位置検出装置、位置検出回路及び位置検出方法
【課題】簡単な構成で人体を介して混入するノイズも効果的に相殺する、極めて精度が高く有用な位置検出装置を提供する。
【解決手段】受信電極を構成する各々の受信電極を三分割し、中心の電極を差動増幅器のプラス側入力端子に、両脇の電極を差動増幅器のマイナス側入力端子に接続することで、人体の指から混入するノイズを差動増幅器で効果的に相殺することができる。その際、従来技術の静電容量方式の位置検出装置のハードウェア構成はほぼそのままに、ソフトウェアをマトリクス電極に合わせて変更するだけで、容易に実現できる。
【解決手段】受信電極を構成する各々の受信電極を三分割し、中心の電極を差動増幅器のプラス側入力端子に、両脇の電極を差動増幅器のマイナス側入力端子に接続することで、人体の指から混入するノイズを差動増幅器で効果的に相殺することができる。その際、従来技術の静電容量方式の位置検出装置のハードウェア構成はほぼそのままに、ソフトウェアをマトリクス電極に合わせて変更するだけで、容易に実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、位置検出回路及び位置検出方法に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、静電式の位置検出装置の、位置検出平面から混入するノイズを低減し、指の検出精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに位置情報を与える入力装置には、様々なものがある。その中で、タッチパネルと呼ばれる、二次元位置情報入力装置(以下「位置検出装置」)がある。
タッチパネルは、指や専用のペン等の入力体で検出平面に触れることで、コンピュータ等の操作を行なう入力装置である。指やペンが触れた位置を検知して画面上の位置を指定し、コンピュータに指示を与える。
タッチパネルは、PDA(Personal Digital Assistant)や銀行のATM(Automated Teller Machine)、駅の券売機等で広く利用されている。
【0003】
タッチパネルに採用される位置情報検出技術には、様々なものがある。例えば、圧力の変化で位置検出を行う抵抗膜方式や検出平面の表面の膜の静電容量の変化で位置検出を行う静電容量方式等がある。
【0004】
静電容量方式の位置検出装置の動作原理を説明する。
長方形等の絶縁シートの表と裏に、電極線をそれぞれ格子状に配線する。片方の面の電極線に交流信号を与え、絶縁シートを介した裏側の面の電極線から電流を検出する。格子状に配線される電極線の交点には、絶縁シートを介してコンデンサが形成されるので、両方の電極線に交流電圧を印加すると、電流が流れる。
この時、交流信号の周波数を例えば200kHzに設定し、人体の指を片方の電極線に近づけると、交流電圧によってコンデンサに蓄電される電荷の一部が人体に吸収される現象が生じる。この、人体に電荷の一部が吸収されることによって生じるコンデンサの容量変化を、当該コンデンサに流れる電流を通じて検出する。ただし、検出できる電流は極めて微弱であるので、周知のオペアンプによる電流電圧変換回路を介して電圧信号に変換すると共に、電圧増幅を行う。
【0005】
なお、本出願人の発明に係る従来技術を、特許文献1に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−020992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電流電圧変換処理を施して増幅した信号であっても、元々が微弱な電流であるため、検出した信号には装置の周囲のノイズが混入してしまう。そこで、周知の差動増幅によるノイズキャンセリングを行う。
受信側の電極線から、指を検出できるだけの間隔を空けた二本の電極線を選択し、差動増幅器にそれぞれ受信側の電極線を接続すると、片方の電極線に指が近づいていれば、もう片方の電極線には指が近づいていないので、それぞれの信号の差をとることで、指の存在を検出できる。また、双方の電極線に同相で混入するノイズ成分は、差動増幅器で相殺される。
【0008】
ところで、周囲の電灯線のハムノイズ等が、人体を介して混入する。
このような人体を解して混入するノイズの場合、前述のような受信側の電極線の構成では、差動増幅器によって相殺することができない、という問題が生じる。その結果、指の位置を正しく検出できなくなったり、位置検出装置自体の誤動作を生じるという問題を生じる。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で人体を介して混入するノイズも効果的に相殺する、極めて精度が高く有用な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の位置検出装置は、第一の方向及び該第一の方向に直交する第二の方向にそれぞれ複数の導体が配置された導体パターンと、第一の方向に配置された導体に送信信号を供給する送信信号供給回路と、該送信信号生成回路から出力された送信信号を第一の方向に配置された複数の導体のうちの所定の導体に供給する第一の導体選択回路と、第一及び第二の入力端子を有し、該第一及び第二の入力端子に入力された信号を差動増幅して出力する差動増幅回路と、第二の方向に配置された複数の導体のうちから互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体を含む複数の導体を選択し、該選択し複数の導体のうち両端側に位置する導体からの信号を差動増幅回路の第一の入力端子に供給し、両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号を差動増幅回路の第二の入力端子に供給する第二の選択回路と、を備える。
【0011】
受信電極を構成する各々の受信電極線を三分割し、中心の電極線を差動増幅器のプラス側入力端子に、両脇の電極線を差動増幅器のマイナス側入力端子に接続することで、人体の指から混入するノイズを差動増幅器で効果的に相殺することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、簡単な構成で人体を介して混入するノイズも効果的に相殺する、極めて精度が高く有用な位置検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の例である表示機能付入力装置の外観斜視図及び分解斜視図である。
【図2】表示機能付入力装置の断面図である。
【図3】センサ基板を分解した状態を示す模式図である。
【図4】センサ基板の一部断面図と、動作原理を示す一部回路図である。
【図5】従来技術と比較した本実施形態の位置検出装置の受信電極の動作原理を示す概略図である。
【図6】本実施形態の位置検出装置の全体ブロック図である。
【図7】受信電極選択スイッチ及びアナログ信号処理部のブロック図である。
【図8】制御部のブロック図である。
【図9】各種信号のタイムチャートである。
【図10】バッファメモリとアドレスの関係を示す概略図である。
【図11】別の受信電極及び受信電極選択スイッチの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図11を参照して説明する。
【0015】
[表示機能付入力装置の外観]
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の例である表示機能付入力装置の外観斜視図及び分解斜視図である。
表示機能付入力装置101は、LCD(Liquid Crystal Display)と静電型位置検出装置が組み合わされ、一体化した装置である。
この表示機能付入力装置101は、液晶モジュール部102が、ケース部103に収納されている。液晶モジュール部102の表面とケース部103の周縁部分は、ユーザが描画操作をする際に自然な描画ができるように、同じ高さに形成されている。
【0016】
図1(b)は、表示機能付入力装置101の分解斜視図である。
液晶モジュール部102は、その表面に透明アクリル板よりなる保護板104を有する。保護板104の裏側には樹脂フレーム105が接着剤によって接着されている。樹脂フレーム105の下側には、金属ベゼル106が図示しないねじによってねじ止めされている。
ケース部103は上ケース107と下ケース108が積層されて形成されている。上ケース107には、その上面の内周部分に、液晶モジュール部102の保護板104の周縁部分が嵌る凹部109が形成されている。一方、下ケース108は後述する図2で示すが、液晶モジュール部102の裏側を保護する密閉構造となっている。
【0017】
[表示機能付入力装置の内部構造]
図2は、表示機能付入力装置101の、図1(a)のa−a’線における断面図である。
液晶モジュール部102を構成する保護板104の周縁には、樹脂フレーム105との接着面を遮蔽して美観を向上させるための、シルク印刷面202が設けられている。
樹脂フレーム105は保護板104の面と比べて一回り小さく作られている枠である。樹脂フレーム105の一端は接着剤によって保護板104の周縁に設けられるシルク印刷面202に接着される。
樹脂フレーム105には、保護板104の直下から順番に、センサ基板206、液晶セル203、導光板204及びバックライト205、そして支持板207が積層された状態で収納される。
支持板207の周縁は、センサ基板206、液晶セル203、導光板204及びバックライト205、そして支持板207が樹脂フレーム105から外れないように、金属ベゼル106が樹脂フレーム105にねじ止めされることによって押さえ込まれている。
【0018】
液晶セル203は、LCDそのものである。
バックライト205は、蛍光灯や白色LED等、低電力で高輝度の発光を実現する光源である。
導光板204は、バックライト205の光を液晶セル203に導き、透過させるための、乱反射を実現する透明アクリル板である。
【0019】
センサ基板206は、静電型位置検出装置のセンサを構成する送信電極及び受信電極のパターンが印刷された、シート状の透明フレキシブルプリント基板である。
センサ基板206は、LCDの視認性を確保するため、周知のITO(酸化インジウム・スズ)膜等の、透明な配線パターンが用いられる。
なお、センサ基板206は透明のプリント基板でもよい。
【0020】
次に、センサ基板206の構造について、図3に従って説明する。
センサ基板206は、二層の導電層を備えるフレキシブルプリント基板である。このセンサ基板206は、例えば周知のポリイミド等の絶縁フィルム302の一方の面に線状の導体からなる受信電極303が、他方の面に線状の導体からなる送信電極304が、配線パターンとして形成されている。
受信電極303の更に保護板104側には、絶縁フィルム305が設けられている。
送信電極304の更に液晶セル203側には、絶縁フィルム306が設けられている。
これら、絶縁フィルム305、受信電極303、絶縁フィルム302、送信電極304、そして絶縁フィルム306の積層状態は、図4(a)に断面図として示している。
【0021】
受信電極303は長方形を成すセンサ基板206の長辺方向(第二の方向)に平行なプリントパターンにて形成されている。
受信電極303のパターンは、太い電極線と、その両脇に細い電極線が配されており、この三本の電極の組が複数並んでいる。この三本の電極の組は、従来技術の受信電極の一本分に相当する。
送信電極304はセンサ基板206の短辺方向(第一の方向)に平行なプリントパターンにて形成されており、受信電極303とは直交関係にある。
【0022】
図4(a)及び(b)は、センサ基板206の一部断面図と、動作原理を示す一部回路図である。なお、説明を簡単にするために、保護板104を省略して図示している。
プラス側電極402は幅が広い電極線である。
マイナス側電極403a及び403bは、プラス側電極402の両脇に配される、プラス側電極402よりも幅が狭い電極線である。
図4(b)は、受信電極303とその直後に接続される信号処理回路を示す回路図である。
プラス側電極402は、電流電圧変換回路405aを介して、差動増幅器406のプラス側入力端子に接続される。
マイナス側電極403a及び403bは、両方共、電流電圧変換回路405bを介して、差動増幅器406のマイナス側入力端子に接続される。
【0023】
次に、図5(a)、(b)、(c)及び(d)を用いて、本実施形態の位置検出装置の受信電極303の動作原理を従来技術と比較して説明する。
図5(a)は、従来技術の静電方式の位置検出装置の動作原理を示す概略図である。
図5(b)は、図5(a)の静電方式の位置検出装置の動作原理を示す回路図である。なお、説明を簡略化するために、電流電圧変換回路405a及び405bは省略している。
【0024】
受信電極303と送信電極304は、その各交点にはコンデンサが形成される。そこで、送信電極304に交流電圧を印加して、受信電極303で電流を検出する。
受信電極303に指が近づくと、電気力線(電荷)の一部が指に吸い取られる現象が発生する。すると、コンデンサの静電容量が小さくなり、結果的に当該コンデンサにおいて検出される電流が少なくなる。静電方式の位置検出装置は、この現象を検出するものである。
実際の装置では、検出できる電流が極めて微弱なので、オペアンプよりなる周知の電流電圧変換回路を介して電圧に変換した上で増幅する。
【0025】
電流電圧変換処理を施して増幅した信号であっても、元々が微弱な電流であるため、検出した信号には装置の周囲のノイズが混入する。そこで、周知の差動増幅によるノイズキャンセリングを行う。
指が近接している受信電極503aの信号と、指が近接していない受信電極503bの信号とを、差動増幅する。
図5(a)では、プラス側である受信電極503aに指が近接している一方で、マイナス側である受信電極503bには指が近接していない。このように、受信電極503aと受信電極503bを、ある程度以上の距離だけ離して、図5(b)に示すように差動増幅を行う。すると、受信電極503aと受信電極503bに同相にて混入するノイズ成分は、オペアンプによる差動増幅器406によって相殺される。
【0026】
しかしながら、例えば、周囲の電灯線のハムノイズ等が、人体を介して受信電極303に混入してしまう。
このような人体を介して混入するノイズは、図5(a)に示すような受信電極303の構成では、人体に近接する受信電極503aのみにノイズが混入するから、差動増幅器406によって相殺することができない。
そこで、本実施形態では、受信電極303自体にノイズキャンセリングの機能を持たせる構成とした。
【0027】
図5(c)は、本実施形態の位置検出装置の動作原理を示す概略図である。
図5(d)は、図5(c)の位置検出装置の動作原理を示す回路図である。
本実施形態の受信電極303は、従来技術の受信電極303の一本分の電極線を、三本に分割した。
中心にはプラス側電極402を、その両脇にはマイナス側電極403a及び403bを設けている。
【0028】
プラス側電極402の幅と、マイナス側電極403a及び403bの幅の比は、例えば2:1に構成される。つまり、プラス側電極402と送信電極304との交点が形成するコンデンサの静電容量と、二本のマイナス側電極403a及び403bと送信電極304との交点が形成するコンデンサの静電容量とが、等しくなるように構成されている。
指によって吸収される電気力線は、プラス側電極402の両脇に配置されている二本のマイナス側電極403a及び403bからのみ生じる。
【0029】
図5(c)に示すように、従来技術の受信電極303の一本分の電極線が、プラス側電極402とマイナス側電極403a及び403bとで構成されているので、図5(d)に示すように、このまま差動増幅が可能である。
このような構成の受信電極303であるので、人体の指407を介在して混入するノイズも、差動増幅器406によって相殺することができる。
【0030】
以上のような受信電極303の、サイズについて説明する。
実際に位置検出装置を設計する際には、指407を的確に検出するために、受信電極303の幅を考慮しなければならない。
一般的な小指で接触したときの面積を想定すると、直径で7〜8mm程度の大きさが検出できれば良いと考えられる。そこで、その半分以下の数値で、プラス側電極402とマイナス側電極403a及び403bの合計の幅が3.2mm程度とするのが好ましい。
【0031】
プラス側電極402とマイナス側電極403a及び403bの合計の幅が3.2mmの場合、
・プラス側電極402の幅は3.2mm÷2=1.6mm
・マイナス側電極403a及び403bの幅は1.6mm÷2=0.8mm
となり、これらの値から更に絶縁を確保するための溝の幅を減じた幅となる。
【0032】
一本のプラス側電極402と、その両脇に配置されるマイナス側電極403a及び403bの組を、「受信電極線の組」と定義する。つまり、受信電極線の組一組は、従来技術の受信電極一本分に相当する。図5(b)の受信電極503a及び803bがこれに該当する。
受信電極線の組同士の間隔は、従来技術とほぼ同じと考えてよい。つまり、密集していれば分解能は向上するが、その分受信電極線の組の数が増えるので、センサ基板206の位置検出面全体をスキャンする際に、時間がかかってしまう。
従来技術でも、電極と電極の間は後述する重心演算による補完で分解能を向上できるので、この分解能が十分確保できる間隔であればよい。
【0033】
[位置検出装置の構成と動作]
これより、図6から図10まで、本実施形態の位置検出装置の構成と動作を説明する。
図6は本実施形態の位置検出装置601の全体ブロック図である。
【0034】
位置検出装置601は、信号供給回路602と、送信電極選択スイッチ603と、受信電極選択スイッチ604と、アナログ信号処理部605と、A/D変換器606と、制御部607と、複数の送信電極304及び受信電極とからなるマトリクス電極619とから構成される。
信号供給回路502は交流信号を送信電極304に与える回路である。
送信電極選択スイッチ503は、後述する制御部607の制御により信号供給回路502が生成した交流電圧信号を、送信電極304を構成する各電極線に順番に印加するスイッチである。
受信電極選択スイッチ504は、後述する制御部607の制御により受信電極303を構成する各電極線を後段のアナログ処理部605に順番に接続するスイッチである。
この受信電極選択スイッチ504の後続にはアナログ信号処理部505が接続され、受信電極選択スイッチ504を通じて検出した微弱な電流信号を大きな電圧信号に変換して出力する。
A/D変換器506はアナログ信号処理部505が出力する信号の電圧をデジタル値に変換する。
制御部507は例えばマイコンよりなり、A/D変換器506が出力するデジタルデータに基づいて、指を検出した位置のデータを算出し、これを出力する。
【0035】
信号供給回路502の内部を説明する。
信号供給回路602は、サイン波ROM612と、読み出し部613と、クロック生成期614と、D/A変換器615と、ローパスフィルタ(LPF)616と、増幅器617と、送信制御スイッチ618とから構成される。
サイン波ROM512は、サイン波形のデジタルデータがアドレスを伴って記憶されているROM(Read Only Memory)である。
読み出し部513は、クロック生成器514が生成するクロックに基づいて、サイン波ROM512を読み出し、サイン波に類似するデジタルデータを出力する。
この読み出し部613から出力されたデジタルデータは、D/A変換器515によってアナログ信号に変換される。
D/A変換器515から出力されたアナログ信号はLPF516で不要な高周波成分が除去され、より滑らかなサイン波に整形される。
LPF516から出力されるサイン波アナログ信号は増幅器517で電圧増幅された後、送信制御スイッチ518を通じて送信電極選択スイッチ503に出力される。この送信制御スイッチ518は、制御部607の制御により受信側のアナログ信号処理部505及びA/D変換器506の動作タイミングに合わせてオン・オフされる。
【0036】
次に、図7を参照して受信電極選択スイッチ604及びアナログ信号処理部605について詳述する。
受信電極選択スイッチ604は、二つのアナログデマルチプレクサ702a及び702bから構成されている。
一方のアナログデマルチプレクサ702aは、各受信電極303を構成するプラス電極線402を選択的にアナログ信号処理部605に接続するためのスイッチである。他方のアナログデマルチプレクサ702bは、各受信電極303を構成するマイナス電極線403aを選択的にアナログ信号処理部605に接続するためのスイッチである。
二つのアナログデマルチプレクサ602a及び602bは同数の端子を備え、同じアドレス指定データで切替駆動される。このアドレス指定データは制御部507から供給される。
【0037】
アナログ信号処理部605は、二つの電流/電圧変換回路405a、405bと、二つの差動増幅器406、704と、同期検波器703と、リセットスイッチ706とから構成される。プラス側電極402の出力信号と、マイナス側電極403a及び403bの出力信号は、それぞれ電流電圧変換回路405a及び405bに入力される。
電流電圧変換回路405a及び405bは、マイナス側電極403a及び403bの出力信号を電圧信号に変換して、それぞれ差動増幅器406に入力される。
差動増幅器406は周知のオペアンプよりなる差動増幅器である。差動増幅器406は、電流電圧変換回路405a及び405bから入力された電圧信号を差動増幅して出力する。この差動増幅器406による差動増幅により、プラス側電極402及びマイナス側電極403a及び403bのそれぞれに混入する同相ノイズ成分は相殺される。
【0038】
差動増幅器406の出力信号は、同期検波器703に入力される。
同期検波器703は、例えば、周知のオペアンプからなるアナログ乗算器である。この同期検波器703には、信号供給回路602から入力されたサイン波電圧信号(検波信号)と差動増幅器406の出力信号とが入力される。そして、この同期検波器703は、差動増幅器406からの出力信号を同期検波して出力する。この同期検波器703から出力された信号は、積分器707に入力される。
積分器707は、オペアンプ704aとコンデンサC705とから構成される。この積分器707には、リセットスイッチ706が接続されている。
リセットスイッチ706は、制御部607の制御によりオン・オフ制御されるスイッチで、コンデンサC705と並列に接続されている。そして、このリセットスイッチ706のオン・オフにより、コンデンサC705に蓄積された電荷が充放電されるようになっている。
そして、同期検波器703から出力された信号は、この積分器707において積分処理されて出力される。
【0039】
積分器の出力信号はA/D変換器506に入力されアナログ−デジタル変換されて出力される。なおA/D変換器506の変換タイミングは制御部507によって制御される。
このA/D変換器506の出力データは制御部507に入力される。制御部507は、A/D変換器506から得られたデータを基に、センサ基板206に指が近づいているか否かを示す状態情報と、近づいているとしたらどの位置に指が位置しているのかを示す位置情報を出力する。
【0040】
次に、制御部607の構成と動作とを図8に従って説明する。ここで、図8は、制御部607のブロック図である。この制御部607は、タイミング生成部802と、送信電極アドレスカウンタ803と、バッファメモリ804と、受信電極アドレスカウンタ805と、重心演算部806とから構成される。
タイミング信号生成部702は、信号供給回路502とアナログ信号処理部505とA/D変換器506に、それぞれタイミング信号を出力すると共に、送信電極アドレスカウンタ703にクロックを供給する。
送信電極アドレスカウンタ703は、タイミング信号生成部702から供給されるクロックを計数し、この計数値を送信電極側アドレスとして送信電極選択スイッチ503とバッファメモリ704に供給する。
送信電極アドレスカウンタ703は送信電極304の数と同数の最大値まで計数できるカウンタであり、計数値が送信電極304の数、すなわち最大値を超えると1に戻るループカウンタを構成している。そして、この送信電極アドレスカウンタ803は、最大値から更に係数を進めて1に戻る際、オーバーフロービットが1になる。このオーバーフロービットが出力されて、受信電極アドレスカウンタ705に供給される。
【0041】
受信電極アドレスカウンタ705は、送信電極アドレスカウンタ703から供給されるオーバーフロービットを計数し、この計数値を受信電極側アドレスとして受信電極選択スイッチ504とバッファメモリ704に供給する。
この受信電極アドレスカウンタ705は受信電極303の数と同数の最大値まで計数できるカウンタであり、計数値が受信電極303の数を超えると1に戻る、ループカウンタを構成している。そして、この受信電極アドレスカウンタ805は最大値から更に係数を進めて1に戻る際、オーバーフロービットが1になる。このオーバーフロービットが出力されて、重心演算部706に供給される。
【0042】
バッファメモリ704はA/D変換器506から得られたデータを一時的に記憶するメモリである。このバッファメモリ704に記憶されるデータのアドレスは、送信電極アドレスカウンタ703から出力される送信電極側アドレスと、受信電極アドレスカウンタ705から出力される受信電極側アドレスとによって決定される。
【0043】
重心演算部706は、バッファメモリ704内のデータを参照して、指の存在の有無とその位置を演算する。
【0044】
次に、図6に示す位置検出装置601の動作を、図9に示すタイムチャートを用いて説明する。
図9(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)は各種信号のタイムチャートである。
送信電極側アドレス(図9(b))は1から始まり値n(nは自然数)が最大値である。この値nは送信電極304を構成する電極の数と等しい。送信電極側アドレスがnに達すると、受信電極側アドレスが1インクリメントする(図9(a))。
受信電極側アドレス(図9(a))は1から始まり値m(mは自然数)が最大値である。この値mは受信電極303を構成するプラス側電極402とその両脇に配線されるマイナス側電極403a及び403bの組の数、すなわち受信電極線の組と等しい。
【0045】
図9(c)は、送信電極側アドレスを示すタイムチャートであり、図9(b)の一部分の時間軸を拡大した状態を示す図である。図9(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)は図9(c)のタイムチャートと同じ時間軸にて示すタイムチャートである。
図9(d)は、信号供給回路602の出力信号の波形である。
図9(e)は、制御部507から信号供給回路502の送信制御スイッチ518に与えられる、送信制御信号の波形である。送信制御スイッチ518は送信制御信号が高電位の時(t1〜t2、t6〜t7及びt11〜t12)にオン状態となり、低電位(t2〜t6及びt7〜t11)の時にオフ状態となる。したがって、信号供給回路602の出力信号(図9(d))は、送信制御信号が高電位の時にのみサイン波の信号が出力される。
【0046】
図9(f)は差動増幅器406から得られる出力信号である。指が存在しない箇所では波形は現れない(t1〜t2)が、指が受信電極303の電極線に近い箇所では駆動部から出力された交流電圧信号と同じ波形の信号が現れる(t6〜t7)。受信電極303の電極に指が近ければ近いほど、その波形の電位は高くなる(t11〜t12)。
【0047】
図9(g)は積分器707の出力信号の波形である。
図9(h)は制御部507からA/D変換器506に供給されるトリガ信号の波形である。
図9(i)は制御部507から積分器707のリセットスイッチ606に与えられる、リセット信号の波形である。
【0048】
トリガ信号(図9(h))は、送信制御信号が低電位の時(t2、t7及びt12)、つまり送信制御スイッチ518がオフの時に高電位になる。このトリガ信号はA/D変換器506に対する起動パルスであるので、所定の時間を経過したらトリガ信号はオフ制御される(t3、t8及びt13)。
【0049】
そして、A/D変換器506が入力電圧のアナログ/デジタル変換処理を完了するのに十分な時間が経過したら、積分器707のコンデンサC605に蓄積されている電荷を放電させるために、リセット信号(図9(i))を高電位にする(t4、t9及びt14)。すると、リセットスイッチ606がオン制御され、コンデンサC605の電荷は放電される。コンデンサC605に溜まった電荷を放電する時間はごく僅かで済むので、程なくしてリセット信号はオフ制御される(t5、t9及びt15)。
【0050】
図10はバッファメモリ704とアドレスの関係を示す概略図である。
バッファメモリ704は、マトリクス電極619の交点の数と等しいバイト数のメモリである。マトリクス電極619の各交点は、送信電極側アドレスと受信電極側アドレスの組で特定される。
各交点で検出された信号強度は、バッファメモリ704に記憶される。
全ての交点の信号強度を検出したら、バッファメモリ704には全ての交点の信号強度の値が格納されている。図10は、その時の状態を模式的に示すものである。
バッファメモリ704の、指が存在する範囲では、信号強度の値が指の中心に向かって大きくなっている。重心演算部706は、このような信号強度の値の分布を検出し、その中心点、つまり重心を演算する。
【0051】
以上、図6乃至図10で説明した位置検出装置601は、マトリクス電極619の構成を除き、従来技術の静電式位置検出装置の信号処理と殆ど変わらない。特に、ハードウェアとして構成される信号供給回路502、アナログ信号処理部505及びA/D変換器506は、殆ど設計変更を要しない。
プログラムにて実現される制御部507の、タイミング信号生成部702、送信電極アドレスカウンタ703、受信電極アドレスカウンタ705、そして重心演算部706を、マトリクス電極619に合わせて変更するだけでよい。
つまり、本実施形態の位置検出装置601は、従来技術の静電式位置検出装置のハードウェア構成はほぼそのままに、ソフトウェアをマトリクス電極619に合わせて変更するだけで、容易に実現できる。そして、出来上がった位置検出装置601は、従来技術の静電式位置検出装置と比べると、人体の指から混入するノイズを差動増幅器406で効果的に相殺することができる。
【0052】
本実施形態には、以下のような応用例が考えられる。
(1)プラス側電極402の幅と、マイナス側電極403a及び403bとの幅の比は、必ずしも厳密に2:1でなくてもよい。入力信号のレベルのばらつきは差動増幅器406の調整で吸収できる。
【0053】
(2)受信電極303を構成する各電極は、中央に配置した電極ををプラス側電極402とし、その両脇に配置した電極をマイナス側電極403a及び403bと定義したが、必ずしも差動増幅器406のプラス側入力端子が電極の中心に位置する電極をプラス側電極402にしなくてもよい。つまり、差動増幅器406と電極線の極性は逆であっても良く、例えば、中央の電極を「マイナス側電極」とし、その両脇の電極を「プラス側電極」として、差動増幅器406に接続してもよい。
【0054】
(3)送信電極は、その中央に位置するプラス側電極402が、その両脇に配置されるマイナス側電極403a及び403bよりも太い構成でなくてもよい。
図11は、別の受信電極及び受信電極選択スイッチの構成を示す概略図である。
受信電極1103は、均等な太さの導体が並んでいる。
受信電極選択スイッチ1104は、受信電極1103の複数の導体を、アナログ信号処理部505のプラス側端子に、更にその両脇に存在する導体を、アナログ信号処理部505のマイナス側端子に、それぞれ接続している。つまり、受信電極選択スイッチ1104がアナログ信号処理部505のプラス側端子或はマイナス側端子に接続する導体の本数で、送信電極の太さと実質的に等価な電気的特性を実現する。
図11に示す受信電極1103及び受信電極選択スイッチ1104の構成を採る場合、受信電極選択スイッチ1104の接続状態で、一本の導体をアナログ信号処理部505のプラス側端子或はマイナス側端子のどちらにも、自由に接続することができる。したがって、受信電極選択スイッチ1104の接続パターンを、受信電極1103を構成する導体の一本単位で移動できるので、指の位置を検出するための分解能を向上させることができる。
【0055】
本実施形態においては、位置検出装置を開示した。
受信電極を構成する各々の受信電極線を三分割し、中心の電極線を差動増幅器のプラス側入力端子に、両脇の電極線を差動増幅器のマイナス側入力端子に接続することで、人体の指から混入するノイズを差動増幅器で効果的に相殺することができる。その際、従来技術の静電式位置検出装置のハードウェア構成はほぼそのままに、ソフトウェアをマトリクス電極に合わせて変更するだけで、容易に実現できる。
【0056】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0057】
101…表示機能付入力装置、102…液晶モジュール部、103…ケース部、104…保護板、105…樹脂フレーム、106…金属ベゼル、107…上ケース、108…下ケース、109…凹部、202…シルク印刷面、203…液晶セル、204…導光板、205…バックライト、206…センサ基板、207…支持板、302…絶縁フィルム、303…受信電極、304…送信電極、305…絶縁フィルム、306…絶縁フィルム、402…プラス側電極、403a…マイナス側電極、405a、405b…電流電圧変換回路、406…差動増幅器、407…指、503a、503b…受信電極、602…信号供給回路、603…送信電極選択スイッチ、604…受信電極選択スイッチ、605…アナログ信号処理部、606…A/D変換器、607…制御部、612…サイン波ROM、613…読み出し部、614…クロック生成器、615…D/A変換器、616…LPF、617…増幅器、618…送信制御スイッチ、701…位置検出装置、702a、702b…アナログデマルチプレクサ、703…同期検波器、704…オペアンプ、C705…コンデンサ、706…リセットスイッチ、719…マトリクス電極、802…タイミング信号生成部、803…送信電極アドレスカウンタ、804…バッファメモリ、805…受信電極アドレスカウンタ、806…重心演算部、1103…受信電極、1104…受信電極選択スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、位置検出回路及び位置検出方法に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、静電式の位置検出装置の、位置検出平面から混入するノイズを低減し、指の検出精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに位置情報を与える入力装置には、様々なものがある。その中で、タッチパネルと呼ばれる、二次元位置情報入力装置(以下「位置検出装置」)がある。
タッチパネルは、指や専用のペン等の入力体で検出平面に触れることで、コンピュータ等の操作を行なう入力装置である。指やペンが触れた位置を検知して画面上の位置を指定し、コンピュータに指示を与える。
タッチパネルは、PDA(Personal Digital Assistant)や銀行のATM(Automated Teller Machine)、駅の券売機等で広く利用されている。
【0003】
タッチパネルに採用される位置情報検出技術には、様々なものがある。例えば、圧力の変化で位置検出を行う抵抗膜方式や検出平面の表面の膜の静電容量の変化で位置検出を行う静電容量方式等がある。
【0004】
静電容量方式の位置検出装置の動作原理を説明する。
長方形等の絶縁シートの表と裏に、電極線をそれぞれ格子状に配線する。片方の面の電極線に交流信号を与え、絶縁シートを介した裏側の面の電極線から電流を検出する。格子状に配線される電極線の交点には、絶縁シートを介してコンデンサが形成されるので、両方の電極線に交流電圧を印加すると、電流が流れる。
この時、交流信号の周波数を例えば200kHzに設定し、人体の指を片方の電極線に近づけると、交流電圧によってコンデンサに蓄電される電荷の一部が人体に吸収される現象が生じる。この、人体に電荷の一部が吸収されることによって生じるコンデンサの容量変化を、当該コンデンサに流れる電流を通じて検出する。ただし、検出できる電流は極めて微弱であるので、周知のオペアンプによる電流電圧変換回路を介して電圧信号に変換すると共に、電圧増幅を行う。
【0005】
なお、本出願人の発明に係る従来技術を、特許文献1に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−020992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電流電圧変換処理を施して増幅した信号であっても、元々が微弱な電流であるため、検出した信号には装置の周囲のノイズが混入してしまう。そこで、周知の差動増幅によるノイズキャンセリングを行う。
受信側の電極線から、指を検出できるだけの間隔を空けた二本の電極線を選択し、差動増幅器にそれぞれ受信側の電極線を接続すると、片方の電極線に指が近づいていれば、もう片方の電極線には指が近づいていないので、それぞれの信号の差をとることで、指の存在を検出できる。また、双方の電極線に同相で混入するノイズ成分は、差動増幅器で相殺される。
【0008】
ところで、周囲の電灯線のハムノイズ等が、人体を介して混入する。
このような人体を解して混入するノイズの場合、前述のような受信側の電極線の構成では、差動増幅器によって相殺することができない、という問題が生じる。その結果、指の位置を正しく検出できなくなったり、位置検出装置自体の誤動作を生じるという問題を生じる。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で人体を介して混入するノイズも効果的に相殺する、極めて精度が高く有用な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の位置検出装置は、第一の方向及び該第一の方向に直交する第二の方向にそれぞれ複数の導体が配置された導体パターンと、第一の方向に配置された導体に送信信号を供給する送信信号供給回路と、該送信信号生成回路から出力された送信信号を第一の方向に配置された複数の導体のうちの所定の導体に供給する第一の導体選択回路と、第一及び第二の入力端子を有し、該第一及び第二の入力端子に入力された信号を差動増幅して出力する差動増幅回路と、第二の方向に配置された複数の導体のうちから互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体を含む複数の導体を選択し、該選択し複数の導体のうち両端側に位置する導体からの信号を差動増幅回路の第一の入力端子に供給し、両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号を差動増幅回路の第二の入力端子に供給する第二の選択回路と、を備える。
【0011】
受信電極を構成する各々の受信電極線を三分割し、中心の電極線を差動増幅器のプラス側入力端子に、両脇の電極線を差動増幅器のマイナス側入力端子に接続することで、人体の指から混入するノイズを差動増幅器で効果的に相殺することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、簡単な構成で人体を介して混入するノイズも効果的に相殺する、極めて精度が高く有用な位置検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の例である表示機能付入力装置の外観斜視図及び分解斜視図である。
【図2】表示機能付入力装置の断面図である。
【図3】センサ基板を分解した状態を示す模式図である。
【図4】センサ基板の一部断面図と、動作原理を示す一部回路図である。
【図5】従来技術と比較した本実施形態の位置検出装置の受信電極の動作原理を示す概略図である。
【図6】本実施形態の位置検出装置の全体ブロック図である。
【図7】受信電極選択スイッチ及びアナログ信号処理部のブロック図である。
【図8】制御部のブロック図である。
【図9】各種信号のタイムチャートである。
【図10】バッファメモリとアドレスの関係を示す概略図である。
【図11】別の受信電極及び受信電極選択スイッチの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図11を参照して説明する。
【0015】
[表示機能付入力装置の外観]
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の例である表示機能付入力装置の外観斜視図及び分解斜視図である。
表示機能付入力装置101は、LCD(Liquid Crystal Display)と静電型位置検出装置が組み合わされ、一体化した装置である。
この表示機能付入力装置101は、液晶モジュール部102が、ケース部103に収納されている。液晶モジュール部102の表面とケース部103の周縁部分は、ユーザが描画操作をする際に自然な描画ができるように、同じ高さに形成されている。
【0016】
図1(b)は、表示機能付入力装置101の分解斜視図である。
液晶モジュール部102は、その表面に透明アクリル板よりなる保護板104を有する。保護板104の裏側には樹脂フレーム105が接着剤によって接着されている。樹脂フレーム105の下側には、金属ベゼル106が図示しないねじによってねじ止めされている。
ケース部103は上ケース107と下ケース108が積層されて形成されている。上ケース107には、その上面の内周部分に、液晶モジュール部102の保護板104の周縁部分が嵌る凹部109が形成されている。一方、下ケース108は後述する図2で示すが、液晶モジュール部102の裏側を保護する密閉構造となっている。
【0017】
[表示機能付入力装置の内部構造]
図2は、表示機能付入力装置101の、図1(a)のa−a’線における断面図である。
液晶モジュール部102を構成する保護板104の周縁には、樹脂フレーム105との接着面を遮蔽して美観を向上させるための、シルク印刷面202が設けられている。
樹脂フレーム105は保護板104の面と比べて一回り小さく作られている枠である。樹脂フレーム105の一端は接着剤によって保護板104の周縁に設けられるシルク印刷面202に接着される。
樹脂フレーム105には、保護板104の直下から順番に、センサ基板206、液晶セル203、導光板204及びバックライト205、そして支持板207が積層された状態で収納される。
支持板207の周縁は、センサ基板206、液晶セル203、導光板204及びバックライト205、そして支持板207が樹脂フレーム105から外れないように、金属ベゼル106が樹脂フレーム105にねじ止めされることによって押さえ込まれている。
【0018】
液晶セル203は、LCDそのものである。
バックライト205は、蛍光灯や白色LED等、低電力で高輝度の発光を実現する光源である。
導光板204は、バックライト205の光を液晶セル203に導き、透過させるための、乱反射を実現する透明アクリル板である。
【0019】
センサ基板206は、静電型位置検出装置のセンサを構成する送信電極及び受信電極のパターンが印刷された、シート状の透明フレキシブルプリント基板である。
センサ基板206は、LCDの視認性を確保するため、周知のITO(酸化インジウム・スズ)膜等の、透明な配線パターンが用いられる。
なお、センサ基板206は透明のプリント基板でもよい。
【0020】
次に、センサ基板206の構造について、図3に従って説明する。
センサ基板206は、二層の導電層を備えるフレキシブルプリント基板である。このセンサ基板206は、例えば周知のポリイミド等の絶縁フィルム302の一方の面に線状の導体からなる受信電極303が、他方の面に線状の導体からなる送信電極304が、配線パターンとして形成されている。
受信電極303の更に保護板104側には、絶縁フィルム305が設けられている。
送信電極304の更に液晶セル203側には、絶縁フィルム306が設けられている。
これら、絶縁フィルム305、受信電極303、絶縁フィルム302、送信電極304、そして絶縁フィルム306の積層状態は、図4(a)に断面図として示している。
【0021】
受信電極303は長方形を成すセンサ基板206の長辺方向(第二の方向)に平行なプリントパターンにて形成されている。
受信電極303のパターンは、太い電極線と、その両脇に細い電極線が配されており、この三本の電極の組が複数並んでいる。この三本の電極の組は、従来技術の受信電極の一本分に相当する。
送信電極304はセンサ基板206の短辺方向(第一の方向)に平行なプリントパターンにて形成されており、受信電極303とは直交関係にある。
【0022】
図4(a)及び(b)は、センサ基板206の一部断面図と、動作原理を示す一部回路図である。なお、説明を簡単にするために、保護板104を省略して図示している。
プラス側電極402は幅が広い電極線である。
マイナス側電極403a及び403bは、プラス側電極402の両脇に配される、プラス側電極402よりも幅が狭い電極線である。
図4(b)は、受信電極303とその直後に接続される信号処理回路を示す回路図である。
プラス側電極402は、電流電圧変換回路405aを介して、差動増幅器406のプラス側入力端子に接続される。
マイナス側電極403a及び403bは、両方共、電流電圧変換回路405bを介して、差動増幅器406のマイナス側入力端子に接続される。
【0023】
次に、図5(a)、(b)、(c)及び(d)を用いて、本実施形態の位置検出装置の受信電極303の動作原理を従来技術と比較して説明する。
図5(a)は、従来技術の静電方式の位置検出装置の動作原理を示す概略図である。
図5(b)は、図5(a)の静電方式の位置検出装置の動作原理を示す回路図である。なお、説明を簡略化するために、電流電圧変換回路405a及び405bは省略している。
【0024】
受信電極303と送信電極304は、その各交点にはコンデンサが形成される。そこで、送信電極304に交流電圧を印加して、受信電極303で電流を検出する。
受信電極303に指が近づくと、電気力線(電荷)の一部が指に吸い取られる現象が発生する。すると、コンデンサの静電容量が小さくなり、結果的に当該コンデンサにおいて検出される電流が少なくなる。静電方式の位置検出装置は、この現象を検出するものである。
実際の装置では、検出できる電流が極めて微弱なので、オペアンプよりなる周知の電流電圧変換回路を介して電圧に変換した上で増幅する。
【0025】
電流電圧変換処理を施して増幅した信号であっても、元々が微弱な電流であるため、検出した信号には装置の周囲のノイズが混入する。そこで、周知の差動増幅によるノイズキャンセリングを行う。
指が近接している受信電極503aの信号と、指が近接していない受信電極503bの信号とを、差動増幅する。
図5(a)では、プラス側である受信電極503aに指が近接している一方で、マイナス側である受信電極503bには指が近接していない。このように、受信電極503aと受信電極503bを、ある程度以上の距離だけ離して、図5(b)に示すように差動増幅を行う。すると、受信電極503aと受信電極503bに同相にて混入するノイズ成分は、オペアンプによる差動増幅器406によって相殺される。
【0026】
しかしながら、例えば、周囲の電灯線のハムノイズ等が、人体を介して受信電極303に混入してしまう。
このような人体を介して混入するノイズは、図5(a)に示すような受信電極303の構成では、人体に近接する受信電極503aのみにノイズが混入するから、差動増幅器406によって相殺することができない。
そこで、本実施形態では、受信電極303自体にノイズキャンセリングの機能を持たせる構成とした。
【0027】
図5(c)は、本実施形態の位置検出装置の動作原理を示す概略図である。
図5(d)は、図5(c)の位置検出装置の動作原理を示す回路図である。
本実施形態の受信電極303は、従来技術の受信電極303の一本分の電極線を、三本に分割した。
中心にはプラス側電極402を、その両脇にはマイナス側電極403a及び403bを設けている。
【0028】
プラス側電極402の幅と、マイナス側電極403a及び403bの幅の比は、例えば2:1に構成される。つまり、プラス側電極402と送信電極304との交点が形成するコンデンサの静電容量と、二本のマイナス側電極403a及び403bと送信電極304との交点が形成するコンデンサの静電容量とが、等しくなるように構成されている。
指によって吸収される電気力線は、プラス側電極402の両脇に配置されている二本のマイナス側電極403a及び403bからのみ生じる。
【0029】
図5(c)に示すように、従来技術の受信電極303の一本分の電極線が、プラス側電極402とマイナス側電極403a及び403bとで構成されているので、図5(d)に示すように、このまま差動増幅が可能である。
このような構成の受信電極303であるので、人体の指407を介在して混入するノイズも、差動増幅器406によって相殺することができる。
【0030】
以上のような受信電極303の、サイズについて説明する。
実際に位置検出装置を設計する際には、指407を的確に検出するために、受信電極303の幅を考慮しなければならない。
一般的な小指で接触したときの面積を想定すると、直径で7〜8mm程度の大きさが検出できれば良いと考えられる。そこで、その半分以下の数値で、プラス側電極402とマイナス側電極403a及び403bの合計の幅が3.2mm程度とするのが好ましい。
【0031】
プラス側電極402とマイナス側電極403a及び403bの合計の幅が3.2mmの場合、
・プラス側電極402の幅は3.2mm÷2=1.6mm
・マイナス側電極403a及び403bの幅は1.6mm÷2=0.8mm
となり、これらの値から更に絶縁を確保するための溝の幅を減じた幅となる。
【0032】
一本のプラス側電極402と、その両脇に配置されるマイナス側電極403a及び403bの組を、「受信電極線の組」と定義する。つまり、受信電極線の組一組は、従来技術の受信電極一本分に相当する。図5(b)の受信電極503a及び803bがこれに該当する。
受信電極線の組同士の間隔は、従来技術とほぼ同じと考えてよい。つまり、密集していれば分解能は向上するが、その分受信電極線の組の数が増えるので、センサ基板206の位置検出面全体をスキャンする際に、時間がかかってしまう。
従来技術でも、電極と電極の間は後述する重心演算による補完で分解能を向上できるので、この分解能が十分確保できる間隔であればよい。
【0033】
[位置検出装置の構成と動作]
これより、図6から図10まで、本実施形態の位置検出装置の構成と動作を説明する。
図6は本実施形態の位置検出装置601の全体ブロック図である。
【0034】
位置検出装置601は、信号供給回路602と、送信電極選択スイッチ603と、受信電極選択スイッチ604と、アナログ信号処理部605と、A/D変換器606と、制御部607と、複数の送信電極304及び受信電極とからなるマトリクス電極619とから構成される。
信号供給回路502は交流信号を送信電極304に与える回路である。
送信電極選択スイッチ503は、後述する制御部607の制御により信号供給回路502が生成した交流電圧信号を、送信電極304を構成する各電極線に順番に印加するスイッチである。
受信電極選択スイッチ504は、後述する制御部607の制御により受信電極303を構成する各電極線を後段のアナログ処理部605に順番に接続するスイッチである。
この受信電極選択スイッチ504の後続にはアナログ信号処理部505が接続され、受信電極選択スイッチ504を通じて検出した微弱な電流信号を大きな電圧信号に変換して出力する。
A/D変換器506はアナログ信号処理部505が出力する信号の電圧をデジタル値に変換する。
制御部507は例えばマイコンよりなり、A/D変換器506が出力するデジタルデータに基づいて、指を検出した位置のデータを算出し、これを出力する。
【0035】
信号供給回路502の内部を説明する。
信号供給回路602は、サイン波ROM612と、読み出し部613と、クロック生成期614と、D/A変換器615と、ローパスフィルタ(LPF)616と、増幅器617と、送信制御スイッチ618とから構成される。
サイン波ROM512は、サイン波形のデジタルデータがアドレスを伴って記憶されているROM(Read Only Memory)である。
読み出し部513は、クロック生成器514が生成するクロックに基づいて、サイン波ROM512を読み出し、サイン波に類似するデジタルデータを出力する。
この読み出し部613から出力されたデジタルデータは、D/A変換器515によってアナログ信号に変換される。
D/A変換器515から出力されたアナログ信号はLPF516で不要な高周波成分が除去され、より滑らかなサイン波に整形される。
LPF516から出力されるサイン波アナログ信号は増幅器517で電圧増幅された後、送信制御スイッチ518を通じて送信電極選択スイッチ503に出力される。この送信制御スイッチ518は、制御部607の制御により受信側のアナログ信号処理部505及びA/D変換器506の動作タイミングに合わせてオン・オフされる。
【0036】
次に、図7を参照して受信電極選択スイッチ604及びアナログ信号処理部605について詳述する。
受信電極選択スイッチ604は、二つのアナログデマルチプレクサ702a及び702bから構成されている。
一方のアナログデマルチプレクサ702aは、各受信電極303を構成するプラス電極線402を選択的にアナログ信号処理部605に接続するためのスイッチである。他方のアナログデマルチプレクサ702bは、各受信電極303を構成するマイナス電極線403aを選択的にアナログ信号処理部605に接続するためのスイッチである。
二つのアナログデマルチプレクサ602a及び602bは同数の端子を備え、同じアドレス指定データで切替駆動される。このアドレス指定データは制御部507から供給される。
【0037】
アナログ信号処理部605は、二つの電流/電圧変換回路405a、405bと、二つの差動増幅器406、704と、同期検波器703と、リセットスイッチ706とから構成される。プラス側電極402の出力信号と、マイナス側電極403a及び403bの出力信号は、それぞれ電流電圧変換回路405a及び405bに入力される。
電流電圧変換回路405a及び405bは、マイナス側電極403a及び403bの出力信号を電圧信号に変換して、それぞれ差動増幅器406に入力される。
差動増幅器406は周知のオペアンプよりなる差動増幅器である。差動増幅器406は、電流電圧変換回路405a及び405bから入力された電圧信号を差動増幅して出力する。この差動増幅器406による差動増幅により、プラス側電極402及びマイナス側電極403a及び403bのそれぞれに混入する同相ノイズ成分は相殺される。
【0038】
差動増幅器406の出力信号は、同期検波器703に入力される。
同期検波器703は、例えば、周知のオペアンプからなるアナログ乗算器である。この同期検波器703には、信号供給回路602から入力されたサイン波電圧信号(検波信号)と差動増幅器406の出力信号とが入力される。そして、この同期検波器703は、差動増幅器406からの出力信号を同期検波して出力する。この同期検波器703から出力された信号は、積分器707に入力される。
積分器707は、オペアンプ704aとコンデンサC705とから構成される。この積分器707には、リセットスイッチ706が接続されている。
リセットスイッチ706は、制御部607の制御によりオン・オフ制御されるスイッチで、コンデンサC705と並列に接続されている。そして、このリセットスイッチ706のオン・オフにより、コンデンサC705に蓄積された電荷が充放電されるようになっている。
そして、同期検波器703から出力された信号は、この積分器707において積分処理されて出力される。
【0039】
積分器の出力信号はA/D変換器506に入力されアナログ−デジタル変換されて出力される。なおA/D変換器506の変換タイミングは制御部507によって制御される。
このA/D変換器506の出力データは制御部507に入力される。制御部507は、A/D変換器506から得られたデータを基に、センサ基板206に指が近づいているか否かを示す状態情報と、近づいているとしたらどの位置に指が位置しているのかを示す位置情報を出力する。
【0040】
次に、制御部607の構成と動作とを図8に従って説明する。ここで、図8は、制御部607のブロック図である。この制御部607は、タイミング生成部802と、送信電極アドレスカウンタ803と、バッファメモリ804と、受信電極アドレスカウンタ805と、重心演算部806とから構成される。
タイミング信号生成部702は、信号供給回路502とアナログ信号処理部505とA/D変換器506に、それぞれタイミング信号を出力すると共に、送信電極アドレスカウンタ703にクロックを供給する。
送信電極アドレスカウンタ703は、タイミング信号生成部702から供給されるクロックを計数し、この計数値を送信電極側アドレスとして送信電極選択スイッチ503とバッファメモリ704に供給する。
送信電極アドレスカウンタ703は送信電極304の数と同数の最大値まで計数できるカウンタであり、計数値が送信電極304の数、すなわち最大値を超えると1に戻るループカウンタを構成している。そして、この送信電極アドレスカウンタ803は、最大値から更に係数を進めて1に戻る際、オーバーフロービットが1になる。このオーバーフロービットが出力されて、受信電極アドレスカウンタ705に供給される。
【0041】
受信電極アドレスカウンタ705は、送信電極アドレスカウンタ703から供給されるオーバーフロービットを計数し、この計数値を受信電極側アドレスとして受信電極選択スイッチ504とバッファメモリ704に供給する。
この受信電極アドレスカウンタ705は受信電極303の数と同数の最大値まで計数できるカウンタであり、計数値が受信電極303の数を超えると1に戻る、ループカウンタを構成している。そして、この受信電極アドレスカウンタ805は最大値から更に係数を進めて1に戻る際、オーバーフロービットが1になる。このオーバーフロービットが出力されて、重心演算部706に供給される。
【0042】
バッファメモリ704はA/D変換器506から得られたデータを一時的に記憶するメモリである。このバッファメモリ704に記憶されるデータのアドレスは、送信電極アドレスカウンタ703から出力される送信電極側アドレスと、受信電極アドレスカウンタ705から出力される受信電極側アドレスとによって決定される。
【0043】
重心演算部706は、バッファメモリ704内のデータを参照して、指の存在の有無とその位置を演算する。
【0044】
次に、図6に示す位置検出装置601の動作を、図9に示すタイムチャートを用いて説明する。
図9(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)は各種信号のタイムチャートである。
送信電極側アドレス(図9(b))は1から始まり値n(nは自然数)が最大値である。この値nは送信電極304を構成する電極の数と等しい。送信電極側アドレスがnに達すると、受信電極側アドレスが1インクリメントする(図9(a))。
受信電極側アドレス(図9(a))は1から始まり値m(mは自然数)が最大値である。この値mは受信電極303を構成するプラス側電極402とその両脇に配線されるマイナス側電極403a及び403bの組の数、すなわち受信電極線の組と等しい。
【0045】
図9(c)は、送信電極側アドレスを示すタイムチャートであり、図9(b)の一部分の時間軸を拡大した状態を示す図である。図9(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)は図9(c)のタイムチャートと同じ時間軸にて示すタイムチャートである。
図9(d)は、信号供給回路602の出力信号の波形である。
図9(e)は、制御部507から信号供給回路502の送信制御スイッチ518に与えられる、送信制御信号の波形である。送信制御スイッチ518は送信制御信号が高電位の時(t1〜t2、t6〜t7及びt11〜t12)にオン状態となり、低電位(t2〜t6及びt7〜t11)の時にオフ状態となる。したがって、信号供給回路602の出力信号(図9(d))は、送信制御信号が高電位の時にのみサイン波の信号が出力される。
【0046】
図9(f)は差動増幅器406から得られる出力信号である。指が存在しない箇所では波形は現れない(t1〜t2)が、指が受信電極303の電極線に近い箇所では駆動部から出力された交流電圧信号と同じ波形の信号が現れる(t6〜t7)。受信電極303の電極に指が近ければ近いほど、その波形の電位は高くなる(t11〜t12)。
【0047】
図9(g)は積分器707の出力信号の波形である。
図9(h)は制御部507からA/D変換器506に供給されるトリガ信号の波形である。
図9(i)は制御部507から積分器707のリセットスイッチ606に与えられる、リセット信号の波形である。
【0048】
トリガ信号(図9(h))は、送信制御信号が低電位の時(t2、t7及びt12)、つまり送信制御スイッチ518がオフの時に高電位になる。このトリガ信号はA/D変換器506に対する起動パルスであるので、所定の時間を経過したらトリガ信号はオフ制御される(t3、t8及びt13)。
【0049】
そして、A/D変換器506が入力電圧のアナログ/デジタル変換処理を完了するのに十分な時間が経過したら、積分器707のコンデンサC605に蓄積されている電荷を放電させるために、リセット信号(図9(i))を高電位にする(t4、t9及びt14)。すると、リセットスイッチ606がオン制御され、コンデンサC605の電荷は放電される。コンデンサC605に溜まった電荷を放電する時間はごく僅かで済むので、程なくしてリセット信号はオフ制御される(t5、t9及びt15)。
【0050】
図10はバッファメモリ704とアドレスの関係を示す概略図である。
バッファメモリ704は、マトリクス電極619の交点の数と等しいバイト数のメモリである。マトリクス電極619の各交点は、送信電極側アドレスと受信電極側アドレスの組で特定される。
各交点で検出された信号強度は、バッファメモリ704に記憶される。
全ての交点の信号強度を検出したら、バッファメモリ704には全ての交点の信号強度の値が格納されている。図10は、その時の状態を模式的に示すものである。
バッファメモリ704の、指が存在する範囲では、信号強度の値が指の中心に向かって大きくなっている。重心演算部706は、このような信号強度の値の分布を検出し、その中心点、つまり重心を演算する。
【0051】
以上、図6乃至図10で説明した位置検出装置601は、マトリクス電極619の構成を除き、従来技術の静電式位置検出装置の信号処理と殆ど変わらない。特に、ハードウェアとして構成される信号供給回路502、アナログ信号処理部505及びA/D変換器506は、殆ど設計変更を要しない。
プログラムにて実現される制御部507の、タイミング信号生成部702、送信電極アドレスカウンタ703、受信電極アドレスカウンタ705、そして重心演算部706を、マトリクス電極619に合わせて変更するだけでよい。
つまり、本実施形態の位置検出装置601は、従来技術の静電式位置検出装置のハードウェア構成はほぼそのままに、ソフトウェアをマトリクス電極619に合わせて変更するだけで、容易に実現できる。そして、出来上がった位置検出装置601は、従来技術の静電式位置検出装置と比べると、人体の指から混入するノイズを差動増幅器406で効果的に相殺することができる。
【0052】
本実施形態には、以下のような応用例が考えられる。
(1)プラス側電極402の幅と、マイナス側電極403a及び403bとの幅の比は、必ずしも厳密に2:1でなくてもよい。入力信号のレベルのばらつきは差動増幅器406の調整で吸収できる。
【0053】
(2)受信電極303を構成する各電極は、中央に配置した電極ををプラス側電極402とし、その両脇に配置した電極をマイナス側電極403a及び403bと定義したが、必ずしも差動増幅器406のプラス側入力端子が電極の中心に位置する電極をプラス側電極402にしなくてもよい。つまり、差動増幅器406と電極線の極性は逆であっても良く、例えば、中央の電極を「マイナス側電極」とし、その両脇の電極を「プラス側電極」として、差動増幅器406に接続してもよい。
【0054】
(3)送信電極は、その中央に位置するプラス側電極402が、その両脇に配置されるマイナス側電極403a及び403bよりも太い構成でなくてもよい。
図11は、別の受信電極及び受信電極選択スイッチの構成を示す概略図である。
受信電極1103は、均等な太さの導体が並んでいる。
受信電極選択スイッチ1104は、受信電極1103の複数の導体を、アナログ信号処理部505のプラス側端子に、更にその両脇に存在する導体を、アナログ信号処理部505のマイナス側端子に、それぞれ接続している。つまり、受信電極選択スイッチ1104がアナログ信号処理部505のプラス側端子或はマイナス側端子に接続する導体の本数で、送信電極の太さと実質的に等価な電気的特性を実現する。
図11に示す受信電極1103及び受信電極選択スイッチ1104の構成を採る場合、受信電極選択スイッチ1104の接続状態で、一本の導体をアナログ信号処理部505のプラス側端子或はマイナス側端子のどちらにも、自由に接続することができる。したがって、受信電極選択スイッチ1104の接続パターンを、受信電極1103を構成する導体の一本単位で移動できるので、指の位置を検出するための分解能を向上させることができる。
【0055】
本実施形態においては、位置検出装置を開示した。
受信電極を構成する各々の受信電極線を三分割し、中心の電極線を差動増幅器のプラス側入力端子に、両脇の電極線を差動増幅器のマイナス側入力端子に接続することで、人体の指から混入するノイズを差動増幅器で効果的に相殺することができる。その際、従来技術の静電式位置検出装置のハードウェア構成はほぼそのままに、ソフトウェアをマトリクス電極に合わせて変更するだけで、容易に実現できる。
【0056】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0057】
101…表示機能付入力装置、102…液晶モジュール部、103…ケース部、104…保護板、105…樹脂フレーム、106…金属ベゼル、107…上ケース、108…下ケース、109…凹部、202…シルク印刷面、203…液晶セル、204…導光板、205…バックライト、206…センサ基板、207…支持板、302…絶縁フィルム、303…受信電極、304…送信電極、305…絶縁フィルム、306…絶縁フィルム、402…プラス側電極、403a…マイナス側電極、405a、405b…電流電圧変換回路、406…差動増幅器、407…指、503a、503b…受信電極、602…信号供給回路、603…送信電極選択スイッチ、604…受信電極選択スイッチ、605…アナログ信号処理部、606…A/D変換器、607…制御部、612…サイン波ROM、613…読み出し部、614…クロック生成器、615…D/A変換器、616…LPF、617…増幅器、618…送信制御スイッチ、701…位置検出装置、702a、702b…アナログデマルチプレクサ、703…同期検波器、704…オペアンプ、C705…コンデンサ、706…リセットスイッチ、719…マトリクス電極、802…タイミング信号生成部、803…送信電極アドレスカウンタ、804…バッファメモリ、805…受信電極アドレスカウンタ、806…重心演算部、1103…受信電極、1104…受信電極選択スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向及び該第一の方向に直交する第二の方向にそれぞれ複数の導体が配置された導体パターンと、
前記第一の方向に配置された導体に送信信号を供給する送信信号供給回路と、
該送信信号生成回路から出力された送信信号を前記第一の方向に配置された複数の導体のうちの所定の導体に供給する第一の導体選択回路と、
第一及び第二の入力端子を有し、該第一及び第二の入力端子に入力された信号を差動増幅して出力する差動増幅回路と、
前記第二の方向に配置された複数の導体のうちから互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体を含む複数の導体を選択し、該選択し複数の導体のうち両端側に位置する導体からの信号を前記差動増幅回路の前記第一の入力端子に供給し、前記両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号を前記差動増幅回路の前記第二の入力端子に供給する第二の選択回路と、
を備える位置検出装置。
【請求項2】
前記第二の導体選択回路によって、上記導体パターンにおける互いに隣接する少なくとも三つの導体が選択され、該選択された三つの導体のうち両端側に位置する導体からの信号が前記差動増幅回路の前記第一の入力端子に供給され、該前記両端側に位置する導体からの信号が前記差動増幅回路の前記第二の入力端子に供給されることで、前記導体パターンに対する接触に対応した信号を前記差動増幅回路から出力するようにした、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
上記導体パターンにおける前記第二の方向に配置された導体は、互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体で一単位を構成し、
前記第二の導体選択回路によって前記一単位毎に前記差動増幅回路に信号を供給するようにした、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第二の方向に配置された複数の導体は、隣接する少なくとも三つの導体で一単位を構成するとともに、前記一単位を構成する少なくとも一の導体が前記一単位に隣接する単位に含んで構成されるようにした、
請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記選択された三つの導体は、両端側の電極の幅よりも該両端側の電極の間に位置する電極の幅を広くした、
請求項1〜4記載の位置検出装置。
【請求項6】
第一の方向及び該第一の方向に直交する第二の方向にそれぞれ複数の導体が配置された導体パターンのうち、前記第一の方向に配置された導体に送信信号を供給するための送信信号供給回路と、
該送信信号生成回路から出力された送信信号を前記第一の方向に配置された複数の導体のうちから所定の導体に供給するための第一の導体選択回路と、
前記第二の方向に配置された複数の導体のうちから所定の導体を選択するための第二の導体選択回路と、
第一及び第二の入力端子を有し、該第一及び第二の入力端子に入力された信号を差動増幅して出力するための差動増幅回路と、
を備え、
前記第二の導体選択回路によって前記導体パターンにおける互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体を含む複数の導体が選択され、該選択された複数の導体のうち両端側に位置する導体からの信号を前記差動増幅回路の前記第一の入力端子に供給され、前記両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号を前記差動増幅回路の前記第二の入力端子に供給されることで、前記導体パターンに対する接触に対応した信号を前記差動増幅回路から出力するようにした、
位置検出回路。
【請求項7】
前記第二の導体選択回路によって、上記導体パターンにおける互いに隣接する少なくとも三つの導体が選択され、該選択された三つの導体のうち両端側に位置する導体からの信号が前記差動増幅回路の前記第一の入力端子に供給され、該前記両端側に位置する導体からの信号が前記差動増幅回路の前記第二の入力端子に供給されることで、前記導体パターンに対する接触に対応した信号を前記差動増幅回路から出力するようにした、
請求項6に記載の位置検出回路。
【請求項8】
第一の方向に複数の導体が配置されると共に前記第一の方向に直交する第二の方向に複数の導体が配置された導体パターンの前記第一の方向に配置された導体に送信信号を供給する送信信号生成ステップと、
前記導体パターンの前記第一の方向に配置された所定の導体を選択して前記送信信号生成ステップによって生成された送信信号を選択的に供給するための第一の導体選択ステップと、
前記導体パターンの前記第二の方向に配置された互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体を選択するための第二の導体選択ステップと、
前記第二の導体選択ステップによって選択された複数の導体のうち、両端側に位置する導体からの信号と、前記両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号とを差動増幅して出力する差動増幅ステップと、
を備え、
前記導体パターンに対する接触に対応した信号を前記差動増幅ステップにて得るようにした、
位置検出方法。
【請求項9】
前記第二の導体選択ステップによって、互いに隣接する少なくとも三つの導体が選択され、該選択された三つの導体のうち両端側に位置する導体から出力される信号と、前記両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号とを前記差動増幅ステップで差動増幅して出力するようにした、
請求項8に記載の位置検出方法。
【請求項1】
第一の方向及び該第一の方向に直交する第二の方向にそれぞれ複数の導体が配置された導体パターンと、
前記第一の方向に配置された導体に送信信号を供給する送信信号供給回路と、
該送信信号生成回路から出力された送信信号を前記第一の方向に配置された複数の導体のうちの所定の導体に供給する第一の導体選択回路と、
第一及び第二の入力端子を有し、該第一及び第二の入力端子に入力された信号を差動増幅して出力する差動増幅回路と、
前記第二の方向に配置された複数の導体のうちから互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体を含む複数の導体を選択し、該選択し複数の導体のうち両端側に位置する導体からの信号を前記差動増幅回路の前記第一の入力端子に供給し、前記両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号を前記差動増幅回路の前記第二の入力端子に供給する第二の選択回路と、
を備える位置検出装置。
【請求項2】
前記第二の導体選択回路によって、上記導体パターンにおける互いに隣接する少なくとも三つの導体が選択され、該選択された三つの導体のうち両端側に位置する導体からの信号が前記差動増幅回路の前記第一の入力端子に供給され、該前記両端側に位置する導体からの信号が前記差動増幅回路の前記第二の入力端子に供給されることで、前記導体パターンに対する接触に対応した信号を前記差動増幅回路から出力するようにした、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
上記導体パターンにおける前記第二の方向に配置された導体は、互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体で一単位を構成し、
前記第二の導体選択回路によって前記一単位毎に前記差動増幅回路に信号を供給するようにした、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第二の方向に配置された複数の導体は、隣接する少なくとも三つの導体で一単位を構成するとともに、前記一単位を構成する少なくとも一の導体が前記一単位に隣接する単位に含んで構成されるようにした、
請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記選択された三つの導体は、両端側の電極の幅よりも該両端側の電極の間に位置する電極の幅を広くした、
請求項1〜4記載の位置検出装置。
【請求項6】
第一の方向及び該第一の方向に直交する第二の方向にそれぞれ複数の導体が配置された導体パターンのうち、前記第一の方向に配置された導体に送信信号を供給するための送信信号供給回路と、
該送信信号生成回路から出力された送信信号を前記第一の方向に配置された複数の導体のうちから所定の導体に供給するための第一の導体選択回路と、
前記第二の方向に配置された複数の導体のうちから所定の導体を選択するための第二の導体選択回路と、
第一及び第二の入力端子を有し、該第一及び第二の入力端子に入力された信号を差動増幅して出力するための差動増幅回路と、
を備え、
前記第二の導体選択回路によって前記導体パターンにおける互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体を含む複数の導体が選択され、該選択された複数の導体のうち両端側に位置する導体からの信号を前記差動増幅回路の前記第一の入力端子に供給され、前記両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号を前記差動増幅回路の前記第二の入力端子に供給されることで、前記導体パターンに対する接触に対応した信号を前記差動増幅回路から出力するようにした、
位置検出回路。
【請求項7】
前記第二の導体選択回路によって、上記導体パターンにおける互いに隣接する少なくとも三つの導体が選択され、該選択された三つの導体のうち両端側に位置する導体からの信号が前記差動増幅回路の前記第一の入力端子に供給され、該前記両端側に位置する導体からの信号が前記差動増幅回路の前記第二の入力端子に供給されることで、前記導体パターンに対する接触に対応した信号を前記差動増幅回路から出力するようにした、
請求項6に記載の位置検出回路。
【請求項8】
第一の方向に複数の導体が配置されると共に前記第一の方向に直交する第二の方向に複数の導体が配置された導体パターンの前記第一の方向に配置された導体に送信信号を供給する送信信号生成ステップと、
前記導体パターンの前記第一の方向に配置された所定の導体を選択して前記送信信号生成ステップによって生成された送信信号を選択的に供給するための第一の導体選択ステップと、
前記導体パターンの前記第二の方向に配置された互いに近傍に位置する少なくとも三つの導体を選択するための第二の導体選択ステップと、
前記第二の導体選択ステップによって選択された複数の導体のうち、両端側に位置する導体からの信号と、前記両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号とを差動増幅して出力する差動増幅ステップと、
を備え、
前記導体パターンに対する接触に対応した信号を前記差動増幅ステップにて得るようにした、
位置検出方法。
【請求項9】
前記第二の導体選択ステップによって、互いに隣接する少なくとも三つの導体が選択され、該選択された三つの導体のうち両端側に位置する導体から出力される信号と、前記両端側に位置する導体を除く他の導体からの信号とを前記差動増幅ステップで差動増幅して出力するようにした、
請求項8に記載の位置検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−8723(P2011−8723A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154204(P2009−154204)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
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