説明

伝熱シートおよびその製造方法

【課題】高い効率で熱を伝導することのできる伝熱シートを提供すること、および高い効率で熱を伝導することができる伝熱シートを容易に製造することのできる方法を提供すること。
【解決手段】伝熱シートは、高分子材料よりなるシート基体中に、熱伝導性粒子が当該シート基体の厚み方向に配向された状態で含有されてなる伝熱シートであって、前記熱伝導性粒子が、基体粒子の表面の少なくとも一部が、当該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子により被覆されてなる複合粒子であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱シートおよびその製造方法に関し、更に詳しくは、電子機器における電子部品、あるいは照明装置における光源から生じる熱を放熱するために好適に用いることのできる伝熱シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えばCPU(Central Processing Unit)などの電子部品を備えた電子機器においては、その使用時に、CPUなどの電子部品から生じる熱を当該電子機器の外部に放熱することが行われている。
【0003】
電子機器における発熱を放熱する手段としては、例えば高分子材料よりなるシート基体中に、例えば金属やセラミック材料などの高い熱伝導性を有する材料よりなる粒子が含有されてなる伝熱シートを、電子部品と放熱板(ヒートシンク)との間に狭圧された状態で配置することにより、電子部品に生ずる熱を伝熱シートを介して放熱板に伝導させる手段が用いられてきている。
【0004】
具体的に、伝熱シートとしては、高分子材料よりなるシート基体中に、熱伝導性を有する材料よりなる粒子が一定方向に配向された状態で含有されてなるものなどが提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。
ここに、特許文献1には、高分子材料よりなるシート基体中に、窒化ホウ素粉末が一定方向に磁場配向された状態で含有されてなるものが開示されている。
特許文献2には、柔軟性を有する高分子材料よりなる両面が平坦なシート基体中に、磁性を示す金属粒子が当該シート基体の厚み方向に配向された状態で含有されてなるものが開示されている。
特許文献3には、柔軟性を有する絶縁性高分子材料よりなる両面が平坦なシート基体中に、磁性を示す絶縁性伝熱粒子、具体的には、例えば磁性材料からなる芯粒子の表面に絶縁性の高熱伝導性材料よりなる被膜が形成されてなる構成の粒子が当該シート基体の厚み方向に配向された状態で含有されてなるものが開示されている。
【0005】
近年、電子機器においては、高密度化および薄型化が急速に進んだことに伴って電子部品から発生する熱の影響がこれまで以上に深刻なものとなっており、しかもこのようにしてなされた電子機器の高性能化および小型化が発熱量の増加をもたらしていることから、電子部品の熱をより高い効率で放熱板に伝導することのできる伝熱シートが求められている。
また、近年、表示装置や照明装置の光源として、LED(Light Emitting Diode)素子が用いられてきており、このようなLED素子を光源として用いた装置においては、高輝度化を図るためにLED素子から発生する熱を十分に放熱させることが必要とされているのだが、装置における放熱スペースの制約などからLED素子から生じる熱を放熱する手段として伝熱シートを用いること、具体的にはLED素子の熱を放熱板(ヒートシンク)に伝導するための部材として用いることの他、ヒートシンクとしても用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−172398号公報
【特許文献2】特開2001−267480号公報
【特許文献3】特開2001−274302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、高い効率で熱を伝導することのできる伝熱シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高い効率で熱を伝導することができる伝熱シートを容易に製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の伝熱シートは、高分子材料よりなるシート基体中に、熱伝導性粒子が当該シート基体の厚み方向に配向された状態で含有されてなる伝熱シートであって、
前記熱伝導性粒子が、基体粒子の表面の少なくとも一部が、当該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子により被覆されてなる複合粒子であることを特徴とする。
【0009】
本発明の伝熱シートは、熱伝導性粒子において、微粒子の粒子径が基体粒子の粒子径の1/2以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の伝熱シートにおいては、熱伝導性粒子を構成する基体粒子は、強磁性体粒子よりなるものであることが好ましい。
【0011】
本発明の伝熱シートにおいては、熱伝導性粒子を構成する微粒子は、セラミック材料、ダイアモンドおよび金属水酸化物から選ばれた少なくとも1種の材料よりなるものであることが好ましい。
【0012】
本発明の伝熱シートにおいては、シート基体を構成する高分子材料が熱可塑性エラストマー組成物であることが好ましい。
【0013】
本発明の伝熱シートの製造方法は、前記の伝熱シートの製造方法であって、
硬化されて高分子材料となる高分子形成材料中に熱伝導性粒子が含有されてなるシート成形材料層を形成し、このシート成形材料層に対して、その厚み方向に磁場を作用させることによって熱伝導性粒子を磁場配向すると共に、当該シート成形材料層の硬化処理を行う工程を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の伝熱シートの製造方法は、前記の伝熱シートの製造方法であって、
加熱溶融された高分子材料中に、熱伝導性粒子が含有されてなるシート成形材料層を形成し、このシート成形材料層に対して、その厚み方向に磁場を作用させることによって熱伝導性粒子を磁場配向する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の伝熱シートによれば、熱伝導性粒子がシート基体の厚み方向に配向された状態で含有されていることにより、当該熱伝導性粒子の連鎖によってその配向方向に伸びる伝熱経路が形成され、しかもこの伝熱経路を形成する熱伝導性粒子が基体粒子の表面に当該基体粒子よりも小径の微粒子が被覆されてなる複合粒子よりなるものであることから、当該熱伝導性粒子の配向方向に高い熱伝導性が得られる。従って、高い効率で発熱体の熱を伝導して放熱することができる。
ここに、熱伝導性粒子として複合粒子を用いることによって熱伝導性の向上が図られる理由は定かではないが、基体粒子の表面に小径の微粒子が被覆されることによって熱伝導性粒子自体の表面が凹凸を有するものとなってその表面積が大きくなるために伝熱経路を構成するシート基体の厚み方向に並んだ状態の熱伝導性粒子同士が複雑に絡み合い、それによって互いに隣接する熱伝導性粒子同士の接触面積が大きくなるためであると推察される。
【0016】
本発明の伝熱シートの製造方法によれば、伝熱経路を形成する熱伝導性粒子が磁場配向するものであるので、当該伝熱シートの製造において、厚み方向に磁場を作用させることにより、当該熱伝導性粒子を容易にシート基体の厚み方向に並ぶよう配向させることができ、従って、高い熱伝導性を有する伝熱シートを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の伝熱シートの一例における構成を示す説明用断面図である。
【図2】本発明の伝熱シートを製造するために用いられる金型の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図3】図2に示す金型内に、シート成形材料層が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図4】シート成形材料層に磁場を作用させた状態を示す説明用断面図である。
【図5】シート形成材料層が硬化処理された状態を示す説明用断面図である。
【図6】本発明の伝熱シートの他の構成例を示す説明用断面図である。
【図7】図6に示す構成の伝熱シートを製造するために用いられる金型の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図8】本発明の伝熱シートの断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の伝熱シートの実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の伝熱シートの一例における構成を示す説明用断面図である。
この伝熱シート10は、両面が平坦なシート基体11中に、熱伝導性粒子が、当該シート基体11の厚み方向に並ぶよう磁場配向された状態で含有されて構成されており、この熱伝導性粒子の連鎖によって伝熱経路が形成される。
図示の例の伝熱シート10においては、熱伝導性粒子がシート基体11の全体にわたって、シート基体11の厚み方向に並ぶよう配向された状態で含有されている。
【0019】
シート基体11は、高分子材料により形成されており、このような高分子材料としては、例えば硬化ゴム、硬化ゲル材料、熱可塑性エラストマー組成物、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0020】
硬化ゴムを得るために用いることのできる硬化性のゴム材料としては、種々のものを用いることができ、その具体例としては、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどの共役ジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物、スチレン−ブタジエン−ジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体ゴムおよびこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。
以上において、得られる伝熱シートに耐熱性が要求される場合には、共役ジエン系ゴム以外のものを用いることが好ましく、特に、成形加工性および電気特性の観点から、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0021】
シリコーンゴムとしては、液状シリコーンゴムを架橋または縮合したものが好ましい。液状シリコーンゴムは、その粘度が歪速度10-1secで105 ポアズ以下のものが好ましく、縮合型のもの、付加型のもの、ビニル基やヒドロキシル基を含有するものなどのいずれであってもよい。
具体的には、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム、メチルフェニルビニルシリコーン生ゴムなどを挙げることができる。
【0022】
本発明においては、硬化性のゴム材料を硬化させるために適宜の硬化触媒を用いることができる。このような硬化触媒としては、有機過酸化物、脂肪酸アゾ化合物、ヒドロシリル化触媒などを用いることができる。
硬化触媒の使用量は、硬化性ゴム材料の種類、硬化触媒の種類、その他の硬化処理条件を考慮して適宜選択されるが、通常、硬化性ゴム材料100質量部に対して3〜15質量部である。
【0023】
また、硬化性ゴム材料中には、硬化性ゴム材料のチクソトロピー性の向上、粘度調整、熱伝導性粒子の分散安定性の向上、或いは高い強度を有するシート基体を得ることなどを目的として、必要に応じて、通常のシリカ粉、コロイダルシリカ、エアロゲルシリカ、アルミナなどの無機充填材を含有させることができる。
このような無機充填材の使用量は、特に限定されるものではないが、多量に使用すると、磁場による熱伝導性粒子の配向を十分に達成することができなくなるため、好ましくない。
【0024】
また、シート基体11を構成する高分子材料として用いられる硬化ゲル材料の具体例としては、付加型シリコーンゴム、フロロシリコーンゴムなどが挙げられ、例えば信越化学工業株式会社から市販されている「X−32−1342」、「X−31−7006」、「KE1051」、「KE110Gel」、「KE104Gel」、「FE53」、「KE−2000−60A」、「KE−2000−60B」、「KE−1204」などを用いることができる。
【0025】
そして、シート基体11を構成する高分子材料として用いられる熱可塑性エラストマー組成物の具体例としては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素ポリマー系熱可塑性エラストマー、あるいは通常のエラストマーに可塑剤を添加したものなどが挙げられる。
【0026】
また、シート基体11を構成する高分子材料として用いられる熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなどが挙げられる。
【0027】
また、シート基体11を構成する高分子材料として用いられる熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0028】
伝熱シート10を構成するシート基体11中に含有される熱伝導性粒子は、基体粒子の表面の少なくとも一部が、当該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子で被覆されてなる複合粒子よりなるものである。
ここに、熱伝導性粒子を構成する複合粒子において、微粒子は、基体粒子よりも小径のものであるが、具体的には、微粒子の粒子径は、基体粒子の粒子径の1/2以下であることが好ましく、更に好ましくは1/5以下、また更に好ましくは1/10以下、特に好ましくは1/20以下であり、また基体粒子の1/100以上であることが好ましい。
微粒子の粒子径が過大である場合には、伝熱シート10の熱伝導性が低下するおそれがある。
その理由は、微粒子の粒子径が過大である場合には、基体粒子および他の微粒子との接触面積が小さくなることから、粒子間における熱伝導がスムーズに行われず、伝熱シートの熱伝導性が低下してしまうためと推察される。
ここに、「粒子径」とは、電子顕微鏡(SEM)を用い、顕微鏡法によって測定される値である。
【0029】
具体的には、複合粒子において、基体粒子の平均粒子径は、10〜500μmであることが好ましく、更に好ましくは10〜300μm、特に好ましくは10〜100μmである。
一方、微粒子の平均粒子径は、0.1〜10μmであることが好ましい。
【0030】
また、複合粒子においては、基体粒子に対する微粒子の質量比が、通常、基体粒子100質量部に対して0.1〜70質量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜30質量部である。
【0031】
また、熱伝導性粒子としては、後述する方法により当該熱伝導性粒子をシート基体11中において容易に配向させることができることから、磁場中において配向する特性を示す複合粒子が用いられる。
このような熱伝導性粒子を構成する複合粒子としては、磁性を示すものが好ましく、好ましい具体例としては、基体粒子が強磁性体粒子よりなり、微粒子が絶縁性を有する高熱伝導性材料よりなるものが挙げられる。
ここに、基体粒子を構成する強磁性体粒子としては、例えばニッケル、鉄、コバルトなどの強磁性金属よりなる粒子、化学式:MO・Fe2 3 〔Mは、Mn、Fe、Ni、Cu、Mg、Znなどより選択される金属〕で表されるフェライトなどの金属酸化物などの強磁性体材料よりなるものが挙げられる。
また、微粒子を構成する絶縁性を有する高熱伝導性材料は、セラミック材料およびダイアモンドから選ばれた少なくとも1種の材料であることが好ましい。
ここに、セラミック材料としては、例えば窒化アルミニウム、窒化硼素(ボロンナイトライド)、窒化珪素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などが挙げられる。
【0032】
熱伝導性粒子を構成する複合粒子においては、微粒子の構成材料として、前述の材料の他、例えば水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を用いることができる。
【0033】
熱伝導性粒子を構成する複合粒子は、基体粒子の表面の少なくとも一部が微粒子により被覆されてなる構成のものであるが、微粒子は、基体粒子の表面に吸着されることにより固定される。
ここに、基体粒子表面における微粒子の吸着は、物理的吸着および化学的吸着のいずれであってもよい。
【0034】
熱伝導性粒子を構成する複合粒子を製造する方法としては、機械的な力によって粒子の複合化を行うメカノケミカル法を用いることができ、具体的には、予め基体粒子および微粒子とされる粒子を用意し、これらの粒子を、製造すべき複合粒子に応じた所定の混合比(質量比)で混合し、その後、ハイブリダイザー装置を用い、必要に応じて予備混合処理(OM処理(精密混合処理))を行った後、複合化処理(カプセル化処理)を施す手法が好適に用いられる。このような手法によって得られる複合粒子は物理的吸着によって基体粒子表面に微粒子が付着されてなるものである。
ここに、複合化処理(カプセル化処理)は、基体粒子および微粒子の材質、粒子径およびそれらの混合比(質量比)などに応じた適宜の条件によって行われ、例えば回転数13000rpm、処理時間5分間である。
【0035】
また、熱伝導性粒子を構成する複合粒子においては、基体粒子表面における微粒子の被覆率(基体粒子の表面積に対する微粒子の被覆面積の割合)が10%以上であることが好ましい。
被覆率が10%以上であることにより、伝熱シートに優れた熱伝導性を得ることができる。
ここに、被覆率は、電子顕微鏡(SEM)を用いることによって測定することができる。
【0036】
以上において、伝熱シート10は、シート基体11を構成する高分子材料が柔軟性を有するものであることが好ましく、具体的に、伝熱シート10のJIS Aゴム硬度は、50以下であることが好ましく、特に好ましくは30以下である。伝熱シート10のJIS Aゴム硬度が50を超える場合には、特に発熱体と受熱体との間に狭圧された状態で用いる際に、当該伝熱シート10を小さい押圧力で発熱体および受熱体の表面形状に追従させて変形させることが困難となり、伝熱シート10を発熱体および受熱体の各々に密着させることができないことがある。ここで、伝熱シート10のJIS Aゴム硬度は、JIS K 6253に基づいて、タイプAデュロメーターによって測定することができる。 ここに、柔軟性を有する高分子材料としては、硬化ゴム、硬化ゲル材料、熱可塑性エラストマー組成物が挙げられる。
【0037】
そして、伝熱シート10を構成するシート基体11の厚みは20〜3000μmであることが好ましく、さらに好ましくは50〜2000μm、特に好ましくは100〜1000μmである。シート基体11の厚みが20μm未満の場合には、特に発熱体と受熱体との間に狭圧された状態で用いる際に、当該伝熱シート10に発熱体および受熱体の両方を密着させることが困難となることがある。一方、シート基体11の厚みが3000μmを超える場合には、伝熱シートの厚み方向に形成される伝熱経路における熱抵抗が大きくなるため、伝熱シート自体に高い熱伝導性が得られないことがある。
【0038】
また、伝熱シート10を構成するシート基体11は、その両面が平坦なものであることが好ましく、具体的には、シート基体11表面の各々の表面粗さは、50μm以下であることが好ましく、特に好ましくは5μm以下である。シート基体11の表面粗さが50μmを超える場合には、特に発熱体と受熱体との間に狭圧された状態で用いる際に、発熱体と受熱体とによって狭圧されたときに、発熱体と伝熱シート10との間、または伝熱シート10と受熱体との間に空隙が形成されやすく、伝熱シート10を発熱体および受熱体の各々に密着させることが困難となることがある。
【0039】
この伝熱シート10においては、シート基体11中に熱伝導性粒子が体積分率で5〜50%、さらには7〜40%、特には10〜30%となる割合で含有されていることが好ましい。この割合が5%未満の場合には、シートの厚み方向に形成される伝熱経路における熱抵抗が大きくなるため、伝熱シート自体に高い熱伝導性が得られないことがある。一方、この割合が50%を超える場合には、特に発熱体と受熱体との間に狭圧された状態で用いる際に、必要な柔軟性が得られないため、当該伝熱シート10を発熱体および受熱体の表面形状に追従させて変形させることが困難となることがある。
【0040】
このような伝熱シート10は、例えば以下の方法(イ)〜方法(ハ)のいずれかの方法によって製造することができる。
【0041】
<方法(イ)>
この方法(イ)は、硬化されて高分子材料となる高分子形成材料中に熱伝導性粒子が含有されてなるシート形成材料層を形成し、このシート成形材層に対して、その厚み方向に磁場を形成させると共に、当該シート成形材料層の硬化処理を行う工程を有することを特徴とするものである。
【0042】
この方法(イ)においては、図2に示すような金型が用いられる。この金型20は、上型21およびこれと対となる下型22が枠状のスペーサー23を介して互いに対向するよう配置されて構成されている。
上型21および下型22は、いずれも成形面が平滑な強磁性体基板により構成されている。この強磁性体基板を構成する材料としては、鉄、コバルト、ニッケル、またはこれらの合金などを用いることができる。
【0043】
そして、この方法(イ)においては、この金型を用い、次のようにして伝熱シート10が製造される。
先ず、硬化処理によって高分子材料となる高分子形成材料中に熱伝導性粒子を分散させて流動性のシート成形材料を調製し、このシート成形材料を上型21を構成する磁性体基板および下型22を構成する磁性体基板のいずれか一方または両方の表面に塗布し、上型21および下型22を重ね合わせることにより、図3に示すように、シート成形材料層11Aを形成する。
【0044】
次いで、図4に示すように、上型21の上面および下型22の下面に電磁石25A、25Bをそれぞれ配置してこれを作動させることにより、形成されたシート成形材料層11Aに対して、その厚み方向に平行磁場を作用させる。その結果、シート成形材料層11Aにおいては、当該シート成形材料層11A中に分散されている熱伝導性粒子が厚み方向に並ぶよう配向する。
そして、この状態において、図5に示すように、シート成形材料層11Aを硬化処理することによりシート基体11が形成され、以て、図1に示す構成の伝熱シート10が製造される。
【0045】
以上において、シート成形材料層11Aの硬化処理は、平行磁場を作用させたままの状態で行っても、平行磁場の作用を停止させた後に行ってもよい。
シート成形材料層11Aに作用される平行磁場の強度は、平均で0.02〜1テスラとなる大きさが好ましい。
また、平行磁場を作用させる手段としては、電磁石の代わりに永久磁石を用いることもできる。永久磁石としては、上記の範囲の平行磁場の強度が得られる点で、アルニコ(Fe−Al−Ni−Co系合金)、フェライトなどよりなるものが好ましい。
シート成形材料層11Aの硬化処理は、使用される材料によって適宜選定されるが、通常、加熱処理によって行われる。具体的な加熱温度および加熱時間は、シート成形材料の種類、熱伝導性粒子の移動に要する時間などを考慮して適宜選定される。
【0046】
また、方法(イ)としては、図2に示すような金型を用いて磁場の作用と硬化処理とを行う手法以外の手法を用いることもできる。
例えば、先ず、硬化処理によって高分子材料となる高分子形成材料中に熱伝導性粒子を分散させて流動性のシート成形材料を調製し、このシート成形材料を、予め用意した2枚のシート成形材料層形成用シート(以下、「材料層形成用シート」ともいう。)のいずれか一方または両方の表面に塗布し、これらのシートを重ね合わせることにより、2枚のシートの間にシート成形材料層を形成する。
ここに、材料層形成用シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレートなどの樹脂よりなるものを用いることができる。
【0047】
次いで、2枚の材料層形成用シートの間にシート成形材料層が形成されてなる積層体に対して磁場成型機により、その厚み方向に磁場を作用させながら第1の加熱処理を行い、その後、磁場を作用させると共に加熱処理を行った積層体を磁場成型機から取り出して当該積層体から材料層形成用シートを剥がし取った後、第1の加熱処理温度よりも高い加熱温度によって第2の加熱処理を行う。その結果、シート材料積層体においては、当該シート材料積層体を構成するシート成形材料層中に分散されている熱伝導性粒子がシート材料積層体の厚み方向に並ぶよう配向し、この状態においてシート材料積層が第1の加熱処理および第2の加熱処理によって硬化してシート基体が形成され、以て、図1に示す構成の伝熱シート10が製造される。
【0048】
<方法(ロ)>
この方法(ロ)は、加熱溶融された高分子材料中に、熱伝導性粒子が含有されてなるシート成形材料層を形成し、このシート成形材料層に対して、その厚み方向に磁場を作用させる工程を有することを特徴とするものである。
【0049】
この方法(ロ)は、シート基体11を構成する高分子材料が熱可塑性エラストマー組成物により形成される場合に好ましく利用される方法である。
この方法(ロ)においては、先ず、加熱溶融された熱可塑性エラストマー中に熱伝導性粒子が分散された状態で含有されてなる流動性のシート成形材料層を形成する。
ここで、シート成形材料層を形成する手段としては、例えば押出機などによって熱可塑性エラストマーと熱伝導性粒子とを混練してペレット状またはシート状のシート成形材料を調製し、このシート成形材料を加熱プレスすることによりシート成形材料層を形成する手段を利用することができる。
【0050】
次いで、このシート成形材料層に対して、電磁石または永久磁石によって平行磁場をシート成形材料層の厚み方向に作用させる。その結果、シート成形材料層においては、当該シート成形材料層中に分散されている熱伝導性粒子が、その厚み方向に並ぶよう配向する。そして、この状態において、シート成形材料層を冷却することによりシート基体11が形成され、以て、図1に示す構成の伝熱シート10が製造される。
【0051】
<方法(ハ)>
この方法(ハ)は、溶剤中に高分子材料が溶解され、熱伝導性粒子が含有されてなるシート形成材料層を形成し、このシート成形材料層に対して、その厚み方向に磁場を作用させると共に、当該シート成形材料層から溶剤を除去する工程を有することを特徴とするものである。
【0052】
この方法(ハ)は、シート基体11を構成する高分子材料が熱可塑性エラストマー組成物により形成される場合に好ましく利用される方法である。
この方法(ハ)においては、溶剤中に熱可塑性エラストマー組成物が溶解され、この熱可塑性エラストマー溶液中に熱伝導性粒子が分散されてなる流動性のシート成形材料層を形成する。
ここで、熱可塑性エラストマー組成物を溶解させるための溶剤の具体例としては、ヘキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの炭化水素化合物、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素化合物、エタノール、イソブチルアルコール、プロパンジオールなどのアルコール化合物、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンなどのケトン化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル、などのエステル化合物、アセトニトリル、ホルムアミドなどの窒素化合物などが挙げられる。
【0053】
次いで、電磁石または永久磁石によって、このシート成形材料層に対して、その厚み方向に平行磁場を作用させて、熱伝導性粒子をシート成形材料層の厚み方向に配向させる。そして、例えば真空ポンプ等によりシート成形材料層から溶剤を蒸発させて除去することによりシート基体11が形成され、以て、図1に示す構成の伝熱シート10が製造される。
【0054】
以上のような伝熱シート10は、発熱体と受熱体とによって狭圧された状態、または発熱体に接触した状態で使用される。
而して、この伝熱シート10によれば、熱伝導性粒子がシート基体11の厚み方向に配向された状態で含有されていることにより、当該熱伝導性粒子の連鎖によってその配向方向に伸びる伝熱経路が形成され、しかもこの伝熱経路を形成する熱伝導性粒子が基体粒子の表面に当該基体粒子よりも小径の微粒子が被覆されてなる複合粒子よりなるものであることから、当該熱伝導性粒子の配向方向に高い熱伝導性が得られる。
【0055】
また、伝熱シート10においては、熱伝導性粒子を構成する複合粒子として、微粒子がセラミック材料、ダイアモンドおよび金属水酸化物よりなるものを用いることにより、当該微粒子が絶縁性を有するものとなることから、基体粒子として導電性を有する材料よりなるものを用いた場合においても、微粒子による基体粒子の表面の被覆率を調整することなどにより、伝熱シート10を絶縁性を有するものとすることができる。
【0056】
以上において、シート基体の両面のいずれか一方または両方が凹凸を有するものである場合には、発熱体と受熱体とによって狭圧されたとしても、当該シート基体の凹部において、空隙が形成されやすく、従って、発熱体または受熱体に確実に密着させることが困難となるため、高い効率で熱を伝導させることができなくなる可能性がある。
【0057】
また、伝熱経路を形成する熱伝導性粒子が磁場配向するものであることにより、当該シートの製造において、厚み方向に磁場を作用させることにより、当該熱伝導性粒子を容易にシート基体の厚み方向に並ぶよう配向させることができ、従って、高い熱伝導性を有する伝熱シートを容易に製造することができる。
【0058】
以上のような伝熱シートは、CPU、「RIMM(Rambus Inline Memory Module)」等のメモリーモジュールなどの電子部品、その他、ランプや、LED素子および有機EL(Electro Luminescence)素子を光源とする装置における光源としてのLED素子および有機EL素子などに生じる熱を放熱するための伝熱シートとして極めて有用である。特に、LED素子および有機EL素子において用いる場合においては、発熱体(LED素子あるいは有機EL素子)の熱を放熱板(ヒートシンク)に伝導するための部材として用いることの他、ヒートシンクとしても用いることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、以下のような種々の変更を加えることが可能である。
(1)シート基体中には、熱伝導性粒子の他に、非磁性伝熱性粒子が含有されていてもよい。
ここで、非磁性伝熱性粒子の具体例としては、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2 3 )、窒化硼素(BN)、窒化ケイ素(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、カーボンブラックなどが挙げられる。その他、銅、アルミニウム、金、銀などの金属、カーボン、ケイ素などの無機物質などを用いることもできる。
また、当該シート基体中には、各種充填剤や安定剤、酸化防止剤などの添加剤を適宜配合することができる。
この伝熱シートにおいては、シート基体中に非磁性伝熱性粒子が体積分率で5〜75%、さらには10〜70%、特には30〜50%となる割合で含有されていることが好ましい。
このような伝熱シートによれば、熱伝導性粒子の連鎖によって形成された伝熱経路による熱伝導に加え、非磁性伝熱性粒子によって形成される伝熱経路によっても熱伝導が行われるので、当該シートの厚み方向に対して、より一層高い熱伝導性が得られると共に、当該シートの面方向に対しても熱伝導性が得られる。
【0060】
(2)図6に示すように、熱伝導性粒子がシート基体31中にその厚み方向に配向した状態で密に充填された高密度部分32と、熱伝導性粒子が全くあるいは殆ど存在しない低密度部分33とからなるものであってもよい。
【0061】
このような構成の伝熱シート30においては、高密度部分32における熱伝導性粒子の含有割合が、体積分率で好ましくは5〜60%、より好ましくは7〜50%であることが好ましい。
この割合が5%未満の場合には、熱伝導性粒子によって形成される伝熱路が十分に熱抵抗値の小さいものとならないおそれがある。一方、この割合が60%を超える場合には、特に発熱体と受熱体との間に狭圧された状態で用いる際に、必要な柔軟性が得られずに、当該伝熱シート30を発熱体および受熱体の表面形状に追従させて変形されることが困難となることがある。
【0062】
このような伝熱シート30は、例えば図7に示す金型を用いて製造することができる。
【0063】
この金型は、上型40およびこれと対となる下型45が枠状のスペーサー44を介して互いに対向するよう配置されて構成されている。
上型40は、強磁性体基板41の下面に、目的とする伝熱シート30の高密度部分32に対掌なパターンに従って強磁性体部分42が形成され、この強磁性体部分42以外の個所に非磁性体部分43が形成されている。強磁性体部分42および非磁性体部分43は、実質的に同一の厚みを有し、上型40の下面、すなわち成形面は、平坦面とされている。
一方、下型45は、強磁性体基板46の上面に、目的とする伝熱シート30の高密度部分32に対掌なパターンに従って強磁性体部分47が形成され、この強磁性体部分47以外の個所に非磁性体部分48が形成されている。強磁性体部分42および非磁性体部分43は、実質的に同一の厚みを有し、上型40の下面、すなわち成形面は、平坦面とされている。
上型40および下型45の各々における強磁性体基板41、46および強磁性体部分41、46を構成する材料としては、鉄、ニッケル、コバルトまたはこれらの合金などを用いることができる。
また、上型40および下型45の各々における非磁性体部分42、47を構成する材料としては、銅などの非磁性金属、ポリイミドなどの耐熱性樹脂などを用いることができる。
【0064】
このような金型を用い、上型40の上面および下型45の下面の各々に例えば電磁石を配置しこれを作動させることにより、上型40における強磁性体部分42と下型45における強磁性体部分47との間に位置する部分に大きい強度を有する平行磁場を作用させる。これにより、当該シート成形材料層中に分散されている熱伝導性粒子が、上型40における強磁性体部分42と下型45における強磁性体部分47との間に位置する部分に集合すると共に、厚み方向に並ぶよう配向する。そして、この状態において、シート成形材料層を硬化処理することによりシート基体31が形成され、以て、図6に示す構成の伝熱シート30が製造される。
【0065】
(3)伝熱シートの作業性あるいは伝熱シートの面方向の熱伝導性を良好にする観点から、シートの厚み方向に配向する熱伝導性粒子による伝熱経路の形成の妨げにならない範囲で、シート基体中にナイロンメッシュ、金属メッシュなどからなる補強シートが含有されていてもよい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
〔複合粒子の調製例1〕
先ず、平均粒子径40μmのニッケル粒子と、平均粒子径4μmの窒化硼素粒子とを用意し、これらを質量比(ニッケル粒子:窒化硼素粒子)が100:3.5となるように混合した。
次いで、ニッケル粒子と窒化硼素粒子との混合系に対して、ハイブリダイザー装置を用い、回転数13,000rpmの条件で5分間かけて複合化処理(カプセル化処理)を施すことにより、ニッケル粒子よりなる基体粒子の表面に窒化硼素粒子よりなる微粒子が被覆されてなる構成の複合粒子(以下、「複合粒子(1)」ともいう。)を得た。
【0068】
〔複合粒子の調製例2〜4〕
複合粒子の調製例1において、表1に示す2種類の粒子を当該表1に示す質量比で用いたこと以外は当該複合粒子の調製例1と同様の手法によって複合粒子(以下、各々、「複合粒子 (2)」〜「複合粒子(4)」ともいう。)を得た。
【0069】
【表1】

【0070】
〔実施例1〕
(伝熱シートの製造例1)
ステンレス鋼製のビーカーに、3種類の付加型シリコーンゴム、具体的には「KE−2000−60A」(信越化学工業株式会社製)171g、「KE−2000−60B」(信越化学工業株式会社製)171gおよび「KE−1204」(信越化学工業株式会社製)68gと、複合粒子(1)32gとを仕込み、室温条件下において30分間かけて混練し、ペースト状のシート成形材料を得た。
得られたシート成形材料を、厚み100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂製のシートの間に挟み、これによってPET樹脂製シートの間にシート成形材料層を形成することにより、PET樹脂シート、シート成形材料層およびPET樹脂シートがこの順に積層されてなる積層体を得、この積層体を磁場成型機にセットした。
そして、磁場成型機により、積層体に対して、その厚み方向に0.65テスラの磁場を作用させ、このように磁場を作用させた状態において、室温にて5分間保持した後、シート成形材料層の配置空間の雰囲気を5分間かけて100℃に昇温し、加熱温度100℃、加熱時間30分間の条件で加熱処理を行った。
次いで、磁場成型機によって磁場を作用させつつ加熱処理を行った積層体を当該磁場成型機から取り出し、当該積層体の両面からPET樹脂シートを剥がした後、更にオーブンによって加熱温度150℃、加熱時間2時間の条件で加熱した後、更に加熱温度170℃、加熱時間2時間の条件で加熱する硬化処理を行うことにより、図1の構造を有する、厚み150μmの伝熱シート(以下、「伝熱シート(1)」ともいう。)を製造した。
図8に、得られた伝熱シート(1)の断面の写真を示す。この写真において、黒色部分が熱伝導性粒子によって形成された伝熱経路を示す。
【0071】
〔実施例1〜実施例4並びに比較例1および比較例2〕
実施例1において、複合粒子(1)に代えて表2に示す粒子を用いたこと以外は当該実施例1と同様にして厚み150μmの伝熱シート(以下、各々、「伝熱シート (2)」〜「伝熱シート(4)」、「比較用伝熱シート(1)」および「比較用伝熱シート(2)」ともいう。)を製造した。
ここに、比較用伝熱シート(1)に係る比較用粒子(1)は、平均粒子径40μmのニッケル粒子であり、比較用伝熱シート(2)に係る比較用粒子(2)は、平均粒子径40μmの酸化アルミニウム粒子である。
【0072】
得られた伝熱シートの各々について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0073】
(1)熱伝導率
温度波熱分析法による熱伝導率測定システム「ai−Phase Mobile 1u」(株式会社アイフェイズ製)を用いて測定した。
【0074】
(2)抵抗値
PRγ測定システム「PRγ6号機」(コムベックス株式会社製)を用い、印加電流0.01Aの条件によって測定した。
【0075】
【表2】

【0076】
表2の結果から、実施例1〜実施例4に係る伝熱シートにおいては、優れた熱伝導性が得られることが確認された。
また、実施例1〜実施例4に係る伝熱シートにおいては、熱伝導性粒子を構成する複合粒子の微粒子として絶縁性を有する材料よりなるものが用いられていることから、基体粒子として導電性を有するニッケル粒子が用いられているにもかかわらず、熱伝導性粒子として絶縁性を有する材料よりなる1次粒子を用いた場合(比較例2)と同等の絶縁性が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0077】
10、10A 伝熱シート
11 シート基体
11A シート成形材料層
20 金型
21 上型
22 下型
23 スペーサー
19A、19B 電磁石
30 伝熱シート
31 シート基体
32 高密度部分
33 低密度部分
40 上型
41 強磁性体基板
42 強磁性体部分
43 非磁性体部分
44 スペーサー
45 下型
46 強磁性体基板
47 強磁性体部分
48 非磁性体部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料よりなるシート基体中に、熱伝導性粒子が当該シート基体の厚み方向に配向された状態で含有されてなる伝熱シートであって、
前記熱伝導性粒子が、基体粒子の表面の少なくとも一部が、当該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子により被覆されてなる複合粒子であることを特徴とする伝熱シート。
【請求項2】
熱伝導性粒子において、微粒子の粒子径が基体粒子の粒子径の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の伝熱シート。
【請求項3】
熱伝導性粒子を構成する基体粒子は、強磁性体粒子よりなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の伝熱シート。
【請求項4】
熱伝導性粒子を構成する微粒子は、セラミック材料、ダイアモンドおよび金属水酸化物から選ばれた少なくとも1種の材料よりなるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の伝熱シート。
【請求項5】
シート基体を構成する高分子材料が熱可塑性エラストマー組成物であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の伝熱シート。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の伝熱シートの製造方法であって、
硬化されて高分子材料となる高分子形成材料中に熱伝導性粒子が含有されてなるシート成形材料層を形成し、このシート成形材料層に対して、その厚み方向に磁場を作用させることによって熱伝導性粒子を磁場配向すると共に、当該シート成形材料層の硬化処理を行う工程を有することを特徴とする伝熱シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の伝熱シートの製造方法であって、
加熱溶融された高分子材料中に、熱伝導性粒子が含有されてなるシート成形材料層を形成し、このシート成形材料層に対して、その厚み方向に磁場を作用させることによって熱伝導性粒子を磁場配向する工程を有することを特徴とする伝熱シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−35221(P2011−35221A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181198(P2009−181198)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】