説明

伸縮性複合シート

【課題】綺麗に配列した多数の凸条部を有し、製造も容易な伸縮性複合シート及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の伸縮性複合シートは、伸縮シート10と該伸縮シート10と積層された非伸縮シート2とを有している。伸縮シート10は、弾性伸縮性を有する第1領域14及び該第1領域より伸長性に劣る第2領域15を有し、第1及び第2領域14,15は、それぞれ一方向に延びるように形成されており且つ交互に形成されている。伸縮シート10と非伸縮シート2とは、相対向する面の実質的に全域において接合されており、非伸縮シート2側の面に多数の凸条部3,3・・が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の皺ないし襞を有する伸縮性シートとして、伸縮シートと非伸縮シートとが間欠的に接合されており、該伸縮シートの収縮により、非接合部における非伸縮シートに皺を形成させたものが知られている(特許文献1,2参照)。
また、緩和状態のシート状弾性体と、伸長されていない、あるいはひだを形成していないシート状基材とからなり、前記弾性体は前記基材にシートの長さ方向(MD)には連続的に結合され、横方向(CD)には不連続性を持って結合されてなり、かつ前記基材はCD方向の伸長性を有するが、伸長回復性は持たない弾性複合体が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、このような伸縮性シートにおいては、形成される皺の形状が不規則であったり、皺が安定に維持されなかったりして、外観的に綺麗な凸条部が形成されにくい。また、伸縮シートと非伸縮シートとを間欠的に接合する必要があるため、間欠接合するための機器やシステムにコストが掛かる。
【0003】
【特許文献1】特開平6−90979号公報
【特許文献2】特開平10−99373号公報
【特許文献3】特開平5−222601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る伸縮性複合シート及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、綺麗に配列した多数の凸条部を有し、製造も容易な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の伸縮性複合シートは、伸縮シートと該伸縮シートと積層された非伸縮シートを有する伸縮性複合シートであって、前記伸縮シートは、弾性伸縮性を有する第1領域及び該第1領域より伸長性に劣る第2領域を有し、第1及び第2領域は、一方向に延びて形成され且つ該一方向と直交する方向に交互に形成されており、前記伸縮シートと前記非伸縮シートとが、相対向する面で接合されており、複合シート全体として、少なくとも前記一方向と直交する方向に伸縮性を有しており、自然状態において、前記伸縮シートと前記非伸縮シートとが実質的に全域で接合されている領域の前記非伸縮シート側の面に、前記一方向に沿って延びる凸条部が多数形成されている。
【0006】
また本発明の伸縮性複合シートの製造方法は、伸縮シートと該伸縮シートと積層された非伸縮シートとを有し、自然状態下において、全体又は一部における非伸縮シート側の面に多数の凸条部が形成される伸縮性複合シートの製造方法であり、前記伸縮シートは、弾性伸縮性を有する第1領域及び該第1領域より伸長性に劣る第2領域を有し、第1及び第2領域は、該伸縮シートの一方向に延びて形成され且つ該一方向と直交する方向に交互に形成されており、前記伸縮シートと前記非伸縮性シートとを、該伸縮シートの伸長状態下に、接着剤を介して接合し、その接合においては、前記多数の凸条部を形成させる範囲の、前記両シートの相対向する面を実質的に全域において接合させる。
【0007】
更に本発明は、伸縮シートと該伸縮シートと積層された別のシートを有する伸縮性複合シートであって、前記伸縮シートは、弾性伸縮性を有する第1領域及び該第1領域より伸長性に劣る第2領域を有し、第1及び第2領域は、一方向に延びて形成され且つ該一方向と直交する方向に交互に形成されており、前記別のシートは伸縮シート又は伸長シートであり、前記伸縮シートと前記別のシートとが、相対向する面で接合されており、複合シート全体として、少なくとも前記一方向と直交する方向に伸縮性を有しており、自然状態において、前記伸縮シートと前記別のシートとが実質的に全域で接合されている領域の前記別のシート側の面に、前記一方向に沿って延びる凸条部が多数形成されている、伸縮性複合シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の伸縮性複合シート及びその製造方法によれば、綺麗に配列した多数の凸条部を有し、製造も容易な伸縮性複合シートを提供することができる。
本発明の吸収性物品によれば、綺麗に配列した多数の凸条部を有し、製造も容易な吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本実施形態の伸縮性複合シート1は、図1及び図2に示すように、伸縮シート10と該伸縮シート10に積層された非伸縮シート2を有する。
伸縮シート10は、図3に示すように、弾性伸縮性を有する第1領域14と、第1領域14より伸長性に劣る第2領域15とを有している。第1及び第2領域14,15は、それぞれ、図3中のX方向に延びるように形成されている。
また、第1及び第2領域14,15は、図3中のY方向に交互に形成されている。図中のX方向は、伸縮性複合シート1の表裏面と平行な方向のうち、伸縮シート1の第1及び第2領域14,15が延びている方向であり、Y方向はそれに直交する方向である。
伸縮シート10は、複数本の第1領域14それぞれが弾性伸縮性を有することに起因して、Y方向に伸縮性を有している。伸縮シート10の第2領域15は、殆ど伸縮性を有していない。
【0010】
非伸縮シート2は、実質的に伸縮性を有しない。ここでいう伸縮性は、シート自体の伸縮性である。
非伸縮シート2は、少なくとも第1及び第2領域が延びる方向(X方向)に直交する方向(Y方向)において伸縮性を有しないことが好ましく、X方向及びY方向の何れにも伸縮性を有しないことが好ましい。
本実施形態における非伸縮シート2は、X方向及びY方向の何れにおいても実質的に伸縮性を有していない。非伸縮シート2は、その表裏面と平行な方向の総ての方向において伸縮性を有しないものであっても良い。
【0011】
シートが、ある方向に実質的に伸縮性を有しないとは、該シートに対して当該ある方向に引っ張る力を加えても、該シートが、殆ど伸びないことを意味する。例えば、長さ15×幅5cmのサンプルに対して、該サンプルをテンシロン等の材料引っ張り試験機で長手方向に引張って、該サンプルが破断するときの破断伸度が10%以下である場合、そのサンプルは、長手方向に実質的に伸縮性を有しない。
なお、破断伸度とは(破断時の該サンプル長さ−該サンプルの元の長さ)/(該サンプルの元の長さ)×100で算出することができる。なお、サンプルの長手方向は前述の「ある方向」と同じ方向である。
【0012】
伸縮シート10と非伸縮シート2は、図2に示すように、接着剤(例えばホットメルト型の接着剤)4を介して、両者の相対向面の実質的に全域において接合されている。実質的に全域において接合されている場合としては、伸縮シート10及び/又は非伸縮シート2に、コーターガン等によりベタ塗り塗工した接着剤で両者が接着されている場合の他、スプレーガンやスパイラルガン、ロール形式のコーター等により、第1領域14と非伸縮シート2との間及び第2領域15と非伸縮シート2との間が、同様のパターンで万遍なく接着されている場合も含まれる。
【0013】
伸縮シート10と非伸縮シート2との接着剤4を介しての接合は、両シートが相対向する領域の全てにおいてする必要はなく、凸条部を形成させたい領域のみでもよい。凸条部を形成させない個所においては、部分的に接合したり、非接合としたりすることもできる。凸条部を形成させたい領域では、その全域で接合を行う。
【0014】
本実施形態の伸縮性複合シート1は、図1及び図2に示すように、外力を加えない状態(自然状態)においては収縮しており、少なくとも収縮状態においては、伸縮性複合シート1における、非伸縮シート2側の面に、X方向に沿って延びる凸条部3,3・・が多数形成されている。多数本の凸条部3,3・・は、それぞれ、第1及び第領域14,15が延びる方向(X方向)と略平行に延びて形成されている。また、本実施形態で用いた伸縮シート10は、第1及び第2領域14,15がそれぞれY方向に等間隔に形成されていることに起因して、多数の凸条部3,3・・は、高さ及び幅が概ね同じである。
尚、本実施形態の伸縮性複合シート1は、非伸縮シート2が概ね平らになるまでY方向に伸長させることができ、その状態においては凸条部3は消失している。そして、伸長させていた力から解放すると、伸縮性複合シート1が収縮して、多数の凸条部3が形成された元の状態に戻る。本発明の伸縮性複合シートにおける多数の凸条部3は、少なくとも自然状態において形成されていれば良い。
【0015】
伸縮性複合シート1の凸条部3の頂部間のピッチP(図2参照)や凸条部3の高さT(図2参照)は、伸縮性複合シート1の用途に応じて適宜に決定することができ、特に制限されないが、吸収性物品の一部を構成させる場合(吸液面を形成する表面シートやパンツ型吸収性物品(パンツ型おむつ等)の外装体に用いる場合等)、ピッチPは0.5〜5mm、特に1〜3mmとすることが好ましく、高さTは0.5〜5mm、特に1〜3mmとすることが好ましい。尚、伸縮性複合シート1においては、凸条部3の頂部間のピッチPは、第1領域14又は第2領域15のピッチの約2倍になっている。
【0016】
〔前記ピッチPや前記高さTの測定方法〕
ピッチPおよび高さTは伸縮性複合シート1が、外力を加えない状態(収縮状態、自然状態)で測定される。その状態下における、互いに隣り合う凸条部3,3それぞれの頂部間の距離をピッチPとし、凸条部3,3間に形成される谷部と凸条部3の頂部との距離を高さTとする。測定はレーザー変位計を用いて行うか、シート断面を顕微鏡観察や写真撮影して測定することが出来る。
【0017】
第1及び第2領域14,15が延びる方向(X方向)と略平行に延びる綺麗な凸条部3を形成させる観点から、伸縮シート10は、同方向と直交する方向(Y方向)に伸長させたときに、その伸長方向と直交する方向(X方向)のシート幅が狭くなる現象、即ち幅縮みを生じにくいものであることが好ましい。
例えば、伸縮シート10は、第1及び第2領域14,15が延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に2.0倍に伸長させたときのX方向の幅縮みの割合は、伸長前の幅の70〜100%であることが好ましく、80〜100%であることがより好ましく、90〜100%であることがさらに好ましい。
幅縮みの割合(%)は、伸長後の幅を伸長前の幅で割った値〔(伸長時の幅/伸長前の幅)×100〕として求めることができる。測定はY方向の長さが200mm、X方向の長さが100mmのサンプルを切り出し、伸長させる方向(Y方向)の両端における幅(X方向の長さ)を100mmに保った状態で2.0倍に伸長させて行う。伸長後の幅の測定位置は中央部とする。
【0018】
本実施形態においては、幅縮みが生じにくい伸縮性シートとして、図3に示す伸縮シート10を用いている。
図3に示す伸縮シート10は、互いに交差せずに一方向(図3中Y方向)に延びるように配列した多数の弾性フィラメント13が、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、伸長可能な不織布11,12に接合されている。
【0019】
伸縮シート10においては、各弾性フィラメント13は、伸縮シート10の全長にわたって実質的に連続している。弾性フィラメント13は弾性樹脂を含んでいる。各弾性フィラメント13は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列している。
このようなシートは、弾性繊維が交絡した状態で配置された伸縮シートと比較して、第1及び第2領域14,15が延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に伸長させたときに、幅縮みが生じにくいという特徴がある。
但し、伸縮シート10の製造条件の不可避的な変動に起因して、意図せず弾性フィラメント13が交差することは許容される。各弾性フィラメント13は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、或いは蛇行しながら延びていてもよい。
【0020】
また、弾性フィラメント13は、実質的に非伸長状態で不織布11,12に接合されている。弾性フィラメント13は、糸状の合成ゴム糸や天然ゴムであり得る。或いは乾式紡糸(溶融紡糸)や、湿式紡糸によって得られたものであり得る。弾性フィラメント13は、これを一旦巻き取ることなしに直接溶融紡糸によって得られたものであることが好ましい。また、弾性フィラメント13は、未延伸糸を延伸して得られたものであることが好ましい。
また、弾性フィラメント13は、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものであることが好ましい。弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されることで、弾性フィラメント13を非伸長状態で不織布11,12に接合させることが可能になる。本実施形態における延伸の具体的な操作としては、(a)弾性フィラメント13の原料となる樹脂を溶融紡糸して一旦未延伸糸を得、その未延伸糸の弾性フィラメントを再度加熱して軟化温度(ハードセグメントのガラス転移点温度Tg)以上の状態で延伸する操作や、(b)弾性フィラメント13の原料となる樹脂を溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸する操作が挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13は、溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸することで得られる。
【0021】
延伸により得られた弾性フィラメント13は、その直径が10〜200μm、特に20〜130μmであることが好ましい。弾性フィラメント13は、その断面が円形であり得るが、場合によっては楕円形の断面のこともある。隣り合う弾性フィラメント13のピッチは、該弾性フィラメント13の直径が上述した範囲であることを条件として、0.1〜5mm、特に0.4〜1mmであることが好ましい。
【0022】
弾性フィラメント13は、その全長にわたって各不織布11,12に接合している。ここで、「その全長にわたって接合している」とは、弾性フィラメント13と接触しているすべての繊維(不織布11,12の構成繊維)が、該弾性フィラメント13と接合していることを要せず、弾性フィラメント13に、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性フィラメント13と不織布11,12の構成繊維とが接合されていることを言う。弾性フィラメント13が各不織布11,12にその全長にわたって接合していることで、弾性ストランド13と各不織布11,12との接合力を十分に高めることができる。
【0023】
弾性フィラメント13と、第1及び第2の不織布11,12との接合の様式としては、例えば融着、接着剤による接着などが挙げられる。溶融紡糸により得られた弾性フィラメント13の固化前に、該弾性フィラメント13を不織布に融着させることも好ましい。この場合、各不織布11,12と弾性フィラメント13とを接合させる前に、補助的な接合手段として接着剤を塗布することができる。或いは、各不織布11,12と弾性フィラメント13とを接合させた後に、補助的な接合手段として、熱処理(スチームジェット、ヒートエンボス)や、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。
【0024】
伸縮シート10は、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に伸縮可能になっている。伸縮シート10の伸縮性は、弾性フィラメント13の弾性に起因して発現する。伸縮シート10を、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に引き伸ばすと、弾性フィラメント13並びに第1及び第2の不織布11,12が伸長する。そして伸縮シート10の引き伸ばしを解除すると、弾性フィラメント13が収縮し、その収縮に連れて第1及び第2の不織布11,12が引き伸ばし前の状態に復帰する。
【0025】
伸縮シート10は、例えば、図4に示すように、紡糸ノズル16から紡出された溶融状態の多数の弾性フィラメント13を所定速度で引き取って延伸しつつ、該弾性フィラメント13の固化前に、該弾性フィラメント13が互いに交差せず一方向に配列するように該弾性フィラメント13を不織布11,12に融着させ、次いで該弾性フィラメント13が融着した不織布11,12(伸縮シート10の原反シート)を、該弾性フィラメント13の延びる方向に沿って延伸して該不織布11,12に伸長性を付与して得ることができる。
【0026】
図4には、伸縮性複合シート1の好ましい製造方法の一例として、図3に示す伸縮シート10の製造した後、連続して伸縮性複合シート1を製造する様子が示されている。
【0027】
紡糸ノズル16は、紡糸ヘッド17に設けられている。紡糸ヘッド17は、押出機に接続されている。ギアポンプを介して紡糸ヘッド17へ樹脂を供給することもできる。該押出機によって溶融混練された弾性樹脂は、紡糸ヘッド17に供給される。紡糸ヘッド17には、多数の紡糸ノズル16が直線状に一列に配置されている。紡糸ノズル16は、第1及び第2の不織布11,12の幅方向に沿って配置されている。隣り合う紡糸ノズル16の間隔は、伸縮シート10における弾性フィラメント13の間隔に相当する。紡糸ノズル16は通常円形であり、その直径は弾性フィラメント13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。この観点から、紡糸ノズル16の直径は0.1〜2mm、特に0.2〜0.6mmであることが好ましい。不織布11,12との接合強度を高める目的、弾性フィラメント13の紡糸性を上げる目的、及び伸縮シート10の伸縮特性を向上させる目的で、弾性フィラメント13を複合の形態(サイドバイサイド、芯鞘、海島構造)とすることもできる。具体的にはPP系のエラストマー樹脂とスチレン系のエラストマー樹脂とを組み合わせることが好ましい。
【0028】
紡出された溶融状態の弾性フィラメント13は、それぞれ原反から同速度で繰り出された第1の不織布11及び第2の不織布12と合流し、両不織布11,12間に挟持されて所定速度で引き取られる。弾性フィラメント13の引き取り速度は、両不織布11,12の繰り出し速度と一致している。弾性フィラメント13の引き取り速度は、該弾性フィラメント13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。延伸によって弾性フィラメント13に生じる張力は、該弾性フィラメント13を不織布11,12と貼り合わせるときの風や静電気に起因する該弾性フィラメント13の乱れを防止する。それによって弾性フィラメントどうしを交差させずに一方向へ配列させることができる。これらの観点から、弾性フィラメント13の引き取り速度は、紡糸ノズル孔内の樹脂吐出速度に対し、その延伸倍率が1.1〜400倍、特に4〜100倍、更に10〜80倍となるように調整されることが好ましい。
【0029】
弾性フィラメント13は、その固化前に、即ち融着可能な状態で第1及び第2の不織布11,12と合流する。その結果、弾性フィラメント13は、第1及び第2の不織布11,12に挟持された状態で、これらの不織布11,12に融着する。つまり、固化前の弾性フィラメントを搬送される不織布11,2に融着させることで、弾性フィラメント13は引き取られて延伸される。弾性フィラメント13の融着に際しては第1及び第2の不織布11,12には、外部から熱は付与されていない。つまり、融着可能になっている弾性フィラメント13に起因する溶融熱によってのみ、該弾性フィラメント13と両不織布11,12とが融着する。その結果、両不織布11,12の構成繊維のうち、弾性フィラメント13の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメントと融着し、それよりも離れた位置に存在する繊維は融着しない。その結果、両不織布11,12に加わる熱は最小限にとどまるので、該不織布自身が本来的に有する良好な風合いが維持される。それによって、得られる伸縮シート10の風合いが良好になる。
【0030】
紡出された弾性フィラメント13が、第1及び第2の不織布11,12と合流するまでの間、該弾性フィラメント13は延伸されて延伸方向に分子が配向する。また直径が小さくなる。分子配向によって、50%伸長時強度の行き/戻り比(ヒステリシス)の小さな弾性フィラメント13が得られる。弾性フィラメント13を十分に延伸させる観点及び弾性フィラメント13の糸切れを紡糸する観点から、紡出された弾性フィラメント13に所定温度の風(熱風、冷風)を吹き付けて、該弾性フィラメント13の温度を調整してもよい。
【0031】
弾性フィラメント13の延伸は、弾性樹脂の溶融状態での延伸(溶融延伸)だけでなく、その冷却過程における軟化状態の延伸(軟化延伸)であってもよい。溶融状態とは、外力を加えたとき樹脂が流動する状態である。樹脂の溶融温度は粘弾性測定による(例えば円形並行平板間に挟んだ樹脂に回転方向の振動歪を加えて測定される)Tanδのピーク温度として測定される。弾性樹脂の延伸時に糸切れが起こらないようにするために、延伸区間を長く確保することがよい。この観点から、弾性樹脂の溶融温度は130〜300℃が好ましい。また、弾性樹脂の耐熱性(成形温度)の観点から、溶融温度は130〜220℃が好ましい。軟化温度は、シート状にした弾性樹脂の測定試料の粘弾性特性におけるTg温度として測定される。軟化温度から溶融温度までの範囲を軟化状態という。軟化温度は、伸縮シート10の保存時における弾性樹脂の結晶の成長や、体温による伸縮シート10の伸縮特性の低下の観点から、60℃以上が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
【0032】
弾性フィラメント13と不織布11,12とを接合させるときの弾性フィラメント13の温度は、繊維融着を確実にするために100℃以上であることが好ましい。また弾性フィラメント13の形状を保持して伸縮特性の良好な伸縮シート10を得る観点から、弾性フィラメントの温度は180℃以下であることが好ましい。より好ましくは120〜160℃の範囲である。接合時の温度は、弾性フィラメント13と接合させるラミネート基材として、弾性フィラメントを構成する弾性樹脂の融点と異なる融点を有する変性ポリエチレンや変性ポリプロピレンなどからなるフィルムを用いて、その接合状態を観察することで測定できる。このとき、弾性フィラメントとラミネート基材が融着していれば、接合温度はラミネート基材の融点以上である。
【0033】
弾性フィラメント13と不織布11,12との接合時には、弾性フィラメント13は実質的に非伸長状態(外力を取り除いたときに縮まない状態)である。両者の接合状態においては、不織布11,12を構成する繊維の少なくとも一部が、弾性フィラメントへ融着するか、更には弾性フィラメント13と不織布11,12を構成する繊維の少なくとも一部との両方が融着することがより好ましい。十分な接合強度が得られるからである。得られる伸縮シート10の伸縮特性は、弾性フィラメント13と不織布11,12との接合点の密度に影響を受ける。また、伸縮特性は、接合温度、接合圧力、後述する不織布11,12の延伸による接合点のはずれによって調整することができる。不織布11,12の構成繊維を弾性フィラメント13に融着させることで、接合点一つ一つの接合強度が高くなる。接合点の密度を低くすると、不織布11,12による伸縮阻害が少なくなり、且つ十分な接合強度を有する伸縮シート10が得られるので好ましい。
【0034】
弾性フィラメント13を第1及び第2の不織布11,12と合流させるときには、各弾性フィラメント13が互いに交差せず一方向に配列するようにする。そして、弾性フィラメント13を第1及び第2の不織布11,12と合流させて両不織布11,12間に該弾性フィラメント13を挟持させた状態で、これら三者を一対のニップロール18,18によって挟圧する。挟圧の条件は、得られる伸縮シート10の風合いに影響を及ぼす。挟圧力が大きすぎると弾性フィラメント13が両不織布11,12内に食い込みやすくなり、それに起因して得られる伸縮シート10の風合いが低下しやすい。この観点から、ニップロール18,18による挟圧力は、弾性フィラメント13が両不織布11,12に接触する程度で足り、過度に高い挟圧力は必要とされない。
【0035】
ニップロール18による挟圧の別の条件として、ニップロール18の温度が挙げられる。検討の結果、ニップロール18を加熱した状態で挟圧を行うよりもむしろ、加熱しないか(つまり成り行きにまかせるか)、又は冷却しながら挟圧を行う方が、風合いの良好な伸縮シート10が得られることが判明した。ニップロール18を冷却する場合には、冷却水等の冷媒を用い、ニップロール18の表面設定温度が10〜50℃になるように温度調節することが好ましい。
【0036】
このようにして2枚の不織布11,12間に弾性フィラメント13が挟持された複合体19が得られる。この複合体19における不織布11,12は、本来的に伸長性を有しないものであり、この複合体19が、伸縮シート10の原反シートである。
そして、この複合体19に、弾性伸縮性を有する第1領域14と該第1領域より伸長性に劣る第2領域15とを形成するために、該不織布11,12を含む複合体19を、弾性フィラメント13の延びる方向に沿って延伸させる操作を行う。
図4に示すように、本実施形態の方法においては、この延伸操作を、それぞれ歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール20,21を備えた延伸装置22を用い、複合体19をその搬送方向、即ち弾性フィラメント13の延びる方向に沿って延伸させることで行う。
【0037】
延伸装置22は、一方又は双方の歯溝ロール20,21の枢支部を上下に変位させる公知の昇降機構(図示せず)を有し、歯溝ロール20,21間の間隔が調節可能になっている。本製造方法においては、各歯溝ロール20,21を、一方の歯溝ロール20の歯が他方の歯溝ロール21の歯間に遊挿され、他方の歯溝ロール21の歯が一方の歯溝ロール20の歯間に遊挿されるように組み合わせ、その状態の両歯溝ロール20,21間に、複合体19を挿入してこれを延伸させる。
【0038】
延伸装置22においては、一対の歯溝ロール20,21の両方が駆動源によって駆動するようになっていてもよく(共回りロール)、一方の歯溝ロール20又は21のみが駆動源によって駆動するようになっていてもよい(連れ回りロール)。本製造方法においては、下側の歯溝ロール21のみが駆動源によって駆動し、上側の歯溝ロール20は駆動源に接続されておらず、歯溝ロール21の回転に伴って従動する(連れ回る)ようになっている。連れ回りロールを用いることは、延伸加工後において伸縮シート10に、第1領域14及び第2領域15がくっきりと縞模様状に形成され易い点で好ましい。歯溝ロール20,21の歯形としては、一般的なインボリュート歯形、サイクロイド歯形が用いられ、特にこれらの歯幅を細くしたものが好ましい。
【0039】
図5には、複合体19が延伸される状態が模式的に示されている。複合体19が歯溝ロール20,21間を通過する際には、複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、ほとんど延伸されない。これに対し、駆動ロールである歯溝ロール21の歯24の歯面によって、従動ロールである歯溝ロール20の歯23の歯面に向けて押圧される領域(P2−P1間)においては、両歯20,21によって大きく延伸される。また、歯溝ロール21の歯24の先端部によって、歯溝ロール20の歯23から引き離される領域(P4−P3間)においては、前記領域(P2−P1間)程ではないが、大きく延伸される。
【0040】
尚、複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24の先端部に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、前述のとおりほとんど延伸されないが、歯23,24の先端部によって、その径方向に、つまり複合体19の厚み方向に片押しされるので、厚み方向に薄くなる。但し領域(P3−P2間)と領域(P1−P4間)とは片押しされる方向が反対向きであるため、薄くなる方向が反対向きとなる。
【0041】
前記の延伸プロセスによって、複合体19が大きく延伸される領域(P2−P1間及びP4−P3間)においては、両不織布11,12に、構成繊維自体の伸長、繊維同士の結合の剥離、複数本の繊維で形成された立体構造の構造的な変化、構成繊維の破断等の、不織布11,12が伸長可能とする変化を生じ、他方、ほとんど延伸されない領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、両不織布11,12に、そのような変化が生じない。
そして、大きく延伸される領域(P2−P1間及びP4−P3間)が、弾性伸縮性を有する第1領域14となり、ほとんど延伸されない領域(P3−P2間、P1−P4間)が、第1領域14よりも伸長性に劣る第2領域15となる。
【0042】
前記の延伸プロセスによって、複合体19に、第1及び第2領域14,15が交互に形成され、伸縮シート10が得られる。
なお、延伸装置22は本実施例のようなロール形状に制限されず、例えば、一対のコンベアベルトを具備し、そのそれぞれにシート流れ方向と直交する方向に延びる凸条部を連続的に形成した延伸装置を用いてもよい。
また、相互の対向面に、シート流れ方向と直交する方向に延びる凸条部が多数本形成された一対の凹凸板を備えており、両凹凸板の距離を拡縮可能なようにカム機構を用いて、互いに離間した状態から噛み合わせた状態へと変位させることで、シートに延伸を施す装置を用いてもよい。
【0043】
本実施形態の製造方法においては、図4に示すように、伸縮シート10は、伸長状態で搬送され、その伸長状態下に非伸縮シート2と合流されて、該非伸縮シート2と接合される。ここでいう伸長状態とは、一対の歯溝ロール20,21による複合体19の延伸、即ち、複合体19に第1及び第2領域14,15を交互に形成するための延伸とは異なり、第1及び第2領域14,15が形成された後の伸縮シート10を、その自然状態(収縮状態)に比べて伸長させた状態である。
【0044】
伸縮シート10は、流れ方向に1.1〜4.0倍、より好ましくは1.2〜3.0倍、更に好ましくは1.5〜2.5倍に伸長させた状態下に、非伸縮シート2と接合することが、接合状態での伸縮性複合シートとしての伸びやすさ、縮みやすさの点から好ましい。伸縮シート10の伸長倍率は、伸長状態における長さを、伸長前の自然状態(収縮状態)の長さで除して求められる。
【0045】
接着剤の塗工坪量は、接合強度を確保する観点、及び伸縮性複合シートの伸びやすさや縮みやすさが阻害されないようにする観点から、0.2g/m2 以上であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20g/m2 であり、更に好ましくは0.5〜10g/m2であり、一層好ましくは0.5〜5g/m2である。
本実施形態の製造方法においては、伸縮シート10と合流する直前の非伸縮シート2に、接着剤塗布装置40により、接着剤(好ましくはホットメルト接着剤)が塗布される。非伸縮シート2に接着剤を塗工するのに代えて伸縮シート10に接着剤を塗工しても良く、両シート10.20に接着剤を塗工しても良い。何れの場合も、接着剤の塗工坪量は、自然状態(収縮状態)の伸縮性複合シート1の1m2当たりの、伸縮シート10に塗工された接着剤と非伸縮シート2に塗工された接着剤の合計量である。
【0046】
本実施形態の方法において、接着剤は、非伸縮シート2の流れ方向に連続的に塗布され、非伸縮シート2の、伸縮シート10に重ねられる部分の全域に塗布される。従って、非伸縮シート2における、第1領域14に接合される部分と第2領域15に接合される部分とに、接着剤の塗布量や塗布パターンの差は生じていない。
【0047】
伸縮シート10と非伸縮シート2は、合流時又は合流直後に、一対のニップロール41,42によって挟圧する。このようにして、伸縮シート10と非伸縮シート2とが積層されて一体化された伸縮性複合シート1が得られる。
この伸縮性複合シート1は、非伸縮シート2と接合したときの伸縮シート10の伸長状態を仮に維持したままであれば、図6に示すように、非伸縮シート2側の面に、上述した凸条部3,3・・は生じていないが、その伸長状態を緩和ないし解除することによって、図2に示すような凸条部3,3・・を生じる。尚、図6においては、一方の歯溝ロールの歯の先端部に当接して形成された第2領域15と、他方の歯溝ロールの歯の先端部に当接して形成された第2領域15とを区別するために、第2領域15における弾性フィラメント13を上下逆向きに便宜上湾曲させてある。
【0048】
図4に示す伸縮性複合シート1の製造方法においては、伸縮シート10と非伸縮シート2とを接合した直後に、伸縮性複合シート1の伸長状態を緩和し、その状態でロール状に巻き取っている。伸縮性複合シート1は、非又は低伸長状態の状態とすることで、伸縮シート10の伸縮性、延いては、伸縮性複合シート1の伸縮性や凸条部3の形成性が安定に維持される。
非伸縮シート2と貼り合わせる前の伸縮シート10を単独で収縮させた場合、伸縮シート10は、図7に示すように変形する。伸縮シート10は表面、裏面ともに第1及び第2領域14,15のピッチに対応して規則的で、小さな凸部がY方向に沿って連続的に形成される。一方の面の第2領域15に凸部が形成されているとき、反対側の面の同一第2領域15では凹部が形成されている。逆に、一方の面の第2領域15に凹部が形成されているとき、反対側の面の同一第2領域15では凸部が形成されている。このように、表裏面で凸部の位置が交互に形成されている。
また、図6に示す状態から伸縮シート10が収縮したとき、非伸縮シート2自体は収縮しないため、収縮しきれない分を変形により吸収する。これらの作用により、伸縮性複合シート1には、第1及び第2領域14,15のピッチに応じて規則的な凸条部3,3・が形成される。
【0049】
また、伸縮性複合シート1においては、伸縮シート10と非伸縮シート2との間が全面的に接合されているため、図2に示すように、形成される凸条部3の内部に不織布12に由来する繊維が存在する。そのため、伸縮性複合シート1はクッション性や弾力性に優れており、例えば、伸縮性複合シート1を、生理用ナプキンやおむつ等の吸収性物品の肌に触れる表面シート等として用いた場合、肌触りがよい等の利点がある。
また、伸縮シート10と非伸縮シート2との間が接着剤により接合されている。そのため、伸縮性複合シート1は、ヒートシールやエンボス等で接着する場合に比べて柔らかく、感触に優れる等の利点がある。
【0050】
更に、非伸縮シート2が伸びきったとき(図6参照)には、伸縮性複合シート1に、いわゆる伸び止まりが生じる。そのため、例えば、伸縮性複合シート1を、生理用ナプキンやおむつ等の吸収性物品に用いた場合、吸収性物品を連続的に製造するときに材料流れ方向(伸縮性複合シート1のY方向にあたる)への伸びを抑制することができるため、材料
の搬送性に非常に優れ、高速生産性および精度の高い加工ができる等の利点がある。
また、使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成材料として用いたときに、フィット性に優れたり、襞により空気が通りやすく通気性が良くなる等の利点がある。
【0051】
伸縮シート10を構成する第1及び第2の不織布11,12並びに弾性フィラメント13の構成材料について説明する。各不織布11,12を構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。各不織布11,12を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。各不織布11,12は、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、伸縮シート10を厚みのある嵩高なものとする観点からは、各不織布11,12は、短繊維の不織布であることが好ましい。伸縮シート10を、肌に接触する部材として用いる場合には、肌の接触する側に風合いの良い短繊維不織布を用い、その反対面に強度の高い連続フィラメントの不織布を用いてもよい。
【0052】
各不織布11,12は、その構成繊維が低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなることが好ましい。その場合には、少なくとも低融点成分の熱融着により、その構成繊維同士が繊維交点で接合される。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる芯鞘型の複合繊維としては、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性フィラメント13との融着が強くなり、両者間での剥離が起こりにくくなるので好ましい。
【0053】
弾性フィラメント10は、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどを原料とするものである。特に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られたフィラメントは熱融着させやすいので、本実施形態の伸縮シートに好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα−オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特にスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はそれらを組み合わせて用いることが、弾性フィラメント13の成形性、伸縮特性、コストの面で好ましい。
【0054】
弾性フィラメント13と不織布11,12を構成する繊維との好適な組み合わせは、弾性フィラメント13にSEBS樹脂又はSEPS樹脂を用い、不織布11,12の構成繊維にPP/PE芯鞘型複合繊維又はPET/PE芯鞘型複合繊維を用いる組み合わせである。この組み合わせを採用することで、融着をしっかりと行うことができる。また芯の融点が高いので、繊維が融着時に溶けきらず(芯が残る)、最大強度の高い伸縮シート10が得られる。
【0055】
非伸縮シート2を構成材料について説明する。
非伸縮シート2としては、各種製法による不織布が好ましく用いられ、例えば、スパンボンド不織布、エアースルー不織布、ニードルパンチ不織布等である。これらの中でも好ましいのは、スパンボンド不織布である。スパンボンド不織布は、繊維配向方向を、弾性フィラメントが延びる方向と同方向とすることが好ましい。
非伸縮シート2として用いる不織布の構成繊維としては、第1及び第2の不織布11,12としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。非伸縮シート2として用いる不織布を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。不織布は、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、連続フィラメントの不織布であることが好ましい。
【0056】
本実施形態の伸縮性複合シート1は、多数の凸条部3,3・・が規則正しく形成される、図2に示すように形成される凸条部3の内部に不織布12に由来する繊維が存在する、風合いが良く柔らかい、伸縮物性が良い等の優れた特性を有している。これらの一又は二以上を活かして、本実施形態の伸縮性複合シート1は、種々の用途に活用することができる。
例えば、伸縮性複合シート1は、吸収性物品の一部を構成するシートとして用いることができる。これらの用途以外に、外科用衣類や清掃シート等の各種の用途に用いることもできる。特に使い捨ておむつ、失禁パッド、生理用ナプキン、パンティラインナーなどの吸収性物品の構成材料として好ましく用いられる。該構成材料としては、例えば、吸収体よりも肌側に位置する液透過性のシート(サブレイヤー等を含む)である表面シートや、使い捨ておむつの外面を構成するシート、胴回り部やウエスト部、脚周り部等に弾性伸縮性を付与するためのシート等が挙げられる。また、ナプキンの伸縮性ウイングを形成するシート等として用いることができる。また、それ以外の部位であっても、伸縮性を付与したい部位等に用いることができる。
なお、伸縮性複合シート1を吸収性物品の一部として構成する場合は、伸縮性複合シートの製造方法の一部または全部を、吸収性物品の製造工程中の一部として取り込んでもよい。
【0057】
使い捨ておむつの外面を構成するシートとしては、例えば、吸収性本体と、該吸収性本体の非肌当接面側に位置して該吸収性本体を固定している外装体とからなるパンツ型の吸収性物品(パンツ型使い捨ておむつやパンツ型生理用ナプキン)の外装体を構成するシートとして好ましく用いられる。この場合、外装体の全体を、複合伸縮性シートで構成しても良いし、外装体を、着用者の腹側に配される腹側部と、背側に配される背側部と、股下に配される股下部に区分したときの、腹側部のみ、背側部のみ、又は腹側部と背側部のみを複合伸縮性シートで構成しても良い。吸収性本体は、一般に、液透過性の表面シート、液保持性の吸収体及び液難透過性の裏面シートから構成される。また、外装体のウエスト開口周縁部やレッグ開口周縁部等の締め付け力を補強するために、それらの開口周縁部に、別に糸ゴム、平ゴム等の弾性部材を別に固定することもできる。尚、外装体の一部又は全部が、本発明に係る伸縮性複合シートからなるパンツ型吸収性物品は、その外装体の一部又は全体を構成するシートとして、複合伸縮性シートを使用する以外は、常法に従って製造することができる。また、複合伸縮性シートの製造工程を、吸収性物品の製造工程に組み込むこともできる。
【0058】
また、外装体の一部又は全部が、本発明に係る伸縮性複合シートからなるパンツ型吸収性物品は、伸縮性複合シートの非伸縮シート側の面が、外装体の内面側に向けられていても良いが、非伸縮シート側の面が外面側に向けられていても良い。
伸縮性複合シートの非伸縮シート側の面が、外装体の内面側に位置する場合、肌に凸条部3が当たり、凸条部3間の谷部と肌との間に空間が形成されるので、空気が通り易く、通気性が良い。また、肌にあたる部分がクッション性に優れることから、触感も良い。
他方、伸縮性複合シートの非伸縮シート側の面が、外装体の外面側に位置する場合、規則的に形成された凸条部3がおむつ外面に存在することによって、おむつの外観が向上する等の利点がある。
【0059】
図8及び図9は、本発明の伸縮性複合シートを用いた外装体を具備するパンツ型使い捨ておむつの一例を示す図である。
図8及び図9に示すパンツ型使い捨ておむつ50(以下、おむつ50ともいう)は、吸収性コア51を含む吸収性本体52と該吸収性本体52の非肌当接面側に位置して該吸収性本体52を固定している外装体53とを備えている。図8及び図9に示すように、外装体53は、腹側部A、股下部C及び背側部Bを有しており、外装体53の腹側部Aの両側縁部A1,A2と背側部Bの両側縁部B1,B2とが互いに接合されて、一対のサイドシール部54,54、ウエスト開口部55及び一対のレッグ開口部56,56が形成されている。
【0060】
吸収性本体52は、液透過性の表面シート57、液不透過性又は撥水性の防漏シート(図示せず)及びこれら両シート間に配された液保持性の吸収性コア51を有している。表面シート、防漏シート及び吸収性コアとしては、それぞれ、従来からこの種のおむつに用いられているものと同様のものを用いることができる。吸収性本体52の長手方向両側部には、自由端に弾性部材58を有する防漏カフス形成シート59が配されて、側部防漏カフス60が形成されている。
【0061】
外装体53は、その全体が、本発明に係る伸縮性複合シート、より具体的には上述した伸縮性複合シート1から構成されている。伸縮性複合シート1は、第1及び第2領域14,15それぞれが延びている方向(図1〜図3中のX方向)が、おむつ縦方向(外装体53の縦方向,図9中の上下方向と同じ)と一致している。外装体53は、腹側部A、股下部C及び背側部Bに亘って連続する一枚の伸縮性複合シート1から構成されている。ウエスト開口部55及び一対のレッグ開口部56,56それぞれの開口周縁部においては、伸縮性複合シート1がおむつ内面側に折り返され、その折り返した部分の内側に、ウエスト部弾性部材61及びレッグ部弾性部材62が固定されている。弾性部材58,61,62の素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、弾性部材58,61,62の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状(糸ゴム等)若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
【0062】
本おむつ50の外装体53を構成する伸縮性複合シート1は、前述した非伸縮シート2側の面が、着用者の肌側に向けられており、着用状態のおむつ50の内面側に、上述した凸条部3が多数形成される。そのため、凸条部3間の谷部と着用者の肌との間に空間が形成され、通気性が良好であり、また、凸条部3が肌にあたることによって、感触が良好で、しめった感触も与えにくい。
本発明の他の実施形態のパンツ型使い捨ておむつにおいては、外装体53を構成する伸縮性複合シート1が、前述した伸縮シート10側の面が、着用者の肌側に向けられており、着用状態のおむつ50の外面側に、上述した凸条部3が多数形成される。そのため、おむつの外観に優れたものとなる。
【0063】
外装体53に、非伸縮シート2と伸縮シート10とが接着剤を介して積層一体化された構成の伸縮性複合シート1を用いる場合、外装体53に良好な通気性を与える観点から、非伸縮シート2と伸縮シート10との間に存する接着剤の坪量は、20g/m2 以下であることが好ましく、10g/m2 以下がより好ましく、5g/m2 以下が更に好ましい。ここでいう接着剤の坪量は、非伸縮シート2と伸縮シート10との間に存在する接着剤の、自然状態(収縮状態)の伸縮性複合シート1の1m2当たりの量(g)である。
なお、外装体53は、ある部分と他の部分とで塗工坪量を異ならせても良い。例えば、外装体53のうち、腹側部A、背側部Bの塗工坪量は通気性向上の観点から低くし、股間部Cの塗工坪量はレッグ部弾性部材62の接着を確実に行う観点から、腹側部A、背側部Bの塗工坪量と比較して大きくしてもよい。
【0064】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態で用いた伸縮シート10においては、2枚の不織布11,12間に多数の弾性フィラメント13が挟持された構造になっていたが、これに代えて、1枚の不織布の表面に多数の弾性フィラメントを接合して伸縮シートとなしたものであっても良い。また、伸縮シートとしては、2枚の不織布11,12間に、多数の弾性フィラメント13に代えて、弾性フィルムや弾性不織布、弾性を有するネット状物等が挟持された構造になっていても良い。但しそのような伸縮シートを用いる場合においても、第1及び第2領域が伸びる方向と直交する方向に伸長させたときの幅縮みが少ないものが好ましい。
【0065】
また、図4に示す伸縮性複合シート1の製造方法においては、伸縮シート10の原反シートである複合体19を、歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール20,21を用いてその搬送方向に延伸させていたが、歯と歯底が軸長方向に交互に形成された一対の歯溝ロールを用いて、伸縮シートの原反シートをその搬送方向と直交する方向に延伸させても良い。その場合、得られた伸縮シートは、その幅方向に第1領域と第2領域とが交互に形成されることになる。また、上述した実施形態における伸縮性複合シート1は、凸条部3の頂部間のピッチPは、第1領域14又は第2領域15のピッチの約2倍になっていたが、凸条部3の頂部間のピッチPは、第1領域14又は第2領域15のピッチと略一致していても良い。なお、ピッチPは歯溝ロールのピッチを変更することでも、調整ができる。
【0066】
本発明の伸縮性複合シートは、伸縮シートと非伸縮シートとが重なっている部分以外に、何れか一方のみが延出する部分を有していても良い。また、伸縮シートと非伸縮シートとが重なっている部分の全体に代えて一部のみに凸条部が形成されていても良い。一部のみに凸条部を形成させる場合、その凸条部を形成させる範囲のみにおいて、伸縮シートと非伸縮性シートの相対向する面を実質的に全域において接合させても良い。一部のみに凸条部を形成させる場合の例としては、伸縮性複合シートの周縁部に凸条部を形成しない部分を設ける場合、伸縮性複合シートの周縁部以外の部分に凸条部を形成しない部分を設ける場合、伸縮性複合シートの流れ方向に凸条部を形成する部分と凸条部を形成しない部分を交互に設ける場合等が挙げられる。
【0067】
凸条部を形成させる範囲は、少なくとも、第1及び第2領域が延びる方向及びそれに直交する方向の自然状態の寸法が、それぞれ、1cm以上、特に2cm以上であることが好ましく、その範囲に形成される凸条部の数は、3本以上、特に6本以上が好ましい。
また、伸縮シートの流れ方向に直交する方向に離間した位置で、伸縮シートに非伸縮シートを複数枚固定し、凸条部を形成する部分を流れ方向に平行に設けてもよい。また、非伸縮シートに対して伸縮シートを複数枚固定してもよい。
【0068】
また、本発明の伸縮性複合シートは、伸縮シートと積層された別のシートが、伸長シート(伸長性は有するが、伸縮性は有しないシート)、又は該伸縮シートとは別の第2伸縮シートであっても良い。また、別のシートに用いる第2伸縮シートとして、伸縮シート10と同じものを伸長倍率を変えて使うこともできる。別のシートとして、伸長シートもしくは第2伸縮シートを用いる場合、伸長率は1.1倍未満が好ましく、自然状態(収縮状態)が最も好ましい。また、別のシートとして伸長シートもしくは第2伸縮シートを用いる場合は、伸縮シート10の第1及び第2領域が延びる方向に直交する方向に、別のシートを伸長させたときの破断伸度は10%以上が好ましく、50%以上がさらに好ましく、100%以上が最も好ましい。
【0069】
また、上述した実施形態の製造方法においても、伸長状態下に伸縮シート10に合流して接合するシートとして、非伸縮シート2の代わりに、自然状態(収縮状態)の伸縮シートや伸長シートを伸縮シート10と合流して接合することでも、伸長状態下の伸縮シート10と合流して接合した別のシート側には凸条部が多数形成される。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を、実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例によって何ら制限されるものではない。
【0071】
〔実施例1〕
下記の伸縮シートと非伸縮シートとを、下記の貼り合わせ方法により、接着剤にて貼り合わせて伸縮性複合シートを得た。
【0072】
<伸縮シート>
非弾性繊維から形成された2枚のエアスルー不織布間に弾性フィラメントが狭持された構成の積層シートを、伸縮シートの原反シートとして用いた。この原反シートには、多数本の弾性フィラメントが所定の間隔で互いに平行に配されている。
弾性フィラメント:スチレン系の熱可塑性エラストマー、繊維径120〜130μm
弾性フィラメントの坪量:10g/m2
非弾性繊維:PET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維、繊維太さ3dtex
非弾性繊維からなる前記各エアスルー不織布の坪量:20g/m2
原反シートのシート坪量:50g/m2
原反シートを、フィラメントの配向方向に搬送しながら、歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロールを用いて、その搬送方向に延伸させ、伸縮シートを得た。歯溝ロールののピッチは2mm、歯の高さは3.5mm、歯の厚みは0.5mmである。
得られた伸縮シートには、その搬送方向に、幅1.4〜1.6mmの第1領域と、幅0.4〜0.5mmの第2領域とが交互に形成されていた。また、この伸縮シートは、第1領域と第2領域が延びる方向と直交する方向(搬送方向)に2.0倍に伸長させたときの幅縮みの割合が伸長前の幅の93〜95%であった。
【0073】
<非伸縮シート>
PET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維から形成された、スパンボンド不織布。坪量18g/m2
【0074】
<貼り合わせ方法>
ホットメルト型接着剤(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体のスチレン系ゴム)を用い、非伸縮シートにコーターガンにて150℃で塗工した。ホットメルト型接着剤は、非伸縮シートの実質的にシート全域に坪量1.0g/m2で塗工した。非伸縮シートの相対向面に、元の長さの1.7倍に伸長した状態の伸縮シートを貼り合わせて伸縮性複合シートを形成した。
【0075】
得られた伸縮性複合シートは、非伸縮シート側の面に、搬送方向に直交する方向(伸縮シートの第1領域と第2領域が延びる方向)に沿って延びる凸条部が多数形成されていた。
【0076】
〔実施例2〕
伸縮シート、非伸縮シート及びホットメルト型接着剤は、実施例1と同じものを使用した。ホットメルト型接着剤を、非伸縮シートに対して実施例1と同じ塗工坪量および塗布方法で塗工した。ホットメルト型接着剤の塗工された非伸縮シートの相対向面に、元の長さの2.0倍に伸長した状態の伸縮シートを貼り合わせて伸縮性複合シートを得た。
【0077】
得られた伸縮性複合シートは、非伸縮シート側の面に、搬送方向に直交する方向(伸縮シートの第1領域と第2領域が延びる方向)に沿って延びる凸条部が多数形成されていた。
【0078】
〔比較例1〕
伸縮シート、非伸縮シート及び接着剤は、実施例1と同じものを使用した。接着方法は、非伸縮シートにホットメルト型接着剤をドット状に間欠に塗工し、非伸縮シートの相対向面に、元の長さの1.7倍に伸長した状態の伸縮シートを貼り合わせて伸縮性複合シートを形成した。なお、ホットメルト型接着剤の塗工パターンの大きさはφ2mmの円状で、前記円状パターンを横方向5mm、縦方向8mmの間隔(面積率4.2%)で配置し、塗工坪量はパターンにおいて1g/m2とした。
【0079】
得られた伸縮性複合シートは、非伸縮シート側の面に、ドット間に凸部は形成されたが、一方向に沿って延びる凸条部は形成されなかった。
【0080】
〔評価〕
1.凹凸の出来具合の評価
実施例1、実施例2および比較例1で得られた伸縮性複合シートについて、搬送方向に連続する合計10本の凸条部のピッチ及び高さを計測した。その結果を表1に示す。計測には、マイクロスコープを使用した。ピッチ、高さは、図2のP、Tにそれぞれ対応する。なお、比較例は、凸条部ではないが、搬送方向に連続して確認された凸部について計測した。表1では便宜的に凸条部としている。
【0081】
【表1】

【0082】
表1に示したように、実施例1および実施例2はピッチ、高さともに比較例1とくらべてバラツキがなく、規則正しい凸条部が形成できた。
一方、比較例1の伸縮性複合シートは、凸部は形成されたものの、一方向に沿う凸条部ではなかった。また、ピッチ、高さにバラつきがあり、規則正しくできているとは言い難く、外観も好ましくないものであった。
【0083】
2.通気性の評価
実施例1、実施例2および比較例1で得られた伸縮性複合シートについて、通気性を下記の方法により測定した。
【0084】
通気性は、以下の方法により通気度を測定して評価した。
先ず、各伸縮性複合シートについて、50mm×100mmのサンプル片を用意し、通気度測定器(カトーテック株式会社製KES−F8−AP1)に、各サンプル片を、長手方向に1.5倍した伸長状態で通気穴をふさぐようにセットし、通気抵抗R(単位:KPa・sec/m)を測定した。
そして、次式から通気度Q(単位:cc/cm2・sec)を算出した。
Q=12.5/R。
実施例1、実施例2および比較例1の伸縮性複合シートについて、それぞれ、5本の試験片について同じ測定を行い、それらの平均値を求めた。その結果を、表2に示す。通気度の値が高いほど、シートの通気性はよいと評価できる。
【0085】
【表2】

【0086】
表2に示したように、ホットメルト型接着剤が実質的にシート全域に塗工された実施例1および実施例2の伸縮性複合シートと、ホットメルト型接着剤が間欠に塗工された比較例1の伸縮性複合シートとで、通気性が同等であることが確認できた。
【0087】
3.柔らかさ(コシ)の評価
実施例1、実施例2および比較例1の伸縮性複合シートについて、20〜40歳代の5名に、外観観察および実際に触ってもらい、柔らかさ、肌触りについての官能評価を行った。
評価については、実施例1と比較例1、実施例2と比較例1について、それぞれ優劣をつけてもらい、「2点:実施例のサンプルの方がよい」「1点:同等」「0点:比較例1サンプルの方がよい」で点数化した。
【0088】
表3に、前記5名の評価についての平均点である。平均点が1点より大きい場合は実施例の方が優れているという結果となり、平均点が1点より小さい場合は比較例1の方が優れているという結果になる。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例1および実施例2は、比較例1と比べて、外観、肌触り、柔らかさのすべての評価項目において、優れていることが認められた。
また、総合的に評価した結果、最もよいと感じたシートを答えてもらったところ、4名が実施例1のサンプルを挙げ、1名が比較例のサンプルを挙げた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、本発明の伸縮性複合シートの一実施形態(自然状態)を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す伸縮性複合シートの、弾性フィラメントが延びる方向に沿う自然状態での縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示す伸縮性複合シートの一部を構成する伸縮シートを伸長状態で示す一部破断斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す伸縮性複合シートの製造に好適に用いられる装置を示す模式図である。
【図5】図5は、図4に示す装置によって、伸縮シートの原反シートが延伸される様子を示す模式図である。
【図6】図6は、図1に示す伸縮性複合シートの、弾性フィラメントが延びる方向に沿う伸長状態での縦断面図である。
【図7】図7は、図3に示す伸縮シートの弾性フィラメントが延びる方向に沿う収縮状態での縦断面図である。
【図8】図8は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの概略を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示すおむつの展開且つ伸長状態を示す展開平面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 伸縮性複合シート
2 非伸縮シート
3 凸条部
4 接着剤
10 伸縮シート
11 第1の不織布
12 第2の不織布
13 弾性フィラメント
14 第1領域(弾性伸縮性を有する領域)
15 第2領域(第1領域より伸長性に劣る領域)
20,21 歯溝ロール
50 パンツ型使い捨ておむつ(吸収性物品)
52 吸収性本体
53 外装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮シートと該伸縮シートと積層された非伸縮シートを有する伸縮性複合シートであって、
前記伸縮シートは、弾性伸縮性を有する第1領域及び該第1領域より伸長性に劣る第2領域を有し、第1及び第2領域は、一方向に延びて形成され且つ該一方向と直交する方向に交互に形成されており、
前記伸縮シートと前記非伸縮シートとが、相対向する面で接合されており、
複合シート全体として、少なくとも前記一方向と直交する方向に伸縮性を有しており、
自然状態において、前記伸縮シートと前記非伸縮シートとが実質的に全域で接合されている領域の前記非伸縮シート側の面に、前記一方向に沿って延びる凸条部が多数形成されている、伸縮性複合シート。
【請求項2】
前記伸縮シートは、前記第1及び第2領域が延びる方向と直交する方向に2.0倍に伸長させたときの幅縮みの割合が、伸長前の幅の70〜100%である、請求項1記載の伸縮性複合シート。
【請求項3】
前記伸縮シートは、互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメントが、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、伸長可能な不織布に接合されてなり、前記弾性フィラメントが延びる方向に伸縮性を有している請求項1又は2記載の伸縮性複合シート。
【請求項4】
前記第1及び第2領域が延びる方向と前記弾性フィラメントの延びる方向とが直交している請求項3記載の伸縮性複合シート。
【請求項5】
前記伸縮シートは、該伸縮シートの原反シートを、凸条部と溝とを交互に有し互いに噛み合う一対の凹凸面間で延伸処理して、該原反シートに前記第1及び第2領域を形成したものである、請求項1〜4の何れかに記載の伸縮性複合シート。
【請求項6】
伸縮シートと該伸縮シートと積層された非伸縮シートとを有し、自然状態下において、全体又は一部における非伸縮シート側の面に多数の凸条部が形成される伸縮性複合シートの製造方法であり、
前記伸縮シートは、弾性伸縮性を有する第1領域及び該第1領域より伸長性に劣る第2領域を有し、第1及び第2領域は、該伸縮シートの一方向に延びて形成され且つ該一方向と直交する方向に交互に形成されており、
前記伸縮シートと前記非伸縮性シートとを、該伸縮シートの伸長状態下に、接着剤を介して接合し、その接合においては、前記多数の凸条部を形成させる範囲の、前記両シートの相対向する面を実質的に全域において接合させる、伸縮性複合シートの製造方法。
【請求項7】
前記伸縮シートとして、該伸縮シートの原反シートを、凸条部と溝とを交互に有し互いに噛み合う一対の凹凸面間で延伸処理して、該原反シートに前記第1及び第2領域を形成したものを用いる、請求項6記載の伸縮性複合シートの製造方法。
【請求項8】
前記伸縮シートを、流れ方向又はその直交方向に1.1〜4.0倍に伸長させた状態下に、前記非伸縮シートと接合する請求項6又は7記載の伸縮性複合シートの製造方法。
【請求項9】
前記接着剤の塗工坪量が0.5〜20g/m2 である、請求項5〜8の何れかに記載の伸縮性複合シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5の何れかに記載の伸縮性複合シートから一部が構成されている吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収性物品は、吸収性本体と、該吸収性本体の非肌当接面側に位置して該吸収性本体を固定している外装体とからなる、パンツ型の吸収性物品であり、
前記外装体の一部又は全体が、請求項1記載の複合伸縮性シートから構成されている、請求項10記載の吸収性物品。
【請求項12】
伸縮シートと該伸縮シートと積層された別のシートを有する伸縮性複合シートであって、前記伸縮シートは、弾性伸縮性を有する第1領域及び該第1領域より伸長性に劣る第2領域を有し、第1及び第2領域は、一方向に延びて形成され且つ該一方向と直交する方向に交互に形成されており、前記別のシートは伸縮シート又は伸長シートであり、
前記伸縮シートと前記別のシートとが、相対向する面で接合されており、
複合シート全体として、少なくとも前記一方向と直交する方向に伸縮性を有しており、
自然状態において、前記伸縮シートと前記別のシートとが実質的に全域で接合されている領域の前記別のシート側の面に、前記一方向に沿って延びる凸条部が多数形成されている、伸縮性複合シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−160919(P2009−160919A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291470(P2008−291470)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】