に巻き付けられていたロール状の拭き取りシートSの終端が上流側ローラ20から離脱したことを検出するものである。
【0048】
また、前記上流側ローラ20のローラ軸の上面は、回転規制部材22により押圧されている。この回転規制部材22は、例えば、弾性変形可能な部材で構成され、弾性変形した状態でローラ軸に当接することで上流側ローラ20の回転を規制している。この回転規制部材22は、本体カバー15に取り付けられ、本体カバー15の開閉動作に連動してローラ軸が押圧される。
【0049】
そして、前記下流側ローラ60で拭き取りシートSが巻き取られ、上流側ローラ20と下流側ローラ60との間で拭き取りシートSに所定の張力が付与されると、回転規制部材22による拭き取りシートSの押圧が解除され、上流側ローラ20が回転可能となる。
【0050】
このような構成とすれば、拭き取りシートSが波打った状態のままで拭き取りシートSの搬送が開始されてしまい、拭き取りシートSが搬送中に絡まったり、振動ユニット40の振動が拭き取りシートS及び付着物Pに十分に伝搬されないといった不具合を回避することができる。
【0051】
前記上流側ローラ20から引き出された拭き取りシートSは、下流側に配設された液供給ユニット30の供給パイプ31の上方を通過し、振動ユニット40の上流側下部の湾曲面に沿って巻き掛けられている。そして、振動ユニット40の下流側に配設された位置調整ローラ26の下側から外周面に沿って巻き掛けられている。
【0052】
なお、付着物Pが付着した面を外側にしてロール状に巻かれた拭き取りシートSを上流側ローラ20にセットした場合には、上流側ローラ20から引き出された拭き取りシートSを、液供給ユニット30の供給パイプ31の上側から外周面に沿って巻き掛けるようにすれば、付着物Pが付着した面を下面とすることができる。
【0053】
前記液供給ユニット30は、拭き取りシートSの幅方向に延びる供給パイプ31を備え、供給パイプ31には、軸方向に間隔をあけて複数の噴射孔31aが形成されている。具体的に、この噴射孔31aは、供給パイプ31から振動ユニット40に向かって搬送される拭き取りシートSに対して振動伝達媒体としての液媒体を噴射するように、供給パイプ31の斜め下方に形成されている。なお、本実施形態では、液媒体としてアルコールを用いている。
【0054】
また、前記液供給ユニット30には、液媒体を貯留する貯留タンク80から液媒体が供給される。具体的に、液供給ユニット30と貯留タンク80との間には供給配管81が設けられ、供給配管81には供給ポンプ82が接続されている。そして、供給ポンプ82を駆動させて貯留タンク80内の液媒体を汲み上げることで、供給配管81を介して液供給ユニット30に対して液媒体が供給されるようになっている。
【0055】
前記貯留タンク80には、液供給ユニット30に接続された供給配管81の他にも、後述する貯留槽41の底板に連通する回収配管83と、後述する分離タンク85の底板に連通する分離配管88とが接続されている。そして、回収配管83及び分離配管88を介してそれぞれ回収された液媒体は、貯留タンク80に貯留され、液供給ユニット30に供給すべく再利用される。これにより、作業者が貯留タンク80内の液媒体の減り具合を確認して補給する頻度が少なくなって作業性が向上するとともに、液媒体の再利用が可能となることからコスト低減に有利となる。
【0056】
前記振動ユニット40は、液供給ユニット30から供給された液媒体を貯留する貯留槽41に対向して上方に配設され、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体に対して振動を与える振動板45aと、振動板45aの上面に取り付けられた超音波振動子46とを備えている。
【0057】
前記貯留槽41は、液供給ユニット30から供給された液媒体を貯留するものであり、より詳細には、液媒体を拭き取りシートSに染み込ませたときに、拭き取りシートSで吸収しきれずに表面から漏れ出した液媒体を受けて貯留している。
【0058】
ここで、前記貯留槽41の底板は、上流側から下流側にかけて下方に傾斜している。そのため、拭き取りシートSから剥離した付着物Pが、貯留槽41の底板の傾斜に沿って下流側に堆積することとなり、付着物Pが拭き取りシートSの搬送途中でその表面に再付着することが抑制される。
【0059】
前記貯留槽41内には、貯留槽41の底板と所定の間隙を存して対向するようにパンチングメタル42が配設されている。具体的に、貯留槽41とパンチングメタル42との間には、図示しないスペーサが設けられ、底板とパンチングメタル42との間に所定の間隙が形成される。なお、パンチングメタル42の幅方向両端又は長手方向両端を下方に折り曲げることで、この折り曲げ部分をスペーサとして用いてもよい。
【0060】
また、前記貯留槽41の底板における下流側には、貯留槽41内の液媒体を回収する回収配管83が接続されている。この回収配管83の排出側端部は、貯留タンク80と接続され、貯留槽41内に貯留された液媒体が回収配管83を介して貯留タンク80に排出されるようになっている。
【0061】
前記振動板45aは、貯留槽41の上方に配設された中空の振動ボックス45の底板で構成されている。振動ボックス45の上流側の下部には、拭き取りシートSを巻き掛ける湾曲面が形成されている。振動ボックス45内には、超音波振動子46が複数配置されている。なお、超音波振動子46の配置は、拭き取りシートSの幅方向全面に振動が均一に伝搬されるように適宜設定される。
【0062】
また、前記振動ボックス45は、位置調整機構16を介して本体カバー15に取り付けられ、振動板45aの高さ位置を調整できるようになっている。位置調整ローラ26も同様に、位置調整機構17を介して本体カバー15に取り付けられている。ここで、拭き取りシートSは、振動ボックス45の湾曲面に巻き掛けられることで振動板45aに接触し、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して振動が伝搬される。なお、位置調整ローラ26の高さ位置を調整することで、拭き取りシートSに染み込んで表面に膜状に存在する液媒体と振動板45aとを接触させるようにしてもよい。
【0063】
このように、前記振動ボックス45及び位置調整ローラ26を本体カバー15に取り付けることで、本体カバー15の開閉動作に連動して、貯留槽41に対向する位置と貯留槽41から離間する位置との間で振動ボックス45及び位置調整ローラ26を同期して移動させることができる。これにより、振動ボックス45を貯留槽41から離間するように上方に移動させることで、拭き取りシートSを上流側ローラ20から引き出して下流側ローラ60に巻き付ける作業や、搬送途中で拭き取りシートSを装置から取り外す作業を容易に行うことができる。そして、振動ボックス45を貯留槽41に対向させる場合にも、位置調整ローラ26の再調整を行う必要がなく作業効率が向上する。
【0064】
ここで、前記複数の超音波振動子46は、それぞれ独立に作動又は停止を切り替え可能に構成されている。例えば、付着物Pがそれほど付着していない拭き取りシートSが搬送されてきた場合には、一部の超音波振動子46の動作を停止させて残りの超音波振動子46のみで付着物Pの除去作業を行うことで、超音波振動子46の駆動に用いる電力を省力化することができ、消費電力を抑える上で有利となる。
【0065】
また、長時間、超音波振動子46を駆動させ続けて振動ユニット40の温度が上昇した場合には、超音波振動子46の熱による破損を防止するために、一部の超音波振動子46の動作を停止させることで、それ以上の温度上昇を抑制するようにしている。さらに、温度上昇が急激である場合には、全ての超音波振動子46を数分間停止させる等の制御を行い、超音波振動子46の熱による破損を抑えるようにしてもよい。
【0066】
ここで、前記超音波振動子46は、振動板45aを厚さ方向に振動させるように動作するものであり、超音波振動子46で発生させた振動が縦方向の振動波となり、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに伝搬される。
【0067】
このとき、前記拭き取りシートSを伝搬する振動と付着物Pを伝搬する振動との間には、その材質の違いから伝搬速度差による振幅変動が生じる。すなわち、半田等の金属材である付着物Pの方が、不織布である拭き取りシートSよりも振動の伝搬速度が速いため、付着物Pの方が超音波振動による振幅が激しくなる。この振幅変動によって、拭き取りシートSから付着物Pが剥離される。
【0068】
このように、拭き取りシートSに付着した付着物Pを超音波振動させるだけで、付着物Pを拭き取りシートS表面から剥離することができるため、拭き取りシートSを再利用することができる。
【0069】
また、前記超音波振動子46から液媒体内を通過した振動のエネルギーは、パンチングメタル42で反射され、振動のエネルギーの減衰が抑えられる。これにより、効率的に付着物Pを超音波振動させることができる。このパンチングメタル42は、例えばステンレスで形成すればよい。
【0070】
そして、前記拭き取りシートSから剥離された付着物Pの一部は、パンチングメタル42のパンチ孔を介して貯留槽41の底板に堆積する。剥離された残りの付着物Pは、パンチングメタル42上面に堆積するが、パンチングメタル42は超音波振動子46の振動を反射して振動するため、その振動によって残りの付着物Pもパンチ孔を介して貯留槽41の底板に排出されて堆積する。
【0071】
このような構成とすれば、拭き取りシートSから剥離した付着物Pが、拭き取りシートSの搬送途中でその表面に再付着することを抑制する上で有利となる。具体的に、貯留槽41内にパンチングメタル42を配設しない場合には、拭き取りシートSから剥離した付着物Pは貯留槽41の底板に堆積するが、拭き取りシートSの搬送途中でその表面が貯留槽41の底板に接触してしまい、貯留槽41の底板に堆積していた付着物Pが拭き取りシートSの表面に再付着するおそれがある。
【0072】
これに対し、本実施形態では、拭き取りシートSから剥離した付着物Pは、パンチングメタル42のパンチ孔を介して貯留槽41の底板に堆積するから、パンチングメタル42上面には付着物Pがほとんど堆積しなくなり、拭き取りシートSの搬送途中でその表面がパンチングメタル42上面に接触したとしても、拭き取りシートSに付着物が再付着することを抑制できる。
【0073】
前記振動ユニット40で付着物Pが除去された拭き取りシートSは、位置調整ローラ26の下側から外周面に沿って巻き掛けられ、続いて、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51の上側から外周面に沿って巻き掛けられている。この吸引除去ユニット50は、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体や、振動ユニット40で剥離した後、拭き取りシートSの搬送途中で表面に再付着した付着物Pを吸引除去するためのものである。なお、拭き取りシート表面の繊維が毛羽立っている場合には、その毛羽立った繊維が引きちぎられて吸引除去される。
【0074】
図3は、吸引除去ユニットの構成を示す平面図、図4は断面図である。図3及び図4に示すように、吸引除去ユニット50は、拭き取りシートSの幅方向に延びる筒状の吸引ノズル51と、吸引ノズル51内の空気を吸引する吸引ポンプ52(図1参照)とを備えている。吸引ノズル51の上側の外周面、すなわち拭き取りシートSが巻き掛けられる面には、軸方向に延びるスリット形状の吸引孔51aが開口している。この吸引孔51aは、軸方向に間隔をあけて複数設けられている。このような構成とすれば、吸引ノズル51の軸方向の全長にわたって1本のスリット形状の吸引孔51aを設けた場合に比べて吸引ノズル51の剛性を十分に確保できるとともに、拭き取りシートSの幅方向の広範囲にわたって効率良く液媒体を吸引除去することができる。
【0075】
さらに、軸方向に並ぶ吸引孔51aの列が、吸引ノズル51の周方向にも間隔をあけて設けられている。ここで、図3において上側の吸引孔51aの列と下側の吸引孔51aの列とは、互いの吸引孔51a間の継ぎ目部分が吸引ノズル51の周方向に連続しないように、軸方向に相対的にシフトした、いわゆる千鳥配列となっている。
【0076】
図1に示すように、前記吸引ノズル51は、吸引配管84を介して中空の分離タンク85と接続されている。分離タンク85の上面には排気ダクト86が接続され、底面には分離配管88が接続されている。排気ダクト86には吸引ポンプ52が接続され、この吸引ポンプ52により排気ダクト86から分離タンク85内の空気を吸引することで、分離タンク85内が負圧となる。その結果、吸引配管84を介して吸引ノズル51内の空気が吸引され、吸引孔51aから液媒体及び付着物Pが吸引除去される。
【0077】
図3及び図4に示すように、吸引ノズル51の左端側に開口する開口部51bには、その開口部51bを密閉する蓋部材53が着脱自在に取り付けられている。これにより、吸引ノズル51内の清掃作業が行いやすくなる。
【0078】
具体的に、前記吸引ノズル51では、液媒体の他にも、拭き取りシートSの表面に再付着した付着物Pや繊維が吸引される。そのため、付着物Pや繊維が吸引ノズル51内に堆積されてしまい、吸引ノズル51内の空気流路が狭くなって吸引効率が低下してしまうおそれがある。
【0079】
これに対し、本実施形態では、吸引ノズル51の開口部51bに蓋部材53を着脱自在に取り付けているから、蓋部材53を取り外して吸引ノズル51内の付着物Pや繊維の詰まり状況を定期的に確認し、長尺のブラシ等を用いて付着物Pや繊維を容易に取り除くことができる。
【0080】
また、前記吸引ノズル51の軸方向の両端部には、吸引孔51aを開閉可能な閉塞部材54が設けられている。この閉塞部材54は、断面C型の円弧状部材で形成され、吸引ノズル51の外周面に沿って摺動自在に嵌合されている。ここで、図4に示すように、閉塞部材54が吸引ノズル51の下側に位置しているときには、吸引孔51aが開口した状態となる。一方、吸引ノズル51の外周面に沿って閉塞部材54を摺動させ、閉塞部材54が吸引ノズル51の上側に位置しているときには、吸引孔51aが塞がれた状態となる。
【0081】
そして、図5に示すように、幅広の拭き取りシートSに対して液媒体の吸引を行う場合には、吸引ノズル51の軸方向の両端に配置された2つの閉塞部材54によって、拭き取りシートSの幅方向両端よりも外側位置で開口する吸引孔51aを塞ぐようにする。また、図6に示すように、幅狭の拭き取りシートSに対して液媒体の吸引を行う場合には、全ての閉塞部材54によって、拭き取りシートSの幅方向両端よりも外側位置で開口する吸引孔51aを塞ぐようにする。このように、液媒体の吸引除去に寄与しない吸引孔51aを閉塞部材54で塞ぐことで、吸引効率を向上させることができる。
【0082】
なお、前記閉塞部材54の数量、形状、及びその配置はあくまでも一例であり、この形態に限定するものではない。また、閉塞部材54は、吸引ノズル51に対して着脱自在な構成としてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、吸引ノズル51の吸引孔51aを、軸方向に延びるスリット形状としたが、この形態に限定するものではない。例えば、図7に示すように、拭き取りシートSの搬送方向に対して傾斜するように吸引ノズル51の周方向に延びるスリット形状で且つ軸方向に間隔をあけて複数の吸引孔51aを形成するようにしてもよい。
【0084】
また、図8に示すように、2本の吸引ノズル51を搬送方向に並べて配置し、上側の吸引ノズル51ではノズル左端から空気を吸引する一方、下側の吸引ノズル51ではノズル右端から空気を吸引するようにしてもよい。具体的に、吸引ノズル51の全長が長い場合には、蓋部材53側周辺の吸引力が吸引配管84側周辺の吸引力に比べて低下してしまい、吸引量が不足してしまう傾向にある。これに対し、図8に示すように、2本の吸引ノズル51を搬送方向に並べて配置すれば、下側の吸引ノズル51の蓋部材53側周辺の吸引力が不足したとしても、上側の吸引ノズル51によって吸引力を補うことができ、拭き取りシートSに対する吸引力のバラツキを抑えることができる。
【0085】
また、図9に示すように、吸引ノズル51の軸方向に等間隔に複数本(図9の例では3本)の吸引配管84を接続するようにしてもよい。このような構成とすれば、吸引ノズル51の軸方向の位置によって吸引力にバラツキが生じることを抑え、吸引力を一定に保つことができる。なお、吸引ノズル51の両端部にそれぞれ吸引配管84を接続した構成としてもよい。
【0086】
また、図10に示すように、吸引ノズル51を、吸引孔51aが形成されたノズル外筒部56と、ノズル外筒部56の内周面に沿って回転自在に嵌合されたノズル内筒部57とを有する2重管構造としてもよい。
【0087】
前記ノズル外筒部56には、軸方向に間隔をあけてスリット形状の吸引孔51a(図10の例では4つ)が形成されている。また、図11に示すように、ノズル内筒部57には、周方向に間隔をあけて並ぶスリット形状の連通孔57aの列(図11の例では3列)が形成されている。この連通孔57aは、各列毎に軸方向にも間隔をあけて複数形成されている。具体的に、図11に示す例では、上から1列目には2つ、2列目には3つ、3列目には4つの連通孔57aがそれぞれ形成されている。
【0088】
図12は、吸引ノズルの吸引孔の開閉状態を説明するための断面図である。図12(a)は、ノズル内筒部57の1列目の連通孔57aを吸引孔51aに連通させた状態を示している。このとき、図10において左側から2つ目までの吸引孔51aが連通孔57aに連通して開口する一方、残りの2つの吸引孔51aはノズル内筒部57によって閉塞される。
【0089】
図12(b)は、ノズル内筒部57の2列目の連通孔57aに連通させた状態を示している。このとき、図10において左側から3つ目までの吸引孔51aが連通孔57aに連通して開口する一方、残りの1つの吸引孔51aはノズル内筒部57によって閉塞される。
【0090】
図12(c)は、ノズル内筒部57の3列目の連通孔57aに連通させた状態を示している。このとき、全ての吸引孔51aが連通孔57aに連通して開口する。
【0091】
このような構成とすれば、ノズル内筒部57を回転させ、その回転角度に応じて吸引孔51aと連通孔57aとを選択的に連通させることで、所望の吸引孔51aを開閉させることができる。これにより、拭き取りシートSの幅寸法に応じて液媒体の吸引除去に寄与しない吸引孔51aを塞ぐことができ、吸引効率を向上させることができる。
【0092】
さらに、拭き取りシートSの繊維を吸引した後、吸引孔51aの周縁部にその繊維が引っ掛かって残っていた場合でも、ノズル内筒部57を回転させることで繊維を容易に取り除くことができる。なお、吸引孔51aや連通孔57aの数量、形状、及びその配置はあくまでも一例であり、この形態に限定するものではない。
【0093】
図1に示すように、前記吸引ノズル51には、加熱装置58が接続されている。この加熱装置58は、吸引ノズル51における拭き取りシートSが巻き掛けられる面を加熱するものであり、例えばヒータ等で構成される。このような構成とすれば、吸引ノズル51で液媒体を吸引除去するとともに、吸引ノズル51の加熱面に拭き取りシートS表面が押し当てられ、熱によって拭き取りシートSの皺を延ばす、いわゆるアイロンのように機能する。そのため、液媒体の乾燥を促進できるとともに、拭き取りシートS表面の繊維の毛羽立ちを修正することができる。
【0094】
前記分離配管88の排出側端部は、貯留タンク80と接続され、貯留槽41内に貯留された液媒体が分離配管88を介して貯留タンク80に排出されるようになっている。
【0095】
前記分離タンク85は、吸引ノズル51から吸引した液媒体と付着物Pとを分離させるためのものである。具体的に、分離タンク85内に付着物Pを含んだ液媒体が流入されると、液媒体は分離配管88を介して貯留タンク80に排出される一方、付着物Pは分離タンク85の底板に堆積する。ここで、分離タンク85は、図示しない回動軸を中心に装置手前側に傾けることができる構造となっており、作業者が分離タンク85を装置手前側に傾けた状態で、分離タンク85の底板に堆積した付着物Pを取り除くことができ、作業性が向上する。
【0096】
前記排気ダクト86には、フィルタ機能付きの消音マフラ87が接続されており、空気の吸い込み音を消音して騒音を防止するとともに、液媒体と一緒に吸引した粒子状の付着物Pが排気ダクト86を介して外部環境に排気されないように遮断している。なお、図1に示す例では、吸引ポンプ52の上流側に消音マフラ87を設置しているが、下流側に設置しても構わない。
【0097】
前記吸引除去ユニット50で乾燥された拭き取りシートSは、本体カバー15に取り付けられた方向変換ローラ55の下側から外周面に沿って巻き掛けられ、下流側ローラ60にロール状に巻き取られる。下流側ローラ60は、図示しない駆動モータに連結されていて、駆動モータの回転駆動に連動して、上流側ローラ20から引き出した拭き取りシートSを巻き取るように構成されている。より正確には、下流側ローラ60のローラ軸に嵌合された筒状の巻芯に拭き取りシートSがロール状に巻き取られる。このようにすれば、下流側ローラ60から巻芯を取り外すだけで、ロール状の拭き取りシートSを別の処理工程である拭き取り装置に搬送することができる。
【0098】
図13は軸受部材の構成を示す平面図、図14は図13のA矢視図である。図13及び図14に示すように、下流側ローラ60は、そのローラ軸の両端が軸受部材70によって回転自在に両端支持されている。具体的に、軸受部材70は、ローラ軸を支持する2つの支持ローラ71と、ローラ軸を押圧する方向に付勢された付勢ローラ72とを備え、この3つのローラによって下流側ローラ60のローラ軸を回転自在に支持している。
【0099】
ここで、作業者が下流側ローラ60を軸受部材70に対して取り付ける場合には、付勢ローラ72の付勢力に抗してローラ軸を下流側から押し込むことで、支持ローラ71及び付勢ローラ72で下流側ローラ60を狭持させる。一方、下流側ローラ60を軸受部材70から取り外す場合には、付勢ローラ72の付勢力に抗してローラ軸を下流側に向かって引き抜くことで下流側ローラ60を取り外すようにしている。
【0100】
なお、前記上流側ローラ20を支持する軸受部材70は、下流側ローラ60を支持する軸受部材70と同様に、2つの支持ローラ71と1つの付勢ローラ72とを備えている。そして、上流側ローラ20を軸受部材70に対して取り付ける場合には、上流側ローラ20のローラ軸を上流側から押し込むようにし、取り外す場合には上流側から引き抜いて取り外すようにしている。
【0101】
−付着物の剥離動作−
次に、拭き取りシートSに付着した付着物Pを付着物除去装置10で剥離するための動作手順について説明する。
【0102】
まず、図1に示すように、本体カバー15を開いた状態とし、付着物Pを拭き取った後でロール状に巻かれた拭き取りシートSを上流側ローラ20に取り付け、上流側ローラ20を軸受部材70(図13参照)にセットする。そして、上流側ローラ20から拭き取りシートSを引き出し、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51の上側を通過させて下流側ローラ60に巻き付ける。その後、本体カバー15を閉じることで、拭き取りシートSを振動ユニット40の振動ボックス45の湾曲面、位置調整ローラ26、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51、方向変換ローラ55にそれぞれ巻き掛ける。このとき、上流側ローラ20のローラ軸は、回転規制部材22により押圧され、上流側ローラ20の回転が規制される。
【0103】
次に、図示しない駆動モータを駆動させて下流側ローラ60を回転駆動させ、拭き取りシートSを下流側ローラ60に巻き取っていく。上流側ローラ20と下流側ローラ60との間で拭き取りシートSに所定の張力が付与されると、回転規制部材22による拭き取りシートSの押圧が解除され、上流側ローラ20が回転可能となり、拭き取りシートSの搬送が開始される。
【0104】
次に、液供給ユニット30の供給パイプ31から拭き取りシートSに向かって液媒体が供給される。拭き取りシートSに供給された液媒体は、拭き取りシートSに染み込む一方、吸収しきれなかった液媒体は、拭き取りシートS表面から漏れ出して貯留槽41に貯留される。
【0105】
そして、振動ユニット40の超音波振動子46で振動を発生させ、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに振動を伝搬する。ここで、拭き取りシートSを伝搬する振動と付着物Pを伝搬する振動との伝搬速度差により、両者の間には振幅変動が生じる。すなわち、付着物Pの方が激しく振動するため、拭き取りシートS表面から付着物Pが剥離する。
【0106】
ここで、剥離された付着物Pの一部は、パンチングメタル42のパンチ孔を介して貯留槽41の底板に堆積し、残りの付着物Pはパンチングメタル42上面に堆積する。しかしながら、パンチングメタル42は、超音波振動子46の振動を反射する反射板として機能するため、パンチングメタル42の振動により表面に堆積していた残りの付着物Pがパンチ孔を介して貯留槽41の底板に排出されて堆積する。これにより、拭き取りシートSの搬送途中で付着物Pが拭き取りシートS表面に再付着することを抑制できる。
【0107】
次に、前記振動ユニット40で付着物Pが除去された拭き取りシートSは、吸引除去ユニット50に搬送される。吸引除去ユニット50では、吸引ノズル51から空気を吸引することで、拭き取りシートSに染み込んでいる液媒体や、表面に再付着している付着物Pが吸引除去される。
【0108】
前記吸引除去ユニット50で乾燥した拭き取りシートSは、下流側ローラ60においてロール状に巻き取られる。このような付着物Pの除去、拭き取りシートSの乾燥、巻き取りを連続して行い、上流側ローラ20の下流側近傍に配設した終端検出センサ28で拭き取りシートSの終端が検出されると、振動ユニット40による付着物Pの剥離作業が停止し、下流側ローラ60に拭き取りシートSが完全に巻き取られて作業が完了する。
【0109】
そして、図13に示すように、作業者が下流側ローラ60のローラ軸を軸受部材70の付勢ローラ72の付勢力に抗して引き抜いて取り外し、さらに、下流側ローラ60に巻き取られたロール状の拭き取りシートSを取り外す。このように、付着物Pが除去されたロール状の拭き取りシートSは、別の処理工程である拭き取り装置にセットすることで再利用される。
【0110】
以上のように、本実施形態に係る付着物除去装置10によれば、ロール状に巻かれた拭き取りシートSを引き出して下流側に搬送し、液供給ユニット30で拭き取りシートSに液媒体を供給し、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して超音波振動子46の振動を拭き取りシートS及び付着物Pに対して伝搬させるようにしたから、拭き取りシートSに付着した付着物Pを、拭き取りシートSを伝搬する振動と付着物Pを伝搬する振動との伝搬速度差による振幅変動によって剥離することができる。これにより、付着物Pの拭き取りに使用した拭き取りシートSを何度でも再利用することができ、拭き取りシートSを廃棄処分にする必要が無く、コスト低減に有利である。
【0111】
さらに、前記吸引ノズル51の開口部51bに蓋部材53を着脱自在に取り付けているから、蓋部材53を取り外して吸引ノズル51内の付着物Pや繊維の詰まり状況を定期的に確認し、長尺のブラシ等を用いて付着物Pや繊維を容易に取り除くことができる。
【0112】
なお、本実施形態では、付着物除去装置10を用いて、メタルマスク版の表面にはみ出した半田等の付着物Pの拭き取りに使用した拭き取りシートSから付着物Pを除去する場合について説明したが、このような拭き取りシートSを用いた形態に限定するものではない。
【0113】
例えば、フラックスをスプレー状に噴射することでプリント基板上にフラックスを塗布するスプレーフラクサー装置や、予め塗布されたプリント基板上のクリーム半田を赤外線で加熱して溶融させることでチップをプリント基板上に接着させるリフロー装置等を運転させている環境下において、空気中を浮遊するフラックス成分、スス、埃等を回収するために排気口に設けられた長尺のシート状のフィルタを、本発明の付着物除去装置10にセットし、フィルタに付着する付着物を除去することでフィルタを再利用できるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上説明したように、本発明は、メタルマスク版の表面にはみ出した半田等の付着物の拭き取りに使用した拭き取りシートから付着物を除去して、拭き取りシートを何度も再利用できるようにした付着物除去装置を提供することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0115】
10 付着物除去装置
20 上流側ローラ
22 回転規制部材(回転規制手段)
26 位置調整ローラ
30 液供給ユニット
40 振動ユニット
41 貯留槽
42 パンチングメタル
46 超音波振動子
50 吸引除去ユニット
51 吸引ノズル
51a 吸引孔
51b 開口部
52 吸引ポンプ
53 蓋部材
54 閉塞部材
56 ノズル外筒部
57 ノズル内筒部
57a 連通孔
58 加熱装置(加熱手段)
60 下流側ローラ
P 付着物
S 拭き取りシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着物の拭き取りに使用された後でロール状に巻かれた長尺の拭き取りシートから該付着物を除去するための付着物除去装置であって、
ロール状に巻かれた前記拭き取りシートを回転自在に支持する上流側ローラと、
前記上流側ローラから引き出された前記拭き取りシートを下流側に搬送しながら再びロール状に巻き取るための下流側ローラと、
前記上流側ローラと前記下流側ローラとの間に配設され、前記拭き取りシートに対して振動伝達媒体としての液媒体を供給する液供給ユニットと、
前記液供給ユニットから供給された液媒体を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に対向して上方に配設され、前記拭き取りシートに染み込んだ液媒体に対して振動を与える超音波振動子を有する振動ユニットと、
前記振動ユニットの下流側に配設され、前記拭き取りシートに染み込んだ液媒体及び該振動ユニットにより剥離された後で該拭き取りシート表面に再付着した付着物を吸引除去する吸引除去ユニットとを備え、
前記吸引除去ユニットは、前記拭き取りシートの幅方向に延び且つ該拭き取りシートが巻き掛けられる面に吸引孔が形成された筒状の吸引ノズルと、該吸引ノズルの少なくとも一端側に開口する開口部を密閉するように着脱自在に取り付けられた蓋部材と、該吸引ノズル内の空気を吸引する吸引ポンプとを有していることを特徴とする付着物除去装置
【請求項2】
請求項1において、
前記吸引孔は、前記吸引ノズルの軸方向に延びるスリット形状で且つ軸方向に間隔をあけて複数形成されており、
前記吸引ノズルに巻き掛けられる前記拭き取りシートの幅方向両端よりも外側位置で開口する前記吸引孔を塞ぐ閉塞部材を備えたことを特徴とする付着物除去装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記吸引孔は、前記拭き取りシートの搬送方向に対して傾斜するように前記吸引ノズルの周方向に延びるスリット形状で且つ軸方向に間隔をあけて複数形成されていることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記吸引ノズルは、前記吸引孔が形成されたノズル外筒部と、該ノズル外筒部の内周面に沿って回転自在に嵌合されたノズル内筒部とを有し、
前記ノズル内筒部には、その回転角度に応じて前記吸引孔を選択的に開閉させる連通孔が、周方向に間隔をあけて複数形成されていることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1項において、
前記吸引ノズルにおける前記拭き取りシートが巻き掛けられる面を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする付着物除去装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項において、
前記貯留槽の底板は、前記拭き取りシートの搬送方向の上流側から下流側に向かって下方に傾斜していることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1項において、
前記貯留槽内には、該貯留槽の底板と所定の間隙を存して対向するようにパンチングメタルが配設されていることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れか1項において、
前記振動ユニットと前記吸引除去ユニットとの間に配設され、該振動ユニットに対する前記拭き取りシートの高さ位置を調整するための位置調整ローラを備え、
前記振動ユニット及び前記位置調整ローラは、前記貯留槽に対向する位置と、該貯留槽から離間する位置との間で同期して移動可能に構成されていることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうち何れか1項において、
前記下流側ローラにおける前記拭き取りシートの巻き取りが開始されてから、前記上流側ローラと前記下流側ローラとの間に張られた該拭き取りシートに所定の張力が付与されるまでの間、該上流側ローラの回転を規制する回転規制手段を備えたことを特徴とする付着物除去装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れか1項において、
前記振動ユニットは、前記超音波振動子を複数有しており、
前記複数の超音波振動子は、それぞれ独立に作動又は停止を切り替え可能に構成されていることを特徴とする付着物除去装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−235259(P2011−235259A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110954(P2010−110954)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(591230675)株式会社サワーコーポレーション (9)
【Fターム(参考)】