説明

位相差フィルム、偏光子付き位相差フィルム、および液晶表示装置

【課題】安価かつ簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、実用性に優れたパターン位相差フィルムを提供することを主目的とする。
【解決手段】透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層とを有するパターン位相差フィルムであって、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、パターン位相差フィルムを提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元表示装置に用いられる位相差フィルムに関するものであり、特に3次元表示可能にするためにパターニングした位相差フィルムに関するものである。また、本発明は偏光子付き位相差フィルム、および液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイとしては、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めており、一部市販されているものも存在しつつある。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式において右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パネル全体において右目用の映像と左目用の映像とを一定の周期で交互に切り替えて表示させ、かつ視聴者に装着させたメガネと画像切り替え周期とを同期させて、右目用の映像が表示されるタイミングでは左目側のメガネレンズが遮蔽されることによって右目のみに右目用の映像が届くようにし、反対に左目用の映像が表示されるタイミングでは右目側のメガネレンズを遮蔽されることによって左目のみに左目用の映像が届くようにする方式が知られている(メガネシャッター方式)。このような方式は、パネルの全面で右目用映像および左目用映像を表示するため、解像度が低下しないという利点があることが知られている。しかしながら、このような方式では、右目用映像と左目用映像とを高速周期で切り換える必要があるため、応答速度の速い表示方式を採用したフラットパネルディスプレイでしか採用することが難しいという問題点があった。例えば、プラズマディスプレイは表示の応答速度が速いため、このようなメガネシャッター方式を採用することも可能であるが、プラズマディスプレイと比較して表示の応答速度が遅い液晶表示装置においては、メガネシャッター方式を採用した場合は映像の明るさが極端に低下してしまうことが多いという問題点があった。
【0004】
一方、液晶表示装置において右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示する方式としては、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図7はパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。図7に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の分割パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルムとを用い、右目用の映像と、左目用の映像とを互いに直交関係にある円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用レンズと左目用レンズとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにする。このようにして右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能とするものがパッシブ方式である。
【0005】
このようなパッシブ方式では、応答速度が高速でない液晶表示装置にも難なく採用することができること、及び上記パターン位相差フィルムと、対応する円偏光メガネとを用いることにより容易に従来の液晶表示装置を3次元表示が可能なものにできるという利点がある。このようなことから、パッシブ方式の液晶表示装置は今後の3次元表示装置の中心的存在となるものとして非常に注目されている。
【0006】
ところで、上述したようにパッシブ方式においてはパターン位相差フィルムを用いることが必須になるところ、このようなパターン位相差フィルムについてはまだ広く研究・開発が行われておらず、標準的な技術としても確立されているものがないのが現状である。この点、特許文献1にはパターン位相差フィルムとして、ガラス基板上に配向規制力がパターン状に制御された光配向膜と、当該光配向膜上に形成され、液晶化合物の配列が上記光配向膜のパターンに対応するようにパターニングされた位相差層とを有するパターン位相差板が開示されている。ここで、光配向膜のパターンは互いに配向方向が直交するように配向規制力が制御された領域がパターン状に配置されている。しかしながら、このような特許文献1に開示されたパターン位相差板は、光配向膜のような特殊な材料を使用しなければ作製することができず、かつガラス板を用いることが必須となっていることから、高価であり、また大面積のものを大量に製造できるというものではなく、その実用性に難点があった。
【0007】
また、特許文献2にはパターン状にラビング処理を行った配向層上に液晶化合物を含有する位相差層が形成されることにより、液晶化合物の配列方向が直交する領域がパターン状に形成された位相差フィルムが開示されている。しかしながら、ラビング処理は液晶化合物を配列させるための配向処理として一般的に公知の手段であるが、微細領域でラビング方向を0度、90度の様に明確に分けることが困難であった。液晶化合物に対する配向規制力は比較的弱いものである。このため特許文献2のような方法でパターン位相差板を作製した場合、位相差層におけるパターンの境界が不明確・曖昧になってしまい、境界近傍に液晶配向の欠陥が生じてそこから光漏れが起こり、ディスプレイのコントラストを低下させてしまうという問題点があった。
【0008】
このようなことから、実用性を有するパターン位相差フィルムに関しては未だ研究開発段階にあり、一般的なものとして知られるに至っているものはほとんどなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−49865号公報
【特許文献2】特開2003−207641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、安価かつ簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、実用性に優れたパターン位相差フィルムを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層とを有するパターン位相差フィルムであって、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状に形成されたライン状凹凸構造であることを特徴とする、パターン位相差フィルムを提供する。
【0012】
本発明においては、上記配向層に上記第1配向領域および上記第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても第1配向領域上に形成された位相差層(以下、「第1位相差領域」と称する場合がある。)と、上記第2配向領域上に形成された位相差層(以下、「第2位相差領域」と称する場合がある。)とがパターン状に配置されることになる。ここで、上記第1配向領域と上記第2配向領域とでは上記棒状化合物を配列させる方向が互いに直交する方向になることから、上記第1位相差領域と上記第2位相差領域とでは屈折率の最も大きくなる方向(遅相軸方向)が互いに直交する関係になる。このため、本発明においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンに対応して、上記位相差層において遅相軸方向が異なる第1位相差領域、および第2位相差領域がパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを得ることができる。これに加えて、本発明においては上記棒状化合物に対する配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されているが、上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。これにより、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れを抑制でき、その結果、ディスプレイに使用した際のコントラストの低下を抑制することができる。
また、本発明に用いられる上記棒状化合物は、従来から位相差フィルム用に用いられる棒状化合物として一般的なものを用いることができるため、本発明においては配向層を上記のように形成されたものにすることのみで安価にパターン位相差フィルムを得ることができる。
さらに、本発明のパターン位相差フィルムは、上記透明フィルム基材が用いられていることにより、簡易的な方法で大量生産することが可能であり、さらに軽量であることから実用性の高いものとなる。
このようなことから本発明によれば、安価かつ簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、実用性に優れたパターン位相差フィルムを得ることができる。
【0013】
本発明においては、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。これにより、例えば、本発明のパターン位相差フィルムを用いて表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になる。このため、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることにより、本発明のパターン位相差フィルムを用いて容易に3次元表示が可能な表示装置(以下、「3D表示装置」と称する場合がある。)を製造することができるようになるからである。換言すると、本発明のパターン位相差フィルムを、3D表示装置を製造するために好適に用いられるものにできるからである。
【0014】
また本発明においては、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された上記微細凹凸形状が、いずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましい。これにより位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界をさらに明瞭にすることができるからである。
【0015】
また本発明においては、上記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することが好ましい。これにより、上記第1位相差領域と第2位相差領域とを通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、上記位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当することにより本発明のパターン位相差フィルムを、3D表示装置を製造するためにより好適に用いられるものにできるからである。
【0016】
また本発明においては、上記配向層が硬化された紫外線硬化性樹脂からなることが好ましい。これにより、上記配向層を転写法によって容易に形成することが可能なものにできる結果、本発明のパターン位相差フィルムをさらに生産性の高いものにできるからである。
【0017】
また本発明においては、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に反射防止層、またはアンチグレア層の一方、もしくは両方が形成されていることが好ましい。これにより、本発明のパターン位相差フィルムを用いて表示装置を製造した際に、表示品質の良い表示装置を得ることができるからである。
【0018】
本発明は、上記本発明に係るパターン位相差フィルムと、上記パターン位相差フィルム上に積層された偏光子とを有することを特徴とする偏光子付きパターン位相差フィルムを提供する。また、このような本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムにおいては、上記パターン位相差フィルムと、上記偏光子および上記偏光子の両面に貼り合わされた偏光板保護フィルムからなる偏光板とが積層された構成を有するものであってもよい。
【0019】
本発明によれば、上記本発明に係るパターン位相差フィルムが用いられていることにより、3D表示装置を製造するために好適に用いることができる偏光子付きパターン位相差フィルムを得ることができる。
【0020】
本発明は、第1偏光板と、上記第1偏光板上に配置され、パターン状に画素部が形成されたカラーフィルタを備える液晶セルと、上記液晶セル上に配置された第2偏光板と、上記第2偏光板上に配置された上記本発明に係るパターン位相差フィルムと、を有する液晶表示装置であって、上記カラーフィルタにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記パターン位相差フィルムの上記配向層において上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0021】
本発明によれば、上記カラーフィルタにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記パターン位相差フィルムの上記配向層において上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されているパターンとが対応関係にあることにより、3次元映像を表示することが可能な液晶表示装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のパターン位相差フィルムは、安価かつ簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、実用性に優れるという効果を奏する。また、本発明のパターン位相差フィルムを用いれば容易に3D表示装置を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のパターン位相差フィルムの一例を示す概略図である。
【図2】本発明における配向層において第1配向領域および第2配向領域が形成されている態様の一例を示す概略図である。
【図3】本発明における配向層において第1配向領域および第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されている態様の他の例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図7】パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、パターン位相差フィルム、偏光子付きパターン位相差フィルム、および液晶表示装置に関するものである。
以下、これらの発明について詳細に説明する。
【0025】
A.パターン位相差フィルム
まず、本発明のパターン位相差フィルムについて説明する。上述したように本発明のパターン位相差フィルムは、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の上記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層とを有するものであって、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とするものである。
【0026】
このような本発明のパターン位相差フィルムについて図を参照しながら説明する。図1(a)、(b)は、本発明のパターン位相差フィルムの一例を示す概略図である。図1(a)に例示するように本発明のパターン位相差フィルム10は、透明フィルム基材11と、上記透明フィルム基材11上に形成された配向層12と、上記配向層12上に形成された位相差層13とを有するものである。ここで、本発明のパターン位相差フィルム10においては、上記配向層12が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域12Aと、上記棒状化合物を上記第1配向領域12Aにおける配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域12Bとが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域12Aの表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とするものである。その結果、図1(b)に例示するように本発明のパターン位相差フィルムにおいては位相差層13において遅相軸方向が互いに直交する第1位相差領域13Aおよび第2位相差領域13Bが、上記第1配向領域12Aおよび第2配向領域12Bが形成されたパターンと同一パターンで形成されることになる。
【0027】
本発明においては、上記配向層に上記第1配向領域および上記第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても第1配向領域上に形成された位相差層(以下、「第1位相差領域」と称する場合がある。)と、上記第2配向領域上に形成された位相差層(以下、「第2位相差領域」と称する場合がある。)とがパターン状に配置されることになる。ここで、上記第1配向領域と上記第2配向領域とでは上記棒状化合物を配列させる方向が互いに直交する方向になることから、上記第1位相差領域と上記第2位相差領域とでは屈折率の最も大きくなる方向(遅相軸方向)が互いに直交する関係になる。このため、本発明においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンに対応して、上記位相差層において遅相軸方向が異なる第1位相差領域、および第2位相差領域がパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを得ることができる。これに加えて、本発明においては上記棒状化合物に対する配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されているが、上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。これにより、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れを抑制でき、その結果、ディスプレイに使用した際のコントラストの低下を抑制することができる。
また、本発明に用いられる上記棒状化合物は、従来から位相差フィルム用に用いられる棒状化合物として一般的なものを用いることができるため、本発明においては配向層を上記のように形成されたものにすることのみで安価にパターン位相差フィルムを得ることができる。
さらに、本発明のパターン位相差フィルムは、上記透明フィルム基材が用いられていることにより、簡易的な方法で大量生産することが可能であり、さらに軽量であることから実用性の高いものとなる。
このようなことから本発明によれば、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、実用性に優れたパターン位相差フィルムを得ることができる。
【0028】
なお、図1においては第1配向領域に形成された微細凹凸形状のみがストライプ状のライン状凹凸構造である場合の一例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、第2配向領域に形成された微細凹凸形状のみがストライプ状のライン状凹凸構造であってもよく、または第1配向領域および第2配向領域に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であってもよい。
【0029】
本発明のパターン位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材と、配向層と、位相差層とを有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。以下、本発明のパターン位相差フィルムに用いられる各構成について順に説明する。
【0030】
1.配向層
まず、本発明に用いられる配向層について説明する。本発明に用いられる配向層は後述する透明フィルム基材上に形成されるものであり、位相差層に含まれる棒状化合物を配列させる機能を有するものである。そして、本発明に用いられる配向層は、表面に上記第1配向領域および第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても互いに遅相軸方向が直交関係にある第1位相差領域と、上記第2位相差領域とがパターン状に配置されることになる。これに加えて、本発明に用いられる配向層は、後述する位相差層に含まれる棒状化合物への配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されており、かつ上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。従って、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れを抑制でき、その結果、ディスプレイに使用した際のコントラストの低下を抑制することができる。
【0031】
(1)第1配向領域および第2配向領域
本発明における配向層に形成された第1配向領域および第2配向領域は、いずれも位相差層に含有される棒状化合物を一方向に配列させる機能を有する領域であるが、棒状化合物を配列させる方向が互いに直交関係にあるものである。本発明においては当該第1配向領域および第2配向領域はパターン状に形成されており、かつ表面には棒状化合物を配列させるための微細凹凸形状が形成されている。
【0032】
本発明における配向層において第1配向領域および第2配向領域が形成されるパターンは、本発明のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば、帯状パターン、モザイク状パターン、千鳥配置状パターン等を挙げることができる。中でも本発明においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。このようなパターンで第1配向領域および第2配向領域が形成されていることにより、例えば、本発明のパターン位相差フィルムを用いて液晶表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になる。このため、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることにより、本発明のパターン位相差フィルムを用いて容易に3D液晶表示装置を製造することができるようになるからである。換言すると、本発明のパターン位相差フィルムを3D液晶表示装置に好適に用いられるものにできるからである。
また、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることにより、本発明のパターン位相差フィルムを用いてプラズマディスプレイや有機ELやFEDの様な発光型表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、発光型表示装置において発光型ディスプレイに画素部が形成されているパターンとを偏光板を介して対応関係にすることが容易になる。このため、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることにより、本発明のパターン位相差フィルムを用いて容易に3D発光型表示装置を製造することができるようになるからである。換言すると、本発明のパターン位相差フィルムを3D発光型表示装置に好適に用いられるものにできるからである。尚、必要に応じて、上記発光型表示装置にカラーフィルタを用いても良い。
【0033】
図2は、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す概略図である。ここで、図2(b)は、図2(a)におけるX−X’線矢視断面図である。図2(a)、(b)に示すように、配向層12においては上記第1配向領域12Aおよび上記第2配向領域12Bが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。ここで、図2(a)、(b)におけるW1,W2はそれぞれ第1配向領域および第2配向領域の帯幅を示す。
【0034】
上記第1配向領域および第2配向領域が帯状のパターンに形成されている場合、第1配向領域および第2配向領域の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。しかしながら、本発明においては第1配向領域の幅と第2配向領域の幅は同一であることが好ましい。液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいては、通常、R、G、B等の画素部が同一の幅で形成されていることから、上記第1配向領域および上記第2配向領域の幅を同一幅とすることにより、本発明のパターン位相差フィルムを用いて3次元表示可能な液晶表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、本発明のパターン位相差フィルムを用いて容易に3D液晶表示装置を製造することができるようになるからである。また、発光型表示装置に用いられる画素部も同一の幅で形成されていることから、上記第1配向領域および上記第2配向領域の幅を同一幅とすることにより、本発明のパターン位相差フィルムを用いて3次元表示可能な発光型表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、発光型表示装置に用いられる画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、本発明のパターン位相差フィルムを用いて容易に3D発光型表示装置を製造することができるようになるからである。尚、発光型表示装置の色純度やコントラストを向上させる目的で、発光型表示装置と本発明のパターン位相差フィルムの間にカラーフィルタを配置しても良いが、その場合は、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、発光型表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが好ましい。
【0035】
上記第1配向領域および上記第2配向領域の具体的な幅としては、本発明のパターン位相差フィルムの用途に応じて適宜決定される。例えば、本発明のパターン位相差フィルムを、3次元表示可能な液晶表示装置を製造するために使用する場合、上記第1配向領域および第2配向領域の幅は液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記第1配向領域および第2配向領域の幅は特に限定されるものではないが、通常、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜600μmの範囲内であることがより好ましい。
【0036】
また、本発明において上記第1配向領域および上記第2配向領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、上記第1配向領域および上記第2配向領域の間に、光を吸収するブラックラインを設けてもよい。この場合、ブラックラインの幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
さらに、本発明において上記第1配向領域および上記第2配向領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、本発明におけるパターン位相差フィルムが長尺状に形成される場合、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であってもよく、あるいは直交方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。中でも本発明においては、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であることが好ましい。このような方向に帯状のパターンが形成されていることにより、例えば、ロール状に巻き取られた長尺状の透明フィルム基材を用い、当該ロール状の透明基材フィルムを巻きほぐしながら搬送しつつ、上記帯状のパターンを形成することが容易になるからである。
【0038】
(2)微細凹凸形状
次に、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状について説明する。本発明のパターン位相差フィルムは、上記配向層上に後述する位相差層が積層された構成を有するものであるところ、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状は、上記位相差層中に含まれる棒状化合物を一定方向に配列させるために形成されるものである。本発明においては上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とするものである。
【0039】
ここで、ストライプ状のライン状凹凸構造とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものであり、例えば、表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸形状はこれに含まれないものである。
【0040】
本発明において上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造である態様としては、第1配向領域または第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状のみが、ストライプ状のライン状凹凸構造であってもよく、または第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であってもよい。中でも本発明においては、第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましい。ストライプ状のライン状凹凸構造は棒状化合物に対する配向規制力が強いことから、第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界をさらに明瞭にすることができるからである。
【0041】
ストライプ状のライン状凹凸構造が形成される場合、ライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期は棒状化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。中でも本発明においてはストライプ状のライン状凹凸構造の幅は、1nm〜100000nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜10000nmの範囲内であることがより好ましく、100nm〜1000nmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、ストライプ状のライン状凹凸構造の高さは1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、20nm〜50nmの範囲内であることがさらに好ましい。
さらに、ストライプ状のライン状凹凸構造の周期は、2nm〜200000nmの範囲内であることが好ましく、20nm〜20000nmの範囲内であることがより好ましく、200nm〜2000nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0042】
ここで、ライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期はそれぞれ図3におけるl、m、nで示される距離を意味する。
【0043】
一方、第1配向領域または第2配向領域の一方の表面に形成された微細凹凸形状のみが、ストライプ状のライン状凹凸構造である場合、他方の表面に形成される微細凹凸形状としては棒状化合物を一定方向に配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、棒状化合物はライン状凹凸構造が形成された表面においては、当該ライン状凹凸構造の長手方向に平行に配列する性質を有するため、本発明における微細凹凸形状は、ライン状凹凸構造からなるものであることが好ましい。このようなライン状凹凸構造としては、例えば、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに不連続な状態で形成された態様を例示することができる。
【0044】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに不連続な状態で形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に不連続な状態で形成された態様を意味するものである。
【0045】
本発明において第1配向領域および第2配向領域にライン状凹凸構造が形成される場合、第1配向領域に形成されたライン状凹凸構造の方向と、第2配向領域に形成されたライン状凹凸構造の方向とが互いに直交する関係になる。これは、本発明における第1配向領域および第2配向領域は、棒状化合物を互いに直交する方向に配列させる機能を有するものであるところ、ライン状凹凸構造はその長手方向に対して平行方向に棒状化合物を配列させる機能を有するからである。
【0046】
(3)構成材料
本発明における配向層を形成するために用いられる構成材料としては、表面に所定の微細凹凸形状が形成された第1配向領域および第2配向領域を、所望のパターン状に形成できるものであれば特に限定されるものではない。このような構成材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を挙げることができる。本発明においてはこれらの何れの構成材料であっても好適に用いることができるが、なかでも紫外線硬化性樹脂が用いられることが好ましい。紫外線硬化性樹脂が用いられることにより、本発明に用いられる配向層を転写法によって容易に形成することが可能なものにできる結果、本発明のパターン位相差フィルムをさらに生産性の高いものにできるからである。なお、構成材料として紫外線硬化性樹脂が用いられた場合、本発明における配向層は硬化された紫外線硬化性樹脂からなることになる。
【0047】
本発明に用いられる紫外線硬化性樹脂の具体例としては、例えば、ウレタンアクリレート,エポキシアクリレート,ポリエステルアクリレート,ポリエーテルアクリレート,メラミンアクリレート等のアクリロイル基をもつ重合性オリゴマー,モノマーと、アクリル酸,アクリルアミド,アクリロニトリル,スチレン等重合性ビニル基をもつ重合性オリゴマー,モノマー等の単体あるいは配合したものに、必要に応じて増感剤等の添加剤を加えたものに光重合開始剤を加えたもの等を挙げることができる。
【0048】
2.位相差層
次に、本発明における位相差層について説明する。本発明における位相差層は、上述した配向層上に形成されるものであり、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本発明のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本発明においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本発明における位相差層は第1位相差領域と第2位相差領域とが、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
【0049】
本発明に用いられる位相差層は後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本発明に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本発明のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。また、本発明における位相差層では第1位相差領域および第2位相差領域の厚みはほぼ同一となる。中でも本発明における位相差層の厚みは、位相差層の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内であることが好ましい。これにより、本発明のパターン位相差フィルムにおいては、上記第1位相差領域および上記第2位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、本発明のパターン位相差フィルムを3D表示装置により好適に用いられるものにできるからである。
【0050】
本発明において、位相差層の厚みを位相差層の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、後述する棒状化合物の種類により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本発明において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、0.5μm〜2μmの範囲内となるがこれに限られるものではない。
【0051】
次に、位相差層に含有される棒状化合物について説明する。本発明に用いられる棒状化合物は屈折率異方性を有するものである。本発明における位相差層中に含有される棒状化合物としては、規則的に配列することにより本発明における位相差層に所望の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。液晶性材料は屈折率異方性が大きいため、本発明のパターン位相差フィルムに所望の位相差性を付与することが容易になるからである。
【0052】
本発明に用いられる上記液晶性材料としては、例えば、ネマチック相、スメクチック相等の液晶相を示す材料を挙げることができる。本発明においては、これらのいずれの液晶相を示す材料であっても好適に用いることができるが、なかでもネマチック相を示す液晶性材料を用いることが好ましい。ネマチック相を示す液晶性材料は、他の液晶相を示す液晶性材料と比較して規則的に配列させることが容易であるからである。
【0053】
また、本発明においては上記ネマチック相を示す液晶性材料として、メソゲン両端にスペーサを有する材料を用いることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する液晶性材料は柔軟性に優れるため、このような液晶性材料を用いることにより、本発明のパターン位相差フィルムを透明性に優れたものにできるからである。
【0054】
さらに、本発明に用いられる棒状化合物は、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、なかでも3次元架橋可能な重合性官能基を有するものがより好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、配列安定性に優れ、位相差性の経時変化が生じにくい位相差層を得ることができるからである。なお、重合性官能基を有する棒状化合物を用いた場合、本発明における位相差層には、重合性官能基によって架橋された棒状化合物が含有されることになる。
【0055】
なお、上記「3次元架橋」とは、液晶性分子を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
【0056】
上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等が挙げられる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらの中でもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
【0057】
さらにまた、本発明における棒状化合物は液晶性を示す液晶性材料であって、末端に上記重合性官能基を有するものが特に好ましい。このような液晶材料を用いることにより、例えば、互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることができるため、列安定性を備え、かつ、光学特性の発現性に優れた上記を形成することができるからである。
なお、本発明においては片末端に重合性官能基を有する液晶性材料を用いた場合であっても、他の分子と架橋して配列安定化することができる。
【0058】
本発明に用いられる棒状化合物の具体例としては、下記式(1)〜(17)で表される化合物を例示することができる。
【0059】
【化1】

【0060】
なお、本発明において上記棒状化合物は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。また、信頼性確保の観点からは、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料が好ましいが、液晶配向の観点からは両末端の重合性官能基が1つであることが好ましい。
【0061】
3.透明フィルム基材
次に、本発明に用いられる透明フィルム基材について説明する。本発明に用いられる透明フィルム基材としては、樹脂材料からなり所定の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。中でも本発明に用いられる透明フィルム基材は、位相差性が低いものであることが好ましい。より具体的には、本発明に用いられる透明フィルム基材は、面内レターデーション値(Re値)が、0nm〜10nmの範囲内であることが好ましく、
0nm〜5nmの範囲内であることがより好ましく、0nm〜3nmの範囲内であることがさらに好ましい。透明基材の面内レターデーション値が上記範囲よりも大きいと、例えば、本発明のパターン位相差フィルムを用いて3D表示装置を製造した場合に、得られる3D表示装置の表示品質が悪くなってしまう場合があるからである。
【0062】
本発明に用いられる透明フィルム基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明フィルム基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0063】
また、本発明に用いられる透明フィルム基材としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂からなるものを挙げることができるが、透明フィルム基材の面内レターデーションをゼロに近付けやすいことからアセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0064】
透明フィルム基材の厚みについては、本発明のパターン位相差フィルムの用途および透明フィルム基材を構成する材料等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではないが、通常は、20μm〜188μmの範囲内であることが好ましく、30μm〜90μmの範囲内であることがより好ましい。
【0065】
なお、上記配向層が紫外性硬化性樹脂からなる場合は、透明フィルム基材と紫外線硬化性樹脂の接着性を向上させるためのプライマ層を透明フィルム基材上に形成してもよい。このプライマ層は、透明フィルム基材および紫外線硬化性樹脂との双方に接着性を有し、可視光学的に透明であり、紫外線を通過させるものであればよく、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系,ウレタン系のものを使用することができる。
【0066】
4.パターン位相差フィルム
(1)他の構成
本発明のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本発明に用いられる他の構成としては、本発明のパターン位相差フィルムの用途等に応じて所望の機能を有するものを適宜選択して用いることができる。このような他の構成の例としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。このような反射防止層が形成されていることにより、これにより本発明のパターン位相差フィルムを用いて液晶表示装置を製造した際に、表示品質の良い液晶表示装置を得ることができるという利点がある。なお、上記反射防止層、およびアンチグレア層は一方のみが用いられてもよく、または両方が用いられてもよい。
【0067】
図4は、本発明のパターン位相差フィルムに反射防止層が用いられる場合の一例を示す概略図断面図である。図4に例示するように本発明のパターン位相差フィルム10には、上記透明フィルム基材11の上記配向層12が形成された面とは反対面上にアンチグレア層または反射防止層14が形成されていてもよい。
【0068】
上記アンチグレア層は、太陽や蛍光灯などからの外光が、表示装置の表示画面に入射して反射することから生じる画面の映り込みを低減させる機能を有する層である。一方、上記反射防止層は、表面の正反射率を抑えることで画像のコントラストがよくなり、その結果、画像の視認性を向上させる機能を有するものである。本発明に用いられるアンチグレア層、反射防止層としては、所望のアンチグレア機能、または反射防止機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、表示画質向上を目的として表示装置に用いられるものとして一般的に公知のものを用いることができる。上記アンチグレア層としては、例えば、微粒子を分散させた樹脂層を挙げることができ、上記反射防止層としては、例えば、屈折率の異なる複数の層が積層された構成を有するものを挙げることができる。尚、アンチグレア層の最表面に反射防止層を設ければ、明室における画像の視認性を更に向上することができる。
【0069】
(2)パターン位相差フィルム
本発明の位相差フィルムは、上述した第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に第1位相差領域と第2位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するものとなる。ここで、上記第1位相差領域および第2位相差領域が有する位相差性の程度については、特に限定されるものではなく、本発明のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、第1位相差領域および第2位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、パターン位相差フィルムの用途に応じて適宜調整すればよい。なかでも、本発明のパターン位相差フィルムを3D液晶表示装置を製造するために用いる場合は、位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度であることが好ましい。より具体的には上記位相差層の面内レターデーション値は、100nm〜160nmの範囲内であることが好ましく、110nm〜150nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜140nmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、本発明における位相差層において第1位相差領域および第2位相差領域が示す面内レターデーション値は、遅相軸の方向が異なる以外はほぼ同一となる。
【0070】
ここで、面内レターデーション値とは、屈折率異方体の面内方向における複屈折性の程度を示す指標であり、面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率をNx、遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率をNy、屈折率異方体の面内方向に垂直な方向の厚みをdとした場合に、
Re[nm]=(Nx−Ny)×d[nm]
で表わされる値である。面内レターデーション値(Re値)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができるし、微小領域の面内レターデーション値はAXOMETRICS社(米国)製のAxoScanでミューラーマトリクスを使って測定することも出来る。また、本願明細書においては特に別段の記載をしない限り、Re値は波長589nmにおける値を意味するものとする。
【0071】
また、本発明における位相差層において第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるパターンについても特に限定されるものではなく、本発明のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。なお、第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるパターンは配向層において第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターンに一致するものになるため、第1配向領域および第2配向領域を形成するパターンを選択することによって、同時に第1位相差領域および低位相差が形成されるパターンを決定することになる。
【0072】
なお、本発明のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて、サンプルを回転させた場合に明線と暗線が反転することを確認することにより評価することができる。このとき、第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが細かい場合は偏光顕微鏡で観察するとよい。また、前述したAxoScanで各パターン内の遅相軸の方向(角度)を測定しても良い。
【0073】
5.パターン位相差フィルムの製造方法
本発明のパターン位相差フィルムを製造する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に、第1配向領域および第2配向領域を有する配向層を形成した後、当該配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
【0074】
上記透明フィルム基材上に配向層を形成する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に上述した構成材料を含有する配向層形成用塗工液を塗布し、乾燥することによって配向層形成用塗工液からなる膜を形成し、必要に応じて硬化処理を行った後、当該膜の表面に微細凹凸形状を形成して第1配向領域および第2配向領域を形成する方法や、透明フィルム基材上に予め別個に形成した配向層を転写する方法等を挙げることができる。配向層を形成する具体的な方法としては、例えば、ストライプ状のライン状凹凸や微細なライン状凹凸を金型に切削し、その上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、更にその上に透明フィルム基材を密着させ、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、金型から剥離する等の方法を挙げることができる。
【0075】
上記位相差層形成用塗工液は、通常、棒状化合物と、溶媒とからなり、必要に応じて重合開始剤等を含むものであってもよい。上記位相差層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記棒状化合物を所望の濃度に溶解できるものであり、かつ、透明フィルム基材を侵蝕しないものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、シクロヘキサン等のアノン系溶媒、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶媒を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、本発明に用いられる溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
【0076】
上記位相差層形成用塗工液中における上記棒状化合物の含有量は、上記位相差層形成用塗工液を透明フィルム基材上に塗布する塗工方式等に応じて、上記位相差層形成用塗工液の粘度を所望の値にできる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては、上記棒状化合物の含有量が、上記位相差層形成用塗工液中、5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、特に10質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0077】
上記位相差層形成用塗工液中には、必要に応じて光重合開始剤を含んでも良い。特に紫外線照射により位相差層を硬化させる処理を実施する場合には、光重合開始剤を含むことが好ましい。本発明に用いられる光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系化合物等の一般的に公知のものを用いることができる。また、光重合開始剤を使用する場合には、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
【0078】
上記位相差層形成用塗工液を上記透明フィルム基材上に塗工する塗布方式としては、所望の平面性を達成できる方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これに限られるものではない。上記位相差層形成用塗工液の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、上記棒状化合物として重合性材料を用いる場合、上記重合性材料を重合する方法は、特に限定されるものではなく、上記重合性材料が有する重合性官能基の種類に応じて適宜決定すればよい。
【0079】
B.偏光子付きパターン位相差フィルム
次に、本発明の偏光板付きパターン位相差フィルムについて説明する。上述したように本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムは、上記本発明に係るパターン位相差フィルムと、上記パターン位相差フィルム上に積層された偏光子とを有することを特徴とするものである。
【0080】
このような本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムについて図を参照しながら説明する。図5は本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。図5に例示するように、本発明の偏光子付きパターン位相差フィルム20は、パターン位相差フィルム10と、上記パターン位相差フィルム10上に積層された偏光子21とを有することを特徴とするものである。このような例において本発明の偏光子付きパターン位相差フィルム20は、上記パターン位相差フィルム10が上記本発明に係るパターン位相差フィルムであることを特徴とするものである。ここで、図5(a)、(a)’においては、偏光子21の両面に偏光板保護フィルム22が配置された偏光板23として偏光子21がパターン位相差フィルム10上に積層された構成について図示したが、本発明の偏光子付きパターン位相差フィルム20はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、図5(b)、(b)’に示すようにパターン位相差フィルム10の透明フィルム基材11上に偏光子21のみが積層される態様であってもよい。尚、3D画像を広い視野角で見れるようにするためには、偏光子21と位相差層13との距離は出来る限り短くした方が良いので、図5中、層構成(a)’よりは(a)の方が好ましく、(b)よりは(b)’の方が好ましい。なお、図5において24は接着層を表わすものである。
【0081】
本発明によれば、上記本発明に係るパターン位相差フィルムが用いられていることにより、3D表示装置を製造するために好適に用いることができる偏光子付きパターン位相差フィルムを得ることができる。
【0082】
本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムは、少なくとも上記パターン位相差フィルムと、偏光子とを有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムに用いられる各構成について順に説明する。
【0083】
なお、本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムに用いられるパターン位相差フィルムについては、上記「A.パターン位相差フィルム」の項において説明したものであるため、以下での説明は省略する。
【0084】
まず、本発明においてパターン位相差フィルム上に偏光子が積層されている態様について説明する。本発明においてパターン位相差フィルムに偏光子が積層されている態様は特に限定されるものではなく、パターン位相差フィルムの透明フィルム基材側に積層される態様であってもよく、またはパターン位相差フィルムの位相差層上に積層される態様であってもよい。また偏光子がパターン位相差フィルムに積層される態様としては、偏光子のみがパターン位相差フィルム上に積層される態様であってもよく(図5(b)、(b)’参照)、偏光子が偏光板としてパターン位相差フィルム上に積層される態様であってもよい(図5(a)、(a)’参照)。中でも本発明においては、偏光子がパターン位相差フィルムの透明フィルム基材側に積層される場合は、偏光子のみが積層される態様であることが好ましく、一方で偏光子がパターン位相差フィルムの位相差層上に積層される場合は、偏光板として積層される態様であることが好ましい。
【0085】
また、本発明においてパターン位相差フィルムと偏光子とを積層するに際しては必要に応じて両者の間に接着層や粘着層を介在させてもよい。
【0086】
本発明に用いられる偏光子としては、透過光を直線偏光とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置用の偏光板に用いられる偏光子として公知のものを用いることができる。このような偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものを挙げることができる。
【0087】
本発明において偏光子を偏光板としてパターン位相差フィルム上に積層する場合、偏光板としては偏光子の少なくとも片面、好ましくは両面に偏光板保護フィルムが配置された構成を有する偏光板が使用される。この際に用いられる偏光板保護フィルムとしては、上記偏光子を保護することができ、かつ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、可視光領域における透過率が80%以上であるものが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。
ここで、上記偏光板保護フィルムの透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0088】
上記偏光板保護フィルムを構成する材料としては、例えば、セルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類等を挙げることができる。なかでも本発明においては、上記樹脂材料としてセルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、またはアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0089】
上記セルロース誘導体としては、偏光板において偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能と、偏光子の寸法変化を防止する機能とを有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体としてセルロースエステル類を用いることが好ましく、さらにセルロースエステル類の中でもセルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0090】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
【0091】
また本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。このようなトリアセチルセルロールは光学的等方性に優れるからである。
ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフィルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フィルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0092】
なお、従来、セルロース誘導体からなるフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、表面をけん化処理することによってポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性を向上することができる。
【0093】
一方、上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。また、上記シクロオレフィン系樹脂は上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。
【0094】
また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、23℃における飽和吸水率が1質量%以下であるものが好ましく、なかでも0.1質量%〜0.7質量%の範囲内であるものが好ましい。このようなシクロオレフィン系樹脂を用いることにより、偏光板を吸水による光学特性の変化や寸法の変化がより生じにくいものとすることができるからである。
ここで、上記飽和吸水率は、上記吸水率は、ASTMD570に準拠し23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる。
【0095】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、Ticona社製 Topas(登録商標)、ジェイエスアール社製 アートン(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONEX(登録商標)、三井化学社製 アペル(登録商標)等を挙げることができる。
【0096】
また、上記アクリル系樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特に好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0097】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、日本触媒社製アクリビュア(登録商標)を挙げることができる。
【0098】
また、本発明に用いられる偏光板保護フィルムの厚みは特に限定されないが、通常、5μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に15μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、さらに30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0099】
本発明の偏光子付きパターン位相差フィルムは、上記本発明に係るパターン位相差フィルムを用い、適宜接着層を用いて偏光子を任意の態様で積層することにより製造することができる。
【0100】
C.液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。上述したように本発明の液晶表示装置は、第1偏光板と、上記第1偏光板上に配置され、パターン状に画素部が形成されたカラーフィルタを備える液晶セルと、上記液晶セル上に配置された第2偏光板と、上記第2偏光板上に配置された上記本発明に係るパターン位相差フィルムとを有するものであって、上記カラーフィルタにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記パターン位相差フィルムの上記配向層において上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されているパターンとが対応関係にあることを特徴とするものである。
【0101】
このような本発明の液晶表示装置について図を参照しながら説明する。図6は本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図断面図である。図6に例示するように本発明の液晶表示装置30は、第1偏光板31と、上記第1偏光板31上に配置され、パターン状に画素部32aが形成されたカラーフィルタを備える液晶セル32と、上記液晶セル32上に配置された第2偏光板33と、上記第2偏光板33上に配置された上記本発明に係るパターン位相差フィルム10とを有するものである。本発明の液晶表示装置30においては、上記カラーフィルタにおいて上記画素部32aが形成されているパターンと、上記位相差フィルム10の配向層12において上記第1配向領域12Aおよび上記第2配向領域12Bが形成されているパターンとが対応関係にあることを特徴とするものである。
【0102】
本発明によれば、上記カラーフィルタにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記位相差フィルムの上記配向層において上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されているパターンとが対応関係にあることにより、3次元表示の映像を表示することが可能な液晶表示装置を得ることができる。
【0103】
本発明の液晶表示装置は、少なくとも第1偏光板、液晶セル、第2偏光板、パターン位相差フィルムを有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各構成について説明する。
【0104】
なお、本発明に用いられるパターン位相差フィルムは、上記「A.パターン位相差フィルム」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0105】
1.液晶セル
本発明に用いられる液晶セルは、パターン状に形成された画素部を有するカラーフィルタを備えるものである。本発明に用いられる液晶セルとしては、特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置用の液晶セルとして公知のものを用いることができる。
【0106】
2.第1偏光板および第2偏光板
本発明に用いられる第1偏光板および第2偏光板としては、透過光を直線偏光とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置に用いられる偏光板を用いることができる。このような偏光板としては、例えば、偏光子と、当該偏光子の両面に配置された偏光板保護フィルムとからなるものが一般的である。ここで、上記偏光子、および偏光板保護フィルムについては上記「B.偏光子付きパターン位相差フィルム」の項において説明したものと同様のものを用いることができる。
【0107】
また、本発明の液晶表示装置においては液晶セルを挟持するように第1偏光板および第2偏光板が配置されるが、第1偏光板はバックライト側に配置されるものであり、第2偏光板は表示側に配置されるものである。また、第1偏光板および第2偏光板は偏光軸が互いに直交する方向で配置される。
【0108】
3.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、上記液晶セルが備えるカラーフィルタにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記パターン位相差フィルムの上記配向層において上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されているパターンとが対応関係にあることを特徴とするものである。上記画素部が形成されているパターンと、上記パターン位相差フィルムの上記配向層において上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されているパターンとの対応関係をどのような態様にするかは、上記カラーフィルタにおいて画素部が配置されている態様等に応じて適宜決定することができる。このような対応関係としては、例えば、液晶表示装置に用いられているカラーフィルタの左右方向の1ライン毎にパターン位相差フィルムの上記第1配向領域および上記第2配向領域の各ラインが対応する状態にする等を挙げることができる。尚、位置合わせのずれを防止する目的で、必要に応じて隣り合ったライン間に光を吸収する黒いラインを設けても良い。
【0109】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0110】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0111】
[実施例]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、研磨剤(カネヨ石鹸株式会社製カネヨンTM)で左右方向に研磨し、洗浄した。その後、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで上下方向に、ストライプの間隔が500μmになる様に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック RC23−207)を銅版上に塗布し、その上に密着性を改善するためのプライマー(DIC株式会社製ユニディックRC20−075)を塗布した透明なフィルム(富士フィルム株式会社製フジタック)を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、上記透明フィルム基材を銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルム基材上に賦形することにより、上記透明フィルム基材上に配向層を形成した。SEMで配向層の断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸と不定形の微細な凹凸が交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式で表わされる液晶性材料の溶液に、光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記配向層が形成された透明フィルム基材上にスピンコーターで塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化することにより、パターン位相差フィルムを作製した。
作製したパターン位相差フィルムを偏光板クロスニコルの中に入れて回転させたところ、幅500μmのストライプが明・暗・明・暗の繰り返し模様で見え、90度回転する毎に、明と暗が反転した。
尚、今回のラビングには研磨剤を用いたが、LCD製造に使われているラビング用の布を使ってもよい。
【0112】
上記パターン位相差フィルムを3次元表示可能な液晶ディスプレイのカラーフィルタの左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
【0113】
【化2】

【符号の説明】
【0114】
10 … パターン位相差フィルム
11 … 透明フィルム基材
12 … 配向層
12A … 第1配向領域
12B … 第2配向領域
13 … 位相差層
13A … 第1位相差領域
13B … 第2位相差領域
14 … 反射防止層
20 … 偏光子付きパターン位相差フィルム
21 … 偏光子
22 … 偏光板保護フィルム
23 … 偏光板
24 … 接着層
30 … 液晶表示装置
31 … 第1偏光板
32 … 液晶セル
32a … 画素部
33 … 第2偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材と、前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、前記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層とを有するパターン位相差フィルムであって、
前記配向層が、前記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、前記棒状化合物を前記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、前記第1配向領域または前記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、パターン位相差フィルム。
【請求項2】
前記第1配向領域および前記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項3】
前記第1配向領域および前記第2配向領域の表面に形成された前記微細凹凸形状が、いずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項4】
前記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項5】
前記配向層が硬化された紫外線硬化性樹脂からなることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項6】
前記透明フィルム基材の前記配向層が形成された面とは反対面上に反射防止層、またはアンチグレア層の一方、もしくは両方が形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載のパターン位相差フィルムと、前記パターン位相差フィルム上に積層された偏光子とを有することを特徴とする、偏光子付きパターン位相差フィルム。
【請求項8】
前記パターン位相差フィルムと、前記偏光子および前記偏光子の両面に貼り合わされた偏光板保護フィルムからなる偏光板とが積層された構成を有することを特徴とする、請求項7に記載の偏光子付きパターン位相差フィルム。
【請求項9】
第1偏光板と、
前記第1偏光板上に配置され、パターン状に画素部が形成されたカラーフィルタを備える液晶セルと、
前記液晶セル上に配置された第2偏光板と、
前記第2偏光板上に配置された請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載のパターン位相差フィルムと、
を有する液晶表示装置であって、
前記カラーフィルタにおいて前記画素部が形成されているパターンと、前記パターン位相差フィルムの前記配向層において前記第1配向領域および前記第2配向領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とする、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−73515(P2012−73515A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219704(P2010−219704)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】