位置検出方法
【課題】位置が未知の通信装置が、少なくとも3つの位置が既知の通信装置と通信して、通信装置との距離を少なくとも3つ得ることができない場合であっても、位置が未知の通信装置の位置を検出する。
【解決手段】位置検出システム10は、位置が既知の通信装置P0、P1、P2、P3、位置が未知の通信装置Q4、Q5、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12、Q13、Q14、Q15、処理装置12、および記憶装置14を含み、領域16に存在する位置が未知の通信装置の位置を検出する。各通信装置は、受信した電波の強度や電波の遅延を測定し、処理装置12に送る。処理装置12は、測定値から通信装置間の距離を求め、この距離を用いて、一方の位置が既知の通信装置から、他方の位置が既知の通信装置まで、位置が未知の通信装置を経由する最短経路を作成する。また処理装置12は、この最短経路、および距離を用いて位置が未知の通信装置の位置を検出する。
【解決手段】位置検出システム10は、位置が既知の通信装置P0、P1、P2、P3、位置が未知の通信装置Q4、Q5、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12、Q13、Q14、Q15、処理装置12、および記憶装置14を含み、領域16に存在する位置が未知の通信装置の位置を検出する。各通信装置は、受信した電波の強度や電波の遅延を測定し、処理装置12に送る。処理装置12は、測定値から通信装置間の距離を求め、この距離を用いて、一方の位置が既知の通信装置から、他方の位置が既知の通信装置まで、位置が未知の通信装置を経由する最短経路を作成する。また処理装置12は、この最短経路、および距離を用いて位置が未知の通信装置の位置を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置が未知の通信装置の位置を検出する方法に関し、とくに通信装置間の距離を用いて位置を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の進展により無線通信が利用されるようになってきている。無線通信には、例えばアクセスポイントを用いる無線LAN と、無線機器が相互に通信してゆくマルチホップ通信を用いたアドホックネットワークとが存在する。アドホックネットワークは、例えばPDA (Personal Digital Assistant) や携帯電話やノートブック・コンピュータ等の無線通信手段を含む通信装置によって形成され、アクセスポイントを必要としないネットワークである。しかし、アドホックネットワークを含む無線通信では、各通信装置の位置を把握することができないという問題を有していた。
【0003】
特許文献1には、ホップ数を用いることにより、位置が未知である通信装置の位置を検出する技術が開示されている。また特許文献2には、位置が既知の複数のアクセスポイントから、位置が未知の通信装置の位置を測定する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−356677号公報
【特許文献2】特開平11−178041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、各通信装置のおおまかな位置を把握するため、例えば1つの通信装置の周囲に多数の通信装置が存在する場合等に、ある通信装置を特定することができないという問題を有していた。また特許文献2では、位置を検出するために、すべての通信装置がアクセスポイントと必ず通信する必要がある。しかし、必ずしもすべての通信装置が、アクセスポイントのような位置が既知の通信装置と通信できるわけではない。よって、例えば3つ以上のアクセスポイントと通信できない通信装置の位置を検出することができないという問題を有していた。
【0005】
本発明はこのような従来技術の欠点を解消し、1つの通信装置の周囲に多数の通信装置が存在する場合等であっても位置を特定することができ、また位置が既知である通信装置と通信できない通信装置が存在してもこの通信装置の位置を検出することが可能な位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために本発明は、位置が既知の装置の位置座標、および隣り合う通信装置間の距離を用いて、位置が未知の通信装置の位置座標を検出する位置検出方法である。
【0007】
より具体的に説明すると、本発明では、位置が既知の通信装置の位置座標を少なくとも2つ登録する。次に隣り合う通信装置間の距離を求める。この距離は、電波の強度や電波の遅延から求めることが可能である。次にこの求められた距離を基にして、位置を登録した一方の通信装置から他方の通信装置までの、位置が未知の通信装置を介した最短経路を作成する。
【0008】
この最短経路とは、経由する通信装置の数が最も少なく、かつこの通信装置を経由した際の距離が最も短い経路である。次にこの最短経路を形成した一方の通信装置を基準とした直交座標を考え、この直交座標の一方の軸が、最短経路に対してなす角度を求める。この求められた角度、および距離を用いることで、位置が未知の通信装置の位置座標を求めることが可能である。
【0009】
この一方の軸が、最短経路に対してなす角度は、最短経路を形成するそれぞれの通信装置と、この通信装置と隣り合う通信装置との距離情報を用いることで求めることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隣り合う通信装置との距離を求め、この距離を基に、位置が既知の通信装置から通信装置までの、位置が未知の通信装置を経る最短経路を作成し、この最短経路、および求められた距離を用いて位置が未知の通信装置の位置を検出するため、通信装置間の距離を求めれば、例えば位置が既知の通信装置との距離が1つしかわからない場合であっても、位置が未知の通信装置の位置を検出することが可能である。よって例えば、位置が未知の通信装置が、位置が既知の通信装置3つと通信してこれらとの距離を求めることができない場合であっても、位置を検出することが可能になる。また電波の遅延や強度を用いて隣り合う通信装置間の距離を求めることで、位置が既知の通信装置の周囲に位置が未知の通信装置が多数存在する場合であっても各無線装置の正確な位置を検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に添付図面を参照して本発明による位置検出方法、および位置検出システムの実施例を詳細に説明する。図1は、本発明による位置検出システム10の実施例を概念的に示した図である。図1において位置検出システム10は、位置が未知の通信装置Q4、Q5、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12、Q13、Q14、Q15、この位置が未知の通信装置Q4〜Q15と無線で通信する位置が既知の通信装置P0、P1、P2、P3、位置が未知の通信装置Q4〜Q15の位置を検出する処理装置12、および処理装置12が位置を検出するために必要な情報を記憶したり、処理装置12が検出した位置を記憶する記憶装置14を含み、位置が未知の通信装置Q4〜Q15の位置を検出するシステムである。位置は、位置が既知の通信装置P0〜P3の各位置、および隣り合う通信装置間の距離を用いて検出される。本実施例では、本実施例ではシステムを屋内で使用した際の位置の検出について説明する。なお本発明はこれに限定するわけではなく、屋外で使用することも可能である。
【0012】
図1において、位置が既知の通信装置、すなわち既知ノードP0〜P3は、例えば所定の場所に設けられたアクセスポイント等の基地局や、GPS ( Global Positioning System ) 等の公知の位置検出手段を含む通信装置であり、図示しない無線回路、電波強度測定回路、信号処理回路、および記憶回路を含み、他の通信装置と無線で通信する装置である。また位置が未知の通信装置Q4〜Q15、すなわち未知ノードも既知ノードと同様に、図示しない無線回路、電波強度測定回路、信号処理回路、および記憶回路を含み、他の通信装置と無線で通信する通信装置であって、例えば携帯電話やPDA や無線タグ等である。
【0013】
処理装置12は、既知ノードP0〜P3と有線で接続し、各既知ノードP0〜P3から送られてくる情報を一元的に管理するとともに、この情報を基にして、未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する部分である。処理装置は、図示しない制御部を含み、この制御部で未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する。また記憶装置14は、処理装置12と有線で接続し、各既知ノードP0〜P3から送られ処理装置14が受信した情報を記憶したり、また処理装置12で求められた未知ノードQ4〜Q15の位置を記憶する部分である。なお本発明は本実施例に限定するわけではなく、例えば、処理装置12は、既知ノードP0〜P3と無線で接続することも可能であるし、また記憶装置14は、処理装置12の内部に設けることも可能である。このような処理装置12、記憶装置14は公知のものを採用することが可能であり、例えば処理装置12はサーバ等にすることが可能である。
【0014】
本実施例では、このような通信装置P0〜Q15、処理装置12、および記憶装置14が接続されたネットワークにおいて、通信装置P0〜Q15間は、近距離無線通信、例えばマルチホップ通信により通信する。よって、各通信装置P0〜Q15、が発する電波が到達する範囲は限られており、どの未知ノードも、3つ以上の既知ノードと通信してその既知ノードからの距離を得ることができない。また図1に示すように1つの既知ノードP0〜P3の周囲には、多数の未知ノードQ4〜Q15が存在している。本実施例では、このように各未知ノードが、3つ以上の既知ノードからの距離を得ることができない場合や、1つの既知ノードの周囲に多数の未知ノードが存在する場合であっても、未知ノードの正確な位置を検出することが可能である。
【0015】
未知ノードの位置の検出する方法について説明する前に、図1を用いて既知ノードP0〜P3の設定について説明する。本システムでは、未知ノードの位置の検出を行う前に、予め既知ノードP0〜P3を所定の位置に配置し、またその位置を処理装置12に設定しておく。より具体的に説明すると、予め既知ノードP0〜P3を、未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する領域16に配置する。例えば本実施例では、位置検出システム10を屋内で用いており、既知ノードP0〜P3を、未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する領域16である屋内の各隅に配置している。
【0016】
なお本発明は、本実施例に限定するわけではなく、配置される既知ノードの数は、領域16内に少なくとも2つあればよい。なぜなら本実施例では、後述するように一方の既知ノードから他方の既知ノードまで、未知ノードを経由する最短経路を形成し、この最短経路を用いて未知ノードの位置を検出するからである。よって、既知ノードは少なくとも2つ配置し、一方の既知ノードと他方の既知ノードの間に少なくとも1つの未知ノードが位置できるようにある程度離して配置すればよいことになる。なお既知ノードをどの程度離して設置するかは、位置検出システム10を使用する環境や既知ノードや未知ノードの数に応じて任意に設定することが可能である。例えば、本実施例の場合では、領域16が四角形であるため、この四角形の各辺に既知ノードを配置することも可能である。なお本発明はこれに限定するわけではない。
【0017】
既知ノードP0〜P3の配置が終了すると、配置した既知ノードP0〜P3の位置、本実施例では位置座標を処理装置12に登録する。既知ノードの位置座標は公知の手法を用いて求めることが可能であり、またその登録も公知の手法を用いて行うことが可能である。例えば本実施例では、各既知ノードP0〜P3間の相対距離を測定し、所定の点、具体的には、領域16の左下の端点を基準とした相対的な位置座標を登録している。なお本発明はこれに限定するわけではない。登録された既知ノードP0〜P3の位置座表は、既知ノードの位置を変更した場合は、位置の変更に応じて変更する必要がある。
【0018】
以上のようにして領域16に既知ノードP0〜P3を配置し、その位置座標を登録する。そしてこのような領域16に存在する未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する。なお本実施例では、未知ノードQ4〜Q15は領域16内を移動可能であり、位置検出システム10はあるタイミングにおける未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する。なお本発明は本実施例に限定するわけではなく、未知ノードQ4〜Q15は移動しない通信装置であってもよい。
【0019】
また本実施例では未知ノードQ4〜Q15の数は、12個であるが、本発明はこれに限定するわけではなく、領域16内に存在する未知ノードの数は任意の数にすることが可能である。しかし、位置を検出するためには、未知ノードを経由する最短経路を形成する必要があり、また、最短経路を形成する未知ノードは、最短経路を形成しない少なくとも2つのノードと通信してこれらのノードとの距離を得る必要がある。よって、位置を検出するためには、領域16内に少なくとも5つのノードが存在し、そのうちの少なくとも2つのノードが既知ノードである必要がある。
【0020】
図2は、図1に示す位置検出システム10による、未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する処理手順の一例を示した流れ図である。図2において、上述したように領域16に配置された既知ノードP0〜P3の位置座標の登録が終了すると(ステップS1)、この領域16に存在する未知ノードQ4〜Q15の位置を検出するために、隣り合うノード間の距離を求める(ステップS2)。
【0021】
この距離は、公知の手法を採用して求めることが可能である。例えば各ノードから発信された電波の強度や電波の遅延を測定することで距離を求めることが可能である。本実施例では、各ノードに設けられている電波強度測定回路により、隣り合うノードが発信した電波の強度を測定し、この電波強度から隣り合うノード間の距離を得る。
【0022】
より具体的に説明すると、本実施例では、各ノードが電波強度測定回路によって、隣り合うノードが発信した電波の強度を測定する。この電波強度測定回路には、例えば、いわゆる受信信号強度表示 ( RSSI : Received Signal Strength Indicator) 回路を用いることが可能である。受信信号強度表示回路は、受信した電波の2乗検波出力の振幅を測定して、測定値を受信信号強度とする。このようにして各ノードで得られた受信信号強度は、マルチホップ通信により処理装置12に集められ、処理装置12において受信信号強度から距離が求められる。
【0023】
図3は、処理装置12が求めた各ノード間の距離を概念的に示したものである。各ノードは、電波が到達する範囲に位置するノード、すなわち通信可能なノードと距離を測定する。例えば、ノードP0は、ノードQ6、Q4、Q7と通信可能であり、各ノードとの距離はそれぞれ、2.5、3、5 である。他のノードも同様である。なお図3において距離の単位は、例えば電波強度からの換算や既知ノードP0〜P3を登録した座標軸に応じて任意に設定することが可能である。
【0024】
処理装置12では、以上のようにして各ノード間の距離を求めると、求められた距離を用いて、位置座標を登録した既知ノードP0〜P3のうち、ある既知ノードから別の既知ノードまで、未知ノードを経由する最短経路を形成する(ステップS3)。ここで最短経路とは、経由する未知ノードの数が最も少なく、かつ、その未知ノードを経由した場合に、その既知ノードから既知ノードまでの距離が最も短いものである。
【0025】
例えば、既知ノードP0から既知ノードP1までの最短経路を形成する場合では、機知ノードP0から既知ノードP1までは図4に示すように6通りの経路がある。これらは経由する未知ノードの数がすべて2つであるが、これらの未知ノードを経由した場合、既知ノードP0から既知ノードP1までの距離が最も短いのは経由a である。よって、既知ノードP0から既知ノードP1までの最短経路は、経路a すなわち、未知ノードQ4、および未知ノードQ5を経由する経路となる。なお例えば既知ノードP0から既知ノードP1までの間に存在する未知ノードが少ないために最短経路が形成できない場合は、他の既知ノード間で最短経路を作成する。
【0026】
最短経路が作成されると、処理装置12は、最短経路を形成した一方のまたは他方の既知ノードを基準とした直交座標を考え、この直交座標の一方または他方の軸が最短経路に対してなす角度を求める(ステップS4)。なお直交座標は、既知ノードの位置座標を登録した際に基準とした座標と向きを同じにした座標にしたほうが、計算が容易になるため好ましい。
【0027】
具体的に本実施例で説明すると、本実施例では説明を分かりやすくするために、図1に示すように領域16の左下の端点18を原点、水平方向をX 軸20、垂直方向をY 軸22とした座標に既知ノードの位置座標を登録している。よって、最短経路を形成した一方の既知ノードまたは他方のノードを基準とする直交座標は、既知ノードを登録した座標と同じ向き、すなわち、水平方向をX 軸、垂直方向をY 軸としたほうが、領域16における未知ノードの位置座標の計算が容易になる。なお本発明はこれに限定するわけではなく、位置を検出する領域に合わせて任意の向きの直交座標を考えることが可能である。
【0028】
また直交座標の一方の軸または他方の軸が最短経路に対してなす角度とは、例えば一方の既知ノードを基準とする直交座標を考えた場合は、この直交座標の一方のまたは他方の軸と最短経路とが、一方の既知ノードにおいて形成する角度のことである。なお直交座標の軸のうち、どちらの軸との角度を求めるかは、角度の求め方に応じて任意の軸との角度を求めることが可能である。例えば、本実施例のように隣り合うノード間との距離を用いる場合は、その最短経路の方向と同じ方向の軸との角度を求めることが可能である。
【0029】
図5は、図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までを拡大したものであり、最短経路の一方のまたは他方の既知ノードを基準とした直交座標の一方の軸が、最短経路に対してなす角度を求める処理の一例を概念的に示した図である。図5を用いて、最短経路の一方または他方の既知ノードを基準とした直交座標の一方の軸が、最短経路に対してなす角度の求め方について説明すると、例えば、既知ノードP0から既知ノードP1までの最短経路、すなわち上述した経路a を形成し、この経路a の一方のノード、例えば既知ノードP0を基準とした直交座標を考えた場合には、ステップS2で求められた隣り合うノード間の距離を用いることで、経路a と同じ方向の軸、すなわちX1 軸が、既知ノードP0において、経路a に対してなす角度αを求めることが可能である。なお本発明はこれに限定するわけではなく、例えば任意のやり方を用いてこの直交座標のY1 軸が、既知ノードP0において、経路a に対してなす角度νを求めてもよい。
【0030】
なお図5において、角度α1と角度α2 の2種類の角度αが存在するのは、既知ノードP0から未知ノードQ4までは距離という情報しか存在しないため、図5に点線で示すように、線分50に対して対称な位置T にも未知ノードQ4が存在することが考えられるからである。よって角度α1 と角度α2 の2種類の大きさを考える。なお角度αとして、角度α1 と角度α2 の2種類が考えられるため、未知ノードQ4の位置座標も2種類求まるが、どちらの位置座標を未知ノードQ4の位置座標とするかは後段で説明する。
【0031】
まず角度αを求めるために、既知ノードP0から既知ノードP1までを結ぶ線分50を考える。この線分50が、既知ノードP0において、X1 軸に対してなす角度を角度β、また、この線分50が、既知ノードP0において、経路a に対してなす角度を角度γとすると、未知ノードQ4が図5の点Tにある場合、角度α は、角度α1 = 角度β + 角度γで求めることが可能である。また未知ノードQ4が、図5に示す位置にある場合、角度αは、角度α2 = 角度β - 角度γにより求めることが可能である。
【0032】
角度α1 と角度α2 を求めるために必要となる角度β、および角度γのうち、角度βは、既知ノードP0と既知ノードP1との位置座標がわかっているため、例えば数1または数2により求めることが可能である。なお数1、数2において、XP0、YP0 は既知ノードP0の位置座標であり、XP1、YP1 は既知ノードP1の位置座標である。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
また角度γは、経路a を形成するノードである既知ノードP0から、既知ノードP0と未知ノードQ4を繋ぐリンク52上を通る線分54を引き、また既知ノードP1から線分54と垂直に交わる線分56を引いて、線分54、線分56、および線分50で形成される直角三角形58を考えた場合、線分54と線分56の長さを求めれば、この長さを用いて数3、または数4により求めることが可能である。なお数3、数4において、E は線分54の長さ、F は線分56の長さである。
【0035】
【数3】
【0036】
【数4】
よって線分54と線分56の長さを求める。まず線分54の長さを考えると、線分54のうち、既知ノードP0から未知ノードQ4までの長さ、すなわちリンク52の長さは、ステップS2において求められているため、未知ノードQ4から、線分54と線分56との交点A までの長さを求めればよい。ここで、未知ノードQ5から線分54と垂直に交わるように線分60を引いた場合に、線分54と交わる点を点Bとし、未知ノードQ4から点B までの長さをL1、点B から点A までの長さをL2とすると、線分54の長さは、リンク52の長さ、L1、およびL2を加算する、すなわち、線分54の長さ = リンク52の長さ + L1 + L2 により求めることが可能である。
【0037】
よってL1、L2を求める。まずL1は、未知ノードQ4から未知ノードQ5までの距離がわかっているので、未知ノードQ4から未知ノードQ5までのリンク62が、線分54に対してなす角度δの大きさを求めれば、下記の式により求めることが可能である。
【0038】
L1 = 未知ノードQ4 から 未知ノードQ5 までの距離 × cos(δ)
同様にL2は、未知ノードQ5から既知ノードP1までの距離がわかっているため、未知ノードQ5から線分54と平行する線分64を引き、この線分64が、未知ノードQ5から既知ノードP1までのリンク66に対してなす角度εの大きさを求めれば、下記の式により求めることが可能である。なお線分64の長さはL2と同じである。
【0039】
L2 = Q5 から P1 までの距離× cos(ε)
よって、角度δと角度εを求める。まず角度δの求め方を説明する。本実施例では、隣り合うノード間の距離が測定されていることに着目し、経路a を形成する各ノードP0、Q4、Q5、P1 と隣り合うノードとの距離を用いて角度δを求める。より具体的に説明すると、図6に示すように、経路a を形成するノードP0、Q4、Q5、P1と隣り合い、かつ距離が測定されているノード間を結んで、リンク52からリンク62まで、すなわち、既知ノードP0から未知ノードQ5まで、未知ノードQ4を頂点の1つとする三角形を作成する。そして、これらの三角形の未知ノードQ4における内角から角度δを求める。
【0040】
図6は、図5に示す既知ノードP0から未知ノードQ5までの部分を拡大したものであり、角度δを求める処理の一例を概念的に示した図である。図6において、図5と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。本実施例では、角度δを求めるために、リンク52からリンク62まで、未知ノードQ4を頂点の1つとする三角形を作成する。なお三角形の各辺は、ステップS2で距離が求められている必要がある。そこでまず、既知ノードP0および未知ノードQ4の両方のノードと隣り合い、このノードP0、Q4の両方からの距離が測定されているノードを、図3に示す測定値より探す。図3より、このようなノードは、未知ノードQ6と未知ノードQ7が挙げられるが、このうち経路a に近い、すなわち、既知ノードP0と未知ノードQ4の両方に近いノードは未知ノードQ6である。よって、既知ノードP0、未知ノードQ4、および未知ノードQ6を頂点とする三角形80を作成する。
【0041】
次に、未知ノードQ4、Q6の両方のノードから距離が測定されているノードは、図3により、未知ノードQ7、Q8、Q11があるが、このうち、経路a に最も近いのは未知ノードQ7である。よって、未知ノードQ4、Q6、Q7を頂点とする三角形82を作成する。最後に、未知ノードQ7と未知ノードQ5との距離が測定されているため、未知ノードQ4、Q5、Q7を頂点とする三角形84を作成する。
【0042】
なお2つのノードからの距離が存在するノードを複数挙げることができる場合に、経路a に最も近いノードを選択するのは、経路a に近いノードのほうが、最後に形成される三角形84の頂点である未知ノードQ4およびQ5にも近くなるため、未知ノードQ4およびQ5の両方との距離が存在する確立が高くなって、未知ノードQ4および未知ノードQ5を頂点とした三角形84を形成しやすくなるからである。しかし本発明はこれに限定するわけではなく、最終的に、最後に形成される三角形84の頂点である未知ノードQ4、および未知ノードQ5の両方との距離が存在するノードに辿り着くことが可能であれば、任意のノードを選択することが可能である。
【0043】
例えば上述の例で説明すると、図6に点線で示すように未知ノードQ6の代わりに未知ノードQ7を選択して三角形86を作成した場合であっても、未知ノードQ7は、未知ノードQ4、およびQ5の両方との距離が存在するため、最終的に未知ノードQ4、Q5、Q7を頂点とする三角形84を作成することが可能である。よって未知ノードQ6の代わりに未知ノードQ7を選択し、三角形と86三角形84とを、既知ノードP0と未知ノードP5との間に作成するようにしてもよい。
【0044】
以上のようにして既知ノードP0から未知ノードQ5まで、未知ノードQ4を頂点とする三角形80、82、84を作成する。各三角形80、82、84の辺の長さはステップS2で測定された距離であるため、余弦定理を用いることにより、各三角形80、82、84における、未知ノードQ4を頂点とする内角を求めることが可能である。例えば、三角形80の頂点Q4の内角、すなわち角度ζは、余弦定理を用いた数5により求めることが可能である。数5において、H はステップS2で求めた既知ノードP0から未知ノードQ4までの距離、I は既知ノードP0から未知ノードQ6までの距離、J は未知ノードQ6から未知ノードQ4までの距離である。同様に余弦定理を用いて、三角形82の頂点Q4の内角、すなわち角度η、三角形84の頂点Q4の内角、すなわち角度θを求めることが可能である。
【0045】
【数5】
以上のようにして角度ζ、角度η、および角度θが求められたので、角度δは、角度ζ、角度η、および角度θの和から180度引くこと、すなわち、角度δ = 角度ζ + 角度η + 角度θ - 180 により求めることが可能である。そして、角度δが求められれば、上述したL1 = Q4 から Q5 までの距離 × cos(δ)により、L1を求めることが可能である。
【0046】
次に角度εを求める。図7に角度εを求める一例を概念的に示す。図7は図5に示す既知ノードQ4から既知ノードP1までの部分を拡大した図である。図7において、図5と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。図7に示すように、未知ノードQ4から未知ノードQ5までのリンク62を延長し、この延長したリンク68が、未知ノードQ5において、未知ノードQ5から既知ノードP1までのリンク66に対してなす角度を角度ιとすると、延長したリンク68が、未知ノードQ5において、線分64に対してなす角度は、角度δの同位角であるので、角度εは、角度ε = 角度ι + 角度δにより求めることが可能である。
【0047】
よって角度ιを求める。角度ιも角度δを求めた場合と同様に、未知ノードQ5と隣り合うノード間は、距離が測定されていることに着目し、距離が測定されているノード間を繋いで、例えば図7に示すように、未知ノードQ4から既知ノードP1まで、未知ノードQ5を頂点とする三角形、すなわち、未知ノードQ5、未知ノードQ4、および未知ノードQ7を頂点とする三角形90と、未知ノードQ5、未知ノードQ7、および未知ノードQ9を頂点とする三角形92と、未知ノードQ5、未知ノードQ9、および既知ノードP1を頂点とする三角形94とを作成し、各三角形90、92、94の未知ノードQ5における角度κ、λ、μを求めることで可能である。
【0048】
具体的には、例えば三角形90の場合では、頂点Q5の内角である角度κは、余弦定理を用いた数6により求めることが可能である。数6において、M はステップS2で求めた未知ノードQ5から未知ノードQ4までの距離、N は未知ノードQ4から未知ノードQ7までの距離、O は未知ノードQ7から未知ノードQ5までの距離である。同様に余弦定理を用いて、三角形92における頂点Q5の内角である角度λ、三角形94における頂点Q5の内角である角度μを求めることが可能である。
【0049】
【数6】
以上のようにして角度κ、角度λ、および角度μが求められたので、角度ιは、角度κ、角度λ、および角度μの和から180度引くこと、すなわち、角度ι = 角度κ + 角度λ + 角度μ - 180により求めることが可能である。そして、角度ιが求められれば、角度ε = 角度δ + 角度ιにより角度εを求めることができる。よって角度εが求まったため、L2 = Q5 から P1 までの距離 × cos(ε)により、L2を求めることが可能である。
【0050】
図5に戻って、L1、L2 が求まったので、線分54の長さが求められた。次に、線分56の長さを考えると、線分64が、線分56と交わる点を点C とし、点A から点C までの距離をL3、点C から既知ノードP1 までの距離をL4 とすると、角度δ、および角度εが求められているため、L3は、L3 = Q4 から Q5 までの距離 × sin(δ)により求めることができ、またL4 は、L4 = = Q5 から P1 までの距離 × sin(ε) により求めることが可能である。線分56の長さは、このL3 とL4 の和、すなわち、線分56の長さ = L3 + L4 により求めることが可能である。
【0051】
このようにして、線分54と線分56の長さが求められたため、上述した数3または数4より角度γが求まる。角度γが求まると、上述した、角度α1 = 角度β + 角度γ、および角度α2 = 角度β - 角度γにより、角度αが2種類求まる。
【0052】
処理装置12は、このようにして角度αを求めると、角度αを用いて未知ノードQ4 の位置座標を求める(ステップS5)。具体的には、未知ノードQ4からX1 軸と垂直に交わるように引いた直線100との交点を点R とし、同様に点TからX1軸と垂直に交わるように引いた直線102との交点を点S とすると、処理装置12は、既知ノードP0、未知ノードQ4、および交点R を頂点とする直角三角形130、および既知ノードP0、未知ノードQ4、および交点S を頂点とする直角三角形132を考え、未知ノードQ4の位置座標 ( XQ4 , YQ4 ) を、下記の式により求める。なお下記の式においてXP0、およびYP0 は、既知ノードP0 の位置座標である。
【0053】
XQ4 = XP0 + cos ( 角度α )
YQ5 = YP0 + sin ( 角度α )
なお前述したように角度αの大きさは、角度α1 と角度α2 の2通り考えられるため、未知ノードQ4の位置座標も2通り求められる。そこで、処理装置12は、2通りの位置座標のうち、1つを未知ノードQ4の位置座標として特定する。特定には、例えば求められた位置座標が領域16内に存在しているか否かを判断したり、また他の既知ノードとで別の最短経路を作成して他の未知ノードの位置座標を求め、この他の未知ノードとの位置座標と比較することで、求められた2つの位置座標のうち1つを、未知ノードQ4の位置座標として特定することが可能である。
【0054】
より具体的に説明すると、角度αの大きさが2通り考えられるため、未知ノードQ4の位置座標は、図5に示す未知ノードQ4で示す位置座標と、図5に点Tで示す位置座標の、2つが求められるが、領域16内に存在しない位置座標は、実際には存在しない位置、または存在しても移動不可能な位置を示していると判断することができる。よって、求められた位置座標が領域16内に位置するものであるか否かを判断することにより、2つの位置座標のうち1つを、未知ノードQ4の位置座標として特定することが可能になる。
【0055】
また例えば、未知ノードQ4を求めるために経路a を作成した既知ノードとは別の既知ノードを用いて別の最短経路を作成し、この別の最短経路を形成する未知ノードの位置座標を求め、この位置座標が求められた未知ノードとの距離から、未知ノードQ4の位置座標を特定するようにしてもよい。このように別の最短経路を作成するようにすれば、求められた2つの位置座標の両方が領域16内に位置する場合であっても、未知ノードQ4の位置座標をどちらか一方に特定することが可能になる。
【0056】
よって処理装置12は、位置座標が2種類求められると、この求められた2種類の位置座標が領域16内に位置するものであるか否かを判断する(ステップS6)。その結果、どちらか一方が領域16内に位置しない場合は、ステップS8へ進み、領域16内に位置する位置座標を未知ノードQ4の位置座標と特定する。一方、求められた2つの位置座標の両方が領域16内に存在する場合は、未知ノードQ4との距離が測定されており、かつ位置座標が求められている他の未知ノードが存在するか否かを判断する(ステップS7)。
【0057】
ステップS7における判断の結果、このような他の未知ノードが存在すれば、ステップS8へ進み、この未知ノードとの距離、およびこの未知ノードの位置座標を用いて、未知ノードQ4の位置座標を1つに特定する。例えば、図8に示すように未知ノードQ6の位置座標が求められていれば、未知ノードQ6と未知ノードQ4との距離108はステップS2により「3」であると求められているので、未知ノードQ6と未知ノードQ4の位置座標より、距離が「3」を満たす未知ノードQ4、および未知ノードQ6の位置座標を特定する。具体的には、未知ノードQ6の位置座標を ( XQ6 , YQ6 )とすると、下記の式を満たす未知ノードQ4の位置座標を1つ特定する。
【0058】
(未知ノードQ4からQ6までの距離)2 = (XQ6 - XQ4 )2 + (YQ6- YQ4 )2
なおステップS7の判断の結果、このような未知ノードが存在しない場合は、ステップS3に戻り、経路a に用いた既知ノードとは異なる既知ノードと最短経路を形成し、他の未知ノードの位置座標を求める。例えば、図8を用いて説明すれば、既知ノードP2と最短経路g を形成し、この経路g が、既知ノードP0を基準とする直交座標のY1 軸に対してなす角度ν1 および角度ν2 を求めて、未知ノードQ6の位置座標を2種類求め、未知ノードQ4との距離108が「3」となる未知ノードQ4、および未知ノードQ6を1つずつ特定する。図8は、図1に示す既知ノードP0から既知ノードP2までの部分を拡大したものであって、未知ノードQ4を特定する処理の一例を概念的に示した図である。図8において、図1と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。また図8において点V は、点T、Uと同様に、未知ノードQ6が位置する可能性のある点である。
【0059】
以上のようにして、処理装置12は、一方の既知ノードから他方の既知ノードまで、未知ノードを介する最短経路を作成し、一方または他方の既知ノードを基準とした直交座標の一方の座標軸が、この最短経路に対してなす角度を求める。そしてこの角度を用いることにより、最短経路を形成する未知ノードであって、基準とした既知ノードの隣に位置する未知ノードの位置座標を検出することが可能である。
【0060】
なお最短経路を形成する他の未知ノードの位置座標、例えば本実施例で説明すれば未知ノードQ5の位置座標は、例えば未知ノードQ4の位置座標を求めた場合と同様に、既知ノードP1を基準とした直交座標を考え、この直交座標の一方の軸が、経路a に対してなす角度を求めることにより検出してもよいし、また例えば図9に示すように角度αを用いることで求めてもよい。なお本発明はこれらに限定するわけではなく、例えば未知ノードQ4の位置座標が求められた結果、未知ノードQ5が、位置が既知の3つのノードからの距離を得た場合では、未知ノードQ5の位置座標を、これらの距離と位置が既知のノードの位置座標とを用いて検出することも可能である。
【0061】
図9は図5に示す既知ノードP0から未知ノードQ5までの部分を拡大したものであって、未知ノードQ5の位置を検出する処理の一例を概念に示した図である。図9において図5、図6と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。図9に示す例では、未知ノードQ5の位置座標を求めるために、未知ノードQ4を基準に直交座標、すなわちX2 軸、Y2 軸を考える。なお図5において、点Uは、未知ノードQ4が点Tに位置する場合の未知ノードQ5の位置である。
【0062】
このような直交座標を考えた後、未知ノードQ5から、X2 軸と垂直に交わるように垂線110を下ろしてその交点を点D とし、未知ノードQ5、未知ノードQ4、および点D を頂点とする直角三角形112を考える。この直角三角形112の頂点Q4の内角を角度ξとすると、未知ノードQ5の位置座標 ( XQ5 , YQ5 ) は、下記の式により求めることが可能である。
【0063】
XQ5 = XQ4 + cos ( 角度ξ )
YQ5 = YQ4 + sin ( 角度ξ )
未知ノードQ4の位置座標は求められているため、角度ξを求める。角度ξは、角度δが求められており、また線分54とX2軸との角が角度αの同位角であるため、角度δと角度αを用いて求めることが可能である。なお未知ノードQ4の位置座標が図5に示す位置にある場合と、図5に点T で示す位置にある場合により角度ξを求める計算式が変わることに注意する。具体的には、未知ノードQ4が点T の位置にある場合は、角度ξ1 = 角度β + 角度γ - 角度 δ により求めることが可能である。また、未知ノードQ4が図9に示す位置にある場合は、角度ξ2 = 角度β - 角度γ + 角度 δ により求めることが可能である。
【0064】
なおどちらの式を用いて角度ξを求めるかは未知ノードQ4の位置により任意に選択することが可能であるし、また、未知ノードQ4の位置座標が一つに特定されてない段階であれば、両方の式により、角度ξ1 、および角度ξ2 を求めて、未知ノードQ5の位置座標を2種類求めてもよい。未知ノードQ5の位置座標を2種類求めた場合であっても、未知ノードQ4の位置座標が1つに特定されれば、未知ノードQ4との距離を用いて未知ノードQ5の位置座標も1つに特定することが可能になる。
【0065】
以上のようにして最短経路を形成する未知ノードの位置座標を求めることが可能である。最短経路を形成しない未知ノードの位置は、位置が検出された未知ノードの位置座標、および既知ノードの位置座標を用いることで検出することが可能である。図5で説明すると、例えば経路a を形成しない未知ノードQ7の位置座標は、未知ノードQ4、未知ノードQ5の座標位置がそれぞれ1つに特定されれば、未知ノードQ4、Q5、および既知ノードP0の位置座標と、これらのノードからの距離を用いることで求めることが可能である。
【0066】
以上のように本実施例では、隣り合うノード間の距離を求めることが可能であれば、1つの未知ノードが、少なくとも3つの既知ノードからの距離を得ることができなくても、未知ノードの位置を検出することが可能である。また、隣り合うノード間の距離を電波の強度や遅延によって求めることにより、1つの既知ノードの周囲に複数の未知ノードが存在する場合であっても各未知ノードの正確な位置を検出することが可能である。
【0067】
なお図5〜図9に示す例では、角度αを求めるために、角度γを求めているが、本発明はこれに限定するわけではなく、任意のやり方を採用することが可能である。例えば、図10に示すように角度γを求めないやり方を採用してもよい。
【0068】
図10は図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までの部分を拡大したものであって、角度αを求める処理の別の一例を概念的に示した図である。なお図10において図5、図6と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。図10を用いて、角度αの別の求め方について説明する。なお図10に示す求め方において、角度δを求めるまでは図6に示す処理と同様であるため説明を省略する。角度δが求められると、リンク52が、未知ノードQ4で、リンク62に対してなす角度οを求めることが可能である。
【0069】
角度οが求められたら、既知ノードP0と未知ノードQ5とを繋いで、既知ノードP0、未知ノードQ4、および未知ノードQ5を頂点とする三角形120を考える。三角形120において、角度οを形成する2辺の長さ、すなわちリンク52とリンク62の長さは図2に示すステップS2により求められているため、余弦定理を用いることにより、既知ノードP0から未知ノードQ5までの距離、すなわちリンク122の長さを求めることが可能である。またリンク122の長さが求まると、余弦定理を用いることで、三角形120の既知ノードP0における内角である角度πを求めることが可能になる。
【0070】
またリンク122の距離が求まったため、既知ノードP0、P1、および未知ノードQ5を頂点とする三角形124を考えると、既知ノードP0から既知ノードP1までの距離は既知ノードP0と既知ノードP1の位置座標がわかっているために求めることができ、また三角形124における既知ノードP1から未知ノードQ5までの距離はステップS2で求められている。よって、余弦定理を用いることにより、三角形124における既知ノードP0における角度σを求めることが可能である。以上の角度β、角度π、角度σを用いて、角度αは、未知ノードQ4が図10の位置T にある場合は、角度α1 = 角度β + 角度σ+ 角度πを計算することにより求めることが可能である。また未知ノードQ4が図10に示す位置にある場合は、角度α2 = 角度β - 角度σ - 角度πにより求めることが可能である。
【0071】
なお、図10に示すやり方の場合、図5に示すように直角三角形58を用いる場合と異なり、未知ノードQ5や既知ノードP1の位置により角度αを求める計算式を変える必要があることに注意する。
【0072】
図11は、未知ノードQ5、P1が図10とは異なる位置にある場合における角度αを求める処理の一例を概念的に示した図である。図11において、図5、図6、および図10、と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。例えば、未知ノードQ5が図11に示すように未知ノードQ4よりも下に位置する場合、すなわち、角度δ = 角度ζ + 角度η + 角度θ - 180 を計算した際に角度δの値がマイナスになる場合は、三角形における角度οは、角度ζ + 角度η + 角度θを足した値にする必要がある。また例えば未知ノードP1が未知ノードP0よりも下側になる場合は、角度βが図11に示すようになるため、例えば未知ノードQ4が図11の点T に示す位置にある場合は、角度α1 = 角度β + 角度σ - 角度π となる。また未知ノードQ4が図11に示す位置に存在する場合は、角度α2 = 角度β - 角度σ + 角度π となる。
【0073】
このように、それぞれのノードの位置によって計算式を変える必要がある。なお計算式を変えることは、例えば未知ノードQ5が未知ノードQ4の上にある場合、下にある場合、既知ノードP1が既知ノードP0よりも上にある場合、または下にある場合というように場合毎の式を用意しておくことで対応するとよいが、本発明はこれに限定するわけではない。
【0074】
なお本発明は実施例に限定するわけではなく、任意のやり方を採用して最短経路を形成した一方のまたは他方のノードを基準とする直交座標の一方の軸が、最短経路に対してなす角度を求めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明による位置検出システムの実施例を概念的に示した図である。
【図2】図1に示す位置検出システムによる、未知ノードの位置を検出する処理手順の一例を示した図である。
【図3】各ノード間の距離を概念的に示した図である。
【図4】既知ノードP0から既知ノードP1まで未知ノードを経由する経路を示した一例である。
【図5】図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までを拡大した概念図である。
【図6】図5に示す既知ノードP0から未知ノードQ5までの部分を拡大した概念図である。
【図7】図5に示す既知ノードQ4から既知ノードP1までの部分を拡大した概念図である
【図8】図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までの部分を拡大した概念図である。
【図9】図5に示す既知ノードP0から未知ノードQ5までの部分を拡大した概念図である。
【図10】図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までの部分を拡大した概念図である。
【図11】ノードQ5、P1が図10とは異なる位置にある場合を示した概念図である。
【符号の説明】
【0076】
10 位置検出システム
12 処理装置
14 記憶装置
16 位置を検出する領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置が未知の通信装置の位置を検出する方法に関し、とくに通信装置間の距離を用いて位置を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の進展により無線通信が利用されるようになってきている。無線通信には、例えばアクセスポイントを用いる無線LAN と、無線機器が相互に通信してゆくマルチホップ通信を用いたアドホックネットワークとが存在する。アドホックネットワークは、例えばPDA (Personal Digital Assistant) や携帯電話やノートブック・コンピュータ等の無線通信手段を含む通信装置によって形成され、アクセスポイントを必要としないネットワークである。しかし、アドホックネットワークを含む無線通信では、各通信装置の位置を把握することができないという問題を有していた。
【0003】
特許文献1には、ホップ数を用いることにより、位置が未知である通信装置の位置を検出する技術が開示されている。また特許文献2には、位置が既知の複数のアクセスポイントから、位置が未知の通信装置の位置を測定する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−356677号公報
【特許文献2】特開平11−178041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、各通信装置のおおまかな位置を把握するため、例えば1つの通信装置の周囲に多数の通信装置が存在する場合等に、ある通信装置を特定することができないという問題を有していた。また特許文献2では、位置を検出するために、すべての通信装置がアクセスポイントと必ず通信する必要がある。しかし、必ずしもすべての通信装置が、アクセスポイントのような位置が既知の通信装置と通信できるわけではない。よって、例えば3つ以上のアクセスポイントと通信できない通信装置の位置を検出することができないという問題を有していた。
【0005】
本発明はこのような従来技術の欠点を解消し、1つの通信装置の周囲に多数の通信装置が存在する場合等であっても位置を特定することができ、また位置が既知である通信装置と通信できない通信装置が存在してもこの通信装置の位置を検出することが可能な位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために本発明は、位置が既知の装置の位置座標、および隣り合う通信装置間の距離を用いて、位置が未知の通信装置の位置座標を検出する位置検出方法である。
【0007】
より具体的に説明すると、本発明では、位置が既知の通信装置の位置座標を少なくとも2つ登録する。次に隣り合う通信装置間の距離を求める。この距離は、電波の強度や電波の遅延から求めることが可能である。次にこの求められた距離を基にして、位置を登録した一方の通信装置から他方の通信装置までの、位置が未知の通信装置を介した最短経路を作成する。
【0008】
この最短経路とは、経由する通信装置の数が最も少なく、かつこの通信装置を経由した際の距離が最も短い経路である。次にこの最短経路を形成した一方の通信装置を基準とした直交座標を考え、この直交座標の一方の軸が、最短経路に対してなす角度を求める。この求められた角度、および距離を用いることで、位置が未知の通信装置の位置座標を求めることが可能である。
【0009】
この一方の軸が、最短経路に対してなす角度は、最短経路を形成するそれぞれの通信装置と、この通信装置と隣り合う通信装置との距離情報を用いることで求めることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隣り合う通信装置との距離を求め、この距離を基に、位置が既知の通信装置から通信装置までの、位置が未知の通信装置を経る最短経路を作成し、この最短経路、および求められた距離を用いて位置が未知の通信装置の位置を検出するため、通信装置間の距離を求めれば、例えば位置が既知の通信装置との距離が1つしかわからない場合であっても、位置が未知の通信装置の位置を検出することが可能である。よって例えば、位置が未知の通信装置が、位置が既知の通信装置3つと通信してこれらとの距離を求めることができない場合であっても、位置を検出することが可能になる。また電波の遅延や強度を用いて隣り合う通信装置間の距離を求めることで、位置が既知の通信装置の周囲に位置が未知の通信装置が多数存在する場合であっても各無線装置の正確な位置を検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に添付図面を参照して本発明による位置検出方法、および位置検出システムの実施例を詳細に説明する。図1は、本発明による位置検出システム10の実施例を概念的に示した図である。図1において位置検出システム10は、位置が未知の通信装置Q4、Q5、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12、Q13、Q14、Q15、この位置が未知の通信装置Q4〜Q15と無線で通信する位置が既知の通信装置P0、P1、P2、P3、位置が未知の通信装置Q4〜Q15の位置を検出する処理装置12、および処理装置12が位置を検出するために必要な情報を記憶したり、処理装置12が検出した位置を記憶する記憶装置14を含み、位置が未知の通信装置Q4〜Q15の位置を検出するシステムである。位置は、位置が既知の通信装置P0〜P3の各位置、および隣り合う通信装置間の距離を用いて検出される。本実施例では、本実施例ではシステムを屋内で使用した際の位置の検出について説明する。なお本発明はこれに限定するわけではなく、屋外で使用することも可能である。
【0012】
図1において、位置が既知の通信装置、すなわち既知ノードP0〜P3は、例えば所定の場所に設けられたアクセスポイント等の基地局や、GPS ( Global Positioning System ) 等の公知の位置検出手段を含む通信装置であり、図示しない無線回路、電波強度測定回路、信号処理回路、および記憶回路を含み、他の通信装置と無線で通信する装置である。また位置が未知の通信装置Q4〜Q15、すなわち未知ノードも既知ノードと同様に、図示しない無線回路、電波強度測定回路、信号処理回路、および記憶回路を含み、他の通信装置と無線で通信する通信装置であって、例えば携帯電話やPDA や無線タグ等である。
【0013】
処理装置12は、既知ノードP0〜P3と有線で接続し、各既知ノードP0〜P3から送られてくる情報を一元的に管理するとともに、この情報を基にして、未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する部分である。処理装置は、図示しない制御部を含み、この制御部で未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する。また記憶装置14は、処理装置12と有線で接続し、各既知ノードP0〜P3から送られ処理装置14が受信した情報を記憶したり、また処理装置12で求められた未知ノードQ4〜Q15の位置を記憶する部分である。なお本発明は本実施例に限定するわけではなく、例えば、処理装置12は、既知ノードP0〜P3と無線で接続することも可能であるし、また記憶装置14は、処理装置12の内部に設けることも可能である。このような処理装置12、記憶装置14は公知のものを採用することが可能であり、例えば処理装置12はサーバ等にすることが可能である。
【0014】
本実施例では、このような通信装置P0〜Q15、処理装置12、および記憶装置14が接続されたネットワークにおいて、通信装置P0〜Q15間は、近距離無線通信、例えばマルチホップ通信により通信する。よって、各通信装置P0〜Q15、が発する電波が到達する範囲は限られており、どの未知ノードも、3つ以上の既知ノードと通信してその既知ノードからの距離を得ることができない。また図1に示すように1つの既知ノードP0〜P3の周囲には、多数の未知ノードQ4〜Q15が存在している。本実施例では、このように各未知ノードが、3つ以上の既知ノードからの距離を得ることができない場合や、1つの既知ノードの周囲に多数の未知ノードが存在する場合であっても、未知ノードの正確な位置を検出することが可能である。
【0015】
未知ノードの位置の検出する方法について説明する前に、図1を用いて既知ノードP0〜P3の設定について説明する。本システムでは、未知ノードの位置の検出を行う前に、予め既知ノードP0〜P3を所定の位置に配置し、またその位置を処理装置12に設定しておく。より具体的に説明すると、予め既知ノードP0〜P3を、未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する領域16に配置する。例えば本実施例では、位置検出システム10を屋内で用いており、既知ノードP0〜P3を、未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する領域16である屋内の各隅に配置している。
【0016】
なお本発明は、本実施例に限定するわけではなく、配置される既知ノードの数は、領域16内に少なくとも2つあればよい。なぜなら本実施例では、後述するように一方の既知ノードから他方の既知ノードまで、未知ノードを経由する最短経路を形成し、この最短経路を用いて未知ノードの位置を検出するからである。よって、既知ノードは少なくとも2つ配置し、一方の既知ノードと他方の既知ノードの間に少なくとも1つの未知ノードが位置できるようにある程度離して配置すればよいことになる。なお既知ノードをどの程度離して設置するかは、位置検出システム10を使用する環境や既知ノードや未知ノードの数に応じて任意に設定することが可能である。例えば、本実施例の場合では、領域16が四角形であるため、この四角形の各辺に既知ノードを配置することも可能である。なお本発明はこれに限定するわけではない。
【0017】
既知ノードP0〜P3の配置が終了すると、配置した既知ノードP0〜P3の位置、本実施例では位置座標を処理装置12に登録する。既知ノードの位置座標は公知の手法を用いて求めることが可能であり、またその登録も公知の手法を用いて行うことが可能である。例えば本実施例では、各既知ノードP0〜P3間の相対距離を測定し、所定の点、具体的には、領域16の左下の端点を基準とした相対的な位置座標を登録している。なお本発明はこれに限定するわけではない。登録された既知ノードP0〜P3の位置座表は、既知ノードの位置を変更した場合は、位置の変更に応じて変更する必要がある。
【0018】
以上のようにして領域16に既知ノードP0〜P3を配置し、その位置座標を登録する。そしてこのような領域16に存在する未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する。なお本実施例では、未知ノードQ4〜Q15は領域16内を移動可能であり、位置検出システム10はあるタイミングにおける未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する。なお本発明は本実施例に限定するわけではなく、未知ノードQ4〜Q15は移動しない通信装置であってもよい。
【0019】
また本実施例では未知ノードQ4〜Q15の数は、12個であるが、本発明はこれに限定するわけではなく、領域16内に存在する未知ノードの数は任意の数にすることが可能である。しかし、位置を検出するためには、未知ノードを経由する最短経路を形成する必要があり、また、最短経路を形成する未知ノードは、最短経路を形成しない少なくとも2つのノードと通信してこれらのノードとの距離を得る必要がある。よって、位置を検出するためには、領域16内に少なくとも5つのノードが存在し、そのうちの少なくとも2つのノードが既知ノードである必要がある。
【0020】
図2は、図1に示す位置検出システム10による、未知ノードQ4〜Q15の位置を検出する処理手順の一例を示した流れ図である。図2において、上述したように領域16に配置された既知ノードP0〜P3の位置座標の登録が終了すると(ステップS1)、この領域16に存在する未知ノードQ4〜Q15の位置を検出するために、隣り合うノード間の距離を求める(ステップS2)。
【0021】
この距離は、公知の手法を採用して求めることが可能である。例えば各ノードから発信された電波の強度や電波の遅延を測定することで距離を求めることが可能である。本実施例では、各ノードに設けられている電波強度測定回路により、隣り合うノードが発信した電波の強度を測定し、この電波強度から隣り合うノード間の距離を得る。
【0022】
より具体的に説明すると、本実施例では、各ノードが電波強度測定回路によって、隣り合うノードが発信した電波の強度を測定する。この電波強度測定回路には、例えば、いわゆる受信信号強度表示 ( RSSI : Received Signal Strength Indicator) 回路を用いることが可能である。受信信号強度表示回路は、受信した電波の2乗検波出力の振幅を測定して、測定値を受信信号強度とする。このようにして各ノードで得られた受信信号強度は、マルチホップ通信により処理装置12に集められ、処理装置12において受信信号強度から距離が求められる。
【0023】
図3は、処理装置12が求めた各ノード間の距離を概念的に示したものである。各ノードは、電波が到達する範囲に位置するノード、すなわち通信可能なノードと距離を測定する。例えば、ノードP0は、ノードQ6、Q4、Q7と通信可能であり、各ノードとの距離はそれぞれ、2.5、3、5 である。他のノードも同様である。なお図3において距離の単位は、例えば電波強度からの換算や既知ノードP0〜P3を登録した座標軸に応じて任意に設定することが可能である。
【0024】
処理装置12では、以上のようにして各ノード間の距離を求めると、求められた距離を用いて、位置座標を登録した既知ノードP0〜P3のうち、ある既知ノードから別の既知ノードまで、未知ノードを経由する最短経路を形成する(ステップS3)。ここで最短経路とは、経由する未知ノードの数が最も少なく、かつ、その未知ノードを経由した場合に、その既知ノードから既知ノードまでの距離が最も短いものである。
【0025】
例えば、既知ノードP0から既知ノードP1までの最短経路を形成する場合では、機知ノードP0から既知ノードP1までは図4に示すように6通りの経路がある。これらは経由する未知ノードの数がすべて2つであるが、これらの未知ノードを経由した場合、既知ノードP0から既知ノードP1までの距離が最も短いのは経由a である。よって、既知ノードP0から既知ノードP1までの最短経路は、経路a すなわち、未知ノードQ4、および未知ノードQ5を経由する経路となる。なお例えば既知ノードP0から既知ノードP1までの間に存在する未知ノードが少ないために最短経路が形成できない場合は、他の既知ノード間で最短経路を作成する。
【0026】
最短経路が作成されると、処理装置12は、最短経路を形成した一方のまたは他方の既知ノードを基準とした直交座標を考え、この直交座標の一方または他方の軸が最短経路に対してなす角度を求める(ステップS4)。なお直交座標は、既知ノードの位置座標を登録した際に基準とした座標と向きを同じにした座標にしたほうが、計算が容易になるため好ましい。
【0027】
具体的に本実施例で説明すると、本実施例では説明を分かりやすくするために、図1に示すように領域16の左下の端点18を原点、水平方向をX 軸20、垂直方向をY 軸22とした座標に既知ノードの位置座標を登録している。よって、最短経路を形成した一方の既知ノードまたは他方のノードを基準とする直交座標は、既知ノードを登録した座標と同じ向き、すなわち、水平方向をX 軸、垂直方向をY 軸としたほうが、領域16における未知ノードの位置座標の計算が容易になる。なお本発明はこれに限定するわけではなく、位置を検出する領域に合わせて任意の向きの直交座標を考えることが可能である。
【0028】
また直交座標の一方の軸または他方の軸が最短経路に対してなす角度とは、例えば一方の既知ノードを基準とする直交座標を考えた場合は、この直交座標の一方のまたは他方の軸と最短経路とが、一方の既知ノードにおいて形成する角度のことである。なお直交座標の軸のうち、どちらの軸との角度を求めるかは、角度の求め方に応じて任意の軸との角度を求めることが可能である。例えば、本実施例のように隣り合うノード間との距離を用いる場合は、その最短経路の方向と同じ方向の軸との角度を求めることが可能である。
【0029】
図5は、図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までを拡大したものであり、最短経路の一方のまたは他方の既知ノードを基準とした直交座標の一方の軸が、最短経路に対してなす角度を求める処理の一例を概念的に示した図である。図5を用いて、最短経路の一方または他方の既知ノードを基準とした直交座標の一方の軸が、最短経路に対してなす角度の求め方について説明すると、例えば、既知ノードP0から既知ノードP1までの最短経路、すなわち上述した経路a を形成し、この経路a の一方のノード、例えば既知ノードP0を基準とした直交座標を考えた場合には、ステップS2で求められた隣り合うノード間の距離を用いることで、経路a と同じ方向の軸、すなわちX1 軸が、既知ノードP0において、経路a に対してなす角度αを求めることが可能である。なお本発明はこれに限定するわけではなく、例えば任意のやり方を用いてこの直交座標のY1 軸が、既知ノードP0において、経路a に対してなす角度νを求めてもよい。
【0030】
なお図5において、角度α1と角度α2 の2種類の角度αが存在するのは、既知ノードP0から未知ノードQ4までは距離という情報しか存在しないため、図5に点線で示すように、線分50に対して対称な位置T にも未知ノードQ4が存在することが考えられるからである。よって角度α1 と角度α2 の2種類の大きさを考える。なお角度αとして、角度α1 と角度α2 の2種類が考えられるため、未知ノードQ4の位置座標も2種類求まるが、どちらの位置座標を未知ノードQ4の位置座標とするかは後段で説明する。
【0031】
まず角度αを求めるために、既知ノードP0から既知ノードP1までを結ぶ線分50を考える。この線分50が、既知ノードP0において、X1 軸に対してなす角度を角度β、また、この線分50が、既知ノードP0において、経路a に対してなす角度を角度γとすると、未知ノードQ4が図5の点Tにある場合、角度α は、角度α1 = 角度β + 角度γで求めることが可能である。また未知ノードQ4が、図5に示す位置にある場合、角度αは、角度α2 = 角度β - 角度γにより求めることが可能である。
【0032】
角度α1 と角度α2 を求めるために必要となる角度β、および角度γのうち、角度βは、既知ノードP0と既知ノードP1との位置座標がわかっているため、例えば数1または数2により求めることが可能である。なお数1、数2において、XP0、YP0 は既知ノードP0の位置座標であり、XP1、YP1 は既知ノードP1の位置座標である。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
また角度γは、経路a を形成するノードである既知ノードP0から、既知ノードP0と未知ノードQ4を繋ぐリンク52上を通る線分54を引き、また既知ノードP1から線分54と垂直に交わる線分56を引いて、線分54、線分56、および線分50で形成される直角三角形58を考えた場合、線分54と線分56の長さを求めれば、この長さを用いて数3、または数4により求めることが可能である。なお数3、数4において、E は線分54の長さ、F は線分56の長さである。
【0035】
【数3】
【0036】
【数4】
よって線分54と線分56の長さを求める。まず線分54の長さを考えると、線分54のうち、既知ノードP0から未知ノードQ4までの長さ、すなわちリンク52の長さは、ステップS2において求められているため、未知ノードQ4から、線分54と線分56との交点A までの長さを求めればよい。ここで、未知ノードQ5から線分54と垂直に交わるように線分60を引いた場合に、線分54と交わる点を点Bとし、未知ノードQ4から点B までの長さをL1、点B から点A までの長さをL2とすると、線分54の長さは、リンク52の長さ、L1、およびL2を加算する、すなわち、線分54の長さ = リンク52の長さ + L1 + L2 により求めることが可能である。
【0037】
よってL1、L2を求める。まずL1は、未知ノードQ4から未知ノードQ5までの距離がわかっているので、未知ノードQ4から未知ノードQ5までのリンク62が、線分54に対してなす角度δの大きさを求めれば、下記の式により求めることが可能である。
【0038】
L1 = 未知ノードQ4 から 未知ノードQ5 までの距離 × cos(δ)
同様にL2は、未知ノードQ5から既知ノードP1までの距離がわかっているため、未知ノードQ5から線分54と平行する線分64を引き、この線分64が、未知ノードQ5から既知ノードP1までのリンク66に対してなす角度εの大きさを求めれば、下記の式により求めることが可能である。なお線分64の長さはL2と同じである。
【0039】
L2 = Q5 から P1 までの距離× cos(ε)
よって、角度δと角度εを求める。まず角度δの求め方を説明する。本実施例では、隣り合うノード間の距離が測定されていることに着目し、経路a を形成する各ノードP0、Q4、Q5、P1 と隣り合うノードとの距離を用いて角度δを求める。より具体的に説明すると、図6に示すように、経路a を形成するノードP0、Q4、Q5、P1と隣り合い、かつ距離が測定されているノード間を結んで、リンク52からリンク62まで、すなわち、既知ノードP0から未知ノードQ5まで、未知ノードQ4を頂点の1つとする三角形を作成する。そして、これらの三角形の未知ノードQ4における内角から角度δを求める。
【0040】
図6は、図5に示す既知ノードP0から未知ノードQ5までの部分を拡大したものであり、角度δを求める処理の一例を概念的に示した図である。図6において、図5と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。本実施例では、角度δを求めるために、リンク52からリンク62まで、未知ノードQ4を頂点の1つとする三角形を作成する。なお三角形の各辺は、ステップS2で距離が求められている必要がある。そこでまず、既知ノードP0および未知ノードQ4の両方のノードと隣り合い、このノードP0、Q4の両方からの距離が測定されているノードを、図3に示す測定値より探す。図3より、このようなノードは、未知ノードQ6と未知ノードQ7が挙げられるが、このうち経路a に近い、すなわち、既知ノードP0と未知ノードQ4の両方に近いノードは未知ノードQ6である。よって、既知ノードP0、未知ノードQ4、および未知ノードQ6を頂点とする三角形80を作成する。
【0041】
次に、未知ノードQ4、Q6の両方のノードから距離が測定されているノードは、図3により、未知ノードQ7、Q8、Q11があるが、このうち、経路a に最も近いのは未知ノードQ7である。よって、未知ノードQ4、Q6、Q7を頂点とする三角形82を作成する。最後に、未知ノードQ7と未知ノードQ5との距離が測定されているため、未知ノードQ4、Q5、Q7を頂点とする三角形84を作成する。
【0042】
なお2つのノードからの距離が存在するノードを複数挙げることができる場合に、経路a に最も近いノードを選択するのは、経路a に近いノードのほうが、最後に形成される三角形84の頂点である未知ノードQ4およびQ5にも近くなるため、未知ノードQ4およびQ5の両方との距離が存在する確立が高くなって、未知ノードQ4および未知ノードQ5を頂点とした三角形84を形成しやすくなるからである。しかし本発明はこれに限定するわけではなく、最終的に、最後に形成される三角形84の頂点である未知ノードQ4、および未知ノードQ5の両方との距離が存在するノードに辿り着くことが可能であれば、任意のノードを選択することが可能である。
【0043】
例えば上述の例で説明すると、図6に点線で示すように未知ノードQ6の代わりに未知ノードQ7を選択して三角形86を作成した場合であっても、未知ノードQ7は、未知ノードQ4、およびQ5の両方との距離が存在するため、最終的に未知ノードQ4、Q5、Q7を頂点とする三角形84を作成することが可能である。よって未知ノードQ6の代わりに未知ノードQ7を選択し、三角形と86三角形84とを、既知ノードP0と未知ノードP5との間に作成するようにしてもよい。
【0044】
以上のようにして既知ノードP0から未知ノードQ5まで、未知ノードQ4を頂点とする三角形80、82、84を作成する。各三角形80、82、84の辺の長さはステップS2で測定された距離であるため、余弦定理を用いることにより、各三角形80、82、84における、未知ノードQ4を頂点とする内角を求めることが可能である。例えば、三角形80の頂点Q4の内角、すなわち角度ζは、余弦定理を用いた数5により求めることが可能である。数5において、H はステップS2で求めた既知ノードP0から未知ノードQ4までの距離、I は既知ノードP0から未知ノードQ6までの距離、J は未知ノードQ6から未知ノードQ4までの距離である。同様に余弦定理を用いて、三角形82の頂点Q4の内角、すなわち角度η、三角形84の頂点Q4の内角、すなわち角度θを求めることが可能である。
【0045】
【数5】
以上のようにして角度ζ、角度η、および角度θが求められたので、角度δは、角度ζ、角度η、および角度θの和から180度引くこと、すなわち、角度δ = 角度ζ + 角度η + 角度θ - 180 により求めることが可能である。そして、角度δが求められれば、上述したL1 = Q4 から Q5 までの距離 × cos(δ)により、L1を求めることが可能である。
【0046】
次に角度εを求める。図7に角度εを求める一例を概念的に示す。図7は図5に示す既知ノードQ4から既知ノードP1までの部分を拡大した図である。図7において、図5と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。図7に示すように、未知ノードQ4から未知ノードQ5までのリンク62を延長し、この延長したリンク68が、未知ノードQ5において、未知ノードQ5から既知ノードP1までのリンク66に対してなす角度を角度ιとすると、延長したリンク68が、未知ノードQ5において、線分64に対してなす角度は、角度δの同位角であるので、角度εは、角度ε = 角度ι + 角度δにより求めることが可能である。
【0047】
よって角度ιを求める。角度ιも角度δを求めた場合と同様に、未知ノードQ5と隣り合うノード間は、距離が測定されていることに着目し、距離が測定されているノード間を繋いで、例えば図7に示すように、未知ノードQ4から既知ノードP1まで、未知ノードQ5を頂点とする三角形、すなわち、未知ノードQ5、未知ノードQ4、および未知ノードQ7を頂点とする三角形90と、未知ノードQ5、未知ノードQ7、および未知ノードQ9を頂点とする三角形92と、未知ノードQ5、未知ノードQ9、および既知ノードP1を頂点とする三角形94とを作成し、各三角形90、92、94の未知ノードQ5における角度κ、λ、μを求めることで可能である。
【0048】
具体的には、例えば三角形90の場合では、頂点Q5の内角である角度κは、余弦定理を用いた数6により求めることが可能である。数6において、M はステップS2で求めた未知ノードQ5から未知ノードQ4までの距離、N は未知ノードQ4から未知ノードQ7までの距離、O は未知ノードQ7から未知ノードQ5までの距離である。同様に余弦定理を用いて、三角形92における頂点Q5の内角である角度λ、三角形94における頂点Q5の内角である角度μを求めることが可能である。
【0049】
【数6】
以上のようにして角度κ、角度λ、および角度μが求められたので、角度ιは、角度κ、角度λ、および角度μの和から180度引くこと、すなわち、角度ι = 角度κ + 角度λ + 角度μ - 180により求めることが可能である。そして、角度ιが求められれば、角度ε = 角度δ + 角度ιにより角度εを求めることができる。よって角度εが求まったため、L2 = Q5 から P1 までの距離 × cos(ε)により、L2を求めることが可能である。
【0050】
図5に戻って、L1、L2 が求まったので、線分54の長さが求められた。次に、線分56の長さを考えると、線分64が、線分56と交わる点を点C とし、点A から点C までの距離をL3、点C から既知ノードP1 までの距離をL4 とすると、角度δ、および角度εが求められているため、L3は、L3 = Q4 から Q5 までの距離 × sin(δ)により求めることができ、またL4 は、L4 = = Q5 から P1 までの距離 × sin(ε) により求めることが可能である。線分56の長さは、このL3 とL4 の和、すなわち、線分56の長さ = L3 + L4 により求めることが可能である。
【0051】
このようにして、線分54と線分56の長さが求められたため、上述した数3または数4より角度γが求まる。角度γが求まると、上述した、角度α1 = 角度β + 角度γ、および角度α2 = 角度β - 角度γにより、角度αが2種類求まる。
【0052】
処理装置12は、このようにして角度αを求めると、角度αを用いて未知ノードQ4 の位置座標を求める(ステップS5)。具体的には、未知ノードQ4からX1 軸と垂直に交わるように引いた直線100との交点を点R とし、同様に点TからX1軸と垂直に交わるように引いた直線102との交点を点S とすると、処理装置12は、既知ノードP0、未知ノードQ4、および交点R を頂点とする直角三角形130、および既知ノードP0、未知ノードQ4、および交点S を頂点とする直角三角形132を考え、未知ノードQ4の位置座標 ( XQ4 , YQ4 ) を、下記の式により求める。なお下記の式においてXP0、およびYP0 は、既知ノードP0 の位置座標である。
【0053】
XQ4 = XP0 + cos ( 角度α )
YQ5 = YP0 + sin ( 角度α )
なお前述したように角度αの大きさは、角度α1 と角度α2 の2通り考えられるため、未知ノードQ4の位置座標も2通り求められる。そこで、処理装置12は、2通りの位置座標のうち、1つを未知ノードQ4の位置座標として特定する。特定には、例えば求められた位置座標が領域16内に存在しているか否かを判断したり、また他の既知ノードとで別の最短経路を作成して他の未知ノードの位置座標を求め、この他の未知ノードとの位置座標と比較することで、求められた2つの位置座標のうち1つを、未知ノードQ4の位置座標として特定することが可能である。
【0054】
より具体的に説明すると、角度αの大きさが2通り考えられるため、未知ノードQ4の位置座標は、図5に示す未知ノードQ4で示す位置座標と、図5に点Tで示す位置座標の、2つが求められるが、領域16内に存在しない位置座標は、実際には存在しない位置、または存在しても移動不可能な位置を示していると判断することができる。よって、求められた位置座標が領域16内に位置するものであるか否かを判断することにより、2つの位置座標のうち1つを、未知ノードQ4の位置座標として特定することが可能になる。
【0055】
また例えば、未知ノードQ4を求めるために経路a を作成した既知ノードとは別の既知ノードを用いて別の最短経路を作成し、この別の最短経路を形成する未知ノードの位置座標を求め、この位置座標が求められた未知ノードとの距離から、未知ノードQ4の位置座標を特定するようにしてもよい。このように別の最短経路を作成するようにすれば、求められた2つの位置座標の両方が領域16内に位置する場合であっても、未知ノードQ4の位置座標をどちらか一方に特定することが可能になる。
【0056】
よって処理装置12は、位置座標が2種類求められると、この求められた2種類の位置座標が領域16内に位置するものであるか否かを判断する(ステップS6)。その結果、どちらか一方が領域16内に位置しない場合は、ステップS8へ進み、領域16内に位置する位置座標を未知ノードQ4の位置座標と特定する。一方、求められた2つの位置座標の両方が領域16内に存在する場合は、未知ノードQ4との距離が測定されており、かつ位置座標が求められている他の未知ノードが存在するか否かを判断する(ステップS7)。
【0057】
ステップS7における判断の結果、このような他の未知ノードが存在すれば、ステップS8へ進み、この未知ノードとの距離、およびこの未知ノードの位置座標を用いて、未知ノードQ4の位置座標を1つに特定する。例えば、図8に示すように未知ノードQ6の位置座標が求められていれば、未知ノードQ6と未知ノードQ4との距離108はステップS2により「3」であると求められているので、未知ノードQ6と未知ノードQ4の位置座標より、距離が「3」を満たす未知ノードQ4、および未知ノードQ6の位置座標を特定する。具体的には、未知ノードQ6の位置座標を ( XQ6 , YQ6 )とすると、下記の式を満たす未知ノードQ4の位置座標を1つ特定する。
【0058】
(未知ノードQ4からQ6までの距離)2 = (XQ6 - XQ4 )2 + (YQ6- YQ4 )2
なおステップS7の判断の結果、このような未知ノードが存在しない場合は、ステップS3に戻り、経路a に用いた既知ノードとは異なる既知ノードと最短経路を形成し、他の未知ノードの位置座標を求める。例えば、図8を用いて説明すれば、既知ノードP2と最短経路g を形成し、この経路g が、既知ノードP0を基準とする直交座標のY1 軸に対してなす角度ν1 および角度ν2 を求めて、未知ノードQ6の位置座標を2種類求め、未知ノードQ4との距離108が「3」となる未知ノードQ4、および未知ノードQ6を1つずつ特定する。図8は、図1に示す既知ノードP0から既知ノードP2までの部分を拡大したものであって、未知ノードQ4を特定する処理の一例を概念的に示した図である。図8において、図1と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。また図8において点V は、点T、Uと同様に、未知ノードQ6が位置する可能性のある点である。
【0059】
以上のようにして、処理装置12は、一方の既知ノードから他方の既知ノードまで、未知ノードを介する最短経路を作成し、一方または他方の既知ノードを基準とした直交座標の一方の座標軸が、この最短経路に対してなす角度を求める。そしてこの角度を用いることにより、最短経路を形成する未知ノードであって、基準とした既知ノードの隣に位置する未知ノードの位置座標を検出することが可能である。
【0060】
なお最短経路を形成する他の未知ノードの位置座標、例えば本実施例で説明すれば未知ノードQ5の位置座標は、例えば未知ノードQ4の位置座標を求めた場合と同様に、既知ノードP1を基準とした直交座標を考え、この直交座標の一方の軸が、経路a に対してなす角度を求めることにより検出してもよいし、また例えば図9に示すように角度αを用いることで求めてもよい。なお本発明はこれらに限定するわけではなく、例えば未知ノードQ4の位置座標が求められた結果、未知ノードQ5が、位置が既知の3つのノードからの距離を得た場合では、未知ノードQ5の位置座標を、これらの距離と位置が既知のノードの位置座標とを用いて検出することも可能である。
【0061】
図9は図5に示す既知ノードP0から未知ノードQ5までの部分を拡大したものであって、未知ノードQ5の位置を検出する処理の一例を概念に示した図である。図9において図5、図6と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。図9に示す例では、未知ノードQ5の位置座標を求めるために、未知ノードQ4を基準に直交座標、すなわちX2 軸、Y2 軸を考える。なお図5において、点Uは、未知ノードQ4が点Tに位置する場合の未知ノードQ5の位置である。
【0062】
このような直交座標を考えた後、未知ノードQ5から、X2 軸と垂直に交わるように垂線110を下ろしてその交点を点D とし、未知ノードQ5、未知ノードQ4、および点D を頂点とする直角三角形112を考える。この直角三角形112の頂点Q4の内角を角度ξとすると、未知ノードQ5の位置座標 ( XQ5 , YQ5 ) は、下記の式により求めることが可能である。
【0063】
XQ5 = XQ4 + cos ( 角度ξ )
YQ5 = YQ4 + sin ( 角度ξ )
未知ノードQ4の位置座標は求められているため、角度ξを求める。角度ξは、角度δが求められており、また線分54とX2軸との角が角度αの同位角であるため、角度δと角度αを用いて求めることが可能である。なお未知ノードQ4の位置座標が図5に示す位置にある場合と、図5に点T で示す位置にある場合により角度ξを求める計算式が変わることに注意する。具体的には、未知ノードQ4が点T の位置にある場合は、角度ξ1 = 角度β + 角度γ - 角度 δ により求めることが可能である。また、未知ノードQ4が図9に示す位置にある場合は、角度ξ2 = 角度β - 角度γ + 角度 δ により求めることが可能である。
【0064】
なおどちらの式を用いて角度ξを求めるかは未知ノードQ4の位置により任意に選択することが可能であるし、また、未知ノードQ4の位置座標が一つに特定されてない段階であれば、両方の式により、角度ξ1 、および角度ξ2 を求めて、未知ノードQ5の位置座標を2種類求めてもよい。未知ノードQ5の位置座標を2種類求めた場合であっても、未知ノードQ4の位置座標が1つに特定されれば、未知ノードQ4との距離を用いて未知ノードQ5の位置座標も1つに特定することが可能になる。
【0065】
以上のようにして最短経路を形成する未知ノードの位置座標を求めることが可能である。最短経路を形成しない未知ノードの位置は、位置が検出された未知ノードの位置座標、および既知ノードの位置座標を用いることで検出することが可能である。図5で説明すると、例えば経路a を形成しない未知ノードQ7の位置座標は、未知ノードQ4、未知ノードQ5の座標位置がそれぞれ1つに特定されれば、未知ノードQ4、Q5、および既知ノードP0の位置座標と、これらのノードからの距離を用いることで求めることが可能である。
【0066】
以上のように本実施例では、隣り合うノード間の距離を求めることが可能であれば、1つの未知ノードが、少なくとも3つの既知ノードからの距離を得ることができなくても、未知ノードの位置を検出することが可能である。また、隣り合うノード間の距離を電波の強度や遅延によって求めることにより、1つの既知ノードの周囲に複数の未知ノードが存在する場合であっても各未知ノードの正確な位置を検出することが可能である。
【0067】
なお図5〜図9に示す例では、角度αを求めるために、角度γを求めているが、本発明はこれに限定するわけではなく、任意のやり方を採用することが可能である。例えば、図10に示すように角度γを求めないやり方を採用してもよい。
【0068】
図10は図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までの部分を拡大したものであって、角度αを求める処理の別の一例を概念的に示した図である。なお図10において図5、図6と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。図10を用いて、角度αの別の求め方について説明する。なお図10に示す求め方において、角度δを求めるまでは図6に示す処理と同様であるため説明を省略する。角度δが求められると、リンク52が、未知ノードQ4で、リンク62に対してなす角度οを求めることが可能である。
【0069】
角度οが求められたら、既知ノードP0と未知ノードQ5とを繋いで、既知ノードP0、未知ノードQ4、および未知ノードQ5を頂点とする三角形120を考える。三角形120において、角度οを形成する2辺の長さ、すなわちリンク52とリンク62の長さは図2に示すステップS2により求められているため、余弦定理を用いることにより、既知ノードP0から未知ノードQ5までの距離、すなわちリンク122の長さを求めることが可能である。またリンク122の長さが求まると、余弦定理を用いることで、三角形120の既知ノードP0における内角である角度πを求めることが可能になる。
【0070】
またリンク122の距離が求まったため、既知ノードP0、P1、および未知ノードQ5を頂点とする三角形124を考えると、既知ノードP0から既知ノードP1までの距離は既知ノードP0と既知ノードP1の位置座標がわかっているために求めることができ、また三角形124における既知ノードP1から未知ノードQ5までの距離はステップS2で求められている。よって、余弦定理を用いることにより、三角形124における既知ノードP0における角度σを求めることが可能である。以上の角度β、角度π、角度σを用いて、角度αは、未知ノードQ4が図10の位置T にある場合は、角度α1 = 角度β + 角度σ+ 角度πを計算することにより求めることが可能である。また未知ノードQ4が図10に示す位置にある場合は、角度α2 = 角度β - 角度σ - 角度πにより求めることが可能である。
【0071】
なお、図10に示すやり方の場合、図5に示すように直角三角形58を用いる場合と異なり、未知ノードQ5や既知ノードP1の位置により角度αを求める計算式を変える必要があることに注意する。
【0072】
図11は、未知ノードQ5、P1が図10とは異なる位置にある場合における角度αを求める処理の一例を概念的に示した図である。図11において、図5、図6、および図10、と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。例えば、未知ノードQ5が図11に示すように未知ノードQ4よりも下に位置する場合、すなわち、角度δ = 角度ζ + 角度η + 角度θ - 180 を計算した際に角度δの値がマイナスになる場合は、三角形における角度οは、角度ζ + 角度η + 角度θを足した値にする必要がある。また例えば未知ノードP1が未知ノードP0よりも下側になる場合は、角度βが図11に示すようになるため、例えば未知ノードQ4が図11の点T に示す位置にある場合は、角度α1 = 角度β + 角度σ - 角度π となる。また未知ノードQ4が図11に示す位置に存在する場合は、角度α2 = 角度β - 角度σ + 角度π となる。
【0073】
このように、それぞれのノードの位置によって計算式を変える必要がある。なお計算式を変えることは、例えば未知ノードQ5が未知ノードQ4の上にある場合、下にある場合、既知ノードP1が既知ノードP0よりも上にある場合、または下にある場合というように場合毎の式を用意しておくことで対応するとよいが、本発明はこれに限定するわけではない。
【0074】
なお本発明は実施例に限定するわけではなく、任意のやり方を採用して最短経路を形成した一方のまたは他方のノードを基準とする直交座標の一方の軸が、最短経路に対してなす角度を求めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明による位置検出システムの実施例を概念的に示した図である。
【図2】図1に示す位置検出システムによる、未知ノードの位置を検出する処理手順の一例を示した図である。
【図3】各ノード間の距離を概念的に示した図である。
【図4】既知ノードP0から既知ノードP1まで未知ノードを経由する経路を示した一例である。
【図5】図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までを拡大した概念図である。
【図6】図5に示す既知ノードP0から未知ノードQ5までの部分を拡大した概念図である。
【図7】図5に示す既知ノードQ4から既知ノードP1までの部分を拡大した概念図である
【図8】図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までの部分を拡大した概念図である。
【図9】図5に示す既知ノードP0から未知ノードQ5までの部分を拡大した概念図である。
【図10】図1に示す既知ノードP0から既知ノードP1までの部分を拡大した概念図である。
【図11】ノードQ5、P1が図10とは異なる位置にある場合を示した概念図である。
【符号の説明】
【0076】
10 位置検出システム
12 処理装置
14 記憶装置
16 位置を検出する領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信手段を含み位置が既知の第1の通信装置、および無線通信手段を含み位置が未知の第2の通信装置がそれぞれ複数接続されたネットワークにおける、第2の通信装置の位置を検出する方法であって、該方法は、
少なくとも2つの第1の通信装置の位置座標を登録する第1の工程と、
第1および第2の通信装置のうち、隣り合う該通信装置間の距離を求める第2の工程と、
該距離を基に、前記位置座標を登録した少なくとも2つの第1の通信装置のうちの一方の第1の通信装置から他方の第1の通信装置まで、第2の通信装置を経由する最短経路を作成する第3の工程と、
該一方のまたは他方の第1の通信装置を基準とした直交座標の一方の軸が該最短経路に対してなす角度を求める第4の工程と、
前記距離、および該角度を用いて第2の通信装置の位置座標を求める第5の工程とを含むことを特徴とする位置検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記距離は、前記無線装置が受信した電波の強度、または電波の遅延により求められることを特徴とする位置検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記角度は、前記距離を用いて求められることを特徴とする位置検出方法。
【請求項4】
位置が既知の第1の通信装置、第1の通信装置と通信し、位置が未知の第2の通信装置、および第2の通信装置の位置を検出する位置検出装置を含む位置検出システムであって、
該システムは、第1の通信装置を少なくとも2つ含み、
第1の通信装置、および第2の通信装置は、隣り合う通信装置との距離に関する情報を作成する情報作成手段を含み、
前記位置検出装置は、該距離情報を基にして前記少なくとも2つの第1の通信装置のうちの一方の第1の通信装置から他方の第1の通信装置まで第2の通信装置を経由する最短経路を作成し、該最短経路、および前記距離を用いて、第2の通信装置の位置を検出することを特徴とする位置検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記情報は、通信装置が受信した電波の強度、または該電波の遅延を測定することにより作成されることを特徴とする位置検出システム。
【請求項1】
無線通信手段を含み位置が既知の第1の通信装置、および無線通信手段を含み位置が未知の第2の通信装置がそれぞれ複数接続されたネットワークにおける、第2の通信装置の位置を検出する方法であって、該方法は、
少なくとも2つの第1の通信装置の位置座標を登録する第1の工程と、
第1および第2の通信装置のうち、隣り合う該通信装置間の距離を求める第2の工程と、
該距離を基に、前記位置座標を登録した少なくとも2つの第1の通信装置のうちの一方の第1の通信装置から他方の第1の通信装置まで、第2の通信装置を経由する最短経路を作成する第3の工程と、
該一方のまたは他方の第1の通信装置を基準とした直交座標の一方の軸が該最短経路に対してなす角度を求める第4の工程と、
前記距離、および該角度を用いて第2の通信装置の位置座標を求める第5の工程とを含むことを特徴とする位置検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記距離は、前記無線装置が受信した電波の強度、または電波の遅延により求められることを特徴とする位置検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記角度は、前記距離を用いて求められることを特徴とする位置検出方法。
【請求項4】
位置が既知の第1の通信装置、第1の通信装置と通信し、位置が未知の第2の通信装置、および第2の通信装置の位置を検出する位置検出装置を含む位置検出システムであって、
該システムは、第1の通信装置を少なくとも2つ含み、
第1の通信装置、および第2の通信装置は、隣り合う通信装置との距離に関する情報を作成する情報作成手段を含み、
前記位置検出装置は、該距離情報を基にして前記少なくとも2つの第1の通信装置のうちの一方の第1の通信装置から他方の第1の通信装置まで第2の通信装置を経由する最短経路を作成し、該最短経路、および前記距離を用いて、第2の通信装置の位置を検出することを特徴とする位置検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記情報は、通信装置が受信した電波の強度、または該電波の遅延を測定することにより作成されることを特徴とする位置検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−221541(P2007−221541A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40790(P2006−40790)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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