説明

低級アルケン類の選択的オリゴマー化のための複合触媒及びハイオクタン製品の製造

本発明は、(a)担体構造体及び該担体構造体に担持された触媒種とから成る触媒複合体、(b)触媒蒸留条件下、触媒蒸留装置において、低級アルケン類を触媒複合体と接触させることを特徴とする低級アルケン類、低級アルケン類混合物を選択的にオリゴマー化する方法、及び(c)触媒蒸留条件下、1以上の触媒蒸留装置を水素添加することを特徴とするハイオクタン化合物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低級アルケン類、及びアルケン類の混合物の触媒蒸留によるオリゴマー化に関する。更に詳しくは、本発明は、低級アルケン類の選択的オリゴマー化用の触媒蒸留カラムにおける触媒及び充填媒体である触媒複合体に関する。更に本発明は、アルケン類又は選択的オリゴマー化による生成物を水素添加しハイオクタン製品を製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒蒸留(CD)は、触媒反応と分離とを1つの蒸留ユニットの中で組み合わせる。この考えは、最初、エステル類の製造のために1920年代の初めに実施され(Backhaus,1921)、均質な触媒に基づく数多くの化学プロセスに適用されてきている。反応と分離を組み合わせる利点は、Smithによる、不均質触媒を使用する新しい触媒蒸留技術が特許となる(Smith,1980)1980年までよく分からなかった。
【0003】
蒸留プロセス(無触媒)を利用する従来の化学プロセスは、主に2つの分離ユニット操作からなる。これらは、化学反応を行うユニットと、得られる反応混合物から異なる成分を分離する別のユニットとを含む。このような状況下では、化学反応による生成熱を再循環することが困難で、反応区域内の温度を調節するためにしばしば冷却が必要となり、その結果、そのプロセスにおけるエネルギー利用が非効率的となる。更に、好ましい化合物の生産性は、平衡限界に起因する化学プロセスにおける転化率及び選択性によってしばしば限定される。熱及び物質移動抵抗は、このような反応ユニットにおいてしばしば起こる問題であるので、低い触媒性能も触媒の短寿命とともに起こりうる。
【0004】
化学平衡限界を避け、反応熱を充分に使用するため、従来の蒸留カラムにおいて、化学反応ユニットと分離ユニットとを単に組み合わせることによって、数多くの触媒反応プロセスに成功したアプローチをもたらしている。この組み合わせは、始め、均質反応系で利用された。これらの系は反応及び蒸留の両方に関与するので、これらのプロセスに反応蒸留(RD)という名前がつけられた。この従来のRDプロセスは主に均質反応系に基づくので、RDはまた均質触媒蒸留とも言われている。RDプロセスは、ある種の所望の生成物においては、しばしば高い反応速度及び高い選択性をもたらすものの、まだいくつかの問題がある。これらとして、反応生成物からの触媒の分離、触媒の回収、カラムの汚染及び腐食が挙げられる。更に、触媒組成物に対する生成物純度が厳密に必要である場合は、この生成物を反応蒸留後、集中的に処理し、満足のいく触媒除去レベルを確保しなければならず、これは運転コストを増大させることになる。
【0005】
固体触媒(不均質系)の表面上で起こる気体反応及び/又は液体反応については、反応生成物は触媒系から簡単に分離することができる。もし不均質反応が蒸留ユニット内部で起こりうる場合は、均質な触媒蒸留内で見られる分離の困難性は克服することができる。しかし対処しなければならない別の要因として、大きな圧力低下を起こすことなく充分な触媒をカラム内に確実に充填することである。これは、テキサスティーバッグとして知られるガラス繊維収納袋を使用した、蒸留カラムの内部の触媒ペレットを懸濁する方法について、Smith(1980)が特許を得る1980年まではできなかった。これらのバッグを使用することによって、大きな圧力低下を起こすことなく不均質な触媒の使用が可能となる。均質な触媒蒸留とは異なり、不均質な触媒蒸留が優先的に触媒蒸留(CD)と呼ばれる。
【0006】
CDプロセスにおいて、気相と液体相との間の接触は最大に、しかしカラムフラッディング(column flooding)は最小になるように、固体触媒を適切な方法で蒸留カラムの内部に充填しなければならない。実際、この触媒を支持あるいは包含する様々な方法が報告されている。[Crosslandら、米国特許第5,431,890号明細書;Hearn,米国特許第5,266,546号明細書;Shelden,米国特許第5,417,938号明細書]。ここで、これらの全ての方法に関し、触媒はカラム中の液相及び気相の物質移動抵抗を増加しうる装置の内部に充填されていることに留意されたい。
【0007】
触媒蒸留プロセスは、不均質反応及び分離を単一の蒸留カラム内で組み合わせるため、しばしば、従来の固定床式反応器を越える、以下の長所を得ることができる。
i)2つの操作が単一ユニット中で組み合わされるので、設備及び生産コストが縮減する。
ii)反応熱を反応原料の気化のためにインシチュ(in−situ)で使用するので、エネルギー消費を最小限にすることができる。
iii)反応原料の転化率を内部再循環によって上げることができる。
iv)反応生成物が形成するに伴って、この生成物を連続的に反応部位又は触媒の表面から除去されるので、標準の化学平衡限界が適用されず、従って、より高い転化率の達成が可能となる。
v)反応生成物が形成するに伴って、この生成物を連続的に反応部位又は触媒の表面から除去することによって、所望の生成物の選択率を改善することができる。
vi)反応による生成熱を、液体及び蒸気によって効率よく取り除くことができ、従って、触媒部位上又は触媒部位周辺上に高温点ができることを回避あるいは除去することができる。フラッシング液又は蒸気のこの動きは、高分子量オリゴマー化生成物を反応区域から除去するフラッシング効果を持ち、それによって触媒部位を新たな反応のために開放する。触媒の汚染及び被毒の可能性は、大きく減少する。
vii)触媒床は、触媒部位上のフラッシングに常に曝される高温又は沸騰液体及び蒸気に取り囲まれているので、触媒寿命も延ばすことができる。このようなフラッシング効果によって、触媒の汚染及び被毒となる可能性のある後の反応を受ける生成物及び副生物が除去される。
【0008】
CD技術には、先に記載したように、従来のプロセスを超える多くの長所があるが、触媒蒸留が、全ての化学反応プロセスでの使用に適切であるわけではない。CDプロセスからの利益を達成するためには、化学反応系が以下の要件を満足するのが好ましい。
i)反応は、液相中で行われるべきである。
ii)触媒は、長い寿命を保持するため、不均質で熱的、化学的及び物理的に安定で、その構造的完全性を保つべきである。
iii)反応は発熱性であるべきで、反応が平衡限界にある状態において、CDプロセスには、より高い転化率及びさらに大きい生産性をより効率よく達成するために平衡状態をさらに右にシフトさせる選択肢がある。
【0009】
これらの要件を満足する一つの化学反応として、低級アルケン類(炭素数2〜6のアルケン分子)のオリゴマー化がある。低級アルケン類のアルキル化及びオリゴマー化は、先ず、Huss及びKennedy(1990)、及びSmithら(1991)によって開示された。低級アルケン類のオリゴマー化は、重要な工業的反応であり、モーター燃料、可塑剤、医薬品、染料、樹脂、洗剤、潤滑剤及び添加剤の生産に使用される中間体の生産経路の代表的なものである(O’Connor及びKojima,1990)。ブテンのオリゴマー化に関して、殆ど分岐のないダイマー生成物であるオクテンは、可塑剤の製造において特に有用である。もし分岐が多いものであれば、その混合物はガソリン混和剤として使用することができる。
【0010】
歴史的には、炭化水素の流体接触分解反応及び水蒸気分解での副生物として得られる全C留分を利用して高価生成物(高いオクタン価の生成物)を製造することが抜けている。前記副生物の1成分であるブタジエンはゴムの生産で有用であり、前記副生物から抽出され、ラフィネートIと言われる混合物として残留C留分を残す。ラフィネートIに含まれるイソブテンは、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)の生産用原料として使用された。主に直鎖状C炭化水素(ブテン類)からなる、イソブテンの除去後のC留分の残留成分は、粗悪なものであるにもかかわらず、主にガソリン混和剤として使用された。ある場合は、この生成物は、単にフレアリングによって処分された。ラフィネートII中には、n−ブテンが平均含量70%〜80%で存在し、その範囲は90%である場合もある。この原料、即ちより低分子量のオリゴマー、特にC及びC12のものを使用することは、現在の触媒式オリゴマー化プロセスによって実現されている。
【0011】
均質及び不均質反応に基づく様々なブテンオリゴマー化プロセスが提案されている(Keimら,1979;Mathys,1984;Beltrameら,1994)。これらのプロセスでは、所望の生成物、主として短い、殆ど分岐していないオリゴマーに対する高選択率での高オリゴマー化比率が得られるように、もっぱら触媒の選択及びプロセスの最適化に焦点が当てられている。
【0012】
アルケン類のオリゴマー化を増強する触媒蒸留の使用は、1991年、スミスらによる米国特許第5,003,124号明細書に最初に開示された。このプロセスでは、ガラス繊維バッグの内部に配置された酸性イオン交換樹脂が利用された。
【0013】
アルケンのオリゴマー化の分野においてさらに研究が行われてきたが、殆どの場合、オリゴマー化触媒は布やメッシュバッグのような第2構造体の中に包含され、反応原料は触媒と接触するために、この構造体を通り抜けなければならない。このように、生成物は、触媒から除去すべき構造体の中を通り抜けなければならない。このような例示の1つとして、Podrebarac(1992)は、ゼオライトがガラス繊維バック内に直接配置された、ニッケル交換ゼオライト触媒を使用するCDカラムでのブテンのジメチル化について研究した。この場合のゼオライト触媒は、触媒上の活性部位をブロックする、望ましくない長鎖オリゴマーが生成することによって速やかに不活性化された。また、この系はガラス繊維バックに起因する物質移動抵抗によって、低い選択率しか示さなかった。
【0014】
布あるいはメッシュバッグのような第2構造体中に触媒を格納することなく、蒸留カラムの反応区域に直接触媒を配置する代替方法を発見するため、さらに研究がなされている。
【0015】
Gaoらによる米国特許第6,291,719号明細書には、非常に特定された形状をした2重官能性触媒構造が開示されている。これらの触媒構造は、樹脂触媒、金属酸化物の超強酸触媒又はモレキュラーシーブ触媒から形成されるが、エーテル化反応、アルキル化反応、水素添加反応、及びMTBEの分解に適していることが示されている。米国特許第6,291,719号明細書には、非常に特定された2つの形状に限定された触媒構造が開示され、使用された材料も、非常に狭い表面積値しか有していない。
【0016】
また、Gottliebらによる米国特許第5,244,929号明細書には、強酸性又は塩基性イオン交換樹脂で構成された成型有機触媒体が開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
1態様によれば、本発明は、触媒蒸留装置で使用される触媒複合体であって、
a)無機酸化物で構成され、空隙率が0.30〜0.95の範囲で、表面積が40m/g〜500m/gであり、かつクラッシュ強度が2.4〜9.9kg/構造単位である担体構造体であって、リング、中空シリンダー、2、3又は4枚のセル隔壁を有する、交差又は複数隔壁リング又はシリンダー、サドル(鞍状体)、中実リング、中実シリンダー、球及びハニカム体から選択される形状を持つ担体構造体と、
b)この担体構造体上に担持された、触媒重量に対し0.01〜10重量%の触媒活性種
とを含む触媒複合体を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、触媒蒸留装置において水素添加触媒として使用される触媒複合体であって、
a)無機酸化物で構成され、空隙率が0.30〜0.95であって、クラッシュ強度が2.4〜9.9kg/構造単位である担体構造体であって、リング、中空シリンダー、2、3又は4枚のセル隔壁を有する、交差又は複数隔壁リング又はシリンダー、サドル(鞍状体)、中実リング、中実シリンダー、球及びハニカム体から選択される形状を持つ担体構造体と、
b)この担体構造体上に担持された、触媒複合体重量に対し0.01〜10重量%のパラジウム、白金又はロジウム
とを含む触媒複合体を提供する。
【0019】
更になお別の態様では、本発明は、低級アルケンを触媒蒸留条件下で、本明細書に記載する触媒複合体と接触させることを含む、低級アルケンをC〜C18アルケンへ選択的にオリゴマー化する方法を提供する。
【0020】
更になお別の態様では、本発明は、アルケンを触媒蒸留条件下で、本明細書に記載する触媒複合体及び水素に接触させることを含む、アルケンをアルカンに水素添加する方法を提供する。
【0021】
更になお別の態様では、本発明は、ハイオクタン化合物を調製する方法であって、
a)C〜Cアルケンを触媒蒸留条件下で本明細書に記載する触媒複合体と接触させ、C〜C18アルケンを得ること、及び
b)上記工程a)で得たC〜C18アルケンを触媒蒸留条件下で、水素添加に適切な本明細書に記載する触媒複合体及び水素に接触させ、C〜C18アルカンを得ること
とを含む方法を提供する。
【0022】
更になお別の態様では、本発明は、ハイオクタン化合物を調製する方法であって、
a)イソブテンを触媒蒸留条件下で本明細書に記載する触媒複合体に接触させ、トリメチルペンテンを得ること、及び
b)トリメチルペンテンをバッチ式反応条件下又は水素添加反応条件下で水素添加触媒及び水素に接触させ、トリメチルペンタンを得ること、
とを含む方法を提供する。
【0023】
更になお別の態様では、本発明は、C〜Cアルケン類の混合物を触媒蒸留条件下で本明細書に記載する触媒複合体に接触させることを含む、C〜C18アルケン類を製造する方法を提供する。
【0024】
更になお別の態様では、本発明は、C〜Cアルケン類とC〜Cアルカン類との混合物を触媒蒸留条件下で本明細書に記載する触媒複合体に接触させることを含む、低級アルケンをC〜C18アルケンに選択的にオリゴマー化する方法を提供する。
【0025】
更になお別の態様では、本発明は、ブタジエンを触媒蒸留条件下で水素添加に適した、本明細書に記載する触媒複合体及び水素に接触させることを含む、ブタジエンを水素添加する方法を提供する。
【0026】
更になお別の態様では、本発明は、C留分中のメチルアセチレン及びプロパジエンを選択的に水素添加しプロピレンを提供する方法であって、C留分を触媒蒸留条件下で水素添加に適した、本明細書に記載する触媒複合体及び水素に接触させることを含む方法を提供する。
【0027】
更になお別の態様では、本発明は、流体接触分解反応(FCC)流中のアレン及びプロピンを選択的に水素添加する方法であって、FCC流を触媒蒸留条件下で水素添加に適した、本明細書に記載する触媒複合体及び水素に接触させることを含む方法を提供する。
【0028】
更に他の態様では、本発明は、ラフィネートI又はラフィネートII流中のブタジエンを選択的に水素添加しブテンを提供する方法であって、ラフィネートI又はラフィネートII流を触媒蒸留条件下で水素添加に適した、本明細書に記載する触媒複合体及び水素に接触させることを含む方法を提供する。
【0029】
本発明の具体的な実施形態は、本明細書の実施例及びデータの表を含む以下の記載を考慮した時、さらによく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
担体構造体用の基礎材料
触媒担体材料(担体構造体)は、例えば、無機酸化物から選択することができる。適切な無機酸化物として、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア(二酸化チタン)、及びシリカ/アルミナのようなこれらの任意の化学的及び物理的組合せが挙げられる。また、モレキュラーシーブ及びゼオライトのような構造的に設計された材料と選択された無機酸化物との混合物も、触媒支持体として使用するのに適切な組合せである。これらの中でも、アルミナが好ましく、γ−アルミナは更に好ましい。構造的に設計された材料を含む無機酸化物は、担体構造体の基礎材料として役立つ粉末材料として市販されている。
【0031】
担体構造体
粉末基礎材料は、材料の完全性を損なうことなく(例えば、材料の結晶状態又は元素組成、及び物性を変更することなく)、特定の構造体(以下、本明細書では担体構造体と言う)に形作り、成型し、あるいは成形することができる。担体構造体は、特定の形状を取るのが好ましく、この形状は、リング又はシリンダー、2枚、3枚及び4枚のセル隔壁を有する、交差又は複数隔壁リング又はシリンダー、サドル(鞍状体)(例えば、インタロックスサドル又はベリルサドル、中実リング又はシリンダー、球、及びハニカム体(シングル又はダブル)のような種々の形から選択される。担体構造体の寸法は様々であり、異なる容積のカラム用に異なる寸法を使用することができる。例えば、シンリンダー状担体構造体としては、直径が5cmの大きなものも、6mmの小さなものもありえる。これらのシリンダーの直径に対する長さの比は1:1が好ましいが、この比は1:3〜3:1まで変化させることができる。
【0032】
形状に加えて、触媒担体の表面積も重要であり、触媒担体を担体構造体の形成のために選択する時、考慮される要因である。広い表面積を持つ触媒担体が非常に望ましい。担体構造体のBET表面積は、プロセス、供給、及び反応に応じて、40〜600m/gの範囲から選択することができる。この表面積は、60〜450m/gの範囲が好ましく、80〜350m/gの範囲が最も好ましい。
【0033】
担体構造体は、頑強あるいは頑丈であるべきである。担体構造体のクラッシュ強度は、変化する圧力及び温度に供せられた時の、その強度と消耗に耐える能力との相対測定値を規定する。担体構造体のクラッシュ強度は、1ユニット当たり(即ち単一構造当たり)又は触媒複合体の1ユニット当たり2.4kg〜9.9kgであるのが好ましい。触媒複合体は、金属化合物又は酸性塩などの触媒活性種がその表面に担持された担体構造体から得られる。
【0034】
カラム体積空隙率は、担体構造体を反応カラム(例えば触媒蒸留カラム)に無作為に充填した時のこの構造体に直接関連する特徴である。担体構造体の固体部分で占められていないカラムの空間の分率を表すカラム体積空隙率は、担体構造体の形状で決定される。担体構造体の形状は空隙体積に2通りの方法で影響を与える。第一は、担体構造体の中空(完全に又は部分的に取り囲まれている容積領域)内に形成されているか、又は取り囲まれている空間である。第二は、反応カラム内に無作為に負荷された時起こる、担体構造体の不規則な方向性(仮の相対的角度)及び個々の担体構造体間の相互作用によって生まれる空間である。担体構造体の不規則な方向性は、実際上一方向であるが充填された構造内を通るガス又は液体の流れとしては不規則な分布を提供する、カラム内の液体又は蒸気の全体の流れを大きく妨げない。このような流れのパターンは、ガスあるいは液体と担体構造体との接触を強化し、カラム内の空隙スペース蒸気の液体への転化率を向上し、また蒸留カラムの反応区域を通る物質移動抵抗を低下させる。
【0035】
空隙率が1.0とは、完全に空のカラムを表し、空隙率が0.30及び0.95とは、それぞれカラム内の空のスペースが30及び95%であることを表す。触媒複合体又は触媒複合体の混合物+不活性担体構造体を持つカラム内の空隙率は0.30〜0.95の間で変動しうる。この空隙率は、0.40〜0.85が好ましく、0.55〜0.70がさらに好ましい。例えば、長さ6mm及び外径6mmのシリンダー形状の触媒複合体は、0.50のカラム空隙率を与える。
【0036】
構造によって起こされる任意の流れ、カラム内の触媒量の希釈度、生成物の同時分留及び分離は、まとめて、本明細書に記載する触媒複合体が負荷された触媒蒸留カラム内で起こる反応の選択率に寄与する。従って、これらの特徴は、カラム内に無作為に充填する時、触媒複合体の特性又は触媒複合体と触媒担体構造体との均質混合物の特性として見られる、あるいは定義することができる。あるいは、これらの特徴は、触媒複合体の無作為充填特性と言うこともできる。
【0037】
担体構造体の表面特徴は、このような構造体上で負荷することのできる触媒量に影響を与える。造形過程その他によって平滑な、非多孔質な、又は光沢のある表面にされるものは、担持される負荷触媒の比率変動が広いため望ましくない。平滑なあるいは低多孔質構造には僅かな触媒(0.01%未満)しか見出せなかった。これは、おそらく、触媒を収容する部位が造形過程でブロックされるという事実によるものと思われる。あるレベルにある表面非平滑性あるいはざらつきは、触媒負荷を補助する。可能な孔径の範囲としては、触媒負荷の広い範囲を可能にすることが望ましい。ここで使用されるアルミナリングから誘導される担体構造体及び触媒複合体のBET吸着の研究により、中間細孔及び微細孔が示された。孔径は70オングストロームから20オングストローム未満の範囲である。吸着に関する研究は、触媒は殆どが構造体の中間細孔中で発見されることを示唆した。
【0038】
触媒複合体
触媒複合体は原則的に2つの分離した成分、即ち、担体構造体と触媒としての活性金属又は金属イオン種とを含む。これら二つの成分は、複合材料を製造する手段によって、特徴及び特性を失うことなく組み合わされ、あるいは合成されて、触媒複合体を構成あるいは形成する。
【0039】
種々の触媒活性種が前記担体構造体上に担持され、触媒複合体を得る。活性種の例として、VI、VII及びVIII族の金属及び金属イオンが挙げられる。これらの金属及び金属イオンは対応金属塩又は金属錯体から負荷することができる。これらの金属及び金属イオンの中でも、低級アルケン類のオリゴマー化に効率的な、ニッケル塩から負荷されるニッケルイオンがオリゴマー化の活性種として好ましい。硫酸ニッケルの水溶液、又は塩化ニッケル及び硫酸アンモニウムの水溶液から負荷されるニッケルイオンが、活性触媒種としてさらに好ましい。また、オリゴマー化の触媒種として使用される金属は、+1又は+2酸化状態であることが好ましい。オリゴマー化は酸触媒系であるので、酸及び酸性塩を支持体上に担持させ、これを触媒として使用できる。さらにニッケルイオンを含むオリゴマー化触媒は、硫酸アンモニウムのような硫酸塩、リン酸アンモニウムのようなリン酸塩及び硫酸、リン酸又はトルエン硫酸のような酸の溶液に曝露することによってさらに増強されうる。このような溶液を本明細書では、触媒増強剤と言う。
【0040】
触媒活性種は必ずしも金属性である必要はなく、硫酸アンモニウムのようなある種の塩も使用することができる。例えば、硫酸アンモニウムは、水素の存在下でのイソブテンの二量化に適切な触媒活性種である。
【0041】
パラジウム、白金、ロジウム及びニッケルの金属錯体から負荷される金属は、本明細書に記載するニッケル触媒によるブテンのオリゴマー化によって生成されるオクテン類及びメチル置換ペンテン類の水素添加を始めとするアルケン類の水素添加に効率的である。また、前記塩から誘導される金属イオンが還元され活性な金属種を得る場合、この金属塩を水素添加プロセスにおける触媒種として使用することもできる。
【0042】
担体構造体上の触媒種の量は、溶液中の金属塩又は金属錯体の量に依り、また、それ程ではないにせよ、前記溶液に担体構造体を暴露した時間の長さにも依る。触媒種の量は、0.01〜10重量%から選択でき、例えば、0.05〜10%又は0.1〜8重量%である。
【0043】
オリゴマー化触媒として使用される触媒複合体は、例えば、複合体の重さに対して0.1〜8重量%のニッケルを含むことができる。ニッケル量は、0.2〜6.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.5%〜5重量%である。
【0044】
水素添加触媒として使用される触媒複合体は、例えば、複合体の重さに対して0.05〜8重量%のパラジウムを含むことができる。パラジウム量は、例えば、0.1〜8%、0.2〜6%、0.2〜5%、0.5〜5%又は0.3〜2重量%が好ましい。
【0045】
担体構造体上への金属イオンの担持は、業界で公知の方法によって達成することができる。そのような方法の例として、湿式及び乾式含浸法、気化法、吸収法、イオン交換法、ゾル−ゲル法、及び蒸着法が挙げられる。このような技術の説明は、実施例1及び2にある。
【0046】
触媒蒸留充填
触媒複合体は、触媒蒸留カラム中で使用される場合、複合体をカラム中に無作為に充填した時に得られる複合体の表面積及び空間スペースが大きいため、触媒蒸留充填物として適用される材料又は媒体として効率的である。触媒複合体の触媒成分は、表面積及び空隙体積が反応生成物の分留及び分離に有効である間、所望の1又は複数の化学反応を実行する。従って、複合体は、触媒としても分留媒体としても作用することができる。反応のタイプ、触媒の活性、又は所望の分離のレベルに応じて、触媒複合体を不活性担体構造体(即ち、触媒を含まず、反応に対して不活性である担体構造体)と混合し、触媒蒸留カラム中の触媒蒸留充填物としても使用することができる。触媒複合体を触媒蒸留カラム中の触媒蒸留充填材料としての担体構造体と組み合わせることによって、触媒蒸留プロセスの選択率を向上することができる。選択率におけるこの向上は、i)蒸留カラム中の空隙スペースが増えたこと及びii)蒸留カラム内の転化率をさらにうまく調節することに依存している。例えば、本発明では、6mmのラシヒリングから製造された複合触媒は、インタロックスサドル(不活性担体構造体)と1:1の比で組合せて混合物を形成し、触媒蒸留充填物として使用することができる。このようなカラム内の無作為充填混合物は、リング(0.49)とサドル(0.62)との間の中間である0.55の空隙体積比率を与える。また、このような担体構造体が反応区域で不活性充填材料として存在することは、蒸留カラム内の転化率をさらにうまく調節できることになる。発熱性触媒反応に関しては、反応によって生成した熱が指数関数的に反応速度を上昇させるにつれ、温度の上昇がコントロール不可となる可能性がある。これを業界では通常「温度暴走」という。温度暴走は、より高い温度によってダイマーのようなオリゴマーの代わりにポリマーのような望ましくない生成物を形成する結果となるため、オリゴマー化反応のような或る反応の選択率に対して特に有害である。従って、反応区域内で担体構造体を不活性な充填材料として使用することは、触媒複合体を反応区域内に細かく分散させることによって蒸留カラムにおける全転化率を調節又は低下させるために使用することができるため、有用である。不活性担体構造体は、触媒複合体用の希釈媒体として作用し、同時に、分留を起こすために付加的な表面積を提供する。このような不活性充填材料の触媒複合体に対する比は、異なる触媒活性種によって変動しうる。不活性充填材料の触媒複合体に対する比は、例えば、10:1〜1:10である。
【0047】
不活性充填材料として使用される担体構造体は、触媒蒸留における使用に適切な任意の公知の充填材料から選択することができる。この充填材料は、ラシヒリング、ポールリング、ペンタリング、荷馬車車輪、ハニカムリング、バールサドル、インタロックスサドル、スーパーインタロックスサドル、ハイ−パック(Hy−Pak)充填物、テラーレット(Tellerette)パッキング、マスパック(Maspac)パッキング、カスケードミニリング及びナッター(Nutter)リングなどの種々の形状をとることができる。使用される無作為充填材料の寸法は、蒸留カラムの直径の寸法に依存し、通常、触媒複合体の寸法と同様である。不活性充填材料は、アルミナ、ジルコニア、シリカ及びチタニアのような担体構造体用に使用される材料と同様のものから製造することができるが、また、シリコンカーバイト、金属、セラミック及びプラスティックのようなより多孔質でない材料からも製造することができる。
【0048】
反応原料及び生成物
本明細書で、「低級アルケン類」という表現は、2〜6個の炭素原子を有するアルケン分子を言う。主要な対象としては、4個の炭素原子を有するアルケン類(1−ブテン、2−ブテン及びイソブテン)である。
【0049】
本発明の選択的オリゴマー化方法の生成物は、原則的にC〜Cアルケン類のダイマー及びトリマーである。これらの生成物としては6〜18個の炭素原子を有するアルケン類を含み、最も関心のある生成物は、Cアルケン類のダイマーである。これらは、一般式C16で表され、ガソリン用添加物として石油業界で広く使用されている。可能性のあるCダイマーとして、トリメチルペンテン類、n−オクテン類、ジメチルヘキセン類及びメチルヘプテン類が挙げられ、中でも、より分岐したオクテン類はより高いオクタン価を持つので、ジメチルヘキセン類及びトリメチルペンテン類が最も興味深いものである。特に、2,4,4−トリメチルペンテン−1及び2,4,4−トリメチルペンテン−2の水素添加は、オクタン価100の2,2,4−トリメチルペンタンを生成することができる。驚くべきことに、本発明の触媒蒸留方法によって生成された1−ブテンの二量化で得たオクテン類の生成物は、バッチ式フロー反応器から得られるオクテン生成物と比べてジメチルヘキセン類に富んでいる。ジメチルヘキセン類は、メチルヘプテン類よりオクタン価が高いので、触媒蒸留カラムにおける1−ブテンの二量化は、更なる利点を1−ブテンの二量化から、より高いオクタン価の生成物の形で提供する。
【0050】
方法の設定手順及び最適化
本発明の方法は、複合触媒を使用する触媒蒸留方法あるいは不活性担体構造体との混合物中の複合触媒が、反応流からのオクテン類の生成及び除去において選択的である反応を可能とするので、「選択的」と呼ばれる。従来のオリゴマー化反応では多数の生成物が形成され、得られた生成物の混合物は、精製し、所望の生成物を単離しなければならない。また、混合物の生産は反応の全選択率に制限される。しかし触媒蒸留に関しては、主に単一生成物又は一群の生成物の生産を増強するようにそのプロセス変数を選択することができる。また反応を調整し、従来の反応条件下では普通反応し続ける中間体生成物を避けるように、プロセス変数を選択することができる。
【0051】
CDプロセスを実施する時、多くのプロセス変数を変更することができ、殆どの変数を特定の反応又は生成物のために最適化することができる。そのような変数として、供給口の位置、反応区域の位置、運転圧及び供給速度が挙げられる。
【0052】
・供給口の位置
供給口の位置は、反応CDカラム中のどこに低級アルケン供給原料を導入し且つCDカラム中のどこで反応を開始するか決定するものであるので、重要である。1−ブテンの二量化に関しては、1−ブテンの導入口は、この入り口が触媒区域又は反応区域の上に位置する場合と比べて、より高い選択率及び生産性を得る(表8のデータ参照)ために、カラムの触媒区域あるいは反応区域の下に位置するCD内に設けることが好ましい。
【0053】
触媒区域の上又は下への供給原料の導入後の反応によって、触媒区域に沿って異なる温度プロフィールが生み出され、これは次に転化率及び選択率に影響を与える。この状況はイソブテンに関しても同じで、実施例8に示す。
【0054】
反応区域の位置つまり触媒複合体のカラム中の位置は、反応を最適化するために変更することができる。ブテンの選択的二量化のためには、低い区域は普通液相温度が高いので、反応区域はカラムにおいて相当高く保つのが好ましい。この高温によって反応は速くなるが、ダイマーの代わりにより大きなオリゴマーの形成に都合がよくなる。
【0055】
・運転圧の効果
カラム内部の運転圧もCDプロセスを最適化するために変更することができる。カラム内の圧力の変更により温度が変化し、従って反応区域における温度を化学反応が起こるのに適し、かつ液相が反応区域内に留まるように、圧力が選択される。ブテンの二量化に関し、運転圧はブテン転化率を向上するより高い圧力、例えば90〜115psiである。しかし或るレベルを超えて圧力を増加させるとオクテン選択率を落とす可能性があるので、注意を払わなければならない。
【0056】
・供給速度の効果
反応原料の供給速度も反応を最適化するために変化させることができる。供給速度が速ければ生産速度も上がるが、反応の選択率に悪影響を与えうる。Cのオリゴマー化において、反応はC12のような高分子量の生成が進む傾向が大きいので、供給速度が上がるにつれ、C生成物の選択率が低下する。本発明において、供給原料は反応器に供給する前に不活性溶剤と混合するのが好ましい。不活性溶剤が存在することにより、カラム中の反応原料の濃度が減少し、その結果、反応における選択率を上昇させる。使用することのできる適切な溶剤として、C〜Cアルカン類、高級アルカン類、シクロアルカン類及びアルキル置換シクロアルカン類が挙げられる。不活性溶剤としてイソペンタンが好ましく使用される。さらに、不活性溶剤は反応によって生じる熱を均一に散逸し、触媒を非活性化する可能性のあるあらゆる高分子量オリゴマー又はコークス前駆体の抽出及び除去を補助する。本発明の触媒複合体を使用することにより達成しうる、物質移動抵抗が極めて低く保たれている限り、蒸留カラムにより生成された生成物の分離は、たとえ速い供給速度であっても、優れた選択率を提供する。
【0057】
複数の触媒又は反応区域
触媒蒸留カラムはまた、複数の反応を同時に行うために、同じ反応区域内に複数の触媒又は複数の複合触媒を調製することもある。あるいは、このカラムは、カラム内部で、各区域は異なる触媒又は異なる触媒複合体を含んでもよく、各区域は異なる温度プロフィールが適用される、2つの反応区域を持つように設定することもできる。従って、単一カラム内部で異なる触媒あるいは異なる触媒複合体が内臓され、異なる温度で運転されるこれらの反応区域は、複数の反応を行うことができ、その結果、このカラムで複数のプロセスが実行される。これは、例えば、二量化と水素添加とが必要な時、例えばブテンの二量化及び製造されたオクテンの水素添加が必要な時に使用することができる。このような場合、反応区域の1つは、オリゴマー化を記載する実施例1にあるような複合触媒を含んでもよく、残りの反応区域は、白金又はパラジウムのような水素添加触媒種を持つ複合触媒を含むことができる。1以上の反応区域内の多数の触媒及び触媒複合体は、水蒸気分解、炭化水素の熱及び接触クラッキングから誘導されるアルケン類のような異なるアルケン類の混合物の同時又は連続二量化のために使用することができる。そのような混合物の例として、ナフサの水蒸気分解からのラフィネート流、及び流体接触分解反応(FCC)プロセスから得られる軽ガスが挙げられる。ラフィネート流は、普通、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、ブタジエン及びブタンを含む。ラフィネートIIと言われる別のラフィネート流は、主に、n−ブテン類、ブタン類及び微量のブタジエンを含む。FCCガスは、C、C及びCアルケン類又はアルカン類の混合物を含み、時にはC又はCジエン類を含む場合もある。
【0058】
複数の触媒蒸留カラムが組み合わされ、平行、同時又は連続反応プロセスを行うこともできる。これは、例えば、2種以上の1−ブテン、2−ブテン及びイソブテンの混合物の同時又は連続二量化のために使用することができる。このプロセスは、同じ又は異なる触媒負荷で、同じ又は異なる触媒又は触媒複合体を使用する2以上の分離カラムにおいて実施することができる。イソブテンは、1−ブテンより反応性が高く、かなり低い温度で二量化し、2−ブテンより反応性が高い。第一反応区域をカラムの低温区域に配置してイソブテンを二量化し、次いで、大部分が残留1−ブテン及び2−ブテンである塔頂留出生成物を、1−ブテン及び2−ブテンの二量化を実施するのに充分な温度の反応区域内の触媒又は触媒複合体を含む第二又は第三カラムに供給することができる。2以上のカラムを使用することによって自由度が与えられ、触媒複合体を蒸留カラムの異なる高さ又は区域に置くことができ、その結果、異なる温度の反応区域が与えられ、望ましくないさらなるオリゴマー化反応を避けることができる。複数のカラムの組合せは、上記したイソオクタン(例えば2,4,4−トリメチルペンタン)の生産のためのイソブテンの二量化及び水素添加反応のような、連続方式で異なる反応を実施するためにも使用することができる。
【0059】
また、単一又は複数の触媒蒸留カラムは、保護床を連結して使用することもできる。この保護床は、反応原料流をCDカラムに導入する前に、この反応原料流から望ましくない反応原料を分離するのに有用である。例えば、保護床を伴う操作は、ブテンの二量化が必要な時、ブテン及びブタジエンからなる供給流に対して有用である。このような場合、ブタジエンは二量化触媒を汚染しうることが知られているので、ブタジエンは蒸留カラムに導入される前に供給流から除去される必要がある。従って、選択的吸着によってブタジエンを除去する、あるいはブタジエンを選択的に水素化してブテンとする保護床を、供給流がCDカラムに供給される前にこの供給流を前処理するために、使用することができる。
【0060】
以下の実施例は、説明のために提供されるものであり、限定のためにあるものではない。
【実施例1】
【0061】
金属塩からの触媒複合体の製造
長さ及び直径が6mmのγ−アルミナリング由来の担体構造体上の硫酸ニッケルの湿式含浸法によって、代表的な触媒複合体を製造した。13.5gの硫酸ニッケル6水塩を70mlの脱イオン水に溶解した。次いでこの溶液を100gの担体構造体(γ−アルミナリング)を含む容器(ビーカー)に移した。この容器を約3分間ゆるやかに回し、液体とリングとを均一に接触させた。さらに30分作業台上で平衡を保った後、リングを空気中で乾燥させた。この後、110℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥した材料を焼成した。リングを110℃の炉の中に置いた。次いで温度を5℃/分の速さで500℃まで昇温した。500℃で12時間焼成した後、温度をゆっくりと室温まで下げた。このようにして得た触媒複合体を除去し、使用するためにバイアル中に保存した。この含浸手順を繰返し、平均ニッケル含量3重量%の触媒複合体を得た。
【実施例2】
【0062】
金属錯体からの触媒複合体の製造
Pd触媒複合体を湿式含浸法により製造した。0.34gの酢酸パラジウム(II)を50mLのアセトンと50mLの水との混合物に溶解した。この溶液を16gのγ−アルミナリング(表面積が204m/gである)に加え、これを200℃で乾燥した。γ−アルミナリングを含む溶液を回転蒸発器中に置き、溶液を減圧下で濃縮した。Pdを含むγ−アルミナリングを90℃のオーブンで1日乾燥し、空気中で350℃、3時間焼成し、水素中で350℃、3時間還元した。Pdを含む触媒複合体を空気から保護した。触媒複合体中のPdの重さは0.7重量%であった。
【実施例3】
【0063】
カラム操作の設定と最適化
実施例の触媒蒸留プロセスは全高24フィート、内径1インチ、全充填高16フィートのCDカラム上で実施した。カラムは原則的に、上側非反応部、反応区域、リボイラーを有する下側非反応部の3つのセグメントからなる全充填物の高さのコンデンサーで構成されている。非反応部は、不活性充填材料として、1/4インチインタロックスサドル(鞍状体)又は先に記載した公知で適切な他の担体構造体のような触媒担体構造体が詰められている。インタロックスサドルを非反応区域で使用することによって、体積空隙率0.62となった。触媒複合体からなる反応区域は、前記実施例1及び2で記載したアルミナリングから誘導し、それらの無作為充填の体積空隙率は、0.49であった。あるいは、全充填物の高さは、触媒複合体と触媒担体構造体との混合物で構成されてもよい。例えば、実施例1及び2のアルミナリングから誘導される触媒複合体及びインタロックスサドル、1:1混合物の体積空隙率は、0.55であった。
【0064】
全充填物の高さは複合体上の触媒と供給原料との量に依存し、これによって反応の特性が決定される。触媒蒸留カラムは、通常、全還流で運転される。例えば、1−ブテン又はイソブテンのような供給原料を不活性溶剤と混合し、これをカラムに充填する。不活性溶剤は反応に関与しないが、反応によって生じた熱を反応サイトから散逸させるために使用される。溶剤は、高分子量のオリゴマーや触媒を不活性化する可能性のあるコークス前駆体の抽出/溶解及び除去も助長する。反応原料、生成物及び特定の操作のプロセス条件によっては、溶剤は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、高級アルカン類、シクロアルカン類及びアルキル置換シクロアルカン類を含むことができる。例えば、ブテンの二量化に関し、イソペンタンは効率的な溶剤であることが知られている。あるいは、カラム内部の充填材料は、連続的である、即ち、3「区域」に分かれなくてもよい。このような場合、充填材料は、カラム全体を通して本発明の触媒複合体だけで満たされており、この材料は、触媒複合体と不活性充填材料との実質的に均質な混合物を含む。
【0065】
以下は、ブテン類のオリゴマー化における、種々のプロセスパラメーターの効果の追加の実施例である。
【実施例4】
【0066】
ブテン類のオリゴマー化におけるリボイラー負荷の効果
1−ブテンの二量化及びオリゴマー化のためのCDプロセスにおいて、リボイラー負荷の効果を、1−ブテンの供給速度は48.17g/h、イソペンタン供給速度は13.27g/h、3.0重量%のNiを含む79.45gの触媒複合体を使用し、合計圧140psigで、リボイラー負荷を200W〜300Wに変化させて調べた。触媒複合体は等体積の1/4インチインタロックスサドルと混合した。得られた結果を表1に示す。
【表1】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0067】
リボイラー負荷が増すと、反応区域の温度が数℃上昇し、これに応じて転化率が85%を超える値から95%を超える値に増えていることがわかる。驚くべきことに、転化率が増すと、オクテンダイマーへの選択率も増加する。本発明で記載したブテン類のオリゴマー化のような連続反応を従来の反応器で実施した場合、普通、転化率が上がるとダイマーへの選択率は下がる。しかし、実施例によって、本発明で記載した良好な物質移動特性を有する触媒複合体が充填された触媒蒸留によって、オリゴマー化を実施した場合、予想外にオクテンダイマーへの選択率も転化率とともに上昇することが示された。
【0068】
また、イソブテンのオリゴマー化におけるリボイラー負荷の効果は、イソブテンの供給速度が58.30g/h、イソペンタンの供給速度が63.25g/h、等体積の1/4インチインタロックスサドルと混合された1.5重量%のNiを含む75gの触媒複合体を使用し、合計圧60psigで、リボイラー負荷を250Wから380Wに増加させても調べた。結果を表2に示す。
【表2】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0069】
リボイラー負荷が増加するにつれ、転化率は基本的に同じ値を保ちつつ、オクテン類への選択率が65%を超える値から約76%に増加した。この挙動は、基本的に全てのイソブテンが変換するので、供給速度は75gの触媒複合体に関して少し低いことを示していた。この実施例で、リボイラー負荷が増加すると、還流の流量が増し、オクテンダイマーの選択率がよくなることが示された。
【0070】
1−ブテン又はイソブテンのオリゴマー化に関し、リボイラー負荷を増やすにつれて、オクテンへの選択率が増し、触媒複合体が反応及び分離の両方に効率的であることが立証される。イソブテンは、1−ブテンより反応性が高いので、蒸留カラム内の温度を下げる低い系内圧力、及び触媒充填物上における低いNi負荷が、イソブテンのオリゴマー化により適していることがわかる。
【実施例5】
【0071】
運転圧の効果 1−ブテンのオリゴマー化
1−ブテンのオリゴマー化における運転圧の効果を、1−ブテンの供給速度が48.17g/h、イソペンタンの供給速度が13.27g/hであり、1.2倍の体積の1/4インチセラミックインタロックスサドルと混合された3.0重量%のNiを含む142gの触媒複合体を使用して、運転圧を90psigから140psigに変更して調べた。1−ブテンのオリゴマー化に関し得られた結果を表3に挙げる。
【表3】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0072】
触媒蒸留カラム中の運転圧を増加させると、反応区域内の温度がそれに対応して上昇した。これは1−ブテンの転化率が90%を超える値から約96%に上昇する結果となった。しかし、オクテン類の選択率は僅かに減少した。
【実施例6】
【0073】
供給速度の影響 1−ブテンのオリゴマー化
1−ブテンのオリゴマー化における供給速度の効果を、等体積の1/4インチインタロックスサドルと混合した3.0重量%のNiを含む79.45gの触媒複合体を使用し、140psigの合計圧で、先ず、1−ブテンの供給速度を35.31g/hから66.37g/hに増加させて調べた(表4)。
【表4】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0074】
この効果をさらに、3.0重量%のNi及び1.2倍の体積の1/4インチインタロックスサドルを含む142gの触媒複合体を使用し、140psigで、1−ブテンの供給速度を48.17g/hから85.63g/hに上げることによって調べた(表5)。
【表5】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0075】
供給速度を上げることによって、生産性が上がった。供給速度が低ければ生産性は低く、従って、供給速度を変化させることによって、触媒1g当たりの生産性を最大化するという利点がある。イソブテンのオリゴマー化において、1.5重量%のNi及び等体積の1/4インチインタロックスサドルを含む75gの触媒複合体を用い、60psigで、イソブテンの供給速度を58.30g/hから77.38g/hへ上げることによる効果を表6に示す。
【表6】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0076】
供給速度を上げるにつれて生産性も上がり、このことは供給速度を変化させることによって生産性を最適化できることを示唆していることが分かる。CDプロセスにおいては、最大生産性のために触媒量と供給速度との最適比がある。
【実施例7】
【0077】
触媒の安定性 1−ブテンのオリゴマー化
1−ブテンのオリゴマー化に関する触媒の安定性が、表7に示されるデーターから理解できる。
【表7】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0078】
122時間の間、リボイラー負荷が300W、1−ブテンの供給速度が48.17g/h、イソペンタンの供給速度が13.27g/hで、3.0重量%のNi及び等体積の1/4インチインタロックスサドルを含む79.45gの触媒複合体を用い、140psigでの転化率、選択率及び生産性は、122時間にわたって基本的に同じである。これらのデータは、ブテンのオリゴマー化に関するCDプロセスにおいて、触媒複合体が非常に安定していることを示した。反応が終了した後、触媒複合体をカラムから除去した。触媒複合体は無傷に保たれ、この複合体の機械的強度はCDカラム中での使用に適していることが観察された。オリゴマー化前後の触媒複合体の表面積を測定すると、それぞれ183.7m/g及び182m/gであり、触媒複合体の不活性化に対する安定性及び耐性を示唆した。
【実施例8】
【0079】
供給位置の効果 1−ブテン及びイソブテンのオリゴマー化
圧力、触媒複合体、リボイラー負荷及び供給速度のような他の全てのプロセス条件を同じにし、蒸留カラムに対する供給口の位置、即ち、供給を触媒区域の上又は下で行うかによって、生産性及び選択率が変化する結果となりうる。1−ブテン及びイソブテンに関し得られた実施例を表8及び9に示す。結果は、供給口位置の変化によって、生産性及び選択率に影響があることを示している。
【表8】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0080】
しかし、イソブテンのオリゴマー化に関しては、触媒区域の上部に供給することがさらに有利である(表9)。
【表9】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【実施例9】
【0081】
CD反応器とバッチ式反応器との比較
1−ブテン及びイソブテンのオリゴマー化
イソブテンの二量化に関するCD反応器の利点を表10に見ることができる。
【表10】

・滞留時間は、触媒複合体の重量/1−ブテンの質量流速を表す。
・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・生産性は、単位重さの触媒複合体によって生成されるオリゴマーの1時間当たりの重さを表す。
【0082】
温度及び反応時間などの反応条件が同じ条件下でCDカラムにおいて実施されたオリゴマー化反応の転化率及び選択率は、バッチ式反応器又はフロー式反応器に比べて非常に高い。これは、CD条件下でのNi含有触媒複合体は、バッチ式又はフロー式反応システムに比べ、オクテンダイマーへの転化率及び選択率が高いことを示している。
【実施例10】
【0083】
低級アルケン類のオリゴマー化に対する他の触媒活性種
γアルミナのような多孔性支持体上の触媒成分として、NiSOの他に、(NH)Fe(SO、FeSO及び(NHSOのような他の触媒材料もまたイソブテンの二量化及びオリゴマー化に有効である(表11)。
【表11】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
【実施例11】
【0084】
1−ブテンのオリゴマー化におけるNi塩の効果
表12は、1−ブテンのオリゴマー化に関し、γアルミナに基づく多孔性担体構造体上の種々のNi塩の活性を示す。Ni硫酸塩は、Ni塩化物より反応性が高い。NHClをNiClに添加することにより、NiClの活性を増加させた。新しい触媒及び使用した触媒の表面積は大きく違わず、触媒複合体が非常に安定であることを示している。表13は、1−ブテンのオリゴマー化に関し、多孔性γアルミナは、使用された触媒の表面積の減少から分かるように、NiSO又はNiClを支持するために使用されるNaYゼオライトやBaNaYゼオライトよりもさらに一層、安定であることを示す。
【表12】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
【表13】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
【実施例12】
【0085】
CDカラムにおける、イソブテンのオリゴマー化及び水素添加によるイソオクタンの一段生産
この実施例では、イソブテンからイソオクタンへの一段生産に関し、同じ一つの蒸留カラム内で、二量化/オリゴマー化触媒を含む上部触媒区域、及び水素添加触媒複合体を含む下部触媒区域の二つの分離した触媒蒸留区域が、を使用するプロセスを使用することで、高い選択率が達成できることを示す。二量化区域において、Ni触媒複合体は、等体積程度のインタロックスサドルと混合された。イソブテンは、二量化区域の上方の任意の箇所あるいは二量化区域のすぐ下に供給することができる。水素は、水素添加区域の下方に供給すべきである。二量化区域において、触媒複合体は1重量%のニッケルを含んでいた。水素添加区域においては、この触媒複合体は0.7重量%のPdを含んでいた。表14にこの一段反応の結果を示す。カラムに水素を供給しなかった場合(試験番号2−3を参照)、オリゴマーは、84.9重量%のオクテン類、13.5重量%のドデセン類及び1.6重量%のヘキサデセン類からなり、オクテン類に対する選択率は84.9重量%であった。オクテン類は、77.8重量%の2,4,4−トリメチルペンテン−1及び22.2重量%の2,4,4−トリメチルペンテン−2で構成されていた。水素を、Pd触媒複合体を含む反応区域の下方の触媒蒸留カラムに導入した場合(試験番号2−2)、オクテン類が98%を超えて水素添加され、2,2,4−トリメチルペンタン(オクタン価:100)となった。ドデセン類及びヘキサデセン類もいくらか水素添加された。水素が存在することで、イソブテンからオクテンへの二量化による生産性が減少することはなく、この実験において、オリゴマー化の僅かな増加が観察された。水素流速は、供給される水素の量がオリゴマーを水素化するのに充分な量になるように調節すべきである。リボイラー負荷が350Wから300Wに下がったことによって、オクテン類の生産性又は2,2,4−トリメチルペンタンの生産性に重要な影響を与えることはなかった(試験番号2−5及び試験番号2−2を比較)。表14中の試験番号2−5及び試験番号2−8の比較は、イソブテン供給速度の増加によって、オリゴマー化活性が増加し、2,2,4−トリメチルペンタンの生産性も増加したことを示す。
【0086】
カラム中の圧力が触媒蒸留カラム中の温度を調節するので、カラム中の圧力は、CDカラム中の温度プロフィールを、CDカラムの上側部でオリゴマーを製造し、CDカラムの下側部で水素添加が起こるのに適するようにすべきである。このプロセスにおける圧力の効果の実施例を表15に示す。圧力が増加すると、オリゴマー化区域及び水素添加区域の温度が上昇し、オリゴマー化活性及び2,2,4−トリメチルペンタンの生産性が増加したが、オクテン類への選択率は減少したことが分かる。
【0087】
二量化/オリゴマー化及び水素添加用の触媒複合体の活性は、20日間の生産の間安定であった。
【表14】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・オリゴマー化活性は、単位重量の触媒によって製造される、1時間当たりのオクテン類、ドデセン類及びヘキサデセン類の重量を表す。
【表15】

・選択率は、全オリゴマー中のオクテン類の重量割合を表す。
・オリゴマー化活性は、単位重量の触媒によって製造される、1時間当たりのオクテン類、ドデセン類及びヘキサデセン類の量を表す。
【実施例13】
【0088】
ブタジエンの水素添加
3.7gのPdアセチルアセトナートを100gのジクロロメタンに溶解し、得られた溶液を直径及び長さが8mm(表面積:0.22m/g)のα−アルミナリング50gに加え、これを200℃で乾燥した。α−アルミナリングを含む溶液を室温で24時間振盪した。Pdを含むα−アルミナリングを溶液から取り出し、90℃のオーブン中で24時間乾燥した。350℃で3時間焼成し、次いで、350℃、3時間水素で還元した。触媒複合体を空気から保護した。触媒複合体中のPdの重さは、0.31重量%であった。
【0089】
ブタジエン及びイソブテンの混合物中のブタジエンの水素添加を、上記した触媒複合体を使用するバッチ式オートクレーブで実施した。ブタジエンの1−ブテン、2−ブテン及びn−ブタンへの選択的水素添加は、イソブテン中5.4重量%のブタジエンを含む混合物に関し、バッチ式オートクレーブで、50〜90℃の間の温度及び160〜300psigの間の圧力で行われた。触媒複合体重量は、0.31重量%のPd負荷で1.63〜2.45gの間であった。約2〜4時間のうちに100%のブタジエンが水素添加された。
【0090】
各刊行物、特許又は特許出願が、引用することで取り込まれるように具体的かつ個別に示されている場合、本明細書で挙げられた全ての刊行物、特許及び特許出願は、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する。
【0091】
引用された全ての刊行物は、出願日前に開示されたものであり、先行する発明ということで、本発明はそのような刊行物に先んじる権利がないことを認めるものであると理解してはならない。
【0092】
前述の発明は、理解の明白化の目的のために、説明及び実施例によって、いくらか詳しく説明してきたが、添付された請求項の精神及び範囲を逸脱しない限り、本発明の教示に沿ってある変更及び修正をこれに加えてもよいことは当業者には容易に理解される。
【0093】
この明細書及び添付の請求項において使用されている単数形状「a」「an」及び「the」は、文脈で明らかに記載しない限り、複数形を含むものであることに留意しなければならない。特に記載しない限り、ここで使用されている技術的及び科学的用語は、この発明が属する技術の分野における当業者に普通に理解されている意味と同じ意味を持つものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒蒸留装置において使用される触媒複合体であって、
a)無機酸化物で構成され、空隙率が0.30〜0.95の範囲であり、表面積が40m/g〜500m/gであり、クラッシュ強度が2.4〜9.9kg/構造単位である担体構造体であって、リング、中空シリンダー、2、3又は4枚のセル隔壁を有する、交差又は複数隔壁リング又はシリンダー、サドル、中実リング、中実シリンダー、球及びハニカム体から選択される形状をもつ担体構造体と、
b)前記担体構造体上に担持された触媒活性種を触媒複合体重量の0.01〜10重量%、
とからなる触媒複合体。
【請求項2】
前記空隙率が0.30〜0.95であり、前記表面積が50m/g〜500m/gであり、前記クラッシュ強度が2.4〜9.9kg/単位である請求項1記載の触媒複合体。
【請求項3】
前記無機酸化物が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1又は2記載の触媒複合体。
【請求項4】
前記無機酸化物がγ−アルミナである請求項1又は2記載の触媒複合体。
【請求項5】
前記無機酸化物がα−アルミナである請求項記載の触媒複合体。
【請求項6】
前記担体構造体がラシヒリングの形状である請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項7】
前記触媒活性種が、IV、V、VI、VII族、又はVIII族金属を含む請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項8】
前記触媒活性種が、VI族、VII族又はVIII族金属を含む請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項9】
前記触媒活性種がニッケルを含む請求項8記載の触媒複合体。
【請求項10】
前記金属が、金属塩又は金属錯体の形状である請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項11】
前記金属塩がイオンの形状である請求項10記載の触媒複合体。
【請求項12】
前記金属塩が、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属シュウ酸塩、又は金属酢酸塩である請求項10記載の触媒複合体。
【請求項13】
前記触媒活性種が硫酸ニッケルである請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項14】
前記触媒活性種が塩化ニッケルである請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項15】
前記触媒活性種が、硫酸アンモニウム又はリン酸アンモニウムとの混合物である請求項1〜14のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項16】
前記触媒活性種が、有機酸、無機酸、又はこれらに由来する塩である請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項17】
前記有機酸が、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、又はトリフルオロ酢酸である請求項16記載の触媒複合体。
【請求項18】
前記無機酸が、硫酸又はリン酸である請求項16記載の触媒複合体。
【請求項19】
前記塩が、硫酸アンモニウム又はリン酸アンモニウムである請求項16記載の触媒複合体。
【請求項20】
前記触媒活性種が、VIII族金属及び炭素、水素、酸素、窒素及びリンからなる群から選択される1以上の原子を含むリガンドを含む請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項21】
前記VIII族金属がゼロ酸化状態にある請求項20記載の触媒複合体。
【請求項22】
前記触媒活性種が、パラジウム、白金又はロジウムである請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体。
【請求項23】
触媒蒸留カラムにおける充填材料としての請求項1〜22のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体の使用。
【請求項24】
触媒蒸留カラムにおける触媒としての請求項1〜22のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体の使用。
【請求項25】
低級アルケンをC〜C18アルケンへ選択的にオリゴマー化する方法であって、低級アルケンを触媒蒸留条件下で請求項1〜22のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体に接触させることを含む方法。
【請求項26】
前記低級アルケンが1−ブテン、2−ブテン及びイソブテンから選択され、C〜C12アルケンがトリメチルペンテン、n−オクテン、ジメチルヘキセン及びメチルヘプテンから選択される請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記触媒複合体が、不活性蒸留充填物と混合されている請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記触媒複合体の不活性蒸留充填物に対する比が、10:1〜1:10である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記触媒複合体及び不活性蒸留充填物が、触媒蒸留カラムの分離された区域で使用される請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記低級アルケンがCアルケンであり、C〜C18アルケンが主にCアルケンである請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記Cアルケンがトリメチルペンテンである請求項30に記載の方法。
【請求項32】
アルケンをアルカンに水素添加する方法であって、アルケンを触媒蒸留条件下で請求項19〜21のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体及び水素に接触させることを含む方法。
【請求項33】
前記アルケンが、トリメチルペンテン、n−オクテン、ジメチルヘキセン及びメチルヘプテンから選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記触媒複合体が、不活性蒸留充填物と混合されている請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記触媒複合体の不活性蒸留充填物に対する比が10:1〜1:10である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記触媒複合体及び不活性蒸留充填物が、触媒蒸留カラムの分離された区域で使用される請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記アルケンがトリメチルペンテンであり、前記アルカンがトリメチルペンタンである請求項32〜35のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ハイオクタン化合物を調製する方法であって、
a)C〜Cアルケンを触媒蒸留条件下で請求項1〜22のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体と接触させC〜C18アルケンを得る工程と、
b)前記工程a)で得た前記C〜C18アルケンを触媒蒸留条件下で請求項19〜21のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体及び水素と接触させ、C〜C18アルカンを得る工程
とを含む方法。
【請求項39】
前記方法の工程a)及びb)を単一触媒蒸留カラムで実施する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記方法の工程a)及びb)を分離された触媒蒸留カラムで実施する請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記C〜CアルケンがCアルケンであり、C〜C18アルケンがCアルケンである請求項38及び39のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記Cアルケンがトリメチルペンテンである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ハイオクタン化合物を調製する方法であって、
a)イソブテンを触媒蒸留条件下で請求項1〜22のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体と接触させトリメチルペンテンを得る工程と、
b)トリメチルペンテンをバッチ式反応条件下又は水素添加反応条件下で水素添加触媒及び水素と接触させトリメチルペンタンを得るステップと、
からなる方法。
【請求項44】
〜C18アルケン類を製造する方法であって、C〜Cアルケン類の混合物を触媒蒸留条件下で請求項1〜22のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体と接触させることを含む方法。
【請求項45】
混合物中の各C〜Cアルケンが、単一触媒蒸留カラム中にある異なる反応区域内でオリゴマー化される請求項44に記載の方法。
【請求項46】
各C〜Cアルケンが、2以上結合する触媒蒸留カラム中にある異なる反応区域内でオリゴマー化される請求項44に記載の方法。
【請求項47】
〜Cアルケン類の混合物が、1以上のCアルケン類を含む請求項44〜46のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
低級アルケンをC〜C18アルケンに選択的にオリゴマー化する方法であって、C〜Cアルケン類とC〜Cアルカン類との混合物を触媒蒸留条件下で請求項1〜22のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体と接触させることを含む方法。
【請求項49】
触媒蒸留装置において水素添加触媒として使用される触媒複合体であって、前記触媒複合体が、
a)無機酸化物で構成され、空隙率が0.30〜0.95の範囲であり、クラッシュ強度が2.4〜9.9kg/構造単位である担体構造体であって、リング、中空シリンダー、2、3又は4枚のセル隔壁を有する、交差又は複数隔壁リング又はシリンダー、サドル、中実リング、中実シリンダー、球及びハニカム体から選択される形状をもつ担体構造体と、
b)前記担体構造体上に担持された、触媒複合体重量の0.01〜10重量%のパラジウム、白金又はロジウムとを含む触媒複合体、
とを含む触媒複合体。
【請求項50】
前記無機酸化物がα−アルミナである請求項49に記載の触媒複合体。
【請求項51】
前記α−アルミナの表面積が0.1〜1.0m/gである請求項50に記載の触媒複合体。
【請求項52】
ブタジエンを水素添加する方法であって、ブタジエンを触媒蒸留条件下で請求項49〜51のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体及び水素に接触させることからなる方法。
【請求項53】
留分中のメチルアセチレン及びプロパジエンを選択的に水素添加してプロピレンを得る方法であって、C留分を触媒蒸留条件下で請求項49〜51のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体及び水素に接触させることからなる方法。
【請求項54】
流体接触分解反応(FCC)流中のアレン及びプロピンを選択的に水素添加する方法であって、FCC流を触媒蒸留条件下で請求項49〜51のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体及び水素と接触させることからなる方法。
【請求項55】
ラフィネートI又はラフィネートII流中のブタジエンを選択的に水素添加してブテンを得る方法であって、ラフィネートI又はラフィネートII流を触媒蒸留条件下で請求項49〜51のうちのいずれか一項に記載の触媒複合体及び水素と接触させることからなる方法。

【公表番号】特表2007−513753(P2007−513753A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543337(P2006−543337)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002111
【国際公開番号】WO2005/056503
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506200692)ユニバーシティー オブ ウォータールー (1)
【Fターム(参考)】