説明

低温液化ガス貯槽

【課題】 輸送時の重量を軽減して公道での輸送を可能とし、製作コストの上昇も最小限に抑えることができる低温液化ガス貯槽を提供する。
【解決手段】 低温液化ガスを貯留する内槽12と、該内槽の外側に断熱層13を介して設けられた外槽14とを有する低温液化ガス貯槽11において、前記外槽を外槽下部部材16と外槽上部部材17とに分割し、内槽内に連通する配管15を内槽下方に集中させて配管保持部材18で保持し、前記外槽下部部材に前記配管保持部材を取り付ける配管貫通孔17aを形成するとともに、貯槽設置場所で前記外槽下部部材の上部に前記内槽を載置し、かつ、前記配管貫通孔に前記配管保持部材を取り付けて内槽と外槽下部部材とを一体化し、該内槽と一体化した外槽下部部材の上部に前記外槽上部部材を組み付けて接合一体化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化ガス貯槽に関し、詳しくは、液化アルゴン、液化酸素、液化窒素、液化炭酸ガス、液化天然ガス(LNG)等の低温液化ガスを貯留し、化学工場、半導体工場、病院等の医療機関における無菌室や人工呼吸器等に各種ガスを供給するために所定の用地に配設される大型の低温液化ガス貯槽に関する。
【背景技術】
【0002】
低温液化ガスを貯留する大型の低温液化ガス貯槽は、一般に、貯留した低温液化ガスの蒸発を抑えるため、内槽と外槽との二重構造で形成され、内槽と外槽との間には、パーライト等の断熱材を充填するとともに真空引きした真空断熱層を形成している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2964310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年は、低温液化ガス貯槽の大型化が望まれているが、工場で製作した低温液化ガス貯槽を設置場所へ輸送する際の様々な制限、特に公道での重量制限によって最大容量が限定されているのが実情である。また、現地で大型の低温液化ガス貯槽を製作することも考えられるが、製作に必要な多くの装置や機器を用意しなければならず、現地工事が長期化するなどの理由から、大幅なコストアップが避けられない。
【0004】
そこで本発明は、輸送時の重量を軽減して公道での輸送を可能とし、製作コストの上昇も最小限に抑えることができる低温液化ガス貯槽を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の低温液化ガス貯槽は、低温液化ガスを貯留する内槽と、該内槽の外側に断熱層を介して設けられた外槽とを有する低温液化ガス貯槽において、前記外槽を外槽下部部材と外槽上部部材とに分割し、内槽内に連通する配管を内槽下方に集中させて配管保持部材で保持し、前記外槽下部部材に前記配管保持部材を取り付ける配管貫通孔を形成するとともに、貯槽設置場所で前記外槽下部部材の上部に前記内槽を載置し、かつ、前記配管貫通孔に前記配管保持部材を取り付けて内槽と外槽下部部材とを一体化し、該内槽と一体化した外槽下部部材の上部に前記外槽上部部材を組み付けて接合一体化したことを特徴としている。
【0006】
さらに、本発明の低温液化ガス貯槽は、前記内槽が、該内槽の底部が前記外槽下部部材の底部内側に設けられた内槽支持脚によって前記外槽下部部材の底部上面に組み付けられ、前記内槽支持脚は、外槽下部部材の底部下面に設けられている貯槽支持脚に、外槽下部部材底板部を介して荷重を支持される位置に設けられていることを特徴とし、また、前記断熱層を真空引きするための真空引き用配管は、前記外槽上部部材、あるいは、前記内槽に一体的に備えられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の低温液化ガス貯槽によれば、配管を組み付けた内槽を外槽と分割形成し、さらに、外槽を外槽上部部材と外槽下部部材とに分割形成しているので、3部材に分割してそれぞれ輸送することによって重量制限をクリアすることができる。また、内槽支持脚を外槽下部部材底板部を介して貯槽支持脚で支持することにより、内槽を確実に支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の低温液化ガス貯槽の一形態例を示す説明図、図2は完成した状態の低温液化ガス貯槽の一形態例を示す一部断面正面図、図3は貯槽製作工場での製作状態を示す説明図、図4は各種配管の設置例を示す説明図、図5は内槽を外槽下部部材に組み付けた状態を示す正面図、図6は低温液化ガス貯槽の平面図、図7は低温液化ガス貯槽の要部の正面図である。
【0009】
まず、図2に示すように、低温液化ガス貯槽11は、低温液化ガスを貯留する円筒状の内槽12と、該内槽12の外側に断熱層13を介して設けられた円筒状の外槽14とを有するもので、通常、断熱層13にはパーライト等の断熱材が充填されるとともに真空引きを行って所定の断熱性を得るようにしている。
【0010】
内槽12の上部鏡板には吊り金具12aが設けられ、下部には内槽支持脚12bが設けられている。また、外槽14の上部鏡板には安全器兼断熱材投入部14aが設けられ、胴部外面には吊り金具14bがそれぞれ設けられている。さらに、内槽12内に連通する複数本の配管15は、外槽14の下部鏡板を貫通して貯槽外部に取り出されており、外槽14の下部鏡板の外周部には複数本の貯槽支持脚14cが設けられている。
【0011】
図3に示すように、貯槽製作工場において、前記外槽14は、外槽胴部16a及び外槽上部鏡板16bからなる外槽上部部材16と、外槽下部鏡板からなる外槽下部部材17とに分割形成され、外槽下部部材17には、下部鏡板中央に配管貫通孔17aが設けられるとともに、外周部には前記貯槽支持脚14cが取り付けられる。
【0012】
また、図4に示すように、内槽12には、送液用配管、下部液入口配管、上部液入口配管、ガス放出用配管、検液用配管、液面計用配管等の各種配管15が連通しており、これらの配管15は、内槽下方に集中させて配管保持部材18により一体的に保持されている。この配管保持部材18は、貯槽組立時に外槽下部部材17の配管貫通孔17aに接合されて下部鏡板の一部を形成する。なお、配管保持部材18は、複数としてもよい。例えば、液面計用の細い配管は、小さな配管保持部材によって他の配管とは別に保持することにより、施工を容易にすることが可能となる。
【0013】
さらに、外槽上部部材16の内部には、前記断熱層13を真空引きするための真空引き用配管19が設けられている。この真空引き用配管19は、外槽胴部16aの略全高に相当する長さを有しており、所定位置に複数の吸引口19aが設けられており、外槽上部部材16の下端部近くから外部に取り出されている。
【0014】
このように工場で製造された内槽12,外槽上部部材16及び外槽下部部材17は、別々に貯槽設置場所に輸送される。輸送車等への積み卸しの際、内槽12は吊り金具12aと内槽支持脚12bとを利用して、外槽上部部材16は4箇所の吊り金具14bを利用して、それぞれ横倒し状態でクレーンで吊り上げられ、外槽下部部材17は貯槽支持脚14c等を利用してクレーンで吊り上げられる。このように、低温液化ガス貯槽11を内槽12,外槽上部部材16及び外槽下部部材17に分割形成することにより、公道輸送時における重量制限をクリアすることができる。
【0015】
貯槽設置場所では、まず、図1(A)に示すように、外槽下部部材17を基礎上に立設した後、吊り金具12aを利用して内槽12を吊り上げ、外槽下部部材17の所定位置に組み付け、配管貫通孔17aに配管保持部材18を嵌合して両者を接合し、配管15の端部に外部配管15aを接続する。
【0016】
このとき、図6乃至図8に示すように、内槽12は、内槽12の底部と、外槽下部部材17の底部内側とを接合する内槽支持脚12bによって外槽下部部材17の底部上面に組み付けられる。内槽支持脚12bは、外槽下部部材17に設けられている貯槽支持脚14cの位置を考慮して配置されており、外槽下部部材17の底板部を介して内槽支持脚12bの荷重を貯槽支持脚14cが支持できるようにしている。
【0017】
次に、図1(B)に示すように、上部側の吊り金具14bを利用して外槽上部部材16を内槽12の上方にまで吊り上げ、外槽上部部材16を内槽12に上方から被せるようにして下降させ、外槽上部部材16の下端部と外槽下部部材17の上端部とを溶接し、図1(C)に示すように外槽14を完成させる。このとき、外槽上部部材16の内側又は内槽12の外側の適宜な位置にガイドローラー等を設けておくことにより、外槽上部部材16をスムーズに所定位置に下降させることができ、配管等を損傷するおそれがなくなる。
【0018】
また、外槽上部部材16と外槽下部部材17との接合部、すなわち、外槽上部部材16の下端部と外槽下部部材17の上端部とには、両部材16,17を確実に所定の状態で接合するための治具(図示せず)が設けられており、両部材16,17を組み付けて溶接する際の溶接代14dを形成するとともに、外槽上部部材16の垂直度を確保できるようにしている。
【0019】
次に、外槽頂部に取り付けられている安全器兼断熱材投入部14aの安全器を取り外し、安全器兼断熱材投入部14aから断熱層13を構成する内槽12と外槽14との間に断熱材を投入するとともに、真空排気装置に接続した真空引き用配管19により、断熱層13内の真空排気を行う。断熱材の投入が完了したら安全器を元に戻し、断熱層13を規定の真空度にする。
【0020】
このように、低温液化ガス貯槽11を工場で分割形成し、貯槽設置場所に別々に輸送してから現地で組み立てることにより、重量の制約を大幅に緩和でき、従来より大容量の大型低温液化ガス貯槽11を製作することが可能となる。しかも、低温液化ガスを貯留する内槽12は、配管15を含めて工場で完成させるので、従来と同様の気密性能を確実に得ることができ、現地での試験、検査を省略することができる。また、外槽14は、外槽上部部材16と外槽下部部材17との接合部及び配管貫通孔17aと配管保持部材18との接合部における気密状態を確認するだけでよいため、現地における作業が長期化することもほとんどない。
【0021】
さらに、工場で完成させた低温液化ガス貯槽の総重量に比べて外槽上部部材16を大幅に軽量化できるので、従来の低温液化ガス貯槽完成品の外槽外面に設けていた吊り金具に比べて吊り金具14bを小型化することができる。また、上部の吊り金具14bを胴部外周面から外槽上部鏡板16bの上面に移設し、下部の吊り金具14bに代えて外槽上部部材16の下端部に治具を取り付けて吊り上げるように形成することにより、輸送時の横幅制限に対して吊り金具14bの突出寸法分まで外槽胴部16aを大径化することができ、低温液化ガス貯槽11のより大容量化を図ることができる。
【0022】
なお、各部材の材料や形状は、特に限定されるものではなく、今までの低温液化ガス貯槽と同様のものとすることができる。また、工場での製造も、外槽14を外槽上部部材16と外槽下部部材17とに分割形成する以外は略同様の手順で行うことが可能であり、工場の現有設備を大幅に変更する必要はない。さらに、外槽14の分割位置は、本形態例では外槽下部鏡板と外槽胴部との境界位置としたが、外槽胴部の下方で分割するようにしてもよい。
【0023】
また、前記真空引き用配管19は、低温液化ガス貯槽全体を工場で一体製作する場合には、通常、外槽下部鏡板を貫通させて設けているが、この真空引き用配管19は内槽12と連通する配管ではないため、任意の位置に設けることが可能である。したがって、前述のように、内槽12に比べて軽量な外槽上部部材16に真空引き用配管19を取り付けることにより、真空引き用配管19を鋼管等の低温に耐えるものにする必要がなく、また、輸送時等における両者の重量を平準化できるというメリットがある。一方、真空引き用配管を内槽12に取り付けて配管保持部材18に保持させておき、外槽下部部材17を貫通させて取り出す構造を採用してもよい。この場合は、従来と同様に、外槽下部鏡板の部分に配管を集中させることができるというメリットがあるが、内槽12からサポートを受ける場合、内槽12が低温であるため、サポート部材の断熱を考慮したり、真空引き用配管19を低温に耐える材質にするなどの対策が必要となる。
【0024】
さらに、断熱層13への断熱材の充填は、真空引き用配管19と同様にして設けた立ち上がり管を利用して気流搬送により行うことができる。これにより、安全器兼断熱材投入部14aを安全器としてのみ利用し、断熱材投入の際の安全器の脱着を不要とし、高所作業を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の低温液化ガス貯槽の一形態例を示す説明図である。
【図2】完成した状態の低温液化ガス貯槽の一形態例を示す一部断面正面図である。
【図3】貯槽製作工場での製作状態を示す説明図である。
【図4】各種配管の設置例を示す説明図である。
【図5】内槽を外槽下部部材に組み付けた状態を示す正面図である。
【図6】低温液化ガス貯槽の平面図である。
【図7】低温液化ガス貯槽の要部の正面図である。
【符号の説明】
【0026】
11…低温液化ガス貯槽、12…内槽、12a…吊り金具、12b…内槽支持脚、13…断熱層、14…外槽、14a…安全器兼断熱材投入部、14b…吊り金具、14c…貯槽支持脚、14d…溶接代、15…配管、15a…外部配管、16…外槽上部部材、16a…外槽胴部、16b…外槽上部鏡板、17…外槽下部部材、17a…配管貫通孔、18…配管保持部材、19…真空引き用配管、19a…吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯留する内槽と、該内槽の外側に断熱層を介して設けられた外槽とを有する低温液化ガス貯槽において、前記外槽を外槽下部部材と外槽上部部材とに分割し、内槽内に連通する配管を内槽下方に集中させて配管保持部材で保持し、前記外槽下部部材に前記配管保持部材を取り付ける配管貫通孔を形成するとともに、貯槽設置場所で前記外槽下部部材の上部に前記内槽を載置し、かつ、前記配管貫通孔に前記配管保持部材を取り付けて内槽と外槽下部部材とを一体化し、該内槽と一体化した外槽下部部材の上部に前記外槽上部部材を組み付けて接合一体化したことを特徴とする低温液化ガス貯槽。
【請求項2】
前記内槽は、該内槽の底部と前記外槽下部部材の底部内側とを接合する内槽支持脚によって前記外槽下部部材の底部上面に組み付けられ、前記内槽支持脚は、外槽下部部材の底部下面に設けられている貯槽支持脚に、外槽下部部材底板部を介して荷重を支持される位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の低温液化ガス貯槽。
【請求項3】
前記外槽上部部材は、前記断熱層を真空引きするための真空引き用配管を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の低温液化ガス貯槽。
【請求項4】
前記内槽は、前記断熱層を真空引きするための真空引き用配管を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の低温液化ガス貯槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−24057(P2007−24057A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202398(P2005−202398)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】