説明

位相ロック・ループにおけるVCOの動的バイアス印加

【課題】無線通信機器における局部発振器を提供する。
【解決手段】局部発振器が位相ロック・ループを含む。位相ロック・ループは電圧制御発振器23と新規のVCO制御回路27を含む。VCO制御回路はプログラム可能で設定可能であることが出来る。1つの例では、前記VCOの電力状態を変更するために、命令が前記VCO制御回路に受信される。命令は、セルラー電話における無線チャネル状態の検出された変化(例えば、信号対雑音判定の変化)に応答して、他の回路によって発せられる。応答して、VCO制御回路は、PLLのループ帯域幅を徐々に拡大し、次に該VCOバイアス電流を徐々に変更して該VCO電力状態を変更し、そして次にPLLのループ帯域幅を縮小して元の帯域幅に戻す、制御信号を出力する。PLL帯域幅を拡大すること、VCO電力状態を変更すること、及びPLL帯域幅を縮小すること、の全過程はPLLがロックされたままで行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示される実施形態は局部発振器に関し、特に無線通信機器における局部発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラー電話のような無線通信機器は一般に局部発振器を用いる。セルラー電話の受信器回路は、例えば、第1局部発振器を利用して特定周波数の第1参照信号を生成する。第1参照信号の周波数は、セルラー電話の受信機を所望の動作周波数に同調させるために、或いは動作周波数帯を変えるために、変更される。同様に、セルラー電話の送信機回路は第2局部発振器を利用して特定周波数の第2参照信号を生成することが出来る。第2参照信号の周波数は、セルラー電話が送信で用いる送信周波数を設定するために変更される。
【0003】
位相ロック・ループ(phase-locked loop)(PLL)と呼ばれる回路が、セルラー電話内部のそのような局部発振器を実現するために、しばしば使用される。PLLの制御ループ内では、電圧制御発振器(voltage controlled oscillator)(VCO)が信号を生成し、その周波数はVCOに印加される電圧信号によって決定される。VCOによって出力される信号の品質は、一般に、VCOを構成する部品の寸法とVCOの消費電力を含むある複数の要因に依存して変化する。例えば、もしVCOがより高い電力で動作されるならば、VCOはVCOの出力信号中により少ない位相雑音をもたらすことが出来る。他方、もしVCOがより低い電力で動作されるならば、VCOはVCOの出力信号中により多い位相雑音を導入する可能性がある。
【0004】
許容可能な位相雑音量は一定ではなく、むしろ、多数の要因に依存して変化する。もしセルラー電話の受信機が、受信されるべき信号に周波数的に近接した干渉源を有する環境で動作するならば、その場合、その受信機はVCO出力信号がより少ない位相雑音を有することを要求する。もし干渉源がないならば、その場合VCO出力信号品質への要求は緩和される。広帯域符号分割多元接続(Wideband Code Division Multiple Access)(WCDMA)通信システムでは、例えば、セルラー電話は送信中であるのと同時に受信中であることが出来る。送信されている信号が受信されている信号と干渉するのを防止するためには、低位相雑音を有する受信機VCO出力信号が要求される。送信機がオンしていないWCDMAシステムの他の動作モードでは、受信機VCO出力信号はより多くの位相雑音を有することが許容される。強い干渉源が存在しない場合には、より低品質のVCO出力信号で十分でありうる。
【0005】
セルラー電話内のVCO回路はかなりの量の電力を消費する可能性がある。セルラー電話のような移動通信機器では、セルラー電話が動作できる時間の長さを延長することが望ましい。米国特許第7,151,915号は無線通信機器に受信される信号の信号対雑音比(SNR)を決定することを開示している。もしSNRがある閾値を超えていることが見出されると、その場合、受信機VCOに印加されるバイアス電圧が低減されて、その結果、VCOはより低い電力消費モードに設定される。しかしながら、もしSNRが時間と共に劣化してきていることが見出されるならば、その場合、受信機VCOに印加されるバイアス電圧が増加されて、VCOはより高い電力消費モードで動作される。従って、VCOの消費電力は、検知される無線チャネル状態にとって、許容最低レベルに又はその近傍に設定される。
【発明の概要】
【0006】
局部発振器は位相ロック・ループを含む。その位相ロック・ループは電圧制御発振器(VCO)と新規なVCO制御回路を含む。その電圧制御回路は、デジタル・ステート・マシン(digital state machine)として、命令を実行するデジタル・プロセッサとして、アナログ回路として、或いはそれらの組合せとして、実現されることが出来る。1つの新規な態様では、VCOの電力状態を変更するために命令がVCO制御回路に受信される。その命令は、無線チャネル状態の検知された変化(例えば、信号対雑音比判定の変化)に応じて、他の回路構成によって発せられることが出来る。
【0007】
該命令を受信することに応じて、VCO制御回路はPLLのループ帯域幅を徐々に拡大する制御信号を出力する。一旦PLLのループ帯域幅が拡大されてしまうと、VCO制御回路はVCOに供給されるVCOバイアス電流を徐々に変更し、それによって、VCOの電力状態を変更する。1つの例では、VCOの電力消費が増やされる。別の例では、VCOの電力消費が減らされる。一旦VCOの電力状態が変更されてしまうと、VCO制御回路はPLLのループ帯域幅を徐々に縮小して元の帯域幅に戻す。PLLループ帯域幅を拡大し、VCO電力状態を変更し、そしてPLLループ帯域幅を縮小する、全過程は、PLLがロックされたまま、行われる。
【0008】
ある複数の例では、VCOの電力状態を変更するための起動力はVCO制御回路上で受信された命令ではない。むしろ起動力は、VCO入力電圧が最小下限未満であるか又は最大上限を超えるか、何れかが生じることである。もし該VCO入力電圧がこれ等の限界の外にあると検知されるならば、その場合VCO制御回路は、VCO入力信号電圧の動作範囲の中央に向けて又は該中央へとVCOの入力電圧を移すために、VCOの電力状態を変更する。VCOの電力状態は、PLLがロック状態に保持されたまま、変更される。PLL帯域幅は徐々に拡大され、VCO電力は、VCO入力電圧を中心に合わせるために、徐々に変更され、そして、PLLのループ帯域幅は徐々に縮小されて元の帯域幅に戻される。
【0009】
1つの例では、VCOは温度に関して特徴づけられて、VCO出力信号の周波数が温度の関数として如何に変化するか、VCO出力信号が印加電圧の関数として如何に変化するか、そしてVCO出力信号がVCOバイアス電流の関数として如何に変化するか、を決定する。動作においては、VCO制御信号は、検知された温度変化と検知された印加電圧変化を補償するために、VCOバイアス電流を調整する。
【0010】
前記は要約であり、従って、必然的に、単純化、一般化、及び詳細の省略を含む。その結果、当業者等は、要約は単に例示的であって限定することを主張しない、ということを認識する。本明細書に記載され、特許請求の範囲によってのみ規定される、装置及び/又はプロセスの他の態様、発明的特徴、及び利点は、本明細書で説明される非限定的な詳細な説明の中で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は1つの新規な態様に従う移動通信装置の高レベルのブロック図である。
【図2】図2は図1の移動通信装置内部の高周波(RF)トランシーバ(transceiver)集積回路4の更に詳細なブロック図である。
【図3】図3は図2のRFトランシーバ集積回路4内部の局部発振器6の更に詳細な図である。
【図4】図4は図3のVCO制御回路27の更に詳細な回路図である。VCO制御回路27の機能決定ブロック35はデジタル・ステート・マシンとして、諸命令を実行するデジタル・プロセッサとして、アナログ回路として、或いは上記の組合せとして、実現されることが出来る。
【図5】図5は図4のVCO23を実現するための1つの適切な回路を示す回路図である。
【図6】図6は、VCO入力信号の電圧が一定であると仮定して、VCO出力信号の周波数が、VCOに供給されるバイアス電流の関数として、如何に変化するかを、単純化された形で示すグラフである。
【図7】図7は図3の局部発振器6を含む新規な方法を例示する単純化された波形図である。
【図8】図8は図7の波形図で説明された新規な方法における諸ステップを例示する流れ図である。
【詳細な説明】
【0012】
図1は1つの新規な態様に従う1つの特別な型の移動通信装置1の非常に単純化された高レベルのブロック図である。本例では、移動通信装置1はWCDMAセルラー電話通信プロトコルを使用する3−Dセルラー電話である。該セルラー電話は(図示されない数個の他の部分の間に)アンテナ2と2つの集積回路3及び4を含む。集積回路3は“デジタル・ベースバンド(baseband)集積回路”又は“ベースバンド・プロセッサ集積回路”と呼ばれる。集積回路4はRFトランシーバ(transceiver)集積回路である。RFトランシーバ集積回路4は、それが送信機(transmitter:トランスミッタ)並びに受信機(receiver:レシーバ)を含むが故に、“トランシーバ”と呼ばれる。
【0013】
図2は図1のRFトランシーバ集積回路4の更に詳細なブロック図である。該受信機は、“受信チェーン”5と呼ばれるもの、並びに、局部発振器(LO)6を含む。セルラー電話が受信しているとき、高周波RF信号7はアンテナ2で受信される。信号7からの情報は受信チェーン5を通過する。信号7は低雑音増幅器8によって増幅され、そして、ミキサ9によって周波数をダウンコンバート(down-convert)される。結果得られるダウンコンバートされた信号はベースバンド・フィルタ10によってフィルタ処理され、そしてデジタル・ベースバンド集積回路3に送られる。デジタル・ベースバンド集積回路3内のアナログ−デジタル変換器は該信号をデジタル形式に変換し、そして、結果得られるデジタル情報はデジタル・ベースバンド集積回路3内のデジタル回路構成によって処理される。デジタル・ベースバンド集積回路3は、局部発振器6によってミキサ9に供給される局部発振器信号(LO)34の周波数を制御することによって、該受信機を同調させる。
【0014】
もしセルラー電話が送信中であるならば、その場合、送信されるべき情報は、デジタル・ベースバンド集積回路3内のデジタル−アナログ変換器によって、アナログ形式に変換され、そして、“送信チェーン”11に供給される。ベースバンド・フィルタ12はデジタル−アナログ変換処理に起因する雑音を除くフィルタ処理を行う。局部発振器14の制御下にあるミキサ・ブロック13は、次に、該信号を高周波信号にアップコンバートする。駆動増幅器15と外部の電力増幅器16はアンテナ2への高周波信号を増幅し、その結果、高周波RF信号17がアンテナ2から送信される。
【0015】
図3は図2の受信機の局部発振器6の更に詳細なブロック図である。送信機の局部発振器14は同様な構成を有する。
【0016】
局部発振器6は水晶発振器モジュール20、位相ロック・ループ(PLL)21、及び周波数分割器22を含む。位相ロック・ループ21は、電圧制御発振器(VCO)23、位相検出器24、チャージ・ポンプ25、ループ・フィルタ26、周波数分割器24、及び新規のVCO制御回路27を含む。PLL21は周波数分割器24によって出力された信号28の位相を水晶発振器モジュール20によって出力された参照信号REF CLK29と比較することによって動作する。位相検出器24から出力された信号30は位相差を示す。チャージ・ポンプ25とループ・フィルタ26は信号30をVCO23の入力線55上の制御電圧VV信号31に変換する。制御電圧信号VVは、VCO23によって出力される、PLL出力信号32の周波数を制御する。PLL出力信号32の周波数は周波数分割器24によって分割されて帰還信号28を生成する。PLL21がロックされているとき、PLL出力信号32の周波数はREF CLK信号29の倍数であって、この倍数は周波数分割器24が分割する分割数によって決定される。デジタル・ベースバンド集積回路3は、周波数分割器24が分割する分割数を制御することによって、PLL出力の周波数を制御する。デジタル・ベースバンド集積回路3は制御情報をRFトランシーバ集積回路4に伝達し、そして、この制御情報は、該分割数を変更するために、制御線33を介して周波数分割器24に伝達される。PLL出力信号32は周波数分割器22によって指定された量だけ周波数低減させられる。周波数分割器22の出力は局部発振器出力信号(LO)34である。
【0017】
図4は図3のVCO制御回路27の1つの特別な例の更に詳細な図である。VCO制御回路27は、機能決定ブロック35、バイアス電流設定回路36、温度測定回路37、及びバラクタ入力電圧測定回路38を含む。
【0018】
バイアス電流設定回路36は電圧基準39とバッファ(buffer)40を含む。バッファ40は、1.25ボルトの安定な参照がノードN1上に存在するように、ノードN1を駆動する。もしスイッチS1が閉じられていると、その場合ノードN2上の電圧VN2は、抵抗器R1を介し、スイッチS1を介し、そして電流源41を介して、ノードN1から接地導線42に流れる電流の量によって決定される。電流源41は、導体43を介して機能決定ブロック35によって設定される、指定された電流I1を供給する。抵抗器R1は、導体44を介して機能決定ブロック35によって設定される、抵抗を有する。機能決定ブロック35は導体45を用いてスイッチSW1を開閉することが出来る。電流源41は、0.375マイクロアンペアから0.625マイクロアンペアまでの大きさを有する電流を0.03125ステップのステップで伝導するように設定されることが出来る。機能決定ブロック35は、従って、導体43〜45上の制御信号によって、電圧VN2の大きさを約1.06ボルトから約0.938ボルトまでの範囲内で、0.0156ボルト刻みで、設定することが出来る。もし機能決定ブロック35が電流I1を変更するならば、電圧VN2の変化はキャパシタC1によって平滑化される。電圧VN2は、抵抗器R2とキャパシタC2を具備するRC低域フィルタによってフィルタ処理される。機能決定ブロック35は導体46を介して抵抗器R2の値を設定することが出来る。結果として得られるノードN3上のフィルタ処理された電圧信号は、電圧電流変換レギュレータ47によって、VCOバイアス電流(IVCO)48に変換される。機能決定ブロック35は、従って、VCO23に供給されるIVCOバイアス電流48の大きさを設定することが出来る。
【0019】
温度測定回路37は、検出された温度を示すデジタル信号(T)を、導体(単数または複数)49を介して、機能決定ブロック35に供給する。バラクタ入力電圧測定回路38はVCO入力制御信号31を受信し、そして、信号31の電圧の大きさを示すデジタル信号(VV)を、導体(単数または複数)50を介して、機能決定ブロック35に供給する。
【0020】
図5はVCO23の1つの例の回路図である。VCO23は、一対の交差結合された電界効果トランジスタ51と52、及びバラクタ53とインダクタ(inductor)54を含む共振回路、を含む。VCOバイアス電流(IVCO)48は、カレント・ミラー(current mirror)56を介して、VCO23の電流消費を設定する。
【0021】
図6はVCO23の理想化された性能を示すグラフである。該グラフは、VCO制御入力信号31の電圧が一定であると仮定して、VCO出力信号VCO OUTの周波数が、VCOバイアス電流48の関数として、如何に変化するかを示す。
【0022】
図3の局部発振器6のPLL21の動作が、図7の単純化された波形図および図8の流れ図で説明される方法100に関連して、ここに説明される。最初に、デジタル・ベースバンドIC3がRFチャネル状態を周期的または連続的にモニタする。本例では、RFチャネル状態は受信される信号7の信号対雑音比(SNR)である。別の例では、RF無線チャネル状態は受信される信号7のRSSI(Relative Signal Strength Indicator:相対信号強度インジケータ)である。ある期間、SNRは閾値以下である。デジタル・ベースバンドIC3はRFチャネルのSNRが閾値以下であると判定し、従って、デジタル・ベースバンドIC3は電力制御命令57を変更しない。VCO制御回路27はVCOバイアス電流48が高い量を有するように制御し続ける。図7に例示された例では、この高い量は最大0.375マイクロアンペアの量である。VCO23は従って高い電力状態で動作するように制御される。この動作の期間は図7における参照番号58によって表わされる。
【0023】
次に、デジタル・ベースバンドIC3はSNRが所定の値を超えたことを検出する。本例では、該検出されたSNRは極めて良好なので、VCOは最小電力状態で動作させることが出来る。この検出は図7の時間59で起きる。デジタル・ベースバンドIC3は、制御線(単数または複数)60を介して、電力状態を変える命令57をVCO制御回路27に伝達する。VCO制御回路27は電力状態を変える命令を受信し(図8のステップ101)、それに応答してPLL制御ループのループ帯域幅を徐々に拡大する(図8のステップ102)。ループ帯域幅が徐々に拡大される時間は図7の番号61によって特定される。1つの例では、VCO制御回路27内部の機能決定ブロック35が、ループ・フィルタ26の抵抗値を変更することによって、PLLのループ帯域幅を拡大する。該ループ・フィルタはキャパシタとデジタル制御される可変抵抗器を含むRCフィルタである。可変抵抗器の抵抗は導体62上の複数ビット・デジタル制御信号BWC1によって減らされる。別の例では、VCO制御回路27内部の機能決定ブロック35は、チャージ・ポンプ25内部のチャージ・ポンプ電流を増やすことによって、PLLのループ帯域幅を拡大する。チャージ・ポンプ25は複数のチャージ・ポンプ電流源を含む。何れのチャージ・ポンプが選択されるかは導体63上の複数ビット・デジタル制御信号BWC2によって決定される。チャージ・ポンプ電流を増加することはPLLのループ帯域幅を拡大するという結果をもたらす。
【0024】
PLLのループ帯域幅を拡大することはPLL出力信号の雑音を増やす。しかし、それは又PLLがループの損壊(disruptions)と摂動(perturbations)からより早く回復することを可能にする。もしPLLのループ帯域幅が拡大されずに、そしてもしVCOバイアス電流が変更される場合、PLL制御ループは、VCOバイアス電流の変化に起因するループ摂動に十分早く回復することが出来ない可能性があって、PLLがロックから外れることがあり得る。PLLのループ帯域幅を拡大することは、VCOバイアス電流が変更される場合、該ループがロックから外れることを防止する。
【0025】
次に、時間64で開始して、VCO制御回路27内部の機能決定ブロック35は、VCOの電力消費を減らすために、VCOバイアス電流48を徐々に減らす(図8のステップ103)。機能決定ブロック35は、電流源41によって供給される電流I1を階段的に上げることによって、これを行う。電流I1を階段的に上げることの結果はノードN2とN3における電圧の階段的降下であり、そして、レギュレータ47により出力されるVCOバイアス電流48の階段的減少である。1つの新規な態様では、機能決定ブロック35は、クロック信号CLKによって計時されるデジタル論理ステート・マシン(state machine)である。機能決定ブロック35は離散的な時間で電流I1を変更し、その結果、電流I1は図7に例示される上昇する階段波形によって表わされる。バイアス電流IVCO48は、電力状態が、その最大値からその最小値まで、10マイクロ秒未満では変更されないほど、十分ゆっくりと変更される。この期間は図7では参照番号65によって特定される。
【0026】
一旦VCOが低電力状態で動作すると、VCO制御回路27内部の機能決定ブロック35はPLL制御ループのループ帯域幅を徐々に縮小する(図8のステップ104)。この緩慢な縮小は上記図8のステップ102の拡大の逆である。該緩慢な縮小は、RCループ・フィルタ26内の抵抗器の抵抗を上げることによって、及び/又は、チャージ・ポンプ25内部のチャージ・ポンプ電流を減らすことによって、実行されることが出来る。図7の参照番号66は、PLLのループ帯域幅が縮小される期間を特定する。図8左側の説明文で示されるように、ここで、PLLのループ帯域幅を拡大すること、VCO電力を徐々に変更すること、そして次にPLLのループ帯域幅を再び縮小すること、から成る全過程はPLL21がロックから外れることなく行われる。
【0027】
図7の例はVCOの電力状態を減少させることに関与するけれども、VCOは最初低電力状態で動作しており、命令57はVCOの電力状態を増加させることであったとすることも可能である。図7では、VCOの電力状態は、その最小値と最大値との間を変化することが示されるが、この例は単に例示目的のために提示されている。実際の動作例では、VCOの電力状態は、最小VCO電力または最大VCO電力とは異なる電力レベルから、或いは該異なる電力レベルに向けて、変化するように制御されることが出来る。VCO制御回路27の1つの実施形態では、キャパシタC1は、ノードN2上の電圧VN2のステップが平滑化されてノードN2上の電圧VN2が点線67によって示されるように現れるように、容量が決められる。
【0028】
1つの例では、VCOの電力状態を変更するための起動力はデジタル・ベースバンドIC3からの命令ではなく、むしろVCO入力線55上の信号31の電圧を中心に合わせるための決定である。その結果は信号31の電圧を動作範囲の中央に合わせるということになり得る、或いは、該電圧を該中心近傍へと移動させることになり得る。バラクタ入力電圧測定回路38は導線55上の電圧を検出してデジタル化し、そして、結果得られたデジタル値VVを導体50を介して機能決定ブロック35に供給する。デジタル値VVは信号31の電圧の大きさを示す。もし機能決定ブロック35がこの中央に合わせる機能を可能にするように構成されるならば、そして、もし検出された時の導線55上の検出電圧が最小限以下に低下するか又は最大限以上に上昇するならば、その場合、機能決定ブロック35は、VCO入力電圧が信号31の動作電圧範囲の中央に近付けるように、VCOの電力状態を変更する。1つの例では、信号31の動作電圧範囲は0.5ボルトから1.0ボルトまでである。VCO入力電圧0.5ボルトはPLL出力(VCO出力信号)周波数約4.05GHzに対応する。VCO入力電圧0.75ボルトはPLL出力(VCO出力信号)周波数約4.00GHzに対応する。VCO入力電圧1.00ボルトはPLL出力(VCO出力信号)周波数約3.95GHzに対応する。最下限と最上限は、それぞれ、約0.6ボルト及び0.9ボルトである。VCO入力電圧を中心に合わせることによって、VCO内部のバラクタは、温度変動が該バラクタの容量を変化させる場合、動作電圧範囲内に滞在するためにより大きな余裕度を有することが出来る。
【0029】
1つの例では、機能決定ブロック35はデジタル・ステート・マシン或いはデジタルプロセッサであって、該マシン又はプロセッサは、検出されたバラクタ電圧、検出された温度、電源電圧VDD、時間、設定情報、及びデジタル・ベースバンド集積回路3から受信されたままの電力状態を変更する命令57、を含む多くの入力変数の関数として電流I1を変える。導体43上の電流源制御信号を制御することに加えて、機能決定ブロック35は該関数に従って、導体44、45、46、62及び63上の諸制御信号を制御する。もし電源電圧が所定の低バッテリー電圧レベル以下に低下していると検出されるならば、その場合機能決定ブロックはVCO電力を下げて、VCO電力が最適VCOの電力状態に維持された場合以上にバッテリー寿命を延長するために、あるPLL性能を犠牲にする。
【0030】
1つの例では、VCOは、VCO出力周波数が温度の関数として如何に変化するか、VCO出力周波数がVDDの関数として如何に変化するか、そして、VCO出力周波数がVCOバイアス電流の関数として如何に変化するか、を決定するために、温度に関して特徴づけられる。次に、機能決定ブロック35は、検出された温度変化と検出された電源電圧VDDの変化を補償するために、VCOバイアス電流48を調整する。設定情報は、VCOバイアス電流IVCOを決定する全体機能の一定の諸態様をイネーブル(enable)あるいはディセーブル(disable)にする、イネーブル・ビット(enable bits)を含むことが出来る。該設定情報は1又は複数の設定レジスタ64に書き込まれる。例えば、1つのビットはスイッチSW1を開閉することが出来る。1つのビットはVCO入力電圧中央合わせ機能を有効または無効にすることが出来る。1つのビットは温度補償機能を有効または無効にすることが出来る。ある複数のビットは、BWC1とBWC2の何れの1つ又は両方がPLLループ帯域幅を拡大および縮小するために使用されるか、を決定することが出来て、他のセットのビットは、該ループ帯域幅が如何に早く変更されるか、を決定することが出来る。ある複数のビットは導体44と46上の諸信号の値を決定することが出来る。他の複数のビットはVCOバイアス電流が如何に早く変更されるかを決定することが出来る。設定レジスタ64で記憶される設定ビットは、モバイル通信装置1が使用されているときに、変更されることが出来る。機能決定ブロック35は電流I1を決定するために複数の異なる機能を実装することが出来る。設定レジスタ64で記憶される諸ビットは、可能な諸機能の内何れの1つが使用されているかを決定することが出来る。
【0031】
ある特定の実施形態が教育的目的のために上記で説明されたけれども、本特許明細書の教示は一般的な適用性を有しており、上記で説明された具体的な諸実施形態に限定されることはない。新規のVCO制御回路はアナログ型位相ロック・ループに関連して開示されたけれども、本特許明細書で開示されるVCO制御回路の諸教示は、デジタル型位相ロック・ループとデジタル制御される発振器(digitally controlled oscillator)(DCO)を用いる使用法に拡張可能である。従って、説明された具体的な諸実施形態の多様な特徴の、多様な修正、改造および組合せが、下記に説明される特許請求の範囲から逸脱することなく、実行されることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)局部発振器内部の位相ロック・ループ(phase-locked loop)(PLL)の電圧制御発振器(voltage controlled oscillator)(VCO)の電力状態を変更するための命令を受信すること、ここにおいて、前記局部発振器はRF通信装置の一部であり、前記PLLはループ帯域幅を有し、そしてバイアス電流が該VCOに印加される;
(b)前記(a)における前記命令を受信することに応答して、前記PLLのループ帯域幅を拡大すること;
(c)前記(b)の前記拡大することの後で、前記VCOに印加されるバイアス電流を変更すること;及び
(d)前記(c)の変更することの後で、前記PLLのループ帯域幅を縮小することを具備し、前記(a)〜(d)のステップは前記PLLがロックされたままの間に実行される、方法。
【請求項2】
前記(c)において、前記バイアス電流は複数のステップで変更され、該ステップ数は4より多い、請求項1の方法。
【請求項3】
前記(c)において、前記バイアス電流は10マイクロ秒より多い時間に亘って変更され、前記RF通信装置はセルラー電話であり、そして前記VCOは1GHzより大である周波数を有する信号を出力する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記VCOに印加される入力電圧を検出することを更に具備し、前記VCOに供給されるバイアス電流は少なくとも前記検出された入力電圧と前記命令の関数である、請求項1の方法。
【請求項5】
温度を検出することを更に具備し、前記VCOに供給されるバイアス電流は少なくとも前記温度と前記命令の関数である、請求項1の方法。
【請求項6】
設定情報をVCO制御回路に伝達することを更に具備し、前記VCO制御回路は前記VCOにバイアス電流を供給し、そして設定情報は、前記VCO制御回路が前記(c)において前記バイアス電流を如何に変更するか、を少なくとも部分的に決定する、請求項1の方法。
【請求項7】
前期設定情報は前記(a)において受信される命令を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
前記VCO制御回路へのデジタル・クロック信号を受信することを更に具備し、前記VCO制御回路は、前記(c)におけるバイアス電流の変更のタイミングを制御するために、前記デジタル・クロック信号を利用する、請求項6の方法。
【請求項9】
位相ロック・ループ(PLL)であって、
VCOバイアス電流を受ける電圧制御発振器(VCO)と、
VCO制御回路とを具備し、前記VCO制御回路はVCOバイアス電流を出力し且つ又前記PLLのループ帯域幅を制御する信号を出力し、前記PLLはモバイルRF通信装置の一部である、
位相ロック・ループ(PLL)。
【請求項10】
前記VCO制御回路は前記VCOバイアス電流を、第1のVCOバイアス電流から第2のVCOバイアス電流へと、前記PLLがロックされたままであるように、少なくとも10マイクロ秒の時間に亘って滑らかに変える、請求項9のPLL。
【請求項11】
前記VCO制御回路は前記VCOの電力状態を変更するための命令を受信する、請求項9のPLL。
【請求項12】
ループ・フィルタを更に具備し、前記PLLのループ帯域幅を制御する前記信号は前記VCO制御回路によって該ループ・フィルタに供給される、請求項9のPLL。
【請求項13】
チャージ・ポンプを更に具備し、前記PLLのループ帯域幅を制御する前記信号は前記VCO制御回路によって前記チャージ・ポンプに供給される、請求項9のPLL。
【請求項14】
ループ・フィルタを更に具備し、前記ループ・フィルタは前記VCOに電圧信号を供給する、及び、前記VCO制御回路は前記電圧信号を受信しそして前記電圧信号に少なくとも部分的に基づいて前記VCOバイアス電流を制御する、請求項9のPLL。
【請求項15】
RF通信装置の局部発振器の位相ロック・ループ(PLL)であって、
VCOバイアス電流を受ける電圧制御発振器(VCO)と、
前記PLLのループ帯域幅を拡大し、次に前記VCOバイアス電流を、第1のVCOバイアス電流から第2のVCOバイアス電流まで、少なくとも10マイクロ秒の時間に亘って滑らかに変更し、そして次に前記PLLのループ帯域幅を縮小するための手段を具備し、前記VCOバイアス電流の前記変更は前記PLLがロックを外すことなく行われる、PLL。
【請求項16】
前記手段はデジタル設定情報を該手段に書き込むことによって構成可能である、請求項15のPLL。
【請求項17】
(a)電圧制御発振器(VCO)に供給されるVCO入力電圧を検出すること、ここにおいて、前記VCOはバラクタを含み、そして前記VCOはRF通信装置の局部発振器内部の位相ロック・ループ(PLL)の一部である、
(b)前記検出に基づいて前記VCOに供給されるバイアス電流を変更することを具備し、前記PLLは、前記(a)の前記検出及び前記(b)の前記変更の期間中ロックされたままである、方法。
【請求項18】
前記(a)において検出される前記VCO入力電圧が入力電圧範囲の入力電圧限界に近いかどうかを判定すること、及び、もし前記VCO入力電圧が入力電圧限界に近いと判定される場合、前記VCO入力電圧が該範囲の中央に合わせられるように、前記(b)において前記VCOのバイアス電流を変更することを更に具備する、請求項17の方法。
【請求項19】
温度を検出することを更に具備し、前記バイアス電流は前記検出されたVCO入力電圧と前記検出された温度双方の関数として前記(b)において変更される、請求項17の方法。
【請求項20】
クロック信号を受信すること、及び前記クロック信号を前記(b)における前記バイアス電流の変更に際して使用することを更に具備する、請求項17の方法。
【請求項21】
前記(b)の変更することは、
(b1)前記PLLのループ帯域幅を拡大すること、
(b2)前記(b1)の前記拡大の後、前記VCOに供給される前記バイアス電流を変更すること、及び
(b3)前記PLLのループ帯域幅を縮小すること
を含む、請求項17の方法。
【請求項22】
前記バイアス電流は複数のステップで変更され、前記ステップ数は4より多い、請求項21の方法。
【請求項23】
RFチャネル状態を判定すること、及び、前記判定されたRFチャネル状態に少なくとも部分的に基づいて前記VCOの電力状態が変更されるべきであるということを決定することを更に具備し、前記VCOの電力状態が変更されるべきであるという決定に応答して、前記(b)において前記バイアス電流が変更される、請求項17の方法。
【請求項24】
前記RFチャネル状態は、信号対雑音比(signal-to-noise ratio)(SNR)値、及び受信信号強度インジケータ(received signal strength indicator)(RSSI)値、から成るグループから取られる、請求項23の方法。
【請求項25】
前記(a)における該VCO入力電圧の検出と前記(b)における前記バイアス電流の変更はVCO制御回路によって実行され、前記VCO制御回路は前記PLLのループ・フィルタに制御信号を供給する、請求項17の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−62845(P2013−62845A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−242672(P2012−242672)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2010−531259(P2010−531259)の分割
【原出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】