説明

位置検出方法及び装置、エンコーダ装置、並びに露光装置

【課題】回折格子を用いて相対移動量を計測する際に、格子パターン面の法線方向の絶対位置を検出する。
【解決手段】原点検出装置11Xは、第1部材6に設けられ、X方向を周期方向とする反射型の回折格子12Xと、第1計測光MX1を回折格子12Xに第1の入射角で入射させ、回折光と第1参照光MR1との第1干渉光を検出する第1干渉ヘッド14Xと、第3計測光MX3を回折格子12Xにその第1の入射角と異なる第2の入射角で入射させ、回折光と第3参照光MR3との第3干渉光を検出する第2干渉ヘッド15Xと、その第1、第3干渉光の検出信号からZ方向の相対位置を求める第3演算部41Cと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対移動する部材間の相対位置を検出する位置検出技術、それらの部材間の相対移動量を計測するエンコーダ装置、エンコーダ装置を備えた露光装置、及び露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を生産するためのフォトリソグラフィ工程で用いられる、いわゆるステッパー又はスキャニングステッパーなどの露光装置においては、従来、露光対象の基板を移動するステージの位置計測はレーザ干渉計によって行われていた。ところが、レーザ干渉計では、計測用ビームの光路が長く、かつ変化するため、その光路上の雰囲気の温度揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が無視できなくなりつつある。
【0003】
そこで、例えばステージに固定された回折格子にレーザ光よりなる計測光を照射し、回折格子から発生する回折光と他の回折光又は参照光との干渉光を光電変換して得られる検出信号から、その回折格子が設けられた部材(ステージ等)の相対移動量を計測する、いわゆるエンコーダ装置(干渉型エンコーダ)も使用されつつある(例えば特許文献1参照)。このエンコーダ装置は、レーザ干渉計に比べて計測値の短期的安定性に優れるとともに、レーザ干渉計に近い分解能が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/029757号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエンコーダ装置は、回折格子の周期方向及び回折格子の格子パターン面の法線方向に関して、所定の距離又はこの整数分の1を単位として相対移動量を計測可能である。すなわち、その回折格子が設けられた部材の検出部が設けられた部材に対する格子パターン面の法線方向の相対位置は、その所定の距離の範囲内では絶対位置として計測可能であるが、その所定の距離を超える範囲では絶対位置として計測することはできなった。そのため、例えば電源オンにした直後に、その2つの部材の格子パターン面の法線方向の相対位置を予め定められた初期位置等からの絶対位置として設定することができないため、絶対位置として設定するためには例えばリミットスイッチのような絶対位置を検出する装置が別途必要であった。
【0006】
本発明の態様は、このような課題に鑑み、回折格子を用いて計測を行う際に、相対移動量を計測する際に絶対位置を計測できる範囲を超えて、回折格子の格子パターン面の法線方向の絶対位置を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、第1部材に対して相対移動する第2部材の相対位置を検出する位置検出装置が提供される。この位置検出装置は、その第1部材及びその第2部材の一方に設けられ、少なくとも第1方向を周期方向とする格子パターンを有する反射型の回折格子と、第1計測光をその回折格子の格子パターン面にその第1方向に関して第1の入射角で入射させ、その回折格子からの第1回折光と第1参照光との第1干渉光を検出する第1干渉計と、第2計測光をその回折格子の格子パターン面にその第1方向に関して第2の入射角で入射させ、その回折格子からの第2回折光と第2参照光との第2干渉光を検出する第2干渉計と、その第1干渉光の検出信号及びその第2干渉光の検出信号からその第1部材とその第2部材とのその格子パターン面の法線方向の第1相対位置を求める第1検出部と、を備え、その第1計測光の波長とその第2計測光の波長、及びその第1の入射角とその第2の入射角の少なくとも一方が異なるものである。
【0008】
また、第2の態様によれば、第1部材に対して相対移動する第2部材の相対位置を検出する位置検出方法が提供される。この位置検出方法は、その第1部材及びその第2部材の一方に設けられ、少なくとも第1方向を周期方向とする格子パターンを有する反射型の回折格子の格子パターン面に第1計測光をその第1方向に関して第1の入射角で入射させ、その回折格子からの第1回折光と第1参照光との第1干渉光を検出することと、第2計測光をその回折格子の格子パターン面にその第1方向に関して第2の入射角で入射させ、その回折格子からの第2回折光と第2参照光との第2干渉光を検出することと、その第1干渉光の検出信号及びその第2干渉光の検出信号からその第1部材とその第2部材とのその格子パターン面の法線方向の第1相対位置を求めることと、を含み、その第1計測光の波長とその第2計測光の波長、及びその第1の入射角とその第2の入射角の少なくとも一方が異なるものである。
【0009】
また、第3の態様によれば、第1部材に対して少なくとも相対移動する第2部材の相対移動量を計測するエンコーダ装置が提供される。このエンコーダ装置は、第1の態様による位置検出装置と、その第1干渉光の検出信号又はその第2干渉光の検出信号からその第1部材とその第2部材とのその格子パターン面の法線方向の相対移動量を計測する第3検出部と、を備え、その第3検出部は、その第1検出部で検出されるその第1相対位置を用いてその相対移動量の計測値のプリセットを行うものである。
【0010】
また、第4の態様によれば、パターンを被露光体に露光する露光装置が提供される。この露光装置は、フレームと、その被露光体を支持するとともにそのフレームに対して少なくとも第1方向に相対移動可能なステージと、その第1方向へのそのステージの相対位置又は相対移動量を計測するための第1の態様による位置検出装置又は第3の態様によるエンコーダ装置と、を備えるものである。
【0011】
また、第5の様態によれば、リソグラフィ工程を含み、そのリソグラフィ工程では、第4の態様による露光装置を用いて物体を露光するデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、第1計測光の波長と第2計測光の波長、及び第1の入射角と第2の入射角の少なくとも一方が異なるため、第1干渉光の検出信号から格子パターン面の法線方向の相対移動量を計測する際に絶対位置を計測できる第1長さと、第2干渉光の検出信号からその法線方向の相対移動量を計測する際に絶対位置を計測できる第2長さとは異なっている。そして、その第1及び第2干渉光の検出信号から求められるその法線方向の第1相対位置の周期は、その第1長さ及び第2長さよりも長くなる。従って、回折格子を用いて計測を行う際に、相対移動量を計測する際に絶対位置を計測できる範囲(第1長さ又は第2長さ)を超えて、第1部材と第2部材との間の回折格子の格子パターン面の法線方向の絶対位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係るエンコーダを示す斜視図である。
【図2】(A)は図1中の第1干渉計の2回目の回折光を示す斜視図、(B)は第1干渉計の回折光を示す正面図である。
【図3】(A)は図1の第2干渉計の回折光を示す正面図、(B)は第2干渉計において格子パターン面の高さが相対的に変化した場合を示す図、(C)は第2干渉計から得られるコントラスト信号と、第1及び第2干渉計から得られる差分信号を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図5】図4のウエハステージに設けられた回折格子及び複数の検出ヘッドの配置の一例を示す平面図である。
【図6】図4の露光装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】電子デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態につき図1〜図3を参照して説明する。図1は本実施形態に係るX軸及びZ軸のエンコーダ10Xの要部を示す斜視図である。図1において、一例として、第1部材6に対して第2部材7は2次元平面内で相対移動可能に配置され、第2部材7の互いに直交する相対移動可能な2つの方向に平行にX軸及びY軸を取り、X軸及びY軸によって規定される平面(XY面)に直交する軸をZ軸として説明する。本実施形態において、第1部材6と第2部材7はZ方向にも或る程度相対移動可能である。また、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの角度をそれぞれθx方向、θy方向、及びθz方向の角度とも呼ぶ。
【0015】
図1において、エンコーダ10Xは、第1部材6の上面に固定された、XY面に平行な平板状のX軸の回折格子12Xと、第2部材7の底面に固定されて回折格子12Xに計測光を照射するX軸の第1干渉ヘッド14X(第1検出ヘッド)及び第2干渉ヘッド15X(第2検出ヘッド)と、干渉ヘッド14X,15Xに計測用のレーザ光を供給するレーザ光源16A,16Bと、第1干渉ヘッド14Xから出力される検出信号を処理して第1部材6に対する第2部材7のX方向及びZ方向の相対移動量を求める移動量検出部42Xと、2つの干渉ヘッド14X,15Xから出力される検出信号を処理して第1部材6に対する第2部材7のZ方向の絶対位置の原点を検出する原点信号演算部43Xと、を有する。移動量検出部42Xは第1演算部41A及び第2演算部41Bを有する。また、回折格子12X、2つの干渉ヘッド14X,15X、レーザ光源16A,16B、及び原点信号演算部43Xを含んで原点検出装置11Xが構成されている。従って、エンコーダ10Xは、原点検出装置11Xを含んでいる。さらに、第1部材6に対する第2部材7のY方向の相対移動量を求めるY軸のエンコーダ(不図示)も備えられている。
【0016】
回折格子12XのXY面に平行な格子パターン面12Xbには、X方向に所定の周期(ピッチ)を持ち、位相型でかつ反射型の格子パターン12Xaが形成されている。格子パターン12Xaの周期は、一例として100nm〜4μm程度(例えば1μm周期)である。格子パターン12Xaは、例えばホログラム(例えば感光性樹脂に干渉縞を焼き付けたもの)として、又はガラス板等に機械的に溝等を形成して反射膜を被着することで作製可能である。さらに、格子パターン面12Xbは、保護用の平板ガラスで覆われていてもよい。なお、回折格子12Xの代わりに、X方向、Y方向に周期的に形成された格子パターンを持つ2次元の回折格子を使用してもよい。
【0017】
レーザ光源16A,16Bは、例えばHe−Neレーザ又は半導体レーザ等よりなり、一例として偏光方向(X方向及びZ方向)が互いに直交するとともに互いに周波数(波長)が異なる第1及び第2の直線偏光のレーザ光よりなる2周波ヘテロダイン光XR1,XR2を射出する。レーザ光源16A,16Bは、第1及び第2の直線偏光のレーザ光から分岐した2つの光束の干渉光を光電変換して得られる基準周波数の信号(基準信号)を移動量検出部42Xの第1演算部41A及び原点信号演算部43Xの第4演算部41Dに供給する。なお、レーザ光源16Bを省略して、レーザ光源16Aから出力されるヘテロダイン光から分岐したレーザビームを不図示の引き回し光学系を介して第2干渉ヘッド15Xに供給してもよい。さらに、ヘテロダイン干渉方式の外にホモダイン干渉方式も使用可能である。
【0018】
レーザ光源16Aから射出されたヘテロダイン光XR1は、第1干渉ヘッド14Xのハーフミラー18Aで2分割され、一方の光束はミラー18Bで反射されて偏光ビームスプリッタ(以下、PBSという。)28に入射し、他方の光束はそのままPBS28に入射する。その2つの光束はX方向に離れてY軸に平行にPBS28に入射する。その一方の光束は、PBS28のPBS面(偏光ビームスプリッタ面)28aを透過するP偏光の第1計測光MX1とPBS面28aで反射されるS偏光の第1参照光MR1とに分割される。その他方の光束は、PBS面28aを透過するP偏光の第2計測光MX2とPBS面28aで反射されるS偏光の第2参照光MR2とに分割される。
【0019】
PBS28は第2部材7の底面に固定され、PBS28の+X方向の側面にY方向に隣接するように第1及び第2のコーナキューブ29A,29Bが固定され、PBS28の+Y方向の側面及び−X方向の側面にそれぞれ1/4波長板30A,30Bが固定されている。PBS28の−X方向の側面に対向するように、第2部材7下に、ZY面に平行な反射面を持つミラー35が固定されている。また、PBS28の+Y方向側に第2部材7によって支持されるように、第1計測光MX1用の第1の傾斜ミラー32X、及び第2計測光MX2用の第2の傾斜ミラー34Xが配置されている。ハーフミラー18A、ミラー18B、PBS28、コーナキューブ29A,29B、1/4波長板30A,30B、ミラー35、及び傾斜ミラー32X,34Xを含んで第1干渉ヘッド14Xが構成されている。また、第1干渉ヘッド14Xは、PBS28の−Y方向に配置された2つの偏光板39A,39Bと、偏光板39A,39Bを通過した干渉光を受光するフォトダイオード等の光電センサ40XA,40XBとを有する。
【0020】
第1干渉ヘッド14Xにおいて、PBS28のPBS面28aを透過した計測光MX1,MX2は、それぞれ1/4波長板30Aを介して傾斜ミラー32X,34Xの平面の反射面に入射する。それらの反射面で反射された計測光MX1,MX2は、格子パターン面12Xb上のX方向に離れた照射位置に交差するように入射する。
図2(B)は図1中の傾斜ミラー32X,34Xの反射面等を示す図である。図2(B)において、傾斜ミラー32Xの反射面に入射した計測光MX1は、その反射面で反射されて、回折格子12Xの格子パターン面12Xbに、θy方向(X方向)の入射角が、次のように格子パターン12Xaに対する+1次回折光のリトロー角(Littrow角)φLIとなって入射する。
【0021】
+1次回折光のリトロー角φLIは、入射する計測光MX1と、この計測光MX1による回折格子12Xからの+1次回折光DX1とが平行になるときの計測光MX1の入射角である。なお、図2(B)では、分かり易いように、計測光MX1等と回折光DX1等とは僅かに角度を変えて示している。格子パターン12XaのX方向の周期をp、計測光MX1の波長をλとすると、リトロー角φLIは次の関係を満たす。
【0022】
2p・sin φLI=λ …(1)
一例として、回折格子12Xの周期pを1000nm、計測光MX1の波長λを633nmとすると、リトロー角φLIはほぼ18.5°になる。
このように計測光MX1がリトロー角φLIで入射すると、格子パターン面の高さが変化しても+1次回折光DX1の横シフトが発生しないため、干渉光の強度が変化しないという利点がある一方で、0次光によるノイズ光の問題が生じる恐れがある。そこで、実際には、0次光の影響を軽減するために、計測光MX1の入射角はリトロー角φLIに対して所定角度、例えば0.5〜1.5°程度ずらしてもよい。
【0023】
格子パターン面12Xbに入射する計測光MX1のθx方向(Y方向)の入射角は0でもよいが、計測光MX1のY方向の入射角も例えばその所定角度の1/2程度でずらしてもよい。計測光MX1による+1次回折光DX1は、計測光MX1と平行に(又はほぼ平行に)傾斜ミラー32Xに戻される。
また、傾斜ミラー34Xの反射面に入射した計測光MX2は、その反射面で反射されて格子パターン面12Xbに、θy方向(X方向)の入射角が、計測光MX1と対称になるように角度(−φLI)で入射する。なお、計測光MX2の入射角も計測光MX1と対称に角度(−φLI)から所定角度ずらしてもよい。傾斜ミラー34Xから入射角(−φLI)で格子パターン12Xaに入射した計測光MX2による回折格子12Xからの−1次回折光EX1は、計測光MX2と平行に(又はほぼ平行に)傾斜ミラー34Xに戻される。
【0024】
格子パターン12Xaからの回折光DX1及びEX1は、それぞれ傾斜ミラー32X,34Xの反射面でほぼ−Y方向に反射されて、図1の1/4波長板30Aを介してS偏光になってPBS28に入射し、PBS面28aで反射される。PBS面28aで反射された回折光DX1,EX1は、それぞれコーナキューブ29B,29Aで反射されてPBS面28aに戻される。
【0025】
一方、PBS28のPBS面28aで反射された参照光MR1,MR2は、図1に点線で示すようにそれぞれ1/4波長板30Bを介してミラー35の平面の反射面に入射する。そして、その反射面で反射された参照光MR1,MR2は、1/4波長板30Bを介してP偏光になってPBS28に入射して、PBS面28aを透過し、それぞれコーナキューブ29B,29Aで反射されてPBS面28aに戻される。
【0026】
図2(A)に示すように、コーナキューブ29B,29Aで反射されてから、PBS面28aに戻された回折光DX1,EX1は、それぞれPBS面28aで再度反射された後、1/4波長板30Aを介して傾斜ミラー32X,34Xの反射面の低い位置に入射する。傾斜ミラー32X,34Xで反射された回折光DX1,EX1は、格子パターン面12Xb上でそれぞれ図1の照射位置からほぼY方向に離れた照射位置に対称に入射する。
【0027】
図2(B)において、傾斜ミラー32Xの反射面の低い位置に入射した回折光DX1は、その反射面で反射されて、回折格子12Xに、計測光MX1と平行に入射角φLI(リトロー角)で入射する。なお、回折光DX1の入射角もその角度φLIから所定角度ずらしてもよい。回折光DX1による格子パターン12Xaからの+1次回折光DX2(計測光MX1に対する実質的な+2次回折光)は、回折光DX1と平行に(又はほぼ平行に)傾斜ミラー32Xに戻される。
【0028】
また、傾斜ミラー34Xの反射面の低い位置に入射した回折光EX1は、その反射面で反射されて、回折格子12Xに、計測光MX2と平行に(回折光DX1と対称に)入射角(−φLI)で入射する。なお、回折光EX1の入射角もその角度から所定角度ずらしてもよい。回折光EX1による格子パターン12Xaからの−1次回折光EX2(計測光MX2に対する実質的な−2次回折光)は、回折光EX1と平行に(又はほぼ平行に)傾斜ミラー34Xに戻される。
【0029】
格子パターン12Xaからの回折光DX2及びEX2は、それぞれ傾斜ミラー32X,34Xの反射面でほぼ−Y方向に反射されて、図2(A)の1/4波長板30Aを介してP偏光になってPBS28に入射し、PBS面28aを透過する。PBS面28aを透過した回折光DX2,EX2はそれぞれ偏光板39A,39Bに入射する。
一方、コーナキューブ29B,29Aで反射されてから、PBS面28aに戻された参照光RX1,RX2は、それぞれPBS面28aを再度透過した後、1/4波長板30Bを介してミラー35の反射面の低い位置に入射する。そして、ミラー35の反射面で反射された参照光RX1,RX2は、1/4波長板30Bを介してS偏光となってPBS28に入射し、PBS面28aで反射される。PBS面28aで反射された参照光RX1,RX2は、それぞれ偏光板39A,39Bに入射して、回折光DX2,EX2と同軸に合成される。そして、回折光DX2(計測光MX1)及び参照光RX1よりなる+1次の第1干渉光(ヘテロダインビーム)が光電センサ40XAで受光され、回折光EX2(計測光MX2)及び参照光RX2よりなる−1次の第1干渉光(ヘテロダインビーム)が光電センサ40XBで受光される。なお、計測光MX1,MX2と参照光RX1,RX2との光路長をほぼ等しくするために、ミラー35の反射面に段差を設け、PBS28とミラー35との距離を調整してもよい。また、第1干渉ヘッド14Xの構成は任意であり、要は計測光MX1,MX2を互いにほぼ対称な入射角で回折格子12Xに照射できればよい。
【0030】
図1において、光電センサ40XA,40XBはそれぞれ入射する干渉光を光電変換して得られる検出信号SXA,SXB(ヘテロダイン信号)を移動量検出部42Xの第1演算部41Aに供給する。一例として、第1演算部41Aは、検出信号SXAとレーザ光源16から供給される基準信号とから、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量とX方向への相対移動量との加重和(a・X+b1・Z)(a,b1は既知の係数)を求め、求めた値を第2演算部41B及び第3演算部41Cに供給する。さらに、第1演算部41Aは、検出信号SXBとその基準信号とから、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量とX方向への相対移動量との加重値の差(−a・X+b1・Z)を求め、求めた値を第2演算部41Bに供給する。第2演算部41Bは、その加重和と加重値の差とを用いて、第1部材6に対する第2部材7のX方向への相対移動量(X)及び第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量(Z)を求める。さらに、第2演算部41Bは、後述のように原点信号演算部43Xから供給されるリセット信号SRに応じてそのZ方向の相対移動量(Z)を0にリセットし、不図示の制御部から供給されるリセット信号に応じてそのX方向の相対移動量(X)を0にリセットする。なお、リセットの代わりに0以外の値をプリセットしてもよい。X方向、Z方向の相対移動量の検出分解能は例えば0.5〜0.1nm程度である。
【0031】
本実施形態の第1干渉ヘッド14Xでは、最終的に2回目の+1次回折光DX2と参照光RX1との干渉光、及び2回目の+1次回折光EX2と参照光RX2との干渉光を検出しているため、相対移動量の検出分解能(検出精度)を1/2に向上(微細化)できる。また、2回目の回折光を用い、かつ±1次回折光を用いることによって、第1部材6と第2部材7とのθz方向の相対回転角による計測誤差を低減できる。
【0032】
次に、レーザ光源16Bから射出されたヘテロダイン光XR2は、第2干渉ヘッド15XのPBS(偏光ビームスプリッタ)27に入射して、PBS27のPBS面(偏光ビームスプリッタ面)で反射されるS偏光の第3計測光MX3とPBS面を透過するP偏光の第3参照光MR3とに分割される。
PBS27は第2部材7の底面に固定され、PBS27の−Y方向の側面にコーナキューブ29Dが固定され、PBS27の+X方向側に第2部材7によって支持されるように、斜め下方を向いてコーナキューブ29Cが配置されている。PBS27、コーナキューブ29C,29D、PBS27の+Y方向に配置された偏光板39C、及び偏光板39Cを通過した干渉光を受光するフォトダイオード等の光電センサ40XCを含んで第2干渉ヘッド15Xが構成されている。
【0033】
第2干渉ヘッド15Xにおいて、PBS27のPBS面で反射された計測光MX3は、回折格子12Xの格子パターン面12Xbにほぼ垂直に入射する。
図3(A)は図1中の第2干渉ヘッド15Xを示す正面図である。図3(A)において、0次光の影響を軽減するためには、計測光MX3は、格子パターン面12Xbに対して微小な入射角(例えば0.5〜1°程度)をもって入射してもよい。この計測光MX3によって格子パターン12Xaからθy方向(X方向)に回折角φ01で+1次回折光FX1が発生する。格子パターン12Xaの周期p及び計測光MX3の波長λを用いて、回折角φ01は次のようになる。
【0034】
p・sin φ01=λ …(2)
この回折角φ01は式(1)で規定されるリトロー角φLIより大きい。一例として、周期pを1000nm、計測光MX3の波長λを633nmとすると、回折角φ01はほぼ39.3°で、リトロー角φLIのほぼ2倍になる。本実施形態では、第2干渉ヘッド15Xから回折格子12Xに入射する計測光MX3の入射角(ほぼ0)は、第1干渉ヘッド14Xから回折格子12Xに入射する計測光MX1の入射角(ほぼリトロー角φLI)より小さく、計測光MX3によって発生する回折光FX1の回折角φ01は、計測光MX1によって発生する回折光DX1の回折角(ほぼリトロー角φLI)よりも大きい。
【0035】
計測光MX3による+1次回折光FX1は、コーナキューブ29Cで対称にかつ平行に反射されて、計測光MX3の入射位置に対して−X方向にずれた位置で回折格子12Xの格子パターン面12Xbにほぼ入射角φ01で入射する。このため、回折格子12Xの格子パターン面12Xbからほぼ垂直上方に、+1次回折光FX1の−1次回折光FX2が発生し、発生した回折光FX2はPBS27に戻る。
【0036】
一方、図1において、PBS27のPBS面を透過した参照光MR3は、コーナキューブ29Dで反射されてPBS面を透過する。また、PBS27に戻された回折光FX2はそのPBS面で反射されて参照光MR3と同軸に合成される。そして、回折光FX2(計測光MX3)及び参照光RX3よりなる第2干渉光(ヘテロダインビーム)が偏光板39Cを介して光電センサ40XCで受光される。なお、計測光MX3と参照光RX3との光路長をほぼ等しくするために、PBS27とコーナキューブ29Dとの間に光路引き回し用の光学系を配置してもよい。
【0037】
光電センサ40XCは入射する干渉光を光電変換して得られる検出信号SXC(ヘテロダイン信号)を原点信号演算部43Xの第4演算部41D及び第5演算部41Eに供給する。一例として、第4演算部41Dは、検出信号SXCとレーザ光源16Bから供給される基準信号とから、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量とX方向への相対移動量との加重和(a・X+b2・Z)(a,b2は既知の係数)を求め、求めた値を第3演算部41Cに供給する。第3演算部41Cは、第1演算部41Aから供給される加重和(a・X+b1・Z)と第4演算部41Dから供給される加重和(a・X+b2・Z)との差分を1周期(ここでは2π(rad)とする)内の値に変換した差分信号ΔFZ(詳細後述)を求め、この差分信号FZを原点信号出力部41Fに供給する。
【0038】
第5演算部41Eは、検出信号SXCのうちの交流信号の割合を示すコントラスト信号SCを求め、このコントラスト信号SCを原点信号出力部41Fに供給する。第1演算部41A、第3演算部41C、第4演算部41D、及び原点信号出力部41Fから原点信号演算部43Xが構成されている。
本実施形態において、図3(B)に示すように、回折格子12Xの格子パターン面12Xbが第2干渉ヘッド15Xに対してZ方向にδzだけ相対的に変位したとする。このとき、格子パターン面12Xbは2点鎖線で示す位置A1に移動するため、第2干渉ヘッド15Xから回折格子12Xに入射する計測光による+1次回折光FX1の光路は点線の光路A2にシフトする。そして、+1次回折光FX1によって回折格子12Xからほぼ垂直上方に発生する−1次回折光FX2の光路はX方向にδxだけ点線の光路A3までシフトする。この結果、PBS27で参照光MR3と回折光FX2とを合成したときに、参照光MR3の断面A4と回折光FX2の断面A5とが重なった部分の面積の割合が低下する。また、断面A4と断面A5とが重なった部分の光束を光電変換した信号がビート信号(交流信号)であり、その重なった部分の面積が小さくなると図1の検出信号SC中の交流信号の成分が小さくなり、コントラスト信号SCも小さくなる。
【0039】
この結果、図3(C)に示すように、回折格子12Xの格子パターン面12Xbの第2干渉ヘッド15Xに対するZ方向の相対位置が所定のZcであるときに、図1の第5演算部41Eから出力されるコントラスト信号SCは最大になり、Z方向の相対位置がZcからはずれるとコントラスト信号SCは小さくなる。そこで、一例として、図1の原点信号出力部41Fでは、そのコントラスト信号SCが最大値なるときの格子パターン面12XbのZ方向の相対位置(Zc)をおおまかな原点Zcとする。この大まかな原点Zcは、仮にエンコーダ10Xの電源をオフにした後でも、ほぼ同じ位置をある程度の再現性で特定できるという意味で、絶対位置とみなすことができる。
【0040】
次に、第3演算部41Cで求める差分信号ΔFZにつき説明する。まず、第3演算部41Cでは、第1演算部41Aから供給される加重和(a・X+b1・Z)と第4演算部41Dから供給される加重和(a・X+b2・Z)との差分を位相に変換した原差分信号ΔFZRを次のように求める。
ΔFZR=2π{(a・X+b2・Z)−(a・X+b1・Z)}
=2π(b2−b1)Z …(3)
ここで、係数b1は、第1干渉ヘッド14Xを用いて検出される加重和(a・X+b1・Z)のZ方向の周期(以下、フリンジ長という)Fz1を用いて次のようになる。同様に、係数b2は、第2干渉ヘッド15Xを用いて検出される加重和(a・X+b2・Z)のZ方向の周期(以下、フリンジ長という)Fz2を用いて次のようになる。
【0041】
b1=1/Fz1 …(4A)、 b2=1/Fz2 …(4B)
フリンジ長Fz1,Fz2とは、対応する加重和(検出信号)を位相で表したときに、その加重和の値が1周期である2π(rad)変化するときのZ方向の相対位置の変化量である。一例として、回折格子12Xの周期pを1000nm、計測光MX1〜MX3の波長λを633nmとすると、フリンジ長Fz1,Fz2(ここではFz1>Fz2)はほぼ次のような値になる。
【0042】
Fz1=189(nm) …(5A)、 Fz2=178(nm) …(5B)
式(4A),(4B)を式(3)に代入すると次式が得られる。
ΔFZR=2π(1/Fz2−1/Fz1)Z
=2π{(Fz1−Fz2)/(Fz1・Fz2)}Z
=2π(1/Fs)Z …(6)
なお、式(6)中の合成フリンジ長Fsは次式で表される。合成フリンジ長Fsは原差分信号ΔFZRが1周期である2π変化するときのZ位置の変化量(周期)である。
【0043】
Fs=Fz1・Fz2/(Fz1−Fz2) …(7)
Fz1,Fz2として式(5A),(5B)の値を式(7)に代入すると、合成フリンジ長Fsは次のようにほぼ個々のフリンジ長Fz1,Fz2の16倍程度(ほぼ3μm)になる。
Fs≒3000(nm)=3(μm) …(8)
さらに、第3演算部41Cでは、原差分信号ΔFZRの値が0以上で2πより小さい範囲になるように、原差分信号ΔFZRに±i・2π(iは整数)を加算することで、次の差分信号ΔFZ(0≦ΔFZ<2π)を得る。差分信号ΔFZは原点信号出力部41Fに供給される。
【0044】
ΔFZ=2π(1/Fs)Z±i・2π …(9)
図3(C)に示すように、差分信号ΔFZは、Z位置(回折格子12Xと第2干渉ヘッド15XとのZ方向の相対位置)に関して周期Fs(合成フリンジ長)の周期関数となる。そこで、例えば不図示の駆動機構を介して、第2部材7と第1部材6とのZ方向の相対位置を変化させながら、原点信号出力部41Fでは、コントラスト信号SCが最大値になるときのZ位置(大まかな原点Zc)に最も近く、差分信号ΔFZが0になるとき(Z位置がZsになるとき)にリセット信号SRを第2演算部41Bに出力する。第2演算部41Bでは、そのリセット信号SRに同期して、第1干渉ヘッド14Xの検出信号から求められたZ位置を0に設定する。これは、差分信号ΔFZが0になるときのZ位置の値ZsをZ位置の原点(絶対位置の原点)とすることを意味する。これ以降に計測されるZ方向の相対位置(相対移動量)は、それまでのZ位置Zsを原点としたZ方向の絶対位置とみなすことができる。
【0045】
本実施形態では、差分信号ΔFZの周期(合成フリンジ長Fs)は第1干渉ヘッド14Xの検出信号のZ方向の周期(フリンジ長Fz1)の10倍以上であり、その合成フリンジ長Fsの範囲内では、差分信号ΔFZからZ位置の絶対位置を求めることができる。また、コントラスト信号SCを用いることによって、特定の周期の差分信号ΔFZを検出することができるため、その合成フリンジ長Fsを超える範囲内で絶対位置の原点(Zs)を求めることができる。なお、一例として、第2部材7と第1部材6とのZ方向の相対位置を設定する駆動機構が、合成フリンジ長Fsよりも微細な精度でZ方向の相対位置を設定できる場合には、コントラスト信号SCを使用する必要はない。
【0046】
また、本実施形態のY軸のエンコーダは、図1のX軸のエンコーダ10Xとほぼ同じ構成であり、Y軸のエンコーダの回折格子12Y1,12Y2(図5参照)は、回折格子12Xを90°回転した構成であり、Y軸の検出ヘッドは第1干渉ヘッド14X及び第2干渉ヘッド15Xを90°回転した構成である。
本実施形態の効果等は以下の通りである。本実施形態のX軸のエンコーダ10Xは、第1部材6と第2部材7とのX方向及びZ方向の相対移動量を計測するエンコーダ装置であり、エンコーダ10Xは、第1部材6に対して相対移動する第2部材7の相対位置を検出する原点検出装置11X(位置検出装置)を備えている。そして、原点検出装置11Xは、第1部材6に設けられ、少なくともX方向を周期方向とする格子パターン12Xaを有する反射型の回折格子12Xと、計測光MX1を回折格子12Xの格子パターン面12XbにX方向に関して第1の入射角(ほぼリトロー角φLI)で入射させ、回折格子12Xからの回折光DX2と参照光MR1との+1次の第1干渉光を検出する第1干渉ヘッド14X(第1干渉計)と、計測光MX3を回折格子12Xの格子パターン面12XbにX方向に関してその第1の入射角と異なる第2の入射角(ほぼ0°)で入射させ、回折格子12Xからの回折光FX2と参照光MR3との第2干渉光を検出する第2干渉ヘッド15X(第2干渉計)と、第1干渉ヘッド14Xの検出信号(a・X+b1・Z)及び第2干渉ヘッド15Xの検出信号(a・X+b2・Z)から第1部材6と第2部材7との格子パターン面12Xbの法線方向(Z方向)の相対位置を表す差分信号ΔFZを求める原点信号演算部43X(第1検出部)と、を備えている。計測光MX1,MX3の波長は互いに実質的に等しい。
【0047】
また、本実施形態の原点検出装置11Xを用いた位置検出方法は、第1部材6に設けられた回折格子12Xの格子パターン面12Xbに第1干渉ヘッド14Xから計測光MX1をX方向(回折格子12Xの周期方向)に関して第1の入射角で入射させ、回折格子12Xからの回折光DX2と参照光MR1との+1次の第1干渉光を検出するステップと、第2干渉ヘッド15Xから計測光MX3を回折格子12Xの格子パターン面12XbにX方向に関して第1の入射角と異なる第2の入射角で入射させ、回折格子12Xからの回折光FX2と参照光MR3との第2干渉光を検出するステップと、原点信号演算部43Xがその+1次の第1干渉光の検出信号及びその第2干渉光の検出信号から第1部材6と第2部材7との格子パターン面12Xbの法線方向(Z方向)の相対位置(第1相対位置)を表す差分信号ΔFZを求めるステップとを含んでいる。
【0048】
本実施形態によれば、第1の入射角と第2の入射角とが異なるため、+1次の第1干渉光の検出信号からZ方向の相対移動量(第2相対位置)を計測する際に絶対位置を計測できる範囲であるフリンジ長Fz1(第1長さ)と、第2干渉光の検出信号からZ方向の相対移動量(第3相対位置)を計測する際に絶対位置を計測できる範囲であるフリンジ長Fz2(第2長さ)とは異なっている。そして、その第1及び第2干渉光の検出信号から求められる差分信号ΔFZが表すZ方向の相対位置(第1相対位置)の周期である合成フリンジ長Fsは、そのフリンジ長Fs1及びFs2よりも長くなる。従って、回折格子12Xを用いて計測を行う際に、相対移動量を計測する際に絶対位置を計測できる範囲(フリンジ長Fs1,Fs2)を超えて、回折格子12Xの格子パターン面12Xbの法線方向の絶対位置を検出できる。
【0049】
また、原点検出装置11Xは、第2干渉ヘッド15Xで得られる回折光FX2の横ずれ量(シフト量)から第1部材6と第2部材7とのZ方向の相対位置(第4相対位置)に対応するコントラスト信号SCを出力する第5演算部41E(第2検出部)を備え、原点信号演算部43X(第1検出部)は、その第5演算部41Eから出力されるコントラスト信号SC(第4相対位置)が例えば最大値になるときの周期内で、その差分信号ΔFZが所定の値(例えば0)になるときのZ位置(第1相対位置)Zsを求めている。例えばこのZ位置Zsを基準にして相対移動量を計測することによって、差分信号ΔFZの1周期(合成フリンジ長Fs)を超える範囲でZ方向の絶対位置を求めることができる。
【0050】
なお、Z方向の相対位置を合成フリンジ長Fsを超える範囲で検出するために、回折光FX2の横ずれ量を検出する以外の方法を用いる他のZ位置センサ(例えば静電容量センサ又は近接スイッチ等)を用いてもよい。
また、エンコーダ10Xは、その+1次の第1干渉光の検出信号と、第1干渉ヘッド14Xから回折格子12Xに照射される計測光MX2によって発生する−1次回折光EX2と参照光MR2との−1次の第1干渉光の検出信号とから第1部材6と第2部材7とのZ方向の相対移動量を計測する第2演算部41B(第3検出部)を備え、第2演算部41Bは、原点信号演算部43Xで検出されるZ位置Zs(第1相対位置)を用いてそのZ方向の相対移動量の計測値のプリセット(0へのリセットを含む)を行う。これによって、2つの部材6,7間の相対移動量をそのZ位置Zsを基準とした絶対位置として計測できる。
【0051】
また、エンコーダ10Xは、+1次の第1干渉光及び−1次の第1干渉光の検出信号から2つの部材6,7間の回折格子12Xの周期方向(X方向)の相対移動量も求めている。従って、第1干渉ヘッド14Xの構成をさらに複雑化することなく、X方向及びZ方向の相対移動量を求めることができる。
なお、本実施形態では、第1干渉ヘッド14X及び第2干渉ヘッド15Xはそれぞれ回折格子12Xから2回目の回折で発生する回折光と参照光との干渉光を検出しているが、干渉ヘッド14X,15Xは回折格子12Xから1回目の回折で発生する回折光と参照光との干渉光を検出してもよい。また、第1干渉ヘッド14Xと第2干渉ヘッド15Xとは回折格子12Xの周期方向(X方向)にずらして配置してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、第1干渉ヘッド14Xはほぼリトロー角で計測光MX1を回折格子12Xに入射させ、第2干渉ヘッド15Xは計測光MX3をほぼ垂直に回折格子12Xに入射させ、同じ次数(±1次)の回折光を検出している。この他の構成として、第1干渉ヘッド14X,15Xとして、回折格子12Xに対する計測光MX1,MX3の入射角がX方向に関するリトロー角よりも小さい角度で異なっているような干渉計を使用してもよい。要は、Z方向の相対位置の周期であるフリンジ長Fz1,Fz2が互いに異なっていれば合成フリンジ長Fsが長くなるため、上記の実施形態のように広い範囲で絶対位置を計測できる。
【0053】
また、第2干渉ヘッド15Xとして、第1干渉ヘッド14Xと同じ構成の干渉計を使用し、計測光MX3として計測光MX1と波長が例えば±10%程度異なるレーザ光(ヘテロダイン光)を使用して、その計測光MX3をほぼリトロー角で回折格子12Xに入射させてもよい。第1干渉ヘッド14Xとして、第2干渉ヘッド15Xと同じ構成の干渉計を使用し、計測光MX1として計測光MX3と波長が例えば±10%程度異なるレーザ光(ヘテロダイン光)を使用して、その計測光MX1をほぼ垂直に回折格子12Xに入射させてもよい。これらの場合にも、Z方向の相対位置の周期であるフリンジ長Fz1,Fz2が互いに異なるため、上記の実施形態のように広い範囲で絶対位置を計測できる。
【0054】
[第2の実施形態]
第2の実施形態につき図4〜図6を参照して説明する。図4は、本実施形態に係るエンコーダ装置を備えた露光装置EXの概略構成を示す。露光装置EXは、一例としてスキャニングステッパーよりなる走査露光型の投影露光装置である。露光装置EXは、投影光学系PL(投影ユニットPU)を備えており、以下、投影光学系PLの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに直交する面(ほぼ水平面に平行な面)内でレチクルRとウエハWとが相対走査される方向にY軸を、Z軸及びY軸に直交する方向にX軸を取って説明する。
【0055】
露光装置EXは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示される照明系110、及び照明系110からの露光用の照明光(露光光)IL(例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光、固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波など)により照明されるレチクルR(マスク)を保持するレチクルステージRSTを備えている。さらに、露光装置EXは、レチクルRから射出された照明光ILをウエハW(基板)に投射する投影光学系PLを含む投影ユニットPU、ウエハWを保持するウエハステージWSTを含むステージ装置195、及び制御系等(図6参照)を備えている。
【0056】
レチクルRはレチクルステージRSTの上面に真空吸着等により保持され、レチクルRのパターン面(下面)には、回路パターンなどが形成されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含む図6のレチクルステージ駆動系111によって、XY平面内で微少駆動可能であると共に、走査方向(Y方向)に指定された走査速度で駆動可能である。
【0057】
レチクルステージRSTの移動面内の位置情報(X方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む)は、レーザ干渉計よりなるレチクル干渉計116によって、移動鏡115(又は鏡面加工されたステージ端面)を介して例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、図6のコンピュータよりなる主制御装置120に送られる。主制御装置120は、その計測値に基づいてレチクルステージ駆動系111を制御することで、レチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
【0058】
図4において、レチクルステージRSTの下方に配置された投影ユニットPUは、鏡筒140と、鏡筒140内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を有する投影光学系PLとを含む。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率β(例えば1/4倍、1/5倍などの縮小倍率)を有する。照明系110からの照明光ILによってレチクルRの照明領域IARが照明されると、レチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介して照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの像が、ウエハ(半導体ウエハ)Wの一つのショット領域の露光領域IA(照明領域IARと共役な領域)に形成される。
【0059】
また、露光装置EXは、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子である先端レンズ191を保持する鏡筒140の下端部の周囲を取り囲むように、局所液浸装置108の一部を構成するノズルユニット132が設けられている。ノズルユニット132は、露光用の液体Lq(例えば純水)を供給するための供給管131A及び回収管131Bを介して、液体供給装置186及び液体回収装置189(図6参照)に接続されている。なお、液浸タイプの露光装置としない場合には、上記の局所液浸装置108は設けなくともよい。
【0060】
図4において、ウエハステージWSTは、不図示の複数の例えば真空予圧型空気静圧軸受(エアパッド)を介して、ベース盤112のXY面に平行な上面112aに非接触で支持されている。また、ウエハステージWSTは、例えば平面モータ、又は直交する2組のリニアモータを含むステージ駆動系124(図6参照)によってX方向及びY方向に駆動可能である。露光装置EXは、レチクルRのアライメントを行う空間像計測系(不図示)、ウエハWのアライメントを行うアライメント系AL(図6参照)、照射系90a及び受光系90bよりなりウエハWの表面の複数箇所のZ位置を計測する斜入射方式の多点のオートファオーカスセンサ90(図6参照)、及びウエハステージWSTの位置情報を計測するためのエンコーダ装置8Bを備えている。
【0061】
ウエハステージWSTは、X方向、Y方向に駆動されるステージ本体191と、ステージ本体191上に搭載されたウエハテーブルWTBと、ステージ本体191内に設けられて、ステージ本体191に対するウエハテーブルWTB(ウエハW)のZ方向の位置、及びθx方向、θy方向のチルト角を相対的に微小駆動するZ・レベリング機構とを備えている。ウエハテーブルWTBの中央の上部には、ウエハWを真空吸着等によってほぼXY平面に平行な吸着面上に保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。
【0062】
また、ウエハテーブルWTBの上面には、ウエハホルダ上に載置されるウエハの表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面(又は保護部材)を有し、かつ外形(輪郭)が矩形でその中央部にウエハホルダ(ウエハの載置領域)よりも一回り大きな円形の開口が形成された高平面度の平板状のプレート体128が設けられている。
なお、上述の局所液浸装置108を設けたいわゆる液浸型の露光装置の構成にあっては、さらにプレート体128は、図5のウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の平面図に示されるように、その円形の開口を囲む、外形(輪郭)が矩形の表面に撥液化処理が施されたプレート部(撥液板)128aと、プレート部128aを囲む周辺部128eとを有する。周辺部128eの上面に、プレート部128aをY方向に挟むようにX方向に細長い1対のX軸の第1及び第2の回折格子12X1,12X2が配置され、プレート部128aをX方向に挟むようにY方向に細長い1対のY軸の回折格子12Y1,12Y2が配置されている。X方向を周期方向とする反射型の回折格子12X1,12X2は図1の回折格子12Xと同じ構成であり、Y方向を周期方向とする回折格子12Y1,12Y2は回折格子12Xを90°回転した構成である。
【0063】
また、図4において、投影ユニットPUを支持するフレーム(不図示)に連結部材(不図示)を介してXY面にほぼ平行な平板状の計測フレーム150が支持されている。計測フレーム150の底面に、投影光学系PLをY方向に挟むように、図1のX軸の第1干渉ヘッド14Xと同じ構成の複数の第1干渉ヘッド14Xが固定され、投影光学系PLをX方向に挟むように、第1干渉ヘッド14Xを90°回転した構成の複数のY軸の第1干渉ヘッド14Yが固定されている(図5参照)。また、図5に示すように、投影光学系PLを挟む1対の第1干渉ヘッド14XにY方向に近接して図1の第2干渉ヘッド15Xと同じ構成の第2干渉ヘッド15Xが固定され、投影光学系PLを挟む1対のY軸の第1干渉ヘッド14YにX方向に近接して第2干渉ヘッド15Xを90°回転した構成の第2干渉ヘッド15Yが固定されている。また、複数の第1干渉ヘッド14X,14Y及び第2干渉ヘッド15X,15Yにレーザ光(計測光及び参照光)を供給するための複数のレーザ光源(不図示)も備えられている。
【0064】
図5において、投影光学系PLからの照明光でウエハWを露光している期間では、常に複数の第1干渉ヘッド14Xのいずれか2つがX軸の回折格子12X1,12X2に対向し、複数の検出ヘッド14Yのいずれか2つがY軸の回折格子12Y1,12Y2に対向するように構成されている。各第1干渉ヘッド14Xは、回折格子12X1又は12X2に計測光を照射し、回折格子12X1,12X2から発生する回折光と参照光との干渉光の検出信号を対応する移動量検出部42X(図6)に供給する。移動量検出部42Xでは、図1の移動量検出部42Xと同様に、ウエハステージWSTと計測フレーム150とのX方向、Z方向の相対位置(相対移動量)を例えば0.5〜0.1nmの分解能で求めて計測値切り替え部80Xに供給する。
【0065】
また、図6において、第1干渉ヘッド14X及び第2干渉ヘッド15Xの検出信号からZ方向の絶対位置を求める原点信号演算部43X(図1の原点信号演算部43Xと同じ演算部)が設けられ、必要に応じて原点信号演算部43Xからのリセット信号で移動量検出部42XのZ方向の相対移動量がリセットされる。計測値切り替え部80Xでは、回折格子12X1,12X2に対向している第1干渉ヘッド14Xに対応する移動量検出部42Xから供給される相対位置の情報を主制御装置120に供給する。
【0066】
また、各検出ヘッド14Yは、回折格子12Y1又は12Y2に計測光を照射し、回折格子12Y1,12Y2から発生する回折光と参照光との干渉光の検出信号を対応する計測演算部42Y(図6)に供給する。計測演算部42Yでは、移動量検出部42Xと同様に、ウエハステージWSTと計測フレーム150とのY方向、Z方向の相対位置(相対移動量)を例えば0.5〜0.1nmの分解能で求めて計測値切り替え部80Yに供給する。また、図6において、第1干渉ヘッド14Y及び第2干渉ヘッド15Yの検出信号からZ方向の絶対位置を求める原点信号演算部43Y(図1の原点信号演算部43Xと同じ構成の演算部)が設けられ、必要に応じて原点信号演算部43Yからのリセット信号で移動量検出部42YのZ方向の相対移動量がリセットされる。計測値切り替え部80Yでは、回折格子12Y1,12Y2に対向している検出ヘッド14Yに対応する計測演算部42Yから供給される相対位置の情報を主制御装置120に供給する。
【0067】
複数の第1干渉ヘッド14X、第2干渉ヘッド15X、レーザ光源(不図示)、移動量検出部42X、原点信号演算部43X、及びX軸の回折格子12X1,12X2からX軸のエンコーダ10XBが構成され、複数の検出ヘッド14Y、第2干渉ヘッド15Y、レーザ光源(不図示)、計測演算部42Y、原点信号演算部43Y、及びY軸の回折格子12Y1,12Y2からY軸のエンコーダ10YBが構成されている。そして、X軸のエンコーダ10XB、Y軸のエンコーダ10YB、及び計測値切り替え部80X,80Yからエンコーダ装置8Bが構成されている。主制御装置120は、エンコーダ装置8Bから供給される相対位置の情報に基づいて、計測フレーム150(投影光学系PL)に対するウエハステージWSTのX方向、Y方向、Z方向の位置、及びθz方向の回転角等の情報を求め、この情報に基づいてステージ駆動系124を介してウエハステージWSTを駆動する。
【0068】
そして、露光装置EXの露光時には、先ずレチクルR及びウエハWのアライメントが行われる。その後、レチクルRへの照明光ILの照射を開始して、投影光学系PLを介してレチクルRのパターンの一部の像をウエハWの表面の一つのショット領域に投影しつつ、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを投影光学系PLの投影倍率βを速度比としてY方向に同期して移動(同期走査)する走査露光動作によって、そのショット領域にレチクルRのパターン像が転写される。その後、ウエハステージWSTを介してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作と、上記の走査露光動作とを繰り返すことによって、液浸法でかつステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの全部のショット領域にレチクルRのパターン像が転写される。
【0069】
この際に、第1干渉ヘッド14X,14Yにおいては、計測光及び回折光の光路長はレーザ干渉計に比べて短いため、第1干渉ヘッド14X,14Yを用いた計測値に対する空気揺らぎの影響が非常に小さい。従って、本実施例のエンコーダ装置8Bは、レーザ干渉計と比較して、空気が揺らぐ程度の短い期間における計測安定性(短期安定性)が格段に優れているため、レチクルRのパターン像をウエハWに高精度に転写できる。さらに、第2干渉ヘッド15X,15Y及び原点信号演算部43X,43Y(原点検出装置)を備えているため、例えば露光装置EXの稼働開始時(例えば電源オン時)に、エンコーダ装置8Bで計測されるZ方向の相対移動量を再現性のある状態でリセットできる。従って、例えば機械的なリミットスイッチ等を用いることなく、エンコーダ装置8Bの運用を容易に行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態では、計測フレーム150側に干渉ヘッド14X,14Y,15X,15Y等を配置し、ウエハステージWST側に回折格子12X1,12Y1等を配置している。この他の構成として、計測フレーム150側に回折格子12X1,12Y1等を配置し、ウエハステージWST側に干渉ヘッド14X,14Y,15X,15Y等を配置してもよい。
【0071】
また、上記の実施形態の露光装置EX又は露光方法を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図7に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたレチクル(マスク)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光装置(露光方法)によりレチクルのパターンを基板(感光基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0072】
言い換えると、このデバイスの製造方法は、上記の実施例の露光装置EX(露光方法)を用いてレチクルのパターンの像を基板(ウエハ)に転写し、その基板を現像するリソグラフィ工程と、そのパターンの像が転写されたその基板をそのパターンの像に基づいて加工する工程(ステップ224のエッチング等)とを含んでいる。この際に、上記の実施形態によれば、エンコーダ装置8Bを用いて露光装置のウエハステージWSTの位置を高精度に制御できるため、電子デバイスを高精度に製造できる。
【0073】
なお、本発明は、上述の走査露光型の投影露光装置(スキャナ)の他に、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ等)にも適用できる。さらに、本発明は、液浸型露光装置以外のドライ露光型の露光装置にも同様に適用することができる。
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグフィ工程を用いて製造する際の、露光装置にも適用することができる。
【0074】
また、上記の実施形態のエンコーダ10X等は、露光装置以外の検査装置又は計測装置等の検査又は加工対象の物体用の光学系を備えた光学装置において、その物体の相対移動量を計測するために適用することができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
EX…露光装置、R…レチクル、W…ウエハ、MX1〜MX3…計測光、RX1〜RX3…参照光、10X…X軸及びZ軸のエンコーダ、11X…原点検出装置、12X…X軸の回折格子、14X…第1干渉ヘッド、15X…第2干渉ヘッド、16A,16B…レーザ光源、40XA〜40XC…光電センサ、41C…第3演算部、42X…移動量検出部、43X…原点信号演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に対して相対移動する第2部材の相対位置を検出する位置検出装置であって、
前記第1部材及び前記第2部材の一方に設けられ、少なくとも第1方向を周期方向とする格子パターンを有する反射型の回折格子と、
第1計測光を前記回折格子の格子パターン面に前記第1方向に関して第1の入射角で入射させ、前記回折格子からの第1回折光と第1参照光との第1干渉光を検出する第1干渉計と、
第2計測光を前記回折格子の格子パターン面に前記第1方向に関して第2の入射角で入射させ、前記回折格子からの第2回折光と第2参照光との第2干渉光を検出する第2干渉計と、
前記第1干渉光の検出信号及び前記第2干渉光の検出信号から前記第1部材と前記第2部材との前記格子パターン面の法線方向の第1相対位置を求める第1検出部と、を備え、
前記第1計測光の波長と前記第2計測光の波長、及び前記第1の入射角と前記第2の入射角の少なくとも一方が異なることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第1干渉光の検出信号から求められる前記法線方向の第2相対位置の周期をFz1、前記第2干渉光の検出信号から求められる前記法線方向の第3相対位置の周期をFz2(Fz2<Fz1)として、
前記第1検出部は前記第1相対位置を次の1周期の範囲内で求めることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
1周期=Fz1・Fz2/(Fz1−Fz2)
【請求項3】
前記第1計測光の波長と前記第2計測光の波長とは実質的に同じであり、
前記第1の入射角と前記第2の入射角とが異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1計測光は前記格子パターン面に前記第1方向に関してほぼリトロー角で入射し、
前記第2計測光は前記格子パターン面に前記第1方向に関してほぼ垂直に入射し、
前記第1回折光及び前記第2回折光の次数が同じであることを特徴とする請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第1の入射角と前記第2の入射角とは前記回折格子の前記第1方向に関するリトロー角よりも小さい角度で異なっていることを特徴とする請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第1回折光及び前記第2回折光の少なくとも一方の横ずれ量から前記第1部材と前記第2部材との前記格子パターン面の法線方向の第4相対位置を検出する第2検出部を備え、
前記第1検出部は、前記第2検出部で検出される前記第4相対位置に応じた周期内で、前記第1相対位置を求めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第1部材と前記第2部材との前記格子パターン面の法線方向の第4相対位置を求めるセンサを備え、
前記第1検出部は、前記センサで求められる前記第4相対位置に応じた周期内で、前記第1相対位置を求めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項8】
第1部材に対して少なくとも相対移動する第2部材の相対移動量を計測するエンコーダ装置であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の位置検出装置と、
前記第1干渉光の検出信号又は前記第2干渉光の検出信号から前記第1部材と前記第2部材との前記格子パターン面の法線方向の相対移動量を計測する第3検出部と、を備え、
前記第3検出部は、前記第1検出部で検出される前記第1相対位置を用いて前記相対移動量の計測値のプリセットを行うことを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項9】
第1部材に対して相対移動する第2部材の相対位置を検出する位置検出方法であって、
前記第1部材及び前記第2部材の一方に設けられ、少なくとも第1方向を周期方向とする格子パターンを有する反射型の回折格子の格子パターン面に第1計測光を前記第1方向に関して第1の入射角で入射させ、前記回折格子からの第1回折光と第1参照光との第1干渉光を検出することと、
第2計測光を前記回折格子の格子パターン面に前記第1方向に関して第2の入射角で入射させ、前記回折格子からの第2回折光と第2参照光との第2干渉光を検出することと、
前記第1干渉光の検出信号及び前記第2干渉光の検出信号から前記第1部材と前記第2部材との前記格子パターン面の法線方向の第1相対位置を求めることと、を含み、
前記第1計測光の波長と前記第2計測光の波長、及び前記第1の入射角と前記第2の入射角の少なくとも一方が異なることを特徴とする位置検出方法。
【請求項10】
前記第1干渉光の検出信号から求められる前記法線方向の第1相対位置の周期をFz1、前記第2干渉光の検出信号から求められる前記法線方向の第2相対位置の周期をFz2(Fz2<Fz1)として、
前記第1相対位置を次の1周期の範囲内で求めることを特徴とする請求項9に記載の位置検出方法。
1周期=Fz1・Fz2/(Fz1−Fz2)
【請求項11】
前記第1計測光の波長と前記第2計測光の波長とは実質的に同じであり、
前記第1計測光は前記格子パターン面に前記第1方向に関してほぼリトロー角で入射し、
前記第2計測光は前記格子パターン面に前記第1方向に関してほぼ垂直に入射し、
前記第1回折光及び前記第2回折光の次数が同じであることを特徴とする請求項9又は10に記載の位置検出方法。
【請求項12】
パターンを被露光体に露光する露光装置であって、
フレームと、
前記被露光体を支持するとともに前記フレームに対して相対移動可能なステージと、
前記フレームに対する前記ステージの相対位置を検出するための請求項1〜7のいずれか一項に記載の位置検出装置と、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項13】
パターンを被露光体に露光する露光装置であって、
フレームと、
前記被露光体を支持するとともに前記フレームに対して相対移動可能なステージと、
前記フレームに対する前記ステージの相対移動量を計測するための請求項8に記載のエンコーダ装置と、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項14】
リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程で、請求項12又は13に記載の露光装置を用いて物体を露光することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−101084(P2013−101084A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245983(P2011−245983)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】