説明

位置測定の可能なモバイルハンドセット

位置測定が可能なモバイルハンドセットは、利用者が非常呼び出し通話を試みて失敗したときの位置情報を、その呼び出し通話の受信者に提供することを可能にする。一代表例として、PSAP管理者に対するE911呼び出し通話の場合には、管理者に報告される位置情報は、最初のE911呼び出し通話の位置、正常なE911通話中の現在の位置、あるいは最初の位置から現在の位置までの地上の軌跡の情報を含むことが出来る。E911呼び出し通話の試みが成功しなかった時には、モバイルハンドセットはその時刻におけるモバイルハンドセットの位置を蓄える。この情報は、その後モバイルハンドセットが通話可能エリアの内側に位置した時に、送信されることが出来る。さらに、モバイルハンドセットはサービスエリアの中に入るとすぐに、911を自動ダイヤルすることが出来、あるいは利用者にE911呼び出し通話を開始することを促すことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に通信装置に関する。より詳細には、本発明はモバイル携帯通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の国家では、公式に定められた国家非常電話番号を所有する。例えばアメリカ合衆国およびカナダでは、その電話番号は911である。911がダイヤルされると、利用者は緊急通報受付センター(Public Safety Answering Point)(PSAP)の通話管理者(dispatcher)に接続される。非常通話管理者はその非常呼び出し通話(emergency call)を、地域の救急医療施設、消防署および法律執行機関に回送する。現在は、呼び出し通話(call)が地上通信線電話を使用してなされるときには、電話番号および住所情報が、通常は自動的に通話管理者に報告される。
【0003】
基本的な無線911サービスは、電話加入者および非加入者のいずれからであっても何らかの利用可能なサービスを使用して、その911呼び出し通話をPSAPに送信することを要求する。しかしながら、基本的な無線911サービスは、地上通信線電話がする場合とは異なり、位置情報を通話管理者に提供しない。米国連邦通信委員会(Federal Communications Commission)(FCC)は携帯電話サービス所有者に対して、携帯電話使用可能エリア内で非常呼び出し通話が発生した場合には、位置情報を伝えることを要求するプログラムを確立している。このプログラムは拡張型(Enhanced)911(E911)として知られている。E911の要求は、アメリカ合衆国内で動作可能な全ての移動携帯電話の免許所有者、ブロードバンドの個人通信サービス(Personal Communications Services)(PCS)免許所有者および一定の特殊移動無線(Specialized Mobile Radio)(SMR)免許所有者に対して適用される。これらのモバイル電話サービスの所有者は、E911サービスの履行を始めつつあるところである。
【0004】
FCCのE911規則は、非常時のサービス要員に位置情報を提供しようとするものであり、それは彼らが位置を確認し、無線911呼び出し通話者に対してより効率的に援助を提供することを可能にする。E911の要求する位置情報を決定するための、1つの可能性のある方法は、モバイルハンドセットに全地球測位システム(Grobal Positioning System)(GPS)受信機を追加することである。GPSは非常時のサービス要員に位置情報を提供することが出来る。GPS測定により決定された位置は、使用される測定装置の精度に依存して、実際の地理的な位置から異なることがあり得る。GPS受信機は、他の位置決定システムに対して一部の利点を有する。GPS受信機は補助としての通信ネットワークを必要としない。例えば、GPS受信機は通信ネットワークからの支援なしに、必要に応じて天体暦データを更新することが出来る。GPS天体暦はGPS人工衛星の軌道を記述するデータである。
【0005】
GPS受信機は一部の欠点を有する。例えば、GPS受信機は、最初にパワースイッチを入れた時には、位置を決定するまでに数分間を要することがある。非常時のサービスを含む用途に対しては、この時間遅れは一般には長すぎると考えられる。GPS受信機は一部の欠点を有するものの、後に検討される一部の実施形態に対してはGPS受信機の使用が好適であることに留意すべきである。しかしながら、アシスト型(Assisted)GPS(AGPS)受信機もまた、様々な実施形態において使用することが出来る。AGPSは以下において検討される。
【0006】
一般的にはAGPSは、モバイル電話システムと結合されたGPS受信機を使用して、モバイルハンドセットがその位置を決定することを支援する。モバイル電話システムは、ハンドセットが使用されているセルサイト(cell site)を決定することにより、モバイルハンドセットの位置を推定することが出来る。基準局からの方向および距離を推定することにより、位置の推定値の精度をさらに改善することが出来る。モバイルハンドセットの最初に推定された位置、およびモバイル電話システムと結合されたGPS受信機とを使用することにより、モバイル電話システムはモバイルハンドセットが受信することが出来るGPS衛星の信号を予告することが出来る。予告されたGPS衛星の信号に関する情報は、モバイルハンドセットに伝送される。この情報を使用することにより、モバイルハンドセットは、初期測位時間(time−to−first−fix)(TTFF)を大幅に減らすことが出来る。AGPSによるTTFFは、分ではなく秒のオーダーとなる。AGPSのその他の利点は、AGPSを使用しないGPS受信機が必要とするよりも弱い信号を、AGPS受信機は受信し復調することである。さらにAGPSの使用は、実施(implementation)の消費電力および寸法と共にコストの削減を可能とする。モバイルハンドセットは、スタンドアローンのGPS電気回路を必要としない。それ故に、コストは一般的に低く、回路の消費電力および寸法は一般的に小さい。AGPSは一部の欠点を有する。モバイルハンドセットがモバイル電話サービス領域の外部に位置する場合には、モバイルハンドセットに対するAGPSによる支援は、有効ではないことがあり得る。寸法、消費電力、およびコストを最小にするためのAGPSの利点を全て活用した機器は、利用者がモバイル電話サービス領域の外部にいる場合には、利用者に位置情報を提供することは出来ない。
【0007】
上述したように、モバイルハンドセットの位置情報は、E911呼び出し通話が完了たときに、PSAP管理者に送信される。しかしながら、非常呼び出し通話が完了したときの、モバイルハンドセットの位置情報は、非常事態の位置ではないことがあり得る。非常呼び出し通話完了位置と実際の非常事態位置との間の距離は、非常事態がモバイルハンドセットの通話可能エリアの外部で発生するときには、一般に大きくなる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
非常時の呼び出し通話がなされた時に、他の通話受信者に位置情報を提供することは、広く知られている。非常呼び出し通話の例は、家族および友人に援助を頼む通話を含むもののそれに限定はされず、支援のための牽引のサービスのための通話や、行政組織の非常事態サービスへの通話を含む。さらに、E911のモバイル通話を完了するまでの間に、緊急通報受付センター(PSAP)の通話管理者に位置情報を提供することが、知られている。しかしながら、非常事態がモバイルハンドセットの通話可能エリアの外部で発生し、そしてモバイル非常呼び出し通話が後になされた場合、当初の非常事態の位置は通話管理者には報告されない。通話管理者に報告される位置は、一般にはE911呼び出し通話が正常に完了した時に、モバイルハンドセットが存在した位置である。
【0009】
要するに、位置測定の可能なモバイルハンドセットが利用者に、不完全な非常呼び出し通話であってもその発信位置を通話受信者に提供することを可能とする。ある特殊な例として、PSAP管理者へのE911呼び出し通話であり得る場合、しかしながらその通話が家族あるいは友人からの援助を要請するものであり得ると認識されることがある。さらに、その通話が牽引サービスのためのものでもあり得る。その呼び出し通話は、モバイルハンドセットの利用者が呼び出しを受けた団体に対して、位置情報を送ることを欲する如何なる通話でもあり得る。E911呼び出し通話の例にもどり、通話管理者に報告される位置情報は、最初のE911通話の位置、正常なE911通話の間の現時点の位置、あるいは最初の位置から現時点の位置までの地上の軌跡(track)の情報を含むことが出来る。E911呼び出し通話の試みが成功しなかった場合には、モバイルハンドセットはその時点のモバイルハンドセットの位置を蓄える。この情報は後に、モバイルハンドセットが通話可能なエリア内に位置したときに、送信されることが出来る。さらに、モバイルハンドセットは、E911呼び出し通話の試みが成功しなかった後に、サービスエリア内に入るとすぐに、911を自動ダイヤルすることが出来る。代替案として、モバイルハンドセットがサービスエリア内に入る時に、利用者はE911呼び出し通話を開始するように促されることが出来る。
【0010】
E911呼び出し通話の例を続けると、通話管理者に最初のE911呼び出し通話が試みられた位置、あるいは地上の軌跡情報を提供することは、多数の利点を有する。通話管理者はしばしば非常時の生命が危機にさらされる状況の下で働く。このような状況下では、非常事態要員を非常事態の場所に送ることは、生存の可能性を非常に高める。非常事態の場所を知ることは、非常事態要員をその場所に送るための重要なステップである。多くの生命の危険のない非常事態においても、非常事態要員を現場にすばやく送ることはやはり重要である。例えば消防隊員が火災の現場により速く到着するときには、一般には火災はより速く消火され得る。非常事態要員を非常事態により速く送ることを可能にすることに加えて、非常事態の位置または地上の軌跡を通話管理者に提供することは、非常時のサービスがより一層効率的に実施されることを可能にする。E911呼び出し通話に対して非常時サービスがよりすばやく対応することが出来るときは、一般的にはその他の非常呼び出し通話に対応してより速く、非常時サービスが得られる。さらに、他の形式の非常呼び出し通話に対して正確な位置情報を提供することは、モバイルハンドセット利用者および非常呼び出し通話に対して応答を試みるその他の者にとって役に立つことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明をより完全に理解するために、およびその利益のために、添付する図面、表および付属物と関連付けられた、以下の記述が参考とされる。
【0012】
図1によれば、位置測定の可能なモバイルハンドセット118が一般的に示されている。モバイルハンドセット118は地理的なエリア100の中で使用されている。地理的なエリア100は通話可能エリア103を含む。通話可能エリアは、移動可能電話システムのサービスが得られるエリアである。通話可能エリアの外側のエリアは、非サービスエリアとして参照される。複数の基準局105、107、109、112、114が通話可能エリア103の中に位置している。基準局は、モバイルハンドセットがモバイル呼び出し通話を送信しそこから受信することにより通話を完了するための、固定された装置である。一般的に通話可能エリア103は、特定のモバイル電話システムに適合した少なくとも1つの基準局を含み、非サービスエリアは一般的に、特定のモバイル電話システムに適合したいかなる基準局も含まない。
【0013】
モバイルハンドセット118は、第1の位置120に示されている。第1の位置120の近くに非常事態の生じた位置126がある。非常事態は、自動車事故、火災、あるいはモバイルハンドセット利用者が通報することを欲するいかなる非常事態でもあり得る。利用者は、例えばモバイルハンドセット118での911ダイヤルによる、非常呼び出し通話発信を試みる。モバイルハンドセット118は、それが通話可能エリア103の外側にあるために、呼び出し通話を発信することは不可能である。呼び出し通話は出来ないものの、モバイルハンドセット118は位置を取得し、そして蓄える。モバイルハンドセット118は通話可能エリア103の外側のエリアから、第2の位置122にまで移動する。第2の位置122は通話可能エリア103の内側にある。移動経路124もまた図1に示されている。
【0014】
モバイルハンドセット118が通話可能エリア103の内側のエリアに到達した時に、非常電話番号を開始し接続することが可能となる。モバイル呼び出し通話が接続された時に、モバイルハンドセットの第1の位置120に関する位置情報が送信される。任意ではあるが、第2の位置122に対する現在の位置情報が送信されることが出来る。非常事態管理者に位置を伝えるために、通常のプロセスが用いられる。位置情報は位置決定装置を用いて決定される。位置決定装置は図4に関連してより詳細に検討される。
【0015】
図2によれば、地理的なエリア200が示されている。図2は図1に類似している。しかし図2は、他の移動経路128を示す。移動経路128は、図1に示された移動経路124と比較して直線的ではない。移動経路128は山道に沿って移動するパッチコードに似ていると言える。例えば二人の男、カイルとトニーが夜間に山岳地域でオートバイを運転し、その山岳地域は非サービスエリアの中にある。トニーはオートバイ事故を起こし、カイルは良く知ったモバイルハンドセットを使用してモバイル非常呼び出し通話を試みる。呼び出し通話は正常に完了せず、その時点では事故は通報されることが出来ない。
【0016】
カイルは経路128に沿って通話可能エリア103に到達するまで、彼のオートバイ運転を続ける。通話可能エリア103はカイルとトニーが最初に運転をしていた山岳地域から極めて遠方にある。さらにカイルは今や事故の正確な位置について確信がない。モバイル非常呼び出し通話が試みられた位置を蓄えることが出来る、モバイルハンドセットを使用することが、一般には非常時の支援がより早くトニーのもとに到達することを可能にする。
【0017】
図3はハンドセット118を操作するプロセスを示す流れ図300である。流れ図300は302から始まる。ステップ304では、モバイルハンドセットを用いて呼び出し通話が試みられる。ステップ306は、呼び出し通話が不成立かを調べる。呼び出し通話が不成立の場合には、ステップ309がモバイルハンドセットの位置の決定を試みる。
【0018】
位置が正常に決定された場合には、示されているようにステップ313で蓄えられる。位置を蓄えるステップは、記憶装置への書き込みを含み得ることは理解される。さらに、記憶装置はランダムアクセス記憶装置であり得ることが理解される。サービスが利用可能な時には、ステップ316でモバイルハンドセット118を用いて、呼び出し通話が再度試みられる。ステップ318は呼び出し通話が成立したかを調べる。呼び出し通話が不成立の場合には、試み、即ちステップ316が繰り返される。ステップ313で位置が蓄えられた場合には、呼び出し通話が成立した後に、位置がステップ321で送信される。呼び出し通話はステップ324で継続し、蓄えられた位置情報を使用して位置を決定327し、プロセスが終了331する。
【0019】
ステップ304で試みられた呼び出し通話が成立したある場合には、ステップ330が位置の決定を試みる。ステップ332は位置の決定が成功であるかを調べ、テストする。ステップ330の位置の決定が成功であるときには、ステップ337で位置は送信される。位置が送信337された後も、呼び出し通話は継続340される。ステップ342では、蓄えられた位置情報を用いて地理的な位置が決定される。345でプロセスが終了する。ステップ330の位置の決定が不成功の場合には、呼び出し通話は継続335され、ステップ330の位置の決定が繰り返される。
【0020】
例えば、多くのモバイルハンドセットにおいて、ステップ309、330の位置の決定を試みているときに、モバイルハンドセットを通じて会話することは不可能である。別の実施形態においては、利用者がモバイルハンドセットを通じて会話することが出来るようにするために、位置決定のステップ330は繰り返されないか、あるいは繰り返し回数が制限されることがあり得る。
【0021】
モバイル呼び出し通話が緊急通報受付センターへの通話、あるいは無線911通話である可能性があることは、同業者に理解されるであろう。さらに、呼び出し通話が道路脇の支援サービスへの通話である可能性もあり得る。道路脇の支援サービスは一部のドライバーによって、牽引サービスを派遣すること、およびパンク修理または燃料切れを生じた車への給油などの、その他の道路脇のサービスに対して使用されている。
【0022】
位置決定の試みのステップ309、330は、擬似距離情報の決定を含み得ることは、同業者によって理解されるであろう。さらに、位置決定の試みのステップは、全地球測位システムの信号の使用を含み得る。位置決定の試みのステップ309、330は、緯度、経度、および高度の情報を含み得ることは、同業者によってまた理解されるであろう。さらに、位置決定の試みのステップ309、330は、基準局から送信された信号を測定することにより、基準局からの距離および方向を推定することを含み得る。
【0023】
図4によれば、モバイルハンドセット118の形式による、モバイル通信装置が示されている。モバイルハンドセット118はアンテナ402を含む。アンテナ402は無線周波数の信号を送信および受信するために使用され、トランシーバ406に接続されている。トランシーバ406はアンテナから取り込まれる無線信号を、モバイルハンドセットの利用者に有用な音響またはその他の形に変換する。さらに、トランシーバ406は、搬送波を生成し、また搬送波を変調し、アンテナを使用して情報を送信する。電池409はトランシーバ406にパワーを与える。
【0024】
ハンドセット118はさらに、位置決定装置412に接続されている第2のアンテナ404を含むが、しかしながら、一部のハンドセットでは、1つのアンテナを位置決定装置とトランシーバとで共用するシステムを採用することがあり得る。ハンドセット118の中の位置決定装置412は、全地球測位システム(GPS)の受信機の形式をなす。GPS受信機は、GPS衛星からの擬似距離情報を決定するために使用することが出来る。擬似距離情報は地理的位置を示す位置情報であり、さらなる処理のために基準局に送信されることが出来る、位置情報である。さらに、擬似距離データのさらなる処理のために、その他の装置が使用されることが出来る。例えば、擬似距離データは緯度、経度、および高度を決定するためにモバイル通信装置によって処理されることが出来る。
【0025】
位置決定装置412はまた、基準局からの距離および方向を決定する装置であることも出来る。例えば、基準局からの方向はセクターに基づいて推定され、距離はチップ遅れを使用して推定される。
【0026】
アンテナ402および第2のアンテナ404が1つのアンテナになり得ることは、同業者にとって明らかであろう。位置決定装置412は記憶装置414に接続されている。記憶装置414は位置決定装置412によって計算された位置情報を蓄える。蓄えられた位置情報は、記憶装置414とトランシーバ406とに接続されている前位置(prior location)送信回路417によって送信される。前位置送信回路は、処理装置とそのソフトウエア、または他の類似の回路であり得る。
【0027】
図5によれば、別の実施形態が示される。図5は図1および図2に類似している。図5は別の地理的なエリア500を示す。地理的なエリア500は通話可能エリア505を含み、通話可能エリア505は基準局507、509を含む。図5はまた、第1の場所513にあり、経路522に沿って第2の場所515に移動する、モバイルハンドセット530を含む。図2と同様に、図5の経路522は図1の経路と比較して直線的でない。さらに、図1および図2と同様に、非常事態が図5の場所518で生じる。
【0028】
図5はまた、移動経路に沿って決定された位置(location determinations)532、535、537、540、542を含む。モバイルハンドセット530が位置513と515との間を移動するとき、その位置は測定されハンドセット530の中に蓄えられる。蓄えられた移動経路情報は非常時サービス要員によって、非常事態の場所への最も効率よく移動する道を決定することを助けるために、使用されることが出来る。例えば非常事態は、はっきりと記録されていないハイキングコースで生じ得る。経路情報によって、非常事態要員は通話者が使用したのと同じ経路をたどることが出来、非常事態が生じた場所518に行くことが出来る。
【0029】
位置の測定をいつ行うのかを決定するために、複数の異なる方法が使用されることが出来る。位置の測定は、特定の時間間隔で行われ、蓄えられることが出来る。例えば位置の測定は、10秒ごとに行われ蓄えられることも出来る。また位置の測定は、移動距離に基づいて行われることも出来る。例えばモバイルハンドセットが10フィートより多く移動すれば何時でも、その位置データを蓄える。一般に時間または距離において、よりしばしばデータが蓄えられると、経路情報はより正確になる。ハンドセット530が移動を停止するときには、ハンドセットは経路情報を蓄えることを停止し得る。
【0030】
モバイルハンドセット530は経路情報をハンドセット530の中の記憶装置に蓄える。モバイルハンドセット530が位置513から位置515まで運ばれるとき、モバイルハンドセット530の中の記憶装置は一杯になり得る。モバイルハンドセット530の中の記憶装置が一杯になったときには、記憶装置の中に蓄えられた一部の位置データを削除することが必要となり得る。
【0031】
どのデータを削除するかを決定するために、いくつかの方法が使用されることが出来る。ある方法では、モバイルハンドセットは新しい位置情報を蓄えることを単に停止し得て、経路情報は位置513から記憶装置が一杯になった位置までとなる。別の方法では、モバイルハンドセット530は、経路の始まりからの位置データを削除する。経路の始まりからのデータを削除することは、実際の非常事態の場所を不明確にする恐れがあるので、この方法は好ましい方法であるとは考えられない。モバイルハンドセット530から位置データを削除する別の方法は、記憶装置がほぼ一杯になる、またはほぼ一杯である時に、概括的な経路情報は損なわずに残すものの、粗さの程度は増加するという手法で、多数の位置データを削除することである。例えばモバイルハンドセット530が位置545のデータを蓄えた後に、その記憶装置が一杯となり、532、537、および542の位置データが記憶装置から削除された場合には、記憶装置上の3個の位置が貯蔵のために使用できるが、一部の経路情報は失われたままである。そして経路はより粗いものとなる。さらに、この新しい粗さの程度に基づいて、先を読み取ることは好都合である。
【0032】
図6は、通話可能エリア605、および通話可能エリア605の内側から通話可能エリアの外側のエリアに移動し、さらに通話可能エリア605の内側に戻るモバイルハンドセット625を、示す。経路情報が蓄えられている場合には、モバイルハンドセット625の利用者が通話可能エリア605に戻ることを助けるために、その経路情報は使用されることが出来る。
【0033】
図5と同様に、図6は地理的なエリア600を含む。地理的なエリア600は通話可能エリア605および基準局607、609を含む。さらに、モバイルハンドセット625は第1の位置630および第2の位置632が示されている。モバイルハンドセット625は経路619に沿って移動する。ある時刻に、モバイルハンドセット625は第1の位置630にある。モバイルハンドセット625は、第1の方向610に移動し、通話可能エリア605を離れる。位置632でモバイルハンドセット625の利用者は、位置650で生じた非常事態を目撃する。しかしながら、モバイルハンドセット625が通話可能エリアの外側にあるために、モバイルハンドセット625の利用者は、非常呼び出し通話をすることが出来ない。移動経路619の実例が蓄えられている場合には、622を例にとり、モバイルハンドセット625の利用者は移動経路619を615の方向にたどることにより、通話可能エリアに戻ることが出来る。
【0034】
さらに、モバイルハンドセット625は、通話可能エリア605のような通話可能エリアを絶えず注意し得て、利用者に直近の通話可能エリアへの方向と距離を指示し得る。道路位置を含む地図表示能力を付加することにより、モバイルハンドセットは移動経路に依存することなく、直近の通話可能エリアに行く方法を決定することが出来る。
【0035】
一部の場合において、モバイル無線通信装置は、位置情報をモバイル無線通信装置の利用者に提供することが出来ないことがあり得る。位置情報がPSAP管理者のような移動可能呼び出し通話の受信者に提供されることが可能であるにもかかわらず、このことは事実であり得る。これらの場合には、モバイル通信装置が通話可能エリアの外側にあった時間を絶えず注意するためのタイマーを使用することが、好都合であり得る。これはモバイル通信装置の利用者に、通話可能エリアに戻るために如何ほどの時間を要するかを示すことができる。しかしながら、これは粗い推定値にすぎないことは、同業者にとっては明らかであろう。多くの場合、モバイル通信装置が離れた最後の通話可能エリアよりも、他の通話可能エリアの方がより近いことがある。さらに、モバイル無線通信装置の使用者に対して位置情報を提供することが出来る、モバイル通信装置にタイマーが付加され得て、その利用者に通話可能エリアに戻るために如何ほどの時間を要するかの別の指示を与える。
【0036】
さらに、非常時のサービス、PSAP管理者、およびE911非常呼び出し通話を含む実例は、実例の中で広範囲に使用されている。ほかの形式の呼び出し通話が、上述された方法およびモバイルハンドセットから利益を得ることがあることは理解される。例えば自動車牽引手配者は上述された方法を使用し得る。この実例についてさらに示すならば、モバイルハンドセットの通話可能エリアによってカバーされないエリアにおいて、自動車が故障で動けなくなる場合を想定する。車の運転手は牽引サービスの呼び出し通話をするために、別の位置まで歩く決心をするかもしれない。牽引トラックが正確な位置に送られるようにするために、牽引手配者に位置情報を送信することは、有益であり得る。
【0037】
発明の他の実施形態は、同業者によって想起されるであろう。本明細書の中の例は、単なる例示に過ぎない。GPS受信機およびAGPS受信機が検討されてきたが、他の位置決定方法も可能である。一部の例においては、上述したとおり、モバイルハンドセットが通話可能エリアの中にあるときには、ネットワークによる処理のために、擬似距離が蓄えられる必要があり得る。他の場合には、モバイルハンドセットは複数のGPS解析を実行することを得る。例えば通話可能エリアの外側ではスタンドアローンなGPS受信機が使用され、通話可能エリアの内側ではAGPSが使用されることを得る。他の組み合わせが可能であることは、同業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は通話可能エリアおよび通話可能エリアの外側のエリアから通話可能エリアの内側のエリアに移動するモバイルハンドセットを示す。
【図2】図2は通話可能エリアおよび通話可能エリアの外側のエリアから通話可能エリアの内側のエリアに移動するモバイルハンドセットを示す。
【図3】図3は図1のモバイルハンドセットの操作手順の流れ図である。
【図4】図4はモバイル通信装置のさらなる詳細図である。
【図5】図5は通話可能エリアおよび通話可能エリアの外側のエリアから通話可能エリアの内側のエリアに移動するモバイルハンドセットを示す。
【図6】図6は通話可能エリアおよび通話可能エリアの内側から通話可能エリアの外側のエリアに移動しまた通話可能エリアに戻るモバイルハンドセットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置の地理的位置を送信する方法であって、
第1回目のモバイル呼び出し通話を試みることと、
該試みられた第1回目のモバイル呼び出し通話に失敗することと、
地理的な位置を示す位置情報を受け取ることと、
該位置情報を蓄えることと、
第2回目のモバイル呼び出し通話を試みることと、
該第2回目のモバイル呼び出し通話が正常に完了することと、
該蓄えられた位置情報を送信することと、
該位置情報を使用して、該無線通信装置の地理的位置を決定すること
を包含する、方法。
【請求項2】
前記第1回目のモバイル呼び出し通話は、緊急通報受付センター(Puplic Safety Answering Point)への呼び出し通話である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1回目のモバイル呼び出し通話は、無線911呼び出し通話である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1回目のモバイル呼び出し通話は、道路脇の支援サービスへのモバイル呼び出し通話である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記地理的な位置を示す位置情報は、全地球測位システムにより送信される擬似距離情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記地理的な位置を示す位置情報は、緯度および経度の情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記地理的な位置を示す位置情報は、基準局からの距離および方向の推定値である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記蓄えるステップは、記憶装置に書き込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記記憶装置は、ランダムアクセス記憶装置である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2回目のモバイル呼び出し通話は、緊急通報受付センターへの呼び出し通話である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2回目のモバイル呼び出し通話は、無線911呼び出し通話である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2回目のモバイル呼び出し通話は、道路脇の支援サービスへのモバイル呼び出し通話である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
無線通信装置の地理的位置を送信する方法であって、
該無線通信装置が非サービス領域の中にあることを決定することと、
地理的な位置を示す位置情報を受け取ることと、
該位置情報を蓄えることと、
第2回目のモバイル呼び出し通話を試みることと、
該第2回目のモバイル呼び出し通話が正常に完了することと、
該蓄えられた位置情報を送信することと、
該位置情報を使用して、該無線通信装置の地理的位置を決定すること
を包含する、方法。
【請求項14】
前記第1回目のモバイル呼び出し通話は、緊急通報受付センターへの呼び出し通話である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1回目のモバイル呼び出し通話は、無線911呼び出し通話である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1回目のモバイル呼び出し通話は、道路脇の支援サービスへのモバイル呼び出し通話である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記地理的な位置を示す位置情報は、全地球測位システムにより送信される擬似距離情報である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記地理的な位置を示す位置情報は、緯度および経度の情報である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記地理的な位置を示す位置情報は、基準局からの距離および方向の推定値である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記蓄えるステップは、記憶装置に書き込むことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記記憶装置は、ランダムアクセス記憶装置である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2回目のモバイル呼び出し通話は、緊急通報受付センターへの呼び出し通話である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記第2回目のモバイル呼び出し通話は、無線911呼び出し通話である、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記第2回目のモバイル呼び出し通話は、道路脇の支援サービスへのモバイル呼び出し通話である、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
モバイルハンドセットであって、
無線周波数信号を送信および受信するトランシーバと、
位置決定装置と、
該位置決定装置と接続され、かつ正常に完了しなかったモバイル呼び出し通話に対する位置情報を蓄えるように構成された、記憶装置と、
モバイル呼び出し通話が正常に完了したときに、該記憶装置の中に蓄えられた該位置情報を送信するための、該トランシーバおよび該記憶装置と接続された前位置送信ブロックと、
該トランシーバにパワーを供給するために該トランシーバと接続された電池と、
該トランシーバ、位置決定装置、前位置送信ブロック、および該電池と接続されたユーザインターフェースと、
該トランシーバ、該位置決定装置、該記憶装置、該前位置送信ブロック、該ユーザインターフェース、該電池を包むケースと
を備える、モバイルハンドセット。
【請求項26】
前記モバイル呼び出し通話は、緊急通報受付センターへの呼び出し通話である、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記モバイル呼び出し通話は、無線911呼び出し通話である、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記モバイル呼び出し通話は、道路脇の支援サービスへのモバイル呼び出し通話である、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
前記位置決定装置は、全地球測位システムの受信機である、請求項25に記載の装置。
【請求項30】
前記全地球測位システムの受信機は、前記記憶装置の中に蓄えられる擬似距離を決定する、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記全地球測位システムの受信機は、受信された擬似距離に基づいて緯度および経度を決定する、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記記憶装置は、ランダムアクセス記憶装置である、請求項25に記載の装置。
【請求項33】
無線通信装置の移動経路を送信する方法であって、
第1回目のモバイル呼び出し通話を試みることと、
該試みられた第1回目の呼び出し通話に失敗することと、
第1の地理的位置を示す第1の位置情報を受け取ることと、
該第1の位置情報を蓄えることと、
移動経路に沿った位置を示す、複数の他の位置情報データを受け取ることと、
該複数の他の位置情報データを蓄えることと、
第2回目のモバイル呼び出し通話を試みることと、
該第2回目のモバイル呼び出し通話が正常に完了することと、
該第1の位置情報を送信することと、
該第1の位置情報を使用して、無線通信装置の地理的な位置を決定することと、
移動経路を決定するための該複数の位置データを表示すること
を包含する、方法。
【請求項34】
前記移動経路に沿った位置を示す、複数の他の位置情報データを蓄えることは、通話可能エリアを離れるとすぐに蓄えられる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記移動ステップの経路を決定するための前記複数の位置データを表示することは、モバイル装置の上において行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
移動経路に沿った位置を示す、前記複数の他の位置情報データを送信する追加のステップを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記移動ステップの経路を決定するための前記複数の位置データを表示することは、モバイル装置の利用者が前記通話可能エリアに戻ることを支援するために使用される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
無線通信装置の移動経路を送信する方法であって、
該無線通信装置が通話可能エリアの外側にあることを決定することと、
タイマーをスタートさせることと、
第1回目のモバイル呼び出し通話を試みることと、
該第1回目のモバイル呼び出し通話に失敗することと、
第1の地理的な位置を示す第1の位置情報を受け取ることと、
該第1の位置情報を蓄えることと、
該タイマーからの時刻を通知することと、
第2回目のモバイル呼び出し通話を試みることと、
該第2回目の呼び出し通話が正常に完了することと、
該第1の位置情報を送信することと、
該第1の位置情報を使用して、無線通信装置の地理的位置を決定することと
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−525055(P2007−525055A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509344(P2006−509344)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/009301
【国際公開番号】WO2004/089032
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(503370192)キョウセラ ワイヤレス コープ. (93)
【Fターム(参考)】