説明

位置検出システム

【課題】海洋上においても送信機の位置を正確かつ確実に検出し得る位置検出システムを提供する。
【解決手段】互いに異なる位置に設置されると共に海洋に向けて出力したレーダ信号S2および受信した反射信号S3に基づいて海洋における表層海流の状態を測定する海洋レーダ2A,2Bと、海洋レーダ2A,2Bに通信回線を介して接続されて海洋レーダ2A,2Bによって測定された表層海流の状態に基づく処理を含む所定の処理を実行する基地局3とを備え、海洋レーダ2A,2Bは、海洋上の送信機1から送信された救助信号S1を受信可能に構成されると共に、受信した救助信号S1の発信方位を特定して発信方位を示す方位データD1を出力可能に構成され、基地局3は、海洋レーダ2A,2Bから出力された方位データD1に基づいて救助信号S1の発信位置を検出する位置検出処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋上の送信機の位置を検出する位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の位置検出システムとして、特開平7−38951号公報に開示された携帯電話の位置検出システム(位置検出方法)が知られている。この位置検出システムは、携帯電話機、複数の無線基地局および携帯電話交換局を備えて構成されている。この位置検出システムでは、無線基地局が問い合わせ信号を発信し、この問い合わせ信号に応答して携帯電話機が位置検出用信号を発信する。この場合、各無線基地局によって構成される(囲まれた)エリア内に携帯電話機が存在するときには、各無線基地局が、位置検出用信号を受信してその受信電界強度と携帯電話機の電話番号とを携帯電話交換局に送信する。次いで、携帯電話交換局が、送信された受信電界強度に基づいて携帯電話機の位置を検出する。このように、この位置検出システムでは、携帯電話機の通信に用いられる無線基地局や携帯電話交換局等の既存の設備を利用して携帯電話機の位置を検出することが可能となっている。
【特許文献1】特開平7−38951号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の位置検出システムには、以下の問題点がある。すなわち、この位置検出システムでは、複数の各無線基地局によって囲まれたエリア内に携帯電話機が存在するときに、その携帯電話機の位置を検出することが可能となっている。つまり、この位置検出システムで携帯電話機の位置を検出するためには、検出対象の携帯電話機の周囲に無線基地局が複数(3つ以上)存在している必要があり、無線基地局が存在していない海洋上においてこの位置検出システムを用いて携帯電話機の位置を検出するのは困難である。したがって、船舶の乗組員に携帯端末機を携行させて、仮に海難事故が発生したときに遭難した乗組員が携行している携帯端末機の位置を検出してその乗組員を救助するような使用形態にこの位置検出システムを活用するのは困難である。この場合、海岸付近に複数の無線基地局が設置されているときには、この海岸付近の海域においてこの位置検出システムを活用することは可能である。しかしながら、携帯電話機から発信される位置検出用信号の受信可能距離は比較的短い距離に限られるため、沖合の海域においてこの位置検出システムを活用するのは依然として困難である。さらに、この位置検出システムでは、携帯電話機から送信される位置検出用信号の受信電界強度に基づいて携帯電話機の位置を検出しているため、位置検出精度が比較的低く、特に目標物が少ない海洋上においては、携帯端末機を携行している乗組員をその位置情報に基づいて救助するのは困難である。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、海洋上においても送信機の位置を正確かつ確実に検出し得る位置検出システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の位置検出システムは、互いに異なる位置に設置されると共に海洋に向けて出力したレーダ信号および受信した当該レーダ信号の反射信号に基づいて当該海洋における表層海流の状態を測定する複数の海洋レーダと、当該各海洋レーダに通信回線を介して接続されて前記海洋レーダによって測定された前記表層海流の状態に基づく処理を含む所定の処理を実行する基地局とを備え、前記各海洋レーダは、前記海洋上の送信機から送信された救助信号を受信可能に構成されると共に、前記受信した救助信号の発信方位を特定して当該発信方位を示す方位データを出力可能に構成され、前記基地局は、前記各海洋レーダから出力された前記方位データに基づいて前記救助信号の発信位置を検出する位置検出処理を前記所定の処理として実行する。
【0006】
また、請求項2記載の位置検出システムは、請求項1記載の位置検出システムにおいて、前記海洋レーダは前記表層海流の状態を示す表層海流データを生成して出力し、前記基地局は、前記各海洋レーダから出力された前記表層海流データと前記検出した発信位置とに基づいて当該発信位置の検出時点から所定時間経過後の前記送信機の位置を推定する位置推定処理を前記所定の処理として実行する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の位置検出システムによれば、送信機から送信された救助信号を受信してその救助信号の発信方位を示す方位データを出力する複数の海洋レーダと、その方位データに基づいて救助信号の発信位置を検出する位置検出処理を実行する基地局とを備えたことにより、沖合の海域に存在している送信機から発信された救助信号の発信方位を海洋レーダによって確実かつ正確に特定することができる。したがって、この位置検出システムによれば、無線基地局が存在していない海洋上における携帯電話機の位置を特定することが困難な従来の位置検出システムとは異なり、海岸に設置した複数の海洋レーダから出力される方位データを用いて救助信号の発信位置を確実かつ正確に検出することができる。このため、海難事故が発生したときの遭難者の救助活動のために、この位置検出システムを十分有効に活用することができる。
【0008】
請求項2記載の位置検出システムによれば、基地局が、各海洋レーダから出力された表層海流データと位置検出処理によって検出した発信位置とに基づいて発信位置の検出時点から所定時間経過後の送信機の位置を推定する位置推定処理を実行することにより、電源の消耗や故障によって送信機からの救助信号の送信が停止したとしても、送信機の位置を正確に推定することができる。このため、海難事故が発生したときの遭難者の救助活動のために、この位置検出システムを一層有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る位置検出システムの最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
最初に、位置検出システム100の構成について説明する。図1に示す位置検出システム100は、本発明に係る位置検出システムの一例であって、複数(この例では2つ)の海洋レーダ2A,2B(以下、区別しないときには「海洋レーダ2」ともいう)、および基地局3を備えて、送信機1から送信される救助信号S1の発信位置(つまり送信機1の位置)を検出可能に構成されている。
【0011】
この場合、送信機1は、本発明における送信機の一例であって、図2に示すように、無線通信部11、操作部12および制御部13を備えて構成されている。また、送信機1は、携帯可能に小形に構成されると共に、防水機能を有している。無線通信部11は、制御部13の制御に従い、一例として、3MHz〜300MHz(HF帯およびVHF帯)の範囲内であって、後述する反射信号S3と同じ周波数の救助信号S1を送信する。操作部12は、救助信号S1の送信開始を指示するための操作ボタン(図示せず)を備え、この操作ボタンが操作されたときに操作信号を送信する。制御部13は、操作部12から出力された操作信号に従って無線通信部11に対して救助信号S1の送信を開始させる。
【0012】
海洋レーダ2A,2Bは、図3に示すように、アンテナ21、信号出力装置22、信号受信装置23、通信装置24、記憶装置25および演算・制御装置26を備えてそれぞれ構成されている。この場合、海洋レーダ2A,2Bは、図5に示すように、海岸における互いに異なる位置に離間して設置されている。アンテナ21は、一例として、八木アンテナを4本用いたスタック構造のアンテナであって、高い指向性を有している。また、アンテナ21は、図外の回動機構によって回動させられることにより、その向きを変更可能に構成されている。信号出力装置22は、3MHz〜300MHz(HF帯およびVHF帯)の表層海流測定用のレーダ信号(レーダ波)S2をアンテナ21を介して海洋(海面)に向けて出力(照射)する。信号受信装置23は、海面で反射されるレーダ信号S2の反射信号(反射波)S3をアンテナ21を介して受信する。また、信号受信装置23は、送信機1の無線通信部11から送信された救助信号S1をアンテナ21を介して受信する。
【0013】
通信装置24は、通信回線を介して基地局3の後述する通信装置31と接続され、演算・制御装置26によって生成される後述の方位データD1および表層海流データD2を通信装置31に出力する。また、通信装置24は、通信装置31から出力される後述の制御信号S4を受信する。記憶装置25は、方位データD1および表層海流データD2を記憶する。演算・制御装置26は、通信装置24によって受信された制御信号S4に従い、海洋レーダ2を構成する各装置を制御する。また、演算・制御装置26は、レーダ信号S2および反射信号S3に基づいて海洋における表層海流の状態(表層海流の向きや速度)を測定してその状態を示す表層海流データD2を生成する。さらに、演算・制御装置26は、信号受信装置23によって受信された救助信号S1の発信方位を特定して、その発信方位を示す方位データD1を生成する。この場合、この海洋レーダ2では、半径100km程度の範囲内からの反射信号S3や救助信号S1を確実に受信することが可能となっている。また、この海洋レーダ2では、高い指向性を有するアンテナ21を用いているため、反射信号S3の反射位置の方位や救助信号S1の発信方位を高精度で特定することが可能となっている。
【0014】
基地局3は、図4に示すように、通信装置31、記憶装置32および演算・制御装置33を備えて構成されている。通信装置31は、各海洋レーダ2A,2Bの通信装置24と通信回線を介して接続され、通信装置24から出力される方位データD1や表層海流データD2を受信する。また、通信装置31は、演算・制御装置33から出力される制御信号S4を海洋レーダ2A,2Bに出力する。さらに、通信装置31は、救助機関4(図5参照)に対して、表層海流データD2、並びに後述する発信位置データD3および推定位置データD4を出力する。
【0015】
記憶装置32は、通信装置31によって受信された方位データD1および表層海流データD2を記憶する。また、記憶装置32は、演算・制御装置33によって生成される発信位置データD3および推定位置データD4を記憶する。さらに、記憶装置32は、海洋レーダ2A,2Bが設置されている位置を特定可能な設置位置データD5(例えば、緯度、経度および標高などのデータ)を記憶する。
【0016】
演算・制御装置33は、通信装置31および記憶装置32を制御する。また、演算・制御装置33は、表層海流データ提供処理P2を実行することにより、各海洋レーダ2A,2Bからそれぞれ出力された表層海流データD2を救助機関4に出力する。また、演算・制御装置33は、位置検出処理P4(本発明における所定の処理の一例)を実行することにより、各海洋レーダ2A,2Bからそれぞれ出力された方位データD1、および記憶装置に記憶されている設置位置データD5に基づき、送信機1からの救助信号S1の発信位置を検出すると共に、その発信位置についての発信位置データD3を生成して救助機関4に出力する。さらに、演算・制御装置33は、位置推定処理P5(本発明における所定の処理の他の一例)を実行することにより、各海洋レーダ2A,2Bからそれぞれ出力された表層海流データD2と上記した発信位置とに基づき、発信位置の検出時点から所定時間経過後の送信機1の位置を推定すると共に、その位置(推定位置)についての推定位置データD4を生成して救助機関4に出力する。
【0017】
次に、位置検出システム100の動作について、図面を参照して説明する。
【0018】
この位置検出システム100では、図6に示すように、平常状態(送信機1から救助信号S1が送信されていない状態)において、各海洋レーダ2A,2Bの演算・制御装置26が、基地局3から出力される制御信号S4に従い、表層海流の状態を測定して表層海流についての表層海流データD2を出力する表層海流測定処理P1を所定の時間間隔で繰り返し実行する。具体的には、演算・制御装置26は、信号出力装置22を制御してレーダ信号S2を出力させると共に、図外の回動機構を制御してアンテナ21を所定の角度だけ回動させることによってアンテナ21の向きを変更させる。これによりレーダ信号S2が海洋に向けて出力(照射)される。この際に、レーダ信号S2の一部が、照射の向きとは逆向きに海洋の海面で反射される。次いで、信号受信装置23が反射されたレーダ信号S2の一部、つまり反射信号S3を受信する。続いて、演算・制御装置26は、レーダ信号S2および反射信号S3に基づいて海洋の表層海流の状態を測定してその状態を示す表層海流データD2を生成して、記憶装置25に記憶させる。次いで、演算・制御装置26は、通信装置24を制御して、記憶装置25に記憶させた表層海流データD2を通信回線を介して基地局3の通信装置31に出力する。
【0019】
一方、基地局3では、図6に示すように、各海洋レーダ2A,2Bから出力された表層海流データD2が通信装置31によって受信されたときに、演算・制御装置33が表層海流データ提供処理P2を実行する。この表層海流データ提供処理P2では、演算・制御装置33は、各表層海流データD2を記憶装置32に記憶させると共に、各表層海流データD2を所定の時間間隔でとりまとめて通信装置31を介して救助機関4等の関係機関に出力することによって提供する。
【0020】
ここで、図5に示すように、例えば、船舶の転覆事故が発生して乗組員が海中に転落し、この際に、その乗組員が送信機1の操作部12の操作ボタンを操作したときには、送信機1の制御部13が、操作部12から出力された操作信号に従って無線通信部11に対して救助信号S1の送信を開始させる(救助信号S1の送信開始の時刻を「時刻t1」とする:図6参照)。
【0021】
この際に、海洋レーダ2A,2Bでは、信号受信装置23が救助信号S1を受信し、これに応じて演算・制御装置26は、図6に示すように、上記した表層海流測定処理P1の実行を中断すると共に、方位測定処理P3の実行を開始する。この方位測定処理P3では、演算・制御装置26は、信号受信装置23が救助信号S1を受信したときのアンテナ21の向き(アンテナ21の回動量)に基づいて救助信号S1の発信方位を特定して、その発信方位を示す方位データD1を生成する。次いで、演算・制御装置26は、方位データD1を記憶装置25に記憶させると共に、通信装置24を制御して方位データD1を基地局3に出力させる。続いて、演算・制御装置26は、この方位測定処理P3を繰り返して実行する。
【0022】
一方、基地局3では、図6に示すように、海洋レーダ2から出力された方位データD1が通信装置31によって受信されたときに、演算・制御装置33が位置検出処理P4の実行を開始する。この位置検出処理P4では、演算・制御装置33は、方位データD1を記憶装置32に記憶させる。次いで、演算・制御装置33は、海洋レーダ2A,2Bの双方からの方位データD1を受信した時点で、それらの各方位データD1および設置位置データD5を記憶装置32から読み出す。次いで、演算・制御装置33は、海洋レーダ2Aによって特定された発信方位と海洋レーダ2Bによって特定された発信方位とが交差する位置、つまり救助信号S1の発信位置X1(図5参照)の緯度および経度を各方位データD1および設置位置データD5に基づいて検出する。続いて、演算・制御装置33は、検出した発信位置X1の緯度および経度を示す発信位置データD3を生成して記憶装置32に記憶させると共に、その発信位置データD3を通信装置31を介して救助機関4等の関係機関に出力する。以後、演算・制御装置33は、新たな方位データD1が出力される度に、この位置検出処理P4を繰り返して実行する。
【0023】
一方、救助機関4では、基地局3から出力された発信位置データD3に基づいて発信位置X1の緯度および経度を特定すると共に、その発信位置X1が含まれる海域を担当する救助船4aに対して、発信位置データD3を救助指令と共に無線送信することにより、救助船4aを発信位置X1に向かわせる。
【0024】
ここで、図6に示すように、例えば、時刻t1から所定時間経過した時刻t2の時点で電源の消耗や故障によって送信機1からの救助信号S1の送信が停止したとき、つまり海洋レーダ2A,2Bの信号受信装置23による救助信号S1の受信が停止したときには、演算・制御装置26が、方位測定処理P3の実行を中断すると共に、表層海流測定処理P1の実行を開始(再開)する。
【0025】
一方、基地局3では、図6に示すように、海洋レーダ2A,2Bからの方位データD1の出力が停止し、方位データD1に代えて表層海流データD2の出力が開始されたときに、演算・制御装置33が、位置検出処理P4の実行を中断すると共に、位置推定処理P5の実行を開始する。この位置推定処理P5では、演算・制御装置33は、表層海流データD2を記憶装置32に記憶させると共に、最後に記憶させた発信位置データD3を記憶装置32から読み出す。次いで、演算・制御装置33は、読み出した発信位置データD3と出力された表層海流データD2とに基づき、最後に発信位置X1を検出した時点(救助信号S1の送信が停止した時刻t2の直前の時点)から所定時間経過後の時刻t3(同図参照)における送信機1の位置を推定して、その推定位置X2(図5参照)の緯度および経度を示す推定位置データD4を生成する。続いて、演算・制御装置33は、推定位置データD4を、記憶装置32に記憶させると共に通信装置31を介して救助機関4等の関係機関に出力する。
【0026】
この際に、救助機関4では、上記の救助船4aに対して推定位置データD4を無線送信する。以後、基地局3は、新たな表層海流データD2が出力される度に位置推定処理P5を実行して推定位置データD4を救助機関4に出力し、救助機関4は、新たな推定位置データD4が出力される度にその推定位置データD4を救助船4aに無線送信する。
【0027】
一方、信号受信装置23による救助信号S1の受信が再開したときには、海洋レーダ2A,2Bの演算・制御装置26は、上記した方位測定処理P3の実行を再開して方位データD1を出力し、基地局3の演算・制御装置33は、上記した位置検出処理P4を再開する。
【0028】
このように、この位置検出システム100によれば、送信機1から送信された救助信号S1を受信してその救助信号S1の発信方位を示す方位データD1を出力する2つの海洋レーダ2A,2Bと、その方位データD1に基づいて救助信号S1の発信位置を検出する位置検出処理P4を実行する基地局3とを備えたことにより、沖合の海域に存在している送信機1から発信された救助信号S1の発信方位を海洋レーダ2によって確実かつ正確に特定することができる。したがって、この位置検出システム100によれば、無線基地局が存在していない海洋上における携帯電話機の位置を特定することが困難な従来の位置検出システムとは異なり、海岸に設置した複数の海洋レーダ2から出力される方位データD1を用いて救助信号S1の発信位置を確実かつ正確に検出することができる。このため、海難事故が発生したときの遭難者の救助活動のために、この位置検出システム100を十分有効に活用することができる。
【0029】
また、この位置検出システム100によれば、基地局3が、各海洋レーダ2A,2Bから出力された表層海流データD2と位置検出処理P4によって検出した発信位置X1とに基づいて発信位置X1の検出時点から所定時間経過後の送信機1の位置を推定する位置推定処理P5を実行することにより、電源の消耗や故障によって送信機1からの救助信号S1の送信が停止したとしても、送信機1の位置を正確に推定することができる。このため、海難事故が発生したときの遭難者の救助活動のために、この位置検出システム100を一層有効に活用することができる。
【0030】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、2つの海洋レーダ2A,2Bを備えた例について上記したが、3つ以上の海洋レーダ2を備えた構成を採用することもできる。また、回動機構によって回動させられるアンテナ21を備えた海洋レーダ2を例に挙げて説明したが、アンテナ21に代えて、フェーズドアレイ式のアンテナや、DBF式のアンテナ、若しくは信号処理による方探を利用したアンテナを用いる構成を採用することもできる。また、遭難者の救助活動のために位置検出システム100を活用する例について上記したが、このような活用方法には限定されず、海上の浮遊物の位置を検出する際にも位置検出システム100を活用することができる。具体的には、例えば、直ちには回収することが困難な大形の浮遊物が海上に存在するときに、船舶との衝突を防止するためにその浮遊物に送信機1を取り付けてその位置を追跡し、付近を航行する船舶に危険情報を提供する場合において、この位置検出システム100を有効に活用することができる
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】位置検出システム100の構成を示す構成図である。
【図2】送信機1の構成を示す構成図である。
【図3】海洋レーダ2A,2Bの構成を示す構成図である。
【図4】基地局3の構成を示す構成図である。
【図5】位置検出システム100による位置検出方法を概念的に示す概念図である。
【図6】海洋レーダ2A,2Bおよび基地局3によって実行される各処理の順序を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 救難用送信機
2A,2B 海洋レーダ
3 基地局
100 位置検出システム
D1 方位データ
D2 表層海流データ
S1 救助信号
S2 レーダ信号
S3 反射信号
P4 位置検出処理
P5 位置推定処理
X1 発信位置
X2 推定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる位置に設置されると共に海洋に向けて出力したレーダ信号および受信した当該レーダ信号の反射信号に基づいて当該海洋における表層海流の状態を測定する複数の海洋レーダと、当該各海洋レーダに通信回線を介して接続されて前記海洋レーダによって測定された前記表層海流の状態に基づく処理を含む所定の処理を実行する基地局とを備え、
前記各海洋レーダは、前記海洋上の送信機から送信された救助信号を受信可能に構成されると共に、前記受信した救助信号の発信方位を特定して当該発信方位を示す方位データを出力可能に構成され、
前記基地局は、前記各海洋レーダから出力された前記方位データに基づいて前記救助信号の発信位置を検出する位置検出処理を前記所定の処理として実行する位置検出システム。
【請求項2】
前記海洋レーダは前記表層海流の状態を示す表層海流データを生成して出力し、
前記基地局は、前記各海洋レーダから出力された前記表層海流データと前記検出した発信位置とに基づいて当該発信位置の検出時点から所定時間経過後の前記送信機の位置を推定する位置推定処理を前記所定の処理として実行する請求項1記載の位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−222465(P2009−222465A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65254(P2008−65254)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】