説明

位置推定システム

【課題】位置情報とその位置での複数の無線基地局からの伝搬特性情報とを対応付けて保存した基準データベースを用いて位置推定を行う位置推定システムで、推定精度の向上を図れると共に、基準データベースの位置情報の構築を容易化できるようにする。
【解決手段】基準データ測定装置200は、異なる周波数の電磁波を送信する複数種類の無線システムの基地局群101、102の信号を受信し、その伝搬情報を検出して、サーバ装置300の基準データベース320に蓄積する。位置推定を行う場合には、無線端末400は、無線システムの基地局群101、102の信号を受信し、その伝搬情報を検出してサーバ装置300に送る。サーバ装置300で、基準データデータベース320を用いて位置を推定する。異なる複数の伝搬特性を反映したデータの取得が可能となり、精度の向上が図れる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報とその位置での複数の無線基地局からの伝搬特性情報とを対応付けて保存した基準データベースを用いて位置推定を行う位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線システムを利用した無線端末の位置推定の方法は、代表的な方法として、位置情報が既知である無線局と無線端末間の距離又は電波到来方向に関する情報を、複数の無線基地局との関係において収集し、三角測量的に推定位置を計算する方法がある。また、無線局と無線端末間の距離を求める方法として、無線基地局と無線端末の信号強度のレベル差を受信電界強度から求めて距離を推定する方法、又は無線基地局から無線端末まで電波が到達するまでの時間から距離を推定する方法がある。
【0003】
しかしながら、これらの位置推定方法は、電波の伝搬環境によって、見通し外やマルチパス環境になり、無線基地局と無線端末間の距離や電波到来方向を推定する精度を下げ、位置推定精度を下げる原因となる。例として、カーナビゲーションシステムに用いられるGPS(Global Positioning System)による位置推定では、衛星からの電波到達時間を距離に換算して位置の推定を行うが、屋内やビル間等で位置推定の精度を出すのは困難とされている。
【0004】
一方、別のアプローチとして、あらかじめ位置推定の対象となるエリア内において、受信電界強度や電波到来方向などの伝搬特性に関する情報と当該場所の位置情報を対応付けた情報を、位置指紋情報としてデータベース化して蓄積し、新たに無線端末の位置を推定する際には、当該データベースとマッチングして最も近似した伝搬特性の場所を推定位置とするフィンガープリント型の位置推定方法がある。非特許文献1には、フィンガープリント型の位置推定法であり、受信電界強度のデータベースを位置指紋として位置を推定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Claude M Takenga, Kyandoghere Kyamakya,“Robust Positionlng System based on Fingerprint Approach, ” Proceedings of the 5th ACM internatlonal workshop on Mobility management and wireless access, pp l−8, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のフィンガープリント型の位置推定法は、受信電界強度などの伝搬特性から距離を推定する際の誤差を吸収する可能性を持っているが、その効果は利用する無線システムの伝搬特性の影響を受ける。例えば、周波数が異なれば、その伝搬特性は変化することになり、伝搬特性に依存する誤差の影響を受ける。
【0007】
また、フィンガープリント型の位置推定方法においては、あらかじめ位置推定対象となるエリア内において、受信電界強度や電波到来方向などの伝搬特性に関する情報と当該場所の位置情報を対応付けた情報を、位置指紋情報としてデータベース化する必要がある。この場合、位置指紋となる情報が多いほど、位置推定精度の向上が期待できる。
【0008】
しかしながら、位置指紋情報が多くなると、位置推定時に行うマッチングの対象が増え、伝搬特性に関する情報と対応付けるための位置情報を取得して位置指紋情報のデータベースを構築するには労力を要する。また、位置指紋情報のデータベースの構築化を自動化するためには、GPSなどの別の位置推定システムとの組み合わせが求められる。しかしながら、GPSを用いる場合、屋内では位置推定が困難となる。
【0009】
上述の課題を鑑み、本発明は、伝搬特性の影響を軽減でき、推定精度の向上を図る位置推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、位置推定対象エリア内に設置され、定められた周波数で無線信号を送信する複数の信号送信装置と、信号送信装置から送信される無線信号を受信する無線端末と、位置推定対象エリア内における無線端末の位置を推定するサーバ装置とを備えた位置推定システムであって、複数の信号送信装置は、互いに異なる周波数により無線信号を送信し、無線端末は、信号送信装置から受信する無線信号の伝搬特性を示す伝搬特性情報をサーバ装置に送信する手段を有し、サーバ装置は、位置推定対象エリア内の定められた位置を示す位置情報と、位置において複数の信号送信装置から送信される無線信号の伝搬特性を示す伝搬特性情報とが対応付けられて記憶された基準データベースと、無線端末から送信される伝搬特性情報に最も近似する伝搬特性情報を基準データベースから検出して、検出した伝搬特性情報に対応する位置情報を読み出す位置計算手段とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述の信号送信装置が送信する信号は、信号送信装置を識別する識別情報を含み、サーバ装置の基準データベースには、識別情報と、識別情報に対応する信号送信装置が設置された位置推定対象エリア内の位置を示す位置情報と伝搬特性情報とが記憶され、位置計算手段は信号送信装置から送信される無線信号に含まれる識別情報に対応する位置情報を読み出すことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述の複数の信号送信装置は、電波による無線信号を送信する無線基地局と、可視光による無線信号を送信する可視光送信器とのいずれかまたは双方を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、無線基地局から送信される電波による無線信号の伝搬特性情報が、無線信号の強度、到来方向、または到達時間を示す情報のうちいずれかまたはその組み合わせであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、可視光送信器から送信される可視光による無線信号の伝搬特性情報が、入射光の仰角または方向角を示す情報のいずれかまたは双方であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、位置推定システムが、信号送信装置から送信される無線信号の伝搬特性情報を測定してサーバ装置に送信する基準データ測定装置をさらに備え、サーバ装置の基準データベースには、基準データ測定装置が伝搬特性情報を測定した位置を示す位置情報と、基準データ測定装置から送信される伝搬特性情報とが対応付けられて記憶されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
従来技術のように単一の無線システムを用いた位置推定システムでは、単一の周波数から計測できる無線信号の強度のみを用いていたところ、本発明によれば、複数の信号送信装置から出力される電磁波の伝搬特性情報に基づいて位置推定を行なうようにした。これにより、各々の信号送信装置から出力される電磁波の伝搬特性情報を加味した位置推定を行なうことにより、精度の向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態の位置推定システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の位置推定システムにおける基準データベースの構成の説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の位置推定システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の位置推定システムにおける基準データベースの構成の説明図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の位置推定システムの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の位置推定システムにおける可視光送信器データベースの構成の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の位置推定システムにおける基準データベースの構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の構成を示すものである。本発明では、複数の異なる周波数の電磁波を出力する無線基地局による無線システムを用い、無線システム毎に異なる伝搬特性を反映した伝搬特性情報を取得することで、位置推定の精度の向上を図るようにしている。
【0019】
図1の例では、複数の異なる周波数で無線信号を送信する信号送信装置による無線システムとして、第1の無線システムと第2の無線システムとの2種類の無線システムが用いられる。第1の無線システムの無線基地局群101としては、位置推定対象エリア内に複数の無線基地局1a、1b、1c、…が点在する。また、第2の無線システムの無線基地局群102としては、位置推定対象エリア内に複数の無線基地局2a、2b、2c、…が点在する。本発明の第1の実施形態では、伝搬特性情報としては、無線信号の強度が用いられる。
【0020】
先ず、本発明の第1の実施形態における位置指紋情報の構築処理について説明する。
【0021】
図1において、基準データ測定装置200は、サーバ装置300の基準データベース320に蓄積する位置指紋情報を取得するのに用いられる。基準データ測定装置200の動作として、先ず位置推定対象エリア内の任意の一点において、第1の無線システムを構成する無線基地局群101の複数の無線基地局1a、1b、1c、…からの無線信号を受信し、その無線信号の強度を第1の無線システムの無線強度測定部211において測定する。
【0022】
また、基準データ測定装置200は、当該点で、第2の無線システムを構成する無線基地局群102の複数の無線基地局2a、2b、2c、…からのから無線信号を受信し、その無線信号の強度を第2の無線強度測定部212において測定する。
【0023】
基準データ測定装置200は、さらに当該点の位置情報を基準データ位置入力部220より入力し、基準データ生成部230においてそれらの情報を対応付けて一つの位置指紋情報とする。そして、基準データ測定装置200は、基準データ送信部240により、測定された位置指紋情報をサーバ装置300に送信する。
【0024】
サーバ装置300は、基準データ測定装置200から送信されてきた位置指紋情報を基準データベース320に蓄積する。基準データ測定装置200は、位置推定対象エリア内において、位置指紋情報の構築を繰り返してサーバ装置300に送信し、サーバ装置300の基準データベース320に、位置指紋情報を蓄積する。
【0025】
図2は、サーバ装置300に構築された基準データベース320の例を示すものである。図2の例では一つの位置指紋情報に対して、位置情報としてXY座標を用い、それに第1の無線システムの無線信号の強度として3局の無線基地局la〜lcの無線信号の強度と、第2の無線システムの無線信号の強度として3局の無線基地局2a〜2cの無線信号の強度とを対応付けている。
【0026】
このようにして、サーバ装置300の基準データベース320に位置指紋情報が構築された後、無線端末400は、位置推定対象エリア内で、第1の無線システムの無線信号及び第2の無線システムの無線信号を受信することで、位置検出を行うことができる。
【0027】
次に、本発明の第1の実施形態における無線端末400の位置推定処理について説明する。
【0028】
無線端末400は、位置推定対象エリア内を移動する際に、ある任意の点において、第1の無線システムを構成する無線基地局群101の複数の無線基地局1a、1b、1c、…からの無線信号を受信し、その無線信号の強度を第1の無線システムの無線強度測定部411において測定する。
【0029】
また、無線端末400は、当該点で、第2の無線システムを構成する無線基地局群102の複数の無線基地局2a、2b、2c、…からの無線信号を受信し、その無線信号の強度を第2の無線システムの無線強度測定部412において測定する。
【0030】
そして、無線端末400は、測定データ生成部420により、第1の無線システムの無線強度測定部411の無線信号の強度の測定値の情報と、第2の無線システムの無線強度測定部412の無線信号の強度の測定値の情報とを入力し、それらの情報を対応付けて一つの測定情報を生成する。そして、無線端末400は、測定データ送信部430により、この測定情報をサーバ装置300に送信する。
【0031】
サーバ装置300は、無線端末400からの測定情報を受信すると、位置計算部310において、送信されてきた測定情報について、図2に示した基準データベース320内の位置指紋情報とのマッチングを行う。そして、サーバ装置300の位置計算部310は、無線端末400からの測定情報と基準データベース320内の位置指紋情報とのマッチングの結果、基準データベース320の位置指紋情報のうち最も特性が近似している位置指紋情報のXY座標を検出し、このXY座標を無線端末400の位置と推定する。
【0032】
無線端末400からの測定情報と基準データベース320内の位置指紋情報とのマッチングのアルゴリズムとしては、誤差二乗和が最小となるものを解とするといった、多次元の特徴量の最尤値を求めるさまざまな方法を用いることができる。推定した無線端末400の位置情報は、管理者がサーバ装置300で表示する、又は無線端末400にフィードバックし、無線端末400の利用者に通知する、などといった利用方法が考えられる。なお、各無線システムの無線基地局の設置場所は同じ場所でも異なる場所でもよい。
【0033】
なお、本発明の第1の実施形態における無線信号の強度を、無線信号の到来方向に置き換えた構成としてもよい。無線信号の到来方向の推定には、アレーアンテナを用いたMUSIC(Multiple Signal Classification)等の手法を用いることが可能である。MUSICでは、アレー入力の相関行列の固有値、固有ベクトルにより到来方向を推定する。
【0034】
また、第1の実施形態における無線信号の強度を無線信号の到達時間に置き換えた構成としてもよい。無線信号の到達時間の推定には、無線基地局と基準無線端末局で絶対時刻を保持し、無線基地局と基準無線端末局間で定めた時刻に無線基地局がパルス信号を報知し、基準無線端末局が定めた時刻との差分時間を算出するといった手法を用いることが可能である。
【0035】
また、第1の実施形態における伝搬特性情報である無線信号の強度を、無線信号の強度と到来方向と到達時間の何れか一つ、又はその組み合わせに置き換えた構成としてもよい。
【0036】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態では、周波数の異なる第1の無線システムと第2の無線システムとの2つの無線システムを用いることで、異なる伝搬特性を反映したデータの取得が可能となり、複数の精度の向上が図れる。
【0037】
例えば、2.4GHz帯と5GHz帯のデュアルバンド無線LANシステムを無線システムとして利用する場合、無線端末にとって、同じ場所からアクセスポイント(無線基地局)からの電波を同じ場所で受信することになるが、無線端末の場所によってその両者の伝搬特性に違いが生じ、それぞれの周波数での位置推定に誤差が生じる場合がある。この場合、2.4GHz帯と5GHz帯の両者で伝搬特性を測定して位置推定を行えば、フィンガープリント型でデータベースマッチングする際の次元数を増やすことになり、最尤点の判別要素を増やす効果が得られ、位置推定の精度を向上する効果がある。
【0038】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態を示すものである。この実施形態では、無線信号を送信する複数の信号送信装置として可視光送信器を適用する可視光通信システムと、無線基地局を適用する無線システムの混在する構成が用いられる。図3において、可視光通信システムの可視光送信器群501としては、位置推定対象エリア内に複数の可視光送信器11a、11b、11c、…が点在されている。また、無線システムの無線基地局群502としては、位置推定エリア内に複数の無線基地局12a、12b、12c、…が点在されている。
【0039】
本発明の第2の実施形態では、可視光通信システムの伝搬特性の情報として、入射光の仰角と方向角が用いられる。また、無線システムの伝搬特性の情報として無線信号の強度が用いられる。
【0040】
先ず、本発明の第2の実施形態における位置指紋情報の構築処理について説明する。
【0041】
図3において、基準データ測定装置600は、サーバ装置700の基準データベース720に構築する位置指紋情報を取得するのに用いられる。基準データ測定装置600の動作として、先ず位置推定対象エリア内の任意の一点において、可視光送信器群501を構成する可視光送信器11a、11b、11c、…から到来する可視光を受信し、その仰角、方向角を可視光ID受信部611において測定する。
【0042】
可視光の到来方向(仰角、方位角)は、例えば、複数の受光素子の受光面の上方に遮光領域又は絞りを設け、受光面に可視光が入射したときの複数の受光素子の出力比から算出することが可能である(特開平8−264826号公報、特開平8−340124号公報参照)。また、例えば、撮像素子の撮像面の上方に絞り又はレンズを設け、撮像面に可視光が入射したときに出力が得られた画素の位置から算出することが可能である(特開平10−176910号公報参照)。
【0043】
また、基準データ測定装置600は、当該点で、無線基地局群502を構成する複数の無線基地局12a、12b、12c、…から無線信号を受信し、その無線信号の強度を無線強度測定部612において測定する。
【0044】
基準データ測定装置600は、さらに当該点の位置情報を基準データ位置入力部620より入力し、基準データ生成部630においてそれらの情報を対応付け一つの位置指紋情報とする。そして、基準データ測定装置600は、基準データ送信部640により、測定された位置指紋情報をサーバ装置700に送信する。
【0045】
サーバ装置700は、基準データ測定装置600から送信されてきた位置指紋情報を基準データベース720に蓄積する。基準データ測定装置600は、位置推定対象エリア内において、位置指紋情報の構築を繰り返してサーバ装置700に送信し、サーバ装置700の基準データベース720に、位置指紋情報を蓄積する。
【0046】
図4は、サーバ装置700に構築された基準データベース720の例を示すものである。図4の例では一つの位置指紋情報に対して、位置情報としてXY座標を用い、それに可視光通信システムの可視光送信器11a、11bの仰角、方向角の値と、無線システムの無線信号の強度として3局の無線基地局l2a〜l2cの無線信号の強度とを対応付けている。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態における無線端末800の位置推定処理について説明する。
【0048】
無線端末800は、位置推定対象エリア内を移動する際に、ある任意の点において、可視光送信器群501を構成する複数の可視光送信器11a、11b、11c、…からの可視光信号を受光し、その仰角、方向角を可視光到来方向測定部811において測定する。
【0049】
また、無線端末800は、当該点で、無線基地局群502を構成する複数の無線基地局12a、12b、12c、…から無線信号を受信し、その無線信号の強度を無線強度測定部812において測定する。
【0050】
無線端末800は、測定データ生成部820においてそれらの情報を対応付けて一つの測定情報とする。そして、無線端末800は、測定データ送信部830により、その測定情報をサーバ装置700に送信する。
【0051】
サーバ装置700は、無線端末800からの測定情報を受信すると、位置計算部710において、送信されてきた測定情報について、図4に示した基準データベース720内の位置指紋情報とのマッチングを行う。そして、サーバ装置700の位置計算部710は、基準データベース720の位置指紋情報のうち最も特性が近似している位置指紋情報のXY座標を検出し、このXY座標をサーバ装置700の推定位置とする。位置指紋情報とのマッチングのアルゴリズムは、誤差二乗和が最小となるものを解とするといった、多次元の特徴量の最尤値を求めるさまざまな方法を用いることができる。
【0052】
なお、本発明の第2の実施形態における可視光の到来方向を可視光の強度に置き換えた構成としてもよい。可視光の強度は、受光素子を備えることによって取得することが可能である。
【0053】
また、第2実施形態における可視光の到来方向を可視光の到達時間に置き換えた構成としてもよい。可視光の到達時間は、無線信号の到達時間の推定と同様の手法で推定することが可能である。
【0054】
<第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態を示すものである。この実施形態では、第1の無線システムと第2の無線システムとの2つの無線システムが用いられる。第1の無線システムと第2の無線システムとは、使用する周波数が異なっている。第1の無線システムの無線基地局群901は、位置推定対象エリア内に複数の無線基地局21a、21b、21c、…が点在する。また、第2の無線システムの無線基地局群902は、位置推定対象エリア内に複数の無線基地局22a、22b、22c、…が点在する。
【0055】
この実施形態では、各無線システムの伝搬特性の情報として無線信号の強度が用いられる。この実施形態では、さらに、可視光送信器1301が所定の位置に設けられる。可視光送信器1301は、位置推定対象エリア内に、複数点在されている。可視光送信器1301の位置はあらかじめサーバ装置1100の可視光送信器データベース1130に登録されている。
【0056】
先ず、本発明の第3の実施形態における位置指紋情報の構築処理について説明する。
【0057】
基準データ測定装置1000は、サーバ装置1100の基準データベース1120に蓄積する位置指紋情報を取得するのに用いられる。基準データ測定装置1000の動作として、先ず位置推定対象エリア内の任意の一点において、複数の第1の無線システムを構成する無線基地局群901の複数の無線基地局21a、21b、21c、…からの無線信号を受信し、その無線信号の強度を第1の無線システムの無線強度測定部1011において測定する。
【0058】
また、当該点で、基準データ測定装置1000は、第2の無線システムを構成する無線基地局群902の複数の無線基地局22a、22b、22c、…から無線信号を受信し、その無線信号の強度を第2の無線システムの無線強度測定部1012において測定する。
【0059】
さらに、基準データ測定装置1000は、位置推定対象エリア内に位置が既知の場所に点在させて設置した可視光送信器1301からの信号を可視光ID受信部1020において受信し、可視光送信器のIDを取得する。
【0060】
そして、基準データ生成部1030において、それらの情報を対応付けて一つの位置指紋情報とする。基準データ測定装置1000の基準データ送信部1040は、位置指紋情報をサーバ装置1100に送信する。
【0061】
サーバ装置1100は、可視光送信器データベース1130を有している。この可視光送信器データベース1130には、図6に示すように、可視光IDと、位置情報としてXY座標とが対応付けて保存されている。
【0062】
サーバ装置1100は、基準データ測定装置1000から送信されてきた位置指紋情報を基準データベース1120に蓄積する。このとき、可視光送信器データベース1130を使って、可視光IDをXY位置情報に変換する。基準データ測定装置1000は、位置推定対象エリア内において、位置指紋情報の構築を繰り返してサーバ装置1100に送信し、サーバ装置1100の基準データベース1120に、位置指紋情報を蓄積する。
【0063】
図7は、サーバ装置1100に構築された基準データベース1120の例を示すものである。図7の例では一つの位置指紋情報に対して、X,Y位置情報と、それに第1の無線システムの無線信号の強度として3局の無線基地局21a〜2lcの無線信号の強度と、第2の無線システムの無線信号の強度として3局の無線基地局22a〜22cの無線信号の強度とを対応付けている。XY座標は、前述したように、基準データ測定装置1000から送られてきた可視光IDから、可視光送信器データベース1130を用いて変換される。
【0064】
次に、本発明の第3の実施形態における位置推定処理について説明する。
【0065】
無線端末1200は、位置推定対象エリア内を移動する際に、ある任意の点において、複数の第1の無線システムの通信を構成する無線基地局群901の複数の無線基地局21a、21b、21c、…からの無線信号を受信し、その無線信号の強度を第1の無線システムの無線強度測定部1211において測定する。
【0066】
また、当該点で、無線端末1200は、第2の無線システムを構成する無線基地局群902の複数の無線基地局22a、22b、22c、…から無線信号を受信し、その無線信号の強度を第2の無線強度測定部1212において測定する。測定データ生成部1220においてそれらの情報を対応付けて一つの測定情報とする。そして、無線端末1200は、測定データ送信部1230により、その測定情報をサーバ装置1100に送信する。
【0067】
サーバ装置1100は、無線端末1200からの測定情報を受信すると、位置計算部1110において、送信されてきた測定情報について、図7に示した基準データベース1120内の位置指紋情報とのマッチングを行う。そして、サーバ装置1100の位置計算部1110は、無線端末1200からの測定情報と基準データベース1120内の位置指紋情報とのマッチングの結果、基準データベース1120の位置指紋情報のうち最も特性が近似している位置指紋情報のXY座標を検出し、このXY座標を無線端末1200の位置と推定する。無線端末1200からの測定情報と基準データベース1120内の位置指紋情報とのマッチングのアルゴリズムとしては、誤差二乗和が最小となるものを解とするといった、多次元の特徴量の最尤値を求めるさまざまな方法を用いることができる。
このように、本実施形態の位置推定システムを構築することにより、基準データとなる位置指紋情報を測定する基準データ測定装置1000にのみ可視光ID受信部1020を設けるだけで、無線端末1200には可視光ID受信部を備える必要がなく、位置指紋情報取得時の労力を軽減するという効果を得ることが可能である。
【0068】
なお、この実施形態における可視光送信器データベース1130は、基準データ測定装置1000内に具備する構成でもよい。また、図7の基準データベース1120内のXY位置情報の代わりに可視光IDを記録しておき、無線端末1200の位置推定時に、可視光送信器データベース1130により、可視光IDをXY位置情報に変換する構成としてもよい。
【0069】
なお、可視光送信器1301は、その可視光の照射範囲が他の可視光送信器の可視光の照射範囲と空間的に分離するように設置することとする。これにより、基準データ測定装置1000は、推定対象エリア内の各位置において、単一の可視光送信器1301からの信号のみを受信することが可能となる。
なお、本実施形態では、可視光送信器1301が自身を識別するIDを送信するようにしたが、無線基地局が自身を識別するIDを送信するようにしても良い。この場合、サーバ装置に、無線基地局の識別情報に対応付けて、その無線基地局が設置された位置を示す位置情報を記憶させておくようにすることができる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、互いに異なる周波数の電磁波を用いる複数の信号送信装置毎の伝搬特性情報に応じて位置推定を行っている。この場合、異なる複数の伝搬特性を反映したデータの取得が可能となり、位置推定の精度の向上が図れる。また、位置推定対象エリア内に位置が既知の場所の信号送信装置が自身の識別情報を送信し、識別情報に応じて基準となる位置情報を取得している。これにより、位置指紋情報の検索を容易に行なうことが可能となるとともに、蓄積するデータを構築するための基準情報の入力作業が軽減できる。例えば、予め位置推定対象となるエリアにおいて、受信電界強度や電波到来後方などの伝搬特性に関する情報とその場所の位置情報とを対応付けた情報を、位置指紋情報としてデータベース化する労力軽減の方法として、可視光通信により位置推定システムを用いることにより、屋内で自動的に場所の位置情報を取得することが可能となる。
【0071】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0072】
101 第1の無線システムの無線基地局群
102 第2の無線システムの無線基地局群
200 基準データ測定装置
211 第1の無線システムの無線強度測定部
212 第2の無線システムの無線強度測定部
220 基準データ位置入力部
230 基準データ生成部
240 基準データ送信部
300 サーバ装置
310 位置計算部
320 基準データベース
400 無線端末
411 第1の無線システムの無線強度測定部
412 第2の無線システムの無線強度測定部
420 測定データ生成部
430 測定データ送信部
501 可視光送信器群
502 無線基地局群
600 基準データ測定装置
611 可視光ID受信部
612 無線強度測定部
620 基準データ位置入力部
630 基準データ生成部
640 基準データ送信部
700 サーバ装置
710 位置計算部
720 基準データベース
800 無線端末
811 可視光到来方向測定部
812 無線強度測定部
820 測定データ生成部
830 測定データ送信部
901 第1の無線システムの無線基地局群
902 第2の無線システムの無線基地局群
1000 基準データ測定装置
1011 第1の無線システムの無線強度測定部
1012 第2の無線システムの無線強度測定部
1020 可視光ID受信部
1030 基準データ生成部
1040 基準データ送信部
1100 サーバ装置
1110 位置計算部
1120 基準データベース
1130 可視光送信器データベース
1200 無線端末
1211 第1の無線システムの無線強度測定部
1212 第2の無線システムの無線強度測定部
1220 測定データ生成部
1230 測定データ送信部
1301 可視光送信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置推定対象エリア内に設置され、定められた周波数で無線信号を送信する複数の信号送信装置と、前記信号送信装置から送信される前記無線信号を受信する無線端末と、前記位置推定対象エリア内における前記無線端末の位置を推定するサーバ装置とを備えた位置推定システムであって、
前記複数の信号送信装置は、互いに異なる周波数により前記無線信号を送信し、
前記無線端末は、
前記信号送信装置から受信する前記無線信号の伝搬特性を示す伝搬特性情報を前記サーバ装置に送信する手段を有し、
前記サーバ装置は、
位置推定対象エリア内の定められた位置を示す位置情報と、当該位置において前記複数の信号送信装置から送信される前記無線信号の伝搬特性を示す伝搬特性情報とが対応付けられて記憶された基準データベースと、前記無線端末から送信される前記伝搬特性情報に最も近似する前記伝搬特性情報を前記基準データベースから検出して、検出した前記伝搬特性情報に対応する前記位置情報を読み出す位置計算手段とを有する
ことを特徴とする位置推定システム。
【請求項2】
前記信号送信装置が送信する前記信号は、当該信号送信装置を識別する識別情報を含み、
前記サーバ装置の前記基準データベースには、前記識別情報と、当該識別情報に対応する信号送信装置が設置された位置推定対象エリア内の位置を示す前記位置情報と前記伝搬特性情報とが記憶され、前記位置計算手段は前記信号送信装置から送信される前記無線信号に含まれる前記識別情報に対応する前記位置情報を読み出す
ことを特徴とする請求項1に記載の位置推定システム。
【請求項3】
前記複数の信号送信装置は、電波による無線信号を送信する無線基地局と、可視光による無線信号を送信する可視光送信器とのいずれかまたは双方を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定システム。
【請求項4】
前記無線基地局から送信される電波による前記無線信号の前記伝搬特性情報は、無線信号の強度、到来方向、または到達時間を示す情報のうちいずれかまたはその組み合わせである
ことを特徴とする請求項3に記載の位置推定システム。
【請求項5】
前記可視光送信器から送信される可視光による前記無線信号の前記伝搬特性情報は、入射光の仰角または方向角を示す情報のいずれかまたは双方である
ことを特徴とする請求項3に記載の位置推定システム。
【請求項6】
前記位置推定システムは、
前記信号送信装置から送信される前記無線信号の伝搬特性情報を測定して前記サーバ装置に送信する基準データ測定装置をさらに備え、
前記サーバ装置の前記基準データベースには、
前記基準データ測定装置が前記伝搬特性情報を測定した位置を示す位置情報と、前記基準データ測定装置から送信される前記伝搬特性情報とが対応付けられて記憶される
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の位置推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−197050(P2010−197050A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38626(P2009−38626)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】