説明

低損失光ファイバ、光ファイバアレイ、コネクタ構造および低損失光ファイバの作製方法

【課題】一般のシングルモードファイバと接続が可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能にした低損失光ファイバ、光ファイバアレイ、コネクタ構造および低損失光ファイバの作製方法を提供する。
【解決手段】低損失光ファイバ10では、シングルモードファイバ(SMF)13の一部が、コア11の周囲のクラッド12に複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバとなっている。SMF13の一部は90度曲げ部13aになっており、90度曲げ部のみがホールアシストファイバとなっている。管状の空隙14が、SMF13に曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成されている。90度曲げ部のみがホールアシストファイバとなっているので、90度曲げ部での曲げ損失を低減でき、一般のSMFと接続可能で、今までと同等の精度で接続可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ損失の小さい低損失光ファイバ、光ファイバアレイ、コネクタ構造および低損失光ファイバの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、例えば、光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス(FTTH:Fiber To The Home)等では、ユーザー宅の建物内に光ファイバを配線する際に、光の伝播方向を例えば90度に曲げるためのファイバ曲げ構造や曲げコネクタ構造が必要になる。
【0003】
このような曲げコネクタ構造には、曲げ損失を小さく抑えるために、例えば、コアの周囲のクラッドに複数の空孔を形成することにより、等価的に比屈折率差(Δ)を大きくしたホールアシスト型ホーリーファイバ(いわゆるホールアシストファイバ)を用いるのが望ましい。このようなホールアシストファイバとして、クラッドに形成される空孔の位置を、コア中心から異なった位置に任意に配置させることが可能な光ファイバが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源として用いてレーザ加工を行い、高精度な光デバイスなどを作製するレーザ加工装置が知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−69871号公報
【特許文献2】特開2006−198634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来技術のような高比屈折率差(Δ)構造の光ファイバでは、モードフィールド径が小さくなるため、接続部のコネクタに高精度が要求される。また、受発光素子との位置合わせにも高精度が要求される。さらに、現在FTTH等でも導入されている一般のシングルモードファイバ(SMF)と接続することは、モードフィールド径が小さくなるために困難である。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は一般のシングルモードファイバと接続が可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能にした低損失光ファイバ、光ファイバアレイ、コネクタ構造および低損失光ファイバの作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る低損失光ファイバは、コアとクラッドを有するシングルモードファイバの一部を、前記コア周囲の前記クラッドに前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバとしたことを特徴とする。この構成によれば、シングルモードファイバの一部をホールアシストファイバにすることで、そのホールアシストファイバの部分は等価的に比屈折率差(Δ)の大きい光ファイバになる。これにより、ホールアシストファイバとなったシングルモードファイバの一部を、曲げ加工により曲げ部、例えば90度曲げ部にしても、その曲げ部の曲げ損失が低減される。また、ホールアシストファイバの両側は通常のシングルモードファイバであるので、FTTH等で使用される一般のシングルモードファイバと接続が可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能になる。従って、曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバを実現することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る低損失光ファイバは、前記シングルモードファイバの一部は曲げ部であることを特徴とする。この構成によれば、曲げ部のみがホールアシストファイバとなっているので、曲げ部での曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバを実現することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明に係る低損失光ファイバは、前記曲げ部は90度曲げ部であることを特徴とする。この構成によれば、90度曲げ部のみがホールアシストファイバとなっているので、90度曲げ部での曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバを実現することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明に係る低損失光ファイバは、前記複数の管状の空隙が、前記シングルモードファイバに曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成された空隙であることを特徴とする。この構成によれば、100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源としたレーザ加工技術により、ホールアシストファイバ部分の空隙を高い精度、例えば1μm以下の加工精度で作製することができる。
【0011】
請求項5に記載の発明に係る光ファイバアレイは、請求項3に記載の低損失光ファイバが複数本配列されたことを特徴とする。この構成によれば、90度曲げ部での曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な光ファイバアレイを実現することができる。
【0012】
請求項6に記載の発明に係るコネクタ構造は、請求項5に記載の光ファイバアレイと、前記90度曲げ部をそれぞれ有する複数本の前記低損失光ファイバをコネクタ状のフェルールに収容し、前記複数本の低損失光ファイバの、前記90度曲げ部より端部側のファイバ端部を前記フェルールに形成された複数のファイバ保持孔にそれぞれ挿通させてコネクタ化したことを特徴とする。この構成によれば、90度曲げ部での曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、今までと同等の精度で接続可能なコネクタ構造を実現することができる。
【0013】
請求項7に記載の発明に係る低損失光ファイバの作製方法は、コアとクラッドを有するシングルモードファイバの一部に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工を施して、前記一部を、前記コア周囲の前記クラッドに前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバとすることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明に係る低損失光ファイバの作製方法は、前記レーザ加工を、前記シングルモードファイバの一部に曲げ加工を施す前或いは該曲げ加工後に行うことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明に係る低損失光ファイバは、コアとクラッドをそれぞれ有する第1および第2のシングルモードファイバと、コアとクラッドを有し、前記第1のシングルモードファイバと前記第2のシングルモードファイバとの間に融着された第3のシングルモードファイバと、を備え、前記第3のシングルモードファイバは、前記コア周囲の前記クラッドに、前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバであることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明に係る低損失光ファイバは、前記第3のシングルモードファイバは90度曲げ部を有し、該90度曲げ部がホールアシストファイバであることを特徴とする。この構成によれば、第3のシングルモードファイバの90度曲げ部のみがホールアシストファイバとなっているので、90度曲げ部での曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバを実現することができる。
【0017】
請求項11に記載の発明に係る光ファイバアレイは、請求項10に記載の低損失光ファイバが複数本配列されたことを特徴とする。この構成によれば、90度曲げ部での曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な光ファイバアレイを実現することができる。
【0018】
請求項12に記載の発明に係るコネクタ構造は、請求項11に記載の光ファイバアレイと、前記90度曲げ部をそれぞれ有する複数本の前記低損失光ファイバをコネクタ状のフェルールに収容し、前記複数本の低損失光ファイバの、前記90度曲げ部より端部側のファイバ端部を前記フェルールに形成された複数のファイバ保持孔にそれぞれ挿通させてコネクタ化したことを特徴とする。この構成によれば、90度曲げ部での曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、今までと同等の精度で接続可能なコネクタ構造を実現することができる。
【0019】
請求項13に記載の発明に係る低損失光ファイバの作製方法は、請求項10に記載の低損失光ファイバの作製方法であって、前記ホールアシストファイバである前記第3のシングルモードファイバを、前記コア周囲の前記クラッドに、前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成された光ファイバ母材を線引き加工して形成し、前記第3のシングルモードファイバを前記第1のシングルモードファイバと前記第2のシングルモードファイバとの間に融着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シングルモードファイバの一部をホールアシストファイバにすることで、そのホールアシストファイバの部分は等価的に比屈折率差(Δ)の大きい光ファイバになる。ホールアシストファイバとなったシングルモードファイバの一部を、曲げ加工により曲げ部、例えば90度曲げ部にしても、その曲げ部の曲げ損失が低減される。また、ホールアシストファイバの両側は通常のシングルモードファイバであるので、FTTH等で使用される一般のシングルモードファイバと接続が可能である。従って、曲げ損失を低減でき、かつ一般のシングルモードファイバと接続可能な低損失光ファイバを実現することができる。また、接続部のコネクタなどにも、今までと同等の精度で接続が出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明を具体化した低損失光ファイバ、光ファイバアレイ、コネクタ構造および低損失光ファイバの作製方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
(低損失光ファイバの第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る低損失光ファイバ10の一部を示す拡大図である。図2は図1のA−A線に沿った断面図である。
【0022】
低損失光ファイバ10では、図1および図2に示すように、コア11とクラッド12を有するシングルモードファイバ(SMF)13の一部が、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバとなっている。本実施形態では、コア11の周囲に、6つの管状の空隙14が略等間隔に形成されている。
【0023】
このように、低損失光ファイバ10では、シングルモードファイバ13の一部は90度曲げ部13aになっており、この90度曲げ部13aのみがホールアシストファイバとなっている。複数の管状の空隙14が、シングルモードファイバ13に曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成されている。
【0024】
(低損失光ファイバ10の作製方法)
まず、低損失光ファイバ10の作製に用いるレーザ加工装置を、図3に基づいて説明する。図3に示すレーザ加工装置20は、フェムト秒、例えば100フェムト秒程度のパルス幅の超短パルス光26を出射するレーザ発振器21と、メモリ22と、レーザ加工されるシングルモードファイバ13が載置されるステージ23と、光学系24と、それらの情報や制御プログラムに従ってレーザ光源21およびステージ23を制御するコントローラ25と、を備えている。
【0025】
メモリ22には、加工位置(形成する空隙14の位置)の情報、各加工位置での空隙14の大きさ、つまり、光学系24により集光される超短パルス光26のビーム径などの情報、および制御プログラムなどが格納されている。コントローラ25は、メモリ22に格納された加工位置の情報、各加工位置での空隙14の大きさ(ビーム径)などの情報および制御プログラムに従って、レーザ発振器21、ステージ23および光学系24を駆動制御して、フェムト秒程度のパルス幅の超短パルス光(レーザ光)26の焦点位置、その焦点位置でのスポットサイズ(ビーム径)を制御する。
【0026】
このようなレーザ加工装置20を用いて、コア11とクラッド12を有するシングルモードファイバ13の一部にレーザ加工を施して、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14を形成する。これにより、シングルモードファイバ13の一部を、コア11の周囲のクラッド12にコア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバとした低損失光ファイバ10が作製される。なお、レーザ加工装置20を用いたレーザ加工は、シングルモードファイバ13の一部に曲げ加工を施す前に行ってもよいし、或いはその曲げ加工後に行ってもよい。
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0027】
(1)シングルモードファイバ13の一部である90度曲げ部13aをホールアシストファイバにすることで、そのホールアシストファイバの部分(90度曲げ部13a)は等価的に比屈折率差(Δ)の大きい光ファイバになる。これにより、ホールアシストファイバとなったシングルモードファイバの一部を、曲げ加工により曲げ部、例えば90度曲げ部13aにしても、その90度曲げ部13aの曲げ損失が低減される。
【0028】
(2)ホールアシストファイバの両側は通常のシングルモードファイバ13であるので、FTTH等で使用される一般のシングルモードファイバと接続が可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能である。
【0029】
(3)従って、曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10を実現することができる。
【0030】
(4)シングルモードファイバ13の一部である90度曲げ部13aのみがホールアシストファイバとなっているので、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10を実現することができる。
【0031】
(5)100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源としたレーザ加工技術(レーザ加工装置20)により、ホールアシストファイバ部分(90度曲げ部13a)の空隙14を高い精度、例えば1μm以下の加工精度で作製することができる。
【0032】
(低損失光ファイバの第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態に係る低損失光ファイバ10Aの一部を示す拡大図である。図5は図4のB−B線に沿った断面図である。
【0033】
低損失光ファイバ10Aは、図4および図5に示すように、コア11とクラッド12をそれぞれ有する第1および第2のシングルモードファイバ13および13と、コア11とクラッド12を有し、第1のシングルモードファイバ13と第2のシングルモードファイバ13との間に融着された第3のシングルモードファイバ13と、を備えている。図4において、符号「31」は第1のシングルモードファイバ13と第3のシングルモードファイバ13との融着部を、符号「32」は第2のシングルモードファイバ13と第3のシングルモードファイバ13との融着部をそれぞれ示している。
【0034】
この低損失光ファイバ10Aでは、第3のシングルモードファイバ13が、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバである。また、第3のシングルモードファイバ13は90度曲げ部13bを有し、この90度曲げ部13bがホールアシストファイバである。
【0035】
(低損失光ファイバ10Aの作製方法)
この低損失光ファイバ10Aは、次のようにして作製される。
まず、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成された石英系の光ファイバ母材(図示省略)を線引き加工して、ホールアシストファイバである第3のシングルモードファイバ13を形成する。
【0036】
次に、第3のシングルモードファイバ13を、第1のシングルモードファイバ13と第2のシングルモードファイバ13との間に融着する。これにより、低損失光ファイバ10Aが作製される。なお、複数の管状の空隙14が形成された光ファイバ母材は、石英系の光ファイバ母材に限らず、プラスチック製の光ファイバ母材であっても良い。ここで用いる光ファイバ母材は、中心部にある屈折率の高いコアと、その周囲にあるコアより屈折率の低いクラッドと、このクラッド内に複数の管状の空隙があるものであれば、その材料は石英系の材料に限らない。
以上のように構成された第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0037】
(1)第3のシングルモードファイバ13の90度曲げ部13bのみがホールアシストファイバとなっており、かつ、第3のシングルモードファイバ13の一端側は第1のシングルモードファイバ13に、その他端側は第2のシングルモードファイバ13にそれぞれ融着されている。このため、90度曲げ部13bでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10Aを実現することができる。
【0038】
(2)低損失光ファイバ10Aを、線引き加工と融着という一般的な技術を用いて作製することができる。このため、低損失光ファイバ10Aを低コストで作製することができる。
【0039】
(光ファイバアレイの一実施形態)
図6は本発明の一実施形態に係る光ファイバアレイ100を示す斜視図である。
この光ファイバアレイ100は、図1および図2に示す低損失光ファイバ10が複数本配列されたものである。この光ファイバアレイ100は、12本の低損失光ファイバ10が一列に配列された多心テープ光ファイバである。なお、図6に示す符号「120」は光ファイバアレイ100の被覆部である。
【0040】
この一実施形態によれば、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能な光ファイバアレイ100を実現することができる。
なお、光ファイバアレイ100は、図4および図5に示す低損失光ファイバ10Aを複数本配列したものであってもよい。
【0041】
(90度曲げコネクタ構造の一実施形態)
本発明の一実施形態に係る90度曲げコネクタ構造(コネクタ構造)200を図7乃至図14に基づいて説明する。
90度曲げコネクタ構造200は、図6に示す光ファイバアレイ100と、90度曲げ部13aをそれぞれ有する複数本の低損失光ファイバ10をコネクタ状のフェルールに収容し、複数本の低損失光ファイバ10の、90度曲げ部13aより端部側のファイバ端部13cをコネクタ状のフェルールに形成された複数のファイバ保持孔にそれぞれ挿通させてコネクタ化したものである。
【0042】
90度曲げコネクタ構造200の具体的構成を以下に説明する。
90度曲げコネクタ構造200は、図7および図8に示すように、90度曲げ部13aをそれぞれ有する複数の低損失光ファイバ10を含む光ファイバアレイ100と、V溝付きフェルール220と、蓋体230と、複数のファイバ保持孔251(図8参照)を有する第2のフェルール(コネクタ端面を有するフェルール)250と、を備えている。
【0043】
V溝付きフェルール220は、図9に示すように、複数の低損失光ファイバ10の90度曲げ部13aより端部側のファイバ端部13cを一列に配列させる位置決め溝である複数のV溝221と、開口部222と、を有する。このV溝付きフェルール220は、底壁部224と、奥側の垂直壁部225と、左右の側壁部226,227とを有し、上部および周壁部の一部が開口した箱型容器である。垂直壁部225の内壁面には、複数のV溝、本例では12個のV溝221が形成されている。底壁部224には、樹脂を充填するための注入口223が形成されている。複数のV溝221は、底壁部224に対して垂直方向にそれぞれ延びている。
【0044】
また、このV溝付きフェルール220にあっては、左右の側壁部226,227は、奥側にある横幅の狭い側壁部226a,227aと、手前側にある横幅の広い側壁部226b、227bと、を有している。横幅の狭い左右の側壁部226a,227aの外面に、図10に示す第2のフェルール250の左右の側壁部254,255の内面がそれぞれ嵌合可能になっている。このような構成を有するV溝付きフェルール220は、樹脂等の材料からなる成形体である。
【0045】
蓋体230は、図7および図12に示すように、V溝付きフェルール220の横幅の狭い側壁部226a,227aの内面にそれぞれ嵌合する横幅の狭い第1係合部231と、その横幅の広い側壁部226b、227bの内面にそれぞれ嵌合する横幅の広い第2係合部232とを有している。この蓋体230は、図7および図8に示すようにV溝付きフェルール220の開口部222に装着された状態で、V溝付きフェルール220内に90度曲げ部13aおよびその前後の部分が収容された複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に端面230aで押し付けるようになっている。蓋体230の第1係合部231は、その端面230aで複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に押し付ける際に、第1係合部231の一部が各低損失光ファイバ10の90度曲げ部13aの部分に当たって90度曲げ部13aを破断させないように、第2係合部232よりも厚さが薄くなっている(図8参照)。このような構成を有する蓋体230は、樹脂等の材料からなる成形体である。
【0046】
第2のフェルール250は、図10、図11および図13に示すように、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cをそれぞれ保持する複数の(本例では12個の)ファイバ保持孔251と、これらのファイバ保持孔251の左右に形成された2つのガイドピン孔252とを有している。また、第2のフェルール250の複数のファイバ保持孔251のファイバ挿入側端部には、各ファイバ保持孔251へ複数の低損失光ファイバ10の各ファイバ端部13cを挿入するのを容易にするために、テーパ穴253(図10、図11参照)がそれぞれ形成されている。これら複数のテーパ穴253には、複数のテーパ穴253へ複数の低損失光ファイバ10の各ファイバ端部13cを挿入するのを容易にするために、複数のファイバガイド溝256がそれぞれ形成されている。このような構成を有する第2のフェルール250は、樹脂等の材料からなる成形体である。また、90度曲げコネクタ構造200にあっては、図8に示すように、蓋体230とV溝付きフェルール220との間の空間240に樹脂241が充填されている。
【0047】
次に、図7に示す90度曲げコネクタ構造200の作製方法を説明する。
(1)まず、図6に示す複数の低損失光ファイバ10の、90度曲げ部13aおよびその前後の部分を、図9に示すV溝付きフェルール220に収容させる(図12参照)。
【0048】
(2)次に、図12に示す状態で、V溝付きフェルール220内に収容された複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に端面230aで押し付けるように、蓋体230をV溝付きフェルール220の開口部222に装着する(図8,図13参照)。
【0049】
(3)次に、V溝付きフェルール220に形成された注入口223(図9参照)から、蓋体230とV溝付きフェルール220との間の空間240に樹脂241を注入し、樹脂241を硬化させる(図8参照)。これにより、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cが、複数のV溝221の精度で高精度に配列されて、V溝付きフェルール220から垂直に突き出た形になる(図8参照)。なお、樹脂241は、例えば紫外線硬化型樹脂である。
【0050】
(4)次に、複数の低損失光ファイバ10の、V溝付きフェルール220から突き出たファイバ端部13cを第2のフェルール250の複数のファイバ保持孔251にそれぞれ挿通させ、第2のフェルール250をV溝付きフェルール220にエポキシ系接着剤で固定する。これにより、図7および図8に示す90度曲げコネクタ構造200が出来る。
【0051】
(5)次に、90度曲げコネクタ構造200の第2のフェルール250の端面と、複数の低損失光ファイバ10のV溝付きフェルール220から突き出たファイバ端部13cとを、図8のC―C線に沿って研磨する。これにより、90度曲げコネクタ構造200が完成する。この90度曲げコネクタ構造200は、その2つのガイドピン孔252にガイドピン(図示省略)をそれぞれ嵌合させると共に、これら2つのガイドピンを、図示を省略した別の多心用フェルール型コネクタ(MTコネクタ)のガイドピン孔に嵌合させることにより、MTコネクタ等の別のコネクタと接続させることができる。
【0052】
以上のように構成された一実施形態に係る90度曲げコネクタ構造200によれば、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと接続可能で、今までと同等の精度で接続可能なコネクタ構造を実現することができる。
【0053】
また、90度曲げコネクタ構造200によれば、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cは、図14に示すように、蓋体230の端面230aとの一つの接触点と、V溝付きフェルール220の各V溝221との2つの接触点との3点で接触して位置決めされる。これにより、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cがV溝221の精度で高精度に配列されるという利点が得られる。
【0054】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
図1に示す上記第1実施形態に係る低損失光ファイバ10では、シングルモードファイバ13の一部は90度曲げ部13aになっており、この90度曲げ部13aのみがホールアシストファイバとなっている。本発明は、このような90度曲げ部13aを有する低損失光ファイバ10に限らず、図15に示すように曲げ部が無く、シングルモードファイバ13の一部がホールアシストファイバになっている低損失光ファイバ10Bにも適用可能である。この低損失光ファイバ10Bにおけるホールアシストファイバの複数の空隙14は、図3に示すレーザ加工装置20を用いたレーザ加工により形成される。
【0055】
また、本発明は、図16に示すように曲げ部が無く、シングルモードファイバ13の一部がホールアシストファイバになっている低損失光ファイバ10Cにも適用可能である。この低損失光ファイバ10Cは、コア11とクラッド12をそれぞれ有する第1および第2のシングルモードファイバ130および130と、コア11とクラッド12を有し、第1のシングルモードファイバ130と第2のシングルモードファイバ130との間に融着された第3のシングルモードファイバ130と、を備えている。図16において、符号「131」は第1のシングルモードファイバ130と第3のシングルモードファイバ130との融着部を、符号「132」は第2のシングルモードファイバ130と第3のシングルモードファイバ130との融着部をそれぞれ示している。
【0056】
また、上記第1および第2実施形態に係る低損失光ファイバは、90度曲げ部13aおよび13bをそれぞれ有しているが、90度以外の角度に曲げられた曲げ部をそれぞれ有する複数の低損失光ファイバにも本発明は適用可能である。
【0057】
上記各実施形態に係る低損失光ファイバにおいて、ホールアシストファイバ部分に形成される複数の管状の空隙14の数、配置および大きさを適宜変更した低損失光ファイバにも本発明は適用可能である。具体的には、複数の管状の空隙14を「6」以外の複数個形成したもの、或いは、複数の管状の空隙14を周方向に複数列に配置したもの、或いは、複数の管状の空隙14の大きさが異なるもの、等にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係る低損失光ファイバの一部を示す拡大図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】低損失光ファイバの作製に用いるレーザ加工装置を示す概略構成図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る低損失光ファイバの一部を示す拡大図。
【図5】図4のB−B線に沿った断面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る低損失光ファイバアレイを示す斜視図。
【図7】本発明の一実施形態に係る90度曲げコネクタ構造を示す斜視図。
【図8】図7に示す90度曲げコネクタ構造の縦断面図。
【図9】V溝付きフェルールを示す斜視図。
【図10】複数のファイバ保持穴を有する第2のフェルールを示す斜視図。
【図11】図10のD−D線に沿った断面図。
【図12】90度曲げコネクタ構造の組み立て作業の説明に用いる説明図。
【図13】図12に示す組み立て作業の後に行う組み立て作業の説明に用いる説明図。
【図14】複数の低損失光ファイバのファイバ端部が位置決めされて保持されている様子を示す断面図。
【図15】図1に示す第1実施形態に係る低損失光ファイバの別例を示す拡大図。
【図16】図4に示す第2実施形態に係る低損失光ファイバの別例を示す拡大図。
【符号の説明】
【0059】
10,10A,10B,10C:低損失光ファイバ
11:コア
12:クラッド
13:シングルモードファイバ
13a,13b:90度曲げ部
13:第1のシングルモードファイバ
13:第2のシングルモードファイバ
13:第3のシングルモードファイバ
14:空隙
20:レーザ加工装置
200:90度曲げコネクタ構造(コネクタ構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとクラッドを有するシングルモードファイバの一部を、前記コア周囲の前記クラッドに前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバとしたことを特徴とする低損失光ファイバ。
【請求項2】
前記シングルモードファイバの一部は曲げ部であることを特徴とする請求項1に記載の低損失光ファイバ。
【請求項3】
前記曲げ部は90度曲げ部であることを特徴とする請求項2に記載の低損失光ファイバ。
【請求項4】
前記複数の管状の空隙が、前記シングルモードファイバに曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成された空隙であることを特徴とする請求項2または3に記載の低損失光ファイバ。
【請求項5】
請求項3に記載の低損失光ファイバが複数本配列されたことを特徴とする光ファイバアレイ。
【請求項6】
請求項5に記載の光ファイバアレイと、前記90度曲げ部をそれぞれ有する複数本の前記低損失光ファイバをコネクタ状のフェルールに収容し、前記複数本の低損失光ファイバの、前記90度曲げ部より端部側のファイバ端部を前記フェルールに形成された複数のファイバ保持孔にそれぞれ挿通させてコネクタ化したことを特徴とするコネクタ構造。
【請求項7】
コアとクラッドを有するシングルモードファイバの一部に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工を施して、前記一部を、前記コア周囲の前記クラッドに前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバとすることを特徴とする低損失光ファイバの作製方法。
【請求項8】
前記レーザ加工を、前記シングルモードファイバの一部に曲げ加工を施す前或いは該曲げ加工後に行うことを特徴とする請求項7に記載の低損失光ファイバの作製方法。
【請求項9】
コアとクラッドをそれぞれ有する第1および第2のシングルモードファイバと、
コアとクラッドを有し、前記第1のシングルモードファイバと前記第2のシングルモードファイバとの間に融着された第3のシングルモードファイバと、を備え、
前記第3のシングルモードファイバは、前記コア周囲の前記クラッドに、前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバであることを特徴とする低損失光ファイバ。
【請求項10】
前記第3のシングルモードファイバは90度曲げ部を有し、該90度曲げ部がホールアシストファイバであることを特徴とする請求項9に記載の低損失光ファイバ。
【請求項11】
請求項10に記載の低損失光ファイバが複数本配列されたことを特徴とする光ファイバアレイ。
【請求項12】
請求項11に記載の光ファイバアレイと、前記90度曲げ部をそれぞれ有する複数本の前記低損失光ファイバをコネクタ状のフェルールに収容し、前記複数本の低損失光ファイバの、前記90度曲げ部より端部側のファイバ端部を前記フェルールに形成された複数のファイバ保持孔にそれぞれ挿通させてコネクタ化したことを特徴とするコネクタ構造。
【請求項13】
請求項10に記載の低損失光ファイバの作製方法であって、
前記ホールアシストファイバである前記第3のシングルモードファイバを、前記コア周囲の前記クラッドに、前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成された光ファイバ母材を線引き加工して形成し、
前記第3のシングルモードファイバを前記第1のシングルモードファイバと前記第2のシングルモードファイバとの間に融着することを特徴とする低損失光ファイバの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−128111(P2010−128111A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301711(P2008−301711)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】